JP2004276039A - 高融点金属の電子ビーム溶解方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ハースを用いた高融点金属の電子ビーム溶解方法であって、ハース内の溶湯の底部に、表面に少なくとも1個の凹部を有するハーススカルを形成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高融点金属の電子ビーム溶解方法に係り、とくに、溶製後の製品インゴットへのHDI等の不純物の混入防止技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
高融点金属の電子ビーム溶解による精製は、その精製効果が高いことから盛んに利用されており、なかでもハースを併用した高融点金属の電子ビーム溶解技術は、高密度介在物(以下「HDI」と称する場合がある。)に代表されるような不純物を効果的に除去できる手段として近年益々脚光を浴びている。
【0003】
このように、ハースを併用した高融点金属の電子ビーム溶解方法では、水冷銅で構成したハースに固体原料を供給すると、電子ビームが照射されて固体原料が溶解されるとともに、ハース全域にも電子ビームが照射され、ハース内に溶湯プール(以下、「ハースプール」と称する。)が形成される。
【0004】
このハースプールのハースに接する部分は、ハースが水冷されているため融点未満となり、このため、この部分には一定の厚みを有する固層(以下、「ハーススカル」と称する。)が形成される。このハーススカルの形成方式は、コールドクルーシブルを用いた高周波によって金属を溶解する際にも利用される。なお、上記したような手法でハーススカルを形成する代りに、予め準備した固体ハーススカルをハースに仕込んだ後に、固体ハーススカル表面全域に電子ビームを照射して固体ハーススカルを溶解することによりハースプールを形成することもできる。
【0005】
ハースプールに供給された高融点金属は、溶解して鋳型方向に流れて水冷鋳型内に予め形成した金属浴(以下、「モールドプール」と称する。)に排出された後、冷却されてインゴットが形成される。溶解原料には、上記したHDIや低密度介在物(以下、「LDI」と称する。)等の不純物が混入するおそれがある。これらの不純物が溶製後の製品インゴットに混入すると、製品の機械的強度等を劣化させるという問題がある。
【0006】
上記問題を解決するため、上記HDI等の不純物をハース内で溶融原料から分離・除去する技術が種々提案されている。例えば、溶融部に投入された未溶融原料がスプラッシュの形態でハースの溶湯排出口近傍に飛散し、ひいてはさらに下流まで飛散して製品インゴットを汚染することを防止するために、ハーススカルの原料投入部と溶湯排出口との間にダム状の堰を設け、ハースを溶融部と精製部とに分離・構成した装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第4,932,635号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載された装置を用いて高融点金属の電子ビーム溶解を行った場合には、上記ダム状の堰で仕切られた鋳型側のハース溶融部において、ハースプール底部に沈降分離されたHDI等の不純物が、浴流れに乗って再浮上し、上記堰を超えて精製部に混入するおそれがあり、このためインゴットがこれらの不純物で汚染される場合がある。このような場合には、HDI等の不純物のインゴットへの混入を十分に防止することはできず、健全なインゴットを得ることができないという問題があった。よって、近年においては、ハース内において、HDI等の不純物を除去し、健全なインゴットを得ることのできる、高融点金属の電子ビーム溶解についての開発技術が要請されていた。
【0009】
本発明は、上記要請に鑑みてなされたものであり、ハース内において、不純物、とくにHDIおよびLDIを除去し、健全なインゴットを得ることのできる、高融点金属の電子ビーム溶解方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ハースを併用した高融点金属の電子ビーム溶解において、ハース内の溶湯の底部に位置するハーススカルの表面に、少なくとも1個の凹部を形成することで、原料とともにハースに投入されたHDIを溶湯原料の流れに抗して上記凹部に滞留させることができ、これにより、HDIが鋳型に流入してインゴットを汚染することが防止できるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の高融点金属の電子ビーム溶解方法は、ハースを用いた方法であって、ハース内の溶湯の底部に、表面に少なくとも1個の凹部を有するハーススカルを形成することを特徴としている。本発明によれば、上記構成により、原料とともにハースに投入されたHDIを溶湯原料の流れに抗して上記凹部に滞留させることができ、これにより、不純物の中でもとくにHDIが鋳型に流入してインゴットを汚染することを防止することができる。
