以下、図面を参照しながら、本発明の位置検出装置に係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る位置検出装置の一構成を示す図である。位置検出装置1は、磁石セットS1として、検出用の第1の磁石10Aから第5の磁石10Eまでの5つの磁石と、これらの第1の磁石10Aから第5の磁石10Eを検出する複数の磁気センサMSを備えた磁気センサユニット100と、複数の磁気センサMSを切り替えるマルチプレクサ20と、磁気センサMSからのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器30と、磁気センサMSの検出値を基に第1の磁石10A〜第5の磁石10Eの位置を演算するマイコン40と、マイコン40で演算した値をアナログ信号で出力する出力回路50を備えている。なお、本明細書では、磁気センサを特定せずに総称する場合は磁気センサMSと記載し、磁気センサを特定する場合は、磁気センサMS2のように番号を付して記載する。このことは、後述する仮想センサについても同様である。
本実施形態では、移動方向に沿って、第1の磁石10Aから第5の磁石10Eまでの5つの磁石が磁石間距離L1で等間隔に配列されている。また、第1の磁石10A、第2の磁石10B,第5の磁石10Eの3つの磁石と第3の磁石10C、第4の磁石10Dの2つの磁石は配列方向(移動方向と同じ)に対して磁化方向(極性)が異なっている。なお、以下の図面において、第1の磁石10Aと磁化方向が異なる磁石についてはハッチングを施している。各磁石の磁化方向については、磁気センサユニット100に複数の磁石が対向した際に、磁化方向の組み合わせが異なるように配置されており、詳細については後述する。
マイコン40は、機能部として、仮想センサ磁界値生成部41、位置信号生成部42、磁石特定部43、磁石間距離算出部44、および、マルチプレクサ信号生成部45を有している。磁石特定部43は、磁石配列データ43Aを有している。これらの機能部の機能は、マイコン40の図示しないCPU、ROM、RAMと、ROMに予め記憶した制御プログラムを実行することによって実現できる。
磁気センサMSとしては、ホール素子や可飽和コイル等を用いたものが利用できる。可飽和コイルを用いたものとしては、例えば、コアの飽和領域まで可飽和コイルを励磁し、外部磁界の作用によってコアの飽和点が移動することを利用したもの、例えば、特開2003-215221号公報に開示されたものを利用することができる。
図2は、第1の実施形態に係る位置検出装置の磁石と磁気センサの一配置を示す図であり、第1の磁石10A以外の磁石を省略している。本実施形態では、磁気センサユニット100の磁気センサMSは、基板BS上で直線上に例えば10mm間隔のピッチPでM個、例えば、11個並べられ、マルチプレクサ20と繋がっている。第1の磁石10Aから第5の磁石10Eは、図示しない移動機構にそれぞれ磁石間距離L1だけ離して固定されており、共に磁気センサMS1〜MS11と一定距離を保ちながら基板BSに対して平行に移動する。磁気センサMSは、これらの第1の磁石10Aから第5の磁石10Eの各水平磁界を検出する。複数の磁気センサMSの磁石磁界に対する検出値の出力特性は同じである。
本実施形態では、磁気センサユニット100の有効検出長Aは、左右両端の磁気センサMS1と磁気センサMS11を除く、磁気センサMS2から磁気センサMS10までの距離80mmとなる。なお、本実施形態では、磁気センサMSはピッチPで等間隔に配列しているが、磁気センサMSの配列は等間隔でなくてもよい。いずれの場合も、マイコン40には、予め各磁気センサMS1〜MS11の位置が記憶されているものとする。また、磁気センサMSの個数Mも11に限定されないが、3個以上を必要とする。
また、本実施形態では、第1の磁石10Aから第5の磁石10Eの各磁石間距離L1は、磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/2よりも短い距離に設定されており、磁石間距離L1は、例えば、35mmに設定されている。これは、本実施形態では、磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する2つの磁石の磁化方向を利用して磁石を特定するためである。磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置するn(nは2以上の整数)個の磁石の磁化方向を利用して磁石を特定する場合は、磁石セット内の各磁石の磁石間距離は、磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/nよりも短くなるように設定される。
まず、第1の磁石10Aが磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内にある場合の、第1の磁石10Aの位置検出の方法について説明する。
図3は、所定の磁化方向を有する磁石に対する磁気センサの検出値である磁界値の特性を説明するための図である。なお、図3に示す特性グラフは、磁気センサMSに可飽和コイル、第1の磁石10Aにネオジムφ5×6を使用した際の特性を示している。図3の縦軸は磁界の大きさを表すマイコン40の内部値を示し、横軸は基板BSに沿った座標位置(以下、単に「位置」ともいう。)を示している。図3に示す位置0mmは、図2に示すように磁気センサMS2の位置を基準にしている。そして、例えば、磁気センサMS1は−10mmの位置に、磁気センサMS2は0mmの位置に、磁気センサMS3は10mmの位置に、磁気センサMS4は20mmの位置に、また、磁気センサMS10は80mmの位置にある。図3では、磁石の位置が磁気センサユニット100の有効検出長Aから外れている−10mmより小さい位置での検出値も記載しているが、実際には位置検出のためには用いない。
図3では、磁気センサMS1〜MS4の各検出値である磁界値を示している。例えば、第1の磁石10Aが0mmの位置にある場合に、各磁気センサMS1〜MS4の検出値は、図3で示す磁気センサMS1〜MS4の特性曲線が0mmの場合の磁界値を出力する。また、第1の磁石10Aが10mmの位置にある場合は、各磁気センサMS1〜MS4の検出値は、図3で示す磁気センサMS1〜MS4の出力特性曲線が10mmの場合の磁界値を出力する。このように、各磁気センサMSは、第1の磁石10Aの中心と磁気センサMSの中心が同じ位置の時に検出値が最大になる。すなわち、第1の磁石10Aと磁気センサMSとが最も近接した際に、磁気センサMSは最大の検出値を出力するように配置されている。
マルチプレクサ20は、マイコン40のマルチプレクサ信号生成部45からの指令により磁気センサMS1〜MS11を順次切り替え、各磁気センサMSからのアナログ信号をA/D変換器30でデジタル信号に変換しマイコン40に入力する。
図3に示す通り磁気センサMSの検出値のままでは、検出値を直線あるいは曲線で補間して磁界値のゼロ点を求め、第1の磁石10Aの位置を検出することは難しい。そのため、本実施形態では、マイコン40の内部で仮想センサ磁界値生成部41が磁気センサMSの検出値を1つ飛ばし毎に差分値を求め、求めた差分値を、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの中間に位置する仮想センサの磁界値としている。具体的には、「磁気センサMS3の検出値−磁気センサMS1の検出値」、「磁気センサMS4の検出値−磁気センサMS2の検出値」、「磁気センサMS5の検出値−磁気センサMS3の検出値」・・・「磁気センサMS11の検出値−磁気センサMS9の検出値」を求め、それぞれ、差分を求めた1つ飛ばしの磁気センサMSの中間にある仮想センサVL1、VL2、VL3・・・VL9の磁界値としている(後述する図5参照。)。
図4は、所定の磁化方向を有する磁石が磁気センサに対向した際の、1つ飛ばしの2つの磁気センサの各検出値の差分値の特性を説明するための図であり、図5は、磁気センサの位置と第1群の仮想センサの位置との関係を示す図である。図4の縦軸は磁界の大きさを表すマイコン40の内部値を示し、横軸は基板BSに沿った座標位置を示している。
