本発明は、間葉系幹細胞表現型及び筋細胞表現型を有する細胞と、この細胞から分泌される細胞外小胞と、この細胞を含む医薬組成物と、この細胞を投与することを含む治療方法とを提供する。
混合特性の細胞
一態様によると、本発明は、間葉系幹細胞(MSC)表現型と筋細胞表現型を示す混合特性の単離細胞に関する。
本明細書で使用される「間葉系幹細胞」又は「MSC」という用語は、骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨芽細胞、骨格筋細胞及び内皮細胞に分化する能力を有する多能性間質幹細胞を意味する。MSCは、組織の中でも特に、骨髄、脂肪組織、末梢血、絨毛膜胎盤、羊膜胎盤、臍帯血及び歯髄に存在する。「多能性」という用語は、多くの細胞型を生じさせることができる幹細胞を意味する。
ある実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。ある実施形態では、細胞はヒト細胞である。ある実施形態では、細胞は獣医学的動物細胞等の動物細胞である。ある実施形態では、獣医学的動物はネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ及びヤギから選択される。ある実施形態では、細胞は筋肉関連疾患又は筋損傷の治療を必要とする対象に対して同種異系である。ある実施形態では、細胞は筋疾患又は筋損傷の治療を必要とする対象に対して自家性である。
ある実施形態では、混合特性の細胞はプライム細胞である。本明細書中で使用される「プライム細胞」とは、筋細胞への分化プロセスを開始したが、そのプロセスにおいて非常に初期の細胞を意味する。このような細胞はMyoDを発現する。ある実施形態では、筋細胞は平滑筋細胞、骨格筋細胞又は衛星細胞である。
ある実施形態では、プライム細胞は脱分化MSCである。ある実施形態では、脱分化MSCはSOX2、NANOG、OCT4及びKLF4の内の少なくとも1種を発現する。ある実施形態では、脱分化MSCは、SOX2、NANOG、OCT4及びKLF4の内の少なくとも1種を未処理MSCで発現されるレベルよりも高いレベルで発現する。ある実施形態では、脱分化MSCはSOX2、NANOG、OCT4及びKLF4の複数を発現する。ある実施形態では、脱分化MSCは骨、脂肪又は腱に全く分化しないか、又は十分には分化しない。ある実施形態では、脱分化MSCは未処理MSCよりも低い割合で骨、脂肪又は腱に分化する。ある実施形態では、脱分化MSCは、未処理MSCの分化と比べて0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05又は0.01未満の割合で骨、脂肪又は腱に分化する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。
ある実施形態では、混合特性の細胞はハイブリッド細胞である。本明細書で使用される「ハイブリッド細胞」とは、2種の異なる細胞型(例えば、MSCと筋細胞)の質、特性、発現プロファイル又は表現型を有する細胞を意味する。これは2個の別々の細胞が融合して生成した物理的ハイブリッドを意味するものではない。本明細書においては、ハイブリッド細胞は分化が完了していない筋細胞に分化したMSCである。ある実施形態では、ハイブリッド細胞はプライム細胞よりも筋細胞に更に分化する。
ある実施形態では、MSC表現型は、CD73、CD105、CD90、CD44及びCD146から成る群から選択される少なくとも1種の表面マーカーの発現を含む。ある実施形態では、MSC表現型は、CD73、CD105、CD90、CD44及びCD146から成る群から選択される複数の表面マーカーの発現を含む。ある実施形態では、MSC表現型はIL−10の発現を含む。ある実施形態では、MSC表現型は主要組織適合遺伝子複合体タンパク質II(MHCII)の発現が欠如している。ある実施形態では、MSC表現型は、CD73、CD105、CD90、CD146及びCD44から成る群から選択される少なくとも1種の発現マーカーの発現を含み、MHCIIの発現が欠如している。ある実施形態では、MSC表現型は、CD73、CD105、CD90、CD146及びCD44から成る群から選択される複数の発現マーカーの発現を含み、MHCIIの発現が欠如している。
本明細書で使用される「発現」という用語は、遺伝子産物の生合成、例えば、前記遺伝子産物の転写及び/又は翻訳を意味する。従って、核酸分子の発現とは、核酸断片の転写(例えば、mRNA又は他の機能性RNAをもたらす転写)及び/又はRNAの前駆体又は成熟タンパク質(ポリペプチド)への翻訳を意味し得る。ある実施形態では、発現マーカーはRNAの発現を意味する。ある実施形態では、発現マーカーはタンパク質の発現を意味する。ある実施形態では、表面発現マーカーは細胞表面又は細胞の細胞膜内でのタンパク質の発現を意味する。
ある実施形態では、MSC表現型は抗炎症能力を含む。ある実施形態では、本明細書に記載のMSCは抗炎症性細胞である。ある実施形態では、MSC表現型は炎症を抑制する能力を含む。ある実施形態では、MSC表現型は抗炎症性サイトカインの分泌を含む。抗炎症性サイトカインは当業者に周知であり、その例としてはIL−10、IL−4、IL−13、及びトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施形態では、MSC表現型は炎症、傷害又は疾患の部位に帰着する能力を含む。
ある実施形態では、MSC表現型は免疫調節能力を含む。ある実施形態では、MSC表現型は対象の免疫系を調節する能力を含む。ある実施形態では、MSC表現型は免疫抑制能力を含む。ある実施形態では、MSC表現型は対象の免疫系を抑制する能力を含む。ある実施形態では、MSC表現型はT細胞の活性化を抑制する能力を含む。
ある実施形態では、MSC表現型は炎症、傷害又は疾患の部位に帰着する能力を含む。
MSC表現型を検出及び決定する方法は当業者に既知である。その方法としては、FACSやウエスタンブロット等のアッセイによるMSC表面マーカーの染色が挙げられるが、これに限定されない。この検出及び決定を行うために数種の市販キットが利用可能であり、その例としては、ヒト及びマウス間葉系幹細胞IDキット(R&D Systems)、MSC表現型決定キット、ヒト(Miltenyi Biotech)及びBD Stemflow hMSC分析キット(BD Biosciences)が挙げられる。他の方法としては、分泌された炎症促進性サイトカイン及び抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−10、TNFα、IL−13及びTGFβが挙げられるが、これらに限定されない)の測定、当技術分野で周知のホーミングアッセイを用いた細胞ホーミングの測定、MSC転写因子のmRNA発現の検出及び測定が挙げられる。
ある実施形態では、筋細胞表現型は、MyoD、Myf6、Myf5、MRF4、ITGA7、GFF11、オステオプロテゲリン、イリシン、ジストロフィン、ミオシン重鎖、ミオゲニン、PAX7、TALNEC2、C−MET、G−CSF、オステオプロテゲリン、IL−10及びMEF2Aの内の少なくとも1種の発現を含む。ある実施形態では、筋細胞表現型は、MyoD、Myf6、Myf5、MRF4、ITGA7、オステオプロテゲリン、イリシン、ジストロフィン、ミオシン重鎖、ミオゲニン、PAX7、TALNEC2、C−MET、G−CSF、オステオプロテゲリン、IL−10及びMEF2Aの内の複数種の発現を含む。ある実施形態では、筋細胞表現型は、MyoD、Myf6、Myf5、MRF4、ITGA7、オステオプロテゲリン、イリシン、ジストロフィン、ミオシン重鎖、ミオゲニン、PAX7、TALNEC2、C−MET、G−CSF、オステオプロテゲリン、IL−10及びMEF2Aから成る群から選択される少なくとも1種の発現マーカーの発現を含み、オステオカルシン、PPARG3及びCOL2A1の発現が欠如している。ある実施形態では、筋細胞表現型は、MyoD、Myf6、Myf5、MRF4、ITGA7、オステオプロテゲリン、イリシン、ジストロフィン、ミオシン重鎖、ミオゲニン、PAX7、TALNEC2、C−MET、G−CSF、オステオプロテゲリン、IL−10及びMEF2Aから成る群から選択される複数種の発現マーカーの発現を含み、オステオカルシン、PPARG3及びCOL2A1の発現が欠如している。
ある実施形態では、上述の筋肉発現マーカーは未分化MSCで発現するレベルよりも高いレベルで発現する。ある実施形態では、未分化MSCで発現するレベルより少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍高いレベルで発現する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。
ある実施形態では、筋細胞表現型は筋シンシチウムと融合する能力を含む。ある実施形態では、筋細胞表現型は筋管のサイズ又は直径を増加させる能力を含む。ある実施形態では、筋細胞表現型は筋再生である。ある実施形態では、筋細胞表現型は傷害又は損傷後に筋組織を再生する能力である。ある実施形態では、筋細胞表現型は新しい筋線維を生成する能力である。
ある実施形態では、筋細胞表現型は衛星細胞表現型である。ある実施形態では、筋細胞表現型は平滑筋表現型である。ある実施形態では、筋細胞表現型は骨格筋表現型である。ある実施形態では、筋細胞表現型は心筋表現型である。
筋細胞表現型を検出及び決定する方法は当業者に既知である。その方法としては、筋タンパク質の染色、例えば、ウエスタンブロット、FACS又はELISAによる染色、筋細胞転写因子及びタンパク質を検出及び定量するための定量的PCR、筋シンシチウムとの融合のアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。筋融合のアッセイは当技術分野で周知であり、2種の蛍光タグを用いて色の混合を探すことができる。
細胞の生成
プロトコルA:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCを筋細胞、筋細胞の馴化培地、又は筋細胞の細胞外小胞と共培養して行う。
プロトコルB:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、NANOG、SOX2、KLF4、OCT4又はこれらの組み合わせの内のいずれか1種をMSCに導入して行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCにNanogを導入して行う。
プロトコルC:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCを5−アザシチジン(5−AZA)と共にインキュベートして行う。
プロトコルD:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCをa)ROCK阻害剤及びb)酸性培地又は低酸素と共にインキュベートして行う。
プロトコルE:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、酸性培地、低酸素、低接着プレート、FGF又はEGFを補充した低血清培地、ROCK阻害剤、STAT3活性化剤、NF−KB活性化剤、CHIR99021、メトホルミン、トラニルシプロミン、Gsk3阻害剤、3−デアザネプラノシンA、mTor阻害剤、TGFβ阻害剤、チアゾビビン、A83−01、LiCl、SB431542、5−AZA、ラパマイシン、ERK活性化剤及びバルプロ酸から成る群から選択される小分子を含む培地、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種でMSCを培養して行う。
プロトコル1:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCを用意し、酸性培地、ROCK阻害剤及び5−AZAの内の少なくとも1種とMSCを接触させ、HGF又はPDGFβをMSCに導入し、PCAT1とNEAT1をMSCに導入して行うことができる。
プロトコル2:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCを用意し、酸性培地、ROCK阻害剤及び5−AZAの内の少なくとも1種とMSCを接触させ、HGF又はPDGFβをMSCに導入し、GAS5とPTENP1の発現阻害剤をMSCに導入して行うことができる。
プロトコル3:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCを用意し、酸性培地、ROCK阻害剤及び5−AZAの内の少なくとも1種とMSCを接触させ、PDGFAA、PDGFBB、EGF、VEGF、TGFβ及びIGF1から成る群から選択される少なくとも1種の増殖因子をMSCに導入して行う。
プロトコル4:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MYF5、PAX3、PAX7、ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィン、MyoDとPAX3、MyoDとPAX7、及びMyoDとMYF5から成る群から選択される少なくとも1種の転写因子をMSCに導入して行う。
プロトコル5:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCを用意し、酸性培地、ROCK阻害剤及び5−AZAの内の少なくとも1種とMSCを接触させ、BIL、PAR5、BIC、DISC2、GAS5DLG2AS、7SK、Y1、LINCRNA、PCAT−1、SFMBT2、Y4、SCA8、MALAT1、MEG3、NEAT1、EGO、GAS5、KRASP1、LOC28519、BC200及びH19から成る群から選択される少なくとも1種の長い非コードRNA(lncRNA)をMSCに導入して行う。ある実施形態では、少なくとも1種のlncRNAは、PAR5、DISC2及びPCAT1から選択される。
プロトコル6:ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCを用意し、酸性培地、ROCK阻害剤及び5−AZAの内の少なくとも1種とMSCを接触させ、miR−10b、miR−22、miR−122、miR−125a、miR−140−5p、miR−143、miR−145、miR−146a、miR−148b、miR−150、miR−155、miR−181b、miR−215、miR−296、miR−330、miR−370、miR−429、miR−520、miR−524、miR−543、miR−550、miR−561、miR−564、miR−582、miR−583、miR−587、miR−613、miR−614、miR−629、miR−634、miR−645、miR−646、miR−649、miR−661、miR−662、miR−663、miR−665、miR−668、miR−671、miR−887、miR−1183、miR−1224、miR−1225、miR−1228、miR−1234、miR−1246、miR−1247、miR−1257、miR−1258、miR−1268、miR−1269、miR−1289、miR−1287、miR−1909、miR−1911、miR−759、miR−3150、miR−3174、miR−3180、miR−3191、miR−3197、miR−4292、miR−2115、miR−4312、miR−92、93及びmiR−99から成る群から選択される少なくとも1種のmiRNA(miR)をMSCに導入して行う。ある実施形態では、少なくとも1種のmiRは、miR−10b、miR−138、miR−154、miR−155、miR−181、miR−215、miR−614及びmiR−668から成る群から選択される。
