JP2020015973A - チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置 - Google Patents

チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2020015973A
JP2020015973A JP2018141828A JP2018141828A JP2020015973A JP 2020015973 A JP2020015973 A JP 2020015973A JP 2018141828 A JP2018141828 A JP 2018141828A JP 2018141828 A JP2018141828 A JP 2018141828A JP 2020015973 A JP2020015973 A JP 2020015973A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hearth
molten metal
titanium
raw material
ingot
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018141828A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7035885B2 (ja
Inventor
水上 英夫
Hideo Mizukami
英夫 水上
知之 北浦
Tomoyuki Kitaura
知之 北浦
宜大 武田
Sendai Takeda
宜大 武田
善久 白井
Yoshihisa Shirai
善久 白井
繁 梅田
Shigeru Umeda
繁 梅田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2018141828A priority Critical patent/JP7035885B2/ja
Publication of JP2020015973A publication Critical patent/JP2020015973A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7035885B2 publication Critical patent/JP7035885B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
  • Vertical, Hearth, Or Arc Furnaces (AREA)

Abstract

【課題】LDI(Low Density Inclusion)の少ない、品質が良好なチタンの鋳塊あるいはチタン合金の鋳塊を提供する。【解決手段】チタン合金鋳塊52の製造方法は、原料50を供給する原料供給工程と、原料50を溶解する溶解工程と、ハース7において溶湯51を精錬する精錬工程と、ハース7から供給される溶湯51で鋳造する鋳造工程と、を含む。精錬工程では、第1方向D1から第2方向D2へ溶湯51の流れ方向Dを変化させる。流れ方向Dが変化する流れ方向変化領域29において、第1方向D1に進むに従い溶湯50の深さLが浅くされている。【選択図】図1

