JP2019501266A - アルカリ金属水酸化物の使用と、非水性変換剤の遅延添加とによるカルシウムスルホネートグリースの製造 - Google Patents

アルカリ金属水酸化物の使用と、非水性変換剤の遅延添加とによるカルシウムスルホネートグリースの製造 Download PDF

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Abstract

【解決手段】付加アルカリ金属水酸化物を単独で、又は、(a)コンプレックス化酸と反応するカルシウム含有塩基として使用されるカルシウムヒドロキシアパタイト及び/又は付加炭酸カルシウム、及び/又は、(b)変換剤としての水の添加と非水性変換剤の一部の添加との間の少なくとも1つの遅延期間と組み合わせて含む、過塩基性カルシウムスルホネートグリース組成物及び製造方法である。遅延期間は、混合物の温度を調節するのに要する期間、混合物がある温度又はある範囲の温度に保持される期間、及びそれらの任意の組合せを含んでよい。これらのカルシウムスルホネートグリースは、特に低品質の過塩基性カルシウムスルホネートが使用される場合には、アルカリ金属水酸化物を添加せずに、水の添加と非水性変換剤の添加の間の遅延なく作製されたグリースと比較して、増ちょう剤収率が向上しており、滴点が高い。

Description

[関連出願の参照]
本出願は、2016年4月15日に出願された米国特許出願第15/130,422号と、2016年1月7日に出願された米国特許出願第14/990,473号とについて優先権を主張しており、米国特許出願第13/664,768号(現在は、2016年10月4日に発行された米国特許第9,458,406号)と米国特許出願第13/664,574(現在は、2016年3月1日に発行された米国特許第9,273,265号)の一部継続出願である。これら2つの米国特許出願は共に、2012年10月31日に出願されており、2011年10月31日出願の米国特許仮出願第61/553,674号の利益を主張している。
[1.技術分野]
本発明は、アルカリ金属水酸化物を添加して作られる過塩基性カルシウムスルホネートグリースに関しており、増ちょう剤収率(thickener yield)と滴点によって表される期待高温実用性の双方について、グリースを製造するために使用された油溶性過塩基性カルシウムスルホネートが低品質と認められる場合でさえも改善するものである。本発明は更に、付加アルカリ金属水酸化物と、非水性変換剤の遅延添加とを両方用いて製造された過塩基性カルシウムスルホネートグリースに関する。
[2.関連技術の説明]
過塩基性カルシウムスルホネートグリースは、長年にわたって確立されているグリースのカテゴリである。そのようなグリースを製造する1つの公知の方法は、「促進(promotion)」及び「変換(conversion)」の工程を含む二工程処理である。一般に、第1の工程(「促進」)は、塩基源としての酸化カルシウム(CaO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))の化学量論過剰量を、アルキルベンゼンスルホン酸、二酸化炭素(CO)、及び他の成分と反応させて、非晶性炭酸カルシウムが分散した油溶性過塩基性カルシウムスルホネートを生成するものである。これらの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、一般に、澄明で輝いており、ニュートンレオロジーを有している。それらは、僅かに濁っている場合もあるが、そのようなばらつきは、過塩基性カルシウムスルホネートグリースの調製における使用を妨げるものではない。本開示の目的に関して、「過塩基性油溶性カルシウムスルホネート」及び「油溶性過塩基性カルシウムスルホネート」並びに「過塩基性カルシウムスルホネート」の用語は、カルシウムスルホネートグリースを製造するのに好適な任意の過塩基性カルシウムスルホネートを指す。
一般に、第2の工程(「変換」)は、必要であれば、初期グリースが非常に硬くなるのを避けるために適切な基油(鉱油など)と共に、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、水、蟻酸又は酢酸などの変換剤を促進工程での産物に加えて、非常に微粉である結晶性炭酸カルシウムの分散物(カルサイト)へと、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶性炭酸カルシウムを変換するものである。酢酸又は他の酸が変換剤として使用される場合、典型的には、水と別の非水性変換剤(アルコールのような第3の変換剤)とが更に使用される。或いは、水のみが(第3の変換剤を用いずに)添加される場合には、変換は、典型的には、加圧容器内で起こる。過塩基性とするために、過剰な水酸化カルシウム又は酸化カルシウムが使用されるので、残存ずる少量の酸化カルシウム又は水酸化カルシウムも、油溶性過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる一部として存在しているかも知れず、それらは、初期グリース構造中に分散するであろう。変換によって形成された、極めて微粉の炭酸カルシウムは、コロイド分散としても知られ、カルシウムスルホネートと相互作用してグリース様ちょう度を成す。二工程処理を通じて生成されるそのような過塩基性カルシウムスルホネートグリースは、「単純カルシウムスルホネートグリース(simple calcium sulfonate greases)」として知られており、例えば、米国特許第3,242,079号、米国特許第3,372,115号、米国特許第3,376,222号、米国特許第3,377,283号及び米国特許第3,492,231号に開示されている。
反応を注意深く制御することにより、これら2つの工程を組み合わせて単一の工程とすることも、従来技術において知られている。この一工程処理において、単純カルシウムスルホネートグリースは、二酸化炭素、並びに、促進剤(二酸化炭素と過剰量の酸化カルシウム又は水酸化カルシウムとの反応によって非晶性炭酸カルシウム過塩基化が生じる)、及び、変換剤(非晶性炭酸カルシウムを非常に微粉の結晶性炭酸カルシウムへと変換する)の双方として同時に作用する反応物系の存在下で、適当なスルホン酸が水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの何れかと反応することによって調製される。従って、グリース様ちょう度は、過塩基性油溶性カルシウムスルホネート(二工程処理における第1の工程の産物)が、実際に形成されて別産物として分離することのないような単一の工程で形成される。この一工程処理は、例えば、米国特許第3,661,622号、米国特許第3,671,012号、米国特許第3,746,643号及び米国特許第3,816,310号に開示されている。
単純カルシウムスルホネートグリースの他に、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースも、従来技術において知られている。これらのコンプレックスグリースは、一般に、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムなどのカルシウム含有強塩基を、二工程処理又は一工程処理の何れかで製造される単純カルシウムスルホネートグリースに加えて、化学量論等量まで、12−ヒドロキシステアリン酸、ホウ酸、酢酸又はリン酸などのコンプレックス化酸(変換前に添加される場合には、変換剤であってもよい)と反応させることによって製造される。単純グリースに対して主張されているカルシウムスルホネートコンプレックスグリースの利点には、粘着性が低下すること、ポンパビリティー(pumpability)が改善されること、及び高温実用性が改善されることが含まれる。カルシウムスルホネートコンプレックスグリースは、米国特許第4,560,489号、米国特許第5,126,062号、米国特許第5,308,514号及び米国特許第5,338,467号に開示されている。
二工程法を使用する既知の先行技術の大半は、通常は加熱前に全ての変換剤(水及び非水性変換剤)を同時に添加することを教示している。しかしながら、幾つかの先行技術文献には、水の添加と非水性変換剤の少なくとも一部の添加との間の時間間隔(例外なく、十分に定義されていないか、全く定義されていない)が開示されている。例えば、米国特許第4,560,489号は、基油と過塩基性炭酸カルシウムを約150°Fまで加熱し、次いで水を添加し、次に混合物を約190°Fに加熱してから酢酸及びメチルセロソルブ(エチレングリコールの高毒性モノメチルエーテル)を添加するプロセス(実施例1乃至3)を開示している。得られたグリースは38%を超える過塩基性カルシウムスルホネートを含んでいる。‘489特許によれば38%未満の過酸化水素を使用することで柔らかいグリースが得られることから、‘489特許は、そこに開示されたプロセスの過塩基性カルシウムスルホネートの理想的な量は、約41乃至45%であると指摘している。‘489特許の実施例1で得られたグリースは、約570°Fの滴点しか有していない。‘489特許は、水の添加と非水性変換剤の添加との間の遅延時間を述べていないが、添加が150Fからちょうど190Fへの加熱の直後であったことを示している。‘489特許の滴点と増ちょう剤収率は望ましくない。
加えて、米国特許第5,338,467号及び第5,308,514号には、酢酸及びメタノールと共に使用される変換剤として、12−ヒドロキシステアリン酸のような脂肪酸を使用することが開示されており、脂肪酸の添加の遅延はないが、水の添加と酢酸及びメタノールの添加との間には幾らかのインターバルがある。‘514特許の実施例B及び‘467特許の実施例1は共に、水及び脂肪酸変換剤を他の成分(過塩基性カルシウムスルホネート及び基油を含んでいる)に添加し、次いで約140乃至145°Fに加熱して、その後、酢酸、続いてメタノールを添加するプロセスを開示している。次に、混合物は変換が完了するまで約150乃至160°Fに加熱される。両方の実施例における最終グリース生成物中の過塩基性カルシウムスルホネートの量は32.2であって、これは望ましいものより高い。これらの特許は、水及び脂肪酸の添加と酢酸及びメタノールの添加の間の遅延期間を述べていないが、添加は、不明な期間加熱された直後であることを示している。似たようなプロセスが、‘514特許の実施例Aと‘467特許の実施例Cとに開示されているが、全ての脂肪酸は変換後に添加されており、使用される非水性変換剤は、酢酸及びメタノールであって、水を伴った混合物が140乃至145Fに加熱された後に加えられた。これらの実施例における過塩基性カルシウムスルホネートの量は、先の実施例よりも40%高い。理想的な増ちょう剤収率の結果を達成しないことに加えて、これらのプロセスは全て変換剤としてメタノールを使用しているので、環境面での欠点を有する。変換剤としての揮発性アルコールの使用は、グリース製造プロセスの後部でこれらの成分を大気に排出させる可能性があり、これは、世界中の多くの地域で禁止されている。ベントされない場合、アルコールは、水スクラビング又はウォータトラップによって回収されなければならず、その結果、危険な材料処分費用が発生する。このようなことから、好ましくは変換剤として揮発性アルコールを使用する必要がなく、より良好な増ちょう剤収率を達成する方法が必要とされている。
‘514特許の実施例10ではより良好な増ちょう剤収率が達成されるが、それらの結果を達成するための要件として、過剰な石灰の使用が教示されている。その例では、水及び過剰石灰を他の成分と共に添加し、混合物を180乃至190Fに加熱すると共に、加熱期間中にゆっくりと酢酸を添加する。得られたグリースは、23%の過塩基性カルシウムスルホネートを含んでいた。この増ちょう剤収率は他のものよりも優れているが、‘514特許が要件として教示している過剰な石灰の使用を必要としないようにより改善する余地がある。
増ちょう剤収率が23%以下であるような‘514特許及び‘467特許の他の実施例は、変換中に加圧ケトルの使用を伴うか、水と非水性変換剤又はそれら両方の添加の間に「遅延」がない。これらの実施例は、水及び脂肪酸変換剤を添加し、加熱せずに10分間混合し、次いで加圧ケトル又は無加圧下で酢酸を添加することを含んでいる。これらの特許の何れも、酢酸の添加についての10分間のインターバルにおける利益又は利点、或いは、上記実施例における他の加熱遅延を認識しておらず、むしろ、これらの特許は、観察された収率向上の理由として、変換剤としての脂肪酸の使用と、変換前、変換後、又はそれら両方における脂肪酸の添加の利益とに焦点を当てている。更に、以下に説明するように、加熱を伴わないこの10分間の混合インターバルは、本明細書で使用される「遅延」ではないが、それら成分を同時に添加する際には同時と考えられ、各成分の添加は少なくともある程度時間がかかり、瞬間的に起こることはないと認められる。
更に、公知の先行技術は、カルシウムスルホネートグリースの製造のための塩基性カルシウムの供給源として、或いは、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースを形成するためのコンプレックス化酸(complexing acid)との反応に必要な成分として、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの使用を決まって教示している。公知の先行技術は、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの添加が、コンプレックス化酸と完全に反応するのに十分な水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの全レベルを提供するのに十分な量(過塩基性油溶性カルシウムスルホネートに存在する量の水酸化カルシウム又は酸化カルシウムに足される場合)である必要があることを教示している。同時係属中の米国特許出願第13/664,768号(「‘768出願」)及び米国特許第9,273,265号に開示されているように、公知の先行技術は一般に、炭酸カルシウムの存在(炭酸塩化後にカルシウムスルホネート中に分散された非晶質炭酸カルシウムの存在ではく、別個の成分として、或いは、水酸化カルシウム又は酸化カルシウム中の「不純物」として)は、少なくとも2つの理由で避けられるべきであると教示している。第1の理由は、炭酸カルシウムは一般に弱塩基であると考えられており、コンプレックス化酸と反応して最適なグリース構造を形成するのには不適切である。第2の理由は、未反応固体カルシウム化合物(炭酸カルシウム、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムを含む)の存在が変換プロセスを妨害し、その結果、未反応固体が変換前又は変換前に除去されない場合にはグリースが粗悪になることである。しかしながら、本出願人は、別個の成分として(過塩基性カルシウムスルホネート中に含有する炭酸カルシウムの量に加えて)炭酸カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト、又はそれらの組合せを、付加水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの有無に拘わらず、コンプレックス化酸と反応する成分として添加することで、‘574出願及び‘768出願に記載されているような優れたグリースを製造することを明らかにした。
(過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる量の炭酸カルシウムに加えて)別個の成分として結晶性炭酸カルシウムの添加を開示する2つの先行技術文献があるが、(従来技術が教示するように)それらのグリースの増ちょう剤収率は低く、又は、ナノサイズの炭酸カルシウム粒子を必要とする。例えば、米国特許第5,126,062号は、コンプレックスグリースを形成する際に別個の成分として5乃至15%の炭酸カルシウムを添加することを開示しているが、コンプレックス化酸と反応させるために水酸化カルシウムの添加も必要とする。その付加炭酸カルシウムは、‘062特許において、コンプレックス化酸と反応する塩基を有する唯一の付加カルシウムではない。実際には、付加炭酸カルシウムは、コンプレックス化酸との反応のための塩基性反応物として明確に添加されていない。代わりに、付加水酸化カルシウムが、全てのコンプレックス化酸との反応のための特定のカルシウム含有塩基として必要とされている。更に、得られたNGLI No.2グリースは、36%乃至47.4%の過塩基性カルシウムスルホネートを含んでおり、この高価な成分は、かなりの量である。別の例では、中国公報CN101993767は、炭酸カルシウムのナノサイズ粒子(5乃至300nmの大きさ)を、過塩基性カルシウムスルホネートに添加することを開示しているが、コンプレックス化酸と反応させるために、炭酸カルシウムのナノサイズ粒子が反応物として添加されること、又は、カルシウム含有塩基のみが別個に添加されることを示していない。ナノサイズの粒子を使用することにより、グリースの増粘が増して硬いままになり、これは、過塩基性カルシウムスルホネート中に含まれる非晶質炭酸カルシウムを変換することによって形成された結晶性炭酸カルシウムの微細分散とよく似ているが(‘467特許によれば、約20Å乃至5000Å又は約2nm乃至500nmであり得る)、付加炭酸カルシウムがより大きなサイズの粒子である場合よりも大幅にコストを増加させるであろう。この中国特許出願は、正しいナノ粒子サイズを有する付加炭酸カルシウムの絶対的な必要性を非常に強調している。同時係属の‘574号出願に記載されている発明に基づく実施例のグリースで示されているように、非常に高価なナノサイズの粒子の使用を必要とすることなく、そして、コンプレックス化酸と反応するための唯一の付加カルシウム含有塩基として付加炭酸カルシウムを用いる場合に、ミクロンサイズの炭酸カルシウムを添加することによって優れたグリースを形成することができる。
潤滑グリースの添加剤としてリン酸三カルシウムを使用する先行技術文献も存在している。例えば、米国特許第4,787,992号、米国特許第4,830,767号、米国特許第4,902,435号、米国特許第4,904,399号、米国特許第4,929,371号は全て、潤滑グリースの添加剤としてリン酸三カルシウムを使用することを教示している。しかしながら、カルシウムスルホネートベースのグリースを含む潤滑グリースを作るために、酸と反応するカルシウム含有塩基として、約1100℃の融点を有しており、式Ca(POOH又は数学的に等価な式を有するカルシウムヒドロキシアパタイトの使用を教示する先行技術文献は存在していないと思われる。米国特許出願公開第2009/0305920号を含む、日本の昭和シェル石油に帰属する幾つかの先行技術文献があり、リン酸三カルシウム及びCa(POを含むグリースを記載しており、リン酸三カルシウムの源として、式[Ca(PO.Ca(OH)を有する「ヒドロキシアパタイト」に言及している。この「ヒドロキシアパタイト」への言及は、リン酸三カルシウムと水酸化カルシウムとの混合物として開示されていることから、‘768出願で開示されて特許請求の範囲に記載されており、式Ca(POOH又は数学的に等価な式を有しており、約1100℃の融点を有しているカルシウムヒドロキシアパタイトとは異なる。誤解を招く用語法ではあるが、カルシウムヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、及び水酸化カルシウムは、夫々異なる化学式、構造及び融点を有する異なる化学化合物である。一緒に混ぜると、2つの異なる結晶化合物であるリン酸三カルシウム(Ca(PO)と水酸化カルシウム(Ca(OH))は互いに反応しないか、異なる結晶化合物カルシウムヒドロキシアパタイト(Ca(POOH)を生成する。リン酸三カルシウム(式Ca(PO)の融点は1670℃である。水酸化カルシウムは融点を持たず、代わりに水分子を失って580℃で酸化カルシウムを形成する。このようにして形成された酸化カルシウムは、2580℃の融点を有する。カルシウムヒドロキシアパタイト(式Ca(POOH又は数学的に等価な式を有する)は、約1100℃の融点を有する。従って、用語法が如何にずさんであろうと、カルシウムヒドロキシアパタイトは、リン酸三カルシウムと同じ化合物ではなく、リン酸三カルシウムと水酸化カルシウムの単なる混合物ではない。
更に、改善された増ちょう剤収率及び滴点の両方をもたらす、カルシウムスルホネートコンプレックスグリース組成物とその製造方法とがあることが望ましい。公知の従来技術の組成物の多くは、少なくとも575°Fの滴点を有し、NLGI No.2カテゴリに適するグリースを達成するために、(最終グリース産物の重量比で)最低でも36%という量の過塩基性カルシウムスルホネートを必要とする。過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、カルシウムスルホネートグリースの製造において最も高価な成分の一つであり、従って、最終のグリースにおけて所望のレベルの硬度をなお維持しながら、この成分の量を低減する(それによって、増ちょう剤収率を高める)ことが望ましい。使用する過塩基性カルシウムスルホネートの量を実質的に減少させるために、多くの先行技術文献は高圧反応器を利用している。具体的には、過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合が36%未満で、ちょう度がNLGI No.2グレード内にある(又は、グリースの60往復混和ちょう度が265乃至295である)場合に、高圧反応器を要することなく、滴点が常に575F以上である過塩基性カルシウムスルホネートグリースを得ることが望ましい。滴点は、潤滑グリースの高温実用限界についての、第一の且つ最も容易に定められる指針なので、より高い滴点が望ましいと考えられる。
無水カルシウム−石鹸増粘グリースのような単純カルシウム石鹸グリースにアルカリ金属水酸化物を添加することも知られている。しかしながら、カルシウムスルホネートグリースにアルカリ金属水酸化物を添加することで、増ちょう剤収率の改善と高い滴点とがもたらされることは知られていない。何故ならば、この添加は、当業者には不要と考えられるからであろう。水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を単純カルシウム石鹸グリースに添加する理由は、一般的に使用される水酸化カルシウムは水溶性が低く、水溶性がより高い水酸化ナトリウムよりも弱い塩基であるからである。このために、付加した水に溶解した少量の水酸化ナトリウムは、石鹸形成脂肪酸(通常は、12−ヒドロキシステアリン酸又は12−ヒドロキシステアリン酸とオレイン酸などの非ヒドロキシル化脂肪酸との混合物)と素早く反応して、ナトリウム石鹸を形成すると言われている。この素早い反応は、「口火を切る(get the ball rolling)」と考えられている。しかしながら、水酸化カルシウムのようなカルシウム含有塩基と脂肪酸との直接反応は、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造する際に何も問題になっていない。この反応は、存在する大量のカルシウムスルホネートの界面活性/分散性が高いことから、非常に容易に起こる。このように、先行技術では、コンプレックス化酸を水酸化カルシウムと反応させるために、カルシウムスルホネートグリースにアルカリ金属水酸化物を使用することは知られていない。
向上した増ちょう剤収率と高い滴量とを有するカルシウムスルホネートグリースを製造する際に種々の成分と手法を組み合わせることも知られていない。例えば、アルカリ金属水酸化物の添加と、(1)コンプレックス化酸と反応するカルシウム含有塩基(塩基性カルシウム化合物とも呼ばれる)としての、カルシウムヒドロキシアパタイト、付加結晶性炭酸カルシウム、又はそれらの組合せの使用(付加水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの有無に拘らない)、(2)非水性変換剤の遅延添加、又は、(3)1と2の組合せとを組み合わせることは知られていない。
本発明は、過塩基性カルシウムスルホネートグリースと、このようなグリースの製造方法とに関しており、増ちょう剤収率(必要とする過塩基性カルシウムスルホネートをより少なくする一方で、許容されるちょう度測定値を維持する)及び滴点によって示されるような期待高温有用性の両方を向上させる。本発明の1つの好ましい実施形態では、コンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物は、アルカリ金属水酸化物を含む。別の好ましい実施形態では、コンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物は、コンプレックス化酸と反応する付加カルシウム含有塩基(塩基性カルシウム化合物とも呼ばれる)として、アルカリ金属水酸化物及びカルシウムヒドロキシアパタイトと、付加炭酸カルシウムと、又はそれらの両方とを含んでいる。更に別の好ましい実施形態では、コンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物は、(1)(最終グリースの重量比で)36%未満の過塩基性カルシウムスルホネートと、(2)カルシウムヒドロキシアパタイト、付加炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、又はそれらの任意の組合せと、(3)1又は複数種のアルカリ金属水酸化物と、(4)1又は複数種の変換剤と、(5)1又は複数種のコンプレックス化酸と、を含んでいる。更に別の好ましい実施形態では、最終グリース組成物は、約0.005%乃至0.5%のアルカリ金属水酸化物を含んでいる。
コンプレックスカルシウムスルホネートグリースを製造する好ましい方法によれば、アルカリ金属水酸化物は、変換の前又は後において他の成分に添加される。 最も好ましくは、この方法は、(a)過塩基性カルシウムスルホネートと基油を混ぜる工程と、(b)1又は複数種のカルシウム含有塩基を添加して混ぜる工程と、(c)アルカリ金属水酸化物を水に溶解させて、その溶液に他の成分を添加して混ぜる工程と、(d)1又は複数種の変換剤を添加して混ぜる工程であって、変換前に添加されていれば工程(c)からの水を含んでよい、工程と、(e)1又は複数種のコンプレックス化酸を添加して混ぜる工程と、(f)変換が起こるまで、これらの成分の幾つかの組合せを加熱する工程と、を含んでいる。工程(b)、工程(c)及び工程(e)における各成分は、変換前、変換後に添加されてよい。又は、一部が、変換前に添加されて、別の一部が変換の後に添加されてよく、互いに対する順序は、この方法のこの実施形態では重要ではない。
更に別の好ましい実施形態によれば、コンプレックスカルシウムスルホネートグリースは、上記の工程の概略に従って幾つかの化合物を反応及び混合させることで生成されるが、変換の前に水の第1部を変換剤として添加し、変換後に水の第2部を添加し、アルカリ金属水酸化物を水の第1部又は水の第2部に、或いはそれらの両方に溶解させる点で異なる。更に別の好ましい実施形態によれば、水は、少なくとも2つの別々の変換前工程で変換剤として添加されて、変換剤としての水の第1の添加と変換剤としての水の第2の添加との間に、1又は複数の温度調節工程と、別の成分の添加工程と、又はそれらの組合せがあり、アルカリ金属水酸化物は、変換剤としての水の最初又は第1の添加、変換剤としての水の第2又はそれ以降の添加、又はそれらの両方において溶解する。
