発明の実施態様の詳細な記載
I.定義
用語は、以下及び本明細書で別に定義されない限り、本明細書中で一般的に当該技術分野で使用されるものとして使用される。
用語「重鎖」、「重鎖ドメイン」及び「重鎖領域」は、本明細書では互換的に使用され、本質的に、免疫グロブリン重鎖の重鎖、又は免疫グロブリン重鎖と比較して同じ機能性を保持するその断片からなるポリペプチド鎖を指す。本明細書及び特許請求の範囲において、免疫グロブリン重鎖中の残基の番号付けは、参照によりその全体が本明細書に明確に組み込まれる、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)のものである。Kabatらは、あらゆる抗体に適用可能な可変ドメイン配列の番号付けシステムを定義した。当業者であれば、配列自体を超える実験データに頼らなくとも、このアミノ酸残基番号付けシステムを任意の重鎖領域配列に明確に割り当てることができる。ここで使用される「Kabat番号付け」は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)によって可変ドメイン配列について規定された番号付けシステムを指す。本明細書では、特に明記しない限り、重鎖領域の残基番号11への言及は、Kabat番号付けシステムによる残基番号付け(Kabat番号付け)を意味する。免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する場合には、「EU番号付け」システム又は「KabatのEUインデックス」を使用することができる。KabatのEUインデックスはヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。残基の番号付けは、抗体の配列の相同性領域での「標準的な」Kabat番号付けをされた配列とのアライメントにより、所定の抗体について決定することができる。本明細書で別段の記載がない限り、残基番号151及び297への言及は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)によって規定されたEU番号付けシステムによる残基番号付け(EU番号付け)を意味する。Kabat(Kabat番号付け又はEU番号付け)に従って、特に11位(Kabat番号付け)、151位(EU番号付け)及び297位(EU番号付け)に番号が付けられた2つの抗CD20抗体の例が本明細書に含まれる(配列番号01、配列番号02)。本明細書で特に明記しない限り、残基番号329への言及は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下記に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから得られる軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンのフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含んでもよく、又はアミノ酸配列の変化を含んでもよい。幾つかの実施態様では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。幾つかの実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。一般的に、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離定数(Kd)によって表される。親和性は、本明細書中に開示されるものを含む当該技術分野で周知の一般的な方法により測定することができる。結合親和性を測定するための特定の例示的な実施態様を本明細書に開示する。
「親和性成熟」抗体とは、改変を有しない親抗体と比較して、一又は複数の超可変領域(HVR)に一又は複数の改変があり、かかる改変が抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす抗体を指す。
本明細書で使用される場合、用語「アゴニスト活性」は、薬剤(例えば、抗原結合分子)が細胞表面に結合した分子と相互作用する(例えば、結合する)と、反応を開始又は誘導する、薬剤の活性を指すことを意図する。
本明細書で使用される場合、用語「改変された細胞シグナル伝達活性」とは、標的抗原の細胞シグナル伝達活性を誘導又は阻害する抗体の能力の増加又は減少を指すことを意図している。
本明細書で使用される場合、用語「1つ以上の標的抗原の架橋の改変」とは、抗体が、互いにより近接する、かつ/又は他の膜結合分子とより近接する、かつ/又は(例えば、タンパク質の架橋又は膜結合受容体のオリゴマー化を介して)複合体を形成し、細胞シグナル伝達活性を開始させることができる相互作用標的抗原に対して、より好ましいコンフォメーションをもたらす能力の増加又は減少を指すことを意図している。
本明細書で使用される場合、用語「直接細胞死の誘導の改変」とは、標的抗原の細胞シグナル伝達活性を誘導又は阻害する抗体の能力の増加又は減少を指すことを意図している。
本明細書で使用される場合、用語「エフェクター機能の誘導の改変」又は「改変されたエフェクター機能」とは、エフェクター機能を誘導する抗体の能力の増加又は減少を指すことを意図している。
本明細書で使用される場合、「アミノ酸置換」は、参照配列(例えば、抗体などの親分子)における1つ以上のアミノ酸の置換を指すことを意図する。一実施態様では、アミノ酸置換は、例えば、親非置換配列と比較して、ポリペプチドをコードする核酸の配列中の点突然変異によって達成することができる。別の実施態様では、アミノ酸残基の置換は、親ポリペプチドのフレームワーク領域全体を、例えば親を参照して置換されるべき位置に所望のアミノ酸を含むFc領域配列で置換することによって達成することができる。
本明細書で使用される場合、用語「アンタゴニスト活性」は、細胞上の分子と相互作用し(例えば、結合する)、反応の開始又は誘導を妨げるか、又は進行中の反応を中断するときの薬剤(例えば、抗原結合分子)の活性を指すことを意図する。
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、並びに結合特異性を保持する抗体断片、及び免疫グロブリンの重鎖領域に相当する領域を含み、かつ結合特異性を保持する融合タンパク質を含む全ての抗体分子を包含することを意図する。また、限定するものではないが、VH断片、VL断片、Fab断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、ミニボディー、ダイアボディー、トリアボディー、及びテトラボディーを含む、結合特異性を保持する「抗体断片」も包含される(例えば、Hudson and Souriau, Nature Med. 9: 129-134 (2003)を参照。これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。また、ヒト化抗体、霊長類化抗体及びキメラ抗体も包含される。本明細書で使用される場合、「全抗体」とは、2つの「重鎖」及び2つの「軽鎖」を含み、それらの各々が可変及び定常領域を含む免疫グロブリン分子を指す。本明細書で使用される場合、用語「修飾された抗体」は、重鎖可変領域及び/又はCH1領域における少なくとも1つのアミノ酸残基置換、及び/又は軽鎖可変領域及び/又はCL領域における少なくとも1つのアミノ酸残基置換、及び/又はFc領域における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む抗体を指すことを意図する。
目的の抗原、例えば、腫瘍関連ポリペプチド抗原標的と「結合する」抗体は、その抗体が、抗原を発現する細胞又は組織を標的とする際の治療剤として有用であり、他のタンパク質とは有意に交差反応しないように、十分な親和性で抗原に結合するものである。このような実施態様では、抗体と「非標的」タンパク質との結合度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA)により決定した場合、抗体とその特定の標的タンパク質との結合の約10%未満であろう。標的分子への抗体の結合に関しては、特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチド又はエピトープに「特異的結合」又は「特異的に結合する」又は「特異的である」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、結合活性を有さない類似の構造の分子であるコントロール分子の結合と比較した分子の結合を測定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似するコントロール分子、例えば過剰の非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、特異的結合は、プローブとの標識標的の結合が、過剰な非標識標的により競合的に阻害される場合に示される。本明細書で使用される特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的である」といった用語は、例えば、約10−4M以下、あるいは約10−5M以下、あるいは約10−6M以下、あるいは約10−7M以下、あるいは約10−8M以下、あるいは約10−9M以下、あるいは約10−10M以下、あるいは約10−11M以下、あるいは約10−12M以下又はそれ以下の、標的に対するKdを有する分子によって示され得る。一実施態様では、用語「特異的結合」は、分子が特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド上のエピトープに、実質的に任意の他のポリペプチド若しくはポリペプチドエピトープにも結合することなく結合することを指す。
用語「抗CD20抗体」及び「CD20に特異的に結合する抗体」は、CD20を標的とするうえで診断薬及び/又は治療剤として抗体が有用であるように、十分な親和性でCD20に結合することができる抗体を指す。一実施態様では、抗CD20抗体の、無関係な、非CD20タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体のCD20への結合の約10%未満である。特定の実施態様では、CD20に結合する抗体は、スキャッチャード分析によって測定される場合、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10
−8M以下、例えば10
−8M〜10
−13M、例えば10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様では、抗CD20抗体は、異なる種由来のCD20の間で保存されているCD20のエピトープに結合する。抗CD20抗原への抗CD20抗体の結合特性及び生物活性に応じて、抗CD20抗体の2つの型(I型及びII型抗CD20抗体)がCragg, M.S., et al., Blood 103 (2004) 2738-2743; and Cragg, M.S., et al., Blood 101 (2003) 1045-1052により区別され得る。表1を参照のこと。
I型及びII型抗CD20抗体の1つの本質的な特性は、それらの結合様式である。従って、I型及びII型抗CD20抗体は、リツキシマブと比較して、前記抗CD20抗体のRaji細胞(ATCC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比によって分類することができる。
「直接細胞死を誘導する」又は「アポトーシスを誘導する」又は「アポトーシス様の直接細胞死を誘導する」抗体は、アネキシンVの結合、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス小体と呼ばれる)により決定されるプログラム細胞死を誘導する抗体である。細胞は通常、CD20ポリペプチドを発現する細胞である。好ましくは、細胞は腫瘍細胞である。より好ましくは、細胞は、自己免疫に関与する悪性B細胞又はB細胞などの造血細胞である。直接細胞死に関連づけられる細胞事象を評価するために様々な方法が利用可能である。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転位置は、アネキシン結合によって測定することができる。
「細胞死を誘導する」抗体は、生細胞を育成不能にする抗体である。細胞は、CD20ポリペプチドを発現する細胞であり、CD20ポリペプチドを特異的に発現若しくは過剰発現する細胞型である。細胞は、特定の細胞型のがん性細胞又は正常細胞でよい。細胞は、自己免疫に関与する正常なB細胞であり得る。細胞はがん細胞であってもよい。好ましくは、細胞は悪性B細胞である。in vitroでの細胞死は、エフェクター機能によって誘導される細胞死を区別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の非存在下で決定される。このように、細胞死のアッセイは、熱不活性化血清を用いて(すなわち、補体の非存在下で)、かつ免疫エフェクター細胞の非存在下で実行され得る。抗体が細胞死を誘導することができるかどうかを決定するために、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Moore et al. Cytotechnology 17:1-11 (1995)参照)又は7−AADの取り込みにより評価される膜完全性の喪失を、非処理細胞と比較して評価することができる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害が改変された抗体」(「ADCC」)とは、当業者に周知の任意の適切な方法によって決定されるような改変されたADCCを有する、本明細書で定義される用語のような抗体を意味する。一つの許容されるin vitroADCCアッセイは、次の通りである:
1)アッセイは、抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが既知である標的細胞を使用する;
2)アッセイは、エフェクター細胞として、無作為に選ばれた健常なドナーの血液から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用する;
3)アッセイは、次のプロトコールに従って実施される:
i)標準的な密度遠心分離手順を使用してPBMCを単離し、5x106細胞/mlでRPMI細胞培養培地に懸濁させる;
ii)標準的な組織培養法により標的細胞を増殖させ、生存率が90%を越える指数増殖期から回収し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、105細胞/mlの密度で細胞培養培地に再懸濁させる;
iii)100マイクロリットルの上記の最終標的細胞懸濁液を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv)抗体を細胞培養培地で4000ng/mから0.04ng/mlに連続希釈し、50マイクロリットルの得られた抗体溶液を96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に添加し、上記の全濃度範囲をカバーする様々な抗体濃度を3重に試験する。
v)最大放出(MR)コントロールに対して、標識された標的細胞を含むプレート中の更なる3つのウェルに、抗体溶液(上記のiv項)に代えて、50マイクロリットルの非イオン性洗浄剤(Nonidet,Sigma,St.Louis)の2%(VN)水溶液を添加する;
vi)自然放出(SP)コントロールに対して、標識された標的細胞を含むプレート中の更なる3つのウェルに、抗体溶液(上記のiv項)に代えて、50マイクロリットルのRPMI細胞培養培地を添加する;
vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを50xgで1分間遠心分離し、1時間4℃でインキュベートする;
viii)エフェクター:標的細胞の比率が25:1となるように各ウェルに50マイクロリットルのPBMC懸濁液(上記のi項)を添加して、該プレートを37℃、5%CO2雰囲気下で4時間インキュベーター内に配置する;
ix)各ウェルから無細胞の上清を回収し、ガンマカウンターを使用して、実験的に放出された放射能(ER)を定量する;
x)特異的溶解の百分率を、各抗体濃度について、式(ER−MR)/(MR−SR)×100[式中、ERはその抗体濃度について定量された平均放射活性(上記ix項参照)であり、MRはMRコントロール(上記v項参照)について定量された平均放射活性(上記ix項参照)であり、SRはSRコントロール(上記vi項参照)について定量された平均放射活性(上記ix項参照)である]に従って計算する。
4)「増加したADCC」は、本明細書中で試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の増加、及び/又は本明細書中で試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の半分を達成するのに必要な抗体濃度の減少の何れかとして定義される。ADCCの増加は、同じ標準的な産生、精製、製剤化、及び貯蔵方法(これらは当業者に周知である)を用いて、但し本明細書に開示されるアミノ酸置換又は糖鎖工学によって修飾されていない、同じ型の宿主細胞により産生される同じ抗体によって媒介され、上記アッセイにより測定される、ADCCに対して相対的なものである。従って、「減少したADCC」は、本明細書中で試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の減少、及び/又は本明細書中で試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の半分を達成するのに必要な抗体濃度の増加の何れかとして定義される。ADCCの減少は、同じ標準的な産生、精製、製剤化、及び貯蔵方法(これらは当業者に周知である)を用いて、但し本明細書に開示されるアミノ酸置換又は糖鎖工学によって修飾されていない、同じ型の宿主細胞により産生される同じ抗体によって媒介され、上記アッセイにより測定される、ADCCに対して相対的なものである。
本明細書で使用される場合、用語「アポトーシス」は、核断片化及び/又は細胞質、原形質膜及び/又は細胞小器官の凝縮によるアポトーシス小体の形成などの特定の細胞事象を特徴とするプログラム細胞死を指すものとする。
本明細書で使用される場合、「結合」又は「特異的に結合する」という用語は、in vitroアッセイにおいて、腫瘍抗原のエピトープへの抗体の結合を指す。in vitroアッセイは、精製された野生型抗原を含むプラズモン共鳴アッセイ(BIAcore,GE−Healthcare Uppsala,Sweden)であり得る。抗CD20抗体の場合、in vitroアッセイは好ましくはスキャッチャード分析である。結合の親和性は、用語KDによって定義される。結合又は特異的結合は、10−8M以下、好ましくは10−8M〜10−13M、より好ましくは10−9M〜10−13Mの結合親和性(KD)を意味する。
特に断らない限り、本明細書で使用する用語「CD20」は、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス、ラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来の任意の天然型CD20を指す。その用語は、「全長」で未処理のCD20、並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のCD20を含む。その用語はまた、CD20の天然に生じる変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を含む。CD20(Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu−16、Bp35、BM5及びLF5としても知られており;配列はSwissProtデータベースエントリー番号P11836によって特徴付けられる)は、プレB及び成熟Bリンパ球上に位置する分子量がおよそ35kDの疎水性膜貫通タンパク質である(Valentine, M.A. et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 11282-11287; Tedder, T.F., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85 (1988) 208-212; Stamenkovic, I., et al., J. Exp. Med. 167 (1988) 1975-1980; Einfeld, D.A., et al., EMBO J. 7 (1988) 711-717; Tedder, T.F., et al., J. Immunol. 142 (1989) 2560-2568)。対応するヒト遺伝子は、MS4A1としても知られている、膜貫通4ドメイン、サブファミリーA、メンバー1である。この遺伝子は、膜貫通4A遺伝子ファミリーのメンバーをコードする。この新生タンパク質ファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴及び類似のイントロン/エクソンスプライス境界によって特徴付けられ、造血細胞及び非リンパ系組織間で独特の発現パターンを示す。この遺伝子は、B細胞の形質細胞への発達及び分化に参画するBリンパ球表面分子をコードする。このファミリーメンバーは、ファミリーメンバーのクラスターの中でも11q12に局在する。この遺伝子の選択的スプライシングは、同じタンパク質をコードする2つの転写変異体を生じる。用語「CD20」及び「CD20抗原」は、本明細書において区別せずに使用され、細胞により天然に発現されたか又はCD20遺伝子でトランスフェクトされた細胞上に発現したヒトCD20の任意の変異体、アイソフォーム及び種ホモログを含む。本発明の抗体のCD20抗原への結合は、CD20を介してシグナル伝達すること、CD20を不活性化すること、又はCD20を架橋することによる、CD20を発現する細胞の死滅を媒介する。好ましくは、細胞は腫瘍細胞である。CD20を発現する細胞の死滅は、以下の機序の一又は複数により生じ得る:直接細胞死/アポトーシス誘導、ADCC、CDC及びADCP。当該技術分野で認識されているCD20の同義語は、Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu−16、Bp35、BM5、及びLF5を含む。
本明細書において使用される用語「CD20発現がん」は好ましくは、リンパ腫(好ましくはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL))及びリンパ性白血病を指す。このようなリンパ腫及びリンパ性白血病は、濾胞性リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫/バーキットリンパ腫(地方病性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫及び非バーキットリンパ腫を含む)、辺縁帯リンパ腫(節外性辺縁帯B細胞性リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、節性辺縁帯B細胞性リンパ腫及び脾臓辺縁帯リンパ腫を含む)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、大細胞型リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、縦隔原発B細胞性リンパ腫、血管中心性リンパ腫−肺性B細胞性リンパ腫を含む)、ヘアリー細胞白血病、リンパ球性リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞性前リンパ性白血病、形質細胞腫瘍、形質細胞性骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、ホジキン病を含む。より好ましくは、CD20発現がんという用語は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び慢性リンパ性白血病(CLL)を指す。
用語「補体依存性細胞傷害(CDC)」は、補体存在下での本発明の抗体によるヒト腫瘍標的細胞の溶解を意味する。CDCは、好ましくは、補体の存在下で、本発明による抗CD20抗体を用いてCD20発現細胞の調製物を処理することにより測定される。CDCは、抗体が、100nMの濃度で4時間後に20%以上の腫瘍細胞の溶解(細胞死)を誘導する場合に見出される。アッセイは、好ましくは51Cr又はEuで標識した腫瘍細胞及び放出された51Cr又はEuの測定により実行される。コントロールには、腫瘍標的細胞の補体とのインキュベーションが含まれるが、抗体は含まれない。
典型的には、IgG1アイソタイプのI型及びII型抗CD20抗体は、特徴的なCDC特性を示す。互いに比較して、I型抗CD20抗体は増加したCDCを有し(IgG1アイソタイプの場合)、II型抗CD20抗体は減少したCDCを有する(IgG1アイソタイプの場合)。好ましくは、I型及びII型抗CD20抗体の両方がIgG1アイソタイプ抗体である。
本明細書で使用される場合、「細胞シグナル伝達機構」又は「細胞シグナル伝達活性」は、特定の細胞事象又は生物学的機能、並びに経路に沿った任意のシグナル伝達段階を導くシグナル伝達(例えば、シグナル伝達(signal transduction))経路全体を指す。
本明細書で使用される場合、用語「CH1領域」は、可変領域に対してちょうどC末端であり、ヒンジ領域に対してN末端である免疫グロブリンの重鎖のドメインを指すことを意図する。IgG型の免疫グロブリンにおいて、例えば、CH1は通常Kabatの位置114〜223によって定義される(Kabat番号付け)。
当該技術分野で使用される及び/又は許容される用語の2つ以上の定義がある場合には、本明細書で使用する用語の定義は、明示的に反対の記載がない限り、そのような意味の全てを含むことが意図される。特定の例は、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される隣接していない抗原結合部位を記載するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)及びChothia et al., J MoI Biol. 196:901-917 (1987)に記載されており、それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれており、その定義は、互いに比較したときのアミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体又はその変異体のCDRを指すために何れかの定義を適用することは、本明細書で定義及び使用される用語の範囲内にあることが意図される。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列及び大きさに応じて変化するであろう。当業者であれば、抗体の可変領域のアミノ酸配列を前提に、どの残基が特定のCDRを含むかを常套的に決定することができる。
「保存的」アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を類似の構造的及び/又は化学的性質を有する別のアミノ酸で置換することによって、すなわち、保存的アミノ酸置換によって作製されたものであり、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の類似性、及び/又は関与する残基のバルクサイズに基づいて作製され得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンを含み;極性中性アミノ酸は、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンを含み;正に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを含み;負に帯電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。「置換」、「挿入」又は「欠失」は、好ましくは約1〜20アミノ酸、より好ましくは1〜10アミノ酸、より好ましくは1〜4アミノ酸、最も好ましくは1アミノ酸の範囲である。許容される変異は、組換えDNA技術を用いてポリペプチド分子中のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を系統的に作り、得られた組換え変異体を活性についてアッセイすることによって実験的に決定することができる。
「急性輸液反応」である「サイトカイン放出症候群」は、例えばCD20−抗体リツキシマブのような抗体注入の使用で生じる一般的な直接の合併症である。病因は、抗体がT細胞受容体に結合し、前記T細胞を活性化することを特徴とする。活性化されたT細胞によって放出されたサイトカインは、低血圧、発熱及び悪寒を特徴とする重症感染に見られるものと同様のある種の全身性炎症反応を生じる。サイトカイン放出症候群による死亡が報告されており、患者が水分過負荷であれば生命を脅かす肺水腫を引き起こす可能性がある。
本明細書で用いられる用語「細胞傷害性剤」とは、細胞の機能を阻害若しくは阻止し、かつ/又は細胞死若しくは細胞破壊を生ずる物質を指す。細胞傷害性剤は、限定されるものではないが、放射性同位体(211アスタチン、131ヨウ素、125ヨウ素、90イットリウム、186レニウム、188レニウム、153サマリウム、212ビスマス、32リン、212鉛、及びルテチウムの放射性同位体);化学療法剤又は薬物(限定されるものではないが、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤);増殖阻害剤;酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素;抗生物質;小分子毒素等の毒素、又は細菌、真菌、植物若しくは動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又は変異体を含む)、及び以下に開示される種々の抗腫瘍剤又は抗がん剤を含む。
薬剤、例えば薬学的製剤の「有効量」は、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での有効な量を指す。
本明細書で使用する「エフェクター機能」又は「Fc媒介エフェクター機能」という用語は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプによって変化する。抗体エフェクター機能の例としては、限定されるものではないが、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合親和性、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及びサイトカイン分泌を含む。本明細書中で使用される場合、エフェクター機能と関連して「低減した」という用語は、対応する親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、本発明により修飾された抗体によって誘導されるエフェクター機能の測定可能な低減を指す。エフェクター機能は、本明細書中に開示されるように、及び本明細書中に開示される実施例を参照して測定され得る。本明細書中で使用される場合、エフェクター機能と関連して「大きく低減した」、「消失した」及び「残存する」という用語は、対応する親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、本発明に従って修飾された抗体によって誘導される命名されたエフェクター機能の低減を指すと考えられる。対応する親非置換抗体によって誘導されるそれぞれのエフェクター機能と比較して、「大きく低減した」とは50%以下に低減したことを意味し、「消失した」とは10%以下に低減したことを意味し、「残存」とは10%以上を意味する。従って、本発明のFc変異体を含む本発明の抗体は、以下の特性のうちの少なくとも1つ以上を含む:ADCCの低減又は消失、CDCの低減又は消失、ADCPの低減又は消失、Fc受容体への結合の低減又は消失、Clqへの結合の低減又は消失、及び急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)の低減又は消失。1つの好ましい実施態様では、抗体が提供され、ここで、変異体重鎖領域を含む該抗体によって誘導されるADCP機能は、親非置換抗体によって誘導されるADCP機能と比較して低減され、変異体重鎖領域を含む該抗体によって誘導されるADCP機能の10%超が、親非置換抗体によって誘導されるADCP機能と比較して保持されている。
本明細書中で使用される場合、用語「操作する(engineer)、操作された(engineered)、操作すること(engineering)、糖鎖操作する(glycoengineer)、糖鎖操作された(glycoengineered)、糖鎖工学(glycoengineering)」、「グリコシル化操作(glycosylation engineering)」及び「GE」は、天然に存在するポリペプチド又は組換えポリペプチド(例えば、抗体又はその断片)のグリコシル化パターンの任意の操作を含むと考えられる。グリコシル化操作には、細胞内で発現される糖タンパク質のグリコシル化の改変を達成するためのオリゴ糖合成経路の遺伝子操作を含む、細胞のグリコシル化機構の代謝操作が含まれる。一実施態様では、グリコシル化操作はグリコシルトランスフェラーゼ活性の改変である。特定の実施態様では、操作はグルコサミニルトランスフェラーゼ活性及び/又はフコシルトランスフェラーゼ活性の改変をもたらす。
用語「CD20抗原の発現」は、細胞中、好ましくは、腫瘍又はがん(好ましくは非固形腫瘍)にそれぞれ由来する、好ましくはT又はB細胞(より好ましくはB細胞)の細胞表面上における、CD20抗原の発現の有意なレベルを示すことが意図される。「CD20発現がん」を有する患者は、当該技術分野において知られている標準的なアッセイにより決定することができる。用語「CD20抗原の発現」はまた、自己免疫疾患において、細胞、好ましくはT細胞又はB細胞、より好ましくはB細胞の細胞表面上におけるCD20抗原の有意なレベルの発現を示すことが意図されている。CD20抗原発現は、例えば、免疫組織化学(IHC)検出、FACSを使用して、又は対応するmRNAのPCRに基づく検出を介して測定することができる。
本明細書で使用される場合、用語「Fc領域」は、IgG重鎖のC末端領域を指すことが意図される。IgG重鎖のFc領域の境界はわずかに変化し得るが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域は位置Cys226のアミノ酸残基からカルボキシル末端まで伸長すると定義される。
本明細書中で使用される場合、用語「Fc媒介性細胞傷害」は、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)及びヒトFc領域を含む可溶性Fc融合タンパク質によって媒介される細胞性細胞傷害を含む。これは、「ヒト免疫エフェクター細胞」による「抗体標的化細胞」の溶解を導く免疫機構であり、ここでヒト免疫エフェクター細胞は、それらが抗体又はFc融合タンパク質のFc領域に結合してエフェクター機能を果たすFc受容体をその表面に提示する白血球の集団である。そのような集団には、限定されないものの、末梢血単核細胞(PBMC)及び/又はナチュラルキラー(NK)細胞が含まれ得る。抗体標的細胞は、抗体又はFc融合タンパク質によって結合された細胞である。抗体又はFc融合タンパク質は、Fc領域のN末端のタンパク質部分を介して標的細胞に結合する。
