JP2019214731A - 摩擦材組成物、該摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車用ディスクブレーキパッド等に用いた際に、環境負荷の高い銅を用いることなく、高温制動におけるブレーキ振動が少ない摩擦材組成物およびそれを成形してなる摩擦材の提供。【解決手段】結合剤、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、繊維長が2500μm以下のスチール繊維を2〜5質量%含有する。【選択図】なし
Description
本発明は、自動車等の制動に用いられるディスクブレーキパッド等の摩擦材に適した摩擦材組成物および摩擦材組成物を用いた摩擦材に関する。
自動車等には、その制動のためにディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材が使用されている。摩擦材は、ディスクローター、ブレーキドラム等の対面材と摩擦することにより、制動の役割を果たしている。そのため、摩擦材には、良好な摩擦係数、耐摩耗性(摩擦材の寿命が長いこと)、強度、音振性(ブレーキ鳴きや異音が発生しにくいこと)等が要求される。摩擦係数は車速、減速度やブレーキ温度によらず安定であることが要求される。
また近年では、摩擦材中に使用される銅が、ブレーキの摩耗粉として飛散し、河川、湖や海洋汚染等の原因となっており、使用を制限する動きが高まっている。銅は繊維や粉末の形態で摩擦材に配合され、熱伝導率の付与や耐摩耗性改善に有効な成分である。摩擦材の熱伝導率が低下すると、そのため、銅を含有しない組成においては、熱伝導率が低下すると、高温での制動時に摩擦界面の熱が拡散せずに、摩擦材の摩耗量の増大や不均一な温度上昇が原因のブレーキ振動の発生などが増加するといった問題があった。
この問題に対応して、銅を含有しない摩擦材組成における熱伝導率や耐摩耗性を改善するために、熱伝導の高い黒鉛や酸化マグネシウムを添加する手法が提案されている(特許文献1)。
特許文献1の摩擦材組成物は、銅を含有しないものであるが、不均一な温度上昇が原因のブレーキ振動の抑制には効果が不十分であり、高温制動におけるブレーキ振動が増加するといった問題を有する。
本発明は、上記事情を鑑みなされたもので、環境有害性の高い銅を含有しない、もしくは銅を含有する場合であっても0.5質量%以下の少量である摩擦材組成物において、高温制動におけるブレーキ振動を抑制できる摩擦材組成物およびそれを成形して得られる摩擦材を得ることを課題とした。
本発明者らは、摩擦材組成物中に繊維長の短いスチール繊維を含有させることで、環境有害性の高い銅を含有しない組成において高温制動におけるブレーキ振動を効果的に低減することが可能であることを見出した。すなわち、繊維長の短いスチール繊維は、摩擦界面で摩擦熱を拡散し、不均一な温度上昇を抑制するだけでなく、摩擦界面で生成する有機分解物を適度にクリーニングする結果、制動中に発生するブレーキトルクの変動が小さくなり、ブレーキ振動が発生しにくくなること、および、この効果は、銅を含有しない組成において顕著に発現することを見出した。
これらの知見に基づく本発明の摩擦材組成物は、結合剤、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、繊維長が2500μm以下のスチール繊維を2〜5質量%含有することを特徴とする。
本発明の摩擦材組成物においては、前記スチール繊維の繊維形状がカール状であることが好ましく、前記スチール繊維の平均繊維径が100μm以下であることが好ましい。
本発明の摩擦材は、上記の摩擦材組成物を成形してなることを特徴とするものであり、本発明の摩擦部材は、上記の摩擦材組成物を成形してなる摩擦材と裏金を用いて形成されることを特徴とするものである。
本発明によれば、自動車用ディスクブレーキパッド等の摩擦材に用いた際に、環境負荷の高い銅を用いることなく、高温制動におけるブレーキ振動が少ない摩擦材組成物、摩擦材および摩擦部材を提供することができる。
以下、本発明の摩擦材組成物、これを用いた摩擦材および摩擦部材について詳述する。なお、本発明の摩擦材組成物は、アスベストを含まない、いわゆるノンアスベスト摩擦材組成物である。
[摩擦材組成物]
本実施形態の摩擦材組成物は、銅を含有しない、もしくは銅を含有する場合であっても0.5質量%以下の少量であることを特徴とする摩擦材組成物である。
本実施形態の摩擦材組成物は、銅を含有しない、もしくは銅を含有する場合であっても0.5質量%以下の少量であることを特徴とする摩擦材組成物である。