更に別の好ましい実施形態によれば、コンプレックスカルシウムスルホネートグリースを製造する方法は、好ましい実施形態の変形を含めて先に概説した工程を含んでおり、変換剤は、水と、少なくとも1種の非水性変換剤とを含んでおり、変換剤としての水の添加と非水性変換剤の少なくとも一部の添加との間に1又は複数の遅延期間が存在している。好ましくは、以下に更に説明するように、1又は複数の遅延期間は、温度調節遅延期間又は保持遅延期間、或いはそれらの両方である。本明細書で使用される「非水性変換剤」は、水以外の任意の変換剤を意味しており、希釈剤又は不純物として幾らかの水を含有し得る変換剤を含んでいる。
本明細書に記載の方法の実施形態の何れにおいても、1又は複数種のコンプレックス化酸の全てが、変換前又は変換後に添加されてよい。或いは、それらコンプレックス化酸の1又は複数の一部を、コンプレックスカルシウムスルホネートグリースの変換に先立って添加し、1又は複数種のコンプレックス化酸の残りを変換の後に添加してもよい。1又は複数種のカルシウム含有塩基の全てが、変換前又は変換後に添加されてよい。或いは、1又は複数種のカルシウム含有塩基の一部を変換前に添加し、残りを変換後に添加してもよい。カルシウムヒドロキシアパタイト、付加炭酸カルシウム、付加水酸化カルシウム、又はそれらの組合せが、コンプレックス化酸と反応するためのカルシウム含有塩基として使用されてよい。使用されるコンプレックス化酸の全量に対して過剰な量の水酸化カルシウム(例えば、全てのコンプレックス化酸との反応に必要とされる化学量論的量よりも50%多い量の水酸化カルシウム)を変換前に添加しないことが好ましい。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、過塩基性カルシウムスルホネートが「低品質」と考えられる場合であっても、増ちょう剤収率の向上は、付加アルカリ金属水酸化物を用いて、又は、それを非水性変成剤の少なくとも一部についての少なくとも1つの遅延期間と組み合わせて用いることで、達成される。カルシウムスルホネート系グリースの製造のために市販されている幾つかの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、従来技術のカルシウムスルホネート技術が使用される場合に、許容できないほど低い滴点を有する製品を提供する。このような過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、本願を通して「低品質」の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートと称される。過塩基性カルシウムスルホネートの市販のバッチが使用されることを除いて全ての成分及び方法が同じである場合、より高い滴点(575°F以上)を有するグリースを生成する過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、本発明の目的に関して、「高」品質のカルシウムスルホネートであり、より低い滴点を有するグリースを生成するものは、本発明の目的において、「低」品質であると考えられる。これに関する幾つかの例が、‘768出願にて提供されており、当該出願は引用により本明細書の一部となる。高品質と低品質の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの比較化学分析が行われているが、この低い滴点の問題の正確な理由は証明されていないと思われる。市販の過塩基性カルシウムスルホネートの大半は高品質であると考えられるが、高品質又は低品質のカルシウムスルホネートを使用するか否かに拘わらず、増ちょう剤収率の向上とより高い滴点の両方を達成することが望ましい。増ちょう剤収率の向上とより高い滴点の両方は、アルカリ金属水酸化物が使用される場合には、特に本発明による遅延添加法と組み合わせることで、高品質又は低品質のカルシウムスルホネートの何れを用いても達成され得ることがわかった。実際に、本発明の好ましい実施形態の少なくとも幾つかを使用する場合、低品質の過塩基性カルシウムスルホネートを使用する実施例の結果は、高品質の過塩基性カルシウムスルホネートを使用するものよりも良好な増ちょう剤収率を示す。別の好ましい実施形態では、非水性変換剤の少なくとも1つがグリコール(例えば、プロピレングリコール又はヘキシレングリコール)である場合、少なくとも1つの遅延期間後に全てのグリコールが添加され(水には何も添加されない)、低品質のカルシウムスルホネートが使用される。
本明細書に記載した本発明のパラメータに従って製造すると、増ちょう剤収率及び滴点特性が従来技術のグリースのものよりも優れており、むら無く高品質のカルシウムスルホネートグリースが製造され得る。本発明の好ましい実施形態に従って製造される過塩基性カルシウムスルホネートコンプレックスグリースは、NLGI No.2グレードちょう度(又はより良い、つまりより硬い)及び575°F(又はより高い)の滴点を有し、過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合が、開放容器(加圧なし)で製造される場合には約10乃至45%である。より好ましくは、本発明の好ましい実施形態に基づいて作られたグリースの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの量は、より好ましくは少なくとも約10%であるが、開放容器(加圧なし)で作られた場合、約36%以下、より好ましくは約30%以下、最も好ましくは約22%以下となる。これらの増ちょう剤収率の向上は、高品質及び低品質の過塩基性カルシウムスルホネートの両方で達成可能である。グリースが加圧容器内で製造される場合には、本発明の成分及び方法に基づいてより大きな増ちょう剤収率を達成することができる。最も好ましくは、650Fを超える滴点が達成される。本発明により達成される過塩基性油溶性カルシウムスルホネートにおけるより低い濃度は、グリースのコストが低下するので好ましい。特に低温での、流動性やポンパビリティー等の他の特性もまた、本発明に従って達成される改善された増ちょう剤収率によって、好ましい影響を受けるかも知れない。
理論に拘束されるものではないが、アルカリ金属水酸化物を添加すると、ループメタセシス反応が生じると考えられる。これは、変換プロセス及びコンプレックス化酸との反応に影響を及ぼし、コンプレックスカルシウムスルホネートグリースにおいて、これらの予期せぬ増ちょう剤収率及び滴点を生じさせる。先に議論したように、アルカリ金属水酸化物は単純カルシウム石鹸グリースに添加されることが知られているが、過塩基性カルシウムスルホネートグリースに添加することは知られていない。これは、単純カルシウム石鹸グリースに一般的に使用される水酸化カルシウムは水溶性が低く、水溶性がより高い水酸化ナトリウムと比較して弱い塩基であるためである。このために、添加された水に溶解した少量の水酸化ナトリウムは、石鹸形成脂肪酸(通常は、12−ヒドロキシステアリン酸又は12−ヒドロキシステアリン酸とオレイン酸などの非ヒドロキシル化脂肪酸との混合物)と素早く反応して、ナトリウム石鹸を形成すると言われている。この素早い反応は、単純カルシウム石鹸グリースの製造において「口火を切る」と考えられている。しかしながら、それが起こっていることの全てならば、一旦、少量の水酸化ナトリウムが少量の脂肪酸と反応すると、水酸化ナトリウムがこれまでに加えられていなかったかのように、残りの反応物(水酸化カルシウム及び残りの大部分の脂肪酸)が反応する。未反応の水酸化カルシウムは依然として存在しており、カルシウム石鹸増粘剤を形成するためには残りの未反応脂肪酸と反応する必要が依然としてあろう。
より可能性の高い説明は、迅速に形成される少量のナトリウム石鹸が、ナトリウムとカルシウムが交換するメタセシス反応において水酸化カルシウムと更に反応することである。ナトリウム石鹸はカルシウム石鹸となり、水酸化カルシウムは水酸化ナトリウムとなる。この反応は、水酸化ナトリウムの高い水溶性と、ナトリウム石鹸に対するカルシウム石鹸の非常に低い水溶性とによって促進される。これにより、少量の水酸化ナトリウムが「再生」されて、より多くの脂肪酸と再び迅速に反応できるであろう。その後、メタセシス反応が再び起こり、更に多くのカルシウム石鹸を生成することができる。このループ反応シーケンスは、全ての水酸化カルシウムが反応してカルシウム石鹸増粘剤を形成するまで続く。この反応シーケンスのループを以下に示す。
反応1:NaOH+RCOOH→RCOONa
反応2:2RCOONa+Ca(OH)→(RCOO)Ca+2NaOH
反応2で生成されたNaOHが反応1の反応物となる。
単純カルシウム石鹸グリースとは異なり、カルシウム含有塩基(例えば水酸化カルシウム)と脂肪酸の直接反応は、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造する際には何も問題になっていなかった。多分、存在する多量のカルシウムスルホネートの高い界面活性/分散性のために反応は非常に容易に起こり、これは、アルカリ金属水酸化物の添加が、先行技術のカルシウムスルホネートグリース技術では教示も示唆もされていない理由である。実際に、コンプレックス化酸をカルシウム含有塩基と反応させる間に存在する大量のカルシウムスルホネートの高い界面活性/分散性のために、当業者は、このような反応の前に少量のアルカリ金属水酸化物を添加することによって有意な利益が得られることを期待しないであろう。それにも拘わらず、アルカリ金属水酸化物の反応は、カルシウムスルホネートグリースの増ちょう剤収率について予期しない有益な影響を有するようである。アルカリ金属水酸化物の添加が、非水性変換剤の少なくとも一部の遅延添加手法と、カルシウムヒドロキシアパタイト及び/又はカルシウムカーボネートをカルシウム含有塩基として使用してコンプレックス化酸と反応させることと、組み合わせられる場合には、利益は更に大きくなる。本発明の組成物及び方法の好ましい実施形態は、コンプレックスカルシウムスルホネートグリースの成分としてアルカリ金属水酸化物を添加すること、又は、それと組み合わせて、(1)カルシウムヒドロキシアパタイト及び/又は炭酸カルシウムをコンプレックス化酸と反応させるカルシウム含有塩基として使用することと、及び/又は、(2)変換剤としての水の添加と非水性変換剤の少なくとも一部の添加との間における1又は複数の遅延時間とを用いる。
[コンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物]
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、コンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物は、以下の成分を含む:(1)(最終グリースの重量比で)45%未満の過塩基性カルシウムスルホネート;(2)カルシウムヒドロキシアパタイト、付加炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、又は、それらの任意の組合せ;及び(3)アルカリ金属水酸化物。より好ましくは、コンプレックスカルシウムスルホネートグリースは更に、(4)1又は複数種の変換剤;及び(5)1又は複数種のコンプレックス化酸を含む。別の好ましい実施形態によれば、1又は複数種の変換剤は、水と、プロピレングリコール又はヘキシレングリコールのような少なくとも1種の非水性変換剤とを含む。必要に応じて、グリース組成物は、促進酸(facilitating acid)を含んでいてもよい。このような促進酸は、グリース構造形成を助ける。変換剤及びカルシウム含有塩基を含む、特定の成分の幾つか又は全ては、製造中における蒸発、揮発又は他の成分との反応に起因して最終製品に含まれなくてもよい。
本発明のこれらの実施形態において使用する高過塩性油溶性カルシウムスルホネートは、米国特許第4,560,489号、米国特許第5,126,062号、米国特許第5,308,514号及び米国特許第5,338,467号などの、従来技術に記載されている一般的なものであり得る。高過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、そのような公知の方法に従って現場で製造されてよく、市販の製品として購入されてもよい。そのような高過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、200以上、好ましくは300以上、最も好ましくは約400以上の全塩基価(TBN)値を有するであろう。市販のこの種の過塩基性カルシウムスルホネートには、Chemtura USA Corporationによって供給されるHybase C401;Kimes Technologies International Corporationによって供給されるSyncal OB 400及びSyncal OB 405−WO;Lubrizol Corporationによって供給されるLubrizol 75GR,Lubrizol 75NS,Lubrizol 75P,及びLubrizol 75WOが含まれるが、これらに限られるわけではない。過塩基性カルシウムスルホネートは、過塩基性カルシウムスルホネートの重量比で約28%乃至40%の分散非晶質炭酸カルシウムを含有しており、これは、カルシウムスルホネートグリースを製造するプロセスにおいて結晶質炭酸カルシウムに変換される。過塩基性カルシウムスルホネートはまた、過塩基性カルシウムスルホネートの重量比で約0%乃至8%の残留酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを含有する。市販の過塩基性カルシウムスルホネートの大半はまた、過塩基性カルシウムスルホネートを取扱い及び処理するのが困難なほどに濃くならないように、希釈剤として約40%の基油を含有するであろう。過塩基性カルシウムスルホネート中の基油の量は、許容されるグリースを達成するために、変換前に追加の基油を(別個の成分として)添加することを不必要にし得る。使用される過塩基性カルシウムスルホネートは、本明細書及び‘768出願で定義されているように、高品質又は低品質であってよい。
本発明の実施形態による最終のコンプレックスグリースにおける高過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの量は、変動し得るが、一般に10乃至45%である。好ましくは、本発明の実施形態による最終のコンプレックスグリースにおける高過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの量は、開放容器(圧力なし)で製造される場合には、約36%以下であり、より好ましくは約30%以下であり、最も好ましくは約22%以下である。加圧容器で作製した場合に達成可能な割合は更に小さい。
グリース製造において一般に使用されており且つ広く知られている、石油系の任意のナフテン鉱油又はパラフィン鉱油を、本発明の基油として使用してよい。基油は、必要に応じて添加される。市販の過塩基性カルシウムスルホネートの大半は、過塩基性スルホネートが濃くなって容易に取り扱うことができないころを避けるために、希釈剤として約40%の基油を既に含むであろうから、変換直後の所望のグリースのちょう度及び最終グリースの所望のちょう度次第では、追加の基油を加える必要はない。合成基油も本発明のグリースに使用することができる。そのような合成基油には、ポリアルファオレフィン(PAO)、ジエステル、ポリオールエステル、ポリエーテル、アルキル化ベンゼン、アルキル化ナフタレン、及びシリコーン油が含まれる。当業者には理解できるように、合成基油は、変換処理の間に存在すると、悪影響を及ぼすことがある。そのような場合、それらの合成基油は、最初は加えず、変換後などの、悪影響が排除され又は最小化される工程にてグリース製造処理に加えられる。ナフテン鉱基油又はパラフィン鉱基油が、その低コスト及び入手容易性の点から好ましい。加える基油(最初に加えるものと、所望のちょう度を達成するためにグリース処理で後に加えるものを含む)の総量は、グリースの最終重量に基づき、一般に30%乃至70%、好ましくは45%乃至75%、最も好ましくは50%乃至70%である。典型的には、別個の成分として添加される基油の量は、過塩基性カルシウムスルホネートの量が減少するにつれて増加する。当業者に理解されるように、上記のような異なる基油の組合せもまた、本発明において使用されてよい。
水は、1つの変換剤として本発明の好ましい実施形態に添加される。1又は複数種の他の非水性変換剤もまた、本発明のこれらの実施形態において添加されるのが好ましい。非水性変換剤には、水以外の任意の変換剤が含まれており、例えば、アルコール、エーテル、グリコール、グリコールエーテル、グリコールポリエーテル、カルボン酸、無機酸、有機硝酸塩、或いは、活性水素又は互変異性水素(tautomeric hydrogen)の何れかを含むその他の任意の化合物が含まれる。非水性変換剤には、希釈剤又は不純物として幾らかの水を含むそれらの剤も含まれる。それらは非水性変換剤として使用されてよいが、グリース製造プロセス中のガス抜きや洗浄したアルコールの有害廃棄処理に関連する環境上の懸念や制限から、メタノール又はイソプロピルアルコール或いは他の低分子量(即ち、より揮発する)アルコールなどのアルコールを使用しないことが好ましい。グリースの最終重量に基づいて、変換剤として添加される水の総量は、1.5%乃至10%、好ましくは2.0%乃至5.0%、最も好ましくは2.2%乃至4.5%である。変換後に水が更に加えられてよい。また、変換中にかなりの量の水を蒸発させるように十分に高い温度で開放容器内で変換が行われる場合、失われた水を置き換わる追加の水が加えられてよい。添加される1又は複数種の非水性変換剤の総量は、グリースの最終重量を基準にして、0.1%乃至5%、好ましくは0.3%乃至4%、最も好ましくは0.5%乃至2.0%である。典型的には、使用される非水性変換剤の量は、過塩基性カルシウムスルホネートの量が減少するにつれて減少する。使用される変換剤に応じて、それらの一部又は全部が製造プロセス中に揮発によって除去されてもよい。ヘキシレングリコール及びプロピレングリコールのような低分子量グリコールが特に好ましい。後述する本発明の一実施形態によるカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造するために、幾つかの変換剤がコンプレックス化酸としての役割を果たすこともあることに留意されたい。このような物質は、変換とコンプレックス化の両方の機能を同時に提供する。
必須ではないが、本発明の他の実施形態に従って、変換に先だって、促進酸(facilitating acid)を混合物に加えてもよい。一般に、炭素8乃至16個のアルキル鎖長を有する、アルキルベンゼンスルホン酸などの好適な促進酸が、効率のよいグリース構造形成を促進するのに役立つかも知れない。最も好ましくは、このアルキルベンゼンスルホン酸は、ほとんどが炭素約12個の長さである混合のアルキル鎖長を含む。このようなベンゼンスルホン酸は、一般に、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)と呼ばれる。この種の市販のベンゼンスルホン酸には、JemPak GK Inc.によって供給されるJemPak 1298 Sulfonic Acid、Pilot Chemical Companyによって供給されるCalsoft LAS−99、及び、Stepan Chemical Companyによって供給されるBiosoft S−101が含まれる。本発明においてベンゼンスルホン酸を使用する場合、ベンゼンスルホン酸は、グリースの最終重量に基づいて、0.50%乃至5.0%、好ましくは1.0%乃至4.0%、最も好ましくは1.3%乃至3.6%の量で、変換前に加えられる。アルキルベンゼンスルホン酸を用いてカルシウムスルホネートを現場で製造する場合、本実施形態において加えられる促進酸が、カルシウムスルホネートの製造に必要な酸に追加される。
本発明に基づくカルシウムスルホネートグリース組成物の好ましい実施形態では、1又は複数種のコンプレックス化酸、1又は複数種のカルシウム含有塩基、及び1又は複数種のアルカリ金属水酸化物も成分として添加される。カルシウム含有塩基は、カルシウムヒドロキシアパタイト、付加炭酸カルシウム、付加水酸化カルシウム、付加酸化カルシウム、又はこれらの1又は複数の組合せを含んでよい。この実施形態にて、コンプレックス化酸と反応するためのカルシウム含有塩基として使用されるカルシウムヒドロキシアパタイトは、変換前、変換後に添加されてよく、一部が変換前に添加されて、一部が変換後に添加されてよい。最も好ましくは、カルシウムヒドロキシアパタイトは、約1乃至20ミクロン、好ましくは約1乃至10ミクロン、最も好ましくは約1乃至5ミクロンの平均粒径で細かく分割されている。更に、カルシウムヒドロキシアパタイトは、十分な純度であって、得られるグリースの耐磨耗特性に顕著な影響を与えない程度の低いレベルでシリカやアルミナのような研磨汚染物を有するであろう。理想的には、最良の結果を得るためには、カルシウムヒドロキシアパタイトは、食品グレード又は米国薬局方グレードの何れかであるべきである。添加されるカルシウムヒドロキシアパタイトの量は、グリースの総重量を基準にして、1.0%乃至20%、好ましくは2%乃至15%、最も好ましくは3%乃至10%であるが、必要ならば、変換とコンプレックス化酸との全ての反応とが完了した後に、更に添加されてよい。
本発明の別の実施形態によれば、カルシウムヒドロキシアパタイトは、コンプレックス化酸と完全に反応するには不十分な量で上記成分に添加されてよい。この実施形態では、油不溶性固体カルシウム含有塩基として、微粉炭酸カルシウムが、好ましくは変換の前に、その後に添加される任意のコンプレックス化酸におけるカルシウムヒドロキシアパタイトによって中和されない部分と完全に反応して中和するのに十分な量で添加されてよい。
別の実施形態によれば、カルシウムヒドロキシアパタイトは、コンプレックス化酸と完全に反応するには不十分な量で上記成分に添加されてもよい。この実施形態では、油不溶性固体カルシウム含有塩基として、微粉炭酸カルシウム及び/又は酸化カルシウムが、好ましくは変換の前に、その後に添加される任意のコンプレックス化酸における共添加(co-added)カルシウムヒドロキシアパタイトによって中和されない部分と完全に反応して中和するのに十分な量で添加されてよい。この実施形態において、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムは、付加カルシウムヒドロキシアパタイト、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムの総量によって与えられる水酸化物等価塩基度(hydroxide equivalent basicity)の75%以下を示すのが好ましい。別の実施形態では、炭酸カルシウムは、カルシウムヒドロキシアパタイト、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと共に添加されてよく、炭酸カルシウムは、コンプレックス化酸との反応前又は後に添加されてもよい。カルシウムヒドロキシアパタイト、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの量が、添加されたコンプレックス化酸を中和するのに十分でない場合、炭酸カルシウムが、残存するコンプレックス化酸を中和するのに十分以上の量で添加されるのが好ましい。
本発明のこれらの実施形態では、カルシウム含有塩基として、単独で又は他のカルシウム含有塩基と組み合わせて使用される付加炭酸カルシウムは、約1乃至20ミクロン、好ましくは約1乃至10ミクロン、最も好ましくは約1乃至5ミクロンの平均粒径で細かく分割されている。更に、付加炭酸カルシウムは、十分な純度の結晶性炭酸カルシウム(最も好ましくはカルサイト)であるのが好ましく、得られるグリースの耐摩耗性に著しく影響を与えない程度に低いレベルのシリカ及びアルミナのような研磨汚染物を有している。理想的には、最良の結果を得るために、炭酸カルシウムは食品グレード又は米国薬局方グレードの何れかであるべきである。付加炭酸カルシウムの添加量は、グリースの最終重量に基づいて、1.0%乃至20%、好ましくは2.0%乃至15%、最も好ましくは3.0%乃至10%である。これらの量は、過塩基性カルシウムスルホネート中に含まれる分散炭酸カルシウムの量に加えて別個の成分として加えられる。本発明の別の好ましい実施形態によれば、付加炭酸カルシウムは、コンプレックス化酸と反応するための唯一の付加カルシウム含有塩基成分として、変換前に添加される。追加の炭酸カルシウムが、変換後に、本発明の単純又はコンプレックスグリースの実施形態の何れかに添加されてよく、コンプレックスグリースの場合には全てのコンプレックス化酸との反応が完了した後に添加されてよい。しかしながら、本明細書では、付加炭酸カルシウムとは、本発明のコンプレックスグリースを製造する場合に、変換前に添加され、コンプレックス剤と反応するカルシウム含有塩基の1つ又は唯一のものである炭酸カルシウムを称している。
変換前又変換後に添加された付加水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムは、別の実施形態によれば、約1乃至20ミクロン、好ましくは約1乃至10ミクロン、最も好ましくは約1乃至5ミクロンの平均粒子サイズで細かく分割されている。更に、水酸化カルシウム及び酸化カルシウムは十分な純度であって、得られるグリースの耐磨耗特性に著しく影響を与えない程度に低いレベルでシリカ及びアルミナのような研磨汚染物を有する。理想的には、最良の結果を得るために、水酸化カルシウムと酸化カルシウムは、食品グレード又は米国薬局方グレードの何れかであるべきである。水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの総量は、グリースの全重量に基づいて、0.07%乃至1.20%、好ましくは0.15%乃至1.00%、最も好ましくは0.18%乃至0.80%である。これらの量は、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる残留水酸化カルシウム又は酸化カルシウムの量に加えて別個の成分として添加される。最も好ましくは、使用されるコンプレックス化酸の総量に対する過剰量の水酸化カルシウムは、変換前に添加されない。更に別の実施形態によれば、コンプレックス化酸と反応させるために水酸化カルシウム又は酸化カルシウムを加える必要はなく、付加炭酸カルシウム又はカルシウムヒドロキシアパタイトの何れかが、このような反応のために添加された唯一のカルシウム含有塩基として使用されてよく、そのような反応のために併用されてよい。
