JP2020008463A - 液体金属の流速測定方法及び超音波流速計 - Google Patents

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Abstract

【課題】超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する場合に、測定精度を短時間に向上させる。【解決手段】超音波プローブを備える超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する方法において、超音波プローブを液体金属に浸漬する前に、超音波プローブの表面に、液体金属へ溶質拡散し得るろう付け金属層を設ける。ろう付け金属層により超音波プローブの液体金属に対する濡れ性が改善し、超音波流速計の測定精度が短時間に向上する。【選択図】図2

Description

本願は超音波流速計を用いた液体金属の流速測定方法を開示する。
従来、超音波流速計による液体金属流動の計測の精度改善として広く用いられてきた手法は、計測アルゴリズムの変更である。これは、流動場より取得する超音波情報から如何にエラーの少ない速度情報を算出するかに着目している。計測アルゴリズムを変更することで計測精度を改善したことを示す公知例としては、非特許文献1がある。
一方で、取得する超音波情報にエラーがないことに着目した手法として、作動流体中でプローブを長時間浸漬させる方法がある。これは、プローブ表面に対する作動流体の濡れ性を向上させ、超音波情報のエラーの原因となる気相や不純物をプローブ表面から取り去ることを目的としている。作動流体中にプローブを長時間浸漬させることで計測精度を改善したことを示す公知例としては、非特許文献2がある。
尚、特許文献1では、液体金属中に浸漬した超音波トランスデュ−サに良好な濡れ性を与える方法および装置の提案があり、液体ナトリウムにより冷却される高速中性子原子炉の炉心を構成する燃料集合体の視認のため超音波視認装置についての実施例が紹介されているが、流速測定の適用可能性の示唆はあるが具体的な記載はない。また、特許文献2、3では、超音波を用いて溶融アルミニウムの品質を検査するプロセスにおいてトランスジユーサ装置と溶融アルミニウムとの間に超音波エネルギーの伝達に影響を及ぼす濡れ性を改善するため、溶融アルミニウム中での耐浸蝕性、安定性、低熱伝導、低熱膨張性のあるチタン材料で構成したプローブの提案があるが、流速測定への具体的な応用方法への記載はない。
特開昭62−299779号公報 特公平1−11141号公報 特公平1−52694号公報
村川ら、日本機械学会論文集(B編)79巻799号(2013−3),P356-367 M.Hirabayashi, et.al.,13th International Conference on Nuclear Engineering, Beijing, China, May16-20, 2005, ICONE13-50346
非特許文献2に開示されているように、超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する場合、数百時間もの間、超音波プローブを液体金属に浸漬させる必要があり、大変手間がかかる。すなわち、従来技術においては、超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する場合に、測定精度を短時間に向上させることが困難という課題がある。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、超音波プローブを備える超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する方法であって、前記超音波プローブを前記液体金属に浸漬する前に、前記超音波プローブの表面に、前記液体金属へと溶質拡散し得るろう付け金属層を設ける、液体金属の流速測定方法を開示する。
本開示の流速測定方法において、前記超音波プローブの母材金属がステンレス鋼からなることが好ましい。
本開示の流速測定方法において、前記ろう付け金属層の厚みが10μm以上5000μm以下であることが好ましい。
