特許文献1の手摺構造によれば、ハンドレール部材の姿勢を90度変更することにより、手摺面が上向きになる状態と、肘置き面が上向きになる状態とに切換えることができる。しかし、回動部は固定部で回動自在に支持されており、片方の可動栓が貫通穴と係合することで各姿勢を位置保持している。そのため、いたずら等によって可動栓がばねの付勢力に抗して押込み操作された場合に、ハンドレール部材の姿勢が急激に変わるおそれがあり、安全性に問題がある。また、位置調整手段は1個の可動栓が貫通穴と係合することで、ハンドレール部材の姿勢を固定保持するので、使用者がハンドレール部材にもたれた場合に、可動栓に大きな傾動モーメントが集中して作用する。そのため、ハンドレール部材ががたつきやすく、とくに肘置き面が上向きになる状態において、安定した状態で使用者を支えることが難しい。さらに、固定部は部屋の周囲壁に固定する必要があるので、例えば部屋の中央に臨むベッド脇に手摺を設けたいような場合に対応できない。
本発明の目的は、手摺態様または腕支持態様にした手摺本体をがたつきのない状態で確りと固定支持して使用時の安全性を向上でき、さらに手摺本体を任意の設置場所に設置して、使用者の利便性を向上できる手摺構造を提供することにある。
本発明の手摺構造は、板状の手摺本体2と、取付け対象1に固定されて手摺本体2を支持する複数の手摺ブラケット22とを備えている。図3に示すように手摺本体2は、半円状に湾曲形成されて使用者の手で握持されるグリップ面10と、面状に形成されて使用者の掌、前腕部などを支持する腕支持面11と、手摺ブラケット22で支持される装着面13とを備えている。図6に示すように手摺ブラケット22は、取付け対象1に固定されるブラケットベース23と、手摺本体2の装着面13に固定されてブラケットベース23に対して着脱されるステー24とを備えている。ブラケットベース23とステー24は連結構造を介して連結固定されている。連結構造は、ブラケットベース23に設けた第1連結体41と、ステー24に設けられて第1連結体41に対して係脱される第2連結体42と、ステー24をブラケットベース23に締結固定するステー締結体43とを備えている。第2連結体42と第1連結体41とが、手摺本体2のグリップ面10が上向きになる手摺態様(図3参照)と、手摺本体2の腕支持面11が上向きになる腕支持態様(図10参照)とに連結姿勢を切換えできるように構成されていることを特徴とする。
ブラケットベース23は図6に示すように、取付け対象1の支柱1Aの周面に接合される接合リング26および連結リング27と、これら両リング26・27を締結固定するリング締結体28とを備えている。第1連結体41は、断面が2等辺直角三角形状の凹部からなるソケット部44と、ソケット部44の開口縁に形成される固定接合座45と、ソケット部44の内面に設けた固定係合体46とを備えている。第2連結体42は、断面が2等辺直角三角形状の凸部からなるプラグ部49と、プラグ部49の基端周縁に形成される切換え接合座48と、プラグ部49の外面に互いに直交する状態で形成されて、固定係合体46に対して係脱する一対の切換え係合体51とを備えている。
プラグ部49の等辺部のそれぞれに雌ねじ体50が埋設固定されている(図1参照)。ステー締結体43は、ソケット部44の底壁から雌ねじ体50にねじ込まれて、プラグ部49がソケット部44に分離不能に締結固定されている。
プラグ部49の等辺部に連続する切換え接合座48に、等辺部と平行な一対の規制爪52が突設されている(図1参照)。ソケット部44の固定接合座45の上端に、前記規制爪52と係合する規制溝53が形成されている。プラグ部49をステー締結体43でソケット部44に締結固定した状態において、一方の規制爪52が規制溝53と係合している。
ステー24は、手摺本体2の装着面13に接合される締結座35と、締結座35の周囲を囲む周枠部36とで、開口面37を備えた中空枠体状に形成されている(図6参照)。締結座35は、開口面37の側からねじ込み操作される調整ねじ体58で、手摺本体2の装着面13に締結固定されている。開口面37は着脱可能なカバー39で塞がれている。
締結座35に調整ねじ体58に対して相対移動可能なねじ挿通溝56が左右横長に形成されている(図8参照)。
