JP2019216633A - 配糖体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】効率よく配糖化を行うための糖転移酵素や、OH基を有する化合物の配糖体や、該配糖体の製造方法を提供すること、特にジンゲロールを配糖化する糖転移酵素や、ジンゲロール配糖体や、ジンゲロール配糖体の製造方法を提供すること。【解決手段】リゾビウム属又はシネラ属に属する微生物由来の糖転移酵素や当該微生物の培養物の存在下、OH基を有する化合物又はOH基を有する化合物を含む抽出物とグルコース、マルトース等の糖供与体とを反応させることにより、OH基を有する化合物の配糖体を製造できる。また、ジンゲロール、ジンゲロールを含む植物抽出物に糖供与体の存在下で上記糖転移酵素又は上記微生物の培養物を作用させることによりジンゲロール配糖体を製造できる。【選択図】なし

Description

本発明は、リゾビウム(Rhizobium)属又はシネラ(Shinella)属に属する微生物由来の糖転移酵素や当該微生物の培養物を用いて水酸基(以下「OH基」という場合がある。)を有する化合物の配糖体を製造する方法、特にジンゲロールの配糖体の製造方法に関する。
配糖体は、糖のヘミアセタール性ヒドロキシ基が、非糖成分であるアグリコンに結合した化合物のことであり、生物界に広く分布している。配糖体としては、植物色素であるアントシアニンやフラボン類、カラシナ類の辛味の主成分であるからし油配糖体、さらにサポニン(ステロイド、ステロイドアルカロイド、トリテルペンの配糖体の総称)、糖脂質、ヌクレオシド、抗生物質等が知られている。配糖体になると、糖が結合する前の化合物よりも水溶性や安定性等が向上する等、物性が変化する。
化合物の水溶性や安定性を向上させることや、新たな機能発現を見いだすことを目的として、配糖化研究がされている。例えば、アスコルビン酸をα−グルコシダーゼやシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼにより配糖化したことが報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。アスコルビン酸は、熱、光や酸素等によって分解しやすいが、配糖化することによって安定に存在できる。また、メントールは揮発しやすく、水にも溶けにくい性質であるが、配糖化することによって、香気を持続させ、水溶性も向上することが開示されている(特許文献1)。メントールの配糖化方法として、例えば、スクロースやマルトース等の糖類とメントールとをα−グルコシダーゼを用いた酵素反応によりメントール配糖体を製造する方法(特許文献2)、キサントモナス(Xanthomonas)属やステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属に属するメントール配糖化能を有する微生物によって製造する方法等が提案されている(特許文献3)。
例えば、ショウガ科(Zingiberaceae)植物の根茎等に含まれる精油成分として知られているジンゲロールには、脂肪蓄積抑制(非特許文献3)、アディポネクチン産生増強(特許文献4)等の効能が知られており、消化薬、緩下剤、鎮咳剤、制酸薬等の医薬品原料として、調味料、清涼飲料、アルコール飲料、菓子類等の食品として、また化粧品の香料としても使用されている。
しかしながら、ジンゲロールは、水に溶けにくく、強い辛味、刺激を有する。また、加熱あるいは酸性条件下で、ジンゲロールは、ショウガオール又はジンゲロンに変換され、さらに水に溶けにくく、強い辛みを呈するようになる。
このような問題を解決すべく、ジンゲロール又はジンゲロール含有物と糖類の熱処理物を組み合わせることにより、安定性及び水溶性の高いジンゲロール含有水溶性組成物を得る方法(特許文献5)が提案されている。しかしながら、当該方法により得られる組成物はカラメル状であるため特定の用途に限定され、また、エタノールが残存することにより、飲食品には利用しにくい等の問題がある。これら問題を改善すべく、ハロモナス(Halomonas)属細菌由来の糖転移酵素を利用してジンゲロールを配糖化すると、得られたジンゲロール配糖体の水溶性、安定性等が改善したことが報告されている(特許文献6)。
また、アルコール性OH基を有する化合物に、糖供与体の存在下で、エンシファー(Ensifer)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属又はアルスロバクター(Arthrobacter)属に属する微生物を作用させて、前記化合物の配糖体を生成させる方法が提案されている(特許文献7、8)。
一方、リゾビウム(Rhizobium)属、シネラ(Shinella)属に属する微生物は、マメ科植物の根に根粒を形成し、共生的窒素固定を行う根粒菌を含む土壌細菌の代表的なものとして知られている。しかしながら、当該微生物が、糖供与体の存在下で、OH基を有する化合物を配糖化し得る能力を有することについては、本発明者らの知る限り報告はない。
特開昭61−83114号公報 特開平9−224693号公報 特開平11−155591号公報 特開2011−1386号公報 特開2008−56572号公報 特開2013−112623号公報 特許第6156947号 特開2017−123844号公報
Biochim.Biophys.Acta.,1990,1035,44-50 Agric.Biol.Chem.,1991,55,1751-1756 J.Med.Chem.,2011,54,6295-6304
ここで、OH基を有する化合物の配糖体、例えばジンゲロール配糖体は飲食品、医薬部外品及び医薬品工業等において取扱が容易であり、汎用性が高い原料成分である。産業的利用においては、配糖体を含めたジンゲロール誘導体及びその効率のよい製造方法が求められている。
すなわち、本発明の課題は、効率よく配糖化を行うための糖転移酵素や、OH基を有する化合物の配糖体、該化合物の配糖体の製造方法を提供することにあり、特にジンゲロールを配糖化する糖転移酵素、ジンゲロール配糖体、ジンゲロール配糖体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題の解決のために鋭意研究の結果、例えばジンゲロール等のOH基を有する化合物とマルトース等の糖供与体とをリゾビウム(Rhizobium)属又はシネラ(Shinella)属に属する微生物の培養物の存在下で反応させることによりジンゲロール配糖体が合成可能であることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]OH基を有する化合物及び糖供与体の存在下で、前記化合物の配糖体を生成する活性を有する、リゾビウム(Rhizobium)属又はシネラ(Shinella)属に属する微生物由来の糖転移酵素。