(スチール繊維)
本発明の摩擦材組成物は、繊維長が2500μm以下のスチール繊維を2〜5質量%で含有する。スチール繊維は、びびり振動切削法などで得られるストレート繊維と、長繊維のカットなどで得られるカール状繊維がある。ストレート繊維が直線状の繊維形状なのに対し、カール状繊維は曲線部を有する形状を示すものであり、単純な円弧状のものや、うねったもの、螺旋状あるいは渦巻き状に曲がったもの等を含む。繊維長が2500μm以下のスチール繊維は、ストレート繊維やカール状繊維のいずれのものであっても、摩擦界面で摩擦熱を拡散し、不均一な温度上昇を抑制するだけでなく、摩擦界面で生成する有機分解物を適度にクリーニングする効果を有するため、制動中に発生するブレーキトルクの変動が小さくなり、ブレーキ振動を発生しにくくして抑制することができる。ただし、カール状繊維のほうが摩擦界面において摩擦材からの脱落が少なく、高温制動における摩擦特性保持がより効果的に行えるので好ましい。さらに、カール状繊維としては、曲率半径が100μm以下の部分を含むものであると、摩擦材への固着がより強固となり、摩擦界面における摩擦材の脱落がより少なくなるので、より好ましい。カール状のスチール繊維は、例えば日本スチールウール株式会社製カットウールなど、市販されているものを使用することができる。
本発明の摩擦材組成物は、繊維長が2500μm以下のスチール繊維を2〜5質量%で含有する。スチール繊維は、びびり振動切削法などで得られるストレート繊維と、長繊維のカットなどで得られるカール状繊維がある。ストレート繊維が直線状の繊維形状なのに対し、カール状繊維は曲線部を有する形状を示すものであり、単純な円弧状のものや、うねったもの、螺旋状あるいは渦巻き状に曲がったもの等を含む。繊維長が2500μm以下のスチール繊維は、ストレート繊維やカール状繊維のいずれのものであっても、摩擦界面で摩擦熱を拡散し、不均一な温度上昇を抑制するだけでなく、摩擦界面で生成する有機分解物を適度にクリーニングする効果を有するため、制動中に発生するブレーキトルクの変動が小さくなり、ブレーキ振動を発生しにくくして抑制することができる。ただし、カール状繊維のほうが摩擦界面において摩擦材からの脱落が少なく、高温制動における摩擦特性保持がより効果的に行えるので好ましい。さらに、カール状繊維としては、曲率半径が100μm以下の部分を含むものであると、摩擦材への固着がより強固となり、摩擦界面における摩擦材の脱落がより少なくなるので、より好ましい。カール状のスチール繊維は、例えば日本スチールウール株式会社製カットウールなど、市販されているものを使用することができる。
摩擦材組成物中のスチール繊維の平均繊維径は、高温でのブレーキ振動の観点で、100μm以下であることが好ましい。スチール繊維の繊維長および平均繊維径は、マイクロスコープなどで確認することができる。摩擦材に含まれるスチール繊維の繊維長および平均繊維径は、摩擦材を空気気流中800℃で加熱し、残った灰分の中から鉄繊維を電子線マイクロアナライザ(EPMA)等によりFe成分を観察することにより確認することができる。また、灰分より磁選することによりより分けてマイクロスープや電子線マイクロアナライザ(EPMA)等により観察してもよい。
また、スチール繊維の含有量を2〜5質量%とすることでブレーキ振動を効果的に抑制することができる。スチール繊維の含有量が2質量%を下回ると摩擦界面での摩擦熱の拡散が不十分となり、5質量%を超えるとスチール繊維と対面材となる鋳鉄との間の凝着摩擦が大きくなり、ブレーキ振動が大きくなる。摩擦材組成物中もしくは摩擦材中のスチール繊維の含有量は、例えば、電子線マイクロアナライザ(EPMA)等により摩擦材の任意の断面についてFe成分の定量分析することにより求めることができる。この場合において、摩擦材がスチール繊維以外にFe成分を含有しない場合、定量分析値がそのままスチール繊維の含有量である。また、摩擦材がスチール繊維以外のFe成分(鉄粉等)を含有する場合、観察を行う任意の断面の視野におけるスチール繊維とそれ以外のFe成分の合計のFe量が定量分析値として測定されるが、この場合、当該観察視野におけるスチール繊維とスチール繊維以外のFe成分の面積比を測定するとともに、スチール繊維とスチール繊維以外のFe成分の合計の面積比に対するスチール繊維の面積比の割合と、定量分析された合計のFe量の積を求めることにより簡易的にスチール繊維の含有量を求めることができる。
(結合材)
結合剤は、摩擦材用組成物に含まれる有機充填材、無機充填材および繊維基材などを一体化し、強度を与えるものである。本発明の摩擦材用組成物に含まれる結合材としては特に制限は無く、通常、摩擦材の結合材として用いられる熱硬化性樹脂を用いることができる。