Description

本発明は、チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置に関する。
チタンは、その溶融温度では激しく空気酸化される活性な金属であるため、鉄鋼材料のように耐火物製るつぼを用いて大気雰囲気下で溶解することは難しい。このため、工業用純チタン鋳塊(本明細書では単に「チタン鋳塊」ともいう)またはチタン合金鋳塊の製造では、水冷銅るつぼである溶解ハースおよび精錬ハースを用いる。そして、チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造において実用化されている技術として、高真空下で高電圧加速した電子線を被溶解材の表面に照射することにより得られる衝撃熱を利用する電子ビーム溶解(EBM:Electron Beam Melting)技術や、非消耗電極としてプラズマトーチを用いた溶解法であるプラズマ溶解(PAM:Plasma Arc Melting)技術を挙げることができる。
チタンまたはチタン合金を溶解して鋳造する際には、溶湯中の成分に起因して、高密度介在物(以下、HDI(High Density Inclusion)という)や低密度介在物(以下、LDI(Low Density Inclusion)という)が不可避的に生成する。電子ビーム溶解法は、精錬効果が高いことからHDIやLDIの除去も期待され、HDIやLDIの除去に特に厳格な航空機用素材の製造方法として用いられている。近年、航空機用素材の性能のさらなる厳格化に伴い、HDIおよびLDIのより一層の低減が望まれている。
WCなどのHDIの密度はチタンまたはチタン合金の密度よりも大きい。このため、HDIは、溶解ハースおよび精錬ハースの長さをある程度確保すればこれらのハースの内部で沈降する。このため、HDIは、ハースの底部に形成されるスカル(溶湯が急冷されて直ちに凝固した薄い凝固層であり、本明細書ではハーススカルともいう)により捕捉されて除去されることが比較的容易である。
これに対し、TiNなどのLDIの密度はチタンまたはチタン合金の密度よりも小さい。このため、LDIは、ハース内の溶湯の表面に浮上し、溶湯とともに、溶解ハースから精錬ハースへ、さらに精錬ハースから鋳型へと流れ込む。その結果、LDIは、チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊に取り込まれ、製品の欠陥を招く。LDIは、1回の溶解では除去し難いのが現状である。
特許文献1には、スポンジチタンまたはチタンスクラップの一方または双方を主体とした溶解用電極材を電子ビーム溶解した後、断面が角型の鋳型に鋳造する発明が開示されている。
特許文献2には、ハース内の溶湯の底部に、表面に少なくとも1個の凹部を有するハーススカルを形成し、電子ビームをハースプールの下流側から上流側へ向けて走査してハースプールを加熱する発明が開示されている。この構成により、ハースプールの表面を浮遊するLDIを効果的に溶解して消滅する。これにより、チタン鋳塊へのLDIの混入を防止しながら高融点金属を電子ビーム溶解することが意図されている。
特許文献3には、コールドハースの底部に断熱材を敷設することによりハースへの抜熱量を抑制しながら高融点金属材料を電子ビーム溶解する発明が開示されている。この構成によって、液相部分である溶湯の量を多くするとともに固相部分であるスカルの量を少なくしている。これにより、コールドハース内での溶湯の滞留時間を増加し、鋳型へのLDIの混入を抑制することが意図されている。
さらに、特許文献4には、原料供給手段と、電子ビーム照射手段と、供給された金属原料を溶解保持するハースと、溶湯を冷却してインゴットを得る鋳型とを備える電子ビーム溶解装置が開示されている。この構成では、ハース内の上流から下流へ向けて形成される水平方向の溶湯の流れを直角方向へ変化させて、溶解ハースから精錬ハースに流入する溶湯を流れの前方にある精錬ハースの壁面に衝突させる。これにより、溶湯に含まれる固形不純物を、壁面に形成される凝固界面により捕捉することが意図されている。
特開平4−131330号公報 特開2004−276039号公報 特開2005−42178号公報 特開2009−161855号公報
特許文献1では、当該特許文献1に記載の発明によりHDIおよびLDIの除去が可能であるとされている。しかしながら、単に真空下のコールドハース内で電子ビーム溶解することしか開示されていない。このため、特許文献1により開示された発明により、航空機用素材に要求されるレベルまでLDIを除去することはできない。
特許文献2により開示された発明では、ハース内の溶湯の底部に、表面に少なくとも1個の凹部を有するハーススカルを一旦形成しても、溶解時間の経過に伴って凹部とその周囲の温度が均一化するために凹部が消滅する。このため、ハースプール面を浮遊するLDIを消滅する効果を得られなくなる。また、電子ビームを走査してLDIを溶解しても、電子ビームが照射されない場所では、溶湯の温度が低下するため、LDIが再び晶出する。仮に、ハースの流れ方向の途中位置でLDIを一旦溶解できたとしても、溶湯が鋳型の中に注がれて凝固する際にはLDIが再び晶出することもあり、結果的にLDIを除去できない。
特許文献3により開示された発明では、コールドハース内での溶湯の滞留時間を単に増加しても、除去されなかったLDIは、結局、ハースから鋳型に混入するため、LDIの鋳塊への取り込みを防止することはできない。
さらに、特許文献4により開示された発明では、壁面に形成される凝固界面に溶湯を衝突させると、衝突の極初期の段階では溶湯に含まれる固形不純物が凝固界面に確かに捕捉される。しかし、凝固界面の温度よりも高い温度の溶湯が凝固界面に衝突し続けるために、凝固界面が再溶融し、捕捉された固形不純物が流れに沿って鋳型内に流入し、鋳塊へのLDIの取り込みを防止することはできない。
このように、従来の技術では、LDIが、例えば航空機用素材に要求されるレベルまで低減されたチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊を確実に製造することはできない。
本発明の目的は、LDI等の介在物の少ないチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置を提供することである。
上述のように、ハースの底部に形成されたスカルによりLDIを捕捉する技術や、溶解ハースと精錬ハースを直交させて溶湯を精錬ハース内に形成した凝固界面に衝突させることによりLDIを捕捉する技術、さらには、溶湯の表面のLDIを電子ビームにより溶解する技術がこれまでにも開示されている。
しかし、これらの従来の技術は、いずれも、鋳造時間の経過を考慮していない。特に、ハースの底部にスカルを形成しながら溶解するスカル溶解の鋳造時間は、数時間から十数時間にも及ぶ。このため、従来の技術では、LDIの除去効果が鋳造時間の経過とともに消失する。
LDIが、例えば航空機用素材に要求されるレベルまで低減されたチタン鋳塊を製造するためには、鋳造の全時間においてLDIを鋳型に流入させないことが不可欠である。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ハース内に形成された、
液相部分である溶湯と固相部分であるスカルとの界面である凝固界面を、鋳造時間の経過とともに成長させ、鋳造中に経時的に成長しつつある凝固界面にLDIを捕捉させ続ければよいことに想到し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。本発明は以下に列記の通りである。
(1)チタン含有原料を供給する原料供給工程と、
供給された前記原料に電子ビームまたはプラズマを照射することにより前記原料を溶解する溶解工程と、
前記原料の溶湯が排出される溶湯出口を有するハースにおいて、この溶湯出口へ向けて前記溶湯を流すことで前記溶湯を精錬する精錬工程と、
前記ハースから供給される溶湯で鋳造する鋳造工程と、を含み、
前記精錬工程では、所定の第1方向から第2方向へ前記溶湯の流れ方向を変化させ、前記流れ方向が変化する領域において、前記第1方向に進むに従い前記溶湯の深さを浅くしている、チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法。
(2)前記ハースは、前記流れ方向が変化する領域において、前記溶湯に対して前記第1方向の下流に配置され前記第1方向と反対方向を向く第1方向下流側壁面を含み、
前記第1方向下流側壁面における前記溶湯の深さが5mm以下である、(1)項に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法。
