本発明は、撮影手段で撮影した画像によって視界を確保する車両に関する。
例えば自動車等の車両において、運転者の負担を軽減して運転を支援する運転支援システムが知られている。
この種の運転支援システムとしては、例えば特許文献1のように、周辺の状況を撮影し、その撮影した画像等を車両のフロントガラスを利用して表示する技術が知られている。
しかしながら、上述の特許文献1の技術は、窓ガラスを表示手段として利用するものであるため、例えば雨や雪が降っている状況では、窓ガラスに付着する水滴や氷等によって表示される情報も不鮮明になってしまうとともに、いわゆる逆光状態の場合にはその日光により表示が確認しにくくなってしまう可能性がある。
したがって、表示手段に表示される画像を運転者がより確認しやすい技術が求められていた。
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、表示手段に表示される画像を運転者が確認しやすい車両を提供することを目的とする。
請求項1に記載された車両は、前面にフロントガラスが設けられていない車体と、前記車体に設置され運転の際における少なくとも前方視界に相当する画像を撮影する撮影手段と、前記車体内における少なくとも前面の一部に設置され前記撮影手段にて撮影しているリアルタイムの画像を表示する表示手段とを備えているものである。
請求項2に記載された車両は、請求項1記載の車両において、撮影手段は、レンズと、このレンズに対向した位置において回転可能に設けられたレンズカバーと、前記レンズカバーが回転している状態にてそのレンズカバーにおける前記レンズとは反対側の面に接触した状態で保持される払拭部を有するワイパー装置と、前記レンズカバーを回転させる回転力付与手段と有するものである。
請求項3に記載された車両は、請求項2記載の車両において、レンズは、レンズカバーに対して偏心して配置されているものである。
請求項4に記載された車両は、請求項2または3記載の車両において、レンズカバーは、車両の走行面に対して垂直に配置されているものである。
請求項5に記載された車両は、請求項1記載の車両において、撮影手段は、レンズと、このレンズの正面に風を吹き付ける送風装置とを有しているものである。
請求項6に記載された車両は、請求項2ないし5いずれか一記載の車両において、撮影手段は、レンズカバーまたはレンズに洗浄液を吹き付けるウォッシャを有するものである。
請求項7に記載された車両は、請求項1ないし6いずれか一記載の車両において、表示手段は、表示する画像を車体外の明るさに応じて調整可能であるものである。
請求項8に記載された車両は、請求項1ないし7いずれか一記載の車両において、車体は、少なくとも天井部から前面にわたって一体に形成されているものである。
本発明によれば、フロントガラスが設けられていない車体において、表示手段が少なくとも前面に設置されているため、表示手段に表示される情報を運転者が確認しやすい。
本発明の一実施の形態に係る車両の構成を示す斜視図である。
同上車両において撮影手段の設置箇所を示す側面図である。
同上車両の撮影手段を概略的に示す斜視図である。
同上車両の撮影手段の変形例を示す断面図である。
以下、本発明の一実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、1は車両としての自動車であり、この自動車1は、走行体2と、この走行体2の上に設けられた車体3とを備えている。
車体3は、ドア4にサイドガラス5が設けられているが、天井部の前端部からボンネットの後端部までの領域である前面にはフロントガラスが設けられていない。すなわち、車体3の前面は、車体3のボディを構成する板状部材によって天井部等と一体に構成されており、前面が無窓化されている。より具体的には、車体3のボディは、天井部から前面にわたって同一の素材で一体に形成され、前面の下端部がボンネットの後端部に接続されており、車体3内からの前方視界は前面によって遮断されている。なお、車体3の前面は、無窓化されていれば、ボディと一体に形成された構成だけでなく、例えばボディとは別体で合成樹脂や強化合成樹脂にて形成してもよい。
このような前面が無窓化された車体3には、前面の上端部に撮影手段6が設けられているとともに、無窓化された前面の内側に表示手段としてのディスプレイ装置7が設けられている。
撮影手段6は、例えばデジタルカメラ等によって構成されたカメラ装置8を有し、自動車1を運転する際に車体3から運転に要する視界(少なくとも前方視界)に相当する画像を撮影する。すなわち、カメラ装置8は、従来の車両における運転者のフロントガラスからの視界に相当する画像を撮影する。
なお、カメラ装置8は、運転者の前方視界に相当する画像を撮影できればよく、デジタルカメラの他に、暗視カメラ、ドライブレコーダ、Light Detection and Ranging(LIDAR)およびミリ波レーダー等を組み合わせて適用してもよい。
また、カメラ装置8は、運転者の前方視界に相当する画像を撮影できるように設置されていればよく、例えば図2に示すように、車体3の前面における上端部だけでなく、前面の略中心位置や、ボンネットの上面における前側部や、ボンネットの前側端部等に設けられていてもよく、1箇所だけでなく複数箇所に設けられていてもよい。
さらに、前方視界に相当する画像だけでなく、車両の後方や側方等の周囲の画像をカメラ装置8が設置されていてもよい。
なお、カメラ装置8が車体の前面の上端部に設けられた場合、および、ボンネット上の前側部に設けられた場合には、カメラ装置8の後方に空気整流コーン9が設けられた構成が好ましい。
このようなカメラ装置8は、図3に示すように、ケース体11内には、ケース体11に対して固定されたカメラ本体のレンズ12と、ケース体11に回動可能に軸支されたレンズカバー13とが互いに対向するように設けられている。
レンズ12は、その直径がレンズカバー13の半径より小さく、正面視でレンズ12の中心とレンズカバー13の中心とがずれるように配置されている。すなわち、レンズ12は、正面視でレンズカバー13を回転可能に軸支する図示しない支持部に重ならないように、レンズカバー13に対して偏心して配置されている。
レンズカバー13は、自動車1の走行面に対して垂直となるように、ケース体11内において回転可能に軸支されており、レンズ12とレンズカバー13とが対向したまま状態でレンズカバー13が回転可能である。
また、ケース体11内には、レンズカバー13を回転させるための回転力付与手段14が設けられている。
回転力付与手段14は、レンズカバー13の外周面に設けられた図示しない歯車形の噛合部に噛合されたギア部15aを有する回転体15と、この回転体15を回転させる図示しないモータ等の駆動手段とを有している。そして、噛合部とギア部15aとが噛合された状態で、駆動手段の駆動力によって回転体15を回転させることで、その回転力がレンズカバー13に付与されてレンズカバー13が回転する。
