JP2010247201A - 金属インゴットの溶製装置および同装置を用いた金属インゴットの溶製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面欠陥を抑制することができる金属インゴットの溶製装置およびこれを用いた金属インゴットの溶製方法を提供する。
【解決手段】真空チャンバーと、金属原料の供給手段と、金属原料を溶解する電子ビーム照射手段と、溶湯を保持するハースと、溶湯を注ぎ込む鋳型と、鋳型内に形成されるインゴットの引き抜き手段とを備えたハース式電子ビーム溶解炉において、ハースと鋳型との間に、溶湯を一旦保持して分散させながら鋳型に供給する溶湯分散レードルを介装させたことを特徴とする金属インゴットの溶製装置。また、この溶製装置を用いた金属インゴットの溶製方法であって、ハースで溶解して生成した金属原料の溶湯を、溶湯分散レードルに供給して一旦保持させ、溶湯分散レードルを経由して鋳型に注入する。
【選択図】図1
【解決手段】真空チャンバーと、金属原料の供給手段と、金属原料を溶解する電子ビーム照射手段と、溶湯を保持するハースと、溶湯を注ぎ込む鋳型と、鋳型内に形成されるインゴットの引き抜き手段とを備えたハース式電子ビーム溶解炉において、ハースと鋳型との間に、溶湯を一旦保持して分散させながら鋳型に供給する溶湯分散レードルを介装させたことを特徴とする金属インゴットの溶製装置。また、この溶製装置を用いた金属インゴットの溶製方法であって、ハースで溶解して生成した金属原料の溶湯を、溶湯分散レードルに供給して一旦保持させ、溶湯分散レードルを経由して鋳型に注入する。
【選択図】図1
Description
本願発明は、ハース式電子ビーム溶解炉を採用した金属インゴット溶製装置および同溶製装置を用いた金属インゴットの溶製方法に係り、特に、ハースから鋳型内に溶湯を均一に注入する装置構成とこの構成を用いたインゴットの溶製方法に関する。
金属チタンは、近年にない需要の増加に追われているが、その一方で品質に対する要求も年々高まっている。金属チタンは、クロール法で製造されたスポンジチタンを、所定の大きさに破砕・整粒した後、これをプレス成型してロッド状の電極に加工し、次いで、真空アーク溶解炉にて電極に電圧を印加してアーク放電させ、溶湯を鋳型に保持してチタンインゴットに溶製している。
また、他の方法として、スポンジチタン等の溶解原料をハースに供給し、電子ビームによってこれを溶解して鋳型に流し込む電子ビーム溶解炉を用いたチタンインゴットの溶製方法も知られている。電子ビーム溶解炉では、真空アーク溶解炉に比較して溶解原料の形態に自由度があるため、最近では、電子ビーム溶解炉を用いたチタンインゴットの溶製方法について注目されている。
このような電子ビーム溶解炉で溶製されるインゴットは、従来断面が円形であったが、断面が矩形のインゴットを溶製する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。断面が矩形のインゴットの場合には、その後の熱間鍛造工程や圧延工程において断面が円形のインゴットに比べて取り扱いの点や加工性の点で有利であると考えられている。
しかしながら、当該矩形鋳型を用いたインゴットを溶製する場合においては、円形鋳型の場合とは異なりハースから鋳型に注入された溶湯の温度分布が短辺方向と長辺方向で不均一となり、その結果、インゴットに反りが生じたりインゴット表面にしわ状の欠陥が形成されることが知られている。
この点については、矩形鋳型に溶湯を注入するハースを矩形鋳型の幅方向に往復動させることで、鋳型内に形成される溶融チタンプールの温度を均一化し、表面欠陥のないインゴットを溶製する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、高温の溶湯を保持したハースに対して周期的な往復動等の動作をさせるには、装置構成が複雑となってしまい、また、その動作機構の保守や点検の必要性もあるので、前記公報に記載されている技術を実操業に利用するには、解決すべき課題が残されているものと考えられる。