例えば、本実施形態の場合、所定の磁気センサMSとして、磁気センサMS1とこの磁気センサから1つ飛ばしの磁気センサMS3の各検出値の差分値、すなわち、「磁気センサMS3の検出値−磁気センサMS1の検出値」を算出し、磁気センサMS1と磁気センサMS3の中間に位置する仮想センサVL1の磁界値としている。本実施形態の場合、仮想センサVL1の位置は磁気センサMS2の位置と等しくなり、図4に示す特性が生成される。図4から分かるように、第1の磁石10Aが0mmの位置にある場合は、仮想センサVL1の磁界値はゼロとなり、位置0mmの前後で仮想センサVL1の磁界値はほぼ直線的に変化している。
次に、仮想センサVL2は、磁気センサMS4と磁気センサMS2の中間点にある磁気センサMS3の位置と等しくなり、「磁気センサMS4の検出値−磁気センサMS2の検出値」の差分値をその磁界値としている。仮想センサVL2の特性は、磁石が10mmの位置にある場合に磁界値がゼロとなるように、図4に示す仮想センサVL1の特性を基板BSのプラス方向(紙面の右側に)に10mmシフトさせた特性となる。
さらに、仮想センサVL3は磁気センサMS4の位置と等しくなり、「磁気センサMS5の検出値−磁気センサMS3の検出値」の差分値に等しい磁界値を有する。仮想センサVL3の特性は、図4に示す仮想センサVL1の特性を基板BSのプラス方向に20mmシフトさせた特性となる。
以降、順次1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの検出値の差分値を求めて、求めた差分値を、1つ飛ばしの磁気センサMSの中間に位置する仮想センサVLの磁界値として生成する。そして、最後に、「磁気センサMS11の検出値−磁気センサMS9の検出値」の差分値を求めて、磁気センサMS10と同じ位置にある仮想センサVL9の磁界値とする。仮想センサVL9の特性は、図4に示す仮想センサVL1の特性を基板BSのプラス方向に80mmシフトさせた特性となる。
本実施形態では、磁気センサMSの個数Mを11としているため、1つ飛ばしの磁気センサMSの差分値は9つ求まる。また、磁気センサMSを等ピッチPで配列しているため、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの中間の位置は、図5に示すように、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの間に位置する磁気センサMSの位置と等しくなる。このように、本実施形態では、仮想センサVLは、仮想センサVL1〜VL9の9つ生成でき、それらの位置は、それぞれ磁気センサMS2〜MS10の位置に等しくなる。なお、磁気センサMSは等ピッチで配置する必要はなく、この場合、仮想センサVLの位置は、各磁気センサMSの位置に基づいて1つ飛ばしの磁気センサの中間の位置とすればよい。本発明では、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの中間に位置する複数の仮想センサを第1群の仮想センサと呼ぶ。
マイコン40では、位置信号生成部42が、算出した仮想センサVL1〜VL9の磁界値を、直線あるいは曲線で補間し、磁界値のゼロ点を求め第1の磁石10Aの位置を検出する。マイコン40で求めた第1の磁石10Aの位置の値はデジタル信号であり、出力回路50で所定のアナログ信号に変換し出力される。第1の磁石10Aの位置をデジタル信号として処理する場合は、出力回路50を省略してもよい。
以上のように、本発明では、2つの磁気センサMSの検出値の差に基づいて磁石の位置を求めていることから、地磁気等外部磁界の影響で磁界のオフセット成分が変化した場合でも、第1の磁石10Aの検出位置に影響を受けることがない。また、磁気センサMSの温度特性等により同様にオフセット成分が変化した場合も、第1の磁石10Aの検出位置に影響を受けない。そのため、位置検出装置1は、地磁気等外部磁界や温度変化の影響を受けることなく高精度な位置検出が可能である。また、2つの磁気センサMSの検出値の差に基づいて磁石の位置を求めるために、磁気センサMSは、磁石が最も近接した際に最大の検出値を出力する向きに配列されている。
次に、直線補間を用いて第1の磁石10Aの位置を検出するための処理を含め、位置検出装置の処理フローについて説明する。図6は、磁気センサユニットの有効検出長内にある磁石の位置を求めるための処理フローの例を示す図である。
磁気センサMS1〜MS11からの検出値は、マルチプレクサ信号生成部45からの信号に基づいてマルチプレクサ20を切り換えることによって、順次A/D変換器30に送られ、デジタル値に変換された後、マイコン40に取り込まれる。磁気センサMSからの検出値のマイコン40への取り込みは、図6に示す処理フローと並行して行ってもよい。
図6のステップS1で、まず、変数nに1が置かれる。ステップS2に移り、図1に示す仮想センサ磁界値生成部41は、n番目とn+2番目の磁気センサMSの検出値の差分を算出し、ステップS3で、この差分値をn番目とn+2番目の磁気センサMSの中間に位置する仮想センサVL(n)の磁界値として、マイコン40の、記憶装置に記憶する。
ステップS4では、n+2の値が磁気センサMSの個数Mに等しいかどうか判別し、等しくない場合(NOの場合)は、ステップS5に移り、変数nに1を加えた後、ステップS2以降の処理を繰り返す。ステップS4でn+2の値が磁気センサMSの個数Mに等しい場合(YESの場合)は、ステップS6に移り、所定値以上の検出値(絶対値)を出力した磁気センサMSに最も近接する仮想センサVLを特定する。
所定値以上の検出値を出力した磁気センサMSが複数ある場合は、それぞれに最も近接する複数の仮想センサを特定する。所定値以上の検出値は、例えば、図3の特性グラフにおいて、第1の磁石10Aが隣接する磁気センサMSの中間に位置した際に、隣接する磁気センサMSの検出値とすることができる。
次に、ステップS7に移り、磁石特定部43は、位置検出の対象とする磁石を特定する。この処理は、後述するように、複数の磁石の内、磁気センサMSに対向している磁石を特定し、位置検出の対象とする磁石を特定するための処理である。本実施形態では、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bが有効検出長Aの範囲内にある場合、第1の磁石10Aが位置検出の対象として特定されているものとする。なお、磁石特定部43は、位置検出の対象とする磁石を特定するほかに、位置検出の対象とした磁石が複数の磁石の内のどの磁石であるのかを特定する機能を有しているが、この機能については後述する。
所定値以上の検出値を出力した磁気センサMSに最も近接する仮想センサVLが特定されているため、これにより、大まかな第1の磁石10Aの位置を知ることができ、隣接する2つの仮想センサVLの磁界値がゼロ点を跨いでないかを探す基準になる。次に、ステップS8に移り、特定した仮想センサVLの磁界値と、この特定した仮想センサVLの前後の仮想センサの磁界値とがゼロを跨いでいるか否かを判別する。
例えば、本実施形態では、磁気センサMS5の検出値が所定値以上である場合、磁気センサMS5の位置に最も近接する仮想センサVLは仮想センサVL4であり、磁気センサMS5と仮想センサVL4の位置は同じである。そして、仮想センサVL4の磁界値の極性と、仮想センサVL4に隣接する前後の仮想センサVL3、VL5の磁界値の極性とを比較する。2つの仮想センサVLの磁界値の極性が逆になっていれば、この2つの仮想センサの間で磁界値はゼロを跨いでおり、この2つの仮想センサの間に第1の磁石10Aがあることになる。
仮に、仮想センサVL3の磁界値がプラス、仮想センサVL4の磁界値がマイナス、仮想センサVL5の磁界値がマイナスの場合、仮想センサVL3の磁界値と仮想センサVL4の磁界値の極性が逆であるので、この間に第1の磁石10Aがあることが分かる。そして、第1の磁石10Aの位置を得るために、ステップS9に移り、ゼロを跨ぐ2つの仮想センサVLの磁界値を例えば直線補間し、磁界値がゼロとなる位置を第1の磁石10Aの位置として算出する。