なお、レンズカバー13を回転させる機構は、レンズカバー13に歯車形の噛合部が設けられ、回転体15に噛合部に噛合可能なギア部15aが設けられた構成には限定されず、回転体15からレンズカバー13へ回転力を伝達できる機構であればよく、例えばゴム圧着によって回転体15からレンズカバー13へ回転力を伝達する構成にしてもよい。
ケース体11には、自動車1の走行に伴うレンズカバー13の外側表面の付着物を除去するためのワイパー装置16が取り付けられている。
ワイパー装置16は、ケース体11に移動可能に取り付けられたアーム16aと、このアーム16aに取り付けられてゴム等にて形成された払拭部としてのワイパーブレード16bと、アーム16aを移動させるための図示しない駆動手段とを有している。
そして、アーム16aは、駆動手段の駆動力によって、ワイパーブレード16bがレンズカバー13におけるレンズ12とは反対側である外側面に接触する位置と、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触しない位置(図3において二点鎖線で示す。)とに移動可能であるとともに、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態で保持可能である。
ワイパーブレード16bは、レンズカバー13の半径より長く構成され、レンズカバー13に接触した状態では、レンズカバー13の周縁部から中心部にわたって配置される。
そして、撮影手段6では、ワイパー装置16の駆動とレンズカバー13の回転とが連動している。具体的には、雨感知センサ17によって降雨や降雪を検知することで、その検知結果に基づいて自動的に、ワイパー装置16の駆動手段が駆動しアーム16aが移動してワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態となり、この接触した状態が保持されるとともに、回転力付与手段14が駆動してレンズカバー13が回転する。
このように、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態で、そのレンズカバー13が回転することで、レンズカバー13に付着した雨や雪等の付着物がワイパーブレード16bによって払拭されて除去される。
また、降雨や降雪が検知されなくなったら、ワイパー装置16の駆動手段が駆動しアーム16aが移動してワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触していない状態になるとともに、レンズカバー13の回転が停止して、払拭動作が終了する。
なお、雨感知センサ17によって雨を感知していない状態であっても、例えば自動車1の走行によって泥や砂や塵等がレンズカバー13に付着した際等には、手動の操作(例えば運転席でのボタン操作等)によって、上記払拭動作の開始と終了とを切替可能である。
さらに、ケース体11にはウォッシャ18が取り付けられており、手動によって、ウォッシャ18から洗浄液がレンズカバー13に噴射されるとともに、その噴射に伴って、数秒間ワイパー装置16が駆動するとともにレンズカバー13が回転する。
ディスプレイ装置7は、例えば4K解像度や8K解像度の有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイや液晶ディスプレイであり、車体3内において、従来のフロントガラスの位置に相当するように前面全体に設置されている。そして、ディスプレイ装置7に表示されるカメラ装置8で撮影しているリアルタイムの画像によって、運転者が運転に要する前方視界を確保している。
また、通常、カメラ装置8がいわゆる逆光状態で画像を撮影した場合には、その画像に日光によって白っぽく視認しにくい箇所が生じるが、そのような状態であっても運転者が前方視界を視認しやすいように、車体3外の明るさに応じて、例えば太陽の光等で画面上の白くなる箇所を感知しその箇所の明度を自動的に調整して、電子的に暗く(黒く)表示する構成にすることが好ましい。なお、ディスプレイ装置7に表示される画像の明度は、必要に応じて手動で調整できる構成にしてもよい。
さらに、ディスプレイ装置7には、前方視界に相当する画像だけでなく、例えば運転を支援するため画像(自動車1の側方画像および後方画像)や、カーナビゲーションシステムの画像や、映画等のエンターテイメント画像や、周辺情報等のように所定の情報や画像を適宜表示できる構成等にしてもよく、画面を分割して複数種類の画像を表示可能な構成にしてもよい。画面を分割可能な構成の場合には、例えば運転席に設置された手動ノブを回動操作することで、全画面に対する各画面の比率を0〜100%に設定できる構成等が好ましい。
また、撮影手段6としてカメラ装置8の他にLIDARやミリ波レーダー等を組み合わせる場合には、ディスプレイ装置7には、カメラ装置8の画像にLIDARやミリ波レーダー等の検知画像を重ね合わせた画像を表示する構成にしてもよい。
さらに、ディスプレイ装置7には、カメラ装置8によるリアルタイムの画像に、例えば車両の周辺情報に関する画像等を組み合わせた拡張現実(AR)画像を表示する構成にしてもよい。
次に、上記一実施の形態の作用および効果を説明する。
上記自動車1の運転中には、運転しながらカメラ装置8によって撮影したリアルタイムの画像が、運転に要する少なくとも前方視界としてディスプレイ装置7に表示される。すなわち、運転者はディスプレイ装置7に表示されるリアルタイムの画像を見ながら運転する。
また、雨が降ってきて、雨感知センサ17によって降雨を感知すると、自動的に、ワイパー装置16が起動してワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態が保持されるとともに、この状態で回転体15が回転してレンズカバー13が回転する。
このようにワイパーブレード16bが接触した状態のままレンズカバー13が回転することにより、レンズカバー13の表面に付着した雨がワイパーブレード16bによって払拭される。
また、雨感知センサ17によって降雨が感知されなくなると、自動的に、レンズカバー13の回転が停止されるとともに、ワイパー装置16におけるワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触しない状態となり、払拭動作が終了する。
また、降雨が感知されていない場合であっても、上記払拭動作の開始と終了とを手動(例えばボタン操作等)によって切替可能である。
上記自動車1によれば、車体3にフロントガラスが設けられておらず、車体3内において、視界的に遮断された状態の前面にディスプレイ装置7が設置されているため、例えば従来の自動車等の車両のように、フロントガラスに付着した雨等の水分や、フロントガラスを介して入射する光によってディスプレイ装置7の視認性が阻害されない。そのため、ディスプレイ装置7に表示される画像を運転者が確認しやすい。
