以下、図面を参照しながら、本発明の位置検出装置に係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る位置検出装置の一構成を示す図である。第1の実施形態では、複数の磁石として、移動方向に対して、磁化方向の異なる第1の磁石10Aと第2の磁石10B、および、第3の磁石10Cの3つの磁石を用いた例について説明する。ここで、第1の磁石10Aは、基準磁石となる磁石であり、第2の磁石10Bおよび第3の磁石10Cと移動方向に対して磁化方向が異ならせている。なお、以下の図面において、基準磁石となる磁石についてはハッチングを施している。本発明において、基準磁石は、複数の磁石のうち、位置検出の基準となる磁石であって、位置検出装置1が位置を検出するために特定することができる磁石である。基準磁石は、位置検出装置1に少なくとも1つ設けられており、複数あってもかまわない。
位置検出装置1は、検出用の第1の磁石10A、第2の磁石10B、および、第3の磁石10Cと、これらの第1の磁石10A、第2の磁石10B、および、第3の磁石10Cを検出する複数の磁気センサMSを備えた磁気センサユニット100と、複数の磁気センサMSを切り替えるマルチプレクサ20と、磁気センサMSからのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器30と、磁気センサMSの検出値を基に第1の磁石10A、第2の磁石10B、および、第3の磁石10Cの位置を演算するマイコン40と、マイコン40で演算した値をアナログ信号で出力する出力回路50と、磁石移動機構60を備えている。なお、本明細書では、磁気センサを特定せずに総称する場合は磁気センサMSと記載し、磁気センサを特定する場合は、磁気センサMS2のように番号を付して記載する。このことは、後述する仮想センサについても同様である。
マイコン40は、機能部として、仮想センサ磁界値生成部41、位置信号生成部42、磁石特定部43、基準磁石判別部44、基準磁石位置算出部45、マルチプレクサ信号生成部46、および、磁石移動信号生成部47を有している。これらの機能部の機能は、マイコン40の図示しないCPU、ROM、RAMと、ROMに予め記憶した制御プログラムを実行することによって実現できる。
磁気センサMSとしては、ホール素子や可飽和コイル等を用いたものが利用できる。可飽和コイルを用いたものとしては、例えば、コアの飽和領域まで可飽和コイルを励磁、外部磁界の作用によってコアの飽和点が移動することを利用したもの、例えば、特開2003-215221号公報に開示されたものを利用することができる。
図2は、第1の実施形態に係る位置検出装置の磁石と磁気センサの具体的な配置を示す図であり、図3は、図2に示す位置検出装置において、磁石と磁気センサとの相対的な位置を変更した際の図である。なお、図2では、第3の磁石10Cを省略している。本実施形態では、磁気センサMSは、基板BS上で直線上に例えば10mm間隔のピッチPでM個、例えば、11個並べられ、マルチプレクサ20と繋がっている。第1の磁石10Aと第2の磁石10B、および、第3の磁石10Cは、図示しない移動機構にそれぞれ磁石間距離L1とL2だけ離して固定されており、共に磁気センサMS1〜MS11と一定距離を保ちながら基板BSに対して平行に移動する。基準磁石となる第1の磁石10Aの磁化方向は移動方向に対してS極、N極に磁化されており、第2の磁石10B、第3の磁石10Cの磁化方向は、基準磁石となる第1の磁石10Aとは反対に移動方向に対してN極、S極に磁化されている。磁化の方向は互いに逆でも構わない。磁気センサMSは、これらの第1の磁石10A、第2の磁石10B、および、第3の磁石10Cの水平磁界を検出する。複数の磁気センサMSの磁石磁界に対する検出値の出力特性は同じである。
本実施形態では、磁気センサユニット100の有効検出長Aは、左右両端の磁気センサMS1と磁気センサMS11を除く、磁気センサMS2から磁気センサMS10までの距離80mmとなる。なお、本実施形態では、磁気センサMSはピッチPで等間隔に配列しているが、磁気センサMSの配列は等間隔でなくてもよい。いずれの場合も、マイコン40には、予め各磁気センサMS1〜MS11の位置が記憶されているものとする。また、磁気センサMSの個数Mも11に限定されないが、3個以上を必要とする。
また、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bとの磁石間距離L1、および、第2の磁石10Bと第3の磁石10Cの磁石間距離L2は、磁気センサユニット100の有効検出長Aよりも短い距離に設定されており、本実施形態では、例えばそれぞれ70mmに設定されている。図2は、第1の磁石10Aが磁気センサMS2に対向している場合を、また、図3は、第2の磁石10Bが磁気センサMS10に対向している場合を示している。後述するように、位置検出装置1は、第1の磁石10Aが磁気センサMS2に対向している位置から、第3の磁石10Cが磁気センサMS10に対向している位置までの範囲内で、基準磁石となる第1の磁石10Aの位置を検出することができる。したがって、位置検出装置1の全有効検出長Ltotalは、磁気センサユニット100の有効検出長A(80mm)に磁石間距離L1(70mm)とL2(70mm)を加えたものとなり、220mmとなる。
まず、第1の磁石10Aが磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内にある場合の、第1の磁石10Aの位置検出の方法について説明する。
図4は、所定の磁化方向を有する磁石に対する磁気センサの検出値である磁界値の特性を説明するための図である。なお、図4に示す特性グラフは、磁気センサMSに可飽和コイル、第1の磁石10Aにネオジムφ5×6を使用している。図4の縦軸は磁界の大きさを表すマイコン40の内部値を示し、横軸は基板BSに沿った座標位置を示している。図4に示す位置0mmは、図2に示すように磁気センサMS2の位置を基準にしている。そして、例えば、磁気センサMS1は−10mm位置に、磁気センサMS2は0mmの位置に、磁気センサMS3は10mmの位置に、磁気センサMS4は20mmの位置に、また、磁気センサMS10は80mmの位置にある。図4では、磁石の位置が磁気センサユニット100の有効検出長Aから外れている−10mmより小さい位置での検出値も記載しているが、実際には位置検出のためには用いない。
図4では、磁気センサMS1〜MS4の各検出値である磁界値を示している。例えば、第1の磁石10Aが0mmの位置にある場合は、各磁気センサMS1〜MS4の検出値は、図4で示す磁気センサMS1〜MS4の特性曲線が0mmの場合の磁界値を出力する。また、第1の磁石10Aが10mmの位置にある場合は、各磁気センサMS1〜MS4の検出値は、図4で示す磁気センサMS1〜MS4の出力特性曲線が10mmの場合の磁界値を出力する。このように、各磁気センサMSは、第1の磁石10Aの中心と磁気センサMSの中心が同じ位置の時に検出値が最大になる。すなわち、第1の磁石10Aと磁気センサMSとが最も近接した際に、磁気センサMSは最大の検出値を出力するように配置されている。
マルチプレクサ20は、マイコン40のマルチプレクサ信号生成部46からの指令により磁気センサMS1〜MS11を順次切り替え、各磁気センサMSからのアナログ信号をA/D変換器30でデジタル信号に変換しマイコン40に入力する。
図4に示す通り磁気センサMSの検出値のままでは、直線あるいは曲線で補間して磁界値のゼロ点を求め、第1の磁石10Aの位置を検出することは難しい。そのため、本実施形態では、マイコン40の内部で磁気センサMSの検出値を1つ飛ばし毎に差分値を求め、求めた差分値を、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの中間に位置する仮想センサの磁界値としている。具体的には、「磁気センサMS3の検出値−磁気センサMS1の検出値」、「磁気センサMS4の検出値−磁気センサMS2の検出値」、「磁気センサMS5の検出値−磁気センサMS3の検出値」・・・「磁気センサMS11の検出値−磁気センサMS9の検出値」を求め、それぞれ、差分を求めた1つ飛ばしの磁気センサMSの中間にある仮想センサVL1、VL2、VL3・・・VL9の磁界値としている(後述する図6参照。)。