隣接する手摺本体2のそれぞれが、隣接する支柱1Aに固定した一対の手摺ブラケット22で支持されて、各手摺本体2の隣接端どうしが連結キャップ61と橋絡体62で連結されている(図13参照)。連結キャップ61は、手摺本体2の隣接端に外嵌するキャップ枠64と、手摺本体2の隣接端を隔てる隔壁63とを備えている。連結キャップ61と橋絡体62には、互いに係合して連結キャップ61と橋絡体62の相対移動を阻止する凹凸係合体67・68が設けられている。橋絡体62は、連結キャップ61の外面を左右に跨ぐ状態で、隣接する手摺本体2の装着面13に接合されて、連結ボルト69で装着面13に締結固定されている。
隣接する手摺本体2のそれぞれが、隣接する支柱1Aに固定した一対の手摺ブラケット22で支持されて、各手摺本体2の隣接端どうしが連結キャップ61とステー24で連結されている(図15参照)。連結キャップ61は、手摺本体2の隣接端に外嵌するキャップ枠64と、手摺本体2の隣接端を隔てる隔壁63を備えている。ステー24の締結座35に左右横長のねじ挿通溝56が形成されている。ねじ挿通溝56に挿通した連結ボルト69を装着面13にねじ込んで、隣接する手摺本体2がステー24で連結されている。
ブラケットベース23は、取付け対象1である支柱1Aの周面の前後に接合される一対の連結リング27と、これら両リング27を締結固定するリング締結体28とを備えている(図16参照)。支柱1Aの前側の連結リング27に設けた第1連結体41に、前側のステー24の第2連結体42が連結固定され、支柱1Aの後側の連結リング27に設けた第1連結体41に、後側のステー24の第2連結体42が連結固定されている。支柱1Aの前側の左右一対のステー24に前側の手摺本体2が固定され、支柱1Aの後側の左右一対のステー24に後側の手摺本体2が固定されている。
本発明の手摺構造は、板状の手摺本体2に固定されるステー24と、例えば支柱1Aに固定されるブラケットベース23で手摺ブラケット22を構成し、ステー24に設けた第2連結体42を、ブラケットベース23に設けた第1連結体41に係合装着して、手摺本体2をブラケットベース23で支持するようにした。また、第2連結体42の第1連結体41に対する連結姿勢を手摺態様と腕支持態様に切換えできるようにし、各態様におけるステー24をステー締結体43でブラケットベース23に固定できるようにした。
こうした手摺構造によれば、使用者の身体状況や好みに応じて手摺本体2の使用態様を手摺態様と腕支持態様に切換えて、使用者の利便性を向上することができる。また、各使用態様においては、第1連結体41と第2連結体42が互いに係合し、さらにステー24がステー締結体43で確りとブラケットベース23に締結固定されるので、使用時の手摺本体2がぐら付く余地がなく、常に安定した状態で使用者の歩行や起立動作、あるいは腰掛動作などを補助できる。従って、本発明の手摺構造によれば、手摺態様または腕支持態様にした手摺本体2をがたつきのない状態で確りと固定支持して使用時の安全性を向上できる。また、手摺本体2が隣接する支柱1Aで支持されている場合には、手摺本体2を部屋の中央のベッド脇や、ベッドと部屋の出入り口の間など、任意の位置に設置できるので、使用者の利便性を向上できる。
ブラケットベース23は接合リング26および連結リング27と、リング締結体28を備えるものとした。こうした手摺構造によれば、接合リング26および連結リング27を支柱1Aの周面に接合し、高さを調整した状態で、両リング26・27をリング締結体28で締結するだけで、ブラケットベース23を簡単に支柱1Aに固定できる。第1連結体41は2等辺直角三角形状のソケット部44と、45度傾く固定接合座45と、ソケット部44の内面に形成した一対の固定係合体46などで構成した。さらに、第2連結体42は、45度傾く切換え接合座48と、ソケット部44に内嵌係合する2等辺直角三角形状のプラグ部49と、先の固定係合体46に係脱する一対の切換え係合体51などで構成するようにした。こうした手摺構造によれば、プラグ部49とソケット部44、および切換え係合体51と固定係合体46がそれぞれ係合する状態で、ステー24を連結リング27に連結し、ステー締結体43用をねじ込むことにより固定接合座45と切換え接合座48とを密着させて、ステー24を連結リング27に強固に締結固定できる。従って、使用者が手摺本体2にもたれ掛かって、ステー24と連結リング27の連結部分に大きな傾動モーメントが作用するような場合でも、手摺本体2がぐら付くのを確実に防止でき、従来の手摺構造に比べて、さらに安定した状態で使用者の歩行や起立動作、あるいは腰掛動作などを補助できる。また、ステー24の連結リング27に対する組付け姿勢を90度変更するだけで、手摺本体2を手摺態様と腕支持態様に切換えることができるので、態様変更に要する手間を省くことができる。
