JP2020023419A - 薄片状チタン酸の有機溶剤分散体およびその製造方法並びにその用途 - Google Patents

薄片状チタン酸の有機溶剤分散体およびその製造方法並びにその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】 薄片状チタン酸を含む溶剤系塗料を用いて形成した塗膜において、良好な陰影感(ハイライトの明度とシェードの明度との差(メリハリ))を実現可能とする。【解決手段】 薄片状チタン酸として、分光光度計で測定した該薄片状チタン酸の水性分散液の吸収スペクトルにおける波長265nmでの吸光度Aと波長550nmでの吸光度Bとの比(A/B)が100以下であるものを用い、炭素数が6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミンを含有させて、薄片状チタン酸の有機溶剤分散体を作製する。この有機溶剤分散体に樹脂成分を加えて溶剤系塗料を作製する。【選択図】 なし

Description

本発明は、薄片状チタン酸の有機溶剤分散体およびその製造方法並びにその用途に関する。
物品の表面に意匠性を付与する光輝性塗料が知られている。光輝性塗料には、例えば、天然マイカ、合成マイカ、鱗片状アルミナ等の鱗片状基材の表面に酸化チタン層を設けた光輝性顔料などが用いられる。これら従来の光輝性顔料は光輝感(メタリック調の輝き)が強く、かつ粒子感(粒子それぞれが単独で輝きキラキラとしているように見える意匠)を有するもので、塗膜にパール光沢を付与する。
近年では、より高級感を有する意匠として、粒子感を抑えたシルクのような深みのある落ち着いた緻密な輝き(絹のような継ぎ目のない滑らかな意匠)、いわゆるシルキー感を示す意匠が提案されている。シルキー感を付与する光輝性顔料として、薄片状チタン酸が知られている。
薄片状チタン酸は粒子の表面が親水性であることから、水系塗料には比較的容易に適用可能である。対して、薄片状チタン酸の溶剤系塗料への適用は容易でないが、各種検討がなされている。例えば、特許文献1には、薄片状チタン酸の表面に、カチオン性高分子と疎水性のアニオン性高分子とを順次吸着させた表面処理チタン酸顔料を有機溶媒に分散させ、この有機溶剤分散体と溶剤系ベース塗料とを混合して溶剤系塗料を調整することが記載されている。
特開2009−161678号
上述した従来技術の薄片状チタン酸を含む溶剤系塗料では、塗膜の陰影感が十分でないという問題がある。陰影感は、塗膜に光が当たったときのハイライトの明度とシェードの明度との差(メリハリ)の大きさを示し、シルキー感とともに塗膜の意匠性を特徴づける重要な要素の一つである。このため、薄片状チタン酸を含む溶剤系塗料を用いて形成した塗膜において、良好な陰影感を実現可能とする技術が求められている。
本発明者は、上記のような従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を行った。そして、特定の吸光特性を有する薄片状チタン酸を、特定のアミン化合物を用いて有機溶剤に分散させることにより、十分な分散安定性が得られること、この有機溶剤分散体に樹脂成分を加えると塗料組成物を作製でき、この塗料組成物を被塗装物に塗布することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 薄片状チタン酸と、有機溶剤と、アミンとを含み、前記薄片状チタン酸は、分光光度計で測定した該薄片状チタン酸の水性分散液の吸収スペクトルにおける波長265nmでの吸光度Aと波長550nmでの吸光度Bとの比(A/B)が100以下であり、前記アミンは、炭素数が6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミンである、薄片状チタン酸の有機溶剤分散体、
(2) 前記薄片状チタン酸の吸光度の比(A/B)が50以下である、(1)に記載の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体、
(3) 前記アミンの炭化水素基の炭素数が18未満である、(1)または(2)に記載の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体、
(4) (1)〜(3)の何れかに記載の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体と、樹脂成分とを含む、塗料組成物、
(5) (4)に記載の塗料組成物を被塗装物に塗布した意匠性塗膜、
(6) 層状の結晶構造を有するチタン酸と、水性媒液と、水溶性の塩基性有機化合物とを混合して得られた、分光光度計で測定した薄片状チタン酸の水性分散液の吸収スペクトルにおける波長265nmでの吸光度Aと波長550nmでの吸光度Bとの比(A/B)が100以下である薄片状チタン酸を、炭素数が6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミンの存在下で有機溶剤に混合する、薄片状チタン酸の有機溶剤分散体の製造方法、
(7) 前記層状の結晶構造を有するチタン酸と水性媒液とを含むスラリーのpHを6以上10以下に調整した後に、該スラリーと水溶性の塩基性有機化合物とを混合する、(6)に記載の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体の製造方法、などである。
