JP2020020430A - 高圧ガス容器の固定構造および水素トレーラ - Google Patents

高圧ガス容器の固定構造および水素トレーラ Download PDF

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Abstract

【課題】 複数の高圧ガス容器を、限られたスペース内にコンパクトに配置し安定的に固定するうえで有利な高圧ガス容器の固定構造、および当該構造を有する好ましい水素トレーラを提供する。【解決手段】 発明による固定構造は、筒状の胴部1aの両端部に小径のネック部1bを有する複数の高圧ガス容器1が、2枚の横長のパネル10に複数形成された支持孔10bに上記ネック部1bをそれぞれ挿入して横並びに複数本平行に保持され、かつ、各パネル10が上下の縁部同士を突き合わせて積み重ねられたものである。発明の特徴は、各パネル10に関し、複数形成された上記支持孔10bの位置が、上記縁部同士を突き合わせて積み重ねられた上下隣接の2枚のパネル10において鉛直線上に並んでおらず、かつ、各パネ10ルが、固定用フレーム30として設けられた一対の支持柱32等の間に横長方向の端部を挿入して固定されている点にある。【選択図】 図1

Description

本発明は、複数の高圧ガス容器を固定する高圧ガス容器の固定構造、および、水素が充填された複数の高圧ガス容器を搭載して輸送等する水素トレーラに関するものである。
水素自動車(燃料電池自動車を含む)が普及すると、それらに水素を供給するための水素ステーションを各地に設ける必要が生じる。各地の水素ステーションに水素を出荷するためには、水素を陸上輸送するに適した水素トレーラが必要になる。なお、水素トレーラは、水素ステーションまで水素を運ぶために使用されるだけでなく、水素ステーションに留置され、水素自動車への供給源としても使用され得るものである。
水素トレーラ等として使用できる車両の例は、下記の特許文献1に記載されている。同文献1に記載された車両は図9(a)に示されるもので、荷台の上に図9(b)のような立体的な架台が載せられ、その架台上に複数本の高圧ガス容器が固定されている。高圧ガス容器のそれぞれは、円筒状の胴部(容器本体)の両端にあるネック部を、上記架台の前後に間隔をおいて設けられた一対の横長のパネルに固定されている。各パネルは、図9(b)のように、高圧ガス容器を水平に複数本並べて保持し、各容器の真上に他の容器を配置する形態で上下方向に複数段積み上げられている。
高圧ガス容器の両端のネック部を固定する例は特許文献2にも記載されている。同文献2に示されたネック部の固定状態を図10(a)(b)に示す。ネック部を、十分な厚みを有する四角形の板と、その板の厚みの内部に通されたU字形のボルト等からなる拘束部材により固定している。U字形のボルトを、ネック部の外周にある溝に掛けた状態で上記の板に取り付け、もってネック部を拘束するのである。四角形のその板は、図10(b)のように縦・横の各寸法が高圧ガス容器の胴部の直径よりも大きいため、その板を上下左右に並べて固定することにより、複数の高圧ガス容器を互いに接触させることなく固定配置することができる。
特表平8−510428号公報 特許第4413776号公報
特許文献1に記載のようなトレーラに高圧ガス容器を搭載する場合等には、複数の容器をコンパクトに配置でき、かつ安定的に固定できることが望ましい。コンパクトに配置できるなら、限られたスペース内に多めの高圧ガス容器を設置でき、トレーラにおいては台車を小型化または低重心化できることになる。安定的に固定できることも、当然ながら高圧ガス容器を取り扱ううえできわめて重要である。
上記の点に関し、特許文献1・2に記載された高圧ガス容器の固定構造には改善の余地がある。同文献1の例(図9参照)では、高圧ガス容器の真上に他の高圧ガス容器を配置する構造であるため、上下方向に複数段の容器を配置するとき、1段あたりに、各容器の直径に容器同士の接触を避けるための隙間を加えた高さ寸法が必要となり、搭載高さが増加しがちである。同文献2の例も、拘束部材である板(縦・横の各寸法が高圧ガス容器の胴部の直径より大きい)の上に同様の他の板を載せることによって上下に複数段の高圧ガス容器を配置することになるため、搭載高さが増すことについて同文献1の場合と同じである。