本明細書中で使用される場合、用語「融合」及び「キメラ」は、抗体などのポリペプチドに関連して使用される場合、異なる種由来の抗体の部分のような、2つ以上の異種ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドをいう。キメラ抗体については、例えば、非抗原結合成分は、チンパンジー及びヒトのような霊長類を含む広範囲の種に由来し得る。キメラ抗体の定常領域は、天然ヒト抗体の定常領域と実質的に同一であることが最も好ましく;キメラ抗体の可変領域は、最も好ましくは、目的の抗原に特異的に結合する非ヒト(すなわち、ドナー)抗原結合分子に由来する。キメラ抗体は、ドナー可変領域全体を含み得る;あるいは、キメラ抗体は、ヒト化抗体又は霊長類化抗体を含み得る。ヒト化抗体は、融合又はキメラ抗体の特に好ましい形態である。本発明によって包含される「キメラ抗体」の他の形態は、クラス又はサブクラスが元の抗体のものから改変又は変更されたものである。そのような「キメラ」抗体は、「クラススイッチ抗体」とも称される。キメラ抗体を作製するための方法は、現在当技術分野で周知の一般的な組換えDNA及び遺伝子トランスフェクション技術を含む。例えば、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;米国特許第5202238号及び米国特許第5204244号を参照のこと。
本明細書で使用される場合、用語「重鎖可変領域」は、免疫グロブリン重鎖のN末端ドメインを指すことを意図する。一例では、重鎖可変領域は、Kabatの1位〜113位によって定義される(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)によって指定されるような特定の残基での可能な挿入を伴う)。本発明の一実施態様によれば、修飾された抗体は、重鎖可変領域の機能的断片を含むことができる。
本明細書で使用される場合、用語「重鎖定常領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端ドメインを指すことを意図する。重鎖定常領域の5つの天然に存在するクラス:IgA、IgG、IgE、IgD、及びIgMがある。一例において、重鎖定常領域は、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからのものである。一般的に、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3のサブグループである。一実施態様では、VLについて、サブグループは上掲のKabat et al.にあるサブグループカッパIである。一実施態様では、VHについて、サブグループは上掲のKabat et al.にあるサブグループIIIである。
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するもの、及び/又は本明細書に開示される、ヒト抗体を製造するための任意の技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で周知の様々な技術を用いて生成することができる。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。また、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能な方法は、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)に記載の方法である。また、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)にも開示される。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するように改変されているが、内因性遺伝子座は無効にされているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに、抗原を投与することにより調製することができる(例えば、XENOMOUSETM技術について米国特許第6075181号及び同第6150584号に開示される)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関しては、例えばLi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)を参照されたい。
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化」は、非ヒト抗原結合分子に由来する抗原結合分子、例えば、親分子の抗原結合特性を保持するか、又は実質的に保持するが、ヒトにおいて免疫原性が低いマウス抗体を指すために使用される。これは、(a)キメラ抗体を生成するために非ヒト可変ドメイン全体をヒト定常領域上に移植すること、(b)重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体機能を保持するために重要なもの)の保持を伴うか又は伴わないで、ヒトフレームワーク及び定常領域上に非ヒトCDRのみを移植すること、又は(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換によってそれらをヒト様セクションで「覆う」ことを含む、様々な方法によって達成することができる。そのような方法は、Jones et al., Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sd., 81:6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv. Immunol, 44:65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun., 28:489-498 (1991); Padlan, Molec. Immun., 31(3):169-217 (1994)に開示され、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインのそれぞれには、一般に3つの相補性決定領域(CDR)(CDR1、CDR2及びCDR3)が存在し、それらには抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインのそれぞれにおいて4つのフレームワーク領域(すなわち、FR1、FR2、FR3及びFR4)が隣接している:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。ヒト化抗体の議論は、とりわけ、米国特許第6,632,927号及び公開された米国出願第2003/0175269号に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。同様に、本明細書で使用される場合、用語「霊長類化」は、非霊長類抗原結合分子に由来する抗原結合分子、例えば、親分子の抗原結合特性を保持するか、又は実質的に保持するが、霊長類において免疫原性が低いマウス抗体を指すために使用される。
本明細書中で使用される場合、本発明の核酸配列に「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」核酸は、50%ホルムアミド、5×SSC(750mMのNaCl、75mMクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハルト液、10%デキストラン硫酸、及び20μg/mlの変性した剪断サケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩インキュベートすることでハイブリダイズし、その後約65℃で0.1×SSC中でフィルターを洗浄したポリヌクレオチドを指す
本明細書中で使用される場合、用語「宿主細胞」は、本発明のポリペプチド及び抗原結合分子を生成するように操作され得る任意の種類の細胞系を包含する。宿主細胞は、限定されないが、CHO細胞、BHK細胞、HEK293−EBNA細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、Y0骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、又はハイブリドーマ細胞といった哺乳動物の培養細胞を含む培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び植物細胞を含み、更には、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は培養された植物若しくは動物組織内部に含まれる細胞も含む。一実施態様では、宿主細胞は、修飾されたグリコフォームを有する抗原結合分子の産生を可能にするように操作される。好ましい実施態様では、抗原結合分子は、抗体、抗体断片、又は融合タンパク質である。
「イムノコンジュゲート」とは、細胞傷害性剤を含むがそれに限定されない、一又は複数の異種分子にコンジュゲートした抗体である。
「個体」又は「対象」とは、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。特定の実施態様では、個体又は対象はヒトである。
「単離された抗体」とは、その自然環境の成分から分離されたものである。幾つかの実施態様では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により決定されるように、95%又は99%を上回る純度に精製される。抗体純度の評価方法の概説は、とりわけ、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)に開示される。
「単離された核酸」は、その自然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外又はその自然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在している。
「抗CD20抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする一又は複数の核酸分子を指し、これには、単一のベクター又は別々のベクター中のこのような核酸分子、及び宿主細胞において一又は複数の位置に存在するこのような核酸分子が含まれる。
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、例えば、天然に生じる変異を含むか又はモノクローナル抗体調製物の製造時に発生し、一般的に少量で存在している可能性のある変異体抗体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、かつ/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。従って、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含む様々な技術によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのこれらの方法及びその他の例示的な方法は本明細書に開示されている。
「ネイキッド抗体」とは、異種の部分(例えば、細胞傷害性部分)又は放射性標識にコンジュゲートしていない抗体を指す。ネイキッド抗体は薬学的製剤中に存在してもよい。
「天然型抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然型のIgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の「軽鎖」と2つの同一の「重鎖」からなる約150’000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各重鎖は、N末端からC末端に、可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、これには3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)が続く。同様に、各軽鎖は、N末端からC末端に、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる、2つの種類のうちの何れかに割り当てることができる。
本明細書で使用される場合、用語「核酸分子」は、DNA分子及びRNA分子を含むことを意図している。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
「添付文書」という用語は、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに用いられ、そのような治療製品の適応症、用法、用量、投与、併用療法、使用に関する禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
本明細書で使用される場合、「親抗体」又は「親非修飾抗体」又は「親非置換抗体」という用語は、ポリヌクレオチド配列によってコードされる特定のアミノ酸配列を有する抗体を指す。親分子の配列(すなわち、「親配列」)は、結果として得られる分子の、エフェクター機能を誘導し、及び/又はシグナル伝達活性及び/又は抗原の架橋を誘導する能力を改変するアミノ酸残基置換を行うための参照配列となる。同様に、親分子(例えば、「親非置換抗体」)の活性は、置換がエフェクター機能及び/又は細胞シグナル伝達活性及び/又は抗原の架橋に効果を有するかどうか、及び該当する場合、その効果の程度を決定する場合にその基準となる。
「薬学的に許容される担体」は、対象に非毒性である、有効成分以外の薬学的製剤の成分を指す。薬学的に許容される担体は、限定されなるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定剤又は保存剤を含む。
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、天然又は非天然のアミノ酸残基を含むアミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用され、最小の長さに限定されない。従って、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体などは定義内に含まれる。全長タンパク質及びその断片の両方がこの定義に包含される。これらの用語はまた、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、及びリン酸化を含む、ポリペプチドの翻訳後修飾も含む。
更に、本明細書中の「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する単一又は複数のアミノ酸残基の欠失、付加及び置換などの修飾されたタンパク質をも指す。例えば、セリン残基を置換して単一の反応性システインを除去するか、又はジスルフィド結合を除去するか、又は保存的アミノ酸置換を行って切断部位を除去することができる。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発を介するなど計画的であり得るか、又はタンパク質を産生する宿主の突然変異のように偶然的であり得るか、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅に起因する誤差であり得る。
「リツキシマブと比較した、抗CD20抗体のRaji細胞(ATCC番号CCL−86)上CD20に対する結合能の比」は、Raji細胞(ATCC番号CCL−86)を有するFACSArray(Becton Dickinson)において、Cy5とコンジュゲートした前記抗CD20抗体及びCy5とコンジュゲートしたリツキシマブを用いて、直接的免疫蛍光測定により決定され(平均蛍光強度(MFI)を測定する)、次のように計算される:
Raji細胞上のCD20に対する結合能の比(ATCC−番号CCL−86)=
MFIは平均蛍光強度である。本明細書で使用される「Cy5標識率」とは、抗体1分子あたりのCy5標識分子数を意味する。
本明細書において使用される「組換えヒト抗体」という用語は、NSO細胞若しくはCHO細胞等の宿主細胞から、又はヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体、或いは宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体など、組換え手段により調製、発現、作製又は単離された全てのヒト抗体を含むことが意図される。このような組換えヒト抗体は、再配列された形態の、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する。本発明による組換えヒト抗体はin vivo体細胞超変異に供されている。従って、組換え抗体のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列配列に由来し、かつそれらに関連しているが、in vivoでヒト抗体生殖系列レパートリー内には天然に存在しないであろう配列である。
本明細書で用いられる場合、「治療(treatment)」(及び「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」など、その文法的変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のため、又は臨床病理の過程において実施され得る。治療の望ましい効果は、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含む。幾つかの実施態様では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるか、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは「VH」と称することができる。軽鎖の可変ドメインは「VL」と称することができる。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の部分であり、抗原結合部位を含む。
本明細書で用いられる「変異体タンパク質」、「タンパク質変異体」又は「変異体」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親タンパク質のタンパク質とは異なるタンパク質を意味する。変異体は、タンパク質自体、そのポリペプチドを含む組成物、又はそれをコードするアミノ配列を指す。好ましくは、タンパク質変異体は、親タンパク質と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を有し、例えば親と比較して、約1〜約70個のアミノ酸修飾、好ましくは約1〜約5個のアミノ酸修飾を有する。本明細書に開示されるタンパク質の変異体配列は、好ましくは親タンパク質配列と少なくとも約80%の相同性、最も好ましくは少なくとも約90%の相同性、より好ましくは少なくとも約95%の相同性を有する。変異体タンパク質は、変異体タンパク質それ自体、タンパク質変異体を含む組成物、又はそれをコードするDNA配列を指すことができる。従って、本明細書で使用する「抗体変異体(antibody variant)」、「変異体抗体(variant antibody)」又は「変異体重鎖領域(variant heavy chain region)」とは、限定されるものではないが、アミノ酸置換、欠失又は挿入を含む少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親抗体とは異なる抗体又は抗体の一部を意味する。本明細書で使用する「IgG変異体(IgG variant)」又は「変異体IgG(variant IgG)」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親IgGとは異なる抗体を意味し、本明細書で使用する「免疫グロブリン変異体(immunoglobulin variant)」又は「変異体免疫グロブリン(variant immunoglobulin)」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親免疫グロブリン配列のものと異なる免疫グロブリン配列を意味する。
本発明の文脈において、用語「変異体(variant)」は、用語「変異した(mutated)」と互換的に用いられる。従って、本明細書で使用する「抗体変異体(antibody mutant)」、「変異した抗体(mutated antibody)」又は「変異した重鎖領域(mutaded heavy chain region)」とは、限定されるものではないが、アミノ酸置換、欠失又は挿入を含む少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親抗体とは異なる抗体又は抗体の一部を意味する。本明細書で使用する「IgG変異体(IgG mutant)」又は「変異したIgG(mutated IgG)」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親IgGとは異なる抗体を意味し、本明細書で使用する「免疫グロブリン変異体(immunoglobulin mutant)」又は「変異体免疫グロブリン(mutant immunoglobulin)」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親免疫グロブリン配列のものと異なる免疫グロブリン配列を意味する。
用語「可変ドメイン」との関連における用語「可変」は、可変ドメインの特定のセグメントが抗体間で配列が大きく異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を規定する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの110アミノ酸全長にわたって均一に分布していない。代わりに、V領域は、それぞれ9〜12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域で分離された15〜30個のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチからなる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFRを含み、大部分がβシート構成をとり、3つの超可変領域により繋がっており、この3つの超可変領域はβシート構造と繋がり、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖の超可変領域はFRによって極く近傍に一緒に保持され、他の鎖からの超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しているものではないが、例えば抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)への抗体の関与といった、種々のエフェクター機能を呈する。
本明細書で使用される用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、並びに導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。同一又は類似のポリペプチドをコードする組換え変異体は、遺伝コード中の「重複性」を利用することによって合成又は選択することができる。プラスミド又はウイルスベクターへのクローニング、又は特定の原核若しくは真核系での発現を最適化するために、種々の制限部位を生み出すサイレント変化のような種々のコドン置換を導入することができる。リガンド結合親和性、鎖間親和性、又は分解/代謝回転速度などの特性を変化させるために、ポリヌクレオチド配列における突然変異が、ポリペプチド、又はポリペプチドの任意の部分の特性を改変するためにポリペプチドに付加された他のペプチドのドメインに反映され得る。
本明細書で使用する「野生型ポリペプチド」及び「野生型(ヒト)Fc領域」という用語は、導入されておらず、例えばコントロールとして機能を果たすので、本明細書中に開示されるFc領域の修飾の1つ以上を欠くアミノ酸配列を含むポリペプチド及びFc領域をそれぞれ指す。野生型ポリペプチドは、天然配列Fc領域又は既存のアミノ酸配列修飾(付加、欠失及び/又は置換など)を有するFc領域を含み得る。
本発明の参照ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「同一」であるヌクレオチド配列を有する核酸又はポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列のそれぞれ100のヌクレオチドにつき最大5つの点変異を含み得るということ以外は、同一であることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中最大5%のヌクレオチドが削除され又は別のヌクレオチドで置換されても良く、又は参照配列に含まれる全てのヌクレオチドの最大5%までの複数のヌクレオチドが参照配列に挿入されてもよい。
特定の事項として、任意の特定の核酸分子又はポリペプチドが、本発明のヌクレオチド配列又はポリペプチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるかどうかは、既知のコンピュータープログラムを用いて常套的に決定することができる。クエリー配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体的な一致を決定する好ましい方法は、グローバル配列アライメントとも呼ばれ、Brutlag et al, Comp. App. Biosci. 6:237-245 (1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを用いて決定することができる。配列アラインメントでは、クエリー配列及び対象配列は両方ともDNA配列である。RNA配列は、UをTに変換することによって比較することができる。前記グローバル配列アラインメントの結果はパーセント同一性である。パーセント同一性を計算するためのDNA配列のFASTDBアラインメントに使用される好ましいパラメーターは、マトリクス=ユニタリ、k−タプル=4、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ=30、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ0.05、ウィンドウサイズ=500又は対象ヌクレオチド配列の何れか短い方。
対象配列が、内部欠失のためではなく、5’又は3’欠失のためにクエリー配列よりも短い場合、結果を手動で修正する必要がある。これは、パーセント同一性を計算する場合、FASTDBプログラムは対象配列の5’又は3’切断を考慮しないためである。クエリー配列に対して5’又は3’末端で切断された対象配列については、一致していない/整列していない対象配列の5’及び3’であるクエリー配列の塩基数を、クエリー配列の全塩基のパーセントとして計算することによりパーセント同一性を補正する。ヌクレオチドが一致/整列しているかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージは、指定されたパラメーターを用いて本明細書に開示されるFASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性から差し引かれ、最終パーセント同一性スコアに到達する。この補正されたスコアは、本発明の目的のために使用されるものである。FASTDBアラインメントによって表示されるように、クエリー配列と一致していない/整列していない、対象配列の5’及び3’塩基の外側の塩基のみが、パーセント同一性スコアを手動で調整する目的のために計算される。
例えば、90塩基の対象配列が、100塩基のクエリー配列に整列され、パーセント同一性が決定される。欠失は、対象配列の5’末端で起こり、従って、FASTDBアラインメントは、5’末端の最初の10塩基の一致/整列を示さない。10個の不対塩基は、配列の10%(一致しない5’及び3’末端の塩基の数/クエリー配列中の塩基の総数)を表し、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから10%が差し引かれる。残りの90塩基が完全に一致した場合、最終のパーセント同一性は90%であろう。別の例では、90塩基の対象配列を100塩基のクエリー配列と比較する。今回は、欠失は内部欠失であるため、クエリーと一致/整列していない対象配列の5’又は3’末端に塩基は存在しない。この場合、FASTDBにより計算されたパーセント同一性は手動で修正されない。再び、クエリー配列と一致/整列していない対象配列の5’及び3’末端の塩基のみが手動で補正される。本発明の目的のために、他の手動補正は行われない。
本発明のクエリーアミノ酸配列と少なくとも、例えば95%「同一」であるアミノ酸配列を有するポリペプチドとは、対象ポリペプチド配列が、クエリーアミノ酸配列の100個のアミノ酸ごとに最大5個のアミノ酸の改変を含み得ることを除いて、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列は、クエリー配列と同一であることが意図される。言い換えれば、クエリーアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、対象配列中のアミノ酸残基の5%までが挿入され、欠失され、又は他のアミノ酸で置換されていてもよい。参照配列のこのような改変は、参照アミノ酸配列のアミノ末端又はカルボキシ末端の位置で、又はそれらの末端位置の間の任意の場所で、参照配列中の残基の間に個別に散在して、又は参照配列内部の一又は複数の連続する群において散在して生じ得る。
実際問題として、特定のポリペプチドが参照ポリペプチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるかどうかは、既知のコンピュータープログラムを用いて常套的に決定することができる。クエリー配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体的な一致を決定する好ましい方法は、グローバル配列アライメントとも呼ばれ、Brutlag et al, Comp. App. Biosci. 6:237-245 (1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを用いて決定することができる。配列アライメントでは、クエリー配列及び対象配列は、両方のヌクレオチド配列又は両方のアミノ酸配列の何れかである。前記グローバル配列アラインメントの結果はパーセント同一性である。FASTDBアミノ酸アラインメントで使用される好ましいパラメーターは、マトリクス=PAM 0、k−タプル=2、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ=20、ランダム化グループ長=O、カットオフスコア=1、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ0.05、ウィンドウサイズ=500又は対象アミノ酸配列の何れか短い方。
対象配列が、内部欠失のためではなく、N末端又はC末端の欠失のためにクエリー配列よりも短い場合、結果を手動で修正する必要がある。これは、グローバル・パーセント同一性を計算する場合、FASTDBプログラムは対象配列のN末端又はC末端の切断を考慮しないためである。クエリー配列に対してN末端又はC末端で切断された対象配列については、対応する対象残基と一致していない/整列していない対象配列のN末端又はC末端であるクエリー配列の残基数を、クエリー配列の全塩基のパーセントとして計算することによりパーセント同一性を補正する。残基が一致/整列しているかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージは、指定されたパラメーターを用いて本明細書に開示されるFASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性から差し引かれ、最終パーセント同一性スコアに到達する。この最終のパーセント同一性スコアが、本発明の目的のために使用されるものである。クエリー配列と一致していない/整列していない、対象配列のN末端及びC末端の残基のみが、パーセント同一性スコアを手動で調整する目的のために考慮される。すなわち、クエリー残基は、対象配列の最も遠いN末端残基及びC末端残基の外側に位置する。
例えば、90アミノ酸残基の対象配列が、100残基のクエリー配列と整列され、パーセント同一性が決定される。欠失は、対象配列のN末端で起こり、従って、FASTDBアラインメントは、N末端の最初の10残基の一致/整列を示さない。10個の不対残基は、配列の10%(一致しないN末端及びC末端の残基の数/クエリー配列中の残基の総数)を表し、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから10%が差し引かれる。残りの90残基が完全に一致した場合、最終のパーセント同一性は90%であろう。別の例では、90残基の対象配列を100残基のクエリー配列と比較する。今回は、欠失は内部欠失であるため、クエリーと一致/整列していない対象配列のN末端又はC末端に残基は存在しない。この場合、FASTDBにより計算されたパーセント同一性は手動で修正されない。再び、FASTDBアラインメントに表示されるように、クエリー配列と一致/整列していない対象配列のN末端又はC末端の外側の残基位置のみが手動で補正される。本発明の目的のために、他の手動補正は行われない。
II.発明による実施態様
本発明による修飾された抗体
ヒト治療の治療可能性が改善されたモノクローナル抗体が依然として必要とされている。エフェクター機能を低減させつつ直接細胞死の誘導を強制することが、がん治療の改善のために切望されている。予期しないことに、本発明者らは、本明細書に開示されるようなFc領域におけるAsn297Asp又はPro329Glyの置換がCDC及びADCC機能を大きく低減させるが、残存するADCP機能を保持することを見出した。更に驚くべきことに、この突然変異は、本発明による肘ヒンジ領域の突然変異と組み合わせて、直接細胞死誘導の変化(増加又は低減)をもたらすことができる。組み合わせて、本発明による修飾は、非置換親抗体と比較して、エフェクター機能の誘導及び/又は直接細胞死の誘導の選択的かつ独立した調節を可能にする。
本発明者らは、驚くべきことに、Kabatの位置297でのアスパラギン残基の置換又はKabatの位置329でのプロリン残基の置換がエフェクター機能の低減をもたらすことを見出した。より具体的には、位置297のアスパラギン残基のアスパラギン酸への置換、又はKabatの位置329のプロリン残基のグリシンへの置換は、ADCC及びCDCエフェクター機能を大きく低減させたが、ADCP機能は残存した。従って、一実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Asn297を含み、前記置換はAsn297Aspである。更なる実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Pro329を含み、前記置換はPro329Glyである。
更なる態様は、エフェクター機能の誘導が、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減される抗体が提供される。一態様では、本発明は、Fc領域にアミノ酸修飾を有する抗体であって、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含み、ADCC及び/又はCDC機能の大きな低減又は消失、ADCP機能の残存、Fc受容体への結合の低減又は消失、C1qへの結合の低減又は消失、及び毒性の低減又は消失をもたらす抗体が提供される。
別の実施態様では、Fc変異体を含む前記抗体は、野生型ヒトFc領域を含む抗体と比較して、ヒトFc受容体(FcγR)及び/又はヒト補体受容体に対して低減した親和性を示す。更なる実施態様では、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIの少なくとも1つに対する親和性が低減し、更なる実施態様では、FcγRI及びFcγRIIIに対する親和性が低減し、更なる実施態様では、FcγRII及びFcγRIIIに対する親和性が低減し、更なる実施態様では、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIに対する親和性が低減し、本発明のなお更なる態様では、FcγRI受容体、FcγRIII受容体及びC1qに対する親和性が低減し、かつ、本発明のなお更なる態様では、FcγRI、FcγRII、FcγRIII及びC1q受容体に対する親和性が低減している。