本発明によれば、特定の吸光特性を有する薄片状チタン酸を有機溶剤に分散させることができる。この有機溶剤分散体を用いると溶剤系塗料への薄片状チタン酸の適用が可能であり、しかも良好な陰影感を示す意匠性塗膜を実現することができる。このため、例えば自動車用、プラスチック用塗料に有用である。
本発明の有機溶剤分散体は、薄片状チタン酸と、有機溶剤と、アミンとを含み、前記薄片状チタン酸は、分光光度計で測定した該薄片状チタン酸の水性分散液の吸収スペクトルにおける波長265nmでの吸光度Aと波長550nmでの吸光度Bとの比(A/B)が100以下であり、前記アミンは、炭素数が6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミンである。
本発明に用いる薄片状チタン酸において、「薄片状」とは、チタン酸の粒子の形状に関し、板状、シート状、フレーク状、鱗片状と呼ばれるものを包含する概念であり、厚みに対する幅および長さの比が比較的大きな形状を意味する。
薄片状チタン酸は種々の結晶構造を取りうるが、層状の結晶構造を有するチタン酸が好適である。層状の結晶構造としては種々のものが存在するが、例えば、TiO八面体が稜共有してa軸およびc軸方向に2次元的に広がったシートを作り、その間にカチオンを含んで積層したレピドクロサイト構造を有するチタン酸を用いることができる。結晶構造は粉末X線回折により確認することができる。
薄片状チタン酸は、レーザー回折/散乱法で測定した体積粒度分布におけるメジアン径が15〜50μmの範囲であることが好ましく、15〜40μmの範囲であることがより好ましい。こうすることで、良好な陰影感やシルキー感を示す塗膜が得られやすくなる。
薄片状チタン酸は、レーザー回折/散乱法で測定した体積粒度分布における累積10%粒子径(D10)が5μm以上であると好ましく、10μm以上であるとより好ましい。こうすることで、微細粒子の存在比率を充分低くでき、光輝感、陰影感の低下を抑制できる。
薄片状チタン酸は、レーザー回折/散乱法で測定した体積粒度分布における累積90%粒子径(D90)が70μm以下であると好ましく、60μm以下であるとより好ましい。こうすることで、粗大粒子の存在比率を充分低くでき、塗膜の粒子感の発現を抑制できる。
薄片状チタン酸のレーザー回折/散乱法による粒度分布の測定は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA−950)を使用し、屈折率2.50に設定して行う。
薄片状チタン酸は、薄片状チタン酸を含む水性分散液について分光光度計を用いて吸収スペクトルを測定した場合に、その吸収スペクトルにおける波長265nmの紫外線域での吸光度Aと波長550nmの可視光域での吸光度Bとの比(A/B)が100以下である。
上記吸収スペクトルは、分光光度計(V−630:日本分光社製)を用いて、波長200〜700nmの範囲の紫外可視光吸収スペクトルを測定する。
上記測定においては、薄片状のチタン酸の乾燥粉末を水性媒液に分散させてスラリーとし、これを純水などで適宜希釈して、薄片状チタン酸の濃度が0.00001g/リットル程度となるように調整した水性分散液を、測定用のサンプルとする。
薄片状チタン酸では、厚みが小さくなると紫外部の吸収(吸光度A)が大きくなる一方、可視光の散乱及び吸収は小さくなることから吸光度Bは小さくなる。従って厚みの小さい薄片状チタン酸の含有割合が大きいと吸光度比(A/B)は高くなる。例えば、吸光度比(A/B)が100よりも高い場合、厚みの小さい薄片状チタン酸を比較的多く含み、可視光を透過しやすくなることから、塗膜のハイライト(正反射)の明度が小さくなり、陰影感(ハイライトの明度とシェードの明度との差(メリハリ))が低下する。
そのため、上記の吸光度比(A/B)が100以下であると、薄片状チタン酸は適度な厚みを有することになるので、良好な陰影感を示す塗膜が得られる。
薄片状チタン酸の吸光度比(A/B)は、100以下であることが重要であり、80以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。こうすることで、より良好な陰影感を示すとともに、高い光沢を有する塗膜を得ることができる。
一方、薄片状チタン酸の吸光度比(A/B)は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。こうすることで、厚みが大きすぎる薄片状チタン酸の含有割合が小さくなり、薄片状チタン酸の塗膜中での配向が特に良好となる。これにより、塗膜に光が当たった時の光散乱の影響が小さくなり、シェードの明度の増大を抑制することができる。その結果、より一層、良好な陰影感を示す塗膜を得ることができる。
本発明の有機溶剤分散体に含まれる有機溶剤は、用途に応じて適宜選択することができる。たとえば、
アルコール系(エタノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等)、
エステル系(酢酸エチル、酢酸プロピル、グリセリン脂肪酸エステル等)、ポリエーテル系(ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシド等)、カルボン酸系(酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、乳酸等)、
