JP2019218485A - ポリマー体、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ポリマー層間の接着性に優れるポリマー体を提供とする。【解決手段】 本発明のポリマー体は、第1ポリマー層と第2ポリマー層とを含み、前記第1ポリマー層の表面に、前記第2ポリマー層が接着されており、前記第1ポリマー層の表面は、前記第2ポリマー層と接する領域が、有効官能基濃度8×10−11mol/cm2以上の領域を有し、前記第1ポリマー層の非露出部は、有効官能基濃度が有効官能基濃度8×10−11mol/cm2未満であり、前記第2ポリマー層は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリマー体、およびその製造方法に関する。
ポリマー層とポリマー層とを接着する際に、あらかじめ、接着性を高める処理が行われている(特許文献1、2等)。
特許文献1および2の方法は、変性ポリマーを用いる方法である。しかし、この方法は、ポリマー合成の段階で特別な処理が必要であり、適用範囲に限界がある。
また、ポリマーの接着性を高める方法として、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、グラフト化処理等の物理的な処理方法がある。しかし、これらの方法は、操作の煩雑さ、処理コスト、反応コントロールの困難性等の問題がある。他方、化学的な表面処理方法は、重金属酸化剤を用いる方法があるが、重金属酸化剤の処理コスト等の問題がある。
そこで、本発明は、ポリマー層間の接着性に優れるポリマー体、および、前記ポリマー体を簡便かつ低コストに製造できる製造方法の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のポリマー体は、
第1ポリマー層と第2ポリマー層とを含み、
前記第1ポリマー層の表面に、前記第2ポリマー層が接着されており、
前記第1ポリマー層の表面は、前記第2ポリマー層と接する領域が、有効官能基濃度8×10−11mol/cm2以上の領域を有し、
前記第1ポリマー層の非露出部は、有効官能基濃度が有効官能基濃度8×10−11mol/cm2未満であり、
前記第2ポリマー層は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
第1ポリマー層と第2ポリマー層とを含み、
前記第1ポリマー層の表面に、前記第2ポリマー層が接着されており、
前記第1ポリマー層の表面は、前記第2ポリマー層と接する領域が、有効官能基濃度8×10−11mol/cm2以上の領域を有し、
前記第1ポリマー層の非露出部は、有効官能基濃度が有効官能基濃度8×10−11mol/cm2未満であり、
前記第2ポリマー層は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明のポリマー体の製造方法は、
光照射下、ポリマー層の表面をハロゲン酸化物ラジカルと反応させて、表面が改質された改質ポリマー層を得る表面処理工程、および、
前記改質ポリマー層の前記表面に、ポリマー組成物を塗布して、塗布層を形成する層形成工程を含み、
前記ポリマー組成物は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
光照射下、ポリマー層の表面をハロゲン酸化物ラジカルと反応させて、表面が改質された改質ポリマー層を得る表面処理工程、および、
前記改質ポリマー層の前記表面に、ポリマー組成物を塗布して、塗布層を形成する層形成工程を含み、
前記ポリマー組成物は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明によれば、簡便かつ低コストに、ポリマー層間の接着性に優れるポリマー体を提供できる。
本発明において、前記表面処理工程によれば、前記ポリマーを改質できる。本明細書において、前記表面処理工程を「改質処理」または「改質方法」という場合がある。前記表面処理工程により前記ポリマーを酸化する場合、前記表面処理工程は、前記ポリマーの酸化方法であるということができる。
本発明のポリマー体は、例えば、前記第1ポリマー層が、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミド−イミド、セルロース、およびキトサンからなる群から選択された少なくとも一つを含む。
本発明のポリマー体は、例えば、前記第1ポリマー層が、シート、フィルム、プレート、チューブ、パイプ、棒、ビーズ、ブロック、織布、不織布および糸からなる群から選択された少なくとも一つの成形体である。
本発明のポリマー体は、例えば、前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリエチレンイミン、ポリカルボキシビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルソース、および、これらのポリマーを構成するモノマーの共重合体からなる群から選択された少なくとも一つを含む。
本発明のポリマー体は、例えば、前記水分散性高分子が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、イソプレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン樹脂、およびアクリルウレタン樹脂、からなる群から選択された少なくとも一つを含む。
本発明のポリマー体の製造方法は、例えば、前記ポリマー層が、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミド−イミド、およびキトサンからなる群から選択された少なくとも一つを含む。
本発明のポリマー体の製造方法は、例えば、前記ポリマー層が、シート、フィルム、プレート、チューブ、パイプ、棒、ビーズ、ブロック、織布、不織布および糸からなる群から選択された少なくとも一つの成形体である。
本発明のポリマー体の製造方法は、例えば、前記ポリマー組成物が、前記水溶性高分子と溶媒とを含み、前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリエチレンイミン、ポリカルボキシビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、および、これらのポリマーを構成するモノマーの共重合体からなる群から選択された少なくとも一つを含む。
本発明のポリマー体の製造方法は、例えば、前記ポリマー組成物が、前記水分散性高分子と溶媒とを含むエマルションであり、前記水分散性高分子が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、イソプレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン樹脂、およびアクリルウレタン樹脂からなる群から選択された少なくとも一つを含む。
本発明のポリマー体の製造方法は、例えば、前記溶媒が、水性溶媒である。
本発明のポリマー体の製造方法は、例えば、前記表面処理工程の反応系が、気体反応系または液体反応系である。
本発明のポリマー体の製造方法は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルが、二酸化塩素ラジカルである。
本発明において、鎖状化合物(例えば、アルカン、不飽和脂肪族炭化水素等)または鎖状化合物から誘導される鎖状置換基(例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基等の炭化水素基)は、例えば、直鎖状でも分枝状でもよく、その炭素数は、特に限定されず、例えば、1〜40、1〜32、1〜24、1〜18、1〜12、1〜6、1〜2であり、不飽和炭化水素基の場合、炭素数は、例えば、2〜40、2〜32、2〜24、2〜18、2〜12、2〜6である。本発明において、環状の化合物(例えば、環状飽和炭化水素、非芳香族環状不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、ヘテロ芳香族化合物等)または環状の化合物から誘導される環状の基(例えば、環状飽和炭化水素基、非芳香族環状不飽和炭化水素基、アリール基、ヘテロアリール基等)の環員数(環を構成する原子の数)は、特に限定されず、例えば、5〜32、5〜24、6〜18、6〜12、または6〜10である。置換基等に異性体が存在する場合、例えば、異性体の種類は、特に制限されず、具体例として、単に「ナフチル基」という場合は、例えば、1−ナフチル基でも2−ナフチル基でもよい。
本発明において、塩は、特に制限されず、例えば、酸付加塩でも、塩基付加塩でもよい。前記酸付加塩を形成する酸は、例えば、無機酸でも有機酸でもよく、前記塩基付加塩を形成する塩基は、例えば、無機塩基でも有機塩基でもよい。前記無機酸は、特に限定されず、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸は、特に限定されず、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基は、特に限定されず、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基は、特に限定されず、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。
以下、本発明の実施形態について、例をあげてさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
(A)ポリマー体
本発明のポリマー体(以下、「本発明のポリマー体」ともいう)は、前述のように、第1ポリマー層と第2ポリマー層とを含み、前記第1ポリマー層の表面に、前記第2ポリマー層が接着されており、前記第1ポリマー層の表面は、前記第2ポリマー層と接する領域が、有効官能基濃度8×10−11mol/cm2以上の領域を有し、前記第1ポリマー層の非露出部は、有効官能基濃度が有効官能基濃度8×10−11mol/cm2未満であり、前記第2ポリマー層は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明のポリマー体(以下、「本発明のポリマー体」ともいう)は、前述のように、第1ポリマー層と第2ポリマー層とを含み、前記第1ポリマー層の表面に、前記第2ポリマー層が接着されており、前記第1ポリマー層の表面は、前記第2ポリマー層と接する領域が、有効官能基濃度8×10−11mol/cm2以上の領域を有し、前記第1ポリマー層の非露出部は、有効官能基濃度が有効官能基濃度8×10−11mol/cm2未満であり、前記第2ポリマー層は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明のポリマー体は、前記第1ポリマー層の表面において、前記水溶性高分子または水分散性高分子を含む前記第2ポリマー層と接する領域が、前述のような有効官能基濃度を示すことが特徴であって、その他の構成および条件は、制限されない。
本発明のポリマー体は、前記第1ポリマー層の接触領域が前記有効官能基濃度を満たすことによって、前記有効官能基濃度を満たさない表面と比較して、前記第2ポリマー層との接着性が向上する。このため、例えば、水溶性高分子または水分散性高分子を含む第2ポリマー層が、基材となるポリマー層に対して接着性が乏しい場合、または、接着性が十分ではない場合、前記有効官能基濃度を満たす接着領域を有する前記第1ポリマー層に、前記第2ポリマー層を形成することで、前記第2ポリマー層を、より安定した接着性で、基材となる第1ポリマー層上に配置できる。
前記第1ポリマー層の前記接触領域において、前記有効官能基を前記有効官能基濃度にする方法は、特に制限されず、例えば、ポリマー層に、後述する本発明の製造方法における表面処理工程を施すことによって、前記有効官能基濃度を満たす第1ポリマー層とすることができる。
前記第1ポリマー層の表面において、前記第2ポリマー層と接する領域(以下、「接触領域」ともいう)の有効官能基濃度は、その下限が、8×10−11mol/cm2以上である。前記接触領域の有効官能基濃度を8×10−11mol/cm2以上とすることで、前記第2ポリマー層における水溶性高分子または水分散性高分子との密着性を向上し、結果的に、前記第2ポリマー層との密着性を向上できる。前記下限は、例えば、前記第2ポリマー層との密着性をさらに向上できることから、例えば、1×10−10mol/cm2以上が好ましく、2×10−10mol/cm2以上が好ましく、3×10−10mol/cm2以上が好ましく、5×10−10mol/cm2以上が好ましく、1×10−9mol/cm2以上が好ましく、4×10−9mol/cm2以上が好ましい。有効官能基濃度の上限は、特に制限されず、例えば、前記第2ポリマー層との剥離強度の低下を抑制するという観点で、例えば、1×10−5mol/cm2以下が好ましく、1×10−6mol/cm2以下が好ましく、1×10−7mol/cm2以下が好ましく、1×10−8mol/cm2以下が好ましい。範囲が、特に制限されず、例えば、8×10−11〜1×10−6mol/cm2が好ましく、2×10−10〜1×10−7mol/cm2が好ましく、5×10−10〜1×10−8mol/cm2が好ましい。
前記第1ポリマー層の非露出部の有効官能基濃度は、その上限が、有効官能基濃度は8×10−11mol/cm2未満である。前記非露出部の有効官能基濃度を8×10−11mol/cm2未満とすることで、例えば、湿度に対する耐久性を向上できる。前記有効官能基濃度の上限は、例えば、前記観点から、さらに親水性が低いことが好ましく、具体的には、5×10−11mol/cm2未満が好ましく、1×10−11mol/cm2未満が好ましい。前記第1ポリマー層の非露出部とは、例えば、前記第1ポリマー層を気相または液相に置いた際、前記気相の気体または前記液相の液体に接触しない部分である。前記非露出部とは、例えば、前記第1ポリマー層の内部等があげられる。前記第1ポリマーの非露出部の有効官能基濃度を測定する場合、例えば、前記第1ポリマー層を切断することによって露出される表面が使用できる。
好ましい形態として、前記第1ポリマー層の接触領域と非露出部の有効官能基濃度の差は、例えば、前記第2ポリマー層との密着性をさらに向上できることから、例えば、8×10−11mol/cm2以上であり、1×10−10mol/cm2以上が好ましく、2×10−10mol/cm2以上が好ましく、3×10−10mol/cm2以上が好ましく、5×10−10mol/cm2以上が好ましく、1×10−9mol/cm2以上が好ましく、4×10−9mol/cm2以上が好ましい。
本発明において、「有効官能基」とは、例えば、第2ポリマー層の水溶性高分子または水分散性高分子と親和性を示す官能基であり、具体的には、水溶性高分子または水分散性高分子と結合性を示す官能基である。前記結合性について、結合の形態は、特に制限されず、例えば、水素結合、共有結合、イオン結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合等があげられる。前記水溶性高分子および水分散性高分子は、例えば、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、オキサゾリン基、イソシアネート、酸無水物基等の極性や反応性を有する官能基を有することから、前記有効官能基は、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、カルボン酸塩(−COO−M+、M+:塩基性イオン)、カルボン酸無水物(−CO−O−CO−)、カルボニル基(−C=O)、塩素基(−Cl)等の前記結合が可能な置換基である。特に、前記有効官能基としては、例えば、カルボキシル基および水酸基が好ましい。
前記第1ポリマー層の表面における前記接触領域の有効官能基濃度の測定方法は、特に制限されない。測定は、例えば、本発明のポリマー体について、前記第1ポリマー層の表面から前記第2ポリマー層を除去し、前記第1ポリマー層の露出した表面における前記接触領域について行うことができる。前記測定は、直接的な方法として、例えば、XPS(X線光電子分光)、IR(赤外吸収分光法)等があげられる。
前記有効官能基は、例えば、前述のように、XPS等で分析可能である。XPS等によれば、通常、層の表面から約10nmの深さ方向の分析が可能である。このため、例えば、前記第1ポリマー層に前記第2ポリマー層が積層している本発明のポリマー体についても、例えば、イオンエッチングにより、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との密着界面付近を評価でき、具体的に、ワイドスペクトルおよびC1sスペクトル等の評価が可能である。前記本発明のポリマー体は、例えば、前記ポリマー体の接触領域において、H元素を除く全元素に対する、前記有効官能基であるカルボンキシル基、水酸基、カルボニル基に由来する酸素の原子濃度は、3mol%以上が好ましく、5mol%以上が好ましく、10mol%以上が好ましい。前記本発明のポリマー体は、例えば、前記第1ポリマー層の接触領域において、H元素を除く全元素に対する、前記有効官能基である塩素基の原子濃度は、例えば、1mol%以上が好ましく、3mol%以上が好ましい。前記本発明のポリマー体は、例えば、前記ポリマー体の接触領域において、炭素の結合様式に対して、例えば、水酸基は、5mol%以上が好ましく、10mol%、15mol%以上が好ましく、カルボキシル基は、3mol%以上が好ましく、5mol%、7mol%以上が好ましい。
本発明のポリマー体の好ましい形態として、前記第1ポリマー層における前記接触領域と前記非露出部との有効官能基濃度の差は、例えば、前記第2ポリマー層との密着性をさらに向上できることから、例えば、前記有機官能基(例えば、カルボンキシル基、水酸基、カルボニル基)に由来する酸素の原子濃度で表す場合、前記原子濃度の差は、3mol%以上が好ましく、5mol%以上が好ましく、10mol%以上が好ましい。
本発明のポリマー体の前記第1ポリマー層における前記接触領域と前記非露出部との有効官能基濃度の差は、例えば、H元素を除く全元素に対する、前記有効官能基である塩素基の原子濃度で表す場合、前記原子濃度の差は、例えば、1mol%以上が好ましく、3mol%以上が好ましい。本発明のポリマー体の前記第1ポリマー層における前記接触領域と前記非露出部との有効官能基濃度の差は、例えば、炭素の結合様式に対する濃度で表す場合、例えば、水酸基は、5mol%以上が好ましく、10mol%、15mol%以上が好ましく、カルボキシル基は、3mol%以上が好ましく、5mol%、7mol%以上が好ましい。
