JP2020010024A - 撮像素子用光電変換素子用材料及び光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】撮像素子用の光電変換素子をはじめとする種々のエレクトロニクスデバイスに適用可能な、正孔又は電子リーク防止ないし輸送特性、プロセス温度に対する耐性、可視光透明性等に優れたブロック層の構成材料に適した有機化合物を提供する。【解決手段】下記式(1)(式(1)中、X1及びX2のいずれか一方は硫黄原子又は酸素原子を表し、他方はメチン基を表す。R1及びR2はそれぞれ独立に下記式(2)(式(2)中、Aは芳香族化合物の芳香環から水素原子を二つ除いた二価の連結基を表し、Bは単環または縮環した複素環化合物の複素環又は縮環から水素原子を一つ除いた残基を表し、nは0乃至3の整数を表す。)で表される置換基を表す。)で表される有機化合物を含む。【選択図】なし

Description

本発明は特定構造の有機化合物を含む撮像素子用光電変換素子用材料及び該光電変換素子用材料を含む光電変換素子に関する。
近年、フレキシビリティを有すること、大面積化が可能であること、更には安価で高速の印刷法により製造可能なこと等を特徴とする有機エレクトロニクスデバイスへの関心が高まっている。代表的な有機エレクトロニクスデバイスとしては、有機EL素子、有機太陽電池素子、有機光電変換素子及び有機トランジスタ素子等が挙げられるが、これらの中でも有機EL素子は、次世代ディスプレイ用途をメインターゲットとした携帯電話のディスプレイやTVなどへの応用が期待されており、更なる高機能化を目指した開発が継続されている。有機太陽電池素子等はフレキシブルで安価なエネルギー源としての研究開発が、また有機トランジスタ素子等はフレキシブルなディスプレイや安価なIC用途への応用を目的とした研究開発がなされている。
有機エレクトロニクスデバイスの開発には、デバイスを構成する各材料の開発が非常に重要であり、そのため各材料の分野では、現在でも有用な材料の検討及び開発が精力的に行われている。その中で、ナフトジチオフェンを母骨格とした化合物も有機エレクトロニクス材料として検討されており、有機トランジスタ(非特許文献1、2、特許文献1、2)への応用が報告されている。また、ナフトジチオフェン骨格を持つポリマーも有機エレクトロニクス材料に用いられており、有機トランジスタ(非特許文献3、特許文献3)や太陽電池(非特許文献4)へと応用されている。このことよりナフトジチオフェン誘導体は有機エレクトロニクスに好適な分子であると言える。
一方で、有機光電変換素子は次世代の撮像素子への応用が期待されており、いくつかのグループからその報告がなされている。例えば、キナクリドン誘導体、もしくはキナゾリン誘導体を光電変換素子に用いた例(特許文献4)、キナクリドン誘導体を用いた光電変換素子を撮像素子へ応用した例(特許文献5)、ジケトピロロピロール誘導体を用いた例(特許文献6)が挙げられる。一般的に、撮像素子は高コントラスト化及び省電力化を目的として、暗電流を低減させることによって性能が向上すると考えられる。そこで、暗時の光電変換部からのリーク電流を減らす為に、光電変換部と電極部との間に正孔ブロック層または電子ブロック層を挿入する手法が用いられる。
デバイスの構成膜中において、電極もしくは導電性を有する膜とそれ以外の膜との界面にそれぞれ配置され、有機エレクトロニクスデバイスの分野では一般に広く用いられる正孔ブロック層及び電子ブロック層は、不必要な正孔もしくは電子の漏れを調整して正孔もしくは電子の逆移動を制御する機能を有する層(膜)であり、デバイスの用途毎の耐熱性、透過波長及び成膜方法等の特性を考慮した上で、材料を選択して用いられるものである。しかしながら、特に光電変換素子用途における材料への要求性能は高く、従来公知の正孔ブロック層及び電子ブロック層用の材料では、リーク電流防止特性、プロセス温度に対する耐熱性及び可視光透明性などの面で、十分な特性を有しているとは言えず、商業的に活用されるに至っていない。
国際公開第2010/058692号 特許第5284677号公報 特許第6250512号公報 特許第4972288号公報 特許第4945146号公報 特許第5022573号公報 特開2008−290963号公報
J.Am.Chem.Soc.,2011,133(13),5024. Synthetic metals,2015,206,24. J.Am.Chem.Soc.,2011,133(17),6852. J.Am.Chem.Soc.,2013,135(24),8834.
