JP2020001310A - 前処理液、インクセット、収容容器、記録装置、及び記録方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本実施形態の前処理液は、インクが付与される前の被印刷物に対して付与される。より具体的には、被印刷物に対して前処理液を付与し、その後、前処理液が付与された領域に対してインクを付与する。前処理液は、樹脂粒子を含む液体であって、必要に応じて、水溶性塩、水、有機溶剤、及び界面活性剤などの添加剤を含む。
樹脂粒子は、前処理液中に分散して含まれる微小な樹脂の粒子である。
樹脂粒子を構成する樹脂は、モノマー由来の構造単位として、一般式(1)で表される構造単位を有し、必要に応じて、一般式(1)で表される構造単位以外の他の構造単位を有する。また、樹脂は、モノマー由来の構造単位以外に、架橋剤由来の構造単位を有することが好ましい。
下記一般式(1)で表される構造単位は、樹脂の側鎖にノニオン性の親水性構造を有する。これにより、樹脂粒子の表面に負電荷を有することで樹脂粒子間の電荷反発により分散安定性を担保している樹脂粒子であっても、側鎖の構造によって立体反発の要素を加えることができる。従って、このような樹脂粒子を、塩析効果のある水溶性塩と併用して前処理液を作製した場合であっても、保存安定性に優れた前処理液を作製することができる。また、一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂を前処理液に用いることで、前処理液を付与することで形成される前処理液の乾燥膜の被印刷物に対する密着性を向上させることができる。これにより、前処理液の乾燥膜上に形成されるインクの乾燥膜の被印刷物に対する密着性が向上する。一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂を用いることで密着性が向上する理由は定かではないが次のように推測される。すなわち、一般的に2つの固体の接着仕事は、Dupreの式に示されるように、それぞれの固体の表面自由エネルギーと2つの固体の界面自由エネルギーに依存するため、固体の表面自由エネルギーが高いほど接着仕事が大きくなる。ここで、一般式(1)で表される構造単位は、極性の高い官能基を有している。これにより、被印刷物に対する密着力を高めることができると考えられる。加えて、極性の高い官能基を長い側鎖中に導入することにより、自由に運動できる側鎖が基材と効果的に接触できるようになり、より高い密着性付与効果を与えることができると考えられる。
また、上記一般式(1)で表される構造単位において、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基である。R2は水素原子又はメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。R3はメチル基であることが好ましい。R3がメチル基であることにより、前処理液の保存安定性が向上する。
また、上記一般式(1)で表される構造単位において、nは5以上100以下の整数であり、7以上50以下の整数であることが好ましく、9以上23以下の整数であることがより好ましい。nが5以上であると、一般式(1)で表される構造単位の構造による立体反発の効果が向上することで、樹脂粒子が水溶性塩によって凝集することが抑制され、前処理液の保存安定性が向上する。nが100以下であると、樹脂粒子の親水性が過度に高くなることが抑制され、前処理液を付与することで形成される前処理液の乾燥膜の耐水性が向上する。
一般式(1)で表される構造単位においてnが5以上10以下の整数である場合、一般式(1)で表される構造単位の含有量は、樹脂を構成する構造単位の合計量を100質量%としたとき、8.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。また、nが11以上40以下の整数である場合、4.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、nが41以上100以下の整数である場合、1.0質量%以上8.0質量%以下であることが好ましい。nの数に対応させて一般式(1)で表される構造単位の含有量を上記範囲にすることで、前処理液の保存安定性が向上する効果と前処理液の乾燥膜の耐水性が向上する効果とを両立することができる。
また、樹脂粒子の製造工程で用いた材料およびその含有量が分かれば、その含有量に基づいて一般式(1)で表される構造単位の含有量を求めることができる。
一般式(1)で表される構造単位以外の他の構造単位としては、特に限定されず、一般式(1)で表される構造単位と共重合可能な樹脂であれば公知のものから適宜選択できる。このような樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン‐ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられるが、ガラス転移温度の制御が比較的容易であり、分散安定性や耐擦過性にも優れることからウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂であることが好ましい。これらは1種または2種以上を併用してもよい。