炭化水素系(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、流動パラフィン等)、芳香族炭化水素系(ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等)、
アミド系(ジメチルスルホキシド、アセトアニリド等)、
ケトン系(アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ハロゲン系(塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等)、
カーボネート系(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)、
その他、アセトニトリル、ミネラルスピリット、軽油、灯油、原油、サラダ油、大豆油、ヒマシ油、フッ素変性油、ラッカーシンナー等が挙げられる。
これらは単独で、もしくは二種以上を併せて用いられる。また、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の反応性の官能基を含む有機化合物でもよい。
本発明の有機溶剤分散体に含まれるアミンは、炭素数が6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミンである。このようなアミン(以下、直鎖状アミンということがある)は、本発明の薄片状チタン酸の有機溶剤中での分散性や溶剤系塗料中での分散性の向上、ひいては塗膜の陰影感の向上に寄与する。そのメカニズムの詳細は不明であるが、以下のようなことが推定される。
薄片状チタン酸の表面は負電荷を有しており、カチオン性の官能基を有する有機分子が吸着しやすい。このため直鎖状アミンは、アミノ基を介して薄片状チタン酸の粒子表面に吸着する。直鎖状アミンは炭素数6以上の炭化水素基を有し、これが親油性を示す。また、直鎖状アミンは立体障害が小さいため、直鎖状アミンによって薄片状チタン酸の粒子表面が高密度に被覆される。その結果、薄片状チタン酸が有機溶剤中で良好に分散するものと考えられる。
また、この有機溶剤分散体と溶剤系の樹脂成分とを混合して塗料を調製すると、薄片状チタン酸と樹脂成分とがよく馴染む。従って、これを用いて塗膜を形成することで、塗膜中での薄片状チタン酸の配向が良好となり、良好な陰影感が得られるものと考えられる。
このような直鎖状アミンとしては、例えば、ヘキシルアミン(炭素数6)、n−オクチルアミン(炭素数8)、デシルアミン(炭素数10)、ドデシルアミン(炭素数12)、テトラデシルアミン(炭素数14)、ヘキサデシルアミン(炭素数16)、ステアリルアミン(炭素数18)等の、直鎖のアルキル基を有する第1級アミンが挙げられる。
一方で、直鎖状アミンの炭素数は大きければ大きいほどよいという訳ではなく、適度であることが好ましい。具体的には、炭素数が18未満の直鎖状アミンを用いることが好ましい。
こうすることで、直鎖状アミンの立体障害がさらに抑制されて、薄片状チタン酸の粒子表面が直鎖状アミンによってより高密度に被覆される。これにより、薄片状チタン酸の有機溶剤中や溶剤系塗料中での分散性がさらに向上し、より良好な陰影感を示すとともに、高い光沢度を有する塗膜を得ることができる。
本発明の有機溶剤分散体において、薄片状チタン酸の含有量は適宜設定することができ、1〜50質量%程度が好ましく、5〜40質量%程度がより好ましい。直鎖状アミンの含有量は、薄片状チタン酸の単位質量(1g)あたりのアミンのモル数が1×10−4mol以上であることが好ましく、1×10−3〜5×10−3molがより好ましい。この程度の含有量であれば、薄片状チタン酸の粒子表面が十分に高密度で被覆される。その結果、薄片状チタン酸の有機溶剤中や溶剤系塗料中での分散が良好となり、塗膜の高光沢、良好な陰影感を実現できる。
本発明の有機溶剤分散体には、薄片状チタン酸、有機溶剤、直鎖状アミン以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で、樹脂バインダー、分散剤、表面調整剤(レベリング剤、濡れ性改良剤)、消泡剤、着色剤、増量剤、防カビ剤、硬化助剤、増粘剤、沈降防止剤等の各種添加剤、充填剤等が第四成分として含まれていてもよい。具体的には、
樹脂バインダーとしては、
(1)無機系バインダー((a)重合性ケイ素化合物(加水分解性シランまたはその加水分解生成物またはその部分縮合物、オルガノポリシロキサン等)、(b)金属アルコキシド類等)、
(2)有機系バインダー(アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、変性シリコーン系樹脂)等が挙げられる。
分散剤としては、
(1)界面活性剤((a)アニオン系(カルボン酸型、カルボン酸塩、カルボン酸エステル塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸塩、リン酸エステル塩等)、(b)カチオン系(アルキルアミン塩、アルキルアミン型等)、(c)ノニオン系(エーテル型、アルコールエステル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型等)等、
