図面を参照して本発明の実施形態について説明する。各図において、矢印XおよびYは水平方向を示し、互いに直交する。矢印Zは上下方向を示す。
[記録システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る記録システム1を概略的に示した正面図である。記録システム1は、転写体2を介して記録媒体Pにインク像を転写することで記録物P’を製造する、枚葉式のインクジェットプリンタである。記録システム1は、記録装置1Aと、搬送装置1Bとを含む。本実施形態では、X方向、Y方向、Z方向が、それぞれ、記録システム1の幅方向(全長方向)、奥行き方向、高さ方向を示している。記録媒体PはX方向に搬送される。
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
インクの成分については、特に限定はないが、本実施形態では、色材である顔料、水、樹脂を含む水性顔料インクを用いる場合を想定する。
[記録装置]
インクジェット記録装置としての記録装置1Aは、記録ユニット3、転写ユニット4および周辺ユニット5A〜5D、および、供給ユニット6を含む。
[記録ユニット]
記録ユニット3は、インクジェット記録方式の複数の記録ヘッド30と、キャリッジ31とを含む。図1と図2を参照する。図2は記録ユニット3の斜視図である。記録ヘッド30は、転写体2に液体インクを吐出し、転写体2上に記録画像のインク像を形成する。
本実施形態の場合、各記録ヘッド30は、Y方向に延設されたフルラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの記録媒体の画像記録領域の幅分をカバーする範囲にノズルが配列されている。記録ヘッド30は、その下面に、ノズルが開口したインク吐出面を有しており、インク吐出面は、微小隙間(例えば数mm)を介して転写体2の表面と対向している。本実施形態の場合、転写体2は円軌道上を循環的に移動する構成であるため、複数の記録ヘッド30は、放射状に配置されている。
各ノズルには吐出素子が設けられている。吐出素子は、例えば、ノズル内に圧力を発生させてノズル内のインクを吐出させる素子であり、公知のインクジェットプリンタのインクジェットヘッドの技術が適用可能である。吐出素子としては、例えば電気−熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する素子、電気−機械変換体によってインクを吐出する素子、静電気を利用してインクを吐出する素子等が挙げられる。高速で高密度の記録の観点からは電気−熱変換体を利用した吐出素子を用いることができる。
本実施形態の場合、記録ヘッド30は、9つ設けられている。各記録ヘッド30は、互いに異なる種類のインクを吐出する。異なる種類のインクとは、例えば、色材が異なるインクであり、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク等のインクである。1つの記録ヘッド30は1種類のインクを吐出するが、1つの記録ヘッド30が複数種類のインクを吐出する構成であってもよい。このように複数の記録ヘッド30を設けた場合、そのうちの一部が色材を含まないインク(例えばクリアインク)を吐出してもよい。
キャリッジ31は、複数の記録ヘッド30を支持する。各記録ヘッド30は、インク吐出面側の端部がキャリッジ31に固定されている。これにより、インク吐出面と転写体2との表面の隙間をより精密に維持することができる。キャリッジ31は、案内部材RLの案内によって、記録ヘッド30を搭載しつつ変位可能に構成されている。本実施形態の場合、案内部材RLは、Y方向に延設されたレール部材であり、X方向に離間して一対設けられている。キャリッジ31のX方向の各側部にはスライド部32が設けられている。スライド部32は案内部材RLと係合し、案内部材RLに沿ってY方向にスライドする。
図3は記録ユニット3の変位態様を示しており、記録システム1の右側面を模式的に示した図である。記録システム1の後部には回復ユニット12が設けられている。回復ユニット12は記録ヘッド30の吐出性能を回復する機構を有する。そのような機構としては、例えば、記録ヘッド30のインク吐出面をキャッピングするキャップ機構、インク吐出面をワイピングするワイパ機構、インク吐出面から記録ヘッド30内のインクを負圧吸引する吸引機構を挙げることができる。
案内部材RLは、転写体2の側方から回復ユニット12に渡って延設されている。記録ユニット3は、案内部材RLの案内により、実線で記録ユニット3を示した吐出位置POS1と、破線で記録ユニット3を示した回復位置POS3との間で変位可能であり、不図示の駆動機構により移動される。
吐出位置POS1は、記録ユニット3が転写体2にインクを吐出する位置であり、記録ヘッド30のインク吐出面が転写体2の表面に対向する位置である。回復位置POS3は、吐出位置POS1から退避した位置であり、記録ユニット3が回復ユニット12上に位置する位置である。回復ユニット12は記録ユニット3が回復位置POS3に位置した場合に、記録ヘッド30に対する回復処理を実行可能である。本実施形態の場合、記録ユニット3が回復位置POS3に到達する前の移動途中においても回復処理を実行可能である。吐出位置POS1と回復位置POS3の間には予備回復位置POS2がある。回復ユニット12は記録ヘッド30が吐出位置POS1から回復位置POS3へ移動している間に、予備回復位置POS2において記録ヘッド30に対する予備的な回復処理を実行可能である。なお、回復処理は、複数の記録ヘッド30それぞれ個別に実行可能であってもよいし、いくつかの記録ヘッド30に対してまとめて実行可能であってもよい。
[転写ユニット]
図1を参照して転写ユニット4について説明する。転写ユニット4は、転写ドラム(転写胴)41と圧胴42とを含む。これらの胴は、Y方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。図1において、転写ドラム41および圧胴42の各図形内に示した矢印は、これらの回転方向を示しており、転写ドラム41は時計回りに、圧胴42は反時計回りに回転する。
転写ドラム41は、その外周面に転写体2を支持する支持体である。転写体2は、転写ドラム41の外周面上に、周方向に連続的にあるいは間欠的に設けられる。連続的に設けられる場合、転写体2は無端の帯状に形成される。間欠的に設けられる場合、転写体2は、有端の帯状に複数のセグメントに分けて形成され、各セグメントは転写ドラム41の外周面に等ピッチで円弧状に配置することができる。
転写ドラム41の回転により、転写体2は円軌道上を循環的に移動する。転写ドラム41の回転位相により、転写体2の位置は、吐出前処理領域R1、吐出領域R2、吐出後処理領域R3およびR4、転写領域R5、転写後処理領域R6に区別することができる。転写体2はこれらの領域を循環的に通過する。
吐出前処理領域R1は、記録ユニット3によるインクの吐出前に転写体2に対する前処理を行う領域であり、周辺ユニット5Aによる処理が行われる領域である。本実施形態の場合、反応液が付与される。吐出領域R2は記録ユニット3が転写体2にインクを吐出してインク像を形成する形成領域である。吐出後処理領域R3およびR4はインクの吐出後にインク像に対する処理を行う処理領域であり、吐出後処理領域R3は周辺ユニット5Bによる処理が行われる領域であり、吐出後処理領域R4は周辺ユニット5Cによる処理が行われる領域である。転写領域R5は転写ユニット4により転写体2上のインク像が記録媒体Pに転写される領域である。転写後処理領域R6は、転写後に転写体2に対する後処理を行う領域であり、周辺ユニット5Dによる処理が行われる領域である。
本実施形態の場合、吐出領域R2は、回転方向において一定の区間を有する領域である。他の領域R1、R3〜R6は、吐出領域R2に比べるとその区間は狭い。時計の文字盤に喩えると、本実施形態の場合、吐出前処理領域R1は概ね10時の位置であり、吐出領域R2は概ね11時から1時の範囲であり、吐出後処理領域R3は概ね2時の位置であり、吐出後処理領域R4は概ね4時の位置である。転写領域R5は概ね6時の位置であり、転写後処理領域R6は概ね8時の領域である。
転写体2は、単層から構成してもよいが、複数層の積層体としてもよい。複数層で構成する場合、例えば、表面層、弾性層、圧縮層の三層を含んでもよい。表面層はインク像が形成される画像形成面を有する最外層である。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速記録時においても転写性を維持することができる。弾性層は表面層と圧縮層との間の層である。
表面層の材料としては、樹脂、セラミック等各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料を用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。表面層には、反応液の濡れ性、画像の転写性等を向上させるために、表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
圧縮層の材料としては、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。このようなゴム材料の成形時には、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子或いは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し、多孔質のゴム材料としてもよい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがあるが、いずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
弾性層の部材としては、樹脂、セラミック等、各種材料を適宜用いることができる。加工特性等の点で、各種エラストマー材料、ゴム材料を用いることができる。具体的には、例えばフルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。また、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンのコポリマー、ニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。特に、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴムは、圧縮永久ひずみが小さいため、寸法安定性、耐久性の面で有利である。また、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも有利である。