[2]リゾビウム属に属する微生物がリゾビウム・ラヂオバクター(R. radiobacter)、リゾビウム・ピューセンス(R. pusense)、リゾビウム・ナフタレニヴォランス(R. naphthalenivorans)、リゾビウム・ダエジェオネンセ(R. daejeonense)、リゾビウム・パクナメンス(R. paknamense)又はリゾビウム・ウンディコーラ(R. undicola)であり、シネラ属に属する微生物がシネラ・ヤンバルエンシス(S. yambaruensis)、シネラ・グラヌリ(S. granuli)又はシネラ・ズーグロエオイデス(S. zoogloeoides)である上記[1]の糖転移酵素。
[3]OH基を有する化合物がジンゲロールである上記[1]又は[2]の糖転移酵素。
[4]OH基を有する化合物及び糖供与体の存在下で、前記化合物の配糖体を生成するために使用するための、リゾビウム(Rhizobium)属又はシネラ(Shinella)属に属する微生物の培養物。
[5]リゾビウム属に属する微生物がリゾビウム・ラヂオバクター(R. radiobacter)、リゾビウム・ピューセンス(R. pusense)、リゾビウム・ナフタレニヴォランス(R. naphthalenivorans)、リゾビウム・ダエジェオネンセ(R. daejeonense)、リゾビウム・パクナメンス(R. paknamense)又はリゾビウム・ウンディコーラ(R. undicola)であり、シネラ属に属する微生物がシネラ・ヤンバルエンシス(S. yambaruensis)、シネラ・グラヌリ(S. granuli)又はシネラ・ズーグロエオイデス(S. zoogloeoides)である上記[4]の微生物の培養物。
[6]OH基を有する化合物がジンゲロールである上記[4]又は[5]の微生物の培養物。
[7]OH基を有する化合物又はOH基を有する化合物を含む抽出物に、糖供与体の存在下で上記[1]〜[3]のいずれかの糖転移酵素、又は、上記[4]〜[6]のいずれかの微生物の培養物を作用させる工程を含むことを特徴とするOH基を有する化合物の配糖体の製造方法。
[8]OH基を有する化合物及びOH基を有する化合物を含む抽出物が、それぞれジンゲロール、及びジンゲロールを含む植物抽出物であることを特徴とする上記[7]の配糖体の製造方法。
[9]OH基を有する化合物の配糖体が、該化合物のOH基にグルコース、マルトース又はマルトオリゴ糖が脱水縮合した配糖体であることを特徴とする上記[7]又は[8]の配糖体の製造方法。
[10]配糖体が、下記一般式(1)で示されるジンゲロール配糖体であることを特徴とする上記[7]〜[9]のいずれかの配糖体の製造方法。
(式中、Rは、グルコシル基、マルトシル基又はマルトオリゴ糖のグルコシル基を示し、nは2,4,6又は8のいずれかの整数を示す。)
[11]一般式(1)で示されるジンゲロール配糖体が、下記式(2)で示される、6−ジンゲロールの側鎖のOH基にグルコースがα−1位で結合したジンゲロール配糖体であることを特徴とする上記[10]の配糖体の製造方法。
[12]一般式(1)で示されるジンゲロール配糖体が、下記式(3)で示される、6−ジンゲロールの側鎖のOH基にマルトースがα−1位で結合したジンゲロール配糖体であることを特徴とする上記[10]の配糖体の製造方法。
[13]植物がショウガであることを特徴とする上記[8]〜[12]のいずれかの配糖体の製造方法。
[14]OH基を有する化合物及び糖供与体の存在下で前記化合物の配糖体を生成するための、リゾビウム属(Rhizobium)又はシネラ(Shinella)属に属する微生物の培養物の使用。
本発明の糖転移酵素や微生物の培養物は、OH基を有する化合物を配糖化することができ、これにより得られた配糖体の水溶性や安定性等の物性は配糖化前よりも向上する。また、配糖化によって、配糖化される前の化合物にはなかった新たな生理活性機能が現れたり、活性の増強がされたりし得る。特に、当該糖転移酵素や当該微生物の培養物は、ジンゲロール配糖体を製造するのに適する。ジンゲロール配糖体は、水に溶解しやすく、ジンゲロールよりも安定であるため、飲食品、医薬品及び化粧品等に配合して用いることができる。さらに、ジンゲロール配糖体とすることで、ジンゲロールのショウガオールやジンゲロンへの変換を抑制でき、ショウガオールやジンゲロン由来の辛味を低減することが可能となる。
ジンゲロール配糖体の生成を示す薄層クロマトグラフィー(以下「TLC」という場合がある。)による分析結果を示す図である。 ジンゲロール配糖体の生成を示す高速液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」という場合がある。)による分析結果を示す図である。 4−ヒドロキシブチルアクリレート配糖体の生成を示すTLCによる分析結果を示す図である。 4−ヒドロキシブチルアクリレート配糖体の生成を示すHPLCによる分析結果を示す図である。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
(リゾビウム属に属する微生物)
本発明において、リゾビウム属に属する微生物とは、16SrRNA遺伝子塩基配列解析の結果から、リゾビウム属に含まれることが明らかとなった微生物をいう。また、本発明におけるリゾビウム属に属する微生物は、6−ジンゲロール等のOH基を有する化合物及びマルトース等の糖供与体の存在下に、6−ジンゲロールの側鎖のOH基と糖が脱水縮合した化合物等の配糖体を生成する能力(活性)を有し、リゾビウム属に属する微生物であれば、如何なる微生物であってもよい。
リゾビウム属に属する微生物としては、例えば、リゾビウム・ラヂオバクター(R. radiobacter)、リゾビウム・ピューセンス(R. pusense)、リゾビウム・ナフタレニヴォランス(R. naphthalenivorans)、リゾビウム・ダエジェオネンセ(R. daejeonense)、リゾビウム・パクナメンス(R. paknamense)又はリゾビウム・ウンディコーラ(R. undicola)、等を挙げることができる。
