JP2019510015A - Bcl−2 l10/ip3受容体の相互作用の阻害剤 - Google Patents

Bcl−2 l10/ip3受容体の相互作用の阻害剤 Download PDF

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ジェルマン・ジレ
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Abstract

本発明は、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置におけるその使用のための、少なくとも1つのIP3R受容体のリガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤に関する。

Description

本発明は、医薬分野、より具体的には腫瘍学の分野、特にその細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置の分野に関連する。
がんは、一般的には命に関わり、内因性の細胞の制御されない成長により反映される、ヒト及び動物の疾患である。用語「がん」は、悪性腫瘍及び新生物(腫瘍又は上皮性悪性腫瘍)の形成を表すために用いられる。一般的に、がんの成長には、2つのステージ、すなわち、局所的な腫瘍の成長、そして、がんの拡散が含まる。局所的な腫瘍の成長は、開始及び促進する発がん性因子の作用の下での、「がん化した(transformed)」細胞からの腫瘍クローンの出現から成る。細胞増殖により、腫瘍の形成がもたらされる。初期の腫瘍からのがんの拡散は、局所的な拡散により、及び/又は転移と呼ばれる二次的腫瘍の発達により、起こり得る。
がんを処置するために、様々な手法、例えば外科手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、及び抗血管新生療法が開発されてきた。
最も適した1つ又は複数の治療法の選択は、様々な因子に基づき、特に、各タイプのがんについて一般的に従われる治療プロトコル、診断時の病気のステージ、及び患者の全身状態に依存する。
しかしながら、アポトーシスを誘導することによりがん細胞を殺すことを意図した特定の化学療法製品の使用は、ある患者には有効であるが、他の患者には効果が無いことが判明する可能性があるようである。
特定のバイオマーカーが同定されており、その存在又は過剰発現が、ある医薬が対象の病的状態に有効であることが知られているにも関わらずその医薬に抵抗性を示す患者において観察されている。
したがって、医師らは、一方では特定の処置に応答する傾向がある患者と、これらの処置に抵抗性を示す傾向がある患者とを決定しようと努力し、他方では従来の処置に不十分な応答を有する患者において、抗がん製品の強化された有効性を獲得することを可能にするストラテジーを開発しようと努力している。本発明は、既存の処置の増強に対するこのニーズであって、特にこれらの処置に抵抗性を示す患者におけるものを充足することを目的とする。
(Bcl-2ファミリーの分子)
「化学療法」処置は、患者に存在するがん細胞のアポトーシスを誘導することが意図される化学分子の投与に基づく。
アポトーシスは、「プログラム細胞死」とも称され、正常なものと病的なものの両方の多数の生物学的プロセスにおいて中枢的役割を担っている。2つの主要なアポトーシスの経路が認められており、内因性のミトコンドリアの経路、及び特異的な細胞外シグナルにより活性化される外因性の経路である。
Bcl-2ファミリーのタンパク質は、ミトコンドリアのアポトーシスの主要な調節因子である。タンパク質がBcl-2ファミリーに所属することは、BHドメイン(Bcl-2ホモロジードメイン)と名付けられた、最初に同定されたタンパク質と相同なペプチド配列のドメインが1つ以上存在することに関連している。
Bcl-2ファミリーのタンパク質は、プログラム細胞死を促進することによって(プロアポトーシス)、又は阻害することによって(抗アポトーシス)、アポトーシスを制御し得る。このタンパク質のファミリーは、3つのサブグループに分けられる:
- プロアポトーシスエフェクタータンパク質、例えばBax及びBak、これらは、ひとたび細胞シグナルによって活性化されると、ミトコンドリア外膜に挿入してシトクロムCの放出を引き起こし、それによりアポトーシスを誘導する。
- 抗アポトーシスタンパク質、例えばBcl-2、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2A1、Bcl-W、及びBcl-B/Bcl-2 L10、これらは、プロアポトーシスタンパク質と直接相互作用してそれらを中和することによって、アポトーシスを阻害する。抗アポトーシスタンパク質のBH3、BH1、及びBH2ドメインにより形成される疎水性相互作用ポケットにより、BH3ドメインがBax及びBakタンパク質に結合することができ、それによりこれらの中和をもたらす。また、これらのタンパク質は、カルシウムフラックスの制御に関与する第4のドメインBH4も有する。
- 単一の相同性ドメインBH3のみを含む、BH3-onlyタンパク質。これらのBH3-onlyタンパク質は、抗アポトーシスタンパク質の疎水性ポケットにおいて結合し、それらがBax及びBakを中和するのを妨げる。一部の治療では、BH3-onlyのBH3に類似する化学構造を用いて抗アポトーシスBcl-2タンパク質を阻害し、細胞死を誘導している。これらの分子は、BH3模倣剤と称される(Besbes et al., 2015)。
Bcl-2ファミリーのタンパク質は、特に、ミトコンドリア外膜のシトクロムCに対する透過性を促進又は阻害することにより、アポトーシスを制御する。シトクロムCの細胞質への放出により、今度は多数の細胞タンパク質の酵素的切断を担うプロテアーゼであるカスパーゼ(システイン-アスパラギン酸プロテアーゼ)の活性化がもたらされ、それにより細胞死が誘導される。
また、他の刺激もシトクロムCの放出を惹起することがあり、例えば小胞体から細胞質、そしてミトコンドリアへの大量のカルシウムの流入である。
腫瘍発生の間、抗アポトーシスタンパク質の過剰発現が一般的に観察されるが、それにより、腫瘍細胞は、生物の内在性制御、またその細胞死を誘導することを意図した医薬から逃れることができる。
Bcl-2ファミリーにより制御される生物学的プロセスの重要性により、これらは非常によく研究されているタンパク質ファミリーとなっている。しかしながら、抗アポトーシス性のものの群の中で、一部のものの機能の理解が未だに不十分である;これは、bcl2-l10/bcl-b/nrhの遺伝子の生成物に関して、特に当てはまる。
(Bcl-2 L10)
bcl-2 l10遺伝子は、特に脊椎動物において、進化的に保存されている(Arnaud et al, 2006)。
ヒトでは、正常な成人の組織におけるbcl-2 l10の発現は卵母細胞、卵巣、及びBリンパ球細胞に制限されている。マウスにおいて、そのノックアウトは、観察可能な表現型をもたらさなかった。
ゼブラフィッシュでは、発生の初期段階においてその発現が観察される。この動物モデルでは、bcl-2 l10遺伝子はnrzと称されるが、この遺伝子は胚発生に必須であり、そのノックアウトは、致死性の表現型をもたらす。Nrzタンパク質は、小胞体においてIP3R1、イノシトール1,4,5-三リン酸(IP3)-感受性カルシウムチャネルと相互作用することにより、細胞におけるカルシウム輸送を制御することができることが示されている(Popgeorgiev et al., 2011)。
Bcl-2 L10/Nrzタンパク質は、IP3R1受容体のIP3リガンドの結合のためのドメイン(IP3BD)と、BH4ドメインを介して相互作用することができる。組換えタンパク質Nrzは、IP3のIP3R1受容体への結合を阻害することができることが明らかになっている。BH4ドメインは、IP3R1受容体との相互作用に必要であるが、単独ではIP3R1を介したCa2+の放出を阻害するのに十分ではない(Bonneau et al., 2014)。
疾患との関連では、ヒトにおいて、bcl-2 l10遺伝子の発現は、乳、前立腺、及び肺の腫瘍、急性骨髄性白血病、及び骨髄異形成症候群における予後不良と相関性がある(Krajewska et al., 2008; Cluzeau et al., 2012)。したがって、bcl-2 l10遺伝子は、これらの腫瘍に基づく病的状態の予後不良のマーカーと考えられている。造血器腫瘍におけるアザシチジン抵抗性の診断検査としての、この遺伝子により生産されるタンパク質の検出は、特許出願の対象であった(WO2013/128089 A1)。
(IP3R受容体)
Bcl-2ファミリーの種々のタンパク質は、特にカルシウムフラックスを負に制御することにより、プログラム細胞死のプロセスを防止することができる。
カルシウム(Ca2+)は、細胞死又は分化等の多種多様な細胞活動を、細胞外及び細胞内のCa2+源からの、高度に発達したシグナル伝達ネットワークを通して制御する、普遍的な細胞内メッセンジャーである。
イノシトール1,4,5-三リン酸受容体は、以下「IP3R」と称するが、全ての細胞に存在する、小胞体の膜に位置する四量体のカルシウムチャネルである。これらのチャネルは、特に、IP3Rを活性化するリガンドであるIP3の濃度の変動に関与する、チロシンキナーゼ受容体及びGタンパク質共役型細胞膜受容体により誘導される多数のシグナルに応答した、このコンパートメントから細胞質へのカルシウムの放出を制御している。高濃度のIP3は、カルシウムイオンの細胞質への著しい放出をもたらす。
3種類のIP3R受容体が同定されており、IP3R1、IP3R2、及びIP3R3と表される。これらの大きな受容体は、2500を超えるアミノ酸を含むが、複数のドメインに分割される(図1を参照)。
Bcl-2タンパク質は、そのBH4ドメインを介して、IP3R1受容体と、MTD IIドメインで(Rong et al., 2008)、そしてC末端部分において(Monaco et al., 2012)相互作用する。BH4ドメインの存在だけで、IP3R受容体によるカルシウムの放出をブロックするのに十分である(Rong et al., 2009)。これは、Bcl-2のBH4ドメインと相互作用し、それによりその生物学的活性を阻害する、IP3R1の中央部分の結合ドメイン(アミノ酸1389-1408)を模倣する20アミノ酸のペプチドの使用によって、特に実証されている。
このペプチドを用いて、カルシウムフラックスの制御におけるBcl-2タンパク質の機能を阻害することができ、それにより種々の型の腫瘍細胞のアポトーシスを促進及び/又は誘導することができることが示されている(Zhong et al., 2011; Lavik et al., 2015)。このペプチドの医薬としての、特にBcl-2の細胞発現を特徴とするがんを処置するための使用が提唱されてきた(WO2012/031103)。
