JP2020004717A - 有機el表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】画素シュリンクと発光輝度低下を抑制した、長期信頼性に優れた有機EL表示装置を提供する。【解決手段】基板1、平坦化層4、画素分割層8、第一電極5、熱活性化遅延蛍光性材料を含む発光層6、第二電極7で構成され、平坦化層および/または画素分割層が、感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜である有機EL表示装置であって、感光性樹脂組成物が(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、および(C)有機溶剤、を含む、有機EL表示装置。【選択図】図1

Description

本発明は、基板、平坦化層、画素分割層、第一電極、発光層および第二電極を有する有機EL表示装置に関する。
次世代フラットパネルディスプレイとして有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置は、有機化合物による電界発光を利用した自己発光型の表示装置であって、広視野角、高速応答、高コントラストの画像表示が可能で、さらに薄型化、軽量化可能といった特徴も有することから、近年盛んに研究開発が進められている。
発光機構においては、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが、両極に挟まれた発光層中で再結合する際に発光するものである。この有機EL表示装置は、薄型であること、低駆動電圧下で高輝度に発光すること、発光材料を選ぶことにより多色発光が可能であることが特徴である。
電子と正孔が再結合すると、励起子が形成される。この際、一重項励起子および三重項励起子が、一重項励起子:三重項励起子=25%:75%の割合で生成することが知られている。そのため、一重項励起子による発光を用いる蛍光型有機EL表示装置では、内部量子効率の理論限界が25%と考えられる。一方、三重項励起子による発光を用いるりん光型有機EL表示装置では、内部量子効率の理論限界が75%と考えられる。蛍光型有機EL表示装置では、この発光原理に基づく発光効率の低さが課題であった。
この課題を解決すべく、近年、遅延蛍光を利用した蛍光型有機EL表示装置が提案されている。中でも、TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence、熱活性化遅延蛍光)現象を利用した蛍光型有機EL表示装置が提案され、開発が進んでいる(例えば、非特許文献1〜2、特許文献1〜2参照)。このTADF現象は、一重項準位と三重項準位とのエネルギー差(ΔST)の小さな材料を用いた場合に、三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が生じる現象である。このTADF現象を利用すると、電子と正孔の再結合により生成した励起子のうち、75%の三重項励起子を一重項励起子に変換して利用することができる。そのため、蛍光型有機EL表示装置においても、理論的に内部量子効率を100%まで高めることができる。
特開2014−045179号公報 特開2014−022666号公報
Nature Communications,492,234,2012. Nature Communications,5,4016,2014.
一般に、有機EL表示装置は、発光画素間を分割するために、第一電極と第二電極との間に画素分割層と呼ばれる絶縁層が形成され、第一電極の下には平坦化層が形成されている。上記文献に記載の有機EL表示装置では発光層の量子効率向上による輝度向上が可能ではあるが、画素の端部から発光輝度が低下する、または、点灯画素の一部が非点灯化する、画素シュリンクと呼ばれる現象についての課題があった。
本発明者らは高輝度を維持しながら画素シュリンクを抑制するという課題に対して、平坦化層または画素分割層を担う材料と熱活性化遅延蛍光性材料との組み合わせが重要であることを見出した。すなわち、高輝度でありながら輝度の低下と画素シュリンクを抑制した、信頼性に優れた有機EL表示装置を提供することを目的とする。
本発明は少なくとも基板、平坦化層、画素分割層、第一電極、熱活性化遅延蛍光性材料を含む発光層および第二電極で構成される有機EL表示装置であって、該平坦化層および/または画素分割層が感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜であり、該感光性樹脂組成物が(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤および(C)有機溶剤を含む有機EL表示装置である。
本発明によれば、高輝度かつ信頼性の高い有機EL表示装置を提供することができる。
一般的な有機EL表示装置の概略図である。 本発明の実施例による有機EL表示装置の概略図である。
本発明は少なくとも基板、平坦化層、画素分割層、第一電極、熱活性化遅延蛍光性材料を含む発光層および第二電極で構成される有機EL表示装置であって、平坦化層および/または画素分割層が、感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜であり、該感光性樹脂組成物が(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、および(C)有機溶剤を含む有機EL表示装置である。
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置は、マトリックス上に形成された複数の画素を有する有機EL表示装置である。有機EL表示装置の駆動方式としては、電極を列と行に分け、電極間に挟まれている画素だけを発光させるパッシブマトリックス型と、数個のTFTをそれぞれの画素に設けてスイッチングするアクティブマトリックス型に大別されるが、特に限定されない。
有機EL表示装置は、基板上に、平坦化層、第一電極、画素分割層、発光層を含む有機EL層、第二電極の順に形成する。
まず基板上には平坦化層を形成するが、前記基板上には必要に応じて配線やTFTが設けられる場合がある。特にアクティブマトリックス型用の基板では、TFTが形成された後の凹凸を覆い平坦化する目的で平坦化層を有効に用いることが好ましい。さらに平坦化層上に第一電極/有機EL層/第二電極を組み合わせた有機EL素子が設けられている。表示素子である有機EL素子と駆動用の配線とは、平坦化層に形成されたコンタクトホールを介して接続することが好ましい。また、表示装置の画素を区画する目的で、第一電極上に画素分割層を設けておくことが好ましい。
図1に基板1/平坦化層4上に設けられた有機EL素子の断面図を示す。基板1/平坦化層4上に第一電極5が形成され、その周縁を覆うように画素分割層8が形成される。さらにその上には有機EL層6と第二電極7が形成され、有機EL素子が完成する。この有機EL素子は、基板1の反対側から発光光を放出するトップエミッション型でもよいし、基板1側から光を取り出すボトムエミッション型でもよい。
発光画素と呼ばれる範囲は、対向配置された第一電極と第二電極とが交差し重なる部分、さらに、第一電極上に画素分割層が形成される場合にはそれにより規制される範囲である。発光画素の形状は、例えば矩形でも円形でもよく、画素分割層の形状によっても容易に変化させることができる。
また、赤、緑、青色領域にそれぞれ発光ピーク波長を有する有機EL素子が配列したもの、もしくは全面に白色の有機EL素子を作製して別途カラーフィルタと組み合わせて使用するようなものをカラーディスプレイと呼ぶ。通常、表示される赤色領域の光のピーク波長は560〜700nm、緑色領域は500〜560nm、青色領域は420〜500nmの範囲である。
<基板>
基板としては、金属やガラス、樹脂フィルムなど、表示装置の支持や後工程の搬送に好ましいものを適宜選択することができる。特に透光性を有する必要がある場合には、ガラスまたは樹脂フィルムが用いられる。
ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどを用いることができ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよい。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。
透光性の優れた樹脂材料としては、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミドおよびポリ(p−キシリレン)から選択される樹脂材料を含むものが好ましく、これらの樹脂材料を単独で含んでいてもよいし、複数種が組み合わされていてもよい。例えば、ポリイミド樹脂で形成する場合には、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸(一部がイミド化されたポリアミック酸を含む。)または、可溶性ポリイミドを含む溶液を支持基板に塗布し、焼成することで形成することもできる。
また、後述する有機EL素子は酸素や水分に弱いとされているため、基板の構成として、適宜ガスバリア層を設けてもよい。特に樹脂フィルムの場合には、無機の薄膜を積層して用いることにより、信頼性の高い表示装置を得ることができる。
TFTとしてはボトムゲート型やトップゲート型などの構造が一般的であり、例えばトップゲート型であれば、半導体層にドレイン側の電極、ソース側の電極が接続し、半導体層上方にゲート電極が設けられる。
TFTは、薄膜形成、パターニング、エッチング、洗浄の要素工程を数回繰り返すことで基板に形成される。TFTの形成方法は公知の方法を用いることができる。
TFTの半導体層としては、a−Si(非晶質シリコン)、p−Si(多結晶シリコン)、マイクロクリスタルシリコン、In−Ga−Zn−Oなどに代表される酸化物などがあるが、一般的にa−SiTFT、p−SiTFTの2種類が用いられる。a−SiTFTは、電子の動き易さを示す指標である移動度が低い半面、比較的製造プロセスが短く、大型基板にも製造できるため、小型〜大型ディスプレイまで幅広く用いることができる。一方、p−SiTFTは、移動度が高く、ガラス基板上にドライバー回路などを形成できる。製造工程はa−Siより長く、大型基板では製造の難易度が高いため、中小型のディスプレイに主に用いることが好ましい。
TFTを構造面から大別すると、ボトムゲート型とトップゲート型に分類できる。a−SiTFTでボトムゲート型、p−SiTFTではトップゲート型とすることが好ましい。
例えばボトムゲート型ではゲート電極を最下層に配置し、その上層に半導体層/絶縁膜があり、さらに上層にソース電極、ドレイン電極が形成される。ゲート電極とソース電極およびドレイン電極を直線で結ぶと逆三角形になり、「逆スタガ構造」とも呼ばれる構造でもよい。
プロセス工程としては、「ゲート電極形成工程」、「ゲート絶縁膜形成工程」、「Si膜形成工程」、「ソース、ドレイン電極形成工程」など公知の方法で形成することができる。
特にp−SiTFTにおけるp−Siは、一般的にa−Siをスタート膜としてレーザ光を照射し、瞬間的に溶融、結晶化を行うことで形成できる。また、a−SiTFTの製造工程では使用しない、リンやボロンをSi中に注入するドーピングという工程があり、Si膜への不純物ドーピングによりTFT特性の閾値制御をしてもよい。
<平坦化層>
平坦化層は、大判基板に薄い膜を均一に形成することができるスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などのウェットコーティング法で塗布することができる。材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、シロキサン樹脂、およびこれら樹脂の前駆体などが挙げられ、膜厚は凹凸を覆うのに十分であれば特に限定されない。遮光性や反射防止の観点から着色が必要になった場合には、適宜着色材料を含有することが好ましい。
本発明の有機EL装置の平坦化層および/または画素分割層は塗布性、加工性、信頼性などの面から、後述する感光性樹脂組成物を硬化させた膜である必要がある。
<第一電極>
ボトムエミッション型の場合には光透過性の電極、トップエミッション型の場合には光反射性の電極である必要がある。
ボトムエミッション型であれば、例えば、透明な酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性ポリマなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。
トップエミッション型であれば、ある膜厚以上で可視光の高い反射率を示し、かつ低い電気抵抗を示す材料が好ましい。さらに、後工程となるウェットエッチングや洗浄、保管や使用環境での耐候性の面からも選定が必要となる。AgまたはAgを主体として含むAg合金膜が、反射率が高いため有用である。Ag合金膜は、主成分をAgとしたAgPdCuやAgTiCuなどを用いることができる。また、AlまたはAlを主体として含むAl合金膜もトップエミッション用の第一電極として良好である。Niを0.1〜2原子%含有するAl−Ni合金膜は、純Al並みの高い反射率を有し、且つ、上記Al−Ni合金膜をITO膜やIZO膜などの酸化物導電膜と直接接続させても低い接触抵抗を実現できるため好ましい。その他には、モリブデン(Mo)やクロム(Cr)などの反射性金属膜も用いることができる。
電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITOであれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、低抵抗品を使用することが特に望ましい。電極の厚みは透過率や抵抗値などの特性に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常100〜300nmの間で用いることができる。
第一電極の形成方法は公知の方法を用いることができる。例えば、スパッタリングなどの真空成膜法で成膜し、フォトレジストを利用してパターニングすることにより形成することができる。
<画素分割層>
表示装置として発光画素を区画、すなわち分割する目的で、第一電極上に設けておくことが必要である。第一電極上にパターニングすることで第一電極の露出部分が限定され、開口部のみが有機EL素子として機能するようになる。また、画素分割層が第一電極の周縁を覆うことにより、第一電極の縁で発生する短絡や第二電極の断線を防止することにもつながり表示装置の信頼性を向上させることができる。
平坦化層同様、大判基板に薄い膜を均一に形成することができるスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などのウェットコーティング法で塗布されるのが一般的である。材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、シロキサン樹脂、およびこれら樹脂の前駆体などが挙げられる。遮光性や反射防止の観点から着色が必要になった場合には、適宜着色材料を含有することが好ましい。
膜厚は第一電極の凹凸を覆うのに十分であれば特に限定されないが、第一電極の膜厚の10倍以上とすることが好ましい。また、後工程において第二電極上を覆う構造物も支え、表示装置の強度にも影響するため、適宜階段状に作製するなどの設計も有効である。
また、画素分割層はパターニング加工が必須であり、除去部の残渣は短絡や黒点などの欠陥に直結する。さらに、画素分割層の縁の形状によっては第二電極の断線の原因となるため、なだらかな順テーパー形状であることなどの加工性も求められる。本発明の有機EL装置の平坦化層および/または画素分割層は塗布性、加工性、信頼性などの面から、後述する感光性樹脂組成物を硬化させた膜である必要がある。
<有機EL層>
本発明における有機EL素子に含まれる有機EL層の構成は特に限定されず、例えば、(1)正孔輸送層/発光層、(2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層、(3)発光層/電子輸送層のいずれであってもよいが、発光層には熱活性遅延蛍光性材料が含まれることが必要である。
各層は、公知の方法で形成することができる。例えば、マスク蒸着法やインクジェット法によって形成することができる。代表的なマスク蒸着法とは、蒸着マスクを用いて有機化合物を蒸着してパターニングする方法で、所望のパターンを開口部とした蒸着マスクを基板の蒸着源側に配置して蒸着を行う方法が挙げられる。高精度の蒸着パターンを得るためには、平坦性の高い蒸着マスクを基板に密着させることが重要であり、一般的に、蒸着マスクに張力をかける技術や、基板背面に配置した磁石によって蒸着マスクを基板に密着させる技術などが用いることができる。蒸着マスクの製造方法としては、エッチング法や機械的研磨、サンドブラスト法、焼結法、レーザー加工法、感光性樹脂の利用などが挙げられるが、微細なパターンが必要な場合は、加工精度に優れるエッチング法や電鋳法を用いることが好ましい。
各層の厚みは、各層材料の抵抗値やEL発光の取り出し効率への影響を考慮して一般的に1〜200nmの間から選ばれる。
<発光層>
発光層では、注入された電子と正孔とが再結合し発光する。この発光層を構成する材料を選ぶことにより、様々な多色発光が可能であることが有機EL表示装置大きな特徴である。
本発明においては、高い発光効率を得る目的から発光層に熱活性化遅延蛍光性材料を含むことが必要である。
有機分子の励起状態には、一重項励起状態と三重項励起状態の2つのスピン多重度の異なる状態が存在する。電子とホールの再結合による励起子生成過程では、スピン統計則に従って、一重項励起子が25%の確率で生成され、三重項励起子が75%の確率で生成される。三重項経由で発光が生じる場合には一般に寿命の長い発光が生じることから遅延蛍光と呼ばれ、代表的なTADF現象は、励起三重項状態から励起一重項状態への逆エネルギー移動を熱活性化によって生じさせ、蛍光発光に至る現象を指す。
また本発明者らは、基板や絶縁層などの周辺部材に含まれる不純物が発光層中に拡散し、発光特性に影響することを見出した。具体的には、発光材料である有機分子中の電子受容性部位が金属元素をトラップし、逆エネルギー移動を阻害することや、電子供与性部位がハロゲン元素と作用し、電子とホールの再結合による励起子生成の効率が低下することである。これらの現象はそれぞれ単独でも起こり得るが、電子受容性部位と電子供与性部位の両方を持つ遅延蛍光性の化合物では影響がより大きく発現する。よって遅延蛍光性の化合物を発光材料として用いる場合には、発光層中に金属元素やハロゲン元素を含まないことのみならず、周辺部材においてもこれら不純物を低減させておくことが重要となる。
熱活性化遅延蛍光性の化合物としては、先行技術文献に示したような公知のものを用いることができるが、好適な例として、一般式(2)で表される化合物が挙げられる。上記一般式(2)で表される化合物を含有することで、さらに高輝度化することができる。
は電子供与性部位であり、Aは電子受容性部位である。Lは連結基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよく、単結合またはフェニレン基を表す。mおよびnは、それぞれ、1以上10以下の自然数である。mが2以上の場合、複数あるAおよびLはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。nが2以上の場合、複数あるAはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、耐熱性や製膜性の観点から、mおよびnはそれぞれ6以下であることがより好ましく、4以下であることが特に好ましい。
である電子供与性部位とは、隣接部位に対して相対的に電子豊富な部位を示す。これは、一般に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子などの非共有電子対を有する部位を示す。電子供与性部位の具体例としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン、ピロール骨格、エーテル、フラン骨格、チオール、チオフェン骨格、シラン、シロール骨格、シロキサンなどの構造を含む部位が挙げられる。
としては、電子供与性の窒素原子を含む基であることが好ましく、3級アミンを含む基や電子供与性窒素を含むヘテロアリール基が好ましい。中でも、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基で置換された3級アミンを含む基や、カルバゾール骨格を含むヘテロアリール基が、より好ましい。