(2)シリコーン系分散剤(アルキル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
表面調整剤は有機溶剤分散体の表面張力をコントロールして、ハジキ、クレーター等の欠陥を防止するものであり、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤等が挙げられる。
薄片状チタン酸、有機溶剤、および直鎖状アミン以外の第四成分の添加量は適宜調整することができ、例えば分散剤として前記の界面活性剤、シリコーン系分散剤、リン酸塩系分散剤を用いる場合は、薄片状チタン酸の質量に対して0.005〜5.0質量%程度が好ましく、0.01〜2.0質量%程度がより好ましい。表面調整剤としては前記のシリコーン系表面調整剤等を用いることができ、薄片状チタン酸の質量に対して0.005〜5.0質量%程度が好ましく、0.01〜2.0質量%程度がより好ましい。
本発明の有機溶剤分散体に含有する薄片状チタンは、層状の結晶構造を有するチタン酸と水性媒液とを含むスラリーと、水溶性の塩基性有機化合物とを混合することで、層間を剥離した薄片状チタン酸を用いる。この薄片状チタン酸は、分光光度計で測定した薄片状チタン酸の水性分散液の吸収スペクトルにおける波長265nmでの吸光度Aと波長550nmでの吸光度Bとの比(A/B)が100以下である。次に、薄片状チタン酸を、炭素数が6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミンの存在下で有機溶剤に混合することによって製造することができる。
本発明の有機溶剤分散体の製造方法では、薄片状チタン酸として、以下のようにして薄片状チタン酸を自ら製造してもよいし、以下のようにして製造された薄片状チタン酸を入手して用いてもよい。
まず、チタン酸金属塩を製造する。チタン酸金属塩は、出発原料として、金属酸化物または加熱により金属酸化物に分解される化合物と、酸化チタンまたは加熱により酸化チタンを生ずる化合物とを用い、これら出発原料を混合、焼成し、必要に応じて解砕することによって得られる。
チタン酸金属塩は、次のようにして製造したチタン酸混合アルカリ金属塩が好ましい。すなわち、アルカリ金属酸化物MOおよびM’O(M,M’は各々相異するアルカリ金属である)または加熱により各々MOおよびM’Oに分解される各化合物と、二酸化チタンまたは加熱により二酸化チタンを生ずる化合物とを、好ましくは、M/M’/Tiのモル比で3/1/5から3/1/11の割合で混合し、焼成して製造する。
アルカリ金属酸化物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの酸化物の中から少なくとも1種を用いることができる。また、加熱によりアルカリ金属酸化物に分解される化合物としては、アルカリ金属の炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩等が使用できる。なかでも炭酸塩、水酸化物が好ましい。また、加熱により酸化チタンを生ずる化合物としては、メタチタン酸、オルトチタン酸等の含水酸化チタン、チタンアルコキシド等の有機チタン化合物が挙げられる。なかでも含水酸化チタンが好ましい。
上記で得られたチタン酸混合アルカリ金属塩は、ホスト骨格中のTi4+席の一部が、層間のアルカリ金属とは異なるアルカリ金属イオンで置換された、組成式M[M’x/3Ti2−x/3]O(式中のM,M’は各々相違するアルカリ金属であり、xは0.50〜1.0である)で示される、斜方晶の層状構造(レピドクロサイト型の結晶構造)を有する化合物であると好ましい。組成式中のxは、出発原料の混合比を変化させることにより、コントロールできる。
前記焼成温度はチタン酸金属塩の種類によって異なるが、おおむね1050〜1200℃とすればよい。代表的な組成、すなわちM=K、M’=Liで、x=0.8の場合、1050〜1200℃がより好ましく、1100〜1180℃が更に好ましい。その他の焼成条件、例えば、昇降温速度、焼成時間、焼成雰囲気等には特に制限はなく、適宜設定してよい。また、焼成の際に融剤を添加する所謂フラックス法を採用してもよい。
次に、チタン酸金属塩を酸性化合物と接触させて、層状の結晶構造を有するチタン酸化合物(以降、「層状チタン酸」と記載することもある)を製造する。酸性化合物は酸水溶液とするのが好ましい。具体的には、例えば、チタン酸金属塩を水溶媒に懸濁した後、酸水溶液を添加し、金属イオンを抽出(チタン酸金属塩中の金属イオンと、酸中の陽イオンとをイオン交換)することによって層状チタン酸を生成させる方法が挙げられる。
酸水溶液としては、無機酸、有機酸の水溶液が挙げられ、特に制限はない。無機酸としては塩酸、硫酸等が挙げられる。有機酸としては酢酸、しゅう酸等が挙げられる。濃度は任意に調整することができる。