Bcl-2ファミリーの多数のタンパク質が、IP3R1の中央ドメインを模倣するこのペプチドと相互作用することができ、それにより中和され得るため、このストラテジーには、あまり特異的でないという欠点がある。特に、この結合部位は、Bcl-XLタンパク質によっても用いられることが示されている(Monaco et al., 2012(1))。しかしながら、このタンパク質の作用には、Bcl-2により媒介されるものとは異なる生物学的メカニズムが関与している(Monaco et al., 2012(2))。
さらに、他のシグナル伝達経路を非特異的に中和することができる可能性がある、IP3R1に由来するそのようなペプチドの使用は、著しい副作用を誘発しかねない。
WO2013/128089 WO2012/031103
腫瘍発生への関与、そして診断ツールとしての役割にも関わらず、bcl2-l10によりコードされるタンパク質の機能は、ほとんど解明されていないままであり、患者が化学療法化合物に基づく処置を受けている場合を含む、腫瘍細胞の生存を促進するこのタンパク質の活性を特異的に阻害し標的化するための解決策は今のところ見つかっていない。
Bcl-2 L10タンパク質がIP3R受容体に結合する場合にBcl-2 L10タンパク質の生物学的機能をブロックすることができ、それにより、化学療法処置により引き起こされるはずであるカルシウムの細胞質への流入をブロックする化合物は、化学療法処置の効果を増強するために、積極的に探し求められている。
これらの化合物は、有利には複数の特徴を有していなければならない:Bcl-2 L10のIP3R受容体に対する結合を妨げるが、IP3リガンドのその受容体への結合を阻害しない;Bcl-2 L10の他の生物学的機能を阻害しない;そして、Bcl-2ファミリーの他のタンパク質を阻害しない。
本願は、これらの要件を満たす化合物を提示する。
本発明は、がんの処置における使用のための、少なくとも1つのIP3R受容体のIP3リガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤であって、前記がんの細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現する、阻害剤に関する。
本発明は、前記がんの処置における使用のための、ペプチドドメインを含み、その配列が、
の配列と少なくとも80%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基が保存されている、阻害剤に最も特に関連する。
本発明の特別な態様によれば、この阻害剤は、少なくとも第2の活性薬剤及び/又はがんを処置するための任意の従来の方法と組み合わせて投与され、特に、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんを処置するための少なくとも1つの化学療法製品と組み合わせて投与される。
また、本発明は、がんの処置における使用のための、少なくとも1つのIP3R受容体のIP3リガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤であって、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z
(式中:
・ADRは、標的化化合物であり、
・ESPは、スペーサーであり、
・DOMは、請求項2又は3に規定されるペプチドドメインであり、
・SADRは、特定の細胞内標的化ペプチドドメインを表し、
ここで、x、y、及びzは、互いに独立に0又は1に等しく、(x + y + z)の合計は、1以上である)
に従って構築されている、阻害剤にも関する。
また、本発明は、医薬的に許容される媒体中に、上述の、少なくとも1つのIP3R受容体のIP3リガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤を少なくとも1つ含む、医薬組成物にも関する。
図1は、ヒトIP3受容体タイプ1(hIP3R1)の一次構造の略図であり、7つの機能性ドメインに分かれている:SD(サプレッサードメイン)、IP3BD(IP3リガンド結合ドメイン)、MTD(調節及び伝達ドメイン)、CFD(チャネル形成ドメイン)、及びCD(カップリングドメイン)。Bcl-2及びBcl-xLのタンパク質は、ドメインMTD II及びカップリングドメインと相互作用する。Nrhタンパク質は、IP3結合ドメイン(IP3BD)と相互作用する。この受容体に結合するペプチドは以前に記述されているが、示すとおり、別の結合部位を有する。 図2は、乳がん細胞MDA-MB-231から得られた、全体、ミトコンドリア(Mito)、若しくは小胞体の(reticular)(ER)画分、又は100000Gでの遠心分離後に可溶性の画分(S100)由来の内在性タンパク質Nrhの免疫ブロットを示す。ビンキュリン、カルネキシン、及びF0F1のタンパク質を対照として用いる。 図3は、Nrhに対するsiRNA(si3-Nrh及びsi6-Nrh)によって、又は対照siRNA(siSCR)を用いてトランスフェクションされたMDA-MB-231細胞の、36時間にわたる、10 μMのタプシガルギン(THG)に応答したアポトーシスの動態(カスパーゼ3及び7の活性)を示す。DMSOとのインキュベーションは、タプシガルギンとのインキュベーションの陰性対照の役割をする。 図4:(A)は、遺伝子nrhから作製され、異なる細胞区画を標的とするコンストラクトの略図を示す:ミトコンドリア(L.モノサイトゲネスのActAタンパク質に由来するミトコンドリア標的化ドメインを伴うNrh-ActA)、小胞体(ヒトシトクロムb5タンパク質に由来する小胞体(reticular)標的化ドメインを伴うNrh-cb5)、膜(そのC末端膜標的化ドメインを伴うNrh-dTM)、又はそのN末端BH4ドメインを有さないNrh(Nrh-dBH4)。(B)は、10 μMタプシガルギンに応答した、24時間の、空ベクターpCS2+又はNrh-WT(野生型)、Nrh-ActA、Nrh-cb5、Nrh-dTM、若しくはNrh-dBH4をコードするコンストラクトでトランスフェクトしたHeLa細胞における、アポトーシスの試験(SR-FLICA)を示す(N=3)。***、p<0.001;**、p<0.01;n.s. p>0.1(スチューデントのt検定)。 図5:(A)は、NrhのBH4ドメインから構築され、標的配列Cb5と融合された、ペプチドNrh 1-23及び点変異の略図を示す。(B)は、Flag-Nrh、HA-hBD、及び1:2の割合でFlag-タグ付けされたペプチドNrh 1-23の異なる点変異をコードするプラスミドでトランスフェクトしたHeLa細胞における抗HA抗体との免疫沈降実験による、Nrh-IP3R1相互作用の定量を示す(N=3)。(C)は、10 μMタプシガルギンに応答した、24時間の、空ベクターpCS2+又はペプチドNrh 1-23、Nrh 1-23 Y16F、若しくはNrh 1-23 C20AをコードするコンストラクトでトランスフェクトしたHeLa細胞における、アポトーシスの試験(SR-FLICA)を示す(N=3)。***、p<0.001;**、p<0.01;n.s. p>0.1(スチューデントのt検定)。 図6:(A)は、空ベクターpCS2+、Flag-Nrh、HA-hBD、又はHA-BECN1のいずれかでトランスフェクトし、その細胞抽出物を5 μgのビオチン標識Nrh 1-23ペプチドと共に、又はこれを伴わないで、インキュベートした、HeLa細胞におけるストレプトアビジンプルダウンを示す。Nrh 1-23は、Nrhと相互作用することができるが、HA-hBDやHA-BECN1とは相互作用することができない。(B)は、空ベクターpCS2+、Flag-Nrh、又はFlag-Nrzのいずれかでトランスフェクトし、その細胞抽出物を5 μgのビオチン標識Nrh 1-23ペプチド又はNrh 1-23 R6A Y16F二重変異ペプチドと共に、又はこれを伴わないで、インキュベートした、HeLa細胞におけるストレプトアビジンプルダウンを示す。Nrh 1-23は、Nrhと相互作用することができるが、Nrzとは相互作用することができず、したがって種特異性を示す。 図7は、Flag-NrhとHA-Nrhとの間の相互作用の、抗HA抗体との共免疫沈降を用いた定量を示す。結果は、Nrhホモ二量体形成を示す。Nrh二量体は、本発明のNrh 1-23ペプチドの存在下で防ぐことができるが、Nrh 1-23 Y16Fの存在下では防ぐことができない。 図8は、異なるNrhタンパク質のオーソログのBH4ドメインに由来するアミノ酸配列のアラインメントを示す:Nrz由来(ゼブラフィッシュ(Danio rerio)、配列番号19)、NR-13由来(セキショクヤケイ(Gallus gallus)、配列番号20)、マウスBcl-2 L10由来(ハツカネズミ(Mus musculus)、配列番号21)、ヒトBcl-2 L10由来(Nrh、配列番号22)、ヒトBcl-2由来(配列番号23)、ヒトBcl-xL由来(配列番号24)、ヒトBcl-A1由来(配列番号25)、及びヒトBcl-W由来(配列番号26)のBH4ドメイン。Nrh/IP3R1相互作用に決定的なアミノ酸を矢印で示す。 図9:(A)は、TAT内在化ドメインにスペーサー(リンカー)により融合され、N末端で蛍光色素(FITC)にカップリングされている、合成ペプチドNrh 1-23及びNrh 1-23 Y16Fの配列を示す。(B)は、[H2O−0.1%トリフルオロ酢酸]に、20%トリフルオロエタノール中80 μMの濃度で溶解した、図9Aに示すペプチドTAT-Nrh 1-23及びTAT-Nrh 1-23 Y16Fの円偏光二色性スペクトルを示し、ペプチドの各々について、アルファヘリックス構造の特徴的なシグネチャを示す。 図10:(A)は、MDA-MB-231細胞において内在性タンパク質NrhとIP3R1との間の相互作用の検出を可能にする、近接ライゲーションアッセイ(PLA)実験を示す。(B)は、10 μMのタプシガルギンに応答した、36時間の、ペプチドTAT-Nrh 1-23、又はTAT-Nrh 1-23 Y16Fと共にインキュベートしたMDA-MB-231細胞における、種々のペプチドを含有するエンドソームを破裂させることを意図した光のフラッシュ(λ 488 nm)の後の、又はフラッシュ無しでの(対照)、アポトーシスの試験(SR-FLICA)を示す(N=3)。***、p<0.001;**、p<0.01;n.s. p>0.1(スチューデントのt検定)。陰性対照として、細胞をDMSOと共にインキュベートする。 図11:(A)は、dTAT-合成ペプチド(Nrh 1-23 C20A及びNrh 1-23 C20A Y16F)を図示し、その配列は、配列番号27及び28に表される。どちらのdTATペプチドも、追跡の目的で、2位のリジンの側鎖にグラフトされたTMR(テトラメチルローダミン)蛍光基を有する。(B)は、Flag-NrhとHA-hBD IP3R1との間の相互作用を、Flag-Nrh又はHA-hBD IP3R1をコードするプラスミドでトランスフェクトし、10 μM対照ペプチド(dTAT 1-23 Y16F C20A)又は10 μMペプチド(dTAT 1-23 C20A)と共に予備インキュベートしたHeLa細胞における共免疫沈降により評価したことを示す。この実験において、dTAT 1-23 C20AはNrh/IP3R1複合体を妨げるが、dTAT 1-23 Y16F C20Aは妨げない。 図12:(A)は、MDA-MB-231細胞をSCIDマウスの乳腺脂肪体に注入したことを示す。腫瘍が約90 mm3の平均体積に達したとき、マウスを、10 mg/kgのdTAT 1-23 C20Aペプチドの、腫瘍周辺注射による、3日毎に1回の投与、又はビヒクル単体(PBS)の、同一の注入周期での投与で処理した。腫瘍体積を、ノギスを用いて週2回測定し(平均±SEM;n=条件あたり9頭のマウス;**、P < 0.01)、dTAT 1-23 C20Aペプチドの腫瘍成長における顕著な効果を示した。(B)は、(A)に示す実験の期間中にわたるマウスの体重の測定を示す(平均±SEM;n=条件あたり9頭のマウス)。 図13は、Bcl-2 L10/Nrhにより制御されるカルシウムの流入及びアポトーシスの略図を示す。Nrhは、本来ならばミトコンドリアで細胞死を引き起こす、ERからミトコンドリアへのIP3受容体を介した細胞障害性のカルシウム輸送を防ぐことができる。Nrh 1-23ペプチドは、Nrhと直接相互作用し、その細胞保護活性を阻害することができ、したがってNrh-発現腫瘍細胞を感作させて細胞死させる。
