JP2020018152A - モータユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】逆転したロータを他部材に衝突させて正転に修正するモータユニットにおいて、ロータが衝突するときに発生する衝突音を軽減する。【解決手段】ACモータと、ACモータの逆転を正転に修正する逆転防止機構と、を備え、逆転防止機構は、ACモータのロータの外面またはロータと一体に回転する部材の外面に設けられた凹部または凸部である係合部と、ロータが逆転したときに係合部の周回軌道に進入して係合部と衝突する樹脂製のストッパ部材と、を有し、ストッパ部材および係合部のいずれか一方が他方よりも容易に変形する弾性材料からなるモータユニット、および、ストッパ部に、係合部と衝突する部位の弾性変形を容易にする切り込み部であるスリットが形成されているモータユニットにより解決する。【選択図】図5
Description
本発明はモータユニットに関する。
従来から、モータの回転を出力軸に伝達する歯車輪列を備えたギヤードモータが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に示すギヤードモータ1は、駆動源としてAC同期モータが用いられており、ロータ11の逆転を正転に修正する逆転防止機構(ロータ11の当接面11h,扇歯車25の突起25c)を備えている。
単相のAC同期モータは始動時に回転する向きが定まらないため、モータの逆転を防止するための機構が別途必要となる。特許文献1のように、逆転したロータ11の当接面11hを扇歯車25に衝突させ、その反動でロータ11を正転に修正する機構を用いる場合、ロータ11が扇歯車25に衝突したときに発生する衝突音が大きいという課題がある。
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、逆転したロータを他部材に衝突させて正転に修正するモータユニットにおいて、ロータが衝突するときに発生する衝突音を軽減することにある。
上記課題を解決するため、本発明のモータユニットは、駆動源であるACモータと、前記ACモータの逆転を正転に修正する逆転防止機構と、を備え、前記逆転防止機構は、前記ACモータのロータの外面または該ロータと一体に回転する部材の外面に設けられた凹部または凸部である係合部と、前記ロータが逆転したときに前記係合部の周回軌道に進入して前記係合部と衝突する樹脂製のストッパ部材と、を有し、前記ストッパ部材および前記係合部のいずれか一方は、他方よりも容易に変形する弾性材料からなることを要旨とする。
互いに衝突するストッパ部材および係合部のいずれか一方が、他方よりも変形しやすい弾性材料からなることにより、これらが衝突したときに発生する衝突音を軽減することができる。
このとき、前記ストッパ部材および前記係合部のいずれか一方は、他方よりも容易に変形する熱可塑性エラストマーからなることが好ましい。また、熱可塑性エラストマーのうち、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
適度な硬度を有し弾性変形も可能な熱可塑性エラストマー(特にポリエステル系熱可塑性エラストマー)でストッパ部材または係合部を構成することにより、これらの衝突音の緩和とロータの逆転防止の信頼性との両立を図ることができる。
また、このとき、前記ストッパ部材が前記係合部よりも容易に変形する弾性材料からなることが好ましい。
係合部は、ロータやこれと一体に回転する部材の外面に設けられる。そのため係合部の材料や形状、構造には、係合部が設けられた回転体の回転動作に影響を及ぼさないよう一定の制限が加えられる。例えば係合部には、これが設けられた回転体の遠心力で変形しない程度の硬度を有する材料を用いる必要がある。また係合部の形状は、同回転体の周方向において均等な形状および間隔で形成された凹部または凸部である必要がある。このような制限の少ないストッパ部材に係合部よりも容易に変形する弾性材料を用いることにより、例えばストッパ部材に設けられたアーム状部の自由端を係合部に衝突させるなど、ストッパ部材および係合部の材料・形状・構造を衝突音の軽減に最適化することが可能となる。
また、上記課題を解決するため、本発明のモータユニットは、駆動源であるACモータと、前記ACモータの逆転を正転に修正する逆転防止機構と、を備え、前記逆転防止機構は、前記ACモータのロータの外面または該ロータと一体に回転する部材の外面に設けられた凹部または凸部である係合部と、前記ロータが逆転したときに前記係合部の周回軌道に進入して前記係合部と衝突するストッパ部材と、を有し、前記ストッパ部材には、前記係合部と衝突する部位の弾性変形を容易にする切り込み部であるスリットが形成されていることを要旨とする。
ストッパ部材にスリットを設け、係合部と衝突する部位を容易に弾性変形可能とすることにより、係合部がストッパ部材に衝突したときの衝突音を軽減することができる。
このとき、前記ストッパ部材は、本体部と、緩衝部と、を有し、前記緩衝部は、前記本体部から延出するアーム状部であり、前記緩衝部の自由端である先端部と前記本体部との間には前記スリットにより隙間が設けられており、前記係合部は、前記緩衝部の先端部に衝突することが好ましい。
緩衝部のうち特に変形しやすい先端部(自由端)に係合部を衝突させることにより、係合部がストッパ部材に衝突したときの衝突音をより顕著に抑えることができる。
また、前記緩衝部の先端部は、該緩衝部の他の部分よりも肉厚に形成されており、前記先端部と前記他の部分との境目はリブで補強されていることが好ましい。
係合部に衝突する緩衝部の先端部を肉厚に形成し、先端部と他の部分とを別途リブで補強することにより、ストッパ部材の全体的な小型化や薄肉化と先端部の強度との両立を図ることができる。
また、前記ストッパ部材は、弾性変形した前記緩衝部が突き当たることで該緩衝部の変形可能な限界位置を定める変形制限部を有することが好ましい。
本発明の緩衝部はストッパ部材の本体部よりも弾性変形しやすいことをその特徴としている。これにより係合部が衝突したときに発生する衝突音が軽減される一方、緩衝部に係合部が勢いよく衝突したときやロータのトルクが大きい場合には、係合部が緩衝部を退けて逆転を継続するおそれがある。所定量変形した緩衝部が突き当たることで緩衝部のそれ以上の変形を阻止する変形制限部をストッパ部材に設けることにより、このような動作異常を未然に防止することができる。