樹脂は架橋構造を有していてもよく、例えば、樹脂粒子を製造する際に架橋剤を添加することにより、架橋構造を有する樹脂を含む樹脂粒子が得られる。架橋剤としてエチレン性不飽和化合物を使用することができる。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、加水分解性アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和化合物(ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等)、多官能ビニル化合物(ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等)などが挙げられる。
一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂を含む樹脂粒子の製造方法としては、例えば、重合することにより一般式(1)で表される構造単位を形成するモノマー、重合することにより一般式(1)で表される構造単位以外の他の構造単位を形成するモノマー、架橋剤、及び乳化剤等を攪拌した乳化液を、重合開始剤を含む水相に投下して乳化重合を行うことで樹脂粒子を得る。この重合反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。また、重合開始剤は1種または2種以上を組み合わせて用いても良い。
インクが付与される前の被印刷物に対して前処理液を付与する場合、付与された前処理液を加熱乾燥したときに、結着成分である樹脂粒子が均一に、かつ、粒界や空隙が少ない状態で密に合着・造膜することが求められる。また、前処理液が水系であって水を含有する場合や、被印刷物が非浸透性基材である場合、付与された前処理液を加熱乾燥したときに、結着成分である樹脂粒子が均一に、かつ、粒界や空隙が少ない状態で密に合着・造膜することが更に求められる。前処理液がこのような性質を有するためには、前処理液に含まれる樹脂粒子の粒子径を小さくし、かつ、ガラス転移温度を低くすることが好ましい。
そのため、樹脂粒子のメジアン粒子径D50は、120nm以下であり、30nm以上120nm以下であることが好ましく、30nm以上80nm以下であることがより好ましく、30nm以上60nm以下であることが更に好ましい。また、樹脂粒子のガラス転移温度は0℃以下であり、−50℃以上0℃以下であることが好ましく、−50℃以上−10℃以下であることがより好ましい。樹脂粒子のメジアン粒子径D50が120nm以下であり、かつ、ガラス転移温度が0℃以下であることにより、結着成分である樹脂粒子が均一に、かつ、密に被印刷物表面に充填され、前処理液付与工程後の加熱乾燥過程を経ることで樹脂粒子が軟化し、樹脂粒子同士の合着が促進される。そして、結果として、均一で粒界や空隙が少ない状態で密に合着・造膜した前処理液の乾燥膜を形成することができ、インクの乾燥膜の被印刷物に対する密着性が向上する。
樹脂粒子の含有量は、前処理液の全量に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以上13.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以上10.0質量%以下であることが更に好ましい。樹脂粒子の含有量が3.0質量%以上であることで、被印刷物上に付与された前処理液の乾燥膜により、インクの乾燥膜の被印刷物に対する密着性が向上する。また、樹脂粒子の含有量が15.0質量%以下であることで、被印刷物に対する前処理液の付与効率が向上する。
水溶性塩は、インクが被印刷物に着弾した後に、インク中の成分を速やかに凝集させ、インクのまだら状の濃度ムラ(ビーディング)を抑制する。水溶性塩としては金属塩やオキソ酸塩など、凝集させるインク中の成分によって適宜選択することが出来る。
水溶性塩の例としては特に限定されないが、インク中の顔料や樹脂粒子を効果的に凝集させることができるため、多価イオンからなる塩が好ましく、多価金属塩がより好ましい。多価金属塩としては、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属より選択される一種以上の塩であるとビーディング抑制効果に優れるため好ましい。
前処理液中における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前処理液の乾燥性の点から、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以上60.0質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