本実施形態では、仮想センサVL3の磁界値と仮想センサVL4の磁界値との間で直線補間を行う。本実施形態では、ピッチPが10mmであるので、仮想センサVL3の位置は20mmの位置にあり、仮想センサVL4の位置は30mmの位置にある。第1の磁石10Aの位置は、20mmの位置と30mmの位置との間にあり、仮想センサVL3の磁界値と仮想センサVL4の磁界値との間で直線補間を行って、最終的な磁石の位置を算出している。
図7は、磁石の位置を求めるための直線補間について説明するための図である。図7の縦軸は磁界の大きさを表すマイコン40の内部値であり、横軸は基板BSに沿った座標位置を示している。位置X0にある仮想センサVL(n)が磁界値Y0を有し、位置X1にある仮想センサVL(n+1)が磁界値Y1を有する場合、図7の座標系では、仮想センサVL(n)の座標位置は点aにあり、仮想センサVL(n+1)の座標位置は点bで示される。直線補間は、点aと点bとを結ぶ直線と磁界値0の線との交点のXの位置を求めることによって、磁石の位置を求めるものである。
ここで、Xの位置は、X=X0+Y0×(X1-X0)/(Y0-Y1)(式1)で求まる。例えば、X0=20、X1=30、Y0=100、Y1=−200の時、この式1に当てはめると、磁石の位置は23.333となり、簡単に第1の磁石10Aの位置を求めることができる。
以上、第1の磁石10Aが磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内にある場合の、第1の磁石10Aの位置検出の方法について説明したが、次に、第1の磁石10Aと移動方向に対して磁化方向が異なる磁石が磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内にある場合の、位置検出の方法について説明する。図8は、第1の実施形態に係る位置検出装置の磁石と磁気センサとの他の配置を示す図である。図8では、第3の磁石10Cが磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内にあるものとし、他の磁石については図示を省略している。第3の磁石10Cは、第1の磁石10Aと磁化方向が異なっている。図9は、磁化方向が異なる磁石に対する磁気センサの検出値(磁界値)の特性を説明するための図であり、第3の磁石10Cは、第1の磁石10Aと同様にネオジムφ5×6を使用している。
図9において、例えば、第3の磁石10Cが0mmの位置にある場合は、各磁気センサMS1〜MS4の検出値は、図9で示す磁気センサMS1〜MS4の特性曲線が0mmの場合の磁界値を出力する。また、第3の磁石10Cが10mmの位置にある場合は、各磁気センサMS1〜MS4の検出値は、図9で示す磁気センサMS1〜MS4の特性曲線が10mmの場合の磁界値を出力する。このように、各磁気センサMSは、第3の磁石10Cの中心と磁気センサMSの中心が同じ位置の時に検出値が最大になる。すなわち、第1の磁石10Aの場合と同様に、極性は異なるが、第3の磁石10Cと磁気センサMSとが最も近接した際に、磁気センサMSは最大の検出値を出力するように配置されている。
図9に示すように、磁気センサMSの検出値のままでは、検出値を直線あるいは曲線で補間して磁界値のゼロ点を求め、第3の磁石10Cの位置を検出するということは難しい。したがって、第1の磁石10Aの位置を検出した方法と同じ方法で、第3の磁石10Cの位置を検出している。
すなわち、マイコン40の内部で磁気センサMSの検出値を1つ飛ばし毎に差を求め、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの中間に位置する仮想センサの磁界値を生成し、仮想センサの磁界値を補間して得られた磁界分布の磁界値がゼロとなる位置を第3の磁石10Cの位置として出力している。
図9に示すとおり、第2の磁石に対する磁気センサの検出値(磁界値)の特性は、図3に示した第1の磁石10Aに対する磁気センサの検出値(磁界値)の特性の出力を正負反転させたものとなっている。すなわち、第1の磁石10Aの場合は磁気センサMSの最大値はプラス側にあるが、第3の磁石10Cの場合は磁気センサMSの最大値はマイナス側に現れる。このため、互いに磁化方向の異なる第1の磁石10Aと第3の磁石10Cとの判別は可能である。磁石特定部43は、後述するように、この特性を利用して、位置検出の対象とした磁石が、複数の磁石の中のどの磁石であるのかを特定している。
図10は、磁化方向が異なる磁石が磁気センサに対向した際の、1つ飛ばしの2つの磁気センサの各検出値の差分値の特性を説明するための図である。図10に示す特性は、図9に示す各磁気センサの検出値から求めているが、図4に示した、第1の磁石10Aが磁気センサMSに対向した際の、1つ飛ばしの2つの磁気センサMSの各検出値の差分値の特性を正負反転させた特性となっている。図10に示す特性曲線は、仮想センサVL1の特性を示している。
このように、第3の磁石10Cの位置を検出する場合は、磁気センサMSの検出値の特性や、仮想センサVLの磁界値の特性が、第1の磁石10Aの位置検出の場合と正負反転しているだけであり、第3の磁石10Cの位置検出は第1の磁石10Aの位置検出と同じ方法で求めることができる。
第3の磁石10Cの位置を検出する場合は、マイナス側の所定値以上の検出値を検出した磁気センサMSを特定し、この磁気センサMSに最も近い仮想センサVLを特定する。さらに、特定した仮想センサVLとその前後の仮想センサVLとの間で磁界値がゼロの値を跨いでないか判別する。そして、ゼロを跨ぐ2つの仮想センサが特定できれば、それらの間に第3の磁石10Cがあり、2つの仮想センサVLの磁界値の直線補間を行って、第3の磁石10Cの位置を求める。
例えば、有効検出長A内にある磁気センサMS2からMS10の内、磁気センサMS8がマイナス側で所定値以上の検出値を検出している場合、磁気センサMS8に最も近接する仮想センサは仮想センサVL7であるので、仮想センサVL6と仮想センサのVL7の検出値の極性、および、仮想センサVL7と仮想センサVL8の検出値の極性をそれぞれ比較する。極性が逆になっていれば、その間で磁界値がゼロを跨いでいることになり、第3の磁石10Cがあることなる。
仮に、仮想センサVL6の磁界値がマイナス、仮想センサVL7の磁界値がプラス、仮想センサVL8の磁界値がプラスの場合、仮想センサVL6の磁界値の極性と仮想センサVL7の磁界値の極性が逆であるので、この間に第3の磁石10Cがあることになる。そして、仮想センサVL6と仮想センサVL7の磁界値の直線補間を行う。
本実施形態では、仮想センサVLの間隔は10mmとなるので、仮想センサVL6の位置は、位置0mmにある仮想センサVL1から50mmということが分かる。この値に、仮想センサVL6と仮想センサVL7の磁界値の直線補間で求めた値を加算し、最終的な第3の磁石10Cの位置を求める。
直線補間については、図7で示した直線の傾きが逆になるが、有効検出長Aの範囲内に第1の磁石10Aのみが位置する場合と同様であり、例えば、仮想センサVL6の磁界値Y0が−100、仮想センサVL7の磁界値Y1が200の場合、Xの位置は、X=X0+Y0×(X1-X0)/(Y0-Y1)(式1)で求まる。X0=50、X1=60、Y0=−100、Y1=200をこの式1に当てはめると、第2の磁石10Bの位置Xは53.333となり、簡単に第2の磁石10Bの位置を求めることができる。
以上、磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に、1つの磁石が存在する場合に、この磁石の位置を検出する方法について説明したが、磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に、磁化方向が同じあるいは異なる複数の磁石が位置する場合であっても、それぞれの磁石の位置を検出することが可能である。この場合は、プラス側あるいはマイナス側にかかわらず、所定値以上の検出値を出力する磁気センサMSを特定し、それぞれの磁石の位置を算出すればよい。なお、磁気センサユニット100の有効検出長A内に同時に位置する磁石の個数は、磁石セットの各磁石の磁石間距離によって定まるが、磁気センサユニット100に設けた複数の磁気センサMSの分解能との関係で、その上限の個数を決めればよい。