また、フロントガラスが設けられていないので、従来フロントガラスが設けられていた車体3の前面を、ボディと一体化したり、合成樹脂や強化合成樹脂で形成したりすることで車体3の強度を向上できるとともに、前面を構成する素材を調整することにより所定の機械的特性を調整しやすい。
さらに、従来のフロントガラス周りの設備であるワイパーやバイザ等を設置する必要がなく、これらの設備のメンテナンスが不要になるとともに、構成を簡略化できる。
また、前面を無窓化して、ボディにおける天井部と前面とを一体に形成することで、製造工程を簡略化できる。
撮影手段6は、例えば降雨の際に、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触して保持された状態でレンズカバー13自体が回転するため、レンズカバー13の付着物が払拭して除去でき、レンズカバー13におけるレンズ12の画角に対応する領域をクリアに保ってカメラ装置8によって鮮明な画像を撮影できる。
また、撮影手段6は、レンズ12がレンズカバー13に対して偏心して配置されているため、画角が遮られることなく、鮮明に画像を撮影できる。
ディスプレイ装置7は、表示する画像の明るさ等を、日光等の影響による車体3外の明るさに応じて調整可能であるため、撮影手段6からの画像が例えば逆光状態で通常視認しにくい状態であっても、その画像の視認性を向上できる。
また、ディスプレイ装置7を側面や後面に設けて、自動車1の後方や側方等の周囲の視界画像を表示する構成や、ディスプレイ装置7に表示する画像を任意にエンターテイメント画像や周辺情報に関連する画像に切替可能な構成や、任意に画面を分割して複数の画像を表示可能な構成にすることが可能であるため、例えば自動運転の自動車への適用にも好適である。
なお、上記一実施の形態では、自動車1を示して本発明を説明したが、本発明は、自動車1に限らず、作業車両や緊急車両や鉄道車両等の車両にも適用できる。
車体3は、前面のみが無窓化された構成としたが、このような構成には限定されず、前面の他に、側面(ドア)のサイドガラスや後面のリアガラスを無窓化してディスプレイ装置7を設置し、各方向への視野に相当する画像をそれぞれ表示する構成等にしてもよい。特に、後面を無窓化した構成では、車種によってはトランクの前端部から天井部およびボンネットの後端部までにわたってボディを一体に形成することで、車体3の強度を向上できるとともに、ボディの製造工程をより簡略化できる。
ディスプレイ装置7は、車体3内における少なくとも前面の一部に設けられていればよく、例えば車体3にサイドガラス5およびリアガラスを設置せずに、車体3の側面および後面にもディスプレイ装置7を設置した構成にしてもよい。
また、図4に示す変形例のように、撮影手段21は送風装置23を有する構成にしてもよい。
すなわち、撮影手段21は、カメラ本体のレンズ22と、このレンズ22の表面(正面)に風を吹き付けるいわゆる羽無しの扇風機である送風装置23とを有している。
送風装置23は、レンズ22を囲むようにカメラ本体に取り付けられた内周面に図示しないスリット状の送風口を有する円筒状のカバー体24と、例えば車体3内部に取り付けられて送風口へ風を供給する風供給手段25と、カバー体24の外側面に取り付けられた雨感知センサ17とを有している。
風供給手段25は、一端部がカバー体24に接続されて送風口に連通する流動路26と、この流動路26の他端部に位置する空気吸込口27と、流動路26内に設けられたファン28と、ファン28を回転駆動させる図示しないモータと、流動路26内においてファン28より送風口側に設けられた加熱部29とを有している。
このような送風装置23では、雨感知センサ17によって降雨を感知すると、モータの駆動によりファン28が回転して空気吸込口27から空気を吸い込み、その取り込んだ空気を加熱部29で加熱して送風口へ向けて供給する。また、送風口に供給された空気は送風口を通過してレンズ22の表面に吹き付けられる。そして、レンズ22の表面に風が吹き付けられることで、その風力によって例えば雨や雪や泥や塵等のレンズ22の付着物を除去する。
なお、送風装置23は、ワイパー装置16と同様に、降雨を感知していない状態でも手動により吹き付け動作の開始と終了とを切替可能であるとともに、手動でウォッシャ18を起動できる。
1 車両としての自動車
3 車体
6 撮影手段
7 表示手段としてのディスプレイ装置
12 レンズ
13 レンズカバー
14 回転力付与手段
16 ワイパー装置
16b 払拭部としてのワイパーブレード
18 ウォッシャ
21 撮影手段
22 レンズ
23 送風装置
本発明は、撮影手段で撮影した画像によって視界を確保する車両に関する。
例えば自動車等の車両において、運転者の負担を軽減して運転を支援する運転支援システムが知られている。
この種の運転支援システムとしては、例えば特許文献1のように、周辺の状況を撮影し、その撮影した画像等を車両のフロントガラスを利用して表示する技術が知られている。
しかしながら、上述の特許文献1の技術は、窓ガラスを表示手段として利用するものであるため、例えば雨や雪が降っている状況では、窓ガラスに付着する水滴や氷等によって表示される情報も不鮮明になってしまうとともに、いわゆる逆光状態の場合にはその日光により表示が確認しにくくなってしまう可能性がある。
したがって、表示手段に表示される画像を運転者がより確認しやすい技術が求められていた。
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、表示手段に表示される画像を運転者が確認しやすい車両を提供することを目的とする。
請求項1に記載された車両は、前面にフロントガラスが設けられていない車体と、前記車体に設置され運転の際における少なくとも前方視界に相当する画像を撮影する撮影手段と、前記車体内における少なくとも前面の一部に設置され前記撮影手段にて撮影しているリアルタイムの画像を表示する表示手段とを備え、前記車体は、少なくとも天井部から前面にわたって一体に形成されているものである。
請求項2に記載された車両は、前面にフロントガラスが設けられていない車体と、前記車体に設置され運転の際における少なくとも前方視界に相当する画像を撮影する撮影手段と、前記車体内における少なくとも前面の一部に設置され前記撮影手段にて撮影しているリアルタイムの画像を表示する表示手段とを備え、前記撮影手段は、レンズと、このレンズに対向した位置において回転可能に設けられたレンズカバーと、前記レンズカバーが回転している状態にてそのレンズカバーにおける前記レンズとは反対側の面に接触した状態で保持される払拭部を有するワイパー装置と、前記レンズカバーを回転させる回転力付与手段と有するものである。
請求項3に記載された車両は、請求項2記載の車両において、レンズは、レンズカバーに対して偏心して配置されているものである。
請求項4に記載された車両は、請求項2または3記載の車両において、レンズカバーは、車両が走行する路面に対して垂直に配置されているものである。
