JP2019211344A - ガスクロマトグラフィーによる分離方法、ガスクロマトグラフ装置、ガス分析装置、濃縮管、濃縮装置、濃縮管の製造方法及びガス検知器 - Google Patents

ガスクロマトグラフィーによる分離方法、ガスクロマトグラフ装置、ガス分析装置、濃縮管、濃縮装置、濃縮管の製造方法及びガス検知器 Download PDF

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Abstract

【課題】設定された実質的な倍率で対象ガス成分を濃縮する。【解決手段】濃縮管50は、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持っている。ガス分析装置10は、濃縮管50に対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積流すことにより、固定相の全体にわたって移動相と固定相の中で対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持する。ガスクロマトグラフ装置100は、キャリアガスを濃縮管50に流すことにより、固定相に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともに濃縮管50から、対象ガス成分に係る分離カラム40の保持時間よりも短い時間で取り出す。【選択図】図4

Description

本開示の技術分野は、ガスクロマトグラフィーを使って検出対象の対象ガス成分を分離するガスクロマトグラフィーによる分離方法、ガスクロマトグラフ装置、ガス分析装置、濃縮管、濃縮装置、濃縮管の製造方法及びガス検知器に関する。
ガスクロマトグラフィーは、ガスの中のガス成分の分離に用いられている周知の分析手法である。ガスクロマトグラフィーでは、分離カラムに固定されている固定相と、固定相の隙間を移動する移動相とによってガス成分の分離が行われる。ガスクロマトグラフィーでは、移動相がガスであり、移動相としてのガスがキャリアガスと呼ばれる。例えば、特許文献1(特許第4733314号公報)においては、ガスクロマトグラフィーによって呼気中のガス成分(例えばメチルメルカプタンなど)が分離されて、分離されたガス成分の検知が行われることが説明されている。特許文献1においては、キャリアガスとして空気が用いられ、固定相として例えばジーエルサイエンス社製の「β,β′−ODPN 25%Uniport HP」が分離カラムに充填されている。
特許第4733314号公報
特許文献1では、検出器で検出する検出対象の対象ガス成分が分離カラムで分離される。しかし、検出器には、検出限界が存在する。採取しているサンプルガスに対象ガス成分が微量しか含まれておらず、ガスクロマトグラフィーによって分離された対象ガス成分の濃度が検出器の検出限界よりも低ければ、サンプルガス中に対象ガス成分が存在していても、その検出器によって対象ガス成分を検出することができなくなる。
このような微量の対象ガス成分を検出するには、さらに検出器の性能を上げて検出限界を対象ガス成分の濃度よりも低くすることが考えられる。しかし、検出器の性能を上げようとすると、検出器が高価なものとなる。
他の対策としては、対象ガス成分を濃縮することが考えられる。しかしながら、例えば従来の吸着剤に対象ガス成分を吸着させた後に加熱脱着する手法では濃縮された対象ガス成分及び吸着剤などの熱分解が生じ、定量的な検出に煩雑な作業が生じる場合がある。
本開示の課題は、微量の対象ガス成分について適切に検出限界を引き上げられるように濃縮することができる、または設定された実質的な倍率で対象ガス成分を濃縮することができるガスクロマトグラフィーによる分離方法、ガスクロマトグラフ装置及びガス分析装置を提供することであり、そのようなガスクロマトグラフィーに適した濃縮管及び濃縮装置を提供することである。
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本開示の一見地に係るガスクロマトグラフィーによる分離方法は、固定相とサンプルガス中の移動相との間で検出対象の対象ガス成分について1より大きな分配比を持つ濃縮管に対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積流すことによって、固定相の全体にわたって移動相と固定相の中で対象ガス成分が平衡状態になるようにして、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持させ、キャリアガスを濃縮管に流すことにより、固定相に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともに濃縮管から、対象ガス成分に係る分離カラムの保持時間よりも短い時間で取り出し、濃縮管から取り出した対象ガス成分を含むキャリアガスを分離カラムに流して、キャリアガスで運ばれる対象ガス成分を含む複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持つ分離カラムで対象ガス成分を分離する。
本開示の一見地に係るガスクロマトグラフ装置は、第1流路に接続され、第1流路を流れるキャリアガスで運ばれる複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持ち、複数の特定ガス成分の中の検出対象の対象ガス成分を分離する構成を有する分離カラムと、第1流路、第2流路及び第3流路に接続され、第2流路から第1流路に対象ガス成分を含むサンプルガスを流す濃縮経路と第3流路から第1流路に対象ガス成分を含まないキャリアガスを流す検出経路とを切り替えられるように構成されている流路切替装置と、第2流路に挿入され、内部に固定相を有し、対象ガス成分を含むサンプルガスを流した場合に、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成されている濃縮管とを備え、流路切替装置によって濃縮経路に切り替え、濃縮管に対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積流すことにより、固定相の全体にわたって移動相と固定相の中で対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持するように構成され、且つ流路切替装置によって検出経路に切り替え、キャリアガスを濃縮管に流すことにより、固定相に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともに濃縮管から、対象ガス成分に係る分離カラムの保持時間よりも短い時間で取り出すことができるように構成されている。
本開示の一見地に係るガス分析装置は、第1流路に接続され、第1流路を流れるキャリアガスで運ばれる複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持ち、複数の特定ガス成分の中の検出対象の対象ガス成分を分離する構成を有する分離カラムと、第1流路の分離カラムの下流に配置され、対象ガス成分を検出する構成を有する検出器と、第1流路、第2流路及び第3流路に接続され、第2流路から第1流路に対象ガス成分を含むガスを流す濃縮経路と第3流路から第1流路に対象ガス成分を含まないガスを流す検出経路とを切り替えられるように構成されている流路切替装置と、第2流路に挿入され、内部に固定相を有し、対象ガス成分を含むサンプルガスを流した場合に、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成されている濃縮管とを備え、流路切替装置によって濃縮経路に切り替え、濃縮管に対象ガス成分を含むサンプリングを特定のサンプリング条件で特定体積流すことにより、固定相の全体にわたって移動相と固定相の中で対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持するように構成され、且つ流路切替装置によって検出経路に切り替え、キャリアガスを濃縮管に流すことにより、固定相に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともに濃縮管から、対象ガス成分に係る分離カラムの保持時間よりも短い時間で取り出すことができるように構成されている。
本開示の一見地に係る濃縮管は、キャリアガスで運ばれる複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持ち、複数の特定ガス成分の中の検出対象の対象ガス成分を分離する構成を有する分離カラムを用いるガスクロマトグラフ装置で使用される濃縮管であって、入口と出口を持ち、入口から出口に向けてガスを流せるように構成されている中空部材と、中空部材の入口と出口の間に配置されている固定相とを備え、対象ガス成分を含むサンプルガスを中空部材に流した場合に、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成され、対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積中空部材に流すことにより、固定相の全体にわたって移動相と固定相の中の対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持するように構成され、且つキャリアガスを中空部材に流すことにより、固定相に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともに中空部材から、対象ガス成分に係る分離カラムの保持時間よりも短い時間で取り出すことができるように構成されている。
上述の濃縮管は、入口に取り付けられ、入口の開閉を行う第1バルブと、出口に取り付けられ、出口の開閉を行う第2バルブとをさらに備え、第1バルブと第2バルブによって入口と出口を閉じることにより、中空部材を密閉できるように構成されていてもよい。
本開示の一見地に係る濃縮装置は、キャリアガスで運ばれる複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持ち、複数の特定ガス成分の中の検出対象の対象ガス成分を分離する構成を有する分離カラムを用いるガスクロマトグラフ装置のための濃縮装置であって、内部に固定相を有し、対象ガス成分を含むサンプルガスを流した場合に、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成されている濃縮管と、濃縮管に接続できるように構成され、サンプルガスを濃縮管に流すことができるように構成されている濃縮用ポンプと、濃縮用ポンプを停止した状態で濃縮管の中に対象ガス成分を含むサンプルガスを閉じ込めることができるように構成されている密閉器具とを備え、サンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積濃縮管に流すことにより、固定相の全体にわたって濃縮管内の移動相と固定相の中の対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持するように構成されている。
