JP2019210394A - 蓄熱材、伝熱装置及びエネルギーハーベスタ - Google Patents
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Abstract
Description
なお、例えば空気調和装置や冷却装置の冷媒として蓄熱材を用いる場合にも、冷媒の温度が上がらないようにするために、冷媒として用いられる蓄熱材の温度変化をできるだけ抑制することが考えられる。
1つの態様では、伝熱装置は、容器と、容器内に設けられた蓄熱材と、蓄熱材に熱的に接続された放熱フィンとを備え、蓄熱材は、少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、水よりも比熱が大きい混合液からなる。
[第1実施形態]
まず、本実施形態にかかる蓄熱材、伝熱装置及びエネルギーハーベスタについて、図1〜図18を参照しながら説明する。
本実施形態では、図1に示すように、エネルギーハーベスタ1は、熱電変換素子2と、容器3と、容器3内に設けられた蓄熱材4と、熱電変換素子2の一方の側に熱的に接続され、かつ、蓄熱材4に熱的に接続された放熱フィン5とを備える。
この場合、容器3と、蓄熱材4と、放熱フィン5とによって、伝熱装置6が構成される。つまり、本実施形態にかかるエネルギーハーベスタ1は、容器3と、蓄熱材4と、放熱フィン5とによって構成される伝熱装置6を備える。
つまり、本実施形態にかかる伝熱装置6は、容器3と、容器3内に設けられた蓄熱材4と、蓄熱材4に熱的に接続された放熱フィン5とを備え、例えばエネルギーハーベスタ1や後述の冷却装置などの種々の用途に用いることができる。
なお、これに限られるものではなく、例えば樹脂などの断熱材からなる断熱容器(例えば樹脂製容器)を用いても良い。
ここでは、放熱フィン5は、ベース部(底板)9にその表面から突出するように設けられており、放熱フィン5及びベース部9の全体が容器3内に設けられている。
ここでは、ベース部9、即ち、放熱フィン5の底板は、熱電変換素子2に伝熱グリースを介して接続されている。
ここで、放熱フィン5及びベース部9は、例えば金属等の高熱伝導率の材料からなる。本実施形態では、放熱フィン5及びベース部9をアルミニウムからなるものとしている。
蓄熱材4は、容器3内に設けられ、放熱フィン5に熱的に接続されている。ここでは、容器3内に入れられた蓄熱材4の中に放熱フィン5の少なくとも一部を浸漬している。
本実施形態では、さらに、容器3に設けられ、容器3よりも熱伝導率が高い伝熱部材10を備える。この伝熱部材10は、例えば金属等の高熱伝導率の材料からなる。なお、伝熱部材10を伝熱部品ともいう。
ところで、本実施形態では、蓄熱材4は、顕熱を利用する蓄熱材(顕熱利用蓄熱材;顕熱蓄熱材)である。
ここで、一価のアルコールは、CnH2n+1OHで表され、nが5以下で、かつ、nが3以上の場合は直鎖ではないアルコール、即ち、直鎖のアルコール以外のアルコールである。なお、nは炭素数である。また、直鎖ではないアルコールを、枝分かれのあるアルコール、分枝のあるアルコール又は側鎖のあるアルコールともいう。
ここで、少なくとも一種類の一価のアルコールとしては、一価のアルコールを一種類のみ含むものとしても良いし、複数種類含むものとしても良い。
このため、水に溶け易く、比熱を水よりも大きくすることができる一価のアルコールと、水には溶け難いが融点を下げることができる一価のアルコールとを混合することで、比熱を水よりも大きくしながら、より融点を下げることも可能である。
例えば、CnH2n+1OHのnが2であるエタノール約10mol%とCnH2n+1OHのnが5であるtert-アミルアルコール約2mol%の混合水溶液とすることで、エタノール約10mol%のみの水溶液と比較して比熱は小さくなるが(但し、水よりも比熱は大きい)、融点(凝固点)は−15℃となり、エタノールのみの場合の−11℃よりも下げることができる。
顕熱を利用する蓄熱材を用いる場合、熱容量が大きいほど有効であるが、重量が同じであるときは、材料の比熱が効いてくる。
水は常温で比熱が最大の単体である。このため、冷媒として最適であるとして利用されている。
ここで、図2は、メタノールの約20℃における比熱の測定結果を示している。また、図3は、エタノールの約20℃における比熱の測定結果を示している。また、図4は、プロパノールの約20℃における比熱の測定結果を示している。また、図5は、ブタノールの約20℃における比熱の測定結果を示している。また、図6は、tert-アミルアルコールの約20℃における比熱の測定結果を示している。