また、鋳型内に保持した溶融チタンプールに照射する電子ビーム密度に分布を持たせてプール温度を均一に改善する方法も考えられるが、この方法は、鋳型内の溶融チタンプールの表面近傍を加熱するには効果的な手段であるものの、溶融チタンプールの深部まで加熱するには応答性が悪く、矩形鋳型の短辺方向と長辺方向の抜熱特性の差異を相殺するのは困難であり、改善の余地が残されている。
このように、電子ビーム溶解炉を用いてチタン等の高融点金属インゴットを溶製するにあたり、鋳型内溶融プールの温度分布を均一にし、その結果、表面欠陥のない金属インゴット溶製する方法が望まれている。
本願発明は、表面欠陥が抑制され直線性に優れた金属インゴットの溶製装置およびこれを用いた金属インゴットの溶製方法の提供を目的としている。
かかる実情に鑑み前記課題について鋭意検討を進めてきたところ、ハース式電子ビーム溶解炉において、ハースと鋳型の間に、底部に複数の開口部を設けた溶湯分散レードルを配設し、ハースから排出された溶湯を溶湯分散レードルに受け、この溶湯分散レードルを介して鋳型に注入することにより、表面欠陥のない金属インゴットを溶製できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
即ち、本願発明に係る金属インゴットの溶製装置は、真空チャンバーと、金属原料の供給手段と、金属原料を溶解する電子ビーム照射手段と、溶湯を保持するハースと、溶湯を注ぎ込む鋳型と、鋳型内に形成されるインゴットの引き抜き手段とを備えたハース式電子ビーム溶解炉において、ハースと鋳型との間に、溶湯を一旦保持して分散させながら鋳型に供給する溶湯分散レードルを介装させたことを特徴としている。
本願発明の金属インゴットの溶製装置においては、鋳型の断面が矩形であることを好ましい態様としている。
本願発明の金属インゴットの溶製装置においては、溶湯分散レードルの底部に複数の開口ノズルが形成されていることを好ましい態様としている。
本願発明の金属インゴットの溶製装置においては、複数の開口ノズルが、溶湯分散レードルの中心部では粗に、周辺部では密になるように形成されていることを好ましい態様としている。周辺部とは全幅のうち両端からそれぞれ20%の領域を意味し、中心部とはそれ以外の領域を意味する。
本願発明の金属インゴットの溶製装置においては、溶湯分散レードルが水冷銅で構成されていることを好ましい態様としている。
また、本願発明に係る前記の金属溶製用電子ビーム溶解炉を用いた金属インゴットの溶製方法は、ハースで溶解して生成した金属原料の溶湯を、溶湯分散レードルに供給して一旦保持させ、溶湯分散レードルを経由して鋳型に注入することを特徴としている。
本願発明の金属インゴットの溶製方法においては、溶湯分散レードル内に溶融金属プールが形成されるような溶湯供給速度および/または開口ノズルの寸法にて操業することを好ましい態様としている。
本願発明の金属インゴットの溶製方法においては、溶湯分散レードル内に形成された溶融金属プールに電子ビームを照射して溶融状態を維持することを好ましい態様としている。
本願発明の金属インゴットの溶製方法においては、鋳型内で凝固生成した金属をインゴットの形で連続的に引き抜くことを好ましい態様としている。
本願発明の金属インゴットの溶製方法においては、金属インゴットの断面が矩形であることを好ましい態様とするものである。
本願発明の金属インゴットの溶製方法においては、金属が、チタン、チタン合金、シリコンまたはタンタルであることを好ましい態様としている。
前記した金属インゴットの溶製装置および同溶製方法により溶製された金属インゴットの表面には、表面欠陥の発生が抑制され、品質の優れた金属インゴットを溶製することができるという効果を奏するものである。その結果、溶製されたインゴットの表面切削量も抑制でき、金属インゴットの歩留まり低下も効果的に抑制されるという効果も奏するものである。
本願発明の好ましい実施形態について図面を用いて以下に説明する。
A.金属インゴットの溶製装置