本開示の一見地に係る濃縮管の製造方法は、濃縮管の内部に固定相を配置し、濃縮管に、所定濃度の標準ガスを流し、濃縮管の濃縮率を決めるために、濃縮管に標準ガスを流し始めてから、濃縮管から対象ガス成分が取り出されるまでの標準ガスの体積を用いる。
本開示の一見地に係るガス検知器は、対象ガス成分を検出する構成を有する検出器と、高分子材料からなる固定相を内部に有し、対象ガス成分を含むサンプルガスを流した場合に、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成されている濃縮管と、検出器にはガスを流さずに濃縮管にサンプルガスを流す濃縮経路と、濃縮管を経由したガスを検出器に流す検出経路とを切り替えられるように構成されている流路切替装置と、濃縮管での対象ガス成分の濃縮時と濃縮管から対象ガス成分を取り出す検出時とで濃縮管の温度を切り替えるように構成され、検出時の濃縮管の温度が100℃以下(になるように設定されている温度調節器とを備える。
本開示に係るガスクロマトグラフィーによる分離方法、ガスクロマトグラフ装置またはガス分析装置によれば、設定された実質的な倍率で対象ガス成分を濃縮して分離することができ、例えば微量の対象ガス成分の定量的な検出が容易になる。または、本開示に係るガスクロマトグラフィーによる分離方法、ガスクロマトグラフ装置またはガス分析装置によれば、微量の対象ガス成分について適切に検出限界を引き上げられるように濃縮することができる。本開示に係る濃縮管または濃縮装置によれば、本開示に係るガスクロマトグラフィーによる分離方法、ガスクロマトグラフ装置またはガス分析装置における対象ガス成分の濃縮が容易に行える。
実施形態に係るガスクロマトグラフィーによる分離方法による分離作業の一例を示すフローチャート。 実施形態に係る濃縮管の製造方法における製造手順の一例を示すフローチャート。 実施形態に係る濃縮管の構造の一例を示す正面図。 実施形態に係るガス分析装置及びガスクロマトグラフ装置の構成の一例を示す概念図。 図4のガス分析装置の制御系統の一例を示すブロック図。 硫化水素の分離の一例を説明するためのグラフ。 図6に示された硫化水素の分離の状況を説明するためのグラフ。 メチルメルカプタンの分離の一例を説明するためのグラフ。 メチルメルカプタンの濃縮を説明するためのグラフ。 硫化水素が含まれる場合のメチルメルカプタンの分離の一例を説明するためのグラフ。 ガス分析装置及びガスクロマトグラフ装置の構成の他の例を示す概念図。 実施形態に係る濃縮装置の構成の一例を示す概念図。 実施形態に係る検知器の構成の一例を示す概念図。 図13の検知器の制御系統の一例を示すブロック図。
(1)ガスクロマトグラフィーによる分離方法の概要
本開示に係るガスクロマトグラフィーによる分離方法の概要について図1を用いて説明する。本開示に係るガスクロマトグラフィーで用いられる濃縮管は、内部に固定相を有している。この濃縮管に流れるキャリアガスは、固定相に接触しながら流れる。つまり、キャリアガスが移動相になる。この濃縮管は、固定相と移動相との間で検出対象の対象ガス成分について1より大きな分配比Dを持っている。ここで分配比とは、固定相に存在する対象ガス成分の全濃度Msと移動相に存在するガス成分の全濃度Mmの比である。つまり、D=Ms/Mmの関係が成り立つ。一般に、ネルンスト(Nernst)の分配の法則から、互いに混合しない固定相と移動相の間に一つのガス成分が分配されるとき、固定相と移動相におけるそのガス成分の濃度の比は、温度と圧力が定まった条件下ならば一定となる。なお、対象ガス成分が解離したり、対象ガス成分が二量体などを形成したりして、複数の化学種の状態になっておらず、単一の化学種として固定相と移動相に存在する場合には、分配係数Kと分配比Dは一致する。ここでは、複数の化学種の状態になる場合も含めるために分配比Dを用いて説明するが、本開示の説明については、対象ガス成分が単一の化学種として存在する場合には、分配比を分配係数と読み替えることもできる。
まず、特定のサンプリング条件を整える(ステップS1)。例えば、濃縮管の温度を特定の温度に調整する。例えば、濃縮管の温度を20℃に調整する。ただし、濃縮の倍率の精度が低くてもよい場合には、例えば、濃縮管の温度を20℃±5℃の間に調整するなど、サンプリング条件を所定温度範囲内で設定してもよい。
サンプリング条件が整うのを待ち(ステップS2のNo)、サンプリング条件が整ったら(ステップS2のYes)、対象ガス成分を含むと考えているサンプルガスを、濃縮管に特定体積以上流す(ステップS3)。ここでは、検知対象の雰囲気に対象ガス成分が含まれていない場合があるので、「対象ガス成分を含むと考えているサンプルガス」と記載したが、以下の説明では、キャリアガスの中の対象ガス成分が0または濃縮しても検知できないほど微量である場合も含めて、「対象ガス成分を含むサンプルガス」と表現する。特定体積以上流すとは、例えば、濃縮管を流れるサンプルガスの流量が一定の場合、(特定体積/単位時間当たりの流量)の時間以上濃縮管にサンプルガスを流せばよい。また、予め特定体積以上のサンプルガス(対象ガス成分を含む)を、例えば注射器タイプのガス採取容器で採取しておいて、ガス採取容器の中の特定体積以上のサンプルガスを濃縮管に注入して流せばよい。
サンプルガスが濃縮管に特定体積以上流れるのを待ち(ステップS4のNo)、サンプルガスが特定体積以上流れたら(ステップS4のYes)、対象ガス成分を固定相に保持させる(ステップS5)。対象ガス成分を固定相に保持させるには、例えば、特定のサンプリング条件でサンプリングされたサンプルガスを、濃縮管の中に封入する。この濃縮管に封入されたサンプルガスには、対象ガス成分が含まれている。対象ガス成分について、固定相とサンプルガス中の移動相との間の分配比が1よりも大きい値に設定されている。例えば、対象ガス成分が硫化水素であり、サンプルガスの移動相が空気(大気)であり、濃縮管に封入されるサンプルガスの体積及び固定相の体積が1ml(=1cc)であるとして、固定相と空気との間の分配比D1が39:1の場合を想定する。このような場合は、サンプルガスに含まれる硫化水素の濃度をMm1とおき、固定相の中の硫化水素の濃度をMs1とおくと、D1=Ms1/Mm1=39/1の関係が成り立つ。このように想定した状況で、例えば、サンプルガスに0.01ppmの濃度で硫化水素が含まれている場合に、濃縮管には、0.40ppm相当の硫化水素が存在する。従って、濃縮管の中には、0.40ppmの硫化水素の濃度を持つ1mlのサンプルガスと同じだけの硫化水素が存在する。言い換えると、濃縮管の中には、1mlのサンプルガスの中に存在する硫化水素の40倍の硫化水素が存在することになる。このような場合には、ステップS2で、固定相と移動相の全体にわたって平衡状態を実現するために、サンプルガスを40ml以上流して濃縮管の中に1mlのサンプルガスを残留させ、サンプルガス中の移動相と固定相との間で全体的に平衡状態が成立し且つサンプルガスの濃度が0.01ppmを維持する状態を作り出す。なお、サンプルガスが空気と対象ガス成分からなる場合、固定相が固体であれば、固相と空気(気相)との間で硫化水素の濃度が平衡に達して気固平衡状態が成立する。また、固定相が液体であれば、液相と空気(気相)との間で硫化水素の濃度が平衡に達して気液平衡状態が成立する。
次に、対象ガス成分に係る分離カラムの保持時間よりも短い時間で、濃縮管から対象ガス成分を取り出す(ステップS6)。例えば、キャリアガスをサンプルガスと同じ空気(大気)とし、10ml/秒の流量で空気を濃縮管から分離カラムに流す場合を考える。上述のように、分配比D1が39で、濃縮管に封入されるサンプルガス(空気)の体積が1mlで、且つ固定相の体積が1mlの場合には、濃縮管の固定相に保持されている全ての硫化水素を取り出すためには、濃縮管に封入されたサンプルガス(硫化水素を含む空気)を取り出すことも含め、濃縮管に空気を少なくとも4秒流し続けることになる。従って、硫化水素に係る分離カラムの保持時間は、4秒よりも長くなるように設定されている。分離カラムの保持時間を、濃縮管から対象ガス成分を取り出す時間よりも長く設定するには、例えば、分離カラムの長さを濃縮管の長さよりも長くすればよい。例えば、分離カラムの長さを30cmに設定して、濃縮管の長さを10cm以下に設定するなどである。
なお、キャリアガスとサンプルガスは、同じであってもよいが、異なるものであってもよい。例えば、キャリアガスとして窒素ガスまたはヘリウムガスを用いてもよい。検出器に熱伝導度検出器等を使う場合、キャリアガスに水が入らないほうが良く、乾燥窒素、乾燥ヘリウムをキャリアガスとして用いることが好ましい。
また、濃縮管から分離カラムに対象ガス成分を供給する場合に、濃縮管の温度と分離カラムの温度を異ならせてもよい。例えば、濃縮管から分離カラムに対象ガス成分を供給するとき、濃縮管の温度が80℃に設定され、分離カラムの温度が40℃に設定されるなどである。濃縮管の温度は、高いほど対象ガス成分の流出が早くなり、濃縮管の温度を高くすることにより、分離カラムでの対象ガス成分の分離が良くなる。なお、濃縮管の温度が分離カラムの温度よりも高い場合には、濃縮管と分離カラムの間に、冷却装置を設置して、分離カラムに送られるガスを冷やしてもよい。冷却装置としては、例えば冷却ファンがある。
固定相が高分子材料からなる場合には、検出時の濃縮管の温度は、濃縮管を繰り返し使用できるように常温以上で且つ高分子材料の熱分解温度以下、例えば100℃以下がよく、繰り返し使用できる回数を増やすために50℃以下が好ましい。なお、後述するガス分析装置10、ガスクロマトグラフ装置100、濃縮装置200及びガス検知器300で高分子材料を濃縮管50の固定相として使用する場合も同様のことが言える。
次に、濃縮管から取り出した対象ガス成分を含むキャリアガスを分離カラムに流して、ガスクロマトグラフィーによって対象ガス成分を分離する(ステップS7)。当然、分離カラムは、キャリアガスで運ばれる複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持っている。従って、対象ガス成分が分離カラムから出てくるタイミングと、他の特定ガス成分が分離カラムから出てくるタイミングが異なる。
(2)濃縮管の製造方法
次に、移動相の中の対象ガス成分と固定相の中の対象ガス成分が固定相の全体にわたって平衡状態になるように対象ガス成分を固定相に保持することのできる濃縮管の作成方法について説明する。