本発明は、がん細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現しているがんの処置における使用のための、少なくとも1つのIP3R受容体のIP3リガンド結合ドメイン(「BDドメイン」)へのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤に関する。
図13は、カルシウムの細胞質流入のプロセスにおける、及びアポトーシスにおける、Bcl-2 L10/Nrhタンパク質の役割を図示する。
Bcl-2 L10/Nrhの非存在下では、局所的な細胞質カルシウム量の増加により、VDAC(電位依存性陰イオンチャネル)及びMCU(ミトコンドリアカルシウムユニポーター)チャネルを介したカルシウムのミトコンドリアへのインポートがもたらされる。カルシウム過剰の場合には、ミトコンドリア外膜が破裂する可能性があり、シトクロムcの放出がその後観察される。シトクロムcは、Apaf-1/カスパーゼ-9複合体の活性化を引き起こし、これが、不可逆的にアポトーシスよる細胞死につながる。
腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することが意図される処置に曝されている該細胞において、且つBcl-2 L10タンパク質が存在する場合、そのBH4ドメインがIP3R1受容体と相互作用してカルシウムシグナル伝達を負に制御する。
Bcl-2 L10とIP3Rとの間の相互作用を不安定化させる競合阻害剤、以下「Nrh 1-23ペプチド」と称する、の存在下では、Bcl-2 L10タンパク質は、もはやIP3R1に結合することができず、したがって局所的な細胞質カルシウムの量が再構築され、細胞は処置に対し正常に応答することができ、したがってアポトーシスのプロセスを開始する。
(IP3R受容体)
3種類のIP3R受容体が脊椎動物において記述されている:IP3R1、IP3R2、及びIP3R3の各タイプのタンパク質配列は、それらのホモログと全配列にわたって60〜80%の同一性を有するが、この同一性のパーセンテージは、特定の領域、例えばIP3リガンドに関する結合ポケット、及びカルシウムイオンの通過のチャネルを規定するドメインにおいてはるかに高い。
Genbankデータベースには、ヒトにおいて同定された以下の配列が掲載されている:
- イノシトール-1,4,5-三リン酸タイプ1受容体/アイソフォーム1、アクセッション番号:NP_001093422.2、2710アミノ酸;
- イノシトール-1,4,5-三リン酸タイプ1受容体/アイソフォーム2、アクセッション番号:NP_002213.5、2695アミノ酸;
- イノシトール-1,4,5-三リン酸タイプ1受容体/アイソフォーム3、アクセッション番号:NP_001161744.1、2743アミノ酸;
- イノシトール-1,4,5-三リン酸タイプ2受容体、アクセッション番号:NP_002214.2、2701アミノ酸;
- イノシトール-1,4,5-三リン酸タイプ3受容体、アクセッション番号:NP_002215.2、2671アミノ酸。
この3種類のIP3リガンドに対するアフィニティは様々であるが、これらは同一の生物学的機能を有しており、組織発現の違いにより本質的に区別される(Mikoshiba, 2007)。
本発明において、一般的な用語「IP3R」は、IP3R1、IP3R2、及びIP3R3の種類の少なくとも1つを示すために用いられる。したがって、「IP3R受容体の種類の少なくとも1つに結合する」、「IP3R受容体に結合する」、及び「IP3R受容体の1つに結合する」という表現は、区別なく用いられ、同じ相互作用を示す。
本発明の特定の実施形態において、少なくとも1つのIP3R受容体へのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤は、IP3R1及び/又はIP3R3のIP3リガンド結合ドメインのみに作用する。
本発明の特定の実施形態によれば、Bcl-2 L10への結合が阻害されるIP3R受容体の種類は、ヒトタンパク質であり、より具体的にはhIP3R1タンパク質のアイソフォームの1つであり、その構造は、図1に表される。
IP3リガンド結合ドメインは、広く研究されてきた。これは、「結合ドメイン」を表す「BDドメイン」とも称され、図1に表される。N末端領域に位置し、ヒトタンパク質の残基226から残基565に広がる部分から成る(Yoshikawa et al., 1996)。
本発明の背景の中で、用語「少なくとも1つの種類のIP3R受容体のIP3リガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤」は、Bcl-2 L10と、IP3R受容体の少なくとも1つの種類との間のこの結合を完全に又は部分的に阻害するか又は不安定化させることができる化合物を意味することが意図される。
前記阻害剤は、Bcl-2 L10及び/又はIP3Rの少なくとも1つのドメインBDに結合することができる可能性がある。
「Bcl-2 L10タンパク質のIP3R受容体への結合の競合阻害剤」、「Bcl-2 L10/IP3R受容体結合の競合阻害剤」、及び「本発明に係る阻害剤」という表現は、本願において、少なくとも1つの種類のIP3R受容体のIP3リガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤を指すために用いられる。
用語「競合阻害剤」は、阻害剤が以下のいずれかであるという事実を示す:
- IP3リガンド結合ドメイン、すなわち、IP3RのBDドメイン(図1を参照)に結合することができ、それにより、Bcl-2 L10タンパク質との競合に参入するが、該タンパク質のBH4ドメインは、IP3R受容体のこのゾーンと相互作用し、それによりBcl-2 L10/IP3R結合を阻害する;又は、
- Bcl-2 L10タンパク質に結合することができ、それにより、IP3RのBDドメインとの競合状態となることができる、又はBcl-2 L10タンパク質の二量体化を阻害することができる。
Bcl-2 L10/IP3R結合は、当業者に周知の様々な技術によって、特に特異的抗体を用いた免疫沈降実験によって、実施例4(図5B)に記述される手法に従い、定量してもよい。
また、このBcl-2 L10/IP3R結合は、「TR-FRET」(時間分解蛍光共鳴エネルギー移動)と称される実験によって、蛍光偏光実験によって、SPR(表面プラズモン共鳴)によって、又はBLI(バイオレイヤー干渉法)によって、定量化してもよい。
また、本発明者らは、このBcl-2 L10/IP3R結合を、固定した細胞又は組織において、PLA手法(近接ライゲーションアッセイ(Proximity Ligation Assay)、図10A)により、インサイチュで定量してもよいことも示した。
Bcl-2 L10/IP3R結合の阻害は、前記Bcl-2 L10/IP3R結合の量的減少により特徴付けられる。
本発明の特別な態様によれば、IP3R受容体の1つとのBcl-2 L10の結合の減少は、問題となっている細胞において通常観察される数的結合値に対して少なくとも30%である。特に、このBcl-2 L10/IP3R結合の減少は、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はさらには100%であってもよく、すなわち、Bcl-2 L10とIP3Rとの間の相互作用がもはや全く観察されない。
本発明の特別な態様によれば、少なくとも1つのIP3R受容体のリガンド結合ドメインに対するBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤は、例えば実施例4において記述される方法によって評価される、少なくとも60%、又はさらには少なくとも80%の、前記Bcl-2 L10/IP3R結合の量的阻害に相当する機能により特徴付けられる。
(Bcl-2 L10タンパク質)
本発明の意義の範囲内において、用語「Bcl-2 L10タンパク質」は、GenBankにアクセッション番号AAG00503.1で登録され、204アミノ酸の配列を有する、ヒト「Bcl-2-様10」タンパク質のアイソフォーム又はホモログとして同定されている任意のタンパク質を示す。この表記、Bcl-2 L10は、本願明細書において、同一のタンパク質についての異なる表記、Bcl2-B、Nrhと区別なく用いられる。
Bcl-2 L10タンパク質の配列は、哺乳動物種間で良く保存されている。単純化する目的で、アミノ酸の記数は、2番目のメチオニン残基、すなわち、Bcl-2 L10遺伝子の最も発現されているアイソフォームに相当する、GenBankの登録配列番号AAG00503の10位から始める。ゼブラフィッシュタンパク質とヒトタンパク質とのBH4ドメインのアラインメントにより、特に、6位のアルギニン及び16位のチロシンが保存されていることを決定することができた(図8を参照)。
上述のとおり、このタンパク質には多数の役割があり、その一部は未だに分かっていない。したがって、このタンパク質の発現を完全に消去することを目的とする治療的ストラテジーは、このタンパク質の発現の完全な欠如によりもたらされ得る潜在的な負の作用を鑑みると、危険である可能性がある。
本発明は、Bcl-2 L10タンパク質のIP3R受容体への結合を妨げ、Bcl-2 L10のこの受容体への作用のみをブロックする、競合阻害剤に特に関する。
(ペプチドドメインを含む競合阻害剤)