図5は、所定の磁化方向を有する磁石が磁気センサに対向した際の、1つ飛ばしの2つの磁気センサの各検出値の差分値の特性を説明するための図であり、図6は、磁気センサの位置と第1群の仮想センサの位置との関係を示す図である。図5の縦軸は磁界の大きさを表すマイコン40の内部値を示し、横軸は基板BSに沿った座標位置を示している。
例えば、本実施形態の場合、所定の磁気センサMSとして、磁気センサMS1とこの磁気センサから1つ飛ばしの磁気センサMS3の各検出値の差分値、すなわち、「磁気センサMS3の検出値−磁気センサMS1の検出値」を算出し、磁気センサMS1と磁気センサMS3の中間に位置する仮想センサVL1の磁界値としている。本実施形態の場合、仮想センサVL1の位置は磁気センサMS2の位置と等しくなり、図5に示す特性が生成される。図5から分かるように、第1の磁石10Aが0mmの位置にある場合は、仮想センサVL1の磁界値はゼロとなり、位置0mmの前後で仮想センサVL1の磁界値はほぼ直線的に変化している。
次に、仮想センサVL2は、磁気センサMS4と磁気センサMS2の中間点にある磁気センサMS3の位置と等しくなり、「磁気センサMS4の検出値−磁気センサMS2の検出値」の差分値をその磁界値としている。仮想センサVL2の特性は、磁石が10mmの位置にある場合に磁界値がゼロとなるように、図5に示す仮想センサVL1の特性を基板BSのプラス方向(紙面の右側に)に10mmシフトさせた特性となる。
さらに、仮想センサVL3は磁気センサMS4の位置と等しくなり、「磁気センサMS5の検出値−磁気センサMS3の検出値」の差分値に等しい磁界値を有する。仮想センサVL3の特性は、図5に示す仮想センサVL1の特性を基板BSのプラス方向に20mmシフトさせた特性となる。
以降、順次1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの検出値の差分値を求めて、求めた差分値を、1つ飛ばしの磁気センサMSの中間に位置する仮想センサVLの磁界値として生成する。そして、最後に、「磁気センサMS11の検出値−磁気センサMS9の検出値」の差分値を求めて、磁気センサMS10と同じ位置にある仮想センサVL9の磁界値とする。仮想センサVL9の特性は、図5に示す仮想センサVL1の特性を基板BSのプラス方向に80mmシフトさせた特性となる。
本実施形態では、磁気センサMSの個数Mを11としているため、1つ飛ばしの磁気センサMSの差分値は9つ求まる。また、磁気センサMSを等ピッチPで配列しているため、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの中間の位置は、図6に示すように、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの間に位置する磁気センサMSの位置と等しくなる。このように、本実施形態では、仮想センサVLは、仮想センサVL1〜VL9の9つ生成でき、それらの位置は、それぞれ磁気センサMS2〜MS10の位置に等しくなる。なお、磁気センサMSは等ピッチで配置する必要はなく、この場合、仮想センサVLの位置は、各磁気センサMSの位置に基づいて1つ飛ばしの磁気センサの中間の位置とすればよい。本発明では、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの中間に位置する複数の仮想センサを第1群の仮想センサと呼ぶ。
マイコン40では、算出した仮想センサVL1〜VL9の磁界値を、直線あるいは曲線で補間し、磁界値のゼロ点を求め第1の磁石10Aの位置を検出する。マイコン40で求めた第1の磁石10Aの位置の値はデジタル信号であり、出力回路50で所定のアナログ信号に変換し出力される。第1の磁石10Aの位置をデジタル信号として処理する場合は、出力回路50を省略してもよい。
以上のように、本発明では、2つの磁気センサMSの検出値の差に基づいて磁石の位置を求めていることから、地磁気等外部磁界の影響で磁界のオフセット成分が変化した場合でも、第1の磁石10Aの検出位置に影響を受けることがない。また、磁気センサMSの温度特性等により同様にオフセット成分が変化した場合も、第1の磁石10Aの検出位置に影響を受けない。そのため、地磁気等外部磁界の影響で磁界のオフセット成分が変化した場合や磁気センサMSの温度特性等により同様にオフセット成分が変化した場合でも、これらの影響を受けることなく高精度な位置検出が可能である。また、2つの磁気センサMSの検出値の差に基づいて磁石の位置を求めるために、磁気センサMSは、磁石が最も近接した際に最大の検出値を出力する向きに配列されている。
次に、直線補間を用いて第1の磁石10Aの位置を検出するための処理を含め、位置検出装置の処理フローについて説明する。図7は、磁気センサユニットの有効検出長内にある磁石の位置を求めるための処理フローの例を示す図である。
磁気センサMS1〜MS11からの検出値は、マルチプレクサ信号生成部46からの信号に基づいてマルチプレクサ20を切り換えることによって、順次A/D変換器30に送られ、デジタル値に変換された後、マイコン40に取り込まれる。磁気センサMSからの検出値のマイコン40への取り込みは、図7に示す処理フローと並行して行ってもよい。
図7のステップS1で、まず、変数nに1が置かれる。ステップS2に移り、図1に示す仮想センサ磁界値生成部41は、n番目とn+2番目の磁気センサMSの検出値の差分を算出し、ステップS3で、この差分値をn番目とn+2番目の磁気センサMSの中間に位置する仮想センサVL(n)の磁界値として、マイコン40の、記憶装置に記憶する。
ステップS4では、n+2の値が磁気センサMSの個数Mに等しいかどうか判別し、等しくない場合(NOの場合)は、ステップS5に移り、変数nに1を加えた後、ステップS2以降の処理を繰り返す。ステップS4でn+2の値が磁気センサMSの個数Mに等しい場合(YESの場合)は、ステップS6に移り、位置信号生成部42は、最大の検出値(絶対値)を出力した磁気センサMSに最も近接する仮想センサVLを特定する。
次に、ステップS7に移り、磁石特定部43は、位置検出の対象とする磁石を特定する。この処理は、後述するように、複数の磁石の内、磁気センサMSに対向している磁石を特定し、位置検出の対象とする磁石を特定するための処理である。本実施形態では、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bが有効検出長Aの範囲内にある場合、第1の磁石10Aが位置検出の対象として特定されているものとする。
最大の検出値を出力した磁気センサMSに最も近接する仮想センサVLが特定されているため、これにより、大まかな第1の磁石10Aの位置を知ることができ、隣接する2つの仮想センサVLの磁界値がゼロ点を跨いでないかを探す基準になる。次に、ステップS8に移り、特定した仮想センサVLの磁界値と、この特定した仮想センサVLの前後の仮想センサの磁界値とがゼロを跨いでいるか否かを判別する。
例えば、本実施形態では、磁気センサMS5の検出値が最も大きい場合、磁気センサMS5の位置に最も近接する仮想センサVLは仮想センサVL4であり、磁気センサMS5と仮想センサVL4の位置は同じである。そして、仮想センサVL4の磁界値の極性と、仮想センサVL4に隣接する前後の仮想センサVL3、VL5の磁界値の極性とを比較する。2つの仮想センサVLの磁界値の極性が逆になっていれば、この2つの仮想センサの間で磁界値はゼロを跨いでおり、この2つの仮想センサの間に第1の磁石10Aがあることになる。