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、正孔又は電子リーク防止特性、正孔又は電子輸送特性、プロセス温度に対する耐熱性、可視光透明性等に優れたブロック層の材料となる光電変換素子用材料、及び該光電変換素子用材料を含む光電変換素子をはじめとする種々のエレクトロニクスデバイスを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、特定構造の化合物を含む光電変換素子用材料を光電変換素子に適用することにより前記諸課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の通りである。
[1]下記式(1)
Figure 2020010024
(式(1)中、X及びXのいずれか一方は硫黄原子又は酸素原子を表し、他方はメチン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に下記式(2)
Figure 2020010024
(式(2)中、Aは芳香族化合物の芳香環から水素原子を二つ除いた二価の連結基を表し、Bは単環または縮環した複素環化合物の複素環又は縮環から水素原子を一つ除いた残基を表し、nは0乃至3の整数を表す。)で表される置換基を表す。)
で表される有機化合物を含む撮像素子用光電変換素子用材料。
[2]X及びXのいずれか一方が硫黄原子であり、他方がメチン基である前項[1]に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
[3]nが1である前項[1]又は[2]に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
[4]Aがベンゼン環から水素原子を二つ除いた二価の連結基である前項[3]に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
[5]Bがチオフェン環を含む複素環化合物の複素環又は縮環から水素原子を一つ除いた残基である前項[4]に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
[6]前項[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料を含む有機薄膜。
[7]前項[6]に記載の有機薄膜を含む撮像素子用光電変換素子。
[8]前項[7]に記載の撮像素子用光電変換素子を複数アレイ状に配置した撮像素子。
[9]前項[7]に記載の撮像素子用光電変換素子または前項[8]に記載の撮像素子を含む光センサー。
[10]下記式(3)で表される有機化合物。
Figure 2020010024
(式(3)中、X及びXのいずれか一方は硫黄原子又は酸素原子を表し、他方はメチン基を表す。X及びXのいずれか一方は硫黄原子、酸素原子又は二価の連結基NRを表し、他方はメチン基又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。)
特定構造の化合物を含む本発明の撮像素子用光電変換素子用材料を用いることにより、正孔又は電子のリーク防止性や輸送性、さらには耐熱性や可視光透明性等の要求特性に優れた撮像素子用光電変換素子を提供することができる。
図1は、本発明の撮像素子用光電変換素子の実施態様を例示した断面図を示す。
本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づくものであるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。
本発明の撮像素子用光電変換素子用材料は、下記式(1)で表される有機化合物を含有する。
Figure 2020010024
上記式(1)中のR及びRはそれぞれ独立に下記式(2)で表される置換基を表す。
Figure 2020010024
上記式(2)中のAは芳香族化合物の芳香環から水素原子を二つ除いた二価の連結基を表し、Bは単環または縮環した複素環化合物の複素環又は縮環から水素原子を一つ除いた残基を表し、nは0乃至3の整数を表す。
式(2)のAが表す二価の連結基となり得る芳香族化合物は特に限定されず、例えばベンゼン、インデン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナレン、ピレン、フルオランテン、フェナントレン、クリセン及びペリレン等が挙げられ、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、アントラセン又はピレンが好ましく、ベンゼンがより好ましい.
式(2)のAが表す二価の連結基は置換基を有していてもよい。
式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基に制限はないが、例えばアルキル基、アルコキシ基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基、アルキル置換アミノ基、アリール置換アミノ基、非置換アミノ基(NH基)、シアノ基、イソシアノ基等が挙げられ、アルキル基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子が好ましく、芳香族基、複素環基がより好ましい。
式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としてのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、t−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、sec−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、sec−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基及びn−エイコシル基等の炭素数1乃至20のアルキル基が好ましく、炭素数1乃至12のアルキル基がより好ましく、炭素数1乃至6のアルキル基が更に好ましく、炭素数1乃至4のアルキル基が特に好ましい。
式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としてのアルコキシ基とは、酸素原子とアルキル基が結合した置換基であり、アルコキシ基が有するアルキル基の具体例としては、例えば式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としてのアルキル基の項に記載したアルキル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としての芳香族基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、トリル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、フェナンスニル基及びメスチル基等が挙げられ、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、ナフチル基又はアントリル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基又はナフチル基がより好ましい。