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。
以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
は、下記一般式(3)または(4)で表される基から選ばれることが好ましく、一般式(3)で表される基であることがより好ましい。
は、単結合、CR2122、NR23、OまたはSから選ばれる。中でも好ましくは、単結合、CR2122またはOであり、より好ましくは単結合またはOであり、特に好ましくは単結合である。カルバゾール骨格や環状3級アミン骨格を形成することで、電子供与性窒素の電子供与性が増大し、分子内での電荷移動が促進されるため、好ましい。
12〜R23は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、−P(=O)R1011、ならびに隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。R10およびR11は、アリール基またはヘテロアリール基である。ただし、R12〜R23の少なくとも1つの位置で、Lと結合する。
12〜R23の少なくとも1つの位置でLと結合するとは、各Rの根元にあたる炭素原子または窒素原子とLとが直接連結することをいう。
12〜R23としては、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、フェニル基、ナフタレニル基、カルバゾリル基またはジベンゾフラニル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
環aは、ベンゼン環またはナフタレン環である。環aを介して縮合した縮合環は比較的広いπ共役平面を持つため、優れたキャリア輸送性を示す。一方で、π共役平面が広すぎると過度な分子間相互作用の要因となり、薄膜安定性が低下する。キャリア輸送性と薄膜安定性のバランスの観点から、より好ましくはベンゼン環である。
は、CR3334、NR35、OまたはSから選ばれる。中でも、好ましくは、YはCR3334、NR35またはOであり、より好ましくは、NR35またはOであり、特に好ましくはNR35である。
24〜R35は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、−P(=O)R1011、ならびに隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。R10およびR11は、アリール基またはヘテロアリール基である。ただし、R24〜R35のいずれか少なくとも1つは、Lとの結合に用いられる。
24〜R35としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフタレニル基、カルバゾリル基またはジベンゾフラニル基が好ましく、フェニル基またはビフェニル基がより好ましい。
一般式(4)で表される縮環構造は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。ただし、下記の構造は基本骨格を示すものであり、置換されてもよい。
である電子受容性部位とは、隣接部位に対して相対的に電子欠乏性の部位を示す。これは、一般に、ヘテロ原子が隣接原子との間に多重結合を形成している部位が挙げられる。電子受容性部位の具体例としては、例えば、電子受容性窒素を含む部位が挙げられる。また、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、ニトロ基、−P(=O)R1011などの、電子求引性の置換基が挙げられる。また、それらの置換基により置換された部位が挙げられる。
としては、電子受容性窒素を含むヘテロアリール基が好ましく、中でも、下記一般式(5)で表される基であることがより好ましい。
〜Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、CR36またはNから選ばれる。Y〜Yのうち少なくとも1つはNであり、かつ、Y〜Yの全てがNであることはない。Nの数が多すぎると耐熱性が低下するため、Nの数は3つ以下であることが好ましい。R36は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、ならびに隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環からなる群より選ばれる。ただし、Y〜Yのいずれか少なくとも1つの位置で、Lと結合する。
36のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基およびナフタレニル基が好ましく、フェニル基およびビフェニル基がより好ましい。R36のヘテロアリール基としては、電子受容性窒素を含むヘテロアリール基が好ましく、中でも、ピリジル基およびキノリニル基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。
〜Yのいずれか少なくとも1つの位置でLと結合するとは、例えばYの位置でLと結合する場合を例に挙げると、Yが炭素原子であり、その炭素原子とLとが直接結合することをいう。
は、下記一般式(6)または(7)で表される基から選ばれることが好ましく、一般式(6)で表される基であることがより好ましい。
およびY10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、CR40またはNから選ばれる。ただし、YおよびY10のうち少なくとも1つはNである。窒素原子同士が隣接しないことで、耐熱性が向上する。
37〜R40は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アリール基またはヘテロアリール基の中から選ばれる。ただし、R37〜R40のいずれか少なくとも1つの位置で、Lと結合する。
37〜R40のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基およびナフタレニル基が好ましく、フェニル基およびビフェニル基がより好ましい。R37〜R40のヘテロアリール基としては、電子受容性窒素を含むヘテロアリール基が好ましく、中でも、ピリジル基およびキノリニル基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。
37〜R40のいずれか少なくとも1つの位置でLと結合するとは、例えばR37の位置でLと結合する場合を例に挙げると、R37の根元にある炭素原子とLとが直接結合することをいう。
一般式(6)で表される基は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。ただし、下記の構造中のフェニル基は、ビフェニル基、ナフタレニル基、ピリジル基またはキノリニル基であってもよく、さらに置換されていてもよい。
41〜R46は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アリール基またはヘテロアリール基の中から選ばれる。ただし、R41またはR42のいずれか少なくとも1つの位置で、Lと結合する。
41〜R46のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基およびナフタレニル基が好ましく、フェニル基およびビフェニル基がより好ましい。R41〜R46のヘテロアリール基としては、電子受容性窒素を含むヘテロアリール基が好ましく、中でもピリジル基およびキノリニル基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。
が一般式(7)で表される基である場合、HOMOとLUMOのエネルギー差がより小さくなる。
が一般式(6)で表される基である場合、HOMOとLUMOのエネルギー差が適度な大きさになる。
一般式(2)で表される化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、耐熱性や製膜性の観点から、900以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましい。さらに好ましくは700以下であり、特に好ましくは650以下である。また、一般に分子量が大きいほどガラス転移温度は上昇する傾向にあり、ガラス転移温度が高くなると薄膜安定性が向上する。そのため、分子量は400以上であることが好ましく、450以上であることがより好ましい。さらに好ましくは、500以上である。
一般式(2)で表される化合物は、電子供与性部位と電子受容性部位が同一分子内に存在している。このような化合物は、一重項準位と三重項準位とのエネルギー差(ΔST)が小さくなりやすく、TADF性を示しやすい。ただし、電子供与性部位と電子受容性部位との組み合わせが適切でない場合、ΔSTは十分に小さくならず、高効率なTADF現象を示すことができない。
一般式(2)で表される化合物は、一般式(3)または(4)で示す特定の電子供与性部位と、一般式(5)で示す特定の電子受容性部位とを組み合わされてなることが好ましい。これにより、高効率なTADF現象を示すからである。
一般式(3)および(4)で示す電子供与性部位は、電子供与性窒素を有する。一方、一般式(5)で示す電子受容性部位は電子受容性窒素を有する。電子供与性窒素を有する部位と電子受容性窒素を有する部位の間では、効率的に電子分布の変化が生じる。また、一般式(3)および(4)で示す電子供与性部位は比較的広い共役系を有する。一方で、一般式(5)で示す特定の電子受容性部位の共役系は相対的に狭い。このため、一般式(3)および(4)で示す電子供与性部位から一般式(5)で示す特定の電子受容性部位への分子分布の偏りが生じやすく、一般式(2)で表される化合物はLUMO、およびHOMOの電子軌道が重ならず、局在化する。さらに、励起状態で形成される双極子が互いに相互作用し、交換相互作用エネルギーが小さくなりやすく、ΔSTが十分に小さくなり得る。
一般式(3)および(4)で示す部位は、電子供与性窒素を有するため、正孔輸送性を示す。一方、一般式(5)で示す部位は、電子受容性窒素を有するため、電子輸送性を示す。すなわち、一般式(2)で表される化合物は正孔輸送性部位と電子輸送性部位の両方を有するため、正孔も電子も輸送できるバイポーラーな特性を持つ。そのため、発光層において、再結合領域の局在化を抑制し、素子の長寿命化が可能となる。
一般式(2)で表される化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物の合成には、公知の方法を使用することができる。例えば、ある部位Pにアリール基やヘテロアリール基を導入する際は、部位Pのハロゲン化誘導体と、アリールやヘテロアリールのボロン酸あるいはボロン酸エステル化誘導体とのカップリング反応を用いて炭素−炭素結合を生成する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。同様に、ある部位Qにアミノ基やカルバゾリル基を導入する際にも、例えば、パラジウムなどの金属触媒下での、部位Pのハロゲン化誘導体と、アミンあるいはカルバゾール誘導体とのカップリング反応を用いて炭素−窒素結合を生成する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
次に、熱活性化遅延蛍光性材料以外の発光層に用いることができる材料について説明する。
一般的に発光層は、単一層、複数層のどちらでもよく、ホスト材料とドーパント材料との混合物で構成されていても、ホスト材料単独で構成されていても、いずれでもよい。すなわち、各発光層において、単一の材料で構成され発光してもよいし、ホスト材料もしくはドーパント材料のみが発光してもよいし、ホスト材料とドーパント材料がともに発光してもよい。電気エネルギーを効率よく利用し、高色純度の発光を得るという観点から、発光層は、ホスト材料とドーパント材料の混合物からなることが好ましい。ホスト材料とドーパント材料はそれぞれ2種以上の材料を含有してもよい。
発光材料に含有されるホスト材料は、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリナート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体などが使用できるが、特に限定されるものではない。
本発明においては熱活性化遅延蛍光性材料を用いて高効率な蛍光を得るという面からホスト材料に熱活性化遅延蛍光性材料を用いる方が好ましく、ドーパント材料によって色を選択することが好ましい。さらに2種類のホスト材料を混合することで高い発光効率が得られるため好ましい。よって一般式(2)で表される化合物は単独であっても、複数の化合物を組み合わせたものであってもよいが、ホスト材料として用いることが好ましい。さらに混合するホスト材料の一つとして用いることが高効率化の点でさらに好ましい。
一般式(2)で表される化合物を他のホスト材料と組み合わせると、発光層中の一般式(2)で表される化合物の含有率が低下するので、一般式(2)で表される化合物の三重項準位からドーパント材料の三重項準位へ、デクスター機構により直接的にエネルギー移動することを抑制できる。それにより、TADF現象を介するエネルギー移動の効率が向上することで、高い発光効率が期待できる。特に上記の一般式(2)で表される化合物と組み合わせるホスト材料としては、一般式(2)で表される化合物の一重項準位よりも高い三重項準位をもつ材料が好ましい。一般式(2)で表される化合物の一重項準位および三重項準位から、もう1つのホスト材料の三重項準位や一重項準位へのエネルギー移動を抑制することで、正孔と電子の再結合により生じた励起エネルギーを閉じ込めることができる。
このようなホスト材料としては、特に限定されないが、アントラセンやピレンなどの縮合芳香環誘導体、フルオレン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体などが挙げられる。中でも、4,4‘−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)や1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼンやカルバゾール多量体などのカルバゾール誘導体が、より高い三重項準位をもつため、好ましい。発光層中の一般式(2)で表される化合物の割合は、発光層全体の70vol%未満であることが好ましく、50vol%未満であることがより好ましい。
ドーパント材料は発光色の制御などの理由により公知のものから選択できるが、本発明においては熱活性化遅延蛍光性材料による一重項励起状態のエネルギーを利用する目的から蛍光ドーパントが好ましい。ドーパント材料には、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体(例えば2−(ベンゾチアゾール−2−イル)−9,10−ジフェニルアントラセンや5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンなど)、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどのヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベンなどのアミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−(2’−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1−gh]クマリンなどのクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などを用いることができる。
ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、発光層全体の20vol%以下で用いることが好ましく、さらに好ましくは10vol%以下である。ドーピング方法は、ホスト材料とドーピング材料とを共蒸着する方法、ホスト材料とドーピング材料とを予め混合してから同時に蒸着する方法などが挙げられる。
ドーパント材料は、ホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれでもよい。ドーパント材料は、積層されていても、分散されていても、いずれでもよい。
本発明の有機EL表示装置の発光層は、上記の熱活性化遅延蛍光性材料以外の蛍光発光材料を含有することが好ましい。熱活性化遅延蛍光性材料に加え、蛍光発光材料を含有することで内部量子効率と外部量子効率が向上し、高輝度を得ることができる。
ドーパント材料としては、青〜青緑色ドーパント材料としては、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデンなどの芳香族炭化水素化合物やその誘導体、緑〜黄色ドーパント材料としては、クマリン誘導体、フタルイミド誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体およびルブレンなどのナフタセン誘導体、さらに、橙〜赤色ドーパント材料としては、ビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸イミドなどのナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、アセチルアセトンやベンゾイルアセトンとフェナントロリンなどを配位子とするEu錯体などの希土類錯体、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランやその類縁体、などが挙げられる。本発明においてはこのような公知のものを用いることができるが、一般式(1)で表される化合物が好ましい。
ドーパント材料としては単独であっても複数の化合物を組み合わせたものであってもい。高色純度の発光を得るという観点からは、一般式(1)で表される化合物のみであることが好ましい。また、一般式(1)で表される化合物は、発光層中で分散されていることが、色純度の観点から好ましい。
発光層中の一般式(1)で表される化合物の割合は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、5vol%以下が好ましく、2vol%以下がより好ましく、1vol%以下がさらに好ましい。一般式(1)で表される化合物は非常に蛍光量子収率が大きく、一般式(2)から受け取った一重項励起エネルギーを効率的に蛍光として放出する。そのため、低濃度でも効率的な発光が可能である。
中でも、上述した熱活性化遅延蛍光性材料との込み合わせにより高輝度化できる観点から、一般式(1)で表されるドーパント材料が好ましい。
(Xは、C−RまたはNを表す。R〜Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、−P(=O)R1011、ならびに隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。R10およびR11は、アリール基またはヘテロアリール基である。)
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。以下に説明する化合物またはその部分構造においても同様である。
また、以下の説明において、例えば、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて全ての炭素数が6〜40である。炭素数を規定している他の置換基も、これと同様である。
また、上記の全ての基において、置換される場合における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、−P(=O)R1011が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミド等の炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基等の二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基等の二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