仮に、仮想センサVL3の磁界値がプラス、仮想センサVL4の磁界値がマイナス、仮想センサVL5の磁界値がマイナスの場合、仮想センサVL3の磁界値と仮想センサVL4の磁界値の極性が逆であるので、この間に第1の磁石10Aがあることが分かる。そして、第1の磁石10Aの位置を得るために、ステップS9に移り、ゼロを跨ぐ2つの仮想センサVLの磁界値を例えば直線補間し、磁界値がゼロとなる位置を第1の磁石10Aの位置として算出する。
本実施形態では、仮想センサVL3の磁界値と仮想センサVL4の磁界値との間で直線補間を行う。本実施形態では、ピッチPが10mmであるので、仮想センサVL3の位置は20mmの位置にあり、仮想センサVL4の位置は30mmの位置にある。第1の磁石10Aの位置は、20mmと30mmとの間にあり、仮想センサVL3の磁界値と仮想センサVL4の磁界値との間で直線補間を行って、最終的な磁石の位置を算出している。
図8は、磁石の位置を求めるための直線補間について説明するための図である。図8の縦軸は磁界の大きさを表すマイコン40の内部値であり、横軸は基板BSに沿った座標位置を示している。位置X0にある仮想センサVL(n)が磁界値Y0を有し、位置X1にある仮想センサVL(n+1)が磁界値Y1を有する場合、図8の座標系では、仮想センサVL(n)の座標位置は点aにあり、仮想センサVL(n+1)の座標位置は点bで示される。直線補間は、点aと点bとを結ぶ直線と磁界値0の線との交点のXの位置を求めることによって、磁石の位置を求めるものである。
ここで、Xの位置は、X=X0+Y0×(X1-X0)/(Y0-Y1)(式1)で求まる。例えば、X0=20、X1=30、Y0=100、Y1=−200の時、この式1に当てはめると、磁石の位置は23.333となり、簡単に第1の磁石10Aの位置を求めることができる。
以上、第1の磁石10Aが磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内にある場合の、第1の磁石10Aの位置検出の方法について説明したが、次に、第2の磁石10Bが磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内にある場合の、第2の磁石10Bの位置検出の方法について説明する。
図9は、磁化方向が異なる磁石に対する磁気センサの検出値(磁界値)の特性を説明するための図であり、ここで、磁化方向が異なる磁石とは、例えば第2の磁石10Bまたは第3の磁石10Cに相当する。第2の磁石10Bおよび第3の磁石10Cは、第1の磁石10Aと同様にネオジムφ5×6を使用している。
図9において、例えば、第2の磁石10Bが0mmの位置にある場合は、各磁気センサMS1〜MS4の検出値は、図9で示す磁気センサMS1〜MS4の特性曲線が0mmの場合の磁界値を出力する。また、第2の磁石10Bが10mmの位置にある場合は、各磁気センサMS1〜MS4の検出値は、図9で示す磁気センサMS1〜MS4の特性曲線が10mmの場合の磁界値を出力する。このように、各磁気センサMSは、第2の磁石10Bの中心と磁気センサMSの中心が同じ位置の時に検出値が最大になる。すなわち、第1の磁石10Aの場合と同様に、極性は異なるが、第2の磁石10Bと磁気センサMSとが最も近接した際に、磁気センサMSは最大の検出値を出力するように配置されている。
図9に示すように、磁気センサMSの検出値のままでは、直線あるいは曲線で補間して磁界値のゼロ点を求め、第2の磁石10Bの位置を検出するということは難しい。したがって、第1の磁石10Aの位置を検出した方法と同じ方法で、第2の磁石10Bの位置を検出している。
すなわち、マイコン40の内部で磁気センサMSの検出値を1つ飛ばし毎に差を求め、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの中間に位置する仮想センサの磁界値を生成し、仮想センサの磁界値を補間して得られた磁界分布の磁界値がゼロとなる位置を第2の磁石10Bの位置として出力している。
図9に示すとおり、第2の磁石に対する磁気センサの検出値(磁界値)の特性は、図4に示した第1の磁石に対する磁気センサの検出値(磁界値)の特性の出力を正負反転させたものとなっている。すなわち、第1の磁石10Aの場合は磁気センサMSの最大値はプラス側にあり、第2の磁石10Bの場合は磁気センサMSの最大値はマイナス側に現れる。このため、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bの判別は可能である。基準磁石判別部は、後述するように、この特性を利用して。磁石特定部43が特定した磁石が基準磁石であるか否かを判別している。
図10は、磁化方向が異なる磁石が磁気センサに対向した際の、1つ飛ばしの2つの磁気センサの各検出値の差分値の特性を説明するための図である。図10に示す特性は、図9に示す各磁気センサの検出値から求めているが、図5に示した、第1の磁石10Aが磁気センサMSに対向した際の、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの各検出値の差分値の特性を正負反転させた特性となっている。図10に示す特性曲線は、仮想センサVL1の特性を示している。
このように、第2の磁石10Bの位置を検出する場合は、磁気センサMSの検出値の特性や、仮想センサVLの磁界値の特性が、第1の磁石10Aの位置検出の場合と正負反転しているだけであり、第2の磁石10Bの位置検出は第1の磁石10Aの位置検出と同じ方法で求めることができる。
第2の磁石10Bの位置を検出する場合は、マイナス側の最大値を検出した磁気センサMSを特定し、この磁気センサMSに最も近い仮想センサVLを特定する。さらに、特定した仮想センサVLとその前後の仮想センサVLとの間で磁界値がゼロの値を跨いでないか判別する。そして、ゼロを跨ぐ2つの仮想センサが特定できれば、それらの間に第2の磁石10Bがあり、2つの仮想センサVLの磁界値の直線補間を行って、第2の磁石10Bの位置を求める。
例えば、有効検出長A内にある磁気センサMS2からMS10の内、磁気センサMS8がマイナスの最大値を検出している場合、磁気センサMS8に最も近接する仮想センサは仮想センサVL7であるので、仮想センサVL6と仮想センサのVL7の検出値の極性、および、仮想センサVL7と仮想センサVL8の検出値の極性をそれぞれ比較する。極性が逆になっていれば、その間で磁界値がゼロを跨いでいることになり、第2の磁石10Bがあることなる。
仮に、仮想センサVL6の磁界値がマイナス、仮想センサVL7の磁界値がプラス、仮想センサVL8の磁界値がプラスの場合、仮想センサVL6の磁界値の極性と仮想センサVL7の磁界値の極性が逆であるので、この間に第2の磁石10Bがあることになる。そして、仮想センサVL6と仮想センサVL7の磁界値の直線補間を行う。
本実施形態では、仮想センサVLの間隔は10mmとなるので、仮想センサVL6の位置は、位置0mmにある仮想センサVL1から50mmということが分かる。この値に、仮想センサVL6と仮想センサVL7の磁界値の直線補間で求めた値を加算し、最終的な第2の磁石10Bの位置を求める。
直線補間については、図8で示した直線の傾きが逆になるが、有効検出長Aの範囲内に第1の磁石10Aのみが位置する場合と同様であり、例えば、仮想センサVL6の磁界値Y0が−100、仮想センサVL7の磁界値Y1が200の場合、Xの位置は、X=X0+Y0×(X1-X0)/(Y0-Y1)(式1)で求まる。X0=50、X1=60、Y0=−100、Y1=200をこの式1に当てはめると、第2の磁石10Bの位置Xは53.333となり、簡単に第2の磁石10Bの位置を求めることができる。