【0012】
このような高融点金属の電子ビーム溶解方法は、チタン、ジルコニウムまたはニオブの電子ビーム溶解に利用することができる。また、上記ハーススカル表面においては、上記凹部を複数箇所に、例えば原料投入部近傍と溶湯排出口近傍とに設けることが、HDIの滞留可能領域を増大させ、ひいてはHDIのインゴットへの混入をより防止することができる点で好ましい。さらに、上記凹部の形成を、ハーススカルへの電子ビームの照射密度に依存させることで、凹部の形成を迅速かつ的確に実現することができる。
【0013】
次に、このような高融点金属の電子ビーム溶解方法を実施する場合には、上記したHDIのみならず、LDIのインゴットへの混入防止も、製品の機械的性質を向上させる点で重要である。そこで、発明者らは、LDIのインゴットへの混入防止を回避する手段について鋭意研究を重ねた結果、ハースを併用した高融点金属の電子ビーム溶解において、ハースプールを加熱するための電子ビームの走査をハースプールの下流側から上流側に向けて走査し、さらに、ハースプールを過熱することにより、ハースプール面を浮遊するLDIを効果的に溶解消滅させることができ、これにより、LDIのインゴットへの混入を「防止することができるとの知見を得た。以下に示す本発明は、上記知見に鑑みてなされたものである。
【0014】
すなわち、上述したHDIのインゴットへの混入を防止することを目的とした高融点金属の電子ビーム溶解方法においては、電子ビームの走査を、ハース内の溶湯流れ方向とは逆方向に行うとともに、ハース内の溶湯排出口に隣接する領域(以下「ガードゾーン」と称する。)の溶湯平均温度を不純物、ここではLDIの融点以上とすることが望ましい。本発明によれば、ハース内の溶湯表面において鋳型への溶湯流れ方向とは逆方向に電子ビームを走査することで、溶湯表面に浮遊しているLDIを溶湯流れの上流側に押し戻すように電子ビームを照射し、溶湯排出口付近のLDI濃度を低下させることができる。さらに、本発明では、このような状況の下、ハースの溶湯排出口に隣接する溶湯領域であるガードゾーンの溶湯平均温度を不純物であるLDIの融点以上としている。ここで、ガードゾーンとは、上方から見たハース領域のうち、鋳型への溶湯排出口からハースの溶湯流れ方向20〜30%までの領域をいう。すなわち、ガードゾーンとはハース領域の溶湯排出口側の20〜30%の領域を意味する。このような態様を採用することで、上記電子ビーム走査によっては上流側に押し戻されずに溶湯排出口付近に混入したLDIを、鋳型に流入する前に溶湯中に溶解することができ、欠陥のない健全なインゴットを製造することができる。
【0015】
このような高融点金属の電子ビーム溶解方法においては、電子ビームの走査を、ハース内の溶湯流れ方向に対して斜交する方向に行うことが望ましい。電子ビームの走査をハース内の溶湯流れ方向に対して斜交する方向にも伴わせることで、ハース内の溶融表面を浮遊するLDIの上流側への押し戻しを容易に行うことができるのみならず、ハース内の溶湯温度を効率よく維持することができる。なお、電子ビームの走査を溶湯流れと逆方向および斜交する方向との両方向に行う態様としては、二基の電子銃を用いて各電子銃に上記各方向についての走査を担わせることができるが、一基の電子銃により溶湯流れ方向に対して傾斜する方向に電子ビームの走査を行い、結果的に上記両方向の成分を持たせても同様の効果が得られる。
【0016】
また、ハース内の溶湯排出口に隣接する領域の溶湯平均温度を、上記領域以外の溶湯平均温度よりも50〜150℃高くすることが望ましい。このように、ガードゾーンの溶湯平均温度を好適に設定することで、溶湯排出口付近に混入したLDIを鋳型に流入する前に十分に溶解し、より一層欠陥のない健全なインゴットを製造することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。ここでは、高融点金属が、金属チタンである場合について詳述する。なお、高融点金属がジルコニウムやニオブ等の場合にも以下の実施形態を適用することができる。