表面層と弾性層の間、弾性層と圧縮層の間には、これらを固定するために各種接着剤や両面テープを用いることもできる。また、転写体2は、転写ドラム41に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を含んでもよい。また、織布を補強層としてもよい。転写体2は前記材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。
圧胴42は、その外周面が転写体2に圧接される。圧胴42の外周面には、記録媒体Pの先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。グリップ機構は圧胴42の周方向に離間して複数設けてもよい。記録媒体Pは圧胴42の外周面に密接して搬送されつつ、圧胴42と転写体2とのニップ部を通過するときに、転写体2上のインク像が転写される。
転写ドラム41と圧胴42とを駆動するモータ等の駆動源は、これらに共通とし、歯車機構等の伝達機構により、駆動力を分配することができる。
[周辺ユニット]
周辺ユニット5A〜5Dは転写ドラム41の周囲に配置されている。本実施形態の場合、周辺ユニット5A〜5Dは、順に、付与ユニット、吸収ユニット、加熱ユニット、清掃ユニットである。
付与ユニット5Aは、記録ユニット3によるインクの吐出前に、転写体2上に反応液を付与する機構である。反応液は、インクを高粘度化する成分を含有する液体である。ここで、インクの高粘度化とは、インクを構成している色材や樹脂等がインクを高粘度化する成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着し、これによってインクの粘度の上昇が認められることである。このインクの高粘度化には、インク全体の粘度上昇が認められる場合のみならず、色材や樹脂等のインクを構成する成分の一部が凝集することにより局所的に粘度の上昇が生じる場合も含まれる。
インクを高粘度化する成分は、金属イオン、高分子凝集剤など、特に制限はないが、インクのpH変化を引き起こして、インク中の色材を凝集させる物質を用いることができ、有機酸を用いることができる。反応液の付与機構としては、例えば、ローラ、記録ヘッド、ダイコーティング装置(ダイコータ)、ブレードコーティング装置(ブレードコータ)などが挙げられる。転写体2に対するインクの吐出前に反応液を転写体2に付与しておくと、転写体2に達したインクを直ちに定着させることができる。これにより、隣接するインク同士が混ざり合うブリーディングを抑制することができる。
吸収ユニット5Bは、転写前に、転写体2上のインク像から液体成分を吸収する機構である。インク像の液体成分を減少させることで、記録媒体Pに記録される画像のにじみ等を抑制することができる。液体成分の減少を異なる視点で説明すれば、転写体2上のインク像を構成するインクを濃縮すると表現することもできる。インクを濃縮するとは、インクに含まれる液体成分が減少することによって、インクに含まれる色材や樹脂といった固形分の液体成分に対する含有割合が増加することを意味する。
吸収ユニット5Bは、例えば、インク像に接触してインク像の液体成分の量を減少させる液吸収部材を含む。液吸収部材はローラの外周面に形成されてもよいし、液吸収部材が無端のシート状に形成され、循環的に走行されるものでもよい。インク像の保護の点で、液吸収部材の移動速度を転写体2の周速度と同じにして液吸収部材を転写体2と同期して移動させてもよい。
液吸収部材は、インク像に接触する多孔質体を含んでもよい。液吸収部材へのインク固形分付着を抑制するため、インク像に接触する面の多孔質体の孔径は、10μm以下であってもよい。ここで、孔径とは平均直径のことを示し、公知の手段、例えば水銀圧入法や、窒素吸着法、SEM画像観察等で測定可能である。なお、液体成分は、一定の形を有さず、流動性があり、ほぼ一定の体積を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、インクや反応液に含まれる水や有機溶媒等が液体成分として挙げられる 。
加熱ユニット5Cは、転写前に、転写体2上のインク像を加熱する機構である。インク像を加熱することで、インク像中の樹脂が溶融し、記録媒体Pへの転写性を向上する。加熱温度は、樹脂の最低造膜温度(MFT)以上とすることができる。MFTは一般的に知られている手法、例えばJIS K 6828−2:2003や、ISO2115:1996に準拠した各装置で測定することが可能である。転写性及び画像の堅牢性の観点から、MFTよりも10℃以上高い温度で加熱してもよく、更に、20℃以上高い温度で加熱してもよい。加熱ユニット5Cは、例えば、赤外線等の各種ランプ、温風ファン等、公知の加熱デバイスを用いることができる。加熱効率の点で、赤外線ヒータを用いることができる。
清掃ユニット5Dは、転写後に転写体2上を清掃する機構である。清掃ユニット5Dは、転写体2上に残留したインクや、転写体2上のごみ等を除去する。清掃ユニット5Dは、例えば、多孔質部材を転写体2に接触させる方式、ブラシで転写体2の表面を擦る方式、ブレードで転写体2の表面をかきとる方式等の公知の方式を適宜用いることができる。また、清掃に用いる清掃部材は、ローラ形状、ウェブ形状等、公知の形状を用いることができる。
以上の通り、本実施形態では、付与ユニット5A、吸収ユニット5B、加熱ユニット5C、清掃ユニット5Dを周辺ユニットとして備えるが、これらの一部のユニットに転写体2の冷却機能を付与するか、あるいは、冷却ユニットを追加してもよい。本実施形態では、加熱ユニット5Cの熱により転写体2の温度が上昇する場合がある。記録ユニット3により転写体2にインクを吐出した後、インク像がインクの主溶剤である水の沸点を超えると、吸収ユニット5Bによる液体成分の吸収性能が低下する場合がある。吐出されたインクが水の沸点未満に維持されるように転写体2を冷却することで、液体成分の吸収性能を維持することができる。
冷却ユニットは、転写体2に送風する送風機構や、転写体2に部材(例えばローラ)を接触させ、この部材を空冷または水冷で冷却する機構であってもよい。また、清掃ユニット5Dの清掃部材を冷却する機構であってもよい。冷却タイミングは、転写領域R5における転写後、吐出前処理領域R1における反応液の付与前までの期間であってもよい。
[供給ユニット]
供給ユニット6は、記録ユニット3の各記録ヘッド30にインクを供給する機構である。供給ユニット6は記録システム1の後部側に設けられていてもよい。供給ユニット6は、インクの種類毎に、インクを貯留する貯留部TKを備える。貯留部TKは、メインタンクとサブタンクとによって構成されてもよい。また、貯留部TKにおいて、インクの種類ごとに、異なるサイズのタンクが用いられてもよいし、異なる数のタンクが設けられてもよい。各貯留部TKと各記録ヘッド30とは流路6aで連通し、貯留部TKから記録ヘッド30へインクが供給される。流路6aは、貯留部TKと記録ヘッド30との間でインクを循環させる流路であってもよく、供給ユニット6はインクを循環させるポンプ等を備えてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インク中の気泡を脱気する脱気機構を設けてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インクの液圧と大気圧との調整を行うバルブを設けてもよい。貯留部TK内のインク液面が、記録ヘッド30のインク吐出面よりも低い位置となるように、貯留部TKと記録ヘッド30のZ方向の高さが設計されてもよい。
[搬送装置]
搬送装置1Bは、記録媒体Pを転写ユニット4へ給送し、インク像が転写された記録物P’を転写ユニット4から排出する装置である。搬送装置1Bは、給送ユニット7、複数の搬送胴8、8a、二つのスプロケット8b、チェーン8cおよび回収ユニット8dを含む。図1において、搬送装置1Bの各構成の図形の内側の矢印はその構成の回転方向を示し、外側の矢印は記録媒体Pまたは記録物P’の搬送経路を示している。記録媒体Pは給送ユニット7から転写ユニット4へ搬送され、記録物P’は転写ユニット4から回収ユニット8dへ搬送される。給送ユニット7側を搬送方向で上流側と呼び、回収ユニット8d側を下流側と呼ぶ場合がある。
給送ユニット7は、複数の記録媒体Pが積載される積載部を含むと共に、積載部から一枚ずつ記録媒体Pを、最上流の搬送胴8に給送する給送機構を含む。各搬送胴8、8aはY方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。各搬送胴8、8aの外周面には、記録媒体P(または記録物P’)の先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。各グリップ機構は、隣接する搬送胴間で記録媒体Pを受け渡されるように、その把持動作および解除動作が制御される。
二つの搬送胴8aは、記録媒体Pの反転用の搬送胴である。記録媒体Pを両面記録する場合、表面への転写後に、圧胴42から下流側に隣接する搬送胴8へ記録媒体Pを渡さずに、搬送胴8aに渡す。記録媒体Pは、二つの搬送胴8aを経由して表裏が反転され、圧胴42の上流側の搬送胴8を経由して再び圧胴42へ渡される。これにより、記録媒体Pの裏面が転写ドラム41に面することになり、裏面にインク像が転写される。
チェーン8cは、二つのスプロケット8b間に巻き回されている。二つのスプロケット8bの一方は駆動スプロケットであり他方は従動スプロケットである。駆動スプロケットの回転によりチェーン8cが循環的に走行する。チェーン8cには、その長手方向に離間して複数のグリップ機構が設けられている。グリップ機構は、記録物P’の端部を把持する。下流端に位置する搬送胴8からチェーン8cのグリップ機構に記録物P’が渡され、グリップ機構に把持された記録物P’はチェーン8cの走行により回収ユニット8dへ搬送され、把持が解除される。これにより記録物P’が回収ユニット8d内に積載される。
[後処理ユニット]
搬送装置1Bには、後処理ユニット10A、10Bが設けられている。後処理ユニット10A、10Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’に対して後処理を行う機構である。後処理ユニット10Aは、記録物P’の表面に対する処理を行い、後処理ユニット10Bは、記録物P’の裏面に対する処理を行う。処理の内容としては、例えば、記録物P’の画像記録面に、画像の保護や艶出し等を目的としたコーティングを挙げることができる。コーティングの内容としては、例えば、液体の塗布、シートの溶着、ラミネート等を挙げることができる。