図11Aから図11Cは、本発明の第1の実施形態に係る位置検出装置において、磁気センサユニットの有効検出長A内で磁石が取る位置関係を説明するための図であり、それぞれ、磁石と磁気センサユニットとの相対的な位置を変更した際の図である。また、図12は、本発明の実施形態に係る位置検出装置において、磁気センサユニットに対向する磁石を特定する際の、処理フローを示す図である。さらに、図13は、第1の実施形態に係る位置検出装置において、1つの磁石セットに属する磁石の磁化方向の組み合わせについて説明するための図であり、最小座標に位置する1番目磁石と最小座標から2番目に位置する2番目磁石の磁化方向の配列の組み合わせと特定の磁石に関するテーブル201を示している。このテーブル201は、磁石配列データ43Aとして、マイコン40に記憶されている。各磁石は、図示の方向に磁化されている。
第1の実施形態では、隣接する磁石の磁石間距離が等しい複数の磁石を有する磁石セットS1が1つの場合に相当する。磁石セットS1は5個の磁石を備えており、隣接する磁石間の磁石間距離L1が磁気センサユニット100の有効検出長A(80mm)の1/2よりも短い、例えば35mmに設定されている。このため、磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内で磁石の取る位置関係は次の9通りとなる。
ケース1:図11Aの(ケース1)に示すように、第1の磁石10Aの1つの磁石が位置する場合。
ケース2:図11Aの(ケース2)に示すように、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bの2つの磁石が位置する場合。
ケース3:図11Aの(ケース3)に示すように、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bと第3の磁石10Cの3つの磁石が位置する場合。
ケース4:図11Bの(ケース4)に示すように、第2の磁石10Bと第3の磁石10Cの2つの磁石が位置する場合。
ケース5:図11Bの(ケース5)に示すように、第2の磁石10Bと第3の磁石10Cと第4の磁石10Dの3つの磁石が位置する場合。
ケース6:図11Bの(ケース6)に示すように、第3の磁石10Cと第4の磁石10Dの2つの磁石が位置する場合。
ケース7:図11Cの(ケース7)に示すように、第3の磁石10Cと第4の磁石10Dと第5の磁石10Eの3つの磁石が位置する場合。
ケース8:図11Cの(ケース8)に示すように、第4の磁石10Dと第5の磁石10Eの2つの磁石が位置する場合。
ケース9:図11Cの(ケース9)に示すように、第5の磁石10Eの1つの磁石が位置する場合。
以下に説明するように、本実施形態では、複数の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する場合は、最小座標に位置する1番目磁石と最小座標から2番目に位置する2番目磁石との関係から、磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する磁石が、複数の磁石の内のどの磁石であるのかを特定しているが、最大座標に位置する磁石と最大座標から2番目に位置する磁石との関係から、複数の磁石の内のどの磁石であるのかを特定してもよい。また、複数の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する場合に最小座標に位置する磁石の位置を基準に、位置検出装置1の位置検出値を算出しているが、他の磁石を基準にしてもよい。なお、以下の説明では、位置検出装置1の位置検出値は、第1の磁石10Aの位置を起点とする。
以下、各ケースでの位置検出の方法について、図12の処理フローに沿って説明する。
(ケース1の場合)
まず、ステップS11において、2つ以上の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置するか否かを判別する。ケース1の場合は、磁気センサユニット100の有効検出長A内に第1の磁石10Aの1つの磁石が位置するため(ステップS11でNO)、ステップS17に進み、検出した磁石の位置を求める。次にステップS18に進み、検出した磁石の位置が磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/2以下の座標位置であるかどうかを判別する。ここで、ケース1の場合は、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bとの磁石間距離L1が有効検出長Aの1/2より小さくなっているため、第1の磁石10Aのみが有効検出長A内に位置する場合は、第1の磁石10Aは必ず磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/2以下の位置にある。このため、ステップS19に移り、検出した磁石が最右端(1番目)の第1の磁石10Aであることが特定される。次に、ステップS16に移り、特定した磁石の位置から位置検出装置1の位置検出値を出力する。ケース1の場合は、位置検出装置1の位置検出値は、第1の磁石10Aの位置d1となる。
(ケース2の場合)
ケース2の場合は、磁気センサユニット100の有効検出長A内に、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bの2つの磁石が位置している。このため、ステップS11ではYESとなり、ステップS12に移る。ステップS12では、まず、最小座標に位置する1番目磁石の位置と磁化方向を求める。次に、ステップS13に進み、2番目に小さい座標に位置する2番目磁石の位置と磁化方向を求める。ステップS12とステップS13の順番は逆であってもよい。次に、ステップS14を飛ばし、ステップS15に進む。ステップS15では、磁石間距離を用いることなく、磁石特定部43は、1番目磁石と2番目磁石との磁化方向の組み合わせの関係から、1番目磁石と2番目磁石が、複数の磁石の中のどの磁石であるのかを特定する。
第1の実施形態では、磁石セットS1に属する各磁石の磁石間距離はすべて等しいため、ステップS14での磁石間距離の算出を省くことができる。また、ステップS15においても、磁石間距離を用いる必要はない。ステップS14およびステップS15における磁石間距離の算出と磁石間距離を用いた磁石の特定は、位置検出装置1が複数の磁石セットを備えた場合に、どの磁石セットに属する磁石であるのかを特定するためであり、これについては後述する第2の実施形態で説明する。
2つの磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置するケースは、ケース2、ケース4、ケース6、および、ケース8の4つのケースがある。これらの4つのケースにおいて、最小座標に位置する1番目磁石と2番目に小さい座標に位置する2番目磁石を特定する方法について、図13を用いて説明する。先述したように、第1の磁石10A、第2の磁石10B,第5の磁石10Eの3つの磁石と第3の磁石10C、第4の磁石10Dの2つの磁石は配列方向に対してN極とS極の磁化方向が異なっている。第1の磁石10A、第2の磁石10B,第5の磁石10Eの3つの磁石の磁化方向は、座標軸で小さい方から大きい方に向かってN−Sとなっており、この磁化方向を説明の便宜上2進数の「1」とする。また、第3の磁石10C、第4の磁石10Dの2つの磁石の磁化方向は、座標軸で小さい方から大きい方に向かってS−Nとなっており、この磁化方向を2進数の「0」とする。そうすると、磁石セットS1の磁石の磁化方向の配列は、磁石番号の小さい第1の磁石10Aの方から見て、2進数で表すと、“11001”となっている。なお、各磁石の磁化方向の違いは、磁気センサMSの検出値の正負によって判別することができる。
