JP2019535815A - mTOR−DEPTOR相互作用の阻害剤及びその使用方法 - Google Patents

mTOR−DEPTOR相互作用の阻害剤及びその使用方法 Download PDF

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Abstract

本明細書では、DEPTORの阻害剤として有用な置換ヒドラゾン化合物を提供する。本発明は更に、本発明の化合物の医薬組成物を提供する。本発明は、置換ヒドラゾン化合物の医療における使用も提供する。【選択図】なし

Description

政府の所有権
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により授与された助成番号R21CA168491の政府支援によってなされたものである。アメリカ合衆国政府は本発明に対して一定の権利を有するものである。本研究は、アメリカ合衆国退役軍人省の支援を受けたものであり、アメリカ合衆国連邦政府は本発明に対して一定の権利を有するものである。
関連出願
本出願は、その全容を参照により本明細書に援用するところの2016年11月7日出願の米国仮特許出願第62/418,362号に基づく優先権を主張するものである。
DEPTORは、mTORに結合してTORC1及びTORC2複合体内のこのキナーゼを阻害する。mTORの阻害剤として、DEPTORの発現が多くの腫瘍細胞において極めて低いことは驚きではない。しかしながら、多発性骨髄腫(MM)の患者のがん細胞ではDEPTORの過剰発現が生じる。
DEPTORの過剰発現のレベルが最も高い細胞は、IgH遺伝子とMAF遺伝子との転座、または染色体8q24(DEPTOR遺伝子を含む領域)におけるコピー数増加を有するMMの特定の遺伝子カテゴリーにおいて見られる。高DEPTOR発現MM細胞株におけるDEPTORのノックダウンは、増殖停止及びアポトーシスを誘導する。DEPTORはmTOR阻害剤であるため、DEPTORノックダウンによって直ちに生じる分子作用はmTORC1及びmTORC2活性の活性化である。TORC1を機能麻痺させるとDEPTORノックダウンからMM細胞が保護されるという知見は、mTORにDEPTORが結合し、その結果、TORC1が阻害されることで、MMの生存率及び増殖に寄与することを示すものである。DEPTORのサイレンシングの抗MM効果、及びMMにおける単一の過剰発現は、DEPTORがこの悪性腫瘍における潜在的な治療標的となることを示唆している。
したがって、DEPTORを阻害し、有用な治療薬となりうる新規化合物を発見及び開発することが引き続き求められている。
特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造:
[式中、
Aは、置換されてもよいアミノ、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アシルアミノ、ジアシルアミノ、または
であり、
、R、R、及びRは、それぞれの場合でそれぞれ独立して、H、ハロ、または置換されてもよいアルキルであり、
は、それぞれの場合で独立して、H、または置換されてもよいアルキル、好ましくは分枝鎖アルキル、最も好ましくはt−ブチルである]を有する化合物に関する。
特定の実施形態では、Rは、ハロ、例えばClである。特定の実施形態では、Rは、ハロ、例えばClである。特定の実施形態では、Rは、ハロ、例えばClである。特定の実施形態では、Rは、ハロ、例えばClである。一部の実施形態では、R、R、R、及びRは、それぞれハロ、好ましくはそれぞれFまたはCl、最も好ましくはClである。
特定の実施形態では、Aは、−NHRまたは−NR(好ましくは−NHR)であり、R及びRは、それぞれの場合でそれぞれ独立して、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいシクロアルキル、置換されてもよいアリール(例えばフェニル)、または置換されてもよいヘテロアリールであり、好ましくは置換されてもよいアルキルまたは置換されてもよいアリール(例えば置換されてもよいフェニル)である。ここで、RまたはRが置換されたフェニルである場合、置換基は好ましくは環のメタ位及びパラ位に位置する。したがって、特定の好ましいかかる実施形態では、R
であり、式中、R、R、及びR10は、それぞれの場合でそれぞれ独立して、H、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルキニル、または電子吸引置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボニル、スルホニルなど。すなわち、フェニル環に電子供与できる孤立電子対を有さない置換基(例えば、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシなど))であり、好ましくはH、ハロ、または置換されてもよいアルキルである。一部の実施形態では、R及びRはHであり、R10はハロである。他の実施形態では、RはHであり、R及びR10はハロである。更に他の実施形態では、R及びRはHであり、R10は、置換されてもよい低級アルキル、例えば−CHまたは−CFである。
特定の実施形態では、Aは、
好ましくは
であり、式中、
11は、置換されてもよいアルキル、または置換されてもよいアリールもしくはヘテロアリール(例えば置換されてもよいフェニル)であり、
12は、置換されてもよいアリールまたはヘテロアリール(例えば置換されてもよいフェニル)である。
特定の実施形態では、R11は、電子吸引置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボニル、スルホニルなど。すなわち、フェニル環に電子供与できる孤立電子対を有さない置換基(例えば、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシなど))で置換されてもよいフェニルであり、好ましくはH、ハロ、または置換されてもよいアルキルである。特定の実施形態では、R11は、
であり、R13は、H、ハロ、または置換されてもよいアルキルである。特定の実施形態では、R13はFである。他の実施形態では、R13は、置換されてもよい低級アルキルである。
特定の実施形態では、R12は、電子吸引置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボニル、スルホニルなど。すなわち、フェニル環に電子供与できる孤立電子対を有さない置換基(例えば、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシなど))で置換されてもよいフェニルであり、好ましくはH、ハロ、または置換されてもよいアルキルである。
特定の好ましい実施形態では、R11とR12とは同じである。
特定の実施形態では、Rは、置換されてもよい低級アルキルである。
本発明はまた、本明細書に開示される化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物にも関する。
本発明は更に、本明細書に開示される化合物及び組成物の使用により、がんを治療する方法、がん細胞の増殖を阻害する方法、及び細胞内のDEPTOR活性を阻害する方法に関する。特定の実施形態では、がんは、乳癌、前立腺癌、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、甲状腺癌、または肺癌である。特定の実施形態では、DEPTORはがん細胞内で過剰発現される。例えば、特定の実施形態では、DEPTORは多発性骨髄腫の細胞内で過剰発現される。
DEPTOR−mTOR相互作用の阻害剤として同定されたNCI阻害剤ライブラリからのヒット化合物を示す。 化合物B(NSC126405)の例示的な構造的修飾を示す。 図3A〜図3Cは、本明細書に開示される各化合物の例示的なアッセイのデータを示す。図3Aは、8226細胞を0.5uMの各薬剤に6時間曝露した後、リン酸化p70S6K、全p70、またはアクチンの発現について行ったイムノブロットを示す。B−1=NCIから入手した化合物B;B−2=UCLAで合成された化合物B。図3Bは、各誘導体を0.5uMで使用した4つの別々の実験(n=4)からのp70リン酸化のデータの要約を示す(平均±SD)。MTT細胞毒性アッセイ(n=4)からのIC50を各バーの下に示す(平均±SD)。図3Cは、4つの最初に試験した誘導体(4b、3d、3e及び3f)のMTT細胞毒性のデータを示す(平均±SE、n=3)を示す。 図4A〜図4Eは、本明細書に開示される各化合物の例示的なアッセイのデータを示す。図4Aは、各誘導体の濃度を増加させたことによる、化合物Bに対するp70リン酸化の代表的な実験を示す(6時間の曝露)。図4Bは、増加する濃度の各誘導体に6時間曝露した後のリン酸化p70/全p70のデンシトメトリーに基づく比の、化合物Bに対する(化合物Bを便宜上「1」に維持する)増加倍率として示したp70リン酸化のデータ(平均±SD、n=4)の要約を示す。図4Cは、各誘導体によってアップレギュレートしたp21の発現を示す。図4Dは、化合物Bに対する全誘導体のMTT細胞毒性アッセイを示す(48時間のアッセイ)(平均±SD、n=4)。図4Eは、異なる誘導体への曝露の48時間後のアポトーシス率(%)を示す(平均±SD、n=4)。 図5A〜図5Eは、本明細書に開示される各化合物の例示的なアッセイのデータを示す。図5Aは、8226MM細胞またはPBLに対する薬剤B及び各誘導体のIC50を示す(48時間のアッセイ、結果は5つの別々の実験の平均である)。治療指数(TI)は、PBLに対するIC50/8226細胞に対するIC50として算出した。図5Bは、8226細胞をDMSOまたは薬剤Bで処理(6時間)した後、DEPTORの免疫沈降を行い、DEPTORまたは結合したmTORを沈降させてからイムノブロッティングを行った結果を示す。図5Cは、8226細胞をDMSOまたは0.5uMの各誘導体で処理(6時間)した後、同様の共免疫沈降アッセイを行った結果を示す。図5Dは、8226細胞にshRAPTORまたはコントロールのshSCRAMBLEを発現するレンチウイルスを感染させた後、RAPTOR、リン酸化p70、全p70、DEPTOR、またはチューブリンについてイムノブロットを行った結果を示す。図5Eは、shSCRAMBLEまたはshRAPTORを発現するMM細胞を、増加する濃度の各誘導体とインキュベートした後、MTTアッセイ(48時間)を行った結果を示す。RAPTORをサイレンシングさせた細胞で誘導した細胞毒性(すなわち細胞生存率の低下)は、コントロールのshSCRAMBLE細胞と比較して有意に低下していた(p<0.05)。 図6A〜図6Dは、本明細書に開示される各化合物の例示的なアッセイのデータを示す。化合物3gは、骨髄腫細胞株8226(図6A)、OPM2(図6B)及びH929(図6C)に対して試験した場合に薬剤NSC126405に対して向上した治療指数を示した。図6Dは、3g及び化合物B(NSC126405)のIC50のデータを特に示す。図6Eは、3g及び化合物B(NSC126405)への曝露の48時間後のアポトーシス率(%)を示す。 図7A〜図7Fは、本明細書に開示される各化合物の例示的なアッセイのデータを示す。図7Aは、化合物3gがmTORへのDEPTORの結合を阻害することを示すデータを示す。図7B、図7C、及び図7Dは、化合物3gがDEPTORの速やかなプロテアソーム依存分解を誘導することを示すデータを示す。図7E及び7Fは、DEPTORの更なる形質導入によってこのタンパク質を過剰発現させることによって抗腫瘍効果が弱められたことを示すデータを示す。 図8A及び8Bは、骨髄腫増殖の皮下異種移植腫瘍モデルにおいて3gがNSC126405よりも効果的であり(図8A)、正常なWBC数に与える影響は最小である(図8B)ことを示す化合物3gについての例示的なアッセイのデータを示す。末梢血を白血球(WBC)、ヘマトクリット(HCT)、ヘモグロビン濃度(HgI)、及び血小板数について分析した。
特定の態様では、本発明は、置換ヒドラゾン化合物、及びその医薬組成物を提供する。詳細には、かかる置換ヒドラゾン化合物はDEPTOR阻害剤として有用であり、したがって抗がん剤として使用することができる。
I.化合物
特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造:
[式中、
Aは、置換されてもよいアミノ、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アシルアミノ、ジアシルアミノ、または
であり、
、R、R、及びRは、それぞれの場合でそれぞれ独立して、H、ハロ、または置換されてもよいアルキルであり、
は、それぞれの場合で独立して、H、または置換されてもよいアルキル、好ましくは分枝鎖アルキル、最も好ましくはt−ブチルである]を有する化合物または薬学的に許容される塩に関する。
特定の実施形態では、Rは、ハロ、例えばClである。特定の実施形態では、Rは、ハロ、例えばClである。特定の実施形態では、Rは、ハロ、例えばClである。特定の実施形態では、Rは、ハロ、例えばClである。一部の実施形態では、R、R、R、及びRは、それぞれハロ、好ましくはそれぞれFまたはCl、最も好ましくはClである。
特定の実施形態では、Aは、−NHRまたは−NR(好ましくは−NHR)であり、
及びRは、それぞれの場合でそれぞれ独立して、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいシクロアルキル、置換されてもよいアリール(例えばフェニル)、または置換されてもよいヘテロアリールであり、好ましくは置換されてもよいアルキルまたは置換されてもよいアリール(例えば置換されてもよいフェニル)である。ここで、RまたはRが置換されたフェニルである場合、置換基は好ましくは環のメタ位及びパラ位に位置する。したがって、特定の好ましいかかる実施形態では、R
であり、式中、R、R、及びR10は、それぞれの場合でそれぞれ独立して、H、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルキニル、または電子吸引置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボニル、スルホニルなど。すなわち、フェニル環に電子供与できる孤立電子対を有さない置換基(例えば、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシなど))であり、好ましくはH、ハロ、または置換されてもよいアルキルである。一部の実施形態では、R及びRはHであり、R10はハロである。他の実施形態では、RはHであり、R及びR10はハロである。更に他の実施形態では、R及びRはHであり、R10は、置換されてもよい低級アルキル、例えば−CHまたは−CFである。
特定の実施形態では、Aは、
好ましくは
であり、式中、
11は、置換されてもよいアルキル、または置換されてもよいアリールもしくはヘテロアリール(例えば置換されてもよいフェニル)であり、
12は、置換されてもよいアリールまたはヘテロアリール(例えば置換されてもよいフェニル)である。
特定の実施形態では、R11は、電子吸引置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボニル、スルホニルなど。すなわち、フェニル環に電子供与できる孤立電子対を有さない置換基(例えば、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシなど))で置換されてもよいフェニルであり、好ましくはH、ハロ、または置換されてもよいアルキルである。特定の実施形態では、R11は、
であり、R13は、H、ハロ、または置換されてもよいアルキルである。いくつかの実施形態では、R13はFである。他の実施形態では、R13は、置換されてもよい低級アルキルである。
特定の実施形態では、R12は、電子吸引置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボニル、スルホニルなど。すなわち、フェニル環に電子供与できる孤立電子対を有さない置換基(例えば、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシなど))で置換されてもよいフェニルであり、好ましくはH、ハロ、または置換されてもよいアルキルである。
特定の好ましい実施形態では、R11とR12とは同じである。
特定の実施形態では、Rは、置換されてもよい低級アルキルである。
特定の実施形態では、Aは、
である。
特定の実施形態では、本発明の化合物は、例えば、親化合物中のヒドロキシルがエステルもしくはカルボン酸塩として与えられるか、または親化合物中に存在するカルボン酸がエステルとして与えられる、式Iの化合物のプロドラッグとすることができる。特定のかかる実施形態では、プロドラッグはインビボで活性な親化合物へと代謝される(例えば、エステルが対応するヒドロキシル、またはカルボン酸に加水分解される)。
特定の実施形態では、本発明の化合物はラセミ体とすることができる。特定の実施形態では、本発明の化合物は一方のエナンチオマーが濃縮されたものとすることができる。例えば、本発明の化合物は、eeが30%よりも高くともよく、eeが40%、eeが50%、eeが60%、eeが70%、eeが80%、eeが90%であってよく、または更には95%以上のeeを有してもよい。本発明の化合物は、複数の立体中心を有する。したがって、本発明の化合物は、1つ以上のジアステレオマーが濃縮されたものとすることができる。例えば、本発明の化合物は、deが30%よりも高くともよく、deが40%、deが50%、deが60%、deが70%、deが80%、deが90%であってよく、または更には95%以上のdeを有してもよい。
特定の実施形態では、下記に詳細に述べるように、本発明は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩によってがんを治療または予防する方法に関する。特定の実施形態では、主に化合物(例えば式Iの)の一方のエナンチオマーを与えるように治療用製剤を濃縮することができる。エナンチオマーを濃縮した混合物は、例えば少なくとも60mol%、またはより好ましくは少なくとも75、90、95、または更には99mol%の一方のエナンチオマーを含むことができる。特定の実施形態では、一方のエナンチオマーを濃縮した化合物は他方のエナンチオマーを実質的に含まないが、ここで実質的に含まないとは、例えば組成物または化合物の混合物中の他方のエナンチオマーの量と比較して、対象とされる物質が、10%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満を構成することを意味する。例えば、組成物または化合物の混合物が98グラムの第1のエナンチオマーと、2グラムの第2のエナンチオマーとを含む場合、組成物または化合物の混合物は、98mol%の第1のエナンチオマーと、わずか2%の第2のエナンチオマーとを含むと言われる。