プラグ部49の等辺部のそれぞれに雌ねじ体50を埋設固定し、ステー締結体43をソケット部44の底壁から雌ねじ体50にねじ込んで、プラグ部49をソケット部44に分離不能に締結固定するようにした。こうした手摺構造によれば、手摺本体2が手摺態様で支持される場合と、腕支持態様で支持される場合の、いずれの場合でもステー締結体43を共通して使用できるので、プラグ部49とソケット部44の締結構造を簡素化して、手摺構造の製造コストを削減できる。因みに、雌ねじ体50がプラグ部49の等辺部ではない個所に設ける場合には、例えば切換え係合体51の形成個所を避ける必要があるなどの制約を受けるため、連結構造が大形化するのを避けられない。
プラグ部49をステー締結体43でソケット部44に締結固定した状態において、切換え接合座48に設けた一方の規制爪52を固定接合座45の上端の規制溝53と係合させるようにした。こうした手摺構造によれば、一方の規制爪52が規制溝53と係合して、ステー24に作用する傾動モーメントをステー締結体43と協同して受止めるので、ステー24と連結リング27の連結強度をさらに強化できる。
ステー24は、締結座35と周枠部36とで開口面37を備えた中空枠体状に形成し、開口面37を着脱可能なカバー39で塞ぐようにした。こうした手摺構造によれば、カバー39を取外すことにより、締結座35を開口面37の側からねじ込み操作される調整ねじ体58で手摺本体2に簡単に締結固定できるので、ステー24の手摺本体2に対する組付け作業を迅速にしかも簡便に行える。また、手摺本体2を使用する場合には、カバー39をステー24に装着して、ステー24の開口面37をカバー39で塞ぐことにより、調整ボルト58の操作頭部が視認されるのを解消できるので、とくに手摺本体2が手摺態様で支持されている場合のステー25の外観をすっきりさせることができる。また、誤って使用者の手や腕がステー25に接触することがあったとしても、開口面37はカバー39で塞がれているので、手や指が周枠部36の開口縁に引っ掛かるのを防止して、使用時の安全性を向上できる。
調整ねじ体58に対して相対移動可能なねじ挿通溝56が締結座35に左右横長に形成されていると、隣接する支柱1A・1Aの支柱中心軸の間隔が目標寸法に対してばらついている場合でも、手摺本体2および調整ボルト58をねじ挿通溝56に沿って移動させて、先のばらつきを吸収することができる。従って、支柱1Aに対する手摺本体2の組付け作業を簡便に行うことができる。
隣接する手摺本体2の隣接端どうしを連結キャップ61と橋絡体62で連結するようにした。また、連結キャップ61と橋絡体62は、互いに相対移動を阻止する凹凸係合体67・68で係合連結し、連結キャップ61の外面を左右に跨ぐ橋絡体62を、連結ボルト69で手摺本体2の装着面13に締結固定するようにした。こうした手摺構造によれば、各手摺本体2が複数の支柱1Aで独立して支持されている場合に比べて、隣接する手摺本体2を一体化して手摺構造全体の構造強度を増強できるうえ、手摺構造の構造強度が増強される分だけ安全性を向上できる。また、隣接する手摺本体2の隣接端が、隣接距離が小さな2本の支柱1A・1で支持されるので、連結部分の連結強度を向上して、各手摺本体2・2を確りと支持できる。
隣接する手摺本体2の隣接端どうしを連結キャップ61とステー24で連結するようにした。詳しくは、ステー24の締結座35に形成した左右横長のねじ挿通溝56に挿通した連結ボルト69を装着面13にねじ込んで、隣接する手摺本体2をステー24で連結するようにした。こうした手摺構造によれば、例えば隣接する2個の手摺本体2を3個の支柱1Aで支持できるので、支柱1Aの使用個数が少ない分だけ手摺構造の全体コストを削減できる。とくに、多数個の手摺本体2を長い廊下の壁面に沿って配置するような場合には、最小限の支柱1Aで手摺本体2の一群を支持して、手摺構造の構築に要する全体コストを削減できる。