(3)前記ハースの底部は、前記流れ方向が変化する領域において、前記第1方向に進むに従い高さ位置が高くなる傾斜面および階段面の少なくとも一方を含んでいる、(1)項または(2)項に記載のチタン鋳塊または合金鋳塊の製造方法。
(4)前記ハースは、
前記チタン含有原料が投入される第1ハースと、
前記溶湯出口を含み、前記第1ハースから流入した前記溶湯の一部を冷却凝固させることで前記溶湯の下方にスカルを形成し、前記溶湯の残部を前記溶湯出口へ流す第2ハースと、
を含み、
前記精錬工程では、前記第2ハースにおいて、前記溶湯の流れ方向を前記第1方向から前記第2方向へ変化させる、(1)〜(3)項の何れか1項に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法。
(5)前記ハースは、前記溶湯を前記第1ハースから前記第2ハースへ送る湯道を含み、
前記精錬工程では、前記第1方向を、前記湯道出口における前記溶湯の流れ方向としている、(4)項に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法。
(6)チタン含有原料を供給する原料供給手段と、
供給された前記原料に電子ビームまたはプラズマを照射することにより前記原料を溶解する電子ビームまたはプラズマ照射手段と、
前記原料の溶湯が排出される溶湯出口を有し、この溶湯出口へ向けて前記溶湯を流すハースと、
前記ハースから供給される溶湯で鋳造する鋳型と、を備え、
前記ハースは、所定の第1方向から第2方向へ前記溶湯の流れ方向を変化させる流れ方向変化領域を含み、
前記流れ方向変化領域は、前記第1方向に進むに従い前記溶湯の深さを浅くする深さ変化部を有している、チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造装置。
(7)前記ハースは、前記流れ方向変化領域において、前記溶湯に対して前記第1方向の下流側に配置され前記第1方向と反対方向を向く第1方向下流側壁面を含み、
前記第1方向下流側壁面における前記溶湯の深さが5mm以下に設定されている、(6)項に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造装置。
(8)前記深さ変化部は、前記第1方向に進むに従い高さ位置が高くなる傾斜面および階段面の少なくとも一方を含んでいる、(6)項または(7)項に記載のチタン鋳塊または合金鋳塊の製造装置。
(9)前記ハースは、
前記チタン含有原料が投入される第1ハースと、
前記溶湯出口を含み、前記第1ハースから流入した前記溶湯の一部を冷却凝固させることで前記溶湯の下方にスカルを形成し、前記溶湯の残部を前記溶湯出口へ流す第2ハースと、
を含み、
前記流れ方向変化領域は、前記第2ハースに形成されている、(6)〜(8)項の何れか1項に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造装置。
(10)前記ハースは、前記溶湯を前記第1ハースから前記第2ハースへ送る湯道を含み、
前記第1方向は、前記湯道出口における前記溶湯の流れ方向である、(9)項に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造装置。
本発明により、LDIが、例えば高品質な航空機用素材に要求されるレベルまで低減されたチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊を製造できる。
図1は、本発明に係るチタン合金鋳塊の製造装置を模式的に示す斜視図であり、溶湯およびスカルの図示は省略している。 図2は、図1のII−II線に沿う断面図であり、溶湯およびスカルを含めて図示している。 図3(A)は、本発明の変形例の主要部を示す図であり、図3(B)は、本発明のさらに別の変形例の主要部を示す図である。
添付図面を参照しながら、本発明を説明する。以降の説明では、化学組成に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する。なお、以降の説明では、チタン合金鋳塊を製造する場合を例にとるが、本発明は、この場合には限定されず、チタン鋳塊を製造する場合にも等しく適用される。
1.本発明に係る製造装置
図1は、本発明に係るチタン合金鋳塊52の製造装置1を模式的に示す斜視図であり、溶湯51およびスカル53の図示は省略している。図2は、図1のII−II線に沿う断面図であり、溶湯51およびスカル53を含めて図示している。図1および図2を参照して、製造装置1は、原料供給手段2と、電子ビームまたはプラズマ照射手段(以下、単に「照射手段」という)3,9,10と、第1ハース4、湯道5および第2ハース6を有するハース7と、鋳型8と、を有している。
ハース7は、原料50の溶湯51が排出される溶湯出口7aを有している。ハース7は、この溶湯出口7aへ向けて溶湯51を流すように構成されている。溶湯51は、図2において、ドットハッチングで示されている。
原料供給手段2は、チタン製または主成分がチタンの原料50(チタン含有原料)を供給する原料フィーダーとして設けられている。原料50は、チタンブリケット(チタン合金ブリケットを含む。以下同じ。)であることが好ましいが、必要に応じて、板、棒、管等のスクラップをチタンブリケットに混在させてもよい。
原料50は、第1ハース4の上方から連続的に第1ハース4に供給されながら電子ビームまたはプラズマで溶解される。これにより、溶解されたチタンまたはチタン合金が、溶湯51となり、この溶湯51が第1ハース4に供給される。
原料供給手段2は、原料50を第1ハース4の上方から供給する際、原料50を固形物のまま落下させてもよい。しかしながら、原料供給手段2は、事前に溶解した原料50を第1ハース4に流下することが好ましい。なぜならば、第1ハース4に供給する溶湯51の温度を安定に維持でき、第2ハース6に供給される溶湯51の温度も安定し、鋳型8で形成される凝固シェルを安定して成長させることができるからである。以降の説明では、原料50としてチタンブリケットを用いる場合を例にとる。
原料供給手段2は、原料50が載せ置かれる台座2aと、この台座2aから原料50を第1ハース4へ投入する投入装置(図示せず)と、を有している。
原料供給手段2は、原料50を、照射手段3による原料50の溶解速度に応じた供給速度で、供給することが好ましい。
照射手段3は、第1ハース4へ供給された原料50に電子ビームまたはプラズマを照射することにより原料50を溶解する。
原料供給手段2は原料50を連続して供給することが好ましい。また、照射手段3は原料50を連続して溶解することが好ましい。
照射手段9は、電子ビームまたはプラズマの照射出力および照射位置を調節できる機能を有する。このため、照射手段9は、後述する溶湯プール16,26における溶湯51の面積、形状あるいは深さを一定の範囲内で調整することができる。本実施形態では、第1ハース4に向けて電子ビームまたはプラズマを照射する照射手段9が1基配置されている。また、第2ハース6内を流動する溶湯51に電子ビームまたはプラズマを照射する照射手段9が、2基配置されている。
照射手段9により電子ビームまたはプラズマを照射された原料50が溶解されることで形成された、チタンまたはチタン合金の溶湯51は、第1ハース4に収容される。この溶湯51が一定量以上第1ハース4に満たされると、溶湯51は湯道5を介して第2ハース6に注がれる。
このように、溶湯51は、第1ハース4、湯道5、第2ハース6の順に流れ、第2ハース6の溶湯出口7aから鋳型8へ流入する。
第1ハース4は、平面視で細長い矩形状に形成されており、当該第1ハース4における溶湯51の主な流れ方向Dを長手方向として細長く延びている。第1ハース4は、原料50が投入され原料50を溶解する溶解ハースとして設けられている。
第1ハース4は、上流壁11と、下流壁12と、一対の第1側壁13,14と、底部15と、を有している。
上流壁11は、ハース7における溶湯51の流れ方向Dの上流側端部に配置された、鉛直方向に延びる壁である。下流壁12は、上流壁11と間隔をあけて平行に延び且つ鉛直方向に延びる壁であり、第1ハース4における流れ方向Dの下流型端部に配置されている。
一対の第1側壁13,14は、互いに平行に延びており、且つ、鉛直方向に延びる壁である。一方の第1側壁13は、上流壁11および下流壁12に接続されている。他方の第1側壁14は、上流壁11および下流壁12に接続されている。他方の第1側壁14のうち、下流壁12に隣接する箇所は、上端側の一部が切り欠かれた形状を有しており、この切り欠かれた部分が、湯道5を形成している。