ある実施形態では、MSCは骨髄、脂肪組織、羊膜胎盤、絨毛膜胎盤又は臍帯に由来する。ある実施形態では、MSCは絨毛膜胎盤又は臍帯に由来する。ある実施形態では、MSCは絨毛膜胎盤に由来する。
細胞の共培養は当業者に周知である。ある実施形態では、共培養を筋細胞培地で行う。ある実施形態では、共培養をMSC培地で行う。ある実施形態では、共培養をトランスウェルプレートで行って、細胞の混合は生じないが、細胞が分泌因子を交換するようにする。本明細書で使用される「馴化培地」とは、増殖細胞に少なくとも1日間接触していた古い培地を意味する。このような培地は増殖細胞からの分泌因子を含んでおり、分泌因子の例としては、可溶性因子、エキソソーム、ミクロソーム及び他の細胞外小胞等が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、馴化培地は、増殖細胞に少なくとも24時間、48時間、72時間、96時間又は120時間接触していたものである。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。
本明細書で使用される「細胞外小胞」という用語は、MSCから分泌される全ての細胞由来小胞を意味し、例えば、エキソソーム及び微小胞が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「エキソソーム」とは、サイズが50〜100nmでMSCから分泌される、エンドサイトーシス起源の細胞由来小胞を意味する。非限定的な実施形態としては、エキソソームを生成するために、エキソソームが枯渇した5%FBS又はヒト血清アルブミンとOpti−MEMで細胞を維持する。
本明細書で使用される「微小胞」とは、サイズが100〜1000nmでMSCから分泌される、細胞膜起源の細胞由来小胞を意味する。
エキソソーム、細胞外小胞又は微小胞は、エキソソームが枯渇した血清を含む培地、又はOptiMeM等の無血清培地でMSCを増殖させた後、超遠心分離によってエキソソームを単離して得ることができる。ビーズ、カラム、フィルター及び抗体に関連する他の方法も用いられる。ある実施形態では、細胞を低酸素条件下で増殖させるか、又は低pHの培地でインキュベートしてエキソソームの収量を増加させる。他の実施形態では、細胞を放射線に曝露してエキソソームの分泌及び収量を増加させる。ある実施形態では、エキソソームを投与用の適切な培地に懸濁させる。
ある実施形態では、ROCK阻害剤とのインキュベーションは、少なくとも8時間、12時間、18時間、24時間、36時間又は48時間行う。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、MSCをROCK阻害剤と共に約24時間インキュベートする。
ある実施形態では、5−AZAとのインキュベーションは、少なくとも8時間、12時間、18時間、24時間、36時間又は48時間行う。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、MSCを5−AZAと共に約24時間インキュベートする。
ある実施形態では、培地はMSC培地である。ある実施形態では、培地は筋細胞培地である。ある実施形態では、培地は幹細胞培地である。このような培地は当技術分野で周知であり、その例としては、骨格筋細胞培地(Promocell)、血管平滑筋細胞増殖キット(ATCC)、平滑筋細胞培地(Promocell)、平滑筋細胞培地補充キット(Cell Biologics)、MesenPRO RS培地(ThermoFisher)、StemPro MSC SFM(ThermoFisher)、及びNutriStem MSC XF培地(Biological Industries)が挙げられるが、これらに限定されない。
遺伝子、RNA、核酸又はタンパク質の生細胞への導入は当業者に周知である。本明細書で使用される「導入」とは、遺伝子、タンパク質又は化合物の細胞への外因性添加を意味する。これは遺伝子、タンパク質又は化合物の内因性発現の増加を意味しない。このような導入の例としては、トランスフェクション、レンチウイルス感染、ヌクレオフェクション又は形質導入が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、導入はエクスビボで生じる。ある実施形態では、導入はインビボで生じる。ある実施形態では、導入はインビボ又はエクスビボで生じる。ある実施形態では、導入は目的の遺伝子を含むベクターを導入することを含む。
ベクターは、非ウイルス方法又はウイルス方法を介して送達されるDNAプラスミドとすることができる。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はポックスウイルスベクターとすることができる。プロモーターは哺乳動物細胞において活性であり得る。プロモーターはウイルスプロモーターとすることができる。
ある実施形態では、ベクターの細胞への導入は標準的な方法、例えば、電気穿孔法(例えば、From et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82,5824(1985)に記載)、熱ショック、ウイルスベクターによる感染、小型ビーズ又は粒子のマトリックス内又は表面上に核酸を有する小粒子による高速弾道侵入(Klein et al.,Nature 327.70−73(1987))、及び/又はそれと同様の方法によって行う。
ある実施形態では、哺乳動物発現ベクターとしては、Invitrogenから入手可能なpcDNA3、pcDNA3.1(±)、pGL3、pZeoSV2(±)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81、Promegaから入手可能なpCI、Strategeneから入手可能なpMbac、pPbac、pBK−RSV及びpBK−CMV、Clontechから入手可能なpTRES、及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施形態では、レトロウイルス等の真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターが本発明によって使用される。SV40ベクターとしてはpSVT7及びpMT2が挙げられる。ある実施形態では、ウシパピローマウイルス由来のベクターとしてはpBV−1MTHAが挙げられ、エプスタイン・バーウイルス由来のベクターとしてはpHEBO及びp2O5が挙げられる。他の例示的なベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、及びSV−40初期プロモーター、SV−40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、又は真核細胞での発現に有効であることが示されている他のプロモーターの指示の下でタンパク質を発現させる他のベクターが挙げられる。
ある実施形態では、側方感染や標的特異性のような利点を提供する組換えウイルスベクターがインビボ発現用に使用される。一実施形態では、側方感染は、例えば、レトロウイルスの生活環に固有のものであり、1個の感染細胞が、分裂して近隣の細胞を感染させる多くの後代ビリオンを産生するプロセスである。一実施形態では、その結果、その殆どが元のウイルス粒子によって最初は感染されていなかった大きな領域が迅速に感染される。一実施形態では、側方に拡がり得ないウイルスベクターが生成する。一実施形態では、この特徴は、数が制限された標的細胞のみに特定遺伝子を導入することが所望の目的である場合に有用となり得る。
様々な方法を用いて本発明の発現ベクターを細胞に導入することができる。このような方法は一般にSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1989,1992)、in Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989)、Chang et al.,Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,Mich.(1995)、Vega et al.,Gene Targeting,CRC Press,Ann Arbor Mich.(1995)、Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston Mass.(1988)及びGilboa et al.[Biotechniques 4(6):504−512,1986]に記載されており、このような方法としては、例えば、安定性又は一過性のトランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔法、及び組換えウイルスベクターを用いた感染が挙げられる。更に、ポジティブ−ネガティブ選択法については米国特許第5,464,764号及び第5,487,992号を参照のこと。
一実施形態では、植物発現ベクターを使用する。一実施形態では、ポリペプチドコード配列の発現を複数のプロモーターで駆動する。ある実施形態では、CaMVの35SRNA及び19SRNAプロモーター[Brisson et al.,Nature 310:511−514(1984)]等のウイルスプロモーター、又はTMVに対するコートタンパク質プロモーター[Takamatsu et al.,EMBO J.6:307−311(1987)]を使用する。他の実施形態では、例えば、RUBISCOの小サブユニット[Coruzzi et al.,EMBO J.3:1671−1680(1984)及びBrogli et al.,Science 224:838−843(1984)]又は熱ショックプロモーター、例えば、大豆hsp17.5−E又はhsp17.3−B[Gurley et al.,Mol.Cell.Biol.6:559−565(1986)]等の植物プロモーターを使用する。一実施形態では、構築物の植物細胞への導入は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、微量注入法、電気穿孔法、及び当業者に周知の他の技法を用いて行う。例えば、Weissbach&Weissbach[Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,NY,Section VIII,pp421−463(1988)]を参照のこと。当技術分野で周知の昆虫及び哺乳動物宿主細胞系等の他の発現系も本発明によって使用することができる。
挿入されたコード配列(ポリペプチドをコードする)の転写及び翻訳に必要な要素を含む以外に、本発明の発現構築物は更に、発現されたポリペプチドの安定性、生成、精製、収量又は活性を最適化するように操作された配列も含み得ることは理解されよう。
ある実施形態では、目的の遺伝子の導入は誘導性ベクターの導入を含み、細胞への薬物の投与は目的の遺伝子の発現を誘導する。薬物誘発性ベクターは当技術分野で周知であり、非限定的な例としては、タモキシフェン誘導性、テトラサイクリン誘導性及びドキシサイクリン誘導性が挙げられる。ある実施形態では、誘導性ベクターをエクスビボでMSCに導入し、MSCをインビボで誘導性薬物と接触させる。こうして、誘導された遺伝子の発現と、その結果としてのMSCのプライミング又は分化はインビボでのみ生じる。ある実施形態では、MSCのプライミング又は分化はMSCが対象の体内のある場所に帰着した後にのみ生じる。
ある実施形態では、導入は修飾mRNAの導入を含む。「修飾mRNA」という用語は、細胞の細胞質に導入され、そこでタンパク質に翻訳される安定なmRNAを意味する。このようなmRNAはタンパク質発現のための転写を必要としないため、より迅速にタンパク質を生成し、調節されることは少ない。修飾mRNAは当技術分野で周知である。
ある実施形態では、本発明の細胞の生成はプロトコルBとCを組み合わせて行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、NANOG、SOX2、KLF4、OCT4又はそれらの組み合わせの内のいずれか1種をMSCに導入し、MSCを5−AZAと共にインキュベートして行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、NanogをMSCに導入し、MSCを5−AZAと共にインキュベートして行う。
本明細書で使用される「酸性培地」という用語は、pHが6.0以下の培地を意味する。酸性培地においては、増殖培地はpHが約6.0、5.5、5.0、4.5、4.0、3.5又は3.0となり得る。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、酸性培地を用いたインキュベーションは、少なくとも15分間、30分間、45分間、60分間、90分間又は120分間行う。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、MSCのインキュベーションは酸性培地中で約1時間行う。ある実施形態では、酸性培地はpHが約6である。ある実施形態では、酸性培地はpHが5〜6である。
本明細書で使用される「低酸素」又は「低酸素条件」という用語は、身体、身体の領域又は細胞に酸素が十分に供給されていない状態を意味する。ある実施形態では、酸素レベルを厳密に制御することができる低酸素制御室内で細胞を培養増殖する。低酸素では、酸素レベルは5%未満、4.5%未満、4%未満、3.5%未満、3%未満、2.5%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.5%未満又は0.1未満%である。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、低酸素は2〜4%の酸素レベルを意味する。ある実施形態では、低酸素でのインキュベーションは、少なくとも8時間、12時間、18時間、24時間、36時間又は48時間行う。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、低酸素条件でMSCを約24時間インキュベートする。