本開示の流速測定方法において、前記ろう付け金属層を構成する金属元素にAgが含まれることが好ましい。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、液体金属の流速を測定するために用いられる、超音波プローブを備える超音波流速計であって、前記超音波プローブが、その表面に前記液体金属へ溶質拡散し得るろう付け金属層を有する、超音波流速計を開示する。
本開示の流速測定方法においては、超音波プローブを液体金属に浸漬した場合に、超音波プローブの表面に設けられたろう付け金属層が液体金属へ拡散して混ざり合い、結果的に超音波プローブの表面が液体金属に短時間で濡れ易い、すなわち、超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する場合に、測定精度を短時間に向上させることができる。
超音波プローブを備える超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する実験装置の構成を説明するための概略図である。 ろう付け金属層が設けられた超音波プローブを用いた場合と、ろう付け金属層の無い超音波プローブを用いた場合とで、液体金属が一定方向に流動する流速に関するエコー強度を比較した図である。 ろう付け金属層が設けられた超音波プローブを用いた場合と、ろう付け金属層の無い超音波プローブを用いた場合とで、液体金属が一定方向に流動する流速の速度分布を比較した図である。 超音波プローブの表面に設けられたろう付け金属層の厚みと、超音波流速計によって液体金属の流速を測定可能となるまでの時間(超音波プローブが液体金属に十分に濡れるまでの時間)との関係を示す図である。
1.液体金属の流速測定方法
本開示の液体金属の流速測定方法は、超音波プローブを備える超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する方法であって、超音波プローブを液体金属に浸漬する前に、超音波プローブの表面に、液体金属へ溶質拡散し得るろう付け金属層を設けることに一つの特徴がある。なお、以降、本願の説明において「液体金属へ溶質拡散する」とは、液体金属中へろう付け金属層の成分が拡散して混ざり合う意味とする。液体金属への浸漬前に超音波プローブの表面にろう付け金属層を設けることで、ろう付け金属層を設けなかった場合と比べて、液体金属に浸漬した場合に超音波流速計において、超音波により得られる反射エコーの強度(以降、簡単に「超音波流速計により得られるエコー強度」と呼称)が大きくなるとともに、超音波プローブが液体金属に十分に濡れるまでの時間(超音波流速計により得られるエコー強度が十分に大きくなるまでの時間)が短縮される。
1.1.超音波プローブを備える超音波流速計
超音波プローブを備える超音波流速計の基本構成や測定原理については、非特許文献1及び2等に開示されているように公知である。以下、本開示の液体金属の流速測定方法において重要となる部分についてのみ説明し、これ以外の構成については自明であることから説明を省略する。本開示の液体金属の流速測定方法においては、例えば、所定の金属を母材とする棒状の部材によって超音波プローブを構成することができる(図1参照)。言うまでもないが、超音波プローブを構成する母材金属は、流速を測定する対象である液体金属とは異なる金属であって、当該液体金属よりも融点の高い金属である。例えば、超音波プローブを構成する母材金属は活性雰囲気(大気雰囲気等)において不動態被膜を形成し得るものである。本発明者の知見によると、当該不動態被膜の存在が超音波プローブの液体金属に対する濡れ性を一層悪化させる。これに対し、本開示の液体金属の流速測定方法によれば、超音波プローブの表面に所定のろう付け金属層を設けることで母材金属の種類によらず超音波プローブの液体金属に対する濡れ性を改善することができる。特に、本発明者の新たな知見によると、超音波プローブの母材金属がステンレス鋼からなる場合に、本開示の液体金属の流速測定方法による効果が一層顕著となる。
1.2.液体金属