本発明のポリマー体の前記第1ポリマー層における前記接触領域と前記非露出部との有効官能基濃度の差は、例えば、H元素を除く全元素に対する、前記有効官能基である塩素基の原子濃度で表す場合、前記原子濃度の差は、例えば、1mol%以上が好ましく、3mol%以上が好ましい。本発明のポリマー体の前記第1ポリマー層における前記接触領域と前記非露出部との有効官能基濃度の差は、例えば、炭素の結合様式に対する濃度で表す場合、例えば、水酸基は、5mol%以上が好ましく、10mol%、15mol%以上が好ましく、カルボキシル基は、3mol%以上が好ましく、5mol%、7mol%以上が好ましい。
本発明のポリマー体において、前記第1ポリマー層の有機官能基は、例えば、前記第2ポリマー層との接触領域において、前記第2ポリマー層の第2ポリマーと、共有結合、イオン結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合等の結合を形成する可能性がある。そこで、前記第1ポリマー層の前記接触領域において、前記結合に関与する前記有効官能基の有効官能基濃度は、例えば、本発明のポリマー体から前記第2ポリマー層を、加水分解等により剥離することで分析可能である。また、前述のように、前記有効官能基は、XPS等での分析が可能であるため、イオンエッチングにより、前記第1ポリマー層の非露出部、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との界面付近、前記第2ポリマー層の非露出部について、前記有効官能基を分析することで、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との構造、前記第1ポリマー層の接触領域および前記非露出部の有効官能基濃度を決定できる。
前記測定は、間接的な方法により行うこともできる。前記水溶性高分子および前記水分散性高分子が、前述のように、例えば、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、オキサゾリン基、イソシアネート、酸無水物基等の官能基を有する場合、前記官能基に親和性を示す有効官能基としては、前述のように、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、カルボン酸塩(−COO−M+、M+:塩基性イオン)、カルボン酸無水物(−CO−O−CO−)、カルボニル基(−C=O)、塩素基(―Cl)等がある。これらの有効官能基には、例えば、塩基性色素であるトルイジンブルー(C15H16N3SCl)が結合できる。そして、トルイジンブルーは、ターゲットに結合することで、前記ターゲットを青色に着色する。このため、例えば、前記第1ポリマー層の前記接触領域に、前記トルイジンブルーを接触させ、色の変化を吸光度として測定すれば、前記吸光度から、前記第1ポリマー層に結合した前記トルイジンブルーのモル数を算出できる。前記トルイジンブルーのモル数は、前記有効官能基と対応するため、前記モル数と前記接触領域の面積とから、有効官能基濃度を算出できる。また、前記第1ポリマー層の有機官能基は、例えば、前記第2ポリマー層との接触領域において、共有結合、イオン結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合等の結合を形成する可能性がある。このため、前記第1ポリマー層の有効官能基濃度は、例えば、前記第2ポリマー層を加水分解し、イオンエッチング等により剥離することで分析可能である。
本発明において、前記第1ポリマー層の表面における前記接触領域の有効官能基濃度は、例えば、前記有効官能基の種類にかかわらず、例えば、前記第1ポリマー層の前記接触領域に前記トルイジンブルーを結合させた場合の、前記接触領域における結合したトルイジンブルーの面積あたりの濃度(mol/cm2)であってもよい。前記接触領域における結合したトルイジンブルーの面積あたりの濃度(mol/cm2)は、例えば、前述の有効官能基濃度の例示と同様である。なお、トルイジンブルーの結合は、あくまでも、前記第1ポリマー層の接触領域における有効官能基濃度の測定のためであって、本発明のポリマー体の構成を意味するものではない。
本発明のポリマー体は、例えば、ポリマー層として、前記第1ポリマー層および前記第2ポリマー層のみを含んでもよいし、さらに、その他のポリマー層を含んでもよい。
(A1)第1ポリマー層
前記第1ポリマー層は、特に制限されず、前記接触領域が前記有効官能基濃度を満たしていればよい。前記接触領域における前記有効官能基濃度は、例えば、後述する本発明の製造方法における表面処理工程によって達成できる。以下に第1ポリマー層を例示するが、前記接触領域における有効官能基濃度は、前述の通りであり、また、前記有効官能基濃度を達成する方法については、本発明の製造方法において後述する。
前記第1ポリマー層は、特に制限されず、前記接触領域が前記有効官能基濃度を満たしていればよい。前記接触領域における前記有効官能基濃度は、例えば、後述する本発明の製造方法における表面処理工程によって達成できる。以下に第1ポリマー層を例示するが、前記接触領域における有効官能基濃度は、前述の通りであり、また、前記有効官能基濃度を達成する方法については、本発明の製造方法において後述する。
前記第1ポリマー層は、例えば、ポリマー(以下、「第1ポリマー」ともいう)を含んでいればよい。前記第1ポリマーの種類は、特に制限されない。前記第1ポリマー層に含まれる第1ポリマーは、例えば、一種類でも、二種類以上の混合物でもよい。前記第1ポリマーは、例えば、ポリマーアロイ、ポリマーコンパウンドでもよい。
前記第1ポリマーは、例えば、流動性を有するポリマー、半固体状のポリマー、固体状のポリマーでもよい。前記第1ポリマーは、例えば、室温以上の融点を有するポリマー、室温で固体状、結晶状またはアモルファス状のポリマー、0℃以上で固体状、結晶状またはアモルファス状のポリマー等があげられる。前記第1ポリマーがガラス転移温度を有する場合、前記ガラス転移温度は、特に限定されず、例えば、−150℃以上である。前記第1ポリマーは、例えば、結晶化度が相対的に高いものでもよく、前記結晶化度は、例えば、20%以上、30%以上、35%以上である。
前記第1ポリマーの重合形態は、特に制限されず、例えば、単独重合体(ホモポリマー)でも、共重合体でもよい。前記共重合体は、特に限定されず、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等があげられる。前記共重合体において、繰り返し単位(モノマー)は、例えば、2種類以上である。前記第1ポリマーは、例えば、線状ポリマー、分岐状ポリマー、網目状ポリマー等があげられる。
前記第1ポリマーは、例えば、炭素と水素とを含み、且つ、炭素−水素結合を有するポリマーがあげられる。前記第1ポリマーは、特に制限されず、例えば、後述するポリマーA、パーフルオロアルコキシアルカンポリマー、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリビニリデンフルオリド、ポリクロロトリフルオロエチレン等があげられる。
前記ポリマーAは、例えば、側鎖に、水素基、ハロゲン基、炭化水素基またはその誘導体基を有するポリマーがあげられる。前記ポリマーAは、例えば、後述する本発明の製造方法における表面処理工程により、側鎖を改変することができる。
前記ポリマーAは、特に制限されず、例えば、前記ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、シリコーン系ポリマー、天然ゴム、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリル系ポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、非晶ポリアリレート等のポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶性ポリエステル、ポリパラフェニレン(PPP)、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリスチレンスルホン酸)とからなる複合体(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリスチレンスルホン酸、ポリ(3−ヒドロキシアルカン酸)、ポリ塩化ビニリデン、スチレン共重合体(例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)、スチレンブタジエン共重合体等)、メタクリル樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリ(トランス−1,4−イソプレン)、尿素樹脂、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、環状シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアセタール、フッ素含有ポリマー(例えば、テフロン(登録商標)、フッ素含有合成ゴム等)、およびタンパク質(例えば、フィブロネクチン、アルブミン、フィブリン、ケラチン、シトクロム、サイトカイン等)等があげられる。前記アクリル系ポリマーは、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等があげられる。前記ポリアミドは、例えば、ナイロン(商品名)であり、具体例として、6−ナイロン、6,6−ナイロン等があげられる。
前記ポリマーAは、例えば、耐水性を高くする観点より、前記ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリパラフェニレンビニレン等の酸素原子含有量が少ないポリマー、つまり、前記非露出部の酸素原子含有量が相対的に少ないポリマーが好ましい。この場合、例えば、カルボンキシル基、水酸基、カルボニル基、エステル基等に由来する酸素の原子濃度は、例えば、その上限が、10mol%未満が好ましく、5mol%未満が好ましく、その下限が、3mol%以上が好ましく、1mol%未満が好ましい。本発明のポリマー体において、前記第1ポリマー層を構成する前記第1ポリマーが前記ポリマーAである場合、例えば、前記第1ポリマー層の接触領域において、H元素を除く全元素に対する、前記有効官能基である塩素基の原子濃度は、例えば、3mol%未満が好ましく、1mol%未満が好ましい。本発明のポリマー体において、前記第1ポリマー層を構成する前記第1ポリマーが前記ポリマーAである場合、例えば、前記第1ポリマー層の接触領域において、炭素の結合様式に対して、例えば、水酸基は、15mol%以未満が好ましく、10mol%、5mol%未満が好ましく、カルボキシル基は、7mol%未満が好ましく、5mol%、1mol%未満が好ましい。
前記ポリオレフィンは、例えば、炭素数2〜20のオレフィンの重合体があげられ、具体例として、低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレン等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等があげられる。前記ポリオレフィンは、例えば、共重合体でもよい。
前記ポリマーAが前記単独重合体の場合、例えば、直鎖を形成する繰り返し単位(モノマー)が、側鎖を有する。前記ポリマーAが前記共重合体の場合、例えば、直鎖を形成する各繰り返し単位(各モノマー)は、1種類のモノマーが側鎖を有してもよいし、2種類以上のモノマーが側鎖を有してもよい。
前記ポリマーAの側鎖である前記水素基、前記ハロゲン基、前記炭化水素基またはその誘導体基は、特に限定されず、例えば、下記炭化水素またはその誘導体の1価基である。前記炭化水素は、例えば、非芳香族でも芳香族でも、飽和でも不飽和でもよい。前記炭化水素は、例えば、直鎖状または分枝状であり且つ飽和または不飽和の炭化水素でもよく、具体例として、直鎖状または分枝状のアルカン、直鎖状または分枝状のアルケン、直鎖状または分枝状のアルキン等があげられる。前記炭化水素は、例えば、非芳香族の環状構造を含む、飽和または不飽和の炭化水素でもよく、具体例として、シクロアルカン、シクロアルケン等があげられる。前記炭化水素は、芳香族炭化水素でもよい。前記炭化水素は、その構造中に、例えば、芳香族または非芳香族の環を、それぞれ1または複数有してもよく、有さなくてもよい。前記炭化水素は、その構造中に、例えば、直鎖状または分枝状であり且つ飽和または不飽和の炭化水素基を、それぞれ1または複数有してもよいし、有さなくてもよい。前記不飽和炭化水素の誘導体は、例えば、カルボニル基(−C(=O)−)を有するケトン、エステル、アミド等でもよい。前記炭化水素の炭素数は、特に制限されず、例えば、1〜40、1〜32、1〜24、1〜18、1〜12、1〜6、1〜2であり、前記炭化水素が不飽和炭化水素の場合、炭素数は、例えば、2〜40、2〜32、2〜24、2〜18、2〜12、2〜6である。前記炭化水素の具体例は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ビニル基、アリル基、1,3−ブタジエン−1−イル基、エチニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、メシチル基、1,2,4,5−テトラメチルフェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、メチル−1−ナフチル基、メチル−2−ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、スチリル基等があげられる。
前記炭化水素の誘導体は、例えば、ヘテロ元素(炭素および水素以外の元素)を含む有機化合物である。前記ヘテロ元素は、特に限定されず、例えば、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ハロゲン等である。前記ハロゲンは、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等である。前記誘導体は、例えば、炭化水素基と、任意の置換基または原子団とが結合した構造の有機化合物でもよい。前記誘導体は、例えば、複数の炭化水素基が任意の原子団により結合された構造の化合物でもよく、さらに、前記炭化水素基が、任意の1または複数の置換基により置換されてもよく、未置換でもよい。前記炭化水素基は、特に限定されず、例えば、前記炭化水素の1個または2個以上の水素原子が結合手に置き換わっている1価または2価以上の基があげられる。前記炭化水素基は、例えば、その炭素原子の1または2以上が、ヘテロ原子に置き換わってもよい。具体的には、例えば、フェニル基の1つの炭素原子(およびそれに結合した水素原子)が窒素原子に置換されて、ピリジル基を形成してもよい。前記置換基または原子団は、特に限定されず、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、置換基を有するアミノ基または置換基を有さないアミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−CO−O−)、チオエーテル結合(−S−)等があげられる。
前記第1ポリマーは、これらの他に、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールポリマー等があげられる。前記第1ポリマーは、例えば、植物から化学合成されるバイオプラスチックでもよく、前記バイオプラスチックとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリオレフィン等があげられる。前記第1ポリマーは、例えば、微生物が生産するポリマーでもよく、具体例として、ポリヒドロキシアルカノエート等があげられる。
前記第1ポリマー層は、例えば、前記ポリマーの他に、前記ポリマー以外の他の材料を含んでもよい。前記他の材料は、特に限定されず、例えば、一般的なポリマーに含有されている材料であり、無機物でも有機物でもよい。前記無機物は、例えば、炭酸カルシウム、クレイ、タルク、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、シリコーン、酸化亜鉛等があげられる。前記他の材料は、例えば、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤でもよい。
前記第1ポリマー層における前記第1ポリマーの形態は、特に制限されず、例えば、半固体状、固体状、結晶状、アモルファス状等のいずれでもよい。前記第1ポリマー層は、例えば、前記第1ポリマーそのもの(未成形体)でもよいし、前記第1ポリマーを含むポリマー組成物から成形した成形体でもよい。
前記第1ポリマー層が前記成形体の場合、例えば、成形方法、形状等は、何ら制限されない。前記成形体は、例えば、前記第1ポリマーを含むポリマー組成物を用いて、公知の方法により得ることができる。前記成形方法は、例えば、一般的に、前記第1ポリマーを熱溶融し、所望の形状に整え、冷却する等である。前記成形方法は、例えば、圧縮成形、トランスファ成形、押出成形、カレンダー成形、インフレーション成形、ブロー成形、真空成形、射出成形、注型成形等があげられる。
前記第1ポリマー層の大きさおよび形状等は、特に制限されない。前記形状は、例えば、例えば、シート、フィルム、プレート、チューブ、パイプ、棒、ビーズ、ブロック、織布、不織布、糸、ファイバー等があげられる。前記第1ポリマー層は、例えば、非多孔体でも、多孔体でもよい。
(A2)第2ポリマー層
前記第2ポリマー層は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方(以下、「第2ポリマー」ともいう)を含む。前記第2ポリマー層は、例えば、前記有効官能基濃度の接触領域を有する前記第1ポリマー層の表面に、前記第2ポリマーを含むポリマー組成物を塗布することによって、形成できる。
前記第2ポリマー層は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方(以下、「第2ポリマー」ともいう)を含む。前記第2ポリマー層は、例えば、前記有効官能基濃度の接触領域を有する前記第1ポリマー層の表面に、前記第2ポリマーを含むポリマー組成物を塗布することによって、形成できる。
前記第2ポリマー層は、例えば、前記第2ポリマーとして、前記水溶性高分子のみを含んでもよいし、前記水分散性高分子のみを含んでもよいし、両方を含んでもよい。前記第2ポリマー層が前記水溶性高分子を含む場合、前記水溶性高分子は、例えば、一種類でもよいし二種類以上でもよく、また、前記第2ポリマー層が前記水分散高分子を含む場合、前記水分散高分子は、例えば、一種類でもよいし、二種類以上でもよい。