請求項5に記載された車両は、前面にフロントガラスが設けられていない車体と、前記車体に設置され運転の際における少なくとも前方視界に相当する画像を撮影する撮影手段と、前記車体内における少なくとも前面の一部に設置され前記撮影手段にて撮影しているリアルタイムの画像を表示する表示手段とを備え、前記撮影手段は、レンズと、このレンズの正面に風を吹き付ける送風装置とを有しているものである。
請求項6に記載された車両は、請求項2ないし5いずれか一記載の車両において、撮影手段は、レンズカバーまたはレンズに洗浄液を吹き付けるウォッシャを有するものである。
請求項7に記載された車両は、請求項1ないし6いずれか一記載の車両において、表示手段は、表示する画像を車体外の明るさに応じて調整可能であるものである。
本発明によれば、フロントガラスが設けられていない車体において、表示手段が少なくとも前面に設置されているため、表示手段に表示される情報を運転者が確認しやすい。
本発明の一実施の形態に係る車両の構成を示す斜視図である。
同上車両において撮影手段の設置箇所を示す側面図である。
同上車両の撮影手段を概略的に示す斜視図である。
同上車両の撮影手段の変形例を示す断面図である。
以下、本発明の一実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、1は車両としての自動車であり、この自動車1は、走行体2と、この走行体2の上に設けられた車体3とを備えている。
車体3は、ドア4にサイドガラス5が設けられているが、天井部の前端部からボンネットの後端部までの領域である前面にはフロントガラスが設けられていない。すなわち、車体3の前面は、車体3のボディを構成する板状部材によって天井部等と一体に構成されており、前面が無窓化されている。より具体的には、車体3のボディは、天井部から前面にわたって同一の素材で一体に形成され、前面の下端部がボンネットの後端部に接続されており、車体3内からの前方視界は前面によって遮断されている。なお、車体3の前面は、無窓化されていれば、ボディと一体に形成された構成だけでなく、例えばボディとは別体で合成樹脂や強化合成樹脂にて形成してもよい。
このような前面が無窓化された車体3には、前面の上端部に撮影手段6が設けられているとともに、無窓化された前面の内側に表示手段としてのディスプレイ装置7が設けられている。
撮影手段6は、例えばデジタルカメラ等によって構成されたカメラ装置8を有し、自動車1を運転する際に車体3から運転に要する視界(少なくとも前方視界)に相当する画像を撮影する。すなわち、カメラ装置8は、従来の車両における運転者のフロントガラスからの視界に相当する画像を撮影する。
なお、カメラ装置8は、運転者の前方視界に相当する画像を撮影できればよく、デジタルカメラの他に、暗視カメラ、ドライブレコーダ、Light Detection and Ranging(LIDAR)およびミリ波レーダー等を組み合わせて適用してもよい。
また、カメラ装置8は、運転者の前方視界に相当する画像を撮影できるように設置されていればよく、例えば図2に示すように、車体3の前面における上端部だけでなく、前面の略中心位置や、ボンネットの上面における前側部や、ボンネットの前側端部等に設けられていてもよく、1箇所だけでなく複数箇所に設けられていてもよい。
さらに、前方視界に相当する画像だけでなく、車両の後方や側方等の周囲の画像をカメラ装置8が設置されていてもよい。
なお、カメラ装置8が車体の前面の上端部に設けられた場合、および、ボンネット上の前側部に設けられた場合には、カメラ装置8の後方に空気整流コーン9が設けられた構成が好ましい。
このようなカメラ装置8は、図3に示すように、ケース体11内には、ケース体11に対して固定されたカメラ本体のレンズ12と、ケース体11に回動可能に軸支されたレンズカバー13とが互いに対向するように設けられている。
レンズ12は、その直径がレンズカバー13の半径より小さく、正面視でレンズ12の中心とレンズカバー13の中心とがずれるように配置されている。すなわち、レンズ12は、正面視でレンズカバー13を回転可能に軸支する図示しない支持部に重ならないように、レンズカバー13に対して偏心して配置されている。
レンズカバー13は、自動車1の走行面に対して垂直となるように、ケース体11内において回転可能に軸支されており、レンズ12とレンズカバー13とが対向したまま状態でレンズカバー13が回転可能である。
また、ケース体11内には、レンズカバー13を回転させるための回転力付与手段14が設けられている。
回転力付与手段14は、レンズカバー13の外周面に設けられた図示しない歯車形の噛合部に噛合されたギア部15aを有する回転体15と、この回転体15を回転させる図示しないモータ等の駆動手段とを有している。そして、噛合部とギア部15aとが噛合された状態で、駆動手段の駆動力によって回転体15を回転させることで、その回転力がレンズカバー13に付与されてレンズカバー13が回転する。
なお、レンズカバー13を回転させる機構は、レンズカバー13に歯車形の噛合部が設けられ、回転体15に噛合部に噛合可能なギア部15aが設けられた構成には限定されず、回転体15からレンズカバー13へ回転力を伝達できる機構であればよく、例えばゴム圧着によって回転体15からレンズカバー13へ回転力を伝達する構成にしてもよい。
ケース体11には、自動車1の走行に伴うレンズカバー13の外側表面の付着物を除去するためのワイパー装置16が取り付けられている。
ワイパー装置16は、ケース体11に移動可能に取り付けられたアーム16aと、このアーム16aに取り付けられてゴム等にて形成された払拭部としてのワイパーブレード16bと、アーム16aを移動させるための図示しない駆動手段とを有している。
そして、アーム16aは、駆動手段の駆動力によって、ワイパーブレード16bがレンズカバー13におけるレンズ12とは反対側である外側面に接触する位置と、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触しない位置(図3において二点鎖線で示す。)とに移動可能であるとともに、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態で保持可能である。
ワイパーブレード16bは、レンズカバー13の半径より長く構成され、レンズカバー13に接触した状態では、レンズカバー13の周縁部から中心部にわたって配置される。
そして、撮影手段6では、ワイパー装置16の駆動とレンズカバー13の回転とが連動している。具体的には、雨感知センサ17によって降雨や降雪を検知することで、その検知結果に基づいて自動的に、ワイパー装置16の駆動手段が駆動しアーム16aが移動してワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態となり、この接触した状態が保持されるとともに、回転力付与手段14が駆動してレンズカバー13が回転する。
このように、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態で、そのレンズカバー13が回転することで、レンズカバー13に付着した雨や雪等の付着物がワイパーブレード16bによって払拭されて除去される。