また、本発明のモータユニットは、前記ACモータが単相のAC同期モータであり、前記係合部は、前記ロータの死点を避けた位置で前記緩衝部と衝突するように配置されていることが好ましい。
構造が単純な単相のAC同期モータを駆動源として採用することにより部品コストを抑えることができる。一方、ストッパ部材に逆転が阻止されたときのロータの配置角度がロータの死点(いわゆるデッドポイント)に重なった場合、ロータが始動不能に陥るおそれがある。ロータの死点を避けた位置でストッパ部材に係止部を衝突させることにより、このような動作異常を未然に防止することが可能となる。
このように、本発明にかかるモータユニットによれば、逆転したロータを他部材に衝突させたときに発生する衝突音を軽減することが可能となる。
[構成概要]
以下、本発明にかかるモータユニットの実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明のモータユニットをその一部に備える排水弁駆動装置900の内部構造を示す平面図である。図2は、排水弁駆動装置900の展開断面図である。なお、以下の説明における「上」および「下」とは、図2における上下方向をいうものとする。
以下、本発明にかかるモータユニットの実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明のモータユニットをその一部に備える排水弁駆動装置900の内部構造を示す平面図である。図2は、排水弁駆動装置900の展開断面図である。なお、以下の説明における「上」および「下」とは、図2における上下方向をいうものとする。
[モータユニット]
図3(a)は、排水弁駆動装置900から本例のモータユニットMの構成を抜き出した平面図である。本例のモータユニットMは、主に、駆動源であるモータ100、および扇形ギヤ600により構成されている。図3(b)は、モータ100の逆転を正転に修正する機構である逆転防止機構Sを構成する部材を拡大した部分拡大図である。以下、これらモータ100、扇形ギヤ600、および逆転防止機構Sについて説明する。
図3(a)は、排水弁駆動装置900から本例のモータユニットMの構成を抜き出した平面図である。本例のモータユニットMは、主に、駆動源であるモータ100、および扇形ギヤ600により構成されている。図3(b)は、モータ100の逆転を正転に修正する機構である逆転防止機構Sを構成する部材を拡大した部分拡大図である。以下、これらモータ100、扇形ギヤ600、および逆転防止機構Sについて説明する。
(モータ)
モータ100は後述する逆転防止機構Sにより回転方向が一方向に制御される単相のAC同期モータである。なお、本例におけるモータ100の正転とは、ロータ120が図3視時計回りに回転することをいい、モータ100の逆転とは、ロータ120が図3視反時計回りに回転することをいう。
モータ100は後述する逆転防止機構Sにより回転方向が一方向に制御される単相のAC同期モータである。なお、本例におけるモータ100の正転とは、ロータ120が図3視時計回りに回転することをいい、モータ100の逆転とは、ロータ120が図3視反時計回りに回転することをいう。
図4は、モータ100の構造を示す側面視断面図である。モータ100は、上部が開口した略カップ形状の金属製のモータケース190、モータケース190の内周面に沿って配置された円環形状のステータ110、ステータ110の内側に配置されたロータ120、および、ロータ120内に配置され、ロータ120と回転中心を同じくする回転体である誘導回転体150により構成されている。
モータケース190は、ロータ120を回転可能に支持するロータ支軸131を有している。ロータ支軸131は、ステンレス等の金属で形成された固定軸であり、モータケース190の底部中央にその基端部が圧入固定されている。なお、ステータ110の上面には、排水弁駆動装置900を構成する他の回転部材や、回動部材を支持する支軸・軸受が立設されている。
ロータ120は、ロータマグネット121、ロータボス122、および磁気誘導マグネット123により構成されている。
ロータマグネット121は、永久磁石からなる略円筒形状の部材である。ロータマグネット121は、その外周面をステータ110の内周面に対向させて配置されており、ステータ110が発生させる磁界により回転する。
ロータマグネット121の上端には、その外周面側の縁部に、後述する逆転防止機構Sの一部を構成する切り欠き状の凹部である係合部121aが設けられている。係合部121aは、ロータマグネット121の周方向に沿って等間隔に4箇所設けられている。
ロータボス122は、ロータマグネット121とともにインサート成形された樹脂製の軸体であり、モータ100の出力軸である。ロータボス122は、その径方向中心に軸線方向に貫通された軸穴122bを有しており、軸穴122bにはロータ支軸131が挿通されている。ロータボス122およびロータマグネット121は、これらの下端部から互いに他方の部材側に向かって径方向に延びた部分が結合されており、かかる結合部はロータ120の底部120aを構成している。これにより、ロータ120の内部には、上部が開口した略円柱形状の空間が形成されている。また、ロータボス122の上面には、ロータボス122に隣接する歯車部材であるクラッチ歯車200にモータ100の駆動力を伝達する複数の凸部である駆動側係合爪122aが形成されている。
磁気誘導マグネット123は、ロータマグネット121の内周面に貼着された環状の永久磁石である。
磁気誘導マグネット123の内側には誘導回転体150が配置されている。誘導回転体150は、誘導リング部R、および誘導リング部Rとともにインサート成形された樹脂製の軸体であるボス部153により構成されている。誘導回転体150は、磁気誘導マグネット123が回転することにより生じる渦電流の電磁誘導作用により、ロータ120に連れ回って回転する。
誘導リング部Rは、略円筒形状の銅管151、および、銅管151の筒内に圧入される略円筒形状の鉄管152により構成されている。銅管151は、非磁性導体である銅からなる誘導体である。鉄管152は、強磁性体である鉄製の部材であり、磁気誘導マグネット123の磁気吸引力が作用するバックヨーク部である。