前処理液は、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。また、前処理液は、必要に応じて、顔料や染料などの色材を含有してもよい。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S−1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F−1)及び一般式(F−2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、キャプストーンFS−30、FS−31、FS−3100、FS−34、FS−35(いずれも、Chemours社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)、ユニダインDSN−403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS−3100、FS−34、FS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF−151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN−403Nが特に好ましい。
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
インクは、本実施形態の前処理液が付与された後の被印刷物において、前処理液が付与された領域に対して付与される。インクは、有機溶剤、水、色材、樹脂、及び界面活性剤等の添加剤を含む。インクに用いられる有機溶剤、水、及び界面活性剤等の添加剤については、それぞれ、上記の前処理液に用いられる有機溶剤、水、及び界面活性剤等の添加剤と共通するので、その説明を省略する。
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
本実施形態では、上記の前処理液、及び上記のインクを組み合わせたセットをインクセットとする。インクセットに用いられる前処理液は1種だけでなく、2種以上であってもよい。また、インクセットに用いられるインクは1種だけでなく、2種以上であってもよい。
なお、インクセットに含まれる前処理液の有機溶剤、及びインクセットに含まれるインクの有機溶剤は、ともに、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールから選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。前処理液、及びインクにこれらの有機溶剤を含むことにより、前処理液にのみこれらの有機溶剤を含む場合に比べて樹脂粒子が可塑化されやすくなり、前処理液の乾燥膜の造膜性が向上し、インクの乾燥膜の被印刷物に対する密着性が向上する。
本実施形態に用いる被印刷物(記録媒体とも称する)としては、特に制限なく用いることができ、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材に対して特に好適に用いることが出来る。本実施形態における非浸透性基材とは、水透過性、吸収性及び/又は吸着性が低い表面を有する基材を指しており、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれる。より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材を指す。
本実施形態における印刷物は、被印刷物と、被印刷物上に付与された前処理液の乾燥膜と、前処理液の乾燥膜上に付与されたインクの乾燥膜と、を有する。
本実施形態における収容容器は、上記の前処理液が充填されているものであり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有する。収容容器としては、その形状、構造、大きさ、材質に特に制限無く、目的に応じて適宜選択できる。収容容器が記録装置に搭載されることで、前処理液が被印刷物に対して付与される。
本実施形態の記録方法は、被印刷物に上記の前処理液を付与する前処理液付与工程と、前処理液が付与された領域に上記のインクを付与するインク付与工程と、を有する。また、本実施形態の記録装置は、上記の前処理液を収容した収容容器を搭載し、被印刷物に上記の前処理液を付与する前処理液付与手段と、前処理液が付与された領域に上記のインクを付与するインク付与手段と、を有する。
このように、塗布ローラー209を用いて、記録媒体203の記録領域に前処理液205を塗布すると、比較的粘度の高い前処理液205を記録媒体203上に薄く塗布することができ、色むらの発生をさらに抑制することができる。
なお、前処理液205は、記録媒体203の記録領域の全域に塗布してもよいし、画像が形成される領域のみに塗布してもよい。
前処理液205が塗布された記録媒体203は、第一の乾燥部303のヒートローラー311、312により、乾燥させる。具体的には、前処理液205が塗布された記録媒体203は、搬送ローラーにより、ヒートローラー311、312に搬送される。ヒートローラー311、312は、通常、50〜100℃に熱せられているため、前処理液205が塗布された記録媒体203は、ヒートローラー311、312からの接触伝熱により、水分が蒸発し、乾燥する。
第一の乾燥部303における乾燥手段としては、ヒートローラーに限定されず、赤外線乾燥装置、マイクロ波乾燥装置、温風装置等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
なお、前処理液205が塗布される前の記録媒体を加熱してもよい。
