以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
(実施形態1)
図1〜図6を参照して、本発明の実施形態1に係る光渦発生装置100及び光渦発生方法を説明する。まず、図1を参照して光渦発生装置100を説明する。図1は、実施形態1に係る光渦発生装置100を示す図である。
図1に示すように、光渦発生装置100は、レーザー発振器1と、マルチビーム生成部3と、コリメートレンズ5と、位相差付与部7と、集光レンズ9とを備える。集光レンズ9は「照射部」の一例に相当する。
レーザー発振器1はレーザー光LTを発生する。レーザー光LTは、連続波であってもよいし、複数のパルス光を含んでいてもよい。レーザー光LTは、可視光であってもよいし、不可視光であってもよく、レーザー光LTの波長は特に限定されない。
マルチビーム生成部3は、レーザー光LTに基づいて複数のビームBn(nは1以上の整数)を生成する。具体的には、マルチビーム生成部3は、レーザー光LTを分割して複数のビームBnを生成する。複数のビームBnはコリメートレンズ5に入射する。
具体的には、マルチビーム生成部3は回折格子31を含む。回折格子31は、例えば、透過型回折格子である。回折格子31は、レーザー光LTの一部を回折させることなく透過させて、ビームB0として出射する。ビームB0は、回折格子31と集光レンズ9との間の光路において遮断される。従って、ビームB0は、ターゲットTAに照射されない。また、回折格子31は、レーザー光LTを回折させて、レーザー光LTの一部を複数のビームBnに分割する。
なお、マルチビーム生成部3は、回折格子31に代えて、ビーム分割光学系を含んでいてもよい。そして、ビーム分割光学系が、レーザー光LTを分割して複数のビームBnを生成する。ビーム分割光学系は、例えば、複数のハーフミラー等を含む。ビーム分割光学系は、例えば、複数のハーフミラーに加えて、単数又は複数のキューブ型ビームスプリッター等を含んでいてもよい。
コリメートレンズ5は、複数のビームBnをコリメートする。コリメートされた複数のビームBnは位相差付与部7に入射する。コリメートレンズ5は、例えば、凸レンズである。
位相差付与部7は、複数のビームBnのうち、2以上のビームBnに位相差を付与する。位相差の付与された2以上のビームBnを含む複数のビームBnは、集光レンズ9に入射する。
位相差付与部7は、例えば、複数のガラス板を含む光学遅延器を含む。光学遅延器は、ガラス板の傾斜角を調節してビームBnを遅延し、2以上のビームBnに位相差を付与する。又は、位相差付与部7は、例えば、1枚のガラス板の中で複数のビームBnを遅延し、2以上のビームBnに位相差を付与する。又は、位相差付与部7は、例えば、一枚の螺旋型位相板を有し、一枚の螺旋型位相板における異なる複数の場所に複数のビームBnを入射して、2以上のビームBnに位相差を付与する。一枚の螺旋型位相板における異なる複数の場所では互いに厚みが異なる。又は、位相差付与部7は、例えば、互いに厚みの異なる複数のガラス板を有し、複数のガラス板にそれぞれ複数のビームBnを入射して、2以上のビームBnに位相差を付与する。
又は、位相差付与部7は、例えば、空間位相変調器を含む。空間位相変調器は、マトリクス状に配置された複数の画素を含む。空間位相変調器は、画素ごとに、画素に入射する光の位相を変調することができる。空間位相変調器は、ビームBnの波面の位相を変調して、2以上のビームBnに位相差を付与する。又は、位相差付与部7は、例えば、複数のピエゾ駆動ミラーを含んでいてもよい。ピエゾ駆動ミラーとは、ピエゾ素子によって駆動されるミラーのことである。位相差付与部7は、ピエゾ駆動ミラーによってビームBnの光路を調節して、2以上のビームBnに位相差を付与する。
集光レンズ9は、複数のビームBnをターゲットTAに照射する。従って、集光レンズ9は対物レンズとして機能する。集光レンズ9は、例えば、凸レンズである。ターゲットTAは、例えば、固体、液体、又は気体である。集光レンズ9を通過した複数のビームBnは、互いに異なる方向からターゲットTAに入射して、複数のビームBnが干渉する。具体的には、複数のビームBnがターゲットTA上又はターゲットTA中で干渉する。その結果、ターゲットTA上又はターゲットTA中に複数の光渦(具体的には多数の光渦)が発生する。具体的には、ターゲットTA上又はターゲットTA中に複数の光渦(具体的には多数の光渦)が同時に発生する。光渦とは、特異点を有し、等位相面が螺旋面を形成する光のことである。
なお、集光レンズ9は、ターゲットTAの側に焦点距離d1を有し、コリメートレンズ5の側に焦点距離d2を有する。焦点距離d1と焦点距離d2とは略同一である。一方、コリメートレンズ5は、集光レンズ9の側に焦点距離d3を有し、マルチビーム生成部3の側に焦点距離d4を有する。焦点距離d3と焦点距離d4とは略同一である。そして、集光レンズ9の焦点距離d2に位置する焦点面が、コリメートレンズ5の焦点距離d3に位置する焦点面と略一致することが好ましい。この好ましい例では、ターゲットTA上又はターゲットTA中で複数のビームBnを高精度で重ねることができ、ターゲットTA上又はターゲットTA中で複数のビームBnを効果的に干渉させることができる。その結果、ターゲットTA上又はターゲットTA中に複数の光渦(具体的には多数の光渦)を効果的に発生できる。
複数の光渦は、ターゲットTA上又はターゲットTA中で複数のビームBnの干渉パターンとして観測される。干渉パターンは、複数のビームBnの干渉に基づく光強度の空間分布を表す。具体的には、複数のビームBnが干渉する場合、ある座標の電界は、その座標における全ビームBnの電界の合計である。一方、光強度は、電界強度の2乗に比例する。従って、複数のビームBnが干渉する場合、ある座標の光強度は、その座標における全ビームBnの電界強度の合計の2乗に比例する。そして、干渉パターンは、直交座標系の各座標において、複数のビームBnの干渉に基づく光強度を表す。
次に、図2(a)及び図2(b)を参照して、光渦VTを説明する。図2(a)は、光渦発生装置100が発生する複数の光渦VTを含む干渉パターンPTを示す図である。図2(a)では、ターゲットTA(図1)の表面又は内部における干渉パターンPTが示される。図2(b)は、複数の光渦VTの各々の強度を示す図である。図2(b)では、黒色から白色までの濃淡によって光強度を表している。白色に近い程、光強度が強いことを示している。なお、光渦VT間では光強度が弱いが、図2(b)では、光渦VTの形状が分かるように、光渦VT間の領域を透明にしている。また、図2(a)及び図2(b)では、多数の光渦VTのうちの一部の光渦VTが示されている。
