高い透明度と耐衝撃性の組み合わせを有するポリプロピレン(PP)ポリマーの選択は、ランダムコポリマー(RCP)、耐衝撃性コポリマー(ICP)、またはポリプロピレン(PP)と混和性であるかもしくは類似する屈折率を有するかのいずれかのエラストマーを用いて耐衝撃性を改質されたものに限られる。エラストマー改質剤の耐衝撃性効果は、その結晶性および個々のエラストマードメインのPPマトリックスへの分散に直接関係している。慣習的には、ポリプロピレン中へのエラストマーの分散は、溶融混合プロセスおよびポリプロピレンとの相溶性によって挑戦されている。有意な改良は、透明の冷凍庫用容器および他の低温用途に使用するための透明度および耐衝撃要件を満たすことができるエラストマー改質剤を開発することであろう。
以下に定義されるように、例えば結晶性ブロック複合体およびブロック複合体を含む複合体成分は、PP中に混合されたときにエラストマー相のドメインサイズを(例えば100〜500nmに)減少させる相溶化溶液を提供する。これらのPPおよびエラストマーの新規相溶化ブレンドは、古典的なブレンドで達成可能なものよりも微細な形態を有する、より広範囲の熱力学的に安定な組成物を提供し、その結果、独特の性質の組み合わせがもたらされる。
現在まで、エラストマーの添加は、ポリプロピレンの弾性率および透明度を著しく低下させた。透明なエラストマー材料を得るためには、典型的には、可視波長の光の散乱を避けるために、ゴムドメインサイズを根本的に縮小する代わりに、材料の屈折率整合が必要である。本開示において、連続的なPP相を有するPPホモポリマーと結晶性ブロック複合体またはブロック複合体とのブレンドは、驚くべきことに、単純なPP/エラストマーブレンドよりも小さくかつ離散したゴムドメインをもたらす。この場合、ゴムドメインサイズは可視光の波長(400〜700nm)よりも小さいので、光の散乱が少なくなり、ポリマーは透明なままである。結晶性ブロック複合体およびブロック複合体は相溶化ゴムを含むので、この新規な耐衝撃性を改質されたPPは、低温で改善された靭性を示し、かつPPホモポリマーと同様の光透過率を有する。
上記概念に対するさらなる改良は、アルファ−オレフィンコモノマー含量が高く、より低い密度を有し、かつ屈折率整合されていないものを含む、エチレン系オレフィンブロックコポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なINFUSE(商標)オレフィンブロックコポリマー)のドメインサイズを縮小することであろう。例えば、オレフィンブロックコポリマーの相溶化およびサイジングは、その比較的高いコモノマー(例えば、オクテン)含量およびそのソフトブロック量に起因して最も高い耐衝撃効果をもたらし、それによって低いガラス転移温度(<−50℃)をもたらす。
したがって、以下に論じるように、本開示は、予期されなかった驚くべき新規組成物の発見に関し、この組成物は、結晶性ブロック複合体またはブロック複合体と、PPに対して非常に有効な耐衝撃性改質剤であるエチレン系オレフィンブロックコポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なINFUSE(登録商標)オレフィンブロックコポリマー)とを含む複合体成分を含む。驚くべきことに、このような新規耐衝撃性改質剤組成物は、高密度ポリエチレンおよび低密度エラストマーの画分を含有し、そのどちらもPPと屈折率が整合していないため、相溶性がある。このような組成物は、PP中の改善された分散をもたらすために複合体成分と相溶化することができ、PP中で透明のままであり、かつ冷凍庫温度で優れた耐衝撃靭性を提供することが実証された。
この新規の相溶化アプローチは、エラストマー相の改善された分散および形態安定化に効果的であり、ポリプロピレンのための非常に効率的な耐衝撃性改質剤をもたらす。したがって、高い透明度、高い弾性率、および−50℃のTgを有するこれらの新規組成物は、冷凍庫用途および剛性耐久財に適した高い透明度の耐衝撃性コポリマーを開発するのに有用であろう。改善されたバランスの耐衝撃性、透明度、および弾性率から恩恵を得ることができる他の用途には、装飾フィルム、包装フィルム、レトルト食品包装、射出延伸ブロー成形ボトル、BOPPフィルム、熱成形トレイおよびカップ、玩具用透明包装、ウィンドウフィルムおよびグレージング、天窓、光ファイバー、保護フィルム、セキュリティフィルム、グラフィックアート、看板、光拡散剤、光管理、光および色強調フィルム、模造金属塗料および外観、低温シーラント、バンドリング、ストレッチフード、自動車内装用透明インストルメントパネル、自動車用ヘッドライトカバー、メガネおよびコーティング、光電池用フィルム、剛性チューブ、カーテン用剛性透明ロッド、温室用フィルム、ランプガード、ウォーターピッチャー、飲用グラス、ビールジョッキ、キッチンおよび/またはバスルームの蛇口ハンドルまたはカバーが含まれるが、これらに限定されない。
用語
本開示における数値範囲は近似値であり、したがって、別途示されない限り、範囲外の値を含み得る。本明細書に開示されている数値範囲は、下限値および上限値を含む下限値から上限値の全ての値を含む。明確な数値(例えば、1もしくは2、または3〜5、または6、または7)を含む範囲については、任意の2つの明確な数値間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、1〜2、2〜6、5〜7、3〜7、5〜6など)。化学化合物に関して使用される場合、特に別途示されない限り、単数は全ての異性形態を含み、その逆もまた同様である。
本明細書中の元素の周期律表への全ての言及は、CRC Press,Inc.,2003によって出版および著作権化されている元素の周期律表を指すものとする。また、族(複数可)へのいずれの参照も、族の付番のためにIUPACシステムを使用して、元素のこの周期表に反映された族(複数可)に対するものとする。反対のことが記載されないか、文脈から示唆されないか、または当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部およびパーセントは、重量に基づく。米国特許実務の目的のため、本明細書で参照される任意の特許、特許出願、または刊行物の内容は、特に当該技術分野における合成技法、定義(本明細書に提供される任意の定義と矛盾しない程度において)、および一般的な知識に関して、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる(または、それらの同等の米国版が、参照によってそのように組み込まれる)。
「組成物」などの用語は、2つ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。例えば、1つの組成物は、プロピレン系ポリマーとブロック複合体との組み合わせである。
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、および同類の用語は、2つ以上のポリマーのブレンドを意味する。そのようなブレンドは、混和性である場合も、そうでない場合もある。そのようなブレンドは、相分離している場合も、そうでない場合もある。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当該技術分野で知られている任意の他の方法から決定される、1つ以上のドメイン構成を含む場合も、そうでない場合もある。
「ポリマー」は、同じかまたは異なる種類のモノマーを重合することによって調製された化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、通常、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために使用されるホモポリマーという用語、ならびに後に定義されるようなインターポリマーおよびコポリマーという用語を包含する。ポリマーという用語はまた、全ての形態のインターポリマー、例えば、ランダム、ブロック、均質、不均一などを包含する。
「インターポリマー」および「コポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これらの総称は、古典的コポリマー、すなわち、2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーと、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなどの3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーとの両方を含む。「エチレン/α−オレフィンコポリマー」および「プロピレン/α−オレフィンコポリマー」という用語は、下記のようなインターポリマーを示す。
「エチレン由来単位」、「エチレン含量」などの用語は、エチレンモノマーの重合から形成したポリマーの単位を意味する。「α−オレフィン由来単位」、「アルファ−オレフィン含量」、「α−オレフィン含量」などの用語は、特定のα−オレフィンモノマー、特に、C3−10α−オレフィンのうちの少なくとも1つの重合から形成したポリマーの単位を意味する。「プロピレン由来単位」、「プロピレン含量」などの用語は、プロピレンモノマーの重合から形成したポリマーの単位を意味する。
「プロピレン系ポリマー」などの用語は、プロピレン由来単位とも称される、(重合性モノマーの総量に基づいて)過半重量パーセントの重合プロピレンモノマーを含み、任意に、プロピレン系インターポリマーを形成するように、プロピレンとは異なる少なくとも1種の重合コモノマー(例えば、C2およびC4−10αオレフィンから選択される少なくとも1つのもの)を含むポリマーを意味する。例えば、プロピレン系ポリマーがコポリマーである場合、プロピレン含有量は、コポリマーの総重量に基づいて、50重量%超である。
「エチレン系ポリマー」などの用語は、エチレン由来単位とも称される、(重合性モノマーの総重量に基づいて)過半重量パーセントの重合エチレンモノマーを含み、任意に、エチレン系インターポリマーを形成するように、エチレンとは異なる少なくとも1種の重合コモノマー(例えば、C3−10αオレフィンから選択される少なくとも1つのもの)を含み得るポリマーを意味する。例えば、エチレン系ポリマーがコポリマーである場合、エチレンの量は、コポリマーに対する総重量に基づいて、50重量%超である。
「ポリエチレン」という用語は、エチレンのホモポリマー、ならびにエチレンと1つ以上のC3−8α−オレフィンとのコポリマーを含み、このコポリマー中、エチレンは、少なくとも50モルパーセントを構成する。「ポリプロピレン」という用語は、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンなどのプロピレンのホモポリマー、およびプロピレンと1つ以上のC2、4−8α−オレフィンとのコポリマーを含み、ここで、プロピレンは、少なくとも50モルパーセントを構成する。好ましくは、ポリマー(結晶性ブロック)中の少なくとも1つのブロックまたはセグメントの複数の重合モノマー単位は、好ましくは少なくとも90モルパーセント、より好ましくは少なくとも93モルパーセント、最も好ましくは少なくとも95モルパーセントのプロピレンを含む。主に異なるα−オレフィン、例えば、4−メチル−1−ペンテンから作製されたポリマーも同様に命名される。
「ランダムコポリマーポリプロピレン」(RCP)などの用語は、アルファ−オレフィンモノマー由来単位が、交互、周期的、またはブロックパターンでポリマー鎖にわたって分布していることとは対照的に、ポリマー鎖にわたってランダムに分布しているプロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを意味する。対照的に、「均質なプロピレン系インターポリマー」などの用語は、アルファ−オレフィンモノマー由来単位が、バルクポリマーのポリマー鎖にわたってほぼ均一に分布しているプロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを意味する。
「耐衝撃性が改質されたプロピレン系コポリマー」および同類の用語は、添加された耐衝撃性改質剤を用いない、同じ温度での該所与の組成物の衝撃強度と比較して、室温以下での組成物の衝撃強度が維持または増加されるように、耐衝撃性が改質されたプロピレン系ポリマー組成物のことを意味する。
「ブロック複合体」(BC)という用語は、10mol%〜90mol%のエチレン含量を有するエチレン系ポリマー(EP)、90mol%超のアルファ−オレフィン含量を有するアルファ−オレフィン系ポリマー(AOP)、ならびにエチレンブロック(EB)とアルファ−オレフィンブロック(AOB)とを有するブロックコポリマーを含むポリマーを指し、ここで、ブロックコポリマーのエチレンブロックは、ブロック複合体のエチレン系ポリマーと同じ組成であり、ブロックコポリマーのα−オレフィンブロックは、ブロック複合体のα−オレフィン系ポリマーと同じ組成である。エチレン系ポリマーの量とアルファ−オレフィン系ポリマーの量の間の組成分裂は、ブロックコポリマー中の対応するブロック間の組成分と本質的に同じである。特定の実施形態では、アルファ−オレフィンは、プロピレンである。さらなる実施形態では、AOBおよびEBはiPP−EPジブロックコポリマーであり得る。
「結晶性ブロック複合体」(CBC)という用語は、90mol%超のエチレン含量を有する結晶性エチレン系ポリマー(CEP)、90mol%超のα−オレフィン含量を有する結晶性α−オレフィン系ポリマー(CAOP)、ならびに結晶性エチレンブロック(CEB)と結晶性α−オレフィンブロック(CAOB)とを有するブロックコポリマーを含むポリマーを指し、ここで、ブロックコポリマーのCEBは、結晶性ブロック複合体のCEPと同じ組成であり、ブロックコポリマーのCAOBは、結晶性ブロック複合体のCAOPと同じ組成である。CEPの量とCAOPの量の間の組成分裂は、ブロックコポリマー中の対応するブロック間の組成分裂と本質的に同じである。例示的な実施形態では、アルファ−オレフィンは、プロピレンである。さらなる実施形態では、CAOBおよびCEBは、iPP−EP(アイソタクチックポリプロピレンおよびエチレンプロピレン)ジブロックコポリマーであり得る。
「ブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」は、線状に結合された2つ以上の化学的に固有の領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフトされた様式ではなく、重合官能基(例えば、重合プロピレン性官能基)に関して端から端まで結合(共有結合)されている化学的に区別された単位を含むポリマーを指す。ブロックコポリマーは、異なる種類の配列に共有結合している同じモノマーユニットの配列(「ブロック」)を含む。ブロックは、ジブロック中のA−B構造およびA−B−Aトリブロック構造などの様々な方法で連結され得、ここで、Aは、1つのブロックを表し、Bは、異なるブロックを表す。マルチブロックコポリマーにおいて、AおよびBは、多数の異なる方法で連結され、複数回反復され得る。これは、異なる種類の追加のブロックをさらに含み得る。マルチブロックコポリマーは、線状マルチブロック、マルチブロック星型ポリマー(ここでは、全てのブロックが同じ原子または化学部分に結合する)、またはBブロックが一端でA主鎖に結合される櫛状ポリマーであり得る。ブロックコポリマーは、線状または分岐状であり得る。ブロックコポリマーに関して、ブロックは、その中に組み込まれたコモノマーの量が異なり得る。ブロックは、コモノマーの種類、密度、結晶化度、そのような組成のポリマーに起因する結晶のサイズ、立体規則性の種類もしくは程度(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)、位置規則性もしくは位置不規則性、長鎖分岐もしくは超分岐を含む分岐の量、均質性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性においても異なり得る。ブロックコポリマーは、例えば、触媒(複数可)と組み合わせたシャトリング剤(複数可)の効果に起因する、ポリマー多分散性(PDIまたはMw/Mn)の固有の分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布を特徴とする。