一対の連結リング27・27を支柱1Aの周面の前後に接合して、これら両リング27・27をリング締結体28で締結固定し、各リング27・27でステー24および手摺本体2を支持するようにした。こうした手摺構造によれば、支柱1Aの前後に手摺本体2を配置して、使用者の身体状況や体調状況などに応じて手摺本体2を使い分けることができるので、手摺構造の使い勝手を向上できる。また、前側の手摺本体2と後側の手摺本体2の支持態様を、手摺態様と腕支持態様に異ならせ、あるいは同じ支持態様であっても手摺本体2の支持高さを異ならせるなどにより、理学療法にマッチした、手摺を利用したリハビリテーションを多様に行える。
(実施例1) 図1から図10に本発明に係る手摺構造の実施例1を示す。本発明における前後、左右、上下とは、図2、図3に示す交差矢印と、交差矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。この実施例では、突っ張り固定型の左右一対の支柱1A(取付け対象1)に固定した手摺ブラケット22で、手摺本体2が支持されている場合について説明する。支柱1Aは、入子構造の上枠体3および下枠体4と、下枠体4から抜出した上枠体3を、下枠体4に対して上下動不能にロック固定するロック機構5とを備えている。上枠体3の上端には天井Rに接当する天井押上体6が設けられており、下枠体4の下端には床面Fに接当する接床体7が設けられている。上枠体3は、ステンレス製の丸パイプで形成されており、下枠体4は周面がプラスチック被覆材で覆われた高強度アルミニウム合金製の丸パイプで形成されている。ロック機構5のロックレバー5aを水平姿勢にして、直径が小さな上枠体3を直径が大きな下枠体4から引出し、天井押上体6を天井Rと正対させた状態で、ロックレバー5aを図2に示す垂直姿勢に回動させることにより、上枠体3をロック固定して、支柱1Aを天井Rと床面Fの間に突っ張り固定することができる。
図3において手摺本体2は、半円状に湾曲形成されて使用者の手で握持される上端のグリップ面10と、面状に形成されて使用者の掌や前腕部などを支持する平坦な腕支持面11と、グリップ面10と対向する端縁において半円状に湾曲形成される指掛け面12と、腕支持面11と対向する装着面13などで左右に長い板状に形成してある。装着面13の長手方向の両端寄りには、後述するステー24を締結するための4個の鬼目ナット(雌ねじ体)14と、後述するエンドキャップ16を締結するための4個の鬼目ナット(雌ねじ体)15が埋設固定してある。前者の鬼目ナット14の左右間隔は、後者の鬼目ナット15の左右間隔より小さい。
手摺本体2が左右の支柱1Aと直交し、しかも腕支持面11が垂直に支持された場合の手摺本体2の外形寸法は、隣接する支柱1Aの左右間隔が900mmであるとき、左右幅が1214mm、上下幅が164mm、グリップ面10の前後厚みが48mmである。指掛け面12の半径は、グリップ面10の半径より小さく設定されており、腕支持面11と装着面13の間の厚みは、指掛け面12の直径より小さく設定されている。手摺本体2の全体は集成材で形成されて、その両側端にエンドキャップ16が装着されている。
図4および図5に示すように、エンドキャップ16は、手摺本体2に外嵌するキャップ部17と、先の装着面13に臨むキャップ部17の周縁から連出されるキャップ締結座18を一体に備えたプラスチック成形品からなる。キャップ締結座18に挿通した1個のキャップ締結ボルト(キャップ締結体)19を先の鬼目ナット15にねじ込むことにより、エンドキャップ16を手摺本体2と一体化することができる。
板状の手摺本体2を隣接する支柱1Aに固定するために、各支柱1Aに手摺ブラケット22が装着されている。手摺ブラケット22は、各支柱1Aに装着されるブラケットベース23と、手摺本体2の装着面13に固定されるステー24とで構成されており、これら両者23・24の間に、ステー24をブラケットベース23と一体化するための連結構造が設けられている。ブラケットベース23は、下枠体4(支柱1A)の周面の前後に接合される接合リング26および連結リング27と、これら両リング26・27を締結固定するリングボルト(リング締結体)28とを備えている。