請求項に係る発明は、複数の高圧ガス容器を、限られたスペース内にコンパクトに配置し安定的に固定するうえで有利な高圧ガス容器の固定構造、およびそのような固定構造を有する好ましい水素トレーラを提供するものである。
発明による高圧ガス容器の固定構造は、筒状の胴部の両端部に当該胴部よりも小径のネック部を有する複数の高圧ガス容器を、上下の複数段にわたり結合して固定するためのもので、特許文献1に記載の例(図9参照)と同様、2枚の横長のパネルが上記容器の長さ方向に間隔をあけて平行に配置され、各パネルに複数形成された支持孔のそれぞれに上記ネック部が挿入され保持されることによって横並びに複数の上記容器が平行に支持され、各パネルが、上下の縁部同士を突き合わせて積み重ねられたものである。
ただし、発明による固定構造は特許文献1の例とは異なり、上記の各パネルについて、複数形成された上記支持孔の位置が、上記縁部同士を突き合わせて積み重ねられた隣接の(つまり上下に隣接する)パネル2枚において鉛直線上に並んでおらず、かつ、各パネルが、固定用フレームとして設けられた一対の支持柱の間に横長方向の端部を挿入して固定されていることを特徴とする。図1に示すものは本発明の一例であり、上記の特徴を有している。
上記した高圧ガス容器の固定構造には、作用効果に関してつぎのような特徴がある。
a) 上下に隣接するパネル2枚において、支持孔の位置(したがって高圧ガス容器の中心線の位置)が鉛直線上に並んでいない(すなわち、いわゆる千鳥配置またはそれに近い配置となっている)。そのため、各パネルの上下(高さ)方向の寸法を高圧ガス容器の直径以下にすることが可能で、限られたスペースに多数の高圧ガス容器を固定することができる。
たとえば、高圧ガス容器の位置が鉛直線上に並んだ図9(b)の例では、上下の容器間の接触を防止する目的で上下の各段間に各容器の直径を超える間隔が必要になり、各パネルの上下方向寸法を容器の直径よりも大きくしなければならない。図10の例でも、パネルに相当する拘束部材の上下方向寸法は容器の直径より大きい。しかし、発明の固定構造では、高圧ガス容器の位置を鉛直線上に並べないため、図1(a)に示すとおり、上下各段間の容器の間隔、すなわち各パネルの上下方向寸法を、容器の直径と同じかまたはそれより短くすることができる。こうして容器の上下間間隔を短くできると、限られたスペース内に多数の高圧ガス容器を固定できることになる。
b) パネルの高さ寸法を高圧ガス容器の直径以下にすると、積み重ねるとき左右方向へのパネルの位置が正しくなかった場合や左右に移動した場合等に、高圧ガス容器同士が衝突したり不適切な力を受けたりする恐れがある。しかし、発明による固定構造では、上記のように各パネルが固定用フレーム(図1の符合30)の一対の支持柱(同32・33)の間に挿入されることから、そのような不都合が生じない。そして、各パネルが支持柱間に挿入されて固定されることから、高圧ガス容器がしっかりと安定的に支持される。
上記発明の固定構造について、各パネルにおける上記支持孔の位置は、上下に隣接するパネル2枚において、一方のパネルにおける支持孔が、他方(隣接相手側)のパネルに設けられた各支持孔間の中央位置を通る鉛直線上に設けられているとともに、各パネルの上下方向寸法が、高圧ガス容器における胴部の直径以下(つまり胴部の直径と同等またはそれより小さい)であると、とくに好ましい。
上下に隣接するパネル2枚においては、上記支持孔の位置が、上下隣接のパネル2枚において鉛直線上に並んでいないというだけでなく、水平方向にできるだけ大きく離れているのが、各支持孔に取り付けられる高圧ガス容器の高さ方向の間隔を狭くするうえで有利である。上に記載したように、隣接のパネル2枚において、一方のパネルの支持孔が他方のパネルに設けられた支持孔間の中央位置を通る鉛直線上に設けられているなら、上下隣接のパネル2枚において支持孔の位置が水平方向に最も離れていることになり、上記した容器間の高さ方向の間隔を最も狭めることができる。
上記のように各パネルの支持孔の位置を定めるとともに、各パネルの上下方向寸法(高圧ガス容器間の上記の間隔に相当する)を容器胴部の直径以下にすることで、高圧ガス容器の配置を最も効果的にコンパクト化することが可能になる。