本開示の液体金属の流速測定方法において、液体金属の種類は特に限定されるものではない。従来から、溶融させた低融点金属を用いて、製鉄所における転炉内の溶鋼の流動状態、鋳造において浸漬ノズルから鋳型に流し込まれる溶鋼の流動状態、取鍋内の溶鋼の流動状態等を模擬することが行われている。例えば、スラブ連続鋳造においては、通常、2孔の浸漬ノズルから鋳型の内部へ給湯される際、溶鋼が斜め下向きに吐出され、鋳型の内壁に突き当たった溶鋼が上下に分かれて、上昇流と下降流とを形成する。高速鋳造条件下において、浸漬ノズルからの溶鋼の吐出流は、鋳型短辺の凝固シェルを溶解してブレークアウトを引き起こしたり、上記の上昇流が鋳型内湯面を乱して鋳片表面品質を悪化させたり、上記の下降流が非金属介在物を鋳片内深くへ持ち込んで鋳片内部品質を悪化させたりと、様々な悪影響を及ぼす。それゆえ、連続鋳造時において、ノズルから吐出される溶鋼の流動状態や、鋳型に流し込まれた溶鋼の流動状態を正確に把握することが重要である。しかしながら、溶鋼の流動状態を直接的に測定することは困難であることから、低融点金属を用いて溶鋼の流動状態を模擬することが有効となる。このような場合に、超音波流速計を用いて低融点金属の流速を測定する需要がある。この場合の低融点金属とは融点が300℃以下の金属をいう。すなわち、本開示の液体金属の流速測定方法において、液体金属の融点は300℃以下であることが好ましい。このような低融点金属の具体例としては、Sn、Sn合金、ガリウム合金、水銀から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
1.3.ろう付け金属層
本開示の液体金属の流速測定方法においては、超音波プローブを液体金属に浸漬する前に(液体金属の流速測定を行う前に)、超音波プローブの表面に、液体金属へと溶質拡散し得るろう付け金属層を設ける。尚、超音波プローブの表面に上述した不動態被膜が存在する場合、例えば、フラックスや酸洗、研磨等で当該不動態被膜を除去したうえでろう付け金属層を設けることが好ましい。ここで「ろう付け金属層」はろう付け金属を含む層をいう。「ろう付け金属」は上記の液体金属へ溶質拡散し得る金属であればよい。尚、言うまでもないが、ろう付け金属はプローブの母材金属よりも融点の低いものを用いる。ろう付け金属の種類はプローブの母材金属や測定対象である液体金属の種類に応じて適宜決定することができる。例えば、銀ろう、銅ろう、アルミニウムろう、はんだ等が挙げられる。特に、本発明者の新たな知見によると、ろう付け金属として銀ろうを用いた場合に、本開示の液体金属の流速測定方法による効果が一層顕著となる。すなわち、本開示の液体金属の流速測定方法において、ろう付け金属層を構成する金属元素にAgが含まれることが好ましく、Ag、Cu及びZnが含まれることがより好ましく、Ag、Cu、Zn及びSnが含まれることがさらに好ましい。
ろう付け金属層は超音波プローブの表面のうち必要な部分(液体金属に対する濡れ性を改善すべき部分)に少なくとも設けられていればよい。具体的には、ろう付け金属層は超音波プローブの先端に少なくとも設けられていることが好ましい。尚、超音波プローブの表面にろう付け金属層を設ける方法は、厳密に「ろう付け」に限定されるものではない。ろう付け以外の方法(例えば、メッキやスパッタ等)によってプローブ表面にろう付け金属層を設けることもできる。ただし、コスト等を考慮した場合、プローブ表面に安価で行えるろう付けによって上記のろう付け金属層を設けることが好ましい。
本開示の液体金属の流速測定方法においては、ろう付け金属層の厚みが薄ければ薄いほど、超音波プローブが液体金属に濡れるまでの時間(超音波流速計により得られるエコー強度が十分に大きくなるまでの時間)を短縮することができる。ただし、ろう付けが可能な現実的な厚みの下限としては10μm程度である。一方、本発明者の新たな知見によると、ろう付け金属層の厚みを5000μm以下とすることで、超音波プローブが液体金属に濡れるまでの時間を従来の100分の1以下(例えば70分以下)にまで短縮することができる。以上を考慮すると、本開示の液体金属の流速測定方法において、ろう付け金属層の厚みは10μm以上5000μm以下であることが好ましい。上限がより好ましくは2500μm以下、さらに好ましくは1500μm以下である。
2.超音波流速計
本開示の超音波流速計は、液体金属の流速を測定するために用いられる、超音波プローブを備える超音波流速計であって、超音波プローブが、その表面に前記液体金属へ溶質拡散し得るろう付け金属層を有することに一つの特徴がある。超音波プローブの好ましい材質、ろう付け金属層の好ましい材質や好ましい厚み等については、既に説明した通りである。ここでは詳細な説明を省略する。このような超音波流速計によれば、超音波プローブを液体金属に浸漬した場合に、超音波プローブの表面に設けられたろう付け金属層が液体金属へ溶質拡散し、結果的に超音波プローブの表面が液体金属に短時間で濡れ易い。すなわち、超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する場合に、測定精度を短時間に向上させることができる。