ある実施形態では、本発明の細胞の生成はプロトコルDの後にプロトコルEを実施して行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、NanogをMSCに導入した後に、プロトコルD、プロトコルE又はプロトコルDとEの両方を実施して行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、a)ROCK阻害剤、b)酸性培地又は低酸素、及びc)低接着プレート、FGF又はEGFを補充した低血清培地、ROCK阻害剤、STAT3、NF−KB活性化剤、CHIR99021、メトホルミン、トラニルシプロミン、Gsk3阻害剤、3−デアザネプラノシンA、mTor阻害剤、TGFβ阻害剤、チアゾビビン、A83−01、LiCl、SB431542、5−AZA、ラパマイシン、ERK活性化剤及びバルプロ酸から成る群から選択される小分子を含む培地、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種と共にMSCをインキュベートして行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、a)NanogをMSCに導入し、b)ROCK阻害剤と共にインキュベートし、c)酸性培地又は低酸素でインキュベートし、d)低接着プレート、FGF又はEGFを補充した低血清培地、ROCK阻害剤、STAT3活性化剤、NF−KB活性化剤、CHIR99021、メトホルミン、トラニルシプロミン、Gsk3阻害剤、3−デアザネプラノシンA、mTor阻害剤、TGFβ阻害剤、チアゾビビン、A83−01、LiCl、SB431542、5−AZA、ラパマイシン、ERK活性化剤及びバルプロ酸から成る群から選択される小分子を含む培地、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種と共にインキュベートして行う。
ある実施形態では、低接着プレート上の細胞の増殖は3D細胞培養を含む。本明細書で使用される「3D細胞培養」という用語は、細胞が3次元全てにおいてその周囲と共に増殖又は相互作用することが可能な細胞培養を意味する。ある実施形態では、これは、低接着プレート、バイオリアクター又は小型カプセル上で細胞を増殖させて行うことができる。ある実施形態では、3D培養で増殖した細胞は増殖する際に球状をとるようになる。他の実施形態では、細胞はオルガノイドの形状をとる。本明細書で使用される「オルガノイド」という用語は、モデル化している器官に類似した現実的な微小解剖構造を示す、インビトロで成長した3次元器官原基を意味する。
本明細書で使用される「GSK−3阻害剤」という用語は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3A又はグリコーゲンシンターゼキナーゼBのキナーゼ機能を妨害し、標的をリン酸化するその能力を抑制する任意の化合物、治療薬又は薬物を意味する。この抑制は、デアセチラーゼ活性の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の抑制とすることができる。十分に特徴づけられた多くのGSK−3阻害剤、例えば、CHIR99021又はLiClが当技術分野で既知である。ある実施形態では、GSK−3阻害剤を1〜5、1〜10、1〜15、1〜20、0.5〜1、0.5〜5、0.5〜10、0.5〜15、0.5〜20、0.1〜1、0.1〜5、0.1〜10、0.1〜15又は0.1〜20μMの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、CHIR99021を1〜10μMの濃度で投与する。ある実施形態では、GSK−3阻害剤を1〜5、1〜10、1〜15、1〜20、5〜10、5〜15、5〜20、10〜15又は10〜20mMの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、LiClを5〜10mMの濃度で投与する。
mTOR阻害剤は当技術分野で周知であり、例えば、PP242が挙げられる。このような阻害剤による阻害は、mTOR経路の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の阻害とすることができる。ある実施形態では、mTOR阻害剤を1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、0.5〜1、0.5〜5、0.5〜10、0.5〜15、0.5〜20、0.1〜1、0.1〜5、0.1〜10、0.1〜15又は0.1〜20μMの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、PP242を1〜10μMの濃度で投与する。
TGFβ阻害剤は当技術分野で周知であり、多数ある中でも特にRepSox、SB431542及びA83−01が挙げられる。このような阻害剤による阻害は、TGFβ経路の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の阻害とすることができる。ある実施形態では、TGFβ阻害剤を1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、0.5〜1、0.5〜5、0.5〜10、0.5〜15、0.5〜20、0.1〜1、0.1〜5、0.1〜10、0.1〜15又は0.1〜20μMの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、A83−01を0.5〜1μMの濃度で投与する。ある実施形態では、SB431542を約10μMの濃度で投与する。
ROCK阻害剤は当技術分野で周知であり、多数ある中でも特にチアゾビビンが挙げられる。このような阻害剤による阻害は、ROCK経路の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の阻害とすることができる。ある実施形態では、ROCK阻害剤を1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、0.5〜1、0.5〜5、0.5〜10、0.5〜15、0.5〜20、0.1〜1、0.1〜5、0.1〜10、0.1〜15又は0.1〜20μMの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、チアゾビビンを1〜10μMの濃度で投与する。
ERK活性化剤は当技術分野で周知であり、例えば、レスベラトロール及びフィステインが挙げられる。
ある実施形態では、バルプロ酸を1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、0.5〜1、0.5〜2、0.5〜3、0.5〜4、0.5〜5、0.5〜10、0.5〜15、0.5〜20、0.1〜1、0.1〜5、0.1〜10、0.1〜15又は0.1〜20mMの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、バルプロ酸を0.5〜2mMの濃度で投与する。
ある実施形態では、ラパマイシンを1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、0.5〜1、0.5〜2、0.5〜3、0.5〜4、0.5〜5、0.5〜10、0.5〜15、0.5〜20、0.1〜1、0.1〜5、0.1〜10、0.1〜15又は0.1〜20nMの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、ラパマイシンを1〜10nMの濃度で投与する。
ある実施形態では、メトホルミンを1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、0.5〜1、0.5〜5、0.5〜10、0.5〜15、0.5〜20、0.1〜1、0.1〜5、0.1〜10、0.1〜15又は0.1〜20mg/mlの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、メトホルミンを約10mg/mlの濃度で投与する。
ある実施形態では、トラニルシプロミンを1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、0.5〜1、0.5〜5、0.5〜10、0.5〜15、0.5〜20、0.1〜1、0.1〜5、0.1〜10、0.1〜15又は0.1〜20μMの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、トラニルシプロミンを1〜10μMの濃度で投与する。
ある実施形態では、3−デアザネプラノシンAを1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、0.5〜1、0.5〜5、0.5〜10、0.5〜15、0.5〜20、0.1〜1、0.1〜5、0.1〜10、0.1〜15又は0.1〜20μMの濃度で投与する。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。ある実施形態では、3−デアザネプラノシンAを1〜10μMの濃度で投与する。
ある実施形態では、プロトコルEのインキュベーションを少なくとも30分間、1時間、4時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間又は48時間行う。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。
ある実施形態では、本発明の細胞の生成はG−CSF処理と組み合わせて行うことができる。本明細書で使用される「G−CSF処理」という用語は、G−CSFの細胞又は対象への投与を意味し、この処理によってMSCとCD34+細胞を動員する。
ある実施形態では、HGF又はPDGFβとのインキュベーションを少なくとも30分間、1時間、4時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間又は48時間行う。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。
PCAT1とNEAT1はlncRNAであり、当技術分野で既知である。lncRNAの導入は、核酸分子を細胞に導入するための任意の方法で行うことができる。このような方法は上に記載されている。
ある実施形態では、lncRNAの阻害剤はsiRNAである。ある実施形態では、lncRNAの阻害剤はmiRである。ある実施形態では、阻害剤の導入は、プレmiR又はプレsiRNAの導入を含む。
ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、プロトコル3を実施し、更にMSCにPCAT1とNEAT1を導入して行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、プロトコル3を実施し、更にMSCにGAS5とPTENP1の発現阻害剤を導入して行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCを用意し、酸性培地、ROCK阻害剤又は5−AZAの内の少なくとも1種とMSCを接触させ、PDGFAA、PDGFBB、EGF、VEGF、TGFβ及びIGF1から選択される少なくとも1種の増殖因子をMSCに導入し、PCAT1と、NEAT1又はGAS5と、PTENP1の発現阻害剤とをMSCに導入して行う。
ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCを酸性培地、低酸素、ROCK阻害剤又は5−AZAと共にインキュベートした後、プロトコル4を実施して行う。
ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、プロトコル5を実施し、更にMALAT1、MEG3、NEAT1、EGO、GAS5、KRASP1、LOC28519、BC200及びH19から成る群から選択される少なくとも1種のlncRNAを前記MSCに導入して行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、プロトコル5を実施し、更に前記MSCでのANRIL、PTENP1及びaHIFの内の少なくとも1種の発現を下方制御して行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、プロトコル5又はプロトコル5を含む任意のプロセスを実施し、更に前記MSCでのANRIL、PTENP1及びαHIFの内の少なくとも1種の発現を下方制御して行う。ある実施形態では、プロトコル5又はプロトコル5を含む手順によって生成した細胞は衛星細胞表現型を示す。
ある実施形態では、発現の下方制御は細胞に発現の阻害剤を導入して行う。ある実施形態では、発現の阻害剤はmiR、プレmiR又はsiRNAから選択される。ある実施形態では、CRISPR又はsleeping beauty技術等のゲノム変化によって下方制御を行う。
ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、プロトコルA〜Eの内の少なくとも1種を実施した後にプロトコル1〜6の内のいずれか1種を実施して行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCのプライミング後にプロトコル1〜6の内のいずれか1種を実施して行う。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、MSCのプライミング後に前記MSCをハイブリッド細胞に分化して行う。
ある実施形態では、本発明の細胞は、SOX2、KLF4、OCT4及びNANOGから成る群から選択される少なくとも1種の幹細胞性マーカーを発現する。ある実施形態では、本発明の細胞は、SOX2、KLF4、OCT4及びNANOGから成る群から選択される複数の幹細胞性マーカーを発現する。ある実施形態では、プロトコルA〜Eの内のいずれか1種を含む任意のプロセスによって生成した本発明の細胞は、SOX2、KLF4、OCT4及びNANOGから成る群から選択される少なくとも1種の幹細胞性マーカーを発現する。ある実施形態では、 プロトコルA〜Eの内のいずれか1種を含む任意のプロセスによって生成した本発明の細胞は、SOX2、KLF4、OCT4及びNANOGから成る群から選択される複数の幹細胞性マーカーを発現する。
ある実施形態では、本発明の細胞は、VEGF、GDNF及びIGF1から選択される少なくとも1種の栄養因子を分泌する。ある実施形態では、プロトコル1〜6の内のいずれか1種を含む任意のプロセスによって生成した本発明の細胞は、VEGF、GDNF及びIGF1から選択される少なくとも1種の栄養因子を発現する。
ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、本明細書に記載のプロトコルの内の少なくとも1種を実施し、更に細胞中でMSC表現型と筋細胞表現型の存在を確認又は検出して行う。ある実施形態では、検出はMSCタンパク質マーカーの存在の検出を含む。ある実施形態では、検出は、筋タンパク質マーカーの存在の検出を含む。ある実施形態では、本発明の細胞の生成は、本明細書に記載のプロトコルの内の少なくとも1種を実施し、更にMSC表現型と筋細胞表現型を有することが確認された細胞を選択して行う。