また、降雨や降雪が検知されなくなったら、ワイパー装置16の駆動手段が駆動しアーム16aが移動してワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触していない状態になるとともに、レンズカバー13の回転が停止して、払拭動作が終了する。
なお、雨感知センサ17によって雨を感知していない状態であっても、例えば自動車1の走行によって泥や砂や塵等がレンズカバー13に付着した際等には、手動の操作(例えば運転席でのボタン操作等)によって、上記払拭動作の開始と終了とを切替可能である。
さらに、ケース体11にはウォッシャ18が取り付けられており、手動によって、ウォッシャ18から洗浄液がレンズカバー13に噴射されるとともに、その噴射に伴って、数秒間ワイパー装置16が駆動するとともにレンズカバー13が回転する。
ディスプレイ装置7は、例えば4K解像度や8K解像度の有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイや液晶ディスプレイであり、車体3内において、従来のフロントガラスの位置に相当するように前面全体に設置されている。そして、ディスプレイ装置7に表示されるカメラ装置8で撮影しているリアルタイムの画像によって、運転者が運転に要する前方視界を確保している。
また、通常、カメラ装置8がいわゆる逆光状態で画像を撮影した場合には、その画像に日光によって白っぽく視認しにくい箇所が生じるが、そのような状態であっても運転者が前方視界を視認しやすいように、車体3外の明るさに応じて、例えば太陽の光等で画面上の白くなる箇所を感知しその箇所の明度を自動的に調整して、電子的に暗く(黒く)表示する構成にすることが好ましい。なお、ディスプレイ装置7に表示される画像の明度は、必要に応じて手動で調整できる構成にしてもよい。
さらに、ディスプレイ装置7には、前方視界に相当する画像だけでなく、例えば運転を支援するため画像(自動車1の側方画像および後方画像)や、カーナビゲーションシステムの画像や、映画等のエンターテイメント画像や、周辺情報等のように所定の情報や画像を適宜表示できる構成等にしてもよく、画面を分割して複数種類の画像を表示可能な構成にしてもよい。画面を分割可能な構成の場合には、例えば運転席に設置された手動ノブを回動操作することで、全画面に対する各画面の比率を0〜100%に設定できる構成等が好ましい。
また、撮影手段6としてカメラ装置8の他にLIDARやミリ波レーダー等を組み合わせる場合には、ディスプレイ装置7には、カメラ装置8の画像にLIDARやミリ波レーダー等の検知画像を重ね合わせた画像を表示する構成にしてもよい。
さらに、ディスプレイ装置7には、カメラ装置8によるリアルタイムの画像に、例えば車両の周辺情報に関する画像等を組み合わせた拡張現実(AR)画像を表示する構成にしてもよい。
次に、上記一実施の形態の作用および効果を説明する。
上記自動車1の運転中には、運転しながらカメラ装置8によって撮影したリアルタイムの画像が、運転に要する少なくとも前方視界としてディスプレイ装置7に表示される。すなわち、運転者はディスプレイ装置7に表示されるリアルタイムの画像を見ながら運転する。
また、雨が降ってきて、雨感知センサ17によって降雨を感知すると、自動的に、ワイパー装置16が起動してワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態が保持されるとともに、この状態で回転体15が回転してレンズカバー13が回転する。
このようにワイパーブレード16bが接触した状態のままレンズカバー13が回転することにより、レンズカバー13の表面に付着した雨がワイパーブレード16bによって払拭される。
また、雨感知センサ17によって降雨が感知されなくなると、自動的に、レンズカバー13の回転が停止されるとともに、ワイパー装置16におけるワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触しない状態となり、払拭動作が終了する。
また、降雨が感知されていない場合であっても、上記払拭動作の開始と終了とを手動(例えばボタン操作等)によって切替可能である。
上記自動車1によれば、車体3にフロントガラスが設けられておらず、車体3内において、視界的に遮断された状態の前面にディスプレイ装置7が設置されているため、例えば従来の自動車等の車両のように、フロントガラスに付着した雨等の水分や、フロントガラスを介して入射する光によってディスプレイ装置7の視認性が阻害されない。そのため、ディスプレイ装置7に表示される画像を運転者が確認しやすい。
また、フロントガラスが設けられていないので、従来フロントガラスが設けられていた車体3の前面を、ボディと一体化したり、合成樹脂や強化合成樹脂で形成したりすることで車体3の強度を向上できるとともに、前面を構成する素材を調整することにより所定の機械的特性を調整しやすい。
さらに、従来のフロントガラス周りの設備であるワイパーやバイザ等を設置する必要がなく、これらの設備のメンテナンスが不要になるとともに、構成を簡略化できる。
また、前面を無窓化して、ボディにおける天井部と前面とを一体に形成することで、製造工程を簡略化できる。
撮影手段6は、例えば降雨の際に、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触して保持された状態でレンズカバー13自体が回転するため、レンズカバー13の付着物が払拭して除去でき、レンズカバー13におけるレンズ12の画角に対応する領域をクリアに保ってカメラ装置8によって鮮明な画像を撮影できる。
また、撮影手段6は、レンズ12がレンズカバー13に対して偏心して配置されているため、画角が遮られることなく、鮮明に画像を撮影できる。
ディスプレイ装置7は、表示する画像の明るさ等を、日光等の影響による車体3外の明るさに応じて調整可能であるため、撮影手段6からの画像が例えば逆光状態で通常視認しにくい状態であっても、その画像の視認性を向上できる。
また、ディスプレイ装置7を側面や後面に設けて、自動車1の後方や側方等の周囲の視界画像を表示する構成や、ディスプレイ装置7に表示する画像を任意にエンターテイメント画像や周辺情報に関連する画像に切替可能な構成や、任意に画面を分割して複数の画像を表示可能な構成にすることが可能であるため、例えば自動運転の自動車への適用にも好適である。
なお、上記一実施の形態では、自動車1を示して本発明を説明したが、本発明は、自動車1に限らず、作業車両や緊急車両や鉄道車両等の車両にも適用できる。
車体3は、前面のみが無窓化された構成としたが、このような構成には限定されず、前面の他に、側面(ドア)のサイドガラスや後面のリアガラスを無窓化してディスプレイ装置7を設置し、各方向への視野に相当する画像をそれぞれ表示する構成等にしてもよい。特に、後面を無窓化した構成では、車種によってはトランクの前端部から天井部およびボンネットの後端部までにわたってボディを一体に形成することで、車体3の強度を向上できるとともに、ボディの製造工程をより簡略化できる。