2つの磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する上記の4つのケースでは、1番目磁石と2番目磁石の磁化方向の組み合わせは、図13で示すように、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bの2つの磁石が位置するケース2の場合は、“11”となり、第2の磁石10Bと第3の磁石10Cの2つの磁石が位置するケース4の場合は、“01”となり、第3の磁石10Cと第4の磁石10Dの2つの磁石が位置するケース6の場合は、“00”となり、第4の磁石10Dと第5の磁石10Eの2つの磁石が位置するケース8の場合は、“10”となる。このように、磁石セットS1の磁石の磁化方向の配列は、その組み合わせが、最小座標に位置する磁石によって異なるように設定されている。
図12に戻り、ケース2の場合は、ステップS15において、1番目磁石と2番目磁石の磁化方向の組み合わせが“11”であるため、磁石特定部43は、最小座標に位置する磁石が第2の磁石10Bであることを特定することができる。次に、ステップS16に移り、特定した磁石の位置から位置検出装置1の位置出力値を出力する。ケース2の場合は、位置検出装置1の位置検出値(第1の磁石10Aの位置)は、1番目磁石である第2の磁石10Bの位置d2に、1番目磁石である第2の磁石10Bと第1の磁石10Aとの磁石間距離を加算した、d2+L1となる。
(ケース3の場合)
ケース3の場合は、磁気センサユニット100の有効検出長A内に、第1の磁石10Aと第2の磁石10Bと第3の磁石10Cの3つの磁石が位置している。このため、ステップS11ではYESとなり、ステップS12に移る。ステップS12では、まず、最小座標に位置する1番目磁石の位置と磁化方向を求める。次に、ステップS13に進み、2番目に小さい座標に位置する2番目磁石の位置と磁化方向を求める。ステップS12とステップS13の順番は逆であってもよい。次に、ステップS14を飛ばしてステップS15に進み、磁石特定部43は、1番目磁石と2番目磁石の磁化方向の組み合わせの関係から、1番目磁石と2番目磁石が、複数の磁石の中のどの磁石であるのかを特定する。
3つの磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置するケースは、ケース3、ケース5、および、ケース7の3つのケースの場合がある。これらの3つのケースの場合も、2つの磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置するケースと同様に、最小座標に位置する1番目磁石の磁化方向と2番目に小さい座標に位置する2番目磁石の磁化方向の組み合わせから、1番目磁石と2番目磁石を特定することができる。ケース3の場合は、1番目磁石と2番目磁石の磁化方向の組み合わせは、“01”となり、1番目磁石が第3の磁石10Cであり、2番目磁石が第2の磁石10Bであることが特定できる。
次に、ステップS16に移り、特定した磁石の位置から位置検出装置1の位置出力値を出力する。ケース3の場合は、位置検出装置1の位置検出値(第1の磁石10Aの位置)は、1番目磁石である第3の磁石10Cの位置d3に、1番目磁石(第3の磁石10C)と第1の磁石10Aの磁石間距離を加算した、d3+2×L1となる。
(ケース4、ケース6、ケース8の場合)
2つの磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置するケース4、ケース6、および、ケース8の場合は、ケース2で説明した方法と同様に、位置検出装置1の位置検出値を算出することができるので、その説明を省略する。
(ケース5、ケース7の場合)
3つの磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置するケース5およびケース7の場合は、ケース3で説明した方法と同様に、位置検出装置1の位置検出値を算出することができるので、その説明を省略する。
(ケース9の場合)
ケース9の場合は、磁気センサユニット100の有効検出長A内に第5の磁石10Eのみが位置するため、図12のステップS11でNOとなり、ステップS17に進む。ステップS17では、検出した磁石の位置を求める。次にステップS18に進み、検出した磁石の位置が磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/2以下の座標位置であるかどうかを判別する。ここで、ケース9の場合は、第4の磁石10Dと第5の磁石10Eとの磁石間距離L1が有効検出長Aの1/2より小さくなっているため、第5の磁石10Eのみが有効検出長A内に位置する場合は、第5の磁石10Eは必ず磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/2より大きい位置にある。このため、ステップS18でNOとなるためステップS20に移り、検出した磁石が最左端(5番目)の第5の磁石10Eであることが特定される。次に、ステップS16に移り、特定した磁石の位置から位置検出装置1の位置検出値を出力する。ケース9の場合は、位置検出装置1の位置検出値は、第5の磁石10Eの位置d9に第5の磁石10Eから第1の磁石10Aまでの磁石間距離を加算した、d9+4×L1となる。
以上、第1の実施形態に係る位置検出装置1では、磁石セットの中の2個以上の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に位置する際に、最小座標に位置する1番目磁石と次の2番目磁石の2個の磁石の磁化方向の組み合わせによって、1番目磁石(および2番目磁石)を特定している。2個の磁石の磁化方向の組み合わせとしては、2進数で表現した際に、5個の磁石について、“11001”となるように配列したが、1と0を入れ替えた“00110”、あるいは、前後を入れ替えた、“10011”、01100”の配列であってもよい。また、磁石数は、2個の磁石の磁化方向の組み合わせが異なる限り、5個以下でも構わない。
本実施形態では、位置検出装置1の電源を投入した際に、磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する磁石を特定することができるため、磁石の絶対的(アブソリュート)な位置検出が可能である。また、位置検出装置1は、第1の磁石10Aが磁気センサMS2に対向している位置から、第5の磁石10Eが磁気センサMS10に対向している位置までの範囲内で、例えば第1の磁石10Aの位置を算出することができる。したがって、位置検出装置1の総有効検出長Ltotalは、磁気センサユニット100の有効検出長A(80mm)に磁石間距離L1(35mm)の4倍を加えた、220mmとなる。このように、磁石の数を増やすだけで、位置検出装置1の総有効検出長を大幅に長くすることができる。
なお、第1の磁石10Aに対する第2の磁石10Bから第5の磁石10Eの距離は既知であるため、予めマイコン40はその値をメモリに記憶しておくことにより、1番目磁石が特定され、その位置が算出されると、位置検出装置1は位置検出値を速やかに得ることができる。この点については、他の実施形態についても同様である。
(第2の実施形態)
図14は、本発明の第2の実施形態に係る位置検出装置において、複数の磁石セットと各磁石の磁化方向の組み合わせを示す図である。図14において、ハッチングを施していない磁石の磁化方向は、座標軸で小さい方から大きい方に向かってN−Sに磁化されており、ハッチングを施した磁石の磁化方向は、座標軸で小さい方から大きい方に向かってS−Nに磁化されている。後述する図15においても同様である。
第1の実施形態では、磁石セットは5個の磁石を有する磁石セットS1を1セットのみ備えていたが、第2の実施形態では、磁石セットを複数、例えば、磁石セットS1、S2、S3の3つの磁石セットを備えている。本発明における磁石セットは、磁石間距離が等しい磁石の集合体であり、磁石セットS1は、第1の磁石10Aから第5の磁石10Eまでの5つの磁石から構成され、磁石セットS2は第5の磁石10Eから第9の磁石10Iまでの5つの磁石から構成され、磁石セットS3は、第9の磁石10Iから第13の磁石10Mまでの5つの磁石から構成される。なお、第5の磁石10Eは、磁石セットS1と磁石セットS2の両者に属し、同様に、第9の磁石10Iは、磁石セットS2と磁石セットS3の両者に属する。このように、隣接する磁石との磁石間距離が異なる磁石は、2つの磁石セットに属することになる。