図2(a)に示すように、干渉パターンPTは、複数の光渦VT(具体的には多数の光渦VT)を含む。複数の光渦VTの各々は特異点SGを有する。特異点SGでの光強度は略ゼロである。複数の光渦VTは周期的に配列されている。図2(a)の例では、複数の光渦VTは、三角格子状に配列されている。図2(b)に示すように、複数の光渦VTの各々のZ軸方向の光強度は略一定である。複数の光渦VTの光強度は互いに略同一である。
図2(a)に示す干渉パターンPTは、全ビームBnの電界強度の合計の2乗をビームBnの1周期T分だけ積分することによって算出される。1周期Tは、ビームBnの波長λcを光速vcで割った値である(T=λc/vc)。
具体的には、干渉パターンPTは、時間軸上に並ぶ1周期T分の複数の干渉パターン(以下、「干渉パターンPTD」と記載する。)の積算として表される。例えば、複数の干渉パターンPTDの各々は、全ビームBnの電界強度の合計の2乗を時間tだけ積分することによって算出される。時間tは、例えば、1周期TをK(Kは2以上の整数)分割した値である。つまり、t=T/K、である。時間tの長さは特に限定されず、「K」には、2以上の任意の整数を設定できる。例えば、時間tが1周期Tよりも十分短くなるように、「K」の値が設定される。
次に、図3(a)〜図3(e)を参照して、干渉パターンPTDを説明する。図3(a)〜図3(e)は、干渉パターンPTDの時間変化を示す図である。図3(a)〜図3(e)では、理解を容易にするために、互いに直交する補助線ALを付記している。また、干渉パターンPTDは、全ビームBnの電界強度の合計の2乗を時間t(=T/5)だけ積分することによって算出される。つまり、図3(a)〜図3(e)に示す複数の干渉パターンPTDは、それぞれ、0〜tの積分値、t〜2tの積分値、2t〜3tの積分値、3t〜4tの積分値、及び、4t〜5tの積分値を示す。
図3(a)に示すように、複数のビームBnの干渉パターンPTDは複数のスポットP(具体的には多数のスポットP)を含む。複数のスポットPのうち互いに隣り合うスポットP1とスポットP2とは、スポットペアSPを構成する。従って、干渉パターンPTDは複数のスポットペアSP(具体的には多数のスポットペアSP)を含む。スポットPは、干渉パターンPTDにおける光強度のピークを示す。
ここで、1つのスポットペアSPに着目する。図3(a)〜図3(e)に示すように、スポットペアSPは、回転中心RCの回りに1周期Tで一回転する。その結果、1周期T分の光渦VTが形成される。つまり、1つのスポットペアSPが一回転することで、1周期T分の1つの光渦VTが形成される。スポットペアSPが一回転することは、スポットペアSPが360度回転することを示す。具体的には、スポットP1及びスポットP2の各々が、回転中心RCの回りに1周期Tで一回転する。
回転中心RCでは、光強度が略ゼロである。従って、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCの位置する部分よりも光強度の強い部分を示す。回転中心RCが特異点SGに相当する。回転中心RCは、スポットP1とスポットP2との間に位置する。なお、図3(a)〜図3(e)では、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCの回りに、反時計回りに回転している。
以上、図3(a)〜図3(e)を参照して説明したように、1つのスポットペアSPが回転中心RCの回りを回転することで、1つの光渦VTが発生する。すなわち、光強度が略ゼロとなる回転中心RCの回りをスポットペアSPが回転している状態は、一般的な光渦において、光強度が略ゼロとなる特異点の回りを等位相面が回転することにより軌道角運動量を発生する状態に相当する。従って、回転中心RCの回りをスポットペアSPが回転することによって、一般的な光渦と同様の光渦VTを発生できる。
実施形態1では、複数のスポットペアSPが、それぞれ、複数の回転中心RCの回りを回転するように、位相差付与部7は、複数のビームBnのうちの2以上のビームBnに位相差を付与している。その結果、複数の光渦VT(図2(a))を発生できる。この場合、スポットペアSPがビームBnの1周期Tで一回転するように、位相差付与部7は、2以上のビームBnに位相差を付与する。特に、実施形態1では、光渦発生装置100は、複数の螺旋型位相板を用意する必要がないので、光渦発生装置100のコストを抑制しつつ、複数の光渦VTを発生できる。
具体的には、1つの光渦VTは、スポットP1の回転に対応した螺旋状の第1等位相面と、スポットP2の回転に対応した螺旋状の第2等位相面とを有する。第1等位相面及び第2等位相面の各々は周期Tを有する。従って、回転中心RCの回りのスポットP1だけの回転によっても光渦(螺旋状の第1等位相面)が発生するし、回転中心RCの回りのスポットP2だけの回転によっても光渦(螺旋状の第2等位相面)が発生する。
実施形態1では、複数のスポットP1が、それぞれ、複数の回転中心RCの回りを回転するように、位相差付与部7は、複数のビームBnのうちの2以上のビームBnに位相差を付与している。その結果、複数の光渦(螺旋状の第1等位相面)を発生できる。この場合、スポットP1がビームBnの1周期Tで一回転するように、位相差付与部7は、2以上のビームBnに位相差を付与する。特に、実施形態1では、位相差の付与によって光渦を発生するため、複数の螺旋型位相板を用意する必要がなく、光渦発生装置100のコストを抑制しつつ、複数の光渦を発生できる。
同様に、複数のスポットP2が、それぞれ、複数の回転中心RCの回りを回転するように、位相差付与部7は、複数のビームBnのうちの2以上のビームBnに位相差を付与している。その結果、複数の光渦(螺旋状の第2等位相面)を発生できる。この場合、スポットP2がビームBnの1周期Tで一回転するように、位相差付与部7は、2以上のビームBnに位相差を付与する。
なお、全てのビームBnの位相が同じ場合、光強度の空間分布は、回転することなく静止したままで一定であり、光強度だけが強弱の変化を繰り返す。
次に、図1、図4(a)、及び図4(b)を参照して、複数のビームBnを説明する。図4(a)は、複数のビームBnを示す斜視図である。図4(b)は、複数のビームBnを示す平面図である。図4(b)では、図4(a)に示すZ軸方向から複数のビームBnを見ている。
図4(a)に示すように、ターゲットTAの表面に三次元直交座標系の原点Oが設定される。Z軸は、ターゲットTAに直交する。X軸及びY軸の各々は、ターゲットTAの表面に平行である。X軸とY軸とZ軸とは互いに直交する。Z軸は、複数のビームBnの中心軸である。従って、図4(a)及び図4(b)に示すように、複数のビームBnは、Z軸に対して軸対称である。また、複数のビームBnのうち、Z軸を介して互いに対向する2つのビームBnは、Z軸に対して線対称である。図1に示すように、マルチビーム生成部3が回折格子31を含む場合は、非回折光であるビームB0がZ軸と略一致する。また、ビームB0の進行方向がZ軸方向と略一致する。