前記水溶性高分子は、例えば、水性溶媒に溶解する高分子である。前記水性溶媒は、例えば、H2O、D2O等の水があげられる。本発明のポリマー体の製造においては、例えば、前記水溶性高分子を水等の水性溶媒に溶解したポリマー組成物を調製し、前記ポリマー組成物を前記第1ポリマー層に塗布することによって、前記第2ポリマー層を形成できる。
前記水溶性高分子は、特に制限されず、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリエチレンイミン、ポリカルボキシビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルソース、これらのポリマーを構成するモノマーの共重合体、これらの誘導体等があげられる。また、前記水溶性高分子は、例えば、架橋剤として使用できることから、オキサゾリン基、アジリジニル基、カルボジイミド基、エポキシ基等を含むポリマーがあげられ、前記ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1000以上である。
前記PVAは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られる。前記PVAとは、例えば、残存する酢酸基が数十%である、いわゆる部分けん化PVAから、残存酢酸基が数%程度または検出限界以下である、いわゆる完全けん化PVAまでの意味を含み、いずれであってもよい。
前記水溶性高分子は、この他に、例えば、澱粉、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、これらのポリマーを構成するモノマーの共重合体、これらの誘導体等があげられる。
前記水溶性高分子は、この他に、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリメタクリル酸、ポリアミン、ポリウレタン、それらの誘導体等、水溶性エポキシ樹脂等があげられる。また、前記水溶性高分子は、例えば、水溶性多糖類でもよく、具体例として、例えば、ポリウロン酸、澱粉、カルボキシメチル澱粉、カチオン化澱粉、キチン、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸、ペクチン、ゼラチン、グアガム、カラギーナン、それらの誘導体等があげられる。また、例えば、これらのポリマーを構成するモノマーの共重合体、これらの誘導体等があげられる。
前記水分散性高分子は、例えば、前記水性溶媒に分散する高分子である。前記水分散性高分子を含む第2ポリマー層は、例えば、本発明のポリマー体の製造方法において後述するように、例えば、前記水分散性高分子を水等の水性溶媒に分散したポリマー組成物(エマルションともいう)を調製し、前記ポリマー組成物を前記第1ポリマー層に塗布することによって、形成できる。このようにして形成された前記第2ポリマー層は、例えば、前記水分散性高分子がエマルションの状態を維持してもよいし、非エマルションの状態でもよい。
前記水分散性高分子は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂(SBR)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、ブタジエン樹脂(BR)、イソプレン樹脂(IR)、アクリロニトリル/ブタジエン樹脂(NBR)、アクリルウレタン樹脂、およびメラミン樹脂等があげられる。また、前記水分散性高分子は、例えば、架橋剤として使用できることから、オキサゾリン基、アジリジニル基、カルボジイミド基、エポキシ基等を含むポリマーがあげられ、前記ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1000以上である。前記水分散性高分子は、これらの例示には限定されず、この他に種々の高分子が使用できる。
前記水分散性高分子は、その数平均分子量が、例えば、3000〜200000、3000〜100000である。前記水分散性高分子は、例えば、酸基を有することが好ましく、樹脂固形分酸価は、例えば、10〜100、20〜80である。
前記アクリル樹脂のエマルションは、例えば、重合性モノマーを、界面活性剤を用いて、1段または2段以上で乳化重合することにより得られる。前記重合性モノマーは、例えば、ラジカル重合性を有する炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有する化合物である。
前記重合性モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸などのモノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、コハク酸等のジカルボン酸類またはこれらのハーフエステル(モノエステル)やジエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類等の単官能重合性モノマー、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,7−ヘプタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、およびジアリルベンゼン等の二官能性重合性モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能性重合性モノマー等があげられる。
前記界面活性剤は、例えば、一般的なアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等があげられる。前記ノニオン性界面活性剤は、例えば、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩およびピリジニウム塩等であり、前記両性界面活性剤は、例えば、ベタイン型、硫酸エステル型およびスルホン酸型等である。
前記アニオン性界面活性剤は、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類、ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェートおよびアンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホン酸塩類;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩類;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類等を使用することができる。さらに、例えば、高アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩、ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸塩、およびN−アシルメチルタウリン塩等である。
前記ノニオン性界面活性剤は、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類等を使用することができる。さらに、例えば、炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物、アルキレングリコールおよび/またはアルキレンジアミンのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物等である。
前記ノニオン性界面活性剤は、例えば、構成として炭素数1〜18のアルコールを含み、前記アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、およびステアリルアルコール等である。
前記アルキルフェノールは、例えば、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第3ブチルフェノール、2,5−ジ第3ブチルフェノール、3,5−ジ第3ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第3オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、およびビスフェノールF等である。
前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、および1,6−ヘキサンジオール等である。
前記アルキレンジアミンは、例えば、前記アルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換された化合物である。前記エチレンオキサイド付加物および/またはプロピレンオキサイド付加物は、例えば、ランダム付加物およびブロック付加物のいずれも使用できる。
前記カチオン性界面活性剤は、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムブロマイドおよびイミダゾリニウムラウレート等である。
前記両性界面活性剤は、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタイン、ヒドロキシプロピルリン酸の金属塩等のベタイン型両性界面活性剤、β−ラウリルアミノプロピオン酸の金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、硫酸エステル型両性界面活性剤およびスルホン酸型両性界面活性剤等である。
前記ウレタン樹脂のエマルションは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、界面活性剤を用いて乳化させたものであり、前記ウレタン樹脂は、例えば、界面活性剤を用いずに、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、得られたポリマーを水中に分散させたものである。
前記ポリオールは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルポリオール、数平均分子量500未満のポリオール等である。
前記ポリエステルポリオールは、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる化合物、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られる化合物、およびこれらの共重合ポリエステル等である。
前記低分子量のポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂肪族環式構造含有ポリオール;およびビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノール型ポリオール等である。
前記ポリカルボン酸は、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸の脂肪族ポリカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸やシクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族ポリカルボン酸;オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;およびそれらの無水物、またはエステル誘導体等であり、単独で使用しても2種以上併用してもよい。
前記ポリカーボネートジオールは、例えば、炭酸エステルおよび/またはホスゲンと、ポリオールとを反応させて得られるものが使用できる。前記炭酸エステルは、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、フェニルナフチルカーボネート等である。
前記ポリカーボネートジオール製造用のポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール等の低分子量のジヒドロキシ化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等である。
前記ポリエーテルポリオールは、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用できる。前記開始剤は、例えば、一種類の前記化合物を使用してもよいし、二種類以上の前記化合物を使用してもよい。
前記開始剤は、例えば、水、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオ−ル、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、サッカロース、エチレンジアミン、N−エチルジエチレントリアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、ジエチレントリアミン、燐酸、酸性リン酸エステル等である。
前記アルキレンオキサイドは、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等である。
前記数平均分子量500未満のポリオールは、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上のポリオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂肪族環式構造含有ポリオール;およびビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノール型ポリオール等があげられる。
前記ウレタン樹脂エマルションの製造用の界面活性剤は、例えば、前記アクリル樹脂エマルションの製造で例示したものと同様である。
前記ウレタン樹脂エマルションの製造には、例えば、より高分子量化させるため、鎖延長剤を用いてもよい。前記鎖延長剤は、例えば、アミノエチルアミノエタノールに加えて、さらに、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、アミノエチルアミノエタノール、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m/p−アミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の、芳香族ジアミン類のポリアミン等が使用でき、この他に、例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド等のヒドラジン類、水加ヒドラジン、および水等も使用できる。
前記エポキシ樹脂のエマルションは、例えば、エポキシ樹脂を、界面活性剤を用いて乳化させたものであり、前記エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノールや水添ビスフェノールA等から得られる脂環式エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物であるエポキシ化物、およびビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等があげられる。
前記エポキシ樹脂を乳化させる界面活性剤は、例えば、前記アクリル樹脂エマルションの製造で例示したものと同様である。
前記メラミン樹脂は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの反応により得られる部分または完全メチロール化メラミン、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をアルコールで部分または完全エーテル化することにより得られるアルキルエーテルタイプメラミン樹脂、イミノ基含有メラミン樹脂、およびこれらの混合物であるメラミン樹脂等である。前記アルキルエーテルタイプメラミン樹脂は、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル/ブチル混合アルキルタイプメラミン樹脂等があげられる。
本発明のポリマー体において、前記第2ポリマー層の用途は、特に制限されず、自動車塗装用等の塗膜、建築用の塗膜、粘着層、接着層、インク層、コーティング層、繊維処理層、紙加工層、架橋層等である。前記第2ポリマー層は、例えば、それぞれの用途に応じて、顔料、光輝剤、分散剤、消泡剤、成膜助剤、無機塩、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、香料、色素等の他の成分が含まれてもよい。
前記顔料は、例えば、有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等があげられ、無機系ではアルミニウム、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等である。前記顔料は、例えば、前記第2ポリマー層において、前記第2ポリマーの固形分に対して、0.003〜18.0質量%、0.01〜15.0質量%、0.01〜13.0質量%である。
前記光輝剤は、例えば、塗膜の意匠性を改善するものである。前記光輝剤は、例えば、鱗片状アルミニウム、蒸着アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム、塩化オキシビスマス、銅合金、亜鉛合金、ニッケル合金、スズ合金、雲母、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、雲母状酸化鉄等があげられる。前記鱗片状アルミニウムの大きさは、例えば、長径が10〜50μm、短径が3〜30μm、厚さが0.1〜3μm程度である。前記光輝剤は、例えば、前記第2ポリマー層において、前記第2ポリマーの固形分100質量部に対して、5〜100質量部、20〜80質量部である。