式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としての複素環基の具体例としては、後述する式(2)のBが表す残基(単環又は縮環した複素環化合物の複素環又は縮環から水素原子を一つ除いた残基、以下単に「複素環残基」とも記載する)の項に記載した複素環残基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としてのハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としてのアルキル置換アミノ基は、モノアルキル置換アミノ基及びジアルキル置換アミノ基の何れにも制限されず、これらアルキル置換アミノ基におけるアルキル基としては、例えば式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としてのアルキル基の項に記載したアルキル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としてのアリール置換アミノ基は、モノアリール置換アミノ基又はジアリール置換アミノ基の何れにも制限されず、これらアリール置換アミノ基におけるアリール基としては、例えば式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としての芳香族基および後述する式(2)のBが表す複素環残基の項に記載した複素環残基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としては、芳香族基又は複素環基が好ましい。尚、式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としての芳香族基及び複素環基は置換基を有していてもよく、該有していてもよい置換基としては式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
式(2)のnは0乃至3の整数であり、式(2)中のAで表される二価の連結基の数を表す。nが2または3の場合、連結しているAは全てが同じ二価の連結基であってもよく、それぞれが異なる二価の連結基であってもよい.nは1または2の場合が好ましく、1の場合がより好ましい。
式(2)のBが表す複素環残基は特に限定されず、例えばフラニル基、チエニル基、チエノチエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、N−メチルイミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、インドリル基、ベンゾピラジル基、ベンゾピリミジル基、ベンゾチエニル基、ナフトチエニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾチアゾリル基、ピリジノチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリジノイミダゾリル基、N−メチルベンゾイミダゾリル基、ピリジノ−N−メチルイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリジノオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ピリジノチアジアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ピリジノオキサジアゾリル基、カルバゾリル基、フェノキサジニル基及びフェノチアジニル基等が挙げられ、チエニル基、チエノチエニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ナフトチエニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基又はピリジル基が好ましく、ベンゾチエニル基、インドリル基又はベンゾフラニル基がより好ましい。
式(2)のBが表す複素環残基は置換基を有していてもよく、該有していてもよい置換基としては式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
また、上記の好ましい態様において、Rが表す式(2)で表される置換基中のA、B及びnとRが表す式(2)で表される置換基中のA、B及びnが同一であること、即ちRとRが同一の置換基であることが好ましい。
式(1)中のX及びXのいずれか一方は硫黄原子又は酸素原子を表し、他方はメチン基を表す。即ち、式(1)で表される化合物は、下記式(1−1)又は(1−2)のいずれかで表される化合物を表す。
Figure 2020010024
式(1−1)及び(1−2)中、R及びRは式(1)におけるR及びRと同じ意味を表し、好ましいものも式(1)におけるR及びRの好ましいものと同じである。
式(1−1)中のX及び式(1−2)中のXは硫黄原子又は酸素原子を表し、硫黄原子が好ましい。
式(1)で表される有機化合物としては、下記式(3)で表される有機化合物が好ましい。
Figure 2020010024
式(3)中、X及びXは式(1)におけるX及びXと同じ意味を表し、好ましいものも式(1)におけるX及びXの好ましいものと同じである。
式(3)中、X及びXのいずれか一方は硫黄原子、酸素原子又は二価の連結基NRを表し、他方はメチン基又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。
二価の連結基NRが表すアルキル基の具体例としては、式(2)のAが表す二価の連結基が有する置換基としてのアルキル基の項に記載した炭素数1乃至4のアルキル基が挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
式(3)で表される有機化合物としては、X及びXのいずれか一方が硫黄原子であって他方がメチン基で、X及びXのいずれか一方が硫黄原子、酸素原子又は二価の連結基NRであって、他方がメチン基又は窒素原子の化合物が好ましく、X及びXのいずれか一方が硫黄原子であって他方がメチン基で、X及びXのいずれか一方が硫黄原子、酸素原子又は二価の連結基NCHであって他方がメチン基の化合物がより好ましく、X及びXのいずれか一方が硫黄原子であって他方がメチン基で、X及びXのいずれか一方が硫黄原子であって他方がメチン基の化合物が更に好ましい。
