JP2018135446A - 摩擦材組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境に対して有害であると疑われている銅を含有せずとも、熱伝導性が高く、高温制動時の耐摩耗性、通常時とフェード時の摩擦係数の確保を両立する摩擦材組成物を得ること。【解決手段】結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材組成物であって、前記摩擦材組成物中に元素として銅を含まず、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、酸化マグネシウムを含有し、かつ黒鉛およびコークスを含有し、前記黒鉛および前記コークスは、粗粒物と微粒物の組合せで含有し、粗粒物は平均粒子径が150〜600μmであり、微粒物は平均粒子径が100μm以下である摩擦材組成物とする。【選択図】なし

Description

本発明は、自動車等の制動に用いられるディスクブレーキパッド等の摩擦材に適した摩擦材組成物、特にアスベストを含まないノンアスベスト摩擦材組成物に関する。また、該摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材に関する。
自動車等には、その制動のためにディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材が使用されている。摩擦材は、ディスクローター、ブレーキドラム等の対面材と摩擦することにより、制動の役割を果たしている。そのため、摩擦材には、良好な摩擦係数、耐摩耗性(摩擦材の寿命が長いこと)、強度、音振性(ブレーキ鳴きおよび異音が発生しにくいこと)等が要求される。摩擦係数は車速、減速度およびブレーキ温度によらず安定であることが要求される。
このような摩擦材について、近年では、摩擦材中に使用される銅が、ブレーキの摩耗粉として飛散し、河川、湖および海洋汚染等の原因と疑われており、使用を制限する動きが高まっている。
このような銅の使用を制限する動きの中、銅を含有しない摩擦材組成における熱伝導率および耐摩耗性を改善するために、熱伝導の高い黒鉛および酸化マグネシウムを添加する手法が提案されている(特許文献1)。
特開2003−322183号公報
銅は繊維および粉末の形態で摩擦材に配合され、熱伝導率の付与および耐摩耗性改善に有効な成分である。銅を含有しない組成においては、熱伝導率が低下するため、高温での制動時に摩擦界面の熱が拡散せずに、摩擦材の摩耗量の増大、不均一な温度上昇が原因のブレーキ振動の発生等が増加するといった問題がある。このため、単純に、銅を除くだけでは熱伝導が低下し、高温制動時における摩擦係数の低下および耐摩耗性の悪化により、適用車種が限定されてしまう。
この点、特許文献1は、銅を含有しない摩擦材組成における熱伝導率および耐摩耗性を改善するために、熱伝導の高い黒鉛および酸化マグネシウムを添加するものであるが、多量の黒鉛の添加は摩擦係数の低下を引き起こし、ブレーキの重要特性である制動性能が損なわれることとなる。
このことから、本発明の摩擦材組成物は、環境に対して有害であると疑われている銅を含有せずとも、熱伝導性が高く、高温制動時の耐摩耗性、通常時とフェード時の摩擦係数の確保を両立する摩擦材組成物を得ることを課題とする。
上記課題を解決する本発明の摩擦材組成物は、結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材組成物であって、前記摩擦材組成物中に銅を含まず、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、酸化マグネシウムを含有し、かつ黒鉛およびコークスを含有し、前記黒鉛および前記コークスは、粗粒物と微粒物の組合せで含有し、粗粒物は平均粒子径が150〜600μmであり、微粒物は平均粒子径が100μm以下であるものとする。
本発明の摩擦材組成物は、前記黒鉛は平均粒子径が150〜600μmであり、前記コークスは平均粒子径が200〜600μmと、平均粒子径が100μm以下の二種類を含有することが好ましい。また、摩擦材組成物全量に対し、前記酸化マグネシウムを3〜13質量%含有し、黒鉛とコークスを合計4〜15質量%含有することが好ましい。さらに、本発明の摩擦材組成物は、酸化亜鉛を含有することが好ましく、この場合に、摩擦材組成物全量に対し、前記酸化亜鉛を2〜10質量%含有することがより好ましい。
本発明によれば、自動車用ディスクブレーキパッド等の摩擦材に用いた際に、環境負荷の高い銅を用いることなく、熱伝導率、耐摩耗性、通常時とフェード時における摩擦係数が両立して高い摩擦材組成物、摩擦材および摩擦部材を提供することができる。
以下、本発明の摩擦材組成物、これを用いた摩擦材および摩擦部材について詳述する。なお、本発明の摩擦材組成物は、アスベストを含まない、いわゆるノンアスベスト摩擦材組成物である。