他の態様によると、本発明は本発明の細胞を生成する方法を提供し、この方法は本明細書に記載のプロトコルの内の少なくとも1種を実施する段階を含む。ある実施形態では、本発明は、MSC表現型と筋細胞表現型を含む混合特性の細胞を生成する方法を提供し、この方法は、プロトコル1〜6及びA〜Eの内の少なくとも1種を実施する段階を含む。
細胞への添加
ある実施形態では、本発明の細胞は、細胞表面の筋細胞標的化部分又は細胞の細胞外小胞の表面を含む。ある実施形態では、本発明の細胞は筋細胞標的化部分を含む。ある実施形態では、筋細胞標的化部分は、カベオリン3に対するリガンド、M−カドヘリン、ニコチン性アセチルコリン受容体に対するリガンド、ミオスタチンのドミナントネガティブ突然変異体、及び1型アンジオテンシンIIの内のいずれか1種を含む。ある実施形態では、ミオスタチンプロペプチドのドミナントネガティブ体はミオスタチンのC313Y突然変異を含む。ある実施形態では、標的化部分は、CD63又はCD81と融合した上述の分子のいずれか1種を含む融合タンパク質を含む。ある実施形態では、筋細胞標的化部分はM−カドヘリンを含む。
ある実施形態では、筋細胞標的化部分をトランスフェクションによって細胞に導入する。ある実施形態では、標的化部分をベクター中の細胞に導入する。ある実施形態では、標的化部分を導入して細胞膜内での発現を可能にする。ある実施形態では、細胞膜内での発現は細胞膜の外表面の発現である。ある実施形態では、標的化部分を導入してエキソソーム及び他の細胞外小胞の膜内での発現を可能にする。
ある実施形態では、本発明の細胞は治療剤を含む。ある実施形態では、治療剤は筋肉治療剤である。ある実施形態では、治療剤は、薬物、リードスルー薬物、RNA、DNA分子、ベクター、エクソンスキリングオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miR)、低分子干渉RNA(siRNA)、アンタゴミル、長い非コードRNA(lncRNA)及びウイルスから成る群から選択される。
ある実施形態では、RNAは修飾MyoD mRNAである。ある実施形態では、治療剤は、miR−424、miR−195、miR−16、miR−497、miR−135、miR−6793、miR−2、let−7、miR−133b及びこれらの組み合わせから選択されるmiRの阻害剤である。ある実施形態では、アンタゴミルは、抗miR−424、抗miR−195、抗miR−16、抗miR−497、抗miR−135、抗miR−6793、抗miR−21、抗miR−133b及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。ある実施形態では、アンタゴミルは抗let7及び抗miR−133bから選択される。ある実施形態では、アンタゴミルは抗let7である。
ある実施形態では、薬物はオキシトシン、メラトニン、G−CSF、ボルテゾミブ及びメトホルミンから選択される。ある実施形態では、薬物はユートロフィンの発現を増加させる薬物である。
ある実施形態では、アンタゴミルは、ジストロフィンを標的とするmiRとハイブリダイズする。ある実施形態では、アンタゴミルは、miR−606、miR−6893、miR−521、miR−3646及びmiR−214から成る群から選択されるmiRとハイブリダイズする。ある実施形態では、アンタゴミルは抗miR−214である。ある実施形態では、細胞は抗miR−214及びマイクロジストロフィン又はジストロフィンを含む。
ある実施形態では、ウイルスは、ジストロフィン、ユートロフィン、lncRNA、CCAT1、Hur及びIGFBP123の内の少なくとも1種をコードするDNAを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)である。ある実施形態では、siRNAはALSに関連するSOD1の変異体に対するものである。ある実施形態では、siRNAはALSに関連する他の変異遺伝子又はタンパク質に対するものである。
医薬組成物
他の態様によると、本発明は、本発明の細胞のいずれかによって分泌される単離細胞外小胞を提供する。ある実施形態では、細胞外小胞はエキソソームである。細胞外小胞を単離する方法は当業者に既知であり、本明細書に記載されている。
他の態様によると、本発明の混合特性の細胞、本発明の細胞外小胞及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含む医薬組成物が提供される。ある実施形態では、医薬組成物は薬学的に許容し得る担体又はアジュバントを更に含む。
本明細書で使用される「担体」、「賦形剤」又は「アジュバント」という用語は、活性剤ではない医薬組成物の任意の成分を意味する。本明細書で使用される「薬学的に許容し得る担体」という用語は、無毒性の不活性固体、半固体の液状充填剤、希釈剤、カプセル化材料、任意の種類の製剤助剤、又は単に生理食塩水等の無菌水性媒体を意味する。薬学的に許容し得る担体となり得る材料の例としては、ラクトース、グルコース及びスクロース等の糖、コーンスターチ及びジャガイモデンプン等のデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース等のセルロース及びその誘導体、トラガカント粉末、麦芽、ゼラチン、タルク、ココアバター及び坐薬ワックス等の賦形剤、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油等の油、プロピレングリコール等のグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール等のポリオール、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、リン酸緩衝液、及び医薬製剤に使用される他の無毒性の適合性物質が挙げられる。ここで担体となり得る物質の非限定的な例としては、糖、デンプン、セルロース及びその誘導体、トラガカント粉末、麦芽、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、ポリオール、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リン酸緩衝液、ココアバター(坐薬基剤)、乳化剤、及び他の医薬製剤に使用される他の無毒性の医薬適合性物質が挙げられる。湿潤剤及び潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)や、着色剤、香味剤、賦形剤、安定剤、酸化防止剤及び防腐剤が存在してもよい。任意の無毒性で不活性且つ有効な担体を用いて、本明細書で企図される組成物を処方することができる。この点に関して適切な薬学的に許容し得る担体、賦形剤及び希釈剤は、当業者に周知であり、例えば、メルクインデックス第13版、Budavari et al.編、Merck&Co.,Inc.,Rahway,N.J.(2001)、J.CTFA(Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association)国際化粧品成分辞典及びハンドブック、第10版(2004)、及び米国食品医薬品局(FDA)の薬物評価研究センター(CDER)管理局の「Inactive Ingredient Guide」に記載されているが、これらの各々の全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。本組成物に有用な薬学的に許容し得る賦形剤、担体及び希釈剤の例としては、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液及びDMSOが挙げられる。これらの更なる不活性成分や、有効な製剤及び投与手順は当技術分野で周知であり、標準的な教科書、例えば、Goodman及びGillman:The Pharmacological Bases of Therapeutics第8版、Gilman et al.編、Pergamon Press(1990)、Remington’s Pharmaceutical Sciences第18版、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990)、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy第21版、Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,Pa.(2005)に記載されているが、これらの各々の全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の組成物は、リポソーム、ISCOMS、徐放性粒子、及び血清中のペプチド又はポリペプチドの半減期を増加させる他の媒体等の人工的に作出された構造物に含有させることもできる。リポソームとしては、乳濁液、泡、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散液、ラメラ層等が挙げられる。本明細書に記載のペプチドと共に使用するリポソームは、標準的な小胞形成脂質(一般には、中性及び負に帯電したリン脂質及びステロール、例えば、コレステロールが挙げられる)から形成される。脂質の選択は、一般にリポソームのサイズや血液中の安定性等を考慮して決定される。例えば、Coligan,J.E. et al.、Current Protocols in Protein Science,1999,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkで評されたように、リポソームを調製するための様々な方法が利用可能である。更に、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号及び第5,019,369号も参照のこと。
担体は、本明細書中に記載の医薬組成物を合計で約0.1重量%〜約99.99999重量%を含むことができる。
混合特性の細胞を含む治療方法
他の態様によると、筋肉関連疾患又は筋損傷の治療、予防又は改善を必要とする対象において筋肉関連疾患又は筋損傷を治療、予防又は改善する方法であって、本発明の医薬組成物を対象に投与して筋肉関連疾患又は筋損傷を治療、予防又は改善する段階を含む方法が提供される。
他の態様によると、筋肉関連疾患又は筋損傷を治療、予防又は改善するのに使用するための本発明の医薬組成物が提供される。他の態様によると、筋肉関連疾患又は筋損傷の治療、予防又は改善のための本発明の医薬組成物の使用が提供される。他の態様によると、筋肉関連疾患又は筋損傷の治療、予防又は改善に使用するための本発明の医薬組成物が提供される。
ある実施形態では、組成物は対象に対して同種異系又は自家性であるMSCに由来する細胞を含む。
ある実施形態では、治療は筋再生を増強することを含む。ある実施形態では、治療は線維症を抑制することを含む。ある実施形態では、治療は筋肉でのユートロフィンの発現を増加させることを含む。ある実施形態では、治療は筋肉でのジストロフィンの発現を増加させることを含む。ある実施形態では、改善は対象における症状の発症を遅延させることを含む。
他の態様によると、筋細胞でのユートロフィン又はジストロフィンの発現を増加させる方法であって、本発明の医薬組成物を筋細胞に投与して筋細胞でのユートロフィン又はジストロフィンの発現を増加させる段階を含む方法が提供される。他の態様によると、筋細胞でのユートロフィン又はジストロフィンの発現を増加させるのに使用するための本発明の医薬組成物が提供される。
ある実施形態では、筋細胞は培養下にある。ある実施形態では、筋細胞は対象内にある。ある実施形態では、筋細胞はインビトロ又はインビボにある。
他の態様によると、筋生成の増強を必要とする対象において筋生成を増強する方法であって、本発明の医薬組成物を対象に投与して筋再生の増強を必要とする対象において筋再生を増強する段階を含む方法が提供される。他の態様によると、筋生成を増強するのに使用するための本発明の医薬組成物が提供される。ある実施形態では、筋生成は筋再生である。ある実施形態では、筋肉は培養下にある。ある実施形態では、筋肉は対象内にある。ある実施形態では、筋肉はインビトロ又はインビボにある。
本明細書で使用される「筋肉関連疾患」という用語は、筋成分を有するか、或いは筋肉の機能又は健康に影響を及ぼす任意の疾患又は障害を意味する。筋肉症状に関連する疾患は当技術分野で周知であり、数例を挙げると、筋肉自体の疾患、骨格の疾患、筋肉を衰弱させるニューロンの疾患、ミトコンドリア疾患及びエネルギー恒常性疾患がある。ある実施形態では、筋肉関連疾患又は筋損傷は、運動ニューロン疾患、末梢ニューロン疾患、筋ジストロフィー、脊髄損傷、筋肉疲労、心筋傷害、心線維症、炎症性筋障害、重症筋無力症、筋肉減少症、悪液質及び骨格筋傷害から成る群から選択される。ある実施形態では、筋肉関連疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、悪液質、心線維症及び筋ジストロフィーから成る群から選択される。ある実施形態では、筋ジストロフィーはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。
ある実施形態では、筋肉関連疾患はALSであり、上述の方法は、星状細胞表現型又は神経幹細胞(NSC)表現型に分化した少なくとも1種のMSCを投与する段階を更に含む。当業者に既知の多くの方法によってMSCを分化させることができる。ある実施形態では、星状細胞表現型への分化は米国特許出願第20150037298号に記載のように行う。ある実施形態では、NSC表現型への分化は米国特許出願第20150037299号に記載のように行う。
ある実施形態では、筋肉関連疾患はDMDであり、上述の方法は、未分化MSC、未分化MSCの細胞外小胞、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を投与する段階を更に含む。
ある実施形態では、本発明の細胞又はその細胞外小胞は、対象の適切な身体領域を衝撃波、集束超音波又は低レーザー療法に曝露して骨格筋、心臓又は横隔膜を標的にする。
他の態様によると、細胞の生着の増加を必要とする対象において細胞の生着を増加させる方法であって、本発明の医薬組成物、未修飾MSCを含む医薬組成物、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を前記細胞と同時投与して細胞の生着を増加させる段階を含む方法が提供される。他の態様によると、細胞の生着を増加させるのに使用するための、本発明の混合特性の細胞、未修飾MSC、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含む組成物が提供される。
ある実施形態では、細胞は対象に対して同種異系又は自家性である。ある実施形態では、未修飾MSCは臍帯又は絨毛膜胎盤に由来する。ある実施形態では、未修飾MSCは絨毛膜胎盤に由来する。
