JP2020009595A - リチウムイオン伝導体及びその製造方法、リチウムイオン電池用電極並びにリチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
Description
リチウムイオン電池は、充電時には正極からリチウムがイオンとして脱離して負極へ移動して吸蔵され、放電時には負極から正極へリチウムイオンが挿入されて戻る構造の二次電池である。このリチウムイオン電池は、エネルギー密度が大きく、長寿命である等の特徴を有しているため、従来、パソコン、カメラ等の家電製品や、携帯電話機等の携帯型電子機器又は通信機器、パワーツール等の電動工具等の電源として広く用いられており、最近では、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)等に搭載される大型電池にも応用されている。
このようなリチウムイオン電池において、可燃性の有機溶剤を含む電解液に代えて固体電解質を用いると、安全装置の簡素化が図られるだけでなく、製造コスト、生産性等に優れることが知られている。また、硫化物からなる固体電解質は、導電率(リチウムイオン伝導度)が高く、電池の高出力化を図るうえで有用であるといわれており、例えば、Liと、P、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga,In、Ti、Zr、V及びNbから選ばれた少なくとも1つの元素とを含む硫化物を用いた全固体型のリチウムイオン電池の開発が盛んとなっている。そして、例えば、Sbを含む硫化物として、特許文献1には、アモルファス状のLi2S−Sb2S3系組成物(Li3SbS3)を含有する硫化物固体電解質が開示されている。また、特許文献2には、LiSbS2構造を有する硫化物固体電解質材料が開示されている。
[1]Li、Sb及びSを含み、Sb及びSのモル比がS/Sb≧6である第1硫化物を含有し、ラマン分光法により、326±1cm−1及び359±1cm−1においてピークが検出されることを特徴とするリチウムイオン伝導体。
[2]更に、Li、Sb及びSを含み、Sb及びSのモル比がS/Sb≦2である第2硫化物を含有する上記項[1]に記載のリチウムイオン伝導体。
[3]上記第1硫化物がLi5.0〜7SbS6〜6.3である上記項[1]又は[2]に記載のリチウムイオン伝導体。
[4]上記第2硫化物がLiSbS2である上記項[2]又は[3]に記載のリチウムイオン伝導体。
[5]上記項[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のリチウムイオン伝導体の製造方法であって、Liイオンを含む水溶液に、Sb及びLiのモル比が1.0≦Li/Sb≦7.0となるようにSb2S5を添加して、pHを7〜14の範囲に調整し、懸濁液を得る工程と、上記懸濁液を濾過し、濾液を回収する工程と、上記濾液を凍結乾燥し、固体材料を得る工程と、上記固体材料を130℃〜300℃で熱処理する工程とを、順次、備えることを特徴とするリチウムイオン伝導体の製造方法。
[6]上記項[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のリチウムイオン伝導体を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極
[7]上記項[6]に記載のリチウムイオン電池用電極を備えることを特徴とするリチウムイオン電池。
[8]Liイオンを含む水溶液に、Sb及びLiのモル比が0.1≦Li/Sb≦5.0となるようにSb2S5を添加して、pHを7〜14の範囲に調整し、懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を濾過し、濾液を回収する工程と、前記濾液を凍結乾燥し、固体材料を得る工程と、前記固体材料を130℃〜270℃で熱処理する工程とを、順次、備える製造方法により得られることを特徴とするリチウムイオン伝導体。
本発明のリチウムイオン伝導体の製造方法の製造方法によれば、イオン伝導性に優れたリチウムイオン伝導体の製造方法を効率よく得ることができる。