アルキニル基とは、例えば、エチニル基等の三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基等、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールチオエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールチオエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、ヘリセニル基等の芳香族炭化水素基を示す。
中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましい。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは6以上40以下、より好ましくは6以上30以下の範囲である。
〜Rが置換もしくは無置換のアリール基の場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
それぞれの置換基がさらにアリール基で置換される場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
ヘテロアリール基とは、例えば、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、カルボリニル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、ジヒドロインデノカルバゾリル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基等の、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示す。ただし、ナフチリジニル基とは、1,5−ナフチリジニル基、1,6−ナフチリジニル基、1,7−ナフチリジニル基、1,8−ナフチリジニル基、2,6−ナフチリジニル基、2,7−ナフチリジニル基のいずれかを示す。ヘテロアリール基は置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上40以下、より好ましくは2以上30以下の範囲である。
〜Rが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基がより好ましく、ピリジル基が特に好ましい。
それぞれの置換基がさらにヘテロアリール基で置換される場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基がより好ましく、ピリジル基が特に好ましい。
「電子受容性窒素を含む」という場合における電子受容性窒素とは、隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表す。電子受容性窒素を含む芳香族複素環は、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、チアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ナフチリジン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、アクリジン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、等が挙げられる。ただし、ナフチリジンとは、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、1,8−ナフチリジン、2,6−ナフチリジン、2,7−ナフチリジンのいずれかを示す。
「電子供与性窒素を含む」という場合における電子供与性窒素とは、隣接原子との間に単結合のみを形成している窒素原子を表す。電子供与性窒素を含む芳香族複素環は、例えばピロール環を有する芳香族複素環が挙げられる。ピロール環を有する芳香族複素環としては、ピロール環、インドール環、カルバゾール環などが挙げられる。
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。
カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換されてもよい。
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基等が挙げられる。アリール基、ヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基が好ましい。これら置換基はさらに置換されてもよい。アミノ基の置換基部分の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上50以下、より好ましくは6以上40以下、特に好ましくは6以上30以下の範囲である。
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基等のアルキルシリル基や、フェニルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基等のアリールシリル基を示す。ケイ素原子上の置換基はさらに置換されてもよい。シリル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上30以下の範囲である。
シロキサニル基とは、例えばトリメチルシロキサニル基等のエーテル結合を介したケイ素化合物基を示す。ケイ素原子上の置換基はさらに置換されてもよい。
ボリル基とは、置換もしくは無置換のボリル基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。中でも、アリール基、アリールエーテル基が好ましい。
ホスフィンオキシド基−P(=O)R1011としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環とは、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(1)のRとR)が互いに結合して、共役または非共役の環状骨格を形成することをいう。このような縮合環および脂肪族環の構成元素としては、炭素以外にも、窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素から選ばれる元素を含んでいてもよい。また、これらの縮合環および脂肪族環がさらに別の環と縮合してもよい。
一般式(1)で表される化合物は、高い蛍光量子収率を示し、ストークスシフトと発光スペクトルのピーク半値幅が小さいため、蛍光ドーパントとして好適に用いることができる。また、材料設計により蛍光スペクトルが400nm以上900nm以下の範囲で単一ピークを示すため、励起エネルギーの大部分を所望の波長の光として得ることができる。そのため、励起エネルギーの効率的な利用が可能であり、高い色純度も達成可能である。ここで、ある波長領域で単一ピークであるとは、その波長領域で、最も強度の強いピークに対して、その強度の5%以上の強度を持つピークがない状態を示す。以下の説明においても同様である。
一般式(1)で表される化合物は、例えば、特表平8−509471号公報や特開2000−208262号公報に記載の方法で合成することができる。すなわち、ピロメテン化合物と金属塩とを塩基共存下で反応することにより、目的とするピロメテン系金属錯体が得られる。
本発明の有機EL表示装置の発光層は一般式(2)で表される化合物および一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(2)で表される化合物から一般式(1)で表される化合物へのエネルギー移動の効率を高めることができ、結果として高い発光効率を達成することができる。
一般式(2)で表される化合物により変換された一重項励起エネルギーが一般式(1)で表される化合物へ移動する機構としては、フェルスター機構が挙げられる。フェルスター機構では、エネルギー供与体の発光スペクトルとエネルギー受容体の吸収スペクトルとの重なり積分が大きいほどフェルスター距離が大きくなり、エネルギー移動が起こりやすくなる。そのため、供与体である一般式(2)で表される化合物の蛍光スペクトルと、受容体である一般式(1)で表される化合物の吸収スペクトルとの重なりが大きいほど、一重項励起エネルギーの移動が効率的に起こる。
一般式(2)で表される化合物および一般式(1)で表される化合物について、下記数式(i−1)を満たす場合に、効率的なエネルギー移動が起こるため好ましい。
|λ1(abs)−λ2(FL)|≦50 (i−1)
λ1(abs)は、一般式(1)で表される化合物の波長400nm以上900nm以下における吸収スペクトルのうち、最も長波長側のピークのピーク波長(nm)を表す。λ2(FL)は、一般式(2)で表される化合物の波長400nm以上900nm以下における蛍光スペクトルのうち、最も長波長側のピークのピーク波長(nm)を表す。
ここで、ピークとはスペクトルの極大部分であり、ピーク波長とは極大値をとる際の波長を示す。「最も長波長側のピーク」という際には、ノイズなどの過度に小さなピークを除いた主要なピークで比較する。例えば、半値幅が10nm未満の小さなピークは除く。
数式(i−1)を満たす場合、一般式(2)で表される化合物の蛍光スペクトルと、一般式(1)で表される化合物の吸収スペクトルとの重なりが十分大きくなるので、一般式(2)で表される化合物から一般式(1)で表される化合物へのエネルギー移動が効率的に進行する。そのため、一般式(2)で表される化合物由来の発光が抑制され、一般式(1)で表される化合物由来の発光が主となり、発光層の発光スペクトルは単一ピークを示す。つまり、励起エネルギーを効率的に利用し、かつ、色純度の高い発光を同時に達成することが可能である。また、この場合、一般式(1)で表される化合物の特長である、半値幅の小さい、高色純度の発光特性を十分に生かすことができる。
さらに好ましくは、下記数式(i−2)を満たすことである。ただし、λ1(abs)、λ2(FL)は数式(i−1)と同様である。
|λ1(abs)−λ2(FL)|≦30 (i−2)
数式(i−2)を満たす場合、一般式(2)で表される化合物の蛍光スペクトルと、一般式(1)で表される化合物の吸収スペクトルとの重なりがさらに大きくなるので、一般式(2)で表される化合物から一般式(1)で表される化合物へのエネルギー移動が特に効率的に進行する。そのため、一般式(2)で表される化合物由来の発光が十分に抑制され、さらに効率的な励起エネルギーの利用と、より色純度高い発光の達成が可能である。
一般式(1)で表される化合物は蛍光量子収率が高いため、一般式(2)で表される化合物から移動してきた一重項励起エネルギーをスムーズに蛍光に変換することができる。これにより、一般式(2)で表される化合物に一重項励起エネルギーが残留することを抑制し、一般式(2)で表される化合物由来の発光を抑えることができる。また、一般式(2)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物と比べると、蛍光量子収率が必ずしも高くない。そのため、一般式(2)で表される化合物に一重項励起エネルギーが残留した場合、もしそこに一般式(2)で表される化合物しか存在しなければ、無放射失活などによるエネルギーのロスが生じる。しかし、一般式(2)で表される化合物と一般式(1)で表される化合物とを組み合わせることで、そのロスを抑制できる。
このように、一般式(1)で表される特定の化合物と一般式(2)で表される特定の化合物を好適に組み合わせることにより、波長400nm以上900nm以下の範囲で単一ピークの発光を達成することができる。その単一ピークの半値幅は、60nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
このように、本発明の好適な実施形態として、正孔と電子の再結合により生じた三重項励起エネルギーは、一般式(2)で表される遅延蛍光性の化合物により一重項励起エネルギーに変換される。その後、その一重項励起エネルギーが一般式(1)で表される化合物へ移動することで、発光する。
また、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置は、熱活性化遅延蛍光性材料を含む発光層以外にも発光層(以下、「他の発光層」と適宜いう)を有していてもよい。カラーディスプレイとして多色表示が必要な場合や、混色発光により所望の色を表示させる場合には有効な方法である。その場合、他の発光層には熱活性化遅延蛍光性材料を含まなくてもよく、一般的に用いられる発光材料を用いることができる。例えば、他の発光層にリン光発光材料が含まれていてもよい。リン光発光材料とは、室温でもリン光発光を示す材料である。ドーパントしてリン光発光材料を用いる場合は、特に限定されるものではなく、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、およびレニウム(Re)からなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体化合物であることが好ましい。中でも、室温でも高いリン光発光収率を有するという観点から、イリジウム、もしくは白金を有する有機金属錯体がより好ましい。
リン光発光性のドーパントと組み合わせて用いられるホストとしては、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ピリジン、ピリミジン、トリアジン骨格を有する含窒素芳香族化合物誘導体、ポリアリールベンゼン誘導体、スピロフルオレン誘導体、トルキセン誘導体、トリフェニレン誘導体といった芳香族炭化水素化合物誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体といったカルコゲン元素を含有する化合物、ベリリウムキノリノール錯体といった有機金属錯体などが好ましい。基本的に、用いるドーパントよりも三重項エネルギーが大きく、電子、正孔がそれぞれの輸送層から円滑に注入され、また輸送するものであれば、これらに限定されるものではない。また、他の発光層には、2種以上の三重項発光ドーパントが含有されていてもよいし、2種以上のホスト材料が含有されていてもよい。さらに、他の発光層には、1種以上の三重項発光ドーパントと1種以上の蛍光発光ドーパントが含有されていてもよい。
好ましいリン光発光性ホストまたはドーパントとしては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
<正孔輸送層>
正孔輸送層は、正孔輸送材料の一種または二種以上を積層または混合する方法、もしくは、正孔輸送材料と高分子結着剤の混合物を用いる方法により形成される。また、正孔輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して正孔輸送層を形成してもよい。正孔輸送材料は、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、第一電極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
例えば、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましい。
<電子輸送層>
電子輸送層は、炭素、水素、窒素、酸素、ケイ素、リンの中から選ばれる元素で構成され、かつ電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造からなる化合物を含有することが好ましい。電子受容性窒素とは、隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表し。窒素原子が高い電子陰性度を有することから、該多重結合は電子受容的な性質を有する。それゆえ、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環は、高い電子親和性を有し、電子輸送能に優れ、電子輸送層に用いることで発光素子の駆動電圧を低減できる。
電子受容性窒素を含むヘテロアリール環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環、フェナンスロイミダゾール環などが挙げられる。
これらのヘテロアリール環を有する化合物としては、例えば、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジンやターピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、キノキサリン誘導体およびナフチリジン誘導体などが好ましい化合物として挙げられる。中でも、トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼンなどのベンズイミダゾール誘導体、1,3−ビス[(4−tert−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなどのオキサジアゾール誘導体、N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなどのトリアゾール誘導体、バソクプロインや1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどのフェナントロリン誘導体、2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなどのベンゾキノリン誘導体、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロールなどのビピリジン誘導体、1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−ターピリジニル))ベンゼンなどのターピリジン誘導体、ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなどのナフチリジン誘導体が、電子輸送能の点から好ましく用いられる。
上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属と混合して用いることも可能である。
<第二電極>
第二電極は、ボトムエミッション型の場合には光反射性の導電膜、トップエミッション型の場合には光透過性の導電膜である必要があり、光学的に第一電極と対照的な特性が求められる。また、一般的に第二電極には電子を効率よく注入できる陰極としての機能が求められるので、電極の安定性を考慮して金属材料が多く用いられる。なお、第一電極を陰極に、第二電極を陽極にすることも可能である。
陰極として用いる場合の材料としては、Al、MgAgなどが知られており、有機EL層と同様に真空成膜法により形成されるが、特に限定されない。トップエミッション型の場合には、膜厚を薄くすることで光透過性を持たせることができる。
<封止>
第二電極を形成後、封止をおこなうことが好ましい。有機EL素子が酸素や水分に弱いとされるためであり、信頼性の高い表示装置を得るためにはできるだけ酸素と水分の少ない雰囲気下で封止をおこなうことが好ましい。封止に使用する部材についても、ガスバリア性の高いものを選定することが好ましく、基板同様にガラス、樹脂フィルム、ガスバリア膜などから適宜選択する。また接着の際に用いる接着剤にもガスバリア性の高いものが必要となるが、二液エポキシ接着剤(XNR、ナガセケムテックス株式会社)や有機デバイス用封止材(モイスチャーカット、株式会社MORESCO)などの一般的に知られているものから選択すればよいし、フリットガラスをレーザーで溶融する方法でもよい。
さらに水分への配慮として、封止工程で乾燥剤を導入することも有効である。乾燥剤としては酸化バリウムや酸化カルシウムなどが知られているが、水分の吸着性能が高ければ良く、特に限定されない。
<感光性樹脂組成物とそれを硬化した硬化膜>
本発明で平坦化層および/または画素分割層に用いられる感光性樹脂組成物は、後述する(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、および(C)有機溶剤、を含むことが必要である。それぞれの成分の詳細は後述する。