図6に示すように接合リング26は、断面が半円状のクランプ体からなり、その連結リング27との接合面の左右にリングボルト28用の締結ボス29が膨出形成されている。連結リング27は断面が半円状のクランプ体と、クランプ体の前面に設けた第1連結体41とを一体に備えている。クランプ体の接合リング26との接合面の左右には、リングボルト28用の締結ボス30が膨出形成され、締結ボス30の前側にインサートナット(ねじ体)31が埋設された雌ねじブロック32が設けられている(図8参照)。雌ねじブロック32の内面の上下には、弾性係合爪33が一体に設けられており、この弾性係合爪33を締結ボス30の側に設けた段部34に係合することにより、雌ねじブロック32を締結ボス30と一体化することができる。
ステー24は、手摺本体2の装着面13に接合される締結座35と、締結座35の周囲を囲む側面視が三角形の周枠部36とで、開口面37を備えた中空枠体状に形成されており、締結座35の下側に指掛け面12を支持する凹部38が形成されて、凹部38の後側に第2連結体42が設けてある。開口面37は着脱可能なカバー39で塞がれている。
先に述べた連結構造は連結リング27側の第1連結体41と、同第1連結体41に対して係脱されるステー24側の第2連結体42と、ステー24を連結リング27に締結固定するステーボルト(ステー締結体)43とを備えている。第1連結体41は、第2連結体42が内嵌係合される2等辺直角三角形状のソケット部44を備えており、ソケット部44の前開口縁に、垂直面に対して45度傾く固定接合座45が四角枠状に形成され、ソケット部44の内面の左右壁に一対のリブ状の固定係合体46が形成されている。また、ソケット部44の底壁にはステーボルト43用の挿通穴47が形成されている。
第2連結体42は、垂直面に対して45度傾く切換え接合座48と、ソケット部44に内嵌係合する2等辺直角三角形状のプラグ部49とを備えている。また、プラグ部49の各等辺部面の左右中央には、ステーボルト43用のインサートナット(雌ねじ体)50が埋設固定されており、プラグ部49の2等辺直角三角形状の左右壁には、先の固定係合体46に係脱する一対の切換え係合溝(切換え係合体)51が、等辺部から底辺部にわたって互いに直交する状態で凹み形成されている。先の切換え接合座48は第1連結体41の固定接合座45に対応して形成されている。
ステー24の締結座35が垂直面に沿う状態で、プラグ部49をソケット部44に内嵌しながら、切換え係合溝51を固定係合体46に係合させて、切換え接合座48を固定接合座45に密着させることにより、ステー24を連結リング27と一体化することができる。また、この状態でステーボルト43をソケット部44の下方からインサートナット50にねじ込むことにより、ステー24を連結リング27に分離不能に締結固定することができる。
ステー24と連結リング27の連結強度をさらに強化するために、プラグ部49の等辺部に隣接する接合座48に、等辺部と平行な一対の規制爪52を突設し、ソケット部44の固定接合座45の上端に、規制爪52と係合する規制溝53を形成している。また、固定接合座45の下端には規制爪52を収容する逃げ溝を形成している。プラグ部49をステーボルト43でソケット部44に締結固定した状態では、一方の規制爪52が規制溝53と係合して、ステー24に作用する傾動モーメントをステーボルト43と協同して受止めるので、ステー24と連結リング27の連結強度をさらに強化できる。
隣接する各支柱1A・1Aは、支柱中心軸の間隔が900mmになることを目標値として設置するが、実際には設置後の各支柱1A・1Aの中心軸の間隔は、目標値に対して大小にばらつくことのほうが多い。こうした場合に対応するために、ステー24を手摺本体2に対して左右調整可能に締結固定できるようにしている。詳しくは、図9に示すようにステー24の締結座35の内面に金属板製の補強板54を配置して、締結座35の前面からねじ込んだ皿ビス55で固定し、締結座35と補強板54の上下に左右横長のねじ挿通溝56・57を形成して、同溝56・57に挿通した調整ボルト(調整ねじ体)58を、手摺本体2の鬼目ナット14にねじ込み固定している。このようにねじ挿通溝56・57が締結座35と補強板54に左右横長に形成されていると、隣接する支柱1A・1Aの支柱中心軸の間隔が目標寸法に対してばらついている場合でも、手摺本体2および調整ボルト58をねじ挿通溝56・57に沿って移動させて、先のばらつきを吸収することができる。従って、支柱1Aに対する手摺本体2の組付け作業を簡便に行える。この実施例では、各支柱1A・1Aの支柱中心軸の間隔のばらつきが850〜950mmの範囲内であれば、間隔のばらつきをねじ挿通溝56・57で吸収できるようにした。なお、キャップ締結ボルト19、リングボルト28、ステーボルト43、調整ボルト58は、ねじ部の長さは異なるものの、いずれも呼び径が同じ(M6)六角穴付きボルトであるので、1種の六角棒レンチで全てのボルトを締緩操作することができる。