ターゲットTAへの複数のビームBnの入射角θn(nは1以上の整数)は、実質的に等しい。例えば、複数の入射角θnが、平均値θAに対して平均値θAの±Qx%以内であれば、複数の入射角θnが実質的に等しいことに相当する。平均値θAは複数の入射角θnの平均値を示す。「Qx%」は、例えば、20%であり、10%が好ましく、5%が更に好ましく、1%が更に好ましい。
複数の入射角θnの各々は、Z軸に対するビームBnの入射角を示す。入射角θnは鋭角である。マルチビーム生成部3とコリメートレンズ5と集光レンズ9とによって、複数のビームBnの入射角θnが設定される。マルチビーム生成部3とコリメートレンズ5と集光レンズ9とは、複数のビームBnの入射角θnが実質的に同一になるように、複数のビームBnを調節する。
複数のビームBnにおいて、Z軸の回りの円周方向CDに互いに隣り合うビームBn間の角度Φn(nは1以上の整数)は、実質的に等しい。つまり、複数の角度Φnは実質的に等しい。角度Φnは、円周方向CDに互いに隣り合う2本のビームBnのうちの一方のビームBnに対する他方のビームBnの方位を示す。そこで、以下、角度Φnを「方位角Φn」と記載する。例えば、複数の方位角Φnが、平均値ΦAに対して平均値ΦAの±Qy%以内であれば、複数の方位角Φnが実質的に等しいことに相当する。平均値ΦAは複数の方位角Φnの平均値を示す。「Qy%」は、例えば、20%であり、10%が好ましく、5%が更に好ましく、1%が更に好ましい。
マルチビーム生成部3によって、複数の方位角Φnが設定される。マルチビーム生成部3は、複数のビームBnにおける方位角Φnが実質的に等しくなるように、複数のビームBnを生成する。例えば、マルチビーム生成部3は、複数のビームBnにおける方位角Φnが実質的に等しくなるように、レーザー光LTを分割して、複数のビームBnを生成する。又は、例えば、マルチビーム生成部3は、レーザー光LTを分割して複数のビームBnを生成した後に、複数のビームBnにおける方位角Φnが実質的に等しくなるように複数のビームBnを調節する。
複数のビームBnの光強度は、実質的に等しい。つまり、マルチビーム生成部3は、複数のビームBnの光強度が実質的に同一になるように、レーザー光LTを分割して、複数のビームBnを生成する。なお、複数のビームBnの波長は同一である。
以上、図1、図4(a)、及び図4(b)を参照して説明したように、複数のビームBnの入射角θnは、実質的に等しい。加えて、複数のビームBnにおいて、複数の方位角Φnは、実質的に等しい。従って、複数のビームBnは、位相差を除いて互いに同等の条件で干渉する。その結果、実施形態1によれば、2以上のビームBnに付与する位相差に応じて、周期的に配列した複数の光渦VT(図2(a))を発生できる。この点は、後述する実施例1〜実施例3から明らかである。
引き続き図4(b)を参照して、位相差付与部7がビームBnに付与する位相差を説明する。2以上のビームBnに付与される位相差の各々は、複数のビームBnのうち、位相差の付与される2以上のビームBnと異なるビームBnを基準としたときの位相差を示す。つまり、位相差の各々は、位相差の付与されない基準のビームBnに対する位相差を示す。例えば、位相差の各々は、ビームB1を基準としたときの位相差を示す。以下、特に明示しない限り、位相差は、基準のビームBnに対する位相差を示す。
なお、例えば、ビームB2の位相が基準のビームB1の位相に対して進んでいる場合、ビームB2に付与された位相差の符号は「正」である。これに対して、例えば、ビームB2の位相が基準のビームB1の位相に対して遅れている場合、ビームB2に付与された位相差の符号は「負」である。
実施形態1では、2以上のビームBnに付与される位相差の各々は、所定値(以下、「所定値J」と記載する。)のM倍(Mは1以上の整数)である。そして、2以上のビームBnに付与される位相差に対してそれぞれMの値が設定されている。その結果、所定値JのM倍の位相差に応じて、周期的に配列した複数の光渦VT(図2(a))を発生できる。この点は、後述する実施例1〜実施例3から明らかである。なお、Mの値は、例えば、位相差の付与される2以上のビームBnごとに異なっていてもよいし、位相差の付与される2以上のビームBnで同じでもよい。
なお、位相差の表し方は、特に限定されない。例えば、位相差は、円周方向CDに互いに隣り合う2つのビームBnのうちの一方のビームBnの位相と他方のビームBnの位相との差を示してもよい。なお、例えば、一方のビームBnの位相が他方のビームBnの位相に対して進んでいる場合、一方のビームBnに付与された位相差の符号は「正」である。これに対して、例えば、一方のビームBnの位相が他方のビームBnの位相に対して遅れている場合、一方のビームBnに付与された位相差の符号は「負」である。
次に、図1及び図4(a)〜図5(b)を参照して、具体例を挙げながら光渦発生装置100を説明する。具体例では、複数のビームBnは6本のビームBnである。
すなわち、図1、図4(a)、及び図4(b)に示すように、マルチビーム生成部3は、レーザー光LTに基づいて6本のビームB1〜B6を生成する。具体的には、マルチビーム生成部3は、レーザー光LTを分割して6本のビームB1〜B6を生成する。
位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、2以上のビームBnに位相差を付与する。コリメートレンズ5は、6本のビームB1〜B6をコリメートする。集光レンズ9は、6本のビームB1〜B6をターゲットTAに照射する。6本のビームB1〜B6は、互いに異なる方向からターゲットTAに入射して、6本のビームB1〜B6が干渉する。
6本のビームB1〜B6の干渉パターンPTDは、複数のスポットPを含む(図3(a)〜図3(e))。位相差付与部7は、複数のスポットPが、それぞれ、複数の回転中心RCの回りを回転するように、2以上のビームBnに位相差を付与している。
6本のビームB1〜B6の入射角θ1〜θ6は、実質的に等しい。入射角θ1〜θ6の各々は、例えば、20度である。6本のビームB1〜B6において、円周方向CDに互いに隣り合うビームBn間の方位角Φ1〜Φ6は、実質的に等しい。方位角Φ1〜Φ6の各々は、略60度である。
実施形態1では、6本のビームB1〜B6のうち、2以上のビームBnに付与する位相差の各々は、所定値JのM倍である。具体的には、所定値Jは、π/3ラジアン、又は、−π/3ラジアンである。その結果、実施形態1によれば、所定値J(π/3ラジアン、又は、−π/3ラジアン)のM倍の位相差に応じて、周期的に配列した複数の光渦VT(図2(a))を発生できる。この点は、後述する実施例1及び実施例2から明らかである。