[検査ユニット]
搬送装置1Bには、検査ユニット9A、9Bが設けられている。検査ユニット9A、9Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’の検査を行う機構である。
本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(不図示)を含む。検査ユニット9Aは、連続的に行われる記録動作中に、記録画像を撮影する。検査ユニット9Aが撮影した画像に基づいて、記録画像の色味などの経時変化を確認し、画像データあるいは記録データの補正の可否を判断することができる。本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、圧胴42の外周面に撮像範囲が設定されており、転写直後の記録画像を部分的に撮影可能に配置されている。検査ユニット9Aにより全ての記録画像の検査を行ってもよいし、所定数毎に検査を行ってもよい。
本実施形態の場合、検査ユニット9Bも、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(不図示)を含む。検査ユニット9Bは、テスト記録動作において記録画像を撮影する。検査ユニット9Bは、記録画像の全体を撮影し、検査ユニット9Bが撮影した画像に基づいて、記録データに関する各種の補正の基本設定を行うことができる。本実施形態の場合、チェーン8cで搬送される記録物P’を撮影する位置に配置されている。検査ユニット9Bにより記録画像を撮影する場合、チェーン8cの走行を一時的に停止して、その全体を撮影する。検査ユニット9Bは、記録物P’上を走査するスキャナーであってもよい。
[制御ユニット]
次に、記録システム1の制御ユニットについて説明する。図4および図5は記録システム1の制御ユニット13のブロック図である。制御ユニット13は、上位装置(DFE)HC2に通信可能に接続され、また、上位装置HC2はホスト装置HC1に通信可能に接続される。
ホスト装置HC1では、記録画像の元になる原稿データが生成、あるいは保存される。ここでの原稿データは、例えば、文書ファイルや画像ファイル等の電子ファイルの形式で生成される。この原稿データは、上位装置HC2へ送信され、上位装置HC2では、受信した原稿データを制御ユニット13で利用可能なデータ形式(例えば、RGBで画像を表現するRGBデータ)に変換する。変換後のデータは、画像データとして上位装置HC2から制御ユニット13へ送信され、制御ユニット13は受信した画像データに基づき、記録動作を開始する。
本実施形態の場合、制御ユニット13は、メインコントローラ13Aと、エンジンコントローラ13Bとに大別される。メインコントローラ13Aは、処理部131、記憶部132、操作部133、画像処理部134、通信I/F(インタフェース)135、バッファ136、および通信I/F137を含む。
処理部131は、CPU等のプロセッサであり、記憶部132に記憶されたプログラムを実行し、メインコントローラ13A全体の制御を行う。記憶部132は、RAM、ROM、ハードディスク、SSD等の記憶デバイスであり、CPU131が実行するプログラムや、データを格納し、また、CPU131にワークエリアを提供する。操作部133は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力デバイスであり、ユーザの指示を受け付ける。
画像処理部134は、例えば、画像処理プロセッサを有する電子回路である。バッファ136は、例えば、RAM、ハードディスクやSSDである。通信I/F135は上位装置HC2との通信を行い、通信I/F137はエンジンコントローラ13Bとの通信を行う。図4において破線矢印は、画像データの処理の流れを例示している。上位装置HC2から通信I/F135を介して受信された画像データは、バッファ136に蓄積される。画像処理部134はバッファ136から画像データを読み出し、読み出した画像データに所定の画像処理を施して、再びバッファ136に格納する。バッファ136に格納された画像処理後の画像データは、プリントエンジンが用いる記録データとして、通信I/F137からエンジンコントローラ13Bへ送信される。
図5に示すように、エンジンコントローラ13Bは、制御部14、15A〜15Eを含み、記録システム1が備えるセンサ群およびアクチュエータ群16の検知結果の取得および駆動制御を行う。これらの各制御部は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェースを含む。なお、制御部の区分けは一例であり、一部の制御を更に細分化した複数の制御部で実行してもよいし、逆に、複数の制御部を統合して、それらの制御内容を一つの制御部で行うように構成してもよい。
エンジン制御部14は、エンジンコントローラ13Bの全体の制御を行う。記録制御部15Aは、メインコントローラ13Aから受信した記録データをラスタデータ等、記録ヘッド30の駆動に適したデータ形式に変換する。記録制御部15Aは、各記録ヘッド30の吐出制御を行う。
転写制御部15Bは、付与ユニット5Aの制御、吸収ユニット5Bの制御、加熱ユニット5Cの制御、および清掃ユニット5Dの制御を行う。
信頼性制御部15Cは、供給ユニット6の制御、回復ユニット12の制御、および記録ユニット3を吐出位置POS1と回復位置POS3との間で移動させる駆動機構の制御を行う。
搬送制御部15Dは、転写ユニット4の駆動制御や、搬送装置1Bの制御を行う。検査制御部15Eは、検査ユニット9Bの制御、および検査ユニット9Aの制御を行う。
センサ群およびアクチュエータ群16のうち、センサ群には、可動部の位置や速度を検知するセンサ、温度を検知するセンサ、撮像素子等が含まれる。アクチュエータ群にはモータ、電磁ソレノイド、電磁バルブ等が含まれる。
[動作例]
図6は、記録動作の例を模式的に示す図である。転写ドラム41および圧胴42が回転されつつ、以下の各工程が循環的に行われる。状態ST1に示すように、始めに転写体2上に付与ユニット5Aから反応液Lが付与される。転写体2上の反応液Lが付与された部位は転写ドラム41の回転に伴って移動していく。反応液Lが付与された部位が記録ヘッド30の下に到達すると、状態ST2に示すように記録ヘッド30から転写体2にインクが吐出される。これによりインク像IMが形成される。その際、吐出されるインクが転写体2上の反応液Lと混ざりあうことで、色材の凝集が促進される。吐出されるインクは、供給ユニット6の貯留部TKから記録ヘッド30に供給される。
転写体2上のインク像IMは転写体2の回転に伴って移動していく。インク像IMが吸収ユニット5Bに到達すると状態ST3に示すように吸収ユニット5Bによりインク像IMから液体成分が吸収される。インク像IMが加熱ユニット5Cに到達すると状態ST4に示すように加熱ユニット5Cによりインク像IMが加熱され、インク像IM中の樹脂が溶融し、インク像IMが造膜される。このようなインク像IMの形成に同期して、搬送装置1Bにより記録媒体Pが搬送される。
状態ST5に示すように、インク像IMと記録媒体Pとが転写体2と圧胴42とのニップ部に到達し、記録媒体Pにインク像IMが転写され、記録物P’が製造される。ニップ部を通過すると、記録物P’に記録された画像が検査ユニット9Aにより撮影され、記録画像が検査される。記録物P’は、搬送装置1Bにより回収ユニット8dへ搬送される。
転写体2上のインク像IMが形成されていた部分は、清掃ユニット5Dに到達すると状態ST6に示すように清掃ユニット5Dにより清掃される。清掃後、転写体2は一回転したことになり、同様の手順で記録媒体Pへのインク像の転写が繰り返し行われる。上記の説明では理解を容易にするために、転写体2の一回転で一枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が一回行われるように説明したが、転写体2の一回転で複数枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が連続的に行うことができる。
このような記録動作を継続していくと、各記録ヘッド30のメンテナンスが必要となる。図7は、各記録ヘッド30のメンテナンスの際の動作例を示している。図7の構成は、図3にて示した構成に対応する。状態ST11は、吐出位置POS1に記録ユニット3が位置している状態を示す。状態ST12は、記録ユニット3が予備回復位置POS2を通過している状態を示し、通過中に回復ユニット12により記録ユニット3の各記録ヘッド30の吐出性能を回復する処理が実行される。その後、状態ST13に示すように、記録ユニット3が回復位置POS3に位置した状態で、回復ユニット12により各記録ヘッド30の吐出性能を回復する処理が実行される。
図8は、検査ユニット9Bと、その周辺構成を示しており、装置上方側から俯瞰している。図9は、検査ユニット9Bと、その周辺構成を示しており、装置手前側から俯瞰している。
記録媒体Pは、搬送方向801へ搬送され、検査ユニット9Bの近傍で搬送停止し、搬送方向801と直交方向である幅方向803へ走査可能なCCDセンサ802を利用して、撮像を行う。記録媒体Pの先頭をチェーン8cに設置されたグリップ機構906で挟持し、チェーン8cを循環的に走行させることによって、検査ユニット9Bまで搬送する。撮像領域805を撮像する際には、上下方向908に駆動可能な昇降台907を、押さえつけ位置907Bへ移動させることにより、記録媒体PをCCDセンサ802に近接させて撮像する。なお、ここでの撮像においては、搬送を停止する代わりに、CCDセンサ802を搬送方向に直交する方向に沿って配置し、搬送速度を低下させつつ撮像を行うような構成であってもよい。
<第1の実施形態>
[記録ヘッドの位置ずれ補正方法]
図10は、本実施形態に係る記録ヘッドの位置ずれ補正用のテストパターンを説明するための図である。
図10では、記録媒体1001にカット紙を用いて、ヘッド位置ずれ補正のためのテストパターン1002を記録する例を示している。なお、ここで使用するカット紙1枚にテストパターンは収まるものとして説明するが、カット紙のサイズによっては2回分のテストパターンを記録するような構成であってもよい。ノズル列方向1003は、記録ヘッド30のノズル配列方向を示している。つまり、ノズル列方向1003は、図2におけるY方向に対応する。