まず、従来からある方法により、対象ガス成分の濃度が正確に測定された標準ガスを準備する(ステップS11)。例えば、硫化水素の濃度が1ppmに調製された空気を準備する。標準ガスは、濃縮管50を使用する環境に合わせて選択する。例えば、空気中で濃縮するための濃縮管50を製造する場合には、標準ガスのうちの対象ガス成分を除いたものが、空気になる。
次に、固定相が内部に充填されたチューブを準備する(ステップS12)。例えば、図3に示されているようチューブ51を準備する。このチューブ51は、例えばガラスのような透明な素材で形成されていて内部が透けて見えているものである。なお、チューブ51の材質は、ガラスに限られるものではなく、対象ガス成分の種類などによって適宜選択されるものである。チューブ51は、入口52と出口53の間に固定相56が充填されている。固定相56が充填されている箇所は、例えば直径4mm、長さ8cmの円筒形の空間である。固定相56には、例えば、DVB - EVB - Ethyleneglycoldimethacrylate(ウォーターズ社製の「Porapak(登録商標)」N)を用いることができる。なお、チューブ51の材料は必ずしも透明である必要はなく、チューブ51の材料には、例えば、フッ素樹脂、ステンレスまたはガラスを用いることができる。固定相56は、例えば粒状である。このような固定相56の両端に例えば固定部材57を詰めて、固定相56を固定してもよい。固定部材57には、例えばグラスウール、石英ウールまたは金属メッシュを用いることができる。なお、チューブ51の入口52には入口用コック54が配設され、出口53には出口用コック55が配設されている。なお、入口用コック54及び出口用コック55のうちの一方を省いてもよい。ここでは、手動で開閉する入口用コック54及び出口用コック55を設ける場合を例に挙げているが、入口52と出口53の開閉のために、入口用コック54及び出口用コック55に代えて例えば電動で開閉できる電磁弁を用いてもよい。ここに示されている入口用コック54及び出口用コック55並びに電磁弁は、二方弁の一種である。ここでは、二方弁を用いているが、三方弁を用いて、後述するパージを行うためのガスの入口とサンプルガスの入口を別々に設けてもよく、またパージを行うためのガスの出口とサンプルガスの出口を別々に設けてもよい。
なお、濃縮管50は、固定相56が固体からなり、固定相56とサンプルガス中の移動相との間で気固平衡状態を生じるように構成されてもよい。また、濃縮管50は、固定相56が液体(例えば多数の固体粒子の表面を覆う液体)からなり、固定相56とサンプルガス中の移動相との間で気液平衡状態を生じるように構成されてもよい。例えば微量エタノールを濃縮して分析する場合には濃縮管にβ,β′−ODPN 25%Uniport HPを使用すれば数十倍の濃縮が可能である。この場合の液相成分はβ,β′−ODPNで、担体はUniport HPである。次に、標準ガスを一定の流量で送れるポンプなどの供給装置をチューブ51の入口52に繋ぐ。また、対象ガス成分を検出する検出器をチューブ51の出口53に繋ぐ。つまり、チューブ51に、標準ガスの供給と検出を行う供給・検出システムを接続する(ステップS13)。
次に、標準ガスと同じ種類で、対象ガス成分を含まないキャリアガスでパージして(ステップS14)、固定相56に固定されている対象ガス成分を全て取り除く。標準ガスが1ppmの硫化水素を含む空気である場合には、硫化水素を全く含まない空気を十分にチューブ51に流してパージする。
次に、供給・検出システムを動作させ、特定のサンプリング条件で、標準ガスをチューブ51に一定の流量で流し、標準ガスの流し始めから対象ガス成分がチューブ51から取り出されるまでの時間を計測する。ここで、取り出されるまでの時間は、検出器で対象ガス成分のピークが検出されるタイミングである。ここでは、標準ガスを一定の流量で流しているため、時間を計測することは即ち標準ガスの体積を計測していることになる。例えば、対象ガス成分を40倍に濃縮する濃縮管50を製造する場合、特定のサンプリング条件として濃縮管50の温度及び標準ガスの温度を20℃に保ち、1ppmの硫化水素を含む空気を1ml/秒の流量でチューブ51に流すことにより、空気を流し始めから硫化水素がチューブ51から取り出されるまでの時間が40秒(標準ガスの体積が40ml)になるように固定相56の充填量を増減させる。固定相56のおよその充填量は、設計の段階で算出することができるが、実際の測定によって充填量を加減することで濃縮する倍率を精度良く設定することができる。つまり、標準ガスの濃縮管50での保持時間を計測して、移動相(例えば、標準ガスが対象ガス成分と空気からなる場合には空気が移動相)の中の対象ガス成分と固定相の中の対象ガス成分が固定相の全体にわたって平衡状態になるように対象ガス成分を固定相に保持させることができるように、固定相56の充填量を増減させる。
なお、保持時間を計測する代わりに、例えば実際に測定した対象ガス成分の濃度の積分値を用いて、移動相の中の対象ガス成分と固定相56の中の対象ガス成分が固定相56の全体にわたって平衡状態になるように対象ガス成分を固定相56に保持させることができるように、固定相56の充填量を増減させてもよい。また、検出器で対象ガス成分のピークが検出されるタイミングに代えて、他のタイミング、例えば標準ガスの流し始めから対象ガス成分がチューブ51から取り出され始めるタイミングまでの時間を予め定めた時間に合わせるように固定相の充填量を増減させてもよい。
上述の濃縮管50の製造方法では、倍率を調整する場合について説明したが、倍率を調整せずに、濃縮管50ごとに異なる倍率を設定してもよい。その場合、各濃縮管50の倍率は、標準ガスの流し始めから対象ガス成分がチューブ51から取り出され始めるタイミングまでの時間で決定すればよい。上述のような中空管の中に固定相を充填した充填タイプ(パックドタイプ)の濃縮管50ではなく、中空細管の内面に固定相を塗布または化学結合させたキャピラリータイプの濃縮管50を製造する場合には、濃縮管50ごとに異なる倍率を設定すると製造が容易になる。なお、異なる倍率を設定することに変えて倍率の検定に、標準ガスの流し始めから対象ガス成分がチューブ51から取り出され始めるタイミングまでの時間を用いてもよい。
(3)ガス分析装置
(3−1)ガス分析装置の構成の概要
上述のガスクロマトグラフィーによる分離方法を使用するガス分析装置の構成の一例について、図4を用いて説明する。
ガス分析装置10は、ガス流路20に各種の機器が接続されて構成されている。ガス流路20は、2つの吸気口20s1,20s2と、2つの排気口20e1,20e2との間に配置されている第1流路20c1から第9流路20c9及び7個の二方弁21から二方弁27が設けられている。また、ガス流路20に接続されている機器には、濃縮用ポンプ31、検出用ポンプ32、フィルタ33、ガス注入口34、分離カラム40、濃縮管50及び検出器60がある。また、ガス分析装置10は、温度調節器70及びコンピュータ80をさらに備えている。
濃縮用ポンプ31及び検出用ポンプ32は、一定の流量でガスを送ることができるエアーポンプである。ここでは、定流量機能を持つ濃縮用ポンプ31及び検出用ポンプ32を使用することで、キャリアガスの流量を一定にしている。しかし、一定の流量でキャリアガスを流す供給装置は、一定の流量でガスを送ることができるエアーポンプに限られるものではなく、例えば流量調整器と定流量機能を持たないエアーポンプとを組みあせて構成してもよい。
フィルタ33は、例えばキャリアガス中の塵埃、ミスト及び不要なガス成分を取り除く機能を有している。フィルタ33は、例えば、塵埃を取り除く繊維状の素材とともに、ミスト及び不要なガス成分を取り除く活性炭及び/またはシリカゲルなどの吸着剤を含んで構成される。
分離カラム40は、中空管の中に固定相を充填した充填カラム(パックドカラム)であってもよく、中空細管の内面に固定相を塗布または化学結合させたキャピラリーカラムであってもよい。分離カラム40の固定相には、液相及び固相のいずれも使用することができる。
検出器60は、例えばキャリアガスが空気の場合には半導体ガスセンサを使って構成でき、例えばキャリアガスが窒素ガスまたはヘリウムガスの場合には熱伝導度検出器(TCD)、水素炎イオン化検出器(FID)、電子捕獲方検出器(ECD)、炎光光度型検出器(FPD)または質量分析器等を使って構成することができる。
第1流路20c1の下流端が、分離カラム40の流入口に接続されている。第1流路20c1の上流側が2つに分岐しており、第1流路20c1の一方の上流端が二方弁25に接続され、他方の上流端が二方弁27に接続されている。
二方弁25の上流には、第5流路20c5、濃縮管50、第2流路20c2、二方弁22、濃縮用ポンプ31及び吸気口20s1が配置されている。第2流路20c2の上流端が吸気口20s1に接続され、下流端が二方弁22に接続されている。第4流路20c4の上流側が2つに分岐しており、一方の上流端が二方弁22に接続され、第4流路20c4の他方の上流端が二方弁23に接続されている。第4流路20c4の下流端が濃縮管50の入口52に接続されている。吸気口20s1から吸入されたガスは、第2流路20c2の中を流れて濃縮管50に到達するが、吸気口20s1から濃縮管50に至るまでに濃縮用ポンプ31と二方弁22を順に通過する。濃縮管50の出口53には、第5流路20c5の上流端が接続されている。第5流路20c5の下流側が2つに分岐しており、第5流路20c5の一方の下流端が二方弁26に接続され、他方の下流端が二方弁25に接続されている。二方弁26と排気口20e1との間には、第6流路20c6が接続されている。
二方弁27の上流には、第7流路20c7、二方弁24、第3流路20c3、ガス注入口34、フィルタ33、検出用ポンプ32、二方弁21及び吸気口20s2が配置されている。第3流路20c3の上流端が吸気口20s2に接続されている。第3流路20c3の下流側が2つに分岐しており、第3流路20c3の一方の下流端が二方弁23に接続され、他方の下流端が二方弁24に接続されている。吸気口20s2から吸入されたガスは、第3流路20c3の中を流れて二方弁23及び二方弁24に到達するが、吸気口20s2から二方弁23及び二方弁24に至るまでに二方弁21と検出用ポンプ32とフィルタ33とガス注入口34を順に通過する。二方弁24と二方弁27との間には、第7流路20c7が接続されている。なお、ガス注入口34は、シリンジでガスを直接導入することができるように構成されている。ガス注入口34から導入されたガスは、第3流路20c3を流れる。
分離カラム40の流出口には第8流路20c8の上流端が接続され、第8流路20c8の下流端には検出器60が接続されている。そして、検出器60と排気口20e2の間に第9流路20c9が接続されている。検出器60には、コンピュータ80が接続されている。コンピュータ80は、図5に示されているように、表示装置84を備えており、分析結果などを表示装置84によって出力することができる。