前記成膜助剤は、例えば、メチルグリコール、ブチルグリコール、イソプロピルグリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のグリコール系化合物;ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、高級アルコールの混合フタル酸エステル等のフタル酸誘導体(特にはフタル酸エステル);トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ(n−オクチル)トリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート等のトリメリット酸誘導体(特にはトリメリット酸エステル);ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、高級アルコールの混合アジピン酸エステル等のアジピン酸誘導体(特にはアジピン酸エステル);ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−(n−ヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸誘導体(特にはアゼライン酸エステル);ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等のセバシン酸誘導体(特にはセバシン酸エステル);フェノール系アルキルスルホン酸エステル等のスルホン酸誘導体(特にはスルホン酸エステル);エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油等のエポキシ誘導体(特にはエポキシ化エステル)等の可塑剤;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の2価アルコールとの重合型エステルであるポリエステル系化合物等があげられる。前記成膜助剤は、前記第2ポリマー層において、前記第2ポリマーの固形分に対して、例えば、0.01〜20質量%、0.05〜15質量%、0.1〜10質量%である。
前記酸化防止剤は、例えば、リン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、硫黄系抗酸化剤を使用することができる。リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第3ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)−1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第3ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12アルキル〜C15アルキルの混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル−4,4’−ブチリデンビス(2−第3ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−[(2,4,7,9−テトラキス第3ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(2−[(2,4,8,10−テトラキス第3ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]エチルアミン、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−メチル−4−[3−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]プロピル]フェノール、および2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−2,4,6−トリ第3ブチルフェノールモノホスファイト等である。
前記フェノール系抗酸化剤は、例えば、2,6−ジ第3ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第3ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第3ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第3ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第3ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第3ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第3ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第3ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、およびトコフェロール等である。
前記硫黄系抗酸化剤は、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類、および、ペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等の、ポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類等である。
前記酸化防止剤は、例えば、前記第2ポリマー層において、前記第2ポリマーの固形分に対して、0.001〜10質量%、0.01〜5質量%、0.02〜1質量%である。
自動車塗装用等の水系塗料として使用する場合、塗布した塗膜は、単層塗膜、複層塗膜、いずれの形態でもよい。複層塗膜を形成する方法としては、例えば、電着塗膜の上に中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜を形成した被塗装物上に、ベースコート塗料を塗装し、更にその上にクリアー塗料を塗装した後、加熱硬化することによって複層塗膜を形成する方法があげられる。本発明の樹脂組成物水溶液は、前記の中塗り塗料、ベースコート塗料、クリアー塗料が水系塗料であれば、いずれの塗料にも使用することができる。これらの塗料の塗布方法は規定されないが、大量生産性や均一で平坦な塗膜が得られることから、スプレー塗装による塗布が好ましい。また、これらの塗料には本発明の効果を阻害しない範囲内で、その用途に応じて硬化剤、有機系や無機系の各種着色成分、顔料および光輝剤等を添加することができる。
前記第2ポリマーは、例えば、硬化剤を含んでもよく、前記硬化剤は、特に限定されず、例えば、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、金属イオン等があげられる。
(B)ポリマー体の製造方法
本発明のポリマー体の製造方法は、前述のように、光照射下、ポリマー層の表面をハロゲン酸化物ラジカルと反応させて、改質ポリマー層を得る表面処理工程、および、前記改質ポリマー層の前記表面に、ポリマー組成物を塗布して、塗布層を形成する層形成工程を含み、前記ポリマー組成物は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。本発明の製造方法によれば、例えば、前記本発明のポリマー体を製造できる。本発明の製造方法において、前述した本発明のポリマー体の記載を援用できる。
本発明のポリマー体の製造方法は、前述のように、光照射下、ポリマー層の表面をハロゲン酸化物ラジカルと反応させて、改質ポリマー層を得る表面処理工程、および、前記改質ポリマー層の前記表面に、ポリマー組成物を塗布して、塗布層を形成する層形成工程を含み、前記ポリマー組成物は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。本発明の製造方法によれば、例えば、前記本発明のポリマー体を製造できる。本発明の製造方法において、前述した本発明のポリマー体の記載を援用できる。
(B1)ポリマー層および改質ポリマー層
本発明の製造方法において、「ポリマー層」は、前記表面処理工程を施す対象となるポリマー層(処理対象のポリマー層)であり、「改質ポリマー層」は、前記処理対象のポリマー層に前記表面処理工程が施された層である。前記表面処理工程によれば、前記処理対象のポリマー層の表面が改質された前記改質ポリマー層となる。
本発明の製造方法において、「ポリマー層」は、前記表面処理工程を施す対象となるポリマー層(処理対象のポリマー層)であり、「改質ポリマー層」は、前記処理対象のポリマー層に前記表面処理工程が施された層である。前記表面処理工程によれば、前記処理対象のポリマー層の表面が改質された前記改質ポリマー層となる。
前記改質は、例えば、酸化、ハロゲン化等である。本発明によれば、例えば、前記処理対象のポリマー層に前記表面処理工程を施すことによって、例えば、前記本発明のポリマー体の前記第1ポリマー層、つまり、表面に有効官能基濃度8×10−11mol/cm2以上の領域を有する第1ポリマー層を得ることができる。前記第1ポリマー層は、例えば、本発明のポリマー層で例示した有効官能基濃度が得られる。
前記処理対象のポリマー層は、特に制限されず、例えば、前記本発明の成形体で例示した第1ポリマーを含む層があげられる。前記表面処理工程により、前記ポリマー層は、例えば、前記第1ポリマーにおける前記炭素−水素結合が改変(例えば、酸化等)される。前記処理対象のポリマー層の形状は、特に制限されず、前記本発明の成形体で例示した形状があげられる。
(B2)ハロゲン酸化物ラジカル
前記ハロゲン酸化物ラジカルは、ハロゲン酸化物のラジカルであって、その種類は特に制限されず、例えば、F2O・(二フッ化酸素ラジカル)、F2O2 ・(二フッ化二酸素ラジカル)、ClO2 ・(二酸化塩素ラジカル)、BrO2 ・(二酸化臭素ラジカル)、I2O5 ・(酸化ヨウ素(V))等があげられる。
前記ハロゲン酸化物ラジカルは、ハロゲン酸化物のラジカルであって、その種類は特に制限されず、例えば、F2O・(二フッ化酸素ラジカル)、F2O2 ・(二フッ化二酸素ラジカル)、ClO2 ・(二酸化塩素ラジカル)、BrO2 ・(二酸化臭素ラジカル)、I2O5 ・(酸化ヨウ素(V))等があげられる。
前記表面処理工程において使用する前記ハロゲン酸化物ラジカルは、例えば、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記ハロゲン酸化物ラジカルは、例えば、改質する処理対象のポリマー層の種類(すなわち、第1ポリマーの種類)、反応条件等に応じて、適宜選択できる。
(B3)反応系
前記表面処理工程は、例えば、前記ポリマー層を配置した反応系に、前記ハロゲン酸化物ラジカルを共存させ、光照射することにより行うことができる。前記ポリマー層は、前記ハロゲン酸化物を含む反応系に配置すればよい。前記ハロゲン酸化物ラジカルは、例えば、前記反応系において生成させることで、前記反応系に含ませてもよいし、別途生成させた前記ハロゲン酸化物ラジカルを前記反応系に導入してもよい。前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生方法は、特に制限されず、具体例を後述する。前記反応系は、例えば、気体反応系でも、液体反応系でもよい。
前記表面処理工程は、例えば、前記ポリマー層を配置した反応系に、前記ハロゲン酸化物ラジカルを共存させ、光照射することにより行うことができる。前記ポリマー層は、前記ハロゲン酸化物を含む反応系に配置すればよい。前記ハロゲン酸化物ラジカルは、例えば、前記反応系において生成させることで、前記反応系に含ませてもよいし、別途生成させた前記ハロゲン酸化物ラジカルを前記反応系に導入してもよい。前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生方法は、特に制限されず、具体例を後述する。前記反応系は、例えば、気体反応系でも、液体反応系でもよい。
(B3−1)気体反応系
前記気体反応系の場合、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルを含む気体反応系中に、前記ポリマー層を配置し、光照射する。前記気体反応系における気相の種類は、特に制限されず、例えば、空気、窒素、希ガス、酸素等である。前記気体反応系を収容する反応器は、例えば、光照射を外部から行う場合、光透過性の容器が好ましく、光照射を内部から行う場合、光透過性の容器には限られない。
前記気体反応系の場合、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルを含む気体反応系中に、前記ポリマー層を配置し、光照射する。前記気体反応系における気相の種類は、特に制限されず、例えば、空気、窒素、希ガス、酸素等である。前記気体反応系を収容する反応器は、例えば、光照射を外部から行う場合、光透過性の容器が好ましく、光照射を内部から行う場合、光透過性の容器には限られない。
前記ハロゲン酸化物ラジカルは、前記表面処理工程に先立って、前記気体反応系に導入してもよいし、前記表面処理工程と同時、前記気体反応系に導入してもよい。前記ハロゲン酸化物ラジカルの導入は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルを含むガスを気相に導入することで行える。具体例として、前記ハロゲン酸化物ラジカルが前記二酸化塩素ラジカルの場合、例えば、前記気相に二酸化塩素ガスを導入することによって、前記気体反応系に前記二酸化塩素ラジカルを含ませることができる。また、前記ハロゲン酸化物ラジカルの導入は、例えば、後述するように、液相のラジカル生成用反応系で前記ハロゲン酸化物ラジカルを発生させ、前記発生したハロゲン酸化物ラジカルを、気相に移行させることで、前記気体反応系に導入してもよい。
前記ハロゲン酸化物ラジカルは、例えば、前記気体反応系において発生させてもよい。具体例として、前記ハロゲン酸化物ラジカルが二酸化塩素ラジカルの場合、例えば、電気化学的方法により気相中に発生させることもできる。
(B3−2)液体反応系
前記液体反応系は、例えば、有機相を含む。前記液体反応系は、例えば、前記有機相のみを含む一相反応系でも、前記有機相と水相とを含む二相反応系でもよい。
前記液体反応系は、例えば、有機相を含む。前記液体反応系は、例えば、前記有機相のみを含む一相反応系でも、前記有機相と水相とを含む二相反応系でもよい。
前記二相反応系の場合、例えば、前記水相で前記ハロゲン酸化物ラジカルを生成させ、生成した前記ハロゲン酸化物ラジカルを、前記有機相に移行させることで、前記有機相に前記ハロゲン酸化物ラジカルを導入してもよい。また、前記一相反応系の場合、例えば、別途、生成させた前記ハロゲン酸化物ラジカルを前記有機相に導入してもよい。具体的には、例えば、別途、水相で前記ハロゲン酸化物ラジカルを生成した後、前記水相に前記有機相を混合し、前記水相で生成したハロゲン酸化物ラジカルを前記有機相に溶解(抽出)し、前記水相と前記有機相とを分離し、前記ハロゲン酸化物ラジカルを含む有機相を、前記一相反応系として調製してもよい。
前記液体反応系の場合、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルを含む有機相中に、前記ポリマー層を配置し、光照射する。前記液体反応系を収容する反応器は、例えば、光照射を外部から行う場合、光透過性の容器が好ましく、光照射を内部から行う場合、光透過性の容器には限られない。
前記ポリマー層は、例えば、処理の効率の点から、例えば、改質させる所望の領域が、前記有機相中の前記ハロゲン酸化物ラジカルと接触するように、前記有機相に浸漬させ、前記有機相中から露出しないように、前記有機相中に固定することが好ましい。
前記有機相は、例えば、有機溶媒である。前記有機溶媒は、例えば、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記有機溶媒は、特に制限されず、例えば、ハロゲン化溶媒、フルオラス溶媒等があげられる。前記液体反応系が前記二相反応系の場合、前記有機溶媒は、例えば、前記水相を構成する水性溶媒と分離する溶媒、前記水性溶媒に難溶性または非溶性の溶媒が好ましい。
「ハロゲン化溶媒」は、例えば、炭化水素の水素原子の全てまたは大部分が、ハロゲンに置換された溶媒をいう。前記ハロゲン化溶媒は、例えば、炭化水素の水素原子数の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上が、ハロゲンに置換された溶媒でもよい。前記ハロゲン化溶媒は、特に限定されず、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、および後述するフルオラス溶媒等があげられる。
「フルオラス溶媒」は、前記ハロゲン化溶媒の1種であり、例えば、炭化水素の水素原子の全てまたは大部分がフッ素原子に置換された溶媒をいう。前記フルオラス溶媒は、例えば、炭化水素の水素原子数の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上がフッ素原子に置換された溶媒でもよい。前記フルオラス溶媒は、例えば、前記溶媒自体の反応性が低いため、副反応を、より抑制または防止できる。前記副反応は、例えば、前記溶媒の酸化反応、前記ハロゲン酸化物ラジカルによる前記溶媒の水素引き抜き反応またはハロゲン化反応(例えば、塩素化反応)、および、後述するような、前記第1ポリマー由来のラジカルと前記溶媒との反応(例えば、前記第1ポリマーの側鎖または末端の炭化水素基がエチル基の場合、エチルラジカルと前記溶媒との反応)等があげられる。前記フルオラス溶媒は、水と混和しにくいため、例えば、前記二相反応系の形成に適している。
前記フルオラス溶媒は、例えば、下記化学式(F1)〜(F6)で表される溶媒等があげられ、下記化学式(F1)におけるn=4のCF3(CF2)4CF3等が好ましい。
前記有機溶媒の沸点は、特に限定されない。前記有機溶媒は、例えば、前記表面処理工程の温度条件によって、適宜選択できる。前記表面処理工程において、反応温度を相対的に高温に設定する場合、前記有機溶媒は、例えば、相対的に高い沸点の溶媒を選択してもよい。本発明において、前記表面処理工程は、例えば、後述するように、加熱が必須ではなく、例えば、常温常圧で行える。このため、前記有機溶媒は、例えば、取扱い易さの観点から、沸点が相対的に高くない溶媒が使用できる。
前記有機相は、例えば、前記ポリマー層、前記ハロゲン酸化物ラジカルおよび前記有機溶媒のみを含んでもよいし、さらに、他の成分を含んでもよい。前記他の成分は、特に限定されず、例えば、ブレーンステッド酸、ルイス酸、および酸素(O2)等があげられる。前記有機相において、前記他の成分は、例えば、前記有機溶媒に溶解した状態でもよいし、溶解していない状態でもよい。後者の場合、前記他の成分は、例えば、前記有機溶媒に、分散された状態でもよいし、沈殿した状態でもよい。
前記水相は、例えば、水性溶媒の相である。前記水性溶媒は、例えば、前記有機相で使用する溶媒と分離する溶媒である。前記水性溶媒は、例えば、H2O、D2O等の水があげられる。
前記水相は、例えば、ルイス酸、ブレーンステッド酸、ラジカル発生源等の任意の成分を含んでもよい。前記水相において、これらの任意の成分は、例えば、前記水性溶媒に溶解した状態でもよいし、溶解していない状態でもよい。後者の場合、前記任意の成分は、例えば、前記水性溶媒に、分散された状態でもよいし、沈殿した状態でもよい。
(B4)表面処理工程