ある実施形態では、移植される細胞は、筋芽細胞、衛星細胞、メサンギウム芽細胞、心筋幹細胞、星状細胞及びニューロン幹細胞から成る群から選択される。ある実施形態では、移植される細胞は、筋芽細胞、衛星細胞、星状細胞及びニューロン幹細胞から成る群から選択される。ある実施形態では、投与されたMSC又は混合特性の細胞の生着細胞に対する比は1:1〜2:1である。
他の態様によると、筋細胞でユートロフィン又はジストロフィンの発現を増加させる方法であって、本発明の医薬組成物、未修飾MSC、未修飾MSC由来のエキソソーム、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含む医薬組成物を筋細胞に投与して筋細胞でユートロフィン又はジストロフィンの発現を増加させる段階を含む方法が提供される。他の態様によると、筋細胞でユートロフィン又はジストロフィンの発現を増加させるのに使用するための、本発明の医薬組成物、未修飾MSC、未修飾MSC由来のエキソソーム、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含む組成物が提供される。
ある実施形態では、筋細胞は培養下にある。ある実施形態では、筋細胞は対象内にある。ある実施形態では、筋細胞はインビトロ又はインビボにある。ある実施形態では、未修飾MSCは臍帯又は絨毛膜胎盤に由来する。ある実施形態では、未修飾MSCは絨毛膜胎盤に由来する。
本発明のキット
他の態様によると、MSC培地と少なくとも1種の分化剤を含むキットが提供される。他の態様によると、臍帯MSC又は絨毛膜MSCと少なくとも1種の分化剤を含むキットが提供される。ある実施形態では、キットはMSC培地を更に含む。
他の態様によると、本発明の混合特性の細胞、本発明の単離細胞外小胞、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含むキットが提供される。
本明細書で使用される「分化剤」という用語は、プロトコルA〜E及び1〜6で使用するための本明細書に記載の物質のいずれかを意味する。ある実施形態では、キットは少なくとも1種、2種、3種、4種、5種又は6種の分化剤を含む。各々の可能性は本発明の別々の実施形態を示す。
ある実施形態では、分化剤は、幹細胞性因子、ROCK阻害剤、STAT3活性化剤、NF−KB活性化剤、CHIR99021、メトホルミン、トラニルシプロミン、Gsk3阻害剤、3−デアザネプラノシンA、mTor阻害剤、TGFβ阻害剤、チアゾビビン、A83−01、LiCl、SB431542、5−AZA、ラパマイシン、ERK活性化剤、バルプロ酸から成る群から選択される。ある実施形態では、幹細胞性因子は、NANOG、SOX2、KLF4、OCT4及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。ある実施形態では、分化剤は、増殖因子、lncRNA、転写因子及びmiRから成る群から選択される。ある実施形態では、増殖因子は、HGF、PDGFβ、PDGFAA、PDGFBB、EGF、VEGF、TGFβ、IGF1及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。ある実施形態では、転写因子は、MYF5、PAX3、PAX7、MyoDとPAX3、MyoDとPAX7、及びMyoDとMYF5から成る群から選択される。ある実施形態では、分化剤は、筋細胞、筋細胞エキソソーム、ジストロフィン、マイクロジストロフィン及びユートロフィンから選択される。ある実施形態では、lncRNAは、PCAT1、NEAT1、GAS5、BIL、PAR5、BIC、DISC2、GAS5DLG2AS、7SK、Y1、LINCRNA、SFMBT2、Y4、SCA8、MALAT1、MEG3、EGO、KRASP1、LOC28519、BC200及びH19から成る群から選択される。ある実施形態では、lncRNAは、PAR5、DISC2及びPCAT1から選択される。ある実施形態では、miRは、miR−10b、miR−22、miR−122、miR−125a、miR−140−5p、miR−143、miR−145、miR−146a、miR−148b、miR−150、miR−155、miR−181b、miR−215、miR−296、miR−330、miR−370、miR−429、miR−520、miR−524、miR−543、miR−550、miR−561、miR−564、miR−582、miR−583、miR−587、miR−613、miR−614、miR−629、miR−634、miR−645、miR−646、miR−649、miR−661、miR−662、miR−663、miR−665、miR−668、miR−671、miR−887、miR−1183、miR−1224、miR−1225、miR−1228、miR−1234、miR−1246、miR−1247、miR−1257、miR−1258、miR−1268、miR−1269、miR−1289、miR−1287、miR−1909、miR−1911、miR−759、miR−3150、miR−3174、miR−3180、miR−3191、miR−3197、miR−4292、miR−2115、miR−4312、miR−92、93及びmiR−99から成る群から選択される。ある実施形態では、miRは、miR−10b、miR−138、miR−154、miR−155、miR−181、miR−215、miR−614及びmiR−668から成る群から選択される。
ある実施形態では、キットは筋細胞標的化部分を更に含む。ある実施形態では、筋細胞標的化部分は、カベオリン3に対するリガンド、M−カドヘリン、ニコチン性アセチルコリン受容体に対するリガンド、ミオスタチンのドミナントネガティブ突然変異体、及び1型アンジオテンシンIIの内のいずれか1種を含む。ある実施形態では、ミオスタチンプロペプチドのドミナントネガティブ体はミオスタチンのC313Y突然変異を含む。ある実施形態では、標的化部分は、CD63又はCD81と融合した上述の分子のいずれか1種を含む融合タンパク質を含む。ある実施形態では、筋細胞標的化部分はM−カドヘリンを含む。
ある実施形態では、キットは治療剤を更に含む。ある実施形態では、治療剤は筋肉治療剤である。ある実施形態では、治療剤は、薬物、リードスルー薬物、RNA、DNA分子、ベクター、エクソンスキリングオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miR)、低分子干渉RNA(siRNA)、アンタゴミル、長い非コードRNA(lncRNA)及びウイルスから成る群から選択される。
ある実施形態では、RNAは修飾MyoD mRNAである。ある実施形態では、治療剤は、miR−424、miR−195、miR−16、miR−497、miR−135、miR−6793、miR−2、let−7、miR−133b及びこれらの組み合わせから選択されるmiRの阻害剤である。ある実施形態では、アンタゴミルは、抗miR−424、抗miR−195、抗miR−16、抗miR−497、抗miR−135、抗miR−6793、抗miR−21、抗miR−133b及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。ある実施形態では、アンタゴミルは抗let7及び抗miR−133bから選択される。ある実施形態では、アンタゴミルは抗let7である。
ある実施形態では、薬物はオキシトシン、メラトニン、G−CSF、ボルテゾミブ及びメトホルミンから選択される。ある実施形態では、薬物はユートロフィンの発現を増加させる薬物である。
ある実施形態では、アンタゴミルは、ジストロフィンを標的とするmiRとハイブリダイズする。ある実施形態では、アンタゴミルは、miR−606、miR−6893、miR−521、miR−3646及びmiR−214から成る群から選択されるmiRとハイブリダイズする。ある実施形態では、アンタゴミルは抗miR−214である。ある実施形態では、細胞は、抗miR−214及びマイクロジストロフィン又はジストロフィンを含む。
ある実施形態では、ウイルスは、ジストロフィン、ユートロフィン、lncRNA、CCAT1、Hur及びIGFBP123の内の少なくとも1種をコードするDNAを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)である。ある実施形態では、siRNAはALSに関連するSOD1の変異体に対するものである。ある実施形態では、siRNAはALSに関連する他の変異遺伝子又はタンパク質に対するものである。
未修飾MSCを含む治療方法
他の態様によると、筋ジストロフィー、線維症又は悪液質を治療、予防又は改善する方法であって、未分化MSC、未分化MSCの細胞外小胞又はこれらの組み合わせを投与する段階を含む方法が提供される。他の態様によると、筋ジストロフィー、線維症又は悪液質を治療、予防又は改善するのに使用するための、未分化MSC、未分化MSCの細胞外小胞又はこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含む組成物が提供される。他の態様によると、筋ジストロフィー、線維症又は悪液質の治療、予防又は改善に使用するための、未分化MSC、未分化MSCの細胞外小胞又はこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含む組成物が提供される。
ある実施形態では、MSCは臍帯又は絨毛膜胎盤に由来する。ある実施形態では、MSCは絨毛膜胎盤に由来する。ある実施形態では、筋ジストロフィーはDMDである。ある実施形態では、線維症は心線維症である。
絨毛膜MSCは当技術分野で周知である。ある実施形態では、絨毛膜MSC又はその分泌小胞の同定は、以下の記載のもののいずれかの発現を調べることによって行うことができる。即ち、a)SCA8、TU00176、LINC−VLDLR及び必要に応じてRORから成る群から選択される1種以上の長い非コードRNA(lncRNA)、b)mir−3163、mir−128、mir−27a、mir−27b、mir−148a、mir−148b、mir−152、mir−651、mir−9、mir−466、mir−577、mir−380、mir−2909、mir−4803、mir−556−3p、mir−182、mir−4677−5p、mir−4672、mir−3942−5p、mir−4703−5p、mir−4765、mir−4291、mir−144、mir−1206、mir−4435、mir−452、mir−4676−3p、mir−25、mir−32、mir−363、mir−367、mir−92a、mir−92b、mir−340、mir−3620、mir−4324、mir−4789−5p、mir−346、mir−944、mir−3180−5p、mir−202、mir−511、mir−4326、mir−578、mir−4312、mir−4282、mir−597、mir−3689d、mir−2116、mir−4517、mir−199a−3p、mir−199b−3p、mir−3129−5p、mir−520d−5p、mir−524−5p、mir−203、mir−3942−3p、mir−501−5p、mir−143、mir−4770、mir−4422、mir−4495、mir−1271、mir−96、mir−1297、mir−26a、mir−26b、mir−4465、mir−4273、mir−1294、let−7a、let−7b、let−7c、let−7d、let−7e、let−7f、let−7g、let−7i、mir−4458、mir−4500、mir−98、mir−4652−3p、mir−4716−5p、mir−513a−5p、mir−223、mir−4288、mir−455−5p、mir−632、mir−4477b、mir−142−3p、mir−561、mir−4698、mir−3140−3p、mir−3662、mir−410、mir−376a、mir−376b、mir−1270、mir−620、mir−515−5p、mir−875−5p、mir−140−5p、mir−4256、mir−30a、mir−30b、mir−30c、mir−30d、mir−30e、mir−4254、mir−515−3p、mir−519e、mir−2964a−5p、mir−2115、mir−520a−5p、mir−525−5p、mir−1244、mir−3190、mir−548a−5p、mir−548ab、mir−548ak、mir−548b−5p、mir−548c−5p、mir−548d−5p、mir−548h、mir−548i、mir−548j、mir−548w、mir−548y、mir−559、mir−2681、mir−3671、mir−375、mir−4789−3p、mir−3143、mir−125a−5p、mir−125b、mir−4319、mir−5096、mir−338−5p、mir−493、mir−3153、mir−875−3p、mir−516a−3p、mir−323−3p、mir−3065−5p、mir−4762−3p、mir−3617、mir−641、mir−124、mir−506、mir−4531、mir−4512、mir−570、mir−4679、mir−3144−3p、mir−4777−3p、mir−4732−3p、mir−3177−5p、mir−548n、mir−4328、mir−2355−3p、mir−4330、mir−4524、mir−4719、mir−3976、mir−544、mir−3607−3p、mir−581、mir−205、mir−4731−3p、mir−4801、mir−3667−5p、mir−1245b−3p、mir−4760−3p、mir−137、mir−3194−3p、mir−342−3p、mir−2682、mir−449c、mir−532−3p、mir−4305、mir−1、mir−206、mir−613、mir−676、mir−1296、mir−196a、mir−196b、mir−3941、mir−4795−3p、mir−431、mir−607、mir−548k、mir−4464、mir−4748、mir−654−3p、mir−544b、mir−3074−5p、mir−3115、mir−4635、mir−4323、mir−548t、mir−4680−5p、mir−133a、mir−133b、mir−600、mir−1208、mir−4708−5p、mir−3123、mir−4251、mir−4307、mir−3185、mir−582−5p、mir−4436b−3p、mir−378、has、mir−378b、mir−378c、mir−378d、mir−378e、mir−378f、mir−378h、mir−378i、mir−422a、mir−4460、mir−200b、mir−200c、mir−429、mir−4470、mir−1245b−5p、mir−3142、mir−576−3p、mir−548m、mir−4666−3p、mir−325、mir−330−3p、mir−3690、mir−548a−3p、mir−548e、mir−548f、mir−4709−5p、mir−532−5p、mir−539、mir−4303、mir−4302、mir−300、mir−381、mir−4645−3p、mir−3910、mir−1301、mir−5047、mir−188−5p、mir−3974、mir−3923、mir−3686、mir−670、mir−2052、mir−548al、mir−3200−3p、mir−4686、has、mir−3545−5p、mir−194、mir−498、mir−3913−3p、mir−3168、mir−499−3p、mir−499a−3p、mir−656、mir−4762−5p、mir−4496、mir−141、mir−200a、mir−3529、mir−379、mir−3691−3p、mir−520f、mir−503、mir−4477a、mir−513a−3p、mir−3149、mir−3927、mir−1283、mir−4767、mir−487b、mir−4637、mir−19a、mir−19b、mir−4683、mir−548an、mir−1200、mir−4638−3p、mir−1825、mir−522、miR−24、miR−22−3p、miR−92、miR−378、miR−93から成る群から選択される1種以上のmiRNA、c)HGF、wnt2、GDNF、オステオプロテゲリン、MIP3α、NT−3、IL−6、IL−8、FGF7、NT−4、EGFL6及び必要に応じてLIF及びBDNFから成る群から選択される1種以上の分泌因子、d)TCRα−β、CD55、LIFR及びST6GALNACSから選択される1種以上の表面マーカー、e)低YKL40及びKLF4から選択される1種以上の幹細胞性及び間葉系マーカー、f)COL4A2、LGALS3、SCUBE1、LGAS3及びS100A10から成る群から選択される1種以上のタンパク質のMSC由来小胞発現、g)BCMS、BIC及び必要に応じてHAR1Bから成る群から選択される1種以上のlncRNAのMSC由来小胞発現、及びh)これらの組み合わせ。