図1は、ハース式電子ビーム溶解炉を用いた本願発明の金属インゴットの溶製装置の構成を示す概略図である。チタン等の溶製する対象の金属原料12は、例えばアルキメデス缶等の原料供給手段10によって供給され、振動フィーダ等の原料運搬手段11を経て溶解ハース13に投入され、電子ビーム照射手段14によって溶解されて溶湯20となる。
A.金属インゴットの溶製装置
図1は、ハース式電子ビーム溶解炉を用いた本願発明の金属インゴットの溶製装置の構成を示す概略図である。チタン等の溶製する対象の金属原料12は、例えばアルキメデス缶等の原料供給手段10によって供給され、振動フィーダ等の原料運搬手段11を経て溶解ハース13に投入され、電子ビーム照射手段14によって溶解されて溶湯20となる。
溶湯20は、溶解ハース13の下流側に流れて、図1で矢印で示されるように排出口15から排出され、その下方に設けられた溶湯分散レードル30に保持される。保持された溶湯20は、溶湯分散レードル30に形成された複数の開口ノズル31を経由して、矢印で示すように分散させられながら鋳型40に供給されて、冷却凝固され、金属インゴット23が得られる。なお、本願発明においては、鋳型40は矩形鋳型を用いることが好ましい。金属インゴット23は、引き抜き手段41を下方に動作させるとともに溶湯20を供給し続けることにより、連続的に溶製することができる。
本願発明に係る溶湯分散レードル30とは、溶解ハース13から供給された溶湯20を受けて、その内部でレードルプール21を形成し、底部に設けた開口ノズル31より、溶湯分散レードル30の下方の鋳型40内に形成された溶融プール22に、排出量を均一に、あるいは排出量に一定の分布を持たせるように構成したことを特徴とするものである。
その結果、鋳型40内に持ち込まれる溶湯20を均一に、あるいは一定の分布を持たせて分散させることができ、鋳型40内に形成される溶融プール22内の温度分布も均一化することができるという効果を奏するものである。結果として、従来のハースから鋳型に直接溶湯を供給する場合と比較して、溶融プール22の温度分布が大幅に改善され、表面の欠陥が抑制された金属インゴットを溶製することができるという効果を奏するものである。
本願発明に用いる溶湯分散レードル30は、前記したように溶解ハース13から高温の溶湯20を受けるように配設されているので、水冷銅で構成することが好ましい。その際、溶解ハース13から排出された溶湯20が、溶湯分散レードル30で過冷されるおそれがあるので、溶湯分散レードル30の頂部に配設した電子銃から発せられた電子ビーム照射手段14により加熱して溶融状態を維持することが好ましい。
図2は、本願発明の溶湯分散レードル30を図1において上方から見た平面図である。溶湯分散レードル30の底部に設けた開口ノズル31の大きさは、20〜40mmの範囲から選択することが好ましい。開口ノズル31の大きさが20mm以下の場合には、溶湯分散レードル30に溶融保持された溶湯の粘性により円滑に排出されない場合があり好ましくない。一方、開口ノズル31の大きさが40mmを超える場合には、溶湯の供給速度に比べて溶湯の排出速度が大きくなり、溶湯分散レードル30の内部にレードルプール21を保持することが困難となる。
なお、本願発明における溶解ハース13から鋳型40への溶湯供給速度は、1〜3t/時の範囲とすることが好ましい。このような溶湯供給速度、即ち、溶解速度を選択することで、設備全体の生産効率を最大に引き出すことができる。
溶湯分散レードル30の底部に配設した開口ノズル31は、鋳型40内の溶融プール22の温度分布を均一にさせるべく配置されなければならず、鋳型40および溶湯分散レードル30の形状によっては、溶湯分散レードル30底面全体に開口ノズル31が均一に分布していると縁部の抜熱が大きいため結果的に温度分布が均一にならない場合がある。そこで、図2に示すように、鋳型40の長手方向(L方向)に対して、開口部31の合計面積に偏った分布を持たせることが好ましい場合がある。