また、本発明の摩擦材組成物は、結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含有するとともに、アスベストを実質的に含まない摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中に銅を含有しない、または銅を含有する場合であっても銅の含有量が銅元素として0.5質量%以下と極微量であるため、制動時に発生する摩耗粉によって、河川、湖および海洋等が汚染される虞がないものである。
(無機充填材)
本発明の摩擦材組成物は、無機充填材として、酸マグネシウム、黒鉛、コークスおよび酸化亜鉛を含有する。これらはいずれも熱伝導率が高い物質であり、銅に替わり、高温での制動時に摩擦界面で発生する熱を拡散させて、摩擦材の摩耗量の増大および不均一な温度上昇を防止し、ブレーキ振動の発生を抑制する。
黒鉛およびコークスはともに、粗粒物ほど耐摩耗性に優れる。微粒物は摩擦材中で熱伝導経路を形成しやすく、熱伝導性を向上しやすい。このため、黒鉛およびコークスを平均粒子径が150〜600μmの粗粒物と平均粒子径が100μm以下の微粒物により構成すると、高い熱伝導性と耐摩耗性をともに確保することができる。この場合、黒鉛はコークスに比べ潤滑性能に優れるため、耐摩耗性が高いので、黒鉛を粗粒物(平均粒子径:150〜600μm)とし、コークスを平均粒子径が200〜600μmと、平均粒子径が100μm以下の二種類により構成することがより好ましい。
なお、本発明における平均粒子径は、レーザー回折粒度分布測定などの方法を用いて測定することができる。例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置、商品名:LA・920(株式会社堀場製作所製)で測定することができる。また、JIS B 4130等に代表されるふるい分級によって測定することもできる。
黒鉛およびコークスの合計含有量は、過少であると熱伝導が確保できず高温時の摩耗性能を発揮できない虞がある。一方、過大であると、潤滑特性が大きくなり、通常時の摩擦係数が低下する虞がある。この観点から、黒鉛およびコークスの合計含有量を摩擦材組成物全量に対し4〜15質量%とすることが好ましい。また、効きと摩耗の両立を考慮すると、6〜12質量%がより好ましい。
本発明における黒鉛は、摩擦材に通常用いられるものを使用することができ、天然黒鉛または人造黒鉛いずれでもよい。
コークスの種類には石炭コークスと石油コークスがあり、いずれも使用することができ、黒鉛に比べ結晶性は劣るがより安価である。また、黒鉛とコークスにおける粗粒物と微粒物の体積比率は5:1〜1:3の範囲が好ましい。耐摩耗性と熱伝導性の両立を考慮すると4:1〜1:1がより好ましい。また耐摩耗性、熱伝導性、価格を考慮すると、粗粒物として黒鉛を適用し、微粒物としてコークスを適用するのがより好ましい。
本発明の摩擦材組成物は、上記の黒鉛およびコークスとともに、酸化マグネシウムを含有する。酸化マグネシウムはモース硬度6程度で、相手材の鋳鉄がモース硬度4であるため摩擦係数を向上できる。またセラミック粒子として高い熱伝導性を有するため摩擦材の熱伝導性を確保にすることができる。本発明における酸化マグネシウムは、一般に用いられているものでよく、活性酸化マグネシウムおよび電融酸化マグネシウムのいずれでもよい。酸化マグネシウムの配合量が過少であると高い摩擦係数と熱伝導性を保持できない虞がある。一方、過多となると酸化マグネシウムによる相手材の攻撃性が高まり、相手材摩耗粉による影響で摩擦材自身の耐摩耗性も悪化する虞がある。この観点から、酸化マグネシウムの含有量は摩擦材組成物全量に対し3〜13質量%含有することが好ましい。また、摩擦係数、熱伝導性、耐摩耗性の両立を考慮すると4〜7質量%がより好ましい。
上記酸化マグネシウムの平均粒子径は1〜10μmが好ましく、さらに好ましくは2〜5μmである。
本発明の摩擦材組成物は、上記の黒鉛およびコークス、酸化マグネシウムとともに、酸化亜鉛を含有することが好ましい。酸化亜鉛はセラミック粒子として高い熱伝導性を有し、摩擦材の熱伝導性を確保するため、フェード時の摩擦係数を安定させることができる。酸化亜鉛の含有量は、過少であると、フェード時の摩擦係数を保持できない虞がある。一方、過大となると、高速制動時の摩耗が悪化する虞がある。この観点から、酸化亜鉛の含有量は、摩擦材組成物全量に対し2〜10質量%とすることが好ましく、2〜6質量%とすることがより好ましい。本発明における酸化亜鉛は一般に用いられているものでよい。形状としては粒子状のものが好ましく、さらに粒子径は0.1〜3μmのものが好ましい。
本発明のノンアスベスト摩擦材組成物は、上記黒鉛、コークス、酸化マグネシウム、酸化亜鉛以外の無機充填材をさらに含有することができる。含有することができる無機充填材としては、通常摩擦材に用いられる無機充填材であれば特に制限はない。