本発明のリチウムイオン伝導体は、ラマンスペクトルにおいて、326±5cm−1及び359±1cm−1にピークを有する(図1の実験例1のチャート参照)。従来、ラマンスペクトルにおいて、SbS2結合は、1050cm−1にピークを有し、SbS3結合は、333cm−1にピークを有し、SbS4結合は、360cm−1にピークを有するが、これらの波数は、上記2つのピーク波数と異なっているので、本発明のリチウムイオン伝導体は、SbS2結合、SbS3結合及びSbS4結合のいずれか1つのみを含むのではなく、新規化合物を含むと考えられる。尚、本発明者らは、上記2つのピーク波数における結合種を帰属できていない。
本発明のリチウムイオン伝導体は、ラマンスペクトルにおいて、248±1cm−1及び384±1cm−1にピークを有することができる。
上記第1硫化物は、好ましくは粒状であり、その形状及びサイズは、特に限定されない。粒径は、好ましくは100〜0.1μm、より好ましくは10〜0.1μmである。
本発明のリチウムイオン伝導体は、第1硫化物以外の物質として、他の硫化物、酸化物、等を含むことができるが、本発明においては、他の硫化物として、Li、Sb及びSを含み、Sb及びSのモル比がS/Sb≦2である第2硫化物を更に含むことができる。この第2硫化物は、Sb及びSのモル比が、好ましくは1.0≦S/Sb≦2.0、より好ましくは1.5≦S/Sb≦2.0の化合物である。尚、Sb及びLiのモル比は、特に限定されないが、本発明のリチウムイオン伝導体のイオン伝導性の観点から、好ましくは1.0≦Li/Sb≦7.0、より好ましくは3.0≦Li/Sb≦7.0である。
上記第2硫化物は、好ましくは粒状であり、その形状及びサイズは、特に限定されない。粒径は、好ましくは100〜0.1μm、より好ましくは10〜0.1μmである。
従来、Li及びSを含み、イオン伝導性を有する硫化物は、広く知られているが、このうち、Li、P及びSを含み、P及びSのモル比が高く、イオン伝導性を有する硫化物として、例えば、国際公開2017/159667に開示された、Li7PS6結晶構造;Li7PS6の構造骨格を有し、Pの一部をSiで置換してなる組成式Li7±4xP1−ySiyS6(xは−0.6〜0.6、yは0.1〜0.6)で示される結晶構造;Li7−x−2yPS6−x−yClx(0.8≦x≦1.7、0<y≦−0.25x+0.5)で示される結晶構造;Li7−xPS6−x/2Hax(HaはClもしくはBr、xが好ましくは0.2〜1.8)で示される結晶構造等を有するArgyrodite型結晶が知られている。
Liイオン含有水溶液を調製する方法は、特に限定されず、通常、水酸化リチウム、炭酸リチウム等の水溶性Li化合物を水に溶解する方法が適用される。
Sb2S5の性状は、固体であり、Liイオン含有水溶液にSb2S5を添加する場合には、その粉末を用いてよいし、Sb2S5の水分散液を用いてもよい。
第3工程により得られる固体材料は、通常、塊状であるが、振動等の軽い衝撃を与えることにより、容易に粉体となる。
即ち、本発明のリチウムイオン伝導体は、Liイオンを含む水溶液に、Sb及びLiのモル比が0.1≦Li/Sb≦5.0となるようにSb2S5を添加して、pHを7〜14の範囲に調整し、懸濁液を得る工程(「第1工程」)と、前記懸濁液を濾過し、濾液を回収する工程(「第2工程」)と、前記濾液を凍結乾燥し、固体材料を得る工程(「第3工程」)と、前記固体材料を130℃〜270℃で熱処理する工程(「第4工程」)とを、順次、備える製造方法により得られるものである。尚、本発明のリチウムイオン伝導体を特定する「第1工程」、「第2工程」、「第3工程」及び「第4工程」の内容は、上記のリチウム伝導体の製造方法おける「第1工程」、「第2工程」、「第3工程」及び「第4工程」の内容を適用することができる。
即ち、本発明のリチウムイオン伝導体は、後述の通り、レーザーラマン分光計によるラマンスペクトル、X線回析装置によるX線回析測定及びSEMによる元素分析を行っているが、リチウムイオン伝導体が主にアモルファスであること及びエネルギー分散型X線分析(EDS)によるリチウム元素の分析が困難であることから、本願発明のリチウムイオン伝導体を、構造又は特性により直接特定することが不可能である(実際的ではない)という事情があり、その物の製造方法により特定している。