結合剤は、摩擦材用組成物に含まれる有機充填材、無機充填材および繊維基材などを一体化し、強度を与えるものである。本発明の摩擦材用組成物に含まれる結合材としては特に制限は無く、通常、摩擦材の結合材として用いられる熱硬化性樹脂を用いることができる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂;アクリルエラストマー分散フェノール樹脂およびシリコーンエラストマー分散フェノール樹脂などの各種エラストマー分散フェノール樹脂;アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂およびアルキルベンゼン変性フェノール樹脂などの各種変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。特に、良好な耐熱性、成形性および摩擦係数を与えることから、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。
本発明の摩擦材組成物中における、結合材の含有量は、5〜20質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。結合材の含有量を5〜20質量%の範囲とすることで、摩擦材の強度低下をより抑制でき、また、摩擦材の気孔率が減少し、弾性率が高くなることによる鳴きなどの音振性能悪化をより抑制できる。
(有機充填剤)
有機充填材は、摩擦材の音振性能や耐摩耗性などを向上させるための摩擦調整剤として含まれるものである。本発明の摩擦材組成物に含まれる有機充填材としては、上記性能を発揮できるものであれば特に制限はなく、通常、有機充填材として用いられる、カシューダストやゴム成分などを用いることができる。
有機充填材は、摩擦材の音振性能や耐摩耗性などを向上させるための摩擦調整剤として含まれるものである。本発明の摩擦材組成物に含まれる有機充填材としては、上記性能を発揮できるものであれば特に制限はなく、通常、有機充填材として用いられる、カシューダストやゴム成分などを用いることができる。
上記カシューダストは、カシューナッツシェルオイルを硬化させたものを粉砕して得られる、通常、摩擦材に用いられるものであればよい。
上記ゴム成分としては、例えば、タイヤゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、塩素化ブチルゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、などが挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用される。
本発明の摩擦材組成物中における、有機充填材の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、3〜8質量%であることが特に好ましい。有機充填材の含有量を1〜20質量%の範囲とすることで、摩擦材の弾性率が高くなること、鳴きなどの音振性能の悪化を避けることができ、また、耐熱性の悪化、熱履歴による強度低下を避けることができる。
(無機充填材)
無機充填材は、摩擦材の耐熱性の悪化を避けるためや、耐摩耗性を向上させるため、摩擦係数を向上する目的で添加される摩擦調整剤として含まれるものである。本発明の摩擦材用組成物は、通常、摩擦材に用いられる無機充填剤であれば特に制限はない。
無機充填材は、摩擦材の耐熱性の悪化を避けるためや、耐摩耗性を向上させるため、摩擦係数を向上する目的で添加される摩擦調整剤として含まれるものである。本発明の摩擦材用組成物は、通常、摩擦材に用いられる無機充填剤であれば特に制限はない。
上記無機充填材としては、例えば、硫化錫、硫化ビスマス、二硫化モリブデン、硫化鉄、三硫化アンチモン、硫化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸バリウム、コークス、マイカ、バーミキュライト、硫酸カルシウム、タルク、クレー、ゼオライト、ムライト、クロマイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、シリカ、ドロマイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、粒状または板状のチタン酸塩、珪酸ジルコニウム、γアルミナ、二酸化マンガン、酸化亜鉛、四三酸化鉄、酸化セリウム、ジルコニアなどを用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。粒状または板状のチタン酸塩としては、6チタン酸カリウム、8チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸ナトリウム、黒鉛などを用いることができる。