上記無機充填材としては、例えば、硫化錫、硫化ビスマス、二硫化モリブデン、硫化鉄、三硫化アンチモン、硫化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸バリウム、マイカ、バーミキュライト、硫酸カルシウム、タルク、クレー、ゼオライト、ムライト、クロマイト、酸化チタン、シリカ、ドロマイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、粒状または板状のチタン酸塩、珪酸ジルコニウム、γアルミナ、二酸化マンガン、四三酸化鉄、酸化セリウム、ジルコニア等を用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。粒状または板状のチタン酸塩としては、6チタン酸カリウム、8チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸ナトリウム等を用いることができる。上記無機充填材は、摩擦材の耐熱性の悪化を避けるため、および耐摩耗性を向上させるため、摩擦係数を向上する目的で添加される摩擦調整材として含まれるものである。
本発明の摩擦材組成物中における、無機充填材の含有量は、30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましく、50〜60質量%であることが特に好ましい。無機充填材の含有量を30〜80質量%の範囲とすることで、耐熱性の悪化を避けることができ、摩擦材のその他成分の含有量バランスの点でも好ましい。
(結合材)
結合材は、摩擦材用組成物に含まれる有機充填材、無機充填材および繊維基材等を一体化し、強度を与えるものである。本発明の摩擦材用組成物に含まれる結合材としては、特に制限は無く、通常、摩擦材の結合材として用いられる熱硬化性樹脂を用いることができる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、(1)フェノール樹脂、(2)アクリルエラストマー分散フェノール樹脂およびシリコーンエラストマー分散フェノール樹脂等の各種エラストマー分散フェノール樹脂、(3)アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂およびアルキルベンゼン変性フェノール樹脂等の各種変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。特に、良好な耐熱性、成形性および摩擦係数を与えることから、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。
本発明の摩擦材組成物中における、結合材の含有量は、5〜20質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。結合材の含有量を5〜20質量%の範囲とすることで、摩擦材の強度低下をより抑制でき、また、摩擦材の気孔率が減少し、弾性率が高くなることによる鳴き等の音振性能悪化をより抑制できる。
(有機充填材)
有機充填材は、摩擦材の音振性能および耐摩耗性等を向上させるための摩擦調整材として含まれるものである。本発明の摩擦材組成物に含まれる有機充填材としては、上記性能を発揮できるものであれば特に制限はなく、通常、有機充填材として用いられる、カシューダスト、ゴム成分等を用いることができる。
上記カシューダストは、カシューナッツシェルオイルを硬化させたものを粉砕して得られる、通常、摩擦材に用いられるものであればよい。
上記ゴム成分としては、例えば、アクリルゴム、イソプレンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、塩素化ブチルゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用される。また、古タイヤを破砕したタイヤゴムを単独または上記のゴムと組み合わせて使用してもよい。
本発明の摩擦材組成物中における、有機充填材の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、3〜8質量%であることが特に好ましい。有機充填材の含有量を1〜20質量%の範囲とすることで、摩擦材の弾性率が高くなること、鳴き等の音振性能の悪化を避けることができ、また耐熱性の悪化、熱履歴による強度低下を避けることができる。
(繊維基材)
繊維基材は、摩擦材において補強作用を示すものである。本発明の摩擦材組成物は、通常、繊維基材として用いられる、無機繊維、金属繊維、有機繊維、炭素系繊維等を用いることができ、これらを単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記無機繊維としては、セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、シリケート繊維等を用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら、無機繊維の中では、SiO2、Al23、CaO、MgO、FeO、Na2O等を任意の組み合わせで含有した生分解性鉱物繊維が好ましく、市販品としてはLAPINUS FIBERS B.V製のRoxulシリーズ等が挙げられる。