つまり、図2に示すように、水のモル数に対するメタノールのモル数の割合であるモル分率(濃度)が0mol%である場合の比熱は、水の比熱に相当するが、これは約4.2J/gKである。これに対し、少なくともモル分率が約0mol%よりも大きく、約15mol%以下のメタノール水溶液は、比熱が水の比熱(約4.2J/gK)よりも大きくなることがわかる。
つまり、図3に示すように、水のモル数に対するエタノールのモル数の割合であるモル分率(濃度)が0mol%である場合の比熱は、水の比熱に相当するが、これは約4.2J/gKである。これに対し、少なくともモル分率が約0mol%よりも大きく、約15mol%以下のエタノール水溶液は、比熱が水の比熱(約4.2J/gK)よりも大きくなることがわかる。
つまり、図4に示すように、水のモル数に対するプロパノールのモル数の割合であるモル分率(濃度)が0mol%である場合の比熱は、水の比熱に相当するが、これは約4.2J/gKである。これに対し、少なくともモル分率が約0mol%よりも大きく、約15mol%以下のIPA水溶液は、比熱が水の比熱(約4.2J/gK)よりも大きくなることがわかる。
つまり、図5に示すように、水のモル数に対するブタノールのモル数の割合であるモル分率(濃度)が0mol%である場合の比熱は、水の比熱に相当するが、これは約4.2J/gKである。これに対し、少なくともモル分率が約0mol%よりも大きく、約5mol%以下のTBA水溶液は、比熱が水の比熱(約4.2J/gK)よりも大きくなることがわかる。
例えば、一価のアルコールCnH2n+1OHでnが4であり、かつ、直鎖ではないアルコールであるブタノールの一種のsec-ブチルアルコール(sec- butyl alcohol;C4H9OH)についても同様である。
つまり、図6に示すように、水のモル数に対するtert-アミルアルコールのモル数の割合であるモル分率(濃度)が0mol%である場合の比熱は、水の比熱に相当するが、これは約4.2J/gKである。これに対し、少なくともモル分率が約0mol%よりも大きく、約2.5mol%以下のtert-アミルアルコール水溶液は、比熱が水の比熱(約4.2J/gK)よりも大きくなることがわかる。なお、モル分率が約2.5mol%よりも大きくなると水に溶解しにくくなり、その有効性を確認するのが難しくなる。
つまり、図4に示すように、一価のアルコールCnH2n+1OHでnが3の直鎖のアルコールである1−プロパノールを含む水溶液は、比熱が水よりも小さくなることがわかる。また、図5に示すように、一価のアルコールCnH2n+1OHでnが4の直鎖のアルコールである1−ブタノールを含む水溶液は、比熱が水よりも小さくなることがわかる。
また、例えば、図7(B)に示すように、一価のアルコールCnH2n+1OHでnが4の直鎖のアルコールである1−ブタノールを含む水溶液の比熱の最大値は、水の比熱よりも小さくなる。これに対し、一価のアルコールCnH2n+1OHでnが4の直鎖ではないアルコールであるTBAを含む水溶液の比熱の最大値は、水の比熱よりも大きくなる。
ここで、図8は、一価のアルコールの炭素数と溶解度の最大値(異性体中)との関係を示している。
図8に示すように、一価のアルコールCnH2n+1OHは、n(炭素数)が大きくなると、溶解度が小さくなり、水に溶け難くなる。
ところで、蓄熱材4として、上述のような一価のアルコール水溶液を用いることで、比熱を水よりも大きくすることができるだけでなく、凝固点(融点)を下げることも可能である。
ここで、図9は、上述のような一価のアルコール水溶液のそれぞれの比熱が最大となる濃度(モル分率)と凝固点(融点)を示している。なお、図9では、一価のアルコールがエタノール、IPA、TBAのそれぞれの場合を例示している。
また、例えば、一価のアルコールがIPAの場合、比熱が最大となる濃度は約10mol%であり、そのときの凝固点(融点)は約−19.6℃である。
また、例えば、一価のアルコールがTBAの場合、比熱が最大となる濃度は約3.5mol%であり、そのときの凝固点(融点)は約−9℃である。
なお、例えば凍結防止剤としてよく用いられるエチレングリコールは、二価のアルコールであり、エチレングリコールの水への添加量、即ち、エチレングリコール水溶液におけるエチレングリコールの添加量を増やすほど、凝固点(融点)は下がっていく。
また、エチレングリコールの場合、水への添加量を増やすほど凝固点は下がっていくが、その下がり方は緩やかであるため、凝固点を大きく下げたいときには、添加量を多くしなければならない。
このように、蓄熱材4に上述のような一価のアルコール水溶液を用いることで、比熱が大きく、かつ、凝固点(融点)の低い蓄熱材を実現することができるため、同じ熱電変換素子2を用いた発電装置でも、熱源7の温度変化が小さい場合にも、かつ、寒冷地にも、適用範囲を拡大することが可能となる。