式(1−1)で表される化合物は、特許文献1、非特許文献1および非特許文献(Chem. Eur.J.2017,23,4579)に開示された公知の方法等により合成することができる。例えば、原料としてナフタレン誘導体(C)を用いて環化反応、臭素化反応を行うことによりナフトジチオフェン誘導体(D)を合成し、ボロン酸エステルを用いた鈴木カップリング反応を行う以下のスキームに示したフローにより所望の化合物を得ることが可能である。
Figure 2020010024
式(1−2)で表される化合物は、特許文献1、非特許文献1および非特許文献(Chem. Eur.J.2017,23,4579)に開示された公知の方法等により合成することができる。例えば、原料としてナフタレン誘導体(E)を用いて環化反応、臭素化反応を行うことによりナフトジチオフェン誘導体(F)を合成し、ボロン酸エステルを用いた鈴木カップリング反応を行う以下のスキームに示したフローにより所望の化合物を得ることが可能である。
Figure 2020010024
式(1)で表される化合物の精製方法は、特に限定されず、再結晶、カラムクロマトグラフィー、及び真空昇華精製等の公知の方法が採用できる。また必要に応じてこれら
の方法を組み合わせることができる。
以下に、式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明の撮像素子用光電変換素子用材料が含有する式(1)で表される化合物はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2020010024
Figure 2020010024
Figure 2020010024
Figure 2020010024
Figure 2020010024
Figure 2020010024
Figure 2020010024
Figure 2020010024
本発明の撮像素子用光電変換素子(以下、単に「光電変換素子」ともいう。)用材料中の式(1)で表される化合物の含有量は、光電変換素子用材料を用いる用途において必要とされる性能が発現する限り特に限定されないが、通常は50質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
本発明の光電変換素子用材料には、式(1)で表される化合物以外の化合物(例えば式(1)で表される化合物以外の光電変換素子用材料等)や添加剤等を併用してもよい。併用し得る化合物や添加剤等は、光電変換素子用材料を用いる用途において必要とされる性能が発現する限り特に限定されない。
本発明の有機薄膜は、本発明の光電変換素子用材料を含有する。
本発明の有機薄膜は、一般的な乾式成膜法や湿式成膜法により作製することができる。具体的には真空プロセスである抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング及び分子積層法、溶液プロセスであるキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等が挙げられる。
一般的な光電変換素子用材料は、加工の容易性という観点からは化合物を溶液状態で塗布するようなプロセスが望まれているが、有機膜を積層するような有機エレクトロニクスデバイスの場合、塗布溶液が下層の有機膜を侵す恐れがあることから不向きである。
この様な多層積層構造を実現するためには、乾式成膜法、例えば抵抗加熱蒸着の様な蒸着可能な材料を用いることが適切である。したがって、蒸着可能な光電変換素子用材料が好ましい。
各層の成膜には上記の手法を複数組み合わせた方法を採用してもよい。各層の厚みは、それぞれの物質の抵抗値・電荷移動度にもよるので限定することはできないが、通常は0.5乃至5,000nmの範囲であり、好ましくは1乃至1,000nmの範囲、より好ましくは5乃至500nmの範囲である。
〔有機エレクトロニクスデバイス〕
本発明の光電変換素子は、対向する一対の電極膜間に本発明の光電変換部(有機薄膜)を配置した素子であって、一方の電極膜上方から光が光電変換部に入射されるものである。該光電変換部は前記の入射光量に応じて電子と正孔を発生するものであり、半導体により前記電荷に応じた信号が読み出され、光電変換膜部の吸収波長に応じた入射光量を示す素子である。下部の電極膜には読み出しのためのトランジスタが接続される場合もある。該光電変換素子は、アレイ上に多数配置されていた場合は、入射光量に加え、入射位置情報を示すため、撮像素子となる。また、後部に存在する電極を含んだ光電変換素子の検出すべき吸収波長を、前部に存在する光電変換素子が透過する場合は、複数の光電変換素子が積層していても良い。さらには、前述の複数の光電変換素子がそれぞれ異なる可視光を吸収する場合は多色の撮像素子となり、フルカラーフォトダイオードとなる。
本発明の光電変換素子は、式(1)で表される化合物を上記光電変換部の構成材料として用いたものである。
光電変換部は、光電変換層と、電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、結晶化防止層及び層間接触改良層等から成る群より選択される一種又は複数種の光電変換層以外の有機薄膜層とから成ることが多い。特に電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層及び正孔ブロック層を以下ではキャリアブロック層とも表す。本発明の化合物はキャリアブロック層以外にも用いることもできるが、キャリアブロック層の有機薄膜層として用いることが好ましい。キャリアブロック層は式(1)で表される化合物のみで構成されていてもよいが、式(1)で表される化合物以外に、公知のブロック材料やその他を含んでいてもよい。
本発明の光電変換素子に用いられる電極膜は、後述する光電変換部に含まれる光電変換層が、正孔輸送性を有する場合や光電変換層以外の有機薄膜層が正孔輸送性を有する正孔輸送層である場合は、該光電変換層やその他の有機薄膜層から正孔を取り出してこれを捕集する役割を果たし、又光電変換部に含まれる光電変換層が電子輸送性を有する場合や、有機薄膜層が電子輸送性を有する電子輸送層である場合は、該光電変換層やその他の有機薄膜層から電子を取り出して、これを吐出する役割を果たすものである。よって、電極膜として用い得る材料は、ある程度の導電性を有するものであれば特に限定されないが、隣接する光電変換層やその他の有機薄膜層との密着性や電子親和力、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選択することが好ましい。電極膜として用い得る材料としては、例えば、酸化錫(NESA)、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)及び酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、白金、クロム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル及びタングステン等の金属:ヨウ化銅及び硫化銅等の無機導電性物質:ポリチオフェン、ポリピロール及びポリアニリン等の導電性ポリマー:炭素等が挙げられる。これらの材料は、必要により複数を混合して用いてもよいし、複数を2層以上に積層して用いてもよい。電極膜に用いる材料の導電性も、光電変換素子の受光を必要以上に妨げなければ特に限定されないが、光電変換素子の信号強度や、消費電力の観点から出来るだけ高いことが好ましい。例えばシート抵抗値が300Ω/□以下の導電性を有するITO膜であれば、電極膜として充分機能するが、数Ω/□程度の導電性を有するITO膜を備えた基板の市販品も入手可能となっていることから、この様な高い導電性を有する基板を使用することが望ましい。ITO膜(電極膜)の厚さは導電性を考慮して任意に選択することができるが、通常5乃至500nm、好ましくは10乃至300nm程度である。ITOなどの膜を形成する方法としては、従来公知の蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法及び塗布法等が挙げられる。基板上に設けられたITO膜には必要に応じUV−オゾン処理やプラズマ処理等を施してもよい。