リゾビウム属に属する具体的な菌株としては、例えば、理化学研究所バイオリソース研究センター微生物材料開発室(以下「JCM」という。)に保存されている菌株、例えばリゾビウム・ラヂオバクターJCM20371、リゾビウム・ピューセンスJCM16209、リゾビウム・ダエジェオネンシスJCM21505、リゾビウム・ウンディコーラ、JCM21822;独立行政法人製品技術基盤機構バイオテクノロジーリソースセンター(以下「NBRC」という。)に保存されている菌株、例えばリゾビウム・ナフタレニヴォランスNBRC107585、リゾビウム・パクナメンスNBRC109338等を挙げることができる。
上記の微生物は、JCM又はNBRCに保存されている菌株の中から誰にでも容易に入手することができる。
(シネラ属に属する微生物)
本発明において、シネラ属に属する微生物とは、16SrRNA遺伝子塩基配列解析の結果から、シネラ属に含まれることが明らかとなった微生物をいう。また、本発明におけるシネラ属に属する微生物は、6−ジンゲロール等のOH基を有する化合物及びマルトース等の糖供与体の存在下に、6−ジンゲロールの側鎖のOH基と糖が脱水縮合した化合物等の配糖体を生成する能力(活性)を有し、シネラ属に属する微生物であれば、如何なる微生物であってもよい。
シネラ属に属する微生物としては、例えば、シネラ・ヤンバルエンシス(S. yambaruensis)、シネラ・グラヌリ(S. granuli)又はシネラ・ズーグロエオイデス(S. zoogloeoides)等を挙げることができる。
シネラ属に属する具体的な菌株としては、例えば、JCMに保存されている菌株、例えばシネラ・グラヌリJCM13254、シネラ・ズーグロエオイデスJCM20728;NBRCに保存されている菌株、例えばシネラ・ヤンバルエンシスNBRC102122を挙げることができる。
これらの菌株は1株を単独で使用してもよく、また2株以上を一緒に使用してもよい。また、リゾビウム属に属する微生物の中でも、リゾビウム・ラヂオバクター、リゾビウム・ピューセンス、リゾビウム・ナフタレニヴォランス、リゾビウム・ダエジェオネンセ、リゾビウム・パクナメンス又はリゾビウム・ウンディコーラに属する微生物(菌株)が好ましく、シネラ属に属する微生物の中でも、シネラ・ヤンバルエンシス、シネラ・グラヌリ又はシネラ・ズーグロエオイデスに属する微生物(菌株)が好ましい。
上記の微生物は、JCM又はNBRCに保存されている菌株の中から誰にでも容易に入手することができる。
これらリゾビウム属の菌株とシネラ属の菌株を一緒(同時)に使用することもできる。
また、上記リゾビウム属又はシネラ属に属する微生物を紫外線、エックス線、薬品等を用いる人工的な変異手段で変異させることができるが、このような変異株(変異微生物)も、本発明の対象とする糖転移酵素の活性を有するかぎり、本発明の糖転移酵素の由来微生物又は培養物を産生する微生物として使用することができる。
また、上記リゾビウム属又はシネラ属に属する微生物には、リゾビウム属又はシネラ属に属する微生物に由来する本発明の糖転移酵素をコードする遺伝子で形質転換し、本発明の糖転移酵素を発現する大腸菌等の宿主細胞(組換え体)も便宜上含まれる。これら組換え体は、例えば以下の方法により作製することができる。
本発明の糖転移酵素の部分アミノ酸配列を常法により決定し、その配列に基づき適当なDNAプローブを調製する。当該DNAプローブを用いて、リゾビウム又はシネラの遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることにより糖転移酵素遺伝子をクローニングすることができる。得られたDNAの塩基配列を部分アミノ酸配列の情報と比較することにより、リゾビウム又はシネラ由来の遺伝子が取得できたか否かを確認することができる。なお、リゾビウム又はシネラの遺伝子ライブラリーは、例えば市販の遺伝子ライブラリー作製キット等を用いて作製することができる。
クローニングに用いる微生物DNAの単離、ゲノムライブラリーの作製、スクリーニング、塩基配列の解析は当業者に周知の方法によって行うことができる。例えば、精製した糖転移酵素を加水分解し、その加水分解断片の部分アミノ酸配列の情報をもとにオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、PCR反応を用いて当該糖転移酵素をコードする遺伝子の部分配列を単離する。次いで、この部分配列を用いてDNAプローブを調製し、リゾビウム又はシネラのゲノムライブラリーをスクリーニングし、当該糖転移酵素を発現するクローンを選択することができる。この選択されたクローンより目的とするタンパク質をコードする遺伝子の配列を明らかにすることできる。
上記宿主細胞としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)等を用いることができ、またベクターとしては、エシェリヒア・コリ内で複製できるpUC18、pUC19、pBR322、pGEM3又はpGEM4等、バチルス・ズブチリス内で複製できるpUC110、pE194又はpC194等、バチルス・ブレビス内で複製できるpNCMO2又はpNY326等のプラスミドが使用できる。
リゾビウム属又はシネラ属に属する微生物はpH5.0〜8.0程度の培地で、培養温度20〜40℃、培養時間1〜7日間培養することが好ましい。微生物の培養培地としては、通常の微生物の培養に使用される培地であれば用いることができ、例えば炭素源、窒素源、無機塩類及びその他の栄養物質等を含有する天然培地又は合成培地等を用いることができる。培地の形状としては、液体培地、半流動培地、固形培地等が挙げられる。
炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、シュークロース、マンノース、マルトース、マンニトール、キシロース、ガラクトース、澱粉、糖蜜、ソルビトール、グリセリン等の糖質及び糖アルコール;酢酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸又はグルコン酸等の有機酸;エタノール又はプロパノール等のアルコール等を挙げることができる。炭素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。これら炭素源の培地における濃度は通常0.1〜10質量%程度である。