例えば、下水道水位センシングのため、マンホールの蓋の裏面に熱電発電装置を設置する場合、マンホールの開閉作業の妨げとならないように、設置する熱電発電装置には高さ制限があり、マンホールの蓋の裏面のリムの高さ(例えば約5cm程度)以下に抑えなければならない。
これに対し、上述のような一価のアルコール水溶液を蓄熱材4として用いることで、比熱が大きくなるため、重量を減らすことが可能となり、同時に体積も減少することになる。このため、蓄熱材容器3に断熱層8を設けることができ、適正な体積に収められたのみならず、想定通りの発電量を確保することが可能となる。
以下、具体的に説明する。
アルミニウムは、アルコール水溶液に溶解する。特に、高温で反応が促進される。
熱源7が温度変化する場合、蓄熱材4の温度は一時的に約50℃以上の高温になることもあり、アルミニウムの脆化が懸念される。反応式を以下に示す。
3C2H5OH+3e→3C2H5O−+3/2H2・・・(1)
Al→Al3++3e・・・(2)
3C2H5O−+Al→3Al(C2H5O)3・・・(3)
この場合、第1の方法として、蓄熱材4をアルカリ性にすること、第2の方法として、放熱フィン5にアルミニウム以外の材料を用いること、第3の方法として、放熱フィン5の主原料にアルミニウムを用い、その表面をコーティングすることが考えられる。
上述の反応において、アルコールは酸のように働いている(プロトンが金属を酸化することで金属がイオン化する)。塩基性の水溶液中においては、水はアルコールよりも酸性度が高く、アニオン交換して水酸化物イオン(OH−)を生成するため、定量的にアルコキシド(C2H5O−)を生成することはできない、つまり、(1)の反応は起こりにくい。
但し、アルミニウムは酸とともに塩基にも溶解するため、放熱フィン5の材料にアルミニウムを用いる場合、PH<10程度の弱アルカリに抑えることが望ましい。
一方、添加物を加えるごとに比熱が低下する可能性がある。
アンモニアは、単体で唯一、水よりも比熱が高い物質である。このため、アンモニアを添加することによって、蓄熱材4の比熱を低下させることなくアルカリ性にすることが可能と考えられる。
なお、蓄熱材4をアルカリ性にするための添加材は、水よりも比熱が高い物質であるアンモニアに限られるものではなく、水よりも比熱が低い物質を用いることもできる。
第2の方法として、放熱フィン5に、アルミニウム以外の材料、例えば銅を用いることが考えられる。
銅はアルコールによる反応が起こりにくく、また、熱伝導率もアルミニウムよりも大きい。但し、銅はアルミニウムよりも高価で高密度であるため、低コスト化には限界があり、重量も増大してしまうことになる。
上述の第2の方法よりも低コストの方法として、放熱フィン5の材料に低コストの材料を使用して、表面をコーティングすることが考えられる。
アルミニウムの場合、アルマイト処理が一般的であるが、アルマイトはアルミニウムと同様に、条件によってアルコールに反応して溶解してしまう。
したがって、本実施形態にかかる蓄熱材、伝熱装置及びエネルギーハーベスタによれば、できるだけ温度変化が小さい蓄熱材4を実現でき、伝熱装置6の性能を向上させることができ、エネルギーハーベスタ1の発電量を増大させることができるという効果を有する。
例えばセンサーネットワークを構築する場合などに課題となる電源線及び信号線が不要となる、環境発電の利用が有望である。環境発電としては、太陽光発電のほかに、温度差があれば発電できる熱電変換素子を用いた発電が有力である。
熱電変換素子は、主に複数のp型熱電半導体及びn型熱電半導体から構成されており、熱エネルギーを電気エネルギーに、また、電気エネルギーを熱エネルギーに直接変換する機能を持つ。その熱電変換素子の両側に温度差を与えると、ゼーベック効果によって電圧を発生する。この電圧を電気エネルギーとして取り出すようにしたものが熱電発電装置である。
一般的な熱電変換素子は、ほぼ同じ長さで柱状のp型熱電半導体とn型熱電半導体の両端部で対にして熱電対を作り、この熱電対を複数個平面的に並べて、p型熱電半導体とn型熱電半導体が交互に規則的になるように配置し、その熱電対を電気的に直列に接続した構造を有する。
一枚の基板を熱源(発熱源)に接するようにし、もう一方の基板から放熱するようにすることで、熱電半導体対に温度差が生じる。持続的に温度差を発生させるためには、放熱側の基板には放熱部品を付けることになる。
熱源に熱電変換素子を装着し、熱源から熱電変換素子を通った熱はヒートシンクを介して大気に放熱され、熱電変換素子内に温度差を発生させることによって発電する。