電極膜のうち、少なくとも光が入射する側の何れか一方に用いられる透明電極膜の材料としては、ITO、IZO、SnO、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)等が挙げられる。光電変換層の吸収ピーク波長における透明電極膜を介して入射した光の透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
又、検出する波長の異なる光電変換層を複数積層する場合、それぞれの光電変換層の間に用いられる電極膜(これは上記した一対の電極膜以外の電極膜である)は、それぞれの光電変換層が検出する光以外の波長の光を透過させる必要があり、該電極膜には入射光の90%以上を透過する材料を用いることが好ましく、95%以上の光を透過する材料を用いることがより好ましい。
電極膜はプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーでこれらの電極膜を作成することにより、電極膜が設けられる基板にプラズマが与える影響が低減され、光電変換素子の光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、電極膜の成膜時にプラズマが発生しないか、又はプラズマ発生源から基板までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、基板に到達するプラズマが減ぜられるような状態を意味する。
電極膜の成膜時にプラズマが発生しない装置としては、例えば、電子線蒸着装置(EB蒸着装置)やパルスレーザー蒸着装置等が挙げられる。EB蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をEB蒸着法と称し、パルスレーザー蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をパルスレーザー蒸着法と称する。
成膜中プラズマを減ずることが出来るような状態を実現できる装置(以下、プラズマフリーである成膜装置という)としては、例えば、対向ターゲット式スパッタ装置やアークプラズマ蒸着装置等が考えられる。
透明導電膜を電極膜(例えば第一の導電膜)とした場合、DCショート、あるいはリーク電流の増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換層に発生する微細なクラックがTCO(TransparentConductive Oxide)などの緻密な膜によって被覆され、透明導電膜とは反対側の電極膜との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る材料を電極に用いた場合、リーク電流の増大は生じにくい。電極膜の膜厚を、光電変換層の膜厚(クラックの深さ)に応じて制御することにより、リーク電流の増大を抑制することができる。
通常、導電膜を所定の値より薄くすると、急激な抵抗値の増加が起こる。本実施形態の光センサー用光電変換素子における導電膜のシート抵抗は、通常100乃至10,000Ω/□であり、膜厚の自由度が大きい。又、透明導電膜が薄いほど吸収する光の量が少なくなり、一般に光透過率が高くなる。光透過率が高くなると、光電変換層で吸収される光が増加して光電変換能が向上するため非常に好ましい。
本発明の光電変換素子が有する光電変換部は、光電変換層、キャリアブロック層およびそれ以外の有機薄膜層を含む。光電変換部を構成する光電変換層には一般的に有機半導体膜が用いられるが、その有機半導体膜は一層、もしくは複数の層であっても良く、一層の場合は、P型有機半導体膜、N型有機半導体膜、又はそれらの混合膜(バルクヘテロ構造)が用いられる。一方、複数の層である場合は、2乃至10層程度であり、P型有機半導体膜、N型有機半導体膜、又はそれらの混合膜(バルクヘテロ構造)のいずれかを積層した構造であり、層間にバッファ層が挿入されていても良い。
光電変換層の有機半導体膜には、吸収する波長帯に応じ、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、カルバゾール誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェニルブタジエン誘導体、スチリル誘導体、キノリン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ポルフィリン誘導体、フラーレン誘導体、ジピロメテン誘導体およびその錯体、フタロシアニン誘導体およびその錯体、ナフタロシアニン誘導体およびその錯体や金属錯体(Ir錯体、Pt錯体、Eu錯体など)等を用いることができ、キナクリドン誘導体、ジピロメテン誘導体およびその錯体、フタロシアニン誘導体およびその錯体を用いることがより好ましい。
本発明の電子輸送層は、光電変換層で発生した電子を電極膜へ輸送する役割と、電子輸送先の電極膜から光電変換層に正孔が移動するのをブロックする役割とを果たす。正孔輸送層は、発生した正孔を光電変換層から電極膜へ輸送する役割と、正孔輸送先の電極膜から光電変換層に電子が移動するのをブロックする役割とを果たす。電子ブロック層は、電極膜から光電変換層への電子の移動を妨げ、光電変換層内での再結合を防ぎ、暗電流を低減する役割を果たす。正孔ブロック層は、電極膜から光電変換層への正孔の移動を妨げ、光電変換層内での再結合を防ぎ、暗電流を低減する機能を有する。
正孔ブロック層は正孔阻止性物質を単独又は二種類以上を積層する、又は混合して成膜することにより形成される。正孔阻止性物質としては、正孔が電極から素子外部に流出するのを阻止することができる化合物であれば限定されない。正孔ブロック層に使用することができる化合物としては、式(1)で表される化合物の他に、バソフェナントロリン及びバソキュプロイン等のフェナントロリン誘導体、シロール誘導体、キノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、キノリン誘導体などが挙げられ、これらのうち、一種又は二種以上を用いることができる。