各磁石セットS1からS3に属する磁石の各磁石間距離は、磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/2よりも短い距離に設定されている。さらに、各磁石セットS1からS3に属する磁石の各磁石間距離は、各磁石セットS1からS3によって異なる値に設定されている。例えば、磁石セットS1に属する磁石の磁石間距離L1は、35mmに設定され、磁石セットS2に属する磁石の磁石間距離L2は、30mmに設定され、さらに、磁石セットS3に属する磁石の磁石間距離L3は、25mmに設定される。また、各磁石セットS1からS3にそれぞれ属する磁石の磁化方向の配列は、第1の実施形態と同様に、磁石セットの中の2個以上の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に位置する際に、最小座標に位置する1番目磁石と次の2番目磁石の2個の磁石の磁化方向の組み合わせが異なるように設定されている。より具体的には、各磁石セットS1からS3に属する磁石の磁化方向は、磁石番号の小さい磁石(第1の磁石10A)から見て、2進数表示で、例えば、“11001”に設定されている。
次に、第2の実施形態における、位置検出装置1の位置検出値の算出方法について説明する。第1の実施形態と同様に、第2の実施形態においても、磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に位置する磁石の数は、1個から3個のいずれかのケースが存在する。まず、1個の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に位置する場合は、第1の実施形態で説明したケース1あるいはケース9の場合と同じ方法で、1個の磁石を特定することができる。
次に、2個あるいは3個の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に位置する場合について、図12に示すフローに従って説明する。まず、ステップS11からステップS12に進み、最小座標に位置する1番目磁石の位置と磁化方向を求める。次に、ステップS13に進み、2番目に小さい座標に位置する2番目磁石の位置と磁化方向を求める。さらに、ステップS14に進み、1番目磁石の位置と2番目磁石の位置とから両者の磁石間距離を求める。次に、ステップS15に移り、磁石特定部43は、1番目磁石と2番目磁石との磁石間距離および1番目磁石と2番目磁石の磁化方向の組み合わせに基づいて、1番目磁石と2番目磁石を特定する。
具体的には、1番目磁石と2番目磁石との磁石間距離がL1(35mm)であった場合は、1番目磁石と2番目磁石は磁石セットS1に属する磁石であることが特定できる。また、1番目磁石と2番目磁石との磁石間距離がL2(30mm)であった場合は、1番目磁石と2番目磁石は磁石セットS2に属する磁石であることが特定できる。さらに、1番目磁石と2番目磁石との磁石間距離がL3(25mm)であった場合は、1番目磁石と2番目磁石は磁石セットS3に属する磁石であることが特定できる。そして、磁石特定部43は、1番目磁石と2番目磁石の磁化方向の組み合わせから、1番目磁石と2番目磁石が、特定した磁石セットに属するどの磁石であるのかを特定することができる。1番目磁石と2番目磁石の磁化方向の組み合わせから、1番目磁石と2番目磁石を特定する方法は、第1の実施形態の場合と同様であるので、その説明を省略する。
このように、第2の実施形態では、磁石間距離が異なる複数の磁石セットを備えており、磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に位置する2個の磁石の磁石間距離に基づいて、2個の磁石が複数の磁石セットの中のどの磁石セットに属するかを特定するとともに、2個の磁石の磁化方向の組み合わせから、2個の磁石が特定した磁石セットの中のどの磁石であるのかを特定している。第2の実施形態では、13個の磁石を備えているが、位置検出装置1の総有効検出長Ltotalは、第1の磁石10Aが磁気センサMS2に対向している位置から、第13の磁石10Mが磁気センサMS10に対向している位置までの距離に等しく、A+4×L1+4×L2+4×L3となり、440mmとなる。また、第2の実施形態では、位置検出装置1は3セットの磁石セットS1からS2を備えているが、磁石セットの数は3セットに限らず、2セットあるいは4セット以上を備えていてもよい。そして、本実施形態においても、位置検出装置の電源投入時に、磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する磁石を特定することができるため、磁石の絶対的(アブソリュート)な位置検出が可能である。
(第3の実施形態)
図15は、本発明の第3の実施形態に係る位置検出装置において、複数の磁石セットと各磁石の磁化方向の組み合わせを示す図である。また、図16は、第3の実施形態に係る位置検出装置において、1つの磁石セットに属する磁石の磁化方向の組み合わせについて説明するための図であり、1番目磁石と2番目磁石と3番目磁石の磁化方向の配列の組み合わせと特定の磁石に関するテーブル202を示している。このテーブル202は、磁石配列データ43Aとして、マイコン40に記憶されている。第1、第2の実施形態では、磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に位置する2つの磁石によって、位置検出装置1の位置検出値を求めていたが、第3の実施形態では、磁気センサユニット100の有効検出長Aの範囲内に位置する3個の磁石によって、位置検出装置1の位置検出値を求めている。また、複数の磁石セットを備える点は、第2の実施形態と同様である。なお、第1の実施形態のように、磁石セットが1つの位置検出装置1として構成してもよい。
第3の実施形態に係る位置検出装置1は、磁石セットとして、磁石セットS1から磁石セットSmまでのm個の磁石セットを備えている。磁石セットS1から磁石セットSmは、各磁石セット内の磁石の磁石間距離は等しく構成されているが、この磁石間距離は各磁石セットについて異なる値に設定されている。磁石セットS1に属する磁石の磁石間距離をL1、磁石セットS2に属する磁石の磁石間距離をL2、磁石セットS3に属する磁石の磁石間距離をL3、以降順次、磁石セットSmに属する磁石の磁石間距離をLmとした場合、磁石間距離L1からLmは、磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/3よりも短い距離に設定されており、かつ、それぞれ異なる値になるように設定されている。例えば、磁石間距離は、L1>L2>L3・・・>Lmに設定されている。そして、3個の磁石の磁化方向を読み取る本実施形態では、各磁石セットS1からSmには、それぞれ10個の磁石を備えている。
磁石セットS1の場合、第1の磁石10Aから第10の磁石10Jまでの10個の磁石を備えており、各磁石の磁石間距離L1は、磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/3よりも短い距離に等しくなるように配置されている。そして、第1の磁石10Aから第10の磁石10Jの磁石は、その磁化方向の配列が、磁石番号の小さい第1の磁石10Aの方から見て、2進数で表すと、図16で示すように、例えば、“1110001011”となるように磁化されている。同様に、他の磁石セットS2からSmについても、それぞれ10個の磁石を備えており、各磁石は、その磁化方向の組み合わせが、磁石セットS1と同様に“1110001011”となるように磁化されている。
本実施形態では、最小座標に位置する1番目磁石と、次に位置する2番目磁石と、さらに次に位置する3番目磁石の3個の磁石の各磁石間距離と3個の磁石の磁化方向の組み合わせを利用して、1番目磁石がどの磁石であるのかを特定しており、その特定方法について説明する。
本実施形態では、磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する磁石の個数が、1個の場合、2個の場合、3個以上の場合の3つの場合が存在するので、各場合について説明する。
(磁石が1個の場合)