ボス部153は、その径方向中心に沿って貫通された軸穴153bを有しており、軸穴153bにはロータボス122が挿通されている。ボス部153は、ロータボス122によりスラスト方向およびラジアル方向に支持されている。なお、ボス部153はロータボス122には固定されていない。そのため、誘導回転体150は、誘導回転体150に対する電磁誘導作用が、誘導回転体150に加えられた回転抵抗を上回るときにロータ120に連れ回って回転する。また、ボス部153の上端には、後述する逆転防止機構Sの一部を構成する平歯車である歯車部153aが設けられている。
(扇形ギヤ)
図5は、扇形ギヤ600の構造を示す平面図(図5(a))および斜視図(図5(b))である。扇形ギヤ600は、モータ100がその始動時に逆転したときに係合部121aの周回軌道に進入して係合部121aと衝突するストッパ部材である。
図5は、扇形ギヤ600の構造を示す平面図(図5(a))および斜視図(図5(b))である。扇形ギヤ600は、モータ100がその始動時に逆転したときに係合部121aの周回軌道に進入して係合部121aと衝突するストッパ部材である。
扇形ギヤ600は、平面視略扇形の本体部610と、本体部610から延出したアーム状部である緩衝部620とを有している。
扇形ギヤ600の本体部610の円弧に相当する部分には、誘導回転体150の歯車部153aに噛合する歯車部611が形成されている。本例の緩衝部620は、同円弧の一方の端部に設けられている。
緩衝部620は、その基端部620bが本体部610に連続しており、先端部620aは自由端となっている。緩衝部620は、扇形ギヤ600に設けられた切り込み部であるスリット621により、本体部610との間に隙間が設けられている(本体部610に連続した基端部620bを除く)。より具体的には、本例のスリット621は、本体部610の扇形を構成する2つの半径のうちの一方から本体部610の円弧方向に沿って切り込まれており、これにより本体部610との間に隙間を有する緩衝部620が形作られている。なお、同半径におけるスリット621の形成位置や深さは、係合部121aとの衝突時の衝撃やロータ120のトルクに応じて適宜調節すればよい。
扇形ギヤ600は、モータ100がその始動時に逆転したときには、係合部121aの周回軌道に緩衝部620を侵入させ、係合部121aと緩衝部620の先端部620aとを衝突させる。自由端である緩衝部620の先端部620aは、変形によりその衝撃を吸収し、衝突音を軽減する。
また、緩衝部620の先端部620aは、緩衝部620の他の部位よりも肉厚に形成されている。先端部620aと他の部位との境目はリブ622で補強されており、これにより扇形ギヤ600の全体的な小型化や薄肉化と先端部620aの強度との両立が図られている。
ここで、本例の係合部121aは、ロータ120の死点(いわゆるデッドポイント)を避けた位置で緩衝部620に衝突するように配置されている。本例のモータユニットMは、構造が単純な単相モータを駆動源として採用することにより部品コストを抑えている。一方、緩衝部620に逆転が阻止されたときのロータ120の配置角度がロータ120の死点位置と重なった場合、ロータ120が始動不能に陥るおそれがある。本例では、ロータ120の死点を避けるように係合部121aが配置されていることにより、このような動作異常が未然に防止されている。
また、本例の扇形ギヤ600の材料には、係合部121aよりも容易に変形する弾性材料であるポリエチレン系熱可塑性エラストマーが用いられている。扇形ギヤ600を弾性材料で成形することにより、係合部121aとの衝突音がより顕著に抑えられている。また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは適度な硬度を有しており、これにより係合部121aとの衝突音の緩和とロータ120の逆転防止の信頼性との両立が図られている。
なお本例では、扇形ギヤ600をポリエチレン系熱可塑性エラストマーで成形することで衝突音の軽減を図っているが、かかる効果は、係合部121a側を扇形ギヤ600よりも容易に変形する弾性材料で成形することによっても得ることができる。ただしその場合、係合部121aの材料には、ロータ120の回転に伴う遠心力で変形しない程度の硬度を有するものを用いる必要があり、また、係合部121aは、ロータ120の回転動作を阻害しないよう、ロータ120の周方向において均等な形状および間隔で設けられる必要がある。本例では、このような制限の少ない扇形ギヤ600をポリエチレン系熱可塑性エラストマーで成形することにより、変形容易なアーム状の緩衝部620の先端部620aで衝突音を吸収することが可能とされている。なお、扇形ギヤ600に用いられる弾性材料はポリエチレン系熱可塑性エラストマーには限られず、他の熱可塑性エラストマーを採用することもできる。
その他、扇形ギヤ600の回動中心部からは円筒形状の軸体630が上方に延出している。軸体630の上部には、軸体630の径方向外側に突出した係止片である正転時係止片635が形成されている。また、扇形ギヤ600の回動中心部からはさらに、誘導回転体150側の略反対方向に向かって、棒状のレバー部640が延出している。図3に示されるように、レバー部640の先端にはコイルばね690の一端が取り付けられるばねポスト641が設けられており、コイルばね690の他端は、ステータ110上に設けられたピン135に取り付けられている。
(逆転防止機構)
以下、図3(b)を参照して本例の逆転防止機構Sについて説明する。本例の逆転防止機構Sは、主に、ロータ120の係合部121a、扇形ギヤ600の歯車部611と緩衝部620、および誘導回転体150により構成されている。
以下、図3(b)を参照して本例の逆転防止機構Sについて説明する。本例の逆転防止機構Sは、主に、ロータ120の係合部121a、扇形ギヤ600の歯車部611と緩衝部620、および誘導回転体150により構成されている。
モータ100が逆転すると、これに連れ回って誘導回転体150が反時計回りに回転する。そして、誘導回転体150の歯車部153aに歯車部611が噛合する扇形ギヤ600は時計回りに回動する。ロータ120がさらに逆転すると、扇形ギヤ600の緩衝部620の先端部620aが係合部121aの周回軌道に侵入し、係合部121aに衝突する。この衝撃により、ロータ120の回転方向は正転に修正される。なお、本例の係合部121aはロータ120の外面に設けられた凹部であるが、係合部121aはロータ120と一体に回転する他の部材の外面に設けられてもよく、また、凸部であってもよい。