本発明の摩擦材組成物中における、無機充填材の含有量は、30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましく、50〜60質量%であることが特に好ましい。無機充填材の含有量を30〜80質量%の範囲とすることで、耐熱性の悪化を避けることができ、摩擦材のその他成分の含有量バランスの点でも好ましい。
(繊維基材)
繊維基材は、摩擦材において補強作用を示すものである。
繊維基材は、摩擦材において補強作用を示すものである。
本発明の摩擦材組成物は、通常、繊維基材として用いられる、無機繊維、金属繊維、有機繊維、炭素系繊維などを用いることができ、これらを単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記無機繊維としては、セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、シリケート繊維などを用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら、無機繊維の中では、SiO2、Al2O3、CaO、MgO、FeO、Na2Oなどを任意の組み合わせで含有した生分解性鉱物繊維が好ましく、市販品としてはLAPINUS FIBERS B.V製のRoxulシリーズなどが挙げられる。
上記金属繊維としては、通常、摩擦材に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、アルミ、鉄、鋳鉄、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、マグネシウム、シリコン、銅、黄銅などの金属または合金を主成分とする繊維を用いることができる。また、これらの金属若しくは合金は、繊維形状以外に、粉末の形状で含有しても良い。しかし、銅および銅を含有する合金は、環境有害性の観点で含有しないことが好ましい。
上記有機繊維としては、アラミド繊維、セルロース繊維、アクリル繊維、フェノール樹脂繊維などを用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記炭素系繊維としては、耐炎化繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、活性炭繊維などを用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の摩擦材組成物における、繊維基材の含有量は、摩擦材組成物において5〜40質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。繊維基材の含有量を5〜40質量%の範囲とすることで、摩擦材としての最適な気孔率が得られ、鳴き防止ができ、適正な材料強度が得られ、耐摩耗性を発現し、成形性をよくすることができる。
[摩擦材]
本実施形態の摩擦材は、本発明の摩擦材組成物を一般に使用されている方法で成形して製造することができ、好ましくは加熱加圧成形して製造される。詳細には、例えば、本発明の摩擦材組成物をレーディゲミキサー(「レーディゲ」は登録商標)、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー(「アイリッヒ」は登録商標)等の混合機を用いて均一に混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度130〜160℃、成形圧力20〜50MPa、成形時間2〜10分間の条件で成形し、得られた成形物を150〜250℃で2〜10時間熱処理することで製造される。また更に、必要に応じて塗装、スコーチ処理、研磨処理を行うことで製造される。
本実施形態の摩擦材は、本発明の摩擦材組成物を一般に使用されている方法で成形して製造することができ、好ましくは加熱加圧成形して製造される。詳細には、例えば、本発明の摩擦材組成物をレーディゲミキサー(「レーディゲ」は登録商標)、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー(「アイリッヒ」は登録商標)等の混合機を用いて均一に混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度130〜160℃、成形圧力20〜50MPa、成形時間2〜10分間の条件で成形し、得られた成形物を150〜250℃で2〜10時間熱処理することで製造される。また更に、必要に応じて塗装、スコーチ処理、研磨処理を行うことで製造される。