図5(a)は、6本のビームB1〜B6のうちの5本のビームB2〜B6に付与される位相差を示す図である。図5(a)では、理解の容易のため、位相差は、円周方向CDに互いに隣り合う2つのビームBn間の位相差を示している。図5(a)に示すように、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、基準としてのビームB1を除いて、他のビームB2〜B6の各々に、円周方向CDの反時計回りに位相差「+π/3」を付与する。
換言すれば、図5(a)では、位相差付与部7は、位相差を付与しない基準のビームB1に対して、円周方向CDの反時計回りに、ビームB2に位相差「+π/3」を付与し、ビームB3に位相差「+2π/3」を付与し、ビームB4に位相差「+3π/3」を付与し、ビームB5に位相差「+4π/3」を付与し、ビームB6に位相差「+5π/3」を付与する。つまり、所定値Jは「+π/3」である。そして、ビームB2、B3、B4、B5、B6の位相差に対するMの値は、それぞれ、1、2、3、4、5、である。
なお、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、基準としてのビームB1を除いて、他のビームB2〜B6の各々に、円周方向CDの反時計回りに位相差「−π/3」を付与してもよい。つまり、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、基準としてのビームB6を除いて、他のビームB5〜ビームB1の各々に、円周方向CDの時計回りに位相差「+π/3」を付与してもよい。
換言すれば、位相差付与部7は、位相差を付与しない基準のビームB6に対して、円周方向CDの時計回りに、ビームB5に位相差「+π/3」を付与し、ビームB4に位相差「+2π/3」を付与し、ビームB3に位相差「+3π/3」を付与し、ビームB2に位相差「+4π/3」を付与し、ビームB1に位相差「+5π/3」を付与してもよい。つまり、所定値Jは「+π/3」である。そして、ビームB5、B4、B3、B2、B1の位相差に対するMの値は、それぞれ、1、2、3、4、5、である。
以上、図5(a)を参照して説明したように、実施形態1によれば、6本のビームBnのうち、基準としてのビームBnを除いて、他のビームBnの各々に、円周方向CDの時計回り又は反時計回りに位相差「+π/3」又は位相差「−π/3」を付与する。その結果、三角格子状に配列した複数の光渦VTを発生できる。この点は、後述する実施例1から明らかである。
図5(b)は、6本のビームB1〜B6のうちの3本のビームB3、B5、B6に付与される位相差を示す図である。図5(b)では、位相差の各々は、位相差の付与されない基準のビームB1に対する位相差を示す。図5(b)に示すように、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、Z軸を介して互いに対向するビームB3とビームB6との各々に位相差「+π/3」を付与するとともに、他の4本のビームB1、B2、B4、B5のうちの1つのビームB5に位相差「+π/3」を付与する。つまり、ビームB1に対するビームB2の位相差はゼロであり、ビームB1に対するビームB4の位相差はゼロである。また、ビームB1に対するビームB3の位相差は「+π/3」であり、ビームB1に対するビームB5の位相差は「+π/3」であり、ビームB1に対するビームB6の位相差は「+π/3」である。なお、所定値Jは「+π/3」である。そして、ビームB3、B5、B6の位相差に対するMの値は、「1」、である。
なお、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、Z軸を介して互いに対向するビームB3とビームB6との各々に位相差「−π/3」を付与するとともに、他の4本のビームB1、B2、B4、B5のうちの1つのビームB5に位相差「−π/3」を付与してもよい。つまり、ビームB1に対するビームB2の位相差はゼロであり、ビームB1に対するビームB4の位相差はゼロである。また、ビームB1に対するビームB3の位相差は「−π/3」であり、ビームB1に対するビームB5の位相差は「−π/3」であり、ビームB1に対するビームB6の位相差は「−π/3」である。
以上、図5(b)を参照して説明したように、実施形態1によれば、互いに対向する2つのビームBnの各々に位相差「+π/3」又は位相差「−π/3」を付与するとともに、他の4本のビームBnのうちの1つのビームBnに位相差「π/3」又は位相差「−π/3」を付与する。その結果、三角格子状に配列した複数の光渦VTを発生できる。この点は、後述する実施例2から明らかである。
次に、図1及び図6を参照して、光渦発生方法を説明する。図6は、光渦発生方法を示すフローチャートである。光渦発生方法は光渦発生装置100によって実行される。図6に示すように、光渦発生方法は、工程S1〜工程S5を含む。
図1及び図6に示すように、工程S1において、マルチビーム生成部3は、複数のビームBn(例えば、6本のビームBn)を生成する。
工程S3において、位相差付与部7は、複数のビームBnのうち、2以上のビームBnに位相差を付与する。具体的には、工程S3では、干渉パターンPTD(図3(a)〜図3(e))に含まれる複数のスポットPが、それぞれ、複数の回転中心RCの回りを回転するように、2以上のビームBnに位相差を付与する。
工程S5において、集光レンズ9は、位相差の付与された2以上のビームBnを含む複数のビームBnを、ターゲットTAに照射する。工程S5では、複数のビームBnは、互いに異なる方向からターゲットTAに入射して、複数のビームBnが干渉する。複数のビームBnの干渉パターンPTDは、複数のスポットPを含む(図3(a)〜図3(e))。
例えば、工程S5では、複数のビームBnの干渉によって三角格子状に配列される複数の光渦VTを形成する(図2(a))。例えば、工程S1〜工程S5において、「複数のビームBn」を「6本のビームB1〜B6」にすることによって、三角格子状に配列される複数の光渦VTを形成する。そして、工程S3では、位相差付与部7が、複数の光渦VTが三角格子状に配列されるように、2以上のビームBnに位相差を付与する。
なお、工程S5では、複数のビームBnの干渉によって四角格子状に配列される複数の光渦を形成してもよい。例えば、工程S1〜工程S5において、「複数のビームBn」を「4本のビームB1〜B4」にすることによって、四角格子状に配列される複数の光渦を形成する。そして、工程S3では、位相差付与部7が、複数の光渦が四角格子状に配列されるように、2以上のビームBnに位相差を付与する。