ある実施形態では、絨毛膜MSCの同定は、CASK、COL3A1、B2M、CDH2、CTNNA1、DLG1、EGFR、F3、FARP1、GPC1、CDH2、CTNNA1、HAPLN1、LAMB1、LAMB2、LAMPC1、LGALS3BP、LOXL2、MCAM、NID1、OLXNB2、S100A6、TNC、WNT5A及びPLXNB2から成る群から選択される1種以上のタンパク質を含む細胞由来小胞によって行うこともできる。
他の態様によると、ALSの治療、予防又は改善を必要とする対象においてALSを治療、予防又は改善する方法であって、星状細胞表現型に分化したMSC、神経幹細胞表現型に分化したMSC、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含む医薬組成物を投与する段階を含む方法が提供される。他の態様によると、ALSを治療、予防又は改善するのに使用するための、星状細胞表現型に分化したMSC、神経幹細胞表現型に分化したMSC、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含む組成物が提供される。他の態様によると、ALSの治療、予防又は改善に使用するための、星状細胞表現型に分化したMSC、神経幹細胞表現型に分化したMSC、及びこれらの組み合わせの内のいずれか1種を含む組成物が提供される。
ある実施形態では、MSCは臍帯又は絨毛膜胎盤に由来する。ある実施形態では、MSCは絨毛膜胎盤に由来する。
ある実施形態では、治療は筋再生を増強することを含む。ある実施形態では、治療は線維症を抑制することを含む。ある実施形態では、治療は筋肉でのユートロフィンの発現を増加させることを含む。ある実施形態では、治療は筋肉でのジストロフィンの発現を増加させることを含む。ある実施形態では、改善は対象における症状の発症を遅延させることを含む。
ある実施形態では、未処理MSCを含む方法は上述の筋細胞標的化部分を含むMSCを用いて行う。ある実施形態では、未処理MSCを含む方法は上述の治療剤を含むMSCを用いて行う。
他の態様によると、悪液質の診断を必要とする対象において悪液質を診断する方法であって、対象の血清からエキソソームを用意する段階と、エキソソームをヒト不死化細胞株と共にインキュベートする段階と、細胞死及びミオシン重鎖発現の内の1つを測定する段階を含む方法が提供され、細胞死の増加又はミオシン重鎖発現の減少は対象が悪液質を有することを示す。
他の態様によると、対象において悪液質エキソソームを検出する方法であって、対象の血清からエキソソームを用意する段階と、エキソソームをヒト不死化細胞株と共にインキュベートする段階と、細胞死及びミオシン重鎖発現の内の1つを測定する段階を含む方法が提供され、細胞死の増加又はミオシン重鎖発現の減少は対象に悪液質エキソソームが存在することを示す。
本明細書で使用される特定の用語の定義は本明細書に記載されている。特に明記しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は一般に、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。当業者であれば、本発明の実施に使用され得る、本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の多くの方法及び材料を認識されよう。実際、本発明は記載された方法及び材料に決して限定されない。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が明確に指示されない限り、複数の指示対象を包含する。例えば、「核酸(a nucleic acid)」という記載は2種以上の核酸の組み合わせ等を包含する。
本明細書で使用される「約」は当業者には理解されており、使用される状況に応じてある程度変化し得る。当業者には明らかでない用語の使用がある場合、それが使用されている文脈では、「約」は列挙値の±10%以内を意味する。
本発明の更なる目的、利点及び新規な特徴は以下の実施例を検討することによって当業者には明らかになるであろうが、これらの実施例に限定されることを意図するものではない。更に、上述され且つ下記の特許請求の範囲で請求される本発明の様々な実施形態及び態様の各々については、その実験的確証が以下の実施例に記載されている。
実施例
材料及び方法
胎盤由来MSCの調製
胎盤MSCと臍帯MSCを以下のプロトコルによってヒト、イヌ及びウマから単離した。組織をPBSで洗浄した。羊膜と絨毛膜を機械的に細片に断片化した後、2段階で酵素消化に供した。(1)上皮細胞を除去するために、0.25%トリプシン/EDTAと共に37℃で30分間インキュベーション。(2)0.1%コラゲナーゼIVを用いて37℃で60分間処理した後、ウシ胎仔血清で不活性化。次に細胞懸濁液を100μMフィルターで濾過し、遠心分離した細胞を75cm2のCorningフラスコ内の15%ウシ胎仔血清、2mM L−グルタミン、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンで構成されたDMED培地/栄養混合物F−12(DMEM/F12)に播種した。或いは、細胞を無血清MSC培地で保持した。同様の手順を用いて臍帯からMSCを調製した。2週間後、細胞をRock阻害剤と共に1日間インキュベートした後、低酸素条件下で更に24時間インキュベートした。エキソソームが欠乏した培地で細胞を保持した。
エキソソーム単離
細胞培養培地からのエキソソーム単離は多段階遠心分離によって4℃で行った。即ち、培地を10,000×gで30分間遠心分離して大きな細胞片を除去した後、0.22μmのフィルターで濾過して小さな細胞片を除去した。次に上清を100,000×gで1〜2時間遠心分離した。電子顕微鏡法とナノ粒子追跡分析(NTA)を用い、CD63、CD9及びALIXの発現によってエキソソームを同定した。エキソソームの定量は、総タンパク質濃度を測定し、更にCD63 ELISA(SBI)を行って分析した。
qRT PCR
製造業者の説明書(Qiagen)に従い、RNeasy midiキットを用いて全RNAを抽出した。2μgの全RNAを用いて逆転写反応を行った。各プライマーセットについてプライマー最適化段階を試験して最適プライマー濃度を決定した。プライマー、25μLの2xSYBR Green Master Mix(Invitrogen)及び30〜100ngのcDNA試料を総量50μLのPCR増幅溶液に再懸濁した。使用したプライマーを表1に示す。ABI Prism 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスター市)で反応を行った。サイクル閾値(Ct)はABI 7000ソフトウェアから得た。S12又はβ−アクチンレベルも対照として各RNAサンプルについて測定した。
表面マーカー分析
表面マーカー発現はFACS分析によって測定した。細胞を0.25%トリプシン−EDTA(Life Technologies)を用いて解離させるか又はプレートから収集し、カルシウムとマグネシウムを含まないリン酸緩衝食塩水に再懸濁させて単一細胞懸濁液を得た。3×105個の細胞を使用し、陽性抗体(CD73−APC、CD90−FITC、CD105−PE)と陰性抗体(CD34/CD45/CD14/CD20−PerCp)の両方を含むMSCアイソタイプカクテル(Miltenyi Biotec)及びヒトMSC機能IDキット(R&D Systems)を用いて染色した。細胞を抗体と共に4℃で30分間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、0.5mlのPBSに再懸濁させた。FACS Aria III機器(BD BioSciences)で細胞を分析した。
新しい筋線維のカウント
マウスに対してTA筋にカルジオトキシンのPBS溶液を25μl注射し、7日後に屠殺した。筋肉を解剖して胚性ミオシン重鎖(MYH1)を染色し、核が中央に位置するMYH1に対して陽性の細胞を新たに生成した筋肉としてスコア化した。或いは、MyoD及びPax7に対して二重陽性の細胞は非対称に分割する衛星細胞と考えられ、NCAMに対して陽性の細胞は再生細胞と考えられる。
エキソソーム負荷
MSCは、レンチウイルス感染又はsilMporter(Millipore)を用いたトランスフェクションのいずれかによって負荷される分子(miR、siRNA、プレmiR、shRNA、修飾mRNA)で形質導入した。次にエキソソームを単離し(上述参照)、検査して負荷される分子の発現を確認する。
同時移植
生着用ヒト細胞は、mCherry又はGFPを発現するレンチウイルスベクターで形質導入するか、又はQtracker 655細胞標識キット(Thermo)を用いてQdot 655ナノ結晶を負荷した。次に標識した細胞をMSCと1:1〜2:1の比(標識した細胞の方が多い)で混合した。1×105個のMSCを常に使用した。
筋細胞標的化部分
CH−MSCにM−カドヘリンをトランスフェクトし、これらの細胞からのエキソソームを採取し(上述参照)、蛍光色素で標識し、分析して蛍光を確認した。次にエキソソームを培養下のヒト筋細胞とヒト星状細胞に投与した。28時間後、細胞を洗浄して未吸収エキソソームを除去し、(エキソソームを取り込んだ)蛍光細胞の数を測定した。
実施例1:MSCは再生を増強し線維症を抑制する
筋ジストロフィーの可能な治療として、様々な組織由来の間葉系幹細胞(MSC)の使用が示唆されている(Markert CD et al.,2009,PM&R,1(6):547−559;Rajput BS. et al.,2015,Journal of Stem Cells,10(2):141−156、Li P et al.,2015,International Journal of Molecular Medicine,35(4):1051−1057)が、MSCが筋肉の健康に影響を及ぼす基本的な機序は十分には理解されていない。Mdxマウスはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の動物モデルとして広く使用されている。mdxマウスの筋肉機能に対して最適な治療効果を有するMSC源を同定するために、骨髄(BM)、脂肪組織(AD)、臍帯(UC)、胎盤の羊膜(AM)及び絨毛膜(CH)に由来するMSC、又はCD34+造血前駆細胞をmdxマウスの四頭筋に注射し(注射1回当たり5×105個の細胞)、再生及び線維症に関連する幾つかの重要な因子の発現を4週間後に調べた。
試験した全ての細胞型は、四肢における2種の細胞再生マーカーのmRNA発現の有意な増加(即ち、胚性ミオシン重鎖(MYH1、約4倍の増加、データは示さず)及びNCAM(図1A及びB))を誘導した。更に、UC−MSCとCH−MSCは、ジストロフィンを機能的に置換することができ、従って、mdxマウスと理論的にはDMD患者において治療効果を発揮するタンパク質であるユートロフィンの発現を有意に増加させた(図1A〜C)。BM−MSC、AD−MSC及びAM−MSCが引き起こしたユートロフィン発現の増加はごく僅かに過ぎず、統計的に有意ではなかった。VEGFとHIF1αのレベルも上昇した(図1A)。また、UC−MSCとCH−MSCは横隔膜及び心臓における、線維症マーカーである、コラーゲンIの発現を有意に減少させたが、BM−MSC、AD−MSC及びAM−MSCは効果を示さなかった(図1A〜B及びD)。最後に、UC−MSCとHC−MSCのいずれもTNFα及びINFγ等の炎症マーカーの発現を減少させたが(図1B)、BM及びAD由来のMSCで観察された効果は低かった。
筋細胞は間葉系統の一部であるため、MSCの治療上の価値は、筋シンシチウムの一部となり、細胞置換として作用することから生じる可能性がある。しかし、MSCは筋肉へ影響を及ぼし得る大きなセクレトームも有する。mdxマウスで観察された遺伝子発現の変化が主にMSC融合に起因するか又は分泌因子に起因するか試験するために、5×105個のUC−MSC又はCH−MSCからエキソソームを精製し、MDXマウスの四頭筋に注射した。エキソソームのみを注射した場合、試験した4種の遺伝子全てについて同様の(僅かに低下したが)遺伝子発現の変化が観察された(図1B)。更に四頭筋での再生量が有意に増加した(図1E)。これは細胞置換がMSCによってもたらされる治療効果の主な原因ではないことを示す。
マウス細胞株C2C12とヒト筋細胞を用いたインビトロ実験によってMSCに起因する発現の変化を確認した。トランスウェルプレートでヒト筋細胞をMSCと共培養することによって、UC−MSCとCH−MSCのみがユートロフィン発現を増加させることが示された(図1F)。これらの細胞由来のエキソソームも同様であった。筋細胞の分化はAD−MSC、CH−MSC及びUC−MSCとこれらのエキソソームによっても増加し、これはそれぞれ筋管の形成(図1G)とミオシン重鎖2の発現(図1H)によって測定された。しかし、DMD患者の筋細胞をMSCと共培養した場合、CH−MSCとUC−MSCのみが筋管の形成を増加させた(図1I)。ヒト衛星細胞をUC−MSC、CH−MSC及びこれらのエキソソームと共培養させると、非対称分裂(MyoD発現)は増加したが、BM−MSCの場合は増加しなかった(図1J)。C2C12マウス筋細胞との共培養も同様の結果を示した(図1K)。