「結晶性」という用語は、示差走査熱量計(DSC)または等価の技術によって決定される、一次転移または結晶融点(Tm)を持つポリマーまたはポリマーブロックを指す。この用語は、「半結晶性」という用語と互換的に使用され得る。
「結晶化可能な」という用語は、得られたポリマーが結晶性になるように重合することができるモノマーを指す。結晶性エチレンポリマーは、典型的には0.89g/cc〜0.97g/ccの密度および75℃〜140℃の融点を有するが、それらに限定されない。結晶性プロピレンポリマーは、それだけには限らないが、0.88g/cc〜0.91g/ccの密度および100℃〜170℃の融点を有し得る。
「非結晶性」という用語は、示差走査熱量計(DSC)または等価の技術によって決定される結晶融点を欠くポリマーを指す。
「イソタクチック」という用語は、13C−NMR分析によって決定される、少なくとも70パーセントのイソタクチックペンタッドを有するポリマー反復単位として定義される。「高度アイソタクチック」は、少なくとも90パーセントのアイソタクチックペンタッドを有するポリマーとして定義される。
オレフィンブロックコポリマー
特定の実施形態において、本開示の組成物は、2重量%〜39.5重量%(例えば、2重量%〜30重量%、3重量%〜20重量%、5重量%〜20重量%、5重量%〜18.5重量%など)の、オレフィンブロックコポリマーを含む。「オレフィンブロックコポリマー」または「OBC」という用語は、「エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマー」または「エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマー」を意味し(かつそれと互換性があり)、エチレンおよび1つ以上の共重合性α−オレフィンコモノマーを重合形態中に含み、化学的または物理的性質が異なる2つ以上の重合モノマー単位の複数のブロックまたはセグメントを特徴とする。用語「インターポリマー」および「コポリマー」は、本明細書では互換的に使用される。インターポリマー中の「エチレン」または「コモノマー」の量を指す場合、これは、その重合単位を意味することが理解される。いくつかの実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーである。いくつかの実施形態において、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、以下の式によって表すことができる。
(AB)n
式中、nが、少なくとも1であり、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上であり、「A」が、ハードブロックまたはセグメントを表し、「B」が、ソフトブロックまたはソフトセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、実質的に分岐鎖状または実質的に星形の様式とは対照的に、実質的に線状の方法で、または線状の様式で、連結または共有結合される。他の実施形態において、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布される。換言すると、ブロックコポリマーは、通常、以下のような構造を有さない。
AAA−AA−BBB−BB
ある特定の実施形態において、ブロックコポリマーは、通常、異なるコモノマーを含む第3の種類のブロックを有さない。さらに他の実施形態において、ブロックAおよびブロックBの各々は、ブロック内に実質的にランダムに分布したモノマーまたはコモノマーを有する。換言すると、ブロックAもブロックBも、ブロックの残りの部分とは実質的に異なる組成を有する、先端部分などの違う組成の2つ以上のサブセグメント(またはサブブロック)を含まない。
好ましくは、エチレンは、ブロックコポリマー全体の大部分のモル分率を含み、すなわち、エチレンは、全ポリマーの少なくとも50モルパーセントを含む。より好ましくは、エチレンは、少なくとも60モルパーセント、少なくとも70モルパーセント、または少なくとも80モルパーセントを構成し、ポリマー全体の実質的な残部は、好ましくは3つ以上の炭素原子、または4つ以上の炭素原子を有するα−オレフィンである少なくとも1つの他のコモノマーを含む。いくつかの実施形態において、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、50モル%〜90モル%のエチレン、または60モル%〜85モル%のエチレン、または65モル%〜80モル%のエチレンを含むことができる。多くのエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーについて、組成物は、ポリマー全体の80モルパーセントを超えるエチレン含量、およびポリマー全体の10〜15モルパーセント、または15〜20モルパーセントのオクテン含量を含む。
エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、様々な量の「ハード」セグメントおよび「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて、90重量パーセントを超える、または95重量パーセント、または95重量パーセントを超える、または98重量パーセントを超える、最大100重量パーセントの量で存在する重合単位のブロックである。換言すると、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマー含量)は、ポリマーの重量に基づいて、10重量パーセント未満、または5重量パーセント、または5重量パーセント未満、または2重量パーセント未満であり、最低でゼロであり得る。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、エチレンに由来する全ての、または実質的に全ての単位を含む。「ソフト」セグメントは、コモノマー含有量(エチレン以外のモノマー含有量)が、ポリマーの重量に基づいて、5重量パーセントを超える、または8重量パーセントを超える、10重量パーセントを超える、または15重量パーセントを超える重合単位のブロックである。いくつかの実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、20重量パーセントを超える、25重量パーセントを超える、30重量パーセントを超える、35重量パーセントを超える、40重量パーセントを超える、45重量パーセントを超える、50重量パーセントを超える、または60重量パーセントを超えてもよく、最大100重量パーセントであり得る。
ソフトセグメントは、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマー中に、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーの総重量の1重量パーセント〜99重量パーセント、または5重量パーセント〜95重量パーセント、10重量パーセント〜90重量パーセント、15重量パーセント〜85重量パーセント、20重量パーセント〜80重量パーセント、25重量パーセント〜75重量パーセント、30重量パーセント〜70重量パーセント、35重量パーセント〜65重量パーセント、40重量パーセント〜60重量パーセント、またはエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーの総重量の45重量パーセント〜55重量パーセントの量で存在し得る。逆に、ハードセグメントは、同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメントの重量パーセントおよびハードセグメントの重量パーセントは、DSCまたはNMRから得られたデータに基づいて計算され得る。かかる方法および計算は、例えば、「Ethylene/α−Olefin Block Inter−polymers」と題され、Colin L.P.Shan,Lonnie Hazlittらの名において2006年3月15日に出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡された米国特許第7,608,668号に開示され、その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に、ハードセグメントおよびソフトセグメントの重量パーセントならびにコモノマー含有量は、US7,608,668の第57欄〜第63欄に記載されるように決定されてもよい。
エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、好ましくは、線状に結合された(または共有結合された)2つ以上の化学的に違う領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフトされた様式ではなく、重合エチレン性官能基に関して端から端まで結合されている化学的に区別された単位を含むポリマーである。ある実施形態では、ブロックは、組み込まれたコモノマーの量もしくは種類、密度、結晶化度、そのような組成のポリマーに起因する結晶のサイズ、立体規則性の種類もしくは程度(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、分岐の量(長鎖分岐もしくは超分岐を含む)、均質性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性において異なる。連続モノマー付加、流動触媒、またはアニオン重合技術によって生産されるインターポリマーを含む、先行技術のブロックインターポリマーと比較して、本発明のエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、一実施形態では、シャトリング剤(複数可)とそれらの調製において使用される複数の触媒との組み合わせの効果のため、ポリマー多分散性(PDIもしくはMw/MnもしくはMWD)、多分散ブロック長分布、および/または多分散ブロック数分布の両方の特有の分布を特徴とする。
ある実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、連続プロセスで生産され、1.7〜3.5、または1.8〜3、または1.8〜2.5、または1.8〜2.2の多分散指数(Mw/Mn)を有する。バッチまたは半バッチプロセスで生成される場合、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、1.0〜3.5、または1.3〜3、または1.4〜2.5、または1.4〜2のMw/Mnを有する。
さらに、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、ポアソン分布ではなく、シュルツ・フロリー分布に適合するPDI(またはMw/Mn)を有する。本発明のエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、多分散ブロック分布ならびにブロックサイズの多分散分布の両方を有する。これにより、改善された識別可能な物理的特性を有するポリマー生成物の形成が生じる。多分散ブロック分布の理論上の利点は、Potemkin,Physical Review E(1998)57(6),pp.6902−6912およびDobrynin,J.Chem.Phvs.(1997)107(21),pp9234−9238において以前モデル化され論じられている。
一実施形態では、本発明のエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、ブロック長の最確分布を有する。
さらなる実施形態では、本開示のエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマー、特に連続溶液重合反応器で生成されるものは、ブロック長の最確分布を有する。一実施形態において、エチレンマルチブロックコポリマーは、以下のものを有すると定義される。
(A)約1.7〜約3.5のMw/Mn、摂氏での少なくとも1つの融点Tm、およびグラム/立方センチメートルでの密度dを有し、Tmおよびdの数値は、以下の関係に対応し、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、ならびに/または
(B)J/gでの融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高結晶化温度分析分留(「CRYSTAF」)ピークとの間の温度差として定義される摂氏でのデルタ量ΔTを特徴とする、1.7〜3.5のMw/Mn(ここで、ΔTおよびΔHの数値は、以下の関係を有する)
(ゼロより大きく、最大130J/gのΔHに関して)ΔT>−0.1299ΔH+62.81
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
(ここで、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを用いて決定され、ポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度が、30℃である)、ならびに/または
(C)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムで測定した300%歪みおよび1サイクルでの弾性回復率Re、ならびにグラム/立方センチメートルでの密度d、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に有しない場合、Reおよびdの数値は、以下の関係を満たし、
Re>1481−1629(d)、ならびに/または
(D)TREFを使用して分画したときに40℃〜130℃で溶出する分子量画分であって、画分が、同温度の間で溶出する同程度のランダムエチレンインターポリマー画分のものよりも少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含有量を有することを特徴とする分子量画分(ここで、該同程度のランダムエチレンインターポリマーが、同じコモノマー(複数可)を有し、メルトインデックス、密度、およびエチレン/α−オレフィンインターポリマーのもの(ポリマー全体に基づく)の10パーセント以内のモルコモノマー含有量を有する)、ならびに/または、
(E)25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を有し、G’(25℃)のG’(100℃)に対する比率は、約1:1〜約9:1の範囲にある。
エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーはまた、以下を有してもよい。
(F)TREFを用いて分画したときに40℃〜130℃の間で溶出する分子画分であって、画分が、少なくとも0.5〜約1までのブロックインデックスおよび約1.3超の分子量分布、Mw/Mnを有することを特徴とする分子画分、ならびに/または
(G)ゼロよりも大きく、最大約1.0の平均ブロックインデックス、および約1.3を超える分子量分布Mw/Mn。
エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーは、性質(A)〜(G)のうちの1つ、いくつか、全て、または任意の組み合わせを有してもよいことが理解される。ブロックインデックスは、米国特許第7,608,668号に詳述されるように決定することができ、この特許は、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる。特性(A)〜(G)を決定するための分析方法は、例えば、米国特許第7,608,668号、第31欄26行目〜第35欄44行目に記載されており、この特許は、その目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマー、およびさらなるコポリマーは、性質(A)〜(G)のうちのいずれか1つを含んでもよい、または(A)〜(G)のうちの2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