前記表面処理工程は、前述のとおり、光照射下、ポリマー層の表面をハロゲン酸化物ラジカルと反応させて、表面が改質された改質ポリマー層を得る工程である。本発明の表面処理工程によれば、光照射下、前記ポリマー層の表面を前記ハロゲン酸化物ラジカルと反応させることで、前記ポリマー層の表面が改質された改質ポリマー層が得られる。本発明によれば、例えば、前述のような、前記本発明のポリマー体における第1ポリマー層を得ることができる。前記ポリマー層の改質の程度(例えば、酸化の程度)は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルの量、光照射の時間の長さ等により調整できる。また、前記ポリマー層の改質の程度を調整することで、例えば、過剰な改質による前記ポリマー層における第1ポリマーの分解を抑制でき、前記ポリマー層における第1ポリマーが本来有する特性を維持できる。
前記表面処理工程は、前述のとおり、光照射下、ポリマー層の表面をハロゲン酸化物ラジカルと反応させて、表面が改質された改質ポリマー層を得る工程である。本発明の表面処理工程によれば、光照射下、前記ポリマー層の表面を前記ハロゲン酸化物ラジカルと反応させることで、前記ポリマー層の表面が改質された改質ポリマー層が得られる。本発明によれば、例えば、前述のような、前記本発明のポリマー体における第1ポリマー層を得ることができる。前記ポリマー層の改質の程度(例えば、酸化の程度)は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルの量、光照射の時間の長さ等により調整できる。また、前記ポリマー層の改質の程度を調整することで、例えば、過剰な改質による前記ポリマー層における第1ポリマーの分解を抑制でき、前記ポリマー層における第1ポリマーが本来有する特性を維持できる。
前記表面処理工程は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルの存在下で光照射することにより、前記ハロゲン酸化物ラジカルから、前記ハロゲンのラジカル(例えば、塩素原子ラジカルCl・)および酸素分子O2を発生させ、前記ポリマー層に対する改質反応(例えば、酸化反応)を行い、前記ポリマー層を改質できる。
前記表面処理工程により、前記第1ポリマー層のポリマーは、例えば、側鎖が変化しても、主鎖(直鎖)が変化してもよい。主鎖の変化は、例えば、主鎖の末端の変化でも、主鎖の内部の変化でもよい。前記変化(改変ともいう)は、例えば、酸化、ハロゲン化等があげられる。例えば、前記主鎖は、炭素原子および/またはヘテロ原子の連鎖であり、前記側鎖は、主鎖から枝分かれした鎖(分岐鎖)であり、具体的には、主鎖を構成する炭素原子またはヘテロ原子に連結した、前記主鎖から枝分かれした鎖である。
具体例として、前記ポリマー層の第1ポリマーが側鎖としてメチル基を有する場合、メチル基(-CH3)は、例えば、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)、ホルミル基(−CHO)、およびカルボキシル基(−COOH)の少なくともいずれかに酸化される。これは、以下のメカニズムが推測される。すなわち、光照射によって、前記ハロゲン酸化物ラジカル(例えば、二酸化塩素ラジカル)から、前記ハロゲンのラジカル(例えば、塩素ラジカル(Cl・))と、前記酸素の分子とが発生する。そして、前記第1ポリマーのメチル基(−CH3)は、前記ハロゲンのラジカル(例えば、塩素ラジカル(Cl・))が水素引き抜き剤として働き、カルボラジカル(−CH2 ・)となり、つぎに、前記酸素の分子(例えば、O2)が酸化剤として働き、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)となる。また、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)は、さらなる酸化で、ホルミル基(−CHO)、またはカルボキシル基(−COOH)になる。
前記第1ポリマーが側鎖としてエチル基を有する場合、エチル基(-CH2CH3)は、例えば、ヒドロキシエチル基(−CH2CH2OH)、アセトアルデヒド基(−CH2CHO)、カルボキシメチル基(−CH2COOH)等に酸化される。
具体例として、前記第1ポリマーが側鎖にメチル基を有するポリプロピレン(PP)の場合、例えば、下記式のような酸化が可能である。
また、前記ポリマーがポリエチレン(PE)の場合、例えば、下記式のような酸化が可能である。具体的には、例えば、水素原子が結合している主鎖炭素原子が、ヒドロキシメチレン基(−CHOH−)、カルボニル基(−CO−)等に酸化される。また、前記ポリマーがポリプロピレン(PP)の場合も、前述の酸化に加え、またはそれに代えて、下記式のような酸化が起こってもよい。
前記表面処理工程において、光照射の条件は、特に制限されない。照射光の波長は、特に限定されず、下限は、例えば、200nm以上であり、上限は、例えば、800nm以下であり、光照射時間は、特に限定されず、下限は、例えば、1秒以上であり、上限は、例えば、1000時間であり、反応温度は、特に限定されず、下限は、例えば、−20℃以上であり、上限は、例えば、100℃以下、40℃以下であり、範囲は、例えば、0〜100℃、0〜40℃である。反応時の雰囲気圧は、特に限定されず、下限は、例えば、0.1MPa以上であり、上限は、例えば、100MPa以下、10MPa以下、0.5MPa以下、であり、範囲は、例えば、0.1〜100MPa、0.1〜10MPa、0.1〜0.5MPaである。前記表面処理工程の反応条件は、例えば、温度0〜100℃または0〜40℃、圧力0.1〜0.5MPaが例示できる。本発明において、前記表面処理工程は、例えば、加熱、加圧、減圧等を行うことなく、常温(室温)および常圧(大気圧)下で行うことができ、また、他の工程も同様である。「室温」とは、特に限定されず、例えば、5〜35℃である。このため、前記ポリマー層の第1ポリマーが、例えば、耐熱性が低いポリマーを含んでいても、本発明を適用可能である。本発明によれば、例えば、不活性ガス置換等を行うことなく、大気中で、前記表面処理工程またはそれを含めた全ての工程を行なうこともできる。
前記光照射の光源は、特に限定されず、例えば、太陽光等の自然光に含まれる可視光が利用できる。自然光を利用すれば、例えば、励起を簡便に行うことができる。前記光源は、例えば、前記自然光に代えて、または前記自然光に加え、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、水銀ランプ、LEDランプ等の光源を使用してもよい。前記光照射は、例えば、さらに、必要波長以外の波長をカットするフィルターを適宜用いてもよい。
前記表面処理工程は、例えば、前記ポリマー層に対して、任意の領域にのみに光照射を行ってもよい。前述のように、前記表面処理工程によれば、例えば、光照射下、前記ポリマー層の露出面にハロゲン酸化物が接触することで、前記露出面について、改質を行うことができる。このため、例えば、前記ポリマー層の露出表面について、任意の領域のみに光照射を行うことで、例えば、前記任意の領域のみを改質できる。選択的な光照射の制御方法は、特に制限されず、例えば、任意の領域のみに光照射してもよいし、光照射しない領域のみマスキングして、全体に光照射してもよい。
前記表面処理工程は、前述のように、前記液体反応系で行っても、前記気体反応系で行ってもよく、前記第1ポリマー層の第1ポリマーが、液体媒体に溶解し易い場合、例えば、前記気体反応系が好ましい。前記反応系が前記液体反応系の場合、前記表面処理工程において、例えば、少なくとも前記有機相に光照射する。前記一相反応系の場合、例えば、前記有機相に光照射することで、前記表面処理工程を実施できる。前記二相反応系の場合、例えば、前記有機相および前記水相のうち、前記有機相のみに光照射してもよいし、前記有機相と前記水相の両方に光照射してもよい。前記液体反応系の場合、例えば、前記液体反応系を空気に接触させながら、前記液体反応系に光照射してもよく、前記二相反応系の場合、前記水相に酸素が溶解した状態で光照射してもよい。
前記表面処理工程において、前記第1ポリマー層は、例えば、前記反応系に含まれる前記ハロゲン酸化物ラジカルに接触する露出面を有していることが好ましい。前記第1ポリマー層における露出面は、例えば、前記第1ポリマー層の外部に露出した表面でも、チューブや多孔体等のように、内部において露出した表面でもよい。前記表面処理工程は、例えば、表面改質工程ともいえる。
前記表面処理工程によれば、例えば、有毒な重金属触媒等を用いずに、前記ポリマー層を改質でき、また、前述のように、例えば、極めて温和な条件下で反応が行える。このため、前記表面処理工程によれば、例えば、環境への負荷がきわめて小さい方法で、前記ポリマー層の改質を、効率よく行える。
(B5)層形成工程
前記層形成工程は、前述のとおり、前記改質ポリマー層の前記表面に、ポリマー組成物を塗布して、塗布層を形成する工程であり、前記ポリマー組成物は、前記ポリマー組成物は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方(前記第2ポリマー)を含む。前記層形成工程において、前記改質ポリマー層の改質された表面に、前記ポリマー組成物を塗布することにより、例えば、前記本発明のポリマー体における前記第2ポリマー層となる塗布層を形成することができ、結果として、前記本発明のポリマー体を得ることができる。
前記層形成工程は、前述のとおり、前記改質ポリマー層の前記表面に、ポリマー組成物を塗布して、塗布層を形成する工程であり、前記ポリマー組成物は、前記ポリマー組成物は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方(前記第2ポリマー)を含む。前記層形成工程において、前記改質ポリマー層の改質された表面に、前記ポリマー組成物を塗布することにより、例えば、前記本発明のポリマー体における前記第2ポリマー層となる塗布層を形成することができ、結果として、前記本発明のポリマー体を得ることができる。
本発明によれば、前記表面処理工程により、表面が改質された改質ポリマーが得られるため、例えば、前記改質ポリマーに対して、前記第2ポリマーの塗布層が接着しやすくなる。より具体的には、例えば、前記第2ポリマーは、前述のように、前記水溶性高分子および前記水分散性高分子であるため、親水性である。このため、前記表面処理工程により、前記改質ポリマーの表面は、酸化等によって親水性に改質されることで、前記第2ポリマーの塗布膜に接着しやすくなる。
前記水溶性高分子および前記水分散性高分子は、例えば、前記本発明のポリマー体における前記第2ポリマーの例示が援用できる。前記ポリマー組成物は、例えば、前記第2ポリマーとして、前記水溶性高分子のみを含んでもよいし、前記水分散性高分子のみを含んでもよいし、両方を含んでもよい。前記ポリマー組成物が前記水溶性高分子を含む場合、前記水溶性高分子は、例えば、一種類でもよいし二種類以上でもよく、また、前記ポリマー組成物が前記水分散高分子を含む場合、前記水分散高分子は、例えば、一種類でもよいし、二種類以上でもよい。
前記ポリマー組成物の調製において、使用する前記水溶性高分子は、例えば、水性溶媒に溶解した状態でもよいし、使用する前記水分散性高分子は、例えば、水性溶媒に分散した状態、すなわちエマルションでもよい。前記水性溶媒は、例えば、前述のように、例えば、H2O、D2O等の水があげられる。
前記ポリマー組成物は、例えば、前記第2ポリマーそのものでもよいし、さらに溶媒を含んでもよい。前記溶媒は、例えば、前記水性溶媒、有機溶媒であり、好ましくは前記水性溶媒を含み、さらに有機溶媒を含んでもよい。前記有機溶媒は、特に制限されず、例えば、前記第2ポリマーの種類に応じて適宜決定できる。前記ポリマー組成物が前記水溶性高分子を含む場合、例えば、前記水溶性高分子は前記水性溶媒に溶解した状態でもよく、前記ポリマー組成物が前記水分散高分子を含む場合、例えば、前記水分散高分子は前記水性溶媒に分散した状態(エマルション)でもよい。
前記ポリマー組成物において、前記第2ポリマーの濃度は、特に制限されず、前記ポリマー組成物における前記第2ポリマーの固形分(%)は、例えば、その下限が、1%以上、3%以上、5%以上、10%以上であり、その上限が、80%以下、60%以下、50%以下である。前記ポリマー組成物における前記第2ポリマーの質量%は、例えば、その下限が、1%以上、3%以上であり、その上限が、60%以下、50%以下である。
前記層形成工程において、前記ポリマー組成物は、前記改質ポリマー層の改質された前記表面に塗布する。前記改質ポリマー層に対して前記ポリマー組成物を塗布する領域は、特に制限されず、例えば、前記改質された全領域でもよいし、前記改質された領域のうち部分領域のみであってもよい。
前記層形成工程において、前記改質ポリマー層上の塗布層は、例えば、さらに乾燥させてもよい。乾燥条件は、特に制限されず、前記第2ポリマーの種類、本発明のポリマー体の用途等に応じて、適宜決定できる。前記乾燥条件は、例えば、室温での乾燥でもよいし、加熱乾燥でもよい。
前記ポリマー組成物は、さらに、その他の成分を含んでもよく、前記その他の成分としては、例えば、本発明のポリマー体における前記塗布層の用途に応じて、適宜決定できる。
前記ポリマー組成物は、例えば、塗装用の塗料、粘着剤、接着剤、インク剤、コーティング剤、繊維処理剤、紙加工剤、架橋剤等として使用できる。前記塗料は、例えば、自動車用、建築用等があげられる。前記ポリマー組成物は、例えば、その用途に応じて、適宜、他の成分を含んでもよい。前記他の成分は、特に制限されず、例えば、前記本発明のポリマー体で例示した、顔料、光輝剤、分散剤、消泡剤、成膜助剤、無機塩、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、香料、色素等があげられる。
(B6) ハロゲン酸化物ラジカルの生成工程
本発明は、例えば、さらに、前記ハロゲン酸化物ラジカルを生成させる生成工程を含んでもよい。前記生成工程は、例えば、前記表面処理工程の前に行ってもよいし、前記表面処理工程と同時に行ってもよい。前記ハロゲン酸化物ラジカルの生成方法は、特に制限されない。
本発明は、例えば、さらに、前記ハロゲン酸化物ラジカルを生成させる生成工程を含んでもよい。前記生成工程は、例えば、前記表面処理工程の前に行ってもよいし、前記表面処理工程と同時に行ってもよい。前記ハロゲン酸化物ラジカルの生成方法は、特に制限されない。
前記ハロゲン酸化物ラジカル生成工程は、例えば、ラジカル生成用反応系を使用して、前記ハロゲン酸化物ラジカルを発生させてもよい。前記ラジカル生成用反応系は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源を含む水相であり、前記生成工程において、前記発生源から前記ハロゲン酸化物ラジカルを生成させる。前記水相は、例えば、水性溶媒の相であり、前記水性溶媒は、前述と同様である。
前記ラジカル生成用反応系で発生させた前記ハロゲン酸化物ラジカルは、前述のように、例えば、前記表面処理工程の反応系(前記気体反応系または前記液体反応系)に導入してもよいし、前記ラジカル生成用反応系を、前記ハロゲン酸化物ラジカルを含む前記表面処理工程の前記液体反応系として、そのまま前記表面処理工程に使用してもよい。
前記ハロゲン酸化物ラジカルが疎水性の場合、例えば、前記ラジカル生成用反応系を、前記有機相と前記水相とを含む二相反応系とすることで、前記ハロゲン酸化物ラジカルを前記有機相に移行できる。この場合、例えば、前記二相反応系は、そのまま前記前処理工程の液体反応系として使用できるため、前記生成工程と前記表面処理工程とを連続的に行うことができ、より良い反応効率が得られる。また、前記ラジカル生成用反応系が前記二相反応系の場合、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルを前記水相で発生させ、前記有機相に溶解(抽出)させた後、前記水相を除去し、前記有機相を、前記表面処理工程の一相反応系として使用してもよい。
前記ハロゲン酸化物ラジカルが疎水性の場合、例えば、前記水相で発生した前記ハロゲン酸化物ラジカルは、前記気相に移行できることから、前記気相を、例えば、前記前処理工程の液体反応系として使用できる。
前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源(ラジカル生成源)は、特に制限されず、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルの種類によって、適宜選択できる。前記発生源は、例えば、1種類でも、複数種類を併用してもよい。
前記発生源は、例えば、酸素とハロゲンとを含む化合物であり、具体例として、例えば、亜ハロゲン酸(HXO2)またはその塩があげられる。前記亜ハロゲン酸の塩は、特に限定されず、例えば、金属塩があげられ、前記金属塩は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、希土類塩等があげられる。前記発生源は、例えば、酸素と、ハロゲンと、1族元素(例えば、H、Li、Na、K、Rb、およびCsからなる群から選択された少なくとも一つ)とを含む化合物でもよく、例えば、前記亜ハロゲン酸またはそのアルカリ金属塩である。前記ハロゲン酸化物ラジカルが前記二酸化塩素ラジカルの場合、その発生源は、特に限定されず、例えば、亜塩素酸(HClO2)またはその塩であり、具体的には、例えば、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)、亜塩素酸リチウム(LiClO2)、亜塩素酸カリウム(KClO2)、亜塩素酸マグネシウム(Mg(ClO2)2)、亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO2)2)等である。中でも、コスト、取扱い易さ等の観点から、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)が好ましい。他のハロゲン酸化物ラジカルの発生源についても、同様の方法が採用できる。前記他の発生源は、例えば、亜臭素酸ナトリウム等の臭素酸塩類、亜要素酸ナトリウム等の亜ヨウ素酸塩類等があげられる。
前記ラジカル生成用反応系の水相において、前記発生源の濃度は、特に限定されず、前記ハロゲン酸化物イオン濃度に換算した場合、例えば、下限が0.0001mol/L以上であり、上限が、1mol/L以下であり、また、前記ハロゲン酸化物イオンのモル数に換算した場合、例えば、下限が、前処理対象のポリマーのモル数の1/100000倍以上であり、上限が、1000倍以下である。前記発生源が亜ハロゲン酸または亜ハロゲン酸塩(例えば、亜塩素酸または亜塩素酸塩)の場合、その濃度は、亜ハロゲン酸イオン(例えば、亜塩素酸イオン(ClO2 −))の濃度に換算した場合、例えば、下限が0.0001mol/L以上であり、上限が、1mol/L以下であり、亜ハロゲン酸イオン(例えば、亜塩素酸イオン(ClO2 −))のモル数に換算した場合、例えば、下限が、前処理対象のポリマーのモル数の1/100000倍以上であり、上限が、1000倍以下である。他の発生源についても、例えば、前記濃度が援用できる。