また、扇形ギヤ600には、弾性変形した緩衝部620の先端部620aが突き当たることで緩衝部620の変形可能な限界位置を定める変形制限部Lが設けられている。
これまで述べたように、緩衝部620の先端部620aは弾性変形しやすいように工夫されており、これにより係合部121aが衝突したときに発生する衝突音が軽減されている。その反面、係合部121aが先端部620aに勢いよく衝突したときや、ロータ120のトルクが大きいときには、係合部121aが先端部620aを退けて逆転を継続するおそれがある。変形制限部Lは、所定量変形した緩衝部620がこれに突き当たることで、緩衝部620のそれ以上の変形を阻止する。これにより衝突音の軽減と逆転の確実な修正との両立が図られている。
[排水弁駆動装置]
以下、図1および図2を参照して排水弁駆動装置900の他の構成について説明する。排水弁駆動装置900は、モータ100の駆動力により外部部材である排水弁Vを開放する装置である。本例の排水弁Vは、その初期状態において閉塞されており、また、図示しない付勢手段により排水弁Vには常にこれを閉塞させる方向に付勢力が作用している。排水弁駆動装置900は、かかる付勢力に抗して排水弁Vを牽引することでこれを開放させ、また、その開放状態を維持する。
以下、図1および図2を参照して排水弁駆動装置900の他の構成について説明する。排水弁駆動装置900は、モータ100の駆動力により外部部材である排水弁Vを開放する装置である。本例の排水弁Vは、その初期状態において閉塞されており、また、図示しない付勢手段により排水弁Vには常にこれを閉塞させる方向に付勢力が作用している。排水弁駆動装置900は、かかる付勢力に抗して排水弁Vを牽引することでこれを開放させ、また、その開放状態を維持する。
排水弁駆動装置900は、駆動源であるモータ100、モータ100の駆動力を被駆動体である排水弁Vに伝達する動力伝達経路である第1経路P1、第1経路P1による駆動力の伝達を「継」状態または「断」状態に切り替えるクラッチ機構C、モータ100の正転時の駆動力を第1経路P1に伝達させるフィルタ機構F、および、フィルタ機構Fにモータ100の駆動力を伝達する動力伝達経路である第2経路P2と、を備えている。なお、モータユニットMの逆転防止機構Sはフィルタ機構Fの一部である。
(第1経路)
以下、第1経路P1の構成について説明する。第1経路P1は、モータ100の正転時の駆動力により排水弁Vをワイヤー450で牽引する出力経路である。
以下、第1経路P1の構成について説明する。第1経路P1は、モータ100の正転時の駆動力により排水弁Vをワイヤー450で牽引する出力経路である。
第1経路P1は、駆動源側から排水弁V側に向かって、モータ100のロータ120、クラッチ歯車200、遊星歯車機構300、第1経路第4歯車410(以下、単に「歯車410」という。)、第1経路第5歯車420(以下、単に「歯車420」という。)、ウインチ部材430、およびワイヤー450により構成されている。なお、ワイヤー450の先端部には排水弁V側に取り付けられる留め金451が固定されている。
ロータ120のロータボス122上面に設けられた駆動側係合爪122aが、クラッチ歯車200の下面から下方に突出した複数の凸部である従動側係合爪210と係合することにより、モータ100の駆動力がクラッチ歯車200に伝達される。
クラッチ歯車200の外周面に形成された平歯車である歯車部220は、遊星歯車機構300の入力部である入力歯車311と噛合している。入力歯車311はクラッチ歯車200よりも大径の歯車であり、これによりモータ100の回転は減速されて遊星歯車機構300に入力される。そして、遊星歯車機構300内でモータ100の回転はさらに減速され、出力される。
遊星歯車機構300の出力部である出力歯車333には、歯車410の大径歯車部411が噛合しており、歯車410の小径歯車部412には、歯車420の大径歯車部421が噛合している。歯車420は、そのセレーション部422が、ウインチ部材430に形成された貫通孔431に嵌合されており、歯車420とウインチ部材430とは周方向へ一体的に回転する。これによりモータ100の回転はさらに減速され、ワイヤー450を介して排水弁Vに伝達される。
(遊星歯車機構)
遊星歯車機構300は、第1経路P1の一部を構成するとともに、その差動歯車構造を利用して、後述するフィルタ機構Fの一部を構成している。図6は、遊星歯車機構300の構造を示す側面視断面図である。遊星歯車機構300は、太陽歯車部材310、内歯車部材320、3つの遊星歯車331、および遊星キャリア部材330により構成されている。
遊星歯車機構300は、第1経路P1の一部を構成するとともに、その差動歯車構造を利用して、後述するフィルタ機構Fの一部を構成している。図6は、遊星歯車機構300の構造を示す側面視断面図である。遊星歯車機構300は、太陽歯車部材310、内歯車部材320、3つの遊星歯車331、および遊星キャリア部材330により構成されている。
太陽歯車部材310は、太陽歯車312が形成された内筒310aと、遊星歯車機構300の入力部である入力歯車311が外周面に形成された外筒310bとが、これらの上端部で一体化された二重筒構造の歯車部材である。外筒310bの入力歯車311は、クラッチ歯車200の歯車部220と噛合しており、内筒310aの太陽歯車312は、太陽歯車部材310の内部で3つの遊星歯車331と噛合している。これにより、クラッチ歯車200の回転は、入力歯車311から太陽歯車312を経て、これら遊星歯車331に伝達される。
内歯車部材320は、その内周面に内歯車322が形成された略キャップ形状の歯車部材である。内歯車部材320は、その上部が太陽歯車部材310の外筒310b内に嵌合されており、太陽歯車部材310から露出した下端部にはフィルタ歯車321が形成されている。フィルタ歯車321は、内歯車部材320の下端部から径方向外側に円環状に延出したフランジ状の平歯車である。内歯車部材320の内歯車322は遊星歯車331と噛合しており、フィルタ歯車321は後述する第2経路P2を構成する第2経路第4歯車720(以下、単に「歯車720」という。)の小径歯車部722と噛合している。