図11Aは、本発明の第1の実施形態に係る位置検出装置において、磁気センサユニットの有効検出長A内で磁石が取る位置関係を説明するための図であり、図11Bは、図11Aに示す位置検出装置において、磁石と磁気センサとの相対的な位置を変更した際の図である。本実施形態では、磁石が3つあり、隣接する磁石間の磁石間距離L1、L2が磁気センサユニット100の有効検出長Aよりも短い距離の70mmに設定されている。
このため、磁気センサユニット100の有効検出長A内で磁石の取る位置関係は次のとおりとなる。
ケース1:図11A(ケース1)に示すように、基準磁石である第1の磁石10Aのみが位置する場合。
ケース2:図11A(ケース2)に示すように、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bとが位置する場合。
ケース3:図11A(ケース3)に示すように、第2の磁石10Bのみが位置する場合。
ケース4:図11B(ケース4)に示すように、第2の磁石10Bと第3の磁石10Cとが位置する場合。
ケース5:図11B(ケース5)に示すように、第3の磁石10Cのみが位置する場合。
位置検出装置1は複数の磁石を備えている。そして、基準磁石である第1の磁石10Aは、他の複数の磁石とは磁化方向が異なるため、基準磁石判別部44は、第1の磁石10が有効検出長A内に位置する場合は、磁石特定部43が特定した磁石を基準磁石であると判別することができる。したがって、電源を投入した際に、ケース1やケース2の場合は、基準磁石である第1の磁石10Aが有効検出長A内に位置するので、基準磁石判別部44は、磁石特定部43が特定した磁石を基準磁石であると判別できる。なお、磁石特定部43が基準磁石判別部44の機能を兼ねるように構成してもよい。
しかし、他のケースでは、基準磁石判別部44は、磁石特定部43が位置検出の対象とした磁石が複数の磁石の内のどの磁石であるのか判別できない。例えば、磁石数を3個とした本実施形態では、ケース3とケース5の場合には、磁石特定部43は、各磁気センサMSの検出値から、位置検出の対象とする磁石を特定し、位置信号生成部42はこの磁石の基準位置(0mm)からの位置を出力することができる。そして、基準磁石判別部44は、磁石特定部43が位置検出の対象とした磁石が、基準磁石ではないことは判別できるが、第2の磁石10Bであるのか第3の磁石10Cであるのか判別することができない。これは、第2の磁石10Bと第3の磁石10Cの移動方向に対する磁化方向が同じであることに起因している。なお、磁石数が3よりも多くなった場合は、磁化方向が同じ2つの磁石が有効検出長A内に位置する場合も、位置検出装置1は、これらの磁石がどの磁石であるのかを判別できない。
このため、本実施形態では、電源投入時に基準磁石判別部44が位置検出の対象とする磁石として基準磁石を判別できない場合は、磁石移動信号生成部47から磁石移動機構60を通じて、少なくとも基準磁石判別部44が位置検出の対象とする磁石として基準磁石を判別できるまで磁石の位置を相対移動させている。例えば、電源投入時に、基準磁石を判別できないケース3の場合、初期動作として、磁石を移動させ、基準磁石である第1の磁石10Aが有効検出長A内で検出可能になるまで磁石を動かす。具体的には、第1の磁石10Aを基準位置0mmにある磁気センサMS2あるいは位置80mmにある磁気センサMS10に対向するまで動かす。その後、位置検出装置1として、磁石の移動に伴う位置を検出する。あるいは、電源投入時に位置信号生成部42が有効検出長A内にある磁石の位置を算出して、その位置をメモリに記憶しておき、その後、基準磁石の位置を検出できるまで磁石を移動させることによって、移動させた距離と電源投入時に記憶した位置から、電源投入時の基準磁石の位置を算出することも可能である。
次に、本実施形態における位置検出の方法について説明する。電源投入時に、基準磁石である第1の磁石10Aが磁気センサユニット100の有効検出長A内にあり、第1の磁石10Aの位置を検出できたケース1の場合、基準磁石である第1の磁石10Aの位置を位置検出装置1の出力値とする。次に、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bとが有効検出長A内に位置するケース2の場合は、基準磁石である第1の磁石10Aの位置を優先し、第1の磁石10Aの位置を位置検出装置1の出力値とする。以降、第1の磁石10Aの位置を位置検出装置1の出力値とする。
次に、第1の磁石10Aが有効検出長Aから抜けて、第2の磁石10Bのみが検出可能なケース3の場合は、磁石特定部43は第1の磁石10Aがケース2の場合から抜け出たことを記憶しておくことで、位置検出可能な磁石が第2の磁石10Bであることを特定する。そして、位置信号生成部42は、第2の磁石10Bの位置を求め、基準磁石位置算出部45は、さらにその値に、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bとの磁石間距離L1である70mmを加算した値を第1の磁石10Aの位置として位置検出装置1の出力値とする。第2の磁石10Bの位置に磁石間距離L1である70mmを加算することは、第1の磁石10Aは磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲外にあるにもかかわらず、第2の磁石10Bの位置から第1の磁石10Aの位置を求めることである。
次に、磁石が移動し、有効検出長A内に第2の磁石10Bと第3の磁石10Cとが位置するケース4の場合、第2の磁石10Bを優先し、ケース3の場合と同様に、位置信号生成部42は、第2の磁石10Bの位置を求め、基準磁石位置算出部45は、さらにその値に、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bとの磁石間距離L1である70mmを加算した値を位置検出装置1の出力値とする。
次に、第2の磁石10Bが有効検出長Aから抜けて、第3の磁石10Cのみが有効検出長A内に位置するケース3の場合は、磁石特定部43は第2の磁石10Bがケース4の場合から抜け出たことを記憶しておくことで、位置検出可能な磁石が第3の磁石10Cであることを特定する。そして、位置信号生成部42は、第2の磁石10Bの位置を求め、基準磁石位置算出部45は、さらにその値に、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bとの磁石間距離L1である70mmと第2の磁石10Bと第3の磁石10Cとの磁石間距離L2である70mmとを加算した値を位置検出装置1の出力値とする。例えば、第3の磁石10Cの位置が30mmの場合、位置検出装置1の出力値は170mmとなる。
図12は、本発明の第1の実施形態に係る位置検出装置において、磁石の数を4個にした場合を示す図である。図12に示す位置検出装置では、図11A、図11Bに示した位置検出装置に対して、第4の磁石10Dをさらに追加している。この場合も、隣接する磁石の各磁石間距離L1,L2,L3はそれぞれ、磁気センサユニット100の有効検出長A以下に設定される。図12に示す位置検出装置の全有効検出長Ltotalは、磁気センサユニット100の有効検出長Aと隣接する各磁石間距離の和である両端に位置する磁石間の全磁石間距離とを加えた長さ、すなわち、Ltotal=A+L1+L2+L3となる。このように、本実施形態では、磁石数を増やすことによって、位置検出装置としての全有効検出長Ltotalを伸ばすことができ、磁石の個数は3個以上であれば、その個数に制限はない。
磁石が1つの場合は、位置検出装置1の全有効検出長Ltotalは、磁気センサユニット100の有効検出長Aに等しくなる。しかし、本実施形態のように、複数の磁石の中の1つの磁石を、例えば磁化の方向を変えることで基準磁石として特定可能にすることによって、位置検出装置1の全有効検出長Ltotalは、磁気センサユニット100の有効検出長Aと隣接する各磁石間距離の和である両端に位置する磁石間の全磁石間距離とを加えた長さとなる。そして、電源投入時に、一度基準磁石を判別するまで磁石を移動させる必要は生じるが、予め記憶してある複数の磁石の磁石間距離を加味することで、位置検出装置1の全有効検出長Ltotalを伸ばすことができる。