本発明のリチウムイオン電池用電極は、バインダー、導電助剤、他の固体電解質等を含むことができる。
上記バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の含フッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン・プロピレン・非共役ジエン系ゴム(EPDM等)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等が挙げられる。
上記導電助剤としては、炭素材料(グラフェン等の板状導電性物質;カーボンナノチューブ、炭素繊維等の線状導電性物質;ケッチェンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、黒鉛等の粒状導電性物質等)、金属、金属化合物等が挙げられる。
上記電解質層は、電解液、ゲル電解質、固体電解質等を含むものとすることができる。
上記正極集電体及び上記負極集電体は、いずれも、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、鉄、チタン等を含む、箔、板又はメッシュであることが好ましい。
(1)Li化合物
Sigma−Aldrich社製「水酸化リチウム」(reagent、>98%)を用いた。
(2)Sb化合物
Sigma−Aldrich社製「硫化アンチモン(V)」(technical、≧60% Sb basis)を用いた。
実験例1及び2
上記Li化合物1グラムを脱イオン水40ミリリットルに溶解させた。次いで、室温条件下、得られた水溶液を撹拌しながら、上記Sb化合物4.0グラム(Li/Sbモル比2.1)をゆっくりと添加し、反応させた。反応液のpHが7になったところで撹拌(反応)を終了し、懸濁液を得た。その後、この懸濁液を濾過し、約30ミリリットルの黄色透明溶液を得た。
次に、この溶液にアセトン5ミリリットルを添加し、得られた混合液を、EYELA社製凍結乾燥機「FDU−1200」(型式名)を用いて、凍結乾燥させた(−20℃、72時間)。そして、乾燥固体材料を回収し、これに軽く振動を与えたところ、自然に粉体となった。その後、この粉体を、180℃及び250℃で、いずれも、2時間に渡って、それぞれ、熱処理し、実験例1のリチウムイオン伝導体(A)と、実験例2のリチウムイオン伝導体(B)とを得た。
この一連の製造工程において、硫化水素の臭気が感じられることはなかった。
図2は、図1におけるリチウムイオン伝導体(A)のラマンスペクトルを、測定波数範囲150〜450cm−1の表示とし、Origin9.0(商品名、OriginLab Corporation社のソフトウェア)を用いてピーク分離したときのグラフである。326cm−1及び359cm−1にピークを有するリチウムイオン伝導体(A)は、新規の硫化物を含むと考えられ、分離ピークの波数(242cm−1、307cm−1、330cm−1及び358cm−1)それぞれについて、SbとSとの結合種を同定できていないが、リチウムイオン伝導体(A)は、4種の結合種を含むことが分かる。
本発明者らは、S/Sb=6.3であったリチウム化合物について、出発原料から、以下のように推定している。
Liイオンを含む水溶液にLi/Sbモル比が3となるようにSb2S5を添加したため、化学量論的には、2Li3SbS4→Li5SbS6+LiSbS2となる。ここで、Argyrodite型結晶と称されるLi7PS6の構造骨格を有する結晶は、Li5.5〜7PS6として知られているため、S/Sb=6.3であったリチウム化合物は、Li5.5〜7SbS6+αであり得、また、反応式からLi5SbS6が想定されることを踏まえ、得られたリチウム化合物は、Li5.0〜7SbS6+αと考えている。