図2に示すように、複数の記録ヘッド30が備えられる。各記録ヘッドは、記録媒体1001の搬送方向下流から、K(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、クリアインクの5色に対応しているものとする。記録ヘッド30の色順は変化してもよいし、G(グレー)、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)等の他色に対応したヘッドが増えたり、変化したりしてもよい。
検査ユニット9Bは、記録ヘッド30に対して、記録媒体1001の搬送方向の下流側に配置する。検査ユニット9Bは、記録ヘッド30の位置ずれ量を検出するために、記録媒体1001に記録されたテストパターン1002を読み取る。
1の記録ヘッド30は複数の記録チップで構成されており、記録チップの1つ分が記録チップ1004である。本実施形態において、1の記録チップは、平行四辺形の形状にて構成された例を示す。本実施形態において、記録ヘッド30に、36個の記録チップ1004がノズル列方向1003に沿って配置されているが、記録チップ数が変化してもよい。ノズル列方向1003は、図8の幅方向803に対応する。記録チップ1004には、複数のノズル列1005が配置されている。本実施形態において、記録チップ1004に、24列のノズル列1005が配置されているが、列数が変わってもよい。また、本実施形態では、図10に示すように、記録チップ1004において、ノズル列1005が搬送方向に対して所定の角度となるように配列されている。また、ノズル列1005の端部は、搬送方向に対して傾きが生じるように配置されている。
ヘッド位置ずれの種類について説明する。いずれも、記録ヘッド30のチップやノズルの造形誤差、もしくは、記録ヘッド30の設置誤差等に起因する。ずれの種類として、記録チップ1004内のノズル列1005間の列間ずれ、記録チップ1004間のチップ間ずれ、記録ヘッド30間の色間ずれ等がある。このようなずれがある場合、インクの打滴位置が理想位置からずれるため、記録画像の品位が悪化する。ヘッド位置ずれ補正は、記録チップ1004のインク吐出タイミング、または、吐出を行うノズルを変化させることで、インクの打滴位置を補正する機能である。
本実施形態では、ノズル列方向1003と直交方向(搬送方向801)のずれについては、記録ヘッド30を構成する記録チップ1004それぞれの吐出タイミングを変化させることにより位置ずれを補正する。ノズル列方向1003のずれについては、吐出データを変化させることによって位置ずれを補正する。記録ヘッド30の傾きについては、記録ヘッド30を回転させることで位置ずれを補正する。ここでの回転とは、記録ヘッド30の転写体41に対する吐出方向(転写体41の法線方向)を制御する動作に相当する。
テストパターン1002は、記録ヘッド30のヘッド位置ずれ補正をするためのテストパターンである。テストパターン1006〜1010は5ヘッド分のテストパターンであり、各テストパターンは記録ヘッド30それぞれに対応する位置ずれ量を検出するために用いられる。これらのテストパターンを用いて、対応する記録ヘッド30の傾き量と、記録チップの各ノズル列間の列間ずれ量と、記録チップ間のチップ間ずれ量を算出する。本実施形態では、テストパターン1006〜1010はそれぞれ、K、C、M、Y、クリアインクの記録ヘッド30に対応するテストパターンである。テストパターン1002に含まれる記録ヘッド30のテストパターンは、5ヘッド分から増減してもよいし、テストパターンの順番が変わってもよい。したがって、テストパターンの数は、テストを行う対象の記録ヘッド30の数に応じて変動してよい。また、テストパターン1011は、記録ヘッド30間の色間ずれ量を算出するためのテストパターンである。テストパターン1011については、図13を用いて詳細に説明する。
本実施形態において、パターン1014は、インク色Kに対応するテストパターン1006の一部を拡大した図である。インク色C,M,Yに対応するテストパターン1007〜1009それぞれも、テストパターン1006と同等の構成を有する。パターン1015は、クリアインクに対応するテストパターン1010の一部を拡大した図である。なお、図10に示す例に限定するものではなく、記録ヘッド30の種類による、各テストパターンとインク色の対応関係は、変更してもよい。
本実施形態において、パターン1015は、パターン1014と比較して大型化したパターンを用いているため、記録媒体1001の下地色と記録剤であるクリアインクの輝度値差が小さくても、検出精度を上げることが可能である。また、パターン1016は、インク色K、C,M,Yの記録ヘッドに含まれる記録チップ1004の1個分に対応し、パターン1019は、クリアインクの記録ヘッドに含まれる記録チップ1004の1個分に対応するパターンである。
パターン1014、1015において、黒色で表現されている領域は、対応するインクで記録した領域である。また、白色で表現されている領域は、記録媒体1001の下地色であり、インクで記録されていない領域である。
本実施形態に係る記録ヘッド30は、複数の記録チップ1004がノズル列方向1003に沿って直線的に並べられた構成である。記録ヘッド30を構成する記録チップ1004ごとに、記録チップ1004に対応したパターン1016もしくはパターン1019が、ノズル列方向1003と平行して直線的に記録される。
記録チップ1004に対応したパターン1016およびパターン1019の構成と記録方法について説明する。カラーインクを吐出する記録ヘッド30にて用いられる、1つの記録チップ1004に対応する1つのパターン1016は、検知マーク1017、アライメントマーク1018、およびパターンマッチング用パターン1022を含んで構成される。また、クリアインクを吐出する記録ヘッド30にて用いられる、1つの記録チップ1004に対応した1つのパターン1019は、検知マーク1020、アライメントマーク1021、およびパターンマッチング用パターン1023を含んで構成される。
検知マーク1017、1020は、画像解析処理により、読取画像における記録チップ1004に対応したパターンを検出するために用いられる。検知マーク1017、1020は、図10に示すような矩形領域の形状にて記録されるパターンである。本実施形態では、上述したように、記録チップは、複数のノズル列で構成されている。検知マーク1017、1020は、複数のノズル列による打滴によって記録される。複数のノズル列を使用して記録することで、不吐ノズルが存在する場合でも、他のノズル列のノズルによって打滴されるため、不吐ノズルによる検知パターンの欠損が軽減される。よって、画像解析処理において、安定して検知マークを検出することができる。
アライメントマーク1018、1021は、画像解析処理により、パターンマッチング用パターン1022、1023の解析領域の基準位置を算出するために用いられる。アライメントマーク1018、1021は、図10に示すような矩形領域の形状にて記録される。アライメントマーク1018、1021は、ノズル列に対応したパターンマッチング用パターン1022、1023ごとに、複数列のノズル列の打滴によって記録される。
パターンマッチング用パターン1022、1023は、画像解析処理により、記録ヘッド30の位置ずれを検出するためのパターンである。記録色や算出するずれ量の種類に応じて、パターンマッチング用パターン1022、1023が使い分けられる。
クリアインクで形成するパターンは、記録媒体1001の下地色と記録色(透明色)の輝度値の信号差が出づらい。つまり、下地とインクとの輝度値の差を検出しにくい。そのため、本実施形態では、クリアインクに対しては、パターンマッチング用パターン1022よりも大型化したパターンであるパターンマッチング用パターン1023を用いて位置ずれが検出される。
図11は、パターンマッチング用パターン1022、1023の詳細レイアウトを示す図である。1101はパターンマッチング用パターン1022の縦方向の画素数を示し、1102は横方向の画素数を示す。1103はパターンマッチング用パターン1023の縦方向の画素数を示し、1104は横方向の画素数を示す。
本実施形態において、パターンマッチング用パターン1022における1101は搬送方向801と平行方向であり、1102はノズル列方向1003と平行方向であり、どちらも1200DPI(dot per inch)単位で82画素である。また、パターンマッチング用パターン1023における1103は搬送方向801と平行方向であり、1104はノズル列方向1003と平行方向であり、どちらも1200DPI単位で210画素である。なお、各パターンマッチング用パターンを構成する画素数は上記に限定するものではなく、変わってもよい。図11に示すように、パターンマッチング用パターン1022の方が、パターンマッチング用パターン1023よりも小さいサイズとなる。
図12は、1つの記録チップ1004に対応したパターン1016、1019と吐出ノズルの対応について示す図である。なお、記録ヘッド30を構成する他の記録チップにおいても同様の構成である。
記録チップ1004は複数のノズル列1005を備え、1つのノズル列1005は、複数のノズルから構成される。本実施形態において、1つの記録チップ1004には、24のノズル列1005が配置されている。1つの記録チップ1004に対するテストパターンは、記録チップ1004が有する各ノズル列が、1207〜1208で示す範囲内のノズルを使用して記録される。この範囲は、記録チップ1004の構成によって変化してよい。
1つの記録チップ1004に対するパターン1016に含まれるパターンマッチング用パターンは、複数のノズル列それぞれに対応して設けられる。ここでは、パターンマッチング用パターンはそれぞれ、対応する数字のノズル列を使用して記録される。つまり、24のノズル列に対して、0〜23のパターンマッチング用パターンが設けられる。レイアウト1201におけるノズルパターンの配置によって、“0”にて示されるパターンマッチング用パターン(すなわち、“0”が割り当てられたノズル列)を基準として、残りの各ノズルとの相対位置から位置ずれを算出する。例外として、パターンマッチング用パターン1202が設けられる。これは、左隣りの記録チップ1004に含まれるノズルのうち、“20”が割り当てられたノズル列で記録されるパターンマッチング用パターンである。なお、パターンマッチング用パターン1202を記録する、隣接する記録チップのノズル列は、“20”が割り当てられたノズル列に限定するものではなく、記録チップ1004を構成するノズル列の数や、記録チップ1004の形状などによって変化してよい。