チタン酸金属塩には、前述のチタン酸混合アルカリ金属塩を用いることが好ましい。このチタン酸混合アルカリ金属塩中のMとM’で示されたアルカリ金属イオンは活性であるので、他の陽イオンとの交換反応や有機物のインターカレーションによるとり込みを起こす。このため、酸性化合物と接触させると、層間(M)およびホスト骨格中(M’)のアルカリ金属イオンが、短時間で他の陽イオンと交換され、工業的に生産する場合に、効率がよく、低い生産コストで層状チタン酸を得ることができる。MおよびM’の組み合わせとして、(M、M’)=(カリウム、リチウム)、(ルビジウム、リチウム)、(セシウム、リチウム)が好ましく、(カリウム、リチウム)の組合せが特に好ましい。
上記層状チタン酸として、層と層との間の金属イオンが水素イオンで置換され、かつ、ホスト骨格中のTi4+席の一部も置換された組成式
4x/3Ti2−x/3・nH
(式中xは0.50〜1.0であり、nは0〜2である)で示される、斜方晶の層状構造を有する化合物が好ましい。すべての金属イオンが水素イオンに置換されている必要はなく、本発明の効果が得られる範囲で金属イオンが残存していてもよい。
次に、層状チタン酸と水性媒液(水を主成分とする媒液)とを混合してスラリーを調製し、これに水溶性の塩基性有機化合物を混合する。本発明において「水溶性」とは、水100gに対して10g以上溶ける性質を意味する。
上記工程により、層状チタン酸に含まれる水素イオンと塩基性有機化合物の交換反応により塩基性有機化合物が層間に挿入され、少なくとも一部の層を膨潤および/または剥離して薄片状チタン酸が得られる。
水性媒液への層状チタン酸および水溶性の塩基性有機化合物の添加の順序は特に限定されない。例えば水性媒液に層状チタン酸と水溶性の塩基性有機化合物を加え、撹拌して混合することができる。または、層状チタン酸を水性媒液に分散させたスラリーに水溶性の塩基性有機化合物を加えてもよい。または、水溶性の塩基性有機化合物の水溶液に層状チタン酸を加えてもよい。
接触中、必要に応じて外力を印加させてもよい。外力を印加すると、層状チタン酸の層間の膨潤および/または剥離が進行しやすくなる。外力の印加方法としては、例えば、層状チタン酸と塩基性有機化合物を含む媒液を撹拌する方法が挙げられる。このとき、撹拌条件は適宜設定してよい。撹拌以外の外力の印加方法として、媒液を入れた容器を振とうしてもよい。振とうには、振とう器、ペイントコンディショナー、シェーカー等を用いることができる。その場合の振とう条件も適宜設定してよい。
水溶性の塩基性有機化合物には特に制限はなく、任意の塩基性有機化合物を1種または2種以上適宜選択して用いることができる。具体例としては、(1)水酸化4級アンモニウム化合物(水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等)、(2)炭素数5以下のアルキル基を有するアミン化合物(プロピルアミン、ジエチルアミン等)、(3)アルカノールアミン化合物(エタノールアミン、アミノメチルプロパノール等)等が挙げられる。中でもアルカノールアミン化合物が好ましく、アミノメチルプロパノールを用いるとより好ましい。
(1)は層状チタン酸の層間の膨潤および/または剥離の進行が比較的早い。(2)は層状チタン酸の層間の膨潤および/または剥離の進行が比較的遅い。(3)は概ねその中間である。
層状チタン酸の剥離の程度は、用いる塩基性有機化合物の種類およびその使用量、層状チタン酸の濃度、両者を接触させる温度や速度や時間、外力の印加方法や外力の程度等、条件を適宜設定することによって制御できる。これにより、得られる薄片状チタン酸の厚みを所望の厚みに制御することができる。
薄片状チタン酸の厚みを制御する別の方法としては、層状の結晶構造を有するチタン酸と水性媒液とを含むスラリーと塩基性有機化合物とを混合する前に、層状チタン酸のスラリーのpHを調整する方法がある。
例えば、水酸化ナトリウムやアンモニアなどのpH調整剤を用いて、層状チタン酸のスラリーを予めpH6〜10に調整しておく。こうすることで、層状チタン酸の層間の水素イオンが除去され、塩基性有機化合物との反応性が抑制される。その結果、層状チタン酸の剥離の程度が小さくなり、比較的厚みの大きな薄片状チタン酸を得ることができる。層状チタン酸のスラリーのpHは7〜9に調整しておくことがより好ましい。
このようにして得た薄片状チタン酸のスラリーから、以下のような方法で薄片状チタン酸を固形分として分取することができる。
例えば、上記薄片状チタン酸のスラリーから薄片状チタン酸を固液分離して固形分を得ることができる。固液分離には公知のろ過方法を用いてよく、例えば、通常、工業的に用いられるロータリープレス、フィルタープレス等のろ過装置を用いることができる。その際に、必要に応じて洗浄を行い、可溶性塩類等を除去してもよい。その後、必要に応じて乾燥を行ってもよい。洗浄には、例えば純水を用いることができる。乾燥も任意の装置を用いることができ、乾燥温度および時間も適宜設定することができる。乾燥温度としては50〜300℃が好ましく、100〜300℃がより好ましい。
上記薄片状チタン酸のスラリーを凍結乾燥して凍結乾燥物として固形分を得ることもできる。凍結乾燥には通常の凍結乾燥機を用いることができる。得られた凍結乾燥物は、引き続き真空下において氷を昇華してもよい。
上記薄片状チタン酸のスラリーを遠心分離して、沈降物と媒液を分取し、乾燥して固形分を得ることもできる。遠心分離には通常の遠心分離器を用いることができる。遠心分離を2回以上繰り返してもよい。
上記薄片状チタン酸のスラリーを噴霧乾燥して、固形分を得ることもできる。噴霧乾燥には通常の噴霧乾燥機を用いることができる。