使用されてもよい別の種類のエチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーは、「中間相分離」と呼ばれるものである。「中間相分離」という用語は、ポリマーブロックが局所的に分離されて規則正しいドメインを形成するプロセスを意味する。これらの系におけるエチレンセグメントの結晶化は、主に、得られるメソドメインに制限され、そのような系は「中間相分離」と称されることがある。これらのメソドメインは、球状、円筒状、ラメラ状、またはブロックコポリマーについて知られている他の形状の形態を取ることができる。ラメラの平面に垂直であるような、ドメインの最も狭い寸法は、本発明の中間相分離ブロックコポリマーにおいて一般に約40nmより大きい。いくつかの実施形態において、オレフィンブロックコポリマーは中間相分離している。これらのインターポリマーの例は、例えば、国際公開第WO2009/097560号、同第WO2009/097565号、同第WO2009/097525号、同第WO2009/097529号、同第WO2009/097532号、および同第WO2009/097535号に見い出すことができ、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
中間相分離オレフィンブロックコポリマーに関して、いくつかの実施形態において、デルタコモノマーは、18.5モル%超、20モル%超、または30モル%超である。デルタコモノマーは、18.5モル%〜70モル%、20モル%〜60モル%、または30モル%〜50モル%であり得る。「デルタコモノマー」という用語は、オレフィンブロックコポリマーのハードセグメントとソフトセグメントとの間のコモノマーのモルパーセントの差を意味する。デルタコモノマーは、下記および米国特許第7,947,793号に記載されるような13C NMRを使用して測定することができる。特定の実施形態において、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーは、コモノマー(例えば、オクテン)に由来する20モル%〜50モル%からなるソフトセグメント組成物を有する。
本発明のOBCの調製に使用するのに好適なモノマーには、エチレンおよびエチレン以外の1つ以上の付加重合性モノマーが含まれる。好適なコモノマーの例としては、3〜30個、好ましくは3〜20個の炭素原子の直鎖または分岐α−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、および1−エイコセン;3〜30個、好ましくは3〜20個の炭素原子のシクロオレフィン、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、および2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−ナフタレン;ジ−およびポリオレフィン、例えば、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、および5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン;ならびに3−フェニルプロペン、4−フェニルプロペン、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、および3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンが挙げられる。好ましいα−オレフィンとしては、C3−C20α−オレフィン、好ましくはC3−C10α−オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましいα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、および1−オクテンが挙げられ、より好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、および1−オクテンが挙げられる。
オレフィンブロックコポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,858,706号に記載されているような鎖シャトリングプロセスを介して生成され得る。特に、好適な鎖シャトリング剤および関連情報は、第16欄39行目〜第19欄44行目に列挙されている。好適な触媒は、第19欄45行目〜第46欄19行目に記載され、好適な共触媒は、第46欄20行目〜第51欄28行目に記載されている。このプロセスは、本明細書全体を通して記載されているが、特に第51欄29行目〜第54欄56行目に記載されている。このプロセスは、例えば、以下の米国特許7,608,668号、米国特許7,893,166号、および米国特許7,947,793号にも記載されている。さらなる例示的な触媒プロセスは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,785,554号に開示されているものを含む。
ある特定の実施形態において、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーは、0.850g/cc超、さらに0.860g/cc超、およびさらに0.865g/cc超の密度を有する。密度は、例えば、0.850g/cc〜0.950g/cc、0.860g/cc〜0.925g/cc、0.860〜0.900g/cc、および/または0.865g/cc〜0.880g/ccであってもよい。密度は、ASTM D−792またはISO1183の手順によって測定される。
特定の実施形態において、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーおよびさらなるコポリマーは、90℃より高い、さらに100℃より高い融点を有する。融点は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2006/0199930号(WO2005/090427)に記載される示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。
特定の実施形態において、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーは、ASTM D−1238またはISO 1133(190℃、2.16kgの荷重)を使用して測定された場合に、0.1g/10分〜50g/10分(例えば、0.5g/10分〜40g/10分、1g/10分〜30g/10分、3g/10分〜20g/10分、および/または5g/10分〜15g/10分)のメルトインデックス(I2)を有する。
ブロック複合体
特定の実施形態において、本開示の組成物は、0.5重量%〜20重量%(例えば、0.5重量%〜15重量%、0.5重量%〜10重量%、0.5重量%〜6重量%、1.5重量%〜3重量%など)の、ブロック複合体を含む複合体成分を含む。例示的な実施形態では、ブロック複合体は、ブロック複合体の総重量に基づいて、25重量%〜70重量%(例えば、25重量%〜60重量%、25重量%〜55重量%、および30重量%〜50重量%)の総エチレン含量を有し得る。ブロック複合体の総重量の残りの部分は、少なくとも1つのC3−10アルファ−オレフィン由来単位によって占められてもよい。例えば、ブロック複合体の総重量の残りの部分は、プロピレン由来単位によって占められてもよい。
例示的な実施形態では、ブロック複合体とは、10mol%〜90mol%のエチレン含量を有するエチレン系ポリマー(EP)(ソフトコポリマー)、90mol%超のα−オレフィン含量を有するα−オレフィン系ポリマー(AOP)(ハードコポリマー)、ならびにエチレンブロック/セグメント(EB)とアルファ−オレフィンブロック/セグメント(AOB)とを有するブロックコポリマーを含むポリマーを指し、ここで、ブロックコポリマーのエチレンブロックは、ブロック複合体のエチレン系ポリマーと同じ組成であり、ブロックコポリマーのα−オレフィンブロックは、ブロック複合体のα−オレフィン系ポリマーと同じ組成である。エチレン系ポリマーの量とアルファ−オレフィン系ポリマーの量の間の組成分裂は、ブロックコポリマー中の対応するブロック間の組成分裂と本質的に同じである。
特定の実施形態では、ブロック複合体は、10重量%超、かつ95重量%未満のエチレン含量を有するEPと、90重量%超、かつ最高100重量%のプロピレン含量を有するAOPポリマーと、EB(すなわち、ソフトブロック)およびAOB(すなわち、ハードブロック)を有するブロックコポリマー(例えば、ジブロック)とを含むポリマーを指し、ここで、ブロックコポリマーのAOBは、ブロック複合体のAOPと同じ組成であり、ブロックコポリマーのEBは、ブロック複合体のEPと同じ組成である。EPの量とAOPの量の間の組成分裂は、ブロックコポリマー中の対応するブロック間の組成分裂と本質的に同じである。
例示的な実施形態では、ハードブロックは、重合したα−オレフィン単位(例えば、プロピレン)の高度結晶性ブロックを指す。ハードブロックにおいて、モノマー(すなわち、プロピレン)は、90重量%超の量で存在してもよい。ハードブロックの残りの部分は、10重量%未満の量のコモノマー(例えば、エチレン)であってもよい。例示的な実施形態では、ハードブロックは、iPP(アイソタクチック)ホモポリマーブロック、または10重量%未満のエチレンを有するiPPコポリマーブロックのような、全てまたは実質的に全てのプロピレン単位を含む。例示的な実施形態では、ソフトブロックは、重合したエチレン単位の非晶質、実質的に非晶質、またはエラストマーなブロックを指す。ソフトブロックにおいて、モノマー(すなわち、エチレン)は、20重量%超〜100重量%以下(例えば、40重量%〜99重量%、45重量%〜90重量%、および/または50重量%〜80重量%)の量で存在してもよい。ソフトブロックの残りの部分は、コモノマー(例えば、プロピレン)であってもよい。
例示的な実施形態によれば、ブロック複合体は、30〜70重量%のハードブロックおよび30〜70重量%のソフトブロックを有するブロックコポリマーを含む。言い換えれば、ブロック複合体は、ブロックコポリマーの重量に基づいて30〜70重量%のハードブロックおよび30〜70重量%のソフトブロックを有するブロックコポリマーを含む。
例示的な一実施形態によれば、ブロック複合体のブロックコポリマーは、式(EP)−(iPP)を有し、式中、EPは、重合したエチレンおよびプロピレンモノマー単位のソフトブロック(例えば、50〜80重量%のエチレンと、残りのプロピレン)を表し、iPPは、アイソタクチックプロピレンホモポリマーまたはアイソタクチックプロピレンコポリマー(例えば、10重量%未満のエチレンと、残りのプロピレン)のハードブロックを表す。
ブロック複合体は、0.5重量%〜95.0重量%のEP、0.5〜95.0重量%のiPP、および5.0重量%〜99.0重量%のブロックコポリマーを含んでもよい。重量パーセントは、ブロック複合体の総重量に基づく。EP、iPP、およびブロックコポリマーの重量パーセントの合計は100%に等しい。ブロックコポリマーの相対量の例示的測定は、以下にさらに論じるように、ブロック複合体インデックス(BCI)と呼ばれる。ブロック複合体についてのBCIは、0より大きく、かつ1.0未満である。
いくつかの実施形態では、ブロック複合体は、1超〜20以下の微細構造インデックスを有し得る。微細構造インデックスは、ランダムコポリマーからブロックコポリマーを区別化するための、溶媒勾配相互作用クロマトグラフィー(SGIC)分離を用いる推定である。特に、微細構造インデックスの推定は、2つの画分の区別化、すなわち、より高含量のランダムコポリマーを有する画分と、より高含量のブロックコポリマーを有する画分の区別化に依存し、このランダムコポリマーおよびブロックコポリマーは、本質的に同じ化学組成を有する。初期溶出画分(すなわち、第1の画分)はランダムコポリマーに相関し、後期溶出成分(すなわち、第2の画分)はブロックコポリマーに相関する。微細構造インデックスの算出については後述する。
ブロック複合体は、10,000g/mol〜2,500,00g/mol、35,000g/mol〜1,000,000g/mol、50,000g/mol〜300,000g/mol、および/または50,000g/mol〜200,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有してもよい。例えば、Mwは、20kg/mol〜1000kg/mol、50kg/mol〜500kg/mol、および/または80kg/mol〜200kg/molであり得る。ブロック複合体の分子量分布(Mw/Mn)または多分散度は、5未満、1〜5、および/または1.5〜4であり得る。重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ポリマー技術分野において周知であり、当業者に既知の方法によって決定することができる。
ブロック複合体のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D−1238(230℃;2.16kg)に従って測定すると、0.1g/10分〜1,000g/10分であり得る。例えば、ブロック複合体のメルトフローレートは、1g/10分〜50g/10分、1g/10分〜25g/10分、3g/10分〜15g/10分、および/または5g/10分〜10g/10分であってもよい。
ブロック複合体の密度は、0.850〜0.900g/ccであってもよい。例示的な実施形態において、ブロック複合体の密度は、0.860〜0.895、0.865〜0.895、および/または0.865〜0.890g/ccである。密度は、ASTM D792に従って測定する。
ブロック複合体は、90℃超の(例えば、100℃超の)第2のピークTmを有してもよい。例示的な実施形態によれば、ブロック複合体は、100℃〜150℃の範囲で第2のピークTmを示す。
結晶性ブロック複合体
特定の実施形態において、本開示の組成物は、0.5重量%〜20重量%(例えば、0.5重量%〜15重量%、0.5重量%〜10重量%、0.5重量%〜6重量%、1.5重量%〜3重量%など)の、結晶性ブロック複合体を含む複合体成分を含む。例示的な実施形態では、結晶性ブロック複合体は、結晶性ブロック複合体の総重量に基づいて、40重量%〜70重量%である総エチレン含量を有し得る。結晶性ブロック複合体の総重量の残りは、少なくとも1つのC3−10アルファ−オレフィン由来単位によって説明され得る。例えば、結晶性ブロック複合体の総重量の残りは、プロピレン由来単位によって説明され得る。
結晶性ブロック複合体(CBC)とは、結晶性エチレン系ポリマー(CEP)と、結晶性α−オレフィン系ポリマー(CAOP)と、結晶性エチレンブロック/セグメント(CEB)および結晶性α−オレフィンブロック/セグメント(CAOB)を含むブロックコポリマーとを含むポリマーを指し、ここで、ブロックコポリマーのCEBは、結晶性ブロック複合体のCEPと同じ組成であり、ブロックコポリマーのCAOBは、結晶性ブロック複合体のCAOPと同じ組成である。さらに、CEPの量とCAOPの量との間の組成分裂は、ブロックコポリマー中の対応するブロック間の組成分裂と本質的に同じである。
結晶性ブロック複合体(CBC)は、結晶性エチレン系ポリマー(CEP)と、結晶性アルファ−オレフィン系ポリマー(CAOP)と、結晶性エチレンブロック(CEB)および結晶性アルファ−オレフィンブロック(CAOB)を有するブロックコポリマーと、を含み、ここで、CEBは、CEPと同じ組成であり、CAOBは、CAOPと同じ組成である。結晶性ブロック複合体において、アルファ−オレフィンは、C3−10α−オレフィン(例えば、プロピレンおよび/またはブチレンであり得る)の群から選択される少なくとも1つのものである。CAOPおよびCAOBは、90mol%超であるアルファ−オレフィン含量を有し得る。CEPおよびCEBは、90mol%超のエチレン由来単位(すなわち、エチレン含量)を含み、任意の残りは、(10mol%未満、7mol%未満、5mol%未満、3mol%未満などの量の)コモノマーとしてのC3−10α−オレフィンの群から選択される少なくとも1つであり得る。