前記水相は、例えば、さらに、ルイス酸およびブレーンステッド酸の少なくとも一方を含み、これを前記ハロゲン酸化物イオンに作用させて前記ハロゲン酸化物ラジカルを生成させてもよい。前記ルイス酸およびブレーンステッド酸は、例えば、前記1族元素を含む。前記ハロゲン酸化物イオンは、例えば、亜塩素酸イオン(ClO2 −)である。前記水相は、例えば、前記ルイス酸および前記ブレーンステッド酸の一方のみを含んでも、両方を含んでも、1つの物質が、前記ルイス酸および前記ブレーンステッド酸の両方を兼ねてもよい。前記ルイス酸または前記ブレーンステッド酸は、それぞれ1種類のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。本発明において、「ルイス酸」は、例えば、前記発生源に対してルイス酸として働く物質をいう。
前記水相において、前記ルイス酸および前記ブレーンステッド酸の少なくとも一方の濃度は、特に限定されず、例えば、前記前処理対象のポリマーの種類等に応じて、適宜設定できる。前記濃度は、例えば、下限が0.0001mol/L以上であり、上限が1mol/L以下である。
前記ブレーンステッド酸は、特に限定されず、例えば、無機酸でも有機酸でもよく、具体例として、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸等があげられる。前記ブレーンステッド酸の酸解離定数pKaは、例えば、10以下であり、その下限値は、特に限定されず、例えば、−10以上である。
前記水相は、例えば、前記ハロゲン酸化物イオンと前記ブレーンステッド酸とを含み、具体的には、例えば、前記発生源の化合物とブレーンステッド酸(例えば、塩酸)とが水性溶媒に溶解した水相である。前記ハロゲン酸化物ラジカルが二酸化塩素ラジカルの場合、前記水相は、例えば、亜塩素酸イオン(ClO2 −)とブレーンステッド酸とを含み、具体的には、例えば、前記亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)と前記ブレーンステッド酸(例えば塩酸)とが水性溶媒に溶解した水相である。
前記水相において、例えば、前記ルイス酸、前記ブレーンステッド酸、前記発生源等は、前記水性溶媒に溶解した状態でも、非溶解の状態でもよい。後者の場合、これらは、例えば、水性溶媒に分散した状態でも、沈殿した状態でもよい。
前記生成工程は、例えば、前記水性溶媒に前記発生源を含有させることによって、前記ハロゲン酸化物イオン(例えば、亜塩素酸イオン)から前記ハロゲン酸化物ラジカル(例えば、二酸化塩素ラジカル)を自然発生できる。前記水相は、例えば、静置させることが好ましい。前記水相は、例えば、さらに、前記ルイス酸および前記ブレーンステッド酸の少なくとも一方の共存によって、前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生をさらに促進できる。前記生成工程は、例えば、前記水相に光照射してもよいし、光照射しなくてもよく、いずれでも前記ハロゲン酸化物ラジカルを発生できる。
前記水相において、前記ハロゲン酸化物イオンから前記ハロゲン酸化物ラジカルが発生するメカニズムは、例えば、以下のように推測される。ただし、この説明は例示であって、本発明を何ら限定しない。
図1に、前記二相反応系を用いた、前記生成工程および前記表面処理工程の一例を模式的に示す。図1は、前記ハロゲン酸化物ラジカルとして前記二酸化塩素ラジカル、前記第1ポリマー層としてポリマー成形体を、具体例として示す。前記二相反応系は、反応容器中において、下層の有機相1と上層の水相2とが分離して、界面で接触している。図1は、断面図であるが、有機相1および水相2ハッチは省略する。まず、水相2中の亜塩素酸イオン(ClO2 −)が酸と反応して、二酸化塩素ラジカル(ClO2 ・)が発生する。二酸化塩素ラジカル(ClO2 ・)は、水に難溶であるため、有機相1に溶解する。つぎに、二酸化塩素ラジカル(ClO2 ・)を含む有機相1に光照射し、光エネルギーを与えることで、有機相1中の二酸化塩素ラジカル(ClO2 ・)が分解して、塩素ラジカル(Cl・)および酸素分子(O2)が発生する。これにより、有機相1中のポリマー成形体(第1ポリマー層)の表面が酸化等により改質される。
前記二相反応系は、例えば、図1には制限されず、例えば、有機相1が水相2より密度(比重)が低い場合、有機相1が上層になる。前記第1ポリマー層が前記ポリマー成形体の場合、例えば、有機相1中に前記ポリマー成形体が浸漬するように、前記反応容器中で固定化してもよい。前記ポリマー成形体を固定する固定部は、例えば、前記反応容器中に設けてもよいし、前記反応容器の外部に設けてもよい。後者の場合、例えば、外部から前記ポリマー体を吊るし、有機相1中に浸漬させる形態等があげられる。
(B7)官能基を導入する工程
本発明は、例えば、前記前処理工程後、前記層形成工程の前、さらに、前記改質ポリマー層の改質された領域に、官能基を導入する工程を含んでもよい。本発明によれば、さらに、官能基化することによって、前記改質ポリマー層の物性を変えることができる。
本発明は、例えば、前記前処理工程後、前記層形成工程の前、さらに、前記改質ポリマー層の改質された領域に、官能基を導入する工程を含んでもよい。本発明によれば、さらに、官能基化することによって、前記改質ポリマー層の物性を変えることができる。
(C)本発明の用途
本発明のポリマー体および本発明の製造方法は、特に制限されず、様々なポリマー体に適用できる。本発明のポリマー体は、例えば、光学材料(部材)、電気・電子部品材料、電池用材料、機械部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、生体・医療用材料、エネルギー材料等の各種用途に有用である。
本発明のポリマー体および本発明の製造方法は、特に制限されず、様々なポリマー体に適用できる。本発明のポリマー体は、例えば、光学材料(部材)、電気・電子部品材料、電池用材料、機械部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、生体・医療用材料、エネルギー材料等の各種用途に有用である。
本発明は、例えば、電池用セパレータに適用できる。具体的に、例えば、前記改質ポリマー層である不織布に、前記第2ポリマーの塗布層を形成することで、前記塗布層を介して、両親媒性物質を、より優れた接着性で前記不織布に接着できる。
本発明は、例えば、インクジェット記録に適用できる。具体的に、例えば、前記改質ポリマーである被記録面に、前記第2ポリマーの塗布層を形成することで、前記塗布層を介して、前記インクを、より優れた接着性で前記被記録面に接着できる。
本発明は、例えば、微生物除去フィルターに適用できる。前記微生物は、例えば、細菌およびウイルス等である。具体的に、例えば、前記改質ポリマー層であるフィルターに、前記第2ポリマーの塗布層を形成することで、前記塗布層を介して、除去用のポリアニオン等の化合物または抗体等を、より優れた接着性で前記フィルターに接着できる。
本発明は、例えば、セメント強化用ポリマー繊維に適用できる。具体的に、例えば、前記改質ポリマー層であるポリマー繊維に、前記第2ポリマーの塗布層を形成することで、前記塗布層を介して、セメントとの親和性を向上するスルホン酸化合物、ポリオール類およびポリカルボン酸化合物等を、より優れた接着性で前記ポリマー繊維に接着できる。
本発明は、例えば、水処理用部材に適用できる。具体的に、例えば、前記改質ポリマー層に、前記第2ポリマーの塗布層を形成することで、前記塗布層を介して、凝集剤を、より優れた接着性で前記改質ポリマー層に接着できる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例には限定されない。
[実施例1]
表面改質した第1ポリマー層に第2ポリマー層を形成し、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との接着性を確認した。
表面改質した第1ポリマー層に第2ポリマー層を形成し、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との接着性を確認した。
(1)改質PPフィルム、改質PETフィルムの調製
前記前処理工程(改質処理)を施す処理対象のポリマー層として、ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を準備した。前記PPフィルムは、コロナ処理された二軸延伸PPフィルム(商品名FOR−AQ、フタムラ化学製、厚み25μm、内面コロナ処理あり)と、コロナ処理されてない二軸延伸PPフィルム(商品名FOP、フタムラ化学製、厚み50μm、内面コロナ処理なし)とを使用した。さらに、コロナ処理されたPETフィルム(商品名FE−2001、フタムラ化学製、厚み12μm、片面コロナ処理あり)、コロナ処理されていないPETフィルム(商品名FE−2000、フタムラ化学製、厚み12μm、コロナ処理なし)を使用した。前記PPフィルム、PETフィルムの大きさは、長さ50mm×幅50mmとした。
前記前処理工程(改質処理)を施す処理対象のポリマー層として、ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を準備した。前記PPフィルムは、コロナ処理された二軸延伸PPフィルム(商品名FOR−AQ、フタムラ化学製、厚み25μm、内面コロナ処理あり)と、コロナ処理されてない二軸延伸PPフィルム(商品名FOP、フタムラ化学製、厚み50μm、内面コロナ処理なし)とを使用した。さらに、コロナ処理されたPETフィルム(商品名FE−2001、フタムラ化学製、厚み12μm、片面コロナ処理あり)、コロナ処理されていないPETフィルム(商品名FE−2000、フタムラ化学製、厚み12μm、コロナ処理なし)を使用した。前記PPフィルム、PETフィルムの大きさは、長さ50mm×幅50mmとした。
そして、前記PPフィルムおよびPETフィルムの一方の表面に、以下のようにして、前記改質処理工程を施し、前記表面を改質した。
前記フィルムの一方の表面に、前記改質処理を防止するための防止フィルムを貼付した。前記PPフィルムに対する前記防止フィルムは、ポリエステル系保護フィルムST75(パナック社製)を使用し、前記PETフィルムに対する防止フィルムは、ポリエステル系保護フィルムHP25(パナック社製)を使用した。なお、実施例においては、防止フィルムを貼付していない側の表面、つまり、露出部表面から最も離れている部分が、本発明における非露出部となる(以下、同様)。反応容器として、小シャーレ(直径30mm×深さ10mm)を用い、その中に、塩酸酸性NaClO2水溶液を入れた。前記塩酸酸性NaClO2水溶液は、H2O(7mL)、NaClO2(200mg)、および35%HClaq.(100μL)を混合して調製した。大シャーレ(直径700mm×深さ180mm)の中に、蓋をしていない前記小シャーレと、前記PPフィルムとを入れた。前記大シャーレに蓋をして、ヒータにより、後述する所定温度で5分間予備処理した。その後、前記大シャーレの蓋の上方から、出力60Wで5分間光照射した。光源は、波長365nmのLEDランプ(パイフォトニクス社製)を使用し、前記光源と前記大シャーレの蓋との距離は20cmとした。この光照射により、前記小シャーレ内の前記NaClO2水溶液から二酸化塩素ラジカルを発生させ、二酸化塩素ラジカルを前記大シャーレ内の気相に移行させ、前記大シャーレ内の気相中で、前記PPフィルムおよび前記PETフィルムの表面を二酸化塩素ラジカルと反応させて、表面処理した。前記反応は、大気中、加圧および減圧を行なわず、後述する所定温度条件下で行った。前記NaClO2水溶液の二酸化塩素ラジカル由来の黄色の着色が消失したことをもって、反応終了とした。反応終了後、前記防止フィルムを取り外し、前記PPフィルムおよび前記PETフィルムを精製水で洗浄し、減圧下で一晩乾燥した。乾燥後の前記PPフィルムおよび前記PETフィルムを、改質された改質PPフィルムおよび改質PETフィルム(第1ポリマー層)として、以下の工程に使用した。なお、前記二酸化塩素ラジカルの発生は、EPR(電子スピン共鳴)により確認済みである。
前記予備処理の予備温度および前記表面処理の反応温度は、同じ温度とし、25℃、90℃の2つの条件とした。以下、25℃での改質処理を弱条件の改質処理(+)、90℃での改質処理を強条件の改質処理(++強)ともいう。
(2)ポリマー組成物の調製
水溶性高分子であるポリエチレンイミン(製品名エポミンSP−200、日本触媒社製、分子量10000、樹脂固形分98%以上)2部と、イオン交換水8部とを混合し、前記水溶性高分子が溶解されたポリマー組成物Aを調製した。前記ポリマー組成物において、ポリエチレンイミン濃度は、20重量%とした。
水溶性高分子であるポリエチレンイミン(製品名エポミンSP−200、日本触媒社製、分子量10000、樹脂固形分98%以上)2部と、イオン交換水8部とを混合し、前記水溶性高分子が溶解されたポリマー組成物Aを調製した。前記ポリマー組成物において、ポリエチレンイミン濃度は、20重量%とした。
水分散性高分子である水系アクリル系樹脂エマルション(商品名アクリセットEX−41、日本触媒社製、樹脂固形分43%、溶媒:水、ガラス転移点(Tg)20℃)34.9部に、チタニア粒子分散液(商品名ビグダイホワイトLN−643−A、レジノカラー社製、固形分65%、溶媒:水)46.2部、サーフィノール(商品名104PG50、エボニック社製)0.4部、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル10部、およびイオン交換水8.6部を添加し、攪拌して、前記水分散性高分子を含むポリマー組成物Bを調製した。前記ポリマー組成物Bは、インク組成物である。
(3)ポリマー体の形成
前記改質PPフィルムおよび前記改質PETフィルムの片面の中央部に、2cmの幅で、ドクターブレード(井元製作所製)を用いて、塗布厚5μmとなるように、前記ポリマー組成物Bを塗布し、前記改質PPフィルムを対流式乾燥機(アズワン社製、型番:OFW−450B−R)に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質PPフィルムの改質表面にインク層が積層された、二層のポリマー体が得られた。なお、比較例として、前記改質PPフィルムに代えて、改質処理を施していない前記PPフィルムを使用した以外は、同様にして、前記PPフィルム上にインク層を積層し、二層のポリマー体を得た。
前記改質PPフィルムおよび前記改質PETフィルムの片面の中央部に、2cmの幅で、ドクターブレード(井元製作所製)を用いて、塗布厚5μmとなるように、前記ポリマー組成物Bを塗布し、前記改質PPフィルムを対流式乾燥機(アズワン社製、型番:OFW−450B−R)に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質PPフィルムの改質表面にインク層が積層された、二層のポリマー体が得られた。なお、比較例として、前記改質PPフィルムに代えて、改質処理を施していない前記PPフィルムを使用した以外は、同様にして、前記PPフィルム上にインク層を積層し、二層のポリマー体を得た。
前記改質PPフィルムの片面の中央部に、2cmの幅で、前記ドクターブレードを用いて、塗布厚5μmとなるように、前記ポリマー組成物Aを塗布し、5分放置した。そして、前記改質PPフィルムを、洗浄液が中性(pH6〜8)になるまで洗浄した後、前記改質PPフィルムを対流式乾燥機に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質PPフィルム上に第2ポリマー層が積層された。続いて、前記第2ポリマー層の上に、ドクターブレード(井元製作所製)を用いて、塗布厚5μmとなるように、前記ポリマー組成物Bを前記と同様に塗布し、前記改質PPフィルムを対流式乾燥機に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質PPフィルムの上に、第2ポリマー層を介してインク層が積層された、三層のポリマー体が得られた。
(4)評価
得られた各ポリマー体について、ブロッキング性、密着性および外観を、それぞれ評価した。
得られた各ポリマー体について、ブロッキング性、密着性および外観を、それぞれ評価した。
(ブロッキング性)
前記各ポリマー体は、それぞれ、同じものを2つ準備し、以下の方法でブロッキング性を確認した。すなわち、前記一方のポリマー体を、前記インク層が形成された表面が上になるように、平らな台の上に置き、前記インク層が形成された表面側に、さらに、前記他方のポリマー体を重ねた。具体的には、前記台上に配置した前記一方のポリマー体の前記インク層が形成された表面(改質された表面)と、前記他方のポリマー体の改質していない表面とが、対向するように重ねた。そして、前記重ねたフィルムの上側の表面に、手(指の腹)を置き、10秒間、1.0−1.3kg/cm2の力で下方向に押えた。そして、前記重ねたフィルムを、前記ポリマー体から離し、前記フィルムにおいて、前記インク層と接した表面に、インクの張り付きの有無を確認した。
前記各ポリマー体は、それぞれ、同じものを2つ準備し、以下の方法でブロッキング性を確認した。すなわち、前記一方のポリマー体を、前記インク層が形成された表面が上になるように、平らな台の上に置き、前記インク層が形成された表面側に、さらに、前記他方のポリマー体を重ねた。具体的には、前記台上に配置した前記一方のポリマー体の前記インク層が形成された表面(改質された表面)と、前記他方のポリマー体の改質していない表面とが、対向するように重ねた。そして、前記重ねたフィルムの上側の表面に、手(指の腹)を置き、10秒間、1.0−1.3kg/cm2の力で下方向に押えた。そして、前記重ねたフィルムを、前記ポリマー体から離し、前記フィルムにおいて、前記インク層と接した表面に、インクの張り付きの有無を確認した。
(密着性)
前記ポリマー体を、前記インク層が形成された表面が上になるように、平らな台の上に置き、前記インク層が形成された表面側に、2cm2の大きさのテープ(3M社製、スコッチ(商標)メンディングテープ810、品番810)を貼り付けた。そして、前記ポリマー体から前記テープを剥がした際、前記インク層の剥がれの程度を確認した。剥がれの程度は、前記ポリマー体に対して前記テープを貼り付けた領域の面積を基準(100%)として、前記領域におけるインク層の残存面積の割合から、下記基準に基づいて評価した。
評価1:インク層の残存面積が10%未満
評価2:インク層の残存面積が10%以上50%未満
評価3:インク層の残存面積が50%以上80%未満
評価4:インク層の残存面積が80%以上99%未満
評価5:インク層の残存面積が99%以上