特定の実施形態では、主に化合物の(例えば式Iの)1つのジアステレオマーを与えるように治療用製剤を濃縮することができる。ジアステレオマーを濃縮した混合物は、例えば少なくとも60mol%、またはより好ましくは少なくとも75、90、95、または更には99mol%の1つのジアステレオマーを含むことができる。
特定の実施形態では、本発明は、有効量の式Iのいずれかの化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む、ヒト患者のがんの治療における使用に適した医薬製剤を提供する。特定の実施形態では、医薬製剤は、本明細書に述べられる病態または疾患の治療または予防使用のものとすることができる。特定の実施形態では、医薬製剤は、ヒト患者での使用に適当であるような充分に低い発熱因子活性を有する。
上記の構造のいずれの化合物も、本明細書に開示される疾患または病態の治療用の医薬の製造に使用することができる。
II.医薬組成物
特定の実施形態では、本発明は、式Iの化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
本発明の組成物及び方法は、治療を要する個体を治療するために用いることができる。特定の実施形態では、かかる個体はヒトなどの哺乳動物、または非ヒト哺乳動物である。ヒトなどの動物に投与される場合、組成物または化合物は、例えば本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として投与されることが好ましい。薬学的に許容される担体は当該技術分野では周知のものであり、例えば、水もしくは生理学的緩衝食塩水などの水溶液、またはグリコール、グリセロール、オリーブ油などのオイル、もしくは注射用有機エステルなどの他の溶媒またはビヒクルが挙げられる。好ましい実施形態では、かかる医薬組成物がヒトへの投与用、特に非侵襲的投与(上皮バリアを通じた輸送または拡散を迂回する注射または埋込みなどの経路)である場合、水溶液は発熱因子を含まないものか、または発熱因子を実質的に含まないものである。賦形剤は、例えば、薬剤を徐放するか、または1つ以上の細胞、組織もしくは臓器を選択的に標的化する目的で選択することができる。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルなど)、粒剤、再構成するための凍結乾燥剤、粉末剤、液剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、またはこれらに類するものなどの投与単位とすることができる。組成物は、例えば皮膚パッチのような経皮的送達システム中に存在させてもよい。組成物は、点眼液のような局所投与に適した溶液中に存在させてもよい。
薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の化合物のような化合物を安定化させるか、その溶解度を高めるか、またはその吸収性を高めるように作用する生理学的に許容される剤を含むことができる。かかる生理学的に許容される剤としては、例えば、グルコース、スクロースまたはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオンのような酸化防止剤、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げられる。生理学的に許容される剤を含む、薬学的に許容される担体の選択は、例えば組成物の投与経路によって決まる。製剤または医薬組成物は、自己乳化型薬物送達システムまたは自己マイクロ乳化型薬物送達システムとすることができる。医薬組成物(製剤)は、例えば本発明の化合物を内部に取り込むことができるリポソームまたは他のポリマーマトリックスとすることもできる。例えば、リン脂質または他の脂質で構成されるリポソームは、比較的製造及び投与が簡単な、無毒性で生理学的に許容される、代謝可能な担体である。
「薬学的に許容される」なる語句は、本明細書では、妥当なベネフィット/リスク比に釣り合う、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症をともなわずに、正しい医学的判断の範囲内でヒト及び動物の組織と接触する使用に適した化合物、材料、組成物、及び/または剤形のことを指して用いられる。
本明細書で使用するところの「薬学的に許容される担体」なる語句は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、もしくは封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。それぞれの担体は、製剤の他の成分と適合性を有し、患者にとって有害ではないという意味において「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能しうる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖類;(2)トウモロコシデンプン及びバレイショデンプンなどのデンプン類;(3)セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース誘導体;(4)トラガカント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバター及び坐剤用ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナツ油、綿実油、サフラワー油、ごま油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油などのオイル;(10)プロピレングリコールなどのグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール類;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱因子非含有水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;(21)ならびに、医薬製剤中に用いられる他の無毒性の適合した物質が挙げられる。
医薬組成物(製剤)は、例えば、経口(例えば、水性もしくは非水性溶液または懸濁液のようなドレンチ剤、錠剤、カプセル剤(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルなど)、ボーラス剤、粉末剤、粒剤、舌に塗布されるペースト剤);口腔粘膜を通じた吸収(例えば舌下);肛門内、直腸内、または膣内(例えば、ペッサリー、クリーム剤、または発泡剤として);非経口(例えば滅菌溶液または懸濁液として筋肉内、静脈内、皮下、または髄腔内);鼻腔内;腹腔内;皮下;経皮(例えば、皮膚に貼付されるパッチとして);ならびに局所(例えば、皮膚に塗布されるクリーム剤、軟膏、もしくはスプレー剤、または点眼液として)を含む、多くの投与経路のいずれによって対象に投与することもできる。化合物は、吸入用に配合することもできる。特定の実施形態では、化合物を滅菌水中に単純に溶解または懸濁することができる。適当な投与経路及びそれに適した組成物の詳細については、米国特許第6,110,973号、同第5,731,000号、同第5,541,231号、同第5,427,798号、同第5,358,970号、及び同第4,172,896号、ならびにこれらの特許文献に記載される特許にみることができる。
かかる製剤は単位剤形として便宜よく提供するができ、薬学分野では周知のいずれの方法によっても調製することができる。担体材料と組み合わせて単回剤形を生成することができる有効成分の量は、治療される宿主、特定の投与様式に応じて異なる。担体材料と組み合わせて単回剤形を生成することができる有効成分の量は、一般的に治療効果を生じる化合物の量である。一般的に、100%のうち、この量は、約1%〜約99%の有効成分、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは約10%〜約30%の範囲である。
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物のような活性化合物を担体、及び必要に応じて1つ以上の補助成分と会合させる工程を含む。一般的に、製剤は、本発明の化合物を液体担体、または微粉砕された固体担体、またはその両方と均一かつ近密に会合させた後、必要に応じて製品を成形することによって調製される。
経口投与に適した本発明の製剤は、有効成分としての所定量の本発明の化合物をそれぞれが含有する、カプセル剤(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、オブラート、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(着香された基剤、通常はスクロース及びアカシアまたはトラガカントを用いる)、凍結乾燥剤、粉末剤、粒剤、または水性液もしくは非水性液中の溶液または懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型の液体エマルションとして、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(ゼラチン及びグリセリンなどの不活性基剤、またはスクロース及びアカシア)、及び/またはマウスウォッシュなどの形態とすることができる。組成物または化合物は、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与することもできる。
経口投与用の固体剤形(カプセル剤(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末剤、粒剤など)を調製するには、有効成分を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような1つ以上の薬学的に許容される担体、及び/または以下のもののいずれかと混合する。すなわち、(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/またはケイ酸などの充填剤または増量剤、(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/またはアカシアなどの結合剤、(3)グリセロールなどの保湿剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(5)パラフィンなどの溶液遅延剤、(6)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(7)例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(8)例えばカオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤、(9)例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの潤滑剤、(10)改質及び非改質シクロデキストリンなどの錯化剤、ならびに(11)着色剤。カプセル剤(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、錠剤及び丸剤の場合には、医薬組成物は緩衝剤も含むことができる。同様の種類の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖、及び高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、ソフト及びハード充填カプセル中の充填剤として使用することもできる。
錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助成分とともに圧縮または型成形により調製することができる。圧縮された錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を使用して調製することができる。型成形された錠剤は、適当な機械の中で、不活性の液体希釈剤で湿潤された粉末化化合物の混合物を型成形することにより調製することができる。
錠剤、ならびに糖衣錠、カプセル剤(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)丸剤、及び粒剤などの医薬組成物の他の固体剤形は、必要に応じて分割線を入れるか、または腸溶コーティング及び医薬品製剤化の分野では周知の他のコーティングのような、コーティング及びシェルとともに調製することができる。これらの剤形は、例えば、所望の放出プロファイルを与えるための異なる比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、リポソーム、及び/またはマイクロスフェアを使用して製剤中の有効成分の徐放性または制御放出性を与えるように製剤化することもできる。これらの剤形は、例えば細菌保持フィルターを通した濾過により、または使用直前に滅菌水もしくは他の何らかの滅菌注射媒質に溶かすことができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を含有させることにより滅菌することができる。これらの組成物は必要に応じて不透明化剤を含有してもよく、有効成分(複数化)のみを放出するか、または有効成分を消化管の特定の部分で選択的に、必要に応じて遅延させて放出する組成物とすることもできる。使用可能な包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。有効成分は、それが適当である場合には、上記に述べた賦形剤の1つ以上のものとマイクロカプセル化された形態とすることもできる。
経口投与に有用な液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション、再構成のための凍結乾燥剤、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、及びエリキシル剤が挙げられる。有効成分以外に、液体剤形は、当該技術分野で広く使用されている不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、シクロデキストリン及びその誘導体、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(詳細には、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含むことができる。
不活性希釈剤以外に、経口組成物は、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、及び防腐剤などの補助剤を含んでもよい。
懸濁液は、有効化合物以外に、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、ヒドロキシアルミニウムオキシド、ベントナイト、寒天、及びトラガカント、ならびにこれらの混合物などの懸濁化剤を含むことができる。
直腸、膣、及び尿道内投与用の医薬組成物の製剤は、坐剤として与えることができ、かかる坐剤は、1つ以上の活性化合物を、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックスまたはサリチル酸塩を含む1つ以上の適当な非刺激性賦形剤または担体と混合することにより調製することができ、また、かかる坐剤は、室温で固体であるが体温で液体となり、直腸または膣腔内で溶けて活性化合物を放出する。
口腔に投与するための医薬組成物の製剤は、マウスウォッシュ、または経口スプレー、または経口軟膏として与えることができる。
これに代えるかまたはこれに加えて、組成物を、カテーテル、ステント、ワイヤ、または他の管腔内装置を介して送達するために製剤化することができる。かかる装置を介した送達は、膀胱、尿道、尿管、直腸、または小腸に送達するうえで特に有用となりうる。
膣内投与に適した製剤には、当該技術分野で適切であることが知られている担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤も含まれる。
局所または経皮投与用の剤形としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、及び吸入剤が含まれる。活性化合物を、薬学的に許容される担体、及び必要とされうる任意の防腐剤、緩衝剤、または噴射剤と滅菌条件下で混合することができる。
軟膏、ペースト、クリーム、及びゲルは、活性化合物以外に、動物及び植物脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、及び酸化亜鉛、またはこれらの混合物などの賦形剤を含むことができる。
粉末及びスプレーは、活性化合物以外に、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、または他はこれらの物質の混合物などの賦形剤を含むことができる。スプレーは、更に、フロン、ならびにブタン及びプロパンなどの揮発性非置換炭化水素などの一般的な噴射剤を更に含むことができる。
経皮パッチは、本発明の化合物の身体への制御送達を行うことができるという更なる利点を有している。かかる剤形は、活性化合物を適当な媒質中に溶解または分散することにより調製することができる。吸収促進剤を用いて皮膚を通じた化合物のフラックスを増大させることもできる。かかるフラックスの速度は、速度制御膜を与えるか、または化合物をポリマーマトリクスもしくはゲル中に分散することにより制御することができる。
眼用製剤、眼用の軟膏、粉剤、溶液なども本発明の範囲内に含まれるものと考えられる。眼用製剤の例は、その内容を本明細書に参照によって援用するところの米国特許出願公開第2005/0080056号、同第2005/0059744号、同第2005/0031697号、及び同第2005/004074号、ならびに米国特許第6,583,124号に記載されている。必要に応じて、液体眼用製剤は、涙液、水性体液もしくは硝子体液に類似した特性を有するか、またはかかる液体と相溶性を有する。好ましい投与経路は、局所投与(例えば、点眼液などの局所投与、または埋込みによる投与)である。