上記発明の固定構造における各パネルは、上記積み重ねのための上下の縁部に、曲げ加工または付加部材の溶接によってそのパネルの主面と直角な部分を設けたものであると、さらに好ましい。図3の例では、当該直角な部分を、そのパネルの主面と一体の部分を曲げ加工することにより形成している。しかし、パネルの上下の縁部に、山形鋼や帯状部材などの付加部材を溶接することによって、同様にパネルの主面と直角な部分を設けるのもよい。
各パネルの上下の縁部に上記のとおりパネルの主面部分と直角な部分を形成すると、前記のように上下の縁部同士を突き合わせて各パネルを積み重ねることが容易になる。上下の縁部同士を突き合わせて各パネルを積み重ねるためには、各パネルに十分な厚みをもたせるのが一般的である。しかし、パネルを厚くすると重量化し、それによって設備コストも取扱い上のコストも増加してしまう。その点、各パネルの上下の縁部に上記のとおり直角な部分を設けると、パネルの厚さを増すことなく、パネルを積み重ねることが容易になる。それは、パネルを含む固定構造を軽量化して、設備上および取扱い上のコストを削減することに通じる。
上記各パネルの各支持孔(すなわち、上記のとおり各高圧ガス容器のネック部を挿入する各支持孔)には、そのネック部を挿入し拘束することができるブラケットが取り付けられていると好ましい。
高圧ガス容器のネック部を、それが挿通されたパネル自体によって保持するためには、パネルそのものに相当の厚みをもたせる必要がある。厚みがないと、ネック部を十分に拘束することができず、また高圧ガス容器から作用する力により簡単に変形するため当該容器をしっかりと固定することができないからである。しかし、そのためにパネルの全体を厚くすると、やはりパネルが重くなり、設備コストも取扱いコストも増加してしまう。上記のように各パネルの各支持孔にブラケットを取り付け、高圧ガス容器のネック部をそれらブラケットに挿通して拘束するなら、各パネルの重量化を抑制できるとともに、ネック部の拘束ないし保持を確実化することが可能である。
上記の各パネルに、高圧ガス容器の上記ネック部の先端の側から上記胴部の側を観察することを可能にする開口が、上記支持孔とは別に設けられているのもよい。
各パネル(の主面)に上記の各支持孔のみが開いているとすると、複数の高圧ガス容器を各パネルに取り付けて積み上げた状態では、容器の状況や、場合によっては容器の有無を外側から観察することが難しくなる。その点、上記した開口が各パネルに設けられていると、上記ネック部の先端の側から、その開口を通して高圧ガス容器の胴部をいつでも観察することができ、各容器の概略の状況を確認したり容器の数をチェックしたりすることが容易になる。
上記の各パネルに、高圧ガス容器と接続された配管(配管の付属機器を含む)を支持するための部材が取り付けられているのも好ましい。
固定された状態の複数の高圧ガス容器のそれぞれには、ガスを供給するための配管が接続される。その配管は、各部に分岐・合流部分を有するうえ、安全弁や各種の調整弁、各種の計器類等を付属させたものであるため、全体として相当の長さがあり重量を有している。そのため、各種の弁や計器類を含む配管が適切なフレーム類により支持されているのが好ましい。上記のように、高圧ガス容器を支持する上記のパネルに配管支持用の適切な部材が取り付けられていて、その部材に配管等を支持させることができるなら、他に専用のフレーム類を設けることなく配管系を効果的に支持することができる。
水素が充填された高圧ガス容器を複数搭載して移送する水素トレーラとしては、当該容器が、上記いずれかの固定構造によって台車上に搭載されているものが好ましい。
そのような水素トレーラでは、複数の高圧ガス容器が、コンパクトなスペースに収められるとともに安定的に固定されるからである。高圧ガス容器の搭載高さを抑制できることから、低重心にしてトレーラの走行を安定化させるという利点もある。
発明に係る高圧ガス容器の固定構造によれば、複数の高圧ガス容器を配置するとき、上下方向の間隔を狭くすることができ、限られたスペース内に多数の高圧ガス容器を設置することができる。また、高圧ガス容器を保持する各パネルが固定用フレームの一対の支持柱の間に挿入されるため、その位置が左右にずれて高圧ガス容器同士が当たる等の不都合が生じない。各パネルが支持柱によってしっかり支持されることから、高圧ガス容器がしっかりと安定的に固定されるという利点もある。各パネルは、上下の縁部に主面と直角な部分を設けたり、高圧ガス容器のネック部の挿入部分にブラケットを付設したりすると、軽量化をはかることもできる。