付加アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、又はそれらの組合せを含んでいる。水酸化ナトリウムがアルカリ金属水酸化物として使用されるのが最も好ましい。付加アルカリ金属水酸化物の総量は、好ましくは最終グリース生成物の重量比で約0.005%乃至0.5%、より好ましくは約0.01%乃至0.4%、最も好ましくは約0.02%乃至0.20%である。カルシウム含有塩基と同様に、アルカリ金属水酸化物は、コンプレックス化酸と反応して、最終グリース生成物に存在するコンプレックス化酸のアルカリ金属塩を生じる。ここに示した好ましい量は、最終グリース中にアルカリ金属水酸化物が存在しなくても、最終グリース生成物の重量に対して原料成分として加えられる量である。1つの好ましい実施形態によれば、アルカリ金属水酸化物は、他の成分に添加される前に水に溶解される。アルカリ金属水酸化物を溶解させるために使用される水は、変換剤として使用される水又は変換後に添加される水であってよい。他の成分に添加する前にアルカリ金属水酸化物を水に溶解させることが最も好ましいが、水に最初に溶解させることなく他の成分に直接添加してもよい。
これらの実施形態で使用するコンプレックス化酸は、長鎖カルボン酸、短鎖カルボン酸、ホウ酸、及びリン酸の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を含むであろう。酢酸及び他のカルボン酸は、それが添加される時に応じて、変換剤又はコンプレックス化酸、或いはそれらの両方として使用されてよい。同様に、幾つかのコンプレックス化酸(‘514特許及び‘467特許における12−ヒドロキシステアリン酸など)は、変換剤として使用されてよい。添加するコンプレックス化酸の総量は、最終グリースの重量で、好ましくは2.8%乃至11%である。本発明での使用に適する長鎖カルボン酸は、少なくとも12個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸を含む。好ましくは、長鎖カルボン酸は、少なくとも16個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸を含む。最も好ましくは、長鎖カルボン酸は、12−ヒドロキシステアリン酸である。長鎖カルボン酸の量は、グリースの最終重量に基づき、0.5%乃至5.0%、好ましくは1.0%乃至4.0%、最も好ましくは2.0%乃至3.0%である。
本発明に従った使用に適する短鎖カルボン酸は、8個以下、好ましくは4個以下の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸を含む。最も好ましくは、短鎖カルボン酸は酢酸である。短鎖カルボン酸の量は、グリースの最終重量に基づき、0.05%乃至2.0%、好ましくは0.1%乃至1.0%、最も好ましくは0.15%乃至0.5%である。本発明に従うグリースの製造に使用する水又は他の成分と反応して、長鎖カルボン酸又は短鎖カルボン酸を生成すると期待することができるあらゆる化合物も、使用に適する。例えば、無水酢酸を使用することは、混合物に存在する水との反応で、コンプレックス化酸として使用する酢酸を生成するであろう。同様に、12−ヒドロキシステアリン酸メチルを使用することは、混合物に存在する水との反応で、コンプレックス化酸として使用する12−ヒドロキシステアリン酸を生成するであろう。これに代えて、混合物に十分な水が存在しない場合には、追加の水を混合物に加えてそれら成分と反応させて、必要なコンプレックス化酸を形成してよい。
本実施形態においてコンプレックス化酸としてホウ酸を使用する場合、グリースの最終重量に基づいて、0.3%乃至約4.0%、好ましくは0.5%乃至3.0%、及び最も好ましくは0.6%乃至2.0%の量を加える。ホウ酸は、まず水に溶解若しくは懸濁させて、或いは水なしで、加えられてよい。好ましくは、ホウ酸は、製造処理において水が残存している間に加えることになるであろう。これに代えて、公知の無機ホウ酸塩の何れかを、ホウ酸の代わりに使用してもよい。同様に、ホウ酸化アミン、ホウ酸化アミド、ホウ酸化エステル、ホウ酸化アルコール、ホウ酸化グリコール、ホウ酸化エーテル、ホウ酸化エポキシド、ホウ酸化ウレア、ホウ酸化カルボン酸、ホウ酸化スルホン酸、ホウ酸化エポキシド、ホウ酸化過酸化物などの、既存のホウ酸化有機化合物を、ホウ酸の代わりに使用してもよい。コンプレックス化酸としてリン酸を使用する場合、グリースの最終重量に基づいて、0.4%乃至4.0%、好ましくは0.6%乃至3.0%、最も好ましくは0.8%乃至2.0%の量を加える。本明細書に記載の種々のコンプレックス化酸の割合は、純粋な活性化合物に関している。これらのコンプレックス化酸の何れかが希釈された形態で入手可能な場合、それらは、それでも本発明における使用に適するかも知れない。しかしながら、そのような希釈されたコンプレックス化酸の割合は、希釈率を考慮して、実際の活性成分が指定の割合になるように、調整することが必要であろう。
グリース製造分野において一般に認められている他の添加剤もまた、本発明の単純グリースの実施形態又はコンプレックスグリースの実施形態の何れかに添加することができる。このような添加剤には、錆防止剤及び腐食防止剤、金属不活性化剤、金属不動態化剤、酸化防止剤、極圧添加剤、耐摩耗性添加剤、キレート剤、ポリマー、粘着付与剤、染料、化学マーカー、香り付加剤、及び蒸発性溶媒が含まれる。後のカテゴリは、オープンギア用潤滑剤及び編組ワイヤーロープ用潤滑剤を製造する場合に特に有用であり得る。そのような任意の添加剤を含むことは、依然として本発明の範囲内であると理解されるべきである。成分の割合は、特に示されていない限り、完成したグリースの最終重量に基づくものであるが、その量の成分は、反応又は揮発により最終グリース生成物に存在しなくてもよい。
[アルカリ金属水酸化物を用いたコンプレックスカルシウムスルホネートグリースの製造方法]
カルシウムスルホネートグリース組成物は、好ましくは、本明細書に記載の本発明の方法に従って製造される。ある好ましい実施形態では、この方法は、(1)過塩基性カルシウムスルホネートと基油を混ぜる工程と、(2)アルカリ金属水酸化物を水に溶解させて、他の成分と混ぜる工程と、(3)1又は複数種のカルシウム含有塩基を添加して混ぜる工程と、(4)1又は複数種の変換剤を添加して混ぜる工程であって、変換前に添加されている場合には、工程cからの水を含んでよい、工程と、(5)1又は複数種のコンプレックス化酸を添加して混ぜる工程と、(6)変換が起こるまで、これらの成分の幾つかの組合せを加熱する工程と、を含む。この好ましい実施形態では、変換剤としての水の添加(水が変換剤として使用される場合)と、任意の非水性変換剤の任意の部分の添加(非水性変換剤が使用される場合)との間に遅延はない。別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、これらと同じ工程を含んでいるが、変換剤が水と少なくとも1種の非水性変換剤とを含んでおり、変換前の水の添加と、1又は複数種の他の非水性変換剤の少なくとも一部の添加との間に1又は複数の遅延期間が存在する点で異なる。言及を容易にするために、用語「アルカリ添加法(alkali addition method)」は、アルカリ金属水酸化物が非水性変換剤の遅延添加なしに添加される、本発明による方法の全ての好ましい実施形態を記載するために使用される。そして、用語「アルカリ/遅延添加法(alkali/delayed addition method)」は、アルカリ金属水酸化物の両方が添加され、変換剤としての水の添加と非水性変換剤の少なくとも一部の添加との間に少なくとも1つの遅延期間が存在するような、本発明による方法の全ての好ましい実施形態を記載するために使用される。用語「遅延添加法(delayed addition method)」は、アルカリ金属水酸化物添加を伴わない‘476出願の遅延非水性変換剤法を示すために使用される。
好ましいアルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の両方において、工程(2)、工程(3)、及び工程(5)における各成分は、変換前、変換後に添加されてよく、又は、一部は変換前に、別の一部は、変換後に添加されてよい。必要に応じて、促進酸を添加して、好ましくは変換前に成分と混ぜられてもよい。促進酸を使用する場合、アルカリ金属水酸化物を添加する前に混合物に添加することも好ましい。或いは、アルカリ金属水酸化物は、最初に水に溶解することなく他の成分に添加できるが、水に予め溶解させることが最も好ましい。最も好ましくは、本方法に使用される特定の成分及び量は、本明細書に記載の組成物の好ましい実施形態に基づく。
好ましいアルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の何れにおいても、工程(2)、工程(3)、及び工程(5)の成分の添加については、お互いに対する順序と、工程(1)及び工程(4)の成分に対する順序と、加熱のタイミングに対する順序とは重要ではない。しかしながら、他の成分の前後に、及び/又は加熱の前若しくは後に幾つかの成分を添加することが、以下に述べるように好ましい。更に、変換剤の添加の順序は、以下で更に記載するように、アルカリ/遅延添加法においては決定的である。
アルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の更に別の好ましい実施形態によれば、コンプレックスカルシウムスルホネートグリースは、上記の工程に従って特定の化合物を反応及び混ぜることによって製造されるが、変換前に水の第1部が変換剤として添加され、変換後に水の第2部が添加され、アルカリ金属水酸化物は、水の第1部又は水の第2部に、或いは両方に溶解する点で異なる。アルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の更に別の好ましい実施形態によれば、水は、少なくとも2つの別々の変換前工程で変換剤として添加され、変換剤としての水の最初の添加と変換剤としての水の2回目の添加との間に、1又は複数の温度調節工程、別の成分の添加、又はそれらの組合せがある。アルカリ金属水酸化物は、変換剤として水の最初の又は最初の添加、又は変換剤としての水の2回目又はそれ以降の添加、或いはその両方にて溶解する。
アルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の更に別の好ましい実施形態によれば、加熱
の前に、コンプレックス化酸の少なくとも一部が添加される。別の好ましい実施形態によれば、加熱の前に全てのコンプレックス化酸が添加される。アルカリ添加法とアルカリ/遅延添加法の更に別の好ましい実施態様によれば、付加炭酸カルシウムは、コンプレックス化酸と反応する付加カルシウム含有塩基として添加される場合、コンプレックス化酸の前に添加される。アルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の更に別の好ましい実施形態によれば、カルシウムヒドロキシアパタイト、付加水酸化カルシウム及び付加炭酸カルシウムは全て、コンプレックス化酸と反応するカルシウム含有塩基として使用される。この実施形態では、コンプレックス化酸が変換前に添加される場合には、任意のコンプレックス化酸を添加する前に、カルシウムヒドロキシアパタイトと水酸化カルシウムの少なくとも一部とを添加し、コンプレックス化酸の少なくとも一部を添加した後に炭酸カルシウムを添加することが最も好ましい。アルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態によれば、アルカリ金属水酸化物が溶解した水は、カルシウム含有塩基が添加された後に及び/又は変換前にコンプレックス化酸の一部が添加された後に添加される。別の好ましい実施形態によれば、溶解したアルカリ金属水酸化物(又は別々に添加されたアルカリ金属水酸化物)を有する水は、1又は複数種のコンプレックス化酸の少なくとも一部を添加する前に添加される。
アルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の幾つかの他の実施形態では、工程は、先の実施形態と同じであるが、工程(3)(カルシウム含有塩基の添加)が、以下の工程のうちの1つを含んでいる点で異なる:(a)添加される唯一のカルシウム含有塩基として、微粉カルシウムヒドロキシアパタイトを変換前に混ぜる工程;(b)ある一つの実施形態に基づいて、微粉カルシウムヒドロキシアパタイトと炭酸カルシウムとを、その後に添加されるコンプレックス化酸と完全に反応して中和するのに十分な量で混ぜる工程;
(c)微粉カルシウムヒドロキシアパタイト及び水酸化カルシウムと、及び/又は、酸化カルシウムとを、後で添加されるコンプレックス化酸と完全に反応して中和するのに十分な量で混ぜる工程であって、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムは、好ましくは、付加水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムとカルシウムヒドロキシアパタイトとの総量によって与えられる水酸化物等価塩基性(hydroxide equivalent basicity)の75%以下の量で存在する、工程;(d)本発明の別の実施形態に基づいて、付加炭酸カルシウムを変換後に混ぜる工程;(e)本発明の更に別の実施形態に基づいて、変換後のカルシウムヒドロキシアパタイトを、変換後に添加された任意のコンプレックス化酸と完全に反応して中和するのに十分な量で混ぜる工程;(f)不油溶性固体カルシウム含有塩基として微粉炭酸カルシウムを変換前に混合し、その後に添加されたコンプレックス化酸と十分に反応して中和するには不十分な量で微粉水酸化カルシウムアパタイト及び水酸化カルシウムと及び/又は酸化カルシウムとを混ぜる工程であって、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムは、好ましくは、付加水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムとカルシウムヒドロキシアパタイトとの合計との総量で与えられる水酸化物等価塩基性の75%以下の量で存在しており、予め添加された炭酸カルシウムは、その後に添加される任意のコンプレックス化酸における、カルシウムヒドロキシアパタイト及び水酸化カルシウムと及び/又は酸化カルシウムとによって中和されていない部分と完全に反応して中和するのに十分な量で添加される、工程。
アルカリ/遅延添加法では、水の変換前添加と1又は複数種の他の非水性変換剤の少なくとも一部の変換前添加との間に少なくとも1つの遅延期間が存在する。第1の遅延期間は、変換剤としての水を最初に添加した後に開始する。製造プロセス中に蒸発減を補うために変換前に追加の水が加えられる場合、それらの添加は、遅延期間の再開始又は決定には用いられず、最初の添加のみが遅延期間の決定の出発点として用いられる。1又は複数種の遅延期間(水の変換前添加と非水変換剤の少なくとも一部の添加との間の時間)は、温度調節遅延期間又は保持遅延期間又はそれらの両方であるのが最も好ましい。それら遅延期間は、複数の温度調節遅延期間及び複数の保持遅延期間を含んでよい。
例えば、第1温度調節遅延期間は、混合物の温度を(典型的には加熱によって)所望の温度又は温度範囲(第1温度)に変化させるのに要する、水が加えられた後の時間である。第1保持遅延期間は、混合物が第1温度で保持される時間である。第2温度調節遅延期間は、混合物を別の温度又は温度範囲(第2温度)に加熱又は冷却するのに要する第1保持遅延期間の後の時間である。第1温度に到達した後に他の成分(例えばコンプレックス化酸)が添加されるが、その温度に達してから第2温度に加熱又は冷却を続けるまでに遅延期間が存在しない場合、第2温度調節遅延期間は、混合物を別の温度又は温度範囲(第2温度)に加熱又は冷却するための第1の温度調節遅延期間の後における時間であってもよい。第2保持遅延時間は、混合物が第2温度で保持される時間である。更なる温度調節遅延期間及び保持遅延期間(即ち、第3温度調節遅延期間)は、同じパターンに従う。第1の温度は、周囲温度又は高温であってもよい。その後の温度は、以前の温度より高くても低くてもよい。最終的な変換前温度は、典型的には開放ケトルにおける変換が起こる温度として、約190°F乃至220°Fであり、又は最高で230°Fであろう。最終的な変換前温度は190F未満であってよいが、このようなプロセス条件は通常、変換時間が著しく長くなって、増ちょう剤収率も低下するであろう。変換が起こる最終的な変換前温度及び温度範囲は、密閉容器では異なり得る。温度調節遅延期間及び/又は保持遅延期間の任意の組合せが使用されてよい。最も好ましくは、変換前の成分の混合物は、遅延期間の少なくとも1つの間又は各遅延期間中にて温度又は温度範囲に加熱される。
通常、保持遅延期間の後に温度調節遅延期間が続き、つまり、保持遅延期間が温度調節遅延期間に先行し、その逆もあるが、2つの保持遅延期間が連続して、又は2つの温度調節期間が連続してもよい。例えば、混合物は、1つの非水性変換剤を添加する前に、周囲温度で30分間保持されてよく(第1の保持遅延時間)、また、同じ添加又は異なる非水性変換剤を添加する前に周囲温度で更に1時間保持され続けてよい(第2保持遅延時間)。更に、混合物を第1温度に加熱又は冷却した後に、非水系変換剤を添加してもよい(第1温度調節期間)。次いで混合物を第2温度に加熱又は冷却し、その後、同じ又は異なる非水性変換剤が添加される(第2温度調節期間、中間の保持期間なし)。更に、非水性変換剤の一部を各遅延期間後に添加する必要はないが、添加前又は添加間の遅延期間を抜かしてよい。例えば、任意の非水性変換剤を添加する前に、混合物をある温度に加熱し(第1温度調節遅延期間)、そして、その温度である時間保持してよい(第1保持遅延期間)。
非水性変換剤又はその一部が温度又は温度範囲に到達した直後に添加される場合、その特定の温度及び非水性変換剤のその一部については、保持遅延時間は存在しない。しかしながら、その温度又は温度範囲で一定時間保持した後に別の一部が添加される場合には、その温度及び非水性変換剤のその一部について保持時間遅延がある。1又は複数種の非水性変換剤の一部は、任意の温度調節遅延期間又は保持遅延期間の後に添加されてよく、同じ又は異なる非水性変換剤の別の一部は、別の温度調節遅延期間又は保持遅延期間の後に添加されてよい。通常、各温度調節遅延期間の継続時間は、約30分乃至24時間、又はより典型的には約30分乃至5時間である。しかしながら、任意の温度調節遅延期間の継続時間は、グリースバッチの大きさ、バッチを混ぜて加熱するために使用される装置、及び開始温度と最終温度の間の温度差によって変わることは、当業者には明らかであろう。
アルカリ/遅延添加法の様々な好ましい実施形態では、遅延期間の様々なバリエーションも使用されてよい。例えば、以下の各々は、別々の好ましい実施形態である:(a)非水性変換剤の少なくとも一部が水の第1の添加と(実質的に同時に)添加され、同じ非水性変換剤及び/又は異なる非水性変換剤の少なくとも別の一部が、少なくとも1つの遅延期間の後に追加される;(b)水と実質的に同時に非水性変換剤を添加せず、少なくとも1つの遅延時間が非水性変換剤を添加する前に存在する;(c)非水性変換剤の少なくとも一部が、混合物が約190F乃至230Fの間の最終の変換前温度範囲(変換が開放容器で起こる温度範囲。密閉容器内で行われる場合には、変換が起こる適切な温度範囲に混合物が加熱される)に加熱された後に添加される;(d)少なくとも1種の非水性変換剤がグリコール(例えば、プロピレングリコール又はヘキシレングリコール)である場合、グリコールの一部は、水と実質的に同時に添加され、グリコールの別の一部と、他の任意の非水性変換剤の全てとが少なくとも1つの遅延期間の後に添加される;(e)酢酸が変換前に添加される場合、それは水と実質的に同時に加えられ、別の(異なる)非水性転変換剤が、遅延期間の後に添加される;(f)1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部が、1又は複数の遅延期間の最後に添加され、同じ及び/又は異なる非水性変換剤の別の一部が、より前の1又は複数の遅延期間の前に添加される;(g)1又は複数種の非水性変換剤の全てが、1又は複数の遅延期間の最後に添加される。
アルカリ/遅延添加法におけるある好ましい実施形態によれば、非水性変換剤の全部又は一部は、遅延期間の後に、(以下で説明するように、遅延期間に渡る継続的な添加とは対照的に、全てを一度に一括して)バッチ方式で添加される。しかしながら、大規模又は商業規模の実施においては、材料の量が関係するため、そのような非水性変換剤のグリースバッチへのバッチ添加を完了するまでに時間がかかることに留意のこと。バッチ添加では、非水性変換剤をグリース混合物に添加するのに要する時間は、遅延期間とはみなされない。その場合、その非水性変換剤又はその一部を添加する前の遅延は、非水性変換剤のバッチ添加の開始時に終了する。別の好ましい実施形態では、ある1つの非水性変換剤の少なくとも一部は、遅延期間(温度調節遅延期間又は保持遅延期間の何れか)の経過中、連続的に添加される。このような連続的な添加は、実質的に安定した流量で、又は温度調節遅延期間、保持遅延期間、若しくはそれら両方の間に、反復的、離散的、増分的な添加によって、非水性変換剤をゆっくりと添加することであってよい。その場合、非水性変換剤を完全に添加するのに要する時間は、非水性変換剤の添加が完了したときに終了する遅延期間に含まれる。アルカリ/遅延添加法の更に別の好ましい実施形態によれば、ある1つの非水性変換剤の少なくとも一部は、遅延期間の後にバッチ方式で添加され、同じ又は異なる非水性変換剤の少なくとも別の一部は、遅延期間中に連続的に添加される。アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態によれば、アルコールは非水性変換剤として使用されない。
本発明の範囲における遅延期間は、加熱を伴わない保持遅延期間を含んでよいが(例えば、混合物が、加熱前の第1保持遅延期間の中周囲温度に保持された場合)、変換剤としての水の添加と全ての非水性変換剤の添加との間の、その期間中の加熱を伴わない15分未満の短い時間は、本明細書で使用されているような「遅延」又は「遅延期間」ではない。本発明の目的のために、遅延期間中に加熱することなく、非水性変換剤の何れか又は全てを添加するための遅延は、少なくとも約20分、より好ましくは少なくとも約30分であるはずである。水の添加と非水系変換剤の一部の添加との間の20分未満の間隔は、その20分未満に加熱することなく、続いてより長い保持遅延期間があり又はそれに続いて加熱して、その後、その非水系変換剤の一部を添加する又は異なる非水性変換剤の一部又は全部を添加する場合、本発明の範囲における「遅延期間」に関係する。その場合、最初の短いインタ−バルは「遅延期間」ではないが、非水性変換剤の添加前における引き続くより長い保持遅延又は温度調節遅延は、本発明の目的における保持遅延期間又は温度調節遅延期間である。更に、1又は複数種の非水性変換剤の全部又は一部は、1又は複数の温度調節遅延期間又は保持遅延期間中、又はそれら両方の間にてゆっくりと添加されてよい。このゆっくりした添加は、遅延期間中の非水性変換剤の実質的に連続的な添加又は遅延期間中の反復的な増分添加を含んでよい。
更に、酢酸又は12−ヒドロキシステアリン酸が変換前に添加される場合、これらの酸は、変換剤及びコンプレックス化酸の両方として二重の役割を果たすであろう。これらの酸が、より活性な別の非水性変換剤(例えばグリコール)と共に添加されると、酸は、主としてコンプレックス化酸の役割を果たし、より活性な剤は主として変換剤の役割を果たすと考えられ得る。このように、酢酸又は12−ヒドロキシステアリン酸が、より活性な変換剤と共に変換前に添加される場合、水の添加と酢酸又は12−ヒドロキシステアリン酸の任意の部分の添加の間の経過時間は、本明細書で使用される用語としての遅延とは考えられない。その場合、水の変換前添加と他の非水性変換剤の任意の部分の変換前添加との間の温度調節遅延期間又は保持遅延期間のみが、本発明の目的のための遅延と考えられる。酢酸又は12−ヒドロキシステアリン酸又はそれらの組合せが、使用される唯一の非水性変換剤であるならば、水の変換前添加と酢酸又は12−ヒドロキシステアリン酸の任意の部分の変換前添加との間の温度調節遅延期間又は保持遅延期間は、本発明の目的のための遅延となる。
本発明によるアルカリ/遅延添加方法におけるある好ましい実施形態は、以下の工程を含む:(1)適当なグリース製造容器で、変換剤としての水と、分散した非晶質炭酸カルシウムを含有する高過塩基性油溶性カルシウムスルホネートと、(必要であれば)随意選択的に適切な量の適切な基油と、1又は複数種のアルカリ金属水酸化物と、随意選択的に少なくとも1種の非水性変換剤の少なくとも一部とを混ぜて、第1混合物を形成する工程;(2)1又は複数の遅延期間中に、第1混合物をある温度又は温度範囲内に維持しながら混合又は撹拌する、及び/又は、第1混合物の温度を調節して、それを別の温度又は温度範囲に加熱又は冷却する工程;(3)随意選択的に、1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部を1又は複数の遅延期間の後又はそれらの間に第1混合物と混ぜて第2混合物を形成する工程;(4)第1混合物(非水系変換剤が工程(3)で添加された場合には第2混合物)を変換温度(好ましくは190F乃至230Fの範囲内であり、開放容器の場合には、典型的な範囲の190F乃至220Fよりも高い)に加熱して、1又は複数の遅延期間の最後の期間中に第3の混合物を形成する工程;(5)工程(4)の後又はその工程中に、1又は複数の非水性変換剤の全て又は(存在する場合には)任意の残りの部分を混合する工程;(6)過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムが非常に微粉の結晶性炭酸カルシウムに変換されるまで、変換温度範囲(開放容器の場合、好ましくは190F乃至230F)の温度を維持しながら混ぜ続けることによって第3混合物を変換する工程;(7)1又は複数種のカルシウム含有塩基を混合する工程;(8)必要に応じて促進酸を混合する工程;及び、(9)1又は複数種の適切なコンプレックス化酸を混ぜる工程。このプロセスにより、好ましいコンプレックスカルシウムスルホネートグリースが得られる。工程(7)は、変換前又は変換後に実行されてよく、又は1又は複数種のカルシウム含有塩基の一部又は全部が変換前に添加されてよく、1又は複数種のカルシウム含有塩基の一部又は全部が、変換後に添加されてよい。工程(8)は、変換前の任意の時点で実行されてよい。工程(9)は、変換前又は変換後に実行されてよい。又は、1又は複数種のコンプレックス化酸の一部又は全部が変換前に添加されてよく、1又は複数種のコンプレックス化酸の一部又は全部が変換後に添加されてよい。最も好ましくは、このアルカリ/遅延添加法は開放容器中で実施されるが、加圧容器中で実施されてもよい。最も好ましくは、1又は複数種のアルカリ金属水酸化物は、工程(1)にてそれらを添加する前に変換剤として使用される水に溶解される。或いは、アルカリ金属水酸化物は、工程(1)にて省略されてよく、水に溶解して、変換前又は変換後にその溶液が添加されてよい。