本明細書で使用するところの「非経口投与」および「非経口的に投与される」なる語句には、腸内及び局所投与以外の投与様式(通常、注射による)を意味し、これらに限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、ならびに胸骨内への注射及び注入が含まれる。
非経口投与に適した医薬組成物は、1つ以上の活性化合物を、1つ以上の薬学的に許容される滅菌等張水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルション、または使用直前に滅菌注射溶液もしくは分散液中で再構成することができる滅菌粉末と組み合わせて含み、これらは、酸化防止剤、緩衝剤、制菌剤、製剤を対象とするレシピエントの血液と等張とする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含むことができる。
本発明の医薬組成物に使用することができる適当な水性および非水性の担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適当な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。例えばレシチンなどのコーティング物質の使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって適当な流動性を維持することができる。
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などの補助剤を含むこともできる。微生物の活動を、各種の抗細菌および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、及びフェノールソルビン酸など)を添加することによって確実に防止することができる。糖及び塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含有させることが望ましい場合もある。更に、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を添加することによって注射可能な医薬剤形の吸収を遅延させることができる。
場合により、薬剤の効果を延ばすために皮下または筋肉内注射からの薬剤の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性の低い結晶性または非晶質材料の懸濁液の使用によって実現することができる。したがって、薬剤の吸収速度は、結晶のサイズ及び結晶の形態に依存しうるその溶解速度によって決まる。また、非経口投与される剤形の遅延吸収は、薬剤をオイルビヒクル中に溶解または懸濁することによっても実現される。
注射可能なデポ剤形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で本化合物をマイクロカプセル化させたマトリクスを形成することにより調製される。ポリマーに対する薬剤の比、及び使用される特定のポリマーの性質に応じて薬剤放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポ剤の注射可能な製剤は、身体の組織と適合性を有するリポソームまたはマイクロエマルション中に薬剤を閉じ込めることによっても調製される。
本発明の方法で使用するためには、活性化合物はそれ自体で投与するか、または例えば0.1〜99.5%(より好ましくは0.5〜90%)の有効成分を薬学的に許容される担体とともに含む医薬組成物として投与することができる。
導入の方法は、再充填式または生分解性の装置によってあたえることもできる。タンパク質性バイオ医薬品をはじめとする、薬剤を制御送達するためのさまざまな徐放ポリマー装置が近年開発され、インビボで試験されている。生分解性及び非生分解性ポリマーを含む広範な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用して特定の標的部位で化合物を徐放するためのインプラントを形成することができる。
医薬組成物中の有効成分の実際の用量レベルを変えることで、患者に毒性を示すことなく、特定の患者に望ましい治療反応、組成物、及び投与様式を実現するうえで有効な有効成分の量を得ることができる。
選択される用量レベルは、使用される特定の化合物または化合物の組み合わせ、またはそれらのエステル、塩、もしくはアミドの活性、使用される特定の化合物(複数可)の投与経路、投与回数、排出速度、治療期間、使用される特定の化合物(複数可)と併用される他の薬剤、化合物、及び/または材料、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態、及び過去の病歴、ならびに医療分野では周知の同様の要因を含む、各種の要因に依存する。
当該技術分野における通常の技術を有する医師または獣医師であれば、必要な医薬組成物の治療有効量を容易に決定して処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物または化合物中の用量を、所望の治療効果を得るために必要な量より低い量で開始し、所望の効果が得られるまで用量を段階的に増加させることができる。「治療有効量」とは、所望の治療効果を得るうえで充分な化合物の濃度を意味する。化合物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、及び病歴によって異なる点は一般的に理解されよう。有効量に影響する他の要因としては、これらに限定されるものではないが、患者の状態の重症度、治療される疾患、化合物の安定性、及び、必要に応じて本発明の化合物とともに投与される別の種類の治療薬を挙げることができる。薬剤の複数回の投与によってより大量の総用量を投与することができる。有効性及び用量を決定するための方法は当業者には周知のものである(参照により本明細書に援用する、Isselbacher et al.(1996)Harrison’s Principles of Internal Medicine 13 ed.,1814−1882)。
一般的に、本発明の組成物及び方法に使用される活性化合物の適当な日用量は、治療効果を生じるうえで有効な最低用量である化合物の量である。かかる有効用量は、一般的に上記に述べた要因によって決まる。
所望により、活性化合物の有効な日用量を、必要に応じて単位剤形で、1日を通じて適当な間隔で別々に投与される1回、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれよりも多い分割用量として投与することができる。本発明の特定の実施形態では、活性化合物は1日2回または3回投与することができる。好ましい実施形態では、活性化合物は1日1回投与することができる。
かかる治療を受ける患者は、霊長類、特にヒト、ならびにウマ、ウシ、ブタ及びヒツジなどの他の動物、ならびに家禽及びペット全般を含む、治療を要するあらゆる動物である。
特定の実施形態では、本発明の化合物は単独で使用するか、または別の種類の治療薬と共同投与することができる。本明細書で使用するところの「共同投与」なる語句は、先に投与された治療化合物が体内で依然有効である間に第2の化合物が投与されるような、複数の異なる治療化合物のあらゆる投与の形態のことを指す(例えば、2つの化合物は患者の体内で同時に有効であり、2つの化合物の相乗効果が含まれうる)。例えば、異なる治療化合物を、同じ製剤中または別々の製剤中で、同時または順次に投与することができる。特定の実施形態では、異なる治療化合物を、互いの1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、または1週間以内に投与することができる。したがって、かかる治療を受ける個人は、異なる治療化合物の組み合わされた効果から利することができる。
特定の実施形態では、本発明の化合物と1つ以上の更なる治療薬(複数可)(例えば1つ以上の更なる化学療法剤(複数可))との共同投与は、本発明の化合物(例えば式Iの化合物)または1つ以上の更なる治療薬(複数可)のそれぞれの個別の投与に対して向上した効果を与える。特定のかかる実施形態では、共同投与は相加効果を与えるが、ここで相加効果とは、本発明の化合物と1つ以上の更なる治療薬(複数可)の個別の投与の効果のそれぞれの総和のことを指す。
本発明は、本発明の組成物及び方法における本発明の化合物の薬学的に許容される塩の使用を含む。本明細書で使用するところの「薬学的に許容される塩」なる用語には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、グリコール酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マロン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ナフタレン−2−スルホン酸、及び他の酸を含む無機または有機酸から誘導される塩が含まれる。薬学的に許容される塩の形態には、塩を構成する分子の比が1:1ではない形態が含まれうる。例えば、塩は、1分子の式Iの化合物につき2個の塩酸分子のように、塩基1分子につき複数の無機または有機酸分子を含むことができる。別の例として、塩は、酒石酸1分子につき2分子の式Iの化合物のように、塩基1分子につき1個未満の無機または有機酸分子を含んでもよい。
更なる実施形態では、想到される本発明の塩として、これらに限定されるものではないが、アルキル、ジアルキル、トリアルキル、またはテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。特定の実施形態では、想到される本発明の塩として、これらに限定されるものではないが、L−アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H−イミダゾール、リチウム、L−リシン、マグネシウム、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、及び亜鉛塩が挙げられる。特定の実施形態では、想到される本発明の塩としては、これらに限定されるものではないが、Na、Ca、K、Mg、Znまたは他の金属塩が挙げられる。
薬学的に許容される酸付加塩は、例えば水、メタノール、エタノール、及びジメチルホルムアミドなどとの各種の溶媒和物として存在してもよい。かかる溶媒和物の混合物を調製することもできる。かかる溶媒和物の供給源は、結晶化溶媒からのもの、調製もしくは結晶化溶媒中に内在するもの、またはかかる溶媒に対して外因性のものでありうる。
湿潤化剤、乳化剤及び潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び芳香剤、防腐剤及び酸化防止剤も組成物中に更に存在してよい。
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤、(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、及びα−トコフェロールなどの脂溶性酸化防止剤、ならびに(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、及びリン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
III.DEPTOR阻害剤の使用
特定の態様では、本発明は、対象に、例えば治療有効量の本明細書に開示される式Iの化合物または組成物を投与することを含む、がんの治療方法を提供する。
特定の実施形態では、がんは、乳癌、前立腺癌、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、甲状腺癌、または肺癌である。一部の実施形態では、がんは多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫の細胞は、DEPTORの過剰発現を特徴とする。
特定の実施形態では、本発明は、がん細胞を有効量の式Iの化合物と接触させることを含む、がん細胞の増殖を阻害する方法を提供する。特定の実施形態では、DEPTORはがん細胞内で過剰発現される。
本発明はまた、細胞を本明細書に開示される式Iの化合物または組成物と接触させることを含む、細胞内のDEPTOR活性を阻害する方法も提供する。特定の実施形態では、細胞はDEPTORを過剰発現する。特定の実施形態では、細胞はがん細胞である。かかる方法はインビボまたはインビトロで行うことができる。
特定の実施形態では、がんは固形腫瘍である。対象は、一般的にはがん性腫瘍を有すると診断された者、または過去にがん性腫瘍の治療を受けたことがある者である(例えば過去に腫瘍を手術によって除去した場合など)。がん性腫瘍は、原発性腫瘍及び/または続発性(例えば転移性)腫瘍であってよい。
特定の実施形態では、対象は哺乳動物、例えばヒトである。特定の実施形態では、対象はがん性細胞にDEPTORの高発現を有する。
IV.定義
「アシル」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、一般式:ヒドロカルビルC(O)−、好ましくはアルキルC(O)−により表される基を指す。
「アシルアミノ」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、アシル基で置換されたアミノ基を指し、例えば式:ヒドロカルビルC(O)NH−により表すことができる。
「アシルオキシ」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、一般式:ヒドロカルビルC(O)O−、好ましくはアルキルC(O)O−により表される基を指す。
「アルコキシ」なる用語は、酸素が結合したアルキル基、好ましくは低級アルキル基を指す。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、−OCF、エトキシ、プロポキシ、及びtert−ブトキシなどが挙げられる。
「シクロアルキルオキシ」なる用語は、酸素が結合したシクロアルキル基を指す。
「アルコキシアルキル」なる用語は、アルコキシ基で置換されたアルキル基を指し、一般式:アルキル−O−アルキルにより表すことができる。
「アルキルアミノアルキル」なる用語は、アルキルアミノ基で置換されたアルキル基を指す。
本明細書で使用するところの「アルケニル」なる用語は、少なくとも1個の二重結合を含む脂肪族基を指し、「非置換アルケニル」及び「置換アルケニル」の両方を含むものとし、後者はアルケニル基の1つ以上の炭素原子上の水素を置換した置換基を有するアルケニル部分を指す。かかる置換基は、1個以上の二重結合に含まれるかまたは含まれない1個以上の炭素上にあってよい。更に、かかる置換基には、安定性が極めて高い場合を除いて、以下に述べるようなアルキル基について想到されるすべてのものが含まれる。例えば、1個以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール基によるアルケニル基の置換が想到される。
「アルキル」基または「アルカン」は、完全に飽和した直鎖または分枝鎖の非芳香族炭化水素である。一般的に、直鎖または分枝鎖アルキルは、特に定義されないかぎり、1個〜約20個の炭素原子、好ましくは1個〜約10個を有する。直鎖及び分枝鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチル、及びオクチルが挙げられる。C〜Cの直鎖または分枝鎖アルキル基は「低級アルキル」基とも呼ばれる。
更に、本明細書、実施例及び請求の範囲の全体を通じて使用するところの「アルキル(または低級アルキル)」なる用語は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含むものとし、後者は炭化水素主鎖の1個以上の炭素上の水素を置換した置換基を有するアルキル部分を指す。特に指定しないかぎり、かかる置換基としては、例えばハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルもしくはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、もしくはチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。当業者には、それが適当であれば、炭化水素鎖上に置換された部分は、それ自体が置換されてもよい点は理解されよう。例えば、置換アルキルの置換基としては、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネート及びホスフィネートを含む)、スルホニル(サルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネートを含む)、及びシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート及びエステルを含む)、−CF、及び−CNなどの置換及び非置換の形態を挙げることができる。例示的な置換アルキルは下記に述べる。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CF、及び−CNなどによって更に置換されてもよい。
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシなどの化学部分とともに使用される場合、「Cx〜y」なる用語は、鎖中にx〜y個の炭素を含む基を含むものとする。例えば「Cx〜yアルキル」なる用語は、トリフルオロメチル及び2,2,2−トリフルオロエチルなどのハロアルキル基を含む、鎖中にx〜y個の炭素を含む直鎖アルキル及び分枝鎖アルキル基を含む、置換または非置換の飽和炭化水素基を指す。Cアルキルとは、基が末端の位置にある場合には水素を、内部にある場合には結合を示す。「C2〜yアルケニル」及び「C2〜yアルキニル」なる用語は、上記に述べたアルキルと長さ及び可能な置換において同様であるが、少なくとも1個の二重結合または三重結合をそれぞれ含む、置換または非置換の不飽和脂肪族基を指す。
本明細書で使用するところの「アルキルアミノ」なる用語は、少なくとも1個のアルキル基で置換されたアミノ基を指す。
本明細書で使用するところの「アルキルチオ」なる用語は、アルキル基で置換されたチオール基を指し、一般式:アルキルS−で表すことができる。
本明細書で使用するところの「アルキニル」なる用語は、少なくとも1個の三重結合を含む脂肪族基を指し、「非置換アルキニル」及び「置換アルキニル」の両方を含むものとし、後者はアルキニル基の1個以上の炭素原子上の水素を置換した置換基を有するアルキニル部分を指す。かかる置換基は、1個以上の三重結合に含まれるかまたは含まれない1個以上の炭素上にあってよい。更に、かかる置換基には、安定性が極めて高い場合を除いて、上記に述べたようなアルキル基について想到されるすべてのものが含まれる。例えば、1個以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が想到される。