底部15は、水平に延びる壁であり、上流壁11、下流壁12、および、一対の第1側壁13,14の下端部に接続されており、これら上流壁11、下流壁12、および、一対の第1側壁13,14と協働して、溶湯51が溜められる第1溶湯プール16を形成している。
湯道5は、溶湯51を第1ハース4から第2ハース6へ送るために設けられている。本実施形態では、湯道5は、他方の第1側壁14の切り欠き部分における内側面14aおよび下面14bと、この内側面14aに対向する箇所における下流壁12の内側面12aと、によって形成されている。湯道5の出口における溶湯51の流れ方向Dは、他方の第1側壁14の内側面14aと、下面14bと、下流壁12の内側面12aと、によって規定されている。この流れ方向Dは、本願実施形態では、内側面12a,14aが延びる方向と平行な方向であり、後述する第1方向D1である。この第1方向D1は、平面視において一対の内側面12a,14aと直交する方向でもある。
第2ハース6は、第1ハース4から流入した溶湯51の一部を冷却凝固させることで溶湯51の下方にスカル53を形成し、溶湯51の残部を溶湯出口7aへ流す。第2ハース6は、第1ハース4からの流入した溶湯51を鋳型8に供給する機能を有する。第1ハース4と第2ハース6は、湯道5の長さが長くなって溶湯51が湯道5で固まらないように、連結されていればよい。
第2ハース6は、平面視で細長い矩形状に形成されており、当該第2ハース6における溶湯51の主な流れ方向D(第2流れ方向D2)を長手方向として細長く延びている。本実施形態では、第1ハース4の長手方向と第2ハース6の長手方向とは、平行である。第2ハース6は、溶湯51を精錬する精錬ハースとして設けられている。
第2ハース6は、上流壁21と、下流壁22と、一対の第2側壁23,24と、底部25と、を有している。
上流壁21は、第2ハース6における溶湯51の流れ方向Dの上流側端部に配置された、鉛直方向に延びる壁である。上流壁21の内側面21aは、本実施形態では、他方の第1側壁14の切り欠き部分における内側面14aと同一平面となるように配置されている。下流壁22は、上流壁11と間隔をあけて平行に延び且つ鉛直方向に延びる壁であり、第2ハース6における流れ方向Dの下流型端部に配置されている。
一対の第2側壁23,24は、互いに平行に延びており、且つ、鉛直方向に延びる壁である。一方の第2側壁23は、上流壁11および下流壁12に接続されている。この一方の第2側壁23のうち、流れ方向Dの上流側端部は、下流壁12の一部でもあり、湯道5に接続されている。また、一方の第2側壁23のうち、流れ方向Dの下流側端部に溶湯出口7aが設けられている。他方の第2側壁24は、上流壁21および下流壁22に接続されている。
溶湯出口7aは、本実施形態では、一方の第2側壁23と下流壁22との接続部付近に形成されている。この溶湯出口7aは、例えば、一方の第2側壁23の上端部の一部を切り欠くようにして形成されている。溶湯51は、溶湯出口7aから、第1方向D1とは平行で且つ第1方向D1とは反対の第3方向D3に向けて流れることで、鋳型8のキャビティに導入される。
底部25は、概ね水平に延びる壁であり、上流壁21、下流壁22、および、一対の第2側壁23,24のそれぞれの下端部に接続されている。底部25は、これら上流壁21、下流壁22、および、一対の第2側壁23,24と協働して、溶湯51が溜められる第2溶湯プール26を形成している。底部25は、水平な面である平坦面27と、この平坦面27から上方へ突出するように延びる深さ変化部28と、を有している。平坦面27は、底部25の上面のうち、深さ変化部28が形成されている箇所以外に設けられている。
上記の構成により、溶湯51は、湯道5から第1方向D1に沿って流動することで、第2ハース6に流入する。この溶湯51は、第2ハース6の他方の第2側壁24の内側面24aへ向かって流れ、この内側面24aに受けられる。これにより、溶湯51の流れ方向Dは、第2ハース6の長手方向、すなわち、第1方向D1と直交(交差)する第2方向D2に変わる。第2方向D2へ向きを変えた溶湯51は、第2方向D2に沿って下流壁22に向けて進む。そして、下流壁22付近に到達した溶湯51は、第3方向D3へ向きを変えて流れ、溶湯出口7a、すなわち鋳型8への供給口に向かって流れる。
ここで、TiN等のLDI(低密度介在物、Low Density Inclusion)は、第2ハース6を流れる溶湯51中に懸濁しており、溶湯51とともに第2ハース6の内部を移動する。チタン合金鋳塊を製造する従来の製造装置では、LDIは最終的に鋳型のキャビティ内に流入する。このような、鋳型8へのLDIの流入を防ぐため、本実施形態では、LDIを、第2ハース6の内部に形成された凝固界面54(スカル53と溶湯51との界面)に捕捉させて除去する。
しかも、本実施形態では、スカル53に一旦捕捉されたLDIを再び溶湯51中に流出させないためには、凝固界面54を移動させる。すなわち、他方の第2側壁24の内側面24aのうち、第2方向D2において深さ変化部28が設けられている箇所24b(以下、第1方向下流側壁面24bともいう。)で形成されるスカル53を、鋳造時間の経過とともに成長させる。しかし、スカル53を第1方向下流側壁面24bの全てで成長させると、溶湯51を通過させる本来の機能を損なうため、LDIを捕捉する位置を規定することが好ましい。
スカル53を成長させるために、第2ハース6は、溶湯51の流れ方向Dを第1方向D1から第2方向D2へ変化させる流れ方向変化領域29において、底部25に深さ変化部28が設けられている。
流れ方向変化領域29は、上流壁21、一対の第2側壁23,24、および、底部25によって形成されている。流れ方向変化領域29は、本実施形態では、第2ハース6における第2方向D2の上流側部分に形成されている。本実施形態では、流れ方向変化領域29は、第1方向D1における一対の第2側壁23,24間の全域に設けられている。この流れ方向変化領域29の少なくとも一部に、深さ変化部28が設けられている。本実施形態では、流れ方向変化領域29の全域に亘って深さ変化部28が設けられている。なお、深さ変化部28は、第2方向D2において、流れ方向変化領域29を超えて設けられていてもよい。
深さ変化部28は、第1方向D1に進むに従い溶湯51の深さLを浅くするように構成されている。深さ変化部28は、底部25に設けられた傾斜面31を有する。傾斜面31は、第2ハース6の底部25のうち、平坦面27から傾斜するように延びている。傾斜面31は、第1方向D1における流れ方向変化領域29の例えば半分以上の領域(本実施形態では、全域)に亘って形成されており、底面25から所定の傾斜角度θ1で第1方向下流側壁面24bまで延びている。このような構成により、傾斜面31は、第1方向D1に進むに従い高さ位置が高くなっている。
第1方向D1に沿って湯道5から第2ハース6の流れ方向変化領域29に流れこんだ溶湯51は、第1方向下流側壁面24bでの深さL1を5mm以下に設定されている。より具体的には、ハース7は、流れ方向変化領域29において、溶湯51に対して第1方向D1の下流側に配置され第1方向D1と反対方向を向く第1方向下流側壁面24bを含んでいる。そして、この第1方向下流側壁面24bにおける溶湯51の深さL1が5mm以下となるように、傾斜面31を平坦面27から第1方向下流側壁面24bへ向けて、徐々に上向きに延ばしている。第1方向下流側壁面24bでの溶湯51の深さL1が5mm以下とは、製造装置1におけるチタン合金鋳塊52の鋳造時の全工程期間に亘って、溶湯51の深さL1が5mm以下であることを意味する。なお、傾斜面31は、第1方向下流側壁面24bに連続していればよく、一方の第2側壁23から他方の第2側壁24までの一部にのみ設けられていてもよい。
傾斜面31が設けられていることにより、溶湯51の深さL1が浅い領域である第1方向下流側壁面24b側領域から溶湯51の凝固が進行し、スカル53と溶湯51の界面である凝固界面54にLDIが捕捉される。そして、LDIを取り込みながら溶湯51の一部の凝固が進行する。これにより、第1方向下流側壁面24b付近において、凝固界面54は、図2において実線で示す位置から仮想線である二点鎖線で示す位置へ、高さ位置を変える。すなわち、深さL1は、実線で示す位置から二点鎖線で示す位置へ浅くなる。このように、溶湯51の深さL1は、一方の第2側壁23側から他方の第2側壁24側へ向けて徐々に浅くされている。このため、第1方向下流側壁面24b付近において、スカル53一旦が形成されると、その後に高温の溶湯51がこのスカル53に接触しても、スカル53からの放熱量が多くされているので、スカル53が再溶解することを抑制できる。