本明細書に記載のアルカリ/遅延添加法の何れかの好ましい実施形態では、工程(1)、工程(3)、及び/又は工程(5)において添加される非水性変換剤の任意の一部は、別の工程で添加されたものと同じ非水性変換剤であってよく、別の工程で添加された任意の非水性変換剤とは異なっていてよい。少なくとも1種の非水性変換剤の少なくとも一部が、(工程(3)又は工程(5)において)遅延期間後に添加される場合、同じ非水性変換剤の別の一部、及び/又は、異なる1又は複数の非水性変換剤の少なくとも一部が、工程(1)、工程(3)及び/又は工程(5)の任意の組合せにて添加されてよい。アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態によれば、1又は複数種の非水性変換剤の1又は複数の全ては、工程(5)の遅延期間後に混合されて、工程(1)又は(3)では何も添加されない。アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態によれば、1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部は、遅延の前に工程(1)にて第1混合物と共に添加され、同じ又は異なる非水性変換剤の少なくとも一部が工程(3)及び/又は工程(5)において添加される。アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態では、非水性変換剤は第1混合物と共に添加されず、1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部が、工程(3)及び工程(5)にて添加される。アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態では、1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部は、工程(3)において1つの遅延期間の後又はその間に添加され、そして同じ又は異なる非水性変換剤の少なくとも一部は、別の遅延期間(工程(3)の第2遅延期間及び/又は工程(5)の最終遅延期間)の後又はその間に添加される。アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態によれば、工程(3)の1又は複数の遅延の後に、1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部が添加されるが、工程(5)の最終的な遅延期間の後では、非水性変換剤は添加されない。
コンプレックスグリースを製造する工程(2)乃至(6)の順序は、アルカリ/遅延添加法を含む実施態様に関しては本発明の重要な特徴である。そのプロセスの他の幾つかの特徴は、本発明による好ましいカルシウムスルホネートグリース組成物を得るためには重要ではない。例えば、複数種のカルシウム含有塩基が互いに対して添加される順序は重要ではない。また、変換剤としての水とカルシウム含有塩基とが添加される温度は、許容可能なグリースを得るために重要ではないが、温度が190F乃至200F(密閉容器内で行われる場合に変換が起こる場合には他の温度範囲)に至る前に、それらが加えられるのが好ましい。2種以上のコンプレックス化酸が使用される場合、それらが変換前又は変換後の何れかにて添加される順序も、通常は重要でない。
アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態は、水と、1又は複数種のアルカリ金属水酸化物と、分散した非晶質炭酸カルシウムを含有する45%未満の過塩基性カルシウムスルホネートと、随意選択的に基油とを混合して、第1混合物を形成する工程と、1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部を1又は複数の遅延期間の後又はその間に第1混合物に添加して変換前混合物を形成する工程と、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれている非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウムへの変換が起こるまで加熱して、変換前混合物を変換混合物に変換する工程とを含んでおり、遅延期間の少なくとも1つは、第1混合物又は変換後混合物が、ある期間において、ある温度に又は温度範囲内に維持される保持遅延期間である。別の実施形態では、1又は複数種のアルカリ金属水酸化物は、変換前ではなく変換後に添加されるか、又は一部が変換前に加えられ、一部が変換後に添加される。変換前及び変換後の添加は、同じ又は異なるアルカリ金属水酸化物であってよい。
アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態は、水と、1又は複数種のアルカリ金属水酸化物と、分散した非晶質炭酸カルシウムを含有する36%未満の過塩基性カルシウムスルホネートと、随意選択的に基油とを混合して第1混合物を形成する工程と、1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部を1又は複数の遅延期間の後又はその間に第1混合物に添加して変換前混合物を形成する工程と、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウムへの変換が起こるまで加熱して、変換前混合物を変換混合物に変換する工程とを含んでいる。別の実施形態では、1又は複数種のアルカリ金属水酸化物は、変換前ではなく変換後に添加されるか、又は一部が変換前に加えられ、一部が変換後に添加される。変換前及び変換後の添加は、同じ又は異なるアルカリ金属水酸化物であってよい。
アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態は、適切なグリース製造容器にて、分散した非晶質炭酸カルシウムを含む高過塩基化油溶性カルシウムスルホネートと、(必要であれば)適当な基油とを混合して、混ぜ始める工程を含んでいる。次に、1又は複数種の促進酸が添加されて、好ましくは約20乃至30分間混ぜられる。次に、カルシウムヒドロキシアパタイトの全てと、続いて水酸化カルシウムの一部と、次いで炭酸カルシウムの全てとが添加されて、更に20乃至30分間混ぜられる。次に、酢酸の一部と12−ヒドロキシステアリン酸の一部とが添加されて、更に20乃至30分間混ぜられる(これらの成分は、変換剤であってもよいが、水の前に添加されるので、それらについての遅延期間はない)。次に、水に溶解した少量のアルカリ金属水酸化物を含んでおり、変換剤として使用される水を添加し、190°F乃至230°Fの温度へと加熱しながら混ぜられる(第1温度調節遅延期間及び最終遅延時間)。そして、ヘキシレングリコールの全てが非水性変換剤として添加される。過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムの非常に微粉の結晶性炭酸カルシウムへの変換が完了するまで、変換温度範囲(好ましくは190°F乃至230°F)で温度を維持しながら混ぜ続けることによって、混合物が変換する。変換後、残りの水酸化カルシウムを添加し、約20乃至30分間混ぜる。次に、残りの酢酸と残りの12−ヒドロキシステアリン酸とを添加して、約30分間混ぜる。次に水に分散したホウ酸が添加されて、続いてゆっくりとリン酸が徐々に添加される。次に、混合物が加熱されて水及び揮発性物質が除去されて、冷却され、必要に応じて更に多くの基油が加えられて、グリースが下記のようにミリングされる。追加の添加剤が、最終の加熱又は冷却工程中に添加されてよい。アルカリ/遅延添加法の別の好ましい実施形態では、工程及び成分は上記のものと同じであるが、変換剤としての水を添加した後、及び非水性変換剤としてのヘキシレングリコールの全てを添加する前に、混合物は、約160°Fに加熱され(第1温度調節遅延期間)、その温度で約30分間保持された後(第1保持遅延期間)、190°F乃至230°Fへの加熱が継続される(第2温度調節遅延期間と最終遅延期間)点で異なる。
アルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の両方の好ましい実施形態は、グリース製造に一般的に使用されているような開放ケトル又は密閉ケトルの何れかで行われてよい。変換プロセスは、通常の大気圧下で又は密閉ケトルの加圧下で達成できる。このようなグリース製造装置は一般的に入手可能であるので、開放ケトル(加圧下でない容器)での製造が好ましい。本発明の目的のためには、開放容器は、上部カバー又はハッチを有する又は有さない任意の容器であるが、そのような上部カバー又はハッチは、蒸気気密ではなく、加熱中に顕著な圧力は発生しない。変換プロセス中に上部カバー又はハッチが閉じた状態でこのような開放容器を使用することは、変換剤として必要なレベルの水を保持する一方で、水の沸点又はそれ以上の変換温度を概ね可能にするのに役立つ。このようなより高い変換温度は、当業者に理解されるように、単純及びコンプレックスカルシウムスルホネートグリースの増ちょう剤収率を更に改善することができる。加圧ケトルでの製造もまた利用されてよく、増ちょう剤収率の更に大きな改善をもたらし得るが、加圧プロセスは、より複雑で制御が困難であり得る。更に、加圧ケトルでカルシウムスルホネートグリースを製造すると、生産性の問題が生じる可能性がある。加圧反応を利用することは、特定の種類のグリース(ポリ尿素グリースなど)にとっては重要であり、グリースプラントの大半では、限られた数の加圧容器しか利用できないであろう。加圧ケトルを使用して、加圧反応がそれほど重要ではないカルシウムスルホネートグリースを製造することは、これらの反応が重要な他のグリースを製造するプラントの能力を制限し得る。これらの問題は、開放容器では避けられる。
最も好ましくは、カルシウムスルホネートグリースを製造するためのアルカリ添加法及びアルカリ/遅延添加法の両方は、(a)変換後に必要に応じて、追加の基油とコンプレックス化酸を混ぜる工程と、(b)水と任意の揮発性反応副生物の除去とを確実にして、最終生成物の品質を最適化するのに十分高い温度まで混ぜて加熱する工程と、(c)必要に応じて追加の基油を添加しながらグリースを冷却する工程と、(d)当該分野で周知である残りの所望の添加剤を添加する工程と、(e)必要であれば、最終グリースをミリングして、滑らかで均質な最終製品を得る工程と、を更に含んでいる。これらの最終工程の順序及びタイミングは重要ではないが、変換後に水を素早く除去することが好ましい。典型的には、グリースは、250F乃至300F、好ましくは300F乃至380F、最も好ましくは380F乃至400Fに加熱されて(好ましくは、加圧下ではない開放条件下であるが、加圧されてもよい)、変換剤として最初に添加された水と、グリースの形成中に化学反応によって形成された水とが除去されてよい。製造中にグリースバッチに水を長期間置くと、増ちょう剤収率、滴点又はそれらの両方が低下する。そのような悪影響は、水を迅速に除去することによって回避することができる。ポリマー添加剤がグリースに添加される場合、グリース温度が300Fに達するまで添加されないことが好ましい。ポリマー添加剤は、十分な濃度で添加すると水の効果的な揮発を妨げる可能性がある。故に、ポリマー添加剤は、好ましくは、全ての水が除去された後においてのみグリースに添加されるべきである。製造中、グリースの温度が好ましい300Fに達する前に全ての水が除去されたと判断できる場合、その後にポリマー添加剤を添加することが好ましい。
米国特許第9,273,265号の実施例1乃至18と、‘768出願の実施例1乃至29とは、引用により本明細書に組み込まれる。本発明による過塩基性カルシウムスルホネートグリース組成物及びこのような組成物の製造方法は、以下の実施例に関連して更に記載及び説明される。
[実施例1A(基準実施例−アルカリ添加法なし。アルカリ/遅延添加法なし)]
‘768出願の組成物に基づくカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを以下のように作製した。264.61グラムの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて、100Fで約600SUSの粘度を有する327.55gの溶剤中性グループ1パラフィン系基油と、100℃で4cStの粘度を有する11.70gのPAOと加えた。400TBN過塩基性油溶性のカルシウムスルホネートは、768出願の実施例10及び実施例11で以前に記載及び使用されたものと同様な低品質カルシウムスルホネートであった。加熱せずに混合は、遊星撹拌パドル(planetary mixing paddle)を用いて開始した。次に、23.94グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、約1乃至5ミクロンの平均粒子サイズを有する50.65グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトと、約1乃至5ミクロンの平均粒子サイズを有する3.63グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムとを添加し、30分間混ぜた。別個の成分として添加された水酸化カルシウムの量は、過塩基性スルホン酸カルシウム中に含まれる残留水酸化カルシウムの量に足される。次に、0.88グラムの氷酢酸と、10.53グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加して、10分間混ぜた。次に、約1乃至5ミクロンの平均粒子サイズを有する55.03グラムの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。別個の成分として添加された炭酸カルシウムの量は、過塩基性スルホン酸カルシウムに含まれる分散炭酸カルシウムの量に足される。次に、13.20グラムのヘキシレングリコール(非水性変換剤)と、38.22グラムの水とを実質的に同時に(遅延期間なしで)添加した。温度が190Fに達するまで、混合物を加熱した。フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こることを示すまで、190Fと200Fの間に温度を45分間保持した。
変換されたグリースが重いので、56.07グラムの同じパラフィン系基油を更に加えた。次に、7.36グラムの同じ水酸化カルシウムを加えて、10分間混ぜた。次に1.52グラムの氷酢酸を添加し、続いて27.30グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。これらの酸が反応して、グリースが更に増粘したので、111.07グラムのパラフィン系基油を添加した。次いで9.28グラムのホウ酸を50グラムの熱湯に混合し、混合物をグリースに添加した。54.47グラムのパラフィン系基油を更に添加し、続いて17.92グラムの75%リン酸水溶液を添加した。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、22.22グラムのスチレン−エチレン−プロピレンコポリマーをクラム形成固体(crumb-formed solid)として添加した。グリースを更に約390Fに加熱すると、その時点で全てのポリマーが溶融して、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外して、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。グリースが300Fに冷めると、約1乃至5ミクロンの平均粒子サイズを有する33.01グラムの食品グレード無水硫酸カルシウムを添加した。グリースの温度が200Fに冷めると、4.43グラムのポリイソブチレンポリマーを添加した。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、287であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は23.9%であった。滴点は、>650Fであった。この実施例では、‘768出願の実施形態に基づいて、変換前にカルシウムヒドロキシアパタイト及び炭酸カルシウムを添加した。また、水酸化カルシウムの総量の33%を変換前に添加し、続いて全量の35%の氷酢酸と28%の12−ヒドロキシステアリン酸とを添加した。残りの量の水酸化カルシウム、氷酢酸、及び12−ヒドロキシステアリン酸を変換後に添加した。
[実施例1B(‘476出願の遅延添加法、アルカリ添加なし)]
実施例1Aのグリースと同じ装置、原料、量及び製造方法を用い別のカルシウムコンプレックスグリースを作製したが、非水系変換剤(ヘキシレングリコール)の添加を遅延させた。他の開始成分(水を含む)を混合し、約190°Fの温度に加熱し(第1温度調節遅延期間)、190°Fに達した直後にヘキシレングリコールを添加した(保持遅延期間なし)。ヘキシレングリコールを添加すると、変換が急に起こった。190乃至200Fでグリースを更に45分間保持した。その後の残りのプロセスは、先の実施例1のグリースと同じとした。最終的なグリースの60往復混和ちょう度は、290であった。最終グリース中の過塩基性油溶性スルホン酸カルシウムの割合は21.4%であった。滴点は、>650Fであった。このように、この実施例のグリースは、混和ちょう度と比較して過塩基性カルシウムスルホネートの最終割合がより低いことによって立証されるように、先の実施例1のグリースと比較して改善された増ちょう剤収率を有していた。
[実施例2(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
アルカリ金属水酸化物を水に添加する以外は、非水系変換剤の添加を遅延させることを含めて実施例1Bのグリースと同様にして、別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。グリースを次のように作製した。240.35gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する345.33gの溶剤中性グループ1パラフィン系基油と、100℃で4cStの粘度を有する10.79グラムのPAOとを添加した。400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、米国特許出願第13/664,768号の実施例10及び11において以前に記載及び使用されたものと同様な低品質のカルシウムスルホネートであった。加熱せずに混合を、遊星撹拌パドルを用いて開始した。次に、21.81グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する46.14グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトと、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する3.34グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムとを添加し、30分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する50.20グラムの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。次に、0.41グラムの水酸化ナトリウム粉末が溶解した35グラムの水を添加した。
混合物を約180Fに加熱した。その後、(グリコールが非水性変換剤として後に添加されるので、主にコンプレックス化酸として)0.76グラムの氷酢酸と、9.63グラムの12−ヒドロキシステアリン酸とを添加した。12−ヒドロキシステアリン酸は、それが添加された約180Fの温度で素早く溶融し、溶解し、反応することに留意のこと。2種のコンプレックス化酸を添加した直ぐ後に、混合物はホイップクリームの外観を発現し始めた。この外観は、添加された水が少量のアルカリ金属水酸化物を含んでいない場合には通常起こらず、コンプレックス化酸のカルシウム塩のより迅速な形成に何かしら関係していると考えられる。理論に拘束されるものではないが、ホイップクリームの外観についてのあり得る一つの説明は、脂肪酸ナトリウム塩が最初に形成されるので、全ての脂肪酸カルシウム塩が形成されるまで、小さな定常状態濃度が維持されることである。脂肪酸ナトリウム塩は水と界面活性であることがよく知られており、泡立ちを引き起こし、ホイップクリームの外観をもたらすことがある。
この混合物を、190F乃至200Fの温度へと加熱し続けながら攪拌した(第1温度調節遅延期間)。190F乃至200Fの温度範囲に達すると、ホイップクリームの外観は治まった。次に、12.46グラムのヘキシレングリコールを非水性変換剤として添加した。1時間10分後、目に見える変換はまだ起こらなかった。また、FTIRは、最初に添加された水の大半が蒸発により失われたことを示した。35mlの水と12.47gのヘキシレングリコールを更に加えた。更に1時間20分後にて、目に見える変換が起こった。
グリースは、時間とともに増粘していった。グリースが過度に重くなって効果的に攪拌できないことを避けるために、合計100.93グラムの同じパラフィン系基油の2つのほぼ等しい部を加えた。一旦増粘が停止したように見えると、蒸発損失のために更に30mlの水を加えた。フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示した。次に、6.80gの同じ水酸化カルシウムを加え、10分間混ぜた。次に、1.45グラムの氷酢酸を添加し、続いて24.76グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。グリースを190F乃至200Fで撹拌した。グリースが増粘したので、49.65グラムの同じパラフィン系基油が添加され、直ぐ後に別の54.28グラムの同じ基油が添加された。次に、8.50グラムのホウ酸を30グラムの熱湯に混合し、混合物をグリースに加えた。ホウ酸を反応させた後、16.25gの75%リン酸水溶液をゆっくり加えて混ぜて、反応させた。グリースが更に硬くなり続けるので、49.47グラムのパラフィン系基油を添加した。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、20.64グラムのスチレン−アルキレンコポリマーをクラム形成固体として加えた。グリースを390Fの目標温度に更に加熱した。しかしながら、最高温度は429Fの値にオーバーシュートした。加熱マントルを取り外して、グリースを外気中で攪拌し続けてを冷却した。最大温度に達した際に、ポリマーが溶融して、グリース混合物中に完全に溶解した。グリースが300Fに冷めると、5ミクロン未満の平均粒径を有する30.29グラムの食品グレード無水硫酸カルシウムを添加した。グリースが200Fに冷めると、2.23グラムのアリールアミン系酸化防止剤と、4.18グラムのポリイソブチレンポリマーとを添加した。49.92gの同じパラフィン系基油を更に添加した。
グリースが170Fの温度に達するまで撹拌を続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、281であった。最終グリースの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、20.49%であった。滴点は、>650Fであった。このように、このグリースの増ちょう剤収率は、先の2つの実施例のグリースの何れよりも優れていた。混和ちょう度と過塩基性カルシウムスルホネートの割合との間の慣習的な逆線形関係を使用すると、この実施例のグリースは、混和ちょう度を先の実施例1Bグリースと同じ値にするために追加の基油を添加していたならば、過塩基性カルシウムスルホネート濃度が19.85%となっていたであろう。この結果は、この実施例2のグリースが、増粘剤の収率に有害な影響を及ぼすことが知られている効果である約29Fだけ過熱されたので、更に顕著である。最終グリース生成物における最初の未反応重量に基づく水酸化ナトリウムの量は0.06%であった。本発明の最終グリース中のアルカリ金属水酸化物の割合に対する言及は、グリースを製造する際の成分として添加されるアルカリ金属水酸化物の量を指すことを理解すべきである。アルカリ金属水酸化物がコンプレックス化酸と反応して塩を形成するので、最終グリース中の初期の未反応水酸化物としては存在しないであろうからである。しかしながら、参照を容易にするために、最終グリース中のその濃度は、最終グリース生成物の重量に対する、成分として添加されるアルカリ金属水酸化物の量として表される。
[実施例3(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
先の実施例2のグリースと同様に他のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。唯一の有意な違いは、(如何なる加熱の前において)混合物がまだ周囲の実験室温度であった間に、プロセスの開始時に、コンプレックス化酸の酢酸及び12−ヒドロキシステアリン酸の最初の部が添加されたことであった。先の実施例2のグリースと同様に、このグリースはアルカリ/遅延添加法の実施形態を使用した。更に、バッチが最終加熱工程中に過熱されないように注意した。
実施例3のグリースを以下のように作製した。240.31gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する345.09gの溶剤中性グループ1パラフィン系基油と、100℃で4cStの粘度を有する10.03グラムのPAOとを添加した。400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、米国特許出願第13/664,768号の実施例10及び11にて以前に記載及び使用されたものと同様な低品質のカルシウムスルホネートであった。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、21.83グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒径を有する46.03グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトと、5ミクロン未満の平均粒径を有する3.30グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムを添加し、30分間混ぜた。次に、0.76グラムの氷酢酸及び9.80グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加し、15分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する50.29グラムの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。次に、0.40gの水酸化ナトリウム水酸化ナトリウムが溶解した35.0gの水を添加した。温度が190F乃至200Fになるまで混合物を加熱した(第1温度調節遅延時間)。この温度範囲に加熱する間、温度が約150Fに達すると、ホイップクリームの外観が露呈した。ホイップクリームの外観は、190乃至200Fの温度範囲に達した直後に治まった。190乃至200Fの温度範囲に達すると、24.17グラムのヘキシレングリコールが添加された(保持遅延時間なし)。この量は、前の実施例のグリースにおいて2つの別個の部で加えられたヘキシレングリコールの総量に相当する。しかしながら、この実施例のグリースでは、アルカリ金属水酸化物を水と共に添加すると変換プロセスが変化し、場合によっては追加の非水性転変換剤が必要となることがあるので、一度に添加した。更に20mlの水を加えて、混合物を約1時間撹拌した後、目に見えて変換が起こった。