窒素源としては、窒素化合物、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム((NHSO)、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機もしくは有機アンモニウム化合物、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウム又は硝酸カリウム等を挙げることができる。また、コーンスティープリカー、肉エキス、ペプトン、NZ−アミン、蛋白質加水分解物又はアミノ酸等の含窒素有機化合物等も使用可能である。窒素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。窒素源の培地濃度は、使用する窒素化合物によっても異なるが、通常約0.1〜10質量%程度である。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム(KHPO)、リン酸第二カリウム(KHPO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸鉄(FeSO)、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト又は炭酸カルシウム等を挙げることができる。これら無機塩は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。無機塩類の培地濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常0.01〜1.0質量%程度である。
栄養物質としては、例えば肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティープリカー、脱脂粉乳、脱脂大豆塩酸加水分解物又は動植物若しくは微生物菌体のエキスやそれらの分解物等を挙げることができる。栄養物質の培地濃度は、使用する栄養物質によっても異なるが、通常0.1〜10質量%程度である。
培地のpHは、無機の酸又はアルカリ溶液、有機の酸又はアルカリ溶液、アンモニア、pH緩衝液等によって調整する。
(リゾビウム属又はシネラ属に属する微生物の培養物)
本発明のリゾビウム属又はシネラ属に属する微生物の培養物は、OH基を有する化合物及び糖供与体の存在下で、当該化合物の配糖体を生成するために使用するという用途が限定された培養物(菌自体をも含む)である。また、培養物には、当該微生物の培養物の処理物も含まれ、かかる処理物には培養上清を分離した湿菌体、凍結乾燥処理やアセトン処理等による乾燥菌体、これら菌体を担体に結合させた固定化微生物、培養上清等が含まれる。また、上記リゾビウム属又はシネラ属に属する微生物の培養物には、リゾビウム属又はシネラ属に属する微生物に由来する本発明の糖転移酵素をコードする遺伝子で、大腸菌等の宿主細胞を形質転換し、本発明の糖転移酵素を発現する当該宿主細胞の培養物も含まれる。
(糖転移酵素)
本発明の糖転移酵素としては、OH基を有する化合物及び糖供与体の存在下で前記化合物の配糖体を生成する活性を有する、前記リゾビウム属又はシネラ属に属する微生物由来の酵素であれば特に制限されず、当該微生物の培養物から分離、精製処理された糖転移酵素含有組成物、精製された糖転移酵素、担体に当該糖転移酵素含有組成物又は当該精製糖転移酵素を結合させた固定化糖転移酵素等を挙げることができる。
当該微生物の培養物からの糖転移酵素の分離、精製は、超音波やガラスビーズによる微生物菌体の破砕物や培養上清を、例えば硫安沈殿、イオン交換カラムクロマトグラフィー(例えばDEAEセルロースカラムクロマトグラフィー、セファデックスG−100カラムクロマトグラフィー等)、キレートアフィニティクロマトグラフィーあるいはゲルろ過カラムクロマトグラフィー等といった通常の酵素精製処理手段を組み合わせることにより行うことができる。
前記の乾燥菌体や上記の糖転移酵素を固定化するための担体としては、微生物や酵素の固定化に使用される担体であればいずれも用いることができ、例えばセライト、ケイソウ土、カオリナイト、シリカゲル、モレキュラーシーブス、多孔質ガラス、活性炭、炭酸カルシウム、セラミックス等の無機担体、セラミックスパウダー、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、アクリルアミド、カラギーナン、キトサン、イオン交換樹脂、疎水吸着樹脂、キレート樹脂、合成吸着樹脂等の有機高分子等を挙げることができる。前記担体への微生物や酵素等の固定化の方法としては、吸着法、イオン結合法、共有結合法、生化学的特異結合法等の公知の方法を挙げることができる。固定化された糖転移酵素を用いる場合、バッチ式で繰り返し、又は連続式で配糖体の製造に用いることもできる。
更に、本発明の糖転移酵素をコードする遺伝子で、大腸菌等を形質転換した組換え体で発現させた糖転移酵素も本発明の糖転移酵素に含まれる。その他、一般的に、ペプチドないしタンパク質は、そのアミノ酸配列中の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されていても同じ活性を有することが知られていることから、これらの欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列や、コドンの縮重により相違する塩基配列によりコードされた遺伝子より発現されたタンパク質であっても、本発明の対象とする糖転移酵素の活性を有するタンパク質をコードしているかぎり利用することができ、発現した当該タンパク質は本発明の糖転移酵素に含まれる。
当該糖転移酵素遺伝子を、適当なプロモーターや形質発現にかかわる配列を導入した、適当なベクターで宿主細胞を形質転換し、得られた組換え体において当該糖転移酵素遺伝子を発現させることが可能であることから、このような遺伝子組換え技術により、本発明の糖転移酵素を大量に製造することが可能である。
(OH基を有する化合物)