発明の水素トレーラによれば、複数の高圧ガス容器が所定のスペース内にコンパクトに収められ、かつ、しっかりと安定的に固定される。高圧ガス容器を複数搭載した状態の車両を低重心化する上でも有利である。
発明の固定構造により複数の高圧ガス容器1を結合し固定した状態を示す図であって、図1(a)は正面図、同(b)は側面図である。 2枚のパネル10の間に横並びに複数の高圧ガス容器1が支持された状態を示す斜視図(図2(a))と、パネル10による各高圧ガス容器1の支持状態を示すb部の拡大正面図(同(b))、およびc−c断面図(同(c))である。 パネル10を示す図であって、図3(a)(b)(c)はパネル10A・10C・10Eについて概略を示す平面図・正面図・側面図、同(d)(e)(f)は、パネル10B・10Dについて概略を示す平面図・正面図・側面図である。 パネル10に支持された高圧ガス容器1を固定するための固定用フレーム30を示す斜視図である。 パネル10に支持された各段の高圧ガス容器1(連結体21・22)を固定用フレーム30の支持柱32・33の間に挿入し固定する要領を示す斜視図である。 固定された高圧ガス容器1の構造体50を示す斜視図である。 構造体50として固定された複数本の高圧ガス容器1を搭載した水素トレーラAを示す側面図である。 構造体50として固定された複数本の高圧ガス容器1を搭載した、図7とは別の水素トレーラBを示す側面図である。 図9(a)(b)のぞれぞれは、特許文献1に記載された車両とそれへの高圧ガス容器の搭載状態とを示す図である。 図10(a)(b)のそれぞれは、特許文献2に記載された拘束部材につき使用状態を示す斜視図および正面図である。
図1〜図8に発明の一実施例を示す。この例では、円筒状の胴部内に水素等の高圧ガスが充填された高圧ガス容器を、パネルを用いて水平に複数本整列させるとともに、固定用フレーム内に上下に複数段積み重ねて結合・固定する固定構造等を示している。
図1(a)(b)に、パネル10と固定用フレーム30とを用いて高圧ガス容器1を整列させ積み重ねて固定した状態を示し、図2(a)〜(c)に、各段のパネル10による高圧ガス容器1の支持状態を示す。
高圧ガス容器1は、図2(a)〜(c)に示すように円筒状(略円筒状)の胴部1aを有し、その両端にその胴部1aよりも小径のネック部1bが設けられた容器であり、胴部1a内に高圧ガスが充填される。高圧ガス容器1は、アルミ合金等の軽量金属製容器の外側に炭素繊維等の繊維層を積層した複合容器であり、内部に350気圧以上の圧力で水素等を充填することができる。両端のネック部1bのうち一方にはガスの供給用の元弁(図示省略)が設けられる。
図2に示すとおり、高圧ガス容器1は、前後の各位置に間隔をおいて平行に配置した一対のパネル10に、両端のネック部1bを挿通して支持されている。パネル10は厚さが10mm程度以内の横長の鋼板であり、前後を向いた主面に、上記ネック部1bを挿通するための支持孔10bが横方向に複数個形成され、各支持孔10bの外側に、上記ネック部1bを挿通して拘束できるブラケット11が取り付けられている。ブラケット11は、十分な厚さを有する鋼板にてなり、溶接またはボルト等(図示省略)でパネル10に一体化されている。ブラケット11の厚さの範囲内にパネル10と平行にU字形のボルト12が通され、それをナット13で固定することができる。高圧ガス容器1は、こうした構成のパネル10にて前後のネック部1bを支持されることにより、複数本が間隔をあけて平行かつ水平に配列され、図2(a)のような連結体22として組み付けられる。
なお、上記のブラケット11には、容器1のたわみ等によってネック部1bの角度が変化することに追随できるよう、球面部材を含む軸受構造を含めると好ましい。また、温度や圧力に応じて容器1の長さが変化し得ることに対応すべく、1本の容器1に使用する2個のブラケット11のうち一方は、ネック部1bをスライド可能に支持するものにするとよい。
図1(a)(b)に示す固定構造は、図2(a)に示す高圧ガス容器1の連結体22等を、パネル10を重ねて積み上げることにより上下複数段に配列したものである。