(3−2)ガス分析装置の制御系統
ガス分析装置10の制御系統の一例が図5に示されている。ガス分析装置10が備えるコンピュータ80は、CPU81、メモリ82、タイマ83、表示装置84、入力装置85及びインタフェース86を有している。コンピュータ80は、インタフェース86により、二方弁21〜27、濃縮用ポンプ31、検出用ポンプ32、検出器60及び温度調節器70に接続されている。
図4及び図5に示されている二方弁21〜27は、コンピュータ80によって開閉を制御することができる電磁弁または電動弁である。濃縮用ポンプ31及び検出用ポンプ32は、それぞれに定められた一定の第1流量及び第2流量でサンプルガス及びキャリアガスをガス流路20に流すことができるように構成されている。コンピュータ80は、これら濃縮用ポンプ31及び検出用ポンプ32のオン状態とオフ状態を切り替える制御を行うことができる。また、コンピュータ80は、検出器60の検出結果を、検出器60から電気信号で受信する。
温度調節器70は、分離カラム40と濃縮管50の温度を調節する。温度調節器70は、例えばヒータ71と温度センサ72とを含んで構成されてもよく、あるいは恒温槽であってもよい。具体的には、例えば、温度センサ72で検知した温度が予め設定された温度になるように、コンピュータ80がヒータ71をオンオフ制御するように構成すればよい。ここでは、温度調節器70が分離カラム40と濃縮管50を同じ温度に調節する場合について説明するが、温度調節器70は、分離カラム40の温度と濃縮管50の温度を別々に異なる温度に調節するように構成されてもよい。例えば、ヒータ71と温度センサ72を分離カラム40と濃縮管50に対して2組設けて、分離カラム40と濃縮管50を別々に温度調節してもよい。別々に温度調節するとは、例えば、温度調節器70により、後述する検出ステップで、分離カラム40を40℃に調節し、濃縮管50を80℃に調節するなどである。また、濃縮管50の温度は、後述する濃縮ステップと検出ステップで温度を変更してもよい。ステップごとに温度を変更するとは、例えば、コンピュータ80により、濃縮管50の温度を、濃縮ステップでは40℃に調節し、検出ステップでは80℃に調節するなどである。
(3−3)ガス分析装置による分析
(3−3−1)対象ガス成分の濃縮ステップ
対象ガス成分の濃縮ステップでは、コンピュータ80が、二方弁22,26を開き、二方弁23,25を閉じる。コンピュータ80は、二方弁22,26を開くことで、第2流路20c2、第4流路20c4、第5流路20c5及び第6流路20c6をガスが流れ、吸気口20s1から吸い込まれたサンプルガスを排気口20e1から排気する構成にガス流路20を設定する。
そして、対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積またはそれよりも多く濃縮管50に流すことにより、対象ガス成分がサンプルガス中の移動相と固定相の中で固定相の全体にわたって平衡状態になるようにして対象ガス成分を固定相に保持させる。
上述の(2)で説明したように製造された硫化水素用の濃縮管50では、例えば、気相に空気(大気)を使用し、対象ガス成分が硫化水素であり、濃縮管50の温度を40℃にして、1ml/秒の流量でサンプルガスを40秒流すことで、サンプルガス中の移動相と固定相の中で対象ガス成分が固定相の全体にわたって平衡状態になる。なお、以下においては、サンプルガス中の移動相と固定相の中で対象ガス成分が固定相の全体にわたって平衡状態になることを、「飽和する」と説明する場合がある。
濃縮ステップでは、サンプルガスを濃縮管50に流す前に、温度調節器70により濃縮管50の温度を一定の温度に調節する。コンピュータ80は、例えば濃縮管50の温度を40℃に調節する。このとき、第2流路20c2の一部または全部を濃縮管50の温度と実質的に同じ温度に調節することが好ましい。
濃縮管50の温度調節後に、濃縮用ポンプ31により、一定の流量でサンプルガスを濃縮管50に流す。特定のサンプリング条件で、濃縮管50の固定相56に保持させることができる対象ガス成分が実質的に飽和するのに必要なサンプルガスの体積以上の量のサンプルガスを濃縮管50に流す。例えば、上述の(2)で説明した硫化水素用の濃縮管50では、1ml/秒の流量でサンプルガスを40秒流す。具体的には、コンピュータ80が濃縮用ポンプ31をオン状態にすると、濃縮用ポンプ31が1ml/秒の流量でサンプルガスを流し始める。詳細には、吸気口20s1から濃縮管50に到達するまでの時間td1を差し引いて40秒以上サンプルガスを流すため、コンピュータ80は、濃縮用ポンプ31をオン状態にしたタイミングでタイマ83のカウントを開始し、タイマ83のカウントが(40+td1)秒を超えるまで濃縮用ポンプ31を駆動させる。十分に濃縮するために、例えば20秒余分に濃縮用ポンプ31を駆動するように設定されていれば、コンピュータ80は、タイマ83のカウントが(40+td1+20)秒に達した時点で濃縮用ポンプ31を停止させる。濃縮用ポンプ31を停止させるタイミングで、コンピュータ80は、二方弁22,26を閉じる。コンピュータ80のメモリ82には、上述の濃縮ステップの操作に必要なデータ及びプログラムが記憶されている。
(3−3−2)対象ガス成分の検出ステップ
濃縮ステップ及びパージが終了した後、対象ガス成分の検出が行われる。なお、ガス分析装置10の電源がオンされてから、コンピュータ80は、検出用ポンプ32をオン状態にし、二方弁21,24,27を開いて二方弁23,25を閉じ、吸気口20s2から排気口20e2にキャリアガスを流して分離カラム40及び検出器60の安定化を図っている。対象ガス成分を検出するために、コンピュータ80は、二方弁22,24,26,27を閉じ、二方弁21,23,25を開く。コンピュータ80は、二方弁21,23,25を開くことで、第3流路20c3、第4流路20c4、第5流路20c5、第1流路20c1、第8流路20c8及び第9流路20c9をガスが流れ、吸気口20s2から吸い込まれたサンプルガスを排気口20e2から排気する構成にガス流路20を設定する。
そして、ガス分析装置10は、検出用ポンプ32を使って吸気口20s2から吸入したキャリアガスを第3流路20c3から第4流路20c4を経由して濃縮管50に流す。ガス分析装置10は、濃縮管50にキャリアガスを流すことにより、固定相に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともに濃縮管50から、対象ガス成分に係る分離カラム40の保持時間よりも短い時間で取り出す。なお、濃縮管50に送られるキャリアガスは、フィルタ33を通過して塵埃及び検出に無関係な成分が一部取り除かれた清浄な空気である。ここでは、フィルタを通過した空気を清浄空気と呼ぶ。上述の(2)で説明したが、ここでも、分離カラム40について、例えば、分離カラム40の固定相と移動相の中の硫化水素の分配比がD2であり、濃縮管50の固定相と移動相の中の硫化水素の分配比がD1で、D2/D1=5である場合を想定する。このように想定した場合に、分離カラム40の長さを濃縮管50の長さの10倍にして、同じ流量で清浄空気(キャリアガス)を流すと、濃縮管50から例えば4秒で全ての硫化水素を取り出して、分離カラム40における硫化水素に対する保持時間を200秒に容易に設定できる。
ガス分析装置10は、濃縮管50から取り出した対象ガス成分を含むキャリアガスを、第5流路20c5及び第1流路20c1を経由して分離カラム40に流す。分離カラム40は、キャリアガスで運ばれる対象ガス成分を含む複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持っている。このような分離カラム40で対象ガス成分が他の特定ガス成分から分離される。分離された対象ガス成分は、分離カラム40から第8流路20c8を経由して検出器60に送られ、検出器60で検出される。
精度良く定量分析を行う場合には、検量線の作成が行われる。対象ガス成分の濃度(例えば、1ppm、10ppm、100ppm)が既知であるサンプルガスを複数準備する。濃度が既知であるサンプルガスを用いて、上述の濃縮ステップ及び検出ステップを持つ測定方法によって測定を行う。そして、横軸に濃度を取り、縦軸に出力値を取って、その測定の検出結果(ピーク高さ及びピーク面積)を直線で近似して検量線を作成する。濃度を知りたいサンプルガスを同じ測定方法で測定して得られた出力値を示すラインと検量線とが交わる点の濃度がサンプルガスに含まれる対象ガス成分の濃度になる。
(4)対象ガス成分に対応した濃縮管50の構成
(4−1)対象ガス成分が硫化水素の場合
分離カラム40は、内径が4mmφ、長さ30cmの円筒状のテフロン(登録商標)製のパイプの中に、ジーエルサイエンス社製の充填剤(β,β’−ODPN(β,β’−Oxydipropionitrile))が長さ27cmにわたって充填されて35℃に保たれている。この例では、キャリアガス(清浄空気)の流量が27ml/秒に設定されている。
濃縮管50は、内径5mmφ、長さ5.5cmのテフロン(登録商標)製のパイプの中に、ウォーターズ社製の充填剤(Porapak N(DVB-EVBEthyleneglycol-dimethacrylate))が長さ5cmにわたって充填されて35℃に保たれている。
このような濃縮管50に、硫化水素(H2S)の濃度が異なるサンプルガス(空気)を50mlずつ通過させたものを5種類準備した。第1の濃縮管50は硫化水素の濃度が0.02ppmのサンプルガスを50ml流したものであり、第2の濃縮管50は硫化水素の濃度が0.04ppmのサンプルガスを50ml流したものであり、第3の濃縮管50は硫化水素の濃度が0.20ppmのサンプルガスを50ml流したものであり、第4の濃縮管50は硫化水素の濃度が0.40ppmのサンプルガスを50ml流したものであり、第5の濃縮管50は硫化水素の濃度が1.0ppmのサンプルガスを50ml流したものである。ここでは、濃縮管50は、濃縮率が約4×10倍に設定されている。そのため、50ml流すことにより、濃縮管50の固定相の全体にわたってサンプルガス中の移動相と固定相の中で硫化水素が平衡状態になり、その結果、濃縮管50では、単位体積(1ml)中に存する対象ガス成分である硫化水素の質量の(約40ml/1ml)倍の質量の硫化水素が固定相に保持されている。
図6には、硫化水素の濃度が1.0ppmのサンプルガスをガス注入口34から注入し、その後順次第1の濃縮管50から第5の濃縮管50をセットして、分離カラム40を通過した後に検出器60で硫化水素を検出した場合の検出結果が示されている。図6において、グラフ形状X0が硫化水素の濃度1.0ppmのサンプルガスを1mlガス注入口34から直接注入した場合の検出結果を示しており、グラフ形状X1が第1の濃縮管50をセットした場合の検出結果を示しており、グラフ形状X2が第2の濃縮管50をセットした場合の検出結果を示しており、グラフ形状X3が第3の濃縮管50をセットした場合の検出結果を示しており、グラフ形状X4が第4の濃縮管50をセットした場合の検出結果を示しており、グラフ形状X5が第5の濃縮管50をセットした場合の検出結果を示している。