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態では、複数の磁石の中から基準磁石を判別するために、移動方向に対して他の磁石とは磁化方向の異なる磁石を用いる場合を例に説明したが、基準磁石を判別するために他の磁石とは磁化の強さの異なる磁石を用いてもよい。磁化の強さの異なる磁石を用いる場合は、それぞれの磁石を磁気センサMSに対向させた際に、磁気センサの検出値の最大値の違いが十分判別できる強さの磁石を用いることが望ましい。また、いずれの場合も、磁気センサMSは、磁石が最も近接した際に最大の検出値を出力するように磁石と磁気センサを配置しておく必要がある。
また、第1の実施形態では、最右端に位置する第1の磁石10Aを基準磁石としたが、基準磁石は、必ずしも最右端の磁石である必要はなく、最左端あるいは中央に位置する磁石であってもよい。この場合も、基準磁石としては、他の複数の磁石とは磁化方向が異なる磁石、あるいは、他の複数の磁石とは磁化の強さが異なる磁石を用いればよい。
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態に係る位置検出装置において、磁石と磁気センサとの配置の関係を示す図である。図13に示す例では、磁気センサユニット100は、第1の実施形態と同じものが用いられ、複数の磁石は、それぞれの磁化方向が同じ方向に並ぶように配置されている。図示の例では、磁石の個数が4個の場合を示しているが、3個以上であればよい。図13に示す磁石と磁気センサとの配置の関係は、図12に示す第1の実施形態の磁石と磁気センサとの配置において、第1の磁石10Aの磁化方向を他の複数の磁石の磁化方向と同じ方向にしたものに相当する。また、隣接する磁石間の磁石間距離L1,L2,L3は、それぞれ磁気センサユニット100の有効検出長A以下に設定される。
第2の実施形態では、両端に配置した磁石を基準磁石として機能させている。図13に示す例では、最右端に位置する第1の磁石10Aまたは最左端に位置する第4の磁石10Dが基準磁石となる。隣接する磁石間の磁石間距離L1,L2,L3をそれぞれ70mmとした場合、本実施形態では、電源投入時には、磁気センサユニット100の有効検出長A内に、1つの磁石が位置するケースと、2つの磁石が位置するケースが存在するが、複数の磁石は、全て同じ方向に磁化されているため、基準磁石判別部44は、いずれの場合も磁石特定部43が位置検出の対象として特定した磁石を基準磁石として判別できない。
このため、本実施形態では、次の方法によって位置の検出を行う。
(1)まず、磁石移動信号生成部47は、全ての磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置しなくなるまで、磁石を相対移動させる信号を磁石移動機構60に送る。電源投入時に、磁石と磁気センサMSとが図13に示す状態にあった場合は、例えば、磁石を紙面左方向に移動させ、第1の磁石10Aが有効検出長Aから外れる位置まで左方向に移動させる。第1の磁石10Aが有効検出長Aから外れたか否かは、磁石特定部43が、位置検出の対象とする磁石を特定できなくなったことで判別できる。
(2)次に、磁石移動信号生成部47は、磁石を反対方向、すなわち、紙面右方向に磁石を相対移動させる信号を磁石移動機構60に送る。これにより、最右端にある第1の磁石10Aが、右方向に移動し、磁気センサユニット100の有効検出長A内まで移動する。そうすると、磁石特定部43が、位置検出の対象とする磁石として最初に有効検出長A内に入ってきた第1の磁石10Aを特定できるため、基準磁石判別部44は、最初に磁石特定部43が特定した磁石、すなわち、第1の磁石10Aを基準磁石として検出する。基準磁石を検出した以降の位置検出の方法は、第1の実施形態で説明した方法と同様である。
なお、最左端にある第4の磁石10Dを基準磁石とする場合は、磁石を移動させる方向を、第4の磁石10Dが有効検出長A内に位置しなくなるまで右方向に相対移動させ、その後、磁石を左方向に移動させることによって、最初に磁石特定部43が特定した磁石、すなわち、第4の磁石10Dを基準磁石として検出すればよい。
第2の実施形態では、複数の磁石の内、両端に位置する2つの磁石を基準磁石としている。これは、磁石の磁化方向や磁化の強さに関係なく、複数の磁石の配置関係のみによって基準磁石を判別するものである。したがって、第2の実施形態では、複数の磁石の磁化方向は全て同じ方向である必要はなくバラバラであってもよい。さらに、各磁石の磁化の強さについても同様であり、その強さが異なっていてもよい。また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、磁石の個数は、3個以上であればその個数に制限はない。
(第3の実施形態)
図14は、本発明の第3の実施形態に係る位置検出装置において、磁石と磁気センサとの配置の関係を示す図である。本実施形態では、隣接する磁石の磁石間距離がすべて異なっており、後述するように、いずれの磁石も基準磁石となりうる。図14に示す例では、磁気センサユニット100は、第1の実施形態と同じものが用いられ、磁石の個数が5個の場合を示しているが、磁石の数はこれに限られない。隣接する磁石間の磁石間距離である、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bとの磁石間距離L1、第2の磁石10Bと第3の磁石10Cとの磁石間距離L2、第3の磁石10Cと第4の磁石10Dとの磁石間距離L3、および、第4の磁石10Dと第5の磁石10Eとの磁石間距離L4は、それぞれ磁気センサユニット100の有効検出長A以下であり、かつ、それぞれ異なる長さに設定されている。例えば、L1=75mm、L2=70mm、L3=65mm、L4=60mmに設定されており、位置検出装置1は、予め、これらの磁石間距離L1,L2,L3、および、L4の値を記憶している。また、各磁石の磁化方向は、同じ方向であると仮定するが、後述するように異なっていてもよい。
本実施形態においては、電源投入時には、磁気センサユニット100の有効検出長A内に、1つの磁石が位置するケースと、2つの磁石が位置するケースが存在するが、1つの磁石が位置するケースの場合、複数の磁石は全て同じ方向に磁化されているため、基準磁石判別部44は、磁石特定部43が位置検出の対象とした磁石を基準磁石として判別できない。一方、磁気センサユニット100の有効検出長A内に2つの磁石が位置するケースでは、基準磁石判別部44は、磁石特定部43が位置検出の対象とした磁石の磁石間距離を基にこれらの2つの磁石を基準磁石として判別することができる。有効検出長A内の2つの磁石の距離は、位置信号生成部42が出力したそれぞれの磁石の位置から算出することが可能である。そして、基準磁石判別部44は、記憶している各磁石の磁石間距離と一致する2つの磁石を基準磁石として判別することができる。
例えば、図14に示す例では、基準磁石判別部44は、2つの磁石の磁石間距離が70mmであることから、これら2つの磁石が第2の磁石10Bと第3の磁石10Cであることを判別できる。そして、第2の磁石10Bと第3の磁石10Cのいずれかを基準磁石とすることができる。例えば、第3の磁石10Cを基準磁石とした場合、第3の磁石10Cの位置の値dmmに、第3の磁石10Cと第2の磁石10Bの磁石間距離L2および第2の磁石10Bと第1の磁石10Aの磁石間距離L1とを合計した値を、第1の磁石10Aの位置として出力することができる。あるいは、第2の磁石10Bを基準磁石とした場合は、第2の磁石10Bの位置の値に第2の磁石10Bと第1の磁石10Aの磁石間距離L1を合計した値を、第1の磁石10Aの位置として出力することができる。