ディスプレイ装置7は、車体3内における少なくとも前面の一部に設けられていればよく、例えば車体3にサイドガラス5およびリアガラスを設置せずに、車体3の側面および後面にもディスプレイ装置7を設置した構成にしてもよい。
また、図4に示す変形例のように、撮影手段21は送風装置23を有する構成にしてもよい。
すなわち、撮影手段21は、カメラ本体のレンズ22と、このレンズ22の表面(正面)に風を吹き付けるいわゆる羽無しの扇風機である送風装置23とを有している。
送風装置23は、レンズ22を囲むようにカメラ本体に取り付けられた内周面に図示しないスリット状の送風口を有する円筒状のカバー体24と、例えば車体3内部に取り付けられて送風口へ風を供給する風供給手段25と、カバー体24の外側面に取り付けられた雨感知センサ17とを有している。
風供給手段25は、一端部がカバー体24に接続されて送風口に連通する流動路26と、この流動路26の他端部に位置する空気吸込口27と、流動路26内に設けられたファン28と、ファン28を回転駆動させる図示しないモータと、流動路26内においてファン28より送風口側に設けられた加熱部29とを有している。
このような送風装置23では、雨感知センサ17によって降雨を感知すると、モータの駆動によりファン28が回転して空気吸込口27から空気を吸い込み、その取り込んだ空気を加熱部29で加熱して送風口へ向けて供給する。また、送風口に供給された空気は送風口を通過してレンズ22の表面に吹き付けられる。そして、レンズ22の表面に風が吹き付けられることで、その風力によって例えば雨や雪や泥や塵等のレンズ22の付着物を除去する。
なお、送風装置23は、ワイパー装置16と同様に、降雨を感知していない状態でも手動により吹き付け動作の開始と終了とを切替可能であるとともに、手動でウォッシャ18を起動できる。
1 車両としての自動車
3 車体
6 撮影手段
7 表示手段としてのディスプレイ装置
12 レンズ
13 レンズカバー
14 回転力付与手段
16 ワイパー装置
16b 払拭部としてのワイパーブレード
18 ウォッシャ
21 撮影手段
22 レンズ
23 送風装置
本発明は、撮影手段で撮影した画像によって視界を確保する車両に関する。
例えば自動車等の車両において、運転者の負担を軽減して運転を支援する運転支援システムが知られている。
この種の運転支援システムとしては、例えば特許文献1のように、周辺の状況を撮影し、その撮影した画像等を車両のフロントガラスを利用して表示する技術が知られている。
しかしながら、上述の特許文献1の技術は、窓ガラスを表示手段として利用するものであるため、例えば雨や雪が降っている状況では、窓ガラスに付着する水滴や氷等によって表示される情報も不鮮明になってしまうとともに、いわゆる逆光状態の場合にはその日光により表示が確認しにくくなってしまう可能性がある。
したがって、表示手段に表示される画像を運転者がより確認しやすい技術が求められていた。
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、表示手段に表示される画像を運転者が確認しやすい車両を提供することを目的とする。
請求項1に記載された車両は、前窓としての開口部が不透明の部材で塞がれるか、またはその開口部に対応する部分が天井部と一体化されることで少なくとも前方が無窓化された車体と、前記車体に設置され運転の際における少なくとも前方視界に相当する画像を撮影する撮影手段と、前記開口部に対応する部分の車内側のうちの少なくとも一部に設置され前記撮影手段にて撮影しているリアルタイムの画像を表示する表示手段とを備え、前記撮影手段は、レンズと、このレンズに対向した位置において回転可能に設けられたレンズカバーと、前記レンズカバーが回転している状態にてそのレンズカバーにおける前記レンズとは反対側の面に接触した状態で保持される払拭部を有するワイパー装置と、前記レンズカバーを回転させる回転力付与手段とを有するものである。
請求項2に記載された車両は、請求項1記載の車両において、レンズは、レンズカバーに対して偏心して配置されているものである。
請求項3に記載された車両は、請求項1または2記載の車両において、レンズカバーは、車両が走行する路面に対して垂直に配置されているものである。
請求項4に記載された車両は、前窓としての開口部が不透明の部材で塞がれるか、またはその開口部に対応する部分が天井部と一体化されることで少なくとも前方が無窓化された車体と、前記車体に設置され運転の際における少なくとも前方視界に相当する画像を撮影する撮影手段と、前記開口部に対応する部分の車内側のうちの少なくとも一部に設置され前記撮影手段にて撮影しているリアルタイムの画像を表示する表示手段とを備え、前記撮影手段は、レンズと、このレンズの正面に風を吹き付ける送風装置とを有しているものである。
請求項5に記載された車両は、請求項1ないし4いずれか一記載の車両において、撮影手段は、レンズカバーまたはレンズに洗浄液を吹き付けるウォッシャを有するものである。
請求項6に記載された車両は、請求項1ないし5いずれか一記載の車両において、表示手段は、表示する画像を車体外の明るさに応じて調整可能であるものである。
本発明によれば、少なくとも前方が無窓化された車体において、無窓化された箇所の少なくとも一部に表示手段が設置されているため、表示手段に表示される情報を運転者が確認しやすい。
本発明の一実施の形態に係る車両の構成を示す斜視図である。
同上車両において撮影手段の設置箇所を示す側面図である。
同上車両の撮影手段を概略的に示す斜視図である。
同上車両の撮影手段の変形例を示す断面図である。
以下、本発明の一実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、1は車両としての自動車であり、この自動車1は、走行体2と、この走行体2の上に設けられた車体3とを備えている。
車体3は、ドア4にサイドガラス5が設けられているが、天井部の前端部からボンネットの後端部までの領域である前面にはフロントガラスが設けられていない。すなわち、車体3の前面は、車体3のボディを構成する板状部材によって天井部等と一体に構成されており、前面が無窓化されている。より具体的には、車体3のボディは、天井部から前面にわたって同一の素材で一体に形成され、前面の下端部がボンネットの後端部に接続されており、車体3内からの前方視界は前面によって遮断されている。なお、車体3の前面は、無窓化されていれば、ボディと一体に形成された構成だけでなく、例えばボディとは別体で合成樹脂や強化合成樹脂にて形成してもよい。
このような前面が無窓化された車体3には、前面の上端部に撮影手段6が設けられているとともに、無窓化された前面の内側に表示手段としてのディスプレイ装置7が設けられている。