その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現しているがんの処置における使用のための、Bcl-2 L10/IP3R結合を不安定化されることが意図される競合阻害剤は、複数の形態をとり得る。
特に、タンパク質分子、特にキメラペプチドの形態の、又は核酸、例えば核アプタマーの形態の前記阻害剤は、(i)少なくとも1種類のIP3RのBDドメインに、又は(ii)Bcl-2 L10に、特異的に結合する。
特に、この本発明に係るその使用のためのBcl-2 L10タンパク質のIP3R受容体への結合の競合阻害剤は、ペプチドドメインを含む。
より具体的には、本発明に係るその使用のためのBcl-2 L10タンパク質のIP3R受容体への結合の競合阻害剤は、ペプチドドメインであり、その配列が、
の配列と少なくとも80%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基は保存されている。
本願発明者らは、この阻害剤により、IP3Rカルシウムチャネルの開口に対するBcl-2 L10の作用を特異的に阻害することができ、したがって細胞質へのカルシウムの放出の阻害を取り除くことができることを実証した。
本発明の意義の範囲内において、「前記配列が、配列番号1の配列と少なくとも80%の同一性を有する」という表現は、ペプチドドメインの配列が、前記参照配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸同一性を有することを示す。
2つのアミノ酸配列の同一性のパーセンテージを決定するために、配列を最適な比較ができるようにアラインする。最適なアラインメントができるように、アラインされる配列の一方又は他方にスペース(ギャップ)を導入してもよい。比較される2つのアミノ酸配列の同一性のパーセンテージは、D. Voet及びJ.G. Voet, Biochimieによる書籍[Biochemistry] (2nd Edition, De Boeck & Larcier, 2005, section 7.4, paragraph B)に記述されているように得てもよい。
この同一性は、ニードルマン-ブンシュの又はスミス-ウォーターマンのグローバルアラインメントアルゴリズム等の比較アルゴリズムによって決定してもよい。アラインメントは、特に、Clustal W又はBLAST Pソフトウェアにより、規定のパラメーターに従って又は当業者によって調整して、行ってもよい。
特定の実施形態において、本発明に係るその使用のための競合阻害剤は、ペプチドドメインを含み、その配列は、
の配列と、又は
の配列と少なくとも80%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基は保存されている。
本発明の意義の範囲内において、「前記配列が、配列番号2又は3の配列と少なくとも80%の同一性を有する」という表現は、ペプチドドメイン配列が、前記参照配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸同一性を有することを示す。
本願の実施例において、配列番号2のこの配列からなるペプチドは、用語「Nrh 1-23」により表示され、ヒトBcl-2 L10タンパク質のBH4ドメインに相当する。
また、この用語「Nrh 1-23」は、当業者には公知であるとおり任意選択である、1位のメチオニン以外は配列番号2と同一である、配列番号3の配列からなるペプチドを表示してもよい。これは、1番目のアミノ酸としてのメチオニンの有無はペプチドの機能を変化させないからである。
この阻害剤の、IP3R受容体のBDドメインへの競合的結合に必須のアミノ酸を決定するために、様々なペプチド構築物を作製した。
本願明細書の実施例において試験された様々な配列を以下の表1に掲載する:
したがって、本発明に係るその使用のための競合阻害剤は、優先的にはペプチドドメインを含み、その配列は、配列番号1の配列と、又は配列番号2の配列と、又は配列番号3の配列と、又は配列番号8の配列と、少なくとも80%の同一性、優先的には少なくとも90%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基は保存されている。
本発明の一実施形態において、競合阻害剤は、ペプチドドメインであって、その配列が、必要な同一性のパーセンテージを有し、10〜50アミノ酸、優先的には11〜40アミノ酸、より優先的には20〜30アミノ酸からなり、最も好ましくは22〜28アミノ酸の長さを有するようなものを含み、上に示した端の値は範囲に含まれる。
本発明の一実施形態において、競合阻害剤は、50以下のアミノ酸を含有するペプチドドメインを含む。
配列番号1に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するようなペプチドドメインの複数の配列を想定してもよい。実際、11アミノ酸の長さの2つのペプチドドメインについて、2つの配列にわたって9アミノ酸が同一でありさえすれば、これら2つのペプチド配列間の同一性のパーセンテージは、81.81%の同一性である。
以下の表2のような(この一覧は当然非限定的であるが)、配列番号1の配列と少なくとも80%の同一性を有するペプチドドメインの例に言及してもよく、ここで、Xは、20個の既知のアミノ酸から選択される任意のアミノ酸を表す:
本発明の特別な態様によれば、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置における使用のための前記競合阻害剤は、ペプチドドメインを含み、その配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11の配列の1つから選択される配列から成る。
本発明の別の実施形態によれば、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置における使用のための前記競合阻害剤は、ペプチドドメインで構成され、その配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11の配列の1つから成る。
この実施形態によれば、ペプチドの形態のそのような競合阻害剤は、化学合成により直接作製することもできるし、細胞内で細胞機構によって、上述のペプチド配列の1つをコードする核酸を含むプラスミド又はベクターから合成することもできる。前記プラスミド又はベクターは、従来のトランスフェクション、インジェクション、又はウイルス感染手法より、細胞内に予め導入されている。有利には、細胞内で合成されるペプチドは、以下に示すような特定の標的化配列と融合される。
(Bcl-2 L10のホモ二量体化)
本願発明者らは、Bcl-2 L10ホモ二量体化を、Nrh 1-23ペプチド(配列番号2又は3)とのインキュベーションにより防止することができることを観察している。この結果は、実施例5及び図7に示される。
特定の実施形態によれば、本発明に係るその使用のための阻害剤は、さらにBcl-2 L10のホモ二量体化を阻害する。
別の実施形態によれば、本発明は、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置における使用のための、Bcl-2 L10ホモ二量体化の阻害剤に関する。
Bcl-2 L10の二量体化を阻害することができる化合物を同定するために、当業者は、実施例5に説明されるような実験を用いることができる。
Bcl-2 L10の二量体化を阻害することができる前記化合物は、本願において説明される化合物、特にペプチドドメインを含むもの、優先的にはその配列が、
の配列と少なくとも80%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基が保存されているものを含むペプチドドメインの中から優先的には選択される。
本発明の特別な態様によれば、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置におけるその使用のための前記Bcl-2 L10ホモ二量体化阻害剤は、ペプチドドメインを含み、その配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11の配列の1つから選択される配列から成る。
本発明の別の実施形態によれば、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置におけるその使用のための前記Bcl-2 L10ホモ二量体化阻害剤は、ペプチドドメインで構成され、その配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11の配列の1つから成る。
(細胞膜の通過を容易にする阻害剤の構造)
上述のとおり、IP3R受容体は、小胞体の膜に位置している。したがって、IP3R受容体に結合するためには、競合阻害剤は前記膜に到達することができなければならない。
したがって、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置における使用のための、前記競合阻害剤は、例えば血液を通してヒトに投与される場合、細胞膜を通過することができ、したがって細胞質に存在することができ、そこでIP3R受容体に付着することができることが重要である。細胞膜は、ペプチド等の親水性分子に対して不透過性である。
ペプチドの生細胞への侵入、及び様々な細胞内コンパートメント、特に細胞質区画へのアクセスの問題は、これらの治療的使用にとって非常に重要である。
生体膜を通したペプチドの輸送を容易にするために3つの手法が主に用いられる:
-ペプチドと同時に投与される化合物であって、その化合物の存在により細胞膜を通したペプチドの輸送が容易になるものの使用;あるいは
-ペプチドを封入(被包、カプセル化)する構造、例えばリポソーム又はポリマーの使用;あるいは
-ペプチドのN末端又はC末端に融合され、細胞膜の通過を容易にする及び/又は特定の細胞構造に導く標的化化合物の使用。
これらの3つの手法は、互いに独立して用いられてもよいし、同時に用いられてもよい。
酵素的分解からのペプチドの保護、及び親水性ペプチドの疎水性障壁の通過の両方を可能にする、封入構造の使用は、当業者に周知である。
リポソームは、脂質層から構成される小胞構造であり、親水性の化合物を脂質内部に封入することができる。リポソームは、ヒト治療において、医薬ベクターとして、ますます用いられるようになっている。
親水性活性化合物(ペプチド)の封入に最も一般的に用いられるポリマーは、乳酸及びグリコール酸の誘導体(PLGA、PLA)、エチルセルロース、及びポリ(イプシロン-カプロラクトン)であり、これらは生分解性である。
(標的化化合物)
標的化化合物は、以下[ADR]と表示し、競合阻害剤の機能を有するペプチドドメインと融合されるものであるが、ペプチドであっても非ペプチド分子であってもよい。