本発明におけるOH基を有する化合物としては、本発明の糖転移酵素又は微生物の培養物によって配糖化することができるOH基を1つ以上有する化合物であれば特に制限されず、アルコール性OH基を有する化合物又はフェノール性OH基を有する化合物を挙げることができる。上記アルコール性OH基を有する化合物としては、第1級アルコール、第2級アルコール及び第3級アルコールが挙げられるが、好ましくは、第1級アルコールや第2級アルコールである。
アルコール性OH基を有する化合物として、例えば、ジンゲロール、ヒドロキシ基を有するテルペン化合物、脂肪族アルコール等が挙げられる。
上記ジンゲロールとしては、6−ジンゲロール、4−ジンゲロール、8−ジンゲロール、10−ジンゲロール等を挙げることができ、これらの混合物を用いてもよい。ジンゲロールとしては、ジンゲロールを含むショウガ科(Zingiberaceae)に属する植物、好ましくはショウガ(Zingiber officinale)等の植物より抽出したものを好適に用いることができる。
ヒドロキシ基を有するテルペン化合物としては、イソプレン骨格を基本単位(以下「イソプレン単位」という。)として含む炭化水素であって、ヒドロキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、非環式化合物でも、環式化合物であってもよい。
上記ヒドロキシ基を有するテルペン化合物に含まれるイソプレン単位の数は特に限定されないが、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個である。かかるヒドロキシ基を有するテルペン化合物の具体例としては、例えばプレノール(3−メチル−2−ブテン−1−オール)、3−メチル−3−ブテン−2−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヘミテルペンアルコール(イソプレン単位1個のテルペアルコール);ネロール、ゲラニオール、8−ヒドロキシゲラニオール、リナロール、8−ヒドロキシリナロール、テルピネオール、シトロネロール等のモノテルペンアルコール(イソプレン単位2個のテルペンアルコール);ネロリドール、ファルネソール等のセスキテルペンアルコール(イソプレン単位3個のテルペンアルコール)、ゲラニルゲラニオール、フィトール等のジテルペンアルコール(イソプレン単位4個のテルペンアルコール)等が挙げられる。これらヒドロキシ基を有するテルペン化合物には、その立体異性体、光学異性体等が含まれる。
上記ヒドロキシ基を有するテルペン化合物として、植物等に由来する原料から公知の方法による抽出物の他、市販品を用いることもできる。また、本発明において、ヒドロキシ基を有するテルペン化合物は、ヒドロキシ基を有するテルペン化合物の形態で提供されていてもよく、ヒドロキシ基を有するテルペン化合物を含む抽出物の形態で提供されてもよい。例えば、植物由来の原料である場合、ヒドロキシ基を有するテルペン化合物を含む抽出物は、植物全体、あるいは葉部、茎部、花部、果肉部、根部等を破砕、搾汁、粉末化、ペースト化等の加工後、必要に応じて熱水抽出、エタノール抽出、超臨界抽出等の抽出処理を行うことにより得ることができる。また、これらヒドロキシ基を有するテルペン化合物は、天然物であっても、合成品であってもよい。
脂肪族アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、(R)−2−ペンタノール、(S)−2−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、1−ノナノール、5−ノナノール等が挙げられる。
また、脂肪族アルコールは、エチレン性不飽和アルコール(ethylenically unsaturated alcohols)でもよく、具体的には、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド等が挙げられる。
さらに、脂肪族アルコールは、芳香族基、好ましくはフェニル基で置換されていてもよく、具体的には、例えばベンジルアルコール、フェネチルアルコール等が挙げられる。これら化合物も、本明細書においては、脂肪族アルコールと総称する。
中でも、脂肪族アルコールとしては、第1級アルコールが好ましく、具体的には1−ブタノールが最も好ましい。い。これら脂肪族アルコールは天然物であっても、合成品であってもよい。
フェノール性OH基を有する化合物としては、例えばヒドロキノン、サリチルアルコール、フロレチン、ピロカテコール、フェノール等のフェノール類;エスクレチン等のクマリン類;アピゲニン、ダイゼイン、ケルセチン、ヘスペレチン、ナリンゲニン等のフラボノイド類;カルタミニジン等のカルコン類;ペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン等のアントシアニジン類;アリザリン等のアントラキノン類;インドキシル等のインドール類;ドーパミン、アドレナリン等のアルカロイド類等が挙げられる。
上記アルコール性OH基を有する化合物やフェノール性OH基を有する化合物として、植物等に由来する原料から公知の方法による抽出物の他、市販品を用いることもできる。また、本発明において、OH基を有する化合物は、OH基を有する化合物の形態で提供されていてもよく、OH基を有する化合物を含む抽出物の形態で提供されてもよい。例えば、植物由来の原料である場合、OH基を有する化合物を含む抽出物は、植物全体、あるいは葉部、茎部、花部、果肉部、根部等を破砕、搾汁、粉末化、ペースト化等の加工後、必要に応じて熱水抽出、エタノール抽出、超臨界抽出等の抽出処理を行うことにより得ることができる。
これらアルコール性OH基を有する化合物やフェノール性OH基を有する化合物の中でも、アルコール性OH基を有する化合物が好ましく、ジンゲロールがより好ましい。また、OH基を有する化合物は、天然物であっても、合成品であってもよい。
(糖供与体)
糖供与体としては、本発明の微生物や糖転移酵素の存在下で配糖体が生成し得るもの、すなわち配糖体を構成するグリコシル基又はマルトシル基となり得るものであれば、特に制限は無い。具体的には、例えばグルコース;マルトース;マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース又はマルトオクタオース等のマルトオリゴ糖;デキストリン;シクロデキストリン;アミロース等のα−グルカンと称される澱粉加水分解物又は澱粉及びそれらの混合物等を糖供与体として用いることができる。また、前記糖供与体は、市販品を用いてもよいし、澱粉や澱粉分解物にα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ等の加水分解酵素を作用させたものも用いることができる。