本明細書で使用するところの「アミド」なる用語は、基:
を指し、式中、各R100は独立して水素もしくはヒドロカルビル基を表すか、または2個のR100はそれらが結合するN原子と共に環構造中に4〜8個の原子を有する複素環を形成する。
「アミン」及び「アミノ」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、非置換及び置換アミンならびにそれらの塩を指し、例えば、
により表すことができる部分であり、
式中、各R100は独立して水素もしくはヒドロカルビル基を表すか、または2個のR100はそれらが結合するN原子と共に環構造中に4〜8個の原子を有する複素環を形成する。
本明細書で使用するところの「アミノアルキル」なる用語は、アミノ基で置換されたアルキル基を指す。
本明細書で使用するところの「アラルキル」なる用語は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。
本明細書で使用するところの「アリール」なる用語には、環の各原子が炭素である置換または非置換の単環式芳香族基が含まれる。好ましくは、環は5〜7員環であり、より好ましくは6員環である。「アリール」なる用語には、2個の隣接した環で2個以上の炭素が共通している2個以上の環式環を有する多環式環系も含まれ、環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び/またはヘテロシクリルであってよい。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、及びアニリンなどが挙げられる。
「アリールアミノ」なる用語は、アミノ基を介して結合した、本明細書で定義されるアリールまたはヘテロアリール基を指す。
「カルバメート」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、基
を指し、式中、R90及びR100は独立して水素またはアルキル基などのヒドロカルビル基を表すか、またはR90とR100とは介在原子(複数可)と共に環構造中に4〜8個の原子を有する複素環を形成する。
本明細書で使用するところの「炭素環」及び「炭素環式」なる用語は、環の各原子が炭素である飽和または不飽和環を指す。炭素環なる用語には、芳香族炭素環及び非芳香族炭素環の両方が含まれる。非芳香族炭素環には、すべての炭素原子が飽和したシクロアルカン環、及び少なくとも1個の二重結合を有するシクロアルケン環の両方が含まれる。「炭素環」には、5〜7員の単環式及び8〜12員の二環式環が含まれる。二環式炭素環のそれぞれの環は、飽和環、不飽和環、及び芳香族環から選択することができる。炭素環には、1個、2個、または3個以上の原子が2個の環で共有された二環式分子が含まれる。「縮合炭素環」なる用語は、環のそれぞれが他方の環と2個の隣接原子を共有する二環式炭素環を指す。縮合炭素環のそれぞれの環は、飽和環、不飽和環、及び芳香族環から選択することができる。例示的な一実施形態では、芳香族環、例えばフェニルが、飽和または不飽和環、例えばシクロヘキサン、シクロペンタン、またはシクロヘキセンと縮合されてよい。価数的に可能であるかぎり、飽和、不飽和、及び芳香族二環式環の任意の組み合わせが炭素環の定義に含まれる。例示的な「炭素環」としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5−シクロオクタジエン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタ−3−エン、ナフタレン、及びアダマンタンが挙げられる。例示的な縮合炭素環としては、デカリン、ナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インデン、及びビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エンが挙げられる。「炭素環」は、水素原子を有することができる任意の1つ以上の位置で置換されてよい。
「シクロアルキル」基は、完全に飽和した環状炭化水素である。「シクロアルキル」には、単環式及び二環式環が含まれる。一般的に、単環式シクロアルキル基は、特に定義されないかぎり、3個〜約10個の炭素原子、より一般的には3個〜8個の炭素原子を有する。二環式シクロアルキルの第2の環は、飽和環、不飽和環、及び芳香族環から選択することができる。シクロアルキルには、1個、2個、または3個以上の原子が2個の環で共有された二環式分子が含まれる。「縮合シクロアルキル」なる用語は、環のそれぞれが他方の環と2個の隣接原子を共有する二環式シクロアルキルを指す。縮合二環式シクロアルキルの第2の環は、飽和環、不飽和環、及び芳香族環から選択することができる。「シクロアルケニル」基は、1個以上の二重結合を有する環状炭化水素である。
本明細書で使用するところの「カルボシクリルアルキル」なる用語は、カルボシクリル基で置換されたアルキル基を指す。
「カーボネート」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、基:−OCO−R100(式中、R100はヒドロカルビル基を表す)を指す。
本明細書で使用するところの「カルボキシ」なる用語は、式:−COHにより表される基を指す。
本明細書で使用するところの「エステル」なる用語は、基:−C(O)OR100(式中、R100はヒドロカルビル基を表す)を指す。
本明細書で使用するところの「エーテル」なる用語は、酸素を介して別のヒドロカルビル基に結合されたヒドロカルビル基を指す。したがって、ヒドロカルビル基のエーテル置換基は、ヒドロカルビル−O−でありうる。エーテルは、対称的または非対称的でありうる。エーテルの例としては、これらに限定されるものではないが、複素環−O−複素環、及びアリール−O−複素環が挙げられる。エーテルには、一般式:アルキル−O−アルキルにより表すことができる「アルコキシアルキル」基が含まれる。
本明細書で使用するところの「ハロ」及び「ハロゲン」なる用語はハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードが含まれる。
本明細書で使用するところの「ヘトアラルキル(hetaralkyl)」及び「ヘテロアラルキル」なる用語は、ヘタリール基で置換されたアルキル基を指す。
本明細書で使用するところの「ヘテロアルキル」なる用語は、2個のヘテロ原子が隣接しない、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子の飽和または不飽和鎖を指す。
本明細書で使用するところの「ヘテロアルキルアミノ」なる用語は、ヘテロアルキル基で置換されたアミノ基を指す。
「ヘテロアリール」及び「ヘトアリール(hetaryl)」なる用語には、その環構造が少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1個〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を含む、置換または非置換の芳香族単環式構造、好ましくは5〜7員環、より好ましくは5〜6員環が含まれる。「ヘテロアリール」及び「ヘトアリール(hetaryl)」なる用語には、2個の隣接した環で2個以上の炭素が共通している2個以上の環式環を有する多環式環系も含まれ、環の少なくとも1つはヘテロ芳香族であり、例えば他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び/またはヘテロシクリルであってよい。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジンなどが挙げられる。
本明細書で使用するところの「ヘテロ原子」なる用語は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄である。
「ヘテロシクリル」、「複素環」及び「複素環式」なる用語は、その環構造が少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1個〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を含む、置換または非置換の非芳香族環構造、好ましくは3〜10員環、より好ましくは3〜7員環を指す。「ヘテロシクリル」及び「複素環式」なる用語には、2個の隣接した環で2個以上の炭素が共通している2個以上の環式環を有する多環式環系も含まれ、環の少なくとも1つは複素環式であり、例えば他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び/またはヘテロシクリルであってよい。ヘテロサイクリル基としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、及びラクタムなどが挙げられる。ヘテロシクリル基はオキソ基によって置換されてもよい。例えば「ヘテロシクリル」には、ピロリジン及びピロリジノンの両方が含まれる。
本明細書で使用するところの「ヘテロシクリルアミノ」なる用語は、ヘテロシクリル基で置換されたアミノ基を指す。
本明細書で使用するところの「ヘテロシクロアルキル」なる用語は、複素環基で置換されたアルキル基を指す。
本明細書で使用するところの「ヘテロシクロアルキルアミノ」なる用語は、ヘテロシクロアルキル基で置換されたアミノ基を指す。
本明細書中で使用される「ヒドロカルビル」なる用語は、置換基=Oも置換基=Sも有さず、一般的には少なくとも1個の炭素−水素結合と主として炭素の主鎖を有するがヘテロ原子を含んでもよい、炭素原子を介して結合した基を指す。従って、メチル、エトキシエチル、2−ピリジル、及びトリフルオロメチルなどの基は本出願の目的においてヒドロカルビルとみなされるが、アセチル(結合炭素上に置換基=Oを有する)及びエトキシ(炭素ではなく、酸素を介して結合している)などの置換基はヒドロカルビルとみなされない。ヒドロカルビル基としては、これらに限定されるものではないが、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びその組み合わせが挙げられる。
本明細書で使用するところの「ヒドロキシアルキル」なる用語は、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシなどの化学部分とともに使用される場合、「低級」なる用語は、置換基に10個以下、好ましくは6個以下の非水素原子が含まれる基を含むものとする。「低級アルキル」とは例えば、10個以下、好ましくは6個以下の炭素原子を含むアルキル基を指す。特定の実施形態では、例えばヒドロキシアルキル及びアラルキル(その場合、例えばアルキル置換基中の炭素原子を数える際にアリール基中の原子は数えない)といった記載におけるように、それらが単独で示されるかまたは他の置換基と組み合わせて示されるかによらず、本明細書で定義されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシ置換基は、それぞれ低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、または低級アルコキシである。
本明細書で使用するところの「オキソ」なる用語は、カルボニル基を指す。オキソ置換基が例えばオキソ置換シクロアルキル基(例えば3−オキソ−シクロブチル)のようにオキソ置換基がなければ飽和している基に存在する場合、置換された基はそれでも飽和基であるものとする。ある基が「オキソ」基によって置換されていると言われる場合、これはカルボニル部分(すなわち−C(=O)−)が、メチレン単位(すなわち−CH−)を置き換えていることを意味しうる。
「ポリシクリル」、「多環」、及び「多環式」なる用語は、2個の隣接した環で2個以上の原子が共通している(例えば環が「縮合環」である)2個以上の環(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/またはヘテロシクリル)を指す。多環の環のそれぞれは、置換されても非置換でもよい。特定の実施形態では、多環のそれぞれの環は、環内に3個〜10個、好ましくは5個〜7個の原子を含む。
「シリル」なる用語は、3個のヒドロカルビル部分が結合したケイ素部分を指す。
「置換された」なる用語は、主鎖の1個以上の炭素上の水素を置換している基を有する部分を指す。「置換」または「〜で置換された」とは、かかる置換が置換された原子と置換基との可能な価数に基づいたものであり、置換が安定した化合物(例えば、転位、環化、脱離などによって自然に変化しない)を生じるという、暗黙の条件を含むことが理解されよう。本明細書で使用するところの「置換された」なる用語には、有機化合物のすべての可能な置換基が含まれることが想到される。広義の一態様において、可能な置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分枝及び非分枝、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が含まれる。可能な置換基は、適当な有機化合物について1つ以上であってよく、同じであっても異なっていてもよい。本発明の目的において、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、及び/またはヘテロ原子の価数を満たす本明細書に述べられる有機化合物のあらゆる可能な置換基を有することができる。置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分などの本明細書に述べられる任意の置換基が挙げられる。当業者には、それが適当であれば、置換基はそれ自体が置換されてもよい点は理解されよう。特に「非置換」であると断らないかぎり、本明細書において化学部分という言及には置換物が含まれるものと理解される。例えば「アリール」基または部分には、置換物及び非置換物の両方が暗黙のうちに含まれる。
「サルフェート」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、基:−OSOH、または薬学的に許容されるその塩を指す。
「スルホンアミド」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、一般式:
(式中、R及びR10は独立して、水素またはアルキルなどのヒドロカルビルを表すか、またはRとR10とは介在原子(複数可)と共に環構造中に4〜8個の原子を有する複素環を形成する)により表される基を指す。
「スルホキシド」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、基:−S(O)−R100(式中、R100はヒドロカルビルを表す)を指す。
「スルホネート」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、基:SOH、または薬学的に許容されるその塩を指す。
「スルホン」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、基:−S(O)−R100(式中、R100はヒドロカルビルを表す)を指す。
本明細書で使用するところの「チオアルキル」なる用語は、チオール基で置換されたアルキル基を指す。
本明細書で使用するところの「チオエステル」なる用語は、基:−C(O)SR100または−SC(O)R100(式中、R100はヒドロカルビルを表す)を指す。
本明細書で使用するところの「チオエーテル」なる用語はエーテルと等価であるが、この場合、酸素が硫黄で置換されたものである。
「尿素」なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、一般式:
(式中、R90及びR100は独立して水素またはアルキルなどのヒドロカルビルを表すか、またはそれぞれのR90はR100及び介在原子(複数可)と共に環構造に4〜8個の原子を有する複素環を形成する)により表すことができる。
「保護基」は、分子内の反応性官能基に結合される際に官能基の反応性を遮蔽、低減または抑制する原子群を指す。一般的に、保護基は、合成過程において必要に応じて選択的に除去することができる。保護基の例は、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,3rd Ed.,1999,John Wiley & Sons,NY and Harrison et al.,Compendium of Synthetic Organic Methods,Vols.1−8,1971−1996,John Wiley & Sons,NYにみることができる。代表的な窒素保護基としては、これらに限定されるものではないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「TES」)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、及びニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが挙げられる。代表的なヒドロキシル保護基としては、これらに限定されるものではないが、ベンジル及びトリチルエーテルなどの、ヒドロキシル基がアシル化(エステル化)またはアルキル化されたもの、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMSまたはTIPS基)、グリコールエーテル、例えばエチレングリコール及びプロピレングリコール誘導体、ならびにアリルエーテルが挙げられる。
本明細書中で使用するところの、疾患または病態を「予防」する治療薬とは、統計学的試料において、処理試料における疾患もしくは病態の発生を非処理のコントロール試料に対して低減するか、または疾患もしくは病態の1つ以上の症状の発症を未処理のコントロール試料に対して遅らせるかもしくはその重症度を低減させる化合物のことを指す。
「治療する」なる用語には、予防的及び/または治療的処置が含まれる。「予防的または治療的」処置なる用語は当該技術分野では認識されているものであり、本発明の組成物の1つ以上をホストに投与することを含む。治療薬が望ましくない状態(例えば疾患またはホスト動物の他の望ましくない状態)の臨床症状が出現する前に投与される場合にはその治療薬は予防的(すなわち、ホストを望ましくない状態の発現から保護する)であるのに対して、望ましくない状態の出現後に投与される場合には治療薬は治療的(すなわち、既存の望ましくない状態またはその副作用を低減、改善、もしくは安定させることを目的とする)である。