目的のペプチドに融合された標的化化合物は、特に、前記ペプチドの細胞の外側から内側への輸送を容易にする及び/又は媒介する、任意のアミノ酸配列であってもよい。そのような配列は、当業者に公知である。これらは、一般的には2〜20アミノ酸から成る。前記ペプチドの細胞内への透過を可能にする前記配列は、透過有効性を最大化するために、前記細胞の細胞型に応じて選択してもよい。
これらの標的化化合物の中で、配列番号12に示される配列(RKKRRQRRR)を有するレトロウイルスHIVのTATタンパク質に由来するペプチド、配列番号13に示される配列(RQIKIWFQNRRMKWKK)から成るペネトラチン(penetratin)、「X7/11R配列」と称される配列であって、7個〜11個のアルギニン残基(7/11R)を含有する7〜20アミノ酸の任意のペプチド配列を表し、アルギニン残基が前記配列内に無作為に配置されていてもよい、配列、及びホメオドメインタイプペプチドを特に挙げることができる。
また、特定の標的化化合物、例えばL.モノサイトゲネス(L. monocytogene)のミトコンドリア標的化ドメインActA、又はヒトシトクロムb5タンパク質に由来する小胞体標的化ドメインcb5を挙げることもできる。
好ましい実施形態によれば、前記競合阻害剤の細胞への透過を可能にする標的化化合物は、配列番号12の配列の、HIV-TATに由来するペプチドである。
本発明の特定の実施形態によれば、ペプチドに融合されたHIV-TAT標的化ドメインは、国際出願WO 2015/038662に示されるように、細胞内でのペプチドのバイオアベイラビリティを向上させるために二量体化されてもよい。
本発明の別の特定の実施形態によれば、HIV-TAT標的化ドメインは、2個のアミノ酸「CK」、すなわちシステイン及びリジンが先行していてもよく、これらの存在により、酸化条件におけるHIV-TATドメインの二量体化が向上する。
二量体TATは、光等の外部の物理的因子を用いることなく、ペプチドの効率的な細胞侵入を可能にする、強化されたエンドソーム脱出特性を有する。
(本発明の競合阻害剤の構造)
本発明によれば、その細胞がBcl-2 L10を発現する、がんの処置におけるその使用のための競合阻害剤は、互いにカップリングされた複数のペプチド又は非ペプチドドメインから成っていてもよい。
特に、競合阻害剤は、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z
(式中:
・ADRは、標的化化合物を表し、
・ESPは、スペーサーを表し、
・DOMは、上に規定するペプチドドメインであり、
・SADRは、特定の細胞内標的化ドメインを表し、
ここで、x、y、及びzは、互いに独立に0又は1に等しく、(x + y + z)の合計は、1以上である)
に従って構築されている。標的化化合物は、特に、上に挙げた化合物の1つである。一実施形態において、標的化化合物は、2個のアミノ酸「CK」が先行するHIV-TAT標的化ドメインである。
ペプチドの効率的な二量体化を達成するために、ペプチドの配列がシステイン残基を全く含まないことが好ましい。
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、HIV-TAT標的化ドメインに2個のアミノ酸「CK」が先行する場合、ペプチドドメインDOMは、システイン残基を全く含まない。
本発明のより好ましい実施形態において、HIV-TAT標的化ドメインに2個のアミノ酸「CK」が先行する場合、ペプチドドメインDOMは、配列番号8の配列を含む。
スペーサーは、分子スペーサーとも称されるが、2つの分子の部分間の結合を確保するセグメントを表す。本発明の意義の範囲内では、これは、活性なペプチドドメインと、疎水性ゆえに活性なペプチドドメインの機能に悪影響を及ぼし得る標的配列とを分離することを意図したドメインである。
このスペーサーは、「リンカー」又は「連結部分」とも称されるが、ペプチドであってもよく、非ペプチド分子であってもよい。ペプチドである場合は、サイズに関しては少なくとも3アミノ酸長であり、最大で50アミノ酸長である。スペーサーペプチドのサイズは、好ましくは5〜30アミノ酸長の間、最も好ましくは5〜20アミノ酸長の間である。
スペーサーは、一般的には3つのカテゴリーに分類される:フレキシブルな(柔軟な、曲がりやすい)スペーサー、固い(曲がらない)スペーサー、及びインビボ切断可能なスペーサー。(Chen et al., 2013)による総説に掲載されている全てのスペーサーを、本発明に係る競合阻害剤の構造に用いることができる。
このスペーサーは、活性なペプチドドメインと標的配列との間に位置するが、[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]zという全体構造の分子を、細胞膜の通過及びエンドソームによる捕捉の間にわたって維持するのに十分なほど安定でなければならない結合によって、維持される。続いて、結合はもはや必要でなくなり、分子はスペーサーで切断され得る。
本発明の一実施形態において、スペーサーは、インビボ切断可能なスペーサーに属し、[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]zの構造は、細胞内で切断される。本発明の別の実施形態によれば、スペーサーは、フレキシブルなタイプのものであり、グリシン及びセリン残基から成る。
以下に示される例は、配列番号14(GGSGG)に示される配列のそのようなフレキシブルなスペーサーを含む、構造[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z(式中、y=1)の競合阻害剤を説明している。
上に言及された種々の配列を、表3に示す:
本発明の特別な態様によれば、スペーサーのアミノ酸配列は、ペプチドを検出又は精製するためのマーカーでもある。例えば、スペーサーペプチドは、「HA TAG」ペプチドから構成されてもよい。
本発明の特別な態様によれば、競合阻害剤は、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z
(式中:
・ADRは、標的化化合物を表し、
・ESPは、スペーサーを表し、
・DOMは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11から選択される配列の1つを有するペプチドドメインであり、
・SADRは、特定の細胞内標的化ペプチドドメインを表し、
・x、y、及びzは、1に等しい)
に従って構築されている。
本発明の特別な態様によれば、競合阻害剤は、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z
(式中:
・ADRは、標的化化合物を表し、
・ESPは、スペーサーを表し、
・DOMは、配列番号2又は配列番号3又は配列番号8の配列の1つを有するペプチドドメインであり、
・SADRは、特定の細胞内標的化ペプチドドメインを表し、
・x、y、及びzは、1に等しい)
に従って構築されている。
本発明の別の特定の態様によれば、競合阻害剤は、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z(式中、ADRは、配列番号12の配列の、TAT-HIVに由来するペプチドから成る標的化化合物を表し、xは、1に等しい)に従って構築されている。
本発明の別の特定の態様によれば、競合阻害剤は、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z(式中、ESPは、配列番号14の配列のスペーサーを表し、yは、1に等しい)に従って構築されている。
本発明の別の特定の態様によれば、競合阻害剤は、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z(式中、ESPは、配列番号14の配列のスペーサーを表し、zは、1に等しい)に従って構築されている。
本発明に係る使用のための競合阻害剤は、専らペプチドドメインのみから成っていてもよく、特に、ドメインADR、ESP、及びSADRがペプチドドメインであることを特徴としてもよい。
以下の表4は、本発明に係る使用のためのペプチドの特定の配列を表す。
本発明に係る使用のための競合阻害剤は、配列番号4、18、又は27のいずれか1つにおいて表されるペプチド配列を有する、少なくとも1個のペプチドを含んでもよい。
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、本発明に係るその使用のための競合阻害剤は、配列番号4に表されるペプチド配列を有するペプチドから成る。
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、本発明に係るその使用のための競合阻害剤は、配列番号18に表されるペプチド配列を有するペプチドから成る。
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、本発明に係るその使用のための競合阻害剤は、配列番号27に表されるペプチド配列を有するペプチドから成る。
一般的に、本願は、医薬としての使用のための、少なくとも1つのIP3R受容体のリガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤に関する。
事実、本願発明者らは、Bcl-2 L10タンパク質のIP3R受容体への結合を阻害し、ひいてはIP3R受容体がBcl-2 L10により受けているカルシウムチャネルの開口の阻害を取り除く、この競合阻害剤の治療効果を実証した。
IP3R受容体をBcl-2 L10の存在に非依存的にすることにより、他のシグナル、特にそのリガンドであるIP3の濃度の変化に再び感受性にすることができる。
したがって、競合阻害剤を、あらゆる種類の治療用途に、特にIP3R受容体の機能及び/又は制御に直接的又は間接的に関連する病的状態において、医薬として用いてもよい。
この医薬は、主にヒトを対象としているが、脊椎動物において、特に哺乳動物においても、用いてもよい。
医薬としてのその使用において、投与する競合阻害剤の量は、対象の患者の体重、所望の作用、また処置の頻度に依存して適合させる用量に応じて変動し得ることが理解される。これらの用量は、当業者には周知であり、一般的な知識を用いて当業者により容易に決定することができる。
本発明に係るその使用のための競合阻害剤は、任意の適切な経路を介して、例えば経口、舌下、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内、局所、又は眼科的に、投与されてもよい。
注入(注射)による投与を、例えば、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、又は筋肉内に、行ってもよい。
また、任意の粘膜経路、例えば、泌尿生殖器、肛門直腸、呼吸器、頬鼻、舌下の経路又はこれらの組合せを用いてもよい。
本発明に係る競合阻害剤は、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置において医薬として用いられる。