例示的な実施形態では、CAOPおよびCAOBは、プロピレン、例えば、90mol%超のプロピレン由来単位を含み、任意の残りはエチレン、および/または(10mol%未満、7mol%未満、5mol%未満、4mol%未満、4mol%未満などの量の)コモノマーとしてのC4−10α−オレフィンの群から選択される少なくとも1つであり得る。CEPとCEBは、エチレン、例えば、90mol%超のエチレン由来単位を含み、任意の残りは、プロピレン、および/または(10mol%未満、7mol%未満、5mol%未満、4mol%未満、4mol%未満など)コモノマーとしてのC4−10α−オレフィンの群から選択される少なくとも1つであり得る。CEPの量とCAOPの量の間の組成分裂は、ブロックコポリマー中の対応するブロック間の組成分裂と本質的に同じである。CEBおよびCAOBは、ハード(結晶性)セグメント/ブロックと称され得る。
例示的な実施形態では、CAOBは、C3−10α−オレフィンの1つであるモノマー由来単位が90mol%超、93mol%超、95mol%超、および/または96mol%超の量で存在する重合アルファオレフィン単位の高結晶性ブロックを指す。換言すると、CAOB中のコモノマー含量は、10mol%未満、7mol%未満、5mol%未満、および/または4mol%未満である。プロピレン結晶化度を有するCAOBは、80℃以上、100℃以上、115℃以上、および/または120℃以上である対応する融点を有し得る。いくつかの実施形態では、CAOBは、全てまたは実質的に全てのプロピレン単位を含む。CEBは、コモノマー含量(プロピレンなど)が10mol%以下、0mol%〜10mol%、0mol%〜7mol%、および/または0mol%〜5mol%である重合エチレン単位のブロックを指す。言い換えれば、CEBは、少なくとも90mol%のエチレン、90mol%超のエチレン、93mol%超のエチレン、および/または95mol%超のエチレン由来である。そのようなCEBは、75℃以上、90℃以上、および/または100℃以上であり得る対応する融点を有する。
例示的な実施形態では、CAOBは、C3−10α−オレフィンの1つであるモノマーが少なくとも88重量%および/または少なくとも90重量%の量で存在する重合アルファオレフィン単位の高結晶性ブロックを指す場合がある。換言すると、CAOB中のコモノマー含量は、10重量%未満である。CEBは、コモノマー含量(プロピレンなど)が10重量%以下である重合エチレン単位のブロックを指す場合がある。
結晶性ブロック複合体は、0.5重量%〜95.0重量%のCEP、0.5重量%〜95.0重量%のCAOP、および5.0重量%〜99.0重量%の結晶性ブロックコポリマーを含んでもよい。例えば、結晶性ブロック複合体は、5.0重量%〜80.0重量%のCEP、0.5重量%〜80.0重量%のCAOP、および20.0重量%〜90.0重量%の結晶性ブロックコポリマーを含んでもよい。重量パーセントは、結晶性ブロック複合体の総重量に基づく。CEP、CAOP、および結晶性ブロックコポリマーの重量パーセントの合計は100%に等しい。結晶性ブロックコポリマーの相対量の例示的測定は、結晶性ブロック複合体インデックス(CBCI)と呼ばれる。結晶性ブロック複合体のCBCIは、0超〜1.0未満である。例えば、CBCIは、0.20〜0.99、0.30〜0.99、0.40〜0.99、0.40〜0.90、0.40〜0.85、および/または0.50〜0.80である。
結晶性ブロック複合体は、90℃超のTm(例えば、第1のピークおよび第2のピークの両方について)、100℃超のTm(例えば、第1のピークおよび第2のピークの両方について)、および/または120℃超のTm(例えば、第1のピークおよび第2のピークのうちの少なくとも1つについて)を有し得る。例えば、Tmは、100℃〜250℃、110℃〜220℃、および/または115℃〜220℃の範囲内である。例示的な一実施形態によれば、結晶性ブロック複合体は、100℃〜130℃(例えば、100℃〜120℃、100℃〜110℃など)の範囲の第2ピークのTm、および110℃〜150℃(例えば、110℃〜140℃、115℃〜130℃、115℃〜125℃など)の範囲の第1ピークのTmを示し、ここで、第2ピークのTmは、第1ピークのTm未満である。
結晶性ブロック複合体は、10,000g/mol〜2,500,000g/mol、35,000g/mol〜1,000,000g/mol、50,000g/mol〜300,000g/mol、および/または50,000g/mol〜200,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有してもよい。例えば、Mwは、20kg/mol〜1000kg/mol、50kg/mol〜500kg/mol、および/または80kg/mol〜125kg/molであり得る。結晶性ブロック複合体の分子量分布(Mw/Mn)または多分散度は、5未満、1〜5、および/または1.5〜4であり得る。重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ポリマー技術分野において周知であり、当業者に既知の方法によって決定することができる。
結晶性ブロック複合材料のMFR(メルトフローレート)は、0.1〜1000dg/分(230℃/2.16kg)、1〜500g/10分(230℃/2.16kg)、3〜30g/10分(230℃/2.16kg)、および/または5〜11g/10分(230℃/2.16kg)であり得る。
ASTM D792に従うと、結晶性ブロック複合体の密度は、0.850g/cc〜0.920g/cc(例えば、0.860g/cc〜0.915g/cc、0.875g/cc〜0.910g/cc、および/または0.890g/cc〜0.910g/cc)であり得る。
BCおよびCBCの重合
ブロック複合体および結晶性ブロック複合体(「複合体」(複数))は、従来のランダムコポリマー、複数のポリマーの物理的ブレンド、および連続モノマー添加を介して調製されたブロックコポリマーとは区別され得る。複合体は、同等の量のコモノマーについてのより高い融点、BCI、CBCI、および微細構造インデックスなどの特性によって、ランダムコポリマーから区別されてもよく;BCI、CBCI、微細構造インデックス、より良好な引張応力、改善された破壊強度、より微細な形態、改善された光学特性、および/またはより低い温度でのより大きな耐衝撃性強度などの特性によって、物理的ブレンドから区別されてもよく;分子量分布、レオロジー、剪断減粘性、レオロジー比、およびブロック多分散性の存在によって、連続モノマー添加により調製されたブロックコポリマーから区別されてもよい。例えば、複合体は、線状に結合された別個の領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を有するブロックコポリマーを含む。ブロックは、例えば、ポリエチレン(PE)対ポリプロピレン(PP)のような結晶性の種類において異なる。ブロックコポリマーは、線状または分岐状であり得る。連続プロセスで生成される場合、複合体は、1.7〜15(例えば、1.8〜10、1.8〜5、および/または1.8〜3.5)のPDIを有してもよい。バッチまたは半バッチプロセスで生成される場合、複合体は、1.0〜2.9(例えば、1.3〜2.5、1.4〜2.0、および/または1.4〜1.8)のPDIを有してもよい。例示的な複合体は、例えば、それらを製造するプロセスおよびそれらを分析する方法に関して、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,716,400号、同第8,802,774号および同第8,822,598号に記載されている。
ブロック複合体は、最も可能性のあるブロック長の分布を有するブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーは、2つまたは3つのブロックまたはセグメントを含み得る。複合体のポリマーを製造するプロセスにおいて、ポリマー鎖の寿命を延ばす手段として実質的に鎖シャトリング剤で終結されたポリマーの形態で、栓流の条件下にて操作される、複数の反応器の少なくとも第1の反応器、もしくは複数に区画された反応器の第1の区画で、ポリマー鎖の実質的な部分を排出し、ポリマー鎖が異なる重合条件を次の反応器または重合区画で経験するように、ポリマー鎖の寿命を延ばす手段として鎖シャトリングが使用される。それぞれの反応器または区画における異なる重合条件は、異なるモノマー、コモノマー、または、モノマー/コモノマー比、異なる重合温度、種々のモノマーの圧力または分圧、異なる触媒、異なるモノマー勾配、または、識別可能なポリマーセグメントの形成を招くあらゆる他の差異の使用を含む。したがって、ポリマーの少なくとも一部は、分子内に配置された2つ、3つ、またはそれ以上、好ましくは2つまたは3つの分化したポリマーセグメントを含む。
複合体は、例えば、付加重合条件下で、付加重合性モノマーまたは複数のモノマーの混合物を、少なくとも1つの付加重合触媒、共触媒、および鎖シャトリング剤を含む組成物と接触させることを含むプロセスによって調製される。プロセスは、定常状態重合条件下で操作される2つ以上の反応器、またはプラグ流重合条件下で操作される反応器の2つ以上の区画中で、異なるプロセス条件下で、成長するポリマー鎖の少なくともいくつかを形成することを特徴とする。
複合体の製造に有用な好適なプロセスは、例えば、米国特許第8,053,529号、同第8,686,087号、および同第8,716,400号に見出すことができる。重合は、例えば、連続的な溶液重合などの連続重合として実施されてもよく、この連続重合では、触媒成分、モノマー、ならびに任意に溶媒、アジュバント、捕捉剤、および/または重合助剤が、1つ以上の反応器または区画に連続的に供給され、そこからポリマー生成物が連続的に除去される。この文脈において使用される場合、「連続的」および「連続的に」という用語の範囲内では、これらのプロセスは、反応物質の間欠的な添加、および小さな規則的または不規則な間隔での生成物の除去があり、時間の経過と共に全体的なプロセスが実質的に連続的である。さらに、鎖シャトリング剤(複数可)は、第1の反応器または区画内、第1の反応器の出口、または第1の反応器の出口の少し前、第1の反応器もしくは区画と、第2もしくはその後に続く任意の反応器もしくは区画との間、またはさらには第2もしくはその後に続く任意の反応器もしくは区画のみ、を含む、重合中の任意の時点で添加されてもよい。例示的な鎖シャトリング剤、触媒、および共触媒は、例えば、米国特許第7,951,882号に開示されているものである。例えば、ジアルキル亜鉛化合物である鎖シャトリング剤が使用されてもよい。
触媒は、必要な金属錯体または複数の錯体を、重合が行われる溶媒に、または最終反応混合物と適合する希釈剤中に添加することによって、均一な組成物として調製されてもよい。所望の共触媒または活性化剤、および任意にシャトリング剤は、触媒と、重合すべきモノマーおよび任意のさらなる反応希釈剤とを組み合わせる前、組み合わせと同時に、または組み合わせた後のいずれかで、触媒組成物と組み合わされてもよい。
モノマー、温度、圧力の違い、または直列に連結された少なくとも2つの反応器または区画における他の重合条件の違いに起因して、同じ分子内におけるコモノマー含量、結晶化度、密度、立体規則性、位置規則性、または他の化学的もしくは物理的相違などの異なる組成のポリマーセグメントが、異なる反応器または区画で形成される。各セグメントまたはブロックのサイズは、連続ポリマー反応条件によって決定され、ポリマーサイズの最も可能性の高い分布が好ましい。一連の各反応器は、高圧、溶液、スラリー、または気相重合条件下で操作することができる。
以下の例示的なプロセスでは、連続的または実質的に連続的な重合条件を用いてもよい。多重区画重合では、全ての区画が、溶液、スラリー、または気相などの重合条件は同じ種類であるが、異なるプロセス条件で操作される。溶液重合プロセスの場合、使用される重合条件下でポリマーが可溶性である液体希釈剤中で、触媒成分の均質な分散液を使用することが望ましい。高圧プロセスは、100℃〜400℃の温度および500バール(50MPa)を超える圧力で実施されてもよい。スラリープロセスは、不活性炭化水素希釈剤を使用してもよく、また、0℃から、得られるポリマーが不活性重合媒体中で実質的に可溶となる温度直下までの温度を使用してもよい。スラリー重合における例示的な温度は30℃からであり、圧力は大気圧(100kPa)〜500psi(3.4MPa)の範囲であり得る。
実施態様の範囲を何ら限定することなく、そのような重合プロセスを実施するための1つの手段は以下のとおりである。溶液重合条件下で操作される1つ以上のよく撹拌されたタンクまたはループ反応器において、重合すべきモノマーは、反応器の一部で任意の溶媒または希釈剤と共に連続的に導入される。反応器は、任意の溶媒または希釈剤および溶解したポリマーと共に、実質的にモノマーからなる比較的均質な液相を含む。例示的な溶媒には、C4−10炭化水素、またはそれらの混合物、特に、ヘキサンなどのアルカン、またはアルカンの混合物、ならびに重合に使用される1つ以上のモノマーが含まれる。共触媒および必要に応じて鎖シャトリング剤と共に触媒は、反応器液相またはそのリサイクルされた任意の部分の最低1ヶ所に、連続的または断続的に導入される。
反応器の温度および圧力は、溶媒/モノマー比、触媒添加速度を調節することにより、ならびに冷却または加熱コイル、ジャケット、またはその両方を使用することにより、制御され得る。重合速度は、触媒添加速度によって制御される。ポリマー生成物中の所与のモノマーの含量は、反応器中のモノマーの比率によって影響され、この比率は、これらの成分の反応器へのそれぞれの供給速度を操作することにより制御される。ポリマー生成物の分子量は、場合により、温度、モノマー濃度などの他の重合変数を制御することにより、または前述の鎖シャトリング剤、または水素などの連鎖停止剤により、制御される。第1の反応器で調製された反応混合物がポリマー成長を実質的に停止させることなく第2の反応器に排出されるように、場合により導管または他の移送手段によって反応器の排出口に、第2の反応器が接続される。第1および第2の反応器の間で、少なくとも1つのプロセス条件の差が確立される。例えば、2つ以上のモノマーのコポリマーの形成における使用では、差は、1つ以上のコモノマーの存在もしくは不在、またはコモノマー濃度の差である。一連の第2の反応器と同様に配置された追加の反応器も設けられてもよい。一連の最後の反応器を出る際に、流出物を、触媒、例えば、水、水蒸気、もしくはアルコールなどの触媒停止剤、またはカップリング剤と接触させる。得られたポリマー生成物は、残留モノマーまたは希釈剤などの反応混合物の揮発性成分を減圧下でフラッシュオフし、必要に応じて、脱揮押出機などの装置でさらなる脱揮を実施することによって回収される。
あるいは、前述の重合は、モノマー、触媒、シャトリング剤、温度、または異なる区画もしくは領域の間で確立された他の勾配を有するプラグ流反応器中で実施されてもよく、場合により、その後、触媒および/または鎖シャトリング剤を別に添加し、断熱的または非断熱的重合条件下で操作されてもよい。
ポリオレフィンコポリマー
特定の実施形態において、本開示の組成物は、1重量%〜30重量%(例えば、1重量%〜20重量%、5重量%〜15重量%など)のポリオレフィンコポリマーを含んでもよく、ここで、ポリオレフィンコポリマーは、エチレンと少なくとも1つのC3〜C10アルファ−オレフィンとから誘導されるか、またはプロピレンと少なくとも1つのC2もしくはC4〜C10アルファ−オレフィンとから誘導される高メルトフローコポリマーである。例えば、ポリオレフィンコポリマーは、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブチレンコポリマー、エチレン−ヘキセンコポリマー、および/またはエチレン−オクテンコポリマーであり得る。ポリオレフィンコポリマーは、ASTM D1238に従って190℃/2.16kgでメルトインデックスが100g/10分〜2000g/10分であるような、相対的に高いメルトインデックスを有する。例えば、メルトインデックスは、100g/10分〜1500g/10分、200g/10分〜1200g/10分、300g/10分〜700g/10分、および/または400g/10分〜600g/10分であってもよい。ポリオレフィンコポリマーは、密度が0.860g/cc〜0.900g/c、好ましくは0.860g/cc〜0.885g/cc、より好ましくは0.860g/cc〜0.875g/ccであるような、ASTM D792に従って相対的に低い密度を有する。