図1に本発明の光電変換素子の代表的な素子構造を示すが、本発明はこの構造に限定されるものではない。図1の態様例においては、1が絶縁部、2が一方の電極膜、3が電子ブロック層、4が光電変換層、5が正孔ブロック層、6が他方の電極膜、7が絶縁基材又は他の光電変換素子をそれぞれ表す。図中には読み出し用のトランジスタを記載していないが、2又は6の電極膜と接続されていればよく、更には光電変換層4が透明であれば、光が入射する側とは反対側の電極膜の外側に成膜されていてもよい。光電変換素子への光の入射は、光電変換層4を除く構成要素が、光電変換層の主たる吸収波長の光を入射することを極度に阻害することがなければ、上部若しくは下部からの何れからでもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定され
るものではない。
実施例中に記載のブロック層は正孔ブロック層及び電子ブロック層のいずれでも良い。
実施例及び比較例の光電変換素子の作製は蒸着機で行い、大気下で電流電圧の印加測定を行った。作製した光電変換素子は窒素雰囲気のグローブボックス内で密閉式のボトル型計測チャンバー(エイエルエステクノロジー社製)に光電変換素子を設置し、電流電圧の印加測定を行った。電流電圧の印加測定は、半導体パラメータアナライザ4200−SCS(ケースレーインスツルメンツ社)を用いて行った。入射光の照射は、PVL−3300(朝日分光社製)を用い、照射光半値幅20nmにて行った。実施例中の明暗比は光照射を行った場合の電流値を暗所での電流値で割ったものを示す。
実施例1(2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)フェニル)ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン(上記具体例において、No.2で表される化合物)の合成)
窒素雰囲気下、フラスコに2,7−ジブロモナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン(1.4mmol)、2−(4−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(8.4mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.18mmol)、リン酸カリウム(8.4mmol)及びジメチルホルムアミド(80ml)を加え、加熱還流下、10時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、析出した固体を濾別し、得られた固体を水、続いてアセトンで洗浄することにより目的化合物の粗生成物を得た。得られた粗生成物を乾燥後、減圧下で二回昇華精製することにより2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)フェニル)ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン(250mg)を得た。得られた化合物のEI−MSの測定結果を以下に示す。
EI−MS m/z=656(M
実施例2(2,7−ビス(4−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−3−イル)フェニル)ナフト[2,1−b:6,5−b’]ジチオフェン(上記具体例においてNo.48で表される化合物)の合成)
窒素雰囲気下、フラスコに2,7−ジブロモナフト[2,1−b:6,5−b’]ジチオフェン(1.6mmol)、2−(4−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−3−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(9.6mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.21mmol)、リン酸カリウム(9.6mmol)及びジメチルホルムアミド(90ml)を加え、加熱還流下、10時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、析出した固体を濾別し、得られた固体を水、続いてアセトンで洗浄することにより目的化合物の粗生成物を得た。得られた粗生成物を乾燥後、減圧下で二回昇華精製することにより2,7−ビス(4−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−3−イル)フェニル)ナフト[2,1−b:6,5−b’]ジチオフェン(220mg)を得た。得られた化合物のEI−MSの測定結果を以下に示す。
EI−MS m/z=756(M
実施例3(2,7−ビス(4−(ベンゾフラン−5−イル)フェニル)ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン(上記具体例においてNo.20で表される化合物)の合成)
窒素雰囲気下、フラスコに2,7−ジブロモナフト[2,1−b:6,5−b’]ジチオフェン(2.0mmol)、2−(4−(ベンゾチフラン−5−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(12mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.26mmol)、リン酸カリウム(12mmol)及びジメチルホルムアミド(100ml)を加え、加熱還流下、10時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、析出した固体を濾別し、得られた固体を水、続いてアセトンで洗浄することにより目的化合物の粗生成物を得た。得られた粗生成物を乾燥後、減圧下で二回昇華精製することにより2,7−ビス(4−(ベンゾフラン−5−イル)フェニル)ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン(200mg)を得た。得られた化合物のEI−MSの測定結果を以下に示す。
EI−MS m/z=624(M
実施例4(本発明の光電変換素子の作製および電子ブロック層としての評価)
ITO透明導電ガラス(ジオマテック(株)製、ITO膜厚150nm)に、実施例1で得られた2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)フェニル)ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェンを、ブロック層として抵抗加熱真空蒸着により50nm成膜した。次に、前記のブロック層の上に、光電変換層としてキナクリドンを100nm真空成膜した。最後に、前記の光電変換層の上に、電極としてアルミニウムを100nm真空成膜し、本発明の光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として5Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は2.70×10−11A/cmであった。また、透明導電ガラス側に5Vの電圧を印加し、照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流は6.89×10−6A/cmであった。透明導電ガラス側に5V電圧印加したときの明暗比は2.6×10であった。