例えば、4本のビームB1〜B4のうち、2以上のビームBnに付与する位相差の各々は、所定値JのM倍である。具体的には、所定値Jは、π/2ラジアン、又は、−π/2ラジアンである。その結果、所定値J(π/2ラジアン、又は、−π/2ラジアン)のM倍の位相差に応じて、周期的に配列した複数の光渦を発生できる。この点は、後述する実施例3から明らかである。この例では、位相差は、基準のビームBnに対する位相差を示している。
例えば、4本のビームB1〜B4のうち、基準としてのビームBnを除いて、他のビームBnの各々に、円周方向CDの時計回り又は反時計回りに位相差「+π/2」又は位相差「−π/2」を付与する。その結果、四角格子状に配列した複数の光渦を発生できる。この点は、後述する実施例3から明らかである。この例では、位相差は、円周方向CDに互いに隣り合う2つのビームBn間の位相差を示している。
なお、干渉パターンPTDに含まれる複数のスポットPが、それぞれ、複数の回転中心RCの回りを回転する限りにおいては、複数のビームBnの本数は、6本及び4本に限定されない。
以上、図1〜図6を参照して説明したように、実施形態1によれば、位相差付与部7が2以上のビームBnに位相差を付与することで、干渉パターンPTの全面にわたって多数の光渦VTを配列できる。具体的には、多数の光渦VTが、同時に発生して規則的に配列される。更に具体的には、多数の光渦VTが、同時に発生して周期的に配列される。従って、多数の光渦VTを使用した並列作業又は並列処理が可能である。例えば、多重光通信、量子情報処理、非線形分光、物質合成、及び物質プロセシングのような分野において、同時に発生する多数の光渦VTを使用した並列処理又は並列作業が可能になる。
(実施形態2)
図1及び図7(a)〜図8(c)を参照して、本発明の実施形態2に係る光渦発生装置100及び光渦発生方法を説明する。実施形態2に係る光渦発生装置100が位相差を反転させる点で、実施形態2は実施形態1と主に異なる。その他、実施形態2に係る光渦発生装置100の構成は、実施形態1に係る光渦発生装置100の構成と同様である。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
まず、図1を参照して、実施形態2に係る光渦発生装置100を説明する。光渦発生装置100の位相差付与部7は、2以上のビームBnに付与される位相差が反転するように、複数のビームBnのうち、2以上のビームBnに位相差を付与する。従って、図3(a)〜図3(e)に示すスポットペアSPの回転方向が、反転する。例えば、スポットペアSPの回転方向が、反時計回りから時計回りに反転する。その結果、実施形態2によれば、光渦VTの回転方向を反転することができる。
具体的には、位相差付与部7は、円周方向CDに並んだ複数のビームBnにおいて、位相差の変化の方向を反転する。又は、位相差付与部7は、2以上のビームBnに付与する位相差の符号を反転する。
次に、図7(a)〜図8(c)を参照して、具体例を挙げながら光渦発生装置100を説明する。具体例では、複数のビームBnは6本のビームBnである。
図7(a)は、6本のビームB1〜B6のうちの5本のビームB2〜B6に付与される位相差を示す図である。図7(a)では、理解の容易のため、位相差は、円周方向CDに互いに隣り合う2つのビームBn間の位相差を示している。図7(b)は、図7(a)に示す位相差を有する6本のビームBnに基づく光渦VTを示す斜視図である。
図7(a)に示すように、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、基準としてのビームB1を除いて、他のビームB2〜B6の各々に、円周方向CDの反時計回りに位相差「+π/3」を付与する。その結果、干渉パターンPTDに含まれるスポットペアSPが、例えば反時計回りに回転して(図3(a)〜図3(e))、図7(b)に示すように、光渦VTが発生する。光渦VTは、光渦VTの進行方向Dに向かって反時計回りに回転している。この点は、図5(a)を参照して説明した実施形態1と同様である。
なお、1つの光渦VTは、図3(a)〜図3(e)に示すスポットP1の回転に対応した螺旋状の第1等位相面51と、スポットP2の回転に対応した螺旋状の第2等位相面52とを有する。第1等位相面51及び第2等位相面52の各々は周期Tを有する。光渦VTの軌道角運動量は、「+2」である。
図7(c)は、図7(a)に示す位相差を反転したときの位相差を示す図である。図7(c)では、理解の容易のため、位相差は、円周方向CDに互いに隣り合う2つのビームBn間の位相差を示している。図7(d)は、図7(c)に示す位相差を有する6本のビームBnに基づく光渦VTRを示す斜視図である。
図7(c)に示すように、位相差付与部7が、6本のビームB1〜B6のうち、基準としてのビームB6を除いて、他のビームB5〜B1の各々に、円周方向CDの時計回りに位相差「+π/3」を付与する。その結果、図7(a)に示す位相差が反転される。つまり、位相差付与部7は、円周方向CDに並んだ6本のビームB1〜B6において、位相差の変化の方向を反転することで、図7(a)に示す位相差を反転する。その結果、スポットペアSPが、例えば時計回りに回転して(図3(a)〜図3(e)に示す回転方向の逆方向)、図7(d)に示すように、光渦VTRが発生する。スポットペアSPの回転方向が反転しているため、光渦VTRの回転方向は、図7(b)に示す光渦VTの回転方向に対して反転している。つまり、光渦VTRは、光渦VTRの進行方向Dに向かって時計回りに回転している。
なお、1つの光渦VTRは、スポットP1の回転に対応した螺旋状の第1等位相面61と、スポットP2の回転に対応した螺旋状の第2等位相面62とを有する。第1等位相面61及び第2等位相面62の各々は周期Tを有する。光渦VTRの軌道角運動量は、「−2」である。
図8(a)は、6本のビームB1〜B6のうちの3本のビームB3、B5、B6に付与される位相差を示す図である。図8(b)は、図8(a)に示す位相差を反転したときの位相差の例を示す図である。図8(c)は、図8(a)に示す位相差を反転したときの位相差の他の例を示す図である。図8(a)及び図8(b)では、位相差の各々は、位相差の付与されない基準のビームB1に対する位相差を示す。図8(c)では、位相差の各々は、位相差の付与されない基準のビームB2に対する位相差を示す。
図8(a)に示すように、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、互いに対向するビームB3とビームB6との各々に位相差「+π/3」を付与するとともに、他の4本のビームB1、B2、B4、B5のうちの1つのビームB5に位相差「+π/3」を付与する。その結果、干渉パターンPTDに含まれるスポットペアSPが、例えば反時計回りに回転して(図3(a)〜図3(e))、図7(b)に示す光渦VTが発生する。この点は、図5(b)を参照して説明した実施形態1と同様である。