硫化水素の濃度1.0ppmのサンプルガスを直接注入した場合の検出器60の出力の積分値と、硫化水素の濃度が0.02ppmのサンプルガスを50ml流した第1の濃縮管50をセットした場合の検出器60の出力の積分値が近い値を示している。検出器60の積分値は、検出器60で検出された硫化水素の質量の総和に比例する。
図7には、図6に示されているグラフ形状X0〜X5から求まる積分値が点P0〜点P5としてプロットされている。図7に示されている点P1〜点P5が、多少の誤差はあるものの、約4×10倍の直線に沿って並んでいる。この結果から、定量性が良いことが確認できる。
例えば、硫化水素についての検出下限濃度が0.05ppmのガスクロマトグラフ装置に濃縮管50を適用して感度を約4×10倍に上げることで、検出下限濃度が0.05ppmのガスクロマトグラフ装置でも0.001ppm以下の硫化水素の存在を検出できた。
(4−2)対象ガス成分がメチルメルカプタンの場合
分離カラム40は、内径が4mmφ、長さ30cmの円筒状のテフロン(登録商標)製のパイプの中に、ジーエルサイエンス社製の充填剤(β,β’−ODPN(β,β’−Oxydipropionitrile))が長さ27cmにわたって充填されて35℃に保たれている。この例では、キャリアガス(清浄空気)の流量が27ml/秒に設定されている。
濃縮管50は、内径5mmφ、長さ5.5cmのテフロン(登録商標)製のパイプの中に、ウォーターズ社製の充填剤(Porapak(登録商標) S(Vinylpyrollidone))が長さ5cmにわたって充填されて35℃に保たれている。
上記(4−1)で説明した硫化水素のための濃縮管50の構成と、メチルメルカプタンの構成では、濃縮管50に充填された固定相の種類が異なる。メチルメルカプタンに対してPorapak(登録商標) Nを充填剤として用いると、メチルメルカプタンに対する固定相の吸着力が強すぎて、濃縮管50からメチルメルカプタンを取り出すまでに時間が掛かりすぎて明瞭なピークを持つグラフ形状が得られない。
このような濃縮管50に、メチルメルカプタン(CH3SH)の濃度が1ppmのサンプルガス(空気)を100ml通過させた。ここでは、濃縮管50は、濃縮率が約7×10倍に設定されている。そのため、100ml流すことにより、濃縮管50の固定相の全体にわたってサンプルガス中の移動相と固定相の中でメチルメルカプタンが平衡状態になり、その結果、濃縮管50では、単位体積(1ml)のサンプルガス(空気)の中に存する対象ガス成分であるメチルメルカプタンの質量の(約70ml/1ml)倍の質量のメチルメルカプタンが固定相に保持されている。
図8には、メチルメルカプタンの濃度が1.0ppmのサンプル用ガスキャリアをガス注入口34から注入し、その後に濃縮管50をセットして、分離カラム40を通過した後に検出器60でメチルメルカプタンを検出した場合の検出結果が示されている。図8において、グラフ形状X10がメチルメルカプタンの濃度1.0ppmのサンプルガスを直接注入した場合の検出結果を示しており、グラフ形状X11が濃縮管50をセットした場合の検出結果を示している。
メチルメルカプタンの濃度1.0ppmのサンプルガスを直接注入した場合の検出器60の出力の積分値と、メチルメルカプタンの濃度が1.0ppmのサンプルガスを100ml流した濃縮管50をセットした場合の検出器60の出力の積分値が約7×10倍の値を示している。つまり、濃縮管50の濃縮率が約7×10であったということである。
メチルメルカプタンを濃縮したのと同じ濃縮管50(Porapak(登録商標) Sを充填したもの)を使って、硫化水素の濃縮を行った結果が、図8のグラフ形状X21で示されている。図8のグラフ形状X21が示しているのは、硫化水素の濃度が1ppmのサンプルガスを7ml以上流した濃縮管50をセットした場合の検出器60の出力である。なお、図8のグラフ形状X20は、硫化水素の濃度1.0ppmのサンプルガスを直接注入した場合の検出器60の出力を示している。グラフ形状X21の積分値は、グラフ形状X20の積分値の約7倍になっている。
(4−3)対象ガス成分がメチルメルカプタンの場合
濃縮管50は、内径5mmφ、長さ2cmのテフロン(登録商標)製のパイプの中に、ウォーターズ社製の充填剤(Porapak N)が長さ1cmにわたって充填されて35℃に保たれている。
この濃縮管50に、メチルメルカプタン(CH3SH)の濃度が1ppmのサンプルガスを50ml流した。このようにしてメチルメルカプタンが濃縮された濃縮管50を、分離カラム40の内部に充填されていた充填剤(固定相)を全て抜き去ったガス分析装置10にセットして、検出器60で検出した場合の検出器60の出力の変化が図9に示されている。分離カラム40の内部に充填剤(固定相)がないため、グラフ形状X30には綺麗なピークが認められないが、検出器60が大きな出力変化を示していることが図9から分かる。このことは、ガスクロマトグラフィーを使わない場合でも、シリンジ等の簡単な器具を使って微量ガス(対象ガス成分)を含む大気(サンプルガス)を濃縮管50に十分流通させた後に一定の流量でキャリアガスを流すことのできるエアーポンプで、濃縮管50に保持されている対象ガス成分を取り出して、ガスセンサ(検出器)で検出することにより微量の対象ガス成分を検出できるということである。
(4−4)対象ガス成分以外の特定ガス成分の検出を抑制する場合
微量の対象ガス成分以外に特定ガス成分を含むサンプルガスを、濃縮管50に流して濃縮した場合の検出方法の一例について、図10を用いて説明する。
ここでは、2種類の微量の特定ガス成分として、硫化水素とメチルメルカプタンを用いた。ここでは、メチルメルカプタンが対象ガス成分であり、硫化水素が対象ガス成分以外の特定ガス成分とみなしている。この検出方法では、2種類の特定ガス成分を含むサンプルガスを、濃縮管50に流した後に、少量の清浄空気を濃縮管50に流通させて濃縮管50の移動相と固定相との間の分配比が小さい特定ガス成分を追い出す。この検出方法では、分配比が小さい特定ガス成分を追い出した後に、移動相と固定相との間の分配比が大きな対象ガス成分を主に検出している。分配比が小さいということは充填剤(固定相)と特定ガス成分との間の相互作用が小さいことを意味し、分配比が大きいということは充填剤(固定相)と特定ガス成分との間の相互作用が大きいことを意味する。
濃縮管50は、内径5mmφ、長さ2cmのテフロン(登録商標)製のパイプの中に、ウォーターズ社製の充填剤(Porapak N)が長さ1cmにわたって充填されて35℃に保たれている。このような濃縮管50に、硫化水素の濃度が1ppmで且つメチルメルカプタンの濃度が1ppmのサンプルガスを50ml流した後に、清浄空気を10mlだけ流した。つまり、清浄空気を少しだけ流したということは、固定相との相互作用が小さい硫化水素を追い出したということである。このように清浄空気を10mlだけ流した後に濃縮管50をガス分析装置10にセットした。その後、ガス分析装置10で分析された結果が図10に示されている。図10には、硫化水素の濃度が1ppmのサンプルガスをガス注入口34から注入したときの出力を示すグラフ形状X40、メチルメルカプタンの濃度が1ppmのサンプルガスをガス注入口34から注入したときの出力を示すグラフ形状X41、硫化水素とメチルメルカプタンのそれぞれの濃度が1ppmのサンプルガスをガス注入口34から注入したときの出力を示すグラフ形状X42、セットする前に10mlの清浄空気を流さずに濃縮管50から硫化水素とメチルメルカプタンをキャリアガスで取り出したときの出力を示すグラフ形状X43、及びセットする前に10mlの清浄空気を流した後で濃縮管50から硫化水素とメチルメルカプタンをキャリアガスで取り出したときの出力を示すグラフ形状X44が記載されている。
グラフ形状X43にはショルダーShが見られるが、グラフ形状X44にはショルダーが見られない。セットする前に10mlの清浄空気を流さずに濃縮管50から硫化水素とメチルメルカプタンをキャリアガスで取り出したときには、硫化水素を検出した出力とメチルメルカプタンを検出した出力が重なっているが、セットする前に10mlの清浄空気を流した後で濃縮管50から硫化水素とメチルメルカプタンをキャリアガスで取り出したときには、メチルメルカプタンを検出した出力のみが得られ、メチルメルカプタンを単独で分析することができる。
(5)変形例
(5−1)変形例1
上記実施形態では、検出器60を備えるガス分析装置10について説明したが、検出器60を外してガスクロマトグラフ装置100として使用することもできる。ガスクロマトグラフ装置100は、ガス流路20に各種の機器(検出器60を除く)が接続されて構成されている。ガスクロマトグラフ装置100のガス流路20は、2つの吸気口20s1,20s2と、2つの排気口20e1,20e2との間に配置されている第1流路20c1から第9流路20c9及び7個の二方弁21から二方弁27が設けられている。また、ガスクロマトグラフ装置100のガス流路20に接続されている機器には、濃縮用ポンプ31、検出用ポンプ32、フィルタ33、ガス注入口34、分離カラム40及び濃縮管50がある。また、ガス分析装置10は、温度調節器70及びコンピュータ80をさらに備えている。このガスクロマトグラフ装置100においてコンピュータ80は、二方弁21〜27、濃縮用ポンプ31、検出用ポンプ32及び温度調節器70の制御装置として機能する。
(5−2)変形例2
上記実施形態では、二方弁21〜27、濃縮用ポンプ31、検出用ポンプ32及び温度調節器70をコンピュータ80で自動的に制御する場合について説明した。しかし、ガス分析装置10またはガスクロマトグラフ装置100の二方弁21〜27、濃縮用ポンプ31、検出用ポンプ32及び温度調節器70には、手動で操作できるものを用いることもできる。
(5−3)変形例3
上記実施形態、変形例1及び変形例2のガス分析装置10及びガスクロマトグラフ装置100は、濃縮管50が取り付けられた状態で濃縮するものであった。しかし、図11に示されているように、濃縮管50の両端をジョイントJ1,J2でガス流路20に取り付けられるようにして、ガス分析装置10及びガスクロマトグラフ装置100以外の場所で対象ガス成分を濃縮管50に濃縮するように構成することもできる。
なお、このようにガス分析装置10及びガスクロマトグラフ装置100以外の場所で対象ガス成分を濃縮管50に濃縮するように構成する場合には、図4に示されている濃縮用ポンプ31及び二方弁22を省くことができる。
(5−4)変形例4