上記金属繊維としては、通常、摩擦材に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、アルミ、鉄、鋳鉄、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、マグネシウム、シリコン、銅、黄銅等の金属または合金を主成分とする繊維を用いることができる。また、これらの金属若しくは合金は、繊維形状以外に、粉末の形状で含有してもよい。しかし、銅および銅を含有する合金は、環境有害性の観点で含有しないことが好ましい。
上記有機繊維としては、アラミド繊維、セルロース繊維、アクリル繊維、フェノール樹脂繊維等を用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記炭素系繊維としては、耐炎化繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、活性炭繊維等を用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の摩擦材組成物における、繊維基材の含有量は、摩擦材組成物において5〜40質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。繊維基材の含有量を5〜40質量%の範囲とすることで、摩擦材としての最適な気孔率が得られ、鳴き防止ができ、適正な材料強度が得られ、耐摩耗性を発現し、成形性をよくすることができる。
[摩擦材]
本実施形態の摩擦材は、本発明の摩擦材組成物を一般に使用されている方法で成形して製造することができ、好ましくは加熱加圧成形して製造される。詳細には、例えば、本発明の摩擦材組成物をレーディゲミキサー(「レーディゲ」は登録商標)、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー(「アイリッヒ」は登録商標)等の混合機を用いて均一に混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度130〜160℃、成形圧力20〜50MPa、成形時間2〜10分間の条件で成形し、得られた成形物を150〜250℃で2〜10時間熱処理することで製造される。また更に、必要に応じて塗装、スコーチ処理、研磨処理を行うことで製造される。
[摩擦部材]
本実施形態の摩擦部材は、上記の本実施形態の摩擦材を摩擦面となる摩擦材として用いてなる。上記摩擦部材としては、例えば、下記の構成が挙げられる。
(1)摩擦材のみの構成。
(2)裏金と、該裏金の上に摩擦面となる本発明の摩擦材組成物からなる摩擦材とを有する構成。
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦材との間に、裏金の接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層および裏金と摩擦材との接着を目的とした接着層を更に介在させた構成。
上記裏金は、摩擦部材の機械的強度の向上のために、通常、摩擦部材として用いるものであり、材質としては、金属または繊維強化プラスチック等、具体的には、鉄、ステンレス、無機繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等が挙げられる。プライマー層および接着層は、通常、ブレーキシュー等の摩擦部材に用いられるものであればよい。
本実施形態の摩擦材組成物は、熱伝導率、耐摩耗性、摩擦係数に優れるため、自動車等のディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の上張り材として特に有用であるが、摩擦部材の下張り材として成形して用いることもできる。なお、「上張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材であり、「下張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材と裏金との間に介在する、摩擦材と裏金との接着部付近のせん断強度、耐クラック性向上等を目的とした層のことである。
以下、本発明の摩擦材組成物、摩擦材および摩擦部材について、実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれらに制限されるものではない。
表1および表2に示す配合比率(質量%)に従って材料を配合し、実施例1〜13および比較例1〜3の摩擦材組成物を得た。なお、表中の各成分の配合量の単位は、摩擦材組成物中の質量%である。この摩擦材組成物をレーディゲミキサー(株式会社マツボー社製、商品名:レーディゲミキサーM20)で混合し、この混合物を成形プレス(王子機械工業株式会社製)で予備成形し、得られた予備成形物を成形温度150℃、成形圧力30MPaの条件で5分間成形プレス(三起精工株式会社製)を用いて鋼製の裏金と共に加熱加圧成形し、得られた成形品を200℃で4.5時間熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨し、500℃のスコーチ処理を行って、ディスクブレーキパッド(摩擦材の厚さ11mm、摩擦材投影面積52cm2)を得た。作製したディスクブレーキパッドについて、下記方法により評価を行った結果を表1〜3に示す。