ポリオレフィンコポリマーは、例えば、−30℃未満、−40℃未満、および/または−50℃未満などの低いガラス転移温度を有し得る。ガラス転移温度(Tg)は−80℃より高くてもよい。ブルックフィールド粘度(350°F/177℃における)は、1,000cP〜25,000cP(例えば、3,000cP〜20,000cP、5,000cP〜20,000cP、10,000cP〜20,000cP、および/または15,000cP〜20,000cP)であり得る。
ポリオレフィンコポリマーは、例えば、40,000g/モル以下、30,000g/モル以下、および/または25,000g/モル以下の低い重量平均分子量(Mw)を有することができる。重量平均分子量(Mw)は、5,000g/mole以上、7,000g/mole以上、および/または10,000g/mole以上であり得る。
ポリオレフィンコポリマーは、5未満、好ましくは4未満、好ましくは3未満のMw/Mnを有し得る。
プロピレンポリマーベース
特定の実施形態において、本開示の組成物は、ASTM D 1238に従い、230℃/2.16kgで、2g/10分〜100g/10分(例えば、10g/10分〜80g/10分、20g/10分〜60g/10分、30g/10分〜50g/10分、および/または35g/10分〜45g/10分)のメルトフローレートを有する、60重量%〜90重量%(例えば、70重量%〜90重量%、75重量%〜90重量%、および/または80重量%〜90重量%)のプロピレンポリマーベースを含む。プロピレンポリマーベースは、ASTM D 1238に従って、230℃/2.16kgで、2g/10分〜100g/10分のメルトフローレートを有する1種以上のポリプロピレン系ポリマーを含み得る。例示的な実施形態では、組成物は本質的に改質剤とプロピレンポリマーベースからなることができる。プロピレンポリマーベースは、ランダムコポリマーポリプロピレンの総重量に基づいて、0.5重量%〜5.0重量%のエチレン含有量を有するランダムコポリマーポリプロピレンを含み得る。プロピレンポリマーベースは、プロピレンポリマーベースの総重量に基づいて、95重量%〜100重量%のランダムコポリマーポリプロピレンを含み得る。
プロピレンポリマーベースは、ASTM D792−00、方法13に従って、0.870g/cm3〜0.910g/cm3(例えば、0.880g/cm3〜0.905g/cm3、0.885g/cm3〜0.905g/cm3、および/または0.890g/cm3〜0.905g/cm3)の密度を有し得る。プロピレンポリマーベースは、不均一なポリプロピレンまたは均質なポリプロピレンから構成され得る。
プロピレンポリマーベースは、プロピレンホモポリマー、プロピレン系インターポリマー、ランダムコポリマーポリプロピレン(RCPP)、インパクトコポリマーポリプロピレン(例えば、少なくとも1つのエラストマー耐衝撃性改質剤で改質されたホモポリマープロピレン)(ICPP)、高耐衝撃性ポリプロピレン(HIPP)高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)、またはそれらの組み合わせであり得る。例示的な実施形態において、プロピレンポリマーベースは、ホモポリマーポリプロピレンのアイソタクチック形態であり得るが、他の形態のポリプロピレン(例えば、シンジオタクチックまたはアタクチック)が使用されてもよい。
プロピレンポリマーベースは、複合体に関して上述したように、鎖シャトリング剤を使用せずに形成される。プロピレンと重合するための例示的なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ユニデセン(unidecene)、1ドデセン、ならびに4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、およびスチレンが挙げられる。例示的なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、および1−オクテンが挙げられる。例示的なプロピレン系インターポリマーとしては、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン、プロピレン/1−オクテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/ENB、プロピレン/エチレン/1−ヘキセン、プロピレン/エチレン/1−オクテン、プロピレン/スチレン、およびプロピレン/エチレン/スチレンが挙げられる。任意に、プロピレンポリマーベースは、ジエンまたはトリエンなどの少なくとも2つの二重結合を有するモノマーを含む。
様々なポリプロピレンポリマーの例示的な考察は、Modern Plastics Encyclopedia/89、mid October 1988 Issue、Volume65、Number11、pp.86−92に含まれ、この全開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。そのようなプロピレン系ポリマーの例には、VERSIFY(商標)(The Dow Chemical Companyから入手可能)、Vistamaxx(商標)(Exxon Mobilから入手可能)、INSPIRE(商標)(Braskemから入手可能)、およびPro−Fax(LyondellBasellから入手可能)が含まれる。
例示的な実施形態では、プロピレンポリマーベースは、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有することを特徴とするプロピレン−アルファ−オレフィンコポリマーであり得る。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」とは、その配列が、13C NMRによって測定した場合に、0.85を超える、選択的には0.90を超える、さらに選択的には0.92を超える、なおさらに選択的には0.93を超えるアイソタクチックトライアド(mm)を有することを意味する。
プロピレンポリマーベースはLCBを含み得る。例えば、プロピレンポリマーベースは、総炭素1000あたり、少なくとも平均0.001、少なくとも平均0.005、および/または少なくとも平均0.01の長鎖分岐を含有し得る。長鎖分岐という用語は、本明細書で使用される場合、短鎖分岐よりも少なくとも炭素1個分長い鎖長を指し、短鎖分岐は、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーに関して本明細書で使用される場合、コモノマー中の炭素の数よりも炭素2個分短い鎖長を指す。例えば、プロピレン/1−オクテンインターポリマーは、長さが少なくとも7個の炭素の長鎖分岐を有する主鎖を有するが、これらの主鎖は、長さがわずか6個の炭素の短鎖分岐も有する。
プロピレンポリマーベースは、その中に清澄剤および/または核剤を含むことができる。例えば、清澄剤および/または核剤は、ポリプロピレン鎖が溶融状態で結晶化および凝集する方法を変え得る。これらの薬剤は、結晶化開始温度を上昇させる可能性がある。清澄剤(または清浄剤)は、通常、有機非ポリマー分子である。清澄剤は、一般的に、成核剤としても作用し得るが、成核剤は必ずしも清澄剤ではない。例示的な清浄剤は、ジベンジリデンソルビトールの化学誘導体であり、ポリプロピレン樹脂のプロセスウインドウ内に溶融温度を有する。成核剤は、一般的に、小さい平均粒径および高い融点を有する無機材料である。有核樹脂が押出機内で溶融される際、成核剤は、典型的には固体のままであり、周囲にポリプロピレン球晶が形成され得る部位を提供し得る。例示的な成核剤は、安息香酸の化学誘導体である。例えば、成核剤は、安息香酸ナトリウム、カオリン、および/またはタルクであり得る。
本組成物は、低温(周囲温度以下および/または0℃未満など)機構を必要とする用途のための耐久性容器の製造において使用することができる。容器は、食品および飲料の消費市場における使用に好適であり得る。耐衝撃性、透明度、および弾性率の改善されたバランスから恩恵を得ることができる用途に基づいた例示的な容器としては、低温機械的性質のための食品用包装(アイスクリーム容器および穿刺耐性袋など)、飲料用ボトル、および透明な重包装出荷用袋が挙げられる。
様々な実施形態では、本開示は、周囲温度以下で使用する容器を製造する方法であって、以下:(a)ASTM D1238(230℃/2.16kg)に従って、2g/10分〜100g/10分のメルトフローレートを有する、60重量%〜90重量%のプロピレンポリマーベースと;(b)2重量%〜39.5重量%のオレフィンブロックコポリマーと;(c)0.5重量%〜20重量%の、結晶性ブロック複合体またはブロック複合体を含む複合体成分と;を混合することを含む方法に関する。
組成物
ポリマーブレンドは、押出し(例えば、シート押出しおよび異形押出し);成形(例えば、射出成形、回転成形、およびブロー成形);ならびにブローフィルムおよびキャストフィルムプロセス;のような既知のポリマープロセスを用いて容器を製造するために使用することができる。例えば、一般に、押出しは、ポリマーが溶融および圧縮される高温および高圧の領域を通ってスクリューに沿って連続的に推進され、そして最終的にダイを通して押し出されるプロセスである。押出機は、単軸押出機、多軸押出機、ディスク押出機またはラム押出機であり得る。ダイは、フィルムダイ、インフレートフィルムダイ、シートダイ、パイプダイ、チューブダイまたは異形押出ダイであり得る。射出成形は、様々な用途のための様々なプラスチック部品を製造するために使用される。典型的には、射出成形は、ポリマーを高圧で溶融し、そして所望の形状の逆である金型中に射出して、所望の形状およびサイズの部品を形成するプロセスである。鋳型は、鋼鉄およびアルミニウムのような金属から作製することができる。一般に、成形は、ポリマーを溶融し、そして所望の形状の逆である金型中に注入し、所望の形状およびサイズの部品を形成するプロセス方法である。成形は、常圧でも加圧式でもよい。例示的実施形態では、容器は射出成形を使用して調製される。
ポリマーブレンドを形成する温度は、プロピレンポリマーベースの溶融温度より高くてもよい。例えば、均一な溶融ブレンドを形成するためには、温度は150℃〜250℃および/または200℃〜225℃であり得る。ポリマーブレンドは、(ポリプロピレン中の従来の改質剤と比較して)相対的に低粘度のブレンドを有してもよく、より低い温度で動作してもよく、より低いサイクル時間で動作してもよく、得られた部品中に改善された均一性を提供してもよく、および/または透明性と衝撃特性の改善されたバランスを伴うより均一なブレンドを提供してもよい。
本開示の組成物は、任意に、1つ以上の添加剤および/または充填剤を含み得る。添加剤および/または充填剤の非限定的な例としては、可塑剤、熱安定剤、光安定剤(例えば、UV光安定剤および吸収剤)、酸化防止剤、スリップ剤、加工助剤(process aid)、蛍光増白剤、帯電防止剤、潤滑剤、触媒、レオロジー調整剤、殺生物剤、腐食防止剤、脱水剤、有機溶媒、着色剤(例えば、顔料および染料)、界面活性剤、離型添加剤、鉱油、ブロッキング防止剤、核剤、難燃剤、強化充填剤(例えば、ガラス、ファイバー、抗スクラッチ添加剤、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスファイバー、ウィスカーなど)、加工助剤(processing aid)、金属ファイバー、ボロンファイバー、セラミックファイバー、ポリマーファイバー、カオリン、ガラス、セラミック、炭素/高分子微粒子、シリカ、ミカ、カーボンファイバー、粘土、麻ファイバー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
様々な実施形態において、本開示は、当業者に知られている方法によって本開示の組成物から製造された物品またはフィルムを提供する。特定の実施形態において、本開示は、当業者に知られている方法よって本開示の組成物から製造された射出成形物品を提供する。
実施形態によれば、本開示は、高透明度−低温用容器を形成するための組成物に関する。高透明度−低温用容器とは、(例えば、5.0mm未満の厚さにおいて)少なくとも95%の透明度を伴う比較的透明であり、かつ低温において優れた衝撃強度を有する、本開示の組成物から作製された物品を使用して形成される容器を意味する。容器を形成するための物品は、5.0mm未満、4.0mm未満、3.0mm未満、および/または1.6mm以下の厚さを有することができる。例えば、厚さは、0.1mm〜0.45mm、0.2mm〜4.0mm、0.5mm〜3.0mm、および/または0.5mm〜2.0mmであり得る。容器を形成するための物品はまた、以下の特性のいずれかまたは全てを有し得る。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D1708に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満および/または1.6mm以下)の厚さで、1500psi〜1850psi、2%における引張割線係数を有する。様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D1708に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満および/または1.6mm以下)の厚さで、3100psi〜3850psi、10%における引張割線係数を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D1708に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満および/または1.6mm以下)の厚さで、2500psi〜3500psiの破断点引張応力を有する。