実施例2:MSCは筋細胞生着の有効性を高める
MSCはその細胞表面上にMHCII分子を発現しないため、移植細胞として十分に忍容される。更に、MSCは移植対象に対して免疫調節効果を有し、その結果、耐性を更に改善する免疫抑制がもたらされる。多くの筋疾患、筋ジストロフィー及び筋損傷が筋細胞置換療法で治療され得ることが提案されているが、そのような療法は移植片の拒絶のために行うことが困難であることが分かっている。従って、MSC(CH及びUC)が移植片に含まれる場合、拒絶反応を減少させて外来細胞の生着を増加させることができるかどうか試験した。一般的に以下の実験を通じて、CH又はUC MSCは最大の治療可能性と筋電位を示したので常に使用した。絨毛組織及び羊膜組織以外の胎盤の他の領域(例えば、胎盤絨毛)を調べたが、どの領域にも絨毛膜が行った治療可能性は示されなかった。
MSCを蛍光赤色細胞トラッカーで標識したヒト筋細胞と共に野生型マウスの前脛骨(TA)筋に同時移植した。2週間後、筋肉中の赤色蛍光のレベルを顕微鏡で測定し、筋芽細胞生着と衛星細胞生着の両方を調べた。どのMSCも用いない移植と比較して、UC−MSCとCH−MSCの両方が筋芽細胞と衛星細胞の生着を有意に増加させた(図2)。UC−MSC同時移植によって筋芽細胞がより良好に生着し、CH−MSC同時移植によって衛星細胞がより良好に生着したが、その差は統計的に有意ではないことが分かった。移植後4週間でも同様の結果が観察された。
ヒト星状細胞と神経幹細胞(NSC)の移植についても試験した。UC−MSC又はCH−MSCを蛍光赤色標識細胞と共に髄腔内に同時移植し、別々の実験で2週間後と4週間後に脊髄の赤色蛍光を測定した。星状細胞移植後の赤色蛍光のレベルは、UC−MSCの場合に4.55(±0.67)、CH−MSCの場合に3.89(±0.54)であり、NSCの移植についても同様の結果が見られた(対照蛍光を1に設定)。これらの実験をMDXマウスと筋萎縮性側索硬化症(ALS)のラットモデルで繰り返し、全ての場合でMSCとの同時移植によって筋細胞生着が改善することが分かった。
実施例3:筋分化のためにプライムされたMSC
MSCが筋再生を誘導し、筋線維症を抑制し、パラクリン作用を介して生着を増加させる能力を考慮し、MSCの治療効果を補う方法が開発された。「筋原性プライミング」と称されるこの方法は、筋細胞に対する細胞のパラクリン作用を一方では増加させ、他方では筋細胞へのMSC自身の分化を促進した。このプライミングによって、非対称分裂を受ける衛星細胞へMSCが分化する能力と共に、既存の筋線維と融合してジストロフィンを細胞に送達する筋芽細胞へMSCが分化する能力が高まった。細胞におけるMyoD発現の誘発はプライミングの1つの方法であると仮定された。これは、MyoD−GFPレポーターを含むCH−MSCとUC−MSCをトランスウェルプレートでヒト筋細胞と共に培養(プロトコルA)して試験した。こうして、筋細胞由来の細胞外小胞と分泌因子がMSCに接触することができた。3日間のインキュベーションによって、筋細胞に曝露されなかった対照細胞と比較してMyoD発現が2倍余り増加した(図3)。
筋細胞との共培養に加え、様々な方法を用いてMSCにおける一過性幹細胞特性を誘導し、後続因子に応答して筋分化能力を増加させた。共培養の前にMSCに修飾Nanog mRNA(そのようなmRNAは細胞質において安定であり、即座に翻訳され得る)をトランスフェクトすることによって、MSCを5−アザシチジン(5−AZA)と共に1日間インキュベートした(プロトコルC)場合と同様にmyoD発現が増加した(プロトコルB)。この効果は、2種の処理を組み合わせた場合、即ち、トランスフェクトした共培養細胞を5−AZAと共にインキュベートした場合に増強された。これによってMyoD−GFP発現は5.7倍に増加した。
細胞をROCK阻害剤(Y−27632)と共に24時間インキュベートした後、pHが約6の培地中で1時間インキュベートするか、又は低酸素に24時間曝露することによって、MSCでプライム幹細胞表現型が誘導された(プロトコルD)。更に、数種の小分子、例えば、STAT3、NF−KB活性化剤、CHIR99021(1〜10mM)、メトホルミン(10mg/ml)、トラニルシプロミン(Parnate 1〜10μM)、Gsk3阻害剤、3−デアザネプラノシンA(1〜10μM)、mTOR阻害剤(PP242、1〜10μM)、TGFβ阻害剤(RepSox)、チアゾビビン(1〜10μM)、A83−01(0.5〜1μM)、LiCl(5〜10mM)、SB431542(10μM)、及びバルプロ酸(0.5〜2.0mM)、ラパマイシン(1〜10Nm)、ERK活性化剤(レスベラトロール又はフィステイン)と共に1〜6日間のインキュベーション、或いは、低pH、低酸素、及び/又は低レベルの血清又はヒトBSAとFGF又はEGF(10ng/ml)を含む低接着培養プレートによる培養を行ったが、全てにおいてMSCがある程度プライムされた(プロトコルE)。これらのインキュベーションは、最初に修飾Nanog mRNAをMSCにトランスフェクトした後にも実施した。
一過性の幹細胞表現型を発現するようにプライムされたMSCは、SOX2、NANOG、OCT4及びKLF4を未処理MSCで観察されたよりも高いレベルで発現し、RTVP−1を低レベルで発現することが分かった。これらの幹細胞性マーカーは、筋細胞外小胞とのインキュベーションによってプライミングを行った場合には発現が低下した。幹細胞性が増加したため、細胞が脂肪、腱又は骨等の間葉系統の他の細胞に分化し得るかどうか試験した。このような分化は全てのプライム細胞で不十分であり、筋細胞外小胞でプライムされた細胞では不可能であった。
プライム細胞の性質をより良く理解するために、様々なMSC、筋肉及び幹細胞性マーカーを調べた。全てのプライム細胞は、依然としてMSCマーカーCD73、CD105、CD90、CD146及びCD44を発現し、MHCIIを発現しなかった。更にMyoD、MYF6、MYF5、ITGA7、オステオプロテゲリン、イリシン及びPax7を低〜中程度のレベルで発現した。筋細胞外小胞とのインキュベーションによって最も高い発現が引き起こされたが、これらの筋マーカーのレベルは、実際の筋細胞で観察されたレベルよりも低かった。5−AZAでプライムされた細胞は、運動ニューロンの生存及び神経筋接合部の維持に重要な栄養因子であるVEGF及びGDNFも非常に高いレベルで発現した。
実施例4:プライム細胞は再生を増強し線維症を抑制する
プライム細胞はMSCの特性の多くを保持するが、筋分化の経路を下り始めてもいるので、再生を増強し、線維症を抑制する能力において未処理MSCとどのように比較するか試験した。未処理のCH−MSCとUC−MSC(5×105個の細胞)を野生型マウスの左四頭筋に注射し、プライムされたCH−MSCとUC−MSC(5−AZA又は筋共培養によって分化した5×105個の細胞)を右四頭筋に注射した。上述のように、両方の組織由来のMSCは、横隔膜と心臓における線維症を抑制し(コラーゲンI発現)、注射された筋肉の再生を増強した(NCAM発現)が、特に、プライムMSCの場合、再生レベルはほぼ2倍になったが、線維症の抑制については変化しなかった(図4A)。
未処理MSCとプライムMSCがインビボで新たな筋形成を誘導する能力について次に試験した。野生型マウスのTA筋に、PBS、CH−MSC、UC−MSC、プライムCH−MSC又はプライムUC−MSC(いずれも5×105個の細胞)のいずれかを注射した後、カルジオトキシンで処理して筋損傷を誘発した。7日目にマウスを屠殺し、核が中央に位置するMYH1染色に注目して腓腹筋で新たに生成した筋線維を計数した。UC−MSCでは新たな筋細胞の数が2倍余り増加し、CH−MSCでは3倍に増加した(図4B)。プライムMSCは更に強い効果を示し、プライムされたUC−MSC又はCH−MSCでは新たな筋細胞の数がそれぞれ344%及び387%増加した。
実施例5:MSC−筋細胞ハイブリッド細胞の生成のための起源の組織の選択
このデータから、筋シンシチウムに融合する能力、MSC様のMHCII欠如、及び組織拒絶を抑制する能力は、筋細胞移植/置換から利益を得ることができる疾患の治療において全て有用であることが強く示唆される。従って、正常な衛星細胞又は筋芽細胞を供給するために分化する能力と共に、MSCの両方のパラクリン作用を組み合わせた細胞を生成することは非常に興味深い。実験を行ってMSCをこのようなハイブリッド細胞に分化させた。
骨髄(BM)、脂肪組織(AD)、臍帯(UC)、絨毛膜胎盤(CH)及び羊膜胎盤(AM)由来のMSCを全て標準的なMSC培養条件に従って単離し、培養した。次に、以下の分化プロトコル(プロトコル1)を5種の試料全てに対して試験した。細胞をpHが約6.0の培地に1時間載置した。PBSで洗浄した後、細胞をROCK阻害剤(Y−27632)を補充したMSC培地に戻し、24時間培養した。続く24時間に亘って、細胞を5−アザシチジン(5−AZA)を補充した培地で培養した。この後、HGF又はPDGFを補充した培地でインキュベーションを行うと共に、PCAT1とNEAT1を過剰発現するレンチウイルスによる細胞の感染を行った。
このプロトコルの終了後、RNAを細胞から抽出し、種々のMSCと筋肉マーカーの発現をqRT−PCRによって調べた。全ての処理MSCは、同じ組織由来の未処理MSCと比較して、MyoD(図5A)、ジストロフィン及びミオゲニンを高いレベルで発現することが分かったが、臍帯及び絨毛膜由来のMSCが最も高い発現を示した(図5B)。脂肪及び羊膜のMSCはUC及びCHのMSCと比較してやや低く、骨髄のMSCはこれらの筋細胞マーカーの内で最も低い発現体であることが分かった。更に、全ての処理細胞はミオシン重鎖(MYH)、α7インテグリン(ITGA7)、MYF6、MRF4、G−CSF、TALNEC2及びMEF2Aの筋肉マーカーを発現し、IL−10を高レベルで発現することが分かった。興味深いことには、UC及びCHのMSCもオステオプロテゲリンを発現したが、BM及びADのMSCは発現しなかった。更に、UC及びCHのMSCはイリシンを高レベルで発現したが、他のMSCでは低い発現が得られたに過ぎなかった。重要なことには、全てのハイブリッド細胞は、ヒト筋芽細胞と共に培養すると融合する能力を示した(図5C)が、このことから、ハイブリッド細胞は筋シンシチウムの一部となる能力を有し、潜在的に細胞置換療法に使用できることが示された。最後に、衛星細胞のマーカーであるPAX7が全てのMSCによって発現されたが、CH−MSCは最も高い発現を示し、CH−MSCは衛星細胞表現型に分化する傾向が高いことが示唆された。
重要なことには、処理後にこれらの細胞は依然としてMHCIIを検出可能なレベルでは発現せず、従って依然として非免疫原性であった。従って、これらの細胞は筋原性表現型を有するが、依然としてヒト対象への投与用の「既製細胞」として使用することができる。これらの細胞は、CD73、CD105、CD146及びCD90(これらのマーカーは全てMSC上に存在し、筋細胞には存在しない)の発現を保持していたので、まだ完全には筋細胞に分化していなかった。これらの細胞はCD44も発現したが、未処理細胞よりも低いレベルであった。しかし、オステオカルシン、PPARG3及びCOL2A1(これらは全てMSCによって高度に発現される)は分化プロトコルの終了後には全て存在しなかった。同様に、RTVP−1の発現も分化後に低下した。処理細胞の試験は、間葉系統(骨、腱、脂肪)の他の組織に分化する能力についても行った。この能力は有意に低下し、細胞のハイブリッド性を再度証明した。
第2の同様の分化プロトコル(プロトコル2)も検討した。5種のMSC全てを再度試験し、酸性培地、ROCK阻害剤、5−AZA及びHGF+PDGFによる処理を前述同様に行った。しかし、PCAT1及びNEAT1を過剰発現する代わりに、GAS5過剰発現プラスミド及びPTENP1に対するsiRNAを細胞にトランスフェクトした。再度、5種のMSC全てが処理プロトコルの終了後、MyoD、ジストロフィン及びミオゲニンを発現し、UCとCHが最良の発現体であり、ADとAMがそれに続き、BMが最も弱い効果を示すという階層が再度見られた(図5D)。第1の処理後に観察された一般的な発現パターンも第2のプロトコル後に存在した。
誘導筋細胞表現型のマーカーの測定に加え、栄養因子であるGDNF、VEGF、CNTF及びIGF1の発現も調べた。MSCは神経機能を支持する多くの栄養因子を発現することが知られている。そのような発現の欠如は筋細胞表現型への分化の望ましくない副作用となるであろう。驚くべきことには、これらの4種の栄養因子の発現はハイブリッド細胞(及びプライム細胞)で保持されただけでなく、実際には4種全ての発現が未処理MSCで観察されるものよりも大幅に増加した(図5E)。この増加は、UC−MSC由来のハイブリッド細胞で最も高く、VEGF発現の増加が10倍を超え、IGF1発現の増加が6倍を超え、GDNF発現の増加が5倍を超え、CNTF発現の増加が4倍を超えた。CH−MSCも3種の因子全てについて4倍を超える増加をもたらした。第1又は第2の分化プロトコルが実施されたかどうかに関わらず、同様の結果が観察された。
実施例6: TF、miR及びlncRNAによるMSC−筋細胞ハイブリッド細胞の生成
最も良好な結果が臍帯と絨毛膜由来のMSCで観察されたので、これら2種のMSC源をその後の分化全てに使用した。短縮化した第3のプロトコル(プロトコル3)を検討し、このプロトコルでMSC−筋細胞ハイブリッド細胞が生成することも分かった。MSCを通常のMSC培養条件下で培養した後、培地に5−AZAを24時間補充した。2%ウマ血清、HGF及びPDGFを補充した培地で細胞を2週間増殖させた。この短縮化した分化プロトコルでも同様の結果が観察された。次の増殖因子、即ち、EGF、IGF1、PDGFAA、PDGFBB、及びVEGFを代替として個々に及び組み合わせて試験し、或いはHGF及びPDGFと組み合わせて試験した。全てにおいてハイブリッド細胞が生成することが分かった。また、処理MSCを非補充のMSC培地に移してプロトコルを停止することができた。こうして、生成したハイブリッド細胞を更に分化させないようにすることができた。
3種のプロトコルは全て、上述のように筋原性プライミングを最初に施したMSCでも実施した。修飾Nanog mRNAでプライムした後、プロトコル3に記載のように5−AZAとPDGFBBで処理したMSCは、例えば、MyoD発現においてほぼ6倍の増加を示した(図5F)。
筋転写因子(TF)の直接発現の場合、特に、筋原性プライミング又は低pH、低酸素、ROCK阻害剤又は5−AZAとの組み合わせ(プロトコル4)で進められると、ハイブリッド細胞への分化も誘導された。レンチウイルスを用いて、未処理及びプライムUC−MSC及びCH−MSCの両方において、MYF5、PAX3、PAX7、ジストロフィン/マイクロジストロフィン、ユートロフィン、又はMyoD+PAX3、MyoD+PAX7又はMyoD+MYF5の組み合わせを発現させた。前述の3種のプロトコルで観察されたものと同様の発現プロファイルもこの方法を用いて見出された。