[摩擦部材]
本実施形態の摩擦部材は、上記の本実施形態の摩擦材を摩擦面となる摩擦材として用いてなる。上記摩擦部材としては、例えば、下記の構成が挙げられる。
(1)摩擦材のみの構成
(2)裏金と、該裏金の上に摩擦面となる本発明の摩擦材組成物からなる摩擦材とを有する構成
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦材との間に、裏金の接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、および、裏金と摩擦材との接着を目的とした接着層を更に介在させた構成
本実施形態の摩擦部材は、上記の本実施形態の摩擦材を摩擦面となる摩擦材として用いてなる。上記摩擦部材としては、例えば、下記の構成が挙げられる。
(1)摩擦材のみの構成
(2)裏金と、該裏金の上に摩擦面となる本発明の摩擦材組成物からなる摩擦材とを有する構成
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦材との間に、裏金の接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、および、裏金と摩擦材との接着を目的とした接着層を更に介在させた構成
上記裏金は、摩擦部材の機械的強度の向上のために、通常、摩擦部材として用いるものであり、材質としては、金属または繊維強化プラスチック等、具体的には、鉄、ステンレス、無機繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等が挙げられる。プライマー層および接着層は、通常、ブレーキシュー等の摩擦部材に用いられるものであればよい。
本実施形態の摩擦材組成物は、熱伝導率や耐摩耗性、摩擦係数に優れるため、自動車等のディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の上張り材として特に有用であるが、摩擦部材の下張り材として成形して用いることもできる。なお、「上張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材であり、「下張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材と裏金との間に介在する、摩擦材と裏金との接着部付近のせん断強度、耐クラック性向上等を目的とした層のことである。
以下、本発明の摩擦材組成物、摩擦材および摩擦部材について、実施例および比較例を用いて更に詳細に説明するが、本発明は何らこれらに制限されるものではない。
[実施例1〜15および比較例1〜3]
(ディスクブレーキパッドの作製)
表1に示す配合比率に従って材料を配合し、実施例1〜15および比較例1〜3の摩擦材組成物を得た。表中の配合比率は質量%である。実施例および比較例にて用いたスチール繊維は、SINOMA社製「Q0−160」(カール状、繊維長300〜2500μm、平均繊維径58μm)を用いた。なお、繊維長は、株式会社キーエンス製マイクロスコープで100本の繊維の繊維長を測長し計測した。平均繊維径は、株式会社キーエンス製マイクロスコープで50本の繊維の繊維径を計測し、その平均値を平均繊維径とした。
(ディスクブレーキパッドの作製)
表1に示す配合比率に従って材料を配合し、実施例1〜15および比較例1〜3の摩擦材組成物を得た。表中の配合比率は質量%である。実施例および比較例にて用いたスチール繊維は、SINOMA社製「Q0−160」(カール状、繊維長300〜2500μm、平均繊維径58μm)を用いた。なお、繊維長は、株式会社キーエンス製マイクロスコープで100本の繊維の繊維長を測長し計測した。平均繊維径は、株式会社キーエンス製マイクロスコープで50本の繊維の繊維径を計測し、その平均値を平均繊維径とした。
この摩擦材組成物をレーディゲミキサー(株式会社マツボー製、商品名:レーディゲミキサーM20)で混合し、得られた混合物を成形プレス(王子機械工業株式会社製)で予備成形した。得られた予備成形物を成形温度140〜160℃、成形圧力30MPa、成形時間5分間の条件で、成形プレス(三起精工株式会社製)を用いて鉄製の裏金(日立オートモティブシステムズ株式会社製)とともに加熱加圧成形した。得られた成形品を200℃で4.5時間熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨し、500℃のスコーチ処理を行って、実施例1〜15および比較例1〜3のディスクブレーキパッドを得た。なお、実施例および比較例では、裏金の厚さ6mm、摩擦材の厚さ11mm、摩擦材投影面積52cm2のディスクブレーキパッドを作製した。