「がんを処置する」は、全てのがん性細胞、特に起始(原発)腫瘍の、減少又はさらには患者の身体からの完全な消滅をもたらすことを意味することを意図する。
本発明の意義の範囲内において、「その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがん」という表現は、多数の種類のがん、特に乳癌、前立腺癌、及び肺癌、並びに造血器腫瘍、例えば急性骨髄性白血病及び骨髄異形成症候群を網羅する。
本発明の特別な態様によれば、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置におけるその使用のための競合阻害剤は、少なくとも第2の活性薬剤及び/又はがんを処置するための任意の従来の方法と組み合わせて投与される。
特に、前記第2の活性薬剤は、化学療法製品又は免疫療法製品である。
一実施形態において、がんを処置するための前記従来の方法は、外科手術又は放射線療法である。
本発明の意義の範囲内において、「化学療法製品」は、がん細胞のアポトーシスを誘導することが意図される、がんの処置において用いられる治療的化合物を意味することが意図される。そのような製品は、当業者に周知である。
本発明の特別な態様によれば、前記化学療法製品は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ベンダムスチン、ダカルバジン、テモゾロミド、エストラムスチン、メトトレキサート、アザシチジン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、テガフール、ペメトレキセド、ネララビン、ヒドロキシカルバミド、ラルチトレキセド、ドキソルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ドセタキセル、パクリタキセル、タプシガルギンと称される製品、及びそれらの誘導体を含む一覧から選択される。
本発明の意義の範囲内において、「少なくとも1つの化学療法製品と組み合わせて投与される」という表現は、2つの治療的化合物、競合阻害剤及び化学療法製品を、同時に又は連続して用いてもよいことを示し、特に、これらを、患者の処置の間、時間内に別個に投与してもよい。
本発明は、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置において、上述の少なくとも1つの競合阻害剤と組み合わせて用いるための化学療法製品にも関する。
本発明は、少なくとも1つの競合阻害剤と組み合わせた、医薬として用いられる競合阻害剤であって、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの、化学療法処置への応答のモジュレーターである、競合阻害剤にも関する。
用語「応答モジュレーター」は、本発明に係る競合阻害剤の、化学療法製品、特にその細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置に用いられる製品の治療効果を最大化する能力を表す。したがって、競合阻害剤が、少なくとも1つの化学療法製品と組み合わせた医薬として用いられる場合、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの処置の状況において、化学療法製品を用いた前記処置は、前記がんに対してより有効である。
「前記がんに対して有効である」という表現は、特に、処置に用いられる化学療法製品の量が、競合阻害剤が前記化学療法製品と組み合わせた医薬として用いられる場合、通例用いられるものよりも少なくなるという事実を表す。
また、「前記がんに対して有効である」という表現は、前記化学療法製品を用いる処置が、競合阻害剤が前記化学療法製品と組み合わせた医薬として用いられる場合、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんに罹患している患者において通例行われるものよりも短くなるという事実も表してもよい。
また、本発明は、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんを処置する方法であって、少なくとも1つのIP3R受容体のリガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤を、前記がんに罹患する患者に投与する工程を含む、方法にも関する。
また、本発明は、その細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんを処置する方法であって、少なくとも1つのIP3R受容体のリガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤を、前記がんに罹患する患者に投与する工程と、少なくとも1つの化学療法製品を前記がんに罹患する患者に投与する別の工程とを含み、2つの投与工程が同時でも逐次的であってもよい、方法にも関する。
(競合阻害剤)
本発明は、IP3R受容体の少なくとも1つのリガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤であって、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z
(式中:
・ADRは、標的化化合物であり、
・ESPは、スペーサーであり、
・DOMは、ペプチドドメインであり、その配列が、
の配列と少なくとも80%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基が保存されており、
・SADRは、特定の細胞内標的化ペプチドドメインを表し、
ここで、x、y、及びzは、互いに独立に0又は1に等しく、(x + y + z)の合計は、1以上である)
に従って構築されている、阻害剤にも関する。
本発明は、上記の構造に従って構築されている、以前に記述された全ての阻害剤に関する。
特定の実施形態において、DOMは、その配列が、配列番号1の配列と、又は配列番号2の配列と、又は配列番号3の配列と、又は配列番号8の配列と、少なくとも80%同一性、優先的には少なくとも90%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基が保存されている、ペプチドドメインである。
一実施形態において、競合阻害剤は、ADR、ESP、及びSADRのドメインが、ペプチドドメインであることを特徴とする。
特定の実施形態において、競合阻害剤は、配列番号4、配列番号18、及び配列番号27から成る群の中から選択されるアミノ酸配列により表されるアミノ酸配列を含む。
より特定の実施形態において、競合阻害剤は、配列番号4、配列番号18、及び配列番号27から成る群の中から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドで構成される。
(医薬組成物)
その態様の別のものによれば、本発明は、医薬的に許容される媒体中に、少なくとも1つの上述の競合阻害剤を含む、医薬組成物に関する。
好ましい実施形態によれば、本発明は、医薬的に許容される媒体中に、少なくとも1つのIP3R受容体のリガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤であって、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z
(式中:
・ADRは、標的化化合物であり、
・ESPは、スペーサーであり、
・DOMは、ペプチドドメインであり、その配列が、
の配列と少なくとも80%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基が保存されており、
・SADRは、特定の細胞内標的化ペプチドドメインを表し、
ここで、x、y、及びzは、互いに独立に0又は1に等しく、(x + y + z)の合計は、1以上である)
に従って構築されている阻害剤を少なくとも1つ含む医薬組成物に関する。
そのような競合阻害剤は、特に、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11に示される配列のペプチドドメイン(DOM)を含んでいてもよい。
また、競合阻害剤は、配列番号4、配列番号18、及び配列番号27から成る群の中から選択されるアミノ酸配列により示されるアミノ酸配列も含んでもよい。
また、そのような競合阻害剤は、配列番号4、配列番号18、及び配列番号27の配列の1つに示される配列のペプチドドメインから成っていてもよい。
本発明のBcl-2 L10/IP3R受容体結合の競合阻害剤又は医薬組成物は、任意の医薬的に許容される媒体又はビヒクルと共に製剤化されてもよく、また、任意の固体、半固体、液体、又は気体の形態、例えば錠剤、カプセル、ゲルカプセル、粉末、顆粒、エマルション、懸濁液、ゲル、ミクロスフェア、又は吸入形態に製剤化されてもよい。
一実施形態によれば、本発明に係るBcl-2 L10/IP3R受容体結合の競合阻害剤又は本発明の医薬組成物は、経口経路用に、錠剤、カプセル、又はゲルカプセルの形態で、持続放出又は制御放出用に、丸薬、粉末、液体、懸濁液、シロップ、又はエマルションの形態で、製剤化されてもよい。
別の実施形態によれば、本発明に係るBcl-2 L10/IP3R受容体結合の競合阻害剤又は本発明の医薬組成物は、注射(注入)可能な形態に調製されてもよい。本発明のポリペプチド又は核酸は、種々の担体、例えばリポソーム又はトランスフェクションポリマーと共に製剤化してもよい。
本発明の医薬組成物は、好ましくは、本願明細書に規定する阻害剤を、医薬的に許容されるビヒクル、例えば水性ビヒクル中の懸濁液で含んでもよい。様々な水性ビヒクル、例えば水、生理食塩水緩衝液、0.4%又は0.3%のグリシン溶液、又はヒアルロン酸溶液を用いることができる。
本発明の好ましい態様によれば、医薬組成物は、生物学的膜を通したペプチドの輸送を容易にすることができる剤、例えばCHARIOTTM Protein Delivery Reagentをさらに含む。
本発明に係る医薬組成物は、任意の従来の公知の方法、例えば濾過により、滅菌されてもよい。得られる水性溶液は、そのまま使用するように調整されてもよいし、又は凍結乾燥されてもよい。凍結乾燥調製物を、使用前に無菌溶液と組み合わせてもよい。
本発明の医薬組成物は、任意の必要な医薬的に許容される賦形剤、例えば緩衝剤又はpH若しくは等張性を調整するための剤、及び湿潤化剤を含んでもよい。また、本発明に係る医薬組成物は、1以上の抗酸化剤、1以上の防腐剤、及び任意選択で他の医薬活性薬剤も含んでもよい。
特定の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、有効量のBcl-2 L10/IP3R相互作用の競合阻害剤を含む。