検出した磁石が1個の場合は、この磁石は、最右端側の磁石(第1の磁石10A)または最左端側の磁石(第1の磁石10Aとは反対側の端にある磁石、以下同様。)のいずれかの場合である。そして、検出した1個の磁石が、有効検出長Aの1/3以下の位置で検出された場合は、最右端の第1の磁石10Aが位置する場合であり、有効検出長Aの2/3以上の位置で検出された場合は、磁石セットSmの最左端の磁石であることが特定できる。
(磁石が2個の場合)
検出した磁石が2個の場合は、これらの2個の磁石は、最右端側から2個の磁石、あるいは、最左端側から2個の磁石の場合のいずれかである。このため、これらの2個の磁石の磁石間距離を求め、磁石間距離がL1の場合は、検出した2個の磁石は、磁石セットS1の第1の磁石10Aと第2の磁石10Bであり、1番目磁石が第2の磁石10Bであることが特定できる。また、磁石間距離がLmの場合は、磁石セットSmの最左端の磁石とこれに隣接する磁石であり、1番目磁石が最左端の磁石であることが特定できる。
他の方法としては、検出した磁石が2個の場合、有効検出長Aの1/3以下の位置で磁石が検出されない場合、すなわち、2個の磁石が有効検出長Aの1/3より大きい位置で検出された場合は、小さい座標側の磁石が最左端側の磁石であると特定することができる。また、有効検出長Aの2/3より大きい位置で磁石が検出されない場合、すなわち、2個の磁石が有効検出長Aの2/3以下の位置で検出された場合は、大きい座標側の磁石が最右端側の磁石(第1の磁石10A)であると特定することができる、
(磁石が3個以上の場合)
検出した磁石が3個以上の場合は、検出した各磁石の磁石間距離をまず算出し、これらの磁石間距離が等しいか否かどうかを判別する。第2の実施形態では、求まる磁石間距離は、1番目磁石と2番目磁石の1つであったが、本実施形態では、1番目磁石と2番目磁石の磁石間距離、および、2番目磁石と3番目磁石の磁石間距離の2つの磁石間距離が求まる。
(3個の磁石の磁石間距離が等しい場合)
3個の磁石の磁石間距離が等しい場合、その磁石間距離からどの磁石セットに属する磁石であるのかを特定し、さらに、3個の磁石の磁化方向の組み合わせから1番目磁石がどの磁石であるのかを特定する。例えば、磁石間距離がL1であり、1番目磁石から3番目磁石までの3個の磁石の磁化方向の組み合わせが、2進数表示で“100”の場合、1番目磁石と2番目磁石は磁石セットS1に属し、1番目磁石は第7の磁石10Gであることを特定することができる。
(3個の磁石の磁石間距離が異なる場合)
3個の磁石の磁石間距離が異なる場合、すなわち、1番目磁石と2番目磁石との磁石間距離が2番目磁石と3番目磁石との磁石間距離に等しくない場合は、2番目磁石が隣接する2つの磁石セットに属する場合となる。先述したように、本発明における磁石セットは、磁石間距離が等しい磁石の集合体であり、隣接する磁石との磁石間距離が異なる磁石は、2つの磁石セットに属することになる。例えば、1番目磁石と2番目磁石との磁石間距離がL2であり、2番目磁石と3番目磁石との磁石間距離がL1である場合、2番目磁石は、磁石セットS2と磁石セットS1の両者に属する第10の磁石10Jであること判別できる。このため、1番目磁石は、磁石セットS2の第11の磁石10Kであることを特定することができる。
以上、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する複数の磁石の磁石間距離と、これらの磁石の磁化方向の組み合わせから、検出した最小座標に位置する1番目磁石を特定することができる。各磁石の第1の磁石10Aに対する距離は既知であるため、1番目磁石が特定されれば、その位置から位置検出装置1の位置検出値を出力することができる。なお、本実施形態では、磁石の磁化方向として、2進数で表現した際に、10個の磁石について、“1110001011”となるように配列したが、1と0を入れ替えた“0001110100”、あるいは、前後を入れ替えた、“1101000111”、0010111000”の配列であってもよい。磁石の磁化方向の一般的な配列については後述する。また、磁石数は、3個の磁石の磁化方向の組み合わせが異なる限り、10個以下でも構わない。さらに、位置検出装置の位置検出値を算出するために、最小座標に位置する1番目磁石を基準にしているが、2番目磁石や最大座標に位置する3番目磁石を基準にしてもよい。
(第4の実施形態)
本実施形態は、4個以上の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する場合に、最小座標または最大座標に位置する磁石から4個の磁石によって、位置検出装置1の位置検出値を求めるものである。このため、各磁石セット内の磁石間距離Lが、磁気センサユニット100の有効検出長Aの1/4よりも短くなるように設定している。さらに、1つの磁石セットの磁石の個数を19個とし、各磁石の磁化方向の配列を2進数表示で、例えば、“1111000010011010111”としている。この配列によって、最小座標に位置する1番目磁石から4番目磁石までの4個の磁石の磁化方向の組み合わせは、全て異なるため、他の実施形態と同様に、1番目磁石を特定することができる。複数の磁石セットを設ける場合は、第3の実施形態と同様に構成できるため、その説明を省略する。
このように、本発明では、n個以上の磁石が磁気センサユニット100の有効検出長A内に位置する場合に、例えば最小座標に位置する磁石からn個の磁石によって、位置検出装置1の位置検出値を求めるものである。このため、nが2の場合は、2個の磁石で22(=4)通りの異なる磁化方向の組み合わせを得るために、磁石セットの磁石の個数は5(=4+1)個となる。また、nが3の場合は、3個の磁石で23(=8)通りの異なる磁化方向の組み合わせを得るために、磁石セットの磁石の個数は10(=8+2)個となる。さらに、nが4の場合は、4個の磁石で24(=16)通りの異なる磁化方向の組み合わせを得るために、磁石セットの磁石の個数は19(=16+3)個となる。すなわち、磁石セットに属する最大の磁石数は、2n+n−1個となる。
また、磁石セット内の磁石の磁化方向の配列は、2進数表示で、M系列(Maximum Length Sequence)等の非繰り返しパターンを使用したコードとなるような配列であれば、上記で示した配列以外の配列であってもよい。例えば、n個の磁石で位置検出値を求める場合、nビットの非繰り返しパターンとなる2nビットのコードを求め、この2nビットのコードの最上位ビットから(n−1)ビットを最下位ビットに付加して2n+n−1ビットのコードとなるような磁化方向の配列にすればよい。あるいは、nビットの非繰り返しパターンとなる2nビットのコードの最下位ビットから(n−1)ビットを最上位ビットに付加して2n+n−1ビットのコードとなるような磁化方向の配列にしてもよい。例えば、3ビットの非繰り返しパターンとなる23(=8)ビットのコードとして、“11000101”を用いる場合には、“1100010111”、あるいは、“0111000101”の磁化方向の配列となるように10個の磁石を並べればよい。ただし、磁石セットが複数ある場合は、磁石セット内の両端の磁石の極性が同じになるような配列にする必要がある。
(第5の実施形態)
以上の実施形態では、1つ飛ばしの2つの磁気センサMS毎に差分値を求めて仮想センサVLを生成しているため、仮想センサVLの数は磁気センサの数よりも2個少なく、また、磁気センサを10mmの等ピッチPで配置した場合、仮想センサVL間の間隔も磁気センサMSの間隔と同じ10mmである。そして、第1の実施形態において、直線補間をする場合、磁界値のゼロ点から±10mmの区間(磁気センサMSの間隔分)が直線であることが望ましいが、磁界値のゼロ点から離れると図4および図10の符号Cで示すように直線性が悪くなる。そのため、直線性の悪い値を用いて直線補間をすると誤差が発生する。