なお、実施例において用いた黒鉛(粗粒)は平均粒子径:8μm、黒鉛(微粒)は平均粒子径:350μm、コークス(粗粒)は平均粒子径:30μm、コークス(微粒)は平均粒子径:300μmであり、酸化マグネシウムは平均粒子径:3μmである。
(熱伝導率)
京都電子工業株式会社製Kemtherm QTM-D3を用い、ブレーキパッドの摩擦材表面の熱伝導率をプローブ法で測定した。評価にあたっては、熱伝導率が、1.1W/(m・K)以上を「◎」、1.0W/(m・K)以上かつ1.1W/(m・K)未満を「○」、1.0W/(m・K)未満を「×」として評価した。
(耐摩耗性)
耐摩耗性は、ブレーキ温度300℃、車速60km/h、減速度0.3Gの制動1000回相当の摩擦材の摩耗量を評価し、高温での耐摩耗性とした。評価にあたっては、摩耗量が、0.6mm未満を「◎」、0.6mm以上かつ0.9mm未満を「○」、0.9mm以上を「×」として評価した。
(摩擦係数)
摩擦係数は、自動車技術会規格JASO C406に基づき測定し、第2効力試験の車速130km/h、減速度0.3Gにおける摩擦係数の平均値を評価した。なお、上記耐摩耗性、摩擦係数の評価はダイナモメーターを用い、イナーシャ7kgf・m・sec2で評価を行った。また、ベンチレーテッドディスクロータ(株式会社キリウ製、材質FC190)、一般的なピンスライド式のコレットタイプのキャリパを用いて実施した。本試験においては、第2フェード試験全15回制動の中で計測された摩擦係数の平均を「平均摩擦係数」および最小の摩擦係数(Min of Min)を「最小摩擦係数」として評価した。評価にあたっては、平均摩擦係数として、0.43以上を「◎」、0.40以上かつ0.43未満を「○」、0.40未満を「×」として評価し、最小摩擦係数として、0.23以上を「◎」、0.20以上かつ0.23未満を「○」、0.20未満を「×」として評価した。
Figure 2018135446
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表1〜2は、本発明に係る摩擦材組成物(実施例)であり、表3は、本発明に係る摩擦材組成物からいずれかの要件がはずれた摩擦材組成部(比較例)である。表1〜3より、本発明に係る摩擦材組成物(実施例)はいずれも高い熱伝導率を有するとともに、安定した摩擦係数を示し、さらに摩耗量も小さくなっている。これに対し、酸化マグネシウムを含有しない比較例1の摩擦材組成物は、摩擦係数が低く、ブレーキの効きが悪いものとなっている。また、粗粒の黒鉛およびコークスを含有しない比較例3の摩擦材組成物はいずれも摩耗量が大きく、耐摩耗性が悪いことが明らかである。また、微粒の黒鉛およびコークスを含有しない比較例2の摩擦材組成物は、実施例1〜13の摩擦材組成物とほぼ同等の結果を示すが、別途調査したところ、粗粒黒鉛、粗粒コークスのみでは制動条件よって発揮される潤滑作用の差が大きく、摩擦係数のばらつきが大きいものであった。これに対し実施例1〜13の摩擦材組成物の摩擦係数はばらつきが小さく、安定した摩擦係数を示した。
これらの結果より、本発明に係る摩擦材組成物は、高い熱伝導率と耐摩耗性、通常時とフェード時の摩擦係数を確保できるものであることが確認された。
本発明の摩擦材組成物は、従来品と比較して、環境負荷の高い銅を含有せずに、高い熱伝導率と耐摩耗性、通常時とフェード時の摩擦係数を確保できるため、該摩擦材組成物は乗用車用ブレーキパッド等の摩擦材および摩擦部材に好適である。

Claims (5)

  1. 結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材組成物であって、
    前記摩擦材組成物中に銅を含まず、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、
    酸化マグネシウムを含有し、かつ黒鉛およびコークスを含有し、
    前記黒鉛および前記コークスは、粗粒物と微粒物の組合せで含有し、粗粒物は平均粒子径が150〜600μmであり、微粒物は平均粒子径が100μm以下である摩擦材組成物。
  2. 前記黒鉛は平均粒子径が150〜600μmであり、前記コークスは平均粒子径が200〜600μmと、平均粒子径が100μm以下の二種類を含有する請求項1に記載の摩擦材組成物。
  3. 摩擦材組成物全量に対し、前記酸化マグネシウムを4〜13質量%含有し、黒鉛とコークスを合計4〜15質量%含有する請求項1または2に記載の摩擦材組成物。
  4. 酸化亜鉛を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦材組成物。
  5. 摩擦材組成物全量に対し、前記酸化亜鉛を2〜10質量%含有する請求項4に記載の摩擦材組成物。
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