変形例3で説明したように、ガス分析装置10及びガスクロマトグラフ装置100以外の場所で濃縮管50に対象ガス成分を濃縮する場合には、例えば、図12に示されている濃縮装置200を使用してもよい。
濃縮装置200は、吸気口20s3から排気口20e3に至る流路の中に、上流側から順に濃縮用ポンプ31と、ジョイントJ1と、濃縮管50と、ジョイントJ2が配置される。濃縮管50は、ジョイントJ1,J2によって着脱自在に、濃縮装置200に取り付けられる。また、濃縮装置200は、特定のサンプリング条件の一つである特定のサンプリング温度(例えば、35℃)でサンプリングするための温度調節器70が取り付けられている。サンプリング条件としては、流量を一定の所定値(例えば、1ml/秒)にすることが含まれてもよい。
濃縮後は、濃縮管50の中の平衡状態を維持させるため、サンプルガスを閉じ込めておく。そのために、濃縮管50には、入口用コック54と出口用コック55が設けられている。濃縮装置200での濃縮が終了したら、濃縮管50の入口用コック54と出口用コック55を閉じて、サンプルガスを濃縮管50の中に閉じ込める。入口用コック54と出口用コック55を閉じた状態で、濃縮管50は、濃縮装置200からガス分析装置10またはガスクロマトグラフ装置100に移動される。そして、ガス分析装置10またはガスクロマトグラフ装置100に濃縮管50が取り付けられた後に、濃縮管50の入口用コック54と出口用コック55が開かれる。
なお、入口用コック54と出口用コック55は、手動で開閉できるものであってもよいが、電磁弁などの電気的に開閉できて自動で開閉を制御できるものであってもよい。
(5−5)変形例5
上記実施形態で説明した技術、特に(4−3)で説明した技術を用いてガス検知器を構成する場合について図13及び図14を用いて説明する。
(5−5−1)ガス検知器の構成の概要
ガス検知器300は、1つの吸気口20s4と、2つの排気口20e4,20e5との間に配置されている2個の二方弁28,29、ポンプ35、濃縮管50、検出器60、温度調節器70及びコンピュータ80を備えている。
ポンプ35は、一定の流量でガスを送ることができるエアーポンプである。ここでは、定流量機能を持つポンプ35を使用することで、キャリアガスの流量を一定にしている。しかし、一定の流量でキャリアガスを流す供給装置は、一定の流量でガスを送ることができるエアーポンプに限られるものではなく、例えば流量調整器と定流量機能を持たないエアーポンプとを組みあせて構成してもよい。検出器60には、上記実施形態と同様の検出器を用いることができる。
濃縮管50は、内部に高分子材料からなる固定相を有している。高分子材料からなる固定相は、例えば、Porapak(登録商標) N及びPorapak(登録商標) Sである。
(5−5−2)ガス検知器の制御系統
ガス検知器300が備えるコンピュータ80は、CPU81、メモリ82、タイマ83、表示装置84、入力装置85及びインタフェース86を有している。コンピュータ80は、インタフェース86により、二方弁28,29、ポンプ35、検出器60及び温度調節器70に接続されている。二方弁28,29は、コンピュータ80によって開閉を制御することができる電磁弁または電動弁である。コンピュータ80は、ポンプ35のオン状態とオフ状態を切り替える制御を行うことができる。また、コンピュータ80は、検出器60の検出結果を、検出器60から電気信号で受信する。
温度調節器70は、濃縮管50の温度を調節する。温度調節器70は、例えばヒータ71と温度センサ72とを含んで構成されてもよく、あるいは恒温槽であってもよい。具体的には、例えば、温度センサ72で検知した温度が予め設定された温度になるように、コンピュータ80がヒータ71をオンオフ制御するように構成すればよい。ここでは、温度調節器70によって、濃縮時の濃縮管50の温度と検出時の濃縮管50の温度とが異なる温度になるように調節される。
(5−5−3)ガス検知器による検知
対象ガス成分の濃縮時には、コンピュータ80が、二方弁28を開き、二方弁29を閉じる。コンピュータ80は、二方弁28を開くことで、検出器60にはガスを流さずに濃縮管50にサンプルガスを流す濃縮経路に切り替え、吸気口20s4から吸い込まれたサンプルガスを排気口20e4から排気する。この濃縮時には、コンピュータ80は、100℃以下で且つ検出時よりも低い温度に濃縮管50の温度が設定されるように温度調節器70を制御する。温度調節器70は、例えば、濃縮時には濃縮管50が35℃になるように温度調節し、検出時には濃縮管50が90℃になるように温度調節する。
そして、対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積またはそれよりも多く濃縮管50に流すことにより、対象ガス成分がサンプルガス中の移動相と固定相の中で固定相の全体にわたって平衡状態になるようにして対象ガス成分を固定相に保持させる。
検出時には、対象ガス成分を検出するために、コンピュータ80は、二方弁28を閉じ、二方弁29を開く。コンピュータ80は、二方弁29を開くことで、濃縮管50を経由したガスを検出器60に流す検出経路に切り替え、吸気口20s4から吸い込まれたキャリアガスを、濃縮管50と検出器60を経由して排気口20e5から排気する。この検出時には、コンピュータ80は、100℃以下で且つ濃縮時よりも高い温度に濃縮管50の温度が設定されるように温度調節器70を制御する。
そして、ガス検知器300は、固定相に保持されている対象ガス成分を、濃縮に要した時間よりも短時間で取り出すことにより、濃縮管50から検出器60に流れるキャリアガスの中の対象ガス成分の濃度をサンプルガスの中の対象ガス成分の濃度よりも高めて、対象ガス成分の検知を行う。
ガス検知器300は、繰り返しガス検知ができるように、検知後にパージを行う。そのために、対象ガス成分の検出が終了した後に、コンピュータ80は、例えば、表示装置84にパージを促す表示を行う。例えば、ユーザは、吸気口20s4を対象ガス成分が含まれていない雰囲気中においたら、入力装置85を使ってパージを指示する。コンピュータ80は、パージの指示を受けた後にポンプ35をオン状態にして、濃縮管50のパージを行う。
(5−6)変形例6
上記実施形態及び変形例では、濃縮管50は、1本だけ接続されているが、濃縮管50を複数本束ねて接続できるように、ガス分析装置10またはガスクロマトグラフ装置100を構成してもよい。
(5−7)変形例7
上記実施形態及び変形例では、濃縮時の温度が室温付近の温度である場合について説明したが、濃縮時の温度は室温付近の温度に限られるものではなく、室温よりも低い温度であってもよい。例えば、0℃以下に濃縮管50を冷やして濃縮が行われてもよい。例えば、氷、ペルチェ素子、液体窒素などの冷却手段を用いて濃縮管50を冷やしつつサンプルガスを濃縮してもよい。
(6)特徴
(6−1)
上記実施形態で説明したように、本開示のガスクロマトグラフィーによる分離方法によれば、濃縮ステップにおいて、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持つ濃縮管50に対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積流すことによって、固定相の全体にわたって移動相と固定相の中で対象ガス成分が平衡状態になるようにして、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持させる。
検出ステップにおいて、キャリアガスを濃縮管50に流すことにより、固定相に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともに濃縮管50から、対象ガス成分に係る分離カラム40の保持時間よりも短い時間で取り出す。
検出ステップにおいて、濃縮管50から取り出された対象ガス成分を含むキャリアガスを分離カラム40に流して、キャリアガスで運ばれる対象ガス成分を含む複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持つ分離カラム40で対象ガス成分を分離する。
このように、対象ガス成分が濃縮管50で濃縮される倍率が(特定体積/単位体積)倍に定まっているので、分離カラム40で分離された濃縮後の対象ガス成分を、分離カラム40の下流側で定量的に分析することができる。あるいは、濃縮管50で濃縮される倍率がある程度の範囲で特定されていれば、微量の対象ガス成分について適切に検出限界を引き上げられ、従来難しかった微量の対象ガス成分についてもガスクロマトグラフィーによる分離の対象とすることができるようになる。
本開示のガスクロマトグラフィーによる分離方法によれば、従来のシリカゲルなどに吸着させて加熱して脱離させる濃縮方法と比較しても、遜色のない濃縮が行える。また、本開示のガスクロマトグラフィーによる分離方法では、従来は使い捨てられることが多かった濃縮管50の繰り返しの使用が容易になっている。また、本開示のガスクロマトグラフィーによる分離方法では、濃縮率(濃縮管50で濃縮される倍率)の設定も自由に行える。さらに、本開示のガスクロマトグラフィーによる分離方法では、濃縮したい物質(対象ガス成分)に対して複数の充填剤を選べるという利便性を持っている。
(6−2)
上記実施形態で説明したように、本開示のガスクロマトグラフ装置100は、分離カラム40と、濃縮管50と、二方弁21〜27からなる流路切替装置とを備えている。濃縮管50は、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持っている。ガスクロマトグラフ装置100は、二方弁21〜27からなる流路切替装置によって濃縮経路(第2流路20c2、第4流路20c4、第5流路20c5及び第6流路20c6)に切り替え、濃縮管50に対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積流すことにより、固定相の全体にわたって移動相と固定相の中で対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持するように構成されている。
また、ガスクロマトグラフ装置100は、二方弁21〜27からなる流路切替装置によって検出経路(第3流路20c3、第4流路20c4、第5流路20c5、第1流路20c1、第8流路20c8及び第9流路20c9)に切り替え、キャリアガスを濃縮管50に流すことにより、固定相に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともに濃縮管50から、対象ガス成分に係る分離カラム40の保持時間よりも短い時間で取り出すことができるように構成されている。