本発明に係る阻害剤の有効量は、単独で、又はそれに続く用量と組み合わせて、所望の応答、すなわちBcl-2 L10/IP3R受容体結合に関する阻害作用、及びその結果としてBcl-2 L10がIP3R受容体のカルシウムチャネルの機能に対してかけている阻害の除去を誘導する量である。そのような阻害剤の有効量は、1つのパラメーター又は複数のパラメーター、例えば投与経路、単回投与か複数用量投与か、又は年齢、健康状態、身長、体重、及び病気若しくは疾患を含む患者の特徴に依存してもよい。これらのパラメーター及びそれらの影響は、当業者に周知であり、公知の方法により決定してもよい。
前記組成物は、任意の種類の処置において、特にその細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現するがんの全ての種類の予防及び/又は処置との関連において、用いることができる。
「実施例1. Bcl-2 L10(Nrh)タンパク質の細胞局在」
Bcl-2 L10/Nrhタンパク質を内在的に発現しているヒト乳がん細胞MDA-MB-231を培養し、その後溶解させる。複数の抽出物をゲルに乗せる:総画分、ミトコンドリア画分(Mito)、小胞体(reticular)画分(ER)、及び100000Gでの遠心分離後に得られる可溶性画分(S100)。ビンキュリン、カルネキシン、及びF0F1のタンパク質を対照として用いる。
小胞体(ER)におけるBcl-2 L10/Nrhタンパク質の局在が、図2の3段目に明確に可視化される。
「実施例2. タプシガルギンの存在下又は非存在下における、Nrhタンパク質の発現を妨げる干渉RNAの作用」
MDA-MB-231細胞を、NrhのmRNAに対するsiRNA(si3-Nrh又はsi6-Nrh)で、又は対照siRNA(siSCR)でトランスフェクトした。これらの細胞において、Nrhの発現は大きく低減される。
トランスフェクションの48時間後、細胞を、DMSO(対照)又は10 μMのタプシガルギン(THG)と共に、6時間、24時間、及び36時間インキュベートする。結果を図3に示す。カスパーゼ3及び7の活性を、パーセンテージで測定する。10%より高い活性は、細胞がアポトーシスのプロセスに入ったことを示し、これは、細胞のアポトーシスを誘導する化学療法化合物であるタプシガルギンの存在下において予想されることである。一方、DMSOの存在下では、細胞はカスパーゼ活性を呈さないはずである。
しかしながら、Bcl-2 L10/Nrhの発現をブロックする干渉RNAの存在下では、タプシガルギン処置無しであっても、36時間インキュベートされた細胞は10%より高いカスパーゼ活性を有する。
さらに、タプシガルギンの存在下では、干渉RNAでトランスフェクションされた細胞は、対照干渉RNAでトランスフェクションされた細胞に関して観察されたものよりもはるかに大きいカスパーゼ活性を有する。
したがって、Bcl-2 L10/Nrhタンパク質の発現の不在は、タプシガルギンの作用の著しい増強をもたらすが、この作用は、インキュベーション速度論(動態)中にますます顕著になる。
「実施例3. タプシガルギンの存在下又は非存在下における、Bcl-2 L10/Nrhに由来する変異又は融合タンパク質の作用」
nrh遺伝子から開始して、複数のポリペプチドコンストラクトを作製した:
- 野生型のヒトBcl-2 L10/Nrhタンパク質、完全型:Nrh-WT;
- 野生型のBcl-2 L10/Nrhタンパク質、ヒトシトクロムb5タンパク質に由来する小胞体を標的とするための化合物を伴う完全型:Nrh-cb5:Nrh-cb5、
- 野生型のBcl-2 L10/Nrhタンパク質、L.モノサイトゲネスのミトコンドリアActAを標的とするための化合物を伴う完全型:Nrh-ActA、
- 膜アンカードメインが欠失している、Bcl-2 L10/Nrhタンパク質:Nrh-dTM、
- N末端のBH4ドメインが欠失している、Bcl-2 L10/Nrhタンパク質:Nrh-dBH4。
これらの様々な融合タンパク質/変異タンパク質を、図4Aに示す。
これらの様々なタンパク質の作用を、空ベクターpCS2+による、又はNrh、Nrh-ActA、Nrh-cb5、dTM、又はdBH4をコードするコンストラクトを用いた、HeLa細胞のトランスフェクションの後に観察した。
10 μMのタプシガルギンで24時間処理したこれらの細胞におけるカスパーゼ活性の測定を、図4Bに示す。
カスパーゼ活性は、タプシガルギンの存在下で大いに誘導されるようであり、これは予想される作用と一致している。Bcl-2 L10/Nrh-WTタンパク質が細胞内で過剰発現されると、この作用は半減する;この作用は、小胞体に標的化されているNrhタンパク質、又は膜アンカードメインが欠失したものの存在下では維持される。
しかしながら、Bcl-2 L10/Nrhタンパク質が、BH4ドメインを欠失している場合、又はミトコンドリアに標的化されている場合、アポトーシスブロック作用は、もはや観察されず、カスパーゼ活性は、このタンパク質の非存在下でのものと同じパーセンテージレベルに維持される。
したがって、Bcl-2 L10/Nrhタンパク質の小胞体での局在、及びそのBH4ドメインの存在が、タプシガルギンにより誘導されるアポトーシスをブロックする作用を得るためには必須であると結論付けることができる。
「実施例4. タプシガルギンの存在下及び非存在下でBcl-2 L10/IP3R相互作用を妨げる競合阻害剤として使用できる可能性がある様々なペプチドの構築」
複数のペプチドコンストラクトを、ペプチドNrh 1-23から作製したが、該ペプチドの配列は、以下のとおりである:
図5Aは、実行した様々な点変異を示すが、ここでは、配列番号2の配列のペプチドNrh 1-23を、Nrh R6A(配列番号5)、Nrh D15A(配列番号7)、Nrh Y16F(配列番号6)、及びNrh C20A(配列番号8)のペプチドを作るように変異させ、これらをC末端でシトクロムb5細胞内標的化ドメイン(配列番号15)と融合させる。
図5Bは、これら種々のペプチドが、Bcl-2 L10/NrhのIP3R1受容体のBDドメインとの相互作用を阻害する能力を示す。この相互作用を、免疫沈降手法により定量し、BDドメインをHAエピトープで標識し、Bcl-2 L10/Nrhタンパク質をFlagエピトープで標識する。
HeLa細胞を、Flag-Nrh、HA-hBD、及び1:2の比でFlag標識したNrh 1-23ペプチドの種々の点変異をコードするプラスミドでトランスフェクトし、免疫沈降を、抗HA抗体を用いて行った。
ペプチドの非存在下では、Flag-NrhとHA-hBDとの相互作用が観察される。しかしながら、Nrh 1-23ペプチド(配列番号2)、Nrh D15Aペプチド(配列番号7)、又はNrh C20Aペプチド(配列番号8)をコードするプラスミドを加えると、図5Bのウェスタンブロットにおいて、Flag-Nrhタンパク質に相当するバンドが存在しないことが認められ、これらのペプチドがNrh/IP3R1相互作用を解離させることが実証される。一方、Nrh R6A(配列番号5)及びNrh Y16F(配列番号6)のペプチドの存在下では、Flag-Nrhタンパク質に相当するバンドは、かすかにではあるが依然として視認できる。
したがって、6位のアルギニン残基及び16位のチロシン残基が、NrhとIP3R1との間の相互作用を解離させるNrh 1-23ペプチドの生物学的機能に決定的であるという結論を導き出すことができる。15位のグルタミン残基及び20位のシステイン残基は、Nrh 1-23ペプチドの機能に必須ではない。
図5Cは、これら様々なペプチドのいくつかの、HeLa細胞へのトランスフェクションの作用を示し、対照細胞は、空ベクターpCS2+でトランスフェクションされている。
10 μMのタプシガルギンで24時間処理したこれらの細胞におけるカスパーゼ活性の測定を、図5Cに示す。
対照細胞においては、カスパーゼ活性は、タプシガルギンの存在下で誘導されているようであり、これは予想される作用と一致している。Nrh 1-23ペプチド(配列番号2)が存在し、したがってBcl-2 L10/IP3R1相互作用を阻害する場合、タプシガルギンのこの作用は増強され、カスパーゼ活性は事実上2倍になる;この作用は、ペプチドNrh C20Aの存在下で維持されるが、チロシンY16において点変異を行うと消失する。
「実施例5. ペプチドNrh及びBcl-2 L10タンパク質の二量体化」
図6は、ペプチドNrh 1-23が全長タンパク質Nrh(Bcl-2 L10)と相互作用する能力を実証するために実現された実験を示す。
(A) HeLa細胞を、空ベクターpCS2+、Flag-Nrh、HA-hBD、又は、Nrhへの結合能力を有することで周知のタンパク質であるHA-Beclin1(HA-BECN1と称する)のいずれかでトランスフェクトし、その後、細胞抽出物を、5 μgのビオチン標識Nrh 1-23野生型ペプチドと共に、又はこれを伴わないで、インキュベートした。ストレプトアビジンを用いて、ビオチン標識Nrhペプチドを含む複合体をプルダウンする。
図6Aにおいて、Nrh 1-23ペプチドは、Nrhとのみ相互作用することが可能であるが、HA-hBDやHA-BECN1とは相互作用することができないようである。
(B) HeLa細胞を、空ベクターpCS2+、Flag-Nrh、又はFlag-Nrz(ゼブラフィッシュ由来のオーソログ)でトランスフェクトし、その後、細胞抽出物を、(i) 5 μgのビオチン標識Nrh 1-23野生型ペプチド又は(ii) Nrh 1-23 R6A Y16F二重変異ペプチドと共にインキュベートした。ストレプトアビジンを用いて、ビオチン標識Nrhペプチドを含む複合体をプルダウンする。
Nrh 1-23は、Nrhとのみ相互作用することが可能であるが、Nrzとは相互作用することができないようであり、したがって、種特異性のレベルを示している。
さらに、二重変異体Nrh 1-23 R6A Y16Fは、Nrhとの相互作用が低減されている。これらの残基、R6及びY16の少なくとも一つが、Nrh/Nrh 1-23相互作用に決定的であると結論付けることができる。
図7は、全長タンパク質Nrh(Bcl-2 L10)が二量体化する能力を実証するために実現された実験を示す。
図7は、抗HA抗体との共免疫沈降を用いてFlag-NrhとHA-Nrhとの間の相互作用の定量化を図示する。Nrhホモ二量体の形成が観察される。
Nrhホモ二量体化は、Nrh 1-23ペプチドとインキュベートすることにより防ぐことができるが、決定的なY16残基における点変異によりその機能を失っている変異ペプチドNrh 1-23 Y16Fでは防ぐことができない。
「実施例6. 本発明に係る、又はチロシン16に変異を有する、競合阻害剤のペプチドコンストラクト」
図9Aは、配列番号4の配列に示されるペプチドコンストラクト「TAT Nrh 1-23」;及び、チロシン16が保存されておらず、TAT(配列番号12)、スペーサー(配列番号14)、及びメチオニンを含まない配列番号6の配列の組合せを含む、本発明外のコンストラクト「TAT-Nrh 1-23 Y16F」を示す。
図9Bは、緩衝液[H2O−0.1%トリフルオロ酢酸]に、20%トリフルオロエタノール中80 μMの濃度に溶解したペプチドTAT-Nrh 1-23及びTAT-Nrh 1-23 Y16Fの円偏光二色性スペクトルを示す。