インクジェット記録部304は、フルライン型のヘッドであり、記録媒体203の搬送方向に対して、上流側から、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に対応する4つのインクジェットヘッド304K、304C、304M、304Yが配置されている。図3に示すように、ブラック(K)のインクジェットヘッド304Kは、記録媒体203の搬送方向に対して、直交する方向に、4つのヘッドユニット304K−1、304K−2、304K−3、304K−4を千鳥状に配列することにより、記録媒体203の記録領域の幅を確保している。図4に示すように、ヘッドユニット304K−1のノズル面309には、ヘッドユニット304K−1の長手方向に沿って、ノズル310が配列され、ノズル列が形成されている。
なお、ノズル列は、複数列形成されていてもよい。
また、インクジェットヘッド304C、304M、304Yも同様の構成であり、4つのインクジェットヘッド304K、304C、304M、304Yは、同じピッチを保持して搬送方向に配列されている。これにより、1回の記録動作で記録領域の幅全体に画像を形成することができる。
後処理液は、画像が形成された記録媒体203上に、透明な保護層を形成することができる。
なお、後処理液は、記録媒体203の記録領域の全域に塗布してもよいし、画像が形成された領域のみに塗布してもよい。
なお、巻き取り装置308により巻き取られる前の記録媒体203を乾燥させる巻き取り前乾燥部をさらに設置してもよい。
(ブラック顔料分散体Aの調製)
東海カーボン社製のカーボンブラック:シーストSP(SRF−LS)100gを、2.5N(規定)の次亜塩素酸ナトリウム溶液3000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行い、カーボンブラックの表面にカルボン酸基が付与された顔料を得た。この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。次いで、顔料分散体とイオン交換水を用いて透析膜による限外濾過を行い、更に、超音波分散を行って、顔料固形分を20%に濃縮した体積平均粒径100nmのブラック顔料分散体Aを得た。
以下の各材料を混合攪拌して100質量部とした後、0.8μmメンブレンフィルター(セルロース混合エステル)にて濾過することによりブラックインクAを得た。
・プロピレングリコール 15.0質量部
・3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 20.0質量部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0質量部
・界面活性剤(TEGO(登録商標) WET270)(Evonik Industries社製) 0.5質量部
・防腐剤(プロキセルLV、アビシア社製) 0.05質量部
・防錆剤(1,2,3−ベンゾトリアゾール) 0.05質量部
・エリーテルKA−5034(ユニチカ) 6.0質量部
・ブラック顔料分散体A 4.0質量部
・イオン交換水 残量
−樹脂粒子分散液1の作製例−
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管を備えた1Lのフラスコ(A)内に、イオン交換水89.0質量部を仕込み、窒素を導入しつつ70℃に昇温した。その後、下記の水溶液を投入した。
・10%アデカリアソープSR−10水溶液(ADEKA社製) 3.0質量部
・5%過硫酸アンモニウム水溶液 2.6質量部
・メタクリル酸メチル 38.9質量部
・アクリル酸2−エチルヘキシル 49.6質量部
・メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=23、商品名:ブレンマーPME−1000、日油社製) 4.0質量部
・ビニルトリエトキシシラン 7.5質量部
・アデカリアソープSR−10(ADEKA社製) 5.5質量部
・イオン交換水 42.9質量部
樹脂粒子分散液1の作製例において、フラスコ(A)およびフラスコ(B)の組成を下記表1に示す種類と配合に変更した以外は、樹脂粒子分散液1の作製例と同様にして樹脂粒子分散液2〜9を得た。なお、下記表1における組成の各数字の単位は「質量部」である。
作製した樹脂粒子のメジアン粒子径D50は、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(商品名:ELSZ−1000S、大塚電子社製)を用いて測定した。結果を下記表1に示した。なお、下記表1におけるメジアン粒子径D50の各数字の単位は「nm」である。
作製した樹脂粒子のガラス転移温度は、DSCシステムQ−2000(TAインスツルメント社製)を用いて測定した。具体的には、樹脂粒子分散液を70℃のオーブンで12時間以上加熱乾燥させ、固形分5mgをアルミニウム製の試料容器に入れて装置にセットし、窒素気流下にて以下の測定条件(1)〜(4)にて測定を行った。2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、中点法にてガラス転移温度を求めた。結果を下記表1に示した。なお、下記表1におけるガラス転移温度の各数字の単位は「℃」である。