(ブレーキ振動)
自動車技術会規格JASO C406に基づき試験を行い、第2効力試験の車速245km/h、減速度0.3Gにおける一制動中のトルク変動を評価した。トルク変動は下図のように一制動中でトルク変動が最も大きくなる箇所を計測した。
自動車技術会規格JASO C406に基づき試験を行い、第2効力試験の車速245km/h、減速度0.3Gにおける一制動中のトルク変動を評価した。トルク変動は下図のように一制動中でトルク変動が最も大きくなる箇所を計測した。
また、これらの評価は、ダイナモメーターを用い、イナーシャ7kgf・m・sec2で評価を行った。また、ベンチレーテッドディスクロータ((株)キリウ製、材質FC190)、一般的なピンスライド式のコレットタイプのキャリパを用いて実施した。
銅を含有せず、特定繊維長のスチール繊維を特定量含有する実施例1、2は、銅を含有する比較例3と同等以下のブレーキ振動を示した。また、繊維長2500μm以下のスチール繊維を含有しない比較例1および繊維長2500μm以下のスチール繊維の含有量が5質量%を超える比較例2に対してブレーキ振動が小さいことは明らかである。
本発明の摩擦材組成物は、従来品と比較して、環境負荷の高い銅を含有せずに、高温制動におけるブレーキ振動が少ないため、該摩擦材組成物は乗用車用ブレーキパッド等の摩擦材および摩擦部材に好適である。
Claims (7)
- 結合剤、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材組成物であって、
該摩擦材組成物中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、
繊維長が2500μm以下のスチール繊維を2〜5質量%含有することを特徴とする摩擦材組成物。 - 前記スチール繊維の繊維形状がカール状であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦材組成物。
- 前記スチール繊維の平均繊維径が100μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の摩擦材組成物。
- 結合剤、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材であって、
該摩擦材中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、
該摩擦材中にスチール繊維を含むとともに、スチール繊維以外のFe成分を含まず、
該スチール繊維が、摩擦材を空気気流中800℃で加熱し、残った灰分の中から鉄繊維を電子線マイクロアナライザ(EPMA)等によりFe成分を観察して求めた繊維長の平均が2500μm以下であり、かつ
電子線マイクロアナライザにより摩擦材の任意の断面10箇所についてFe成分の定量分析した結果としてのFe量の平均が2〜5質量%であることを特徴とする摩擦材。 - 結合剤、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材であって、
該摩擦材中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、
該摩擦材中にスチール繊維を含むとともに、スチール繊維以外のFe成分を含み、
該スチール繊維が、摩擦材を空気気流中800℃で加熱し、残った灰分の中から鉄繊維を電子線マイクロアナライザ(EPMA)等によりFe成分を観察して求めた繊維長の平均が2500μm以下であり、かつ
電子線マイクロアナライザにより摩擦材の任意の断面10箇所についてFe成分の定量分析するとともに、該Fe成分の定量分析した値と、当該視野における、スチール繊維の面積率とスチール繊維以外のFe成分の面積率の合計の面積率に対するスチール繊維の面積率の割合との積の平均が2〜5質量%であることを特徴とする摩擦材。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦材組成物を成形してなる摩擦材。
- 請求項4〜5のいずれかに記載の摩擦材と裏金を用いて形成される摩擦部材。
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