上記の固形分分取方法を複数組み合わせて、固形分を得ることもできる。洗浄と固形分の分取を複数組み合わせてもよい。
得られた固形分に必要に応じて粉砕を行うことができる。粉砕には前述の公知の粉砕機を用いることができる。薄片状チタン酸の形状(薄片面の寸法、大きさ)維持の観点からは粉砕力は弱いほうが好ましい。そのような粉砕機としては、例えば、ハンマーミル、ピンミルが挙げられる。
以上のような薄片状チタン酸の製造方法によれば、分光光度計で測定した薄片状チタン酸の水性分散液の吸収スペクトルにおける波長265nmでの吸光度Aと波長550nmでの吸光度Bとの比(A/B)が100以下の薄片状チタン酸を容易に得ることができる。
以上のようにして製造された薄片状チタン酸を、炭素数が6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミン(直鎖状アミン)の存在下で有機溶剤に混合して、有機溶剤分散体を製造する。薄片状チタン酸の含有量、直鎖状アミンの含有量は上記の範囲に適宜調整することができる。
薄片状チタン酸と、直鎖状アミンと有機溶剤との混合の順序は特に制限はない。従って、例えば、薄片状チタン酸と有機溶剤とを混合した後に、更に直鎖状アミンを混合してもよいが、有機溶剤中での薄片状チタン酸の分散性の観点からすれば、有機溶剤に直鎖状アミンを予め混合しておき、そのあとに薄片状チタン酸を混合することが好ましい。
混合・分散には、通常の撹拌機、コロイドミル、ボールミル、ビーズミル等の分散機、振とう器、ペイントコンディショナー、シェーカー、ディスパー等を用いることができる。また、前記の第四成分を混合するには、薄片状チタン酸と直鎖状アミンと有機溶剤とを混合する時点で行うことができ、あるいは、有機溶剤分散体を製造した後に添加混合してもよい。
尚、上述したように、本発明の有機溶剤分散体の製造方法においては、層状チタン酸の剥離剤(塩基性有機化合物)としてもアミンを用いることがあるが、このような剥離剤としてのアミンと、本工程で用いる直鎖状アミンとは、以下の意味で区別される。
上述のように、層状チタン酸の剥離は水性媒液中で行うので、アミンを用いて剥離する場合、当該アミンは水性媒液によく溶ける(水溶性である)ことが求められる。一方で、本工程の直鎖状アミンは、有機溶剤や溶剤系塗料への薄片状チタン酸の分散性を向上させるための分散剤として機能するので、有機溶剤によく溶けること、樹脂との馴染み(相溶性)が良いことなどが求められる。
このように、層状チタン酸に作用させる剥離剤としてのアミンと、有機溶剤と共に混合する直鎖状アミンとは、同じアミン系の化合物であっても求められる特性は異なるものなのである。
以上のような理由から、本工程で用いる直鎖状アミンとしては、より長鎖のものを用いることが好ましい。一方で、長鎖ほど良いわけではなく、炭素数18未満の直鎖状アミンを用いることがより好ましい。こうすることで、直鎖状アミンの立体障害を効果的に抑制し、薄片状チタン酸の粒子表面をより高密度に被覆することができる。
本発明の塗料組成物は、上述した本発明の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体と、樹脂成分とを含む。
樹脂成分としては、例えば、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノ系樹脂、フッ素系樹脂、変成シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられ、適宜選択できる。これらの樹脂成分は、有機溶剤溶解型、非水分散型(NAD)等、特に制限はなく、硬化方式も加熱硬化型、常温硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等制限は受けない。
その他にも、目的に応じて有機顔料、無機顔料、染料等の着色剤、増量剤、界面活性剤、可塑剤、硬化助剤、ドライヤー、消泡剤、増粘剤、乳化剤、フロー調整剤、皮張り防止剤、色分れ防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤等の各種添加剤、充填剤等が含まれていてもよい。これらの原料を公知の処方で調合して塗料組成物やインキ組成物とすることができる。あるいは、硬化剤、硬化助剤、硬化性樹脂成分を別に硬化液とし、塗装時に混合して用いる二液性塗料とすることもできる。
本発明の塗料組成物を公知の方法で被塗装物に塗布することにより、良好なシルキー感および陰影感を発現する塗膜とすることができる。具体的には、スピンコート、スプレー塗装、ローラーコート、ディップコート、フローコート、ナイフコート、静電塗装、バーコート、ダイコート、ハケ塗り、液滴を滴下する方法等、一般的な方法を制限なく用いることができる。塗料組成物の塗布に用いる器具は、スプレーガン、ローラー、刷毛、バーコーター、ドクターブレード等公知の器具から適宜選択できる。
塗布方法に特に制限はなく、1回で所定の膜厚を塗布してもよく、複数回塗り重ねて所定の膜厚としてもよい。1回当りのウェット膜厚が薄い方が、薄片状チタン酸の運動性(傾き)が制限され、塗膜と平行に配向しやすくなる。従って、複数回塗り重ねて所定の膜厚とする塗布方法であると、薄片状チタン酸の配向度が向上し、塗膜の光輝感を更に高くできるため好ましい。光輝感と経済性の観点から、塗布回数は2〜15回が好ましく、4〜10回がより好ましい。