そして、電源投入時に、磁気センサユニット100の有効検出長A内に1つの磁石しか位置しないケースでは、磁石移動信号生成部47が磁石移動機構60に対して、磁石特定部43が位置検出の対象とする磁石を2個特定できるまで、磁石を移動させる信号を送信する。移動方向は、予め任意に定めておくことができ、移動距離は最大の磁石間距離Lmax以下となる。磁石特定部43が位置検出の対象とする磁石を2個特定できれば、基準磁石判別部44は、いずれかの磁石を基準磁石として、以降の測定は先述した方法で行うことができる。
このため、電源投入時に、有効検出長A内に1つの磁石しか位置しないケースにおいて、その磁石の位置を知りたい場合は、最初にその磁石の位置dを位置信号生成部42によって求めておき、例えば、その位置が有効検出長Aの半分以下の長さであれば、2つの磁石の位置検出が可能となるまで磁石を左方向に移動させる。そして、2つ磁石の磁石間距離を算出することによって、最初に有効検出長A内に位置していた磁石を特定することができる。これによって、最初に求めた磁石の位置dの値に、その磁石よりも右側に位置する各磁石の磁石間距離を加算することによって、第1の磁石10Aの位置を出力することができる。
このように、本実施形態では、予め設定し距離が分かっている磁石間距離を用いて、磁石を特定したものである。このため、全ての磁石が基準磁石となりうる。したがって、基準磁石となる磁石を特定しなくても、磁気センサユニット100の有効検出長Aの半分以下の長さだけ磁石を相対移動させるだけで、各磁石の位置を算出することができる。第3の実施形態において、例えば、磁石の個数をN個とした場合、隣接する磁石の磁石間距離を第1の磁石10A側から順に、L1,L2,L3・・・,Ln-1,Ln・・・LN-1(Ln-1は、第n番目の磁石と第n-1番目の磁石の磁石間距離)とすると、L1からLN-1は全て異なる値であり、全有効検出長Ltotalは、Ltotal=有効検出長A+(L1+L2+L3+・・・+Ln-1+Ln+・・・+LN-1)となる。
また、必要な場合は、磁石を最大の磁石間距離Lmax(<A)の半分以下の相対距離だけいずれか一方向に動かすことによって、2つの磁石の磁石間距離の測定が可能となるので、予め分かっている磁石間距離L1,L2,L3・・・,Ln-1,Ln・・・LN-1を用いて、第n番目の磁石を特定することができる。そして、第n番目の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する際の、位置検出装置1の出力は、第n番目の磁石の位置d+(L1+L2+L3+…+Ln-1)となる。
第3の実施形態では、隣接する磁石の磁石間距離を用いて各磁石を特定することを可能としている。このため、磁石の磁化方向や磁化の強さに関係なく、複数の磁石の磁石間距離が算出できれば良い。したがって、第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、複数の磁石の磁化方向は全て同じ方向である必要はなくバラバラであってもよい。また、各磁石の磁化の強さについても同様であり、その強さが異なっていてもよい。
(第4の実施形態)
図15は、本発明の第4の実施形態に係る位置検出装置において、磁石と磁気センサとの配置の関係を示す図である。第4の実施形態では、磁気センサユニット100は、第1の実施形態と同じものが用いられるが、複数の磁石セットS1からSM(Mは整数であり、磁気センサMSの数Mとは別に定められる。)を備えている。各磁石セットS1からSMは、各磁石セットに含まれる磁石の数を例えば12個とした場合、端部、例えば右端部に配置した基準磁石10Remと、第1(番目)の磁石10Amから第11(第K番目)の磁石10Kmの11個の磁石からなるサブ磁石セットを含んでいる。そして、各磁石セットS1からSMにおいて、基準磁石10Remとサブ磁石セットの第1の磁石10Amから第11(第K番目)の磁石10Kmとは、移動方向に対して磁化の方向を異ならせている。
各サブ磁石セットの第1の磁石10Amから第11の磁石10Kmの配列は、例えば、第3の実施形態と同様の配列となっており、第1の磁石10Amと第2の磁石10Bmとの磁石間距離L1、第2の磁石10Bmと第3の磁石10Cmとの磁石間距離L2、第3の磁石10Cmと第4の磁石10Dmとの磁石間距離L3、以下同様に、第9の磁石10Imと第10の磁石10Jmの磁石間距離をL9、第10の磁石10Jmと第11の磁石10Kmの磁石間距離をL10とした場合、各磁石間距離L1からL10は全て、磁気センサユニット100の有効検出長A以下に設定され、かつ、識別可能な差を持つようにそれぞれ異なる長さに設定されている。そして、本実施形態では、各磁石セットS1からSMにおけるサブ磁石セットの配列と両端磁石間距離Lxはすべて同じに構成されている。
また、最右端の磁石セットS1の基準磁石10Re1を除く、各磁石セットS2からSMの基準磁石10Remとこの基準磁石10Remの両側に位置する磁石との磁石間距離について、mセット目の磁石セットSmの基準磁石10Remとm−1セット目の磁石セットSm-1の最左端にある第K番目の磁石10Km-1との磁石間距離をLBm-1、mセット目の磁石セットSmの基準磁石10Remと同じ磁石セットSmの第1の磁石10Amとの磁石間距離をLFmとした場合、LBm-1およびLFmはともに磁気センサユニット100の有効検出長A以下に設定され、かつ、磁石間距離LFmの長さと磁石間距離LBm-1の長さの組み合わせが、全ての基準磁石10Remにおいて異なる組み合わせに設定される。また、最右端部に位置する1セット目の基準磁石10Re1と1セット目の第1の磁石10A1との磁石間距離LF1は磁気センサユニット100の有効検出長A以下に設定される。そして、基準磁石10Re1を含む各基準磁石10Remの前後の磁石間距離LFmおよびLBm-1の組み合わせ、および、各磁石セットS1からSMにおけるサブ磁石セットの第1の磁石10Amから第K番目の磁石10Kmの配列の磁石間距離L1からL10についても、マイコン40のメモリに予め記憶される。
これにより、mセット目の基準磁石10Remは、前後の磁石と磁化の方向が異なるため、基準磁石判別部44は磁石特定部43が特定した磁石を基準磁石として判別することが可能であり、さらに、mセット目の基準磁石10Remの両側の磁石との磁石間距離LFmおよびLBm-1を位置信号生成部42の位置出力から算出することにより、mセット目の基準磁石10Remを判別することができる。また、1セット目の基準磁石10Re1については、他の基準磁石10Re2から10ReMと異なり、右側に磁石はなく、左側の第1の磁石10A1しか存在しないため、センサの有効検出長A以上右側に磁石のないことを認識することで、1セット目の基準磁石10Re1であることが判別可能となる。
本実施形態では、電源投入時に、基準磁石10Remと、この基準磁石10Remの両側の磁石である(m−1)セット目の磁石セットSm-1の第K番目の磁石10Km-1と、mセット目の磁石セットSmの第1の磁石10Amの3個の磁石が同時に磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置している場合は、基準磁石10Remを特定し、その位置を算出することが可能である。しかし、このような場合は稀であり、通常は、磁気センサユニット100の有効検出長A内に1個または2個の磁石が存在している場合が多い。このような場合は、磁石移動信号生成部47から磁石移動機構60を通じて、少なくとも磁石特定部43が位置検出の対象として特定した磁石を、基準磁石判別部44が基準磁石10Remとして判別できるまで、磁石の位置を相対移動させる。