(配糖体)
本発明における配糖体は、糖のヘミアセタール性OH基が、非糖成分に結合した化合物であれば特に制限されず、例えば前記フェノール類、クマリン類、フラボノイド類、カルコン類、アントシアニジン類、アントラキノン類、インドール類、ステロイド類、アルカロイド類、脂肪族アルコール、テルペン化合物又はジンゲロール等の各配糖体が挙げられる。
例えば、ジンゲロール配糖体は、以下の一般式(1)で示される。
(式中、Rは、グルコシル基、マルトシル基又はマルトオリゴ糖のグルコシル基を示し、nは2,4,6又は8のいずれかの整数を示す。)
前記一般式(1)で表されるジンゲロール配糖体の中でも、好ましくは、下記式(2)で示される6−ジンゲロールの側鎖のOH基にグルコースがα−1位で結合したジンゲロール配糖体又は下記式(3)で示されるマルトースがα−1位で結合したジンゲロール配糖体である。
(製造方法)
本発明の配糖体の製造方法としては、OH基を有する化合物と糖供与体との混合物に本発明の糖転移酵素又は微生物の培養物を加え、糖転移反応を生起させる方法を挙げることができる。OH基を有する化合物が非水溶性である場合、通常水相と分離するため、アジテーター、スターラー等で攪拌しながら、あるいはローテーター等を利用して反応を行うことが好適である。反応液に、乳化剤を混合させておいてもよい。また、OH基を有する化合物がジンゲロールである場合、ジンゲロール又はジンゲロールを含む植物抽出物に本発明の糖転移酵素又は微生物の培養物の存在下で糖供与体を接触させることによってジンゲロール配糖体を製造することができる。
本発明の糖転移酵素を用いた配糖体の製造においては、糖転移酵素の使用量と反応条件が製造効率に大きく影響するため、適切な酵素量及び反応時間等の反応条件を選択することが重要である。通常は、経済性の点から、約1〜100時間で反応が終了できるような酵素の添加量を選択することが好ましい。また、本発明の糖転移酵素が十分に作用する条件としては、pH5〜10、温度15〜50℃の範囲から選ばれる条件を挙げることができる。
本発明の糖転移酵素の濃度としては、通常、糖供与体1gあたり0.1〜100U、好ましくは、糖供与体1gあたり0.2〜50Uである。1Uは、1分間につき1μmolの基質の化学反応を促進する酵素量を表す。
本発明の製造方法における、酵素反応溶液におけるOH基を有する化合物の濃度は、通常、1w/v%以上、好ましくは、2〜30w/v%であればよく、糖供与体濃度(w/v)は、OH基を有する化合物に対して、0.5〜30倍の濃度範囲が好ましい。
OH基を有する化合物と糖供与体との反応は溶媒の存在下に行ってもよい。反応に用いられる溶媒としては、反応に影響しない種類と濃度範囲であればよく、具体的には、例えばメタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、2−プロパノール又はエタノール等が通常用い得るものとして挙げられる。これら溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
また、本発明の製造方法における配糖体は、OH基を有する化合物に、糖供与体の存在下で、前記微生物の培養物を接触させることによって製造することもできる。「微生物の培養物を接触させる」とは、微生物を培養した培地に、OH基を有する化合物と糖供与体を添加・インキュベーションすることや、例えば、固定化微生物にOH基を有する化合物と糖供与体の溶液を流下・接触させることをいう。その場合、培地中に当該微生物が存在していても、存在していなくてもよく、「微生物の培養物」には、前述したように、当該微生物の乾燥菌体や破砕物、前記糖転移酵素の遺伝子で形質転換された宿主細胞、当該宿主細胞の乾燥菌体や破砕物、精製された糖転移酵素、それらの固定化物等を含まれる。また、培地にグルコース、フルクトース、シュークロース、マンノース、マルトース、マンニトール、キシロース、ガラクトース、澱粉、糖蜜、ソルビトール、グリセリン等の糖質が含まれる場合、前記糖質を糖供与体として用いることができる。
上記のように製造された配糖体及び糖供与体を共存させた状態で、更に他の糖転移酵素を作用させることにより、配糖体のグルコース重合度を2以上とすること、又はグルコース以外の糖を配糖体のグルコシル基に転移することも当然可能であり、また、そのようにして生じた物質はモノグルコシドよりも水溶性が高いと予想される。
さらに、混合物を加熱、あるいはpHを下げることなどにより含有されている酵素を失活させ、反応を停止することができる。
上記のように製造された配糖体を含む混合物には配糖体の他、未反応物であるOH基を有する化合物、糖供与体、場合によっては酵素、及びグルコース等の反応副生成物が混合しているため、必要に応じて、α−アミラーゼ(EC番号:EC.3.2.1.1)、β−アミラーゼ(EC番号:EC.3.2.1.2)、グルコアミラーゼ(EC番号:EC3.1.1.3)等によって加水分解処理を行い、残存した糖供与体を低分子化させることができる。
OH基を有する化合物と配糖体では水に対する溶解性が違うため、抽出操作により、油相及び水相に分離することが可能であり、配糖体はより親水性の高い溶媒に溶解するため、この親水性溶媒を更にイオン交換カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等の方法で分離精製することにより、高純度の配糖体の精製品を容易に得ることができる。
抽出操作に用い得る溶媒は特に制限されないが、本発明における配糖体、例えばジンゲロール配糖体はヘキサン等の炭化水素系溶媒に不溶であり、水、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒に可溶であり、ジンゲロールは水に不溶であるので、これらの溶媒を組合せて用いることが好ましい。