本発明者は、固体金属Aが液体金属Bに溶質拡散することに着目し、超音波プローブの表面を固体金属Aで濡れさせることができれば、液体金属B中で固体金属Aが溶質拡散し、結果的に超音波プローブが液体金属Bに濡れることを予想した。ひいては、超音波プローブと液体金属Bの濡れが確保され、超音波流速計の測定精度が向上すると考えた。そして、超音波プローブに対して固体金属Aを濡れさせる方法を考慮した結果、ろう付けが好適であることを知見した。実際に、固体金属Aと液体金属Bを用いて、上記の通り超音波プローブに対して固体金属Aのろう付けを行ったところ、固体金属Aは超音波プローブに十分に濡れることを確認した。さらに、液体金属B中で超音波プローブ上の固体金属Aは液体金属Bに溶質拡散し、超音波プローブと液体金属Bが濡れていることを確認した。以下、実施例及び比較例を示しつつ本開示の液体金属の流速測定方法についてさらに詳細に説明する。
1.評価手順
先端に銀ろう付けを施した超音波プローブ(母材金属:ステンレス鋼(SUS316L))、なにも処理を施していない超音波プローブのそれぞれを用いて流動測定実験を行った。実験装置の構成を図1に概略的に示す。図1に示すように、小型浴に液体金属として溶融Snを満たした。ここにスクリューを入れて流れを駆動した。上流側から下流側に向かう流れに対して、当該流れを斜めに横断する向きに超音波流速計の超音波プローブを設置した。
2.評価結果
図2に流速測定時の超音波のエコー強度の結果を示す。銀ろう付けを施した超音波プローブは測定距離によらず十分な強度のエコーを取得している一方で、銀ろう付けを施さなかった超音波プローブは取得できるエコーのレベルが低いことがわかる。
図3に測定した速度分布を示す。銀ろう付けを施した超音波プローブはSnの流速分布が取得できている一方で、銀ろう付けを施さなかった超音波プローブはSnの流速が全く取得できていないことがわかる。
なお、この計測では超音波プローブに向かう流れの向きを負としている。
次に、超音波プローブに厚みの異なる銀ろう付けを施し、超音波プローブがSnに十分に濡れるまでの時間、つまりSnの流速測定が可能になるまでの時間を調べた。図4に結果を示す。銀ろう付けの厚みが厚くなれば、超音波プローブがSnに十分に濡れるまでの時間が長くなることがわかる。図4に示す結果から明らかなように、ろう付け金属層の厚みを5000μm以下とすることで、超音波プローブが液体金属に濡れるまでの時間を従来(例えば非特許文献2のFig.17参照:超音波の振幅の縦軸が0.8以上に立ち上がるまでの時間が約120Hrとの比較)の100分の1以下(例えば70分以下)にまで短縮することができる。
本開示の技術は、例えば、液体金属を用いて溶鋼の流動を模擬・再現する場合に、液体金属の流動状態を把握するための手段として有用である。例えば、転炉吹錬時における炉内の溶鋼の流動状態や、連続鋳造時における浸漬ノズルから吐出される溶鋼の流動状態や、鋳型に流し込まれた溶鋼の流動状態を正確に把握する場合に利用可能である。

Claims (5)

  1. 超音波プローブを備える超音波流速計を用いて液体金属の流速を測定する方法であって、
    前記超音波プローブを前記液体金属に浸漬する前に、前記超音波プローブの表面に、前記液体金属へ溶質拡散し得るろう付け金属層を設ける、
    液体金属の流速測定方法。
  2. 前記超音波プローブの母材金属がステンレス鋼からなる、
    請求項1に記載の液体金属の流速測定方法。
  3. 前記ろう付け金属層の厚みが10μm以上5000μm以下である、
    請求項1又は2に記載の液体金属の流速測定方法。
  4. 前記ろう付け金属層を構成する金属元素にAgが含まれる、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体金属の流速測定方法。
  5. 液体金属の流速を測定するために用いられる、超音波プローブを備える超音波流速計であって、
    前記超音波プローブが、その表面に前記液体金属へ溶質拡散し得るろう付け金属層を有する、
    超音波流速計。
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