このように、対象ガス成分が濃縮管50で濃縮される倍率が(特定体積/単位体積)倍に定まっているので、ガスクロマトグラフ装置100を使えば、分離カラム40で分離された濃縮後の対象ガス成分を、分離カラム40の下流側で定量的に分析することができる。あるいは、濃縮管50で濃縮される倍率がある程度の範囲で特定されていれば、微量の対象ガス成分について適切に検出限界を引き上げられ、従来難しかった微量の対象ガス成分についてもガスクロマトグラフ装置100による分離の対象とすることができるようになる。
本開示のガスクロマトグラフ装置100によれば、従来のシリカゲルなどに吸着させて加熱して脱離させる濃縮方法を用いる装置と比較しても、遜色のない濃縮が行える。また、本開示のガスクロマトグラフ装置100では、従来は使い捨てられることが多かった濃縮管50の繰り返しの使用が容易になっている。また、本開示のガスクロマトグラフ装置100では、濃縮率(濃縮管50で濃縮される倍率)の設定も自由に行える。さらに、本開示のガスクロマトグラフ装置100では、濃縮したい物質(対象ガス成分)に対して複数の充填剤を選べるという利便性を持っている。
(6−3)
上記実施形態で説明したように、本開示のガス分析装置10は、分離カラム40と、濃縮管50と、二方弁21〜27からなる流路切替装置と、検出器60とを備えている。濃縮管50は、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持っている。ガス分析装置10は、二方弁21〜27からなる流路切替装置によって濃縮経路(第2流路20c2、第4流路20c4、第5流路20c5及び第6流路20c6)に切り替え、濃縮管50に対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積流すことにより、固定相の全体にわたって移動相と固定相の中で対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持するように構成されている。
また、ガス分析装置10は、二方弁21〜27からなる流路切替装置によって検出経路(第3流路20c3、第4流路20c4、第5流路20c5、第1流路20c1、第8流路20c8及び第9流路20c9)に切り替え、キャリアガスを濃縮管50に流すことにより、固定相に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともに濃縮管50から、対象ガス成分に係る分離カラム40の保持時間よりも短い時間で取り出すことができるように構成されている。
このように、対象ガス成分が濃縮管50で濃縮される倍率が(特定体積/単位体積)倍に定まっているので、ガス分析装置10の検出器60では、分離カラム40で分離された濃縮後の対象ガス成分を、分離カラム40の下流側で定量的に分析することができる。あるいは、濃縮管50で濃縮される倍率がある程度の範囲で特定されていれば、微量の対象ガス成分についてガス分析装置10の検出限界を適切に引き上げられ、従来検出限界以下であった微量の対象ガス成分についてもガス分析装置10の対象とすることができるようになる。
本開示のガス分析装置10によれば、従来のシリカゲルなどに吸着させて加熱して脱離させる濃縮方法を用いる装置と比較しても、遜色のない濃縮が行える。また、本開示のガス分析装置10では、従来は使い捨てられることが多かった濃縮管50の繰り返しの使用が容易になっている。また、本開示のガス分析装置10では、濃縮率(濃縮管50で濃縮される倍率)の設定も自由に行える。さらに、本開示のガス分析装置10では、濃縮したい物質(対象ガス成分)に対して複数の充填剤を選べるという利便性を持っている。
(6−4)
例えば、図3を用いて説明したように、濃縮管50は、中空部材であるチューブ51と、固定相56とを備えている。中空部材であるチューブ51は、入口52と出口53を持ち、入口52から出口53に向けてガスを流せるように構成されている。固定相56は、チューブ51の入口52と出口53の間に配置されている。濃縮管50は、固定相56とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持っている。
濃縮管50は、対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積またはそれよりも多くチューブ51に流すことにより、固定相56の全体にわたって移動相と固定相56の中の対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相56に保持することができる。また、濃縮管50は、キャリアガスをチューブ51に流すことにより、固定相56に保持されている対象ガス成分をキャリアガスとともにチューブ51から、対象ガス成分に係る分離カラム40の保持時間よりも短い時間で取り出すことができるように構成されている。
このように、対象ガス成分が濃縮管50で濃縮される倍率が(特定体積/単位体積)倍に定まっているので、例えばガス分析装置10またはガスクロマトグラフ装置100に濃縮管50を使えば、分離カラム40で分離された濃縮後の対象ガス成分を、分離カラム40の下流側で定量的に分析することができる。
(6−5)
図3を用いて説明したように、濃縮管50は、入口52に取り付けられ、入口52の開閉を行う第1バルブである入口用コック54と、出口53に取り付けられ、出口53の開閉を行う第2バルブである出口用コック55とを備えている。濃縮管50は、入口用コック54と出口用コック55によって入口52と出口53を閉じることにより、チューブ51を密閉できるように構成されている。
濃縮管50がこのように構成されているので、濃縮後にチューブ51を密閉して、チューブ51の中にサンプルガスを閉じ込めて、濃縮管50の中でサンプリングを完了した時の平衡状態を維持させることができる。その結果、チューブ51の中に対象ガス成分の濃度を変化させる気体が侵入するのを防止することができ、濃縮管50を単独で移動させても、サンプリングが完了したときと実質的に同じ質量の対象ガス成分を固定相56に保持させることができる。その結果、定量的な対象ガス成分の検出が容易になる。
(6−6)
図12を用いて説明したように、濃縮装置200は、濃縮管50と、濃縮用ポンプ31と、密閉器具である入口用コック54と出口用コック55とを備えている。濃縮管50は、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持っている。
濃縮用ポンプ31は、ジョイントJ1,J2によって濃縮管50を取り付けることにより、濃縮管50に接続できるように構成されている。そして、濃縮用ポンプ31は、対象ガス成分を含むサンプルガスを濃縮管50に流すことができる。密閉器具である入口用コック54と出口用コック55は、濃縮用ポンプ31を停止した状態で濃縮管50の中にサンプルガスを閉じ込めることができるように構成されている。
濃縮装置200は、対象ガス成分を含むサンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積またはそれよりも多く濃縮管50に流すことにより、固定相の全体にわたって濃縮管50内の移動相と固定相の中の対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相に保持するように構成されている。
濃縮装置200がこのように構成されているので、濃縮後に濃縮管50を入口用コック54と出口用コック55で密閉して濃縮管50の中にサンプルガスを閉じ込め、濃縮管50の中でサンプリングを完了した時の平衡状態を維持させることができる。その結果、濃縮管50の中に対象ガス成分の濃度を変化させる気体が侵入するのを防止することができ、濃縮管50を単独で移動させても、サンプリングが完了したときと実質的に同じ質量の対象ガス成分を固定相56に保持させることができる。その結果、定量的な対象ガス成分の検出が容易になる。
(6−7)
上記実施形態で説明した濃縮管50の製造方法では、濃縮管50の内部に固定相56を配置し、濃縮管50に、濃度が調整された対象ガス成分を含む標準ガスを流し、濃縮管50の濃縮率を決めるために、濃縮管50に標準ガスを流し始めてから、濃縮管50から対象ガス成分が取り出されるまでの標準ガスの体積を用いている。
このような濃縮管50の製造方法によれば、固定相56の全体にわたって濃縮管50内の移動相と固定相56の中の対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の移動相の中に存する対象ガス成分の質量の(特定体積/単位体積)倍の質量の対象ガス成分を固定相56に保持することのできる濃縮管50を容易に製造することができる。
(6−8)
図13及び図14を用いて説明したガス検知器300は、検出器60と、濃縮管50と、二方弁28,29からなる流路切替装置と、温度調節器70とを備えている。検出器60は、対象ガス成分を検出することができるように構成されている。濃縮管50が内部に有する固定相は、高分子材料からなっている。濃縮管50は、対象ガス成分を含むサンプルガスを流した場合に、固定相とサンプルガス中の移動相との間で対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成されている。そして、二方弁28,29からなる流路切替装置は、検出器60にはガスを流さずに濃縮管50にサンプルガスを流す濃縮経路(吸気口20s4から濃縮管50と二方弁28を経由して排気口20e4に流れる経路)と、濃縮管50を経由したガスを検出器60に流す検出経路(吸気口20s4から濃縮管50と二方弁29と検出器60を経由して排気口20e5に流れる経路)とを切り替えられるように構成されている。
そして、温度調節器70は、濃縮管50での対象ガス成分の濃縮時と濃縮管50から対象ガス成分を取り出す検出時とで、濃縮管50の温度を切り替えるように構成されている。また、温度調節器70は、検出時の濃縮管50の温度が100℃以下になるように設定されている。
検出時の濃縮管50の温度が100℃以下になるように温度調節器70が設定されているので、高分子材料からなる固定相の受けるダメージを抑制することができ、濃縮管50に100℃よりも高い温度を掛ける場合に比べて、ガス検知器300の濃縮管50の寿命を延ばすことができる。
また、温度調節器70が、濃縮時よりも検出時の方が固定相に保持されている対象ガス成分を速く取り出すことができるように温度設定しておくことで、濃縮管50での対象ガス成分の濃縮時と濃縮管50から対象ガス成分を取り出す検出時とで、濃縮管50の温度を切り替えることによって、検出時の対象ガス成分の濃度を高めることができ、対象ガス成分を検知し易くなる。
(6−9)
なお、分配比は、分離後の分析精度を向上させるために10より大きいことが好ましい。また、検出器60の検出下限濃度を引き上げるために、分配比は50よりも大きいことが好ましい。
(6−10)