各粉体を、一軸油圧プレス機を用いて、円板形状の試験片(サイズ:半径5mm×高さ0.6mm)とし、アルゴンガス雰囲気下、測定用ユニット(ガラス容器)に入れた状態で、調温器に接続したリボンヒーター及び断熱材を測定用ユニット(ガラス容器)の周りに巻き付け、東陽テクニカ社製IMPEDANCE ANALYZER「SOLATRON SI1260」(型式名)を用いて、所定の温度(30℃、50℃、70℃、90℃、110℃、130℃、150℃及び170℃)で導電率を測定した。尚、導電率の測定は、試験片を加熱して、低温側から各測定温度に設定してから1時間静置した後、行ったが、各リチウムイオン伝導体(A)及び(B)とも、それぞれ、1体の同じ試験片を用いたため、測定温度が低い順に、30℃で測定した後、25℃に降温させ、50℃に昇温し、1時間後に測定し、その後、25℃に降温させる、というように、170℃までの導電率を測定した。
この結果、リチウムイオン伝導体(A)において、昇温時の30℃、50℃、70℃、90℃、110℃、130℃、150℃及び170℃における導電率は、それぞれ、1.0×10−5S/cm、1.1×10−4S/cm、3.2×10−4S/cm、8.2×10−4S/cm、1.8×10−3S/cm、2.8×10−3S/cm、2.5×10−3S/cm及び1.2×10−3S/cmであり、設定温度に到達後、過昇温状態から降温をさせた場合のその降温時の170℃、150℃、130℃、110℃、90℃、70℃、50℃及び30℃における導電率は、それぞれ、5.3×10−4S/cm、2.7×10−4S/cm、2.2×10−4S/cm、1.7×10−4S/cm、1.2×10−4S/cm、6.1×10−5S/cm、3.4×10−5S/cm及び1.8×10−5S/cmであった。また、リチウムイオン伝導体(B)において、昇温時の50℃、70℃、90℃、110℃、130℃、150℃及び170℃における導電率は、それぞれ、4.7×10−7S/cm、3.7×10−6S/cm、1.8×10−5S/cm、6.9×10−5S/cm、2.2×10−4S/cm、5.4×10−4S/cm及び1.0×10−3S/cmであった。
図5は、リチウムイオン伝導体(A)及び(B)の導電率の温度依存性を示すグラフであり、見かけの伝導の活性化エネルギーは、リチウムイオン伝導体(A)が55kJ/mol、リチウムイオン伝導体(B)が25kJ/molであった。
11:正極
13:負極
15:電解質層
17:正極集電体
19:負極集電体
Claims (8)
- Li、Sb及びSを含み、Sb及びSのモル比がS/Sb≧6である第1硫化物を含有し、ラマン分光法により、326±5cm−1及び359±1cm−1においてピークが検出されることを特徴とするリチウムイオン伝導体。
- 更に、Li、Sb及びSを含み、Sb及びSのモル比がS/Sb≦2である第2硫化物を含有する請求項1に記載のリチウムイオン伝導体。
- 前記第1硫化物がLi5.0〜7SbS6〜6.3である請求項1又は2に記載のリチウムイオン伝導体。
- 前記第2硫化物がLiSbS2である請求項2又は3に記載のリチウムイオン伝導体。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のリチウムイオン伝導体の製造方法であって、
Liイオンを含む水溶液に、Sb及びLiのモル比が0.1≦Li/Sb≦5.0となるようにSb2S5を添加して、pHを7〜14の範囲に調整し、懸濁液を得る工程と、
前記懸濁液を濾過し、濾液を回収する工程と、
前記濾液を凍結乾燥し、固体材料を得る工程と、
前記固体材料を130℃〜270℃で熱処理する工程と
を、順次、備えることを特徴とするリチウムイオン伝導体の製造方法。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のリチウムイオン伝導体を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極。
- 請求項6に記載のリチウムイオン電池用電極を備えることを特徴とするリチウムイオン電池。
- Liイオンを含む水溶液に、Sb及びLiのモル比が0.1≦Li/Sb≦5.0となるようにSb2S5を添加して、pHを7〜14の範囲に調整し、懸濁液を得る工程と、
前記懸濁液を濾過し、濾液を回収する工程と、
前記濾液を凍結乾燥し、固体材料を得る工程と、
前記固体材料を130℃〜270℃で熱処理する工程とを、順次、備える製造方法により得られることを特徴とするリチウムイオン伝導体。
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