スカル53の再溶解が抑制される理由として、
(a)溶湯51の深さL1が浅い第1方向下流側壁面24b側で形成されたスカル53は冷却が進んで温度が低下し、スカル53の再溶解が起こり難くなること、および、
(b)第1方向D1に進むに従い溶湯51の深さLが徐々に浅くなる。これにより、第1方向D1に進むに従い溶湯51の流れは弱まり、溶湯51が第1方向下流側壁面24b側の凝固界面54に達する際には、溶湯51の流速は十分に低下していること
を挙げることができる。
第2ハース6において、第1方向下流側壁面24bでの溶湯深さL1を5mm以下とすることが好ましい理由を説明する。第2ハース6の第1方向下流側壁面24bの付近でスカル53を成長させるには、第1ハース4から流入する高温の溶湯51からの熱によるスカル53の再溶解を防ぐ必要がある。スカル53の再溶解を防ぎながらスカル53の成長を進行させるには、第2ハース6の第1方向下流側壁面24bからの抜熱量(吸熱量)を増加すればよい。しかし、スカル53から第1方向下流側壁面24bへの抜熱量を溶湯51からスカル53への熱供給量よりも増やすことは難しい。
そこで、本実施形態では、第1方向下流側壁面24bでの初期の溶湯深さL1を浅くして第1方向下流側壁面24b付近における溶湯51の量を減らすことにより、溶湯51からのスカル53への熱供給量を減らす。第1方向下流側壁面24bにおける溶湯51の深さL1が5mmを超えると、溶湯51からの熱供給量が過剰となり、スカル53の再溶解を生じ易い。したがって、第2ハース6に流れ込んだ溶湯51が第2方向D2に向きを変える際に衝突する第1方向下流側壁面24bでの溶湯51の深さL1は、5mm以下であることが好ましい。深さL1は、例えば、2mm以上5mm以下であることが好ましい。第1方向下流側壁面24bでの溶湯51の深さL1は、4mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがより一層好ましい。
工業的なチタンまたはチタン合金の溶解および鋳造の操業時間は数時間から十数時間と長い。このため、第2ハース6の第1方向下流側壁面24bから成長したスカル53は高温の溶湯51に長時間曝され、第1方向下流側壁面24bにおけるスカル53の成長が停滞する可能性がある。
このようなスカル53の成長遅れを防止するために、第2ハース6における流れ方向変化領域29での底部25における少なくとも一部に傾斜面31を設けている。これにより、溶湯51の深さLを、一方の第2側壁23側から他方の第2側壁24側へ向けて徐々に浅くする。すなわち、第1方向下流側壁面24bで形成された厚み5mm以下のスカル53が、厚みを増しながら連続的に成長することにより、第1方向下流側壁面24b付近におけるスカル53の再溶解を防止することができる。
傾斜面31が一定の傾斜角度θ1を有している場合で、且つ、第1方向D1における一対の第2側壁23,24間の全域に形成されている場合、傾斜面31が水平面に対してなす傾斜角度θ1は、tan−1{(溶湯面55から第2ハース6の平坦面27までの深さh−5mm)/(第1方向D1における傾斜面31の長さw)}度以上であることが望ましい。
上記傾斜角度θ1がtan−1{(溶湯面55から第2ハース6の平坦面27までの深さh−5mm)/(第1方向D1における傾斜面31の長さw)}度未満であると、傾斜面31を形成することにより得られる効果が小さくなり、スカル53の再溶解を防止し難くなる。
第2ハース6において、底部25には、冷却部35が設けられている。この冷却部35は、冷却水、冷却ガス等の冷媒が通過する冷媒通路36を複数有している。冷媒通路36は、平坦面27に隣接配置されているとともに、傾斜面31に隣接配置されている。傾斜面31のうち、他方の第2側壁24側の下方における、冷却部35の吸熱量は、一方の第2側壁23側の下方における、冷却部35の吸熱量よりも大きい。これにより、冷却部35は、第1方向下流側壁面24b付近において、スカル53からの熱をより多く吸収できる。その結果、第1方向下流側壁面24b付近において、スカル53の再溶融をより確実に抑制できる。第2方向D2における傾斜面31の下流側端部は、鉛直方向に延びていてもよいし、第2方向D2の下流側に進むに従い平坦面27に向けて連続的または段階的に高さ位置が下がってもよい。
傾斜面31上を通過した溶湯51は、平坦面27上を通過し、溶湯出口7aから鋳型8のキャビティへ投入される。なお、平坦面27上では、溶湯51は、第2方向D2の下流側へ進むに従いHDI(High Density Inclusion)を沈降させつつ、溶湯出口7a側へ進む。
鋳型8は、第2ハース6から供給される溶湯51を冷却してチタン合金鋳塊52(インゴット)に成形する。また、本実施形態では、鋳型8のキャビティにおける溶湯51に向けて電子ビームまたはプラズマを照射する電子ビームまたはプラズマ照射手段10(以下、単に「照射手段10」という)が設けられている。
なお、上述の実施形態では、深さ変化部28が傾斜面31である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、深さ変化部28において、傾斜面31の傾斜角度θ1は、一定でなく、第1方向D1に進むに従い滑らかに変化してもよい。この場合、第1方向D1における傾斜面の上流側端部と下流側端部とをつないだ仮想線と水平面とがなす傾斜角度の平均値は、傾斜角度θ1と同様に設定される。
また、深さ変化部28において、傾斜面31に代えて、図3(A)に示す階段面32が設けられていてもよい。図3(A)は、深さ変化部28の変形例を示す図である。階段面32は、複数段の階段状に形成されており、第1方向D1に進むに従い平坦面27からの高さが段階的に高くなっている。この場合、第1方向D1における階段面32の上流側端部32aと下流側端部32bとをつないだ仮想線32cが水平面となす傾斜角度θ1は、傾斜面31の傾斜角度θ1と同様に設定される。階段面32が設けられた場合でも、凝固界面54は、滑らかな傾斜状面となる。なお、深さ変化部28において、図3(B)に示すように、傾斜面31と階段面32とが組み合わされてもよい。
以上が製造装置1の概略構成である。
2.本実施形態に係るチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法
本実施形態では、チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊(本実施形態では、チタン合金鋳塊)の製造方法は、第1〜4の工程を有する。
図1および図2を参照して、第1の工程は、原料供給工程である。この第1の工程では、原料供給手段2が、チタン含有原料50を第1ハース4へ供給する。第1の工程では、原料50を、第2の工程での原料50の溶解速度に応じた供給速度で、供給することが好ましい。
第2の工程は、溶解工程である。この第2の工程では、第1ハース4に供給された原料50に照射手段3から電子ビームまたはプラズマを照射することにより原料50を溶解する。なお、第1の工程で原料50を連続して供給することが好ましく、第2の工程で原料50を連続して溶解することが好ましい。
第3の工程は、精錬工程である。この第3の工程では、ハース7において、溶湯出口7aへ向けて溶湯51を流すことで溶湯51を精錬する。より具体的には、第3の工程では溶湯51を第1ハース4に収容する。そして、第2ハース6は、第1ハース4から第2ハース6へ流入する一部の溶湯を冷却凝固し、溶湯51の下方にスカル53を形成しながら、残部の溶湯51を溶湯出口7aへ流す。
第3の工程では、溶湯51が湯道5を通過して第2ハース6に流入する際、第2ハース6は、第1方向D1から第2方向D2へ溶湯51の流れ方向を変化させる。そして、流れ方向変化領域29において、深さ変化部28の傾斜面31が設けられていることにより、第1方向D1に進むに従い溶湯51の深さLが浅くなっている。このような構成により、傾斜面31上において、溶湯51の一部が凝固することでスカル53を形成し、このスカル53が既に存在するスカル53上に積層される。チタン合金鋳塊52の鋳造開始初期時点では、第1方向下流側壁面24b付近におけるスカル53の厚みt1は、薄い。そして、チタン合金鋳塊52の鋳造開始から時間が経過すると、第1方向下流側壁面24b付近におけるスカル53の厚みt1が、二点鎖線で示すように、鋳造開始初期時点での厚みt1よりも大きくなっている。このように、スカル53が時間の経過とともに厚みを増すように成長することで、溶湯51中のLDIをスカル53に取り込み続けることができる。