親非修飾抗体は、任意のクラス(例えば、IgG、IgM、及びIgEであるが、これらに限定されない)の何れかであり得る。特定の実施態様では、本発明の抗体は、抗体のIgGクラスのメンバーである。特定の実施態様では、本発明の抗体はIgG1、IgG2又はIgG4サブクラスである。本発明の更に別の態様では、重鎖定常領域変異体及びFc変異体を含む抗体は、ヒトIgG1又はIgG4 Fc領域を含む。本発明のなお更なる態様では、変異体はIgG1又はIgG4抗体である。特定の実施態様では、本発明の抗体はIgG1サブクラスであり、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Asn297を含み、残基はKabatによるEUインデックスに従って番号付けされる。更に特定の実施態様では、本発明の抗体はIgG1サブクラスであり、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Pro329を含み、残基はKabatによるEUインデックスに従って番号付けされる。別の特定の実施態様では、本発明の抗体はIgG1サブクラスであり、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Asn297を含み、変異体重鎖領域は、Fc領域のアミノ酸置換Asn297Aspを含む。別の特定の実施態様では、本発明の抗体はIgG1サブクラスであり、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Pro329を含み、変異体重鎖領域は、Fc領域のアミノ酸置換Pro329Glyを含む。一実施態様では、アミノ酸置換Pro329Glyを含む本発明の抗体は、トリプトファン蛍光によって測定されるように、アミノ酸残基Asn297でのアミノ酸置換を含む親非置換抗体の変異体と比較して、より高い融解温度を有する。一実施態様では、アミノ酸置換Pro329Glyを含む本発明の抗体は、トリプトファン蛍光によって測定されるように、Asn297Asp置換を含む親非置換抗体の変異体と比較して、より高い融解温度を有する。
本発明による親非置換抗体には、限定されないものの、モノクローナル抗体が含まれる。一態様では、本発明の抗体は、いわゆるキメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体である。更なる態様では、本発明の抗体は、全長抗体又は同じ生物学的活性を有する抗体断片であり、アミノ酸配列変異体及び/又はこのような抗体若しくは断片のグリコシル化変異体を含む。
本発明による親非置換抗体には、限定されるものではないが、以下が含まれる。3F8(抗GD2)、アバゴボマブ(Abagovomab)(抗CA−125)、アブシキシマブ(Abciximab)(抗CD41(インテグリンα−IIb))、アダリムマブ(Adalimumab)(抗TNF−α)、アデカツムマブ(Adecatumumab)(抗EpCAM、CD326)、アフェリモマブ(Afelimomab)(抗TNF−α);アフツズマブ(Afutuzumab)(抗CD20)、アラシズマブペゴール(Alacizumab pegol)(抗VEGFR2)、ALD518(抗IL−6)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)(Campath、MabCampath、抗CD52)、アルツモマブ(Altumomab)(抗CEA)、アナツモマブ(Anatumomab)(抗TAG−72)、アンルキンズマブ(Anrukinzumab)(IMA−638、抗IL−13)、アポリズマブ(Apolizumab)(抗HLA−DR)、アルシツモマブ(Arcitumomab)(抗CEA)、アセリズマブ(Aselizumab)(抗L−selectin、CD62L)、アトリズマブ(Atlizumab)(トシリズマブ(tocilizumab)、アクテムラ(Actemra)、ロアクテムラ、抗IL−6受容体)、アトロリムマブ(Atorolimumab)(抗Rhesus因子)、バピノイズマブ(Bapineuzumab)(抗ベータアミロイド)、バシリキシマブ(Basiliximab)(シムレクト(Simulect)、抗CD25(IL−2受容体のα鎖))、バビツキシマブ(Bavituximab)(抗phosphatidylserine)、ベクツモマブ(Bectumomab)(LymphoScan、抗CD22)、ベリムマブ(Belimumab)(Benlysta、LymphoStat−B、抗BAFF)、ベンラリズマブ(Benralizumab)(抗CD125)、ベルチリムマブ(Bertilimumab)(抗CCLll(エオタキシン1))、ベシレソマブ(Besilesomab)(Scintimun、抗CEA関連抗原)、ベバシズマブ(Bevacizumab)(Avastin、抗VEGF−A)、ビシロマブ(Biciromab)(FibriScint,抗フィブリンIIベータ鎖)、ビバツズマブ(Bivatuzumab)(抗CD44 v6)、ブリナツモマブ(Blinatumomab)(BiTE、抗CD19)、ブレンツキシマブ(Brentuximab)(cAC10、抗CD30 TNFRSF8)、ブリアキヌマブ(Briakinumab)(抗IL−12、IL23)、カナキヌマブ(Canakinumab)(Ilaris、抗IL−1)、カンツズマブ(Cantuzumab)(C242、抗CanAg)、カプロマブ(Capromab)、カツマキソマブ(Catumaxomab)(レモバブ(Removab)、抗EpCAM、抗CD3)、CC49(抗TAG−72)、セデリズマブ(Cedelizumab)(抗CD4)、セルトリズマブペゴール(Certolizumab pegol)(Cimzia 抗TNF−α)、セツキシマブ(Cetuximab)(アービタックス(Erbitux)、IMC−C225、抗EGFR)、シタツズマブボガトキス(Citatuzumab bogatox)(抗EpCAM)、シキスツムマブ(Cixutumumab)(抗IGF−1)、クレノリキシマブ(Clenoliximab)(抗CD4)、Clivatuzumab(抗MUC l)、クリバツズマブ(Clivatuzumab)(抗TRAIL−R2)、CR6261(抗インフルエンザA赤血球凝集素)、ダセツズマブ(Dacetuzumab)(抗CD40)、ダクリズマブ(Daclizumab)(ゼナパックス(Zenapax)、抗CD25(IL−2受容体のα鎖))、ダラツムマブ(Daratumumab)(抗CD38,環状ADPリボース加水分解酵素)、デノスマブ(Denosumab)(プロリア(Prolia)、抗RANKL)、デツモマブ(Detumomab)(抗Bリンパ腫細胞)、ドルリモマブ(Dorlimomab)、ドルリキシズマブ(Dorlixizumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)(抗GD3ガングリオシド)、エクリズマブ(Eculizumab)(ソリリス(Soliris)、抗C5)、エドバコマブ(Edobacomab)(抗endotoxin)、エドレコロマブ(Edrecolomab)(パノレックス(Panorex)、MAbl7−1A、抗EpCAM)、エファリズマブ(Efalizumab)(ラプティバ(Raptiva)、抗LFA−1(CD 11a))、エフングマブ(Efungumab)(マイコグラブ(Mycograb)、抗Hsp90)、エロツズマブ(Elotuzumab)(抗SLAMF7)、エルシリモマブ(Elsilimomab)(抗IL−6)、エンリモマブペゴール(Enlimomab pegol)(抗ICAM−1(CD54))、エピツモマブ(Epitumomab)(抗エピシアリン)、エプラツズマブ(Epratuzumab)(抗CD22)、エルリズマブ(Erlizumab)(抗ITGB2(CD18))、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)(レキソムン(Rexomun)、抗HER2/neu、CD3)、エタラシズマブ(Etaracizumab)(Abegrin、抗integrin ανβ3)、エキスビビルマブ(Exbivirumab)(抗B型肝炎表面抗原)、ファノレソマブ(Fanolesomab)(NeutroSpec、抗CD15)、ファラリモマブ(Faralimomab)(抗インターフェロン受容体)、
ファーレツズマブ(Farletuzumab)(抗葉酸受容体1)、フェルビズマブ(Felvizumab)(抗呼吸器合胞体ウイルス)、フェザキヌマブ(Fezakinumab)(抗IL−22)、フィギツムマブ(Figitumumab)(抗IGF−1受容体)、ホントリズマブ(Fontolizumab)(抗IFN−γ)、ホラビルマブ(Foravirumab)(抗狂犬病ウイルス糖タンパク質)、フレソリムマブ(Fresolimumab)(抗TGF−β)、ガリキシマブ(Galiximab)(抗CD80)、ガンテネルマブ(Gantenerumab)(抗ベータアミロイド)、ガビリモマブ(Gavilimomab)(抗CD147(basigin))、ゲムツズマブ(Gemtuzumab)(抗CD33)、ギレンツキシマブ(Girentuximab)(抗炭酸脱水酵素9)、グレンバツムマブ(Glembatumumab)(CR011、抗GPNMB)、ゴリムマブ(Golimumab)(Simponi、抗TNF−a)、ゴミリキシマブ(Gomiliximab)(抗CD23(IgE受容体))、イバリズマブ(ibalizumab)(抗CD4)、イブリツモマブ(Ibritumomab)(抗CD20)、イゴボマブ(Igovomab)(Indimacis−125、抗CA−125)、イムシロマブ(Imciromab)(Myoscint、抗心筋ミオシン)、インフリキシマブ(Infliximab)(レミケード(Remicade)、抗TNF−α)、インテツムマブ(Intetumumab)(抗CD51)、イノリモマブ(Inolimomab)(抗CD25(IL−2受容体のα鎖))、イノツズマブ(Inotuzumab)(抗CD22)、イピリムマブ(Ipilimumab)(抗CD152)、イラツムマブ(Iratumumab)(抗CD30(TNFRSF8))、ケリキシマブ(Keliximab)(抗CD4)、ラベツズマブ(Labetuzumab)(CEA−Cide、抗CEA)、レブリキズマブ(Lebrikizumab)(抗IL−13)、レマレソマブ(Lemalesomab)(抗NCA−90(顆粒球抗原))、レルデリムマブ(Lerdelimumab)(抗TGFβ2)、レキサツムマブ(Lexatumumab)(抗TRAIL−R2)、リビビルマブ(Libivirumab)(抗B型肝炎表面抗原)、リンツズマブ(Lintuzumab)(抗CD33))、ルカツムマブ(Lucatumumab)(抗CD40)、ルミリキシマブ(Lumiliximab)(抗CD23(IgE受容体)、マパツムマブ(Mapatumumab)(抗TRAIL−R1)、マスリモマブ(Maslimomab)(抗T細胞受容体)、マツズマブ(Matuzumab)(抗EGFR)、メポリズマブ(Mepolizumab)(Bosatria、抗IL−5)、メテリムマブ(Metelimumab)(抗TGFβ1)、ミラツズマブ(Milatuzumab)(抗CD74)、ミンレツモマブ(Minretumomab)(抗TAG−72)、ミツモマブ(Mitumomab)(BEC−2、抗GD3ガングリオシド)、モロリムマブ(Morolimumab)(抗アカゲザル因子)、モタビズマブ(Motavizumab)(Numax、抗呼吸器合胞体ウイルス)、ムロモナブ(Muromonab)−CD3(Orthoclone OKT3、抗CD3)、ナコロマブ(Nacolomab)(抗C242)、ナプツモマブ(Naptumomab)(抗5T4)、ナタリズマブ(Natalizumab)(タイサブリ(Tysabri)、抗インテグリンα4)、ネバクマブ(Nebacumab)(抗エンドトキシン)、ネシツムマブ(Necitumumab)(抗EGFR)、ネレリモマブ(Nerelimomab)(抗TNF−α)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)(Theracim、Theraloc、抗EGFR)、ノフェツモマブ(Nofetumomab)、オビヌツズマブ(Obinutuzumab)(抗CD20)、オクレリズマブ(Ocrelizumab)(抗CD20)、オズリモマブ(Odulimomab)(アフオリモマブ(Afolimomab)、抗LFA−1(CD11a))、オファツムマブ(Ofatumumab)(アーゼラ(Arzerra)、抗CD20)、オララツマブ(Olaratumab)(抗PDGF−Rα)、オマリズマブ(Omalizumab)(ゾレア(Xolair)、抗IgE Fc領域)、オポルツズマブ(Oportuzumab)(抗EpCAM)、オレゴボマブ(Oregovomab)(OvaRex、抗CA−125)、
オテリキシズマブ(Otelixizumab)(抗CD3)、パギバキシマブ(Pagibaximab)(抗リポテイコ酸)、パリビズマブ(Palivizumab)(シナジス(Synagis)、アボシナジス(Abbosynagis)、抗呼吸器合胞体ウイルス)、パニツムマブ(Panitumumab)(ベクティビックス(Vectibix)、ABX−EGF、抗EGFR)、パノバクマブ(Panobacumab)(抗緑膿菌)、パスコリズマブ(Pascolizumab)(抗IL−4)、ペムツモマブ(Pemtumomab)(Theragyn、抗MUCl)、ペルツズマブ(Pertuzumab)(Omnitarg、2C4、抗IIER2/neu)、ペキセリズマブ(Pexelizumab)(抗C5)、ピンツモマブ(Pintumomab)(抗腺癌抗原)、プリリキシマブ(Priliximab)(抗CD4)、プリツムマブ(Pritumumab)(抗vimentin)、PRO 140(抗CCR5)、ラコツモマブ(Racotumomab)(1E10、抗(N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc、NGNA)−ガングリオシド GM3))、ラフィビルマブ(Rafivirumab)(抗狂犬病ウイルス糖タンパク質)、ラムシルマブ(Ramucirumab)(抗VEGFR2)、ラニビズマブ(Ranibizumab)(ルセンティス(Lucentis)、抗VEGF−A)、ラキシバクマブ(Raxibacumab)(抗炭疽毒素、防御抗原)、レガビルマブ(Regavirumab)(抗サイトメガロウイルス糖タンパク質B)、レスリズマブ(Reslizumab)(抗IL−5)、リロツムマブ(Rilotumumab)(抗HGF)、リツキシマブ(Rituximab)(MabThera、リツキサン(Rituxan)、抗CD20)、ロバツムマブ(Robatumumab)(抗IGF−1受容体)、ロンタリズマブ(Rontalizumab)(抗IFN−a)、ロベリズマブ(Rovelizumab)(LeukArrest、抗CD11、CD18)、ルプリズマブ(Ruplizumab)(Antova、抗CD154(CD40L))、サツモマブ(Satumomab)(抗TAG−72)、セビルマブ(Sevirumab)(抗サイトメガロウイルス)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)(抗FAP)、シファリムマブ(Sifalimumab)(抗IFN−a)、シルツキシマブ(Siltuximab)(抗IL−6)、シプリズマブ(Siplizumab)(抗CD2)、(Smart)MI95(抗CD33)、ソラネズマブ(Solanezumab)(抗ベータアミロイド)、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)(抗スフィンゴシン−1−リン酸)、ソンツズマブ(Sontuzumab)(抗エピシアリン)、スタムルマブ(stamulumab)(抗ミオスタチン)、スレソマブ(Sulesomab)(LeukoScan、(抗NCA−90(顆粒球抗原)、タカツズマブ(Tacatuzumab)(抗αフェトプロテイン)、タドシズマブ(Tadocizumab)(抗インテグリンαIIbβ3)、タリズマブ(Talizumab)(抗IgE)、タネズマブ(Tanezumab)(抗NGF)、タプリツモマブ(Taplitumomab)(抗CD19)、テフィバズマブ(Tefibazumab)(Aurexis、(抗クランピング因子A))、テリモマブ(Telimomab)、テナツモマブ(Tenatumomab)(抗tenascin C)、テネリキシマブ(Teneliximab)(抗CD40)、テプリズマブ(Teplizumab)(抗CD3)、TGN1412(抗CD28)、チシリムマブ(Ticilimumab)(トレメリムマブ(Tremelimumab)、(抗CTLA−4))、チガツズマブ(Tigatuzumab)(抗TRAIL−R2)、TNX−650(抗IL−13)、トシリズマブ(tocilizumab)(アトリズマブ(atlizumab)、アクテムラ(Actemra)、ロアクテムラ(RoActemra)、(抗IL−6受容体))、トラリズマブ(Toralizumab)(抗CD154(CD40L))、トシツモマブ(Tositumomab)(抗CD20)、トラスツズマブ(Trastuzumab)(ハーセプチン(Herceptin)、(抗HER2/neu))、トレメリムマブ(Tremelimumab)(抗CTLA−4)、ツコツズマブセルモロイキン(Tucotuzumab celmoleukin)(抗EpCAM)、ツビルマブ(Tuvirumab)(抗B型肝炎ウイルス)、ウルトキサズマブ(Urtoxazumab)(抗大腸菌)、ウステキヌマブ(ustekinumab)(ステラーラ(Stelara)、抗IL−12、IL−23)、バパリキシマブ(Vapaliximab)(抗AOC3(VAP−1))、ベドリズマブ(Vedolizumab)(抗インテグリンα4β7)、ベルツズマブ(Veltuzumab)(抗CD20)、ベパリモマブ(Vepalimomab)(抗AOC3(VAP−1)、ビシリズマブ(Visilizumab)(ヌヴィオン(Nuvion)、抗CD3)、ビタキシン(Vitaxin)(抗血管インテグリンαv3)、ボロシキシマブ(Volociximab)(抗インテグリンα5β1)、ボツムマブ(Votumumab)(HumaSPECT、抗腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(Zalutumumab)(HuMax−EGFr、(抗EGFR))、ザノリムマブ(Zanolimumab)(HuMax−CD4、抗CD4)、ジラリムマブ(Ziralimumab)(抗CD147(basigin))、ゾリモマブ(Zolimomab)(抗CD5)、エタネルセプト(Etanercept)(Enbrel(登録商標))、アレファセプト(Alefacept)(Amevive(登録商標))、アバタセプト(Abatacept)(Orencia(登録商標))、リロナセプト(Rilonacept)(Arcalyst)、14F7(抗IRP−2(鉄調節タンパク質2))、14G2a(抗GD2ガングリオシド、国立がん研究所から、メラノーマ及び固形腫瘍用)、J591(抗PSMA、前立腺がん用にウェイル・コーネル・メディカル大学から)、225.28S(抗HMW−MAA(高分子量メラノーマ抗原)、Sorin Radiofarrnaci S.R.L.(Milan、Italy)、メラノーマ用)、COL−1(抗CEACAM3、CGM1、米国国立がん研究所から、結腸直腸がん及び胃がん用に)、CYT−356(Oncoltad(登録商標)、前立腺がん用)、HNK20(OraVax Inc.呼吸器合胞体ウイルス用)、ImmuRAIT(NHL用にImmunomedicsから)、Lym−1(抗HLA−DR10、がん用にPeregrine Pharm.)、MAK−195F(抗TNF(腫瘍壊死因子;TNFA、TNF−α;TNFSF2)、Abbott/Knollから、敗血症毒性ショック用)、MEDI−500(T10B9、抗CD3、TRαβ(T細胞受容体アルファ/ベータ)、複合体、移植片対宿主病用にMedlmmune Incから)、RING SCAN(抗TAG 72(腫瘍関連糖タンパク質72)、乳がん、結腸がん及び直腸がん用にNeoprobe Corp.から)、アビシジン(Avicidin)(抗EPCAM(上皮細胞接着分子)、抗TACSTD1(腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサ1)、抗GA733−2(消化管腫瘍関連タンパク質2)、抗EGP−2(上皮糖タンパク質2);抗KSA(KS1/4抗原;M4S;腫瘍抗原17−1A;CD326、結腸がん、卵巣がん、前立腺がん及びNHL用にNeoRx Corp.から);LymphoCide(Immunomedics、NJ)、Smart ID10(Protein Design Labs)、Oncolym(Techniclone Inc、CA)、Allomune(BioTransplant、CA)、抗VEGF(Genentech、CA);CEAcide(Immunomedics、NJ)、IMC−1C11(ImClone、NJ)及びセツキシマブ(Cetuximab)(ImClone、NJ)。
好ましい実施態様では、親非置換抗体は、抗CD20抗体である。そのような抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。また、好ましくは、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体からなる群より選択される。最も好ましい態様では、前記抗体は、全長抗CD20抗体及び同じ生物学的活性を有する抗CD20抗体断片からなる群から選択され、アミノ酸配列変異体及びこのような抗体若しくは断片のグリコシル化変異体を含む。本発明によるヒト化抗CD20の親非置換抗体は、INN名リツキシマブ(例えば、Andersonらの米国特許第7381560号及び欧州特許第2000149(B1)号、例えば図4及び図5を参照)、オクレリズマブ(国際公開第2004/056312号及び国際公開第2006/084264号に開示される)、イブリツモマブ(国際公開第94/011026号を参照)、トシツモマブ(WHO Drug Information, Vol. 12, No. 4, 1998, p.281)、ベルツズマブ(WHO Drug Information, Vol. 22, No. 3, 2008, p.28)及びオビヌツズマブ(推奨INN、WHO Drug Information, Vol. 26, No. 4, 2012, p. 453)と明記される。
本発明による親非置換CD20抗体は、Genentech Inc.及びF.Hoffmann−La Roche LtdによってMABTHERA(商標)又はRITUXAN(商標)の商品名で販売されているリツキシマブ(I型抗CD20抗体)である。リツキシマブは、ヒトCD20抗原に対する遺伝子操作キメラヒトガンマ1マウス定常ドメイン含有モノクローナル抗体である。このキメラ抗体は、ヒトガンマ1定常ドメインを含み、1998年4月17日に発行され、IDEC Pharmaceuticals社に譲渡された米国特許第5736137号(Andersonら)での「C2B8」という名称で特定される。リツキシマブは、再発性又は難治性の低悪性度又は濾胞性のCD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の治療用に承認されている。in vitro作用機序研究は、リツキシマブがヒト補体依存性細胞傷害(CDC)を示すことを示している(Reff, M.E., et. al., Blood 83 (1994) 435-445)。加えて、リツキシマブは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を測定するアッセイにおいて有意な活性を示す。リツキシマブはアフコシル化されていない。
好ましい実施態様では、本発明による親非置換抗体は、ヒト化B−Ly1抗体である。用語「ヒト化B−Ly1抗体」は、IgG1由来のヒト定常ドメインとのキメラ化及びその後のヒト化によって、マウスモノクローナル抗CD20抗体B−Ly1(マウス重鎖の可変領域(VH):配列番号3;マウス軽鎖の可変領域(VL):配列番号4)(Poppema, S. and Visser, L., Biotest Bulletin 3(1987) 131-139参照)から得られた、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号に開示されているようなヒト化B−Ly1抗体を指す(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号参照)。これらのヒト化B−Ly1抗体は、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号で詳細に開示されている。一実施態様では、ヒト化B−Ly1抗体は、配列番号5から配列番号21(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−HH2からB−HH9及びB−HL8からB−HL17)の群から選択される重鎖の可変領域(VH)を有する。特定の一実施態様では、このような可変ドメインは、配列番号5、6、9、11、13、15及び17(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−HH2、BHH−3、B−HH6、B−HH8、B−HL8、B−HL11及びB−HL13)からなる群より選択される。特定の一実施態様では、ヒト化B−Ly1抗体は、配列番号22(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−KV1)の軽鎖の可変領域(VL)を有する。特定の一実施態様では、ヒト化B−Ly1抗体は、配列番号9(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−HH6)の重鎖の可変領域(VH)と配列番号22(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−KV1)の軽鎖の可変領域(VL)とを有する。更に一実施態様では、ヒト化B−Ly1抗体はIgG1抗体である。本発明の一態様によれば、そのようなアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体は、国際公開第2005/044859号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2007/031875号、 Umana, P. et al., Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び国際公開第99/154342号に記載の手順に従って、Fc領域において糖鎖操作(GE)されている。一実施態様では、本発明による親非置換抗体は、アフコシル化糖鎖操作(GE)ヒト化B−Ly1B−HH6−B−KV1 GEである。好ましい実施態様では、本発明による親非置換抗体は、オビヌツズマブである(推奨INN、WHO Drug Information, Vol. 26, No. 4, 2012, p. 453)。本明細書で使用される場合、オビヌツズマブは、GA101と同義である。これは、以前の全てのバージョン(例: Vol. 25, No. 1, 2011, p.75-76)に取って代わるものであり、以前はアフツズマブ(推奨INN、WHO Drug Information, Vol. 23, No. 2, 2009, p. 176;Vol. 22, No. 2, 2008, p. 124)として知られている。
好ましい実施態様では、親非置換抗体は、I型抗CD20抗体である。I型及びII型抗CD20抗体の1つの本質的な特性は、それらの結合様式である。特に、I型及びII型抗CD20抗体は、リツキシマブと比較して、前記抗CD20抗体のRaji細胞(ATCC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比によって分類することができる。I型抗CD20抗体は、リツキシマブと比較して、前記抗CD20抗体のRaji細胞(ATCC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1である。好ましいI型親非置換抗CD20抗体は、欧州特許第2000149(B1)号(Andersonら、図4及び5を参照)におけるリツキシマブ、1F5 IgG2a(ECACC、ハイブリドーマ;Press et al., Blood 69/2:584-591 (1987))、HI47 IgG3(ECACC、ハイブリドーマ)、2C6 IgG1(国際公開第2005/103081号に開示される)、2F2 IgG1又はオファツムマブ(国際公開第2004/035607号及び国際公開第2005/103081号に開示される)及び2H7 IgG1(国際公開第2004/056312号及び国際公開第2006/084264号に開示される(表1と表2に開示された変異体を含むが、これに限定されない))を含む。好ましくは、前記I型親非置換抗CD20抗体は、リツキシマブと同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。一実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含むI型抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Asn297を含み、前記置換はAsn297Aspであり、エフェクター機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減される。好ましい実施態様では、親非置換抗体はリツキシマブである。
別の好ましい実施態様では、親非置換抗体は、II型抗CD20抗体である。II型抗CD20抗体は、リツキシマブと比較して、前記抗CD20抗体のRaji細胞(ATCC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比が0.3〜0.6、好ましくは0.35〜0.55、より好ましくは0.4〜0.5である。好ましいII型親非置換抗CD20抗体は、オビヌツズマブ、トシツモマブ(B1 IgG2a)、ヒト化B−Ly1抗体IgG1(国際公開第2005/044859号に開示のキメラヒト化IgG1抗体)、11B8 IgG1(国際公開第2004/035607号に開示)及びAT80 IgG1を含む。好ましくは、前記II型親非置換抗CD20抗体は、ヒト化B−Ly1抗体と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である(国際公開第2005/044859号に開示される)。更なる実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含むII型抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Asn297を含み、前記置換はAsn297Aspであり、エフェクター機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減される。好ましい実施態様では、親非置換抗体はオビヌツズマブである。
野生型ポリペプチドは、Fc領域を含む。一般に、野生型ポリペプチドのFc領域は、天然型又は野生型配列Fc領域、好ましくはヒト天然配列Fc領域(ヒトFc領域)を含む。しかし、野生型ポリペプチドのFc領域は、天然配列Fc領域からの1つ以上の既存のアミノ酸配列の改変又は修飾を有し得る。例えば、Fc領域のClq又はFcγ結合活性は、以前に改変されていてもよい(他のタイプのFc領域の修飾が本明細書においてより詳細に記載される)。更なる実施態様では、親ポリペプチドFc領域は「概念的」であり、それは物理的に存在しないものの、当業者は所望の変異体Fc領域アミノ酸配列を選択し、その配列を含むポリペプチド又は所望の変異体Fc領域アミノ酸配列をコードするDNAを生成する。しかし、本発明の好ましい実施態様では、野生型ポリペプチドのFc領域(例えば、野生型重鎖領域)をコードする核酸が利用可能であり、この核酸配列は、Fc領域変異体をコードする変異体核酸配列を生成するように改変される。
本発明の一実施態様は、Fc領域に対する少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、置換又は欠失を含み、結果として少なくとも1つのFc受容体に対する親和性が低減又は消失する、抗体のFc領域を含むポリペプチドを包含する。Fc領域は、限定されないが、Fc受容体(例えば、FcγRI、FcγRII、FcγRIII)、補体タンパク質C1q、並びにタンパク質A及びGのような他の分子を含む、多数の受容体又はリガンドと相互作用する。これらの相互作用は、限定されないが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を含む、様々なエフェクター機能及び下流のシグナル伝達事象に必須である。従って、ある実施態様では、本発明の変異体は、本発明のFc変異体を含むが、Fc領域への少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、置換、又は欠失を含まないポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチド(本明細書では「親非置換」ポリペプチド又は抗体とも呼ばれる)と比較して、エフェクター機能に関与するFc受容体に対する親和性が低減又は消失している。特定の実施態様では、本発明のFc変異体を含む抗体は、以下の特性のうちの少なくとも1つ以上を含む:エフェクター(ADCC及び/又はCDC及び/又はADCP)機能の低減又は消失、Fc受容体への結合の低減又は消失、Clqへの結合の低減又は消失、及び急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)の低減又は消失。より具体的には、本発明の実施態様は、抗CD20(オビヌツズマブ又はリツキシマブと同じ)、抗CD9(TAと同じ)、抗セレクチン(pSel)、抗CD37、抗HER2、及びFc受容体(例えば、FcγRI、FcγRII、FcγRIII)に対する親和性が低減した抗EGFR抗体及び/又は補体タンパク質C1qを与える。
一実施態様では、本発明の抗体は、位置Asn297に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むFc領域を含み、ここで重鎖の番号付けシステムは、KabatにおけるEUインデックスの番号付けシステムである。特定の実施態様では、本発明の抗体は、重鎖領域にアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここではエフェクター機能の誘導は、親非置換抗体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減される。更なる実施態様では、本発明の抗体は、位置Pro329に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むFc領域を含み、ここで重鎖の番号付けシステムは、KabatにおけるEUインデックスの番号付けシステムである。特定の実施態様では、本発明の抗体は、重鎖領域にアミノ酸置換Pro329Glyを含み、ここではエフェクター機能の誘導は、親非置換抗体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減される。更なる実施態様では、前記抗体は、以下の特性のうちの少なくとも1つ以上を含む:エフェクター(ADCC及び/又はCDC及び/又はADCP)機能の低減又は消失、Fc受容体への結合の低減又は消失、Clqへの結合の低減又は消失、及び急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)の低減又は消失。