基準磁石判別部44が、1つの基準磁石10Remを判別できた場合は、さらに、この基準磁石10Remの右側の磁石であるm−1セット目の第K番目の磁石10Km-1との磁石間距離LBm-1、および、左側のmセット目の第1の磁石10Amとの磁石間距離LFmを算出することによって、基準磁石10Remを特定する必要がある。そのために、磁石移動信号生成部47から磁石移動機構60を通じて、基準磁石10Remとこの基準磁石10Remとmセット目の第1の磁石10Amとが同時に磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置するまで磁石を移動させて、2つの磁石間距離LFmを算出し、さらに、基準磁石10Remとこの基準磁石10Remとm−1セット目の第K番目の磁石10Km-1とが同時に磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置するまで磁石を移動させて、2つの磁石間距離LBm-1を算出する。これにより、基準磁石10Remの前後の磁石間距離LBm-1と磁石間距離LFmとの組み合わせから、基準磁石判別部44は、基準磁石10Remがどの磁石セットの基準磁石であるのかを判別することができる。
本実施形態では、複数の磁石セットS1からSMに応じたM個の基準磁石10Remが存在するため、1つの基準磁石10Remが特定できれば、以降のサブ磁石セット内にある磁石について、どの磁石セット内のどの磁石であるのかの磁石の特定と、その磁石の位置の精度高い算出が可能となる。したがって、磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する磁石の位置から、例えば、第1の磁石セットS1の基準磁石10Re1の位置を出力することができる。
図16は、本発明の第4の実施形態に係る位置検出装置において、磁石の位置の求め方を説明するための図である。例えば、磁石セットの数を100セットとし、各磁石セットが1個の基準磁石とサブ磁石セットとして11個の磁石を含む、計12個の磁石から構成されているものとする。そして、磁気センサユニット100の有効検出長Aが80mmで、各サブ磁石セットの磁石間距離L1からL10は、例えば、L1=75mm、L2=70mm、L3=65mm、・・・L9=35mm、L10=30mmと5mmの差分を有するように設定されているものとする。この場合、各サブ磁石セットの両端磁石間距離Lx、すなわち、各サブ磁石セットの両端に位置する第1の磁石10Amと第K番目の磁石10Kmの両端磁石間距離Lxは、Lx=L1+L2+L3+・・・+L9+L10となり、Lx=525mmとなる。
また、mセット目の基準磁石10Remとmセット目の第1の磁石10Amとの磁石間距離LFmを順次、75mm,70mm,65mm,60mm,55mm,50mm,45mm,40mm,35mm,30mmの10通りとし、同じく、mセット目の基準磁石10Remとm−1セット目の第K番目の磁石10Km-1との磁石間距離LBm-1を順次、75mm,70mm,65mm,60mm,55mm,50mm,45mm,40mm,35mm,30mmの10通りとすると、磁石間距離LFmと磁石間距離LBm-1との組み合わせは100通りの組み合わせが可能となる。また、最右端の1セット目の基準磁石10Re1については、右側の磁石がないことで判別可能となる。したがって、磁石間距離LF1については75mmとし、基準磁石Re2からRe100までについて、99通りの磁石間距離LFmと磁石間距離LBm-1との組み合わせについて、大きい数値の方から99通りの組み合わせを行う。これにより、最左端の基準磁石10Re100の前後の磁石との磁石間距離LB99は35mm、LF100は30mmとなる。
このとき、位置検出装置1の全有効検出長Ltotalは、
Ltotal=A+100サブセット分のLx+(LF1からLF100の加算値)+(LB1からLB99の加算値)
=A+100×Lx+[75+10×(75+70+65+・・・+30)−30]+{10×(75+70+65+・・・+30)−30}
=80+52500+75+5250−30+5250−30
=63095mmとなる。
ここで、3番目の式の第3項から5項は磁石間距離LFmの合計であり、6,7項は磁石間距離LBm-1の合計である。
そして、図16に示すように、54セット目の磁石セットS54のサブ磁石セットの第2の磁石10B54の位置がdmmであるとすると、磁気センサユニット100の0mmの位置から第1の磁石セットS1の基準磁石10Re1の位置(距離)Zは、
Z=d+L1+{LF54+(10Re1から10Re54までの距離)}
=d+L1+{(サブセットの両端磁石間距離Lxの53セット分の長さ)+(LF1からLF54の加算値)+(LB1からLB53の加算値)}
=d+75+[53×525+[75+10×(75+70+65+60+55)+3×50]]+{5×(75+70+65+60+55+50+45+40+35+30)+(75+70+65)}
=d+34210mmとなる。
なお、本実施形態では、1セット目の基準磁石10Re1と各磁石セットの基準磁石10Remとの距離は、予め、算出できるため、各磁石の磁石間距離から算出した各基準磁石10Remの位置を予めマイコン40のメモリに記憶しておいてもよい。これにより、位置の算出が容易になる。
このように、本実施形態では、複数の磁石を有する磁石セットを複数設け、各磁石セットの端部の磁石を基準磁石として他の磁石と判別可能に構成するとともに、各基準磁石についてこの基準磁石の両側に位置する前後の磁石との磁石間距離の関係がそれぞれ異なるようにすることで、基準磁石の判別をしているため、例えば、磁気センサユニット100の有効検出長Aの103倍程度の距離まで高い精度で位置検出の検出距離を拡大できる。
本実施形態を一般化すれば、磁石の配列は次のようになる。
(1)複数の磁石を有する磁石セットS1からSMを複数並べて配置する。
(2)各磁石セットは、基準磁石とサブ磁石セットから構成し、基準磁石は、各磁石セットの端部の位置に置き、例えば磁化方向を変えたり磁化の強さを変えたりすることによってサブ磁石セットの磁石と判別可能にする。
(3)各磁石セットの基準磁石は、両側に位置する磁石との磁石間距離の組み合わせが、それぞれの基準磁石について異なるように配置する。
(4)各磁石の磁石間距離は、全て、磁気センサユニット100の有効検出長A以内の長さとする。
上記の第4の実施形態では、各磁石セットを構成するサブ磁石セットの磁石間距離を、第3の実施形態のように、すべて異なる磁石間距離を有するように構成したが、例えば、第2の実施形態のように、全て同じ磁石間距離を有するように構成してもよい。この場合、磁石の移動に応じて、基準磁石10Remを特定した後、各サブ磁石セットが磁気センサユニット100の有効検出長Aから何個抜け出たかをマイコンのメモリに記憶しておくことによって移動した距離や所定の磁石の位置が検出可能である。
(第5の実施形態)
第1の実施形態では、1つ飛ばしの2つの磁気センサMS毎に差分値を求めて仮想センサVLを生成しているため、仮想センサVLの数は磁気センサの数よりも2個少なく、また、磁気センサを10mmの等ピッチPで配置した場合、仮想センサVL間の間隔も磁気センサMSの間隔と同じ10mmである。そして、第1の実施形態において、直線補間をする場合、磁界値のゼロ点から±10mmの区間(磁気センサMSの間隔分)が直線であることが望ましいが、磁界値のゼロ点から離れると図5および図10の符号Cで示すように直線性が悪くなる。そのため、直線性の悪い値を用いて直線補間をすると誤差が発生する。
第5の実施形態は、例えば、第1の実施形態に比べて、計算が簡単な直線補間でもより高精度な磁石の位置検出を可能とするものである。このため、第5の実施形態では、第1の実施形態の磁気センサMSの検出値を1つ飛ばし毎に差を求める方式に加え、磁気センサMSの隣同士の検出値の差分値も求めている。すなわち、第1の実施形態で求めた(M−2)個の第1群の仮想センサVLに加え、隣接する2つの磁気センサの検出値の差分値を算出し、この差分値を磁界値として有する、隣接する2つの磁気センサの中間に位置する(M−1)個の第2群の仮想センサVLを用いている。本発明では、隣接する2つの磁気センサMSの中間に位置する複数の仮想センサを第2群の仮想センサと呼ぶ。