次に、手摺本体2の支柱1Aに対する組付け手順を、グリップ面10が上向きになる手摺態様で手摺本体2を使用する場合について説明する。一対の支柱1A・1Aは天井Rと床面Fの間に予め突っ張り固定されており、手摺本体2の両端にはエンドキャップ16が装着されている。まず、ブラケットベース23の接合リング26と連結リング27を各支柱1Aの下枠体4の周面にあてがって、リングボルト28を雌ねじブロック32のインサートナット31にねじ込んで、ブラケットベース23を下枠体4に仮装着する。この状態で、ブラケットベース23の床面からの高さを使用者に適合した高さに調整し、さらに連結リング27のソケット部44が下枠体4の真正面を指向するように、ブラケットベース23の向きを調整して、接合リング26と連結リング27をリングボルト28で締結固定する。次にカバー39を取外した状態のステー24を手摺本体2の装着面13に接合して、調整ボルト58を開口面37の側からねじ挿通溝56・57に挿通し、鬼目ナット14にねじ込み操作してステー24と手摺本体2を仮組みする。このとき、カバー39を取外すことにより、締結座35を開口面37の側からねじ込み操作される調整ねじ体58で手摺本体2に簡単に締結固定できるので、ステー24の手摺本体2に対する組付け作業を迅速にしかも簡便に行うことができる。
手摺本体2に仮組みしたステー24を、各支柱1Aに固定したブラケットベース23の連結リング27に対して上方から組付けて、第1連結体41と第2連結体42を連結する。詳しくは、切換え係合溝51が固定係合体46と係合する状態でプラグ部49を押下げてソケット部44に係合し、切換え接合座48を固定接合座45に接合する。この状態で、手摺本体2を左右にスライド操作して、各支柱1Aと手摺本体2の左右位置を調整し、調整ボルト58をねじ込んで手摺本体2を支柱1Aに対して固定する。さらにステーボルト43を連結リング27の下面側からインサートナット50にねじ込んで、ステー24を連結リング27に固定し、カバー39をステー24に装着して開口面37を塞ぐ。
以上により、手摺態様にした手摺本体2を一対の支柱1Aで支持できる。使用者は、腰部あるいは胴部を腕支持面11にあてがった状態でグリップ面10を掴みながら安定した状態で歩行できる。使用時には、カバー39をステー24に装着して、ステー24の開口面37をカバー39で塞ぐので、調整ボルト58の操作頭部が視認されるのを解消できるので、とくに手摺本体2が手摺態様で支持されている場合のステー25の外観をすっきりさせることができる。また、誤って使用者の手や腕がステー25に接触することがあったとしても、開口面37はカバー39で塞がれているので、手や指が周枠部36の開口縁に引っ掛かるのを防止して、使用時の安全性を向上できる。
手摺本体2を腕支持面11が上向きになる腕支持態様で使用する場合には、ブラケットベース23の床面からの高さを使用者に適合した高さに調整したのち、図10に示すように、ブラケットベース23から分離した手摺本体2およびステー24を反転させ、第2連結体42の第1連結体41に対する連結姿勢を90度異ならせて、腕支持面11を上向きにし、グリップ面10を前向きにする。この状態で、ステー24を各支柱1Aに固定したブラケットベース23の連結リング27に対して上方から組付けて、先に説明したように第1連結体41と第2連結体42を連結する。さらに、ステーボルト43を連結リング27の下面側からインサートナット50にねじ込んで、ステー24を連結リング27に固定する。手摺本体2を腕支持態様にした状態では、使用者は掌や前腕部などを腕支持面11で支持して使用者の歩行を補助できる。また、ベッドの脇に手摺構造が設けてある場合には、ベッドに腰かけた状態から両手で指掛け面12を掴んで立ち上がり、あるいは両手を指掛け面12に掛けた状態で、起立した状態から腰掛けることができる。