様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D1708に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満および/または1.6mm以下)の厚さで、350%〜500%の破断点平均歪みを有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D1746に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、1.6mm以下、および/または0.75mm以下)の厚さで、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、および/または99%以上の透明度を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D1746に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、1.6mm以下、および/または0.75mm以下)の厚さで、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、および/または15%以下のヘイズを有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D1746に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、1.6mm以下、および/または0.75mm以下)の厚さで、65%(例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、および/または89%以上)の透過率を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ISO 179に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、および/または1.6mm以下)の厚さで、23℃で、5kJ/m2以上(例えば、10kJ/m2以上、15kJ/m2以上、20kJ/m2以上、30kJ/m2以上、40kJ/m2以上、50kJ/m2以上、60kJ/m2以上、および/または66kJ/m2以上)の平均シャルピー衝撃を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D256に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、および/または1.6mm以下)の厚さで、23℃で、5kJ/m2以上(例えば、10kJ/m2以上、15kJ/m2以上、20kJ/m2以上、25kJ/m2以上)の平均アイゾット衝撃を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D256に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、および/または1.6mm以下)の厚さで、0℃で、5kJ/m2以上(例えば、10kJ/m2以上、15kJ/m2以上、20kJ/m2以上、25kJ/m2以上)の平均アイゾット衝撃を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D256に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、および/または1.6mm以下)の厚さで、−20℃で3kJ/m2以上(例えば、5kJ/m2以上、10kJ/m2以上、15kJ/m2以上、17kJ/m2以上)の平均アイゾット衝撃を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ISO179に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、および/または1.6mm以下)の厚さで、23℃で、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、および/または10%以下のシャルピー衝撃延性破壊を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D256に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、および/または1.6mm以下)の厚さで、23℃で、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、および/または10%以下のアイゾット衝撃延性破壊を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D256に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、および/または1.6mm以下)の厚さで、0℃で、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、および/または10%以下のアイゾット衝撃延性破壊を有する。
様々な実施形態において、本開示の組成物から作製された物品は、ASTM D256に従って、3.0mm未満(例えば、2.0mm未満、および/または1.6mm以下)の厚さで、−20℃で、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、および/または10%以下のアイゾット衝撃延性破壊を有する。
試験方法
密度は、ASTM D792に従って測定する。結果は、1立方センチメートル当たりのグラム(g)、またはg/cm3で報告される。
ASTM D−1238(190℃;2.16kg)に従って、メルトインデックス(I2)を測定する。結果をグラム/10分で報告する。
ASTM D−1238(230℃;2.16kg)に従って、メルトフローレート(MFR)を測定する。結果をグラム/10分で報告する。
引張割線係数(2%)、引張割線係数(10%)、破断点引張応力、および平均破断点歪みを含む引張特性は、ASTM D1708に従って測定される。
フレックス1%およびフレックス2%を含む割線曲げ係数は、ASTM D790に従って測定される。
透明度パーセント、ヘイズパーセント、および透過率パーセントは、ASTM D1746に規定されているように、BYK Gardnerヘイズガードを使用して測定される。
23℃、0℃、および−20℃を含むアイゾット衝撃は、それぞれの実施例に示されるような厚さで、ASTM D256に従って測定される。試料は、射出成形によって調製される。
シャルピー衝撃は、シャルピー衝撃特性の測定についてのISO179に基づく。風損と摩擦損失が自動的に測定された後に、試験片により吸収された衝撃エネルギーを計算する。10個の試験片を鋳型プラークから打ち抜く。試験片は、およそ長さ80mm、幅10mmである。
示差走査熱量測定(DSC)は、TA InstrumentsのUniversal V3.7A分析用ソフトウェアを使用して、TA Instruments Q100 DSC V9.8 Build 296にて実施する。以前の熱履歴を取り除くために、試料を230℃まで急速に加熱し、等温で3分間保持する。次いで、試料を10℃/分の冷却速度で−90℃に冷却し、−90℃で3分間保持する。第1の冷却曲線および第2の加熱曲線を記録する。結晶化度パーセントを、第2の熱曲線から決定された融解熱(Hf)をPEに関しては292J/gの理論融解熱(PPに関しては165J/g)で除算し、この量に100を乗算することによって計算する(例えば、結晶化度%=(Hf/292J/g)×100(PEの場合))。
別段記載がない限り、それぞれのポリマーの融点(複数可)(Tm)は、第2の熱曲線(ピークTm)から決定され、結晶化温度(Tc)は、第1の冷却曲線(ピークTc)から決定される。DSCに関して、線状ベースラインに対する最大熱流量での温度は、融点として使用される。線状ベースラインは、溶融の開始(ガラス転移温度を超える)からおよび融点の終点まで構築される。
高温液体クロマトグラフィー:高温液体クロマトグラフィー実験方法計測器は、公開された方法に従ってこれをわずかに変更して行われるHTLC実験である(Lee,D.;Miller,M.D.;Meunier,D.M.;Lyons,J.W.;Bonner,J.M.;Pell,R.J.;Shan,C.L.P.;Huang,T.J.Chromatogr.A 2011,1218,7173)。2つのShimadzu(Columbia,MD,USA)LC−20ADポンプをが、それぞれデカンおよびトリクロロベンゼン(TCB)を送達するため使用される。それぞれのポンプは、10:1の固定フロースプリッター(部品番号:620−PO20−HS、Analytical Scientific Instruments Inc.,CA,USA)に連結される。スプリッターは、製造業者によるとH2O中0.1mL/分で1500psiの圧力降下を有する。両方のポンプの流量を0.115mL/分に設定する。分割後、小流は、収集した溶媒を30分超計量することによって決定すると、デカンおよびTCBの両方について0.01mL/分である。室温での溶媒の質量および密度によって、収集した溶出液の体積を決定する。小流を分離のためにHTLCカラムに送達する。主流を溶媒貯蔵器に送り返す。50μLの混合機(Shimadzu)はスプリッターの後に連結され、Shimadzuポンプからの溶媒を混合する。次いで、混合溶媒は、Waters(Milford,MA,USA)GPCV2000のオーブン内のインジェクタに送達される。Hypercarb(商標)カラム(2.1×100mm、5μmの粒径)は、インジェクタと10ポートVICIバルブ(Houston,TX,USA)との間に連結される。バルブは、2つの60μLの試料ループを備える。このバルブを使用して、第1次元(D1)HTLCカラムから第2次元(D2)SECカラムへの溶出液の連続的な試料抽出を行う。Waters GPCV2000のポンプおよびPLgel Rapid(商標)−Mカラム(10×100mm、5μmの粒径)は、D2サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のVICIバルブに連結される。文献に記載されているような連結のために、対称的な構成が用いられる(Brun,Y.;Foster,P.J.Sep.Sci.2010,33,3501)。デュアルアングル光散乱検出器(PD2040、Agilent,Santa Clara,CA,USA)およびIR5推測吸光度検出器が、SECカラムの後に連結され、濃度、組成、および分子量を測定する。
HTLCのための分離:バイアルを160℃で2時間穏やかに振盪することによって、およそ30mgを8mLのデカン中で溶解する。デカンは、ラジカル捕捉剤として400ppmのBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)を含有する。次いで、試料バイアルを注入用GPCV2000のオートサンプラに移す。オートサンプラ、インジェクタ、HypercarbカラムおよびPLgelカラムの両方、10ポートVICIバルブ、ならびにLSおよびIR5検出器の両方の温度を、分離中140℃に維持する。
注入前の初期条件は、以下のとおりである。HTLCカラムの流速は、0.01mL/分である。D1 Hypercarbカラム中の溶媒組成は、100%デカンである。SECカラムの流量は、室温で2.51mL/分である。D2 PLgelカラム中の溶媒組成は、100%TCBである。D2 SECカラム中の溶媒組成は、分離中に変化しない。
試料溶液の311μLアリコートは、HTLCカラムに注入される。注入は、以下に記載する勾配を引き起こす。
0〜10分、100%デカン/0%TCB;
10〜651分、TCBは、0%TCB〜80%TCBまで直線的に増加する。
注入はまた、EZChrom(商標)クロマトグラフィーデータシステム(Agilent)を使用して、15°の角度(LS15)での光散乱信号の収集、ならびにIR5検出器からの「測定」および「メチル」信号(IR測定およびIRメチル)を引き起こす。検出器からのアナログ信号は、SS420Xアナログ/デジタル変換器を介してデジタル信号に変換される。収集周波数は、10Hzである。注入はまた、10ポートVICIバルブのスイッチも引き起こす。バルブのスイッチは、SS420X変換器からのリレー信号によって制御される。バルブは、3分ごとに切り替わる。クロマトグラムは0〜651分で収集される。それぞれのクロマトグラムは、651/3=217 SECクロマトグラムから構成される。
勾配分離の後、0.2mLのTCBおよび0.3mLのデカンを使用して、次の分離のためにHTLCカラムを洗浄および再平衡化する。このステップの流量は、0.2mL/分であり、混合機に連結されたShimadzu LC−20ABポンプによって送達される。
HTLCのデータ分析:最初に651分の生のクロマトグラムを展開して、217SECクロマトグラムをもたらす。それぞれクロマトグラムは、2D溶出体積の単位で0〜7.53mLである。次いで、積分限界が設定され、SECクロマトグラムは、スパイク除去、ベースライン補正、および平滑化を受ける。このプロセスは、従来のSECにおける複数のSECクロマトグラムのバッチ分析と類似する。全てのSECクロマトグラムの和を検査して、ピークの左側(上限積分限界)および右側(下限積分限界)の両方がゼロとしてベースラインにあったことを確証する。そうでない場合、積分限界が調整され、プロセスを繰り返す。
1〜217のそれぞれのSECクロマトグラムnは、HTLCクロマトグラムでX−Y対を得て、ここで、nは、画分番号である。
Xn=溶出体積(mL)=D1流量×n×tスイッチ
ここで、tスイッチ=3分は、10ポートVICIバルブのスイッチ時間である。
上記の方程式は、IR測定信号を例として使用する。得られたHTLCクロマトグラムは、分離されたポリマー成分の濃度を溶出体積の関数として示す。正規化されたIR測定HTLCクロマトグラムを図9に示し、YはdW/dVで表され、これは、溶出体積に対して正規化された重量分率を意味する。
IRメチルおよびLS15信号からデータのX−Y対も得られる。IRメチル/IR測定の比を使用して、較正後の組成を計算する。LS15/IR測定値の比を使用して、較正後の重量平均分子量(Mw)を計算する。
較正は、Leeらの同書の手順に従う。20.0、28.0、50.0、86.6、92.0、および95.8重量%Pのプロピレン含量を有する高密度ポリエチレン(HDPE)、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、およびエチレン−プロピレンコポリマーが、IRメチル/IR測定較正の標準物質として使用される。標準物質の組成は、NMRによって決定される。標準物質は、IR5検出器を用いてSECによって実行される。得られた標準物質のIRメチル/IR測定比は、それらの組成物の関数としてプロットされ、較正曲線を得る。
HDPE基準が、ルーティンLS15較正のために使用される。基準のMwは、LSおよびRI(屈折率)検出器を用いて104.2kg/molとしてGPCによって、予め決定する。GPCは、GPCの標準物質としてNBS 1475を使用する。この標準物質は、NISTによって52.0kg/molの認証値を有する。160℃で、7〜10mgの標準を8mLのデカン中に溶解した。溶液を100%TCB中のHTLCカラムに注入する。ポリマーを0.01mL/分で一定の100%TCB下で溶出する。したがって、ポリマーのピークは、HTLCカラム空隙体積に現れる。較正定数ΩをLS15信号の合計(ALS15)およびIR測定信号の合計(AIR、測定)から決定する。
次いで、実験的LS15/IR測定比をMwからΩに変換する。
例として、3つのHTLCクロマトグラムを図11に示す。黒色のクロマトグラムは、比較BCN1(すなわち、CBCN1)に関する。赤色のクロマトグラムは、iPPとTAFMER(商標)P−0280(三井化学から入手可能なエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー製品)とのブレンドに関する。青色のクロマトグラムは、VERSIFY(商標)2400(The Dow Chemical Companyから入手可能なプロピレン−エチレンコポリマー)とTAFMER(商標)P−0280とのブレンドに関する。破線は、iPP、VERSIFY(商標)2400、およびTAFMER(商標)P−0280の化学組成対それらのピーク溶出体積の線状回帰適合である。VERSIFY(商標)2400が2つのピークを有することに留意されたい。主なピークの組成および溶出体積を線状適合のために使用する。3つのポリマーは全て、80,000ダルトン超のMwを有する。
透過型電子顕微鏡(TEM)は、形態測定用である。射出成形したプラークの中央平面に沿った領域を単離し、比較のためにトリミングした。切片がコアで収集され、機械方向と平行に切断されるように、ブロックをトリミングした。エラストマー相の汚れを防ぐために−60℃でブロックから切片を除去することにより、染色する前に、トリミングした試料を低温研磨した。低温研磨したブロックを2%四酸化ルテニウム水溶液の気相で周囲温度で3時間染色した。染色溶液は、0.2gmの塩化ルテニウム(III)水和物(RuCl3×H2O)をねじ蓋付きのガラス瓶に量り取り、10mlの5.25%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を瓶に加えることによって、調製した。両面テープを有するスライドガラスを使用して試料をガラスジャーに入れた。染色溶液の上約1インチあたりにブロックを吊るすためにスライドをボトルの中に置いた。厚さ約90ナノメートルの切片を、Leica EM UC7ミクロトーム上のダイヤモンドナイフを使用して周囲温度で収集し、観察のために400メッシュの未使用TEMグリッド上に置いた。