特に、溶解ハース13から鋳型40に供給される溶湯排出速度が小さい場合には、溶湯20が供給された溶融プール22内の鋳型壁面側の温度が低下する場合があり、このような場合には、図2に示すように、溶湯分散レードル30の開口ノズル31が、中心部が粗で、周辺部を密に配置することが好ましい。
本願発明においては、溶湯分散レードルの底面全体の面積に対する開口ノズルが占める総面積の比を「平均開口面積比」と定義した場合、溶湯分散レードル30の幅(L)の両側それぞれ20%近傍の領域(dL、dL’)において、それぞれの領域における開口面積比が、平均開口面積比よりも10〜70%大きくなるように開口ノズル31を配置することが好ましく、10%〜30%程度大きくなるように配置することがより好ましいとされる(以降、前記の数値範囲を「開口ノズル集中増分比(%)」と定義する)。
開口ノズル集中増分比が10%以下の場合には、溶湯分散レードル30から鋳型40に排出される溶湯による溶融プール4の周辺部に対する加熱効果が発揮されず、好ましくない。一方、50%を越えると逆に溶融プール22の中心部への供給量が不足して温度が低下して好ましくない。
このように開口ノズル31に分布を持たせることで、溶融プール22内の幅および厚み方向の温度分布を均一に保持することができるという効果を奏するものである。その結果、生成される金属インゴット23の表面のシワや傷の発生を抑制できるため、切削等による表面処理が最小限で済み、インゴットの歩留まりも効果的に向上させることができるという効果を奏するものである。また、鋳型40内の温度分布が均一に形成されるため鋳型40より引き抜かれたインゴット23の直線性も良好に維持されるという効果を奏するものである。
B.金属インゴットの溶製方法
本願発明に係る金属インゴットの溶製方法は、前記した装置構成を用いることを特徴とするものであり、特に、溶解ハース13で溶解して生成した溶湯20を、溶湯分散レードル30を介して鋳型40に注入することを特徴とするものである。
本願発明に係る金属インゴットの溶製方法は、前記した装置構成を用いることを特徴とするものであり、特に、溶解ハース13で溶解して生成した溶湯20を、溶湯分散レードル30を介して鋳型40に注入することを特徴とするものである。
その結果、鋳型内に形成される溶融プール22の温度を均一に保持することができるという効果を奏するものであり、鋳型40より引き抜かれた金属インゴット23の反りや、表面のしわや傷の発生を効果的に抑制することができるという効果を奏するものである。
また、本願発明の金属インゴットの溶製方法においては、溶湯分散レードル30には、レードルプール21が形成されるように溶解ハース13からの溶湯排出速度を選択することが好ましい。本願発明においては溶解ハース13から鋳型40への溶湯供給速度は、1〜3t/時の範囲とすることが好ましい。前記したような溶湯供給速度、即ち、溶解速度を選択することで、溶湯分散レードル30内にレードルプール21を形成させることができる。
前記の条件にて形成されレードルプール21は、電子ビーム照射手段14による加熱により金属の融点以上に加熱保持しておくことが好ましい。
本願発明に用いる鋳型40は、その断面が矩形であるものを用いることが好ましく、前記形状の鋳型を用いる場合に、本願発明の効果、即ち、鋳型の幅および厚み方向の温度分布を均一に保持することができ、その結果、生成されたインゴット表面のしわや傷の発生を効果的に抑制することができる。
以上説明したように、本願発明に係る金属インゴットの溶製装置および溶製方法を用いることで、表面欠陥のない健全なインゴットを溶製することができ、その結果、表面切削による生成インゴットの歩留まり低下を効果的に抑制することができるという効果を奏するものである。
なお、本願発明では、溶製される金属としてチタンを例に説明を行ったが、それ以外にもチタン合金、シリコン、ニオブ、タンタル等にも同様に本願発明を適用することが可能である。
以下、実施例によって本願発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