図8(b)に示すように、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、互いに対向するビームB3とビームB6との各々に位相差「−π/3」を付与するとともに、他の4本のビームB1、B2、B4、B5のうちの1つのビームB5に位相差「−π/3」を付与する。つまり、位相差付与部7は、2以上のビームBnに付与する位相差の符号を反転することで、図8(a)に示す位相差を反転する。その結果、スポットペアSPが、例えば時計回りに回転して(図3(a)〜図3(e)に示す回転方向の逆方向)、図7(d)に示す光渦VTRが発生する。光渦VTRの回転方向は、図7(b)に示す光渦VTの回転方向に対して反転している。
図8(c)に示すように、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、互いに対向するビームB3とビームB6との各々に位相差「+π/3」を付与するとともに、他の4本のビームB1、B2、B4、B5のうちの1つのビームB1に位相差「+π/3」を付与する。つまり、位相差付与部7は、円周方向CDに並んだ複数のビームBnにおいて、位相差の変化の方向を反転することで、図8(a)に示す位相差を反転する。その結果、スポットペアSPが、例えば時計回りに回転して(図3(a)〜図3(e)に示す回転方向の逆方向)、図7(d)に示す光渦VTRが発生する。光渦VTRの回転方向は、図7(b)に示す光渦VTの回転方向に対して反転している。
以上、図7(a)〜図8(c)を参照して説明したように、実施形態2では、位相差付与部7は、干渉パターンPTDに含まれるスポットペアSP又はスポットP(図3(a)〜図3(e))の回転方向が反転するように、2以上のビームBnに位相差を付与する。その結果、光渦の回転方向を反転させることができる。
(実施形態3)
図9及び図10を参照して、本発明の実施形態3に係る光渦発生装置100A及び光渦発生方法を説明する。実施形態3に係る光渦発生装置100Aが複数のビームBnを調節する調節部20を備える点で、実施形態3は実施形態1と主に異なる。以下、実施形態3が実施形態1と異なる点を主に説明する。
図9は、実施形態3に係る光渦発生装置100Aを示す図である。図9に示すように、光渦発生装置100Aは、図1を参照して説明した光渦発生装置100の構成に加えて、調節部20をさらに備える。集光レンズ9の出射した複数のビームBnは、調節部20に入射する。調節部20は、複数のビームBnを調節してターゲットTAに照射する。
具体的には、調節部20は、複数のビームBnを調節して、ターゲットTA上又はターゲットTA中における複数のビームBnに基づく複数の光渦VTの発生する領域の大きさを調節する。つまり、調節部20は、ターゲットTA上又はターゲットTA中における各ビームBnの径を調節する。例えば、各ビームBnの径が大きい程、ターゲットTA上又はターゲットTA中において、複数の光渦VTの発生する領域の大きさが大きくなる。
調節部20は、複数のビームBnを調節して、ターゲットTA上又はターゲットTA中における複数の光渦VTの間隔を調節する。例えば、各ビームBnの入射角θn(図4(a))が大きい程、複数の光渦VTの間隔が狭くなる。
調節部20は、複数のビームBnを調節して、複数の光渦VTの発生する位置を調節する。つまり、調節部20は、光路中で発生した複数の光渦VTをターゲットTA上又はターゲットTA中に転送する。実施形態3では、調節部20は、光路中の特定位置RPで発生した複数の光渦VTをターゲットTA上又はターゲットTA中に転送する。例えば、調節部20における各ビームBnの光路が長い程、複数の光渦VTを遠くに転送できる。特定位置RPは、集光レンズ9の焦点距離d1に対応する位置を示す。
以上、図9を参照して説明したように、実施形態3によれば、調節部20は、複数の光渦VTの発生する領域の大きさと、複数の光渦VTの間隔と、複数の光渦VTの発生する位置とのうちの少なくとも1つを調節する。つまり、複数の光渦VTの形態を自在に調節できる。その結果、複数の光渦VTの産業分野への適用範囲を更に拡張できる。
具体的には、調節部20は、コリメートレンズ21と、位相差付与部22と、集光レンズ23とを含む。コリメートレンズ21は、集光レンズ9の出射した複数のビームBnをコリメートする。コリメートされた複数のビームBnは位相差付与部22に入射する。コリメートレンズ21は、例えば、凸レンズである。
位相差付与部22は、複数のビームBnのうち、2以上のビームBnに位相差を付与する。位相差の付与された2以上のビームBnを含む複数のビームBnは、集光レンズ23に入射する。位相差付与部22の構成は、位相差付与部7の構成と同様である。位相差付与部7に加えて位相差付与部22を設けることで、2以上のビームBnに更に精度良く位相差を付与できる。なお、調節部20は位相差付与部22を含まなくてもよい。また、光渦発生装置100Aは、位相差付与部7を備えなくてもよい。この場合は、位相差付与部22だけで、複数のビームBnのうち、2以上のビームBnに位相差を付与する。
集光レンズ23は、複数のビームBnをターゲットTAに照射する。従って、集光レンズ23は対物レンズとして機能する。集光レンズ23は「照射部」の一例に相当する。集光レンズ23は、例えば、凸レンズである。集光レンズ23を通過した複数のビームBnは、互いに異なる方向からターゲットTAに入射して、複数のビームBnが干渉する。その結果、ターゲットTA上又はターゲットTA中に複数の光渦(具体的には多数の光渦)が発生する。
なお、集光レンズ23は、ターゲットTAの側に焦点距離d5を有し、コリメートレンズ21の側に焦点距離d6を有する。焦点距離d5と焦点距離d6とは略同一である。一方、コリメートレンズ21は、集光レンズ23の側に焦点距離d7を有し、集光レンズ9の側に焦点距離d8を有する。焦点距離d7と焦点距離d8とは略同一である。そして、集光レンズ23の焦点距離d6に位置する焦点面が、コリメートレンズ21の焦点距離d7に位置する焦点面と略一致することが好ましい。この好ましい例では、ターゲットTA上又はターゲットTA中で複数のビームBnを高精度で重ねることができ、ターゲットTA上又はターゲットTA中で複数のビームBnを効果的に干渉させることができる。その結果、ターゲットTA上又はターゲットTA中に複数の光渦(具体的には多数の光渦)を効果的に発生できる。