画像収集−画像は、加速電圧100kVで操作されるJEOL JEM−1230で収集され、ならびにGatan−791および794デジタルカメラで収集された。
キシレン可溶性分別分析:2時間、還流条件下で、200mlのo−キシレンに溶解した、秤量した樹脂を使用して実施された。次いで、溶液を温度制御された水浴中で25℃に冷却して、キシレン不溶性(XI)画分を結晶化させる。溶液が冷却され、不溶性画分が溶液から析出すると、キシレン不溶性画分からのキシレン可溶性(XS)画分の分離が、濾紙による濾過によって行われる。残りのo−キシレン溶液は、濾液から蒸発する。XSとXI画分の両方は、真空オーブン内で100℃で60分間乾燥され、次いで、秤量される。
C13核磁気共鳴(NMR)は、以下を伴う:
試料調製:試料は、クロムアセチルアセトネート(緩和剤)中0.025Mであるテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50の混合物、およそ2.7gを、10mmのNMRチューブ中の試料、0.21gに添加することによって調製される。試料を、チューブおよびその内容物を150℃に加熱することにより、溶解し、均一化する。
データ取得パラメータ:データは、Bruker Dual DUL高温CryoProbeを備えたBruker 400MHz分光計を使用して、収集される。データは、データファイルあたり320回の過渡応答、7.3秒のパルス繰り返し遅延(6秒の遅延+1.3秒の取得時間)、90度のフリップ角、および125℃の試料温度での逆ゲート付きデカップリングを使用して、取得される。全ての測定は、ロックモードの非回転試料で行われる。試料は、加熱した(130℃)NMR試料チェンジャーに挿入する直前に均質化され、データ取得前に15分間プローブ中で熱平衡させる。
複合体ポリマー中のコモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定することができるが、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技術が好ましい。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):ゲル浸透クロマトグラフィーシステムは、Polymer LaboratoriesモデルPL−210またはPolymer LaboratoriesモデルPL−220装置のいずれかで構成される。カラムおよびカルーセルコンパートメントを140℃で操作する。3つのPolymer Laboratoriesの10ミクロンMixed−Bカラムを使用する。溶媒は、1,2,4トリクロロベンゼンである。試料を、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶媒中、0.1グラムのポリマーの濃度に調製する。試料を、160℃で2時間軽く撹拌することにより、調製する。使用した注入体積は、100マイクロリットルであり、流量は、1.0ml/分である。
GPCカラムセットの較正を、個別の分子量間に少なくとも一桁の間隔を有する、6つの「カクテル」混合物中に配置された、580〜8,400,000の範囲の分子量を有する21個の狭い分子量分布ポリスチレン標準物質を用いて実施する。標準物質をPolymer Laboratories(Shropshire,UK)から購入する。1,000,000以上の分子量に対して50ミリリットルの溶媒中0.025グラム、および1,000,000未満の分子量に対して50ミリリットルの溶媒中0.05グラムでポリスチレン標準物質を調製する。ポリスチレン標準物質を80℃で30分間穏やかに撹拌しながら溶解する。狭い標準物質混合物を最初に、および最高分子量成分を減少させる順序で実行して、分解を最小限に抑える。以下の方程式を用いて、ポリスチレン標準ピーク分子量をポリエチレン分子量に変換する(Williams and Ward、J.Polym.Sci.、Polym.Let.、6,621(1968)に記載されているように):Mポリプロピレン=0.645(Mポリスチレン)。
ポリプロピレン等価分子量計算をViscotek TriSECソフトウェアバージョン3.0を使用して行う。
CEF:コモノマー分布分析は、IR−4検出器(PolymerChar、スペイン)および2角度光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors、現在のAgilent Technologies)を備えた結晶化溶出分別(CEF)(PolymerChar,Spain)(Monrabal et al,Macromol.Symp.257,71−79(2007))を用いて実施した。IR−4またはIR−5検出器が使用される。IR−4検出器またはIR−5検出器を検出器オーブン内に入れる直前に、50×4.6mmの10または20ミクロンガードカラム(PolymerLab、現在のAgilent Technologies)を取り付ける。Sigma−Aldrichから、オルト−ジクロロベンゼン(ODCB、99%無水グレード)および2,5−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」、カタログ番号B1378−500G、バッチ番号098K0686)が得られる。使用前にODCBは蒸留される。EMD Chemicalsから、シリカゲル40(粒径0.2〜0.5mm、カタログ番号10181−3)も得られる。使用前に、シリカゲルを160℃の真空オーブンで約2時間乾燥する。800mgのBHTおよび5gのシリカゲルを、2リットルのODCBに加える。ODCBは、シリカゲルを充填した1つまたは複数のカラムを通過させることによっても、乾燥させることができる。N2パージ能力を有するオートサンプラを備えたCEF装置の場合、シリカゲル40を、2つの300×7.5mmのGPCサイズのステンレス鋼カラムに充填し、シリカゲル40カラムをCEF装置のポンプの入口に取り付けて、ODCBを乾燥させる。また、BHTは移動相に全く添加されない。ここで、この「BHTおよびシリカゲルを含有するODCB」、またはシリカゲル40で乾燥したODCBを、「ODCB」と称する。このODBCは、使用前に乾燥窒素(N2)で1時間スパージされる。乾燥窒素は、窒素をCaCO3および5Åモレキュラーシーブに90psig未満で通過させることによって得られるものである。得られる窒素は約−73℃の露点を有するはずである。試料調製は、160℃で2時間振盪させながら、オートサンプラを4mg/mlで用いて(特記しない限り)行う。注入体積は300μlである。CEFの温度プロファイルは、3℃/分で110℃〜30℃での結晶化、30℃で5分間の熱平衡(2分間に設定された可溶性画分溶出時間を含む)、3℃/分で30℃〜140℃での溶出、である。結晶化中の流量は、0.052ml/分である。冷却ステップ中の流量は、0.052mL/分である。溶出中の流量は、0.50ml/分である。データは、1データポイント/秒で収集される。CEFカラムは、米国特許第8,372,931号に従って、1/8インチのステンレス管を用いて、125μm±6%(MO−SCI特殊製品)のガラスビーズで充填される。カラム外径(OD)は、1/8インチである。この方法を再現するのに必要な重要なパラメータには、カラム内径(ID)およびカラム長(L)が含まれる。IDとLの選択は、直径125μmのガラスビーズを充填する場合、液体内部体積が2.1〜2.3mLになるようにする必要がある。Lが152cmの場合、IDは0.206cmである必要があり、壁の厚さは0.056cmである必要がある。ガラスビーズの直径が125μmであり、かつ液体内部体積が2.1〜2.3mLである限り、LとIDについて異なる値を使用することができる。カラム温度較正は、ODCB中のNIST標準参照物質、線状ポリエチレン1475a(1.0mg/ml)およびエイコサン(2mg/ml)の混合物を用いて行う。CEF温度較正は、(1)測定されたエイコサンのピーク溶出温度から30.00℃を差し引いた、温度オフセットとして定義される、遅延体積を計算すること;(2)溶出温度の温度オフセットをCEF生温度データから差し引くこと、ここで、この温度オフセットは、溶出温度、溶出流速などの実験条件の関数であることが留意される;(3)NIST線状ポリエチレン1475aが101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃のピーク温度を有するように、30.00℃〜140.00℃の範囲にわたる溶出温度を変換する線形較正直線を作成すること、(4)30℃で等温的に測定された可溶性画分について、溶出温度は、3℃/分の溶出加熱速度を使用することによって直線的に外挿されること、の4工程から構成される。報告された溶出ピーク温度は、観察されたコモノマー含量の較正曲線が米国特許第8,372,931号で以前報告されたものと合致するように、得られる。
ブロック複合体および結晶性ブロック複合体の調製
ブロック複合体(BC)試料は、2つの反応器に同時に供給される触媒を用いて製造される。
BCA試料の各々は、(i)エチレン−プロピレンポリマーと、(ii)アイソタクチックプロピレンポリマーと、(iii)エチレン−プロピレンポリマーと同じ組成を有するエチレン−プロピレンソフトブロックと、アイソタクチックプロピレンポリマーと同じ組成を有するアイソタクチックポリプロピレンハードブロックとを含むブロックコポリマーと、を含む。ブロックコポリマーに関しては、エチレン−プロピレンソフトブロックは第1の反応器で生成され、アイソタクチックポリプロピレンハードブロックは第2の反応器で生成される。BCのブロックコポリマー中のソフトブロックとハードブロックとの間の分裂は約50/50である。
直列に連結された2つの連続撹拌槽型反応器(CSTR)を使用し、かつ両反応器中に同時に供給される触媒を使用して、BC試料が調製される。ソフトブロックは第1の反応器で製造され、ハードブロックは第2の反応器で製造される。各反応器は液圧で満ちており、定常状態の条件で操作するように設定する。特に、BCは、下記の表1に概説されるプロセス条件に従って、モノマー、触媒、共触媒−1、共触媒−2、およびSA(鎖シャトリング剤として)を流すことによって調製される。2ポートインジェクターは、触媒、共触媒−1、共触媒−2、およびSA(シャトリング剤)−1を別々に反応器中に供給するために使用される。BCおよびSBCの調製について、触媒は、([[rel−2’,2’’’−[(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジイルビス(メチレンオキシ−κO)]ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)−5−メチル[1,1’−ビフェニル]−2−オラト−κO]](2−)]ジメチル−ハフニウム)である。共触媒−1は、長鎖トリアルキルアミン(Akzo−Nobel,Inc.から入手可能なArmeen(商標)M2HT)が使用される反応によって調製された、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C14−18アルキル)アンモニウム塩の混合物である。共触媒−2は、米国特許第6,395,671号、実施例16に従って製造された、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマン)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14−18アルキルジメチルアンモニウム塩である。SAは、1〜3mol%のAkzo Nobel Chemicalsからの改質されたメチルアルモキサン(MMAO−3A)を含み得るジエチル亜鉛(DEZ)の溶液である。反応器を出ると、水および/または添加剤をポリマー溶液に注入することができる。
BC試料を作製するためのプロセス条件は以下の通りである。
BC試料の特性を下記表2に示す。
CBC試料は、BCおよびSBC試料に関して上記したのと同様の方法を用いて、直列の二重反応器中で合成される。CBC試料は、(i)エチレン−プロピレンポリマーと、(ii)アイソタクチックポリプロピレンポリマーと、(iii)エチレン−プロピレンポリマーと同じ組成を有するエチレン−プロピレンブロックと、アイソタクチックポリプロピレンポリマーと同じ組成を有するアイソタクチックポリプロピレンブロックとを含むブロックコポリマーと、を含む。CBCのブロックコポリマー中のEPとiPPブロックとの間の分裂は約50/50である。CBC試料の測定された特性を下記表3に示す。
ブロック複合体インデックスの算出
本明細書では、ブロック複合体インデックス(BCI)という用語は、ブロックコポリマーの重量パーセンテージを100%で割ったもの(すなわち、重量分率)に等しくなるように定義される。BCIの値は、0〜1.0の範囲とすることができ、1.0は、100%のブロックコポリマーに等しく、ゼロは、従来のブレンドまたはランダムコポリマーのような材料についてのものであり得る。言い換えれば、不溶性画分については、BCIは1.0であり、可溶性画分については、BCIにはゼロの値が割り当てられる。以下は、ブロック複合体インデックスを推定するための説明である。
ブロック複合体インデックスの推定は、ポリマーが単にiPPホモポリマーとEPコポリマーとのブレンドである場合には存在しないであろう明らかな量のエチレンを不溶性画分が含有することが示されていることに基づく。この「余分なエチレン」を説明するために、物質収支の計算を実施し、キシレン不溶性および可溶性画分の量、ならびに画分のそれぞれに存在するエチレン重量%から、ブロック複合体インデックスを推定することができる。
方程式1に従って、各画分からのエチレンの重量%を合計すると、(ポリマー中の)のエチレンの全重量%が得られる。また、この物質収支式を使用して、2成分ブレンド、または拡大して3成分もしくはn成分ブレンド中のそれぞれの成分の量を定量化することもできる。
C2全体の重量%=w不溶性(C2不溶性の重量%)+w可溶性(C2可溶性の重量%) 方程式1
C2全体の重量%=wiPPハード(C2iPPの重量%)+wEPソフト(C2EPソフトの重量%) 方程式2
方程式2〜4を適用して、不溶性画分中に存在するソフトブロック(余分エチレンの供給源を提供する)の量を計算する。方程式2の左辺に不溶性画分の重量%C2を代入することにより、方程式3および方程式4を用いて、iPPハードの重量%、およびEPソフトの重量%を計算することができる。EPソフト中のエチレンの重量%は、キシレン可溶性画分中のエチレンの重量%に等しくなるように設定されることに留意されたい。iPPブロック中の重量%エチレンは、ゼロに設定されるか、またはそのDSC融点もしくは他の組成測定値から別様に分かっている場合、その値をその場所に代入することができる。
wEPソフト=1−wiPPハード 方程式4
不溶性画分中に存在するEPコポリマーを有するための唯一の方法である、不溶性画分中に存在する「追加の」エチレンを明らかにした後、EPポリマー鎖は、iPPポリマーブロックに連結される必要がある(または、それは、キシレン可溶性画分中に抽出されている)。したがって、iPPブロックが結晶化すると、それは、EPブロックが可溶化するのを防ぐ。
ブロック複合体インデックスを推定するには、各ブロックの相対量を考慮する必要がある。これを見積もるために、EPソフトとiPPハードとの間の比率が使用される。EPソフトポリマーとiPPハードポリマーとの比率は、ポリマー中で測定された総エチレンの物質収支からの方程式2を使用して計算することができる。あるいは、それはまた、重合中のモノマーおよびコモノマー消費の物質収支からも推定することができる。iPPハードの重量分率およびEPソフトの重量分率は、方程式2を使用して計算され、iPPハードがエチレンを全く含有していないと推測される。EPソフトのエチレン重量%は、キシレン可溶性画分中に存在するエチレンの量である。
BCについての対応するBCI計算は、以下の表4で提供される。
結晶性ブロック複合体インデックス