撮影手段6は、例えばデジタルカメラ等によって構成されたカメラ装置8を有し、自動車1を運転する際に車体3から運転に要する視界(少なくとも前方視界)に相当する画像を撮影する。すなわち、カメラ装置8は、従来の車両における運転者のフロントガラスからの視界に相当する画像を撮影する。
なお、カメラ装置8は、運転者の前方視界に相当する画像を撮影できればよく、デジタルカメラの他に、暗視カメラ、ドライブレコーダ、Light Detection and Ranging(LIDAR)およびミリ波レーダー等を組み合わせて適用してもよい。
また、カメラ装置8は、運転者の前方視界に相当する画像を撮影できるように設置されていればよく、例えば図2に示すように、車体3の前面における上端部だけでなく、前面の略中心位置や、ボンネットの上面における前側部や、ボンネットの前側端部等に設けられていてもよく、1箇所だけでなく複数箇所に設けられていてもよい。
さらに、前方視界に相当する画像だけでなく、車両の後方や側方等の周囲の画像をカメラ装置8が設置されていてもよい。
なお、カメラ装置8が車体の前面の上端部に設けられた場合、および、ボンネット上の前側部に設けられた場合には、カメラ装置8の後方に空気整流コーン9が設けられた構成が好ましい。
このようなカメラ装置8は、図3に示すように、ケース体11内には、ケース体11に対して固定されたカメラ本体のレンズ12と、ケース体11に回動可能に軸支されたレンズカバー13とが互いに対向するように設けられている。
レンズ12は、その直径がレンズカバー13の半径より小さく、正面視でレンズ12の中心とレンズカバー13の中心とがずれるように配置されている。すなわち、レンズ12は、正面視でレンズカバー13を回転可能に軸支する図示しない支持部に重ならないように、レンズカバー13に対して偏心して配置されている。
レンズカバー13は、自動車1の走行面に対して垂直となるように、ケース体11内において回転可能に軸支されており、レンズ12とレンズカバー13とが対向したまま状態でレンズカバー13が回転可能である。
また、ケース体11内には、レンズカバー13を回転させるための回転力付与手段14が設けられている。
回転力付与手段14は、レンズカバー13の外周面に設けられた図示しない歯車形の噛合部に噛合されたギア部15aを有する回転体15と、この回転体15を回転させる図示しないモータ等の駆動手段とを有している。そして、噛合部とギア部15aとが噛合された状態で、駆動手段の駆動力によって回転体15を回転させることで、その回転力がレンズカバー13に付与されてレンズカバー13が回転する。
なお、レンズカバー13を回転させる機構は、レンズカバー13に歯車形の噛合部が設けられ、回転体15に噛合部に噛合可能なギア部15aが設けられた構成には限定されず、回転体15からレンズカバー13へ回転力を伝達できる機構であればよく、例えばゴム圧着によって回転体15からレンズカバー13へ回転力を伝達する構成にしてもよい。
ケース体11には、自動車1の走行に伴うレンズカバー13の外側表面の付着物を除去するためのワイパー装置16が取り付けられている。
ワイパー装置16は、ケース体11に移動可能に取り付けられたアーム16aと、このアーム16aに取り付けられてゴム等にて形成された払拭部としてのワイパーブレード16bと、アーム16aを移動させるための図示しない駆動手段とを有している。
そして、アーム16aは、駆動手段の駆動力によって、ワイパーブレード16bがレンズカバー13におけるレンズ12とは反対側である外側面に接触する位置と、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触しない位置(図3において二点鎖線で示す。)とに移動可能であるとともに、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態で保持可能である。
ワイパーブレード16bは、レンズカバー13の半径より長く構成され、レンズカバー13に接触した状態では、レンズカバー13の周縁部から中心部にわたって配置される。
そして、撮影手段6では、ワイパー装置16の駆動とレンズカバー13の回転とが連動している。具体的には、雨感知センサ17によって降雨や降雪を検知することで、その検知結果に基づいて自動的に、ワイパー装置16の駆動手段が駆動しアーム16aが移動してワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態となり、この接触した状態が保持されるとともに、回転力付与手段14が駆動してレンズカバー13が回転する。
このように、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態で、そのレンズカバー13が回転することで、レンズカバー13に付着した雨や雪等の付着物がワイパーブレード16bによって払拭されて除去される。
また、降雨や降雪が検知されなくなったら、ワイパー装置16の駆動手段が駆動しアーム16aが移動してワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触していない状態になるとともに、レンズカバー13の回転が停止して、払拭動作が終了する。
なお、雨感知センサ17によって雨を感知していない状態であっても、例えば自動車1の走行によって泥や砂や塵等がレンズカバー13に付着した際等には、手動の操作(例えば運転席でのボタン操作等)によって、上記払拭動作の開始と終了とを切替可能である。
さらに、ケース体11にはウォッシャ18が取り付けられており、手動によって、ウォッシャ18から洗浄液がレンズカバー13に噴射されるとともに、その噴射に伴って、数秒間ワイパー装置16が駆動するとともにレンズカバー13が回転する。
ディスプレイ装置7は、例えば4K解像度や8K解像度の有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイや液晶ディスプレイであり、車体3内において、従来のフロントガラスの位置に相当するように前面全体に設置されている。そして、ディスプレイ装置7に表示されるカメラ装置8で撮影しているリアルタイムの画像によって、運転者が運転に要する前方視界を確保している。
また、通常、カメラ装置8がいわゆる逆光状態で画像を撮影した場合には、その画像に日光によって白っぽく視認しにくい箇所が生じるが、そのような状態であっても運転者が前方視界を視認しやすいように、車体3外の明るさに応じて、例えば太陽の光等で画面上の白くなる箇所を感知しその箇所の明度を自動的に調整して、電子的に暗く(黒く)表示する構成にすることが好ましい。なお、ディスプレイ装置7に表示される画像の明度は、必要に応じて手動で調整できる構成にしてもよい。
さらに、ディスプレイ装置7には、前方視界に相当する画像だけでなく、例えば運転を支援するため画像(自動車1の側方画像および後方画像)や、カーナビゲーションシステムの画像や、映画等のエンターテイメント画像や、周辺情報等のように所定の情報や画像を適宜表示できる構成等にしてもよく、画面を分割して複数種類の画像を表示可能な構成にしてもよい。画面を分割可能な構成の場合には、例えば運転席に設置された手動ノブを回動操作することで、全画面に対する各画面の比率を0〜100%に設定できる構成等が好ましい。