従って、一実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Asn297を含み、前記置換はAsn297Aspであり、エフェクター機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減され、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIII結合は、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によるFcγRIIIへの結合と比較して消失している。更なる実施態様では、本明細書に記載の抗体が提供され、ここで、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるADCC機能は、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるADCC機能と比較して、消失又は大きく低減している。更なる実施態様では、本明細書に記載の抗体が提供され、ここで、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRI結合は、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によるFcγRIへの結合と比較して低減している。本発明の更なる実施態様では、本明細書に記載の抗体が提供され、ここで、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるADCP機能の誘導は、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるADCP機能と比較して低減しており、変異体重鎖を含む抗体は、残存するADCP機能を保持する。更に別の実施態様では、本明細書に記載の抗体が提供され、ここで、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるCDC機能の誘導は、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるCDC機能と比較して消失している。更なる実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Pro329を含み、前記置換はPro329Glyであり、エフェクター機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減され、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIII結合は、329位のプロリンを含む親非置換抗体によるFcγRIIIへの結合と比較して消失している。更なる実施態様では、本明細書に記載の抗体が提供され、ここでは変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるADCC機能が、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるADCC機能と比較して、消失又は大きく低減している。更なる実施態様では、本明細書に記載の抗体が提供され、ここでは変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRI結合が、329位のプロリンを含む親非置換抗体によるFcγRIへの結合と比較して低減している。本発明の更なる実施態様では、本明細書に記載の抗体が提供され、ここで、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるADCP機能の誘導は、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるADCP機能と比較して低減しており、変異体重鎖を含む抗体は、残存するADCP機能を保持する。更に別の実施態様では、本明細書に記載の抗体が提供され、ここで、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるCDC機能の誘導は、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるCDC機能と比較して消失している。
更に別の実施態様では、本発明の重鎖変異体は、野生型Fc領域を含む親抗体と比較して、ヒトFc受容体(FcγR)及び/又はヒト補体受容体に対して低減した親和性を示す。別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む前記抗体は、野生型ヒトFc領域を含む親抗体と比較して、ヒトFc受容体(FcγR)及び/又はヒト補体受容体に対して低減した親和性を示す。更なる実施態様では、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIの少なくとも1つに対する親和性が低減し、更なる実施態様では、FcγRI及びFcγRIIIに対する親和性が低減し、更なる実施態様では、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIに対する親和性が低減し、本発明のなお更なる態様では、FcγRI受容体、FcγRIII受容体及びC1qに対する親和性が低減し、かつ、本発明のなお更なる態様では、FcγRI、FcγRII、FcγRIII及びC1q受容体に対する親和性が低減している。なお更なる実施態様では、重鎖変異体を含む前記抗体によって誘導されるADCCは低減する。本発明のなお更なる態様では、野生型Fcポリペプチドを含む抗体によって誘導されるADCC及びCDCは低減又は消失する。更なる態様では、本明細書に開示されるFc変異体を含む抗体は、野生型Fcポリペプチドを含む親抗体と比較して、ADCC、CDC及びADCPの減少を示す。更に別の実施態様では、本発明は、親非置換抗体と比較して、急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)の低減又は消失をもたらす、抗体のFc領域にアミノ酸置換Asn297Aspを含む抗体を対象とする。更に別の実施態様では、本発明は、親非置換抗体と比較して、急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)の低減又は消失をもたらす、抗体のFc領域にアミノ酸置換Pro329Glyを含む抗体を対象とする。別の特定の実施態様では、親非置換抗体はオビヌツズマブである。別の特定の実施態様では、親非置換抗体はリツキシマブである。
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載されるようなエフェクター機能が低減した修飾されたFc領域を有する抗体であって、修飾された重鎖CH1及び/又はVH領域を更に含み、それによりこれらの抗体が標的抗原の細胞シグナル伝達活性を誘導する能力及び/又は標的抗原の架橋を媒介する能力を増強(すなわち誘導又は増加)又は低減(すなわち抑制又は減少)させることができる抗体を対象とする。更なる態様では、前記抗体は、修飾されたFc領域であって、それにより抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導が低減する修飾されたFc領域と、直接細胞死の誘導が変化する修飾されたCH1領域とを含む。更なる態様では、前記抗体は、修飾されたFc領域であって、それにより抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導が低減する修飾されたFc領域と、直接細胞死の誘導が変化する修飾されたVH領域とを含む。更なる態様では、Fc領域に対する前記修飾は、ADCP機能の誘導を低減させるが、消失させない。更なる態様では、本発明に従って修飾された抗体は、残存するADCP機能を保持する。
一実施態様では、本発明は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導の低減をもたらす、抗体のFc領域の位置Asn297に修飾を有する本明細書に記載の抗体を対象とし、前記抗体は、CH1領域中の位置Pro151での修飾及び/又はVH領域中のLeu11での修飾を更に含み、抗体の変化したシグナル伝達挙動をもたらす。一実施態様では、本発明は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導の低減をもたらす、抗体のFc領域の位置Pro329に修飾を有する本明細書に記載の抗体を対象とし、前記抗体は、CH1領域中の位置Pro151での修飾及び/又はVH領域中のLeu11での修飾を更に含み、抗体の変化したシグナル伝達挙動をもたらす。特定の実施態様では、本発明の変異体Fc及び/又はCH1及び/又はVHを含む抗体は、以下の特性のうちの少なくとも1つ以上を含む:直接細胞死の誘導の増加又は減少、エフェクター(ADCC及び/又はCDC及び/又はADCP)機能の低減又は消失、Fc受容体への結合の低減又は消失、Clqへの結合の低減又は消失、及び急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)の低減又は消失。より具体的には、本発明の実施態様は、直接細胞死の誘導が増加し、かつFc受容体(例えば、FcγRI、FcγRII、FcγRIII)に対する親和性が低減した抗CD20抗体を提供する。
本発明の抗体の修飾された重鎖CH1、VH及びFc領域は、対応する非置換親ポリペプチド領域と、少なくとも1つのアミノ酸置換により異なる。「親」、「開始」、「非修飾」又は「非置換」ポリペプチドは、好ましくは、抗体重鎖領域の少なくとも一部を含み、Fc領域並びに重鎖CH1及びVH領域又はその一部を含むポリペプチドを生成するための当該技術分野で利用可能な技術を用いて調製することができる。
従って、一実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Asn297を含み、前記置換はAsn297Aspであり、エフェクター機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減され、変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対して更なるアミノ酸置換を含み、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Pro151を含み、前記更なる置換が前記アミノ酸残基Pro151にあり、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、151位でプロリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して変化している。従って、一実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Pro329を含み、前記置換はPro329Glyであり、エフェクター機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減され、変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対して更なるアミノ酸置換を含み、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Pro151を含み、前記更なる置換が前記アミノ酸残基Pro151にあり、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、151位でプロリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して変化している。別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、151位のプロリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して増加する、本明細書に記載の抗体が提供される。更に別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、151位のプロリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して減少する、本明細書に記載の抗体が提供される。更に別の実施態様では、Pro151がアラニン及びフェニルアラニンからなる群より選択されるアミノ酸で置換されている、本明細書に記載の抗体が提供される。更に別の実施態様では、Pro151がフェニルアラニンで置換されており、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、151位のプロリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して増加する、本明細書に記載の抗体が提供される。更に別の実施態様では、Pro151がアラニンで置換されており、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、151位のプロリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して減少する、本明細書に記載の抗体が提供される。別の特定の実施態様では、親非置換抗体は、オビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、オビヌツズマブと比較して、CH1領域のアミノ酸置換Pro151Phe及びFc領域のアミノ酸置換Asn297Aspを含む。別の特定の実施態様では、親非置換抗体は、オビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、オビヌツズマブと比較して、CH1領域のアミノ酸置換Pro151Phe及びFc領域のアミノ酸置換Pro329Glyを含む。別の特定の実施態様では、親非置換抗体は、リツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、リツキシマブと比較して、CH1領域のアミノ酸置換Pro151Phe及びFc領域のアミノ酸置換Asn297Aspを含む。別の特定の実施態様では、親非置換抗体は、リツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、リツキシマブと比較して、CH1領域のアミノ酸置換Pro151Phe及びFc領域のアミノ酸置換Pro329Glyを含む。
更なる実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Asn297を含み、前記置換はAsn297Aspであり、エフェクター機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減され、変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対して更なるアミノ酸置換を含み、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Val11を含み、前記更なる置換が前記アミノ酸残基Val11にあり、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、11位でバリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して変化している。更なる実施態様では、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Pro329を含み、前記置換はPro329Glyであり、エフェクター機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減され、変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対して更なるアミノ酸置換を含み、親非置換抗体の重鎖領域はアミノ酸残基Val11を含み、前記更なる置換が前記アミノ酸残基Val11にあり、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、11位でバリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して変化している。別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、11位のバリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して増加する、本明細書に記載の抗体が提供される。別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、11位のバリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して減少する、本明細書に記載の抗体が提供される。別の実施態様では、Val11が、アラニン、グリシン、フェニルアラニン、スレオニン及びトリプトファンからなる群より選択されるアミノ酸で置換されている、本明細書に記載の抗体が提供される。更に別の実施態様では、Val11が、フェニルアラニン、スレオニン及びトリプトファンからなる群より選択されるアミノ酸で置換されており、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、11位のバリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して増加する、本明細書に記載の抗体が提供される。更に別の実施態様では、Val11が、アラニン及びグリシンからなる群より選択されるアミノ酸で置換されており、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、位置Val11でバリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して減少する、本明細書に記載の抗体が提供される。別の特定の実施態様では、親非置換抗体は、オビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、オビヌツズマブと比較して、VH領域のアミノ酸置換Val11Phe及びFc領域のアミノ酸置換Asn297Aspを含む。別の特定の実施態様では、親非置換抗体は、リツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、リツキシマブと比較して、VH領域のアミノ酸置換Val11Phe及びFc領域のアミノ酸置換Asn297Aspを含む。別の特定の実施態様では、親非置換抗体は、オビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、オビヌツズマブと比較して、VH領域のアミノ酸置換Val11Phe及びFc領域のアミノ酸置換Pro329Glyを含む。別の特定の実施態様では、親非置換抗体は、リツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、リツキシマブと比較して、VH領域のアミノ酸置換Val11Phe及びFc領域のアミノ酸置換Pro329Glyを含む。
従って、親ポリペプチドのアミノ酸配列は、Fc領域中のAsn297及び/又はPro329の位置に修飾を有し、エフェクター機能を誘導する能力が低減した抗体、並びに重鎖CH1中の位置Pro151における修飾、及び/又は重鎖VH領域中の位置Leu11における修飾を有し、修飾された抗体が標的抗原と複合体形成された(例えば、結合された)場合、標的抗原の細胞シグナル伝達活性を誘導する能力の改変をもたらす抗体を生成するために、本発明に従って修飾することができる。細胞シグナル伝達活性は、アゴニスト活性又はアンタゴニスト活性であり得る。本発明の一態様によれば、アゴニスト活性は、修飾された抗原結合分子が細胞膜結合受容体に結合し、細胞シグナル伝達経路を開始するとき、その修飾された抗原結合分子によって誘導される。特定の実施態様では、細胞シグナル伝達経路はアポトーシス経路である。別の実施態様では、細胞シグナル伝達経路は細胞分化経路である。本発明の別の態様によれば、修飾された抗原結合分子によるアンタゴニスト活性は、例えば、抗体が細胞膜結合受容体に結合し、細胞シグナル伝達経路の誘導を妨げるか、進行中のシグナルを妨害する場合に生じる。アンタゴニスト活性は、例えば、内因性リガンドの結合及びその後のシグナル伝達を遮断することによって、かつ/又は細胞シグナル伝達経路の誘導に必要とされるであろう受容体又は他の分子の架橋又はオリゴマー化を防止することによって、達成することができる。一実施態様では、阻害又は妨害される細胞シグナル伝達経路は、細胞増殖経路である。別の実施態様では、阻害又は妨害される細胞シグナル伝達経路は、細胞分裂経路である。別の実施態様では、阻害又は妨害される細胞シグナル伝達経路は、細胞生存経路である。同様に、親ポリペプチドのアミノ酸配列はまた、Fc領域中のAsn297及び/又はPro329の位置に修飾を有し、エフェクター機能を誘導する能力が低減した抗体、並びに重鎖CH1中の位置Pro151における修飾、及び/又は重鎖VH領域中の位置Leu11における修飾を有し、修飾された抗体が標的抗原と複合体形成された(例えば、結合された)場合、1つ又は複数の標的抗原の架橋を媒介する能力が改変された抗体を生成するために、本発明に従って修飾することができる。一実施態様では、結合した標的抗原(例えば、細胞表面受容体分子)は、それらが対応する非置換親抗体によるであろうよりも、互いにより近接せしめられ、かつ/又は相互作用のためのより好ましいコンフォメーションにされ、それによって結合した抗原間の架橋及びオリゴマー化を増加させる。別の実施態様では、結合した標的抗原(例えば、細胞表面受容体分子)は、それらが対応する非置換親抗体によるであろうよりも、互いに遠く離れて保持され、かつ/又は相互作用のためにはあまり好ましくないコンフォメーションにされ、それによって結合した抗原間の架橋及びオリゴマー化を低減させ又は防止する。特定の実施態様では、増加した架橋又はオリゴマー化は、増加した直接細胞死をもたらす。別の実施態様では、増加した架橋又はオリゴマー化は、増加した細胞分化をもたらす。別の実施態様では、架橋又はオリゴマー化の低減は、細胞増殖の減少、細胞分裂の減少、又は細胞生存の減少をもたらす。
特定の実施態様では、本発明は、対応する非修飾親抗体と比較して、エフェクター機能を誘導する能力が減少し、かつ、アポトーシスを誘導する能力が増加した修飾抗体を対象とする。例えば、アポトーシスを誘導する能力をほとんど又は全く有さないが、エフェクター機能を誘導する強い能力を有する親抗体が、本発明に従って修飾され、アポトーシスを誘導する能力を有するか、又はアポトーシスを誘導する能力が増加し、かつ、強いエフェクター機能を誘導する能力を有さない修飾抗体を生成することができる。同様に、強いエフェクター機能を誘導する親抗体は、アポトーシスを誘導する可能性を保持又は増加させつつ、弱いエフェクター機能を誘導する修飾抗体を生成するために修飾することができる。本発明はまた、対応する非修飾親抗体と比較して、増殖停止又は細胞分化を誘導する能力が増加し、かつ、エフェクター機能又はサイトカイン放出活性の誘導が低減又は消失した修飾された抗体を対象とする。例えば、増殖停止又は細胞分化を誘導する能力をほとんど又は全く有さない親抗体が、本発明に従って修飾され、例えば、急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)などの有害事象を減少させつつ、増殖停止又は分化を誘導する能力を有する修飾抗体を生成するか、又は増殖停止又は分化を誘導する能力が増加している抗体を生成することができる。
本発明の更なる態様は、修飾された抗CD20抗体の提供である。好ましい実施態様では、本明細書に開示される抗体はCD20に特異的に結合する。特定の実施態様では、本明細書に開示される修飾された抗CD20抗体は、解離定数(Kd)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM、10−8Mから10−13M又は10−9Mから10−13Mである。好ましい実施態様では、本明細書中に開示される抗体は、スカッチャード分析によって決定されるように、10nM以下の、細胞に対する解離定数(Kd)でCD20に結合する。一実施態様では、本発明は、I型親抗CD20抗体と比較して重鎖領域に少なくとも2つのアミノ酸置換を含む修飾された抗CD20抗体であって、該置換が、修飾された抗CD20抗体によるエフェクター機能の誘導の減少及び直接細胞死の誘導の増加をもたらす修飾された抗CD20抗体を対象とする。別の実施態様では、本発明は、本明細書に開示するアミノ酸置換の結果として直接細胞死を誘導する実質的な能力を失うことなく、エフェクター機能の誘導の減少を有する修飾されたII型抗CD20抗体を対象とする。一実施態様では、II型抗CD20抗体は、親分子と比較して重鎖中に2つ以上のアミノ酸の置換を含む。別の実施態様では、本発明は、変異体重鎖領域を含む、修飾された抗CD20抗体を対象とし、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Asp及びPro151Pheを含み、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されたエフェクター機能及び直接細胞死と比較して、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能及び直接細胞死が変化している。別の実施態様では、本発明は、変異体重鎖領域を含む、修飾された抗CD20抗体を対象とし、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びPro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro329Gly及びPro151Pheを含み、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されたエフェクター機能及び直接細胞死と比較して、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能及び直接細胞死が変化している。別の実施態様では、本発明による変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して増加している。別の実施態様では、本発明による変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して減少している。別の実施態様では、本発明による変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減又は消失している。好ましい実施態様では、本発明による変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して増加し、本発明の変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して低減又は消失される。更に好ましい実施態様では、前記アミノ酸置換Asn297Asp又はPro329Glyを含む本発明による抗体は、残存するADCP機能を保持する。
本発明の更なる実施態様では、親非置換抗体と比較して、本明細書中に開示される変異体CH1及び/又はVH領域と、本明細書に開示される変異体Fc領域とを含む、修飾された抗CD20抗体が提供される。一実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、親非置換抗体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死及びエフェクター機能と比較して、直接細胞死の誘導が増加し、FcγRIII結合が消失し、ADCCの誘導が消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、かつ、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。一実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びPro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びPro329Glyを含み、ここで、親非置換抗体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死及びエフェクター機能と比較して、直接細胞死の誘導が増加し、FcγRIII結合が消失し、ADCCの誘導が消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、かつ、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。更なる実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Val11及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、親非置換抗体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死及びエフェクター機能と比較して、直接細胞死の誘導が増加し、FcγRIII結合が消失し、ADCCの誘導が消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、かつ、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。更なる実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Val11及びPro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びPro329Glyを含み、ここで、親非置換抗体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死及びエフェクター機能と比較して、直接細胞死の誘導が増加し、FcγRIII結合が消失し、ADCCの誘導が消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、かつ、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。更なる態様では、前記抗体は、野生型Fc領域を有する抗体と比較して、ヒトFcγRIII及び/又はFcγRII及び/又はFcγRIに対して低減した親和性を示す。更なる態様では、Fc領域における前記修飾は、エフェクター(ADCC及び/又はCDC及び/又はADCP)機能の低減又は消失、Fc受容体への結合の低減又は消失、Clqへの結合の低減又は消失、及び急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)の低減又は消失をもたらす。
より具体的な実施態様では、本発明は、野生型ヒト重鎖領域を含むポリペプチドと比較して、直接細胞死の誘導が増加し、ヒトFc受容体(FcγR)及び/又はヒト補体受容体に対する親和性が低減した抗CD20抗体を提供する。更なる実施態様では、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIの少なくとも1つに対する親和性が低減し、更なる実施態様では、FcγRI及びFcγRIIIに対する親和性が低減し、更なる実施態様では、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIに対する親和性が低減し、本発明のなお更なる態様では、FcγRI受容体、FcγRIII受容体及びC1qに対する親和性が低減し、かつ、本発明のなお更なる態様では、FcγRI、FcγRII、FcγRIII及びC1q受容体に対する親和性が低減している。
本発明の別の態様では、Val11、Pro151及びAsn297からなる群より選択されるアミノ酸残基の1つに少なくとも1つのアミノ酸置換を含む抗体であって、変異体重鎖領域を含む抗体によるエフェクター機能の誘導及び/又はFcγ受容体への結合並びに直接細胞死の誘導が変化した抗体が提供される。本発明の別の態様では、Val11、Pro151、Asn297及びPro329からなる群より選択されるアミノ酸残基の1つに少なくとも1つのアミノ酸置換を含む抗体であって、変異体重鎖領域を含む抗体によるエフェクター機能の誘導及び/又はFcγ受容体への結合並びに直接細胞死の誘導が変化した抗体が提供される。一実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIIIへの結合が低減される。好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIIIへの結合は、親非置換重鎖領域を含む抗体によるFcγRIII結合の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下に低減する。より好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIIIへの結合は、親非置換重鎖領域を含む抗体によるFcRIII結合の0%〜20%に低減する。より好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIIIへの結合は、親非置換重鎖領域を含む抗体によるFcγRIIIへの結合と比較して消失する。別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるADCC機能の誘導が低減される。好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるADCC機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導されるADCC機能の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下に低減する。より好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるADCC機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導されるADCC機能の0%〜80%、更により好ましい実施態様では0〜20%に低減する。最も好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるADCC機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導されるADCC機能と比較して消失する。更なる実施態様では、ADCCは、エフェクター細胞の存在下で細胞上清中に放出されるLDHの定量化によって測定され得る。更に別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIへの結合が低減される。別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIへの結合は、親非置換重鎖領域を含む抗体によるFcγRIへの結合と比較して消失する。好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIへの結合は、親非置換重鎖領域を含む抗体によるFcγRI結合の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下に低減する。より好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIへの結合は、親非置換重鎖領域を含む抗体によるFcRI結合の10%〜90%、最も好ましい実施態様では20%〜60%に低減する。別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるADCC機能の誘導が低減される。更なる実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるADCP機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導されるADCP機能と比較して消失する。好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるADCP機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導されるADCP機能の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下に低減する。より好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるADCP機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導されるADCP機能の10%〜90%、更により好ましい実施態様では20〜60%に低減する。最も好ましい実施態様では、本発明の抗体は、残存するADCP機能を維持する。更なる実施態様では、ADCPは、標的細胞との同時インキュベーション後のCFSE−PKH26−二重陽性マクロファージの定量によって測定することができる。別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるCDC機能の誘導が低減される。好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるCDC機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導されるCDC機能の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下に低減する。より好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるCDC機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導されるCDC機能の0%〜80%、更により好ましい実施態様では0〜20%に低減する。最も好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によるCDC機能の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導されるCDC機能と比較して消失する。更なる実施態様では、CDCは、補体の存在下で細胞上清中に放出されるLDHの定量化によって測定され得る。別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体による急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)の誘導が低減される。好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体による急性輸液反応の誘導は、親非置換重鎖領域を含む抗体により誘導される急性輸液反応の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下に低減する。最も好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体による急性輸液反応の誘導が消失する。