以下、例えば、図11Aに示すように磁気センサユニット100の有効検出長A内に第1の磁石10Aのみが位置するケース1の場合について、第1の磁石10Aの位置を検出する方法について説明する。
図17は、第1の磁石が磁気センサに対向した際の、隣接する2つの磁気センサの各検出値の差分値の特性を説明するための図であり、図18は、磁気センサの位置と第1群と第2群を合わせた仮想センサの位置を示す図である。図17において、縦軸は磁界の大きさを表すマイコン40の内部値であり、横軸は基板BSに沿った位置を示している。
具体的には、「磁気センサMS2の検出値−磁気センサMS1の検出値」の差分値を求め、この差分値を、磁気センサMS1と磁気センサMS2の中間の−5mmの位置にある仮想センサVL1の磁界値とし、「磁気センサMS3の検出値−磁気センサMS1の検出値」の差分値を求め、この差分値を、磁気センサMS1と磁気センサMS3の中間に位置する0mmの位置にある仮想センサVL2の磁界値とし、「磁気センサMS3の検出値−磁気センサMS2の検出値」の差分値を求め、この差分値を、磁気センサMS2と磁気センサMS3の中間の5mmの位置する仮想センサVL3の磁界値とし、「磁気センサMS4の検出値−磁気センサMS2の検出値」の差分値を求め、この差分値を、磁気センサMS2と磁気センサMS4の中間の10mmに位置する仮想センサVL4の磁界値とし、順次、仮想センサVL19までの磁界値を算出している。
ここで、偶数番目の9個の仮想センサVL2、VL4、VL6・・・VL18は、第1の実施形態で求めた1つ飛ばしの2つの磁気センサMSから生成したものであり、第1群の仮想センサVLに相当する。第1群の仮想センサVLの特性は、それぞれ図5で示した特性曲線と同じ特性曲線を有する。また、奇数番目の10個の仮想センサVL1、VL3、VL5・・・VL19は、隣接する2つの磁気センサMSから生成したものであり、第2群の仮想センサVLに相当する。
図17に示す特性は、図4に示す磁気センサMS2の検出値と磁気センサMS3の検出値から求めたものであり、仮想センサVL3の特性を示している。仮想センサVL3は、磁気センサMS2と磁気センサMS3の中間の位置である5mmの位置にあり、その磁界値は5mmの位置でゼロとなり、ゼロ点を挟む前後の磁界値は直線的に変化している。同様に、第2群に属する仮想センサVL1の特性は、図17の仮想センサVL3の特性を基板BSのマイナス方向に10mmシフトさせた特性となり、仮想センサVL5の特性は、図17の仮想センサVL3の特性を基板BSのプラス方向に10mmシフトさせた特性となる。
これにより、第5の実施形態では、図5で示す特性と同様の特性を有する9個の偶数番目の第1群の仮想センサVLと、図17で示す特性と同様な特性を有する10個の奇数番目の第2群の仮想センサVLとが、図18で示すように5mm間隔のピッチP’で生成される。これは、5mm間隔で19個の磁気センサが並んでいることと同じであり、磁界値のゼロ点から±5mmの区間での直線的特性を利用することができ、直線補間でも高精度な第1の磁石10Aの位置検出が可能となる。さらに、有効検出長A’も18×ピッチP’から90mmとなる。第1の実施形態における有効検出長Aあるいは第5の実施形態における有効検出長A’から、磁気センサユニット100の有効検出長は、磁気センサMSの配列方向に沿って、両端に位置する仮想センサ間の距離に相当すると定義できる。
第5の実施形態において、直線補間によって第1の磁石10Aの位置を検出する方法は、第1の実施形態と同様である。
まず、磁気センサユニット100の複数の磁気センサMSの中から最大の検出値を出力する磁気センサMSを特定する。これにより大まかな磁石の位置を知ることができ、仮想センサVLの磁界値がゼロ点を跨いでないかを探す基準になる。次に、最大値を示す磁気センサMSに最も近接する仮想センサVLを特定し、特定した仮想センサVLの磁界値と、この特定した仮想センサVLの前後の仮想センサの磁界値とがゼロを跨いでいるか否かを判別する。
例えば、磁気センサMS5が最大値をとる場合は、磁気センサMS5に最も近接する仮想センサVLは仮想センサVL8となるため、仮想センサVL8の磁界値の極性と、この仮想センサVL8に隣接する仮想センサVL7および仮想センサVL9の磁界値の極性をそれぞれ比較する。そして、2つの仮想センサVLの磁界値の極性が逆になっていれば、この2つの仮想センサの間で磁界値はゼロを跨いでおり、この2つの仮想センサの間に第1の磁石10Aがあるということになる。
仮に、仮想センサVL7の磁界値がプラス、仮想センサVL8の磁界値がマイナス、仮想センサVL9の磁界値がマイナスの場合、仮想センサVL7の磁界値と仮想センサVL8の磁界値の極性が逆であるので、この間に第1の磁石10Aがあることが分かる。本実施形態では、仮想センサVL7の位置は、磁気センサMS2の位置を0とした場合、25mmの位置にあるため、第1の磁石10Aは、25mmから30mmの間にあることが分かる。そして、そして、第1の磁石10Aの位置を得るために、ゼロを跨ぐ2つの仮想センサVLの磁界値を直線補間し、磁界値がゼロとなる位置を第1の磁石10Aの位置として算出する。
直線補間の方法についても、第1の実施形態と同様である。図8を用いて説明したように、磁石の位置Xは、X=X0+Y0×(X1-X0)/(Y0-Y1)(式1)で求まる。例えば、X0=25、X1=30、Y0=100、Y1=−200の時、この式1に当てはめると、磁石の位置は、26.667となり、簡単に磁石の位置を求めることができる。
以上、第5の実施形態において、磁気センサユニット100の有効検出長A’内に第1の磁石10Aのみが位置するケース1の場合に、第1の磁石10Aの位置を検出する方法について説明したが、磁気センサユニット100の有効検出長A’内に第2の磁石10Bのみが位置するケース3の場合に、第2の磁石10Bの位置を検出する方法も、磁気センサMSの検出値の特性が正負逆になるだけで、ケース1と同様である。このため、その説明を省略する。なお、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bとが有効検出長A’内にあるケース2の場合は、第1の実施形態と同様に、いずれかの磁石を優先させてその位置を検出すればよい。
本実施形態で追加した、第2群の仮想センサVLの特性も磁気センサMSの検出値の差を求めていることから、本実施形態は、第1の実施形態と同様に、地磁気等外部磁界の影響で磁界のオフセット成分が変化した場合や磁気センサの温度特性等により同様にオフセット成分が変化した場合でも、これらの影響を受けることなく高精度な位置検出が可能である。そして、本実施形態では、磁気センサを増やすことなく、第1の実施形態の有効検出長Aの80mmよりも長い有効検出長A’の90mmとすることができ、さらに、より高精度な位置検出が可能となる。第5の実施形態は、第1から第4の実施形態に適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。これらの本実施形態では、複数の磁石を判別するために、基準磁石を定め、この基準磁石に対する各磁石の位置を予め磁石間距離として、位置検出装置のメモリに記憶しておくことによって、各磁石の位置から例えば、最右端に位置する磁石の位置(距離)を出力できるようにしている。基準磁石を求めるために、磁化方向を利用する場合や磁化の強さを利用する場合のいずれ場合も、磁気センサMSは、磁石が最も近接した際に最大の検出値を出力するように磁石と磁気センサを配置しておく必要がある。また、磁石位置を求める際に、仮想センサVLの磁界値の直線補間を用いたが、曲線補間によって磁石位置を求めてもよい。さらに、磁石列あるいは磁気センサのいずれ側を可動側に配置してもよい。