実施例5(本発明の光電変換素子の作製および電子ブロック層としての評価)
ブロック層として、実施例2で得られた2,7−ビス(4−(ジベンゾ[b,d]チオフェン−3−イル)フェニル)ナフト[2,1−b:6,5−b’]ジチオフェンを用いたこと以外は実施例4に準じて光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として5Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は4.43×10−11A/cmであった。また、透明導電ガラス側に5Vの電圧を印加し、照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流は6.21×10−6A/cmであった。透明導電ガラス側に5V電圧印加したときの明暗比は1.4×10であった。
実施例6(本発明の光電変換素子の作製および電子ブロック層としての評価)
ブロック層として、実施例3で得られた2,7−ビス(4−(ベンゾフラン−5−イル)フェニル)ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェンを用いたこと以外は実施例4に準じて光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として5Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は4.90×10−11A/cmであった。また、透明導電ガラス側に5Vの電圧を印加し、照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流は5.88×10−6A/cmであった。透明導電ガラス側に5V電圧印加したときの明暗比は1.2×10であった。
比較例1(比較用の光電変換素子の作製および評価)
ITO透明導電ガラス(ジオマテック(株)製、ITO膜厚150nm)に、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を、ブロック層として抵抗加熱真空蒸着により50nm成膜した。次に、前記のブロック層の上に、光電変換層としてキナクリドンを100nm真空成膜した。最後に、前記の光電変換層の上に、電極としてアルミニウムを100nm真空成膜し、比較用の光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として5Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は9.15×10-8A/cmであった。また、透明導電ガラス側に5Vの電圧を印加し、照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流は1.04×10−5A/cmであった。透明導電ガラス側に5V電圧印加したときの明暗比は113であった。
比較例2(比較用の光電変換素子の作製および評価)
ITO透明導電ガラス(ジオマテック(株)製、ITO膜厚150nm)に、4,4‘−ビス(カルバゾイル)ビフェニル(CBP)を、ブロック層として抵抗加熱真空蒸着により50nm成膜した。次に、前記のブロック層の上に、光電変換層としてキナクリドンを100nm真空成膜した。最後に、前記の光電変換層の上に、電極としてアルミニウムを100nm真空成膜し、比較用の光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として5Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は2.75×10-10A/cmであった。また、透明導電ガラス側に5Vの電圧を印加し、照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流は3.31×10−6A/cmであった。透明導電ガラス側に5V電圧印加したときの明暗比は1.2×10であった。
上記実施例4乃至6および比較例1乃至2のキナクリドンを光電変換層に用いた光電変換素子に5Vの電圧を印加し、暗所での電流値および照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流値を測定し、明電流値を暗電流値で割った明暗比を算出し、結果を表1に示した。
Figure 2020010024
上記の実施例4乃至6より、本発明の光電変換素子用材料を含む光電変換素子は明暗比が5桁以上と高く、優れた光電変換素子であることが分かる。このことから、本発明の光電変換素子材料は優れたブロック性能を有することが明白である。また、表1の結果より上記実施例4乃至6の光電変換素子は比較例1乃至2の光電変換素子よりも高い明暗比を示すことがわかり、このことからも本発明の光電変換素子材料がブロック材料として優れた性能を有することは明らかである。
実施例7(本発明の光電変換素子の作製および電子ブロック層としての評価)
光電変換層として、特許文献(国際公開第2017/159610)に記載の方法により合成した下記式(4)の化合物を用いたこと以外は実施例4に準じで光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として5Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は2.71×10−10A/cmであった。また、透明導電ガラス側に1Vの電圧を印加し、照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流は1.57×10−6A/cmであった。透明導電ガラス側に1V電圧印加したときの明暗比は58.0であった。
Figure 2020010024
実施例8(本発明の光電変換素子の作製および電子ブロック層としての評価)