また、これら感光性樹脂組成物の硬化物の少なくとも1つが、飛行時間型二次イオン質量分析により測定される不揮発成分中の金属元素およびハロゲン元素の含有量の総和が1.0×1017atom/cm以上1.0×1022atom/cm以下であることが好ましい。硬化物中に金属元素やハロゲン元素を微量含有することにより、画素分割層や平坦化層の形成に際して基板上に付着する微量の金属元素および/またはハロゲン元素により、発光輝度の低下や画素シュリンクを抑制するため、信頼性を向上させることができる。また、これらの元素が(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂と塩形成する元素トラップ効果により、過剰の金属元素やハロゲン元素に由来するアルカリマイグレーションなどの電極腐食やそれによる発光輝度低下や画素シュリンクを抑制し、有機EL表示装置の信頼性を向上させることができる。このことは、これらの元素がイオン性化合物由来の元素を含むことで、より効果を発揮するため好ましい。金属元素およびハロゲン元素の含有量の総和が1.0×1017atom/cm未満であると、パターン開口部となるITO電極の導電性が低く、有機EL表示装置を長時間駆動した場合に高電圧化しやすいことから、信頼性が低下する。一方、金属元素およびハロゲン元素の含有量の総和が1.0×1022atom/cmを超えると、元素トラップ効果により捕捉できない過剰の金属元素やハロゲン元素が、パターン開口部において電極腐食を発生させやすいことから、有機EL表示装置を長時間駆動した場合に発光輝度低下や画素シュリンクにより、信頼性が低下する。
本発明において、金属元素およびハロゲン元素を上記の範囲にする方法としては、例えば、後述する感光性樹脂組成物を用いる方法が挙げられる。
<金属元素>
本発明における金属元素とは、金属の性質を示す元素を指し、遊離したイオンも含まれる。後述する感光性樹脂組成物において、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の場合、酸性基との塩形成および相互作用によりトラップされやすいことから、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素を含むことが好ましく、アルカリ金属元素を含むことがより好ましく、ナトリウム、カリウムを含むことがさらに好ましい。アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素含有量の総和は、1.0×1017atom/cm以上が好ましく、有機EL表示装置の駆動電圧をより低減し、信頼性をより向上させることができる。一方、5.0×1021atom/cm以下が好ましく、有機EL表示装置の信頼性をより向上させることができる。また、アルカリ金属元素含有量の総和は、1.0×1017atom/cm以上が好ましく、有機EL表示装置の駆動電圧をより低減し、信頼性をより向上させることができる。一方、4.5×1021atom/cm以下が好ましく、有機EL表示装置の信頼性をより向上させることができる。さらに、ナトリウムおよびカリウム含有量の総和は、1.0×1017atom/cm以上が好ましく、有機EL表示装置の駆動電圧をより低減することができる。一方、ナトリウムおよびカリウム含有量の総和は、4.0×1021atom/cm以下が好ましく、有機EL表示装置の信頼性をより向上させることができる。
<ハロゲン元素>
本発明におけるハロゲン元素とは、周期表において第17族に属する元素を指し、遊離したイオンも含まれる。後述する感光性樹脂組成物において、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としてカルボキシル基と、アミノ基および/またはアミド基とを有するアルカリ可溶性樹脂を含む場合、アミノ基および/またはアミド基がハロゲン元素と塩形成し、トラップすることができることから、有機EL表示装置の信頼性をより向上させることができる。ハロゲン元素のなかでも、アミノ基および/またはアミド基にトラップされやすいことから、塩素を含むことが好ましい。塩素含有量の総和は、1.0×1017atom/cm以上が好ましく、有機EL表示装置の駆動電圧をより低減させることができる。一方、塩素含有量の総和は、5.0×1021atom/cm以下が好ましく、有機EL表示装置の信頼性をより向上させることができる。
<金属元素およびハロゲン元素の定量方法>
感光性樹脂組成物の硬化物の不揮発成分中の金属元素およびハロゲン元素は、以下の方法により定量することができる。まず、硬化膜中に、IMX−3500RS(アルバック社製)を用いて、既知の注目元素を特定量注入し、下記式により相対感度係数(RSF)を算出する。後述するTOF−SIMSの感度(atom/cm)を良好にするために、イオン注入量は、1.0×1013atom/cm〜1.0×1015atom/cmが好ましい。
Φ:イオン注入量(atom/cm
Δd:1測定サイクルあたりの深さ(cm)
:不純物イオン強度(counts)
BG:バックグラウンド強度(counts)
ref:硬化膜のイオン強度(counts)
得られた相対感度係数を基に、下記式により、TOF−SIMS分析から、硬化膜中における金属元素およびハロゲン元素(対象元素)濃度をそれぞれ定量することができる。
対象元素濃度=RSF(atom/cm)×対象元素イオン強度(counts)/硬化膜のイオン強度(counts)。
<(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂>
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有する。本発明において酸性基とは、ブレンステッドの定義において酸性を示す置換基を表す。酸性基の具体例として、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基、シラノール基などが挙げられる。中でも感度向上の観点で、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂が、カルボキシル基、フェノール性水酸基およびシラノール基のうち少なくとも一つを有するアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
本発明におけるアルカリ可溶性とは、樹脂をγ−ブチロラクトンに溶解した溶液をシリコンウェハー上に塗布し、100℃で4分間プリベークを行って膜厚3μm±0.5μmのプリベーク膜を形成し、該プリベーク膜を23±1℃の2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少から求められる溶解速度が10nm/分以上であることをいう。前記(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂は、耐熱性向上の点から、芳香族カルボン酸構造を有するアルカリ可溶性樹脂であることがより好ましい。なお、本発明において、芳香族カルボン酸構造とは、芳香環と直接、共有結合したカルボン酸構造をいう。
(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の主鎖を構成する樹脂としては、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミドイミド前駆体、カルド系樹脂、ラジカル重合性モノマーから得られる重合体、フェノール樹脂、ポリシロキサンが挙げられるが、これに限定されない。(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の樹脂として、前記樹脂を2種以上含有してもよいし、これらの2種以上の繰り返し単位を有する共重合体を含有してもよい。これらの樹脂の中でも、耐熱性に優れ、高温下におけるアウトガス量が少ないものが好ましい。具体的には、ポリイミド前駆体が好ましく、アルカリ可溶性向上の点からアミド酸構造を有するポリイミド前駆体がより好ましい。
ポリイミドとしては、テトラカルボン酸あるいはテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド等と、ジアミンあるいはジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミン等を反応させて得ることができ、テトラカルボン酸残基とジアミン残基を有する。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリイミド前駆体の1つであるポリアミド酸を、加熱処理により脱水閉環することにより得ることができる。この加熱処理時、m−キシレンなどの水と共沸する溶媒を加えることもできる。あるいは、カルボン酸無水物やジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤やトリエチルアミン等の塩基などを閉環触媒として加えて、化学熱処理により脱水閉環することにより得ることもできる。または、弱酸性のカルボン酸化合物を加えて100℃以下の低温で加熱処理により脱水閉環することにより得ることもできる。
ポリベンゾオキサゾールとしては、ビスアミノフェノール化合物と、ジカルボン酸あるいはジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステル等を反応させて得ることができ、ジカルボン酸残基とビスアミノフェノール残基を有する。例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を反応させて得られるポリベンゾオキサゾール前駆体の1つであるポリヒドロキシアミドを、加熱処理により脱水閉環することにより得ることができる。あるいは、無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などを加えて、化学処理により脱水閉環することにより得ることができる。
ポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリイソイミドなどを挙げることができる。例えば、ポリアミド酸は、テトラカルボン酸あるいはテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどとジアミンあるいはジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンを反応させて得ることができる。ポリイミドは、例えば、上記の方法で得たポリアミド酸を、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、ポリヒドロキシアミドを挙げることができる。例えば、ポリヒドロキシアミドは、ビスアミノフェノールと、ジカルボン酸あるいはジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステルなどを反応させて得ることができる。ポリベンゾオキサゾールは、例えば、上記の方法で得たポリヒドロキシアミドを、加熱あるいは無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
ポリアミドイミド前駆体は、例えば、トリカルボン酸、対応するトリカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物ハライドなどとジアミンやジイソシアネートを反応させて得ることができる。ポリアミドイミドは、例えば、上記の方法で得た前駆体を、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミドの共重合体としては、ブロック共重合、ランダム共重合、交互共重合、グラフト共重合のいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよい。例えば、ポリヒドロキシアミドにテトラカルボン酸、対応するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどを反応させてブロック共重合体を得ることができる。さらに、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することもできる。
本発明に用いられる(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂は、一般式(8)〜(10)のいずれかで表される構造単位を有することが好ましい。これらの構造単位を有する2種以上の樹脂を含有してもよいし、2種以上の構造単位を共重合してもよい。本発明における(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂は、一般式(8)〜(10)で表される構造単位を分子中に3〜1000含むものが好ましく、20〜200含むものがより好ましい。
一般式(8)〜(10)中、RおよびR10は4価の有機基、R、RおよびR12は2価の有機基、R11は3価の有機基を表し、R〜R12のいずれかは酸性基を有する。
〜R12は芳香族環および/または脂肪族環を有するものが好ましい。
一般式(8)〜(10)中、Rはテトラカルボン酸誘導体残基、Rはジカルボン酸誘導体残基、R11はトリカルボン酸誘導体残基を表す。
、R、R11を構成する酸成分としては、ジカルボン酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸などが挙げられる。
トリカルボン酸の例として、トリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸などが挙げられる。
テトラカルボン酸の例として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸、および下記に示した構造の芳香族テトラカルボン酸などを挙げることができる。
69は酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R70、R71、R72およびR73は水素原子、または水酸基を表す。
また、水酸基を有するテトラカルボン酸誘導体として、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、および下記に示した構造の酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物や、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族のテトラカルボン酸二無水物および下記に示した構造の芳香族テトラカルボン酸無水物などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
69は酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R70、R71、R72およびR73は水素原子、または水酸基を表す。
一般式(8)〜(10)中、R、R10、R12はジアミン誘導体残基を表す。
、R10、R12を構成するジアミン成分の例としては、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、3−スルホン酸−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン、3,4’−ジアミノ安息香酸、3,5’−ジアミノ安息香酸などを挙げることができる。
また、水酸基の無いジアミンとして、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環の水素原子の一部を、炭素数1〜10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂環式ジアミンなどを挙げることができる。これらのジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。また、これら2種以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。耐熱性が要求される用途では、芳香族ジアミンをジアミン全体の50モル%以上使用することが好ましい。
一般式(8)〜(10)のR〜R12は、その骨格中にフェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基、カルボキシル基などを含むことができる。フェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基を適度に有する樹脂を用いることで、適度なアルカリ可溶性を有するポジ型感光性樹脂組成物となる。
一般式(8)〜(10)のいずれかで表される構造単位を有する樹脂において、構造単位の繰り返し数は3以上200以下が好ましい。この範囲であれば、厚膜を容易に形成することができる。
本発明に用いられる(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂は、一般式(8)〜(10)のいずれかで表される構造単位のみからなるものであってもよいし、他の構造単位との共重合体あるいは混合体であってもよい。その際、一般式(8)〜(10)のいずれかで表される構造単位を樹脂全体の10質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上がより好ましい。共重合あるいは混合に用いられる構造単位の種類および量は、最終加熱処理によって得られる薄膜の機械特性を損なわない範囲で選択することができる。
本発明において、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂は、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の主鎖を構成する樹脂として用いるポリイミド、ポリイミド前駆体、またはポリベンゾオキサゾール前駆体の中から選ばれる樹脂またはそれらの共重合体に、さらにアルカリ可溶性を向上させるため、カルボキシル基以外に、樹脂の構造単位中および/またはその主鎖末端に酸性基を有することが好ましい。酸性基としては、例えば、フェノール性水酸基、スルホン酸基などが挙げられ、これらの中で、フェノール性水酸基が、硫黄原子を含まない点で好ましい。また、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂は、フッ素原子を有することが好ましく、アルカリ水溶液で現像する際に、膜と基材との界面に撥水性を付与し、界面へのアルカリ水溶液のしみこみを抑制しやすくすることができる。(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂中のフッ素原子含有量は、界面へのアルカリ水溶液のしみこみ防止効果の観点から5重量%以上が好ましく、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20重量%以下が好ましい。 本発明において、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(12)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(12)中、R61は芳香環を含有する4価の有機基、R62は芳香環を含有する2価の有機基である。Xは芳香環と共有結合したカルボン酸、Yは芳香環と共有結合したカルボン酸エステルである。lは1〜2、mは0〜1の整数を示し、l+mが2である。
また、より好ましくは(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂が、一般式(12)で表される構造を主な繰り返し単位として有することである。具体的には、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂に含まれる全繰り返し単位のうち50モル%以上が一般式(12)で表される構造であることが好ましい。また、上記一般式(12)中、複数の繰り返し単位においてR61とR62はそれぞれ異なる基が混在していてもよい。
本発明に用いられる感光性樹脂組成物に用いられる、上記一般式(12)で表される構造を主な繰り返し単位として有する樹脂は、分子鎖の少なくとも一方の末端がモノアミンまたは酸無水物により封止されていることが好ましい。末端封止剤を使用することにより、得られる樹脂を用いた感光性樹脂組成物を適正な粘度に調整し易くなる。また、酸末端により樹脂が加水分解するのを抑制し、ポジ型の感光性樹脂組成物にしたときに感光剤であるキノンジアジド化合物がアミン末端により劣化することを抑制する効果がある。
末端封止剤に用いられるモノアミンは特に制限されないが、下記一般式(13)で表される基を有する化合物が好ましい。