遊星キャリア部材330は、遊星歯車331を回転可能に支持する枠体である遊星支持部332と、遊星支持部332から下方に延出した、遊星歯車機構300の出力部である出力歯車333と、が一体化された部材である。遊星キャリア部材320の出力歯車333は、第1経路P1を構成する歯車410の大径歯車部411と噛合している。
遊星歯車機構300において、入力歯車311の回転、つまり太陽歯車312の回転が出力歯車333に伝達されるかどうかは、フィルタ歯車321の角度位置が固定されているかどうかにより決定される。フィルタ歯車321の回転が歯車720の小径歯車部722に係止されると、フィルタ歯車321とともに、内歯車部材320の内歯車322の角度位置も固定される。フィルタ歯車321が固定されているときに太陽歯車312が回転すると、その回転は遊星歯車331に伝えられ、遊星歯車331は、固定された内歯車322に沿って公転し、遊星支持部332とともに出力歯車333を回転させる。一方、フィルタ歯車321が固定されていないときには、太陽歯車312の回転は遊星歯車331の自転を経て内歯車322の空転により消費され、出力歯車333には伝達されない。
つまり、モータ100の正転時にフィルタ歯車321を固定することで、モータ100正転時の駆動力を第1経路P1に伝達させることができ、モータ100逆回転時の駆動力を内歯車322の空転により消失させることができる。
(第2経路およびフィルタ機構)
以下、図7、図8、図2、および図5を参照して第2経路P2およびフィルタ機構Fの具体的な構成について説明する。フィルタ機構Fはモータ100の正転時の駆動力を第1経路P1に伝達させる機構である。第2経路P2は、かかるフィルタ機構Fを作動させる出力経路である。
以下、図7、図8、図2、および図5を参照して第2経路P2およびフィルタ機構Fの具体的な構成について説明する。フィルタ機構Fはモータ100の正転時の駆動力を第1経路P1に伝達させる機構である。第2経路P2は、かかるフィルタ機構Fを作動させる出力経路である。
フィルタ機構Fおよび第2経路P2は、駆動源側から遊星歯車機構300側に向かって、誘導回転体150、扇形ギヤ600、扇形ギヤ600に隣接する歯車部材である第2経路第3歯車710(以下、単に「歯車710」という。)、歯車720(第2経路第4歯車720)、および遊星歯車機構300の内歯車部材320により構成されている。
図7は、モータ100が逆転したときのフィルタ機構Fの動作を示す平面図である。モータ100が逆転すると、これに連れ回って誘導回転体150が反時計回りに回転する。そして、誘導回転体150の歯車部153aに噛合する扇形ギヤ600は時計回りに回動する。扇形ギヤ600側面に設けられた円弧形状の切欠き612(図5参照)が歯車710の基端部に当接する位置まで扇形ギヤ600が回動すると、扇形ギヤ600はそれ以上回動することができなくなる。そして、扇形ギヤ600と噛合する誘導回転体150も、それ以降の回転が扇形ギヤ600により係止される。
上でも述べたように、誘導回転体150のボス部153はロータボス122には固定されておらず、誘導回転体150は、誘導回転体150に対する電磁誘導作用が、誘導回転体150に加えられた回転抵抗を上回るときロータ120に連れ回って回転する。そのため、誘導回転体150の回転が扇形ギヤ600に係止された後も、ロータ120は逆転を継続する。
扇形ギヤ600が歯車710の基端部に当接する位置まで回動した状態でロータ120が逆転すると、ロータ120の係合部121aが扇形ギヤ600の緩衝部620の先端部620aに衝突する。この衝撃により、ロータ120の回転方向は正転に修正される。
歯車710は、その上部の外周面に、扇形ギヤ600の正転時係止片635と係合可能な複数の係合突起711が形成されている。また、歯車710の下部には平歯車である歯車部712が設けられている。
歯車720は、同軸上に重ねられた大径歯車721および小径歯車722が一体成形された複合歯車である。歯車720の大径歯車721は歯車710の歯車部712と噛合しており、歯車720の小径歯車722は内歯車部材320のフィルタ歯車321と噛合している。
図8は、モータ100が正転したときのフィルタ機構Fの動作を示す平面図である。モータ100が正転すると、これに連れ回って誘導回転体150が時計回りに回転する。そして、誘導回転体150の歯車部153aに噛合する扇形ギヤ600は反時計回りに回動する。なお、このとき、コイルばね690は、扇形ギヤ600に引張され、扇形ギヤ600を原位置に戻すように扇形ギヤ600を付勢する。
扇形ギヤ600の正転時係止片635が歯車710の外周面に当接する位置まで扇形ギヤ600が回動すると、扇形ギヤ600はそれ以上回動することができなくなる。そして、扇形ギヤ600と噛合する誘導回転体150も、それ以降の回転が扇形ギヤ600により係止される。なお、この場合でもロータ120は正転を継続する。
扇形ギヤ600の正転時係止片635が歯車710の外周面に当接すると、歯車710の係合突起711が正転時係止片635に係合することで、歯車710の回転が係止される。なお、モータ100が正転したときには、歯車710は、フィルタ歯車321から逆流してきた駆動力により時計回りに回転しようとする。
歯車710の時計回りの回転が係止されると、これに連動して、歯車720とフィルタ歯車321(内歯車部材320)の回転も係止される。これにより、第1経路P1にモータ100の駆動力が伝達されるようになる。
(クラッチ機構)
以下、図9乃至図12を参照して排水弁駆動装置900のクラッチ機構Cについて説明する。図9は、排水弁Vを駆動しているときのクラッチ機構Cの動作状態を示す平面図(図10を矢示B方向から見た図)であり、図10はクラッチ機構Cの同動作状態を示す側面図(図9を矢示A方向から見た図)である。なお、排水弁駆動装置900を停止したときも、クラッチ機構Cは、図9および図10に示される状態となる。図11は、排水弁Vの開放状態を維持しているときのクラッチ機構Cの動作状態を示す平面図(図12を矢示B方向から見た図)であり、図12はクラッチ機構Cの同動作状態を示す側面図(図11を矢示A方向から見た図)である。なお、図10および図12では、歯車420の記載を省略している。