パターンマッチング用パターン1202は、自身の記録チップで記録したパターンではないため、自身の記録チップ内でのノズル列の位置ずれ算出では用いられない。1つの記録チップ1004につき1つのパターン1016を記録し、記録チップ1004における1ノズル分のパターンマッチング用パターンの1つから、その記録チップ1004における製造誤差による位置ずれと、記録ヘッド30の傾きを算出する。記録チップのチップ間ずれと、記録ヘッド30の傾きは、記録媒体1001上で記録された左端または右端の1つ内側の1016に対応する記録チップを基準のチップとして算出される。
なお、本実施形態に係る装置では、記録媒体1001のサイズが可変である。そのため、記録媒体1001の左端または右端において、パターン1016が欠けた状態で記録されることがある。このようなパターンである場合に、当該パターンが検知マーク1203以上の長さにて記録されている場合は、右端はパターンマッチング用パターン1204、左端はパターンマッチング用パターン1202を算出用のパターンとして選択する。
記録ヘッドによっては、記録チップの1つ分のテストパターンが、パターン1016ではなく、パターン1209のレイアウトになることがある。このときのパターンマッチング用パターン1022はそれぞれ、レイアウト1205のノズルに対応している。レイアウト1205のPは複数のノズルでパターンマッチング用パターン1022を記録することを意味しており、これを用いてその記録ヘッドの傾きを算出する。
記録チップ1004の1つ分のパターン1019のパターンマッチング用パターン1023はそれぞれ、レイアウト1206のノズルに対応している。レイアウト1206のPは複数のノズルでパターンマッチング用パターン1023を記録することを意味しており、これを用いて記録ヘッドの傾きを算出する。
記録チップ1004の1つ分のパターン1016、1023は、記録媒体1001への記録タイミングを、ノズルの製造誤差とチップの製造誤差の交差を加味した量の分だけずらして記録している。よって、この誤差によるテストパターンの重なりが生じないようにしている。
図13は、記録ヘッド30間の色間ずれ補正計算を行うテストパターンと記録チップ1004の対応について示す図である。テストパターン1301は、記録ヘッド30同士の位置誤差を算出するテストパターンである。これは、レイアウト1302に示す、各記録色の記録ヘッドでパターンが記録される。各記録ヘッドにおいて、パターンの記録に使用する記録チップ1004を1つ選択され、ここでは、各記録ヘッドにおける記録チップ1303の位置の記録チップとする。本実施形態において、記録チップ1303を使って、パターンを記録する。テストパターン1301は、黒色で表現されている箇所が、対応の記録色(インク)で記録したパターンの箇所であり、白色で表現されている箇所が、記録媒体1001の紙白(下地)の箇所を示す。
本実施形態において、K、C、M、Yのインクについては、パターンマッチング用パターン1022を使用する。クリアインク(Tにて示す)については、パターンマッチング用パターン1023を使用する。レイアウト1302に示すように、Kを基準ヘッドとしてパターンを記録し、各記録ヘッドの位置ずれを算出する。基準ヘッドのパターンは、ずれを算出する対象の記録色のパターンマッチング用パターンと同様のパターンを使用する。色に対応するパターンマッチング用パターンは、図11や図13に示すものに限定するものではなく、異なるパターンが用いられてもよい。
記録ヘッド30間の色間ずれを算出するために用いられるテストパターン1301は、記録媒体1001への記録タイミングが、記録ヘッドの色間ずれの最大ずれ量を超えるように、記録している。このように各記録ヘッドの記録タイミングをずらすことで、テストパターンの重なりが生じないようにしている。
(ノズル列間のずれ量算出)
図14は、ノズル列間のずれ量の算出方法を示す図である。上述したように、本実施形態において、1つの記録チップ1004内に24列のノズル列が配置されている。ここでは、搬送方向801の下流側から数えて最初のノズル列を0列目、最後のノズル列を23列目として、各ノズル列を番号付けしている。以下、それぞれ、ノズル列0〜ノズル列23と呼称する。
レイアウト1201に従って記録されたパターンのスキャン画像を用いた、ノズル列間のずれ量の算出方法を説明する。レイアウト1201において、各矩形内に示された数値は、パターンマッチング用パターンの記録で用いたノズル列の番号を示している。例えば、パターンマッチング用パターン1405は、ノズル列0を用いて記録していることを示している。以降、ノズル列xを用いた記録パターンを「列xパターン」と呼称する。
レイアウト1201を、4つの領域1401〜1404に分ける。領域1401では、列0パターン1405、1406を基準とする。同様に、領域1402〜1404それぞれにおいても、列0パターン1407及び1408、列0パターン1409及び1410、列0パターン1411及び1412を、それぞれ基準とする。領域1401〜1404それぞれで、2つの列0パターンを基準として、他のノズル列を用いた記録パターンとのずれ量を算出する。
例として、ノズル列0とノズル列9のずれ量を算出する方法について述べる。記録パターン1414は領域1401の列0パターン1405に対応し、記録パターン1415は領域1401の列0パターン1406に対応し、それぞれは、基準となるパターンである。記録パターン1416は、領域1401に記録された列9パターンである。ノズル列0とノズル列9で各パターンを記録した場合、吐出されたインクの着弾位置ずれが全くない場合は、記録パターン1414と記録パターン1415を結ぶ直線上に列9パターンが記録される。着弾位置ずれが全くない理想位置で記録される列9パターンを記録パターン1418で示す。一方、列9パターンの実際の記録位置を記録パターン1416で示す。
記録パターン1416と記録パターン1418との間のずれ量は、ノズル列0に対するノズル列9の位置ずれ量となる。そのずれ量の横方向成分をずれ量1417とし、縦方向成分をずれ量1419とする。ずれ量1419は、記録パターン1414と記録パターン1415を結ぶ直線に対して、記録パターン1416から引いた垂線の長さである。よって、ずれ量1419は、記録パターン1414、記録パターン1415、および記録パターン1416の位置から算出可能である。同様に、ずれ量1417も、これらの位置から求めることができる。
以上に述べた方法を適用することで、列0パターンを基準として、列1パターン〜列23パターンのずれ量を算出し、ノズル列0に対するノズル列1〜ノズル列23の位置ずれ量を求めることができる。
(記録チップ間のずれ量算出、及び、記録ヘッドの傾き量算出)
図15は、記録チップ1004間のずれ量、及び、記録ヘッド30の傾き量の算出方法を説明するための図である。本実施形態において、1つの記録ヘッド30内に36個の記録チップ1004が配置されており、装置奥側から数えて最初の記録チップを記録チップ0、最後を記録チップ35として、各記録チップを番号付けしている。図15においては、右側が装置奥側、左側が装置手前側とする。パターン1016のレイアウト1201に従って、記録されたパターンのスキャン画像を用いた、チップ間のずれ量の算出方法を、図15を用いて説明する。
記録パターン1501〜1503はそれぞれ、記録ヘッド30内の3つの記録チップを用いて、レイアウト1201に従って記録された記録パターンである。記録媒体1001のサイズや搬送誤差によっては、記録媒体1001上に記録を行わない記録チップも存在する。以降、記録チップxを用いて、記録媒体1001上に記録されたパターンを、「チップxパターン」と呼称する。
記録パターン1501は、記録媒体1001に記録されたパターンのうち、最左端から1つ右側の記録チップにて記録されたパターンである。記録媒体1001のサイズ等によって、記録パターン1501を記録するために用いた記録チップ番号は変動する。本実施形態において、記録パターン1501をチップ34パターンとする。記録パターン1502は、記録媒体1001に記録されたパターンのうち、最右端から1つ左側の記録チップにて記録されたパターンである。本実施形態においては、記録パターン1502をチップ1パターンとする。記録パターン1503は、チップ間のずれ量算出対象の記録チップに対応するパターンのレイアウト1201を示している。例として、記録チップ18を対象として説明する。ここでの記録チップ18は、記録ヘッド30内の記録チップ列の中央に位置する記録チップとする。
記録パターン1507は、記録パターン1501のうち記録チップ34のノズル列0を用いて記録したパターンである。記録パターン1508は、記録パターン1502のうち記録チップ1のノズル列0を用いて記録したパターンである。これらを記録した記録チップは、チップ間のずれ計算の基準チップである。記録パターン1511は、記録チップ18の列0を用いて記録したパターンであり、チップ間のずれ量の算出対象のチップである。
記録チップ1、記録チップ18、記録チップ34それぞれのノズル列0で、各記録パターンを記録した時に着弾位置ずれが全くない場合、記録パターン1507と記録パターン1508を結ぶ直線上に、記録チップ18によりチップ18パターンが記録される。吐出されたインクの着弾位置ずれが全くない理想位置で記録したチップ18パターンの位置を記録パターン1512で示す。一方、列18パターンの実際の記録位置を記録パターン1511で示す。記録パターン1511と記録パターン1512との間のずれ量は、記録チップ1と記録チップ34を結ぶ直線と記録チップ18の間に相対的な位置にずれが生じているとし、そのずれ量をずれ量1514とする。ずれ量1514は、記録パターン1511から、記録パターン1507と記録パターン1508を結ぶ直線に対して引いた垂線の長さである。よって、ずれ量1514は、記録パターン1507、記録パターン1508、記録パターン1511の位置から求めることができる。また、記録パターン1507と記録パターン1508を結ぶ直線に対して、記録パターン1511を通る直交する線と、記録パターン1512を通る直交する線との距離を求めることにより、ずれ量1513を求めることができる。よって、記録パターン1507と記録パターン1508を結ぶ直線と直交する方向に対してのずれ量を、記録位置補正に利用することもできる。
以上に示した方法を適用すれば、左右端部の2つ記録チップを基準チップとして、基準チップ間を結ぶ直線に対して、挟まれた他の記録チップとのずれ量を、それぞれ求めることができる。ただし、2つの基準チップ(示した例では記録チップ34と記録チップ1)よりさらに端部側のそれぞれ左端と右端の記録チップは計算方法が異なる。