上記一般式(13)中、R65は炭素数1〜6の飽和炭化水素基を示し、rは0または1を示す。AおよびBはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水酸基、カルボキシル基またはスルホン酸基を示す。sおよびtはそれぞれ0または1を示し、得られる樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性の観点から、s+t≧1である。
上記一般式(13)で表される基を有するモノアミンの好ましい例として、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、2−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−p−クレゾール、3−アミノ−o−クレゾール、4−アミノ−o−クレゾール、4−アミノ−m−クレゾール、5−アミノ−o−クレゾール、6−アミノ−m−クレゾール、4−アミノ−2,3−キシレノール、4−アミノ−3,5−キシレノール、6−アミノ−2,4−キシレノール、2−アミノ−4−エチルフェノール、3−アミノ−4−エチルフェノール、2−アミノ−4−tert−ブチルフェノール、2−アミノ−4−フェニルフェノール、4−アミノ−2,6−ジフェニルフェノール、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−アミノ−m−トルエン酸、3−アミノ−o−トルエン酸、3−アミノ−p−トルエン酸、4−アミノ−m−トルエン酸、6−アミノ−o−トルエン酸、6−アミノ−m−トルエン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノトルエン−3−スルホン酸などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよく、それ以外の末端封止剤を併用してもよい。
末端封止剤として用いられるモノアミンの導入割合は、樹脂のモノマー成分であるテトラカルボン酸誘導体100モルに対して10〜100モルが好ましく、40〜80モルがより好ましい。10モル以上、好ましくは40モル以上にすることで、得られる樹脂の有機溶剤に対する溶解性が向上するとともに、得られる樹脂を用いて感光性樹脂組成物としたときの粘度を適正に調整することができる。また、得られる樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性および硬化膜の機械強度の観点から、樹脂のモノマー成分であるテトラカルボン酸誘導体100モルに対して100モル以下が好ましく、80モル以下がより好ましく、70モル以下がさらに好ましい。
末端封止剤に用いられる酸無水物は特に制限されないが、得られる樹脂の耐熱性の観点から、環状構造を有する酸無水物または架橋性基を有する酸無水物が好ましい。例として、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物などが挙げられる。
末端封止剤として用いられる酸無水物の導入割合は、樹脂のモノマー成分であるジアミン100モルに対して10〜100モルが好ましく、50〜100モルがより好ましい。10モル以上、好ましくは50モル以上にすることで、得られる樹脂の有機溶剤に対する溶解性が向上するとともに、得られる樹脂を用いて感光性樹脂組成物としたときの粘度を適正に調整することができる。また、得られる樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性および硬化膜の機械強度の観点から、樹脂のモノマー成分であるジアミン100モルに対して100モル以下が好ましく、90モル以下がより好ましい。
樹脂中に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された樹脂を、酸性溶液に溶解し、樹脂の構成単位であるアミン成分と酸成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13CNMRスペクトル測定で検出することが可能である。
一般式(12)で表される構造を主な繰り返し単位として有する樹脂における一般式(12)で表される構造の繰り返し数をnとすると、nは5〜100であることが好ましく、特に好ましくは10〜70である。nが5より小さいと得られる樹脂の硬化膜の強度が低下する場合がある。一方、nが100を超えると得られる樹脂の有機溶剤への溶解性が低下したり、樹脂組成物とした時の粘度が高くなりすぎる場合がある。本発明における繰り返し数nは、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により重量平均分子量(Mw)を測定することで容易に算出できる。繰り返し単位の分子量をM、樹脂の重量平均分子量をMwとすると、n=Mw/Mである。前記一般式(12)で表される構造を主な繰り返し単位として有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000の範囲が好ましく、10,000〜50,000の範囲がより好ましい。
前記一般式(12)で表される構造を主な繰り返し単位として有する樹脂は、公知のポリアミド酸またはポリアミド酸エステルの製造方法に準じて製造することができ、その方法は特に限定されない。例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン化合物と縮合剤の存在下で反応させる方法などが挙げられる。
末端封止剤はジアミン化合物および酸二無水物の一部と置き換えて使用することができる。第一の方法としては末端封止剤をジアミン化合物やテトラカルボン酸二無水物と同時に添加する方法。第二の方法としてはジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物を反応させてから末端封止剤を添加する方法。第3の方法としては、末端封止剤とテトラカルボン酸二無水物あるいはジアミン化合物を反応させてからジアミン化合物あるいはテトラカルボン酸二無水物を添加する方法がある。
末端封止剤と反応させるジアミン化合物またはテトラカルボン酸二無水物100モルに対する末端封止剤の導入割合が50モルを超える場合には、末端封止剤とテトラカルボン酸二無水物あるいはジアミン化合物を反応させてからジアミン化合物あるいはテトラカルボン酸二無水物を添加することで、2量体や3量体などのオリゴマーの生成が抑制されるため好ましい。さらに、上記の方法で得られたポリマーを、多量の水やメタノール/水の混合液などに投入し、沈殿させてろ別乾燥し、単離することが望ましい。この沈殿操作によって、未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性が向上する。
以下、前記一般式(12)で表される構造を主な繰り返し単位として有する樹脂を製造する方法の好ましい具体例として、ポリイミド前駆体を製造する方法について述べる。
まずR61基を有するテトラカルボン酸二無水物を重合溶媒中に溶解し、この溶液にモノアミンを添加してメカニカルスターラーで撹拌する。所定時間経過後、R62基を有するジアミン化合物を添加し、さらに所定時間撹拌する。反応温度は好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃で、反応時間は好ましくは0.5〜50時間、より好ましくは2〜24時間である。
重合反応に用いられる溶媒は、原料モノマーである酸成分とジアミン成分を溶解できればよく、その種類は特に限定されないが、プロトン性溶媒が好ましい。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのアミド類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールなどのグリコール類、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。重合溶媒量は、原料モノマー100重量部に対して、
100〜1900重量部使用することが好ましく、150〜950重量部がより好ましい。
<(B)感光剤>
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は(B)感光剤を含有する。
(B)感光剤は、ナフトキノンジアジド化合物、ビスアジド化合物、光酸発生剤など各種公知材料を用いることができるが、(b1)o−キノンジアジド化合物を含有することが好ましい。
(b1)o−キノンジアジド化合物を含有することで、耐薬品性や感度を向上させることができる。
(b1)o−キノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有した化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸のスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物としては、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、TrisP−SA、TrisOCR−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PCHP、DML−PC、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP,DML−POP、ジメチロール−BisOC−P、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MTrisPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A、46DMOC、46DMOEP、TM−BIP−A(商品名、旭有機材工業(株)製)、2,6−ジメトキシメチル−4−tert−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP−AP(商品名、本州化学工業(株)製)などの化合物に4−ナフトキノンジアジドスルホン酸あるいは5−ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合で導入したものが好ましいものとして例示することができるが、これ以外の化合物を使用することもできる。
4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収を持っており、g線露光に適している。本発明においては、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物のどちらも好ましく使用することができるが、露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、または5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を併用した、ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を使用することもできるし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を混合して使用することもできる。
上記ナフトキノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、キノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって、合成することが可能であり、公知の方法により合成することができる。これらのナフトキノンジアジド化合物を使用することで解像度、感度、残膜率がより向上する。
(b1)成分の添加量は、(C)有機溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して好ましくは4重量%以上、より好ましくは6重量%以上で、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。4重量%以上30重量%以下とすることで優れた感度でパターン形成しやすくなる。
本発明で用いられる感光性樹脂組成物における(B)感光剤の別の態様として、(B)感光剤が、(b2)光重合開始剤および(E)ラジカル重合性モノマーを含有することが好ましい。
(b2)光重合開始剤および(E)ラジカル重合性モノマーを含有することで、ネガ型かつ良好な加工性を有することができる。
(b2)光重合開始剤とは、露光によって結合開裂および/または反応してラジカルを発生する化合物をいう。(b2)光重合開始剤を含有させることで、後述する(E)ラジカル重合性モノマーのラジカル重合が進行し、樹脂組成物の膜の露光部がアルカリ現像液に対して不溶化することで、ネガ型のパターンを形成することができる。また、露光時のUV硬化が促進されて、感度を向上させることができる。
(b2)光重合開始剤としては、ベンジルケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤または安息香酸エステル系光重合開始剤が好ましく、露光時の感度向上の観点から、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤またはベンゾフェノン系光重合開始剤がより好ましく、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤がさらに好ましい。
ベンジルケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。
α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンまたは2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンが挙げられる。
α−アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オンまたは3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−オクチル−9H−カルバゾールが挙げられる。
アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドまたはビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドが挙げられる。
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニルプロパン−1,2−ジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルブタン−1,2−ジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパン−1,2,3−トリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1−[4−[4−(カルボキシフェニル)チオ]フェニル]プロパン−1,2−ジオン−2−(O−アセチル)オキシム、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチル)オキシム、1−[9−エチル−6−[2−メチル−4−[1−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルオキシ]ベンゾイル]−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチル)オキシムまたは”アデカアークルズ”(登録商標)NCI−831((株)ADEKA製)が挙げられる。
アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、1,7−ビス(アクリジン−9−イル)−n−ヘプタンが挙げられる。
チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ)−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタン(IV)またはビス(η−3−メチル−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタン(IV)が挙げられる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジベンジルケトンまたはフルオレノンが挙げられる。
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンザルアセトフェノンまたは4−アジドベンザルアセトフェノンが挙げられる。
芳香族ケトエステル系光重合開始剤としては、例えば、2−フェニル−2−オキシ酢酸メチルが挙げられる。
安息香酸エステル系光重合開始剤としては、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−エチル)ヘキシル、4−ジエチルアミノ安息香酸エチルまたは2−ベンゾイル安息香酸メチルが挙げられる。
本発明で用いられる感光性樹脂組成物に占める(b2)光重合開始剤の含有量は、(A)酸性基を有する可溶性樹脂組成物および後述する(E)ラジカル重合性モノマーの重量の合計を100重量部とした場合において、0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましく、0.7重量部以上がさらに好ましく、1重量部以上が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができる。一方、前記(b2)光重合開始剤の含有量は、25重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、17重量部以下がさらに好ましく、15重量部以下が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、現像後の解像度を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。
<(E)ラジカル重合性モノマー>
本発明において、感光性樹脂組成物は(E)ラジカル重合性モノマーを含んでもよい。特に感光性樹脂組成物が、前述した(b2)光重合開始剤を含有する場合は(E)ラジカル重合性モノマーを含むことが好ましい。
(E)ラジカル重合性モノマーとは、分子中に二つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物をいう。露光時、(b2)光重合開始剤から発生するラジカルによって、(E)ラジカル重合性モノマーのラジカル重合が進行し、樹脂組成物の膜の露光部がアルカリ現像液に対して不溶化することで、ネガ型のパターンを形成することができる。また、(E)ラジカル重合性モノマーを含有させることで、露光時のUV硬化が促進されて、露光時の感度を向上させることができる。加えて、熱硬化後の架橋密度が向上し、硬化膜の硬度を向上させることができる。
(E)ラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましい。露光時の感度向上および硬化膜の硬度向上の観点から、(メタ)アクリル基を分子内に二つ以上有する化合物がより好ましい。(E)ラジカル重合性モノマーの二重結合当量としては、露光時の感度向上および硬化膜の硬度向上の観点から、80〜400g/molが好ましい。
(E)ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3,5−トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、1,3−ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン若しくは9,9−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレンまたはそれらの酸変性体、エチレンオキシド変性体若しくはプロピレンオキシド変性体が挙げられる。