図1は、本発明に係る電子ビーム溶解装置の主要部を示す断面図である。この電子ビーム溶解装置は、ハース10とハース10の下側部に位置する鋳型20とから構成されている。ハース10には、同図に示す形状のハーススカル11が予め装着されている。なお、同図に示すところにおいては、ハーススカル11には2つの凹部(第1の凹部11aおよび第2の凹部11b)が形成されている。また、鋳型20内には、ベース21にスターティングブロック22が予め装着されている。このような装置構成の下、電子銃30および電子銃31からハース10および鋳型20内のスターティングブロック22に電子ビームの照射を開始し、ハース10内にはハースプール12が形成され、また、鋳型20内にはモールドプール23が形成される。このような電子ビーム照射においては、上記したハース10は水冷銅で構成されているため、ハース10に照射される電子ビームのエネルギーとハース10から抜熱されるエネルギーとのバランスを調整して、ハーススカル11を所定の厚みとする。
【0018】
次に、原料40のハース10への投入から鋳型20への到達する場合の、HDIの捕捉態様について述べる。ハースプール12およびモールドプール23の温度が安定した段階で、ハース10内に原料40の供給を開始する。本実施形態で用いる原料としては、切粉やチップ等のリサイクル材のみならず、スポンジチタン等の純度の高い原料を使用することもできる。また、合金成分を適宜追加供給することもできる。なお、本実施形態では、純度の高い原料を用いる場合はもちろんのこと、HDI等の不純物が相当に混入しているリサイクル材、または純度の低いスポンジ原料を用いた場合にも適用することができる。
【0019】
図示しない原料槽からハース10に供給された原料40は、電子ビームの照射を受けて溶融し、ハースプール12と合体して鋳型20の方向に流れ、鋳型に注入される。原料40に混入しているHDIは、ハースプール12よりも融点が高く、また比重も大きいので、溶融せずに固体状態でハースプール12中を沈降し、ハースプール12の底部のハーススカル11の表面に達する。ハーススカル11の表面に達したHDIは、原料40の溶解が終了するまで当該表面で静止するか、または鋳型20の方向に移動する。
【0020】
このようなHDIの移動挙動等に鑑みれば、第1の凹部11aは、図1に示すように、原料投入部の直下あるいはやや下流の側に設けておくことが好ましい。このように配置することで、原料中に混入したHDIを第1の凹部11aに効果的に捕捉することができる。また、第1の凹部11aで大半のHDIを捕捉することができるが、当該凹部11aで捕捉されなかったHDIはハーススカル11の表面近傍を浮遊しつつ鋳型20の方向に流れて、第2の凹部11bに達して捕捉される。なお、第2の凹部11bは、インゴットの純度を高めるために、できるだけ鋳型排出口近傍に配置することが好ましい。このように配置することでHDIの捕捉をより確実なものとすることができる。
【0021】
また、第2の凹部11bの深さは、第1の凹部11aの深さに比べて大きく設定しておくことが好ましい。その理由は、第2の凹部11bに到達したHDIは、第1の凹部11aから逸流する性質を有するものであり、第1の凹部11aと同じ深さの第2の凹部11bを設けた場合には、当該HDIが再度逸流して鋳型20内のインゴットに混入する可能性が高いからである。このように2つの凹部11a,11bの深さの適正化を図ることにより、第1の凹部11aから逸流したHDIを第2の凹部11bにより効果的に捕捉することができる。
【0022】
以上に示した第1の凹部11aおよび第2の凹部11bは、種々の方法で形成・維持することができる。以下に、その一例として、ハースプール12に照射する電子ビームの密度を調整する場合を示す。本溶解に先立って、図1に示すような形状のハーススカル11を準備し、これをハース10の底部に装着する。ハースプール12は、その上方に配置した電子銃30から照射された電子ビームを受けて溶融状態が維持される。電子ビームは、通常、ハースプール12の全域に亘り均一に照射される。
【0023】
かかる状況の下、第1の凹部11aと第2の凹部11bとに対応した溶湯の表面領域では、他の表面領域に比して電子ビームの照射密度を高め、これにより、他の領域に比してより深い位置まで溶湯が存在するようにし、結果的にハーススカル11に凹部11a、11bが形成・維持される。図2は、上記凹部11a,11bの維持態様の一例を示す平面図である。電子銃(同図では図示せず)から照射された電子ビームは、ハースプール12の表面上を同図に示す矢印の方向に照射され、これにより第1の凹部11aと第2の凹部11bとに対応した部位のエネルギー密度が高められる。
【0024】
このようにハースプール12の表面に照射される電子ビームのエネルギー密度が部分的に高まると、これらの部位に対応したハースプール12の温度もその深部に至るまで上昇する。ハースプール12の温度が上昇すると、ハースプール12に接しているハーススカル11への伝熱量が増加するので、その部位においてはハーススカル11の厚みが減少する。その結果、図1に示すような形状の凹部11a,11bを有したハーススカル11を形成・維持することができる。
【0025】