従って、更なる実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して増加している。本発明の別の態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死の少なくとも110%に増加している。好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死の少なくとも120%に増加している。より好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死の少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、少なくとも200%に増加している。最も好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死の120%〜200%に増加している。本発明の更なる態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して減少している。更に別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死の90%以下に減少している。好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死の80%以下に減少している。より好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死の70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下に減少する。別のより好ましい実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死の0%〜70%、更により好ましい実施態様では0〜20%に減少する。更に別の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は消失する。更なる実施態様では、直接細胞死の誘導は、アネキシンV結合及びPI染色によって測定することができる。
FcγRへの結合を変化させることが好ましいが、新生児受容体(FcRn)に対する結合親和性が変化したFc領域変異体もまた本明細書において企図される。FcRnに対する改善された親和性を有するFc領域変異体は、より長い血清半減期を有することが予想され、そのような分子は、投与されたポリペプチドの長い半減期が所望される哺乳類を(例えば、慢性疾患又は障害を治療するために)治療する方法において有用な用途を有するであろう。逆に、FcRn結合親和性が減少したFc領域変異体は、より短い半減期を有することが期待され、そのような分子は、例えばin vivo診断イメージングのために、又は血流中に長期間循環しているときに有毒な副作用を有するポリペプチドのために短縮された循環時間が有利であり得る場合に、例えば、哺乳類に投与されてもよい。減少したFcRn結合親和性を有するFc領域変異体は、胎盤を通過する可能性が低いと予想され、従って、妊婦の疾患又は障害の治療に利用され得る。FcRnに対する変化した結合親和性を有するFc領域変異体は、アミノ酸位置238、252、253、254、255、256、265、272、286、288、303、305、307、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、386、388、400、413、415、424、433、434、435、436、439又は447の任意の1つ以上のアミノ酸位置でFc領域のアミノ酸修飾を含むものを含む。FcRnへの結合の低減を示すものは、通常、アミノ酸位置252、253、254、255、288、309、386、388、400、415、433、435、436、439又は447の任意の1つ以上のアミノ酸位置でFc領域のアミノ酸修飾を含み;かつFcRnへの結合が増加したものは、通常、アミノ酸位置238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の任意の1つ以上のアミノ酸位置でFc領域のアミノ酸修飾を含む。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Asn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここで、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減する。更に特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro329Glyを含み、ここで、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Asn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここで、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、かつ、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。更に特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro329Glyを含み、ここで、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、かつ、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Asn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここで、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)が低減する。更に特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro329Glyを含み、ここで、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)が低減する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減し、かつ、151位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が増加する。別の特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びPro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びPro329Glyを含み、ここで、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減し、かつ、151位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びAsn297Aspを含み、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)が低減し、かつ、151位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が増加する。別の特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びPro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びPro329Glyを含み、ここで、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)が低減し、かつ、151位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Ala及びAsn297Aspを含み、ここで、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減し、かつ、151位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が減少する。特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びPro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Ala及びPro297Glyを含み、ここで、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減し、かつ、151位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が減少する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Ala及びAsn297Aspを含み、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減し、かつ、急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)が低減し、かつ、151位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が減少する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Val11及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減し、かつ、11位のバリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が増加する。特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Val11及びPro329を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びPro329Glyを含み、ここで、329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減し、かつ、11位のバリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Val11及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Ala及びAsn297Aspを含み、ここで、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減し、かつ、11位のバリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が減少する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗CD20抗体が提供され、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Val11及びAsn297を含み、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びAsn297Aspを含み、297位のアスパラギンを含む親非置換抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)が低減し、かつ、11位のバリンを含む親非置換抗体によって誘導される直接細胞死と比較して、直接細胞死の誘導が増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Asn297を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減する。特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Pro329を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro329GlyAspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで親非置換抗体は、重鎖領域にアミノ酸残基Asn297を含むオビヌツズマブであり、残基はKabatのEUインデックスに従って番号付けされ、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター(ADCC及び/又はCDC及び/又はADCP)機能は、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して低減又は消失し、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)は、オビヌツズマブによって誘導される急性輸液反応と比較して低減又は消失する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Asn297を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。
特定の実施態様では、変異重鎖を含む抗体が提供され、ここで、親非変異抗体は重鎖にアミノ酸残基Asn297(EU番号付け)を含むオビヌツズマブであり、前記変異重鎖は、親非変異重鎖に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。
特定の実施態様では、変異重鎖を含む抗体が提供され、ここで、親非変異抗体は重鎖にアミノ酸残基Pro329(EU番号付け)を含むオビヌツズマブであり、前記変異重鎖は、親非変異重鎖に対してアミノ酸置換Pro329Glyを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びAsn297を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、直接細胞死の誘導が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びPro329を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びPro329Glyを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、直接細胞死の誘導が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで親非置換抗体は、重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びAsn297を含むオビヌツズマブであり、残基はKabatのEUインデックスに従って番号付けされ、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びAsn297Aspを含み、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター(ADCC及び/又はCDC及び/又はADCP)機能は、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して低減又は消失し、かつ、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びAsn297を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Ala及びAsn297Aspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減し、かつ、直接細胞死の誘導が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて減少する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びAsn297を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Ala及びAsn297Aspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、直接細胞死の誘導が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて減少する。特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びPro329を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Ala及びPro329Glyを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、直接細胞死の誘導が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて減少する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Val11及びAsn297を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減し、かつ、直接細胞死の誘導が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Val11及びAsn297を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Ala及びAsn297Aspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減し、かつ、直接細胞死の誘導が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて減少する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Val11及びAsn297を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、直接細胞死の誘導が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Val11及びPro329を含むオビヌツズマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びPro329Glyを含み、ここで、オビヌツズマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、直接細胞死の誘導が、オビヌツズマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Asn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導が低減する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで親非置換抗体は、重鎖領域にアミノ酸残基Asn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター(ADCC及び/又はCDC及び/又はADCP)機能は、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して低減又は消失し、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される急性輸液反応(サイトカイン放出症候群)は、リツキシマブによって誘導される急性輸液反応と比較して低減又は消失する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Asn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。
特定の実施態様では、変異重鎖を含む抗体が提供され、ここで、親非変異抗体は重鎖にアミノ酸残基Asn297(EU番号付け)を含むリツキシマブであり、前記変異重鎖は、親非変異重鎖に対してアミノ酸置換Asn297Aspを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。
特定の実施態様では、変異重鎖を含む抗体が提供され、ここで、親非変異抗体は重鎖にアミノ酸残基Pro329(EU番号付け)を含むリツキシマブであり、前記変異重鎖は、親非変異重鎖に対してアミノ酸置換Pro329Glyを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持される。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びAsn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、直接細胞死の誘導が、リツキシマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで親非置換抗体は、重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びAsn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Phe及びAsn297Aspを含み、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター(ADCC及び/又はCDC及び/又はADCP)機能は、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して低減又は消失し、かつ、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、リツキシマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びAsn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Ala及びAsn297Aspを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減し、かつ、直接細胞死の誘導が、リツキシマブによって誘導される直接細胞死に比べて減少する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Pro151及びAsn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Pro151Ala及びAsn297Aspを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、直接細胞死の誘導が、リツキシマブによって誘導される直接細胞死に比べて減少する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Val11及びAsn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減し、かつ、直接細胞死の誘導が、リツキシマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Val11及びAsn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Ala及びAsn297Aspを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減し、かつ、直接細胞死の誘導が、リツキシマブによって誘導される直接細胞死に比べて減少する。
特定の実施態様では、変異体重鎖領域を含む抗体が提供され、ここで、親非置換抗体は重鎖領域にアミノ酸残基Val11及びAsn297を含むリツキシマブであり、前記変異体重鎖領域は、親非置換重鎖領域に対してアミノ酸置換Val11Phe及びAsn297Aspを含み、ここで、リツキシマブによって誘導されるエフェクター機能と比較して、FcγRIII結合が消失し、ADCCが消失又は大きく低減し、FcγRI結合が低減し、ADCP機能の誘導は低減するが残存するADCP機能は維持され、かつ、直接細胞死の誘導が、リツキシマブによって誘導される直接細胞死に比べて増加する。
アミノ酸修飾(置換、付加、欠失)を含む本発明の抗体は、当該技術分野で周知の方法によって調製することができる。これら方法には、限定されないが、部位特異的(又はオリゴヌクレオチド媒介性)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びポリペプチドをコードする先に調製された核酸のカセット突然変異誘発による調製を含む。部位特異的変異誘発は、置換変異体を調製するための好ましい方法である。この技術は、当該技術分野で周知である(例えば、Carter et a Nucleic Acids Res. 13: 4431-4443 (1985)及びKunkel et. al, Proc. Natl. Acad. ScL USA 82: 488 (1987)を参照。これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。簡潔には、DNAの部位特異的突然変異誘発の実施において、出発DNAは、最初に、所望の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドをこのような出発DNAの一本鎖にハイブリダイズさせることによって改変される。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼを用いて、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、出発DNAの一本鎖を鋳型として用いて、第2の鎖全体を合成する。従って、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドが、得られた二本鎖DNAに組み込まれる。
PCR突然変異誘発はまた、非修飾出発ポリペプチドのアミノ酸配列変異体を作製すために適している(例えば、Vallette et. al, Nuc. Acids Res. 17: 723-733 (1989)を参照。この全体が参照により本明細書に組み込まれる)。簡潔には、少量の鋳型DNAがPCRにおいて出発物質として使用される場合、鋳型DNA中の対応する領域と配列がわずかに異なるプライマーを使用して、プライマーが鋳型と異なる位置でのみ鋳型配列と異なる比較的多量の特定のDNA断片を生成することができる。
本発明の抗体変異体、カセット突然変異誘発を調製するための本発明による別の方法は、Wells et al, Gene 34: 315-323 (1985)に記載された技術に基づいており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。出発物質は、修飾される出発ポリペプチドDNAを含むプラスミド(又は他のベクター)である。変異される開始DNA中のコドンが同定される。同定された突然変異部位の各側には、固有の制限エンドヌクレアーゼ部位が存在しなければならない。そのような制限部位が存在しない場合、本明細書に開示されたオリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発法を用いて制限部位が生成され、出発ポリペプチドDNA中の適切な位置に制限部位を導入することができる。これらの部位でプラスミドDNAを切断して線状化する。制限部位の間のDNAの配列をコードするが、所望の突然変異を含む二本鎖オリゴヌクレオチドが、標準的な手順を用いて合成され、ここで、オリゴヌクレオチドの2つの鎖は別々に合成され、次いで標準的な技術を用いて一緒にハイブリダイズされる。この二本鎖オリゴヌクレオチドは、カセットと呼ばれる。このカセットは、線状化されたプラスミドの末端に適合する5’及び3’末端を有するように設計され、プラスミドに直接連結され得る。このプラスミドは、今や突然変異したDNA配列を含む。
あるいは、又は更に、抗体変異体をコードする所望のアミノ酸配列を決定することができ、このようなアミノ酸配列変異体をコードする核酸配列を合成的に生成することができる。
親Fc領域に適切なアミノ酸配列修飾を導入することにより、(a)ヒトエフェクター細胞の存在下で1つ以上のエフェクター機能をあまり効果的には媒介しない、及び/又は(b)親ポリペプチドよりも小さな親和性でFcγ受容体(FcγR)に結合する変異体Fc領域を生成することができる。このような修飾されたFc領域は、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含むであろう。同様に、適切なアミノ酸配列修飾を導入することにより、親非置換ポリペプチドと比較して多かれ少なかれ効果的に直接細胞死の改変された誘導を媒介する変異体CH1及びVH領域を生成することができる。Fc及びCH1及び/又はVH領域の組み合わされた変異体は、親領域ポリペプチドに個別に置換を導入し、修飾された領域を組み合わされたFc及びCH1及び/又はVH変異体に組み合わせることによって、又は全てのアミノ酸置換を同時に導入することによって生成することができる。
好ましい実施態様では、親ポリペプチドFc領域はヒトFc領域であり、限定されないが、天然のヒトFc領域ヒトIgG1(A及び非Aアロタイプ)、IgG2、IgG3、IgG4、及び任意の種のFc領域から知られているか又は発見された全てのアロタイプが含まれる。そのような領域は、米国仮特許出願第60/678,776号(全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているような配列を有する。
特定の実施態様では、改変されたエフェクター機能(ADCC、CDC及びADCPを含むがこれに限定されない)を有する修飾されたFc領域を更に含む重鎖CH1及びVH領域における1つ以上のアミノ酸置換を含む抗体を生成するために、親ポリペプチドは、好ましくは、既存のエフェクター機能を有する(例えば、親ポリペプチドがヒトIgG1又はヒトIgG3 Fc領域を含む)。幾つかの実施態様では、改変されたエフェクター機能を有する修飾されたFc領域は、エフェクター機能(ADCC、CDC及びADCPを含むがこれに限定されない)を、天然配列IgG1又はIgG3 Fc領域を有する抗体よりも実質的に効果的でないように媒介する。
修飾された重鎖領域を有する本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの所望の又は意図した使用に依存して、1つ以上の更なる修飾を受けることができる。そのような修飾には、例えば、限定されるものではないが、アミノ酸配列の更なる改変(アミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失)、異種ポリペプチドへの融合及び/又は共有結合修飾を含む。このような更なる改変は、本明細書に開示されるアミノ酸改変の前に、同時に、又は後に行うことができ、これはシグナル伝達活性及び/又はFc受容体結合及び/又はエフェクター機能の変化をもたらす。
本発明の別の態様では、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nMの解離定数(Kd)を有する。好ましくは解離定数は、10−8M以下、10−8M〜10−13M、10−9M〜10−13Mである。
本発明の一態様では、解離定数Kdは、ユーロピウム標識抗体を用いたスキャッチャード分析及び異なる抗体濃度での結合/遊離比の分析によって測定される。2x105個のSU−DHL4細胞を、20%FCS(50μl)を含有する培地中でV底プレート(NUNC)に播種する。次いで、50μlのユーロピウム標識抗体を異なる濃度で添加し、25℃で1時間インキュベートする。その後、150μlの完全培地を添加し、プレートを遠心分離する。細胞を培地全体を置換することにより2回洗浄し、新しいプレートに移し、再び2回洗浄する。最後に、遠心分離後に培地を除去し、ペレットを200μlのエンハンサー溶液に再懸濁し、黒色96ウェルプレートに移し、10分間シェーカー上に置く。この工程により、結合したユーロピウムが上清中に放出され、蛍光が増強され、次いでBMG PheraStar装置(ex337/em615)で分析した。結合した抗体のモル濃度は、基準の(ユーロピウム−抗体)滴定曲線からの相対蛍光単位(RFU)の使用によって計算される。遊離抗体の量は、全抗体ウェルで測定されたシグナルから結合した抗体を差し引くことによって計算される。結合対遊離抗体の比を、結合した抗体分子の数に対してプロットし、曲線の傾き(S)を決定する。抗体の親和性は、以下の式を使用して決定される:Kd(M)=1/−S.