以下、図9乃至図12を参照して排水弁駆動装置900のクラッチ機構Cについて説明する。図9は、排水弁Vを駆動しているときのクラッチ機構Cの動作状態を示す平面図(図10を矢示B方向から見た図)であり、図10はクラッチ機構Cの同動作状態を示す側面図(図9を矢示A方向から見た図)である。なお、排水弁駆動装置900を停止したときも、クラッチ機構Cは、図9および図10に示される状態となる。図11は、排水弁Vの開放状態を維持しているときのクラッチ機構Cの動作状態を示す平面図(図12を矢示B方向から見た図)であり、図12はクラッチ機構Cの同動作状態を示す側面図(図11を矢示A方向から見た図)である。なお、図10および図12では、歯車420の記載を省略している。
クラッチ機構Cは、第1経路P1によるモータ100の駆動力の伝達を「継」状態または「断」状態に切り替える機構である。クラッチ機構Cは、主に、モータ100のロータボス122、第1経路P1においてロータボス122の従動側に隣接する歯車部材であるクラッチ歯車200、略扇形の板状部材であるクラッチレバー500により構成されている。クラッチレバー500は、排水弁Vの開閉状態に合わせて、その基端部の支軸136を回動中心として所定の角度範囲内を水平方向へ往復移動する部材である。
ロータボス122およびクラッチ歯車200は、ロータ支軸131により同軸線上で支持されている。クラッチ歯車200の軸方向位置は固定されておらず、クラッチ歯車200は、ロータ支軸131上を上下方向に移動可能である。ロータボス122のクラッチ歯車200側の端面である上面122sと、クラッチ歯車200のロータボス122側の端面である下面200sとの間には、これらを離間方向へ付勢する付勢部材であるコイルばね250が配置されている。
ロータボス122の上面122sには、クラッチ歯車200側に突出した複数の凸部である駆動側係合爪122aが形成されている。そして、クラッチ歯車200の下面200sには、ロータボス122側に突出した複数の凸部である従動側係合爪210が形成されている。従動側係合爪210が駆動側係合爪122aに係合することにより、モータ100の駆動力はクラッチ歯車200に伝達される。すなわち、第1経路P1が「継」状態となる。また、これら従動側係合爪210および駆動側係合爪122aの係合が解除されることにより、第1経路P1は「断」状態となる。
クラッチ歯車200は、その歯車部220から上方に突出した筒状の従動軸240を有している。クラッチレバー500はその下面に、ロータボス122とクラッチ歯車200との間隔を制御するカムであるスロープ部510を有している。スロープ部510は、クラッチ歯車200の従動軸240が接触するテーパ面511を有している。スロープ部510は、テーパ面511でクラッチ歯車200の従動軸240を押圧することにより、クラッチ歯車200の軸方向位置を制御する。より具体的には、排水弁Vの開放時には、クラッチ歯車200を押圧してその軸方向位置を下げることにより、従動側係合爪210を駆動側係合爪122aに係合させ、排水弁Vの開放が完了し、その開放状態を維持するときには、押圧を解除して従動側係合爪210を駆動側係合爪122aから離間させる。
また、図12に示されるように、スロープ部510のテーパ面511は、ロータボス122とクラッチ歯車200とが離間しているときの従動軸240の位置(図12視左側)から、これらが係合しているときの従動軸240の位置(図12視右側)に向かって、順に、面位置が次第に高くなる第1テーパ面511aと、頂部を経て面位置が次第に低くなる第2テーパ面511bと、を有している。なお、第2テーパ面511bにおける面位置の低下量Dは、第1テーパ面511aにおける面位置の上昇量Uよりも小さい。例えば図10に示されるように、ロータボス122とクラッチ歯車200とを係合させたときに、第1テーパ面511aとは逆方向に傾斜した第2テーパ面511bで従動軸240を支持することにより、装置の振動などのはずみでクラッチ歯車200が第1テーパ面511aを下ってしまうことが抑制されている。
図9および図11に示されるように、歯車420の上面420aには、その周方向位置により溝幅を変えて形成された略円弧形状の溝部であるカム溝423が設けられている。一方、クラッチレバー500の下面には、歯車420とその水平方向における位置が重なる部分に、下方に突出した軸部である従動軸530が形成されている。クラッチレバー500の従動軸530は、歯車420のカム溝423に嵌合されている。つまり、歯車420およびクラッチレバー500は表面カムを構成している。クラッチレバー500は歯車420のカムフォロアーであり、歯車420の回動に追従して、水平方向における所定の角度範囲内を往復移動する。
また、クラッチレバー500には、ロータ支軸131が挿通される長穴であるガイド穴540が形成されている。ガイド穴540は、クラッチレバー500の可動範囲内において、ロータ支軸131と位置が重なる部分の全長にわたって形成されている。また、ガイド穴540はスロープ部510にも及んでおり、このため、スロープ部510は平面視略U字形に形成されている。
また、クラッチレバー500の下面には、下方に突出した凸部である係止片520が形成されている。そして、クラッチ歯車200には、その従動軸240から径方向外側に延出した凸部である被係止片230が設けられている。クラッチ歯車200の被係止片230が、クラッチレバー500の係止片520と周方向に係合することにより、クラッチ歯車200はその回転が係止される。なお、クラッチ歯車200の被係止片230は、平面視点対象に二つ形成されている。クラッチ歯車200の逆転がクラッチレバー500に阻止されることにより、排水弁Vの開放後に、排水弁V自体の付勢力に抗して排水弁Vの開放状態を維持することが可能とされている。
図9および図10に示すように、排水弁Vの開放時には、クラッチレバー500のスロープ部510でクラッチ歯車200が下方に押圧されることにより、従動側係合爪210が駆動側係合爪122aに係合する。これにより第1経路P1が「継」状態となり、モータ100の駆動力で排水弁Vが開放される。