例では、基準線として用いる2つの記録チップの左端側は記録チップ34、右端側は記録チップ1であるため、左端は記録チップ35が調整対象の記録パターン1511となり、右端は記録チップ0が調整対象の記録パターン1511となる。左端の記録チップは他の記録チップと同様、レイアウト1201のパターンマッチング用パターン1204を用いてずれ量を算出する。一方、右端の記録チップは、パターンマッチング用パターン1204ではなく、左隣りの記録チップにて形成されるパターンマッチング用パターン1202を用いる。これは、端部の記録チップがレイアウト1201を途中の長さまでしか記録媒体1001に記録できない可能性があるためである。
記録媒体1001の長さによっては、記録を行う範囲の左端の記録チップや右端の記録チップよりも外側に記録チップが存在してしまう可能性がある。これらの記録チップは、記録媒体1001に記録不可能であるため、パターンの検知が不可能である。よって、左端側の外側の記録チップは1つ右隣のずれ量を補正用の値として使用する。同様に、右端側の外側の記録チップは1つ左隣のずれ量を補正用の値として使用する。
レイアウト1201に従って、記録されたパターンのスキャン画像を用いた、記録ヘッド30の傾き量の算出方法を、図15を用いて説明する。記録ヘッド30の傾き量の算出は、記録チップ1004間のずれ量を算出するパターンと同様のパターンを使用する。また、記録ヘッド30の傾きとは、基準ヘッドからの相対的な傾き量をずれ量とし、基準ヘッド以外の記録ヘッドそれぞれについて傾き補正量を計算する。
1506は記録ヘッド30の傾き量算出方法を説明するための図である。まず、基準ヘッドの傾き量を計算する。記録パターン1507及び記録パターン1508は、前述の左右端部側の基準チップにて形成された記録パターンである。角度1516は、記録パターン1507と記録パターン1508を結ぶ直線と、記録ヘッド30の傾きによる着弾位置ずれのない理想線とからなる角を示し、基準ヘッドの傾き量を示す。
次に、補正対象の記録ヘッドの傾き量を計算する。補正対象の記録ヘッドにおいて記録パターン1509及び記録パターン1510は、前述の左右端部側の基準チップにて形成された記録パターンである。角度1517は、記録パターン1509と記録パターン1510を結ぶ直線と、記録ヘッド30の傾きによる着弾位置ずれのない理想線とからなる角を示し、補正対象の記録ヘッドの傾き量を示す。
最後に、補正対象の記録ヘッドの傾き補正の計算量を計算する。補正対象の記録ヘッドの傾き量は以下の式により算出できる。ここでの記録ヘッドの傾き量は、角度にて示されるものとする。
補正対象の記録ヘッドの傾き量=角度1517−角度1516
本実施形態において、記録ヘッド30のうちKを記録する記録ヘッド30を基準ヘッドとする。以上に示した方法を適用すれば、基準ヘッド(Kの記録ヘッド)に対して、それ以外の各記録ヘッドの傾き量を、それぞれ求めることができる。
(記録ヘッド間のずれ量算出)
図16は、記録ヘッド間のずれ量の算出方法を説明するための図である。本実施形態において、搬送方向801の下流側から数えて最初の記録ヘッドを、インク色Kを用いる記録ヘッドKとし、以後、記録ヘッドC、記録ヘッドM、記録ヘッドYと呼称する。また、クリアインクで記録する記録ヘッドを、記録ヘッドTと呼称する。テストパターン1301に対するレイアウト1302に従って、記録されたパターンのスキャン画像を用いた、記録ヘッド間のずれ量(以後、「色間ずれ」と呼称する)の算出方法を説明する。
テストパターン1301は、色間ずれ量を算出するために用いられるテストパターンである。レイアウト1302に示される所定の色に対応した、記録ヘッド30の所定の位置にある記録チップ1303を使って、テストパターン1301を記録する。ここでの所定の位置にある記録チップ1303として、本実施形態ではチップ18を用いる。記録パターン1601〜1610は、基準ヘッドで記録され、本実施形態では、記録ヘッドKにて記録されたパターンである。それ以外の記録色のパターンはそれぞれ、記録ヘッド間の位置ずれの算出対象である色である。本実施形態では、これらのパターンは、C、M、Y、T(クリアインク)のパターンとしているが、記録色の数は増減してもよい。本実施形態において、他の記録ヘッドによるパターンが入る領域を確保している。本実施形態では、C、M、Yは、図11に示すパターンマッチング用パターン1022の構成を用いて記録する。また、これらに対応する基準パターンのKの記録パターン1601〜1606もパターンマッチング用パターン1022の構成を用いて記録する。
本実施形態ではクリアインクによる記録パターン1617は、図11に示すパターンマッチング用パターン1023の構成を用いて記録する。よって、これに対応する基準パターンのKパターンである記録パターン1607〜1610もパターンマッチング用パターン1023の構成を用いて記録する。基準ヘッドと色間ずれの算出対象ヘッドは、同種のパターンマッチング用パターンを使用する。
本実施形態では、記録ヘッドK(基準ヘッド)と、他の記録ヘッドとの間のずれ量を算出する際に、各記録ヘッドに対して同様の方法を用いて算出する。ここでは、その例として記録ヘッドKと記録ヘッドT(クリアインク)間のずれ量を算出する方法について述べる。記録パターン1620は記録パターン1607に対応し、記録パターン1621は記録パターン1608に対応する。これらは、記録ヘッドKのチップ18で記録した基準ヘッドのパターンである。記録パターン1622は記録パターン1617に対応し、記録ヘッドTのチップ18で記録パターンであり、ずれ量の算出対象の記録ヘッドにて記録された記録パターンである。
記録ヘッドKと記録ヘッドTで各記録パターンを記録した時に、吐出されたインクの着弾位置ずれが全くない場合は、記録パターン1620と記録パターン1621を結ぶ直線上に記録ヘッドTの記録パターンが記録されるようにパターンを配置している。吐出されたインクの着弾位置ずれが全くない理想位置で記録した記録ヘッドTの記録パターンの位置を記録パターン1624で示す。一方、列18パターンの実際の記録位置を記録パターン1622で示す。
本実施形態では、スキャン画像における記録パターン1622と記録パターン1624との間のずれは、記録ヘッドKに対して記録ヘッドTに相対的な位置ずれが生じているとし、そのずれ量をずれ量1625とする。ずれ量1625は、記録パターン1620と記録パターン1621を結ぶ直線に対して直交する、記録パターン1622に対して引いた垂線の長さである。よって、ずれ量1625は、記録パターン1620、記録パターン1621、記録パターン1622の位置から求めることができる。また、記録パターン1620と記録パターン1621を結ぶ直線に対して、記録パターン1622を通る直交する線と、記録パターン1624を通る直交する線との距離を求める。これにより、記録パターン1624と記録パターン1622のずれ量1626を求めることができる。本実施形態では、記録ヘッド位置ずれ補正の計算は、ヘッド位置ずれ量1625と直交する方向についても補正量の計算を行う。よって、ヘッド位置ずれ量は、ずれ量1625とずれ量1626についての両方向について補正量の計算を行う。
以上に示した方法を適用すれば、基準ヘッドに対して、記録ヘッドK以外の各記録ヘッドの色間ずれ量を、それぞれ求めることができる。
(マーク検出処理)
図17は、記録チップ1004に対応したマーク検出処理を説明するための図である。本実施形態において、ズレ量算出のテストパターンの読取画像から、記録チップ1004に対応した各パターンの検知マークを検出する処理について説明する。図17は、図12のパターン1016で示すような、各記録チップに対応したパターンを示している。本実施形態において、記録チップ1004に対応したパターンは、図12のパターン1016、1019、および1209の3種類があるが、検出処理はいずれも同様の方法で行われる。また、記録ヘッド30同士の位置誤差を算出するための、図13のテストパターン1301についても検出処理は同様である。例として、図12のパターン1016を用いて説明する。
マーク検知処理は、大きく分けて3つのステップがある。第1ステップでは、検知マーク1017を検出する。検知マーク1017の検出位置に基づいて、1つ分の記録チップ1004のテストパターンの位置を推定する。第2ステップでは、第1ステップにおけるテストパターンの推定位置に基づいて、アライメントマーク1703を検出する。アライメントマーク1703は図12のパターン1016を例としているのでアライメントマーク1018と同様のマークである。このアライメントマーク1703は、各パターンマッチング用パターンの近傍に記録されているため、アライメントマーク1703の検出位置から対応するパターンマッチング用パターンの位置を推定する。第3ステップでは、第2ステップにおけるパターンマッチング用パターンの推定位置に基づいて、パターンマッチングを用いたパターン位置検出を行う。領域1704は図12のパターン1016を例としているのでパターンマッチング用パターン1022と対応している。
第1ステップにおける、検知マーク1017を検出する処理を説明する。本処理は、検査ユニット9Bが読み取り可能な読取画像のRGBの3つのチャンネルのうち、検出対象のパターンの記録ヘッドの記録色で最も濃度が高くなるチャンネルの輝度値を使用する。例えば、濃度が最も高い色が、C(シアン)の場合はRチャンネルを使用し、M(マゼンタ)の場合はGチャンネルを使用し、Y(イエロー)の場合はBチャンネルを使用する。なお、K(ブラック)のように、全てのチャンネルで高い濃度となる記録色の場合は、いずれかのチャンネルを指定して使用する。
1705は、検知マーク1017の一部を拡大した図である。検知マーク1017は、読取画像の所定領域の平均濃度に基づき検出する。検知マーク検出領域1706は、平均濃度を取得する領域である。検知マーク検出領域1706にて取得された平均濃度が所定濃度以上の場合、その領域を検知マーク領域として特定し、その中心位置を検知マーク検出位置1707とする。検知マーク検出領域の範囲や閾値として用いられる所定濃度は変更してもよい。
続いて、検知マーク1017の左上端位置と右上端位置を検出する。1708は検知マーク1017の左上端部の周辺、1710は右上端部の周辺をそれぞれ拡大した図である。検知マーク検出位置1707から所定濃度以上の領域を走査し、所定濃度以上の領域の左上端部を検知マーク左上端位置1709とする。同様に、その所定濃度以上の領域の右上端部を検知マーク右上端位置1711とする。検知マーク左上端位置1709に基づき決定した位置を起点として、所定領域の濃度重心を計算することでアライメントマーク検出範囲を推定する。図10のパターン1016の検知マーク1017を検出することで、アライメントマーク1703の検出範囲を推定することができる。アライメントマーク1703の検出処理についても、検知マーク1017の検出処理と同様で、所定濃度以上の領域を走査し、領域に対する濃度重心の計算により、アライメントマーク1703の位置を検出する。