以下の実施例により本発明をより詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されることはない。
(薄片状チタン酸の製造)
実施例および比較例の溶剤分散体に用いる薄片状チタン酸は、以下のようにして製造した。
(製造例1)
酸化チタン(石原産業製、酸化チタンA−100)、炭酸カリウムおよび炭酸リチウム(ともに関東化学製試薬)を質量比100:40:9.2でメノウ乳鉢にて充分混合した後、大気中、1140℃で5時間焼成し斜方晶型レピドクロサイト構造のチタン酸リチウムカリウム(K0.8Li0.27Ti1.73)を合成した。得られたチタン酸リチウムカリウムをメノウ乳鉢にて解砕し、チタン酸リチウムカリウム粉末を得た。
得られたチタン酸リチウムカリウム粉末と、その4倍質量の1.1規定硫酸水溶液とを混合し30分撹拌してイオン交換を行い、層状チタン酸とした。得られた層状チタン酸固形物をろ過、洗浄し、層状チタン酸ケーキを得た。
得られた層状チタン酸ケーキをTiO換算で100g/Lとなるように再度純水に分散させ、層状チタン酸分散液とした。当該層状チタン酸分散液とアンモニア水を混合し、pHを7.5に調整した後、TiO100gあたり21.4gの2−アミノ−2−メチルプロパノール90%水溶液(層状チタン酸に含まれる水素イオンに対して0.3中和当量)を添加し、室温で1時間、撹拌することにより、薄片状チタン酸分散液を得た。この分散液を、スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製 L−8i)を用いて、入口温度190℃、出口温度85℃の条件で噴霧乾燥し、薄片状チタン酸粉末Aを得た。
(製造例2)
製造例1において、薄片状チタン酸分散液に対して以下の分級操作を行った。
スラリースクリーナー(アコージャパン株式会社製 SS95×250)に目開き45μmのメッシュを取り付け、得られた薄片状チタン酸分散液を純水で2倍希釈した溶液を20L/時で流し、網上の薄片状チタン酸分散液と網下の薄片状チタン酸分散液をそれぞれ回収した。次に、メッシュを目開き20μmに変更し、45μmの分級で得られた網下の薄片状チタン酸分散液を20L/時で流し、網上の薄片状チタン酸分散液(薄片状チタン酸篩中分散液と表記)と網下の薄片状チタン酸分散液をそれぞれ回収した。
薄片状チタン酸篩中分散液、つまり目開き20μm以上45μm以下で分級された薄片状チタン酸分散液について、製造例1と同様に、スプレードライヤーによる噴霧乾燥を経て、薄片状チタン酸粉末Bを得た。
(製造例3〜6)
製造例1において、層状チタン酸分散液とアンモニア水とを混合してpHを調整するにあたり、pHを6.5(製造例3)、8.0(製造例4)、8.5(製造例5)、9.5(製造例6)にそれぞれ調整した。それ以外は製造例1と同様にして、製造例3〜6の薄片状チタン酸粉末(C〜F)を得た。
(製造例7)
製造例1において、層状チタン酸分散液とアンモニア水とを混合してpHを7.5に調整した後、TiO100gあたり31.7gのテトラエチルアンモニウム35%水溶液(層状チタン酸に含まれる水素イオンに対して0.3中和当量)を添加し、室温で1時間、撹拌することにより、薄片状チタン酸分散液を得た。それ以外は製造例1と同様にして、製造例7の薄片状チタン酸粉末Gを得た。
(粒度の測定)
薄片状チタン酸分散液中の薄片状チタン酸の粒度を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA−950)を用いて測定した。屈折率は2.50とした。製造例2は分級後の薄片状チタン酸分散液を測定に用いた。測定結果を表1に示す。
Figure 2020023419
(吸光度比の測定)
薄片状チタン酸の紫外可視光吸収スペクトルを、分光光度計(V−630、日本分光社製)を用いて測定した。測定する波長の範囲は200〜700nmとした。測定用のサンプルとしては、上記噴霧乾燥後の薄片状チタン酸粉末を純水で希釈し、薄片状チタン酸の濃度が0.0001g/リットル程度となるように調整したものを用いた。
上記のようにして測定した吸収スペクトルにおいて、波長265nmでの吸光度の値(A)と、波長550nmでの吸光度の値(B)とを読み取り、吸光度比(A/B)の値を算出した。
(有機溶剤分散体の製造)
上記製造例1〜7の薄片状チタン酸粉末と、有機溶剤(ロックペイント社製、ラッカーシンナー 品番016−5123)と、各種の直鎖状アミンまたは非直鎖状のアミンとを、下記表2の配合にて混合し、実施例1〜12および比較例1〜5の有機溶剤分散体を製造した。
具体的には、20mlのスクリュー管瓶に1.25gのラッカーシンナーを加え、ここに各種直鎖状アミン(実施例1〜12、比較例1、3)または非直鎖状のアミン(比較例4、5)を加えて溶かし込み、その後に上記製造例1〜7の薄片状チタン酸粉末を0.50グラム加えて実施例1〜12および比較例1、3〜5の有機溶剤分散体を得た。
また、直鎖状アミンも非直鎖状アミンも添加することなく、ラッカーシンナーと製造例2の薄片状チタン酸とを混合することで、比較例2の有機溶剤分散体とした。
Figure 2020023419
(溶剤系塗料の製造)