ただし、図1(a)に示すとおり、上下に隣接する各段において、パネル10内の高圧ガス容器1の数および配置を異ならせることにより、高圧ガス容器1の位置が鉛直線上に並ばないようにしている。つまり、図2(a)では1対のパネル10間に4本の高圧ガス容器1を組み付けた連結体22を示したが、それとは別に、1対のパネル10間に5本の高圧ガス容器1を異なる配置で組み付けた連結体21を、図1(a)のように連結体22と交互に積み重ねている。そうすることにより上下各段の高圧ガス容器1の間隔(上下方向の間隔)を狭めて、当該容器1のコンパクトな配置を可能にしている。図1の例では、各段の間隔、すなわちパネル10の高さ寸法を、高圧ガス容器1の胴部1aの直径と同等程度以下にまで小さくしている。
連結体21と22とは、横並びの高圧ガス容器1の間隔が互いに同じとなり、かつ、一方の連結体における各容器1が他方の(上下方向に隣接する)連結体の容器1間の中央位置を通る鉛直線上に配置されるように、パネル10における支持孔10bの位置を定めたものである。したがって、連結体21と22とでは、パネル10における支持孔10bの(すなわちネック部1bの)水平方向の位置が互いに大きく離れている。また、積み重ねる最下段と最上段とのそれぞれには、高圧ガス容器1の下部および上部に空間を確保するために、他の段とは高さ寸法の異なるパネル10を使用している。そのような事情から、図1の例では、パネル10として、最下段から順にパネル10A・10B・10C・10D・10Eという、それぞれに一部の寸法が異なるものを使用している。ただし、パネル10A・10C・10E間、およびパネル10B・10D間では、それぞれ、概略の形状が互いに同じである。
連結体21と22とを単に交互に積み重ねるだけでは、その積み重ねの作業中または積み重ねた後にパネル10が万一左右に移動すると、上下の高圧ガス容器1同士が接触等して損傷を受ける恐れがある。そのため、図1の例では、積み重ねの際、各パネル10(10A・10B・10C・10D・10E)を、固定用フレーム30の各一対の支持柱32および33の間に挿入することとしている。その目的で、一対の支持柱32および一対の支持柱33の各間隔を各パネル10の幅方向文法に合わせて定め、また、前後の支持柱32・33間の距離を、高圧ガス容器1の各ネック部1bに装着した前後一対のパネル10の間隔に合わせて定めている。
こうした支持柱32・33の間にパネル10を挿入することとすると、パネル10の位置が左右へずれる恐れがないため、上下の高圧ガス容器1同士が接触することが確実に防止される。また、上下のパネル10同士が連結されるだけでなく、すべてのパネル10が支持柱32・33によって支えられるため、各容器1が安定的に固定される。
パネル10の構造を図3に示す。図1に示した5段の各パネル10A・10B・10C・10D・10Eのうち、5本の高圧ガス容器1を保持するパネル10A・10C・10Eの概略の構造を図3(a)〜(c)に示し、4本の高圧ガス容器1を保持するパネル10B・10Dの概略構造を図3(d)〜(f)に示している。
各パネル10は、前面または後面に該当する主面10aに、上記のように高圧ガス容器1のネック部1bを挿入できる支持孔10bが等間隔に4箇所または5箇所形成されている。主面10aの上下各縁部には、隣接する上段または下段のパネル10等と確実に積み重ねられ連結されるための屈曲部10cが設けられている。また、横長の主面10aの左右端部には、固定用フレーム30(図4参照)の支持柱32または33に近接してそれらと接合される屈曲部10dが形成されている。屈曲部10cは、容器1のネック部1bの端部寄り(外向き)に屈曲し、屈曲部10dはそれとは逆に容器1の胴部1a寄り(内向き)に屈曲している。屈曲部10cには、隣接する上段または下段のパネル10との間で連結されるためのボルトの挿通孔が複数設けられ、屈曲部10dには、上記支持柱32または33との間で連結されるためのボルトの挿通孔が複数設けられている。屈曲部10c・10dは、主面10aと連続する部材を90°だけ曲げ加工することにより形成されているが、それに代えて山形鋼などの付加部材を主面10aの該当箇所に溶接等して同様に形成するのもよい。
図3のパネル10では主面10aに支持孔10bのみが形成されているが、さらに、支持孔10bの左右隣接位置等に、容器1を外側から観察するための開口を形成するのもよい。パネル10に覆われがちになる容器1の胴部1b等の状態を、ネック部1bの端部の側から目視チェックしやすいようにするためである。