図11および図12に示すように、排水弁Vの開放後、その開放状態を維持するときには、クラッチレバー500によるクラッチ歯車200の押圧が解除され、従動側係合爪210が駆動側係合爪122aから離間する。これにより第1経路P1は「断」状態となり、ロータボス122は空転することとなる。そして、クラッチ歯車200の被係止片230が、クラッチレバー500の係止片520と周方向に係合し、クラッチ歯車200の逆転が阻止される。これにより、排水弁V自体の付勢力に抗して排水弁Vの開放状態が維持される。
(排水弁駆動装置の動作)
以下、排水弁駆動装置900の動作について説明する。以下の説明では、排水弁駆動装置900の動作を、初期状態(閉塞位置)にある排水弁Vを開放するときの動作、および、開放状態にある排水弁Vを閉塞するときの動作に分けて説明する。
以下、排水弁駆動装置900の動作について説明する。以下の説明では、排水弁駆動装置900の動作を、初期状態(閉塞位置)にある排水弁Vを開放するときの動作、および、開放状態にある排水弁Vを閉塞するときの動作に分けて説明する。
(1)排水弁開放動作
排水弁Vは初期状態(ワイヤー450がウインチ部材430に巻き上げられていない状態)において閉塞位置にある。このとき、クラッチレバー500はそのスロープ部510でクラッチ歯車200を押し下げており、クラッチ歯車200の従動側係合爪210は、ロータボス122の駆動側係合爪122aに係合した状態にある。すなわち、クラッチ機構Cは図9および図10に示される状態にあり、第1経路P1は「継」状態にある。
排水弁Vは初期状態(ワイヤー450がウインチ部材430に巻き上げられていない状態)において閉塞位置にある。このとき、クラッチレバー500はそのスロープ部510でクラッチ歯車200を押し下げており、クラッチ歯車200の従動側係合爪210は、ロータボス122の駆動側係合爪122aに係合した状態にある。すなわち、クラッチ機構Cは図9および図10に示される状態にあり、第1経路P1は「継」状態にある。
この状態からモータ100が逆転すると、そのロータ120内に配置された誘導回転体150もロータ120に連れ回って逆転方向へ回転する。誘導回転体150が逆転すると、その歯車部153aに噛合する扇形ギヤ600は、緩衝部620をロータ120の係合部121aの周回軌道に進入させる向きに回動する。係合部121aが緩衝部620に衝突することによりモータ100の逆転は正転に修正される。
モータ100が正転方向へ駆動されると、ロータボス122とともにクラッチ歯車200が回転する。そして、ロータ120内に配置された誘導回転体150もロータ120に連れ回って回転する。誘導回転体150が回転すると、その歯車部153aに噛合する扇形ギヤ600も回動する。このとき、扇形ギヤ600は、コイルばね690の付勢力に抗して、正転時係止片635が歯車710(係合突起711)に接近する方向に回動する。
正転時係止片635が係合突起711に係合すると、歯車710の回転が係止される。歯車710の回転が係止されると、歯車710に噛合する歯車720の回転も係止される。歯車720の回転が係止されると、歯車720に噛合するフィルタ歯車321、つまり内歯車部材320の回転も係止される。すなわち、フィルタ機構Fにより、内歯車部材320の角度位置が固定され、第1経路P1がモータ100の正転駆動力を伝達可能な状態となる。なお、扇形ギヤ600および歯車710が係合することで誘導回転体150が回転不能となった後も、ロータ120は誘導回転体150とは非同期に正転を継続する。
クラッチ歯車200の歯車部220は、遊星歯車機構300の入力歯車部311と噛合している。クラッチ歯車200の回転は入力歯車部311を経て太陽歯車312に伝達され、太陽歯車部材312が回転する。
太陽歯車312は、遊星歯車機構300の内部において3つの遊星歯車331と噛合している。また、これら遊星歯車331は、内歯車部材320の内歯車322とも噛合している。上で述べたように、内歯車部材320は、フィルタ機構Fによりその角度位置が固定された状態にある。そのため、太陽歯車312が回転すると、遊星歯車331は内歯車部材320の内歯車322に沿って太陽歯車312の周りを公転する。遊星歯車331が公転すると、遊星歯車331を支持する遊星キャリア330とともに、遊星歯車機構300の出力歯車333が回転する。
なお、モータ100が逆転した時には、フィルタ機構Fが内歯車部材320の回転を係止しないから、仮に太陽歯車312が回転したとしても、その太陽歯車312の回転は、遊星歯車331の自転を経て内歯車部材320の空転により消費される。遊星歯車機構300の出力歯車333には、第1経路P1を介して排水弁V自体の付勢力が作用しており、入力歯車部311に伝えられた駆動力が、回転抵抗の少ない内歯車部材320側に流れてしまうからである。
出力歯車333には歯車410が噛合しており、歯車410には歯車420が噛合している。歯車420の上面には、歯車420と周方向へ一体的に回転するウインチ部材430が取り付けられている。ウインチ部材430が回動すると、ウインチ部材430に接続されたワイヤー450が巻き取られる。ワイヤー450の先端には排水弁Vが固定されており、これにより、排水弁Vが開放される。
歯車420が所定位置まで回動すると(ワイヤー450が所定量巻き取られると)、歯車420のカムフォロアーであるクラッチレバー500が、歯車420から離れる方向へ移動する。すなわち、クラッチ機構Cが図11および図12に示される状態となる。
クラッチレバー500の移動により、クラッチ歯車200の押圧は解除され、クラッチ歯車200はコイルばね250の付勢力により上方へと移動する。これにより、クラッチ歯車200の従動側係合爪210と、ロータボス122の駆動側係合爪122aとの係合が解除され、モータ100の駆動力がクラッチ歯車200に伝達されない状態となる。つまり、第1経路P1は「断」状態となる。
また、クラッチレバー500の上記移動により、クラッチ歯車200の被係止片230が、クラッチレバー500に設けられた係止片520に周方向に当接する。すなわち、クラッチ歯車200の回転がクラッチレバー500により係止された状態となる。クラッチ歯車200の回転が係止されると、第1経路P1を構成するクラッチ歯車200以降の部材の角度位置も固定される。なお、このときも、フィルタ機構Fは内歯車部材320の回転を係止しており、第1経路P1には排水弁V自体の付勢力が作用している。しかし、クラッチ歯車200の回転はクラッチレバー500により係止されているため、クラッチ歯車200が逆転することはない。これにより、排水弁V自体の付勢力に抗して排水弁Vの開放状態が維持される。