タモキシフェンと4−ヒドロキシタモキシフェンに応答する修飾エストロゲン受容体を含むAAVベクター又はレンチウイルスを用いてTFもMSCに導入した。これによって、MSCのパラクリン作用とその後の置換能力を最初に利用して、特異的且つ最適な時点でTFをインビボで誘導することができる。タモキシフェンはDMDにおいて治療効果を発揮することが報告されたので、このアプローチは二重に有益となり得る。タモキシフェン誘導性構築物を試験し、その構築物がMSCで特異的TF発現を誘導する能力と、タモキシフェンに応答して筋原性分化を誘導する能力を確認した。
非コードRNAは様々な細胞の分化に関与している。筋原性分化の誘導において役割を果たす可能性のある非コードRNAを同定するために、ヒト筋細胞とMSCとを比較するmiRNA及びlncRNAアレイを実施した。MyoD過剰発現を用いてMSCも筋細胞に分化し、筋細胞と分化MSCには共通であるが未修飾MSCでは異なるmiRNAとlncRNAのクラスターを同定した。これらのMSCが筋細胞へ分化する際のこのmiRNAとlncRNAの発現の変化をrt−PCRによって確認した。
次に、以下のようにMSCで分化を行った(プロトコル5)。MSCをpHが5〜6の酸性培地で1時間インキュベートした後、ROCK阻害剤又は5−AZAと共に24時間インキュベートし、次にlncRNAを細胞に導入した。サテライト特性を発現する細胞を生成するために、次のlncRNA、即ち、BIL、PAR5、BIC、DISC2、GAS5DLG2AS、7SK、Y1、LINCRNA、PCAT−1、SFMBT2、Y4及びSCA8を使用した。この方法により生成したハイブリッド細胞は、MyoDとPAX7に対して二重陽性であることが確認され、このことから、ハイブリッド細胞が衛星細胞として十分に機能し、非対称分裂が可能であることが示された(図5G)。より分化した衛星細胞と筋芽細胞を誘導するために、次の更なるlncRNA(即ち、MALAT1、MEG3、NEAT1、EGO、GAS5、KRASP1、LOC28519、BC200及びH19)の導入が利用できる。ANRIL、PTENP1及びaHIFのサイレンシングによっても筋原性分化が誘導された。具体的には、上述の長いlncRNAをANRIL、PTENP1又はaHIF(単独又はその組み合わせ)に対するsiRNAと組み合わせてMSCにトランスフェクトすることによって、細胞の形態的外観が変化し(図5H)、特定の筋タンパク質の発現が変化した(例えば、衛星細胞におけるPAX7及びmyoDの発現と、より分化した筋原細胞についてのMyoD、ミオゲニン、ミオシン重鎖及びジストロフィン)。
同定されたmiRを用いた分化も行った(プロトコル6)。以下のmiR、即ち、miR−10b、miR−22、miR−122、miR−125a、miR−140−5p、miR−143、miR−145、miR−146a、miR−148b、miR−150、miR−155、miR−181b、miR−215、miR−296、miR−330、miR−370、miR−429、miR−520、miR−524、miR−543、miR−550、miR−561、miR−564、miR−582、miR−583、miR−587、miR−613、miR−614、miR−629、miR−634、miR−645、miR−646、miR−649、miR−661、miR−662、miR−663、miR−665、miR−668、miR−671、miR−887、miR−1183、miR−1224、miR−1225、miR−1228、miR−1234、miR−1246、miR−1247、miR−1257、miR−1258、miR−1268、miR−1269、miR−1289、miR−1287、miR−1909、miR−1911、miR−759、miR−3150、miR−3174、miR−3180、miR−3191、miR−3197、miR−4292、miR−2115及びmiR−4312、miR−92、93及びmiR−99は全てMSCが筋細胞へ分化する際に変化することが分かった。MSCの最初の筋原性プライミングは、pHが5〜6の酸性培地で1時間インキュベートした後に低酸素で24時間インキュベートするか、又は5−AZAと共に24時間インキュベートして行った。次にトランスフェクションによって各種miR(miR−10b、miR−138、miR−154、miR−155、miR−181、miR−215、miR−614及びmiR−668)を細胞に導入し、MyoD発現をモニターした(図5I)。
実施例7:DMD治療のためのMSC、プライムMSC及びMSC−筋細胞ハイブリッド細胞の使用
上述のデータに基づき、未処理MSC、プライムMSC及びハイブリッド細胞は全て、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を治療するための治療薬として使用できると理論付けられた。MdxマウスをDMDモデルとして使用し、クレアチンキナーゼ(CPK)レベルを測定して治療の有効性を評価した。マウスの四頭筋の1つに未修飾CH−MSCを注射し、他の四頭筋では疑似注射を行った。3週間後にCPKレベルを測定し、未処理CH−MSCではCPKレベルがほぼ75%低下した(図6A)。BM、AD、AM、CH及びUC由来のMSCを用いて同じ実験を繰り返した。BM、AD及びAM由来のMSCではCPK発現が30〜40%低下し、UC−MSCでは60%低下し、CH−MSCでは再度70%余り低下した(図6B)。
未処理MSCと比較してハイブリッド細胞の有効性を試験するために、mdxマウスの四頭筋の1つにPBSを注射し、他の四頭筋にはプロトコル1による同じMSC源由来のハイブリッド細胞を注射した。5組のハイブリッド細胞全てにおいて3週間後に四頭筋のCPKレベルが有意に低下し、UC及びCH由来の細胞では最大の効果が再度示された(図6C)。プロトコル2によって生成したハイブリッド細胞は同じ効果を示した。
プライムMSCも試験した。再度、上述のように治療効果を発揮する未処理CH−MSCをmdxマウスの四頭筋の1つに注射し、他の四頭筋には、酸性培地とROCK阻害剤でプライムしたCH−MSC、筋細胞との共培養でプライムしたCH−MSC、又はプロトコル3によって生成されたCH−MSC由来のハイブリッド細胞を注射した。3週間後にマウス四頭筋でのヒトジストロフィンの発現によって測定されたように、3種の修飾細胞全てにおいて治療効果が高まった(図6D)。ヒトタンパク質に特有のプライマーを用いたqRT−PCRによってヒトジストロフィンを測定したため、測定されたジストロフィンの増加全体は注射した細胞に由来するものであった。
MSCは多数の細胞外小胞及び特にエキソソームを分泌することが知られており、これらの小胞はMSCのパラクリン作用を部分的に媒介することが知られている。ハイブリッド細胞の細胞外小胞もハイブリッド細胞の治療効果に部分的に関与するかどうか試験するために、5×105個の未処理又は分化CH−MSC由来のエキソソームをMDXマウス四頭筋に注射し、CPKレベルを測定した。図6Eに示すように、両方の組のエキソソームでCPKレベルが低下したが、未処理CH−MSCのエキソソームはハイブリッド細胞のエキソソームよりも大きな効果を示した。興味深いことには、未処理CH−MSCとハイブリッド細胞由来のエキソソームの混合物は遥かに大きな治療効果を示した。
実施例8:ALS治療のためのMSC−筋細胞ハイブリッド細胞の使用
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロン疾患であるが、筋力低下によって徐々に悪化する脱力感も伴う。MSC−筋細胞ハイブリッド細胞は、ALSにおける筋肉症状の進行を遅らせるのに有効であると仮定された。これについて試験するため、プロトコル1を用いてCH−MSC由来のハイブリッド細胞を発症前のSOD1G93Aラットの四肢に筋肉内注射(IM)し、症状の出現に関してラットを毎日モニターした。具体的には、仰向けにしてから30秒以内に直立姿勢を取り戻せなくなった場合にラットを屠殺した。PBSと比較してハイブリッド細胞の投与によってSODマウスの生存が有意に延長し、また換言すれば、ハイブリッド細胞はALS症状の発症を有意に遅延させた(図7A)。
ALSは神経疾患であるので、同じ実験を星状細胞表現型に分化したMSCで行った(米国特許出願第20150037298号参照、この出願は参照によって本明細書に組み込まれる)。MSC−星状細胞の髄腔内投与(IT)は同様の効果を示し、またALS症状の発症を有意に遅延させた(図7B)。これらの実験は、症状の発症後ではあるが、ラットが直立する能力を失う前に細胞を注射することによって繰り返した。発症前のラットで注射を行った場合と比較して、ハイブリッド細胞とMSC−星状細胞の両方で(低下はしたが)同様の効果が観察された。
ハイブリッド細胞とMSC−星状細胞の両方が良好な治療効果を有し、様々な細胞標的に影響を及ぼす可能性が高いので、併用療法について検討した。発症前のラットにハイブリッド細胞をIM投与すると共にMSC−星状細胞をIT投与した。いずれの単独療法と比較しても、併用療法によって生存が延長(症状の発症が遅延)し、統計的に有意な量で相乗効果が観察された(図7C)。
ALS症状の発症を試験する複数の方法が存在するので、実験を繰り返したが、ラットがロータロッドに10分間とどまる能力を分析することによって疾患の発症を確認した。この方法によってもハイブリッド細胞はALS症状の発症を有意に遅延させた(図7D)。神経幹細胞(NSC)に分化したMSCの髄腔内投与(米国特許出願第20150037299号参照、この出願は参照によって本明細書に組み込まれる)でも同様の良好な結果が得られた(図7E)。再度IMハイブリッド細胞とIV MSC−NSCで構成される併用療法は相乗効果をもたらし、ALS症状の発症の遅延を増加させた。
実施例9:悪液質治療のためのMSCとそのエキソソームの使用
悪液質、即ち、慢性疾患又は癌による体内の筋肉の衰弱又は消耗は、MSCの使用が検討された別の筋疾患であった。トランスウェルプレートでヒト筋細胞をCH−MSC又はUC−MSC又はそのエキソソームと共培養した。予想通り、細胞とエキソソームの両方がミオシン重鎖の発現を増加させ(図8)、筋成長の増加を示した。炎症性TNFα及びIFNγによる細胞の処理は悪液質を模倣し、対照筋細胞でミオシン重鎖発現を60%余り低下させた。この作用の有意な阻害は、程度は異なるがUC−MSC及びCH−MSCと共培養した筋細胞で観察された。エキソソームの添加によってもミオシン重鎖の発現は改善されたが、MSC自体のレベルまでには至らなかった(図8)。
悪液質の第2のモデルも用いた。ヒト不死化筋細胞を悪液質に関連するヒト細胞株(例えば、原発性肺腫瘍細胞)由来のエキソソームと共にインキュベートした。悪液質エキソソームは筋細胞死を誘導し、分化を阻害し、不死化細胞におけるミオシン重鎖の発現を抑制した。しかし、UC−MSC及びCH−MSC又はそのエキソソームとの共培養はこのような悪液質作用を抑制し、細胞死の減少や分化及びミオシン重鎖発現の増加が観察された。
実施例10:治療的送達系としてのMSCの使用
筋肉、運動ニューロン及び末梢ニューロンの疾患や傷害に対しては、潜在的に有望な治療剤が幾つか存在する。しかし、損傷領域又は疾患領域に治療剤を直接且つ特異的に送達するのが困難なことが多い。MSCのホーミング能力と共にその分泌小胞の大きなレパートリーによって、MSCが筋肉とニューロンへの理想的な送達剤となり得ることが仮定された。
この仮説を試験するため、ユートロフィン発現を抑制することが知られている幾つかのマイクロRNA(miR)(即ち、抗miR−424、195、16、497、135、6793及び21)に対するアンタゴミルを未修飾CH−MSC及びUC−MSCに由来するエキソソームに負荷し、ヒト筋芽細胞と共にインキュベートした。これらのエキソソームとのインキュベーションによって筋芽細胞でのユートロフィンmRNA発現が大幅に増加したが、これは、エキソソームがアンタゴミルを筋芽細胞にうまく導入させたことを示す(図9A)。
同様に、let−7アンタゴミル又はmiR−133bアンタゴミルをトランスフェクトしたCH−MSCはインビトロでアンタゴミルを筋細胞に導入させ、その結果、ユートロフィンタンパク質の発現が増加した(図9B)。この細胞由来のエキソソームでも、インビトロでのユートロフィンタンパク質の発現が十分に増加した(図9C)。次に、エキソソーム表面上のM−カドヘリンエピトープによって筋細胞を標的とするエキソソームを筋細胞/星状細胞混合培養物に投与した。抗let−7を含む標的化エキソソームによって、培養物中の星状細胞の55〜68%においてユートロフィン発現が増加したが、培養物中の筋細胞の85〜92%においても同様に増加した(図9C、筋細胞溶解物を示す)。これによって、エキソソームがアンタゴミルを導入するだけでなく、エキソソーム(又はMSC)上の筋肉標的化部分が導入の有効性を高めることが示された。Let−7はミオシン重鎖の発現を抑制するため、筋再生を阻害することも知られている。let−7アンタゴミルはミオシン重鎖の発現も有意に増加させ(図9D)、従って二重の治療効果を示した。
ジストロフィンタンパク質の送達もよく検討されている治療手段であるが、組換えジストロフィンは強い免疫原性応答を誘導するため、有効な送達系はまだ発見されていない。MSCは免疫抑制能力を有するので、免疫応答なしでジストロフィン発現を可能にすることを期待して、非修飾CH−MSCをジストロフィンとマイクロジストロフィンを発現するウイルスベクターに感染させた。これらのプラスミドの効果を更に増強するために、ジストロフィンを標的とするmiRであるmiR−214に対するアンタゴミルを発現するMSCも用いた。ジストロフィンプラスミドと抗miR−214の併用効果は顕著であり、ジストロフィンの発現が約4.5倍増加した。重要なことには、この処理によってユートロフィンの発現も増加した。こうして、抗miR−214送達はジストロフィンとユートロフィンの両方の発現を増加させるので、この送達も二重の治療効果を有する。
エキソソームとMSCが治療剤を送達する能力については、MSCとエキソソームに修飾myoD mRNAを負荷して更に試験した。このようなmRNAは細胞の細胞質に入るとすぐにタンパク質に翻訳され得る。myoDを負荷したエキソソームを筋芽細胞に直接添加すると共に、負荷したMSCと筋芽細胞をトランスウェルプレートで共培養した結果、myoD陽性核の数によって測定される強いmyoDの発現が生じた(図9E)。修飾myoD mRNAの細胞への直接的トランスフェクションを陽性対照として使用したが、実際にはエキソソーム又は共培養によるmRNAの伝達は、トランスフェクションによる直接投与とほぼ同等に有効であった。従って、MSCとそのエキソソームは、他のRNA分子と同様に修飾mRNAを有効に送達することができる。
本発明をその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、当業者には多くの代替物、改変物及び変形物が明白なのは明らかである。従って、添付の特許請求の範囲の精神と広範な範囲内にあるそのような代替物、改変物及び変形物の全てを包含することが意図される。