例えば、集光レンズ23の焦点距離d5(=焦点距離d6)を短くする程、各ビームBnの入射角θnが大きくなって、複数の光渦VTの間隔が狭くなる。例えば、コリメートレンズ21の焦点距離d7(=焦点距離d8)を長くする程、各ビームBnの入射角θnが大きくなって、複数の光渦VTの間隔が狭くなる。例えば、集光レンズ23の焦点距離d5(=焦点距離d6)とコリメートレンズ21の焦点距離d7(=焦点距離d8)を略同一にすると、特定位置RPで発生した複数の光渦VTの間隔を維持したまま、ターゲットTA上又はターゲットTA中に複数の光渦VTを発生できる。つまり、特定位置RPで発生した複数の光渦VTの間隔を維持したまま、ターゲットTA上又はターゲットTA中に複数の光渦VTを転送できる。
なお、例えば、集光レンズ23の焦点距離d5(=焦点距離d6)及び集光レンズ9の焦点距離d1(=焦点距離d2)の各々を短くする程、各ビームBnの入射角θnが大きくなって、複数の光渦VTの間隔が狭くなる。例えば、コリメートレンズ21の焦点距離d7(=焦点距離d8)及びコリメートレンズ5の焦点距離d3(=焦点距離d4)の各々を長くする程、各ビームBnの入射角θnが大きくなって、複数の光渦VTの間隔が狭くなる。
また、光渦発生装置100Aは、複数の調節部20を備えていてもよい。複数の調節部20は、例えば、直列に配列される。
次に、図9及び図10を参照して、実施形態3に係る光渦発生方法を説明する。図10は、光渦発生方法を示すフローチャートである。光渦発生方法は光渦発生装置100Aによって実行される。図10に示すように、光渦発生方法は、工程S21〜工程S29を含む。工程S21及び工程S23は、それぞれ、図6を参照して説明した工程S1及び工程S3と同様であり、説明を適宜省略する。
図9及び図10に示すように、工程S21において、マルチビーム生成部3は、複数のビームBn(例えば、6本のビームBn)を生成する。
工程S23において、位相差付与部7は、複数のビームBnのうち、2以上のビームBnに位相差を付与する。
工程S25において、集光レンズ9は、位相差の付与された2以上のビームBnを含む複数のビームBnを特定位置RPに集光して、特定位置RPに複数の光渦VTを発生する。
工程S27において、調節部20は、複数のビームBnを調節する。具体的には、工程S25では、調節部20は、複数のビームBnを調節して、複数の光渦VTの発生する領域の大きさと、複数の光渦VTの間隔と、複数の光渦VTの発生する位置とのうちの少なくとも1つを調節する。工程S27は、工程S23と工程S29との間で実行される。具体的には、工程S27は、工程S25と工程S29との間で実行される。
工程S29において、調節部20は、調節した複数のビームBnを、ターゲットTAに照射する。その結果、複数の光渦VTがターゲットTA上又はターゲットTA中に発生する。
なお、干渉パターンPTDに含まれる複数のスポットPが、それぞれ、複数の回転中心RCの回りを回転する限りにおいては、複数のビームBnの本数は、6本に限定されない。
次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。なお、図11(a)〜図17(l)では、黒色から白色までの濃淡によって光強度を表している。白色に近い程、光強度が強いことを示している。
本発明の実施例1〜実施例3では、図1を参照して説明した光渦発生装置100を想定して、光渦の発生をシミュレーションした。また、図4(a)に示すように、三次元直交座標系を設定した。
式(1)を演算して、複数のビームBnが干渉する場合の光強度I(x、y、z)を算出した。x、y、及びzは、それぞれ、X座標、Y座標、及びZ座標を示した。光強度I(x、y、z)の空間分布は、複数のビームBnの干渉パターンを表した。
…(1)
式(1)において、「En」は、ビームBnの電界強度を示した。「N」はビームBnの本数を示した。「α」は、ビームBnの入射角θnを表した。複数のビームBnの入射角θnは等しかった。「Ψn」は、絶対方位角を示した。絶対方位角は、図4(a)及び図4(b)に示すように、ビームB1を基準としたビームBnの方位角を示した。従って、ビームB1の絶対方位角Ψ1はゼロであった。「βn」は、ビームBnの位相差を示した。位相差は基準のビームB1に対する位相差を示した。従って、基準のビームB1の位相差β1はゼロに設定された。また、基準のビームB1に対して位相差がない場合、つまり、基準のビームB1と同じ位相を有するビームBnの位相差βnもゼロに設定された。「t」は時間を示した。
式(1)の「En」は、式(2)によって表された。式(2)において、「E0n」は、ビームBnの強度の平方根に比例する電界振幅を示した。「k」は、ビームBnの波数を示した。「ω」は、ビームBnの角周波数を示した。
…(2)
(実施例1)
図11(a)〜図13(l)を参照して、本発明の実施例1及び比較例を説明する。実施例1では、N=6であり、式(1)に従って、6本のビームB1〜B6が干渉するシミュレーションを実行した。入射角αは20度であった。ビームB1〜B6の各々の波長は、785nmであった。絶対方位角は、Ψ1=0度、Ψ2=60度、Ψ3=120度、Ψ4=180度、Ψ5=240度、Ψ6=300度、であった。
図11(a)は、実施例1に係る干渉パターンPTを示す図である。図11(b)は、実施例1に係る6本のビームB1〜B6に付与された位相差を示す図である。図12は、比較例に係る一般的な光渦を示す図である。
実施例1では、図11(b)に示すように、基準のビームB1に対する位相差として、ビームB2、B3、B4、B5、B6に、それぞれ、位相差「+π/3」、「+2π/3」、「+3π/3」、「+4π/3」、「+5π/3」を付与した。なお、実施例1の位相差は図5(a)に示す位相差と同じであった。
図11(a)に示すように、干渉パターンPTは、三角格子状に配列した多数の光渦VTを含んでいた。光渦VTの各々は、図12に示す一般的な光渦と同様の光強度を有し、特異点SGを有していた。光渦VTの外径は、略六角形状であった。干渉パターンPTは、式(1)を用いて、ビームBnの1周期Tだけ電界強度Enの2乗を積分することで算出された。具体的には、1cm×1cmの矩形領域には、約1600万個の光渦VTを確認できた。なお、図11(a)では、多数の光渦VTのうちの一部の光渦VTが示されている。
次に、干渉パターンPTの1周期T内の時間変化をシミュレーションした。具体的には、1周期Tを12分割して、複数の干渉パターンPTDを算出した。干渉パターンPTDの各々は、式(1)を用いて、時間γ(=T/12)だけ電界強度Enの2乗を積分することで算出された。
図13(a)〜図13(l)は、時間γごとの干渉パターンPTDの時間変化を示す図である。時間は、図13(a)から図13(l)に向かって進んでいた。