CBCIは、ジブロック中のCEB/EB対CAOB/AOBの比が、ブロック複合体全体におけるエチレン対アルファ−オレフィンの比と同じであるという仮定の下で、結晶性ブロック複合体中のブロックコポリマーの量の推定値を提供する。この仮定は、本明細書に記載されるように、個別の触媒動態および連鎖シャトリング触媒作用を介するジブロックの形成のための重合メカニズムの理解に基づいて、これらの統計的オレフィンブロックコポリマーに対して有効である。このCBCI分析は、ポリマーがプロピレンホモポリマー(この例ではCAOP/AOP)とポリエチレン(この例ではCEP/EP)との単純なブレンドである場合よりも、単離PPの量が少ないことを示す。結果として、ポリエチレン画分は、ポリマーが単にポリプロピレンとポリエチレンとのブレンドである場合では存在しないであろうかなりの量のプロピレンを含有する。この「余分なプロピレン」を説明するために、物質収支の計算を実施し、ポリプロピレンおよびポリエチレン画分の量、ならびにHTLCにより分離される各画分中に存在するプロピレン重量%から、CBCIを推定することができる。
CBCについての対応する計算は、以下の表5で提供される。
上記の表5を参照して、最初に、ポリマー中の各成分からのプロピレンの重量%の合計を、(ポリマー全体の)プロピレン/C3の全重量%をもたらす以下の方程式1に従って決定することによって、CBCIが測定される。この物質収支式を使用して、ブロックコポリマー中に存在するPPおよびPEの量を定量化することができる。この物質収支式を使用して、2成分ブレンド、または拡大して3成分もしくはn成分ブレンド中のPPおよびPEの量を定量化することもできる。CBCの場合、PPまたはPEの全量は、ブロックコポリマーならびに非結合PPおよびPEポリマー中に存在するブロック内に含有される。
C3全体の重量%=wPP(C3PPの重量%)+wPE(C3PEの重量%) 方程式1
式中、
wpp=ポリマー中のPPの重量分率
wPE=ポリマー中のPEの重量分率
C3PPの重量%=PP成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセント
C3PEの重量%=PE成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセント
プロピレン(C3)の全重量%が、全ポリマー中に存在するC3の総量を表すC13 NMRまたはいくつかの他の組成測定から測定されることに留意されたい。PPブロック中のプロピレンの重量%(C3PPの重量%)を100(該当する場合)に設定するか、そうでなければ、そのDSC融点、NMR測定、または他の組成推定値から既知の場合、その値をその場所に当てはめることができる。同様に、PEブロック中のプロピレンの重量%(C3PEの重量%)を100(該当する場合)に設定するか、そうでなければ、そのDSC融点、NMR測定、または他の組成推定値から既知の場合、その値をその場所に当てはめることができる。
結晶性ブロック複合体および/または特定のブロック複合体中のPP対PEの比の計算:方程式1に基づいて、ポリマー中に存在するPPの全重量分率は、ポリマー中で測定された総C3の質量バランスから方程式2を使用して計算することができる。あるいは、重合中のモノマーおよびコモノマー消費量の質量バランスからも推定することができる。全体的に、これは、非結合成分中に存在するかまたはブロックコポリマー中に存在するかにかかわらず、ポリマー中に存在するPPおよびPEの量を表す。従来のブレンドに関して、PPの重量分率およびPEの重量分率は、存在するPPおよびPEポリマーの個別の量に対応する。結晶性ブロック複合体および/または特定のブロック複合体に関して、PP対PEの重量分率の比は、この統計的ブロックコポリマー中に存在するPPとPEとの間の平均ブロック比にも対応すると考えられる。
式中、
wPP=全ポリマー中に存在するPPの重量分率
C3PPの重量%=PP成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセント
C3PEの重量%=PE成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセント
結晶性ブロック複合体および/または特定のブロック複合体中のブロックコポリマー(ジブロック)の量を推定するために、方程式3〜5を適用し、HTLC分析によって測定される単離PPの量を使用して、ジブロックコポリマー中に存在するポリプロピレンの量を決定する。HTLC分析において最初に単離または分離された量は、「非結合PP」を表し、その組成は、ジブロックコポリマー中に存在するPPブロックを表す。式3の左辺に全ポリマーのC3の全重量%、ならびに(HTLCから単離された)PPの重量分率および(HTLCによって分離された)PEの重量分率を、式3の右辺に置換することによって、式4および5を使用して、PE画分中のC3の重量%を計算することができる。PE画分は、非結合PPから分離された画分として記載され、ジブロックおよび非結合PEを含有する。単離PPの組成は、前述のPPブロック中のプロピレン重量%と同じであると考えられる。
C3全体の重量%=wPP単離(C3PPの重量%)+wPE−画分(C3PE−画分の重量%) 方程式3
wPE−画分=1−wPP単離 方程式5
式中、
wPP単離=HTLCからの単離PPの重量分率
wPE−画分=ジブロックおよび非結合PEを含有する、HTLCから分離されたPEの重量分率
C3PPの重量%:PP中のプロピレンの重量%;これは、PPブロックおよび非結合PP中に存在する同じ量のプロピレンでもある
C3PE−画分の重量%=HTLCによって分離されたPE−画分中のプロピレンの重量%
C3全体の重量%=全ポリマー中のプロピレンの全重量%
HTLCからのポリエチレン画分中のC3の重量%の量は、「非結合ポリエチレン」中に存在する量を超えるブロックコポリマー画分中に存在するプロピレンの量を表す。ポリエチレン画分中に存在する「追加の」プロピレンを説明するために、この画分中にPPを存在させる唯一の方法は、PPポリマー鎖をPEポリマー鎖に連結させることである(または、それは、HTLCによって分離されたPP画分で単離されているであろう)。したがって、PPブロックは、PE画分が分離されるまでPEブロックに吸着されたままである。
ジブロック中に存在するPPの量を式6を使用して計算する。
であり、式中、
C3PE−画分の重量%=HTLCによって分離されたPE−画分中のプロピレンの重量%(式4)
C3PPの重量%=(前に定義された)PP成分またはブロック中のプロピレンの重量%
C3PEの重量%=(前に定義された)PE成分またはブロック中のプロピレンの重量%
wPP−ジブロック=HTLCによってPE−画分で分離されたジブロック中のPPの重量分率
このPE画分中に存在するジブロックの量は、PPブロック対PEブロックの比が、全ポリマー中に存在するPP対PEの全体比と同じであると仮定することによって推定することができる。例えば、PP対PEの全体比が全ポリマーにおいて1:1である場合、ジブロック中のPP対PEの比もまた1:1であると仮定される。したがって、PE画分中に存在するジブロックの重量分率は、ジブロック中のPPの重量分率(wPP−ジブロック)に2を乗算したものとなる。これを計算するための別の方法は、ジブロック中のPPの重量分率(wPP−ジブロック)を、全ポリマー中のPPの重量分率で除算することによる(方程式2)。
全ポリマー中に存在するジブロックの量をさらに推定するために、PE画分中のジブロックの推定量に、HTLCから測定したPE画分の重量分率を乗算する。結晶性ブロック複合体インデックスを推定するために、ジブロックコポリマーの量を、方程式7.1または7.2によってそれぞれ決定する。CBCIを推定するために、方程式6を使用して計算されたPE画分中のジブロックの重量分率を(方程式2で計算されるような)PPの全重量分率で除算し、次いで、PE画分の重量分率で乗算する。CBCIの値は、0〜1.0の範囲とすることができ、1.0は、100%のジブロックに等しく、ゼロは、従来のブレンドまたはランダムコポリマーのような材料についてのものであり得る。
式中、
wPP−ジブロック=HTLCによってPE−画分で分離されたジブロック中のPPの重量分率(式6)
wPP=ポリマー中のPPの重量分率
wPE−画分=ジブロックおよび非結合PEを含有する、HTLCから分離されたPEの重量分率(式5)
実施例および比較例の調製
主に使用された材料は、以下のとおりである。
[表]
実施例1〜12および比較例A〜Dを以下の表6および7の配合に従って調製する。
特に、実施例および比較例は、KraussMaffei KM 110−390射出成形機上での乾式混合および射出成形によって調製された試料物品である。二重蝶型を使用して、アイゾット衝撃、シャルピー衝撃、および引張試験に使用される試験片を1.6mmおよび0.75mm厚のプラークに打ち抜いた試料(7.4mm×7.4mm四方)を作製した。
1.60mmのプラーク試験片厚さにおける、実施例1〜12および比較例A〜Dの試料物品の特性を、以下の表8および9に示す。
0.75mmの試験片厚さにおける、実施例1〜12および比較例A〜Dの特性を、以下の表10および11に示す。これに関して、0.75mmの試験片厚さは衝撃性データには薄すぎることに留意されたい。したがって、0.75mmプラークについて試験した特性は、光学的特性である。
実施例に関して、「改質剤」は、各特定の実施例についてのOBCとBC/CBCとの組み合わせとして定義される。したがって、一例としての改質剤添加量は、配合物の総重量パーセントに対するOBCおよびBC/CBCの合計重量パーセントであり得る。改質剤自体に関しては、OBCおよびBC/CBCの重量パーセントは、改質剤の総重量パーセントに基づいて与えられてもよい。
比較例A〜Cは、RCPとのブレンドにおいてOBC1を10〜20%増加させる効果を示す。OBC1の量が増えると、それに対応して引張弾性率が減少し、ヘイズ%が増加する。OBC1の量が増えると、シャルピーおよびアイゾット測定による衝撃エネルギーが増加する。23℃で、実施例BおよびCはある程度の延性を示す;実施例B、シャルピー衝撃については10%の延性、およびアイゾット衝撃については80%の延性、実施例C、シャルピー衝撃については20%の延性、およびアイゾット衝撃については100%の延性。低温では、OBC1の量が増えると、アイゾット測定による衝撃エネルギーがわずかに増加し、試験片は脆性破壊を示す。比較例Dは、23℃および周囲温度以下で、より高い衝撃エネルギーを示し、70%の延性破壊アイゾット衝撃が0℃で観察される。
さらに、改質剤の20%添加量において、実施例Cの36%ヘイズよりも低い、30%ヘイズが観察される。実施例1〜3は、添加した改質剤の総量に対して15%の量のCBCにおいて、CBCとOBC1を組み込むことの効果を示す。OBC1およびCBCの量が増加すると、それに対応して引張弾性率が減少し、ヘイズ%が増加する。しかし驚くべきことに、15%および20%の添加量でのヘイズ%は、比較例BおよびCよりも低い。OBC1およびCBCの量が増加すると、シャルピーおよびアイゾット測定による衝撃エネルギーは増大し、また実施例6については、改質剤の20%添加量において、試験片は23℃で延性破壊を示す;しかしながら、注目すべきことには、実施例3は著しくより高いシャルピー衝撃エネルギー(シャルピー試験により64kJ/m2)を示す。低温では、OBC1およびCBCの量が増えると、アイゾット測定による衝撃エネルギーは増加するが、0℃では、23kJ/m2のアイゾット衝撃エネルギーおよび60%の延性破壊が観察され、−20℃では、10kJ/m2のアイゾット衝撃エネルギーおよび10%の延性破壊が観察される。
実施例4〜6は、添加した改質剤の総量に対して7.5%の量のCBCにおいて、CBCとOBC1を組み込むことの効果を示す。OBC1およびCBCの量が増加すると、引張弾性率において極小の変化が生じる。OBC1およびCBCの量が増加すると、ヘイズ%の増加が生じる。OBC1およびCBCの量が増加すると、シャルピーおよびアイゾット測定による衝撃エネルギーは、改質剤の20%添加量での実施例6のみが、衝撃エネルギーの劇的な増加を示し、23℃で100%の延性破壊、ならびに52kJ/m2(シャルピー衝撃)および24kJ/m2(アイゾット衝撃)を示した。低温では、OBC1およびCBCの量が増加すると、アイゾット測定による衝撃エネルギーは、改質剤の20%添加量での実施例6のみが、劇的な増加を示し、0℃で26kJ/m2、−20℃で12kJ/m2のアイゾット衝撃エネルギーを示し、それぞれ100%および80%の延性破壊が観察される。
実施例3、7、および8は、CBCと組み合わせた場合の、引張特性、光学特性、および衝撃特性に対するOBC1、OBC2、およびOBC3の効果を比較する。OBCを変えても、引張特性は同様のままであったが、%ヘイズは、OBC1(34%)、OBC3(43%)、OBC2(50%)の順に増加した。CBCと組み合わせるOBCを変化させたときの、シャルピー測定による衝撃エネルギー;OBC1は高い衝撃エネルギー(64kJ/m2)を示し、OBC2(64kJ/m2)、次いで、OBC3(27kJ/m2)が続く。CBCと組み合わせるOBCを変化させたときの、アイゾット測定による衝撃エネルギー;23℃および0℃では、OBC3は、同様の衝撃エネルギーを示すOBC1およびOBC2よりも低い衝撃エネルギーを示す。しかし、−20℃では、OBC2は、著しく高い衝撃エネルギーを示し、9kJ/m2(OBC1)に対して、17kJ/m2(OBC2)である。延性破壊%に関して、OBC2は、OBC1よりもはるかに高い延性破壊%を示し;OBC3は、より低い延性破壊%を示す。
実施例9は、引張特性、光学特性、および衝撃特性についての、ポリオレフィンコポリマーとさらに組み合わせた場合のOBC1およびCBCの結果を示す。20%添加量の改質剤における他の実施例と比較して、実施例9は、23℃および0℃の両方で、同様の引張特性、良好なシャルピーおよびアイゾット衝撃特性を示し、ならびに90%以上の延性破壊を示した。驚くべきことに、実施例9は、20%という低いヘイズ%を示し、これは全ての実施例の中で最も低い。
実施例10〜12は、添加した改質剤の総量に対して15%の量のOBCにおいて、BCとOBC1を組み込むことの効果を示す。OBC1およびBCの量が増えると、それに対応して引張弾性率が減少し、ヘイズ%が増加する。OBC1およびBCの量が増えると、シャルピーおよびアイゾット測定による衝撃エネルギーが増加し、実施例12では、20%の改質剤添加量で、試験片は23℃で延性破壊を示す。低温では、OBC1およびBCの量が増えると、アイゾット測定による衝撃エネルギーは増加するが、0℃では、28kJ/m2のアイゾット衝撃エネルギーおよび90%の延性破壊が観察され、−20℃では、14kJ/m2のアイゾット衝撃エネルギーが10%の延性破壊と共に観察される。
図1〜6は、比較例Cと実施例3、2、9、6、および5のTEM形態を比較しており、射出成形試験片に由来するRCP内の改質剤の分散における変化を示す(試験片は射出流に対して平行方向に切断され分析された)。図1は、20%の改質剤添加量でOBC1を伴う比較例Cが、最短寸法で約300nmのドメインサイズを有する、細長い、流れに沿って整列した構造をもたらすことを示す。図2は、20%の改質剤添加量でOBC1およびCBCを伴う実施例3が、最短寸法で約200nmのドメインサイズを有する、細長い、流れに沿って整列した構造をもたらすことを示す。図3は、15の改質剤添加量でOBC1およびCBCを伴う実施例2が、最短寸法で約150〜200nmである、十分に分散した、円形および個別のドメインサイズをもたらすことを示す。図4は、20%の改質剤添加量でOBC1、CBC、およびポリオレフィンコポリマーを伴う実施例9が、最短寸法で100〜200nmである、十分に分散した、円形および個別のドメインサイズをもたらすことを示す。図5は、20%の改質剤添加量でOBC1およびCBCを伴う実施例6が、細長い、流れに沿って整列した構造と、最短寸法が100〜250nmである個々のドメインとの混合をもたらすことを示す。
図6は、15%の改質剤添加量でOBC1およびCBCを伴う実施例5が、最短寸法において250〜300nmである個別のドメインを大部分でもたらすことを示す。