次に、追加の10mlの水を添加し、続いて合計で99.73gである同じパラフィン系基油の2つのほぼ等しい部を添加した。これは、継続的に増粘するグリースが、効果的に混合できないほど重くなることを避けるためである。フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示した。次に、6.75グラムの同じ水酸化カルシウムを加えて、混ぜた。蒸発により失われた水と置き換わる30mlの水を更に加えた。グリース混合物が増粘し続けたので、55.22グラムの同じ基油を加えた。1.47グラムの氷酢酸を更に加え、続いて24.70グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えた。次に、グリースを15分間混ぜた。グリース混合物が増粘し続けたので、43.38グラムに続いて53.97グラムの同じ基油を加えた。
次に、8.49グラムのホウ酸を30mlの熱湯に混合し、混合物をグリースに添加した。ホウ酸を反応させた後、16.30グラムの75%リン酸水溶液をゆっくりと加えて混ぜて、反応させた。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、20.24グラムのスチレン−アルキレンコポリマーをクラム形成固体として加えた。グリースを約390Fへと更に加熱すると、その時点で全てのポリマーが溶融し、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。グリースが300Fに冷めると、5ミクロン未満の平均粒径を有する30.39グラムの食品グレード無水硫酸カルシウムを添加した。グリースが200Fに冷めると、2.06グラムのアリールアミン系酸化防止剤と4.46グラムのポリイソブチレンポリマーとを添加した。合計132.79グラムの同じ基油の3つの部を順次加えて、グリースに混合した。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。
実施例3の最終グリースの60往復混和ちょう度は、282であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は19.20%であった。滴点は、>650Fであった。このように 、このグリースは、実施例1A及び実施例1Bのグリースと比較して、増ちょう剤収率が改善されていた。実際、このグリースは、‘473出願、‘768出願、及び米国特許第9,273,265号における全ての実施例のグリースと比較して収率が改善されていた。これは、公開された文献に記載されている開放ミキサー/ケトル(非加圧)システムにおいて、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースについて今までに得られた最高の増ちょう剤収率であると考えられる。密閉加圧ケトルで製造される場合には、増ちょう剤収率は19.2%よりも良好であると考えられる。
[実施例4(基準実施例−アルカリ金属水酸化物。遅延期間なし)]
別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを、先の実施例のグリースと同様な方法で作製したが、異なる基油を使用し、異なる非水系変換剤を使用し、ホウ酸を使用せず、アルカリ金属水酸化物を添加せず、水の添加と非水系変換剤の添加の間に遅延時間はなかった。この実施例のグリースは、アルカリ金属水酸化物が添加され、水の添加と非水性変換剤の添加の間に少なくとも1つの遅延期間が存在する、本明細書に記載の他の例のグリースとの比較の基準として役立つ。
実施例4のグリースを、以下のように作製した。297.25gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加えて、続いて100Fで約352SUSの粘度を有する373.60gのUSP純度の白色パラフィン系鉱基油を添加した。過塩基性カルシウムスルホネートは、NSF H−1認可食品グレードグリースを製造するのに適した、NSF HX−1食品グレード認可過塩基性カルシウムスルホネートであって、‘768出願で定義されているように高品質であった。混合を加熱しないで、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、26.99グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する50.58グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトと、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する4.06グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムを添加して、30分間混ぜた。次に、0.96グラムの氷酢酸と、11.94グラムの12−ヒドロキシステアリン酸とを添加し、10分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する55.19グラムの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。次に、37.2グラムの水と、(非水性変換剤として)14.89グラムのプロピレングリコールとを添加した。温度が190乃至200Fに至るまで混合物を加熱した。変換と目に見える増粘とが、目標温度範囲に達する前に開始した。190Fと200Fの間で1時間10分間温度を保持した。その間、蒸発により失われた水と置き換わる15mlの水を更に加えた。
1時間10分後、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示した。54.07グラムの同じ基油を、増粘が生じたために更に添加した。次に、25mlの水と、8.35gの同じ水酸化カルシウムとを加え、10分間混ぜた。次に、1.82グラムの氷酢酸を添加し、続いて30.60グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。これら2種のコンプレックス化酸が反応した後、52.86グラムの同じ基油が、グリース混合物の硬度が増加したために加えられた。次に、20.27グラムの75%リン酸水溶液をゆっくりと加えて混ぜて、反応させた。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、2.86グラムのスチレン−アルキレンコポリマーをクラム形成固体として加えた。グリースを約390Fに更に加熱すると、その時点で全てのポリマーが溶融して、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。グリースが300Fまで冷却すると、5ミクロン未満の平均粒径を有する33.10グラムの食品グレードの無水硫酸カルシウムを添加した。グリースが200Fに冷めると、アリールアミンと高分子量のフェノール系酸化防止剤の5.60グラムの混合物と、5.50グラムのリン酸アミン系酸化防止剤/防錆添加剤とを添加した。50.70グラムの同じ基油を更に加え、29.39グラムの同じ基油を更に加えた。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、281であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、26.29%であった。滴点は、>650Fであった。
[実施例5(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを、前の実施例4のグリースと同様にして作製したが、アルカリ金属水酸化物を添加し、水の添加と非水性変換剤の添加の間に遅延があった。使用したアルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウムであり、最終グリース中のその濃度は0.03%であった。また、非水性変換剤(プロピレングリコール)の量は、アルカリ/遅延添加法の実施形態が使用された先の実施例2及び実施例3のグリースで実測したものと一致しており、前の実施例4のグリースに比べて約2倍であった。
実施例5のグリースを以下のようにして作製した。298.15gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、次に、100Fで約352SUSの粘度を有する360.45gのUSP純度白色パラフィン系鉱基油を加えた。過塩基性カルシウムスルホネートは、NSF H−1認可食品グレードのグリースを製造するのに適したNSF HX−1食品グレード認可過塩基性カルシウムスルホネートであり、‘768出願で定義されたように高品質であった。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、27.10グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する50.61グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトと、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する4.09グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムを添加し、30分間混ぜた。次に、0.96グラムの氷酢酸と、11.92グラムの12−ヒドロキシステアリン酸とを添加し、15分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒径を有する55.04グラムの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。次に、0.44グラムの水酸化ナトリウム粉末が溶解した39.1グラムの水を添加した。温度が190乃至200Fに達するまで、撹拌を続けながら混合物を加熱した(第1温度調節遅延期間)。温度が約170Fに達すると、ホイップクリームの外観が観察されたことが認められた。190乃至200Fに達した後、蒸発により失われた水と置き換わる20mlの水を追加した。190乃至200Fで35分間混ぜた後(第1保持遅延期間)、29.88グラムのプロピレングリコールを添加し、ホイップクリームの外観が非水性変換剤の添加前に治まったことが観察された。約10分後、目に見える変換と増粘が観察され始めた。グリースが増粘し続けたので、同じ基油51.33グラムを水5ミリリットルと共に加えた。最終的に、同じ基油51.25gを加えて、グリースが過度に硬くならないようにした。フーリエ変換赤外(FTIR)分光法でほぼ全ての水が無くなったことが示されると、更に40mlの水を加えた。
フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、190乃至200Fで約2時間後(プロピレングリコール添加後2時間)に、非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示した。次に、40mlの水及び8.12gの同じ水酸化カルシウムを加え、10分間混ぜた。52.07グラムの同じ基油を、グリースが増粘し続けたので更に加えた。次いで2.85グラムの氷酢酸を添加し、続いて31.35グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。これら2種のコンプレックス化酸が反応した後、グリース混合物の硬度が増加したため、同じ基油52.11グラムを加えた。次に、20mlの水を更に加え、続いて同じ基油54.11gを添加した。次に、20.14グラムの75%リン酸水溶液をゆっくりと加えて混ぜて、反応させた。グリースが更に硬くなったので、別の52.5グラムの同じ基油が加えられた。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、2.75グラムのスチレン−アルキレンコポリマーをクラム形成固体として加えた。グリースを更に約390Fに加熱すると、その時点で全てのポリマーが溶融し、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。グリースが300Fまで冷めると、5ミクロン未満の平均粒径を有する33.16グラムの食品グレード無水硫酸カルシウムを添加した。グリースが200Fに冷めると、アリールアミンと高分子量のフェノール系酸化防止剤の5.62グラムの混合物と、5.68グラムのリン酸アミン系酸化防止剤/防錆添加剤とを添加した。合計107.41グラムの同じ基油の3つの部を添加した。グリースが170Fの温度に達するまで、混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、288であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、21.78%であった。滴点は、>650Fであった。このグリースの増ちょう剤収率は、先の実施例4のグリースと比較して大幅に改善されており、アルカリ/遅延添加法の実施形態の顕著な効果を実証している。
[実施例6(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
水酸化ナトリウムの量を2倍にしたこと以外は、先の実施例5のグリースと同様にして、別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。最終グリース中の水酸化ナトリウム濃度は、0.06%であった。グリースを次のようにして調製した。297.40グラムの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約352SUSの粘度を有する360.93gのUSP純度白色パラフィン系鉱基油を加えた。過塩基性カルシウムスルホネートは、NSF H−1認可食品グレードのグリースを製造するのに適したNSF HX−1食品グレード認可過塩基性カルシウムスルホネートであり、‘768出願で定義されたように高品質であった。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、27.13グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混合した後、5ミクロン未満の平均粒径を有する50.63グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトと、5ミクロン未満の平均粒径を有する4.20グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムとを添加し、30分間混ぜた。次に、0.95グラムの氷酢酸と、11.92グラムの12−ヒドロキシステアリン酸とを加えて、15分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する55.14グラムの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。次に、0.88gの水酸化ナトリウム粉末が溶解した水39.2gを添加した。温度が190〜200Fに達するまで、撹拌を続けながら混合物を加熱した(第1温度調節遅延期間)。温度が約184Fに達すると、ホイップクリームの外観が観察されたことが認められた。190乃至200Fで35分間混合した後(第1保持遅延期間)、蒸発により失われた水と置き換わる水20mlを追加した。その後まもなく、ホイップクリームの外観が治まって、30.25gのプロピレングリコールを非水性変換剤として添加した。目に見える変換と増粘が20分後に始まった。蒸発損失のために10mlの水を更に加えた。
グリースが増粘し続けたので、51.96グラムの同じ基油を加え、続いて57.48グラムの同じ基油を更に加えた。非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換と増粘プロセスとが完了したように見えると、8.12gの同じ水酸化カルシウムを添加し、10分間混ぜた。グリースが増粘し続けたので、51.85グラムの同じ基油を更に加えた。次に1.83グラムの氷酢酸を添加し、続いて30.54グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。これらの2種のコンプレックス化酸が反応した後、グリース混合物の硬度が増加したため、合計107.53グラムの同じ基油の2つの部を更に添加した。次に、10mlの水を更に添加し、続いて20.30gの75%リン酸水溶液をゆっくりと添加して混ぜて、反応させた。グリースが更に硬くなったので、合計99.63グラムの同じ基油の2つの部を加えた。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、2.91グラムのスチレン−アルキレンコポリマーをクラム形成固体として加えた。グリースを更に約390Fに加熱すると、その時点で全てのポリマーが溶融し、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。グリースが300Fに冷めると、5ミクロン未満の平均粒径を有する33.11グラムの食品グレード無水硫酸カルシウムを添加した。グリースが200Fに冷めると、アリールアミンと高分子量フェノール系酸化防止剤の5.78グラムの混合物と、5.78グラムのアミンリン酸系酸化防止剤/防錆添加剤とを添加した。合計114.78グラムの同じ基油の3つの部が加えられた。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、最終的に滑らかで均一な質感を達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、295であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホン酸の割合は20.78%であった。滴点は、>650Fであった。明らかなように、このグリースの増ちょう剤収率は、先の実施例4のグリースに比べて大幅に改善されており、アルカリ/遅延添加法の実施形態の顕著な効果を実証している。混和ちょう度と過塩基性カルシウムスルホネート濃度の割合との間の慣習的な逆線形関係を用いると、この実施例のグリースは、前の実施例5のグリースと混和ちょう度が同じ値になるように基油を控えた場合、21.3%の過塩基性カルシウムスルホネート濃度になったであろう。従って、この実施例6のグリースの水酸化ナトリウムの量を2倍にすると、前の実施例5のグリースと比較して、せいぜい、増ちょう剤収率が更に少し改善したように見える。
[実施例7(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
先の実施例6のグリースと同様にして別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。このグリースと先の実施例6のグリースとの間の唯一の有意な違いは、このグリースが最初の加熱期間中に160乃至170Fで1時間保持されたことであった。グリースを、次のようにして調製した。297.79gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約352SUSの粘度を有する362.02gのUSP純度白色パラフィン系鉱基油を加えた。過塩基性カルシウムスルホネートは、NSF H−1認可食品グレードのグリースを製造するのに適したNSF HX−1食品グレード認可過塩基性カルシウムスルホネートであり、‘768出願で定義されたように高品質であった。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、27.01グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する50.64グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトと、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する4.14グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムを添加し、30分間混ぜた。次に、0.94グラムの氷酢酸と、11.92グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加し、15分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する55.37グラムの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。次に、0.88gの水酸化ナトリウム粉末が溶解した水39.1gを添加した。温度が160乃至170Fになるまで、混ぜ続けながら混合物を加熱した(第1温度調節遅延時間)。この間、ホイップクリームの外観がもたらされたことが認められた。160乃至170Fで1時間混合した後(第1保持遅延期間)、190乃至200Fに加熱し(第2温度調節遅延時間)、30.14グラムのプロピレングリコールを非水系変換剤として添加した。
目に見える変換及び増粘が40分後に始まった。次に蒸発損失のために水30mlを加えた。グリースが増粘し続けたので、53.10グラムの同じ基油を添加した。25分後、20mlの水と51.91gの同じ基油を更に添加した。次に、更に10分後、水10ml及び同じ基油56.33gを加えた。更に25分後、非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換と増粘プロセスが完了したように見えると、8.18gの同じ水酸化カルシウムと30mlの更なる水とを加えて、10分間混ぜた。次に、1.84グラムの氷酢酸を添加し、続いて30.57グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。これらの2つのコンプレックス化酸が反応した後、グリース混合物の硬度が高くなったので、105.14グラムの同じ基油の2つの部を、更に添加した。次に、20.22gの75%リン酸水溶液をゆっくりと加えて混ぜて、反応させた。グリースが更に硬くなったので、55.31グラムの同じ基油を添加した。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、2.77グラムのスチレン−アルキレンコポリマーをクラム形成固体として加えた。グリースを更に約390Fに加熱すると、その時点で全てのポリマーが溶融し、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。
グリースが300Fまで冷却すると、5ミクロン未満の平均粒径を有する33.21グラムの食品グレード無水硫酸カルシウムを添加した。グリースが200Fに冷めると、アリールアミンと高分子量フェノール系酸化防止剤の5.61グラムの混合物と5.90グラムのリン酸アミン系酸化防止剤/防錆添加剤を添加した。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、309であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、23.43%であった。滴点は、>650Fであった。
混和ちょう度と過塩基性カルシウムスルホネート濃度との間の慣習的な逆線形関係を用いると、アルカリ金属水酸化物が添加されておらず、且つ遅延時間がない前の実施例4のグリースと同じ値の混和ちょう度をもたらすように、より少ない基油を添加した場合、この実施例7のグリースは25.76%の過塩基性スルホン酸カルシウム濃度を有するであろう。この値を実施例4、5及び6のグリースの結果と比較すると、この実施例7のグリースの収率向上効果の大半は、190乃至200に加熱する前に、160乃至170Fの第1温度範囲の温度保持遅延期間を有することで除去されたようである。‘476出願の実施例12及び実施例17では、アルカリ金属水酸化物を添加しない場合、190乃至200Fに加熱する前の160乃至170Fの第1温度範囲で第1保持遅延期間を有することで、増ちょう剤収率(夫々、20.36%及び20.59%)を改善することが示されたが、それらの実施例での第1保持遅延期間は2.5時間であった。本出願の実施例のグリースと比較すると、(実施例7における最終グリース比で0.07重量%のような)非常に少量のアルカリ金属水酸化物の付加は、変換プロセスに影響を及ぼしており、アルカリ/遅延添加法の実施形態を利用することは有益であるが、‘476出願における遅延期間の特定の組合せの利点は、アルカリ金属水酸化物の添加と組み合わせると必ず達成されるものではないように見える。この結果は、予想外で驚くべきものである。実施例7のグリースは、基準の実施例4のグリースと比較して幾らかの増ちょう剤収率向上を示すが、実施例7の特定の組合せの遅延時間及び温度範囲に起因して、実施例5及び実施例6のグリースに見られる収率向上の大半は観察されない。故に、アルカリ金属水酸化物を添加する場合には、遅延非水変換剤法の一部として、160乃至170Fの第1温度範囲にグリースを加熱し、その第1温度範囲で如何なる保持遅延期間を有しないことが最も好ましい。
[実施例8(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
水酸化ナトリウムの代わりに水酸化アルカリ一水和物をアルカリ金属水酸化物として使用した以外は、実施例6のグリースと同様にしてカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。最終グリースにおける一水和物形態に基づく水酸化リチウム濃度は0.06%であった。グリースを次のように作製した。298.61gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加えて、続いて100Fで約352SUSの粘度を有する362.54グラムのUSP純度白色パラフィン系鉱基油を加えた。過塩基性カルシウムスルホネートは、NSF H−1認可食品グレードグリースを製造するのに適したNSF HX−1食品グレード認可過塩基性カルシウムスルホネートであり、‘768出願で定義されたように高品質であった。混合を加熱なしで、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、27.03グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混合した後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する50.62グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトと、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する4.11グラムの食品グレードの純度水酸化カルシウムとを添加して、30分間混ぜた。次に、0.97グラムの氷酢酸と、11.96グラムの12−ヒドロキシステアリン酸とを添加し、15分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する55.05グラムの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。次に、0.88グラムの水酸化リチウム一水和物粉末が溶解した39.55グラムの水を添加した。温度が190乃至200Fに達するまで、混ぜながら混合物を加熱した(第1温度調節遅延期間)。温度が約170Fに達すると、ホイップクリームの外観が観察されたことが認められた。190乃至200Fで45分間混ぜた後(第1保持遅延期間)、蒸発により失われた水と置き換わる30mlの水を追加し、30.01gのプロピレングリコールを添加した。また、その時点でホイップクリームの外観が治まっていることが観察された。