(2)排水弁閉塞動作
排水の完了後、排水弁Vを閉塞させるときには、モータ100への給電を停止する。モータ100への給電を停止することにより、モータ100による誘導回転体150の電磁誘導力が消失する。これにより、扇形ギヤ600がコイルばね690の付勢力に屈して原位置へと戻り、扇形ギヤ600から歯車710、歯車720、そしてフィルタ歯車321へと続く係止関係が解除される。つまりフィルタ機構Fが無効化され、内歯車部材320が空転可能な状態となる。
排水の完了後、排水弁Vを閉塞させるときには、モータ100への給電を停止する。モータ100への給電を停止することにより、モータ100による誘導回転体150の電磁誘導力が消失する。これにより、扇形ギヤ600がコイルばね690の付勢力に屈して原位置へと戻り、扇形ギヤ600から歯車710、歯車720、そしてフィルタ歯車321へと続く係止関係が解除される。つまりフィルタ機構Fが無効化され、内歯車部材320が空転可能な状態となる。
排水弁Vには常に、排水弁Vを閉塞させる方向に付勢力が作用している。そのため、フィルタ機構Fが無効化され、内歯車部材320が空転可能になると、排水弁Vの開放状態を維持していた牽引力は内歯車部材320の空転により消失する。これにより排水弁Vは排水弁V自体の付勢力により閉塞する。
さらに、排水弁Vの閉塞方向に歯車420が回動すると、クラッチレバー500は歯車420に近づく方向へ移動する。すなわち、クラッチ機構Cが図9および図10に示される状態となる。これにより、クラッチ歯車200の従動側係合爪210が、ロータボス122の駆動側係合爪122aに係合し、モータ100の駆動力がクラッチ歯車200に伝達される状態となる。つまり、第1経路P1が「継」状態となる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
900:排水弁駆動装置,M:モータユニット,P1:第1経路(動力伝達経路),S:逆転防止機構,V:排水弁(外部部材),100:モータ(ACモータ),120:ロータ,121a:係合部,150:誘導回転体,153a:歯車部,600:扇形ギヤ(ストッパ部材),610:本体部,611:歯車部,620:緩衝部,620a:緩衝部の先端部,621:スリット,622:リブ,L:変形制限部
Claims (9)
- 駆動源であるACモータと、
前記ACモータの逆転を正転に修正する逆転防止機構と、
を備え、
前記逆転防止機構は、
前記ACモータのロータの外面または該ロータと一体に回転する部材の外面に設けられた凹部または凸部である係合部と、
前記ロータが逆転したときに前記係合部の周回軌道に進入して前記係合部と衝突する樹脂製のストッパ部材と、
を有し、
前記ストッパ部材および前記係合部のいずれか一方は、他方よりも容易に変形する弾性材料からなることを特徴とするモータユニット。 - 前記ストッパ部材および前記係合部のいずれか一方は、他方よりも容易に変形する熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする請求項1に記載のモータユニット。
- 前記ストッパ部材および前記係合部のいずれか一方は、他方よりも容易に変形するポリエステル系熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする請求項2に記載のモータユニット。
- 前記ストッパ部材は、前記係合部よりも容易に変形する弾性材料からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータユニット。
- 駆動源であるACモータと、
前記ACモータの逆転を正転に修正する逆転防止機構と、
を備え、
前記逆転防止機構は、
前記ACモータのロータの外面または該ロータと一体に回転する部材の外面に設けられた凹部または凸部である係合部と、
前記ロータが逆転したときに前記係合部の周回軌道に進入して前記係合部と衝突するストッパ部材と、
を有し、
前記ストッパ部材には、前記係合部と衝突する部位の弾性変形を容易にする切り込み部であるスリットが形成されていることを特徴とするモータユニット。 - 前記ストッパ部材は、本体部と、緩衝部と、を有し、
前記緩衝部は、前記本体部から延出するアーム状部であり、前記緩衝部の自由端である先端部と前記本体部との間には前記スリットにより隙間が設けられており、
前記係合部は、前記緩衝部の先端部に衝突することを特徴とする請求項5に記載のモータユニット。 - 前記緩衝部の先端部は、該緩衝部の他の部分よりも肉厚に形成されており、
前記先端部と前記他の部分との境目はリブで補強されていることを特徴とする請求項6に記載のモータユニット。 - 前記ストッパ部材は、弾性変形した前記緩衝部が突き当たることで該緩衝部の変形可能な限界位置を定める変形制限部を有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載のモータユニット。
- 前記ACモータは単相のAC同期モータであり、
前記係合部は、前記ロータの死点を避けた位置で前記緩衝部と衝突するように配置されていることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のモータユニット。
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JP2018141775A Pending JP2020018152A (ja) | 2018-07-27 | 2018-07-27 | モータユニット |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2020018152A (ja) |
-
2018
- 2018-07-27 JP JP2018141775A patent/JP2020018152A/ja active Pending
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