露光時の感度向上および硬化膜の硬度向上の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3,5−トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、1,3−ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン若しくは9,9−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレンまたはそれらの酸変性体、エチレンオキシド変性体若しくはプロピレンオキシド変性体が好ましく、現像後の解像度向上の観点から、それらの酸変性体またはエチレンオキシド変性体がより好ましい。
また、現像後の解像度向上の観点から、分子内に二つ以上のグリシドキシ基を有する化合物とエチレン性不飽和二重結合基を有する不飽和カルボン酸と、を開環付加反応させて得られる化合物に、多塩基酸カルボン酸または多塩基カルボン酸無水物を反応させて得られる化合物も好ましい。
本発明で用いられるネガ型の感光性樹脂組成物に占める(E)ラジカル重合性モノマーの含有量は、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂および(E)ラジカル重合性モノマーの重量の合計を100重量部とした場合において、15重量部以上が好ましく、20重量部以上がより好ましく、25重量部以上がさらに好ましく、30重量部以上が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。一方、前記(E)ラジカル重合性モノマーの含有量は、65重量部以下が好ましく、60重量部以下がより好ましく、55重量部以下がさらに好ましく、50重量部以下が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。
<(C)有機溶剤>
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、(C)有機溶剤を含有する。これによりワニスの状態にすることができ、塗布性を向上させることができる。
前記(C)有機溶剤は、γ−ブチロラクトンなどの極性の非プロトン性溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、などの溶剤を単独、または混合して使用することができる。
前記(C)有機溶剤の使用量は塗布方法などに応じて適宜調整可能であり、特に限定されない。例えばポジ型であれば、(C)有機溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して、100〜3000重量部が好ましく、150〜2000重量部がさらに好ましい。ネガ型をスピンコーティングにより塗膜を形成する場合であれば、感光性樹脂組成物全体の、50〜95重量%の範囲内とすることが一般的である。
<(D)熱架橋剤>
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、(D)熱架橋剤を含有することができる。
熱架橋剤とは、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基をはじめとする熱反応性の官能基を分子内に少なくとも2つ有する公知の化合物である。熱架橋剤は(A)成分の樹脂またはその他添加成分を架橋し、熱硬化後の膜の耐熱性、耐薬品性および硬度を高めることができ、さらには硬化膜からのアウトガス量を低減し、有機EL表示装置の長期信頼性を高めることができることから、含有することが好ましい。
熱架橋剤は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
熱架橋剤の含有量は特に限定されないが、ポジ型であれば、(C)有機溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して1重量%以上30重量%以下が好ましい。熱架橋剤の含有量が1重量%以上30重量%以下であれば、焼成後または硬化後の膜の耐薬品性および硬度を高めることができ、さらには硬化膜からのアウトガス量を低減し、有機EL表示装置の長期信頼性を高めることができ、ポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性にも優れる。
一方、ネガ型の感光性樹脂組成物に占める熱架橋剤の含有量は、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂および(B)ラジカル重合性化合物の合計を100重量部とした場合において、0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましく、1重量部以上がさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、硬化膜の硬度および耐薬品性を向上させることができる。一方、含有量は、70重量部以下が好ましく、60重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、硬化膜の硬度および耐薬品性を向上させることができる。
<(F)着色材料>
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、(F)着色材料を含有することが好ましい。(F)着色材料とは、特定波長の光を吸収する化合物であり、特に、可視光線の波長(380〜780nm)の光を吸収することで、着色する化合物をいう。(F)着色材料を含有させることで、感光性樹脂組成物から得られる膜を着色させることができ、樹脂組成物の膜を透過する光、または、樹脂組成物の膜から反射する光を、所望の色に着色させる、着色性を付与することができる。また、樹脂組成物の膜を透過する光、または、樹脂組成物の膜から反射する光から、(F)着色材料が吸収する波長の光を遮光する、遮光性を付与することができる。
(F)着色材料としては、可視光線の波長の光を吸収し、白、赤、橙、黄、緑、青または紫色に着色する顔料や染料などの公知の化合物が挙げられる。これらの着色材料を二色以上組み合わせることで、樹脂組成物の膜を透過する光、または、樹脂組成物の膜から反射する光を、所望の色座標に調色する、調色性を向上させることができる。
顔料としては、例えば、有機顔料または無機顔料が挙げられる。顔料を含有させることで、樹脂組成物の膜に着色性または調色性を付与することができる。
有機顔料の特徴として、化学構造変化または官能基変換により、所望の特定波長の光を透過または遮光するなど、樹脂組成物の膜の透過スペクトルまたは吸収スペクトルを調整し、調色性を向上させることができる。
有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ピランスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、インドリン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンゾフラノン系顔料、ペリレン系顔料、アニリン系顔料、アゾ系顔料、アゾメチン系顔料、縮合アゾ系顔料、カーボンブラック、金属錯体系顔料、レーキ顔料、トナー顔料または蛍光顔料が挙げられる。耐熱性の観点から、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ピランスロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンゾフラノン系顔料、ペリレン系顔料、縮合アゾ系顔料およびカーボンブラックが好ましい。
また、無機顔料の特徴としては、耐熱性および耐候性により優れるため、感光性樹脂組成物の膜の耐熱性および耐候性を向上させることができる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸バリウム、酸化ジルコニウム、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、二酸化ケイ素、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、べんがら、モリブデンレッド、モリブデンオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、グラファイト若しくは銀スズ合金、または、チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム若しくは銀などの金属の微粒子、酸化物、複合酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、窒化物、炭化物若しくは酸窒化物が挙げられる
染料とは、対象物の表面構造に、染料中のイオン性基若しくはヒドロキシ基などの置換基が化学吸着または強く相互作用などをすることで、対象物を着色させる化合物をいい、一般的に溶剤等に可溶である。また、染料による着色は、分子一つ一つが対象物と吸着するため、着色力が高く、発色効率が高い。
染料としては、例えば、直接染料、反応性染料、硫化染料、バット染料、硫化染料、酸性染料、含金属染料、含金属酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、分散染料、カチオン染料または蛍光増白染料などに分類できる。材料系からアントラキノン系染料、アゾ系染料、アジン系染料、フタロシアニン系染料、メチン系染料、オキサジン系染料、キノリン系染料、インジゴ系染料、インジゴイド系染料、カルボニウム系染料、スレン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、トリアリールメタン系染料またはキサンテン系染料などが挙げられるが、(C)有機溶剤への溶解性および耐熱性の観点から、アントラキノン系染料、アゾ系染料、アジン系染料、メチン系染料、トリアリールメタン系染料、キサンテン系染料が好ましい。
(C)有機溶剤を除く、本発明に用いられる感光性樹脂組成物の固形分に占める(F)着色材料の含有比率は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。含有比率が上記範囲内であると、遮光性、着色性または調色性を向上させることができる。一方、含有比率は、70重量%以下が好ましく、65重量%以下がより好ましく、60重量%以下がさらに好ましい。含有比率が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができる。
<(G)分散剤>
本発明に用いられる感光性樹脂組成物は、さらに、分散剤を含有することが好ましい。
(G)分散剤とは、前述した顔料または分散染料などの表面と相互作用する表面親和性基、および、顔料または分散染料の分散安定性を向上させる分散安定化構造を有する化合物をいう。(G)分散剤の分散安定化構造としては、ポリマー鎖および/または静電荷を有する置換基などが挙げられ、立体障害や静電反発の発現による分散効果を期待できる。
(G)分散剤を含有させることで、感光性樹脂組成物が、顔料または分散染料を含有する場合、それらの分散安定性を向上させることができ、現像後の解像度を向上させることができる。分散剤は、表面親和性基であるアミノ基及び/又は酸性基が、酸及び/又は塩基と塩形成した構造を有することが好ましい。分散剤としては公知のものが使用でき、具体的には、“DISPERBYK”(登録商標)−108、“BYK”(登録商標)−9075(以上、何れもビックケミー・ジャパン(株)製)、“EFKA”(登録商標)4015(BASF製)、“アジスパー”(登録商標)PB711(味の素ファインテクノ(株)製)、“SOLSPERSE”(登録商標)(Lubrizol製)などが挙げられる。
本発明で用いられる感光性樹脂組成物が顔料および/または染料として分散染料を含有する場合、本発明で用いられる感光性樹脂組成物に占める(G)分散剤の含有比率は、顔料および/または分散染料、および、(G)分散剤の合計を100重量%とした場合において、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましい。含有比率が上記範囲内であると、顔料および/または分散染料の分散安定性を向上させることができ、現像後の解像度を向上させることができる。一方、含有比率は、60重量%以下が好ましく、55重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましい。含有比率が上記範囲内であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
<その他成分−密着改良剤>
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、密着改良剤を含有してもよい。
密着改良剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤、芳香族アミン化合物とアルコキシ基含有ケイ素化合物を反応させて得られる化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの密着改良剤を含有することにより、感光性樹脂膜を現像する場合などに、シリコンウェハー、ITO、SiO、窒化ケイ素などの下地基材との密着性を高めることができる。また、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。密着改良剤の含有量は、(C)有機溶剤を除く感光性樹脂組成物の固形分に対して、0.1〜10重量%が好ましい。
<その他成分−界面活性剤>
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤を含有してもよい。例えば、東レダウコーニングシリコーン社のSHシリーズ、SDシリーズ、STシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越シリコーン社のKPシリーズ、日本油脂社のディスフォームシリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどのシリコーン系界面活性剤、大日本インキ工業社の“メガファック(登録商標)”シリーズ、住友スリーエム社のフロラードシリーズ、旭硝子社の“サーフロン(登録商標)”シリーズ、“アサヒガード(登録商標)”シリーズ、新秋田化成社のEFシリーズ、オムノヴァ・ソルーション社のポリフォックスシリーズなどのフッ素系界面活性剤、共栄社化学社のポリフローシリーズ、楠本化成社の“ディスパロン(登録商標)”シリーズなどのアクリル系および/またはメタクリル系の界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は市販の化合物を用いることができ、限定されない。
界面活性剤の含有量は(C)有機溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して好ましくは0.001〜1重量%である。
<その他成分−増感剤>
本発明で用いられるネガ型の感光性樹脂組成物は、必要に応じて増感剤を含有してもよい。増感剤としてはチオキサントン系増感剤が好ましく、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどが挙げられる。
本発明で用いられる感光性樹脂組成物に占める増感剤の含有量は、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂および(E)ラジカル重合性モノマーの合計を100重量部とした場合において、0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましく、1重量部以上が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができる。一方、含有量は、15重量部以下が好ましく、13重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましく、8重量部以下が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、現像後の解像度を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。
<その他成分−連鎖移動剤>
本発明で用いられるネガ型の感光性樹脂組成物は、必要に応じて連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤が好ましく、例えば、チオール系連鎖移動剤としては、例えば、1,4−ビス(3−メルカプトブタノイルオキシ)ブタン、1,4−ビス(3−メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4−ビス(チオグリコロイルオキシ)ブタン、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、1,3,5−トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌル酸、1,3,5−トリス[(3−メルカプトブタノイルオキシ)エチル]イソシアヌル酸、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)などが挙げられる。
本発明で用いられるネガ型の感光性樹脂組成物に占める連鎖移動剤の含有量は、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂および(E)ラジカル重合性モノマーの合計を100重量部とした場合において、0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましく、1重量部以上が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。一方、含有量は、15重量部以下が好ましく、13重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましく、8重量部以下が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、現像後の解像度および硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
<その他成分−重合禁止剤>
本発明で用いられるネガ型の感光性樹脂組成物は、必要に応じて重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤が好まく、例えば、4−メトキシフェノール、1,4−ヒドロキノン、1,4−ベンゾキノン、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、4−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチル−1,4−ヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミル−1,4−ヒドロキノン、“IRGANOX”(登録商標) 1010、同 1035、同 1076、同 1098、同 1135、同 1330、同 1726、同 1425、同 1520、同 245、同 259、同 3114、同 565、同 295(以上、何れもBASF製)などが挙げられる。
本発明で用いられるネガ型の感光性樹脂組成物に占める重合禁止剤の含有量は、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂および(E)ラジカル重合性モノマーの合計を100重量部とした場合において、0.01重量部以上が好ましく、0.03重量部以上がより好ましく、0.05重量部以上がさらに好ましく、0.1重量部以上が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、現像後の解像度および硬化膜の耐熱性を向上させることができる。一方、含有量は、10重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましく、3重量部以下が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができる。
<その他成分−シランカップリング剤>
本発明で用いられるネガ型の感光性樹脂組成物は、必要に応じてシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤とは、加水分解性のシリル基またはシラノール基を有する化合物をいう。
シランカップリング剤を含有することで、感光性樹脂組成物の硬化膜と下地の基板界面における相互作用が増大し、下地の基板との密着性および硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。