目に見える変換及び増粘は35分後に始まった。蒸発損失のために15mlの水を加えた。グリースが増粘し続けたので、58.52グラムの同じ基油が添加され、次に51.15グラムの同じ基油が更に添加された。非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換及び増粘プロセスが完了したように見えると、8.12gの同じ水酸化カルシウムを添加し、10分間混ぜた。次に1.78グラムの氷酢酸を添加し、続いて30.53グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。約15分後、これらの2種のコンプレックス化酸が反応したように見えると、69.37グラムの同じ基油を更に加えてグリースが硬くなりすぎないようにした。水10mlを更に加えた。グリースが硬化し続けたので、合計で90.53グラムの同じ基油の2つの部が更に加えられた。次に、5mlの水を更に添加し、続いて20.16gの75%リン酸水溶液をゆっくりと添加して混ぜて、反応させた。グリースが更に硬くなり続けたので、同じ基油38.24グラムを加えた。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、2.85グラムのスチレン−アルキレンコポリマーをクラム形成固体として加えた。グリースを更に約390Fに加熱すると、その時点で全てのポリマーが溶融し、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外して、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却させた。グリースが300Fまで冷めると、5ミクロン未満の平均粒径を有する33.21グラムの食品グレード無水硫酸カルシウムを添加した。グリースが200Fに冷めると、アリールアミンと高分子量のフェノール系酸化防止剤の5.78グラムの混合物と、6.10グラムのリン酸アミン系酸化防止剤/防錆添加剤とを添加した。合計112.37グラムの同じ基油の2つの部を更に加えた。グリースが170Fの温度に達するまで撹拌を続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、295であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は21.79%であった。滴点は、>650Fであった。このように、このグリースの増ちょう剤収率は、先の実施例4のグリースと比較して大幅に改善されており、アルカリ/遅延添加法の実施形態を利用する顕著な効果を実証している。このグリースを、同じ第1の温度調節遅延期間とほぼ同じ第1の保持遅延時間(35分対45分)とを有する実施例6のグリースと更に比較すると、水酸化リチウムの増粘効率向上効果は水酸化ナトリウムほどは効果的ではないと考えられる。
[実施例9(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
付加アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムを使用したことを除いて、先の実施例6のグリースと同様の方法で、別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。水酸化カリウムを47.9%水溶液の形で導入した。この溶液の添加量は、水酸化カリウムの濃度と、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの分子量の差の両方を補償するように調整された。これは、実施例6のグリースと同様に、このグリースの付加水酸化物のモル量をほぼ同じにするように行った。最終グリースの水酸化カリウム濃度は0.20%であった。グリースを以下のようにして調製した。302.52gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加えて、続いて100Fで約352SUSの粘度を有する357.60gのUSP純度白色パラフィン系鉱基油を加えた。過塩基性カルシウムスルホネートは、NSF H−1認可食品グレードのグリースを製造するのに適したNSF HX−1食品グレード認可過塩基性カルシウムスルホネートであって、‘768出願で定義されたように高品質であった。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、27.04グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒径を有する50.63グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトと、5ミクロン未満の平均粒径を有する4.09グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムを添加し、30分間混ぜた。次に、0.96グラムの氷酢酸及び11.94グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加し、15分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する55.00グラムの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。その後、2.67gの47.9%水酸化カリウム水溶液を混合した水39.00gを添加した。
温度が190乃至200Fに達するまで連続的に混ぜながら混合物を加熱した。温度が約170乃至180Fに達すると、ホイップクリームの外観が発現した。グリースが200Fに達するまで加熱を続けて(第1温度調節遅延期間)、次に、15mlの水と29.72gのプロピレングリコールとを添加した(保持遅延時間なし)。また、その時点でホイップクリームの外観が治まっていることが観察された。目に見える変換及び増粘が始まると、65.89グラムの同じ基油と10mlの水を添加した。増粘が続いたので、36.32グラムの同じ基油と10mlの水を添加した。これに続いて51.67グラムの同じ基油を添加した。非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換及び増粘プロセスが完了したように見えると、8.27グラムの同じ水酸化カルシウムを添加し、10分間混ぜた。次に1.79グラムの氷酢酸を添加し、続いて30.57グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。これらの2種のコンプレックス化酸が反応し、グリースが増粘し続けたので、88.20グラムの同じ基油を添加し、続いて5mlの水を加えた。次に、グリースが更に硬くなったので、15.73グラムの同じ基油を添加した。次に、20.81gの75%リン酸水溶液をゆっくりと加えて混ぜて、反応させた。グリースが更に硬くなり続けたので、51.66グラムの同じ基油を添加した。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、2.75グラムのスチレン−アルキレンコポリマーをクラム形成固体として加えた。グリースを更に約390Fに加熱すると、その時点で全てのポリマーが溶融し、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。
グリースが300Fに冷めると、5ミクロン未満の平均粒径を有する33.19グラムの食品グレード無水硫酸カルシウムを添加した。グリースが200Fに冷めると、アリールアミンと高分子量のフェノール系酸化防止剤の5.93グラムの混合物と、6.78グラムのリン酸アミン系酸化防止剤/防錆添加剤とを添加した。51.59グラムの同じ基油を更に添加した。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、292であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は23.03%であった。滴点は、>650Fであった。このグリースの増ちょう剤収率は、先の実施例4のグリースと比較して大幅に改善されており、アルカリ/遅延添加法の実施形態を利用する顕著な効果を実証している。このグリースを実施例6及び実施例8のグリースと更に比較すると、水酸化カリウムの収率改善効果は、水酸化ナトリウム又は水酸化リチウムの何れかほどは有効ではないようである。非水性変換剤の添加の遅延期間における他の変更を伴う追加の試験が別に示されるかも知れないが、最も好ましいアルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、続いて水酸化リチウム、次いで水酸化カリウムであると考えられる。
[実施例10(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを、先の実施例6のグリースと同様に作製したが、より多くの基油を最初に添加し、過塩基性カルシウムスルホネート、C12アルキルベンゼンスルホン酸、プロピレングリコール変換剤、12−ヒドロキシステアリン酸及び酢酸の量は、付加水酸化カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト、付加炭酸カルシウム及びリン酸の量と比較して相対的に低減した。グリースを以下のように製造した。233.60gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約352SUSの粘度を有する422.48gのUSP純度白色パラフィン系鉱基油を加えた。過塩基性カルシウムスルホネートは、NSF H−1認可食品グレードグリースを製造するのに適したNSF HX−1食品グレード認可過塩基性カルシウムスルホネートであり、‘768出願で定義されたように高品質であった。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、21.04グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する50.69gのカルシウムヒドロキシアパタイトと、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する4.10gの食品グレード純度水酸化カルシウムを添加し、30分間混ぜた。次に、0.72グラムの氷酢酸と9.32グラムの12−ヒドロキシステアリン酸とを添加し、15分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する55.22gの微粉炭酸カルシウムを添加し、5分間混ぜた。次に、0.88gの水酸化ナトリウム粉末を溶解した水39.1gを添加した。温度が190乃至200Fに達するまで、混ぜ続けながら混合物を加熱した(第1温度調節遅延期間)。温度が約180Fに達すると、ホイップクリームの外観が観察されたことが認められた。190乃至200Fで40分間混合した後(第1保持遅延期間)、蒸発により失われた水と置き換わる20mlの水を追加し、23.13gのプロピレングリコールを添加した。この時点でホイップクリームの外観が治まっていることも観察された。
2時間30分後、増粘が依然として生じていた。温度が230Fに上昇して、FTIRはほとんど水が残っていないことを示した。30mlの水を更に加え、温度を230Fに保持した。30分後、35mlの水を更に加えた。更に25分後、35mlの水を加えた。温度は約220Fに低下した。次に、8.22グラムの同じ水酸化カルシウムを添加し、10分間混ぜた。次に、1.37グラムの氷酢酸を添加し、続いて23.68グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。これら2種のコンプレックス化酸が反応した後、20.53gの75%リン酸水溶液をゆっくりと加えて混ぜて、反応させた。次に、グリースを撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300Fに達すると、2.79グラムのスチレン−アルキレンコポリマーをクラム形成固体として加えた。グリースを更に約390Fに加熱すると、その時点で全てのポリマーが溶融し、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。グリースが300Fに冷めると、5ミクロン未満の平均粒径を有する33.15グラムの食品グレード無水硫酸カルシウムを添加した。グリースが200Fに冷めると、アリールアミンと高分子量のフェノール系酸化防止剤の5.89グラムの混合物と、5.83グラムのリン酸アミン系酸化防止剤/防錆添加剤とを添加した。合計103.66グラムの同じ基油の2つの部を添加した。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、289であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は22.76%であった。滴点は621Fであった。このように、このグリースの増ちょう剤収率は、先の実施例4の基準グリースと比較して大幅に改善されており、アルカリ/遅延添加法の実施形態の顕著な効果を実証している。
本明細書の実施例1乃至10の結果と用いたプロセスを、以下の表1に要約する。括弧内の過塩基性カルシウムスルホネートの量は、上述したように、追加の基油を添加してサンプルグリースを希釈してダッシュの後に示された番号の実施例と同じちょう度を達成した場合に推定される過塩基性カルシウムスルホネートの量である。これらの最初の10個の実施例は、特にカルシウムヒドロキシアパタイト及び付加炭酸カルシウムが、‘768出願に記載されているようなコンプレックス化酸と反応するカルシウム含有塩基として使用された場合において、本発明のアルカリ/遅延法の実施形態を利用することによって、 増ちょう剤収率が改善されることを証明している。更に、本発明のアルカリ/遅延法の実施形態を使用すると、低品質及び高品質の過塩基性カルシウムスルホネートの両方を用いても、増ちょう剤収率が改善される。コンプレックスグリースはまた、優れた滴点を示した。
Figure 2019501266
以下の実施例は、アルカリ金属水酸化物を添加するタイミングを変化させて、本発明のアルカリ/遅延方法の実施形態を用いて達成できる本発明の過塩基性カルシウムスルホネートグリースの優れた特性を更に示している。
[実施例11(基準実施例−付加アルカリ金属水酸化物なし。遅延期間なし)]
別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを米国特許第4,560,489号(1985年12月24日にWitco Corporationに発行)の実施形態と似たように、‘476出願の実施例18に記載されているように作製した。‘489特許に開示されているように、このグリースにおけるコンプレックス化酸との反応のために添加された唯一のカルシウム含有塩基は水酸化カルシウムであった。このグリースは、次の2つの実施例の基準として働く。
実施例11のグリースを以下のように作製した。440.02gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する390.68gの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を添加した。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。400TBNの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様な高品質のカルシウムスルホネートであった。次に、17.76グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混合した後、44.41グラムの水と、続いて14.37グラムのヘキシレングリコールとを添加した。次に、温度が190Fに達するまで混ぜ続けながらバッチを加熱した。 温度が190Fに達すると、5.75グラムの氷酢酸を添加した。グリース構造への目に見える変換が観察されると、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こることを示すまで、190Fと200Fの間で温度を45分間保持した。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する15.37グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムを添加し、10分間混ぜた。この水酸化カルシウムは、コンプレックス化酸と反応する唯一の付加カルシウム含有塩基であった。次に、28.59グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、溶融させて反応させた。次に、25.33gのホウ酸を50mlの熱湯と混合し、混合物をグリースに添加した。そして、グリースを330Fに加熱した。次に、加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。グリースが170Fに冷めると、それをミキサーから取り出し、3本ロールミルに3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、291であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、46.92%であった。滴点は、>650Fであった。
[実施例12(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
先グリースと同様の方法で別のグリースを作製したが、このグリースでは、混合物が190乃至200Fに加熱されるまで、非水性変換剤のヘキシレングリコールの添加を遅らせた。更に、このグリースは、最初の変換が起こった後であって、水酸化カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸、又は酢酸が添加される前に、190乃至200Fで添加された水の第2の部に少量の水酸化ナトリウムが溶解していた。最終グリース中の水酸化ナトリウム濃度は0.08%であった。グリースを以下のように作製した。430.36グラムの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100°Fで約600SUSの粘度を有する383.79グラムの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を加えた。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。400TBNの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様の高品質のカルシウムスルホネートであった。次に、17.64グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。
20分間混合した後、変換剤として44.48グラムの水を加えた。その後、温度が190乃至200Fに達するまで、混ぜながらバッチを加熱した(第1温度調節遅延期間)。温度が190Fに達すると、5.52グラムの氷酢酸を加えて、5分間混ぜた。次に、温度を190乃至200Fに保ちながら、14.32グラムのヘキシレングリコールを添加した。190乃至200Fの第1温度範囲に達してから非水系変換剤を添加するまでの5分間のインターバルは非常に短いので、保持遅延期間とはみなされない。グリース構造への目に見える変換が観察されると、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こることを示すまで、190F乃至200Fで温度を45分間保持した。次に、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する15.41グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムを添加し、10分間混ぜた。この水酸化カルシウムは、コンプレックス化酸と反応する唯一の付加カルシウム含有塩基であった。次に、0.88グラムの水酸化ナトリウム粉末が溶解した44.04グラムの水(水の第2の添加)を加え、グリースに混ぜた。次に、28.60グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、溶融させて反応させた。グリースを45分間撹拌し、次に、25.30gのホウ酸を50mlの熱湯と混合し、混合物をグリースに添加した。
次に、グリースを390乃至400Fに加熱した。次に、加熱マントルを取り外し、外気中で攪拌し続けてグリースを冷却した。グリースが200Fに冷めると、2.40グラムのアリールアミン系酸化防止剤を添加した。次に、合計165.54グラムの同じ基油の2つの部を更に加え、グリースに混ぜた。グリースが170Fに冷めると、それをミキサーから取り出し、3本ロールミルに3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、290であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、39.38%であった。滴点は、>650Fであった。見て分かるように、このグリースは、前の実施例11のグリースと本質的に同じ混和ちょう度を有していた。しかしながら、増ちょう剤収率は、このグリース中の過塩基性カルシウムスルホネートの割合が前の実施例11のグリースと比較してはるかに低いことによって示されるように、有意に改善した。
[実施例13(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
前のグリースと同様の方法で別のグリースを作製し、混合物が190乃至200Fに加熱されるまで、非水性変換剤であるヘキシレングリコールの添加を遅延させた(第1温度調節遅延時間)。しかしながら、このグリースでは、少量の水酸化ナトリウムを、バッチの加熱が始まる前に周囲温度で添加された水の最初の部に溶解させた。ここでも、最終グリース中の水酸化ナトリウム濃度は0.08%であった。グリースを以下のように製造した。440.24gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する385.62gの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を添加した。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。400TBNの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様な高品質のカルシウムスルホネートであった。次に、17.61グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、44.48グラムの水に0.88グラムの水酸化ナトリウム粉末が溶解したものを添加した。その後、温度が190乃至200Fに達するまで、混ぜながらバッチを加熱した(第1温度調節遅延期間)。温度が190Fに達すると、5.50グラムの氷酢酸を加え、5分間混ぜた。次に、温度を190乃至200Fに保持しながら、14.64グラムのヘキシレングリコールを添加した。ここでも、190乃至200Fの第1温度範囲に達してから非水性変換剤を添加するまでの5分間のインターバルは非常に短いので、保持遅延期間とはみなされない。グリース構造への目に見える変換が観察されると、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こることを示すまで、190F乃至200Fで45分間温度を保持した。
次に、30.1グラムの水と、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する15.41グラムの食品グレード純度水酸化カルシウムとを添加し、10分間混ぜた。ここでも、この水酸化カルシウムは、コンプレックス化酸と反応する唯一の付加カルシウム含有塩基であった。次に、28.66グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、溶融させて反応させた。グリースを45分間撹拌し、次いで25.41gのホウ酸を50mlの熱湯と混合し、混合物をグリースに添加した。その後、390乃至400Fへとグリースを加熱した。次に、加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却させた。グリースが200Fに冷めると、2.69グラムのアリールアミン系酸化防止剤を添加した。次に、合計172.32グラムの同じ基油の3つの部を更に加え、グリースに混合した。
グリースが170Fに冷めると、それをミキサーから取り出し、3本ロールミルに3回通過させて滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、284であった。最終グリース中の油溶性過塩基性カルシウムスルホネートの割合は38.74%であった。滴点は、>650Fであった。ここでも、増ちょう剤収率は、このグリース中の過塩基性カルシウムスルホネートの割合が、前の実施例11のグリースと比較して非常に低いことで示されるように有意に改善された。この実施例のグリース及び前述の実施例12のグリースは、(先の実施例及び‘768出願に開示されているような、カルシウムヒドロキシアパタイト及び/又は付加炭酸カルシウムの添加とは対照的に)アルカリ/遅延添加法の実施形態を利用することで、コンプレックス化酸との反応のために水酸化カルシウムのみを使用する場合にて、非常に顕著な増粘剤の収率向上をもたらすことを示している。増ちょう剤収率は、アルカリ金属水酸化物を最初の水と共に添加する実施例13では、アルカリ金属水酸化物を水の2回目の添加で添加する実施例12よりも良好になるので、少なくとも水酸化カルシウムが唯一のカルシウム含有塩基である場合には、アルカリ金属水酸化物を最初の水の添加で添加することが好ましい。しかしながら、実施例12及び実施例13の両方は、アルカリ金属水酸化物を添加しなかった実施例11と比較して、増ちょう剤収率において有意な改善を示している。