(1)−70℃まで冷却後5分保持
(2)10℃/minで120℃まで昇温
(3)−70℃まで冷却後5分保持
(4)10℃/minで120℃まで昇温
・アクアロンHS−10(第一工業製薬社製)
・メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=9、商品名:ブレンマーPME−400、日油社製)
−前処理液1の調製例−
全量が100質量部になるように下記の配合で調合後、撹拌して混合し、前処理液1を得た。
・プロピレングリコール 15.0質量部
・3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 20.0質量部
・酢酸カルシウム一水和物 2.0質量部
・樹脂粒子分散液1 10.0質量部(固形分量)
・界面活性剤(TEGO(登録商標) WET270)(Evonik Industries社製) 0.5質量部
・防腐剤(プロキセルLV、アビシア社製) 0.05質量部
・防錆剤(1,2,3−ベンゾトリアゾール) 0.05質量部
・イオン交換水 残量
−前処理液2〜10の調製例−
実施例1において、前処理液の組成を下記表2に示す種類と配合に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2〜7、比較例1〜3の前処理液を得た。なお、下記表2における組成の各数字の単位は「質量部」である。
作製した前処理液5.0gを直径50mmのテフロンシャーレに入れて70℃のオーブン内で12時間乾燥させることにより前処理液の乾燥膜を作製した。次に、作製した前処理液の乾燥膜の0.5gを精秤し、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、及び水を15:20:65の質量比で混合した混合液5.0gに浸漬させて80℃で12時間静置した。その後、前処理液の乾燥膜を混合液中から取り出し、前処理液の乾燥膜に付着している混合液を拭き取ってからすぐに質量を測定した。そして、混合液に浸漬させる前後における前処理液の乾燥膜の質量を下記式に代入することで膨張率を算出した。なお、下記表2における膨張率の各数字の単位は「%」である。
コロナ放電処理したOPPフィルム(二軸延伸ポリプロピレン:東洋紡製パイレンP2161)に対して、バーコーター(巻き線径:0.1mm、付着量2.8g/m2)を用いて前処理液を塗工し、80℃で2分間乾燥させた。次に、コロナ放電処理したOPPフィルムの前処理液を塗工した領域に対して、インクジェット記録装置(リコー社製のIPSIO GXe5500)を用いてブラックインクAを吐出させて印刷サンプルを得た。印刷サンプルにおける密着力の測定はJIS Z 02372009「粘着テープ・粘着シート試験方法」を参考に、180°ピール法にて評価を実施した。評価によって得られるピール強度は数値が高いほど、密着力が高いことを示す。密着力の評価結果が10.0N/15mm以上である場合を実用可能であるとした。なお、下記表2の密着性の評価における「−」は、コロナ放電処理したOPPフィルム上に、前処理液の均一な乾燥膜を形成できなかったことを示す。また、下記表2における密着性の各数字の単位は「N/15mm」である。
コロナ放電処理したOPPフィルム(二軸延伸ポリプロピレン:東洋紡製パイレンP2161)に対して、バーコーター(巻き線径:0.1mm、付着量2.8g/m2)を用いて前処理液を塗工し、80℃で2分間乾燥させた。次に、コロナ放電処理したOPPフィルムの前処理液を塗工した領域に対して、インクジェット記録装置(リコー社製のIPSIO GXe5500)を用いてブラックインクAを吐出させて印刷サンプルを得た。印字チャートは、ドットパターンで形成された3cm四方のベタ画像とした。ベタ画像部分を目視により観察し、下記の評価基準に従って濃度ムラ(ビーディング)レベルをランク付けした。ビーディング性の評価結果がB以上である場合を好ましい場合であるとした。なお、下記表2の密着性の評価における「−」は、コロナ放電処理したOPPフィルム上に、前処理液の均一な乾燥膜を形成できなかったことを示す。
(評価基準)
A:濃度ムラは見られない
B:やや濃度ムラが見られるが、目視では分かりにくいレベル
C:濃度ムラが見られ、目視で明らかに分かるレベル
D:激しい濃度ムラが見られる(前処理液未塗布と同レベル)
前処理液を密閉容器に入れ、70℃の恒温槽で7日間静置し、保管前後の粘度を測定し、粘度変化率から前処理液の保存安定性を評価した。粘度は動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製、AR2000 Rheometer)を用いて25℃50%RHの環境にて測定した。コーンプレート(φ40mm、1°)を使用し、ギャップ38μm、せん断速度200(1/s)の粘度を測定した。判定は以下の評価基準にて行い、C以上である場合を好ましい場合であるとした。
(評価基準)
A:粘度変化率が10%以内であり、且つ目視可能な凝集物が発生していない。
B:粘度変化率が10%を超え20%以内であり、且つ目視可能な凝集物が発生していない。
C:粘度変化率が20%を超え50%以内であり、且つ目視可能な凝集物が発生していない。
D:粘度変化率が50%を超えている、又は目視可能な凝集物が発生している。