下記の装置構成および原料を用いて、幅1080mm×厚さ250mm×長さ3000mmのチタンインゴットを溶製した。その結果、溶製されたチタンインゴットの表面状態を観察したが、シワや傷の形成は確認されなかった。
1.溶解原料:スポンジチタン
2.溶解装置
1)電子ビーム出力
ハース側:1100kW
鋳型側:800kW
2)矩形鋳型
大きさ:厚み260mm×幅1100mm
構成:水冷銅
3)溶湯分散レードル
大きさ:長さ1000mm×幅250mm
構成:水冷銅
開口ノズル:径30mm、個数7個(中心部)、3個(外周部)
鋳型周辺部の20%領域(図2におけるdL、dL’)に対して、開口面積比を平均開口面積比に比べて27%高くなる分布となるように開口ノズルを配設。中心部に配設する開口ノズルの個数を変更しないで、外周部に配設するノズルの数を変更して、前記開口面積比を設定した。
[実施例1]
下記の装置構成および原料を用いて、幅1080mm×厚さ250mm×長さ3000mmのチタンインゴットを溶製した。その結果、溶製されたチタンインゴットの表面状態を観察したが、シワや傷の形成は確認されなかった。
1.溶解原料:スポンジチタン
2.溶解装置
1)電子ビーム出力
ハース側:1100kW
鋳型側:800kW
2)矩形鋳型
大きさ:厚み260mm×幅1100mm
構成:水冷銅
3)溶湯分散レードル
大きさ:長さ1000mm×幅250mm
構成:水冷銅
開口ノズル:径30mm、個数7個(中心部)、3個(外周部)
鋳型周辺部の20%領域(図2におけるdL、dL’)に対して、開口面積比を平均開口面積比に比べて27%高くなる分布となるように開口ノズルを配設。中心部に配設する開口ノズルの個数を変更しないで、外周部に配設するノズルの数を変更して、前記開口面積比を設定した。
[実施例2]
実施例1において、溶湯分散レードルの開口面積比を、鋳型周辺部の20%領域に対して、平均開口面積比に対して70%高まるように開口ノズルを配設した以外は同じ条件下でチタンインゴットを溶製した。溶製されたチタンインゴットの表面状態を観察したが、シワや傷の形成は確認されなかった。
実施例1において、溶湯分散レードルの開口面積比を、鋳型周辺部の20%領域に対して、平均開口面積比に対して70%高まるように開口ノズルを配設した以外は同じ条件下でチタンインゴットを溶製した。溶製されたチタンインゴットの表面状態を観察したが、シワや傷の形成は確認されなかった。
[実施例3]
本願発明に係る溶湯分散レードルの底部中心部の開口ノズルの数を7として変更せずに、周辺部20%領域に配置する開口ノズルの数を変更して、集中増分比(%)を変化させた。それぞれの集中増分比を変更した場合の溶製されたインゴット表面のシワや傷について調査し、表1のように整理した。同表より、開口ノズル集中増分比は、27%と70%の範囲において、シワや疵の発生がなくいずれもが鋳肌の健全なインゴットが溶製されていることが確認された。
本願発明に係る溶湯分散レードルの底部中心部の開口ノズルの数を7として変更せずに、周辺部20%領域に配置する開口ノズルの数を変更して、集中増分比(%)を変化させた。それぞれの集中増分比を変更した場合の溶製されたインゴット表面のシワや傷について調査し、表1のように整理した。同表より、開口ノズル集中増分比は、27%と70%の範囲において、シワや疵の発生がなくいずれもが鋳肌の健全なインゴットが溶製されていることが確認された。
[比較例]
実施例1において溶湯分散レードルを用いないで、図3の平面図に示すとおり溶解ハースから直接鋳型に溶湯を注ぐように装置構成を変更してチタンインゴットを溶製した。溶製されたチタンインゴットの表面には、大きなシワや傷は観察されなかったものの微細な疵が散見された。
実施例1において溶湯分散レードルを用いないで、図3の平面図に示すとおり溶解ハースから直接鋳型に溶湯を注ぐように装置構成を変更してチタンインゴットを溶製した。溶製されたチタンインゴットの表面には、大きなシワや傷は観察されなかったものの微細な疵が散見された。