「プロドラッグ」なる用語には、生理的条件下で本発明の治療活性を有する物質(例えば式Iの化合物)に変換される化合物が含まれるものとする。プロドラッグの一般的な製造方法の1つは、生理条件下で加水分解されて所望の分子を生じる1つ以上の選択された部分を付与することである。他の実施形態では、プロドラッグはホスト動物の酵素活性により変換される。例えば、エステルまたはカルボン酸塩(例えばアルコールまたはカルボン酸のエステルまたはカルボン酸塩)は本発明の好ましいプロドラッグである。特定の実施形態では、上記に示した製剤中の式Iの化合物の一部またはすべてのものを、対応する適当なプロドラッグに置き換えることができる(例えば、親化合物中のヒドロキシルをエステルまたはカルボン酸塩として与えるか、または親化合物中に存在するカルボン酸をエステルとして与えるような場合)。
実施例1:化学
酵母ツーハイブリッドスクリーンを用いてNCIの小分子阻害物質ライブラリからのおよそ150,000種の化合物のパイロットスクリーニングを行い、DEPTOR−mTOR相互作用を特異的に阻害した4つの化合物(「ヒット」)を同定した(図1)。これら4つのうち、最初の2つの化合物NSC119055及びNSC119670は、極めて単純な構造であるために構造的なバリエーションについて多くの可能性を与えるものではなかった。第3の化合物NSC118305は、バリエーションについていくつかの位置を与えるものであったが、ポリオレフィン単位は非選択的毒性を生じうることから本発明者らは共役ジエン単位に関して懸念をもった。実際、この化合物は正常な造血コロニー形成細胞に対して毒性を示し、0.5μMと低い濃度でコロニー形成を完全に防止した(図示せず)。最後の化合物NSC126405はコロニー形成に対して毒性は示さなかった(10μMと高い濃度で)が、分子作用(高いmTORC1活性)及び抗MM細胞毒性(MTTアッセイ)を示した。したがって、単純に化合物Bと呼ぶ、図に示される最後の化合物NSC126405を、修飾を行ってその活性を向上させることを試みる第1の化合物として選択した。
化合物Bのすべての部分の可能な修飾を図2に示す。塩素を除去したものである、Bの非置換類似体は、恐らくは、アミノ基に正の電荷を与え、パークロロジエン系に負の電荷を与える強力な共鳴構造のために極めて反応性の高い求核物質であることが報告されていることから、置換度のより高い化合物がより安定的かつ反応性がより低いものと考え、完全非置換のシクロペンタジエン系は検討を行わなかった。一連の化合物を調製し、それらの生物活性について試験することにより、この一連の化合物について包括的な構造/活性の関係(SAR)を確立した。
最初にヒドラゾン単位を修飾し、詳細にはヒドラゾンアミンの窒素の置換基、すなわち、図2に示される化合物Bの上部を変えた。これらの化合物の合成は、2つの比較的簡単な経路によって実現された(スキーム1)。すなわち、市販のヘキサクロロシクロペンタジエン1と選択されたヒドラジン単位2のTHF中での縮合は概ね極めて効果的に進行した。ヒドラジンのHCl塩を用い、塩基を加えることも可能であった。最良の手順はしばしば、溶媒としてのピリジン中でのヒドラジンのHCl塩の使用であった。所望の化合物3は、通常、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製され、いくつかの化合物は同様に再結晶化させることもできた。親化合物Bはこの経路により収率62%で調製された。いくつかのN−アルキル誘導体3a〜3cが調製され、また、この経路を用いてR及び/またはRがアリール基であるアルキルヒドラジンまたはN−アミノアニリン2のいずれかを使用することによりいくつかのN−アリール誘導体3d〜3lが調製された。化合物3a〜3lは概して非常に濃い色、例えば暗橙色または暗赤色であった
スキーム1.試薬及び条件:(a)2遊離型、THF、22℃、(b)2HCl塩、TEA、THF、22℃、(c)2HCl塩、ピリジン、22℃。
次に、いくつかのN−モノ及びジ−アシル誘導体を調製した。4a〜4f(スキーム2)を参照されたい。モノアシル化合物4a、4c〜4dは、示されるように、塩基の存在下で親化合物Bの酸無水物またはアシルクロリドのいずれかによる選択的モノアシル化により合成された。2当量のアシルクロリドをB及び塩基と反応させた場合、ジアシル化誘導体4b、4e〜4fが得られた。また、ジ−tert−ブチルジカーボネートまたは対応するアルキルオキシカルボニルクロリドを使用してBからいくつかのN−モノ−カルバモイル誘導体4g〜4iが調製された。
スキーム2.試薬及び条件:(a)(RCO)OまたはRCOCl、TEA、THF、22℃、0.5〜3時間、(b)(ROCO)OまたはROCOCl、ピリジン、DMAP、THF、0〜22℃、16〜24時間。
ジクロロアルケン単位を有する化合物はいくらかの非特異的毒性を示す可能性がある懸念があることから、テトラクロロシクロペンタジエン環系の代わりに数個の環状及び非環状部分を導入した(スキーム3)10、11。本発明者らの基質の範囲を更に広げるため、分子の下部の修飾を行った。単純なケトン、フルオレノン、及びキサントン5と、ヒドラジンまたはヒドラジンHCl塩及びKOHとを還流エタノール中で反応させることにより、ヒドラゾン6a10、6b11、及び6dを調製した。ベンゾフェノンヒドラジン6cは市販のものを用いた。N−Boc誘導体6eは、6aから、ヒドラジンをジ−tert−ブチルジカーボネート及びピリジン及びDMAPでTHF中で処理することにより調製した12。ヒドラゾン6a〜6eの収率は概ね極めて良好であった。インダノン、シクロペンタノン、及びアセトフェノンの非置換ヒドラゾンも調製されたが、これらの化合物は二量体アジンへの転位に対して不安定であった
スキーム3.試薬及び条件:(a)N、EtOHまたはトリエチレングリコール(TEG)、還流、(b)HN−NHR HCl、KOH、EtOH、還流、(c)6a、ジ−t−ブチル−ジカーボネート、ピリジン、DMAP、THF、0〜22℃、3時間。
最後に、ヘキサクロロシクロペンタジエン1からオキシム誘導体7a及びジメトキシ類似体7bを調製した(スキーム4)13
スキーム4.試薬及び条件:(1)ヒドロキシルアミンHCl、KOH、MeOH、還流、8時間、(b)KOH、MeOH、22℃、18時間。
実施例2:化学合成
本発明の化合物を調製するための方法で用いられる一般的手順について以下に述べる。
反応はすべて、特に指定しないかぎりは開放空気条件下で行った。テトラヒドロフラン(THF)を、アルゴン雰囲気下でベンゾフェノンケチルラジカルから蒸留した。メタノール、ジクロロメタン(DCM)、及びトリエチルアミン(TEA)をアルゴン雰囲気下で水素化カルシウムから蒸留した。ヘキサクロロシクロペンタジエンは中華人民共和国のChemieliva Pharmaceutical Co.より購入し、さまざまなヒドラジンを、純度95%以上でSigma−Aldrich、Alfa Aesar、及びTCIより購入し、他のすべての溶媒または試薬は必要に応じて文献の手順にしたがって精製した。H−NMRスペクトルは、Bruker分光計で500MHzで記録し、重溶媒のシグナル(CHCl δ7.26;DMSO δ2.48ppm)に対して報告した。H NMRスペクトルは以下のように報告した。すなわち、化学シフト(δppm)、多重度、結合定数、(Hz)、及び積分値。分裂パターンは以下のように指定する。すなわち、s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、dd=ダブレットのダブレット、dt=トリプレットのダブレット、td=ダブレットのトリプレット、tt=トリプレットのトリプレット、qd=ダブレットのカルテット、qt=トリプレットのカルテット、m=マルチプレット、及びbr=ブロード。13C−NMRスペクトルは、Bruker分光計で125MHzで記録し、重溶媒のシグナル(CHCl δ77.0;DMSO δ40.0ppm)に対して報告した。19F NMRスペクトルは、Bruker分光計で376.3MHzで記録し、ベンゼン中の外部Freon−113(δ−73.75ppm)に対して報告した。13C及び19F NMRスペクトルのデータは、化学シフトの値で報告する。化学シフトは、パーツ・パー・ミリオン(ppm、δ)で報告する。融点は、Buchi B−545融点測定装置で得たものを補正せずに用いる。反応は、紫外線(254及び365nm)下でシリカゲルTLCプレートを用いて監視した後、ニンヒドリンまたはリンモリブデン酸染色溶液によって可視化した。カラムクロマトグラフィーはシリカゲル60、230〜400メッシュで行った。DART−HRMSスペクトルは、ID−CUBEイオン源及びVapur Interface(IonSense)を備えたThermo Exactive Plus MSD(Thermo Scientific)で得た。イオン源及びMSDはいずれもExcalibur、バージョン3.0により制御した。化合物の純度は、高磁場プロトン及びカーボンNMRによってアッセイし、95%以上であった。
(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(B)。ヘキサクロロ−シクロペンタジエン(1.6mL、10.0mmol、1.0当量)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶かした溶液に、ヒドラジン一水和物(1.45mL、30.0mmol、3.0当量)を0℃で滴下した。反応混合物を室温で10分間攪拌した後、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル,10:1、v/v)により精製して所望の生成物B(1.44g、62%)を赤褐色固体として得た。Rf=0.4(ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 187−189℃;H NMR(DMSO−d,500MHz)δ10.67(d,J=3.2Hz,1H),9.93(d,J=3.6Hz,1H);H NMR(CDCl,500MHz)δ8.09(br,2H);13C NMR(DMSO−d,125MHz)δ129.2,125.6,119.8,118.2,104.2;13C NMR(CDCl,125MHz)δ132.7,131.2,124.6,119.5,105.8ppm;DART−HRMS CClとして、実測値:[M+H] 230.88672,計算値:230.90448。
アルキル及びアリールヒドラゾンの代表的な合成手順
方法A.1,1−ジメチル−2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(3a) 。ヘキサクロロシクロペンタジエン(0.16mL、1.0mmol、1.0当量)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶かした溶液に、unsym−ジメチルヒドラジン(0.23mL、3.0mmol、3.0当量)を0℃で滴下した。反応混合物を室温で3時間攪拌した後、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(80mL)で希釈し、水(2×20mL)及び食塩水(20mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル,10:1、v/v)により精製して所望の生成物3a(254mg、98%)を暗褐色固体として得た。Rf = 0.45 (ヘキサン/酢酸エチル,3:1,v/v);mp 69−71 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 3.59 (s,6H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 129.5,128.4,121.8,119.4,103.0,50.5 ppm;DART−HRMS CClとして、実測値:[M+H] 258.93448 ,計算値:258.93634.
1−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)−2−フェニルヒドラジン(3d)。暗褐色固体(収率94%):Rf = 0.65 (ヘキサン/酢酸エチル,3:1,v/v);mp 130−131 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 10.7 (s,1H),7.40 (td,J = 7.5,1.5 Hz,2H),7.34 (dd,J = 9.0,1.0 Hz,2H),7.15 (tt,J = 7.5,1.0 Hz,1H);13C NMR(CDCl,125 MHz)δ 141.4,130.94,130.91,129.7,124.9,123.9,119.4,115.1,104.9 ppm;DART−HRMS C11Clとして、実測値:[M+H]306.91754,計算値:306.93634.
1−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)ヒドラジン(3g)。赤褐色固体(収率46%):Rf = 0.45 (ヘキサン/酢酸エチル,10:1,v/v);mp 146−148 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 10.69 (s,1H),7.53−7.52 (m,3H),7.38 (d,J = 5.0 Hz,1H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 142.0,132.2 (q,JCF = 32.0 Hz,1C),130.3,126.9,125.2,124.8,122.6,121.1 (q,JCF = 3.5 Hz,1C),119.8,117.9,111.7 (q,JCF = 3.8 Hz,1C),105.4;19F NMR (CDCl,376 MHz,H−dc)δ −62.90 ppm;DART−HRMS C12Clとして、実測値:[M+H]374.90492,計算値:374.92372.
1−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)−2−(m−トリル)ヒドラジン(3h)。赤褐色固体(収率32%):Rf = 0.65 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 139−141 ℃;H NMR (DMSO−d,500 MHz)δ 11.55 (s,1H),7.36 (s,1H),7.34 (d,J = 9.0 Hz,1H),7.30 (t,J = 7.5 Hz,1H),7.00 (d,J = 7.5 Hz,1H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 141.4,139.8,130.8,130.7,129.5,125.9,123.7,119.3,115.6,112.3,104.8,21.5 ppm;DART−HRMS C12Clとして、実測値:[M+H]320.93277,計算値:320.95199.
方法B.1−シクロヘキシル−2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(3b)。シクロヘキシルヒドラジンHCl(527mg、3.5mmol、3.5当量)をテトラヒドロフラン(5mL)に懸濁した懸濁液にトリエチルアミン(0.49mL、3.5mmol、3.5当量)を加え、混合物を0.5時間攪拌した。ヘキサクロロシクロペンタジエン(0.16mL、1.0mmol、1.0当量)をテトラヒドロフラン(5mL)に加えた溶液に上記で生成されたシクロヘキシルヒドラジンの遊離型を室温での濾過によって加えた。反応混合物を室温で12時間攪拌した後、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(80mL)で希釈し、水(2×20mL)及び食塩水(20mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ)により精製して所望の生成物3b(60mg、19%)を赤褐色固体として得た。Rf = 0.5 (ヘキサンのみ);mp 79−81 ℃;H NMR (DMSO−d,500 MHz)δ 10.36 (d,J = 4.0 Hz,1H),3.61−3.56 (m,1H),1.93−1.89 (m,2H),1.76−1.72 (m,2H),1.60−1.56 (m,1H),1.53 (qd,J = 12.5,3.5 Hz,2H),1.31 (qt,J = 12.5,3.5 Hz,2H),1.13 (qt,J = 12.5,3.5 Hz,1H);13C NMR (DMSO−d,125 MHz)δ 127.3,124.6,118.7,117.2,103.5,61.4,31.6,25.3,24.7 ppm;DART−HRMS C1113Clとして、実測値:[M+H]312.96460,計算値:312.98329.
1−(tert−ブチル)−2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(3c)。赤色固体(収率5%):Rf = 0.4 (ヘキサンのみ);mp 80−82 ℃;H NMR (DMSO−d,500 MHz)δ 9.98 (s,1H),1.34 (s,9H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 127.3,125.1,119.1,117.3,103.9,59.2,28.2 ppm;DART−HRMS C11Clとして、実測値:[M+H]286.96594,計算値:286.96764.
1−(3,5−ジクロロフェニル)−2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(3f)。褐色固体(収率16%):Rf = 0.6 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 188−190 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 10.52 (s,1H),7.22 (d,J = 2.0 Hz,2H),7.10 (t,J = 2.0 Hz,1H;13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 143.3,136.2,133.0,132.7,125.7,124.3,119.9,113.4,105.6 ppm;DART−HRMS C11Clとして、実測値:[M+H]374.83957,計算値:374.85839.