具体的には、例えば、反応液から、必要に応じて、微生物を除去後、エステル系溶媒又はエーテル系溶媒で、未反応のジンゲロールと配糖体を抽出し、抽出物を乾固後、未反応のジンゲロールを炭化水素系溶媒で抽出除去し、残渣を必要に応じてエステル系溶媒に溶解し、配糖体を得るのが好ましい。また、反応液から、必要に応じて微生物を除去後、炭化水素系溶媒で先にジンゲロールを抽出除去しても差し支えない。操作手順の詳細は、使用する溶媒量、原料に含まれるオイル状物質、エステル系溶媒中の配糖体純度等から判断すればよい。
用い得るエステル系溶媒としては、例えば酢酸エチル等が挙げられ、エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられるが、これらの中で、酢酸エチルが好ましい。また、炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、クロロホルム等が挙げられるが、これらの中で、ヘキサンが好ましい。また、微生物を除去した反応液からエステル系溶媒で未反応のジンゲロールと配糖体を抽出後、ジンゲロール配糖体の貧溶媒となるヘキサンなどの炭化水素系溶媒を加えることでジンゲロール配糖体を優先晶出することも可能である。
上記配糖体の混合物、混合物の加水分解処理物、混合物の酵素失活処理物、混合物の精製処理物、これらの乾燥、粉末化したもの等を、配糖体を含む、飲食品用、化粧品用、医薬部外品用又は医薬品用組成物として、飲食品、化粧品、医薬部外品又は医薬品に使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]ジンゲロール配糖体の製造
(1)寒天培地の作製
マルトース(日本食品化工製)5g、酵母エキス(ベクトン・ディッキンソン製)100mg、(NHSO(和光純薬工業製)2g、KHPO(関東化学製)1g、KHPO(和光純薬工業製)1g、MgSO・7HO(関東化学製)0.2g、FeSO・7HO(関東化学製)0.01g及び培地用寒天BA−10(伊那食品工業製)を15g量り取り、2Lビーカーに移して蒸留水1Lを加え、溶解し、NaOHでpH7.0に調整した。当該溶液をオートクレーブで121℃、20分間滅菌後、クリーンベンチ内のシャーレに15mlずつ分注した。シャーレの蓋を僅かに開けて20分間静置し、冷却後、寒天培地として利用した。
(2)液体培地の作製
マルトース(日本食品化工製)50g、ポリペプトン(和光純薬工業製)2g、酵母エキス(ベクトン・ディッキンソン製)2g、(NHSO(和光純薬工業製)2g、KHPO(関東化学製)1g、KHPO(和光純薬工業製)1g、MgSO・7HO(関東化学製)0.2gを量り取り、2Lビーカーに移して蒸留水1Lを加え、溶解し、NaOHでpH7.0に調整した。当該溶液50mlを200ml容バッフル付三角フラスコに仕込み、オートクレーブで121℃、20分間滅菌し、冷却後、液体培地として利用した。
(3)培養及びジンゲロール配糖体の製造
上記寒天培地上で、2〜3日間、25℃で培養させた、リゾビウム・ラヂオバクターJCM20371、リゾビウム・ピューセンスJCM16209、リゾビウム・ダエジェオネンシスJCM21505、リゾビウム・ウンディコーラ、JCM21822、リゾビウム・ナフタレニヴォランスNBRC107585、リゾビウム・パクナメンスNBRC109338、シネラ・グラヌリJCM13254、シネラ・ズーグロエオイデスJCM20728、シネラ・ヤンバルエンシスNBRC102122を、それぞれ2白金耳、上記液体培地に植菌し、25℃、160rpmにて42時間振とう培養した。
培養後、培養液0.5mlから得られた微生物菌体を2ml容のエッペンドルフチューブに移し、6−ジンゲロール1.25mgを含むマルトース100g/Lの溶液0.5mlを添加し、25℃、160rpmにて反応を開始した。6−ジンゲロール添加から24時間後にメタノールを1ml添加後、遠心分離により菌体を分離し、生成されたジンゲロール配糖体を含む反応上清を取得した。
[実施例2]ジンゲロール配糖体の分析
実施例1で取得した、ジンゲロール配糖体を含む反応上清について、TLC及びHPLCによる分析を行った。
(1)TLCによる分析
TLCプレートとして、TLCアルミプレート(Merk kieselgel 60 F254)を、展開溶媒として、2−プロパノール:n−ブタノール:水=2:2:1(v/v/v)を用い、TLCプレートにグルコース(関東化学製)1w/v%水溶液、マルトース(日本食品化工製)1w/v%水溶液、反応液をスポットし、分析した。展開後、10%(v/v)の硫酸メタノールを噴霧し、加熱(160℃、1〜2分)により呈色させた。リゾビウム・ラヂオバクターJCM20371の反応液での分析結果を図1に示した。標品として比較して、図1中の4に示すスポットが、6−ジンゲロール配糖体であり、5に示すスポットが、6−ジンゲロールであることを確認した。このことから、この反応により、ジンゲロール配糖体が生成することがわかった。他の株についてもほぼ同様の分析結果が得られた。
(2)HPLCによる分析
分析カラムとしてPhenomenex Kinetex XB−C18 (5 μm, 4.6 mm × 250 mm) 、溶離液としてメタノール:水=6:4(v/v)を用い、室温、流速0.6ml/minの条件で、280nmのUV吸収により分析を行った。リゾビウム・ラヂオバクターJCM20371の反応液での分析結果を図2に示した。標品と比較して、保持時間19.986分のピークが、6−ジンゲロールであり、保持時間11.998分のピークが、6−ジンゲロール配糖体であることを確認した。このことから、この反応により、ジンゲロールの配糖体が生成することがわかった。他の株についてもほぼ同様の分析結果が得られた。このHPLC分析結果からジンゲロール配糖体の蓄積量を算出した。
(3)ジンゲロール配糖体の蓄積量
リゾビウム・ラヂオバクターJCM20371では6-ジンゲロール配糖体1.64g/Lの蓄積が確認された。また、リゾビウム・ピューセンスJCM16209、リゾビウム・ダエジェオネンシスJCM21505、リゾビウム・ウンディコーラJCM21822、リゾビウム・ナフタレニヴォランスNBRC107585、リゾビウム・パクナメンスNBRC109338では、それぞれ、6−ジンゲロール配糖体1.29g/L、1.19g/L、0.95g/L、0.90g/L、0.29g/Lの蓄積が確認された。さらに、シネラ・グラヌリJCM13254、シネラ・ズーグロエオイデスJCM20728、シネラ・ヤンバルエンシスNBRC102122では、それぞれ、6−ジンゲロール配糖体0.68g/L、1.27g/L、0.49g/Lの蓄積が確認された。