以上のような凹部11a,11bは、ハース10の水冷ジャケット(図示せず)を複数に分割し、凹部11a,11bを形成すべき部位に対応したハース11の部位の抜熱量を制御する方法によっても形成することができる。なお、凹部11a,11bの形成に際しては、電子ビーム照射密度を高める方法と抜熱量を制御する方法とを組み合わせることにより、凹部11a,11bの形状や位置をさらに精密に調整することができる。
【0026】
次に、ハースプール12の表面への電子ビームの走査パターンについて述べる。ハース10の上流側から下流側、あるいは、下流側から上流側のいずれの方法もとり得るが、図2に示すように、本実施形態では後者の走査パターンを採用する。これは、ハースプールに浮遊する性質を有するLDIのインゴットへの混入を防止するためである。LDIは、ハースプール12の流れに沿って鋳型20に流れ込む傾向にあるが、ハースプール12の下流から上流に向かって電子ビームを走査することで、ハースプール12に浮遊するLDIをハースプール12の下流側から上流側に押し戻す効果が得られ、これによりLDIのインゴットへの混入を防止することができる。
【0027】
このように、電子ビームを走査させることにより形成される凹部11a,11bの深さは、ハーススカル11全体の厚みの10〜50%の範囲に設定することが好ましい。凹部11a,11bの深さが10%未満である場合には、HDIの捕捉効果が十分に発揮できず、また、50%を超える場合には、ハースプール12の温度を相当高くすることが必要となるので、ハースプール12表面からの金属チタンの蒸発ロスが増大して経済的でないからである。
【0028】
また、ハーススカル11の全表面積に占める凹部11a,11b1個あたりの面積比は、5〜15%の範囲に設定することが好ましい。ハーススカル11に形成される凹部11a,11bの面積を大きくするほどHDIの捕捉効果は高まるが、当該面積が過度に大きい場合(上記面積比が15%を超える場合)にはハースプール12からの蒸発ロスが増大して経済的でない。一方、ハーススカル11に形成される凹部11a,11bの面積が過度に小さい場合(上記面積比が5%未満の場合)にはHDIの捕捉効果が十分に得られないからである。尚、電子ビームは、図2に示すように右片上がりに、下流から上流方向にスキャンしているが、その逆の左片上がりに下流から上流方向にスキャンしてもよい。このようにスキャンすることでガードゾーン近傍の密度を高めつつ、ハースプール上に浮遊しているLDIを上流方向に効果的に押し戻すことができる。また、図示してはいないが、右片上がりではなく、ジグザグに電子ビームをスキャンしても良い。これらのビームパターンは、原料等の種類に応じて適宜選択すればよい。さらに、ガードゾーンは、電子ビームの照射密度が高まっていればよいので、ジグザグ、環状、直線状等の種々のパターンを採用することができる。
【0029】
なお、上記したように凹部11a,11bの深さは電子ビームのエネルギー密度を調整することによって制御することができるが、現実の操業ではエネルギー密度よりも温度の方が管理し易い。本実施形態では、温度指標としてハースプール12の溶湯平均温度に対する凹部11a,11bに対応する部分の溶湯の過熱温度を基準に考える。ここで過熱温度とは、ハースプール12の平均温度からどれだけ高い温度にあるかを示すものである。よって、過熱度が大きいということは、ハースプール12の温度が高いことを意味する。
【0030】
この過熱度を用いると、上記したような凹部11a,11bの深さを維持するには、凹部11a,11bに対応したハースプール12の過熱度を50℃〜150℃の範囲に設定することが好ましい。過熱度が50℃未満では、凹部11a,11bの深さが小さいものとなり、本発明の効果を十分に発揮することができない。一方、加熱度が150℃を超えると、凹部11a,11bに対応したハースプール12からのチタンの蒸発ロスが大きくなり経済的でなく、また過熱度が150℃を超える温度にハースプール12を過熱しても、形成・維持される凹部11a,11bの深さに及ぼす影響は小さくなるためである。
【0031】
また、ハースプール12の表面を下流側から上流側に向けて電子ビームを走査させることで、LDIの大部分は上流側に押し戻すことができるが、LDIの性状によっては鋳型方向に逸流するものもある。そこで、ハーススカル11の表面に凹部11a,11bを形成するにあたり、ハースプール12を上記した好適範囲に過熱した場合には、ハースプール12の上流から逸流してきたLDIを溶解消滅させることができ、LDIのインゴットへの混入防止を一層実効あるものとすることができる。
【0032】