方法C.1−(3−フルオロフェニル)−2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(3e)。ヘキサクロロシクロペンタジエン(0.16mL、1.0mmol、1.0当量)をピリジン(5mL)に溶かした溶液に3−フルオロフェニルヒドラジンHCl(244mg、1.5mmol、1.5当量)を室温で加えた。反応混合物を室温で12時間攪拌した後、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(80mL)で希釈し、水(2×20mL)及び食塩水(20mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ)により精製して所望の生成物3e(212mg、65%)を褐色固体として得た。Rf = 0.6 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 134−136 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 10.63 (s,1H),7.33 (dt,J = 6.5,8.5 Hz,1H),7.15 (dt,J = 10.0,2.0 Hz,1H),7.01 (dd,J = 8.0,1.5 Hz,1H),6.83 (td,J = 8.0,1.5 Hz,1H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 163.8 (d,JCF = 245.3 Hz,1C),143.2 (d,JCF = 10.4 Hz,1C),131.9,131.7,131.0 (d,JCF = 9.4 Hz,1C),124.8,119.7,1115.(d,JCF = 21.5 Hz,1C),110.7 (d,JCF = 2.9 Hz,1C),105.3,102.3 (d,JCF = 26.8 Hz,1C);19F NMR (CDCl,376 MHz,H−dc)δ −110.42 ppm;DART−HRMS C11ClFNとして、実測値:[M+H]324.90814,計算値:324.92691.
1−(3−メトキシフェニル)−2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(3i)。赤褐色固体(収率50%):Rf = 0.4 (ヘキサン/酢酸エチル,10:1,v/v);mp 123−125 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 10.66 (s,1H),7.27 (t,J = 8.0 Hz,1H),6.96 (s,1H),6.84 (dd,J = 8.0,1.0 Hz,1H),6.69 (dd,J = 8.0,1.5 Hz,1H),3.85 (s,3H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 161.0,142.7,131.0,130.9,130.5,124.0,119.4,110.7,107.7,105.0,100.6,55.4 ppm;DART−HRMS C12ClOとして、実測値:[M+H]336.92801,計算値:336.94690.
1−(2−フルオロフェニル)−2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(3j)。赤褐色固体(収率52%):Rf = 0.6 (ヘキサン/酢酸エチル,20:1,v/v);mp 120−122 ℃;H NMR (DMSO−d,500 MHz)δ 11.16 (s,1H),7.65 (t,J = 8.0 Hz,1H),7.36 (dd,J = 10.0 Hz,1H),7.29 (t,J = 7.5 Hz,1H),7.20 (dd,J = 12.5,6.0 Hz,1H),3.32 (s,3H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 151.1 (d,JCF = 242.4 Hz,1C),132.7,131.8,130.1,(d,JCF = 8.4 Hz,1C),125.3 (d,JCF = 3.5 Hz,1C),124.8,124.6 (d,JCF = 7.3 Hz,1C),119.5,115.6,115.5 (d,JCF = 17.4 Hz,1C),105.6;19F NMR (CDCl,376 MHz,H−dc)δ −135.16 ppm;DART−HRMS C11ClFNとして、実測値:[M+H]324.90775,計算値:324.92691.
1−(4−フルオロフェニル)−2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(3k)。褐色固体(収率48%):Rf = 0.6 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 147−149 ℃;H NMR (DMSO−d,500 MHz)δ 11.64 (s,1H),7.59−7.56 (m,2H),7.30−7.26 (m,2H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 160.0 (d,JCF = 243.3 Hz,1C),137.8,131.0,130.9,124.1,119.4,116.5 (d,JCF = 23.1 Hz,1C),116.4 (d,JCF = 7.9 Hz,1C),104.9;19F NMR (CDCl,376 MHz,H−dc)δ −117.44 ppm;DART−HRMS C11ClFNとして、実測値:[M+H]324.90593,計算値:324.92691.
2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)−1,1−ジフェニルヒドラジン(3l)。暗赤色固体(収率78%):Rf = 0.6 (ヘキサン/酢酸エチル,10:1,v/v);mp 128−130 ℃;H NMR (DMSO−d,500 MHz)δ 7.48 (t,J = 7.5 Hz,4H),7.37 (t,J = 7.0 Hz,2H),7.34 (d,J = 7.5 Hz,4H);13C NMR (DMSO−d,125 MHz)δ 146.5,132.2,131.7,130.4,128.3,123.6,123.0,121.7,106.4 ppm;DART−HRMS C1710Clとして、実測値:[M]381.95616,計算値:381.95981.
モノ及びジアシルヒドラゾンの代表的な合成手順
方法A.N’−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ベンゾヒドラジド(4a)。(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(B、116mg、0.5mmol、1.0当量)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶かした溶液に、無水安息香酸(113mg、0.5mmol、1.0当量)及びトリエチルアミン(0.07mL、0.5mmol、1.0当量)を氷浴中で滴下した。反応混合物を室温で3時間攪拌した後、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(2×20mL)及び食塩水(50mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル,10:1、v/v)により精製して所望の生成物4a(239mg、71%)を褐色固体として得た。Rf = 0.45 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 170−172 ℃;H NMR (DMSO−d,500 MHz)δ 11.98 (s,1H),7.93 (d,J = 7.5 Hz,2H),7.69 (t,J = 7.5 Hz,1H),7.59 (t,J = 7.5 Hz,2H);13C NMR (DMSO− d,125 MHz)δ 164.8,140.8,135.0,133.7,132.1,129.5,129.3,128.7,120.8,109.7 ppm;DART−HRMS C12ClOとして、実測値:[M+H]334.91239,計算値:334.93125.
N−ベンゾイル−N’−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ベンゾヒドラジド(4b)。暗褐色固体(収率52%):Rf = 0.65 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 123−124 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 7.15 (dd,J = 8.5,1.0 Hz,2H),8.02 (dd,J = 8.5,1.0 Hz,2H),7.68 (tt,J = 7.5,1.0 Hz,1H),7.56 (t,J = 7.5 Hz,1H),7.53 (t,J = 7.5 Hz,2H),7.48 (t,J = 7.5 Hz,2H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 162.1,151.0,149.4,137.7,134.4,132.6,132.5,130.6,130.0,128.9,128.8,128.1,127.6,120.2,112.4 ppm;DART−HRMS C1911Clとして、実測値:[M+H]438.93702,計算値:438.95747.
N’−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)アセトヒドラジド(4c)。褐色固体(収率89%):Rf = 0.7 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 145−147 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 10.62 (s,1H),2.42 (s,3H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 173.6,136.3,135.1,129.1,120.9,107.5,19.6 ppm;DART−HRMS CClOとして、実測値:[M+H]272.89722,計算値:272.91560.
N’−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ピバロヒドラジド(4d)。赤褐色固体(収率71%):Rf = 0.5 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 156−158 ℃;H NMR (DMSO−d,500 MHz)δ 11.17 (s,1H),1.24 (s,9H);13C NMR (DMSO−d,125 MHz)δ 175.4,139.5,134.5,128.7,120.7,109.3,39.3,27.0 ppm;DART−HRMS C1011ClOとして、実測値:[M+H]314.94314,計算値:314.96255.
4−フルオロ−N−(4−フルオロベンゾイル)−N’−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ベンゾヒドラジド(4e)。褐色固体(収率67%):Rf = 0.75 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 126−128 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 8.17 (dd,J = 8.5,5.0 Hz,2H),8.03 (dd,J = 9.0,5.0 Hz,2H),7.20 (t,J = 9.0 Hz,2H),7.17 (t,J = 8.5 Hz,2H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 166.6 (d,JCF = 255.4 Hz,1C),165.5 (d,JCF = 253.5 Hz,1C),161.1,150.9,149.9,138.0,133.4 (d,JCF = 9.6 Hz,1C),132.8,130.6 (d,JCF = 9.0 Hz,1C),126.2 (d,JCF = 3.0 Hz,1C),123.7 (d,JCF = 2.9 Hz,1C),120.2,116.3 (d,JCF = 9.3 Hz,1C),116.2 (d,JCF = 9.3 Hz,1C),112.3;19F NMR (CDCl,376 MHz,H−dc)δ −102.42,−105.37 ppm;DART−HRMS C19Clとして、実測値:[M+H]474.91973,計算値:474.93862.
4−メチル−N−(4−メチルベンゾイル)−N’−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ベンゾヒドラジド(4f)。褐色固体(収率48%):Rf = 0.75 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 147−149 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 8.03 (d,J = 8.0 Hz,2H),7.91 (d,J = 8.0 Hz,2H),7.31 (d,J = 8.0 Hz,2H),7.27 (d,J = 10.5 Hz,2H),2.46 (s,3H),2.42 (s,3H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 162.2,151.8,149.4,145.3,143.3,137.5,132.3,130.7,129.7,129.5,128.2,127.4,127.9,120.2,112.3 ppm;DART−HRMS C2115Clとして、実測値:[M+H]466.97013,計算値:466.98877.
方法B.tert−ブチル 2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン−1−カルボキシレート(4g)。(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン(B、116mg、0.5mmol、1.0当量)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶かした溶液に、ピリジン(0.04mL、0.5mmol、1.0当量)及び4−ジメチルアミノピリジン(12mg、0.1mmol、0.2当量)を室温で加え、混合物を氷浴中で冷却した。この混合物に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(164mg、0.75mmol、1.5当量)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶かした溶液を0℃で滴下した。氷浴を外し、反応混合物を室温にまで昇温させ、室温で16時間攪拌した後、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(2×30mL)及び食塩水(30mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル,20:1、v/v)により精製して所望の生成物4h(90mg、54%)を橙色固体として得た。Rf = 0.5 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 108−110 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 10.22 (s,1H),1.56 (s,9H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 150.5,135.9,135.7,128.2,121.4,107.2,84.2,28.0 ppm;DART−HRMS C1011Clとして、実測値:[M+H]330.95319,計算値:330.95747.
プロパ−2−イン−1−イル 2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン−1−カルボキシレート(4h)。赤色固体(19%及び30%RSM):Rf = 0.5(ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 170−172 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 10.37 (s,1H),4.91 (d,J = 2.5 Hz,2H),2.58 (t,J = 2.5 Hz,1H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 151.3,137.4,136.9,129.2,121.5,107.4,76.5,76.3,54.6 ppm;DART−HRMS CClとして、実測値:[M+H]312.90698,計算値:312.91052
2−メチルブタ−3−イン−2−イル 2−(パークロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン)ヒドラジン−1−カルボキシレート(4i)。赤色固体(収率50%):Rf = 0.5 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 143−145 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 10.27 (s,1H),2.62 (s,1H),1.80 (s,6H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 149.9,136.6,136.2,128.6,121.5,107.3,83.5,75.2,73.6,28.9 ppm;DART−HRMS C11Clとして、実測値:[M+H]340.98938,計算値:340.94182.
(9H−フルオレン−9−イリデン)ヒドラジン(6a)。フルオレン−9−オン(360mg、2.0mmol、1.0当量)のエタノール(10mL)溶液に、ヒドラジン一水和物(0.29mL、6.0mmol、3.0当量)を室温で滴下した。反応混合物を6時間還流した後、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(2×30mL)及び食塩水(40mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル,10:1、v/v)により精製して所望の生成物6a(315mg、81%)を黄色固体として得た。Rf = 0.15 (ヘキサン/酢酸エチル,10:1,v/v);mp 152−154 ℃;1H NMR (CDCl,500 MHz)δ 7.91 (d,J = 7.5 Hz,1H),7.77 (d,J = 7.5 Hz,1H),7.73 (d,J = 7.0 Hz,1H),7.65 (d,J = 7.5 Hz,1H),7.44 (t,J = 7.5 Hz,1H),7.37−7.29 (d,3H),6.41 (s,2H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 145.6,141.3,138.6,137.7,130.2,129.7,128.5,127.9,127.7,125.5,120.8,120.5,119.5 ppm;DART−HRMS C1311として、実測値:[M+H]195.09088,計算値:195.09222.
(9H−キサンテン−9−イリデン)ヒドラジン(6b)。黄色固体(収率21%):Rf = 0.3 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 126−128 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 8.32 (d,J = 8.0 Hz,1H),7.91 (d,J = 7.5 Hz,1H),7.43 (t,J = 7.5 Hz,1H),7.34−7.30 (m,2H),7.21 (t,J = 7.5 Hz,1H),7.18−7.15 (m,2H),5.80 (br,2H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 154.0,151.8,135.9,130.8,129.4,127.4,124.1,123.9,123.3,122.6,118.2,117.5,116.5 ppm;DART−HRMS C1311Oとして、実測値:[M+H]211.08521,計算値:211.08714.