一方で、一方の第2側壁23付近においては、溶湯51の深さLが深いことにより、溶湯51の熱エネルギーは大きい。このため、一方の第2側壁23付近においては、スカル53は成長しない。よって、溶湯51を第2方向D2に進行させ続ける障害となるような態様でのスカル53の生成は、抑制される。このように、第2ハース6では、LDIは第1方向下流側壁面24b付近において成長を続けるスカル53によって捕獲されつつ、溶湯51はスムーズに溶湯出口7aへ流される。そして、溶湯51中のHDIは、平坦面27上のスカル53に堆積する。溶湯出口7aへ到達した溶湯51は、鋳型8のキャビティへ流入する。
第4の工程は、鋳造工程である。この第4の工程では、第2ハース6の溶湯出口7aから供給される溶湯を冷却凝固してチタン合金鋳塊52(インゴット)とする。
以上説明したように、本実施形態によると、LDIおよびHDIが、例えば高品質な航空機用素材に要求されるレベルまで低減されたチタン合金鋳塊を製造できる。
より具体的には、本実施形態によると、精錬工程に関して、流れ方向変化領域29において、第1方向D1から第2方向D2へ溶湯51の流れ方向Dが変化する。そして、流れ方向変化領域29には、第1方向D1に進むに従い溶湯51の深さを浅くする深さ変化部28が設けられている。この構成により、深さ変化部28において、第1方向D1の下流側部分(第1方向下流側壁面24b付近)では、スカル53の成長に伴い、スカル53によってLDIを捕獲し続けることができる。しかも、深さ変化部28のうち、第1方向D1の上流側部分では、溶湯51の熱容量が大きい状態を維持できるので、スカル53の成長に起因して溶湯51の流動性が低下することを抑制できる。
また、本実施形態によると、第1方向下流側壁面24bにおける溶湯51の深さL1は、5mm以下に設定されている。この構成により、LDIを捕獲する性能を極めて高くできる。
また、本実施形態によると、深さ変化部28は、第1方向D1に進むに従い高さ位置が高くなる傾斜面31および階段面32の少なくとも一方を含んでいる。この構成によると、簡易な形状で、LDIを捕獲する性能を極めて高くできる。
また、本実施形態によると、第1ハース4および第2ハース6のうちの第2ハース6に、深さ変化部28が設けられている。この構成によると、第1ハース4で原料50を確実に溶解しつつ、第2ハース6でLDIをより確実に捕獲できる。
また、本実施形態によると、第1方向D1は、湯道5の出口における溶湯51の流れ方向である。この構成によると、第2ハース6に対する湯道5の出口の向きを設定することで、流れ方向変化領域29を所望の範囲に容易に設定できる。
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載の範囲内において、種々の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、ハース7が2つのハース4,6を含む形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、1つの溶湯プールを有するハースが用いられてもよい。この場合、溶湯51の流れ方向Dにおけるハースの上流側端部と下流側端部(溶湯出口)との間に平面視で例えば縦壁部を設け、この縦壁部によって溶湯の流れ方向を変えるようにしてもよい。この場合、流れ方向Dにおいて、縦壁部に向けて溶湯の深さが浅くなるように、深さ変化部が設けられる。
本発明の効果を確認するため、図1に示す製造装置1を用いて、以下に示す試験を実施して、その結果を評価した。
(1)溶解および鋳造条件
(1−1)溶湯成分:Ti−6.4%Al−4.2%V
(1−2)溶湯温度:1850℃(第2ハース6内の溶湯の温度)
(1−3)鋳型8の内径:750mm
(1−4)溶解量:5000kg
(1−5)溶解速度:1000kg/時間
(1−6)ハース:2種類使用
(1−6−1)第1ハース4
第1ハース4は、電子ビーム照射手段3から照射される電子ビームにより原料50を溶解するハースである。第1ハース4は、この溶湯51を溜め、電子ビーム照射手段9によって溶湯51または原料50へ電子ビームを照射させながら溶湯51を第2ハース6に供給した。第1ハース4の寸法(内寸)は、幅500mm、長さ2000mm、深さ100mmである。
(1−6−2)第2ハース6
第2ハース6は、第1ハース4からの溶湯51を精錬し、鋳型8に供給するためのハースである。第2ハース6の寸法(内寸)は、幅500mm、長さ1500mm、深さ100mmである。2基の電子ビーム照射手段9から第2ハース6内を流動する溶湯51へ電子ビームを照射することで、溶湯の温度を調節した。
(1−7)第1方向下流側壁面24bでの溶湯深さ:2〜20mm
(1−8)深さ変化部28が水平面に対してなす平均的な傾斜角度θ1:9〜11度
(1−9)深さ変化部28の形状:平滑な傾斜面、または、階段面
(1−10)原料50:スポンジチタンと合金成分を混合した直径100mm×高さ200mmのチタンブリケット
(1−11)原料50の溶解方法:原料50を原料50の溶解速度に合わせて連続供給するか、または、1000kgの原料50を5回に分けて第1ハース4内に一括添加した。
(1−12)電子ビーム照射手段3,9,10:原料50の溶解用1基、第1ハース4用1基、第2ハース6用2基、鋳型8用に1基の合計5基
(1−13)介在物
模擬HDI:WC(直径1mmの球状)と模擬LDI:TiN(直径1mmの球状)を、各原料50にそれぞれ100個添加した。
(2)評価方法
鋳造終了後に、第2ハース6に残ったスカルを採取し、全長1500mmのスカルを長手方向の4等分位置から、横断面のサンプル3枚を採取した。このサンプルの厚みが小さい側から幅100mmの観察用サンプルを切り出し、断面を鏡面研磨した後、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)で分析を行い、HDI,LDIの個数を求めた。
ここで、本発明例1〜4および比較例のそれぞれについて、HDI,LDIが捕捉された単位面積当たりの個数を算出し、比較例の場合の個数を基準とした時の個数比を求め、介在物の捕捉効果を比較した。
また、約3500mm長のチタン合金鋳塊52の最底部から1000mm間隔で横断面3枚を切り出し、これらの横断面の中心を含む、幅100mm、長さ100mm、厚さ10mm、厚み1/4位置から幅100mm、長さ100mm、厚さ10mmの観察用サンプルを採取して、EPMAで分析を行った。分析結果の整理方法は、第2ハース6から採取したサンプルの場合と同様である。
結果を表1にまとめて示す。
Figure 2020015973
表1における「連続添加」は、溶解速度に合わせて原料50を第1ハース4の直上に一定速度で連続供給し、これに電子ビームを照射して連続的に溶解することを意味し、「一括添加」は、チタンブリケット1000kgを5回に分けて、それぞれを第1ハース4に一括添加して、これに電子ビームを照射して溶解することを意味する。
表1における「溶湯深さL1(mm)」とは、第1方向下流側壁面24bでの溶湯51の深さを意味する。表1における「底面傾斜角度」とは、tan−1{(溶湯面55から平坦面27までの深さh−5mm)÷(傾斜面31または階段面32の幅w)}度により求められる値である。
表1における「精錬ハース内のHDI,LDIの個数比(−)」とは、比較例の場合の、第2ハース6におけるHDIおよびLDIの単位面積当たりの個数を基準とした、個数比である。
さらに、表1における「チタン合金鋳塊52内のHDI,LDIの個数比(−)」とは、比較例の場合の、チタン合金鋳塊52におけるHDIおよびLDIの単位面積当たりの個数を基準とした、個数比である。
表1に示すように、発明例1〜4の何れにおいても、LDI,HDIの割合を明確に低減できた。特に、第1方向下流側壁面24bでの溶湯51の深さLが5mm以下となるようにすることにより、LDIを第2ハース6の内部で捕捉し、鋳型8への流入を確実に防止できることを実証できた。
1 製造装置
2 原料供給手段
3 電子ビームまたはプラズマ照射手段
4 第1ハース
5 湯道
6 第2ハース
7 ハース
7a 溶湯出口
8 鋳型
9 電子ビームまたはプラズマ照射手段
10 電子ビームまたはプラズマ照射手段
24b 第1方向下流側壁面
28 深さ変化部
29 流れ方向変化領域(流れ方向が変化する領域)
31 傾斜面
32 階段面
50 原料
51 溶湯
52 チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊
53 スカル
D 溶湯の流れ方向
D1 第1方向
D2 第2方向
L 溶湯の深さ
L1 第1方向下流側壁面における溶湯の深さ