続いて、パターンマッチング用パターンの位置を推定する。領域1704はパターンマッチング用パターン左上端位置を示す領域である。また、検知マーク1017の検知結果が、このパターンはどの記録ヘッドのどのチップに対応するテストパターンであるかの判断に使用される。パターンマッチング用パターンは上記の処理によって、大まかな位置を決めた後、パターンマッチング処理を含む位置検出処理を行うことによって、最終的な画像上の位置が検出される。このパターンマッチング用パターンの画像上の位置が、ヘッド位置ずれ補正における各種ずれ量の計算で使用する距離を算出する位置である。ここでの各種ずれ量とは、ノズル列間の製造誤差、チップ間の製造誤差、記録ヘッドの傾き、記録ヘッド間の位置ずれが該当する。
[処理フロー]
図18〜図20は、本実施形態に係る各パターンの読取と、解析の手順を説明するためのフローチャートである。つまり、図18〜図20は、記録媒体1001に記録したヘッド位置ずれ補正のためのテストパターン1002を用いて行う、補正を行うための位置ずれ量の算出及び解析処理のフローチャートである。図18は、ヘッド位置ずれ量の算出全体の処理を示す。図19は、図18のS103の詳細処理を示す。図20は、図18のS104の詳細処理を示す。これらの処理フローは、エンジンコントローラ13Bが備える各制御部が連携して処理を行うものとする。本処理が開始された際には、すでに、記録媒体1001上にテストパターン1002が記録されているものとする。
S101にて、検査ユニット9Bは、記録媒体1001に記録されたヘッド位置ずれ補正用のテストパターン1002を読み取る。このとき、検査ユニット9Bは、白基準となる白色基準板(不図示)を読み取って作成したシェーディングデータを用いて、読み取ったテストパターン1002を補正し、読取画像とする。ここでの白色基準板を用いたシェーディングデータは、予め作成されているものとし、作成のタイミングは、所定の時間間隔にて行われていてもよいし、本処理フローの直前に行われてもよい。検査ユニット9Bがテストパターン1002の読み取りを開始するタイミングは、テストパターン1002の記録の開始から所定量の時間を待った後に、読取り開始してもよい。または、テストパターン1002の記録の終了から所定量の分だけ記録媒体1001を搬送した後に読み取りを開始してもよい。読み取りを終了するタイミングは、読み取り開始から所定の副走査ライン数を読み取った際に終了する。
S102にて、検査制御部15Eは、S101で読み取ったテストパターン1002の読取画像から、記録チップ1004それぞれに対応したパターンを検出する。記録チップ1004それぞれに対応したパターンを検出する処理については、図17を用いて述べた方法で行われる。読取画像の各RGB信号値で記録ヘッド30の記録チップ1004それぞれに対応する検知マーク1017を検知し、最終的にパターンマッチング用パターン1022、1023が検出される。
本実施形態では、ここで検知できる記録ヘッド30それぞれの記録色はK、M、C、Y、クリアインクのうち、K、M、C、Yである。検知する記録色の数は記録媒体1001への記録する記録ヘッド30の状況によって数が変わる。また、本実施形態において、「記録媒体1001の下地色とインク色との輝度値差が小さい」インク色である記録色は、クリアインクであるものとして説明する。なお、下地色とインク色との輝度値の差が、予め規定された閾値よりも小さいインクを、上記インク色として用いてもよい。また、記録チップ1004それぞれに対応したパターンは、記録ヘッド30それぞれの記録チップ1004それぞれに対応したパターン1016、1019、1209のいずれか、または、記録ヘッド30の位置ずれ用のテストパターン1301に分かれる。
S103にて、検査制御部15Eは、S102で検出した記録ヘッド30の記録チップ1004それぞれに対応したパターンを用いて、記録チップ1004のノズル列間ずれ量の算出を行う。更に、検査制御部15Eは、記録チップ1004のチップ間ずれ量の算出を行う。S103の工程については、図19を用いて詳細に述べる。
S104にて、検査制御部15Eは、S102で検出した記録ヘッド30の位置ずれ用のテストパターン1301を用いて、記録ヘッド30それぞれの位置ずれ量の算出を行う。更に、検査制御部15Eは、2回目のテストパターン読み取りと、記録ヘッド30のヘッド位置ずれ量の算出を行う。2回目のテストパターン読み取りでは、S101と同じテストパターンを、異なるシェーディングデータを用いて補正して読取画像とする。その後、検査制御部15Eは、補正量の算出処理を行う。本工程における異なるシェーディングデータとは、記録媒体1001の下地色とクリアインクとの輝度値差がより顕著になるように補正するためのシェーディングデータである。よって、S102のRGB信号とは異なる信号値の読取画像となる。そして、検査制御部15Eは、この読取画像のテストパターンの検出と、位置ずれ量の算出を行う。S104の工程については、図20を用いて詳細に述べる。そして、本処理フローを終了する。
(チップ間/ノズル列間の位置ずれ量算出)
図19は、図18のS103の工程における記録チップ間およびノズル列間の位置ずれ量の算出処理のフローチャートである。
S201にて、検査制御部15Eは、S102でパターンを検出した記録ヘッド30それぞれについて、未解析のパターンがあるか否かを判定する。すべての記録ヘッド30について解析を行っていた場合は(S201にてNO)本処理フローを終了する。未解析のパターンがある場合(S201にてYES)S202へ進む。
S202にて、検査制御部15Eは、解析対象の記録ヘッド30の記録チップ1004それぞれについて、ノズル列間ずれ量の解析を行っていない記録チップに対応するパターンがあるか否かを判定する。すべての記録チップ1004についてノズル列間ずれ量の解析を行っていた場合は(S202にてNO)S204へ進み、未解析のパターンがある場合は(S202にてYES)S203へ進む。
S203にて、検査制御部15Eは、解析対象の記録チップ1004に対応するパターンを選択し、記録チップそれぞれのノズル列間ずれ量の解析を行う。パターンがパターン1016である場合、図14を用いて述べた計算が行われる。パターンがパターン1019かパターン1209である場合、解析がスキップされる。その後、S202へ戻る。
S204にて、検査制御部15Eは、解析対象の記録ヘッド30に対応するパターンを選択し、記録ヘッド30の傾き量の解析を行う。ここでの解析方法は、図15を用いて述べた方法である。
S205にて、検査制御部15Eは、解析対象の記録ヘッド30の記録チップ1004それぞれについて、チップ間ずれ量の解析を行っていない記録チップに対応するパターンがあるか否かを判定する。すべての記録チップ1004についてチップ間ずれ量の解析を行っていた場合は(S205にてNO)S201へ戻り、未解析のパターンがある場合は(S205にてYES)S206へ進む。
S206にて、検査制御部15Eは、解析対象の記録チップ1004に対応するパターンを選択し、各記録チップのチップ間ずれ量の解析を行う。パターンがパターン1016である場合は、図15を用いて述べた計算が行われる。パターンがパターン1019かパターン1209である場合は、解析がスキップされる。その後、S205へ戻る。
以上により、S102でパターンを検出した各記録ヘッド30について、記録チップ1004それぞれのノズル列間ずれ量の算出、記録チップ1004それぞれのチップ間ずれ量の算出、および、記録ヘッド30の傾き量の算出が行われる。
図20は、図18のS104の工程におけるフローチャートである。
S301にて、検査制御部15Eは、記録ヘッド30の位置ずれ量の算出に対応するパターンを選択し、記録ヘッドの傾き量の解析を行う。ここでの解析方法は、図16を用いて述べた方法が用いられる。ここで解析を行う記録色は、S102でパターンを検出した記録ヘッド30それぞれの記録色である。S301の完了により、S102でパターンを検出した記録ヘッド30それぞれの記録色について、記録チップ1004それぞれのノズル列間ずれ量の算出、および、記録チップ1004それぞれのチップ間ずれ量の算出が完了する。S102でパターンを検出した記録ヘッド30それぞれの記録色について、記録ヘッド30の位置ずれ量の算出が完了する。
S302にて、検査ユニット9Bは、S101で読み取ったテストパターン1002と同じパターンを読み取る。このとき、検査ユニット9Bは、記録媒体1001の下地色と「記録媒体の下地色とインク色との輝度値差が小さい」インク色(すなわち、クリアインク)とを読み取って作成したシェーディングデータを作成する。このシェーディングデータの値は下地色を読み取って得たデータとクリアインクを読み取って得たデータとの間の値とする。データが輝度値である場合は、下地色のデータ>クリアインクのデータである。そして、画像のRGBチャンネルのうち1つ以上を対象として上記のシェーディングデータを用いて補正することにより得られるテストパターンの読取画像を取得する。この読み取りにより、S101の読取画像のRGB信号値では検出が困難であったインク色の検知を行うことができる信号値をS302の読取画像に割り当てる。
S101とS302でそれぞれ同じテストパターン1002を異なるシェーディングデータで補正する。この補正では、シェーディングデータの値よりも低い値のデータは最低輝度の値(ここでは0)となるように補正する。下地色のデータ>シェーディングデータ>クリアインクであるとすると、クリアインクの読み取りデータの値は最低輝度に対応する値となる。こうすることで、クリアインクの画像の色が黒に近づくように補正がされる。これにより、S101では、読取画像によるRGB信号値で検出する記録色パターンの正確な記録位置の検出ができる。更に、S302では、読取画像のRGB信号値の1つ以上を使って「記録媒体の下地色とインク色との輝度値差が小さい」インク色(本実施形態では、クリアインク)の記録色パターンの正確な記録位置の検出ができる。また、この方法では検査装置に一般的なスキャナーを用いて実現することができるため、高価な特殊な装置を使う必要はないというメリットもある。
本実施形態では、記録媒体1001の下地色とクリアインクとを読み取ってシェーディングデータを作成し、画像のBチャンネルを補正する。そのため、Bチャンネルでクリアインクの検出が可能な信号値となる。