前記ポリマー体を、前記インク層が形成された表面が上になるように、平らな台の上に置き、前記インク層が形成された表面側に、2cm2の大きさのテープ(3M社製、スコッチ(商標)メンディングテープ810、品番810)を貼り付けた。そして、前記ポリマー体から前記テープを剥がした際、前記インク層の剥がれの程度を確認した。剥がれの程度は、前記ポリマー体に対して前記テープを貼り付けた領域の面積を基準(100%)として、前記領域におけるインク層の残存面積の割合から、下記基準に基づいて評価した。
評価1:インク層の残存面積が10%未満
評価2:インク層の残存面積が10%以上50%未満
評価3:インク層の残存面積が50%以上80%未満
評価4:インク層の残存面積が80%以上99%未満
評価5:インク層の残存面積が99%以上
(外観)
前記ポリマー体の前記インク層が形成された表面について、色を確認した。そして、下記基準に基づいて、外観を評価した。
×:前記ポリマー組成物Bの塗布領域(前記第2ポリマー層の形成領域)において、白色に大きなムラが存在する。前記塗布領域において、透明部分が50%以上である。
〇:前記ポリマー組成物の塗布領域(前記第2ポリマー層の形成領域)は、均一な反射率の白色であり、前記塗布領域において、透明部分が50%未満である。
前記ポリマー体の前記インク層が形成された表面について、色を確認した。そして、下記基準に基づいて、外観を評価した。
×:前記ポリマー組成物Bの塗布領域(前記第2ポリマー層の形成領域)において、白色に大きなムラが存在する。前記塗布領域において、透明部分が50%以上である。
〇:前記ポリマー組成物の塗布領域(前記第2ポリマー層の形成領域)は、均一な反射率の白色であり、前記塗布領域において、透明部分が50%未満である。
評価の結果を下記表1−1および表1−2に示す。下記表1において、改質処理(+)、および(++強)は、二酸化塩素ラジカルによる改質処理を行ったこと、改質処理(−)は、前記改質処理を行っていないことを意味し、コロナ処理(+)は、コロナ処理されたPPフィルムおよびPETフィルムを意味し、コロナ処理(−)は、コロナ処理されていないPPフィルムおよびPETフィルムを意味する。
前記PPフィルムがコロナ処理されているか否かにかかわらず、改質処理を施していないPPフィルムに、第2ポリマー層であるインク層を積層した場合、前記PPフィルムと前記インク層との密着性は、著しく劣っていた。これに対して、改質処理を施したPPフィルムは、コロナ処理されているか否かにかかわらず、前記インク層と優れた密着性を示した。このことから、前記PPフィルムに改質処理を施すことによって、前記PPフィルムに対する前記インク層の接着性が極めて向上したことがわかる。前記PETフィルムについても、同様の傾向が見られた。さらに、改質処理の強度を上げると、密着性が向上していた。
なお、後述の実施例3において、実施例1−2Aおよび実施例1−2Bの改質PPフィルムの有効官能基濃度を示す。本実施例1と後述する実施例3との結果から、前記改質処理の温度条件を高く設定した実施例1−2B(実施例3B−2)は、実施例1−2A(実施例3B−1)に比べて有効官能基濃度が高く、その結果、前記実施例1−2Aよりも、前記インク層との密着性がさらに向上した。
また、前記改質処理を施したPPフィルムに対して、水溶性高分子を含む前記第2ポリマー層を形成した上で、前記インク層を積層して三層のポリマー体とした結果、実施例1−3および1−4のポリマー体の前記インク層への密着性は、それぞれ、二層のポリマー体である実施例1−1および実施例1−2Aよりも、さらに向上した。このように、本発明によれば、前記PPフィルムに改質処理を施すことで、前記インク層の接着性が著しく向上したポリマー体が得られることがわかった。
[実施例2]
前記実施例1と同様にして、コロナ処理されていない前記PPフィルムの改質を、前記改質処理(++強)の条件で行い、得られた改質PPフィルムに、前記ポリマー組成物Aを塗布し、5分放置した。そして、前記改質PPフィルムを、洗浄液が中性(pH6〜8)になるまで洗浄した後、前記改質PPフィルムを前記対流式乾燥機に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質PPフィルム(第1ポリマー層)に第2ポリマー層が積層され、二層のポリマー体が得られた。また、比較例として、前記改質PPフィルムに代えて、改質処理を施していない前記PPフィルム(未改質PPフィルム)を使用した以外は、同様にして、前記未改質PPフィルム上に前記第2ポリマー層を積層し、二層のポリマー体を得た。そして、前記二層のポリマー体について、以下に示す評価を行った。
前記実施例1と同様にして、コロナ処理されていない前記PPフィルムの改質を、前記改質処理(++強)の条件で行い、得られた改質PPフィルムに、前記ポリマー組成物Aを塗布し、5分放置した。そして、前記改質PPフィルムを、洗浄液が中性(pH6〜8)になるまで洗浄した後、前記改質PPフィルムを前記対流式乾燥機に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質PPフィルム(第1ポリマー層)に第2ポリマー層が積層され、二層のポリマー体が得られた。また、比較例として、前記改質PPフィルムに代えて、改質処理を施していない前記PPフィルム(未改質PPフィルム)を使用した以外は、同様にして、前記未改質PPフィルム上に前記第2ポリマー層を積層し、二層のポリマー体を得た。そして、前記二層のポリマー体について、以下に示す評価を行った。
(XPS測定)
前記二層のポリマー体は、前記PPフィルムと前記第2ポリマー層との界面を含む領域について、XPS測定を行った。XPS測定は、市販装置(製品名AXIS−NOVA、KmtoS社製)を使用し、測定条件は、X線源を単色化AIKa(1486.6ev)、分析領域を、300μm×700μm(設定値)とした。また、参照例として、コロナ処理されておらず、且つ、前記改質処理が施されていない前記未改質PPフィルム(商品名FOP、フタムラ化学製、厚み50μm、内面コロナ処理なし)、前記改質PPフィルムについても、XPS解析を行った。下記表2に、ワイドスペクトルの結果を示し、下記表3に、C1sスペクトルの結果を示す。
前記二層のポリマー体は、前記PPフィルムと前記第2ポリマー層との界面を含む領域について、XPS測定を行った。XPS測定は、市販装置(製品名AXIS−NOVA、KmtoS社製)を使用し、測定条件は、X線源を単色化AIKa(1486.6ev)、分析領域を、300μm×700μm(設定値)とした。また、参照例として、コロナ処理されておらず、且つ、前記改質処理が施されていない前記未改質PPフィルム(商品名FOP、フタムラ化学製、厚み50μm、内面コロナ処理なし)、前記改質PPフィルムについても、XPS解析を行った。下記表2に、ワイドスペクトルの結果を示し、下記表3に、C1sスペクトルの結果を示す。
下記表に示すように、前記未改質PPフィルム(参照例2−1)に、二酸化塩素ラジカルを用いた改質処理を施すことで、前記改質PPフィルム(参照例2−2)は、酸素と塩素とが導入された。そして、前記改質PPフィルムに前記第2ポリマー層を積層した結果、前記第2ポリマー層が密着して積層されていることを示す前記水溶性高分子に由来する窒素が確認された(実施例2−1)。一方、前記未改質PPフィルムに前記第2ポリマー層を積層したポリマー体は、前記第2ポリマーの密着性が劣るため、前記水溶性高分子に由来する窒素が、前記実施例2−1と比較して著しく低かった(比較例2−1)。これらの結果から、本発明のポリマー体は、改質された第1ポリマー層(前記改質PPフィルム)と前記第2ポリマー層との接着性が向上したことがわかる。
[実施例3]
前記改質した第1ポリマー層の改質表面について、有効官能基濃度等を確認した。
前記改質した第1ポリマー層の改質表面について、有効官能基濃度等を確認した。
前記改質処理を施す処理対象のポリマー層として、前記実施例1と同じ前記コロナ処理されたPPフィルム、前記コロナ処理されてないPPフィルム、前記コロナ処理されたPETフィルム、前記コロナ処理されていないPETフィルムを使用し、前記実施例1と同様にして、改質PPフィルムおよび改質PETフィルムを調製した。
そして、各フィルムについて、後述する評価を行った。また、比較例として、前記PPフィルムおよび前記PETフィルムについて、前記改質処理に代えて、プラズマ処理またはオゾン処理を施した。この際、前記改質処理と同様に、一方の表面には防止フィルムを貼付した。前記プラズマ処理は、前記フィルムに、大気圧プラズマ表面処理装置AP−T02(積水化学工業社製)を用いて、150V−1.5Aの条件で90秒間プラズマ照射することにより行った。また、前記オゾン処理は、前記フィルムに、UVオゾンクリーナーUV253(商品名、フィルジェン社製)を用いて、低圧水銀ランプ、波長184.9nm、3.7mW/cm2/1本×3本の条件で、30分間行った。これらのフィルムについても、同様に評価を行った。これらの結果を、後述する表4−1および表4−2に示す。なお、下記表4には、実施例1と同じポリマー体が含まれるため、実施例3における番号の下に、対応する実施例1における番号を付記した。
(接触角1)
前記フィルムの処理表面に、純水1.5μLを滴下し、接触角計(商品名Propmaster、協和界面科学社製)を用いて、滴下から30秒後の接触角を測定した。接触角は、相対的に小さい値になる程、濡れ性が相対的に高いことを意味する。
前記フィルムの処理表面に、純水1.5μLを滴下し、接触角計(商品名Propmaster、協和界面科学社製)を用いて、滴下から30秒後の接触角を測定した。接触角は、相対的に小さい値になる程、濡れ性が相対的に高いことを意味する。
(接触角2)
前記フィルムを1N水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、超音波洗浄機ASU−6M(アズワン社製、ASU−CLEANER、Highモード、設定25℃、実測20−35℃)により、15分間、超音波処理した。その後、前記フィルムを3回水洗し、エアブローで水分を蒸発させ、25℃、湿度45±5%で7日間放置した後、前記接触角1と同様にして、接触角を測定した。
前記フィルムを1N水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、超音波洗浄機ASU−6M(アズワン社製、ASU−CLEANER、Highモード、設定25℃、実測20−35℃)により、15分間、超音波処理した。その後、前記フィルムを3回水洗し、エアブローで水分を蒸発させ、25℃、湿度45±5%で7日間放置した後、前記接触角1と同様にして、接触角を測定した。
(透過率および吸光度)
トルイジンブルーO(和光純薬製、CAS:92−31−9、Mw305.83)を純水に溶解し、終濃度が2重量%となるトルイジンブルー水溶液を調製した。前記水溶液に前記フィルムを浸漬させ、超音波洗浄機ASU−6M(アズワン社製、ASU−CLEANER、Highモード、設定25℃、実測20−35℃)により、15分間、超音波処理した後、3回水洗し、前記フィルムについた水をふき取った後、前記フィルムの波長630nmの透過率および吸光度を測定した。なお、各フィルムについて、前記水溶液に浸漬させる前の各フィルムの透過率を100%とした。前記フィルムへのトルイジンブルーOの結合により、波長630nmの透過率は減少する、すなわち、吸光度は増加する
トルイジンブルーO(和光純薬製、CAS:92−31−9、Mw305.83)を純水に溶解し、終濃度が2重量%となるトルイジンブルー水溶液を調製した。前記水溶液に前記フィルムを浸漬させ、超音波洗浄機ASU−6M(アズワン社製、ASU−CLEANER、Highモード、設定25℃、実測20−35℃)により、15分間、超音波処理した後、3回水洗し、前記フィルムについた水をふき取った後、前記フィルムの波長630nmの透過率および吸光度を測定した。なお、各フィルムについて、前記水溶液に浸漬させる前の各フィルムの透過率を100%とした。前記フィルムへのトルイジンブルーOの結合により、波長630nmの透過率は減少する、すなわち、吸光度は増加する
(有効官能基濃度)
検量線作成用として、前記トルイジンブルーO(和光純薬製、CAS:92−31−9)を純水に溶解させ、複数の濃度の水溶液を調製した。そして、1cmセルを用いて、純水を基準(透過率100%)として、波長630nmの透過率を測定し、吸光度を計算し、トルイジンブルーO量との検量線を作成した。前記検量線は、“波長630nmの吸光度”と、“1cmセルにおける1cm3当たりのトルイジンブルーOのモル数=透過光1cm2におけるトルイジンブルーOのモル数”との相関関係を示す検量線とした。前記1cmセルにおける水溶液1cm3当たりのトルイジンブルーOのモル数は、透過率計の透過光1cm2におけるトルイジンブルーOのモル数を表す。このため、1cmセルにおける1cm3当たりのトルイジンブルーOの水溶液と、同じ吸光度を示す前記フィルム1cm2当たりのトルイジンブルーOのモル数は、前記水溶液のモル数と同じ値となる。前記有効官能基は、前記トルイジンブルーOに結合可能な官能基であり、具体的には、例えば、前記トルイジンブルーO等のカチオン化合物に結合可能な、水酸基、カルボキシル基等が含まれる。
検量線作成用として、前記トルイジンブルーO(和光純薬製、CAS:92−31−9)を純水に溶解させ、複数の濃度の水溶液を調製した。そして、1cmセルを用いて、純水を基準(透過率100%)として、波長630nmの透過率を測定し、吸光度を計算し、トルイジンブルーO量との検量線を作成した。前記検量線は、“波長630nmの吸光度”と、“1cmセルにおける1cm3当たりのトルイジンブルーOのモル数=透過光1cm2におけるトルイジンブルーOのモル数”との相関関係を示す検量線とした。前記1cmセルにおける水溶液1cm3当たりのトルイジンブルーOのモル数は、透過率計の透過光1cm2におけるトルイジンブルーOのモル数を表す。このため、1cmセルにおける1cm3当たりのトルイジンブルーOの水溶液と、同じ吸光度を示す前記フィルム1cm2当たりのトルイジンブルーOのモル数は、前記水溶液のモル数と同じ値となる。前記有効官能基は、前記トルイジンブルーOに結合可能な官能基であり、具体的には、例えば、前記トルイジンブルーO等のカチオン化合物に結合可能な、水酸基、カルボキシル基等が含まれる。
前記表4に示すように、前記二酸化塩素ラジカルを用いた改質処理が施された実施例3A−1(実施例1−1に対応)は、前記改質処理が施されていない比較例3A−1(比較例1−1に対応)〜3A−3に対して、吸光度が高く、透過率が低いことから、トルイジンブルーOが多く結合していることがわかる。そして、実施例3A−1は、前記比較例3A−1〜3A−3に対して、有効官能基濃度が高い濃度を示した。このことから、実施例3A−1の前記改質PPフィルムは、例えば、第2ポリマーと結合する有効官能基濃度が高いことから、前記第2ポリマーを用いて形成される前記第2ポリマー層との接着性に優れることがわかる。また、比較例3A-2および3A−3は、プラズマ処理およびUVオゾン処理を施しているが、前記実施例3A−1のような結果は得られていない。このことから、実施例3A−1では、ハロゲン酸化ラジカルを用いた改質処理によって、前述のような効果が得られていると言える。なお、他の実施例も、対応する比較例に対して同様の結果であった。前記実施例1、前記表1−1、1−2に実際の第2ポリマーとの積層例を示すが、いずれも有効官能基濃度が高い第1ポリマーが、高い密着性を示す結果となった。
一般的に、接触角1が小さい程、つまり、水への濡れ性が高いほど、密着性が良好になると考えられている。しかし、比較例3A−1(表1の比較例1−1)は、実施例3A−1(表1の実施例1−1)よりも接触角が小さいにもかかわらず、その密着性は、表1に示すように、実施例3A−1よりも著しく劣っている。他方、有効官能基濃度は、比較例3A−1がゼロであるのに対して、実施例3A−1は、3.38×10−10mol/cm2である。これらの結果から、本発明においては、接触角1ではなく、前記第1ポリマー層の接触領域における有効官能基濃度が、前記第2ポリマー層との密着性に関与していることがわかった。
水酸化ナトリウム水溶液で処理した後の接触角2は、耐湿環境下での前記第1ポリマー層の安定性を表す。前記表4において、実施例の改質フィルムは、いずれも、改質処理を施していない対応する比較例のフィルムと比較して、接触角2の変化が小さかった。このため、前記第1ポリマー層は、前記有効官能基濃度を向上させる前記改質処理によっても、前記耐湿環境下での安定性の変化は小さいと推定される。また、前記改質処理が施された実施例3A−1(表1の実施例1−1)は、前記改質処理が施されていない比較例3A−1(表1の比較例1−1)〜比較例3A−3に対して、接触角2が小さくなっており、このことから、前記有効官能基濃度の高い第1ポリマー層は、例えば、イオン化しやすい官能基を多く有すると推定される。
なお、前記改質処理が施されていない前記各フィルムの有効官能基濃度は、前記改質処理が施された対応するフィルムの非露出部の有効官能基濃度ともいえる。
[実施例4]
前記改質第1ポリマー層として、ポリマー不織布を使用し、前記第2ポリマー層の接着を確認した。
前記改質第1ポリマー層として、ポリマー不織布を使用し、前記第2ポリマー層の接着を確認した。
(1)改質処理
前記ポリマー不織布は、ポリプロピレン(PP)不織布(MOEP2020、モノタロウ社より購入)を使用した。そして、前記実施例1と同様にして、前記PP不織布について、二酸化塩素ラジカルを用いた改質処理を行った。なお、実施例においては、前記PP不織布を構成する繊維の表面が、本発明における改質処理される露出部となり、前記繊維の中心部分、つまり、前記繊維の表面から最も離れている内部が、本発明における非露出部となる。
前記ポリマー不織布は、ポリプロピレン(PP)不織布(MOEP2020、モノタロウ社より購入)を使用した。そして、前記実施例1と同様にして、前記PP不織布について、二酸化塩素ラジカルを用いた改質処理を行った。なお、実施例においては、前記PP不織布を構成する繊維の表面が、本発明における改質処理される露出部となり、前記繊維の中心部分、つまり、前記繊維の表面から最も離れている内部が、本発明における非露出部となる。
(2)滴定
つぎに、改質処理した前記PP不織布をサンプルとして、カルボン酸当量を滴定により測定した。まず、前記サンプル0.2gを純水50mLに分散し、0.1N NaOH水溶液でpH11−11.5に調整した。そして、この分散物について、電位差滴定装置COM−1700AS(平沼産業社製)を用いて、0.05N HCl水溶液により酸塩基滴定を行った。前記滴定結果において、弱酸であるカルボン酸の塩基側と酸側との変曲点の間の領域を、前記サンプルに含まれるカルボン酸当量(mol/g)とした。また、比較例として、改質処理を施す前の前記不織布についても、同様に滴定を行った。この結果を下記表5に示す。下記表5に示すように、前記改質処理によって、カルボン酸が増加していることがわかった。