実施例12及び実施例13のグリース(両方ともアルカリ/遅延添加法の両方の実施形態を利用する)における非水性変換剤の濃度は、実施例11の基準グリースと同じであったことにも留意のこと。‘489特許に開示されている先行技術のカルシウムスルホネートグリース技術を、唯一の付加カルシウム含有塩基として水酸化カルシウムを用いて、アルカリ/遅延添加法の実施形態と組み合わせて使用する場合には、増ちょう剤収率が向上した有用なグリースを達成するために非水性変変換剤の量を増加させる必要はない。対照的に、コンプレックス化酸と反応する付加カルシウム含有塩基として、カルシウムヒドロキシアパタイトの添加と付加炭酸カルシウムと組み合わせて、実施形態を利用した実施例2乃至3及び実施例5乃至10では、非水系変換剤の量を増加させる必要があるように見えたが、これらの実施例では、増ちょう剤収率は実施例12及び実施例13よりも有意に良好であった。これらのグリースに使用される過塩基性カルシウムスルホネートは高価な成分であるので、幾つかの成分を追加する必要がある場合であっても、付加カルシウムヒドロキシアパタイト及び付加炭酸カルシウムと組み合わせて、アルカリ/遅延添加法の実施形態を使用することが最も好ましい。
[実施例14(基準実施例。アルカリ金属添加なし。遅延期間なし)]
付加炭酸カルシウムがグリース中に別個に添加された成分である米国特許第9,273,265号に開示された組成物及び方法に従って、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。このグリースは、アルカリ金属水酸化物の添加又は遅延期間を含まなかった。このグリースは次のグリースと共に、比較の基準として働く。グリースを以下のように作製した。310.25グラムの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する368.14グラムの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を添加した。400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12において先に記載及び使用されたものと同様な高品質のカルシウムスルホネートであった。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、31.31グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する75.03gの微粉結晶性炭酸カルシウムを添加し、20分間混ぜた。この炭酸カルシウムは、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムの量に加えて添加された。次に、0.85グラムの氷酢酸と、8.09グラムの12−ヒドロキシステアリン酸とを添加した。混合物を10分間撹拌した。次に、15.83グラムのヘキシレングリコールと40.1グラムの水とを添加し(遅延期間なし)、混ぜ続けながら、190F乃至200Fの温度に混合物を加熱した。加熱工程の間に、混合物は約160Fでグリース構造に見るからに変換したことが認められた。グリースが190乃至200Fに達すると、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は蒸発のために水の大半が失われたことを示した。水20mlを更に加えた。
190乃至200Fで45分間混合した後に、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示した。次に、1.57グラムの氷酢酸と、16.41グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えて、30分間反応させた。水20mlを更に加えた。次に、16.49gの75%リン酸水溶液をゆっくり加えて混ぜて反応させた。その後、390乃至400Fにグリースを加熱した。加熱マントルをミキサーから取り出し、混ぜ続けながらグリースを冷却した。温度が200F未満になると、合計105.38グラムの同じ基油の2つの部を更に加えた。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、283であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、32.68%であった。滴点は、617Fであった。
[実施例15(基準実施例。アルカリ金属水酸化物の添加なし。遅延期間なし)]
別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを、先の実施例14のグリースと同じ方法及び同じ組成に基づいて作製した。この実施例15のグリース及び前の実施例14のグリースは、次の2つのグリースの比較の基準を提供する。グリースを次のように作製した。310.19gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する367.82gの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を加えた。400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様な高品質のカルシウムスルホネートであった。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、31.28グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する75.31グラムの微粉結晶性炭酸カルシウムを添加し、20分間混ぜた。この炭酸カルシウムは、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムに加えて添加された。次に、0.84グラムの氷酢酸と8.10グラムの12−ヒドロキシステアリン酸とを添加した。混合物を10分間撹拌した。次に、15.73グラムのヘキシレングリコールと41.2グラムの水とを加えて混ぜながら、混合物を190F乃至200Fの温度に加熱した。加熱工程の間に、混合物は約170°でグリース構造に見るからに変換したことが認められた。グリースが190乃至200Fに達すると、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、蒸発のために水の大半が失われたことを示した。水20mlを更に加えた。
190乃至200Fで45分間混ぜた後、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示した。次に、1.57グラムの氷酢酸と、16.44グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加し、30分間反応させた。次に、16.60グラムの75%リン酸水溶液をゆっくりと加えて混ぜて、反応させた。その後、390乃至400Fにグリースを加熱した。加熱マントルをミキサーから取り出し、混ぜ続けながらグリースを冷却した。温度が200F未満になると、合計105.79グラムの同じ基油の2つの部を更に加えた。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は280であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、32.66%であった。滴点は583Fであった。このように、このグリースの増ちょう剤収率は、先の実施例14のグリースと実質的に同じである。これらの2つのグリースは共に、この特定の手法と過塩基性油溶性カルシウムスルホネートとを使用して、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースの基準増ちょう剤収率を確立する。
[実施例16]
別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを、先の2つのグリースと同様に作製した。しかしながら、非水性変換剤であるヘキシレングリコールは、水と共に最初に添加されなかった。代わりに、混合物を190乃至200Fに加熱し(第1温度調節遅延期間)、その温度範囲で1時間保持した後に(第1保持遅延期間)添加した。このグリースにはアルカリ金属水酸化物を添加しなかった。グリースを次のようにして調製した。310.27gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する368.06gの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を加えた。400TBNの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12にて以前に記載及び使用されたものと同様の高品質のカルシウムスルホネートであった。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、31.18グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する75.29gの微粉結晶性炭酸カルシウムを添加し、20分間混ぜた。この炭酸カルシウムは、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムに加えて添加された。次に、0.85グラムの氷酢酸と8.11グラムの12−ヒドロキシステアリン酸とを添加した。混合物を10分間撹拌した。その後、41.2グラムの水を変換剤として添加し、混合物を混ぜながら190F乃至200Fの温度まで加熱した(第1温度調節遅延期間)。混合物をこの温度範囲で1時間混ぜた(第1保持遅延時間)。その間、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、蒸発により水が失われていることを示した。30mlの水を更に添加した。
その1時間後190乃至200Fで、15.66グラムのヘキシレングリコールを非水性変換剤として加えた。混合物は、ヘキシレングリコールが添加された直後に、見るからにグリースに変換した。190乃至200Fで45分間混ぜた後、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示した。30mlの水を更に添加し、続いて1.55gの氷酢酸及び16.39gの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。これら2つのコンプレックス化酸を30分間反応させた。次に、16.99グラムの75%リン酸水溶液をゆっくりと加えて混ぜて、反応させた。その後、390乃至400Fにグリースを加熱した。加熱マントルをミキサーから取り出し、撹拌し続けながらグリースを冷却した。温度が200F未満になると、合計132.34グラムの同じ基油の2つの部を更に加えた。グリースが170Fの温度に達するまで混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、286であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は31.77%であった。滴点は、>650Fであった。このような、このグリースの増ちょう剤収率は、実施例14及び実施例15のグリースと比較して若干改善された。
[実施例17(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを、前の実施例16と同様に作製した。しかしながら、このグリースは、アルカリ/遅延添加法の実施形態を使用した。非水系変換剤であるヘキシレングリコールを、水と共に最初に加えず、190乃至200Fに混合物を加熱した後に添加した(第1温度調節遅延期間)。また、最初に添加された水は、非常に少量の水酸化ナトリウムを含んでいた。最終グリース中の水酸化ナトリウム濃度は0.08%であった。このグリースのバッチサイズを、実施例14乃至16のグリースと比較して50%増加させたことに留意のこと。しかしながら、各成分の割合とその他のプロセス工程の詳細とには、有意な違いはなかった。
グリースを以下のように作製した。465.31グラムの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する367.68グラムの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を添加した。400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様な高品質のカルシウムスルホネートであった。混合を加熱せずに、遊星混合パドルを用いて開始した。次に、46.64グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する112.50グラムの微粉結晶性炭酸カルシウムを添加し、20分間混ぜた。この炭酸カルシウムは、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムに加えて添加された。次に、1.26グラムの氷酢酸と12.20グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。混合物を10分間撹拌した。次に、1.20gの水酸化ナトリウム粉末が溶解した41.2gの水を加え、混ぜながら190F乃至200Fの温度に加熱した(第1温度調節遅延期間)。加熱工程の間、温度が約176Fに達すると、幾らかの発泡が現れ始めたことが認められた。混合物が190乃至200Fに達すると、42.13グラムのヘキシレングリコールを添加した(保持遅延期間なし)。混合物は、ヘキシレングリコールが添加された直後に見るからにグリースに変換した。
約20分間混ぜた後、グリースが非常に重くなったことから、同じ基油76.61グラムを加えた。グリースを190乃至200Fで更に45分間混ぜた。その間に、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が水が失われたことを示したので、40mlの水を更に加えた。45分混ぜた終わりに、グリースは著しく薄くなっていた。フーリエ変換赤外分光法は、非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示した。その後、2.36グラムの氷酢酸と24.58グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。これら2種のコンプレックス化酸を30分間反応させた。次に、24.74グラムの75%リン酸水溶液をゆっくりと加えて混ぜて、反応させた。その後、390乃至400Fにグリースを加熱した。加熱マントルをミキサーから取り出し、混ぜ続けながらグリースを冷却した。冷めると、グリースは極端に粘くなった。
温度が200F未満になると、合計284.40グラムの同じ基油の4つの部を添加した。170Fの温度に達するまでグリースを混ぜ続けた。その後、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は、274であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は31.84%であった。滴点は、>650Fであった。混和ちょう度と過塩基性カルシウムスルホネートの濃度の割合の間の慣習的な逆線形関係を用いると、この例のグリースは、追加の基油を添加して、混和ちょう度を前の実施例16のグリースと同じ値にするならば、30.52%の過塩基性カルシウムスルホネート濃度を有していたであろう。従って、このグリース中のアルカリ/遅延添加法の実施態様の使用は、実施例14及び実施例15の2つの基準グリースと比較した場合、増ちょう剤収率の幾らかの改善をもたらした。それにも拘わらず、改善の程度は、他の実施例のグリースの幾つかで観察されたほど顕著ではない。理論に拘束されるものではないが、このグリースによってもたらされる収率改善のより低い量は、水酸化カルシウムが添加されていないという事実に起因するかも知れない。少量の水酸化ナトリウムの効果が実際に水酸化ナトリウムとコンプレックス化酸との迅速な反応と、それに続く水酸化ナトリウムによる脂肪酸ナトリウム塩のメタセシスとによるものであるならば、水酸化カルシウムの欠如は確かにその機構に影響を及ぼすであろう。実施例17のグリースでは、メタセシス反応は脂肪酸ナトリウム塩と炭酸カルシウムとの間でなければならず、これは容易ではないだろう。
本明細書の実施例11乃至17の結果及び使用したプロセスを、以下の表2に要約する。これらの実施例の全ては、高品質の過塩基性カルシウムスルホネートを使用した。
Figure 2019501266
以下の実施例は、アルカリ金属添加のタイミングを変化させるアルカリ/遅延添加法の実施形態で達成できる、本発明の過塩基性カルシウムスルホネートグリースの優れた特性を更に実証する。
[実施例18(基準実施例−アルカリ金属水酸化物の添加なし。遅延時間なし)]
米国特許第5,308,514号及び米国特許第5,338,467号(夫々、1994年5月3日と1994年8月16日にWitco Corporationに対して発行)の範囲に従って、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。これら特許では、長鎖脂肪酸の少なくとも一部が変換前に添加され、変換剤として作用でき、そして、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムのみが、コンプレックス化酸と反応するカルシウム含有塩基として添加される(‘768出願のようなカルシウムヒドロキシアパタイト又は付加炭酸カルシウムはない)。この実施例は、‘476出願の実施例6Aと同じであり、12−ヒドロキシステアリン酸の総量の54.1%と氷酢酸の全てとを変換前に添加した。残りの量の12−ヒドロキシステアリン酸を、変換後に添加し、続いて水酸化カルシウムとホウ酸水混合物とを添加した。また、アルカリ金属水酸化物は添加されず、水の添加と主たる非水性変換剤の添加の間に遅延はなかった。このグリースは比較の基準として働く。
実施例18のグリースを以下のように作製した。 380.73gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する604.50gの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を添加した。混合を加熱せずに、遊星混合パドルを用いて開始した。400TBNの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様な高品質のカルシウムスルホネートであった。次に、21.66グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混合した後、21.59グラムの12−ヒドロキシステアリン酸と、続いて18.16グラムのヘキシレングリコールと38.0グラムの水とを添加した。10分間混ぜた後、2.40グラムの氷酢酸を添加した。次に、温度が190Fに達するまで連続撹拌しながらバッチを加熱した。190F乃至200Fで温度を45分間保持した。フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示すまで、バッチを混ぜた。
249.94グラムのパラフィン系基油を更に添加し、続いて18.21グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加した。190F乃至200Fに温度を保ちながら、これを15分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒径を有する38.02gの微粉食品グレード純度水酸化カルシウムを50gの水と混合し、その混合物をグリースに添加した。次いで23.02gのホウ酸を50mlの熱湯と混合し、混合物をグリースに添加した。次に、グリースを390Fに加熱した。次に、加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。グリースが170Fに冷めると、それをミキサーから取り出し、3本ロールミルに3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度が339であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は27.62%であった。滴点は640Fであった。
[実施例19(‘476出願の遅延添加法。アルカリ金属水酸化物の添加なし)]
実施例18のグリースと同じ装置、原料、量及び製造プロセスを用いて別のカルシウムコンプレックスグリースを作製したが、水の添加と非水性変換剤としてのヘキシレングリコールの添加の間に、第1温度調節遅延期間(190乃至200への加熱)と第1保持遅延期間(190乃至200での1時間の保持)とが存在した。アルカリ金属水酸化物を添加しなかった。ヘキシレングリコールを添加すると、変換が完了したように見えるまで190F乃至200Fにグリースを保持した。その後の残りのプロセスは、先の実施例18のグリースと同じであった。最終的なグリースの60往復混和ちょう度は281であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は27.60%であった。滴点は>650Fであった。このように、この実施例のグリースは、本質的に同じ割合の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを有しているにも拘わらず、ちょう度がより硬いことによって証明されるように、先の実施例18のグリースに比べて改善された増ちょう剤収率を有していた。実際に、混和ちょう度と過塩基性カルシウムスルホネートの濃度の割合との間の慣習的な逆線形関係を用いると、十分な基油で希釈して、実施例18のグリースと同じ混和ちょう度を得るならば、実施例19のグリース中の過塩基性カルシウムスルホネートの予測される割合は24.2%であろう。
[実施例20(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
混合物が190乃至200Fに加熱されるまで、非水性変換剤であるヘキシレングリコールの添加が遅延するという点で先の実施例19のグリースと同様な方法で別のグリースを作製した。しかしながら、このグリースでは、バッチの加熱が始まる前に周囲温度で添加された水の最初の部に少量の水酸化ナトリウムが溶解していた。また、190乃至200Fの温度範囲に達すると、1時間の保持遅延時間がなかった。代わりにその温度範囲が達成されると、ヘキシレングリコールを直ぐに添加した。これは、先の実施例7のグリースで観察されたものである。当該グリースでは、アルカリ金属水酸化物を更に添加した場合にて、非水系変換剤についての保持温度遅延は増ちょう剤収率の最も高い改善をもたらさないことが観察されている。
グリースを以下のように作製した。380.79gの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する589.33gの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を添加した。混合を加熱することなくは、遊星混合パドルを用いて開始した。400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様な高品質のカルシウムスルホネートであった。次に、21.63グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、21.58グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を添加し、続いて0.85グラムの水酸化ナトリウム粉末を溶解させた38.14グラムの水を加えた。10分間混ぜた後、2.40グラムの氷酢酸を添加した。その後、温度が190乃至200Fに達するまで、混ぜながらしながらバッチを加熱した(第1温度調節期間)。温度が約180Fに達すると、発泡が観察されたことが認められた。温度が190乃至200Fに至ると、27.57グラムのヘキシレングリコールを添加した(保持遅延なし)。約10分後、バッチはグリース構造に見るからに変換した。
次に、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こることを示すまで、バッチを更に45分間混ぜた。45分間混ぜている間に、40mlの水を更に添加して、蒸発により失われた水と置き換えた。次に、18.27グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、190F乃至200Fに温度を保ちながら15分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒径を有する38.04グラムの微粉食品グレード純度水酸化カルシウムを50グラムの水と混合し、その混合物をグリースに添加した。次いで23.04gのホウ酸を50mlの熱湯と混合し、混合物をグリースに添加した。次に、グリースを390Fに加熱した。次に、加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却させた。冷却中、グリースは著しく粘くなった。合計253.87グラムの同じ基油の3つのほぼ等しい部を加えて、グリースと混合した。グリースが170Fに冷めると、それをミキサーから取り出し、3本ロールミルに3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は280であった。滴点は、>650Fであった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は27.65%であった。最終グリース中の水酸化ナトリウムの濃度は0.06%であった。
[実施例21(アルカリ/遅延添加法の実施形態)]
別のグリースを、先の実施例20のグリースとほぼ同じように作製した。唯一の有意な違いは、変換が完了した後、水酸化ナトリウムの水との混合物を加えたことである。次に、12−ヒドロキシステアリン酸の第2の部と、ホウ酸の熱湯との混合物とを添加した。最終的なグリースの60往復混和ちょう度が285であった。滴点は、>650Fであった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は27.40%であった。最終グリース中の水酸化ナトリウムの濃度は0.06%であった。このように、実施例19、実施例20、及び実施例21のグリースの増ちょう剤収率は、全て実施例18の基準グリースよりも顕著に優れていた。しかしながら、高品質の過塩基性カルシウムスルホネートを使用した場合には、アルカリ/遅延添加法の実施態様の使用は、‘476出願の遅延添加法だけで得られたものを大きく超える増ちょう剤収率の向上をもたらさなかった。これは、高品質の過塩基性カルシウムスルホネートの代わりに低品質の過塩基性カルシウムスルホネートを使用する場合に、アルカリ金属水酸化物添加及び/又は遅延非水性変換剤法で増ちょう剤収率を最も改善できることを示すようである。
本明細書の実施例18乃至21の結果及び使用したプロセスを、以下の表3に要約する。 これらの実施例の全ては、高品質の過塩基性カルシウムスルホネートを使用した。