[実施例3]エチレン性不飽和アルコール配糖体の製造
(1)培養及び配糖体の製造
実施例1と同様の条件で培養したリゾビウム・ラヂオバクターJCM20371を用い、OH基を有する化合物として6−ジンゲロールの代わりに4−ヒドロキシブチルアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様の条件で反応及び菌体分離を行い、生成された4−ヒドロキシブチルアクリレート配糖体を含む反応上清を取得した。
(2)TLCによる分析
得られた反応上清について、実施例2(1)と同様の条件でTLCによる分析を行った。その結果を図3に示す。図3中の7のスポットが、4−ヒドロキシブチルアクリレート配糖体である。
(3)HPLCによる分析
実施例2(2)と同様の分析カラム、溶離液としてメタノール:水=7:2(v/v)を用い、温度40℃、流速0.5ml/minの条件で、215nmのUV吸収により分析を行った。その結果を図4に示す。保持時間15.352分のピークが、4−ヒドロキシブチルアクリレートであり、11.211分のピークが、4−ヒドロキシブチルアクリレート配糖体である。
1 TLCによるグルコースの展開図を示す。
2 TLCによるマルトースの展開図を示す。
3 TLCによる実施例1の反応液の展開図を示す。
4 TLCにより実施例1の反応液を展開した結果6−ジンゲロール配糖体に相当するスポットを示す。
5 TLCにより実施例1の反応液を展開した結果6−ジンゲロールに相当するスポットを示す。
6 TLCによる実施例3の反応液の展開図を示す。
7 TLCにより実施例3の反応液を展開した結果4−ヒドロキシブチルアクリレート配糖体に相当するスポットを示す。

Claims (14)

  1. 水酸基(以下「OH基」という。)を有する化合物及び糖供与体の存在下で、前記化合物の配糖体を生成する活性を有する、リゾビウム(Rhizobium)属又はシネラ(Shinella)属に属する微生物由来の糖転移酵素。
  2. リゾビウム属に属する微生物がリゾビウム・ラヂオバクター(R. radiobacter)、リゾビウム・ピューセンス(R. pusense)、リゾビウム・ナフタレニヴォランス(R. naphthalenivorans)、リゾビウム・ダエジェオネンセ(R. daejeonense)、リゾビウム・パクナメンス(R. paknamense)又はリゾビウム・ウンディコーラ(R. undicola)であり、シネラ属に属する微生物がシネラ・ヤンバルエンシス(S. yambaruensis)、シネラ・グラヌリ(S. granuli)又はシネラ・ズーグロエオイデス(S. zoogloeoides)である請求項1に記載の糖転移酵素。
  3. OH基を有する化合物がジンゲロールである請求項1又は2に記載の糖転移酵素。
  4. OH基を有する化合物及び糖供与体の存在下で、前記化合物の配糖体を生成するために使用するための、リゾビウム(Rhizobium)属又はシネラ(Shinella)属に属する微生物の培養物。
  5. リゾビウム属に属する微生物がリゾビウム・ラヂオバクター(R. radiobacter)、リゾビウム・ピューセンス(R. pusense)、リゾビウム・ナフタレニヴォランス(R. naphthalenivorans)、リゾビウム・ダエジェオネンセ(R. daejeonense)、リゾビウム・パクナメンス(R. paknamense)又はリゾビウム・ウンディコーラ(R. undicola)であり、シネラ属に属する微生物がシネラ・ヤンバルエンシス(S. yambaruensis)、シネラ・グラヌリ(S. granuli)又はシネラ・ズーグロエオイデス(S. zoogloeoides)である請求項4に記載の微生物の培養物。
  6. OH基を有する化合物がジンゲロールである請求項4又は5に記載の微生物の培養物。
  7. OH基を有する化合物又はOH基を有する化合物を含む抽出物に、糖供与体の存在下で、請求項1〜3のいずれかに記載の糖転移酵素、又は、請求項4〜6のいずれかに記載の微生物の培養物を作用させる工程を含むことを特徴とするOH基を有する化合物の配糖体の製造方法。
  8. OH基を有する化合物及びOH基を有する化合物を含む抽出物が、それぞれ、ジンゲロール及びジンゲロールを含む植物抽出物であることを特徴とする請求項7に記載の配糖体の製造方法。
  9. OH基を有する化合物の配糖体が、該化合物のOH基にグルコース、マルトース又はマルトオリゴ糖が脱水縮合した配糖体であることを特徴とする請求項7又は8に記載の配糖体の製造方法。
  10. 配糖体が、下記一般式(1)で示されるジンゲロール配糖体であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の配糖体の製造方法。
    (式中、Rは、グルコシル基、マルトシル基又はマルトオリゴ糖のグルコシル基を示し、nは2,4,6又は8のいずれかの整数を示す。)
  11. 一般式(1)で示されるジンゲロール配糖体が、下記式(2)で示される、6−ジンゲロールの側鎖のOH基にグルコースがα−1位で結合したジンゲロール配糖体であることを特徴とする請求項10に記載の配糖体の製造方法。
  12. 一般式(1)で示されるジンゲロール配糖体が、下記式(3)で示される、6−ジンゲロールの側鎖のOH基にマルトースがα−1位で結合したジンゲロール配糖体であることを特徴とする請求項10に記載の配糖体の製造方法。
  13. 植物がショウガであることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の配糖体の製造方法。
  14. OH基を有する化合物及び糖供与体の存在下で前記化合物の配糖体を生成するための、リゾビウム(Rhizobium)属又はシネラ(Shinella)属に属する微生物の培養物の使用。
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CN116602208A (zh) * 2023-04-24 2023-08-18 玉林师范学院 一种墨兰根状茎植株再生方法

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