実施例1〜12および比較例1〜5の有機溶剤分散体に、4.0gのアクリル樹脂(DIC社製、A−141)を添加して、薄片状チタン酸の質量/樹脂の不揮発分の質量(P/B)を0.25とした。これをペイントシェーカーで5分間混合し、塗料を作製した。
(評価用塗膜の作製)
作製した塗料を、PETフィルム(東レ株式会社製 ルミラーT60)上に、8milのドクターブレードを用いて塗布し、60℃で30分間強制乾燥を行い、評価用塗膜を作製した。
(塗膜光沢の評価)
作製した塗膜について、JIS K5600−4−7:1999に準拠して、光沢計(BYK−Gardner製 ヘイズ−グロスメーター)を用いて60°の鏡面光沢度を測定した。
(陰影感の評価)
作製した塗膜の裏面に白黒チャート紙の黒地を当て、多角度測色計(BYK社 BYK−mac i)を用いて光源を−45°の方向から照射し、ハイライト(受光角15°)およびシェード(受光角110°)の明度(L)値を測定した。3回の測定結果からそれぞれの平均のLを求め、ハイライトのL 15°からシェードのL 110°を引いてΔLを算出し、陰影感を評価した。
(塗膜評価1:薄片状チタン酸の吸光度比の影響)
薄片状チタン酸の吸光度比(A/B)と、塗膜の特性との関係性を表3に示す。
Figure 2020023419
表3に示されているように、薄片状チタン酸の吸光度比(A/B)の値が100以下である場合、これを含む有機溶剤分散体を用いて塗膜を作成すると、良好な陰影感(具体的には、本試験系におけるΔLの値が30以上)を得ることができる。また、薄片状チタン酸の吸光度比(A/B)の値が50以下である場合、良好な陰影感(本試験系におけるΔLの値が50以上)が得られるとともに、光沢に優れた(本試験系における60°光沢の値が20以上)塗膜を実現することができる。
(塗膜評価2:アミンの影響について)
有機溶剤分散体に含まれるアミンの分子構造および直鎖状アミンの炭素数と、塗膜の特性との関係性を表4に示す。
Figure 2020023419
表4に示されているように、有機溶剤分散体に含まれるアミンが直鎖状アミン(炭素数6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミン)である場合、これを含む溶剤分散体を用いて塗膜を作成すると、良好な陰影感(具体的には、本試験系におけるΔLの値が50以上)を得ることができる。また、直鎖状アミンの炭素数が18未満である場合、良好な陰影感(本試験系におけるΔLの値が60以上)とともに、光沢に優れた(本試験系における60°光沢の値が50以上)塗膜を実現することができる。
本発明によれば、特定の吸光特性を有する薄片状チタン酸を有機溶剤に分散させることができるから、溶剤系塗料への薄片状チタン酸の適用が可能であり、しかも良好な陰影感を塗膜に付与できる。従って、本発明の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体は、特に溶剤系塗料の原料として好適であり、塗料組成物に配合して用いることで、従来にない独特の意匠感を持つ物品を実用に供することができる。

Claims (7)

  1. 薄片状チタン酸と、有機溶剤と、アミンとを含み、
    前記薄片状チタン酸は、分光光度計で測定した該薄片状チタン酸の水性分散液の吸収スペクトルにおける波長265nmでの吸光度Aと波長550nmでの吸光度Bとの比(A/B)が100以下であり、
    前記アミンは、炭素数が6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミンである、
    薄片状チタン酸の有機溶剤分散体。
  2. 前記薄片状チタン酸の吸光度の比(A/B)が50以下である、請求項1に記載の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体。
  3. 前記アミンの炭化水素基の炭素数が18未満である、請求項1または請求項2に記載の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体。
  4. 請求項1〜請求項3の何れかに記載の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体と、樹脂成分とを含む、塗料組成物。
  5. 請求項4に記載の塗料組成物を被塗装物に塗布した意匠性塗膜。
  6. 層状の結晶構造を有するチタン酸と、水性媒液と、水溶性の塩基性有機化合物とを混合して得られた、分光光度計で測定した薄片状チタン酸の水性分散液の吸収スペクトルにおける波長265nmでの吸光度Aと波長550nmでの吸光度Bとの比(A/B)が100以下である薄片状チタン酸を、炭素数が6以上の直鎖の炭化水素基を有する第1級アミンの存在下で有機溶剤に混合する、薄片状チタン酸の有機溶剤分散体の製造方法。
  7. 前記層状の結晶構造を有するチタン酸と水性媒液とを含むスラリーのpHを6以上10以下に調整した後に、該スラリーと水溶性の塩基性有機化合物とを混合する、請求項6に記載の薄片状チタン酸の有機溶剤分散体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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