また、撮影手段6としてカメラ装置8の他にLIDARやミリ波レーダー等を組み合わせる場合には、ディスプレイ装置7には、カメラ装置8の画像にLIDARやミリ波レーダー等の検知画像を重ね合わせた画像を表示する構成にしてもよい。
さらに、ディスプレイ装置7には、カメラ装置8によるリアルタイムの画像に、例えば車両の周辺情報に関する画像等を組み合わせた拡張現実(AR)画像を表示する構成にしてもよい。
次に、上記一実施の形態の作用および効果を説明する。
上記自動車1の運転中には、運転しながらカメラ装置8によって撮影したリアルタイムの画像が、運転に要する少なくとも前方視界としてディスプレイ装置7に表示される。すなわち、運転者はディスプレイ装置7に表示されるリアルタイムの画像を見ながら運転する。
また、雨が降ってきて、雨感知センサ17によって降雨を感知すると、自動的に、ワイパー装置16が起動してワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触した状態が保持されるとともに、この状態で回転体15が回転してレンズカバー13が回転する。
このようにワイパーブレード16bが接触した状態のままレンズカバー13が回転することにより、レンズカバー13の表面に付着した雨がワイパーブレード16bによって払拭される。
また、雨感知センサ17によって降雨が感知されなくなると、自動的に、レンズカバー13の回転が停止されるとともに、ワイパー装置16におけるワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触しない状態となり、払拭動作が終了する。
また、降雨が感知されていない場合であっても、上記払拭動作の開始と終了とを手動(例えばボタン操作等)によって切替可能である。
上記自動車1によれば、車体3にフロントガラスが設けられておらず、車体3内において、視界的に遮断された状態の前面にディスプレイ装置7が設置されているため、例えば従来の自動車等の車両のように、フロントガラスに付着した雨等の水分や、フロントガラスを介して入射する光によってディスプレイ装置7の視認性が阻害されない。そのため、ディスプレイ装置7に表示される画像を運転者が確認しやすい。
また、フロントガラスが設けられていないので、従来フロントガラスが設けられていた車体3の前面を、ボディと一体化したり、合成樹脂や強化合成樹脂で形成したりすることで車体3の強度を向上できるとともに、前面を構成する素材を調整することにより所定の機械的特性を調整しやすい。
さらに、従来のフロントガラス周りの設備であるワイパーやバイザ等を設置する必要がなく、これらの設備のメンテナンスが不要になるとともに、構成を簡略化できる。
また、前面を無窓化して、ボディにおける天井部と前面とを一体に形成することで、製造工程を簡略化できる。
撮影手段6は、例えば降雨の際に、ワイパーブレード16bがレンズカバー13に接触して保持された状態でレンズカバー13自体が回転するため、レンズカバー13の付着物が払拭して除去でき、レンズカバー13におけるレンズ12の画角に対応する領域をクリアに保ってカメラ装置8によって鮮明な画像を撮影できる。
また、撮影手段6は、レンズ12がレンズカバー13に対して偏心して配置されているため、画角が遮られることなく、鮮明に画像を撮影できる。
ディスプレイ装置7は、表示する画像の明るさ等を、日光等の影響による車体3外の明るさに応じて調整可能であるため、撮影手段6からの画像が例えば逆光状態で通常視認しにくい状態であっても、その画像の視認性を向上できる。
また、ディスプレイ装置7を側面や後面に設けて、自動車1の後方や側方等の周囲の視界画像を表示する構成や、ディスプレイ装置7に表示する画像を任意にエンターテイメント画像や周辺情報に関連する画像に切替可能な構成や、任意に画面を分割して複数の画像を表示可能な構成にすることが可能であるため、例えば自動運転の自動車への適用にも好適である。
なお、上記一実施の形態では、自動車1を示して本発明を説明したが、本発明は、自動車1に限らず、作業車両や緊急車両や鉄道車両等の車両にも適用できる。
車体3は、前面のみが無窓化された構成としたが、このような構成には限定されず、前面の他に、側面(ドア)のサイドガラスや後面のリアガラスを無窓化してディスプレイ装置7を設置し、各方向への視野に相当する画像をそれぞれ表示する構成等にしてもよい。特に、後面を無窓化した構成では、車種によってはトランクの前端部から天井部およびボンネットの後端部までにわたってボディを一体に形成することで、車体3の強度を向上できるとともに、ボディの製造工程をより簡略化できる。
ディスプレイ装置7は、車体3内における少なくとも前面の一部に設けられていればよく、例えば車体3にサイドガラス5およびリアガラスを設置せずに、車体3の側面および後面にもディスプレイ装置7を設置した構成にしてもよい。
また、図4に示す変形例のように、撮影手段21は送風装置23を有する構成にしてもよい。
すなわち、撮影手段21は、カメラ本体のレンズ22と、このレンズ22の表面(正面)に風を吹き付けるいわゆる羽無しの扇風機である送風装置23とを有している。
送風装置23は、レンズ22を囲むようにカメラ本体に取り付けられた内周面に図示しないスリット状の送風口を有する円筒状のカバー体24と、例えば車体3内部に取り付けられて送風口へ風を供給する風供給手段25と、カバー体24の外側面に取り付けられた雨感知センサ17とを有している。
風供給手段25は、一端部がカバー体24に接続されて送風口に連通する流動路26と、この流動路26の他端部に位置する空気吸込口27と、流動路26内に設けられたファン28と、ファン28を回転駆動させる図示しないモータと、流動路26内においてファン28より送風口側に設けられた加熱部29とを有している。
このような送風装置23では、雨感知センサ17によって降雨を感知すると、モータの駆動によりファン28が回転して空気吸込口27から空気を吸い込み、その取り込んだ空気を加熱部29で加熱して送風口へ向けて供給する。また、送風口に供給された空気は送風口を通過してレンズ22の表面に吹き付けられる。そして、レンズ22の表面に風が吹き付けられることで、その風力によって例えば雨や雪や泥や塵等のレンズ22の付着物を除去する。
なお、送風装置23は、ワイパー装置16と同様に、降雨を感知していない状態でも手動により吹き付け動作の開始と終了とを切替可能であるとともに、手動でウォッシャ18を起動できる。
1 車両としての自動車
3 車体
6 撮影手段
7 表示手段としてのディスプレイ装置
12 レンズ
13 レンズカバー
14 回転力付与手段
16 ワイパー装置
16b 払拭部としてのワイパーブレード
18 ウォッシャ
21 撮影手段
22 レンズ
23 送風装置