なお、上記したハーススカル11の表面に2個の凹部11a,11bを形成する態様以外に、それらの中間に第3の凹部を設けたハーススカルも本発明の適用範囲内であり、このような態様においては、HDIをより完全に捕捉することができる。また、3個以上の凹部を設けることも可能ではあるが、上記したような蒸発ロスを考慮すると、凹部の設置個数は1〜3が適切な範囲である。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
6Al−4V合金スクラップ500Kg中にHDIに見立てた直径1〜2mmのWCを20個混合させた後、電子ビーム溶解装置内のハースに投入を開始した。ハース底部には、3個の凹部を形成し、ハース全体の面積に占める凹部3個の面積比率を約30%とした。 また、ハーススカルの厚みに対する各凹部の深さの比を30%とした。また、各凹部の過熱度は、100℃とした。上記の6Al−4V合金の溶解を完了し、室温まで冷却後、ハーススカル全体を圧延して厚さ5mmの板に加工した。このように加工した板を、X線透過装置で検査したところ原料に混入させた20個のWCの全てを検出することができた。
【0034】
[実施例2]
実施例1の原料中にLDIに見立てた粒径0.2〜1.0mmの窒化チタン(Ti0.9N0.1)20個も意図的に混合してハース溶解を行った。ハース溶解に際しては、図1に示す電子ビーム溶解装置を使用し、電子ビームの照射態様も図1に示すものとした。なお、ハース領域の溶湯排出口側の20%の領域をガードゾーンとし、ガードゾーンの溶湯平均温度をガードゾーンを除く領域の溶湯平均温度よりも100℃高い1800℃とした。その結果、原料に混合投入したすべてのHDIがハーススカル内に検出された。また、20個投入したLDIのうち、19個はハース浴内に検出されたが、インゴット内には検出されなかった。残りの1個はハースプールのガードゾーン内で溶融消滅したものと推察される。
【0035】
[比較例]
実施例2のガードゾーンを設けないで、しかも、電子ビームの照射パターンを実施例2とは逆に、原料供給側から鋳型方向に向けて照射する操作以外は、実施例1と同じ条件で試験した。ハース浴内に19個のLDIが検出され、また、インゴット内に1個のLDIが検出された。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ハース内の溶湯の底部に、表面に少なくとも1個の凹部を有するハーススカルを形成することにより、ハース内において、不純物、とくにHDIを除去し、健全なインゴットを得ることのできる、高融点金属の電子ビーム溶解方法を提供することができる。よって本発明は、高融点金属の精製技術に適用することができる点で有望である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子ビーム溶解装置の主要部を示す断面図である。
【図2】図1に示した凹部11a,11bの形成・維持態様の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
10…ハース、11…ハーススカル、11a…第1の凹部、11b…第2の凹部、12…ハースプール、20…鋳型、21…ベース、22…スターティングブロック、23…モールドプール、30,31…電子銃、40…原料。
Claims (7)
- ハースを用いた高融点金属の電子ビーム溶解方法であって、ハース内の溶湯の底部に、表面に少なくとも1個の凹部を有するハーススカルを形成することを特徴とする高融点金属の電子ビーム溶解方法。
- 前記高融点金属が、チタン、ジルコニウムまたはニオブであることを特徴とする請求項1に記載の高融点金属の電子ビーム溶解方法。
- 前記ハーススカル表面において、前記凹部を原料投入部近傍と溶湯排出口近傍とに設けることを特徴とする請求項1または2に記載の高融点金属の電子ビーム溶解方法。
- 前記凹部の形成を、ハーススカルへの電子ビームの照射密度に依存させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高融点金属の電子ビーム溶解方法。
- 前記電子ビームの走査を、ハース内の溶湯流れ方向とは逆方向に行うとともに、ハース内の溶湯排出口に隣接する領域の溶湯平均温度を不純物の融点以上とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高融点金属の電子ビーム溶解方法。
- 前記電子ビームの走査を、ハース内の溶湯流れ方向に対して斜交する方向に行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高融点金属の電子ビーム溶解方法。
- 前記ハース内の溶湯排出口に隣接する領域の溶湯平均温度を、前記領域以外の溶湯平均温度よりも50〜150℃高くすることを特徴とする請求項5または6に記載の高融点金属の電子ビーム溶解方法。
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