別の実施態様によれば、解離定数Kdは、以下のアッセイによって開示されるような目的の抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて行われる放射性標識抗原又はFc受容体結合アッセイ(RIA)によって測定される。非標識抗原の力価測定系の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原でFabを均衡化し、次いで抗Fab抗体コートプレートと結合した抗原を捕獲することによって抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する(例えば、Chen, et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 865-881を参照)。アッセイ条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)で一晩コーティングし、その後2%(w/v)のウシ血清アルブミンを含むPBSて2〜5時間室温(およそ23℃)でブロックする。非吸着プレート(Sigma−Aldrich P7366)において、100pM又は26pMの[125I]抗原を段階希釈した目的のFabと混合する(例えば、Presta 、et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997)の抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一致する)。次いで目的のFabを一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションは、平衡状態に達したことを確認するために長時間(例えば約65時間)続くかもしれない。その後、混合物を捕捉プレートに移し、室温で1時間インキュベートする。次いで、溶液を除去し、0.1%のポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))を含むPBSでプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MicroScint−20TM;Packard)を加え、プレートをTOPCOUNTTM γカウンター(Packard)で10分間計数する。最大結合の20%又はそれ以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選定する。
別の実施態様によれば、抗体の解離定数Kdは、BIACORE(登録商標)2000又はBIACORE(登録商標)3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを用いて、−10応答単位(RU)での固定化抗原又はFc受容体CM5チップを用いて25℃で測定される。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈した後、結合したタンパク質のおよそ10反応単位(RU)を達成するように5μl/分の流量で注入する。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動力学的な測定では、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流量で0.05%ポリソルベート20(Tween−20TM)界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入する。会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時にフィットさせることによる単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合速度(kon)及び解離速度(koff)を算出する。Kdは比koff/konとして計算される。例えば、Chen, et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 865-881を参照。上記の表面プラズモン共鳴アッセイにより結合速度が106M−1s−1を上回る場合、結合速度は、分光計、例えば、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−AMINCOTM分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、PBS(pH7.2)中、25℃で、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)の増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて測定することができる。
特定の実施態様では、親非置換重鎖領域は、配列番号1に開示されるようなオビヌツズマブに由来するものであり、更に本明細書において開示される。Kabatによるアミノ酸位置11、151及び297には下線が引かれている。
オビヌツズマブ重鎖アミノ酸配列(配列番号1)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSYSWINWVRQAPGQGLEWMGR
IFPGDGDTDYNGKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNV
FDGYWLVYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKD
YFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTY
ICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPK
DTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNS
TYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQV
YTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVL
DSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
特定の実施態様では、親非置換重鎖領域は、配列番号1に開示されるようなオビヌツズマブに由来するものであり、更に本明細書において開示される。Kabatによるアミノ酸位置11、151及び297には下線が引かれている。
リツキシマブ重鎖アミノ酸配列(配列番号2)
QVQLQQPGAELVKPGASVKMSCKASGYTFTSYNMHWVKQTPGRGLEWIGA
IYPGNGDTSYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARST
YYGGDWYFNVWGAGTTVTVSAASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLV
KDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQ
TYICNVNHKPSNTKVDKKAEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPK
PKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQY
NSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREP
QVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPP
VLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
修飾された抗体の発現
当業者に周知の方法を用いて、適切な転写/翻訳制御シグナルと共に、親抗体の実質的に同じ結合特異性を有する修飾抗体のコード配列を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、in vitroでの組換えDNA技術、合成技術及びin vivoでの組換え/遺伝子組換えを含む。例えば、Maniatis et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (1989);及びAusubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989)に記載される技術を参照。
様々な宿主−発現ベクター系を利用して、本発明の抗体のコード配列を発現させることができる。好ましくは、哺乳動物細胞が、目的のタンパク質のコード配列及び融合ポリペプチドのコード配列を含む組換えプラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞系として使用される。最も好ましくは、CHO細胞、HEK293−EBNA細胞、BHK細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は植物細胞が宿主細胞系として使用される。発現系及び選択方法の幾つかの例は、以下の参考文献とその中の参考文献に開示されている: Werner et al, Arzneimittelforschung/Drug Res. 48(8):870-80 (1998), Andersen and Krummen, Curr. Op. Biotechnol. 13:117-123 (2002), Chadd and Chamow, Curr. Op. Biotechnol. 12:188-194 (2001), Giddings, Curr. Op. Biotechnol. 12: 450-454 (2001)。代替の実施態様では、他の真核生物宿主細胞系が意図されてもよく、これには、例えば、米国特許出願第60/344169号及び国際公開第03/056914号(非ヒト真核宿主細胞におけるヒト様糖タンパク質の産生方法)(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に教示されるような、本発明の抗体のコード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母細胞;親抗体と実質的に同じ結合特異性を有する修飾抗体のコード配列を含む組換えウイルス発現ベクターで感染させた昆虫細胞系(例えば、バキュロウイルス);組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染させた植物細胞系、又は本発明の抗体のコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系であって、限定されるものではないが、米国特許第6,815,184号(遺伝子操作されたウキクサからの生物学的に活性なポリペプチドの発現及び分泌のための方法);国際公開第2004/057002号(グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子の導入によるコケ植物細胞におけるグリコシル化タンパク質の産生)及び国際公開第2004/024927号(コケプロトプラストにおいて細胞外異種非植物タンパク質を生成する方法);及び米国特許出願第60/365,769号、60/368,047号、及び国際公開第2003/078614号(機能性哺乳類GnTIII酵素を含むトランスジェニック植物における糖タンパク質プロセシング)(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示される発現系を含む植物細胞系;又は組換えウイルス発現ベクターで感染させた動物細胞系(例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)であって、安定して増幅されるか(CHO/dhfr)、又は二重微小染色体中において不安定に増幅される(例えば、マウス細胞株)、親抗体と実質的に同じ結合特異性を有する修飾抗体をコードするDNAの複数のコピーを含むように操作された細胞株を含む動物細胞系が含まれる。一実施態様では、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターは、ポリシストロニックである。好ましい実施態様では、抗体はヒト化抗体である。
一実施態様では、本発明は、本発明の1つ以上の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び/又は宿主細胞を対象とする。本発明の一態様によれば、軽鎖及び重鎖を、別々のプラスミド中、又は単一の(ポリシストロンを含むがこれに限定されない)ベクター上の免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖を用いて、別々に発現させることができる従って、本発明の別の態様では、抗体の変異体重鎖領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。本発明の一態様では、抗体の軽鎖領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。本発明の一態様では、抗体の変異体重鎖及び/又は軽鎖をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。更なる態様では、前記ベクターはポリシストロニックである。本発明の一実施態様は、前記ポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞を対象とする。また、本発明は、(i)前記少なくとも1つのポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で前記宿主細胞を培養すること;(ii)培養培地から前記抗体を回収することを含む、本発明の抗体を宿主細胞内で製造する方法を対象とする。
本発明の方法では、安定した発現は、典型的にはより再現性のある結果を達成し、かつ大規模生産により適しているので、一般的に一過性発現より好ましい。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞を、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)及び選択可能マーカーによって制御されるそれぞれのコード核酸で形質転換することができる。外来DNAの導入後、操作された細胞を富化培地中で1〜2日間増殖させ、次いで選択培地に切り替えられる。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、プラスミドを染色体に安定に組み込み、増殖して病巣を形成する細胞の選択を可能にし、次いでこれをクローン化して細胞株へ増殖させることができる。
多くの選択システムが使用されてもよく、限定されないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al, Cell 11:223 (1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sd. USA 48:2026 (1962))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al, Cell 22:817 (1980))遺伝子が含まれ、それぞれtk−、hgprt−又はaprt−細胞に用いることができる。また、代謝拮抗物質耐性は、メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler et al, Natl Acad. Sd. USA 77:3567 (1989); O'Hare et al, Proc. Natl Acad. ScL USA 78: 1527 (1981));ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg, Proc. Natl Acad. ScL USA 78:2072 (1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo(Colberre-Garapin et al, J. MoI Biol 150:1 (1981));及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre et al, Gene 30:147 (1984)の遺伝子の選択の基礎として使用することができる。最近、更なる選択可能な遺伝子、すなわち、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD(Hartman & Mulligan, Proc. Natl Acad. ScL USA S5:8047 (1988));グルタミン合成酵素系;及びオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤である2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DEMOに対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue, in: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed. (1987))が記載されている。
本発明の方法による修飾された抗体の治療的適用
最も広い意味で、本発明の修飾された抗体は、標的抗原を発現する細胞をin vivo又はin vitroで標的化するために、特に、前記標的抗原が細胞表面上に発現される場合に使用することができる。標的抗原を発現する細胞は、診断目的又は治療目的のために標的化することができる。一態様では、本発明の修飾された抗体は、標的抗原を発現する細胞における細胞シグナル伝達活性を変化させながらエフェクター機能を制御するために使用することができる。別の態様では、本発明の修飾された抗体を用いて、エフェクター機能を抑制し、かつ/又は1つ以上の標的抗原の架橋及び/又はオリゴマー化を改変することができる。本発明の修飾された抗体の標的抗原は、細胞表面受容体であり得るが、限定されないものの、CD21、CD22、CD19、CD47、CD99、CD2、CD45、Her1(EGFR)、Her2/neu、Her3、Her4、TRAIL受容体(例えば、TRAILR1、TRAILR2)、TNFR、FGF受容体(例えば、FGFR1)、IGF受容体、PDGF受容体、VEGF受容体、及び他の細胞表面結合受容体が含まれる。特定の実施態様では、標的抗原はCD20である。本発明の修飾された抗体はまた、細胞周期を停止させ、標的細胞の直接細胞死を引き起こし、血管新生を阻害し、かつ/又は標的細胞の分化を引き起こすように作用する。
別の態様では、本発明は、標的抗原のエフェクター機能の抑制及び/又は細胞シグナル伝達活性の改変によって治療可能な疾患の治療方法であって、本発明の修飾された抗体の治療的有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を対象とする。特定の実施態様では、修飾された抗体はヒト化される。修飾された抗体が投与され得る疾患の例は、限定されないが、細胞増殖性疾患又は障害、自己免疫疾患又は障害、及び細菌又はウイルス感染に関連する疾患又は障害が含まれる。
一実施態様では、本明細書による抗体の有効量を個体に投与することを含む、増殖性障害及び自己免疫疾患からなる群より選択される疾患を治療するための方法を対象とする。更なる態様では、前記方法は、本発明の修飾された抗体(コンジュゲート型、限定されないがイムノトキシン、又は非コンジュゲート型)の少なくとも1つを含有する組成物の薬学的有効量を対象に投与することを含む。一実施態様では、前記増殖性障害には、限定されないものの、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭部及び頸部、神経系(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部、及び泌尿生殖器系に位置する新生物、がん、悪性腫瘍及び/又は腫瘍が含まれる。本発明の抗体で治療することができる特定の新生物、がん、悪性腫瘍及び/又は腫瘍には、限定されるものではないが、表皮及び扁平上皮細胞癌、神経膠腫、膵臓がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、膀胱がん、頭頸部がん、腎細胞癌、結腸がん、結腸直腸がん、肺がん、脳腫瘍、悪性黒色腫、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃がん、子宮頸がん、子宮内膜癌、食道がん、肝臓がん、皮膚がん、尿路癌、絨毛癌、喉頭がん、喉頭がん、卵胞膜細胞腫症、セルトリ間質細胞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽細胞腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、神経線維腫、乏突起神経膠腫、髄芽腫、神経節芽細胞腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、過誤芽腫、骨肉腫、平滑筋肉腫、甲状腺肉腫、ユーイング肉腫、及びウィルムス腫瘍が含まれる。好ましい実施態様では、前記増殖性障害は、CD20を発現するがんである。別の好ましい実施態様では、前記がんは、リンパ腫及びリンパ性白血病からなる群より選択される。このようなリンパ腫及びリンパ性白血病は、限定されないが、濾胞性リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫/バーキットリンパ腫(地方病性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫及び非バーキットリンパ腫を含む)、辺縁帯リンパ腫(節外性辺縁帯B細胞性リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、節性辺縁帯B細胞性リンパ腫及び脾臓辺縁帯リンパ腫を含む)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、大細胞型リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、縦隔原発B細胞性リンパ腫、血管中心性リンパ腫−肺性B細胞性リンパ腫を含む)、ヘアリー細胞白血病、リンパ球性リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞性前リンパ性白血病、形質細胞腫瘍、形質細胞性骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、ホジキン病を含む。好ましい実施態様では、前記CD20発現がんは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び慢性リンパ性白血病(CLL)からなる群より選択される。
更なる態様では、本発明は、B細胞枯渇に基づく、B細胞リンパ腫を含むB細胞増殖性障害を治療するための改善された方法であって、治療的有効量の本発明の抗体を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む方法を対象とする。好ましい実施態様では、抗体は、マウスB−Ly1抗体と実質的に同じ結合特異性を有する抗CD20抗体である。別の好ましい実施態様では、抗体はヒト化されている。別の好ましい実施態様では、抗体は、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含み、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びAsn297を含み、前記置換がPro151Phe及びAsn297Aspであり、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能及び直接細胞死に比べて、エフェクター機能の誘導は低減又は消失し、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は増加する。本発明のこの態様では、本発明の抗体は、正常なB細胞の血液を長期間枯渇させるために使用される。
本発明は更に、ヒト腫瘍細胞の増殖を阻害する方法、対象の腫瘍を治療する方法、及び対象の増殖型疾患を治療する方法を提供する。これらの方法は、本発明の組成物の有効量を対象に投与することを含む。
他の細胞増殖障害も、本発明の修飾された抗体により治療することができる。本発明に包含されるように、前記細胞増殖障害には、限定されるものではないが、高ガンマグロブリン血症、リンパ増殖性障害、異常タンパク血症、紫斑病、サルコイドーシス、セザリー症候群、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ゴーシェ病、組織球増殖症、及び本明細書中に列挙する臓器系に位置する新生物以外の任意の他の細胞増殖性障害が含まれる。
別の実施態様では、本発明は、自己免疫疾患を治療するための方法を対象とする。一実施態様では、前記自己免疫疾患は、限定されないが、免疫媒介性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病及び慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、レンサ球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、多形性紅斑、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性ユビテランス(thromboangitis ubiterans)、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、多発筋痛症、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎及び線維化肺胞炎、炎症反応、例えば炎症性皮膚疾患、例えば乾癬及び皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)、全身性強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患に関連する応答(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、呼吸促迫症候群(例えば、成人呼吸促迫症候群、ARDS)、皮膚炎、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー状態、例えば湿疹及び喘息及び他の状態、例えばT細胞の浸潤及び慢性炎症性応答、粥状動脈硬化、白血球接着欠乏、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病(例えば1型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病)、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、アレルギー性脳脊髄炎、シェーグレン症候群、若年性糖尿病、及び典型的に結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症及び血管炎に見られるサイトカイン及びTリンパ球により媒介される急性及び遅延型過敏症に付随する免疫応答、悪性アメニア(アジソン病)、白血球血管外漏出に関する病気、中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器傷害症候群、溶血性貧血(限定されないが、寒冷グロブリン血症又はクームス陽性貧血)、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介性の病気、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質症候群、アレルギー性神経炎、グレーブス病、ランバート・イートン症候群、類天疱瘡水疱性、天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌不全症、ライター病、全身硬直症候群、ベーチェット病、巨細胞性動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫性血小板減少症を含む。好ましい実施態様では、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、シェーグレン症候群及び移植拒絶反応からなる群より選択される。
更なる態様では、本発明は、B細胞枯渇に基づく、本明細書で定義される自己免疫疾患を治療するための改善された方法であって、治療的有効量の本発明の抗体を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む方法を対象とする。好ましい実施態様では、抗体は、マウスB−Ly1抗体と実質的に同じ結合特異性を有する抗CD20抗体である。別の好ましい実施態様では、抗体はヒト化されている。別の好ましい実施態様では、抗体は、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含み、ここで、親非置換抗体の重鎖領域は、アミノ酸残基Pro151及びAsn297を含み、前記置換がPro151Phe及びAsn297Aspであり、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能及び直接細胞死に比べて、エフェクター機能の誘導は低減又は消失し、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死は増加する。本発明のこの態様では、本発明の抗体は、正常なB細胞の血液を長期間枯渇させるために使用される。
本発明の修飾された抗体は、単独で、又は他の治療法若しくは治療剤と組み合わせて使用して、エフェクター機能を改変すること、及び/又は細胞シグナル伝達活性を増加若しくは減少させること、及び/又は1つ以上の標的抗原を架橋することによって治療可能である障害を治療することができる。一実施態様では、本発明の修飾された抗体を単独で使用して、in vivoで腫瘍細胞を標的化及び死滅させることができる。修飾された抗体はまた、ヒトの癌を治療するための適切な治療剤と組み合わせて使用することができる。例えば、修飾された抗体は、化学療法、放射線療法などの標準的若しくは従来の治療法と組み合わせて使用することができ、又は癌の部位への治療剤の送達のために、治療剤又は毒素、並びにリンホカイン又は腫瘍阻害性増殖因子にコンジュゲート又は連結させることができる。特定の実施態様では、本発明の修飾された抗体のコンジュゲートは、(1)イムノトキシン(修飾された抗体と細胞傷害性部分とのコンジュゲート)及び(2)標識された(例えば、放射性標識、酵素標識、又は蛍光色素標識)修飾抗体(標識は標識された抗体を含む免疫複合体を同定するための手段を提供する)を含む。イムノトキシンの細胞傷害性部分は、細胞毒性薬物又は細菌若しくは植物起源の酵素的に活性な毒素、又はそのような毒素の酵素的に活性な断片(「A鎖」)であってもよい。使用される酵素的に活性な毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、及びエノマイシンである。別の実施態様では、修飾された抗体は小分子抗がん剤にコンジュゲートされる。修飾された抗体とそのような細胞傷害性部分とのコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作製される。そのような試薬の例は、SPDP、IT、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチルHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トルエン−2,6−ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)である。毒素の溶解部分は、修飾された抗体のFab断片に結合され得る。例えば、公開された米国特許出願第2002/0128448号(全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、更なる適切な毒素は、当該技術分野において周知である。