シランカップリング剤としては、三官能オルガノシラン、四官能オルガノシランまたはシリケート化合物が好ましい。三官能オルガノシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシランなどが挙げられる。
本発明で用いられるネガ型の感光性樹脂組成物に占めるシランカップリング剤の含有量は、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂および(E)ラジカル重合性モノマーの合計を100重量部とした場合において、0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましく、1重量部以上が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、下地の基板との密着性および硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。一方、含有量は、15重量部以下が好ましく、13重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましく、8重量部以下が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、現像後の解像度を向上させることができる。
<その他の成分−金属元素やハロゲン元素を含有する金属または化合物>
本発明に用いられる感光性樹脂組成物は、必要に応じて、金属元素やハロゲン元素を含む金属や化合物をさらに含有してもよく、金属元素やハロゲン元素の含有量を所望の範囲に調整することができる。上記化合物を微量含むことで、有機EL表示装置の信頼性を向上させることができる。
例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、バリウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、白金、イリジウムなどの重金属、塩酸、臭化水素などの酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの無機塩、銅フタロシアニンなどの金属錯体、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミドなどのハロゲン化試薬などが挙げられる。中でも信頼性をより向上できる観点から、イオン性化合物を含有することが好ましい。
これらを水溶液として含有してもよい。取り扱いの観点から、希釈した無機塩の水溶液を、感光性樹脂組成物に微量含有することが好ましい。
<その他の添加剤>
本発明に用いられる感光性樹脂組成物は、さらに、他の樹脂またはそれらの前駆体を含有しても構わない。他の樹脂またはそれらの前駆体としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、ウレア樹脂若しくはポリウレタンまたはそれらの前駆体が挙げられる。
また、本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、無機粒子を含んでもよい。好ましい具体例としては酸化珪素、酸化チタン、チタン酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられるがこれらに限定されない。これら無機粒子の一次粒子径は100nm以下、より好ましくは60nm以下が好ましい。
無機粒子の含有量は、(C)有機溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して、好ましくは5〜90重量%である。
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、有機EL表示装置の長期信頼性を損なわない範囲で熱酸発生剤を含有してもよい。熱酸発生剤は、加熱により酸を発生し、(D)熱架橋剤の架橋反応を促進する他、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂に未閉環のイミド環構造、オキサゾール環構造を有している場合はこれらの環化を促進し、硬化膜の機械特性をより向上させることができる。
本発明に用いられる熱酸発生剤の熱分解開始温度は、50℃〜270℃が好ましく、250℃以下がより好ましい。また、本発明で用いられる感光性樹脂組成物を基板に塗布した後の乾燥(プリベーク:約70〜140℃)時には酸を発生せず、その後露光、現像でパターニングした後の加熱処理(キュア:約100〜400℃)時に酸を発生するものを選択すると、現像時の感度低下を抑制できるため好ましい。
本発明に用いられる熱酸発生剤の含有量は、(C)有機溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。0.01重量%以上含有することで、架橋反応および樹脂の未閉環構造の環化が促進されるため、硬化膜の機械特性および耐薬品性をより向上させることができる。また、硬化膜の電気絶縁性の観点から、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
<感光性樹脂組成物の硬化物を得る工程>
以下、本発明に用いられる感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法について詳しく説明する。本発明に用いられる感光性樹脂組成物をスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などで基材に塗布し、感光性樹脂組成物の塗布膜を得る。塗布に先立ち、感光性樹脂組成物を塗布する基材を予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5〜20重量%溶解させた溶液を用いて、基材表面を処理する方法が挙げられる。基材表面の処理方法としては、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法が挙げられる。塗布後、必要に応じて減圧乾燥処理を施し、その後、ホットプレート、オーブン、赤外線などを用いて、50℃〜180℃の範囲で1分間〜数時間の熱処理を施すことで感光性樹脂膜を得る。
次に、得られた感光性樹脂膜からパターンを形成する方法について説明する。感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
露光後、現像液を用いて、ポジ型の場合は露光部を、ネガ型の場合は未露光部を除去する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また、必要に応じて、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
次に、現像によって形成したパターンを蒸留水にてリンス処理をすることが好ましい。また、必要に応じて、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを蒸留水に加えてリンス処理をしてもよい。
次に、パターン化された感光性樹脂膜中の酸無水物を減らす目的でブリーチ処理をすることが好ましい。一例として、ブリーチ処理によりポジ型の感光剤のキノンジアジド化合物がインデンカルボン酸に変化し、酸無水物の生成を抑制することができる。なお、キノンジアジド化合物を変化させるブリーチ処理については、加熱硬化工程の後に行うことも可能である。また、本発明において、ブリーチ処理とは、紫外線、可視光線、電子線、X線などの化学線を照射することを表し、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を、10〜10000mJ/cmで照射することが好ましい。
次に加熱処理を行う。加熱処理により残留溶剤や耐熱性の低い成分を除去できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。特に、本発明に用いられる感光性樹脂組成物が、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体の中から選ばれるアルカリ可溶性樹脂、それらの共重合体またはそれらとポリイミドとの共重合体を含む場合は、加熱処理によりイミド環、オキサゾール環を形成できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができ、また、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、またはオキタニル基を少なくとも2つ有する化合物を含む場合は、加熱処理により熱架橋反応を進行させることができ、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間〜5時間実施する。一例としては、150℃、250℃で各30分ずつ熱処理する。あるいは室温より300℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。本発明においての加熱処理条件としては150℃から400℃が好ましく、200℃以上350℃以下がより好ましい。
以下、実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。化合部の略名を下記に示す。
4−MOP:4−メトキシフェノール
AIBN:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)
BAHF:2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
Bk−S0100CF:“IRGAPHOR”(登録商標) BLACK S0100CF(BASF製;一次粒子径40〜80nmのベンゾフラノン系黒色顔料)
DFA:N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール
DPHA:“KAYARAD”(登録商標) DPHA(日本化薬(株)製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
GBL:ガンマブチロラクトン
GMA:メタクリル酸グリシジル
ITO:酸化インジウムスズ
KOH:水酸化カリウム
MAA:メタクリル酸
MAP:3−アミノフェノール;メタアミノフェノール
MBA:3−メトキシ−n−ブチルアセテート
MeTMS:メチルトリメトキシシラン
MgAg:マグネシウム銀
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
ODPA:ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物;オキシジフタル酸二無水物
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PhTMS:フェニルトリメトキシシラン
S−20000:“SOLSPERSE”(登録商標) 20000(Lubrizol製;ポリエーテル系分散剤)
SiDA:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
STR:スチレン
TCDM:メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル;ジメチロール−トリシクロデカンジメタアクリレート
TMSSucA:3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物
TrisP−PA:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エタン(本州化学工業(株)製)。
(1)発光材料のλ1(abs)、λ2(FL)の測定
<λ1(abs)吸収スペクトルの測定>
化合物の吸収スペクトルは、U−3200形分光光度計(日立製作所株式会社製)を用い、化合物を2−メチルテトラヒドロフランに1×10−6mol/Lの濃度で溶解させて測定を行った。
<λ2(FL)蛍光スペクトルの測定>
化合物の蛍光スペクトルは、F−2500形分光蛍光光度計(日立製作所株式会社製)を用い、化合物を2−メチルテトラヒドロフランに1×10−6mol/Lの濃度で溶解させ、波長350nmで励起させた際の蛍光スペクトルを測定した。
(2)感光性樹脂組成物の感度の評価方法
(2−1)ポジ型感光性樹脂組成物の感度の評価方法
塗布現像装置Mark−7(東京エレクトロン(株)製)を用いて、8インチシリコンウェハー上にワニスをスピンコート法で塗布し、120℃で3分間ホットプレートにてベークをして膜厚3.0μmのプリベーク膜を作製した。その後、露光機i線ステッパーNSR−2005i9C(ニコン社製)を用い、10μmのコンタクトホールのパターンを有するマスクを介して、100〜1200mJ/cmの露光量にて50mJ/cmステップで露光した。露光後、前記Mark−7の現像装置を用いて、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム水溶液(以下TMAH、多摩化学工業(株)製)を用いて現像時の膜減りが0.5μmになる時間で現像した後、蒸留水でリンス後、振り切り乾燥し、パターンを得た。膜厚は、大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を使用し、屈折率1.63として測定した。
このようにして得た現像膜のパターンをFDP顕微鏡MX61(オリンパス(株)社製)を用いて倍率20倍で観察し、コンタクトホールの開口径が10μmに達した最低必要露光量を求め、これを感度とした。
(2−2)ネガ型感光性樹脂組成物の感度の評価方法
塗布現像装置Mark−7(東京エレクトロン(株)製)を用いて、8インチシリコンウェハー上にワニスをスピンコート法で塗布し、120℃で3分間ホットプレートにてベークをして膜厚3.0μmのプリベーク膜を作製した。その後、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM−6M;ユニオン光学(株)製)を用いて、感度測定用のグレースケールマスク(MDRM MODEL 4000−5−FS;Opto−Line International製)を介して、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)でパターニング露光した後、フォトリソ用小型現像装置(AD−2000;滝沢産業(株)製)を用いて現像し、組成物の現像後膜を作製した。
FPD検査顕微鏡(MX−61L;オリンパス(株)製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターンを観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンを1対1の幅に形成する露光量(i線照度計の値)を感度とした。
(3)平坦化層および画素分割層に含まれる金属元素およびハロゲン元素量の定量
各実施例および比較例により得られた有機EL表示装置の平坦化層または画素分割層中に、イオン注入装置IMX−3500RS(アルバック社製)を用いて、塩素およびリチウムイオンをそれぞれ3.5×1014個/cm、1.2×1014個/cm注入し、相対感度係数(RSF)を算出した。
得られた相対感度係数を基に、下記式により、TOF−SIMS分析から、画素分割層中、層表面から0.5μm付近の金属元素およびハロゲン元素(対象元素)濃度をそれぞれ定量した。なお、1.0×1013atom/cm以下は検出下限以下として濃度ゼロ(含まれない)と判断した。
対象元素濃度=RSF(atom/cm)×対象元素イオン強度(counts)/硬化膜のイオン強度(counts)。
(4)外部量子効率の評価方法
作製した有機EL表示装置を1000cd/mの輝度になるよう発光させた。輝度は分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)で測定し、得られた分光放射輝度スペクトルから、ランバーシアン放射を行なったと仮定し外部量子効率EQE(単位:%)を算出した。
(5)長期信頼性の評価方法
作製した有機EL表示装置を、発光面を上にして、波長365nm、照度0.6mW/cmのUV光を照射した。0時間、250時間、500時間、1000時間経過後に10mA/cmで直流駆動にて発光させ、輝度と発光画素の面積に対する発光部の面積率(発光面積率)を測定した。この評価方法による1000時間経過後の輝度維持率として、70%以上であれば長期信頼性が優れていると言え、80%以上であればより好ましい。また、発光面積率としては、80%以上であれば長期信頼性が優れていると言え、90%以上であればより好ましい。
(6)感光性樹脂組成物の調製
各実施例で用いた感光性樹脂組成物の組成は表4〜6に示す。
<ポリシロキサン溶液(PS−1)の合成>
三口フラスコに、MeTMSを28.95g(42.5mol%)、PhTMSを49.57g(50mol%)、PGMEAを74.01g仕込んだ。フラスコ内に空気を0.05L/minで流し、混合溶液を攪拌しながらオイルバスで40℃に加熱した。混合溶液をさらに攪拌しながら、水27.71gにリン酸0.442gを溶かしたリン酸水溶液を10分かけて滴下した。滴下終了後、40℃で30分間攪拌して、シラン化合物を加水分解させた。加水分解終了後、PGMEA8.22gにTMSSucA9.84g(7.5mol%)を溶かした溶液を添加した。その後、バス温を70℃にして1時間攪拌した後、続いてバス温を115℃まで昇温した。昇温開始後、約1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌した(内温は100〜110℃)。2時間加熱攪拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間攪拌した。攪拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、ポリシロキサン溶液(PS−1)を得た。得られたポリシロキサンのMwは4,000であり、カルボン酸当量は910であった。
<アクリル樹脂溶液(AC−1)の合成>
三口フラスコに、AIBNを0.821g(1mol%)、PGMEAを29.29g仕込んだ。次に、MAAを21.52g(50mol%)、TCDMを22.03g(20mol%)、STRを15.62g(30mol%)仕込み、室温でしばらく攪拌して、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間攪拌した。次に、得られた溶液に、PGMEAを59.47gにGMAを14.22g(20mol%)、DBAを0.676g(1mol%)、4−MOPを0.186g(0.3mol%)溶かした溶液を添加し、90℃で4時間攪拌して、アクリル樹脂溶液(AC−1)を得た。得られたアクリル樹脂のMwは15,000、カルボン酸当量は490であり、二重結合当量は730であった。
<ポリイミド前駆体(PIP−1)の合成>
乾燥窒素気流下、三口フラスコに、ODPAを31.02g(0.10mol;全カルボン酸およびその誘導体に由来する構造単位に対して100mol%)、NMPを150g秤量して溶解させた。ここに、NMP50gにBAHFを25.64g(0.070mol;全アミンおよびその誘導体に由来する構造単位に対して56.0mol%)、SiDAを6.21g(0.0050mol;全アミンおよびその誘導体に由来する構造単位に対して4.0mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で2時間攪拌した。次に、末端封止剤として、NMP15gにMAPを5.46g(0.050mol;全アミンおよびその誘導体に由来する構造単位に対して40.0mol%)溶かした溶液を添加し、50℃で2時間攪拌した。その後、NMP15gにDFAを23.83g(0.20mol)を溶かした溶液を10分かけて滴下した。滴下終了後、50℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温に冷却した後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリイミド前駆体(PIP−1)を得た。
<ポリイミド(PI−1)の合成>