Figure 2019501266
単純カルシウムスルホネートグリースへのアルカリ金属水酸化物の添加の結果を示す更なる例は、以下の実施例に見出される。
[実施例22:(基準実施例−アルカリ金属水酸化物の添加なし。遅延期間なし)]
米国特許第3,377,283号及び米国特許第3,492,231号(夫々、1968年4月9日及び1970年1月27日にLubrizol Corporationに発行された)の範囲に従って、遅延又はアルカリ金属水酸化物の添加なしに、次の3つのグリースの比較の基準として使用するために、単純カルシウムスルホネートグリースを作製した。グリースを以下のように製造した。496.49グラムの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する394.45グラムの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を添加した。混合を加熱せずに、遊星混合パドルを用いて開始した。400TBNの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様の高品質のカルシウムスルホネートであった。次に、20.23グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、44.23グラムの水を加え、続いて16.57グラムのヘキシレングリコール(主変換剤)を添加した。次に、温度が190Fに達するまで、混ぜながらバッチを加熱した。温度が190Fに達すると、6.20グラムの氷酢酸を添加した。グリース構造への目に見える変換が観察されると、過塩基性スルホン酸カルシウム中に含まれている非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことをフーリエ変換赤外(FTIR)分光法が示すまで、温度を190F乃至200Fの間で45分間保持したこの間に、10mlの水を更に加えた。次に、得られたグリースを330Fに加熱した。次に、加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却した。温度が200Fに達すると、2.34グラムのアリールアミン系酸化防止剤を添加した。グリースが170Fに冷めると、それをミキサーから取り出し、3本ロールミルに3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。このグリースの60往復混和ちょう度は331であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、53.03%であり、滴点は、>650Fであった。
[実施例23(‘476出願の遅延添加法。アルカリ添加なし)]
別の単純カルシウムスルホネートグリースを、水の添加と非水性変換剤の添加の間に遅延期間が存在することを除いて、先の実施例22のグリースと同様にして作製した。この実施例では、アルカリ金属水酸化物を添加しなかった。グリースを以下のように作製した。495.41グラムの400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、続いて100Fで約600SUSの粘度を有する391.96グラムの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を加えた。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様の高品質のカルシウムスルホネートであった。次に、19.65グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混ぜた後、44.42グラムの水を添加した。その後、混合物を160Fに加熱し(第1温度調節遅延期間)、160Fと170Fの間で2時間30分保持した(第1保持遅延期間)。この時間中に、最初に添加された水の大半が蒸発したので、50mlの水が更に加えられた。その後、バッチを190F(第2温度調節遅延時間)に加熱し、16.53グラムのヘキシレングリコール(主変換剤)を、続いて6.34グラムの氷酢酸を添加した。
グリース構造への目に見える変換が観察されると、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変化が起こったことを示すまで、190F乃至200Fで温度を45分間保持した。この間に、更に10mlの水を加えた。次に、得られたグリースを330Fに加熱した。次に、加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却させた。温度が200Fに達すると、2.32グラムのアリールアミン系酸化防止剤を添加した。グリースが170Fに冷めると、それをミキサーから取り出し、3本ロールミルに3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。実施例21のグリースの滴点は、>650Fであった。このグリースの60往復混和ちょう度は290であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、53.14%であった。
このグリース及び先の実施例22のグリースは、本質的に同じ割合の過塩基性カルシウムスルホネートを有すると認められる。しかしながら、このグリースの混和ちょう度は41ポイント硬かった。従って、このグリースに使用された遅延グリコール手順は、増ちょう剤収率の改善をもたらした。実際に、混和ちょう度と過塩基性カルシウムスルホネートの濃度の割合との間の慣習的な逆線形関係を使用すると、十分な基油で希釈して、実施例22のグリースと同じ混和ちょう度を得るならば、この実施例23のグリース中の過塩基性カルシウムスルホネートの予測される割合は、46.6%であろう。更に、非常に高い滴点が維持された。
[実施例24:(アルカリ添加及び遅延添加)]
別の単純カルシウムスルホネートグリースを、先の実施例23のグリースと同様の方法で作製したが、水の添加と非水性転変換剤との添加の間で異なる遅延時間を使用し、また、少量の水酸化ナトリウムを添加した。最終グリース中の水酸化ナトリウムの濃度は0.09%であった。グリースを次のように作製した。495.18gの400TBNの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを開放混合容器に加え、100Fで約600SUSの粘度を有する392.56gの溶剤中性グレード1パラフィン系基油を加えた。混合を加熱することなく、遊星混合パドルを用いて開始した。400TBNの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘768出願の実施例4及び実施例12で以前に記載及び使用されたものと同様な高品質のカルシウムスルホネートであった。次に、20.31グラムの主C12アルキルベンゼンスルホン酸を添加した。20分間混合した後、0.88グラムの水酸化ナトリウム粉末を44.0グラムの水に溶解させ、得られた溶液を添加した。次に、混合物を190Fに加熱し(第1温度調節遅延期間)、16.73グラムのヘキシレングリコール及び6.16グラムの氷酢酸を添加した。
グリース構造への目に見える変換が観察されると、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示すまで、温度を190F乃至200Fで45分間保持した。この時間の間、20mlの水を更に加えた。次に、得られたグリースを330Fに加熱した。次に、加熱マントルを取り外し、グリースを外気中で攪拌し続けて冷却させた。温度が200Fに達すると、3.35グラムのアリールアミン系酸化防止剤を添加した。グリースが170Fに冷めると、それをミキサーから取り出し、3本ロールミルに3回通過させて、滑らかで均一な質感を最終的に達成した。実施例24のグリースの滴点は478Fであった。このグリースの60往復温和ちょう度が311であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、52.95%であった。
このグリースを先の実施例23のグリースと比較すると、このグリースにおいては、先のグリースの実施例においてアルカリ/遅延添加法の実施態様を使用することによって観察された利益が観察されないことは明らかである。この実施例24のグリースでは、増ちょう剤収率は顕著に減少し、滴点は先の実施例23のグリースと比較して低下した。ここでも、理論に拘束されるものではないが、アルカリ性水酸化物の添加は、コンプレックスカルシウムスルホネートグリースの作製に使用されるコンプレックス化酸との反応に起因して主として増ちょう剤収率を改善すると思われる。しかしながら、単純グリースはコンプレックス化剤の添加を伴わないので、その利点は単純グリースでは得られず、単純グリース組成物にアルカリ金属水酸化物を添加することは、増ちょう剤収率に有害であるようにすら思われる。実施例22乃至24の結果を以下の表4に要約する。
Figure 2019501266
コンプレックスグリースの実施例は、過去に記載されたカルシウムスルホネートグリース技術が使用されているか否かに拘わらず、アルカリ/遅延添加法の実施形態を使用することが、一貫して増ちょう剤収率を改善することを示している。更に、増ちょう剤収率の向上は、‘768号の出願で定義されているように、使用された過塩基性カルシウムスルホネートが高品質であるか低品質であるかに関係なく観察されており、本明細書に含まれる例示的な組成物の範囲内において、低品質のカルシウムスルホネートでは、より大きな改善が達成される(これは、予想に反しているであろう)。
本発明のアルカリ/遅延添加法に基づいて作製された上述のグリースの実施例はまた、非水性変換剤の全て又は一部の添加が遅延されていない実施例のグリースと比較して、実施例の様々な比較群で使用された成分及びそれらの量が同じか又は実質的に似ていても、異なる物理的特性を示した。フーリエ変換赤外分光法(FTIR)及び走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した、実施例のグリースのサンプルの試験は、本発明による遅延添加を用いて製造されたグリースが、遅延を伴わずに作製された同様な組成のものと区別できることを実証した。吸収曲線のプロファイルには差異があり、例えば、粒子サイズ及び構造の違いがある。
本明細書で提供される実施例は、NLGI No.1、No.2、又はNo.3グレードに分類され、No.2グレードが最も好ましいが、本発明の範囲は、No.2グレードよりも硬い又は柔らかい全てのNLGI粘ちょう度グレードを含むことが更に理解されるべきである。しかしながら、当業者に理解されるように、本発明に基づくグリースがNLGI No.2グレードでない場合についても、それらの特性は、より多い又は少ない基油を使用してNo.2グレード製品をもたらす場合に得られていたであろうものと一致しているはずである。
本発明は、開放容器で作製されるグリースを主として扱っており、実施例は全て開放容器であるが、コンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物及び方法は、加圧下で加熱できる密閉容器において使用されてもよい。そのような加圧容器の使用は、本明細書の実施例に記載されたものよりも、より良好な増ちょう剤収率をもたらすことができる。本発明の目的においては、開放容器は、上部カバー又はハッチを有するか又は有しない任意の容器であって、そのような上部カバー又はハッチが気密でない限りは、加熱中に大きな圧力を発生させることができない。変換プロセス中に閉じられた上部カバー又はハッチを備えたそのような開放容器を使用することは、必要なレベルの水を変換剤として保持するのに役立つ一方で、通常、水の沸点又はそれを超える変換温度を可能にする。このようなより高い変換温度は、当業者に理解されるように、単純及びコンプレックスカルシウムスルホネートグリースの増ちょう剤収率を更に改善することができる。
本明細書で使用されるように、本発明に適用される「増ちょう剤収率」という用語は、通常の意味、即ち、 潤滑グリース製造において一般的に使用される標準的な浸透試験ASTM D217又はD1403によって測定されるような、グリースに特定の所望の粘ちょう度を与えるために必要とされる高過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの濃度である。同様に、グリースの「滴点」は、潤滑グリース製造に一般的に使用される標準滴点試験ASTM D2265を用いて得られた値を指す。本明細書中で使用されているように、温度に達した後における成分の即座の添加についての言及は、添加量と使用される装置とが与えられれば物理的に可能であるようにその温度に到達した直後に成分を添加することを意味するが、短時間、10分未満、より好ましくは5分未満である。
本明細書で使用されているように、(1)過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる分散炭酸カルシウム(若しくは非晶質炭酸カルシウム)又は残留カルシウム、或いは水酸化カルシウムの量は、過塩基性カルシウムスルホネートの重量比に基づいており、(2)幾つかの成分が2つ以上の別々の部として加えられ、各部は、その成分の総量の割合として記載でき、(3)割合又は部によって特定される成分の他の全ての量(全量を含む)は、特定の成分(例えば、他の成分と反応する水、カルシウム含有塩基又はアルカリ金属水酸化物)が最終グリース中に存在しなくてよく、又は、成分として添加するために特定された量で最終グリース中に存在しなくてよくても、最終グリース生成物の重量比による成分としての添加量である。本明細書において、「付加炭酸カルシウム」は、過塩基性カルシウムスルホネートに含まれる分散炭酸カルシウムの量に加えて別個の成分として添加される結晶炭酸カルシウムを意味する。本明細書で使用されるように、「付加水酸化カルシウム」及び「付加酸化カルシウム」は夫々、過塩基性カルシウムスルホネート中に含まれ得る残りの水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの量に加えて別個の成分として添加される水酸化カルシウム及び酸化カルシウムを意味する。(幾つかの先行技術文献でその用語がどのように使用されるかとは別として)本発明を説明するために本明細書で使用されるように、カルシウムヒドロキシアパタイトは、(1)式Ca(POOHを有する化合物、又は(2)数学的に等価な式を有する化合物であって、(a)約1100℃の融点を有する、又は(b)リン酸三カルシウム及び水酸化カルシウムの混合物をその等価な式で特に排除する化合物を意味する。当業者であれば、本明細書を読む際に、本明細書に含まれる例を含めて、組成物を製造するための組成物及び方法の変更及び代替は、本発明の範囲内で行われてよく、本明細書に開示された本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ制限されることを意図することを理解するであろう。

Claims (44)

  1. コンプレックス過塩基性カルシウムスルホネートグリースを製造する方法であって、
    非晶質炭酸カルシウムが分散した或る量の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、基油及び1又は複数種の変換剤と混合して変換前混合物を形成する工程と、
    非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウムへの変換が起こるまで加熱することによって、変換前混合物を変換混合物に変換する工程と、
    或る量のアルカリ金属水酸化物を、変換前混合物、変換混合物、又はそれらの両方と混ぜる工程と、
    或る量の1又は複数種のコンプレックス化酸を、変換前混合物、変換混合物、又はそれらの両方と混合する工程と、
    を含んでおり、
    過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの量は約10%乃至45%である、方法。
  2. アルカリ金属水酸化物の量が約0.005%乃至5%である、請求項1に記載の方法。
  3. 変換前混合物、変換混合物、又は、それらの両方と、カルシウムヒドロキシアパタイト、付加水酸化カルシウム、付加酸化カルシウム、又は付加炭酸カルシウムの1又は複数、又は、それらの任意の組合せとを混合する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  4. アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、又は、それらの組合せである、請求項1に記載の方法。
  5. アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、水酸化ナトリウムの混合物の量が約0.01乃至0.4%である、請求項2に記載の方法。
  6. アルカリ金属水酸化物を水に溶解させて溶液を形成し、当該溶液が、変換前混合物、変換混合物、又は、それら両方と混合する、請求項1に記載の方法。
  7. 過塩基性カルシウムスルホネートが低品質のカルシウムスルホネートであり、グリースは少なくとも575Fの滴点を有する、請求項1に記載の方法。
  8. 変換剤は、水及び1又は複数種の非水性変換剤を含んでおり、
    過塩基性カルシウムスルホネート及び基油と水とを混合して第1の混合物を形成する工程と、
    1又は複数の遅延期間中又はそれらの後に、1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部を第1の混合物と混合して変換前混合物を形成する工程と、
    を含む、請求項1に記載の方法。
  9. アルカリ金属水酸化物が、変換剤として使用される水に溶解して溶液を形成し、当該溶液が過塩基性カルシウムスルホネート及び基油と混合して第1の混合物を形成する、請求項8に記載の方法。
  10. アルカリ金属水酸化物を水の第2の部に溶解させて溶液を形成し、当該溶液が第1の混合物、変換前混合物、変換混合物、又は、それらの組合せと混合される、請求項8に記載の方法。
  11. 或るコンプレックス化酸の少なくとも全部又は一部が第1の混合物又は変換前混合物と混合して、同じ又は異なるコンプレックス化酸の少なくとも全部又は一部が変換混合物と混合する、請求項8に記載の方法。
  12. 或るコンプレックス化酸の少なくとも一部が、加熱の前に第1の混合物又は変換前混合物と混合される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記変換する工程は、
    開放容器については約190F乃至230Fの変換温度範囲に、又は、密閉容器については変換が生じる他の温度範囲に、変換前混合物を加熱する工程と、
    非晶質炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウムへの変換が起こるまで、その範囲で温度を維持する工程と、
    を含む、請求項8に記載の方法。
  14. 1又は複数種のコンプレックス化酸は、酢酸及び12−ヒドロキシステアリン酸を含んでおり、それら両方の酸の一部が第1の混合物又は変換前混合物と混合され、それら両方の酸の別の部が変換混合物と混合される、請求項11に記載の方法。
  15. 1又は複数種のコンプレックス化酸は、ホウ酸、リン酸、又は、それらの両方を更に含んでおり、ホウ酸、リン酸、又は、それらの両方の全てが変換混合物と混合される、請求項14に記載の方法。
  16. 非水性変換剤がヘキシレングリコールであって、温度調節遅延期間後に第1の混合物と混合される、請求項14に記載の方法。
  17. アルカリ金属水酸化物が第1の混合物と混合される、請求項14に記載の方法。
  18. カルシウムスルホネートグリースが少なくとも575Fの滴点を有しており、過塩基性カルシウムスルホネートの量が約10%乃至32%である、請求項1に記載の方法。
  19. カルシウムスルホネートグリースが少なくとも575Fの滴点を有しており、過塩基性カルシウムスルホネートの量が約10%乃至32%である、請求項8に記載の方法。
  20. 1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも一部を、任意の遅延期間前の第1の混合物、遅延期間中又は遅延期間後の第1の混合物、及び、1又は複数の遅延期間中又はそれらの後の変換前混合物の1又は複数に加える工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
  21. 全ての遅延期間中に酢酸が非水性転変換剤として添加されない、請求項20に記載の方法。
  22. 第1の混合物、変換前混合物、変換混合物、又は、それらの任意の組合せと、カルシウムヒドロキシアパタイト、付加水酸化カルシウム、付加酸化カルシウム、付加炭酸カルシウム、又は、それらの任意の組合せの1又は複数とを混合する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
  23. 1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも1つは、グリコール、グリコールエーテル、又は、グリコールポリエーテルである、請求項8に記載の方法。
  24. グリコールがヘキシレングリコールである、請求項20に記載の方法。
  25. 全ての遅延期間の前に、ヘキシレングリコールの一部が第1の混合物と混合されて、1又は複数の遅延期間の後又はそれらの間に、ヘキシレングリコールの別の部が第1の混合物又は変換前混合物と混合される、請求項24に記載の方法。
  26. 少なくとも2つの遅延期間があり、それら遅延期間のうちの1つは、第1の混合物又は変換前混合物が加熱又は冷却される温度調節遅延期間であり、少なくとも1つの他の遅延期間は、第1の混合物又は変換前混合物が或る温度又は温度範囲内に或る期間維持される保持遅延期間である、請求項8に記載の方法。
  27. 過塩基性カルシウムスルホネートは、低品質の過塩基性カルシウムスルホネートである、請求項8に記載の方法。
  28. 過塩基性カルシウムスルホネートは、約0%乃至8%の残留水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを含んでおり、付加酸化カルシウム又は水酸化カルシウムは、コンプレックス化酸と反応させるためのカルシウム含有塩基として添加されない、請求項22に記載の方法。
  29. 1又は複数種の非水性変換剤の少なくとも1つは、メタノール、イソプロピルアルコール、又は、他の低分子量アルコールである、請求項8に記載の方法。
  30. メタノール、イソプロピルアルコール、又は、他の低分子量アルコールが、非水性変換剤として使用されない、請求項8に記載の方法。
  31. 過塩基性カルシウムスルホネートの量が約10%乃至22%である、請求項1に記載の方法。
  32. 約10%乃至45%の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートと、アルカリ金属水酸化物とを成分として含む、コンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  33. 約10%乃至36%の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートと、約0.005%乃至0.5%のアルカリ金属水酸化物とを含んでおり、
    1又は複数種のコンプレックス化酸と、
    1又は複数種のコンプレックス化酸と反応する1又は複数種のカルシウム含有塩基として、カルシウムヒドロキシアパタイト、付加水酸化カルシウム、付加酸化カルシウム、付加炭酸カルシウム、又は、それらの任意の組合せと、
    を更に含む、請求項32に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  34. 1又は複数種のコンプレックス化酸と、
    1又は複数種のコンプレックス化酸と反応する1又は複数種のカルシウム含有塩基として、カルシウムヒドロキシアパタイト、付加水酸化カルシウム、付加酸化カルシウム、付加炭酸カルシウム、又はそれらの任意の組合せと、
    を更に含む、請求項32に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  35. 265乃至295の60往復混和ちょう度と、575F以上の滴点とを有する、請求項34に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  36. 約10%乃至30%の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを含む、請求項34に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  37. 過塩基性カルシウムスルホネートは低品質である、請求項36に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  38. 促進酸を更に含む、請求項34に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  39. 付加水酸化カルシウム及び付加酸化カルシウムが成分から除外されている、請求項34に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  40. 1又は複数種の変換剤を更に含む、請求項34に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  41. 1又は複数種の変換剤は、水と1又は複数種の非水性変換剤とを含む、請求項40に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  42. 1又は複数種の非水性変換剤は、アルコール、エーテル、グリコール、グリコールエーテル、グリコールポリエーテル、カルボン酸、無機酸、及び有機硝酸塩からなる群から選択され、
    1又は複数種のコンプレックス化酸は、長鎖カルボン酸、短鎖カルボン酸、ホウ酸、及びリン酸からなる群から選択される、請求項41に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  43. 約1%乃至20%のカルシウムヒドロキシアパタイトと、
    約1.5%乃至10%の水と、
    約0.005%乃至0.5%のアルカリ金属水酸化物と、
    総量で0.1%乃至5%の1又は複数種の非水性変換剤と、
    総量で2.8%乃至11%の1又は複数種のコンプレックス化酸と、
    を含む、請求項40に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
  44. アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、又は、それらの組合せを含む、請求項43に記載のコンプレックスカルシウムスルホネートグリース組成物。
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