上記のように構成した実施例1の手摺構造によれば、第2連結体42の第1連結体41に対する連結姿勢を90度異ならせて、手摺本体2をグリップ面10が上向きになる手摺態様と、腕支持面11が上向きになる腕支持態様に切換えることができる。こうした手摺構造によれば、使用者の身体状況や好みに応じて手摺本体2の使用態様を手摺態様と腕支持態様に切換えることで、使用者の利便性を向上することができる。また各姿勢における手摺本体2は、プラグ部49とソケット部44が係合した状態で、ステー24がステーボルト43で確りとブラケットベース23に締結固定されるので、使用時の手摺本体2がぐら付く余地がなく、常に安定した状態で使用者の歩行や起立動作、あるいは腰掛動作を補助できる。従って、実施例1の手摺構造によれば、手摺態様または腕支持態様にした手摺本体2をがたつきのない状態で確りと固定支持して使用時の安全性を向上でき、しかも手摺本体2を任意の設置場所に設置して、使用者の利便性を向上できる。また、ステーボルト43を取り外して、ステー24をブラケットベース23から分離しない限りは、手摺本体2の姿勢を変えることができないので、使用途中に手摺本体2の姿勢が変わるおそれがなく、ハンドレール部材を垂直姿勢と水平姿勢に位置保持できる、従来の手摺構造に比べて安全を格段に向上できる。
(実施例2) 図11から図13に本発明に係る手摺構造の実施例2を示す。実施例2では、複数の隣接する手摺本体2を接続して連続させる場合の手摺構造を示している。隣接する手摺本体2のそれぞれは、隣接する左右一対ずつの支柱1Aに固定した一対ずつの手摺ブラケット22で支持されて、各手摺本体2の隣接端どうしを連結キャップ61と橋絡体62で分離不能に連結している。
連結キャップ61は、左右中央に隣接する手摺本体2を隔てる隔壁63を有し、隔壁63の左右周縁に手摺本体2の端部に外嵌するキャップ枠64が形成されている。橋絡体62は、連結キャップ61の後面を左右に跨ぐ皿状のプラスチック成形品からなり、その左右両側の上下に、手摺本体2の装着面13に接合される合計4個の締結ボス65を有し、左右中央に連結キャップ61の後面に係合する係合枠66が一体に形成されている。連結キャップ61と橋絡体62を相対移動不能に仮組み保持するために、連結キャップ61の後面の左右に弾性係合爪(凹凸係合体)67を設け、橋絡体62の側に段部(凹凸係合体)68を設けている。弾性係合爪67を段部68に係合した状態で、各締結ボス65に挿通した4個の連結ボルト69を鬼目ナット15にねじ込むことにより、隣接する手摺本体2を橋絡体62で一体化して直線列状に強固に連結することができる。他の構造については、実施例1の手摺構造と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
上記のように、隣接する手摺本体2の隣接端どうしを連結キャップ61と橋絡体62で連結する手摺構造によれば、各手摺本体2が複数の支柱1Aで独立して支持してある場合に比べて、隣接する手摺本体2を一体化して手摺構造全体の構造強度を増強できるうえ、手摺構造の構造強度が増強される分だけ安全性を向上できる。また、隣接する手摺本体2の隣接端が、隣接距離が小さな2本の支柱1A・1Aで支持されるので、連結部分の連結強度を向上して、各手摺本体2・2を確りと支持できる。
(実施例3) 図14および図15は本発明に係る手摺構造の実施例3を示す。実施例3では、上記の橋絡体62の代わりに、手摺本体2に固定したステー24で隣接する手摺本体2を連結するようにした。詳しくは、ステー24のねじ挿通溝56・57に挿通した連結ボルト69を、手摺本体2の側端寄りの鬼目ナット15にねじ込んで、隣接する手摺本体2をステー24で連結するようにした。また、連結キャップ61の弾性係合爪67は、補強板54のねじ挿通溝57の後縁に係合させるようにした。実施例3の手摺構造によれば、例えば隣接する2個の手摺本体2を3個の支柱1Aで支持できるので、支柱1Aの使用個数が少ない分だけ手摺構造の全体コストを削減できる。とくに、多数個の手摺本体2を長い廊下の壁面に沿って配置するような場合には、最小限の支柱1Aで手摺本体2の一群を支持して、手摺構造の構築に要する全体コストを削減できる。また、隣接する支柱1Aの間隔は、実施例1および実施例2で説明した手摺構造の支柱1Aの隣接間隔より大きくすることができる。