作製した前処理液5.0gを直径50mmのテフロンシャーレに入れて70℃のオーブン内で12時間乾燥させることにより前処理液の乾燥膜を作製した。次に、作製した前処理液の乾燥膜の0.5gを精秤し、蓋付きの瓶にイオン交換水5.0gと共に入れて浸漬させ、25℃で12時間静置した後、塗膜の質量を測定した。その後、前処理液の乾燥膜を水中から取り出し、前処理液の乾燥膜に付着している水を拭き取ってからすぐに質量を測定した。そして、水に浸漬させる前後における前処理液の乾燥膜の質量を下記式に代入することで含水率を算出し、含水率を下記の評価基準に従ってランク付けした。含水率が低いほど耐水性が高いことを示す。ビーディング性の評価結果がC以上である場合を好ましい場合であるとした。なお、下記表2の密着性の評価における「−」は、前処理液がゲル化していたため、乾燥膜を作製しなかったことを示す。
A:含水率が10%以内であり、且つ塗膜が溶解していない。
B:含水率が10%を超え50%以内であり、且つ塗膜が溶解していない。
C:含水率が50%を超え100%以内であり、且つ塗膜が溶解していない。
D:含水率が100%を超えている、又は塗膜が溶解する。
202 圧力調整装置
203 記録媒体
204 前処理液収容容器
205 前処理液
206 攪拌・供給ローラー
207 移送ローラー
208 薄膜化ローラー
209 塗布ローラー
300 記録装置
301 記録媒体搬送部
302 前処理部
303 第一の乾燥部
304 インクジェット記録部
305 後処理部
306 第二の乾燥部
307 給紙装置
308 巻き取り装置
304K、304C、304M、304Y インクジェットヘッド
304K−1、304K−2、304K−3、304K−4 ヘッドユニット
310 ノズル
311、312、313、314 ヒートローラー
Claims (11)
- インクが付与される前の被印刷物に対して付与される前処理液であって、
前記前処理液は、樹脂粒子を含み、
前記樹脂粒子は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂を含み、
前記樹脂粒子のメジアン粒子径D50は、120nm以下であり、
前記樹脂粒子のガラス転移温度は、0℃以下である前処理液。
- 前記樹脂粒子のメジアン粒子径D50は、60nm以下であり、
前記樹脂粒子のガラス転移温度は、−10℃以下である請求項1に記載の前処理液。 - 前記前処理液5.0gを直径50mmのシャーレに入れて70℃で12時間乾燥させることにより前記前処理液の乾燥膜を作製し、作製した前記乾燥膜の0.5gを、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、及び水を15:20:65の質量比で混合した混合液5.0gに浸漬させて80℃で12時間静置したとき、下記式で表される膨潤率が5.0%以上である請求項1又は2に記載の前処理液。
- 前記樹脂粒子の含有量は、前記前処理液の全量に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の前処理液。
- 水溶性塩、及び水を含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載の前処理液。
- 前記被印刷物は、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下の非浸透性基材である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の前処理液。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の前処理液と、前記インクと、を有するインクセット。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の前処理液が収容された収容容器。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の前処理液が収容された収容容器と、収容された前記前処理液を被印刷物に対して付与する前処理液付与手段と、を有する記録装置。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の前処理液を被印刷物に対して付与する前処理液付与工程を有する記録方法。
- インクが付与される前の被印刷物に対して付与される前処理液であって、
前記前処理液は、樹脂粒子を含み、
前記樹脂粒子は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂を含み、
前記前処理液5.0gを直径50mmのシャーレに入れて70℃で12時間乾燥させることにより前記前処理液の乾燥膜を作製し、作製した前記乾燥膜の0.5gを、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、及び水を15:20:65の質量比で混合した混合液5.0gに浸漬させて80℃で12時間静置したとき、下記式で表される膨潤率が5.0%以上である前処理液。
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