1−(9H−フルオレン−9−イリデン)−2−(3−フルオロフェニル)ヒドラジン(6d)。3−フルオロフェニルヒドラジンHCl(325mg、2.0mmol、2.0当量)のエタノール(10mL)懸濁液にトリエチルアミン(0.29mL、2.1mmol、2.1当量)を加え、混合物を0.5時間攪拌した。反応混合物にフルオレン−9−オン(180mg、1.0mmol、1.0当量)を加え、24時間還流した。完了後、混合物を真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(2×30mL)及び食塩水(40mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル,10:1、v/v)により精製して所望の生成物6d(242mg、84%)を褐色固体として得た。Rf = 0.4 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 159−161 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 8.80 (s,1H),7.90−7.88 (m,1H),7.83 (d,J = 8.0 Hz,1H),7.78 (d,J = 7.5 Hz,1H),7.66−7.65 (m,1H),7.45 (td,J = 7.5,0.5 Hz,1H),7.39−7.27 (m,4H),7.18 (dt,J = 11.0,2.5,1H),6.98 (dd,J = 8.0,2.0 Hz,1H),6.68 (td,J = 8.5,2.5 Hz,1H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 164.0 (d,JCF = 242.8 Hz,1C),146.2 (d,JCF = 10.6 Hz,1C),141.5,141.0,138.1,137.7,130.5 (d,JCF = 9.8 Hz,1C),130.1,129.8,128.5,128.0,127.6,124.4,121.1,120.9,119.6,109.3 (d,JCF = 2.5 Hz,1C),108.2 (d,JCF = 21.6 Hz,1C),101.0 (d,JCF = 26.5 Hz,1C)ppm ;DART−HRMS C1914FNとして、実測値:[M+H]289.11254,計算値:289.11355.
tert−ブチル 2−(9H−フルオレン−9−イリデン)ヒドラジン−1−カルボキシレート(6e)。(9H−フルオレン−9−イリデン)ヒドラジン(6a、97mg、0.5mmol、1.0当量)をテトラヒドロフラン(8mL)に溶かした溶液に、ピリジン(0.04mL、0.5mmol、1.0当量)及びDMAP(12mg、0.1mmol、0.2当量)を室温で加え、混合物を氷浴で冷却した。この混合物に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(164mg、0.75mmol、1.5当量)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶かした混合物を0℃で滴下した。氷浴を外し、反応混合物を室温にまで昇温させ、室温で3時間攪拌した後、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(2×30mL)及び食塩水(30mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル,10:1、v/v)により精製して所望の生成物6e(96mg、65%)を黄色固体として得た。Rf = 0.5 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 106−107 ℃;H NMR (CDCl,500 MHz)δ 8.85 (s,1H),7.93 (d,J = 7.5 Hz,1H),7.79 (d,J = 8.0 Hz,1H),7.74 (d,J = 7.5 Hz,1H),7.61 (d,J = 7.5 Hz,1H),7.47 (t,J = 7.5 Hz,1H),7.38−7.35 (m,2H),7.31 (t,J = 7.5 Hz,1H),1.61 (s,9H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 152.8,146.1,142.4,139.1,137.1,130.9,129.9,129.8,128.3,127.9,125.3,122.3,120.9,119.5,82.4,28.3 ppm;DART−HRMS C1819として、実測値:[M+H]295.14353,計算値:295.14353.
2,3,4,5−テトラクロロシクロペンタ−2,4−ジエン−1−オン オキシム(7a)。50mL丸底フラスコ中のヒドロキシアミンHCl(417mg、6.0mmol、6.0当量)に、メタノール(5mL)及び水酸化カリウム(337mL、6.0mmol、6.0当量)のメタノール(5mL)溶液を室温で加え、混合物を1時間攪拌した。次いで得られたKClを濾過し、ヒドロキシルアミン溶液をヘキサクロロシクロペンタジエン(0.16mL、1.0mmol、1.0当量)のメタノール(5mL)溶液に滴下し、混合物を6時間還流した。すべてのヘキサクロロシクロペンタジエンが消費された後、混合物を真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル,10:1、v/v)により精製して所望の生成物7a(80mg、34%)を赤褐色固体として得た。Rf = 0.5 (ヘキサン/酢酸エチル,5:1,v/v);mp 178−180 ℃;H NMR (DMSO−d,500 MHz)δ 14.52 (s,1H);13C NMR (DMSO−d,125 MHz)δ 145.8,134.2,128.3,119.0,109.3 ppm;DART−HRMS CHClNOとして、実測値:[M+H]231.87045,計算値:231.88905.
1,2,3,4−テトラクロロ−5,5−ジメトキシシクロペンタ−1,3−ジエン(7b)。ヘキサクロロシクロペンタジエン(0.48mL、3.0mmol、1.0当量)のメタノール(5mL)溶液に、水酸化カリウム(370mL、6.6mmol、2.2当量)のメタノール(5mL)溶液を30分間にわたって室温で滴下した。混合物を18時間攪拌し、混合物を砕いた氷(70mL)に注いだ。氷が溶けた後、混合物をジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。有機層を食塩水(100mL)及びMgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル,10:1、v/v)により精製して所望の生成物7b(230mg、29%)を明褐色油状物として得た。Rf = 0.15 (ヘキサン/酢酸エチル,10:1,v/v);H NMR (CDCl,500 MHz)δ 3.34 (s,6H);13C NMR (CDCl,125 MHz)δ 129.4,128.5,104.8,51.9 ppm.
実施例3−生物学的結果及び考察
第1の類似体群3a〜3f及び4a〜4bを、TORC1活性についてのアッセイで親化合物Bと比較した。8226細胞株は顕著なDEPTORの過剰発現を示す1,3ことから、この細胞株をこれらの実験で用いた。mTORに対して、mTOR阻害物質であるDEPTORの結合を阻止する薬剤として有効な薬剤はmTORキナーゼ活性を増大させるはずである。mTORC1において、mTORはp70S6キナーゼをリン酸化する。このため、ウェスタンブロットを用いてこの二次スクリーンでp70のリン酸化の誘導について試験した。各化合物を、6時間のインビトロ曝露により0.5、1、及び2uMで試験した。8つすべての誘導体によるp70のリン酸化の誘導は、毒性を示し、p70の分解を示したモノベンゾイル化された化合物4aを除いて、1または2uMで使用した場合に親化合物Bによるp70のリン酸化の誘導と同等であった。しかしながら、0.5uMでは、3つのN−アリール化合物3d〜3f及びジベンゾイル化された化合物4bは、p70のリン酸化の誘導について親化合物Bよりも効果的であった(図3Aに示される選択されたイムノブロット)。これに対して、N−アルキル化合物3a〜3bは化合物Bと比較して有意な活性の増大は示さず、tert−ブチル化合物3cは穏やかな活性のみを示した。この場合もやはり、モノベンゾイル化された化合物4aは毒性を示し、この低い濃度(0.5uM)においても相当の細胞死が認められた。毒性を示さなかったより低い濃度(0.05〜0.2uM)での化合物4aのフォローアップ実験ではp70のリン酸化の増強は認められず、化合物4aが非特異的な毒性を有することが示唆された。誘導体を0.5uMで使用した4つの別々の実験からのp70のリン酸化のデータの要約を図3Bに示す。これら第1の8つの誘導体を、48時間MTTアッセイにおいて同じ8226細胞株に対する細胞毒性についてもスクリーニングした。これらのアッセイにおけるIC50を図3Bの棒グラフの下に示し、1つの実験の例を図3Cに示す。一般的には、各類似体で分子作用(すなわち、p70のリン酸化を増大させる能力)とそれらの抗MM細胞毒性作用との間に相関が示された。高い分子作用を示した4つの類似体(4b、3d、3e及び3f)は親化合物Bと比較してIC50もより低かった。これに対して、親化合物Bと比較してp70のリン酸化の増大をほとんどまたはまったく示さなかった化合物(3a〜3c)は、抗MM細胞毒性も増大されていなかった。上記に述べたように、化合物4aはp70のリン酸化に影響を及ぼさずに細胞毒性を示したことから、その抗MM採用は非特異的なものと考えられた。
第1の類似体群3a〜3f及び4a〜4bからの最初の結果に基づき、4つのカテゴリーで更なる類似体を設計して合成し、それらの分子活性及び抗MM細胞毒性活性をp70リン酸化及びMTTアッセイで評価した。p70のリン酸化は6時間処理した8226細胞で測定した。親化合物Bは、8226細胞を0.5uMに曝露した後にp70のリン酸化を誘導する効果が一貫して認められなかったため、0.5uMの濃度を用いてこれらの更なる誘導体を分子活性の増大についてスクリーニングした。MTT(48時間)アッセイでは、8226細胞に加えて更なるDEPTOR過剰発現MM細胞株であるMM1.Sを用いた。一般的にMM1.S細胞は、親化合物Bの細胞毒性活性に対して8226よりも感受性が低い(8226及びMM1.SのIC50はそれぞれ1.3uM及び3.0uM)。すべての誘導体の構造及び生物活性を、構造的修飾によってカテゴリー分けして表1〜4に示す。
最初に、3つのN−アリール化された化合物3d〜3fは有望な結果を示したことから、フェニル環3g〜3iの3位に電子吸引基または電子供与基を有するアリール誘導体を調製し、ヒドラゾンに対するフェニル置換基の影響をより詳しく調べた。表1は、化合物3a〜3lのp70リン酸化及びMTTアッセイの結果を示す。最も活性が高かったのは3−トリフルオリメチルフェニル類似体3gであった。すなわち、p70リン酸化は4倍の増大を示し、8226及びMM1.SMM細胞株に対するIC50はそれぞれ0.17uM及び1.0uMであった。電子供与基を有する類似体3h〜3iは、良好な活性を示さなかった。一般に、電子吸引置換基の数が多い類似体は最も高い活性を示した(例えば3g及び3k)。置換基の位置の影響についても検討を行った。3−フルオロ及び4−フルオロ類似体である3e及び3kは、8226及びMM1.S細胞株で同様のIC50を示したが、興味深い点として、4−フルオロ類似体3kがp70リン酸化アッセイにおいてより高い活性を示したのに対して2フルオロ類似体3jは活性を示さなかった。最後にジフェニル類似体3lはまったく活性を示さなかった。
次に、モノ及びジアシル誘導体4a〜4fの一連の類似体、ならびにいくつかのカルバメート誘導体4g〜4iについて検討した(表2)。モノベンゾイル化された類似体4aは、8226及びMM1.Sに対するIC50値がそれぞれ0.6及び0.8uMであり、想定された非特異的毒性がMTTアッセイによりここでもやはり示された。モノアセチル化された類似体4cも化合物Bによる処理と比較して0.5uMでp70リン酸化の増大は示さず、8226細胞に対する細胞毒性は(薬剤Bに対して)同様であった。これに対して、モノピバロイル化された類似体4dでは、p70リン酸化は7倍の大幅な増大を示し、これは、MTTアッセイにおける両方の細胞株での低いIC50値(8226及びMM1.Sでそれぞれ0.12及び2.0uM)とよく相関していた。
N−ジベンゾイル化された化合物4bが初期の試験で非常に有望であったことから、フェニル環の4位に異なる置換基を有する2つの更なるジベンゾイル化化合物を調製した。予想されたように、化合物4e及び4fはいずれもp70リン酸化及びMTTアッセイにおいて良好な結果を示した。更に、アリール誘導体の結果と一致して、4位に電子吸引置換基を有する化合物4eは、他の2つのジアシル誘導体よりも更に良好な結果を示した。カルバメート誘導体4g〜4iも調製して検討を行った。tert−ブチルオキシカルボニル類似体4gは、p70リン酸化において6倍の大幅な増大を示し、8226及びMM1.Sに対するIC50が0.1uM及び0.6uMと細胞毒性の増大も示した。末端アセチレンを有する他のカルバメート誘導体4h及び4iを調製してクリックケミストリーによるビオチンタンパク質標識の更なる可能な検討を行ったが、これらの化合物が示したmTORC1の活性化の増大は最小であった。単純なプロパルギル化合物4hのみが、MTTアッセイにおいていくらかの細胞毒性を示した。
tert−ブチル単位を有する3つの類似体、すなわち、アルキル類似体3c、アシル類似体4d、及びカルバメート4gを比較することが恐らく興味深い。アルキル類似体3cがp70リン酸化において示した活性が最小であったのに対して、ピバロイル(tert−ブチルカルボニル)類似体4d及びt−Boc(tert−ブチルオキシカルボニル)類似体4gはp70リン酸化及びMTTアッセイの両方において極めて良好な活性を示した。
次いで、テトラクロロシクロペンタジエン環系以外の環式及び非環式部分を有する誘導体6a〜6eについて検討した(表3)。上部の単位としての非置換ヒドラジンには変更を行わず、下部を9−フルオレニル(6a)、9−キサンチル(6b)、及びベンゾフェノン(6c)に改変した。しかしながら、これらの新規な類似体はp70リン酸化及びMTTアッセイのいずれにおいても何らの改善も示さなかった。3−フルオロフェニル(3e)及びt−Bocカルバメート(4g)類似体は、テトラクロロシクロペンタジエンを下部の単位として高い生物活性を示したため、9−フルオレニル足場上でこれらの置換基を導入することで類似体6d及び6eを得たが、これらの類似体も依然明らかではない理由により何らの活性も示さなかった。
最後に、オキシム及びジメトキシ誘導体7a及び7bを検討したところ、これらはいずれもp70リン酸化及びMTT細胞毒性アッセイにおいて低い活性を示した(表4)。
各カテゴリーのすべての誘導体は、分子として有効な誘導体間で大まかな相関を示し(すなわち、0.5uMでp70リン酸化を増大させることが可能である)、効果的な細胞毒性化合物であった。p70リン酸化アッセイで活性を示した(0.5uMで化合物Bと比較して1.8倍以上の増大)9種類の分子(3d、3e、3f、3g、3k、4b、4d、4e及び4g)のすべてが、親化合物Bと比較して高い細胞毒性効果(すなわち、より低いIC50)を有していた。分子作用のない(すなわち、p70リン酸化の増大が1.8倍未満である)多くの化合物のうち、4a、4f及び4hの3つのみが高い細胞毒性効果を示し、これらは非特異的なものと考えられた。
これらのスクリーニング実験より、類似体3g、3k、4d、4e及び4gがp70リン酸化アッセイにおいて最も活性の高い化合物として同定された。そこで、これらをより詳細に検討した。図4A及び4Bに示されるように、これらの生化学的に修飾された化合物は、より低い濃度の親化合物Bと比較した場合に1uMで同等の量のp70リン酸化を誘導したものの、0.25uMと低い濃度で著しくより効果的であった。DEPTORノックダウンまたは親化合物Bの更なる分子作用として、p21を標的とするmiRNAのTORC1依存性発現の低下に起因すると考えられる、p21の発現のアップレギュレーションがある3,4。p21の発現上昇は、DEPTOR標的化の抗MM細胞毒性に寄与する。図4Cに示されるように、親化合物Bと比較して増大したTORC1活性化を示すこれらの誘導体の一部のものは、p21の発現の増大も示し、これらの生化学的修飾がより効果的なDEPTOR標的化を可能にするという発想を更に裏付けるものである。このことは4d、4e、4g、及び3gについて明らかに示された。図4Dは更に、8226MTTアッセイにおけるこれらの薬剤の増大した抗MM細胞毒性を示している。8226細胞のアポトーシスを増大させるこれらの薬剤の能力について試験したところ、図4Eに示されるように、これらのアポトーシス活性は親化合物Bと比較して増大していた。