つぎに、改質処理した前記PP不織布をサンプルとして、カルボン酸当量を滴定により測定した。まず、前記サンプル0.2gを純水50mLに分散し、0.1N NaOH水溶液でpH11−11.5に調整した。そして、この分散物について、電位差滴定装置COM−1700AS(平沼産業社製)を用いて、0.05N HCl水溶液により酸塩基滴定を行った。前記滴定結果において、弱酸であるカルボン酸の塩基側と酸側との変曲点の間の領域を、前記サンプルに含まれるカルボン酸当量(mol/g)とした。また、比較例として、改質処理を施す前の前記不織布についても、同様に滴定を行った。この結果を下記表5に示す。下記表5に示すように、前記改質処理によって、カルボン酸が増加していることがわかった。
(3)IR
さらに、前記サンプルについて、赤外吸光度計(商品名FT/IR−4700typeA、日本分光社製、入射角45度)を用いて表面IR測定(ATR測定)を行った。その結果、改質処理を行ったサンプルのみ、カルボン酸(1715cm−1)、水酸基(3300−3500cm−1)に由来するピークが確認できた。
さらに、前記サンプルについて、赤外吸光度計(商品名FT/IR−4700typeA、日本分光社製、入射角45度)を用いて表面IR測定(ATR測定)を行った。その結果、改質処理を行ったサンプルのみ、カルボン酸(1715cm−1)、水酸基(3300−3500cm−1)に由来するピークが確認できた。
(4)染色
つぎに、前記サンプルについて、前記実施例3と同様にトルイジンブルーOを用いて、染色処理を行い、水洗後の染色を確認した。この結果を図2に示す。図2において、(A)は、前記改質処理を施していないPP不織布の水洗後の染色結果を示す写真であり、(B)は、前記改質PP不織布の水洗後の染色結果を示す写真です。図2(A)に示すように、前記改質処理を施していないPP不織布は、繊維表面に付着した青色の着色が、水洗により薄くなり、元の基材(PP不織布)に近い白色となり、トルイジンブルーOによる染色は確認されなかった。これに対して、図2(B)に示すように、前記改質PP不織布は、繊維表面に付着した青色が、水洗によっても維持され、トルイジンブルーOによる染色が確認された。つまり、前記改質処理によって、前記改質PP不織布の官能基とトルイジンブルーOとの間で、接着性が向上していることが確認できた。
つぎに、前記サンプルについて、前記実施例3と同様にトルイジンブルーOを用いて、染色処理を行い、水洗後の染色を確認した。この結果を図2に示す。図2において、(A)は、前記改質処理を施していないPP不織布の水洗後の染色結果を示す写真であり、(B)は、前記改質PP不織布の水洗後の染色結果を示す写真です。図2(A)に示すように、前記改質処理を施していないPP不織布は、繊維表面に付着した青色の着色が、水洗により薄くなり、元の基材(PP不織布)に近い白色となり、トルイジンブルーOによる染色は確認されなかった。これに対して、図2(B)に示すように、前記改質PP不織布は、繊維表面に付着した青色が、水洗によっても維持され、トルイジンブルーOによる染色が確認された。つまり、前記改質処理によって、前記改質PP不織布の官能基とトルイジンブルーOとの間で、接着性が向上していることが確認できた。
(5)ポリマー体
前記改質PP不織布を前記ポリマー組成物Aに浸漬し、5分放置した。そして、前記改質PP不織布を、洗浄液が中性(pH6〜8)になるまで洗浄した後、前記改質PP不織布を前記対流式乾燥機に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質PP不織布(第1ポリマー層)に第2ポリマー層が積層され、二層のポリマー体が得られた。また、比較例として、前記改質PP不織布に代えて、改質処理を施していない前記PP不織布(未改質PP不織布)を使用した以外は、同様にして、前記未改質PP不織布に前記第2ポリマー層を積層し、二層のポリマー体を得た。そして、前記二層のポリマー体と、前記改質PP不織布、前記未改質PP不織布について、前記実施例2と同様にXPS測定を行った。
前記改質PP不織布を前記ポリマー組成物Aに浸漬し、5分放置した。そして、前記改質PP不織布を、洗浄液が中性(pH6〜8)になるまで洗浄した後、前記改質PP不織布を前記対流式乾燥機に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質PP不織布(第1ポリマー層)に第2ポリマー層が積層され、二層のポリマー体が得られた。また、比較例として、前記改質PP不織布に代えて、改質処理を施していない前記PP不織布(未改質PP不織布)を使用した以外は、同様にして、前記未改質PP不織布に前記第2ポリマー層を積層し、二層のポリマー体を得た。そして、前記二層のポリマー体と、前記改質PP不織布、前記未改質PP不織布について、前記実施例2と同様にXPS測定を行った。
下記表6に、ワイドスペクトルの結果を示し、下記表7に、C1sスペクトルの結果を示す。下記表に示すように、前記未改質PP不織布(参照例4−1)に、二酸化塩素ラジカルを用いた改質処理を施すことで、前記改質PP不織布には、酸素と塩素とが導入され、前記改質PP不織布に前記第2ポリマー層を積層したポリマー体には、前記第2ポリマー層が密着して積層されていることを示す前記水溶性高分子に由来する窒素が確認された(実施例4−1)。一方、前記未改質PP不織布に前記第2ポリマー層を積層したポリマー体は、前記第2ポリマーの密着性が劣るため、前記水溶性高分子に由来する窒素が、前記実施例4−1と比較して著しく低かった(比較例4−1)。これらの結果から、本発明のポリマー体は、改質された第1ポリマー層(前記改質PP不織布)と前記第2ポリマー層との接着性が向上したことがわかる。
[実施例5]
ポリシクロオレフィンフィルムに前記改質処理を施して、二層のポリマー体を形成した。
ポリシクロオレフィンフィルムに前記改質処理を施して、二層のポリマー体を形成した。
(1)改質ポリシクロオレフィンフィルム
ポリシクロオレフィンZeonex330R(日本ゼオン社製)0.94gを、テトラヒドロフラン9.41gに溶解し、ガラス上に、500rpm、10秒間の条件でスピンコートした。これにより、前記ガラス上に、厚み4μmのポリシクロオレフィンフィルムが形成された。そして、前記ポリシクロオレフィンフィルムについて、前記実施例1と同様にして、25℃での前記改質処理を施し、表面が改質された改質ポリシクロオレフィンフィルムを得た。そして、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムについて、前述と同様にして、表面IR測定(ATR測定)を行い、また、以下のようにして、分子量の測定を行った。これらの結果を下記表8に示す。
ポリシクロオレフィンZeonex330R(日本ゼオン社製)0.94gを、テトラヒドロフラン9.41gに溶解し、ガラス上に、500rpm、10秒間の条件でスピンコートした。これにより、前記ガラス上に、厚み4μmのポリシクロオレフィンフィルムが形成された。そして、前記ポリシクロオレフィンフィルムについて、前記実施例1と同様にして、25℃での前記改質処理を施し、表面が改質された改質ポリシクロオレフィンフィルムを得た。そして、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムについて、前述と同様にして、表面IR測定(ATR測定)を行い、また、以下のようにして、分子量の測定を行った。これらの結果を下記表8に示す。
(分子量測定)
1重量%酢酸を含むTHF溶液に、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムを、0.5重量%となるように溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により平均分子量を測定した。
装置:Agirent Technology社製Infinity1260
カラム:OrigoPore 300×7.5mm
温度:40℃
流速:1mL/min
打ち込み量:20μL
検出器:蒸発光散乱 ELDS−A120
1重量%酢酸を含むTHF溶液に、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムを、0.5重量%となるように溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により平均分子量を測定した。
装置:Agirent Technology社製Infinity1260
カラム:OrigoPore 300×7.5mm
温度:40℃
流速:1mL/min
打ち込み量:20μL
検出器:蒸発光散乱 ELDS−A120
前記表面IR測定により、前記改質処理したポリシクロオレフィンフィルムについてのみ、カルボン酸(1715cm−1)、水酸基(3300−3500cm−1)のピークが確認できた。また、前記表6に示すように、改質処理を施していないポリシクロオレフィンフィルムと比較して、改質処理したポリシクロオレフィンフィルムは、分子量(Mn、Mw、Mz)が低下せず、反対に増大していた。このことから、ポリシクロオレフィンフィルムに施した改質処理は、ポリマーの主鎖に大きな開裂を伴わない、すなわち、分子量が低下していない改質であると推定される。そして、前記改質ポリシクロオレフィンフィルム(すなわち第1ポリマー層)の改質が、5万以上の重量平均分子量持ち、分子量が未改質のポリマーよりも低下しない改質であることが、後述する第2ポリマー層との密着性に寄与していると推定できる。
(2)ポリマー体
前記実施例2と同様にして、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムに、前記ポリマー組成物Aを塗布し、5分放置した。そして、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムを、洗浄液が中性(pH6〜8)になるまで洗浄した後、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムを対流式乾燥機に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質ポリシクロオレフィンフィルム(第1ポリマー層)に第2ポリマー層が積層された、二層のポリマー体が得られた。また、比較例として、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムに代えて、改質処理を施していない前記ポリシクロオレフィンフィルムを使用した以外は、同様にして、前記ポリシクロオレフィンフィルムに前記第2ポリマー層を積層し、二層のポリマー体を得た。そして、前記二層のポリマー体と、改質処理を施していない前記ポリシクロオレフィン(COP)フィルムについて、前記実施例2と同様にXPS測定を行った。
前記実施例2と同様にして、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムに、前記ポリマー組成物Aを塗布し、5分放置した。そして、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムを、洗浄液が中性(pH6〜8)になるまで洗浄した後、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムを対流式乾燥機に入れ、80℃で10分間乾燥させた。これにより、前記改質ポリシクロオレフィンフィルム(第1ポリマー層)に第2ポリマー層が積層された、二層のポリマー体が得られた。また、比較例として、前記改質ポリシクロオレフィンフィルムに代えて、改質処理を施していない前記ポリシクロオレフィンフィルムを使用した以外は、同様にして、前記ポリシクロオレフィンフィルムに前記第2ポリマー層を積層し、二層のポリマー体を得た。そして、前記二層のポリマー体と、改質処理を施していない前記ポリシクロオレフィン(COP)フィルムについて、前記実施例2と同様にXPS測定を行った。
下記表9に、ワイドスペクトルの結果を示し、下記表10に、C1sスペクトルの結果を示す。下記表に示すように、改質処理されていないCOPフィルム(参照例5−1)に、二酸化塩素ラジカルを用いた改質処理を施すことで、前記改質COPフィルムには、酸素と塩素とが導入され、前記改質COPフィルムに前記第2ポリマー層を積層したポリマー体には、前記第2ポリマー層が密着して積層されていることを示す前記水溶性高分子に由来する窒素が確認された(実施例5−1)。一方、改質処理されていないCOPフィルムに前記第2ポリマー層を積層した結果、前記第2ポリマーの密着性が劣るため、前記水溶性高分子に由来する窒素が、前記実施例5−1と比較して著しく低かった(比較例5−1)。これらの結果から、本発明のポリマー体は、改質された第1ポリマー層(前記改質COPフィルム)と前記第2ポリマー層との接着性が向上したことがわかる。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
以上のように、本発明によれば、簡便かつ低コストに、ポリマー層間の接着性に優れるポリマー体を提供できる。
1 有機相
2 水相
2 水相
Claims (13)
- 第1ポリマー層と第2ポリマー層とを含み、
前記第1ポリマー層の表面に、前記第2ポリマー層が接着されており、
前記第1ポリマー層の表面は、前記第2ポリマー層と接する領域が、有効官能基濃度8×10−11mol/cm2以上の領域を有し、
前記第1ポリマー層の非露出部は、有効官能基濃度が有効官能基濃度8×10−11mol/cm2未満であり、
前記第2ポリマー層は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とするポリマー体。 - 前記第1ポリマー層が、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミド−イミド、およびキトサンからなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項1記載のポリマー体。
- 前記第1ポリマー層が、シート、フィルム、プレート、チューブ、パイプ、棒、ビーズ、ブロック、織布、不織布および糸からなる群から選択された少なくとも一つの成形体である、請求項1または2に記載のポリマー体。
- 前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリエチレンイミン、ポリカルボキシビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルソース、および、これらのポリマーを構成するモノマーの共重合体からなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー体。
- 前記水分散性高分子が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、イソプレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン樹脂、およびアクリルウレタン樹脂、からなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマー体。
- 光照射下、ポリマー層の表面をハロゲン酸化物ラジカルと反応させて、表面が改質された改質ポリマー層を得る表面処理工程、および、
前記改質ポリマー層の前記表面に、ポリマー組成物を塗布して、塗布層を形成する層形成工程を含み、
前記ポリマー組成物は、水溶性高分子および水分散性高分子の少なくとも一方を含むことを特徴とするポリマー体の製造方法。 - 前記ポリマー層が、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミド−イミド、およびキトサンからなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項6記載の製造方法。
- 前記ポリマー層が、シート、フィルム、プレート、チューブ、パイプ、棒、ビーズ、ブロック、織布、不織布および糸からなる群から選択された少なくとも一つの成形体である、請求項6または7に記載の製造方法。
- 前記ポリマー組成物が、前記水溶性高分子と溶媒とを含み、
前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリエチレンイミン、ポリカルボキシビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、および、これらのポリマーを構成するモノマーの共重合体からなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の製造方法。 - 前記ポリマー組成物が、前記水分散性高分子と溶媒とを含むエマルションであり、
前記水分散性高分子が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、イソプレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン樹脂、およびアクリルウレタン樹脂からなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項6から9のいずれか一項に記載の製造方法。 - 前記溶媒が、水性溶媒である、請求項9または10記載の製造方法。
- 前記表面処理工程の反応系が、気体反応系または液体反応系である、請求項6から11のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記ハロゲン酸化物ラジカルが、二酸化塩素ラジカルである、請求項6から12のいずれか一項に記載の製造方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023033102A1 (ja) * | 2021-09-03 | 2023-03-09 | デンカ株式会社 | Lcp押出フィルム、回路基板用絶縁材料、及び金属箔張積層板 |
-
2018
- 2018-06-20 JP JP2018117224A patent/JP2019218485A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023033102A1 (ja) * | 2021-09-03 | 2023-03-09 | デンカ株式会社 | Lcp押出フィルム、回路基板用絶縁材料、及び金属箔張積層板 |
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