また、各パネル10に配管等の支持部材を取り付けておくのも好ましい。高圧ガス容器1と接続された配管やその付属機器を、その支持部材によってサポートするためである。
上記した連結体21と連結体22(図2(a)参照)は、図4のような固定用フレーム30の支持柱32・33の間に挿入することによって積み上げる。複数の高圧ガス容器1を連結し固定した図1の状態は、そうして固定用フレーム30内に複数の高圧ガス容器1を組み付けたものである。連結体21・22を重ねてパネル10間を互いに連結するだけでなく、固定用フレーム30内に連結体21・22を挿入し、各パネル10と支持柱32・33との間をも連結することにより、さらに結合・固定の強さが高くなる。
図4に示す固定用フレーム30は、鋼板製のベースプレート31の上面に、上方へ延びた形鋼製の2組の支持柱32・33を立設したものである。それら支持柱32・33に、連結体21・22の各パネル10(の左右端部の屈曲部10d)との連結のための挿通孔32a・33aがそれぞれ形成されている。また、ベースプレート31の上面には、最下段の連結体21のパネル10(の下方縁部の屈曲部10c)の連結孔に挿入される連結ボルト30aが上向きに固定されている。
高圧ガス容器1の連結体21・22(図2(a)参照)と固定用フレーム30(図4)とは、たとえば図5のように結合させることができる。すなわち、図2(a)のように複数本の高圧ガス容器1を支持させてできた連結体21・22を、図4の固定用フレーム30の支持柱32・33の内側へ、それら支持柱を案内枠として挿入する要領で図5のように上方から交互に1段ずつ組み入れる。上下に隣接する連結体21・22の間は、パネル10の上下縁部の屈曲部10c(図2)同士をボルト・ナット(図示省略)にて接合し、連結体21・22と支持柱32・33との間は、支持柱32・33に設けた挿通孔32a・33a(図4)を利用して連結する。
そうして合計5段の連結体21・22を固定用フレーム30内に順次に挿入して積み上げ、さらに最上部に上部固定用フレーム40を結合させると、図6に示す構造体50が構成される。
上部固定用フレーム40は、左右に延びた平行なアーム41・42を連結梁43に取り付けたものである。各アーム41・42の下面には挿通孔(図示せず)が形成され、これら挿通孔を、最上段にある連結体21のパネル10の上方縁部の挿通孔と通じさせてボルト(図示省略)により連結することができる。さらに、各アーム41・42の両端部は、固定用フレーム30の支持柱32・33に対してボルトにより連結することができる。ボルト等を利用した上記各部の連結が完了すると、5段に積み重ねられた高圧ガス容器1の連結体21・22は、左右および上下のいずれの側でも固定用フレーム30・40と一体化され、安定的に固定された状態となる。
発明の一態様である水素トレーラAを図7に示す。図示の水素トレーラAは、水素を燃料とする水素自動車(燃料電池自動車を含む)に水素を供給等するための手段であり、水素を充填した高圧ガス容器1を搭載して水素ステーションまで輸送し、また水素ステーションに留置されて水素自動車への水素の供給を行う。輸送の際は、図のようにトラクターに牽引されることによって走行する。
図7の水素トレーラAは、その台車上に、複数本の上記高圧ガス容器1を、図6の状態(構造体50)に固定して搭載している。すなわち、複数本の高圧ガス容器1を図2(a)ように連結体21・22として左右に複数本連結し、それらを固定用フレーム30内に上下に複数組だけ積み上げた構造体50を1組、高圧ガス容器1の軸心が前後を向くよう台車上に取り付けている。こうした水素トレーラAは、複数の高圧ガス容器1がコンパクトに(とくに全高を抑制して)、しかもしっかり固定された状態で搭載されている点で好ましい。
図8に、やはり発明の一態様である別の水素トレーラBを示す。図7の水素トレーラAと同じ目的で使用するものだが、図8の水素トレーラBには、複数本の高圧ガス容器1を図6のように結合した構造体50を2組、台車上に前後に間隔をおいて搭載している。なお、図示の例では、台車の前方位置に取り付けた構造体50は、後方のもの(図6の構造体50)に比べて高圧ガス容器1の上下積載段数が少ない。