抗骨髄腫効果を非特異的毒性と比較するため、これら5つの活性誘導体のそれぞれを、正常な末梢血リンパ球(PBL)に対して8226MM細胞の生存を阻害するそれらの能力について比較した。直接比較を行う実験において、それぞれの標的のIC50値を計算し、比較した。図5Aに示されるように、誘導体のそれぞれは化合物Bと比較して著しく低いMM細胞に対するIC50値を示したが、これらの誘導体はPBLに対して異なる程度の毒性の増大も示した。しかしながら、誘導体のうちの3つのもの(3g、3k及び4g)は、親化合物Bと比較して著しく改善された治療指数(TI)を示した。これら3つの活性誘導体(3g、3k及び4g)がMMの細胞死を誘発する能力が、DEPTOR/mTORの結合及びmTORC1活性化のこれらの誘導体による効果的な干渉に特異的に関連しているという事実を更に支持するため、共免疫沈降実験を行った。化合物Bは1uMで使用した場合にMM細胞におけるDEPTOR/mTORの結合を阻止したが、0.5uMでは有効ではなかった(図5B)。しかしながら、高いTIを有する3つすべての誘導体は、0.5uMで使用した場合にDEPTOR/mTORの結合を阻止した(図5C)。これらの誘導体を、RAPTORノックダウンを有する同質遺伝子系統における抗MM細胞毒性についても試験した。図5Dは、mTORC1活性化に対するRAPTORノックダウンの阻害効果を示している。最後に図5Eに示されるように、MTT細胞毒性アッセイは、RAPTORをサイレンシングしたMM細胞に対して試験した場合にも3つの誘導体すべてによって誘発された著しく低い細胞毒性を示したが、このことは、これらの誘導体の分子作用が細胞毒性効果に関連していることに一定の支持を与えるものである。
実施例4.生物学的アッセイ
以下のアッセイ法を用いて、DEPTORを阻害するうえで有効な式(I)の化合物を同定及び評価した。
細胞株。8226及びMM1.S骨髄腫細胞株をATCCより購入した。FISH分析によりこれらの細胞株の特性評価を行ったところ、MAF/Ig転座を有することが示された。ウェスタンブロットにより、DEPTORタンパク質の顕著な過剰発現が確認された。両細胞株を最後の6ヶ月内にマイコプラズマについて試験したところ、陰性であった。
ウェスタンブロットアッセイ−上記に述べたようにタンパク質を抽出し、12.5%SDS−PAGEにより分離した(下記の新しい参照文献を参照)。タンパク質をポリビニリデンジフルオリド膜に転写し、Cell Signaling(Beverly,MA)より購入した特異的抗体を用いてそれらの発現を検出した。
MTTアッセイ。1〜2×10個の標的細胞を96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェル内の0.1mlの完全培地中に播種することによりMTTアッセイを行った。各化合物とのインキュベーション後、生細胞によるMTTのホルマザンへの還元を、570nmのフィルターを備えたマイクロプレートELISAリーダーにより測定した。各群で4重のウェルで試験したところ、各群のSDは常に平均の5%未満であった。実験群のODをコントロール群(DMSOのみでインキュベートした細胞)のODと比較し、後者を便宜上100%として、結果をコントロールに対する割合(%)及び生存率(%)として示した。
アポトーシスアッセイ。アポトーシス性細胞を識別するため、活性化したカスパーゼ3(BD Biosciences)に特異的なフィコエリトリン(PE)結合抗体を使用した。染色を行うため、10個の細胞をPBSで洗浄し、0.5mlのcytofix/cytoperm溶液で固定し、透過処理した。次いで、細胞をPE結合モノクローナル抗カスパーゼ3抗体の1:5希釈液と30分間インキュベートし、フローサイトメトリーにより分析した。
RAPTORノックダウン:RAPTORまたはスクランブル配列(コントロール)を標的とするショートヘアピンRNA(shRNA)/pLKO.1をAddgeneより入手した。UCLAのVector Core facilityにレンチウイルスを生産してもらい、レンチウイルスにより細胞に形質導入し、ジェネティシン中で選択して安定した細胞株を調製した。
統計的分析:各誘導体化合物によるp70リン酸化の誘導をデンシトメトリーにより測定し、リン酸化されたp70のイムノブロットシグナルを全p70に対して比較した。次に、この比を、親化合物Bから得られた比を便宜上「1」として親化合物Bからの比と比較した。各誘導体を一定の濃度範囲で用いてMTT細胞毒性のIC50を測定した。フローサイトメトリーにより、DMSOで処理した培養物で測定されたコントロールアポトーシスを差し引くことにより、薬剤で処理した培養物におけるアポトーシス率(%)を算出した。DMSOコントロール培養物のアポトーシス率(活性化カスパーゼ3について陽性に染色されたもの)は常に15%未満であった。
実施例5−骨髄腫増殖の異種移植腫瘍モデル
簡単に述べると、5×10個の8226細胞をマウスの皮下にチャレンジし、骨髄腫腫瘍が500mmに達した時点でマウスにDMSO、化合物B、または化合物3g(20mg/kg)を4日間、毎日腹腔内投与して処理を行った。腫瘍サイズ(平均±SD、n=5)を毎日評価した(図8A)。=p<0.05でコントロール(DMSO)との差。**=p<0.05で化合物Bとの差。4日間の処理後、マウスを屠殺し、末梢血を白血球(WBC)、ヘマトクリット(HCT)、ヘモグロビン濃度(HgI)、及び血小板数について分析した(図8B)。データは、コントロール(DMSOで処理したマウスで求めた)に対する割合(%)、平均±SD、n=5で示す。=p<0.05でコントロール(DMSO)との差。
参考文献
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(3)Yang,Y.;Bardeleben,C.;Frost,P.;Hoang,B.;Shi,Y.;Finn,R.;Gera,J.;Lichtenstein,A.DEPTOR is linked to a TORC1−p21 survival proliferation pathway in multiple myeloma cells.Genes & Cancer 2014,5,407−419.
(4)Shi,Y.;Daniels−Wells,T.;Frost,P.;Lee,J.;Finn,R.;Bardeleben,C.;Penichet,M.;Jung,M.E.;Gera,J.;Lichtenstein,A.Cytotoxic properties of a DEPTOR−mTPR inhibitor in multiple myeloma cells.Cancer Res.2016,76,5822−5831.
(5)Hafner,K.;Schulz,G.;Wagner,K.Cyclisch konjugierte 5− und 7−Ringsysteme I.6−Amino− sowie 6−Hydroxy−fulvene und deren Aza−analoga.Liebigs Ann.Chem.1964,678,39−53.
(6)Disselnkotter,H.Tetrachlor−diazo−cyclopentadien aus Hexachlor−cyclopentadien.Angew.Chem.1964,76,431−432.
(7)For a discussion of the source of the color of these compounds and other analogues,see: Griffiths,J.;Lockwood,M.Chromogens based on Non−benzenoid Aromatic Systems.Part III.Synthesis,Spectra,and Molecular Orbital Calculations in the Substituted Fulvene and 6−Azafulvene Series.J.Chem.Soc.Perkin Trans 1 1976,48−54.
(8)A discussion of this novel finding will be the subject of an upcoming manuscript.
(9)Dixon,D.D.;Ford,M.E.Preparation of N−Acyl substituted tetrachlorocyclopentadienone hydrazones.Synthesis 1980,306−308.
(10)Bartucci,M.A.;Wierzbicki,P.M.;Gwengo,C.;Shajan,S.Hussain,S.H.;Ciszek,J.W.Synthesis of dihydroindolizines for potential photoinduced work function alteration.Tetrahedron Lett.2010,51,6839−6842.
(11)Hafiz,M.;Taylor,G.A.Keten.Part 17.Addition reactions of ketens with N−phenyl nitrones.J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1980,8,1700−1705.
(12)Garcia−Ramos,Y.;Proulx,C.;Lubell,W.D.Synthesis of hydrazine and azapeptide derivatives by alkylation of carbazates and semicarbazones.Can.J.Chem.2012,90,985−993.
(13)Malihi,F.;Clive,D.L.J.;Chang,C.−C.;Minaruzzaman.Synthetic studies on CP−224,917 and CP−263,114: Access to advanced tetracyclic systems by intramolecular conjugate displacement and [2,3]−Wittig rearrangement.J.Org.Chem.2013,78,996−1013.
(14)Tu,Y.;Gardner A.;Lichtenstein,A.The phosphatidylinositol 3−kinase/AKT kinase pathway in multiple myeloma plasma cells: Roles in cytokine−dependent survival and proliferative responses.Cancer Res.2000,60,6763−6770
参照による援用
本明細書で触れられるすべての刊行物及び特許文献は、それぞれの刊行物及び特許文献があたかも詳細かつ個別に参照により援用されていることが示されているものと同様にして、それらの全容を本明細書に参照により援用するものとする。矛盾が生じる場合、本明細書のあらゆる定義を含む本出願が優先するものとする。
均等物
以上、本発明の具体的な実施形態について述べたが、上記の明細書は例示的なものであって、限定的なものではない。本発明の多くの変形例が、本明細書及び以下の特許請求の範囲を参照することで当業者には明らかとなろう。本発明の完全な範囲は、特許請求の範囲を、それらの均等物の完全な範囲及びかかる変形例とともに明細書を参照することによって定められるものである。

Claims (44)

  1. 式Iの構造:
    [式中、
    Aは、置換されてもよいアミノ、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アシルアミノ、ジアシルアミノ、または
    であり、
    、R、R、及びRは、それぞれの場合でそれぞれ独立して、H、ハロ、または置換されてもよいアルキルであり、
    は、それぞれの場合で独立して、H、または置換されてもよいアルキルである]を有する、請求項1に記載の化合物。
  2. がハロである、請求項1のいずれか1項に記載の化合物。
  3. がClである、請求項2に記載の化合物。
  4. がハロである、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
  5. がClである、請求項4に記載の化合物。
  6. がハロである、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
  7. がClである、請求項6に記載の化合物。
  8. がハロである、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
  9. がClである、請求項8に記載の化合物。
  10. 、R、R、及びRがそれぞれハロであり、好ましくはそれぞれFまたはClである、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
  11. Aが、−NHRまたは−NRであり、R及びRが、それぞれの場合でそれぞれ独立して、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいシクロアルキル、置換されてもよいアリール、または置換されてもよいヘテロアリールである、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
  12. 及びRが、それぞれの場合でそれぞれ独立して、置換されてもよいアルキル、または置換されてもよいアリールである、請求項11に記載の化合物。
  13. 及びRが、それぞれの場合でそれぞれ独立して、置換されてもよいフェニルである、請求項12に記載の化合物。
  14. 前記置換基が、好ましくは環のメタ位及びパラ位に位置する、請求項13に記載の化合物。
  15. 及びRが、それぞれの場合でそれぞれ独立して、
    であり、
    、R、及びR10が、それぞれの場合でそれぞれ独立して、H、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルキニル、または電子吸引置換基である、請求項14に記載の化合物。
  16. 前記電子吸引置換基が、ハロゲンもしくはシアノ、ニトロ、カルボニル、またはスルホニル基である、請求項15に記載の化合物。
  17. 、R、及びR10が、それぞれの場合でそれぞれ独立して、H、ハロ、または置換されてもよいアルキルである、請求項15に記載の化合物。
  18. 及びRがHであり、R10がハロである、請求項17に記載の化合物。
  19. がHであり、R及びR10がハロである、請求項17に記載の化合物。
  20. 及びRがHであり、R10が置換されてもよい低級アルキルである、請求項17に記載の化合物。
  21. 10が、−CHまたは−CFである、請求項20に記載の化合物。
  22. Aが、
    であり、
    11が、置換されてもよいアルキル、または置換されてもよいアリールもしくはヘテロアリールであり、
    12が、置換されてもよいアリールまたはヘテロアリールである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
  23. Aが、
    である、請求項22に記載の化合物。
  24. 11が、置換されてもよいアルキルまたはフェニルであり、
    12が、置換されてもよいフェニルである、請求項22または23に記載の化合物。
  25. 11が、電子吸引置換基で置換されてもよいフェニルである、請求項22〜24のいずれか1項に記載の化合物。
  26. 前記電子吸引置換基が、ハロゲンもしくはシアノ、ニトロ、カルボニル、またはスルホニル基である、請求項25に記載の化合物。
  27. 11
    であり、R13が、H、ハロ、または置換されてもよいアルキルである、請求項22〜24のいずれか1項に記載の化合物。
  28. 13がFである、請求項27に記載の化合物。
  29. 13が、置換されてもよい低級アルキルである、請求項27に記載の化合物。
  30. 11とR12とが同じである、請求項22〜29のいずれか1項に記載の化合物。
  31. が、置換されてもよい分枝鎖アルキルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
  32. が低級アルキルである、請求項31に記載の化合物。
  33. がt−ブチルである、請求項31または32に記載の化合物。
  34. Aが、
    である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
  35. Aが、
    である、請求項34に記載の化合物。
  36. 先行請求項のいずれかに記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
  37. 対象のがんを治療または予防する方法であって、前記対象に請求項1〜35のいずれか1項に記載の化合物または請求項36に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
  38. 前記がんが、乳癌、前立腺癌、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、甲状腺癌、または肺癌である、請求項37に記載の方法。
  39. 前記がんが、多発性骨髄腫である、請求項38に記載の方法。
  40. 前記多発性骨髄腫の細胞が、DEPTORの過剰発現を特徴とする、請求項39に記載の方法。
  41. がん細胞の増殖を阻害する方法であって、前記がん細胞を請求項1〜35のいずれか1項に記載の化合物または請求項36に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
  42. DEPTORが前記がん細胞で過剰発現している、請求項41に記載の方法。
  43. 細胞内のDEPTOR活性を阻害する方法であって、前記細胞を請求項1〜35のいずれか1項に記載の化合物または請求項36に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
  44. 前記細胞がDEPTORを過剰発現している、請求項43に記載の方法。
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