S303にて、検査制御部15Eは、読取画像のRチャンネルで記録ヘッド30の位置ずれ補正用のパターンを検出する。これはS102で検出した記録ヘッド30の位置ずれ用のテストパターン1301と同様である。本実施形態では、Rチャンネルは白色基準板(不図示)を読み取って作成したシェーディングデータを用いて補正を行うチャンネルであるため、このパターンを検出することができる。
S304にて、検査制御部15Eは、S303で検出した記録ヘッド30の位置ずれ用のテストパターン1301を用いて、記録ヘッドの位置ずれ量の解析をしていない記録ヘッド30のパターン位置を推定する。位置ずれの補正対象の記録ヘッド30は「記録媒体の下地色とインク色との輝度値差が小さい」インク色であり、本実施形態ではクリアインクが相当する。また、記録ヘッド30の位置ずれ補正の基準ヘッドは本実施形態ではKの記録ヘッドであるため、クリアインクとKの記録ヘッドで記録したパターン位置が推定される。
S305にて、検査制御部15Eは、クリアインクの記録ヘッド30の位置ずれ量の算出に対応するパターンを選択し、記録ヘッド30の傾き量の解析を行う。ここでの解析方法は、図16を用いて述べた方法である。ここで解析を行う記録色は、S304でパターン位置を推定し、推定結果に応じて記録色に対応するチャンネルで検出した記録ヘッドの記録色である。本実施形態では、記録ヘッドの位置ずれ補正対象のクリアインクの位置推定領域にはBチャンネルでパターン検出を行い、基準ヘッドであるKの領域はRチャンネルでパターン検出を行う。
S306にて、検査制御部15Eは、クリアインクの記録ヘッド30について、未解析のパターンがあるか否かを判定する。すべてのパターンついて解析を行っていた場合は(S306にてYES)S308へ進み、未解析のパターンがある場合は(S306にてYES)S307へ進む。
S307にて、検査制御部15Eは、解析対象の記録チップ1004に対応するパターンを選択し、記録チップ1004それぞれのノズル列間ずれ量の解析を行う。パターンがパターン1016である場合、図14を用いて説明した算出を行う。パターンがパターン1019、もしくはパターン1209である場合、解析はスキップされる。その後、S306へ戻る。
S308にて、検査制御部15Eは、解析を行っていない記録ヘッド30に対応するパターンを選択し、記録ヘッドの傾き量の解析を行う。ここでの解析方法は、図15を用いて説明した方法である。
S309にて、検査制御部15Eは、解析を行っていない記録ヘッド30の記録チップ1004それぞれについて、チップ間ずれ量の解析を行っていない記録チップに対応するパターンがあるか否かを判定する。すべての記録チップ1004についてチップ間ずれ量の解析を行っていた場合は(S309にてNO)本処理を終了し、未解析のパターンがある場合は(S309にてYES)S310へ進む。
S310にて、検査制御部15Eは、解析を行っていない記録チップ1004に対応するパターンを選択し、記録チップのチップ間ずれ量の解析を行う。パターンがパターン1016である場合は、図15を用いて説明した算出を行う。パターンがパターン1019、もしくはパターン1209である場合、解析はスキップされる。その後、S309へ戻る。
以上により、クリアインクの記録ヘッド30について、記録チップ1004それぞれのノズル列間補正計算、記録チップ1004それぞれのチップ間ずれ量の算出、および記録ヘッド30それぞれの傾き量の算出を行う。
S310の完了により、記録ヘッド30それぞれの記録色について、記録チップ1004それぞれのノズル列間ずれ量の算出、及び、記録チップ1004それぞれのチップ間ずれ量の算出が完了する。また、記録ヘッド30それぞれの傾き量の算出と、記録ヘッド30それぞれの位置ずれ量の算出が完了する。
以上、本実施形態により、テストパターンを読み取る画像において、一部の記録色のパターンが記録媒体の下地色と記録色の輝度値差が少ない場合でも、パターンそれぞれの正確な記録位置を検出できる。また、既存の検知ユニットを用いて処理を行うことから、特殊光源等を用いる必要が無いため、コストを抑えることができる。そして、上記の処理により得られたずれ量に基づき、記録ヘッドの位置制御や、インクの吐出制御が可能となる。
上記では、白色基準板の読取で作成したシェーディングデータを用いて補正した画像と、記録媒体の下地色と記録色の読取で作成したシェーディングデータを用いて補正した画像のRGB信号値でパターンを検出する。この方法により、白色基準板で補正した読取のRGBチャンネルを使って読み取る各記録色と、記録媒体の下地色の輝度値差が少ない記録色の両方のパターンの正確な記録位置を検出できる。よって、テストパターンを読取手段で読み取った画像に、一部の記録色のパターンが記録媒体の下地色と記録色の輝度値差が少ない場合でも、パターンを精度よく検出でき、位置ずれ補正の精度を向上させることが可能となる。
<第2の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態にて述べた構成に対し、更にクリアインクで記録したパターンの視認性を向上させるために、クリアインクで記録するテストパターンを変更した例を示す。テストパターン以外の構成は、第1の実施形態と同様とし、重複する説明は省略する。
図21は、本実施形態に係る記録ヘッドの位置ずれ補正用のテストパターンを説明するための図である。第1の実施形態にて述べた図10との差分は、クリアインクの記録ヘッド30に対応するテストパターン2110、および、記録ヘッド間の色間ずれ量を算出するためのテストパターン2111が変更になっている。パターン2119は、クリアインクに対応する記録チップの1個分のパターンである。パターン2119は、検知マーク2120、アライメントマーク2121、および、パターンマッチング用パターン2123を含んで構成される。パターン2115に示すように、クリアインクの視認性を高めるために、検知マーク2120、アライメントマーク2121、およびパターンマッチング用パターン2123を、第1の実施形態の図10とは白黒反転している。白黒反転することにより、クリアインク部の記録面積が増える。黒い部分は、クリアインクを用いて記録される部分である。白い部分は、未印刷部、すなわち、記録媒体1001の下地部分である。パターンマッチング用パターン2123では、白い未印刷の部分と黒いクリアインクを記録している箇所でパターンを認識することができる。
パターンマッチング用パターン2123の詳細を図22に示す。2203はパターンマッチング用パターン2123の縦方向の画素数を示し、2204は横方向の画素数を示す。これは、第1の実施形態の図11にて示したパターンマッチング用パターン1023と同様である。
図23は、本実施形態に係る記録チップに対応したパターン1016、2119と吐出ノズルの対応について示した図である。1つ分の記録チップのパターン2119のパターンマッチング用パターン2123はそれぞれ、2306のノズルに対応している。
図24は、本実施形態に係る記録ヘッド30間の色間ずれ補正計算を行うテストパターンと記録チップ1004の対応について示す図である。K,C,M,Yについては、第1の実施形態にて述べた図13と同様である。テストパターン2401は、記録ヘッド30同士の位置誤差を算出するテストパターンである。これは、レイアウト2402に示す、各記録色の記録ヘッドでパターンが記録される。レイアウト2402に示すように、Kを基準ヘッドとしてパターンを記録し、各記録ヘッド30の位置ずれを算出する。Kとクリアインク間の位置ずれを算出するパターン2403では、パターンマッチング用パターン2123を使用する。黒い部分が、対応の記憶色(インク)で記録されるパターンの箇所であり、白い部分が未印刷部(すなわち、記録媒体1001の下地)である。本実施形態では、白黒反転したパターンマッチング用パターン2123を用いることで、第1の実施形態よりもクリアインク用のテストパターンの視認性を高めている。なお、基準ヘッドのパターンは、ずれ量を算出する対象の記録色のパターンマッチング用パターンと同様のパターンを使用する。色によって対応するパターンマッチング用パターンは変わってもよい。
図25は、本実施形態に係る記録ヘッド間のずれ量の算出方法を示す図である。本実施形態において、C、M、Yのパターンおよび基準パターンのKパターンである記録パターン1601〜1606、色間ずれの算出方法は、第1の実施形態にて述べた図16と同様である。本実施形態において、クリアインクによる記録パターン2517は、図22に示すパターンマッチング用パターン2123で記録する。よって、これに対応する基準パターンのKパターン2507〜2510もパターンマッチング用パターン2123で記録する。
上記のように、本実施形態では、視認されにくいクリアインクによって記録されるテストパターンを白黒反転のマッチングパターンとすることで視認性を向上させる。さらに、第1の実施形態の図20に示したようなシェーディング処理を合わせて実行することによって、クリアインクの検出の精度を向上させる。
本実施形態では、インク色においてクリアインクの視認性を高めるためにマッチングパターンを白黒反転のパターンにした。しかし、インク色においてはこれに限定されるものではなく、記録媒体の下地色と記録色の輝度値差が少ない場合、例えば淡インクなどにおいても同様の効果を発現する。また、パターンにおいて画像を形成する位置を反転することにより、クリアインクの領域が大きくなり、視認性が向上している場合には、パターンマッチング用のサイズを、カラーインクとクリアインクとが同じになるように構成してもよい。
以上、本実施形態により、第1の実施形態と同様の効果を得ることができ、更に、クリアインクの検出の精度を向上させることが可能となる。
<その他の実施形態>
上記の実施形態では、記録ユニット3が複数の記録ヘッド30を有するが、一つの記録ヘッド30を有してもよい。記録ヘッド30はフルラインヘッドでなくてもよく、記録ヘッド30を着脱自在に搭載するキャリッジをY方向に移動させながら記録ヘッド30からインクを吐出してインク像を形成するシリアル方式であってもよい。
記録媒体Pの搬送機構は、ローラ対によって記録媒体Pを挟持して搬送する方式等、他の方式であってもよい。ローラ対によって記録媒体Pを搬送する方式等においては、記録媒体Pとしてロールシートを用いてもよく、転写後にロールシートをカットして記録物P’を製造してもよい。
また、上記の実施形態では、転写体2を転写ドラム41の外周面に設けたが、転写体2を無端の帯状に形成し、循環的に走行させる方式等、他の方式であってもよい。
また、本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。