第5の実施形態は、例えば、第1の実施形態に比べて、計算が簡単な直線補間でもより高精度な磁石の位置検出を可能とするものである。このため、第5の実施形態では、第1の実施形態の磁気センサMSの検出値を1つ飛ばし毎に差を求める方式に加え、磁気センサMSの隣同士の検出値の差分値も求めている。すなわち、第1の実施形態で求めた(M−2)個の第1群の仮想センサVLに加え、隣接する2つの磁気センサの検出値の差分値を算出し、この差分値を磁界値として有する、隣接する2つの磁気センサの中間に位置する(M−1)個の第2群の仮想センサVLを用いている。本発明では、隣接する2つの磁気センサMSの中間に位置する複数の仮想センサを第2群の仮想センサと呼ぶ。
以下、例えば、図11Aに示すように磁気センサユニット100の有効検出長A内に第1の磁石10Aのみが位置するケース1の場合について、第1の磁石10Aの位置を検出する方法について説明する。
図17は、磁石が磁気センサに対向した際の、隣接する2つの磁気センサの各検出値の差分値の特性を説明するための図であり、図18は、磁気センサの位置と第1群と第2群を合わせた仮想センサの位置を示す図である。図17において、縦軸は磁界の大きさを表すマイコン40の内部値であり、横軸は基板BSに沿った位置を示している。
具体的には、「磁気センサMS2の検出値−磁気センサMS1の検出値」の差分値を求め、この差分値を、磁気センサMS1と磁気センサMS2の中間の−5mmの位置にある仮想センサVL1の磁界値とし、「磁気センサMS3の検出値−磁気センサMS1の検出値」の差分値を求め、この差分値を、磁気センサMS1と磁気センサMS3の中間に位置する0mmの位置にある仮想センサVL2の磁界値とし、「磁気センサMS3の検出値−磁気センサMS2の検出値」の差分値を求め、この差分値を、磁気センサMS2と磁気センサMS3の中間の5mmの位置する仮想センサVL3の磁界値とし、「磁気センサMS4の検出値−磁気センサMS2の検出値」の差分値を求め、この差分値を、磁気センサMS2と磁気センサMS4の中間の10mmに位置する仮想センサVL4の磁界値とし、順次、仮想センサVL19までの磁界値を算出している。
ここで、偶数番目の9個の仮想センサVL2、VL4、VL6・・・VL18は、第1の実施形態で求めた1つ飛ばしの2つの磁気センサMSから生成したものであり、第1群の仮想センサVLに相当する。第1群の仮想センサVLの特性は、それぞれ図5で示した特性曲線と同じ特性曲線を有する。また、奇数番目の10個の仮想センサVL1、VL3、VL5・・・VL19は、隣接する2つの磁気センサMSから生成したものであり、第2群の仮想センサVLに相当する。
図17に示す特性は、図3に示す磁気センサMS2の検出値と磁気センサMS3の検出値から求めたものであり、仮想センサVL3の特性を示している。仮想センサVL3は、磁気センサMS2と磁気センサMS3の中間の位置である5mmの位置にあり、その磁界値は5mmの位置でゼロとなり、ゼロ点を挟む前後の磁界値は直線的に変化している。同様に、第2群の仮想センサに属する仮想センサVL1の特性は、図17の仮想センサVL3の特性を基板BSのマイナス方向に10mmシフトさせた特性となり、仮想センサVL5の特性は、図17の仮想センサVL3の特性を基板BSのプラス方向に10mmシフトさせた特性となる。
これにより、第5の実施形態では、図4で示す特性と同様の特性を有する9個の偶数番目の第1群の仮想センサVLと、図17で示す特性と同様な特性を有する10個の奇数番目の第2群の仮想センサVLとが、図18で示すように5mm間隔のピッチP’で生成される。これは、5mm間隔で19個の磁気センサが並んでいることと同じであり、磁界値のゼロ点から±5mmの区間での直線的特性を利用することができ、直線補間でも高精度に第1の磁石10Aの位置検出が可能となる。さらに、有効検出長A’も18×ピッチP’から90mmとなる。第1の実施形態における有効検出長Aあるいは第5の実施形態における有効検出長A’から、磁気センサユニット100の有効検出長は、磁気センサMSの配列方向に沿って、両端に位置する仮想センサ間の距離に相当すると定義できる。
第5の実施形態において、直線補間によって第1の磁石10Aの位置を検出する方法は、第1の実施形態と同様である。
まず、磁気センサユニット100の複数の磁気センサMSの中から最大の検出値を出力する磁気センサMSを特定する。これにより大まかな磁石の位置を知ることができ、仮想センサVLの磁界値がゼロ点を跨いでないかを探す基準になる。次に、最大値を示す磁気センサMSに最も近接する仮想センサVLを特定し、特定した仮想センサVLの磁界値と、この特定した仮想センサVLの前後の仮想センサの磁界値とがゼロを跨いでいるか否かを判別する。
例えば、磁気センサMS5が最大値をとる場合は、磁気センサMS5に最も近接する仮想センサVLは仮想センサVL8となるため、仮想センサVL8の磁界値の極性と、この仮想センサVL8に隣接する仮想センサVL7および仮想センサVL9の磁界値の極性をそれぞれ比較する。そして、2つの仮想センサVLの磁界値の極性が逆になっていれば、この2つの仮想センサの間で磁界値はゼロを跨いでおり、この2つの仮想センサの間に第1の磁石10Aがあるということになる。
仮に、仮想センサVL7の磁界値がプラス、仮想センサVL8の磁界値がマイナス、仮想センサVL9の磁界値がマイナスの場合、仮想センサVL7の磁界値と仮想センサVL8の磁界値の極性が逆であるので、この間に第1の磁石10Aがあることが分かる。本実施形態では、仮想センサVL7の位置は、磁気センサMS2の位置を0とした場合、25mmの位置にあるため、第1の磁石10Aは、25mmから30mmの間にあることが分かる。そして、そして、第1の磁石10Aの位置を得るために、ゼロを跨ぐ2つの仮想センサVLの磁界値を直線補間し、磁界値がゼロとなる位置を第1の磁石10Aの位置として算出する。
直線補間の方法についても、第1の実施形態と同様である。図7を用いて説明したように、磁石の位置Xは、X=X0+Y0×(X1-X0)/(Y0-Y1)(式1)で求まる。例えば、X0=25、X1=30、Y0=100、Y1=−200の時、この式1に当てはめると、磁石の位置は、26.667となり、簡単に磁石の位置を求めることができる。
以上、第5の実施形態において、磁気センサユニット100の有効検出長A’内に第1の磁石10Aのみが位置するケース1の場合に、第1の磁石10Aの位置を検出する方法について説明したが、磁気センサユニット100の有効検出長A’内に第1の磁石10Aと磁化方向の異なる磁石が位置する場合に、この磁化方向の異なる磁石の位置を検出する方法も、磁気センサMSの検出値の特性が正負逆になるだけで、第1の磁石10Aの位置を検出する場合と同様である。このため、その説明を省略する。
本実施形態で追加した、第2群の仮想センサVLの特性も磁気センサMSの検出値の差を求めていることから、本実施形態は、第1の実施形態と同様に、地磁気等外部磁界の影響で磁界のオフセット成分が変化した場合や磁気センサの温度特性等により同様にオフセット成分が変化した場合でも、これらの影響を受けることなく高精度な位置検出が可能である。そして、本実施形態では、磁気センサを増やすことなく、第1の実施形態の有効検出長Aの80mmよりも長い有効検出長A’の90mmとすることができ、さらに、より高精度な位置検出が可能となる。第5の実施形態は、第1から第4の実施形態に適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。これらの実施形態では、複数の磁石の中から磁気センサユニット100に対向した磁石を判別するために、磁石の磁化方向の組み合わせを利用している。しかし、磁石の磁化方向の組み合わせ利用する代わりに、磁化の強さの違いを利用してもよい。例えば、同じ磁化方向に磁化された複数の磁石を用い、各磁石の磁化の強さを判別可能な2段階のいずれかに設定しておけばよい。そして、磁化の強い磁石を2進数で「1」とし、磁化の弱い方の磁石を2進数で「0」とした場合に、各実施形態で示した磁化方向の配列と同じ配列とすることによって、磁化の強さの組み合わせに基づいて、磁気センサユニットに対向する磁石を特定することが可能である。なお、この場合も、磁気センサMSは、磁石が最も近接した際に最大の検出値を出力するように磁石と磁気センサを配置しておく必要がある。また、磁石位置を求める際に、仮想センサVLの磁界値の直線補間を用いたが、曲線補間によって磁石位置を求めてもよい。さらに、磁石列あるいは磁気センサのいずれ側を可動側に配置してもよい。