2つのペプチドコンストラクトは、アルファヘリックス構造の特徴的なシグネチャを有する。したがって、点変異Y16Fはペプチドの3次元構造には影響しないが、競合阻害剤の生物学的機能には影響することが示される。
「実施例7. MDA-MB-231細胞における、本発明に係る(TAT Nrh 1-23)又は本発明外の(TAT Nrh 1-23 Y16F)ペプチドコンストラクトの存在下での、内在性タンパク質Bcl-2 L10/NrhとIP3R1との間の相互作用」
図10Aは、近接ライゲーションアッセイ(PLA)実験の結果を示す。
MDA-MB-231細胞を、TAT Nrh-1-23ペプチド(配列番号4)又は対照ペプチドTAT-Nrh 1-23 Y16F(配列番号12、14、及び6)と共に、4時間インキュベートする。細胞を3回洗浄した後、488 nmレーザーを用いて、エンドソームに存在するフルオロフォア(FITC)を励起し、エンドソーム膜を破裂させ、TAT-FITCペプチドを細胞質に放出する。細胞を12時間インキュベートし、その後固定し、NrhとIP3R1との間の相互作用を、ウサギ抗Nrh一次抗体及びマウス抗IP3R1一次抗体を用いて、PLAにより定量する。この工程の後に、それぞれ相補的ヌクレオチドプローブとカップリングした、抗ウサギ及び抗マウス二次抗体の混合物とのインキュベーションが続く。その後、ライゲーション、そして増幅の工程を、蛍光ヌクレオチドの存在下で行い、それにより、プローブが空間的に近接した場合に特異的シグナルを増幅することができる。各ドットが細胞の相互作用に対応する、蛍光シグナルを、Nikon NiE蛍光顕微鏡を用いて記録する。画像をImage Jソフトウェアにより定量化し、相互作用スコアを細胞あたりのドットの数として、グラフに表す(N=3)。
複数のPLA実験の定量を示す図10Aにおいて、細胞あたり80 ± 5及び87 ± 6ドットのスコアが、ペプチド希釈緩衝液(ビヒクル)又はペプチドTAT Nrh 1-23とのインキュベーション後、488 nmのフラッシュの非存在下、よってペプチドの細胞質への放出の非存在下で、観察される。
反対に、488 nmのフラッシュを用いてペプチドTAT Nrh Y16Fを放出した場合、スコアは、細胞あたり65 ± 5、そしてペプチドTAT Nrh 1-23を用いた場合は11 ± 1ドットに低下した。
この定量化手法によれば、Nrh/IP3R1相互作用の阻害パーセンテージは、本発明外のペプチドの存在下における対象の陰性対照に準じて、18.75%((80-65)/80)〜25%((87-65)/87)の間である。ペプチドTAT Nrh 1-23の存在下では、Nrh/IP3R1相互作用の阻害パーセンテージは、対象の陰性対照について、86%又は87%に等しい。
したがって、この定量実験によって、TAT Nrh 1-23ペプチドにより、Nrh/IP3R1相互作用の少なくとも30%の阻害に相当する、NrhとIP3R1との間の内因性相互作用の効果的な解離が可能になる、また、TAT Nrh Y16Fペプチドは、30%の限界値未満の、非常に限定された様式でのみ、相互作用に影響すると結論付けることができる。
「実施例8. 本発明に係る(TAT Nrh 1-23)又は本発明外の(TAT Nrh 1-23 Y16F)ペプチドコンストラクトの、タプシガルギンの存在下又は非存在下における生物学的活性」
Bcl-2 L10タンパク質を内在的に発現するMDA-MB-231細胞を、種々のペプチドを含有するエンドソームを破裂させることを意図した光のフラッシュの後に又はフラッシュ無しで、ペプチドTAT-Nrh 1-23(配列番号4)、又はペプチドTAT-Nrh 1-23 Y16F(配列番号12、14、及び6)と共に、36時間インキュベートする。
結果を図10Bに示す。
ペプチドが細胞質に放出されると、本発明に係るペプチドコンストラクトは、タプシガルギンと組み合わさって細胞に作用し、60%を超えるカスパーゼ活性を達成することができる。
「実施例9. 本発明に係る(dTAT 1-23 C20A)又は本発明外の(dTAT 1-23 Y16F C20A)他のペプチドコンストラクト」
配列番号27及び28に表される、2つの合成ペプチドが合成された。これらのペプチドは、TAT内在化ドメインのN末端に、システイン(C)及びリジン(K)残基を呈し、それにより、酸化条件におけるTAT配列の二量体化を可能にする。
二量体TAT(dTAT)は強化されたエンドソーム脱出特性を有するので、実施例7において用いられるような光等の外部の物理的因子を用いることなく、ペプチドの効率的な細胞侵入が成し遂げられる。
追跡の目的で、dTATペプチドはどちらも2位のリジンの側鎖にグラフトされたTMR(テトラメチルローダミン)蛍光基を有する。
Flag-Nrh(Bcl-2 L10)とHA-hBD IP3R1との間の相互作用は、Flag-Nrh又はHA-hBD IP3R1をコードするプラスミドでトランスフェクトし、Ca2+不含平衡塩溶液(121 mM NaCl、5.4 mM KCl、0.8 mM MgCl2、6 mM NaHCO3、5.5 mM D-グルコース、25 mM HEPES、pH 7.3)中、ビヒクル(ペプチド溶媒[H2O-TFA 0.1%])、及び:
- 10 μMの対照ペプチド(dTAT 1-23 Y16F C20A)又は
- 10 μMの野生型ペプチド(dTAT 1-23 C20A)
と共に、37℃で1時間予備インキュベートしたHeLa細胞における共免疫沈降により評価した。
回収前に細胞を2回洗浄し、37℃でさらに1時間インキュベートした。
図11Bに示すように、この実験において、dTAT 1-23 C20AはNrh/IP3R1複合体を妨げるが、dTAT 1-23 Y16F C20Aは妨げず、これは、これらが外的因子を用いないで細胞内に効果的に導入されたことを意味する。
この特定の実施形態は、ペプチドの内在化に関して、実施例7において以前用いられた天然TAT配列と比較して有利である。
「実施例10. マウスへのペプチドdTAT 1-23 C20Aの投与のインビボ効果」
SCIDマウスを、本発明に係るペプチドの投与の効果を試験するための腫瘍モデルとして用いた。
MDA-MB-231がん細胞を、SCIDマウスの乳腺脂肪体に注入した。
腫瘍が約90 mm3の平均体積に達したとき、マウスを、dTAT 1-23 C20Aペプチド(配列番号27、図11に示すものと同一のペプチドであるが、TMR蛍光基を有さない)の、10 mg/kg、腫瘍周辺注射による、3日毎に1回の投与、又はビヒクル単体(PBS)の、同一の注入周期での投与で処理した。
腫瘍体積を、ノギスを用いて週2回測定し(平均±SEM;n=条件あたり9頭のマウス;**、P < 0.01)、抗腫瘍単剤療法として用いた場合の、dTAT 1-23 C20Aペプチドの腫瘍成長における顕著な効果を示した(図12A)。
図12Bは、図12Aに示す実験の期間中にわたるマウスの体重の測定を示す(平均±SEM;n=条件あたり9頭のマウス)。処置マウスと対照マウスとの間に差異は無く、したがって処置は明白な毒性を示さない。

Claims (14)

  1. がんの処置における使用のための、少なくとも1つのIP3R受容体のリガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤であって、前記がんの細胞がBcl-2 L10タンパク質を発現する、阻害剤。
  2. ペプチドドメインを含み、その配列が、
    の配列と少なくとも80%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基が保存されていることを特徴とする、請求項1に記載の阻害剤。
  3. ペプチドドメインを含み、その配列が、
    の配列の1つと少なくとも80%の同一性を有し、下線を付したアルギニン及びチロシン残基が保存されていることを特徴とする、請求項2に記載の阻害剤。
  4. 以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z
    (式中:
    ・ADRは、標的化化合物であり、
    ・ESPは、スペーサーであり、
    ・DOMは、請求項2又は3に規定されるペプチドドメインであり、
    ・SADRは、特定の細胞内標的化ペプチドドメインを表し、
    ここで、x、y、及びzは、互いに独立に0又は1に等しく、(x + y + z)の合計は、1以上である)
    に従って構築されている、請求項2又は3に記載の阻害剤。
  5. ADR、ESP、及びSADRのドメインが、ペプチドドメインであることを特徴とする、請求項4に記載の阻害剤。
  6. 配列番号4、配列番号18、及び配列番号27から成る群の中から選択されるアミノ酸配列により表されるペプチド配列を有するペプチドから成る、請求項5に記載の阻害剤。
  7. 少なくとも第2の活性薬剤及び/又はがんを処置するための任意の従来の方法と組み合わせて投与される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の阻害剤。
  8. 前記第2の活性薬剤が、化学療法製品又は免疫療法製品である、請求項7に記載の阻害剤。
  9. がんを処置するための前記従来の方法が、外科手術又は放射線療法である、請求項7に記載の阻害剤。
  10. さらにBcl-2 L10のホモ二量体化を阻害する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の阻害剤。
  11. 少なくとも1つのIP3R受容体のリガンド結合ドメインへのBcl-2 L10タンパク質の結合の競合阻害剤であって、以下の構造:[ADR]x-[ESP]y-[DOM]-[SADR]z
    (式中:
    ・ADRは、標的化化合物であり、
    ・ESPは、スペーサーであり、
    ・DOMは、請求項2又は3に規定されるペプチドドメインであり、
    ・SADRは、特定の細胞内標的化ペプチドドメインを表し、
    ここで、x、y、及びzは、互いに独立に0又は1に等しく、(x + y + z)の合計は、1以上である)
    に従って構築されている、阻害剤。
  12. ADR、ESP、及びSADRのドメインが、ペプチドドメインであることを特徴とする、請求項11に記載の阻害剤。
  13. 配列番号4、配列番号18、及び配列番号27から成る群の中から選択されるアミノ酸配列により表されるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の阻害剤。
  14. 医薬的に許容される媒体中に、請求項11〜13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの阻害剤を含む、医薬組成物。
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