ITO透明導電ガラス(ジオマテック(株)製、ITO膜厚150nm)に、実施例1で得られた2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)フェニル)ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェンを、ブロック層として抵抗加熱真空蒸着により50nm成膜した。次に、前記のブロック層の上に、式(4)の化合物とフラーレンC60とがそれぞれ10%、90%となるように共蒸着し、バルクヘテロ構造の光電変換層を100nm真空成膜した。最後に、前記の光電変換層の上に、電極としてアルミニウムを100nm真空成膜し、本発明の光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として1Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は8.32×10−9A/cmであった。また、透明導電ガラス側に5Vの電圧を印加し、照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流は6.22×10−7A/cmであった。透明導電ガラス側に1V電圧印加したときの明暗比は74.7であった。
比較例3(比較用の光電変換素子の作製および評価)
ブロック層として4,4‘−ビス(カルバゾイル)ビフェニル(CBP)を用いたこと以外は実施例7に準じて光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として1Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は1.06×10−6A/cmであった。また、透明導電ガラス側に5Vの電圧を印加し、照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流は5.39×10−6A/cmであった。透明導電ガラス側に1V電圧印加したときの明暗比は5.08であった。
比較例4(比較用の光電変換素子の作製および評価)
ブロック層として4,4‘−ビス(カルバゾイル)ビフェニル(CBP)を用いたこと以外は実施例8に準じて光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として1Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は8.50×10−9A/cmであった。また、透明導電ガラス側に5Vの電圧を印加し、照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流は5.62×10−8A/cmであった。透明導電ガラス側に1V電圧印加したときの明暗比は6.61であった。
上記実施例7乃至8および比較例3乃至4の光電変換素子に1Vの電圧を印加し、暗所での電流値および照射光波長500nmで光照射を行った場合の電流値を測定し、明電流値を暗電流値で割った明暗比を算出し、結果を表2に示した。
Figure 2020010024
表2の結果より上記実施例7乃至8の光電変換素子は比較例3乃至4の光電変換素子よりも高い明暗比を示すことがわかり、式(4)で表される化合物を光電変換層に含む光電変換素子の場合においても本発明の光電変換素子材料がブロック材料として優れた性能を示すことは明らかである。
実施例9(本発明の光電変換素子の作製および光電変換層としての評価)
光電変換層としてのキナクリドンを積層しなかった以外は実施例4に示した作製法に準じて光電変換素子を作製した.ITOとアルミニウムを電極として0Vの電圧を印加した際の、暗所での電流は7.57×10-12A/cmであった。また、透明導電ガラス側に0Vの電圧を印加し、照射光波長400nmで光照射を行った場合の電流は3.64×10−7A/cmであった。透明導電ガラス側に5V電圧印加したときの明暗比は4.8×10であった。
上記の実施例9より本発明の光電変換素子材料は明らかな明暗比を示すほどの光電変換性能を有し、光電変換素子の光電変換層として使用することが可能である。
特定構造の化合物を含む本発明の光電変換素子用材料を用いることにより、正孔又は電子のリーク防止性や輸送性、さらには耐熱性や可視光透明性等の要求特性に優れた光電変換素子を提供することができる。よって、高解像度と高応答性を有する有機撮像素子はもとより有機太陽電池、光センサー、赤外センサー、紫外センサー、X線センサーやフォトンカウンター等のデバイスやそれらを利用したカメラ、ビデオカメラ、赤外線カメラ等の分野への応用が期待される。
1 絶縁部
2 上部電極
3 電子ブロック層もしくは正孔輸送層
4 光電変換層
5 正孔ブロック層もしくは電子輸送層
6 下部電極
7 絶縁基材、もしくは他光電変換素子


Claims (10)

  1. 下記式(1)
    Figure 2020010024
    (式(1)中、X及びXのいずれか一方は硫黄原子又は酸素原子を表し、他方はメチン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に下記式(2)
    Figure 2020010024
    (式(2)中、Aは芳香族化合物の芳香環から水素原子を二つ除いた二価の連結基を表し、Bは単環または縮環した複素環化合物の複素環又は縮環から水素原子を一つ除いた残基を表し、nは0乃至3の整数を表す。)で表される置換基を表す。)
    で表される有機化合物を含む撮像素子用光電変換素子用材料。
  2. 及びXのいずれか一方が硫黄原子であり、他方がメチン基である請求項1に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
  3. nが1である請求項1又は2に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
  4. Aがベンゼン環から水素原子を二つ除いた二価の連結基である請求項3に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
  5. Bがチオフェン環を含む複素環化合物の複素環又は縮環から水素原子を一つ除いた残基である請求項4に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料を含む有機薄膜。
  7. 請求項6に記載の有機薄膜を含む撮像素子用光電変換素子。
  8. 請求項7に記載の撮像素子用光電変換素子を複数アレイ状に配置した撮像素子。
  9. 請求項7に記載の撮像素子用光電変換素子または請求項8に記載の撮像素子を含む光センサー。
  10. 下記式(3)で表される有機化合物。
    Figure 2020010024
    (式(3)中、X及びXのいずれか一方は硫黄原子又は酸素原子を表し、他方はメチン基を表す。X及びXのいずれか一方は硫黄原子、酸素原子又は二価の連結基NRを表し、他方はメチン基又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。)


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WO2022168856A1 (ja) 2021-02-05 2022-08-11 富士フイルム株式会社 光電変換素子、撮像素子、光センサ、化合物
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