図13(a)〜図13(l)に示すように、1周期Tの間に、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCの回りに360度回転した。回転方向は反時計回りであった。
具体的には、図13(a)〜図13(g)に示すように、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCを中心として、反時計回りに180度回転した。さらに、図13(g)〜図13(l)及び図13(a)に示すように、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCを中心として、反時計回りに180度更に回転した。従って、スポットP1及びスポットP2の各々が、ビームBnの1周期Tで一回転したことを確認できた。その結果、図11(a)に示す光渦VTの各々が、一般的な光渦(図12)と同様に、螺旋状の等位相面を有していることが推定できた。
(実施例2)
図14(a)〜図15(l)を参照して、本発明の実施例2を説明する。実施例2では、N=6であり、式(1)に従って、6本のビームB1〜B6が干渉するシミュレーションを実行した。その他、実施例2に係るビームB1〜B6の条件は、位相差を除いて、実施例1に係るビームB1〜B6の条件と同じである。
図14(a)は、実施例2に係る干渉パターンPTを示す図である。図14(b)は、実施例2に係る6本のビームB1〜B6に付与された位相差を示す図である。
実施例2では、図14(b)に示すように、位相差付与部7は、6本のビームB1〜B6のうち、互いに対向するビームB3とビームB6との各々に位相差「+π/3」を付与するとともに、他の4本のビームB1、B2、B4、B5のうちの1つのビームB5に位相差「+π/3」を付与した。なお、実施例2の位相差は図5(b)に示す位相差と同じであった。
図14(a)に示すように、干渉パターンPTは、三角格子状に配列した多数の光渦VTを含んでいた。光渦VTの各々は、図12に示す一般的な光渦と同様の光強度を有し、特異点SGを有していた。光渦VTの外径は、略三角形状であった。干渉パターンPTは、式(1)を用いて、ビームBnの1周期Tだけ電界強度Enの2乗を積分することで算出された。具体的には、1cm×1cmの矩形領域には、約1600万個の光渦VTを確認できた。なお、図14(a)では、多数の光渦VTのうちの一部の光渦VTが示されている。
次に、干渉パターンPTの1周期T内の時間変化をシミュレーションした。具体的には、1周期Tを12分割して、複数の干渉パターンPTDを算出した。干渉パターンPTDの各々は、式(1)を用いて、時間γ(=T/12)だけ電界強度Enの2乗を積分することで算出された。
図15(a)〜図15(l)は、時間γごとの干渉パターンPTDの時間変化を示す図である。時間は、図15(a)から図15(l)に向かって進んでいた。
図15(a)〜図15(l)に示すように、1周期Tの間に、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCの回りに360度回転した。回転方向は反時計回りであった。
具体的には、図15(a)〜図15(g)に示すように、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCを中心として、反時計回りに180度回転した。さらに、図15(g)〜図15(l)及び図15(a)に示すように、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCを中心として、反時計回りに180度更に回転した。従って、スポットP1及びスポットP2の各々が、ビームBnの1周期Tで一回転したことを確認できた。その結果、図14(a)に示す光渦VTの各々が、一般的な光渦(図12)と同様に、螺旋状の等位相面を有していることが推定できた。
(実施例3)
図16(a)〜図17(l)を参照して、本発明の実施例3を説明する。実施例3では、N=4であり、式(1)に従って、4本のビームB1〜B4が干渉するシミュレーションを実行した。入射角αは20度であった。ビームB1〜B4の各々の波長は、785nmであった。絶対方位角は、Ψ1=0度、Ψ2=90度、Ψ3=180度、Ψ4=270度、であった。
図16(a)は、実施例3に係る干渉パターンPTを示す図である。図16(b)は、実施例3に係る4本のビームB1〜B4に付与された位相差を示す図である。
実施例3では、図16(b)に示すように、基準のビームB1に対する位相差として、ビームB2、B3、B4に、それぞれ、位相差「+π/2」、「+2π/2」、「+3π/2」を付与した。なお、所定値Jは「+π/2」であった。ビームB2、B3、B4の位相差に対するMの値は、それぞれ、1、2、3、であった。
図16(a)に示すように、干渉パターンPTは、四角格子状に配列した多数の光渦VTを含んでいた。光渦VTの各々は、図12に示す一般的な光渦とは若干強度分布が異なるが、特異点SGを有していた。干渉パターンPTは、式(1)を用いて、ビームBnの1周期Tだけ電界強度Enの2乗を積分することで算出された。なお、図16(a)では、多数の光渦VTのうちの一部の光渦VTが示されている。
次に、干渉パターンPTの1周期T内の時間変化をシミュレーションした。具体的には、1周期Tを12分割して、複数の干渉パターンPTDを算出した。干渉パターンPTDの各々は、式(1)を用いて、時間γ(=T/12)だけ電界強度Enの2乗を積分することで算出された。
図17(a)〜図17(l)は、時間γごとの干渉パターンPTDの時間変化を示す図である。時間は、図17(a)から図17(l)に向かって進んでいた。
図17(a)〜図17(l)に示すように、1周期Tの間に、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCの回りに360度回転した。回転方向は時計回りであった。
具体的には、図17(a)〜図17(g)に示すように、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCを中心として、反時計回りに180度回転した。さらに、図17(g)〜図17(l)及び図17(a)に示すように、スポットP1及びスポットP2の各々は、回転中心RCを中心として、反時計回りに180度更に回転した。従って、スポットP1及びスポットP2の各々が、ビームBnの1周期Tで一回転したことを確認できた。その結果、図16(a)に示す光渦VTの各々が、一般的な光渦(図12)と同様に、螺旋状の等位相面を有していることが推定できた。
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態及び実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。