また、キャリアガスを流して、濃縮管50から対象ガス成分を取り出す時間は、分離カラム40での対象ガス成分の分離の精度を上げるため、対象ガス成分に係る分離カラム40の保持時間の10分の1よりも短いことが好ましく、50分の1よりも短いことが好ましい。濃縮管50から対象ガス成分を取り出す時間を保持時間よりも短くするには、濃縮時よりも濃縮管50から対象ガス成分を取り出すときの濃縮管50の温度を高くすることが好ましい。濃縮管50から対象ガス成分を取り出す時間を保持時間よりも短くするには、濃縮管50の長さを分離カラム40の長さよりも短くすることが好ましい。また、濃縮管50から対象ガス成分を取り出す時間を保持時間よりも短くするには、濃縮管50の固定相とキャリアガスの中の対象ガス成分の分配比が、分離カラム40の固定相とキャリアガスの中の対象ガス成分の分配比よりも大きいことが好ましい。
10 ガス分析装置
21〜29 二方弁
31 濃縮用ポンプ
40 分離カラム
50 濃縮管
51 チューブ
52 入口
53 出口
54 入口用コック
55 出口用コック
56 固定相
60 検出器
70 温度調節器
100 ガスクロマトグラフ装置
200 濃縮装置
300 ガス検知器
J1,J2 ジョイント

Claims (8)

  1. 固定相とサンプルガス中の移動相との間で検出対象の対象ガス成分について1より大きな分配比を持つ濃縮管に前記対象ガス成分を含む前記サンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積流すことによって、前記固定相の全体にわたって前記移動相と前記固定相の中で前記対象ガス成分が平衡状態になるようにして、単位体積の前記移動相の中に存する前記対象ガス成分の質量の(前記特定体積/単位体積)倍の質量の前記対象ガス成分を前記固定相に保持させ、
    キャリアガスを前記濃縮管に流すことにより、前記固定相に保持されている前記対象ガス成分を前記キャリアガスとともに前記濃縮管から、前記対象ガス成分に係る分離カラムの保持時間よりも短い時間で取り出し、
    前記濃縮管から取り出した前記対象ガス成分を含む前記キャリアガスを前記分離カラムに流して、前記キャリアガスで運ばれる前記対象ガス成分を含む複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持つ前記分離カラムで前記対象ガス成分を分離する、ガスクロマトグラフィーによる分離方法。
  2. 第1流路に接続され、前記第1流路を流れるキャリアガスで運ばれる複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持ち、前記複数の特定ガス成分の中の検出対象の対象ガス成分を分離する構成を有する分離カラムと、
    前記第1流路、第2流路及び第3流路に接続され、前記第2流路から前記第1流路に前記対象ガス成分を含むガスを流す濃縮経路と前記第3流路から前記第1流路に前記対象ガス成分を含まないガスを流す検出経路とを切り替えられるように構成されている流路切替装置と、
    前記第2流路に挿入され、内部に固定相を有し、前記対象ガス成分を含むサンプルガスを流した場合に、前記固定相と前記サンプルガス中の移動相との間で前記対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成されている濃縮管と
    を備え、
    前記流路切替装置によって前記濃縮経路に切り替え、前記濃縮管に前記対象ガス成分を含む前記サンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積流すことにより、前記固定相の全体にわたって前記移動相と前記固定相の中で前記対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の前記移動相の中に存する前記対象ガス成分の質量の(前記特定体積/単位体積)倍の質量の前記対象ガス成分を前記固定相に保持するように構成され、且つ
    前記流路切替装置によって前記検出経路に切り替え、前記キャリアガスを前記濃縮管に流すことにより、前記固定相に保持されている前記対象ガス成分を前記キャリアガスとともに前記濃縮管から、前記対象ガス成分に係る前記分離カラムの保持時間よりも短い時間で取り出すことができるように構成されている、ガスクロマトグラフ装置。
  3. 第1流路に接続され、前記第1流路を流れるキャリアガスで運ばれる複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持ち、前記複数の特定ガス成分の中の検出対象の対象ガス成分を分離する構成を有する分離カラムと、
    前記第1流路の前記分離カラムの下流に配置され、前記対象ガス成分を検出する構成を有する検出器と、
    前記第1流路、第2流路及び第3流路に接続され、前記第2流路から前記第1流路に前記対象ガス成分を含むガスを流す濃縮経路と前記第3流路から前記第1流路に前記対象ガス成分を含まないガスを流す検出経路とを切り替えられるように構成されている流路切替装置と、
    前記第2流路に挿入され、内部に固定相を有し、前記対象ガス成分を含むサンプルガスを流した場合に、前記固定相と前記サンプルガス中の移動相との間で前記対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成されている濃縮管と
    を備え、
    前記流路切替装置によって前記濃縮経路に切り替え、前記濃縮管に前記対象ガス成分を含む前記サンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積流すことにより、前記固定相の全体にわたって前記移動相と前記固定相の中で前記対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の前記移動相の中に存する前記対象ガス成分の質量の(前記特定体積/単位体積)倍の質量の前記対象ガス成分を前記固定相に保持するように構成され、且つ
    前記流路切替装置によって前記検出経路に切り替え、前記キャリアガスを前記濃縮管に流すことにより、前記固定相に保持されている前記対象ガス成分を前記キャリアガスとともに前記濃縮管から、前記対象ガス成分に係る前記分離カラムの保持時間よりも短い時間で取り出すことができるように構成されている、ガス分析装置。
  4. キャリアガスで運ばれる複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持ち、前記複数の特定ガス成分の中の検出対象の対象ガス成分を分離する構成を有する分離カラムを用いるガスクロマトグラフ装置で使用される濃縮管であって、
    入口と出口を持ち、前記入口から前記出口に向けてガスを流せるように構成されている中空部材と、
    前記中空部材の前記入口と前記出口の間に配置されている固定相と
    を備え、
    前記対象ガス成分を含むサンプルガスを前記中空部材に流した場合に、前記固定相と前記サンプルガス中の移動相との間で前記対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成され、
    前記対象ガス成分を含む前記サンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積前記中空部材に流すことにより、前記固定相の全体にわたって前記移動相と前記固定相の中の前記対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の前記移動相の中に存する前記対象ガス成分の質量の(前記特定体積/単位体積)倍の質量の前記対象ガス成分を前記固定相に保持するように構成され、且つ
    前記キャリアガスを前記中空部材に流すことにより、前記固定相に保持されている前記対象ガス成分を前記キャリアガスとともに前記中空部材から、前記対象ガス成分に係る前記分離カラムの保持時間よりも短い時間で取り出すことができるように構成されている、濃縮管。
  5. 前記入口に取り付けられ、前記入口の開閉を行う第1バルブと、
    前記出口に取り付けられ、前記出口の開閉を行う第2バルブと
    をさらに備え、
    前記第1バルブと前記第2バルブによって前記入口と前記出口を閉じることにより、前記中空部材を密閉できるように構成されている、
    請求項4に記載の濃縮管。
  6. キャリアガスで運ばれる複数の特定ガス成分について異なる保持時間を持ち、前記複数の特定ガス成分の中の検出対象の対象ガス成分を分離する構成を有する分離カラムを用いるガスクロマトグラフ装置のための濃縮装置であって、
    内部に固定相を有し、前記対象ガス成分を含むサンプルガスを流した場合に、前記固定相と前記サンプルガス中の移動相との間で前記対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成されている濃縮管と、
    前記濃縮管に接続できるように構成され、前記サンプルガスを前記濃縮管に流すことができるように構成されている濃縮用ポンプと、
    前記濃縮用ポンプを停止した状態で前記濃縮管の中に前記対象ガス成分を含む前記サンプルガスを閉じ込めることができるように構成されている密閉器具と
    を備え、
    前記サンプルガスを特定のサンプリング条件で特定体積前記濃縮管に流すことにより、前記固定相の全体にわたって前記濃縮管内の前記移動相と前記固定相の中の前記対象ガス成分が平衡状態になり、単位体積の前記移動相の中に存する前記対象ガス成分の質量の(前記特定体積/単位体積)倍の質量の前記対象ガス成分を前記固定相に保持するように構成されている、濃縮装置。
  7. 濃縮管の内部に固定相を配置し、
    前記濃縮管に、濃度が調整された対象ガス成分を含む標準ガスを流し、
    前記濃縮管の濃縮率を決めるために、前記濃縮管に前記標準ガスを流し始めてから、前記濃縮管から前記対象ガス成分が取り出されるまでの前記標準ガスの体積を用いる、濃縮管の製造方法。
  8. 対象ガス成分を検出する構成を有する検出器と、
    高分子材料からなる固定相を内部に有し、前記対象ガス成分を含むサンプルガスを流した場合に、前記固定相と前記サンプルガス中の移動相との間で前記対象ガス成分について1より大きな分配比を持つように構成されている濃縮管と、
    前記検出器にはガスを流さずに前記濃縮管に前記サンプルガスを流す濃縮経路と、前記濃縮管を経由したガスを前記検出器に流す検出経路とを切り替えられるように構成されている流路切替装置と、
    前記濃縮管での前記対象ガス成分の濃縮時と前記濃縮管から前記対象ガス成分を取り出す検出時とで前記濃縮管の温度を切り替えるように構成され、検出時の前記濃縮管の温度が100℃以下になるように設定されている温度調節器と
    を備える、ガス検知器。
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