本願発明は、電子ビーム溶解炉を用いて金属インゴットを溶製する場合において、表面の傷が抑制され、また直線性に優れた金属インゴットを効率よく製造することができる。
10…原料供給手段、11…原料運搬手段、12…金属原料、13…溶解ハース、14…電子ビーム照射手段、15…排出口、20…溶湯、21…レードルプール、22…溶融プール、23…金属インゴット、30…溶湯分散レードル、31…開口ノズル、40…鋳型、41…引き抜き手段。
Claims (12)
- 真空チャンバーと、金属原料の供給手段と、上記金属原料を溶解する電子ビーム照射手段と、溶湯を保持するハースと、上記溶湯を注ぎ込む鋳型と、上記鋳型内に形成されるインゴットの引き抜き手段とを備えたハース式電子ビーム溶解炉において、
上記ハースと上記鋳型との間に、上記溶湯を一旦保持して分散させながら鋳型に供給する溶湯分散レードルを介装させたことを特徴とする金属インゴットの溶製装置。 - 前記鋳型の断面が矩形であることを特徴とする請求項1に記載の金属インゴットの溶製装置。
- 前記溶湯分散レードルには、底部に複数の開口ノズルが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属インゴットの溶製装置。
- 溶湯分散レードルの底面全体の面積に対する開口ノズルが占める総面積の比を「平均開口面積比」と定義した場合、前記複数の開口ノズルの面積に係る前記平均開口面積比が、前記溶湯分散レードルの中心部に比べて周辺部が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の金属インゴットの溶製装置。
- 前記周辺部とは、全幅のうち両端からそれぞれ20%の領域であり、前記中心部とは、それ以外の領域であることを特徴とする請求項4に記載の金属インゴットの溶製装置。
- 前記溶湯分散レードルが水冷銅で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属インゴットの溶製装置。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の金属インゴットの溶製装置を用いた金属インゴットの溶製方法であって、
前記ハースで溶解して生成した金属原料の溶湯を、前記溶湯分散レードルに供給して一旦保持させ、溶湯分散レードルを経由して前記鋳型に注入することを特徴とする金属インゴットの溶製方法。 - 前記溶湯分散レードル内に溶融金属プールが形成されるような溶湯供給速度および/または開口ノズルの寸法にて操業することを特徴とする請求項7に記載の金属インゴットの溶製方法。
- 前記溶湯分散レードル内に形成された溶融金属プールに電子ビームを照射して溶融状態を維持することを特徴とする請求項8に記載の金属インゴットの溶製方法。
- 前記鋳型内で凝固生成した金属をインゴットの形で連続的に引き抜くことを特徴とする請求項7に記載の金属インゴットの溶製方法。
- 前記金属インゴットの断面が矩形であることを特徴とする請求項10に記載の金属インゴットの溶製方法。
- 前記金属が、チタン、チタン合金、シリコンまたはタンタルであることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の金属インゴットの溶製方法。
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JP2020139220A (ja) * | 2019-03-01 | 2020-09-03 | 東邦チタニウム株式会社 | ハース、電子ビーム溶解炉、及び鋳造品の製造方法 |
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JP2020139220A (ja) * | 2019-03-01 | 2020-09-03 | 東邦チタニウム株式会社 | ハース、電子ビーム溶解炉、及び鋳造品の製造方法 |
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