一実施態様では、本発明の抗原結合分子は、放射性標識又は毒素のような更なる部分にコンジュゲートされる。そのようなコンジュゲートされた修飾抗体は、当該技術分野で周知の多くの方法によって産生され得る。
様々な放射性核種が本発明に適用可能であり、当業者は、様々な状況下でどの放射性核種が最も適切であるかを容易に決定する能力があると信じられている。例えば、131ヨウ素は標的化免疫療法に用いられる既知の放射性核種である。しかしながら、131ヨウ素の臨床的有用性は、以下を含む幾つかの因子によって制限され得る:8日間の物理的半減期;血液及び腫瘍部位の両方におけるヨード化抗体の脱ハロゲン化;及び腫瘍における局所的な線量蓄積に対して準最適であり得る放射特性(例えば、大きなガンマ成分)を有する。優れたキレート剤の出現により、金属キレート基をタンパク質に結合させる機会は、111インジウム及び90イットリウムなどの他の放射性核種を利用する機会を増加させた。90イットリウムは、放射免疫療法用途での利用に幾つかの利点を提供する:90イットリウムの64時間の半減期は、腫瘍による抗体の蓄積を可能にするのに十分な長さであり、例えば、131ヨウ素とは異なり、90イットリウムは、その崩壊においてγ放射を伴うことなく、100〜1000細胞直径からなる組織の範囲で高エネルギーの純粋なβ線を放射する放射体である。更に透過性放射線の量が最小であることは、外来患者に90イットリウム標識抗体を投与することを可能にする。更に、標識抗体の内在化は細胞死滅のために必要ではなく、電離放射線の局所放出は、標的抗原を欠いている隣接する腫瘍細胞にとって致命的であるべきである。
本発明の90イットリウム標識修飾抗体の単回治療線量(すなわち、治療的有効量)は、約5〜約75mCi、より好ましくは約10〜約40mCiの範囲である。本発明の13ヨウ素標識修飾抗体の有効な単回治療非骨髄破壊的線量(effective single treatment non-marrow ablative dosage)は、約5〜約70mCi、より好ましくは約5〜約40mCiの範囲である。本発明の131ヨウ素標識修飾抗体の有効な単回治療破壊的線量(すなわち、自己骨髄移植を必要とする場合がある)は、約30〜約600mCi、より好ましくは約50〜約500mCiの範囲である。本発明によるキメラ抗体と併せて、マウス抗体に対して循環半減期がより長いおかげで、131Iヨード標識キメラ抗体の有効な単回治療非骨髄破壊的線量は、約5〜約40mCiの範囲、より好ましくは約30mCi未満である。111インジウム標識の画像化基準は、典型的には約5mCi未満である。
本発明の放射性標識した抗体に関して、それによる治療は、単一の治療処置を用いるか又は複数の処置を用いることができる。放射性核種成分のために、治療に先立って、放射線に起因する致命的な骨髄毒性を経験する患者の末梢幹細胞(「PSC」)又は骨髄(「BM」)を「採取」することが好ましい。BM及び/又はPSCを標準的な技術を用いて採取し、次いで可能な再注入のためにパージされ、凍結する。更に、治療前に、診断用に標識された抗体を用いた(限定されないが、111インジウムを用いることを含む)診断的線量測定研究が、患者について行われることが最も好ましく、この目的は、治療用に標識された抗体(例えば90イットリウムを用いる)が、必ずしも、任意の正常な臓器又は組織において無用に「濃縮」されないということを保証することである。
一実施態様では、本発明のキメラ、修飾抗体は、リシンA鎖にコンジュゲートされる。最も有利なことに、リシンA鎖は脱グリコシル化されており、組換え手段を通して産生される。リシンイムノトキシンを製造する有利な方法は、Vitetta et al., Science 238, 1098 (1987)を参照のこと。これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
診断目的でin vitroでヒトがん細胞を死滅させるために使用される場合、コンジュゲートは、典型的には、少なくとも約10nMの濃度で細胞培地に加えられるであろう。in vitroで用いるための製剤及び投与様式は重要ではない。培養又は灌流培地と適合する水性製剤が通常使用されるであろう。細胞傷害性は、がんの存在又は程度を決定するための従来の技術によって読み取ることができる。
本明細書で議論されるように、がんを治療するための細胞傷害性放射性医薬品は、放射性同位体(例えば、I、Y、Pr)を本発明のキメラ修飾抗体にコンジュゲートさせることによって作製することができる。本明細書で使用する用語「細胞傷害性部分」は、そのような同位体を含むことが意図される。
別の実施態様では、リポソームに細胞傷害性薬物が充填され、そのリポソームを本発明の抗体でコーティングする。本発明の修飾された抗体の標的分子の多くが細胞表面上に発現する(例えば、悪性B細胞の表面上に多くのCD20分子が存在する)ため、この方法は、正しい細胞型に大量の薬物を送達することを可能にする。
このような治療剤を抗体にコンジュゲートさせるための技術は周知である(例えば、Arnon et al., "Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et at, "Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson etal. (eds.), pp.623-53 (Marcel Defcker, Inc. 1987); Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985);及びThorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62:119-58 (1982) を参照。これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
本発明の抗体の更に他の治療的用途には、限定されないが、プロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することができる酵素に対する、組換えDNA技術によるコンジュゲーションを含むコンジュゲーション又は連結、及びプロドラッグを腫瘍部位において細胞傷害性剤に変換するためのプロドラッグと組み合わせたその抗体−酵素コンジュゲートの使用が含まれる(例えば、Senter et al., "Anti-Tumor Effects of Antibody-alkaline Phosphatase", Proc. Natl. Acad. ScL USA 55:4842-46 (1988); "Enhancement of the in vitro and in vivo Antitumor Activites of Phosphorylated Mitocycin C and Etoposide Derivatives by Monoclonal Antibody-Alkaline Phosphatase Conjugates", Cancer Research 49:5789-5792 (1989);及びSenter, "Activation of Prodrugs by Antibody-Enzyme Conjugates: A New Approach to Cancer Therapy," FASEB J. 4:188-193 (1990)を参照)。
本発明の抗体の更に別の治療的使用は、がん患者の骨髄から腫瘍細胞を除去するために、非コンジュゲート又は抗体薬物若しくは抗体毒素コンジュゲートの一部としての使用を含む。このアプローチによれば、自己骨髄は、抗体で処置することによってex vivoでパージされ、骨髄は患者の体内に注入される(例えば、Ramsay et al., "Bone Marrow Purging Using Monoclonal Antibodies", J. Clin. Immunol, 8(2):81-88 (1988)を参照)。
更に、本発明が、親抗体と実質的に同じ結合特異性を可能にする抗原結合ドメイン(限定されないが、親抗体のCDRを含むポリペプチドを含む)を含み、かつ更に毒素ポリペプチドを含む単鎖イムノトキシンを含むことが意図される。本発明の単鎖イムノトキシンは、in vivoでヒト癌を治療するために使用され得る。
同様に、限定されないが、リンフォカイン又はオンコスタチンを含む抗腫瘍活性を有する第2のタンパク質の少なくとも機能的に活性な部分に連結された、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質は、in vivoでヒト癌を治療するために使用することができる。
従って、本発明は、限定されないが、CD21、CD22、CD19、CD47、CD99、CD2、Her1、Her1(EGFR)、Her2/neu、Her3、Her4、TRAIL受容体(例えば、TRAILR1、TRAILR2)、TNFR、FGF受容体(例えば、FGFR1)、IGF受容体、PDGF受容体、VEGF受容体、及び他の細胞表面結合受容体を含む細胞表面受容体を発現する腫瘍細胞を選択的に死滅させる方法を提供する。この方法は、本発明の修飾された抗体(コンジュゲート型、例えば、イムノトキシンとして、又は非コンジュゲート型)が前記腫瘍細胞と反応することを含む。これらの腫瘍細胞は、ヒト癌由来であり得る。
更なる態様では、本発明は、医薬としての使用のための本発明の抗体に関する。一実施態様では、本発明は、増殖性障害及び自己免疫疾患からなる群より選択される疾患の治療における使用のための本発明に係る抗体に関する。本発明の1つの態様によれば、前記増殖性障害は、B細胞リンパ腫、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞上皮細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚黒色腫又は眼球内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)の新生物、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、多形神経膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫からなる群より選択され、本明細書中のがんの何れかの難治性のもの、又は本明細書中のがんの1つ以上の組み合わせ、又は本明細書中に開示される前がん症状若しくは病変を含む。前がん症状又は病変として、例えば、口腔白板症、光線性角化症(日光角化症)、結腸又は直腸の前がん性ポリープ、胃の上皮異形成、腺腫性異形成、遺伝性非ポリポーシス結腸がん(HNPCC)、バレット食道、膀胱異形成、及び前がん性頸部状態からなる群を含む。好ましくは、がんは、B細胞リンパ腫、乳がん、膀胱がん、頭頸部がん、皮膚がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、結腸がん、前立腺がん、腎臓がん及び脳がんからなる群より選択される。好ましい実施態様では、前記増殖性障害は、CD20を発現する癌である。別の好ましい実施態様では、前記がんは、リンパ腫及びリンパ性白血病からなる群より選択される。
一実施態様では、前記自己免疫疾患は、限定されないが、免疫媒介性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病及び慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、レンサ球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、多形性紅斑、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性ユビテランス(thromboangitis ubiterans)、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、多発筋痛症、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎及び線維化肺胞炎、炎症反応、例えば炎症性皮膚疾患、例えば乾癬及び皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)、全身性強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患に関連する応答(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、呼吸促迫症候群(例えば、成人呼吸促迫症候群、ARDS)、皮膚炎、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー状態、例えば湿疹及び喘息及び他の状態、例えばT細胞の浸潤及び慢性炎症性応答、粥状動脈硬化、白血球接着欠乏、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病(例えば1型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病)、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、アレルギー性脳脊髄炎、シェーグレン症候群、若年性糖尿病、及び典型的に結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症及び血管炎に見られるサイトカイン及びTリンパ球により媒介される急性及び遅延型過敏症に付随する免疫応答、悪性アメニア(アジソン病)、白血球血管外漏出に関する病気、中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器傷害症候群、溶血性貧血(限定されないが、寒冷グロブリン血症又はクームス陽性貧血)、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介性の病気、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質症候群、アレルギー性神経炎、グレーブス病、ランバート・イートン症候群、類天疱瘡水疱性、天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌不全症、ライター病、全身硬直症候群、ベーチェット病、巨細胞性動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫性血小板減少症からなる群より選択される。好ましい実施態様では、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、シェーグレン症候群及び移植拒絶反応からなる群より選択される。
更に別の実施態様は、がんの治療若しくは予防のため、又は前がん状態若しくは病変の治療若しくは予防のため、又は自己免疫疾患の治療のための医薬の製造のための、本発明による抗体の使用である。がん及び前がん状態は本明細書で定義される。一実施態様では、前記がんはCD20発現がんである。特定の前記がんは、好ましくはリンパ腫又はリンパ性白血病である。別の特定の実施態様では、前記がんは、濾胞性リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫/バーキットリンパ腫(地方病性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫及び非バーキットリンパ腫を含む)、辺縁帯リンパ腫(節外性辺縁帯B細胞性リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、節性辺縁帯B細胞性リンパ腫及び脾臓辺縁帯リンパ腫を含む)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、大細胞型リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、縦隔原発B細胞性リンパ腫、血管中心性リンパ腫−肺性B細胞性リンパ腫を含む)、ヘアリー細胞白血病、リンパ球性リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞性前リンパ性白血病、形質細胞腫瘍、形質細胞性骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、ホジキン病からなる群より選択される。好ましい実施態様では、前記がんは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び慢性リンパ性白血病(CLL)からなる群より選択される。好ましい実施態様では、前記がんは、リンパ腫及びリンパ性白血病からなる群より選択される。別の好ましい実施態様では、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、シェーグレン症候群及び移植拒絶反応からなる群より選択される。
本発明は、ヒト癌及び自己免疫疾患を治療するための薬学的組成物、組み合わせ、使用及び方法を包含する。本発明は、薬学的に有効量の本発明の抗体及び薬学的に許容される担体を含む、ヒト癌及び自己免疫疾患の治療における使用のための薬学的組成物を含む。
本発明の抗体組成物は、限定されないが、静脈内、腹腔内、経口、腹腔内、又は腫瘍への直接投与を含む従来の投与様式を用いて投与することができる。静脈内投与が好ましい。
本発明は更に、本発明の修飾された抗体及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。本発明の一態様では、本発明の抗体を含有する治療用製剤は、貯蔵のために、所望の純度を有する抗体と、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態に調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。通常、薬学的に許容される担体は、用いられる用量及び濃度で受容者に対して非毒性であり、限定されるものではないが、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及びその他の糖質;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
皮下投与に適した凍結乾燥製剤は、国際公開第97/04801号に記載されている。そのような凍結乾燥製剤は、適切な希釈剤を用いて高タンパク質濃度まで再構成することができ、再構成製剤は、本明細書で治療される個体に皮下投与することができる。
また、本明細書中の製剤は治療される特定の適応症に必要な一を超える活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有していてよい。例えば、細胞傷害性剤、化学療法薬剤、サイトカイン又は免疫抑制剤(例えば、T細胞に作用する薬剤、例えば、シクロスポリン、又はT細胞に結合する抗体、例えばLFA−1に結合する抗体)を更に提供することが望ましい。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するアンタゴニストの量、疾患若しくは障害又は治療の種類、及び本明細書に議論される他の要因に依存する。これらは、一般的に、上文で用いられたのと同じ用量及び投与経路で使用されるか、又は従来用量の約1〜99%の用量で使用される。
活性成分もまた、例えばコアセルベーション法又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれコロイド薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンで、ヒドリキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル、及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入され得る。これらの技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
徐放性製剤が調製されてもよい。適切な徐放性製剤は、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフェア)のような分解LUPRON性乳酸−グリコール酸コポリマー、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。
in vivo投与に用いられる製剤は滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
本発明の組成物は、限定されないが、液体溶液又は懸濁液、錠剤、ピル、粉末、座剤、重合体マイクロカプセル又はマイクロベシクル、リポソーム及び注射又は輸液溶液を含む様々な投与形態であり得る。好ましい形態は、投与様式及び治療的適用に依存する。
本発明の組成物はまた、好ましくは従来の薬学的に許容される担体及び当業者に既知であるアジュバント、例えばヒト血清アルブミン、イオン交換物質、アルミナ、レシチン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、及び塩又は電解質、例えば硫酸プロタミンを含む。
本発明の薬学的組成物の最も効果的な投与様式及び投与レジメンは、疾患の重篤度及び経過、患者の健康及び治療への応答、並びに治療する医師の判断に依存する。従って、組成物の投与量は個々の患者に対して滴定されるべきである。それにもかかわらず、本発明の組成物の有効用量は、一般に、約0.01〜約2000mg/kgの範囲であろう。
本発明の投薬量は、場合によっては、予測バイオマーカーの使用によって決定され得る。予測バイオマーカーは、例えば、腫瘍関連遺伝子若しくはタンパク質、又は腫瘍に関連するシグナル伝達経路の細胞成分の発現及び/又は活性化のパターンを決定する(すなわち、観察及び/又は定量する)ために使用される分子マーカーである。腫瘍組織における標的療法の生物学的効果を解明し、これらの影響を臨床応答と相関させることは、腫瘍において働く優勢な増殖経路及び生存経路を同定し、それにより、可能性のある応答者のプロファイルを確立し、逆に、治療に対する耐性を克服する戦略を設計するための論理的根拠を提供するのに役立つ。
予測バイオマーカーは、限定されないが、免疫組織化学、フローサイトメトリー、免疫蛍光、捕捉及び検出アッセイ、並びに逆相アッセイ、及び/又は米国特許出願公開第2004/0132097(A1)号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるアッセイを含む当該技術分野で周知である細胞アッセイにより計測されてもよい。
従って、一態様では、本発明は、標的抗原による細胞シグナル伝達の改変又は調節不全、及び/又は1つ以上の標的抗原の架橋及び/又はオリゴマー化を媒介する能力の改変に関する障害を治療するための方法であって、ここで、抗体療法によって媒介されるエフェクター機能の低減が、患者のために有益であり、標的抗原による細胞シグナル伝達の改変又は調節不全、及び/又は1つ以上の標的抗原の架橋及び/又はオリゴマー化を媒介する能力の改変に関連する障害(例えばがん)についての予測バイオマーカーの発現及び/又は活性化を検出する1つ又は複数の試薬による治療の前に、ヒト対象由来の試料をアッセイすることによって、治療を必要とするヒト対象において修飾された抗体を用いた治療に対する応答を予測し;1つ以上の予測バイオマーカーの発現及び/又は活性化のパターンを決定し、ここで、そのパターンが修飾された抗体による治療へのヒト対象の応答を予測し;かつ修飾された抗体での治療に陽性に応答すると予測されたヒト対象に、本発明の修飾された抗体を含む組成物の治療的有効量を投与することを含む、方法を提供する。本明細書に使用される場合、修飾された抗体治療に陽性に応答すると予測されるヒト対象は、修飾された抗体が、標的抗原による細胞シグナル伝達の改変又は調節不全、及び/又は1つ以上の標的抗原の架橋及び/又はオリゴマー化を媒介する能力の改変に関連する疾患又は障害について計測可能な効果(例えば、腫瘍退縮/縮小)を有するヒトであり、かつ修飾された抗体治療の利益が、有害作用(例えば、毒性)を下回ることがないヒトである。本明細書に使用される場合、試料は、1つの生物体、特にヒト由来の任意の生物学的試料を意味し、1つ以上の細胞、例えば任意の器官、組織、又は生検試料であって、乳房、肺、消化管、皮膚、子宮頸部、卵巣、前立腺、腎臓、脳、頭部及び頸部などの器官、又は身体の任意の他の器官若しくは組織から除去された試料、並びに、限定されないが、スメア、淡、分泌物、脳脊髄液、胆汁、血液、リンパ液、尿、及び糞便を含む他の身体試料を含む。
本発明の修飾された抗体を含む組成物は、医学実行動規範に合致する方法で処方され、調剤され、投与されるであろう。この文脈において考慮すべき因子としては、治療される特定の疾患又は障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患又は障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医師にとって既知の他の因子が挙げられる。投与される治療的有効量のアンタゴニストは、このように考慮することによって管理されるであろう。
好ましい実施態様では、本発明による修飾された抗体は、ヒト化抗体である。そのような非コンジュゲート抗体の適切な投与量は、例えば、約20mg/m2〜約1000mg/m2の範囲である。一実施態様では、本発明による修飾された抗体の投与量は、非置換の親抗体に現在推奨されている投与量と等しい。一実施態様では、本発明による修飾された抗体の投与量は、非置換の親抗体に現在推奨されている投与量と異なる。一実施態様では、本発明による修飾された抗体の投与量は、非置換の親抗体に現在推奨されている投与量と比較して少ない。一実施態様では、本発明による修飾された抗体の投与量は、非置換の親抗体に現在推奨されている投与量と比較して多い。一実施態様では、本発明による修飾された抗体は、抗体の実質的に375mg/m2未満の1つ以上の用量で患者に投与され、限定されないが、その用量は、約20mg/m2〜約250mg/m2、又は約50mg/m2〜約200mg/m2の範囲である。別の実施態様では、修飾された抗体は、約375mg/m2〜約1000mg/m2の治療的有効量で使用される。
本発明によれば、抗体の1つ以上の初回用量(単数又は複数)に続いて1つ以上の次の用量が投与され、ここで、次の用量(単数又は複数)における抗体のmg/m2用量は、初回用量(単数又は複数)における抗体のmg/m2用量を超える。例えば、初回用量は、約20mg/m2から約250mg/m2の範囲であってもよく、その後の用量は、約250mg/m2から約1000mg/m2の範囲であってもよい。
しかし、本明細書中に記載されるように、修飾された抗体のこれらの示唆された量は、多大な治療上の慎重さを必要とする。適切な用量と日程を選択する際の重要な要因は、本明細書に示されているように、得られた結果である。例えば、進行中及び急性疾患の治療のために、最初は比較的高用量が必要とされる場合がある。最も効果的な結果を得るためには、疾患又は障害に応じて、アンタゴニストは、疾患若しくは障害の最初の徴候、診断、出現、又は発生に可能な限り近くで投与されるか、又は疾患若しくは障害の寛解の間に投与される。
本発明の修飾された抗体は、非経口、皮下、腹腔内、髄腔内、及び鼻腔内、並びに局所免疫抑制治療のために所望される場合は、病巣内投与を含む、任意の適切な手段によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。更に、アンタゴニストは、パルス注入によって、例えば、アンタゴニストの用量を減少させて、適切に投与することができる。好ましくは、投薬は、投与が短時間であるか長期であるかに応じて、注射、最も好ましくは静脈内又は皮下注射によって行われる。
本発明によれば、細胞傷害性剤、化学療法剤、免疫抑制剤及び/又はサイトカインのような他の化合物が本明細書のアンタゴニストとともに投与される。併用投与には、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する共投与、及び何れかの順序での連続投与が含まれ、好ましくは両方の(又は全ての)活性剤がその生物学的活性を同時に発揮する期間がある。
治癒を達成するために必要とされる本発明の組成物の用量は、スケジュールの最適化により更に低減され得ることが明らかであろう。
本発明の実施に従って、薬学的担体は、脂質担体であってもよい。脂質担体はリン脂質であってもよい。更に、脂質担体は脂肪酸であってもよい。また、脂質担体は界面活性剤であってもよい。本明細書で使用される場合、界面活性剤は、液体の表面張力を変化させ、一般にそれを下げる任意の物質である。
本発明の一例では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。非イオン性界面活性剤の例には、ポリソルベート80(Tween 80又はポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとしても知られる)、Brij及びTriton(例えば、Triton WR−1339及びTriton A−20)が含まれる。
あるいは、界面活性剤は、イオン性界面活性剤であってもよい。
更に、本発明によれば、脂質担体はリポソームであってもよい。本出願で使用される場合、「リポソーム」は、本発明の任意の分子又はそれらの組み合わせを含む任意の膜結合小胞である。
例示的な実施態様
本発明による抗体は、親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含み、ADCC及びCDC機能の大きな低減又は消失、ADCP機能の残存、Fc受容体への結合の低減又は消失、C1qへの結合の低減又は消失、及び毒性の低減又は消失をもたらす。従って、以下のような例示的な実施態様が提供される。
1.親非置換重鎖領域に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体重鎖領域を含む抗体であって、親非置換抗体の重鎖領域がアミノ酸残基Asn297及び/又はPro329を含み、前記置換がAsn297Asp及び/又はPro329Glyである、抗体。
2.エフェクター機能の誘導が、親非置換重鎖領域を含む抗体によって誘導されるエフェクター機能と比較して低減される、実施態様1に記載の抗体。
3.抗体がIgG1抗体である、請求項1又は2に記載の抗体。
4.親非置換抗体が、抗CD20抗体である、実施態様1から3の何れか一項に記載の抗体。
5.親非置換抗体が、I型抗CD20抗体である、実施態様1から4の何れか一項に記載の抗体。
6.親非置換抗体が、II型抗CD20抗体である、実施態様1から4の何れか一項に記載の抗体。
7.前記親非置換抗体が、オビヌツズマブである、実施態様1から4、又は6の何れか一項に記載の抗体。
8.前記親非置換抗体が、リツキシマブである、実施態様1から5の何れか一項に記載の抗体。
9.297位のアスパラギン又は329位のプロリンを含む親非置換抗体によるFcγRIIIへの結合と比較して、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRIII結合が消失した、実施態様1から8の何れか一項に記載の抗体。