Claims (10)

  1. チタン含有原料を供給する原料供給工程と、
    供給された前記原料に電子ビームまたはプラズマを照射することにより前記原料を溶解する溶解工程と、
    前記原料の溶湯が排出される溶湯出口を有するハースにおいて、この溶湯出口へ向けて前記溶湯を流すことで前記溶湯を精錬する精錬工程と、
    前記ハースから供給される溶湯で鋳造する鋳造工程と、を含み、
    前記精錬工程では、所定の第1方向から第2方向へ前記溶湯の流れ方向を変化させ、前記流れ方向が変化する領域において、前記第1方向に進むに従い前記溶湯の深さを浅くしている、チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法。
  2. 前記ハースは、前記流れ方向が変化する領域において、前記溶湯に対して前記第1方向の下流に配置され前記第1方向と反対方向を向く第1方向下流側壁面を含み、
    前記第1方向下流側壁面における前記溶湯の深さが5mm以下である、請求項1に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法。
  3. 前記ハースの底部は、前記流れ方向が変化する領域において、前記第1方向に進むに従い高さ位置が高くなる傾斜面および階段面の少なくとも一方を含んでいる、請求項1または請求項2に記載のチタン鋳塊または合金鋳塊の製造方法。
  4. 前記ハースは、
    前記チタン含有原料が投入される第1ハースと、
    前記溶湯出口を含み、前記第1ハースから流入した前記溶湯の一部を冷却凝固させることで前記溶湯の下方にスカルを形成し、前記溶湯の残部を前記溶湯出口へ流す第2ハースと、
    を含み、
    前記精錬工程では、前記第2ハースにおいて、前記溶湯の流れ方向を前記第1方向から前記第2方向へ変化させる、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法。
  5. 前記ハースは、前記溶湯を前記第1ハースから前記第2ハースへ送る湯道を含み、
    前記精錬工程では、前記第1方向を、前記湯道出口における前記溶湯の流れ方向としている、請求項4に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法。
  6. チタン含有原料を供給する原料供給手段と、
    供給された前記原料に電子ビームまたはプラズマを照射することにより前記原料を溶解する電子ビームまたはプラズマ照射手段と、
    前記原料の溶湯が排出される溶湯出口を有し、この溶湯出口へ向けて前記溶湯を流すハースと、
    前記ハースから供給される溶湯で鋳造する鋳型と、を備え、
    前記ハースは、所定の第1方向から第2方向へ前記溶湯の流れ方向を変化させる流れ方向変化領域を含み、
    前記流れ方向変化領域は、前記第1方向に進むに従い前記溶湯の深さを浅くする深さ変化部を有している、チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造装置。
  7. 前記ハースは、前記流れ方向変化領域において、前記溶湯に対して前記第1方向の下流側に配置され前記第1方向と反対方向を向く第1方向下流側壁面を含み、
    前記第1方向下流側壁面における前記溶湯の深さが5mm以下に設定されている、請求項6に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造装置。
  8. 前記深さ変化部は、前記第1方向に進むに従い高さ位置が高くなる傾斜面および階段面の少なくとも一方を含んでいる、請求項6または請求項7に記載のチタン鋳塊または合金鋳塊の製造装置。
  9. 前記ハースは、
    前記チタン含有原料が投入される第1ハースと、
    前記溶湯出口を含み、前記第1ハースから流入した前記溶湯の一部を冷却凝固させることで前記溶湯の下方にスカルを形成し、前記溶湯の残部を前記溶湯出口へ流す第2ハースと、
    を含み、
    前記流れ方向変化領域は、前記第2ハースに形成されている、請求項6〜請求項8の何れか1項に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造装置。
  10. 前記ハースは、前記溶湯を前記第1ハースから前記第2ハースへ送る湯道を含み、
    前記第1方向は、前記湯道出口における前記溶湯の流れ方向である、請求項9に記載のチタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造装置。
JP2018141828A 2018-07-27 2018-07-27 チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置 Active JP7035885B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018141828A JP7035885B2 (ja) 2018-07-27 2018-07-27 チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018141828A JP7035885B2 (ja) 2018-07-27 2018-07-27 チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020015973A true JP2020015973A (ja) 2020-01-30
JP7035885B2 JP7035885B2 (ja) 2022-03-15