(実施例4) 図16および図17は本発明に係る手摺構造の実施例4を示す。実施例4では、支柱1Aの前後に一対の連結リング27を固定して、前側の連結リング27に手摺態様の手摺本体2のステー24を連結し、後側の連結リング27に腕支持態様の手摺本体2のステー24を連結するようにした。前後の連結リング27は、後側の連結リング27の締結ボス30に挿通したリングボルト28を、前側の連結リング27の雌ねじブロック32にねじ込むことにより、前後の連結リング27を支柱1Aに固定できる。後側の連結リング27の締結ボス30の後開口は、雌ねじブロック32と同じ構造でインサートナットが省略されたキャップ72で塞がれている。キャップ72には雌ねじブロック32と同じ弾性係合爪73が形成されている。
こうした手摺構造によれば、支柱1Aの前後に手摺本体2を配置して、使用者の身体状況や体調状況などに応じて手摺本体2を使い分けることができるので、手摺構造の使い勝手を向上できる。また、前側の手摺本体2と後側の手摺本体2の支持態様を、手摺態様と腕支持態様に異ならせ、あるいは同じ支持態様であっても手摺本体2の支持高さを異ならせるなどにより、理学療法にマッチした、手摺を利用したリハビリテーションを多様に行うことができる。
(実施例5) 図18は本発明に係る手摺構造の実施例5を示す。実施例5では、手摺本体2およびステー24を、壁面1B(取付け対象1)に固定した連結リング27で支持するようにした。そのために、連結リング27の左右に壁用締結座75を設け、壁用締結座75に挿通したビス76を壁面1Bにねじ込んで、連結リング27を壁面1Bに固定するようにした。実施例5の手摺構造においても、実施例1の手摺構造と同様に、手摺本体2を実線で示す手摺態様と、想像線で示す腕支持態様に付換えることができる。
上記の実施例では、手摺本体2をステー24で水平に支持したが、必要があれば手摺本体2はステー24で斜めに支持することができる。その場合には、例えば連結リング27を、断面が半円状のクランプ体と第1連結体41で形成し、第1連結体41をクランプ体で左右傾動可能に支持するとよい。ステーボルト43は、ソケット部44の底壁からねじ込み操作するのが良いが、必要があればステー24にインサートナット50を水平に埋設して、ステー24の側外方からステーボルト43をねじ込み操作して、ステー24を連結リング27に締結固定することができる。腕支持面11は内凹み状の緩やかな湾曲面で形成してあってもよい。
本発明の手摺構造は、板状の手摺本体2と、取付け対象1に固定されて手摺本体2を支持する複数の手摺ブラケット22とを備えている。図3に示すように手摺本体2は、半円状に湾曲形成されて使用者の手で握持されるグリップ面10と、面状に形成されて使用者の掌、前腕部などを支持する腕支持面11と、手摺ブラケット22で支持される装着面13とを備えている。図6に示すように手摺ブラケット22は、取付け対象1に固定されるブラケットベース23と、手摺本体2の装着面13に固定されてブラケットベース23に対して着脱されるステー24とを備えている。ブラケットベース23とステー24は連結構造を介して連結固定されている。連結構造は、ブラケットベース23に設けた第1連結体41と、ステー24に設けられて第1連結体41に対して係脱される第2連結体42と、ステー24をブラケットベース23に締結固定するステー締結体43とを備えている。第2連結体42と第1連結体41とが、手摺本体2のグリップ面10が上向きになる手摺態様(図3参照)と、手摺本体2の腕支持面11が上向きになる腕支持態様(図10参照)とに連結姿勢を切換えできるように構成されている。第1連結体41は、断面が2等辺直角三角形状の凹部からなるソケット部44と、ソケット部44の開口縁に形成される固定接合座45と、ソケット部44の内面に設けた固定係合体46とを備えている。第2連結体42は、断面が2等辺直角三角形状の凸部からなるプラグ部49と、プラグ部49の基端周縁に形成される切換え接合座48と、プラグ部49の外面に互いに直交する状態で形成されて、固定係合体46に対して係脱する一対の切換え係合体51とを備えている。