10.変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるADCC機能が、297位のアスパラギン又は329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるADCC機能と比較して、消失又は大きく低減している、実施態様1から9の何れか一項に記載の抗体。
11.297位のアスパラギン又は329位のプロリンを含む親非置換抗体によるFcγRIへの結合と比較して、変異体重鎖領域を含む抗体によるFcγRI結合が低減した、実施態様1から10の何れか一項に記載の抗体。
12.変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導されるADCP機能が、297位のアスパラギン又は329位のプロリンを含む親非置換抗体によって誘導されるADCP機能と比較して低減しており、変異体重鎖を含む抗体が、残存するADCP機能を保持する、実施態様1から11の何れか一項に記載の抗体。
13.変異体重鎖領域が、親非置換重鎖領域に対して更なるアミノ酸置換を含み、親非置換抗体の重鎖領域がアミノ酸残基Pro151を含み、かつ、前記更なる置換が前記アミノ酸残基Pro151にあり、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、151位のプロリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して変化している、実施態様1から12の何れか一項に記載の抗体。
14.変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、151位のプロリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して増加する、実施態様13に記載の抗体。
15.変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、151位のプロリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して減少する、実施態様13に記載の抗体。
16.Pro151が、アラニン及びフェニルアラニンからなる群より選択されるアミノ酸で置換されている、実施態様13に記載の抗体。
17.Pro151が、フェニルアラニンで置換されている、実施態様13又は14の何れか一項に記載の抗体。
18.Pro151が、アラニンで置換されている、実施態様13又は15の何れか一項に記載の抗体。
19.変異体重鎖領域が、親非置換重鎖領域に対して更なるアミノ酸置換を含み、親非置換抗体の重鎖領域がアミノ酸残基Val11を含み、かつ、前記更なる置換が前記アミノ酸残基Val11にあり、変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、11位のバリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して変化している、実施態様1から18の何れか一項に記載の抗体。
20.変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、11位のバリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して増加する、実施態様19に記載の抗体。
21.変異体重鎖領域を含む抗体によって誘導される直接細胞死が、11位のバリンを含む抗体によって誘導される直接細胞死と比較して減少する、実施態様19に記載の抗体。
22.Val11が、アラニン、グリシン、フェニルアラニン、スレオニン及びトリプトファンからなる群より選択されるアミノ酸で置換されている、実施態様19に記載の抗体。
23.Val11が、フェニルアラニン、スレオニン及びトリプトファンからなる群より選択されるアミノ酸で置換されている、実施態様19又は20に記載の抗体。
24.Val11が、アラニン及びグリシンからなる群より選択されるアミノ酸で置換されている、実施態様19又は21に記載の抗体。
25.抗体がCD20に特異的に結合する、実施態様1から24の何れか一項に記載の抗体。
26.抗体が、スキャッチャード分析によって決定されるように、10nM以下の、細胞に対する解離定数(Kd)でCD20に結合する、実施態様1から25の何れか一項に記載の抗体。
27.実施態様1から26の何れか一項に記載の抗体の変異体重鎖領域をコードするポリヌクレオチド。
28.実施態様1から26の何れか一項に記載の抗体の軽鎖領域をコードするポリヌクレオチド。
29.実施態様27及び28に記載のポリヌクレオチドの少なくとも1つを含むベクター。
30.ポリシストロニックである実施態様29に記載のベクター。
31.実施態様29及び30に記載のベクターの1つ、又は実施態様27及び28に記載のポリヌクレオチドの少なくとも1つを含む宿主細胞。
32.(i)前記少なくとも1つのポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で、実施態様30に記載の宿主細胞を培養すること;及び(ii)培養培地から前記抗体を回収することを含む、実施態様1から26の何れか一項に記載の抗体の製造方法。
33.実施態様1から26の何れか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
34.医薬としての使用のための、実施態様1から26の何れか一項に記載の抗体。
35.増殖性障害及び自己免疫疾患からなる群より選択される疾患の治療における使用のための、実施態様1から26の何れか一項に記載の抗体。
36.前記増殖性障害が、CD20発現がんであることを特徴とする、実施態様35に記載の使用のための抗体。
37.前記がんが、リンパ腫及びリンパ性白血病からなる群より選択されることを特徴とする、実施態様36に記載の使用のための抗体。
38.前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、シェーグレン症候群及び移植拒絶反応からなる群より選択される、実施態様35に記載の使用のための抗体。
39.実施態様1から26の何れか一項に記載の抗体の有効量を個体に投与することを含む、増殖性障害及び自己免疫疾患からなる群より選択される疾患を治療するための方法。
40.前記増殖性障害が、CD20発現がんであることを特徴とする、実施態様39に記載の方法。
41.前記がんが、リンパ腫及びリンパ性白血病からなる群より選択されることを特徴とする、実施態様40に記載の方法。
42.前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、シェーグレン症候群及び移植拒絶反応からなる群より選択される、実施態様39に記載の方法。
43.医薬の製造のための、実施態様1から26の何れか一項に記載の抗体の使用。
44.医薬が、増殖性障害及び自己免疫疾患からなる群より選択される疾患を治療するためである、実施態様43に記載の使用。
45.前記増殖性障害が、CD20発現がんであることを特徴とする、実施態様44に記載の使用。
46.前記がんが、リンパ腫及びリンパ性白血病からなる群より選択されることを特徴とする、実施態様45に記載の使用。
47.前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、シェーグレン症候群及び移植拒絶反応からなる群より選択される、実施態様44に記載の使用。
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明する。以下の調製物及び実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施できるようにするために与えられる。しかしながら、本発明は、本発明の単なる態様の例示として意図された例示的な実施形態によって範囲が限定されず、機能的に等価な方法も本発明の範囲内である。実際、本明細書に開示されたものに加えて、本発明の様々な修飾は、前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。このような修正は、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
以下は本発明の方法及び組成物の実施例である。上に提供された一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施され得ることが理解される。
実施例1
抗体
下記の実験では、CD20に対する抗体(オビヌツズマブ(GA101)、推奨INN、WHO Drug Information, Vol. 26, No. 4, 2012, p. 453及びリツキシマブ、米国特許第7,381,560号及び欧州特許第2000149(B1)号)を使用した。本明細書に開示される全ての変異体、例えば、オビヌツズマブ P329G L234A L235A、オビヌツズマブ N297D、リツキシマブ P329G L234A L235A及びリツキシマブN297Dは、PCRに基づく突然変異誘発を用いて生成された。IgG分子をHEK−EBNA又はHEK293系において発現させ、プロテインA及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。
実施例2
オビヌツズマブ及びリツキシマブFc変異体による腫瘍標的の細胞死誘導
CD20発現マントル細胞リンパ腫(Z−138)を用いて、オビヌツズマブ及びリツキシマブ変異体による細胞死の誘導を試験した。簡潔には、細胞は採取され、計数され、生存率をチェックされて、RPMI1640+10%FCS+1%Glutamax中に、1mlあたり0.526×106個の細胞で再懸濁された。190μlの細胞懸濁液(0.1×106個の細胞を含む)を、丸底96ウェルプレート中、37℃、5%CO2で20時間〜24時間、細胞インキュベーター中で、異なる濃度のオビヌツズマブ又はリツキシマブFc変異体(16ng/ml〜10μg/ml)とともにインキュベートした。最終体積は200μl/ウェルであった。その後、細胞をAnnexin V結合緩衝液(10mMのHEPES/NAOH pH7.4、140mMのNaCl、2.5mMのCaCl2)で1回洗浄し、100μl/ウェルのAnnexin V FLUOS(Roche#11828681001、Annexin V結合緩衝液で1:75に予め希釈したもの)とともに、暗所で4℃で30分間インキュベートした。細胞を80μl/ウェルのAnnexin V結合緩衝液の添加により洗浄し、予め希釈したPI溶液(Sigma Aldrich#P4864,1:4000)の添加後、FACS CantoII(ソフトウェアFACS Diva)を用いてFACSにより直ちに分析した。
図1は、異なるオビヌスツズマブ又はリツキシマブFc変異体の存在下でのアネキシンV結合並びにPI染色によって測定した、Z−138上のホスファチジルセリン表面発現の誘導を示す。全てのオビヌツズマブ変異体は、21時間のインキュベーション中にZ−138の有意な細胞死を誘導したが、一方全てのリツキシマブ変異体は、選択された条件下ではほとんど細胞死を誘導しなかった。細胞死の誘導は、抗体のFc部分とは無関係であった。高抗体濃度でのみ、オビヌツズマブ P329G L234A L235A及びオビヌツズマブN297Dは、オビヌツズマブ WT及びGEよりわずかに劣っているようであった。
実施例3
オビヌツズマブ及びリツキシマブFc変異体によるADCC誘導
オビヌツズマブ及びリツキシマブFc変異体によって媒介されるCD20発現腫瘍細胞の溶解及びその後のNK細胞活性化を、Z−138細胞(マントル細胞リンパ腫)及びSU−DHL−4(B−NH)について評価した。ヒトPBMCをエフェクターとして使用し、腫瘍細胞溶解を、異なる抗CD20抗体との4時間のインキュベーション後に検出した。簡潔には、標的細胞を採取し、洗浄し、丸底96ウェルプレートを用いて30,000細胞/ウェルの密度で播種した。末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なヒトドナーから得られた新鮮な血液のHistopaque密度遠心分離によって調製した。新鮮な血液を滅菌PBSで希釈し、Histopaqueグラジエント上に重層した(Sigma、10771)。遠心分離(450×g、30分、室温、ブレーキなし)の後、PBMC含有中間層より上の血漿を捨て、続いてPBMCを新たなファルコン管に移し、その後50mlのPBSで満たした。混合物を遠心分離(350×g、10分間、室温)し、上清を捨て、PBMCペレットを滅菌PBSで2回洗浄した(遠心分離行程は300×g、10分間)。得られたPBMC集団を自動的に計数し(ViCell)、12.5又は15×106細胞/mlでAIM Vに再懸濁した。ADCCについては、指示された濃度で抗体を添加した(0.01ng/ml〜1000ng/mlの範囲で3重に)。更に、抗CD107a(PE抗ヒトCD107a、Biolegend#328608)をアッセイに直接添加した。PBMCを最終的なE:T比が21:1又は25:1で標的細胞に添加した。標的細胞の溶解を、37℃、5%CO2での4時間のインキュベーションの後に、アポトーシス/壊死細胞により細胞上清中に放出されたLDHの定量化(LDH検出キット、Roche Applied Science、#11644793001)により評価した。標的細胞の最大溶解(=100%)が、1%のTriton X−100を用いた標的細胞のインキュベーションにより達成された。最小溶解(=0%)は、抗体なしでエフェクター細胞と共にインキュベートした標的細胞を指す。ADCCの際に生じるNK細胞活性化の評価のために、細胞を400xgで4分間遠心分離し、FACS緩衝液(2%FCS+5mMEDTA+0.25%アジ化ナトリウムを含有するPBS)で2回洗浄した。CD3(PECy7抗ヒトCD3、Biolegend#300420)及びCD56(APC抗ヒトCD56、Biolegend#318310)の表面染色を供給者の指示に従って行った。細胞を150μl/ウェルのFACS緩衝液で2回洗浄し、150μl/ウェルのFACS溶解溶液(BD#349202)を用いて固定した。試料をBD FACS CantoIIを用いて分析した。
図2A及びBは、オビヌツズマブ及びリツキシマブGE抗体が、CD20+標的細胞の強い標的特異的死滅を誘導したことを示している。オビヌツズマブ GEはリツキシマブGEよりも優れており、両方の抗体は、オビヌツズマブ及びリツキシマブのWT Fc変異体よりも優れていた。また、WT Fc変異体として、オビヌツズマブはリツキシマブより優れていた。オビヌツズマブ若しくはリツキシマブのN297D又はP329G L234A L235A Fc変異体は、標的としてZ−138又はSU−DHL−4を用いた検出可能な腫瘍細胞溶解を誘導しなかった。フローサイトメトリーによるNK細胞脱顆粒の分析は、試験したFc変異体のデータ及び活性を確認した(図2C、D)。オビヌツズマブ及びリツキシマブGE抗体は、NK細胞上でのCD107a発現によって測定されるように、強い脱顆粒を誘導した。オビヌツズマブGEはリツキシマブGEよりも優れており、両方の抗体は、オビヌツズマブ及びリツキシマブのWT Fc変異体よりも優れていた。また、WT Fc変異体として、オビヌツズマブはリツキシマブより優れていた。オビヌツズマブ若しくはリツキシマブのN297D又はP329G L234A L235A Fc変異体は、検出可能なCD107a発現を誘導しなかった。
実施例4
オビヌツズマブ及びリツキシマブFc変異体によるCDC誘導
オビヌツズマブ及びリツキシマブFc変異体によって媒介されるCD20発現腫瘍細胞のCDC依存性溶解の誘導を、Z−138細胞及びSU−DHL−4について評価した。ウサギ補体(低毒性ウサギ補体、Cedarlane Laboratories Limited#CL3051)を補体として使用し、腫瘍細胞溶解を、異なる抗CD20抗体とのインキュベーションの2時間又は24時間後に検出した。簡潔には、標的細胞を採取し、洗浄し、丸底96ウェルプレートを用いて50,000細胞/ウェルの密度で蒔いた。CDCについては、50μl/ウェルにおいて示された濃度(0.01μg/ml〜100μg/mlで3重に)で抗体を添加し、細胞と共に室温で10分間インキュベートした。一方、補体を1mlのCedarlane細胞傷害性培地(Cedarlane Laboratories Limited #CL95100)及び2mlのAIM V(バイアルあたり)に溶解した。調製した補体50μl/ウェルを細胞に添加した。標的細胞の溶解を、37℃、5%CO2での2時間のインキュベーションの後に、アポトーシス/壊死細胞により細胞上清中に放出されたLDHの定量化(LDH検出キット、Roche Applied Science、#11644793001)により評価した。35μl/ウェルのAlamarBlue(Biosource#DAL1100)を添加した後、細胞を37℃及び5%CO2で更に22時間インキュベートした。Wallac Victor3 1420 Multilabel Counter(励起584nm、放出612nM)を用いて、腫瘍細胞生存率を測定した。標的細胞の最大溶解(=100%)が、1%のTriton X−100を用いた標的細胞のインキュベーションにより達成された。最小溶解(=0%)は、抗体なしでCDCと共にインキュベートした標的細胞を指す。
図3A〜Dは、リツキシマブGE及びWT抗体が、CD20+標的細胞の強力かつ標的特異的な死滅を2時間及び22時間後に誘導したことを示す。オビヌツズマブGE及びWT Fc変異体もまたCDCを誘導したが、リツキシマブGE及びWTに比べて有意に劣っていた。オビヌツズマブ若しくはリツキシマブのN297D又はP329G LALA Fc変異体は、標的としてZ−138又はSU−DHL−4を用いた検出可能な腫瘍細胞溶解を誘導しなかった。
実施例5
オビヌツズマブ又はリツキシマブFc変異体により媒介されるヒトの全血におけるB細胞枯渇
オビヌツズマブ又はリツキシマブFc変異体によって媒介される正常なB細胞枯渇も、健常なボランティアからの新鮮なヘパリン添加ヒト血液を用いて評価した。簡潔に述べると、新鮮な血液をヘパリン含有注射器に採取した。血液アリコート(190μL/ウェル)を96ディープウェルプレートに入れ、オビヌツズマブ又はリツキシマブIgG変異体希釈物を補充し(0.1μg/ml〜1000ng/mlの範囲で10μL/ウェル)、加湿した細胞インキュベーター中、37℃及び5%CO2で20時間〜24時間インキュベートした。インキュベーション後、血液を上下にピペッティングして混合し、35μL/ウェルの血液アリコートを96丸底プレートに移し、フローサイトメトリー用に総量55μLで、蛍光抗CD45(APC抗ヒトCD45、BD#555485)、抗CD19(PE抗ヒトCD19、Biolegend#302208)及び抗CD3(PE/Cy7抗ヒトCD3、Biolegend#300420)と共にインキュベートした。室温(暗所)で15分間インキュベートした後、200μL/ウェルのFACS溶解溶液(BD#349202)を添加して赤血球を枯渇させ、BD FACSCantoIIを用いたフローサイトメトリーの前に細胞を固定した。
図4A(ドナー1)及びB(ドナー2)は、オビヌツズマブ及びリツキシマブGE抗体が、健常なヒト全血においてCD20+/CD19+ B細胞の強い死滅を誘導したことを示す。オビヌツズマブ GEはリツキシマブGEよりも優れており、両方の抗体は、オビヌツズマブ及びリツキシマブのWT Fc変異体よりも優れていた。また、WT Fc変異体として、オビヌツズマブはリツキシマブより優れていた。オビヌツズマブN297D及びP329G L234A L235A Fc変異体はまた、オビヌツズマブによって媒介されるFc非依存性直接細胞死効果に起因する、いくらかのB細胞枯渇を誘導した。それとは対照的に、リツキシマブN297D及びP329G L234A L235A Fc変異体は、検出可能なB細胞枯渇を誘導しなかった。I型CD20バインダーとして、実施例2に示すように、リツキシマブは、オビヌツズマブと比較してわずかな直接細胞死の誘導しか誘導しなかった。表2は、GraphPad Prismで計算した対応するEC50値を示す。
実施例6
オビヌツズマブ及びリツキシマブFc変異体によるADCP誘導
オビヌツズマブ及びリツキシマブFc変異体によって媒介される単球由来マクロファージ(M1又はM2c)によるCD20発現腫瘍細胞の抗体依存性食作用(ADCP)を、Z−138細胞(マントル細胞リンパ腫)及びSU−DHL−4(B−NH)について評価した。パン単球をヒトPBMCから単離し(PBMC単離は実施例3を参照)、30ng/mlのM−CSFを用いて7日間でマクロファージに分化させ、続いて10ng/mlのIL−10と2日間インキュベートし、M2cマクロファージを生成し、又は100ng/mlのIFNg+100ng/mlのLPSと1日間インキュベートし、M1マクロファージを生成した。分化したM1及びM2cマクロファージを、製造業者の指示に従ってPKH26(Sigma Aldrich)で標識し、エフェクターとして使用し、異なる抗CD20抗体との4時間のインキュベーション後に食作用を検出した。簡単には、標的細胞を採取し、洗浄し、2μMのCFSE(Sigma Aldrich)で標識し、次いで96ウェルUpCellプレートを用いて30,000細胞/ウェルの密度で蒔いた。ADCPについては、10mg/mlのRedimune(Behring)の存在下又は非存在下で、抗体を50ng/ml又は1000ng/mlで3重に添加した。PKH26標識M1又はM2cマクロファージを最終E:T比3:1で標的細胞に添加した。ADCPは、BD FACS CantoIIを用いたフローサイトメトリーにおいてCFSE−PKH26−二重陽性細胞を分析することにより、37℃及び5%CO2での4時間のインキュベーション後に評価した。
図5A〜Dは、10mg/mlの非特異的ヒトIgG(Redimune)の存在下で、SU−DHL−4又はZ−138をM1又はM2cマクロファージとともに4時間インキュベートした後のADCPを示す。M1及びM2cマクロファージは、選択した条件下で同等の食作用を働いた。4時間後、SUDHL4の食作用は、Z−138と比較して1000ng/mlの抗CD20抗体の存在下で有意に高かった。オビヌツズマブWT及びN297Dは、SU−DHL−4及びZ−138を使用して、有意で同等の食作用を誘導した。オビヌツズマブ GEは、10mg/mlのRedimuneの存在下で、オビヌツズマブWT及びN297Dと比較して、エフェクターとしてM2cを用いて、主にCD20+ SU−DHL−4標的細胞のわずかに強い食作用を誘導した。
実施例7
II型抗CD20抗体であるオビヌツズマブ(GA101)、I型抗CD20抗体であるリツキシマブ及びオビヌツズマブ変異体GA101 P329G L234A L235A及びGA101アグリコ(N297D)の抗腫瘍活性
試験薬剤
抗体は、ヒスチジン緩衝液中でRoche Glycart AG、Schlieren、Switzerlandからストック溶液として提供された。抗体を、in−vivo適用の前に0.9%NaCl溶液で希釈した。
細胞株及び培養条件
ヒトSU−DHL−4リンパ腫細胞株を、10%ウシ胎児血清(PAA Laboratories、Austria)及び2mMのL−グルタミンを補充したRPMI 1640中、37℃、5%CO2の水飽和空気中で培養した。in−vivo異種移植実験のために、細胞にマトリゲルを同時注入した。
動物
到着時に5〜6週齢の雌SCIDbeigeマウス(Charles River、Sulzfeld、Germanyから購入)を動物施設の隔離部分で1週間維持し、その後ガイドライン(GV−Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明/12時間暗の毎日のサイクルで特定の病原体を含まない条件下で維持した。Rocheと地方自治体が実験的研究プロトコールをレビューし承認した(Regierung von Oberbayern、登録番号55.2−1−54−2531.2−26−09)。規制食(KLIBA NAFAG 3807)及び水(濾過)は自由に与えられた。
SCID beigeマウスにおけるSC SU−DHL−4腫瘍の誘導
雌のSCIDbeigeマウスの右脇腹に、マトリゲル(50:50、BD Biosciences、France)を含む100μlのPBS中の5百万個(5×106)のSU−DHL−4腫瘍細胞を皮下注射した。
モニタリング
動物は、臨床症状及び副作用の検出のために毎日モニターされた。実験の間、動物の体重を週に2回確認し、腫瘍体積をノギスで測定した。
動物の治療
動物の治療は、腫瘍細胞接種の21日後の無作為化の日に開始された。ヒト化II型抗CD20抗体オビヌツズマブ(GA101)、リツキシマブ、GA101 P329G L234A L235A及びオビヌツズマブN297Dを、単剤として腹腔内に(i.p.)q7dで4週間週1回(21、28、35及び42日目)、30mg/kgの投与量で投与した。対応するビヒクルを同じ日に投与した。
49日目の腫瘍増殖阻害(TGI)
GA101 P329G L234A L235A、リツキシマブ又はオビヌツズマブN297Dを用いた単独療法は、それぞれ62%、71%又は93%の腫瘍増殖阻害をもたらした(中央値に基づく)。オビヌツズマブ治療は、腫瘍細胞接種後49日目に腫瘍退縮(TGI>100%)を示した。
49日目のノンパラメトリックな治療対コントロール比(TCRnpar)
腫瘍細胞接種後49日目の統計学的有意性を評価するために、ノンパラメトリックな治療対コントロール比(TCRnpar)及び両側ノンパラメトリック信頼区間(CI)をベースライン補正データに基づいて比によって計算した。各治療は、コントロール群と比較して統計学的に有意であった。
実施例8
FcγRI SPRアッセイ
捕捉されたFcγRI及びIgG1 Fc変異体のSPR相互作用分析は、高固定化抗His捕捉抗体(GE Healthcare)を備えたBiacore T100システム(GE Healthcare)で行った。抗His捕捉抗体の固定は、pH4.5の10mMの酢酸ナトリウム及び10μg/mlの抗His溶液中で、標準的アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いてCM5チップ上で行った。抗Hisの固定化レベルは10.000RU以上に達した。FcγRIを、ランニング緩衝液HBS−P+中で、100nMの溶液で適用し、毎分30μlの流速で60秒のパルスで捕捉した。続いて、GA101 N297DをHBS−P+中で1000〜62.5nMの段階希釈で、毎分30μlの流速で60秒間適用した。解離相を180秒間モニターした。表面を、10mMグリシンpH1.5を用いて30mM/分の流速で60秒間の洗浄工程によって再生した。安定化期間は60秒を要した。Biacore T100評価ソフトウェアをデータ分析に使用した。
FcγRI SPRアッセイの定常状態評価
定常状態親和性濃度決定のために、会合の終了からの応答値を使用して、濃度に対する応答をプロットした。Biacore T100評価ソフトウェアを用いて、プロットからの固定化FcγRI受容体に対する試料の親和性を計算した。
野性型IgG1(ハーセプチンWT)分子及びIgG4SPLE分子(P−セレクチン)と比較した、GA101 N297DのFcγRIとの相互作用の測定は、明確な結合順序を示した(図7A)。200nMの抗体濃度で測定して、IgG1 WTは、250応答単位(RU)までの最高の相互作用シグナルを示し、GA101 N297Dは150のRUシグナルを表示し、一方P−セレクチンは25応答単位の非常に低い結合シグナルしか示さなかった(図7B)。IgG1 Wt抗体は、ナノモル範囲の親和性でFcγRIに結合することが知られている。GA101 N297Dの親和性を決定するために、定常状態親和性決定を行った。親和性は、234nMとして測定され(図7C)、これはIgG1 Wt親和性より約50倍低いが、IgG4SPLE FcγRI結合の低減と比較して著しく強く、特定の親和性を決定することができない。
実施例9
FcγRIII SPRアッセイ
捕捉されたFcγRIIIA及びIgG1 Fc変異体のSPR相互作用分析は、高固定化抗His捕捉抗体(GE Healthcare)を備えたBiacore T100システム(GE Healthcare)で行った。抗His捕捉抗体の固定は、pH4.5の10mMの酢酸ナトリウム及び10μg/mlの抗His溶液中で、標準的アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いてCM5チップ上で行った。抗Hisの固定化レベルは10.000RU以上に達した。FcγRIIIAを、ランニング緩衝液HBS−P+中で、200nMの溶液で適用し、毎分30μlの流速で60秒のパルスで捕捉した。続いて、GA101 N297DをHBS−P+中で1000〜62.5nMの段階希釈で、毎分30μlの流速で60秒間適用した。解離相を180秒間モニターした。表面を、10mMグリシンpH1.5を用いて30mM/分の流速で60秒間の洗浄工程によって再生した。安定化期間は60秒を要した。Biacore T100評価ソフトウェアをデータ分析に使用した。
GA101 N297Dの時間分解結合測定は、ハーセプチンWT IgG1分子とは対照的に、FcγRIIIAとの測定可能な相互作用を示さなかった(図8A)。類似の定常状態親和性決定実験を実施すると、明確な濃度依存性結合シグナルは測定できなかった。1μMの最高濃度は5のRU値のみを示し、相互作用の飽和は観察されなかった(図8B)。結果として、可飽和性相互作用は、関連する相互作用シグナルも示さなかった、IgG4 SPLEコントロールの親和性と同等に、SPRによって決定され得る値(高μM範囲)よりも低かった(図8A)。
実施例10
SPR FcγR捕捉セットアップ(図7D、8C、9A、9B)
捕捉されたFcγRs(FcγRIa、FcγRIIa(R131)及びFcγRIIa(H131)、FcγRIIIa(V158))及びIgG1 Fc変異体のSPR相互作用分析は、高固定化抗His捕捉抗体(GE Healthcare)を備えたBiacore T200システム(GE Healthcare)で行った。抗His捕捉抗体の固定は、pH4.5の10mMの酢酸ナトリウム及び10μg/mlの抗His溶液中で、標準的アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いてCM5チップ上で行った。抗Hisの固定化レベルは>10000RUに達した。FcγRは、ランニング緩衝液HBS−P+を用いてそれぞれ100nMの溶液として調製し、流速30μl/分で60秒のパルスで捕捉した。続いて、IgG1 Fc hisタグ付き変異体を、HBS−P+中で100nMの濃度で、流速30μl/分で60秒間適用した。解離相を180秒間モニターした。表面を、10mMのグリシンpH1.5を用いて30μl/分の流速で60秒の洗浄工程によって再生した。安定化期間は60秒に設定した。Biacore T200評価ソフトウェアをデータ分析に使用した。
実施例11
熱安定性
融解温度Tmを、Optim1000装置(Avacta Analytical Inc.)を用いて内因性トリプトファン蛍光を記録することにより評価した。試料を、20mMヒスチジンクロライド、140mMのNaCl、pH6.0中で約1mg/mLで調製し、9μLマルチキュベットアレイに移した。マルチキュベットアレイを0.1℃/分の一定速度で30℃から90℃に加熱した。本装置は、励起後の蛍光発光スペクトルを266nmレーザーで連続的に記録し、約0.6℃毎にデータポイントを提供する。融解温度Tmは、蛍光強度を温度に対してプロットすることによって決定され、Tmは、これらの曲線における変曲点として定義される。
両方のN297D変異体は、それぞれのP329G変異体に比べて6℃低い凝集温度を示す(図13)。更に、脱グリコシル化されたN297D変異体の融解温度は、より安定なP329G変異体よりも低い。P329Gはより高い温度で活性なコンフォメーションにとどまり、より良好な構造的完全性を示す。