乾燥窒素気流下、三口フラスコに、BAHFを31.13g(0.085mol;全アミンおよびその誘導体に由来する構造単位に対して77.3mol%)、SiDAを6.21g(0.0050mol;全アミンおよびその誘導体に由来する構造単位に対して4.5mol%)、末端封止剤として、MAPを2.18g(0.020mol;全アミンおよびその誘導体に由来する構造単位に対して9.5mol%)、NMPを150.00g秤量して溶解させた。ここに、NMP50.00gにODPAを31.02g(0.10mol;全カルボン酸およびその誘導体に由来する構造単位に対して100mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌した。その後、キシレン15gを添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリイミド(PI−1)を得た。
<ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−1)の合成>
乾燥窒素気流下、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸41.3g(0.16モル)、と1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール43.2g(0.32モル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物0.16モルとBAHF73.3g(0.20モル)をNMP570gに溶解させ、その後75℃で12時間反応させた。次にNMP70gに溶解させた5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物13.1g(0.08モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(容積比)の溶液に投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−1)を得た。
<顔料分散液(Bk−1)の調製>
樹脂として、上記合成例で得られたポリイミド(PI−1)の30重量%のMBA溶液を138.0g、分散剤として、S−20000を13.8g、溶剤として、MBAを685.4g、着色剤として、Bk−S0100CF82.8gを秤量して混合し、高速分散機(ホモディスパー 2.5型;プライミクス(株)製)を用いて20分攪拌し、予備分散液を得た。顔料分散用のセラミックビーズとして、0.30mmφのジルコニア粉砕ボール(YTZ;東ソー(株)製)が75%充填された遠心分離セパレータを具備する、ウルトラアペックスミル(UAM−015;寿工業(株)製)に、得られた予備分散液を供給し、ローター周速7.0m/sで3時間処理して、固形分濃度15重量%、着色剤/樹脂/分散剤=60/30/10(重量比)の顔料分散液(Bk−1)を得た。得られた顔料分散液中の顔料の数平均粒子径は100nmであった。
<感光剤(B−1)キノンジアジド化合物の合成>
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド36.27g(0.135モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(B−1)を得た。
<感光性樹脂組成物R−1の調整>
黄色灯下、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としてPS−1(10.0g)、(B)感光剤としてWPAC−336(富士フイルム和光純薬株式会社)(1.2g)を(C)有機溶剤であるPGME(32.0g)とGBL(8.0g)に加えた。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ポジ型感光性樹脂組成物のワニスR−1を得た。
<感光性樹脂組成物R−2の調整>
黄色灯下、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としてAC−1(10.0g)、(B)感光剤としてWPAC−336(富士フイルム和光純薬株式会社)(1.2g)を(C)有機溶剤であるPGME(32.0g)とGBL(8.0g)に加えた、その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ポジ型感光性樹脂組成物のワニスR−2を得た。
<感光性樹脂組成物R−3の調整>
黄色灯下、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としてPIP−1(10.0g)、(B)感光剤としてWPAC−336(富士フイルム和光純薬株式会社)(1.2g)を(C)有機溶剤であるPGME(32.0g)とGBL(8.0g)に加えた。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ポジ型感光性樹脂組成物のワニスR−3を得た。
<感光性樹脂組成物R−4の調整>
黄色灯下、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としてPIP−1(10.0g)、(B)感光剤としてB−1(1.2g)を(C)有機溶剤であるPGME(32.0g)とGBL(8.0g)に加えた。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ポジ型感光性樹脂組成物のワニスR−4を得た。
<感光性樹脂組成物R−5の調整>
黄色灯下、NCI−831を0.256g秤量し、MBAを10.186g添加し、撹拌して溶解させた。次に、PI−1の30質量%のMBA溶液を0.015g、PIP−1の30質量%のMBA溶液を0.285g、DPHAの80質量%のMBA溶液を1.422g添加して撹拌し、均一溶液として調合液を得た。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ワニスR−5を調製した。
<感光性樹脂組成物R−6の調整>
黄色灯下、NCI−831を0.256g秤量し、MBAを10.186g添加し、撹拌して溶解させた。次に、PI−1の30質量%のMBA溶液を0.015g、PIP−1の30質量%のMBA溶液を0.285g、DPHAの80質量%のMBA溶液を1.422g添加して撹拌し、均一溶液として調合液を得た。次に、顔料分散液(Bk−1)を12.968g秤量し、ここに、上記で得られた調合液を12.032g添加して撹拌し、均一溶液とした。さらに、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム0.01gを添加し、その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ワニスR−6を調製した。
<感光性樹脂組成物R−7の調整>
添加するトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを0.08gとした以外はR−6と同様に調製し、ワニスR−7を調製した。
<感光性樹脂組成物R−8の調整>
添加するトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを0.008gとした以外はR−6と同様に調製し、ワニスR−8を調製した。
<感光性樹脂組成物R−9の調整>
添加するトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを0.005gとした以外はR−6と同様に調製し、ワニスR−9を調製した。
<感光性樹脂組成物R−10の調整>
添加するトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを0.04gとした以外はR−6と同様に調製し、ワニスR−10を調製した。
<感光性樹脂組成物R−11の調整>
添加するトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを酸化カルシウム0.005gとした以外はR−6と同様に調製し、ワニスR−11を調製した。
<感光性樹脂組成物R−12の調整>
添加するトリス(8−キノリノラト)アルミニウムをリチウムキノラート錯体0.01gとした以外はR−6と同様に調製し、ワニスR−12を調製した。
<感光性樹脂組成物R−13の調整>
添加するトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを5%水酸化ナトリウム水溶液0.1gとした以外はR−6と同様に調製し、ワニスR−13を調製した。
<感光性樹脂組成物R−14の調整>
添加するトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを5%水酸化カリウム水溶液0.1gとした以外はR−6と同様に調製し、ワニスR−14を調製した。
<感光性樹脂組成物R−15の調整>
添加するトリス(8−キノリノラト)アルミニウムをN−クロロスクシンイミド0.01gとした以外はR−6と同様に調製し、ワニスR−15を調製した。
<感光性樹脂組成物R−16の調整>
黄色灯下、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としてPBO−1(10.0g)、(B)感光剤としてWPAC−336(富士フイルム和光純薬株式会社)(1.2g)を(C)有機溶剤であるPGME(32.0g)とGBL(8.0g)に加えた。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ポジ型感光性樹脂組成物のワニスR−16を得た。
<感光性樹脂組成物R−17の調整>
黄色灯下、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としてPI−1(10.0g)、(B)感光剤としてWPAC−336(富士フイルム和光純薬株式会社)(1.2g)を(C)有機溶剤であるPGME(32.0g)とGBL(8.0g)に加えた。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ポジ型感光性樹脂組成物のワニスR−17を得た。
<実施例1>
図2に使用した基板の概略図を示す。まず、38×46mmの無アルカリガラス基板に平坦化層を塗布、硬化させることで、ガラス基板/平坦化層9を得た。
平坦化層の形成においては、まず、塗布前のガラス基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。次にこのガラス基板全面に、感光性樹脂組成物R−4をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で2分間プリベークした。この膜にフォトマスクを介してUV露光した後、窒素雰囲気下250℃のオーブン中で60分間キュアした。このようにして、基板全面に平坦化層を形成した。
次に、スパッタ法によりAg0.98Pd0.01Cu0.01合金100nmとITO透明導電膜10nmを基板全面に形成し、第一電極10としてパターニングした。また、同時に第二電極を取り出すため補助電極11も形成した。第一電極と補助電極のパターニングにおいてはフォトレジストを利用し、エッチャントにより不要部分を除去した。その方法としては、まず、第一電極上にポジ型フォトレジスト(商品名:EL−PR300)を塗布し、70℃、2分でプリベークした。この基板に対し、露光量150mJ/cmで露光を行い、KOH水溶液(1%)の現像時間75秒で、パターンの形成を行った。その後、90〜120℃、5分でキュアし、第一電極と補助電極の必要な部分を覆った。その後、塩化第二鉄と塩酸を含有するエッチング液で第一電極の露出部分を除去し、NaOH水溶液(3%)でフォトレジスト硬化膜を剥離した。
得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。次にこの基板全面に、表1に示感光性樹脂組成物R−1をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で2分間プリベークした。この膜にフォトマスクを介してUV露光した後、2.38%TMAH水溶液で現像し、不要部分のみを溶解させた後、純水でリンスした。得られたパターン膜を、窒素雰囲気下250℃のオーブン中で60分間キュアした。このようにして、幅50μm、長さ260μmの開口部が幅方向にピッチ155μm、長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第一電極を露出せしめる形状の画素分割層12を、基板有効エリアに限定して形成した。このようにして、1辺が16mmの四角形である基板有効エリアに開口率18%の画素分割層を設け、その層の厚さは約2.0μmであった。
その後、次のようにして有機EL表示装置を作製した。前処理として窒素プラズマ処理をおこなった後、真空蒸着法により発光層を含む有機EL層13を形成した。なお、蒸着時の真空度は1×10−3Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。まず、正孔注入層として化合物(HT−1)を10nm、正孔輸送層として化合物(HT−2)を50nm蒸着した。発光層には表1に示す材料を用い、第1ホスト材料としての化合物(H−1)、ドーパント材料としての化合物(D−4)を、体積比で99:1になるようにして40nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として化合物(ET−1)と化合物(LiQ)を体積比1:1で40nmの厚さに積層した。有機EL層で用いた化合物の構造を以下に示す。使用した化合物で、市販されているもの以外は、それぞれ公知の方法を用いて合成した。
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgおよびAgを体積比10:1で15nm蒸着して第二電極14とした。最後に、低湿窒素雰囲気下でキャップ状ガラス板をエポキシ樹脂系接着剤(商品名:XNR−3101、XNH−3101)を用いて接着することで封止をし、1枚の基板上に1辺が5mmの四角形であるトップエミッション型の有機EL表示装置を4つ作製した。なお、ここで言う膜厚は水晶発振式膜厚モニターにおける表示値である。
これらの有機EL表示装置を用いて前記<発光材料のλ1(abs)、λ2(FL)の測定><平坦化層および画素分割層に含まれる金属元素およびハロゲン元素量の定量><外部量子効率の評価方法><長期信頼性の評価方法>に記載の方法で有機EL表示装置の評価を実施した。評価結果を表2と表3に示す。なお、平坦化層に含まれる金属元素およびハロゲン元素量はいずれも検出限界以下であり、濃度は0であった。
<実施例2〜22、比較例1〜2>
実施例1と同様に、平坦化層、画素分割層と発光層に表1記載の材料を用い、有機EL表示装置を作製した。
ここで、発光層に第2ホスト材料としての化合物(T−1〜4)を含む場合は、第1ホスト材料としての化合物(H−1)、ドーパント材料としての化合物(D−1〜4)、第2ホスト材料としての化合物(T−1〜4)を、体積比で80:1:20になるようにして40nmの厚さに蒸着した。
また、発光層にドーパント材料としての化合物(D−1〜4)、第2ホスト材料としての化合物(T−1〜4)のみを含有する場合は、ドーパント材料としての化合物(D−1〜4)、第2ホスト材料としての化合物(T−1〜4)を、体積比で1:99になるようにして40nmの厚さに蒸着した。
これらの有機EL表示装置を用いて前記<発光材料のλ1(abs)、λ2(FL)の測定><画素分割層に含まれる金属元素およびハロゲン元素量の定量><外部量子効率の評価方法><長期信頼性の評価方法>に記載の方法で有機EL表示装置の評価を実施した。評価結果を表2と表3に示す。なお、平坦化層に含まれる金属元素およびハロゲン元素量はいずれも検出限界以下であり、濃度は0であった。
1:基板
4:平坦化層
5:第一電極
6:有機EL層
7:第二電極
8:画素分割層
9:ガラス基板/平坦化層
10:第一電極
11:補助電極
12:画素分割層
13:有機EL層
14:第二電極

Claims (15)

  1. 少なくとも基板、平坦化層、画素分割層、第一電極、熱活性化遅延蛍光性材料を含む発光層および第二電極で構成される有機EL表示装置であって、該平坦化層および/または該画素分割層が感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜であり、該感光性樹脂組成物が(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、および(C)有機溶剤を含む有機EL表示装置。
  2. 前記(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂が、カルボキシル基、フェノール性水酸基およびシラノール基のうち少なくとも一つを有するアルカリ可溶性樹脂を含有する請求項1に記載の有機EL表示装置。
  3. 前記(A)酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アミド酸構造を有するポリイミド前駆体を含有する請求項2に記載の有機EL表示装置。
  4. 前記(B)感光剤が、(b1)o−キノンジアジド化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
  5. 前記(B)感光剤が(b2)光重合開始剤および(E)ラジカル重合性モノマーを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
  6. 前記感光性樹脂組成物がさらに(F)着色材料を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の有機EL表示装置。
  7. 前記感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜の少なくとも1つが、飛行時間型二次イオン質量分析により測定される不揮発成分中の金属元素および/またはハロゲン元素の含有量の総和が1×1017atom/cm以上1×1022atom/cm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の有機EL表示装置。
  8. 前記金属元素および/またはハロゲン元素がイオン性化合物として含まれる請求項7に記載の有機EL表示装置。
  9. 前記金属元素および/またはハロゲン元素が、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素を含む請求項8に記載の有機EL表示装置。
  10. 前記金属元素および/またはハロゲン元素が、アルカリ金属元素を含む請求項9に記載の有機EL表示装置。
  11. 前記金属元素および/またはハロゲン元素が、ナトリウムおよび/またはカリウムを含む請求項10に記載の有機EL表示装置。
  12. 前記金属元素および/またはハロゲン元素が、塩素を含む請求項7に記載の有機EL表示装置。
  13. 前記熱活性化遅延蛍光性材料を含む発光層が、さらに蛍光発光材料を含む請求項1〜12のいずれかに記載の有機EL表示装置。
  14. 前記蛍光発光材料が、一般式(1)で表される化合物である請求項13に記載の有機EL表示装置。
    (Xは、C−RまたはNを表す。R〜Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、−P(=O)R1011、ならびに隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。R10およびR11は、アリール基またはヘテロアリール基である。)
  15. 前記熱活性化遅延蛍光性材料が、一般式(2)で表される化合物である請求項1〜14のいずれかに記載の有機EL表示装置。
    (Aは電子供与性部位であり、Aは電子受容性部位である。Lは連結基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよく、単結合またはフェニレン基を表す。mおよびnは、それぞれ、1以上10以下の自然数である。mが2以上の場合、複数あるAおよびLはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。nが2以上の場合、複数あるAはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。)
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