搭載した2組の構造体50のそれぞれにおいて高圧ガス容器1は向きを揃えて固定しているが、前方の構造体50と後方の構造体50とでは、高圧ガス容器1の向きを違えている。すなわち、台車の前方に置いた構造体50においては、いずれの容器1も元弁の側を後ろ向きにし、後方に置いた構造体50においてはいずれの容器1も元弁の側を前向きにしている。つまり、前方の構造体50内のすべての容器1と、後方の構造体50内のすべての容器1とを、元弁側同士が向かい合わせになるように配置している。そして、前後各組の容器1の間に、作業員が入れるだけの操作用スペース55ができるように前後の各構造体50間に間隔をとっている。
各高圧ガス容器1の元弁の側では、水素の供給・停止に関するバルブ操作を行う必要があるが、上のようにしたことにより、前後両組の全容器1についてのバルブ操作を、上記1箇所の操作用スペース55において能率的に行うことができる。とくに大型の水素トレーラでは構造体50を3組以上搭載する場合があり得るが、そのような場合も、前後に隣接するいずれか2組について容器1の元弁側同士が操作用スペースをはさんで向かい合うように配置するとよい。
なお、図7・図8の例において、高圧ガス容器1の元弁に配管類を介して接続されている各種の計器や操作バルブ等は、台車上の後端部に近い位置にまとめて設置するのも好ましい。
1 高圧ガス容器
1a 胴部
1b ネック部
10(10A・10B・10C・10D・10E) パネル
10a 主面
10b 支持孔
10c・10d 屈曲部(主面と直角な部分)
11 ブラケット
21・22 連結体
30 固定用フレーム
32・33 支持柱
40 上部固定用フレーム
50 構造体
A・B 水素トレーラ

Claims (7)

  1. 筒状の胴部の両端部に当該胴部よりも小径のネック部を有する複数の高圧ガス容器を、上下の複数段にわたり結合して固定するために、
    2枚の横長のパネルが上記容器の長さ方向に間隔をあけて平行に配置され、各パネルに複数形成された支持孔のそれぞれに上記ネック部が挿入され保持されることによって横並びに複数の上記容器が平行に支持され、各パネルが、上下の縁部同士を突き合わせて積み重ねられている高圧ガス容器の固定構造であって、
    上記の各パネルについて、複数形成された上記支持孔の位置が、上記縁部同士を突き合わせて積み重ねられた隣接のパネル2枚において鉛直線上に並んでおらず、かつ、各パネルが、固定用フレームとして設けられた一対の支持柱の間に横長方向の端部を挿入して固定されている
    ことを特徴とする高圧ガス容器の固定構造。
  2. 上記の各パネルにおける上記支持孔の位置は、上記隣接のパネル2枚において、一方のパネルにおける支持孔が、他方のパネルに設けられた各支持孔間の中央位置を通る鉛直線上に設けられていること、
    および、各パネルの上下方向寸法が、高圧ガス容器における胴部の直径以下であること
    を特徴とする請求項1に記載した高圧ガス容器の固定構造。
  3. 上記の各パネルは、上記積み重ねのための上下の縁部に、曲げ加工または付加部材の溶接によってそのパネルの主面と直角な部分を設けたものであることを特徴とする請求項1または2に記載した高圧ガス容器の固定構造。
  4. 上記各パネルの各支持孔に、そのネック部を挿入し拘束することができるブラケットが取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載した高圧ガス容器の固定構造。
  5. 上記の各パネルに、高圧ガス容器の上記ネック部の先端の側から上記胴部の側を観察することを可能にする開口が、上記支持孔とは別に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した高圧ガス容器の固定構造。
  6. 上記の各パネルに、高圧ガス容器と接続された配管を支持するための部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載した高圧ガス容器の固定構造。
  7. 水素が充填された高圧ガス容器が、請求項1〜6のいずれかに記載した固定構造によって台車上に複数搭載されていることを特徴とする水素トレーラ。
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