Family

ID=69581306

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018141828A Active JP7035885B2 (ja) 2018-07-27 2018-07-27 チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7035885B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021123748A (ja) * 2020-02-05 2021-08-30 日本製鉄株式会社 チタン合金の溶解鋳造方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6299424A (ja) * 1985-10-25 1987-05-08 Kobe Steel Ltd 電子ビ−ム溶解における電子ビ−ムの偏向制御方法
JP2009161855A (ja) * 2007-12-10 2009-07-23 Toho Titanium Co Ltd 電子ビーム溶解炉を用いた金属の溶解方法および溶解装置
JP2013184174A (ja) * 2012-03-06 2013-09-19 Kobe Steel Ltd チタン鋳塊およびチタン合金鋳塊の連続鋳造装置および連続鋳造方法
JP2013245398A (ja) * 2012-05-29 2013-12-09 Toho Titanium Co Ltd チタンインゴットの製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6299424A (ja) * 1985-10-25 1987-05-08 Kobe Steel Ltd 電子ビ−ム溶解における電子ビ−ムの偏向制御方法
JP2009161855A (ja) * 2007-12-10 2009-07-23 Toho Titanium Co Ltd 電子ビーム溶解炉を用いた金属の溶解方法および溶解装置
JP2013184174A (ja) * 2012-03-06 2013-09-19 Kobe Steel Ltd チタン鋳塊およびチタン合金鋳塊の連続鋳造装置および連続鋳造方法
JP2013245398A (ja) * 2012-05-29 2013-12-09 Toho Titanium Co Ltd チタンインゴットの製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021123748A (ja) * 2020-02-05 2021-08-30 日本製鉄株式会社 チタン合金の溶解鋳造方法
JP7335510B2 (ja) 2020-02-05 2023-08-30 日本製鉄株式会社 チタン合金の溶解鋳造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7035885B2 (ja) 2022-03-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2009161855A (ja) 電子ビーム溶解炉を用いた金属の溶解方法および溶解装置
EP2823914B1 (en) Continuous casting method and continuous casting device for titanium ingots and titanium alloy ingots
Mehreen et al. Peritectic phase formation kinetics of directionally solidifying Sn-Cu alloys within a broad growth rate regime
KR101275218B1 (ko) 금속의 정제 방법
JP7035885B2 (ja) チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置
JP2012176427A (ja) 金属溶製用溶解炉およびこれを用いた金属の溶製方法
CN109536735B (zh) 一种减少eb炉熔炼钛及钛合金扁锭凝固缺陷的方法及装置
KR102283343B1 (ko) 일렉트로 슬래그 재용융 공정용 슬래그 및 이를 이용한 잉곳의 제조방법
JP6994392B2 (ja) チタンを主成分とする合金からなる鋳塊、および、その製造方法
JP6105296B2 (ja) チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造方法
US9156081B2 (en) Mold for continuous casting of titanium or titanium alloy ingot, and continuous casting device provided with same
JP5774438B2 (ja) チタンまたはチタン合金からなるスラブの連続鋳造方法および連続鋳造装置
JP2011173172A (ja) 活性高融点金属合金の長尺鋳塊製造法
JP7095470B2 (ja) チタン鋳塊またはチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置
JP2004276039A (ja) 高融点金属の電子ビーム溶解方法
JP5627015B2 (ja) チタンまたはチタン合金からなるスラブの連続鋳造方法および連続鋳造装置
JP7173152B2 (ja) チタン合金鋳塊の製造方法および製造装置
JP7135556B2 (ja) チタン鋳塊の製造方法
JP7376790B2 (ja) チタン鋳造用装置
JP7406073B2 (ja) チタン鋳塊の製造方法
JP7406074B2 (ja) チタン鋳塊の製造方法およびチタン鋳塊製造鋳型
JP4366705B2 (ja) インゴットの製造方法と装置
JP7406075B2 (ja) チタン鋳塊の製造方法およびチタン鋳塊製造鋳型
JP6022416B2 (ja) チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造装置
JP2021123748A (ja) チタン合金の溶解鋳造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210303

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211109

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211210

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220201

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220214

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7035885

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151