自然空冷では、ヒートシンクの冷却効果には限界があり、ヒートシンクが設けられた熱電変換素子の冷却面を外気温と同一にすることは困難である。
冷却方法としては、水冷など液冷もあるが、冷媒を循環させる等、設備が必要となるため、様々な場所に、簡単に設置する必要のあるエネルギーハーベスティングにはあまり適していない。
蓄熱材が有効であるのは、熱源の温度が定期的に変化する場合である。熱源の温度の経時変化を利用し、蓄熱材と熱電変換素子に温度差を生じさせて発電する。
熱源の温度は時間によって周期的に温度が変化するものが利用される。例えば、熱源には、断続的に稼働と休止を繰り返すモータやボイラーが用いられる。あるいは、日中と夜間の間の温度変化を利用して、外部に放置されているもの、例えば建物の鉄骨、外壁、屋上や自動車等の乗り物のエンジンや外装などが、熱源として利用される。
このために最も適切な手段としては、熱電変換素子の冷却側に熱源の平均温度を融点とする潜熱蓄熱材を設けることである。
しかしながら、屋外で使用する場合は、熱源の平均温度が四季で変化するため、年間平均温度に融点が一致する潜熱蓄熱材を選択しても、一年の大半で潜熱を利用することができない。
また、上述のように構成する場合、発電量は、熱電変換素子2の開放電圧の二乗に比例し、開放電圧は、熱源7と蓄熱材4との温度差に比例する。
この温度差は蓄熱材4の温度が変化し難いほど大きくなるため、できるたけ蓄熱材4の温度変化を抑制することで、発電量を増大させることが可能となる。
そこで、従来の蓄熱材に代えて、上述のような蓄熱材4を用いることで、蓄熱材4の温度変化ができるだけ抑制されるようにして、装置や蓄熱材の体積が限定されている、あるいは、重量に制限があるなどの場合であっても、発電量を増大させることができるようにしている。
これにより、エネルギーハーベスタや熱電変換モジュールの高性能化を実現することに大きく寄与することになる。
このように、上述のような蓄熱材4を冷媒として用いることで、冷媒にたくさんの熱を溜め込むことが可能となり、冷媒の温度が上がらないようにすることができ、これにより、装置の性能を向上させることが可能となる。
そして、上述のような蓄熱材4を冷媒として用いることで、比熱が水よりも大きくなるため、冷媒の体積や重量を低減することが可能となる。
また、上述のような蓄熱材4を冷媒として用いる場合、冷媒が腐食を防止できるアルコール水溶液となるため、この点でも有用である。
[実施例]
次に、本発明を更に具体的に説明するために実施例を挙げる。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ここでは、発電量を増大させることができるという本発明の効果を評価した。
そして、実施例1及び比較例1の各々の蓄熱材による熱電発電装置を、マンホール蓋の裏面に設置し、2017/4/18から4/23までの開放電圧(出力電圧)及び発電量を測定したところ、図11(A)〜図11(C)に示すような結果が得られた。
図11(A)〜図11(C)に示すように、蓄熱材4にtert-butyl alcohol水溶液を用いた実施例1の場合、蓄熱材に水を用いた比較例1の場合と比べて、最大約30%発電量が増加することが確認できた。
[実施例2]
ここでは、蓄熱材4をアルカリ性とした場合の発電量に対する影響を評価した。
ここでは、アンモニアを添加してアルカリ性に調整したものとして、isopropyl alcohol水溶液でアルコール濃度を約10mol%としたものに、約0.01mol/L以下のアンモニアを添加してPH<10の弱アルカリ性に調整したものを用意した。
熱源7(例えば図1参照)の温度変化は、約10℃で約1h→約40℃で約2h→約10℃で約1hのように設定した。昇温には約10分、降温には約30分要した。
熱電変換素子2(例えば図1参照)はThermalforce製熱電変換素子TEG254-200-12を用いた。
この結果、アンモニア添加の有無によらず、蓄熱材4の温度は最大約26.4℃、開放電圧の最大値は約1.9Vであった。
[実施例3]
ここでは、蓄熱材4に水よりも比熱が低い物質を添加してアルカリ性とした場合の発電量に対する影響を評価した。
ここでは、炭酸水素ナトリウムを添加してアルカリ性に調整したものとして、isopropyl alcohol水溶液でアルコール濃度を約10mol%としたものに、炭酸水素ナトリウム水溶液で炭酸水素ナトリウムの濃度を約0.1mol%としたものを約0.2L加えて、PH=8.5の弱アルカリ性に調整したものを用意した。
熱源7(例えば図1参照)の温度変化は、約10℃で約1h→約40℃で約2h→約10℃で約1hのように設定した。昇温には約10分、降温には約30分要した。
例えば図1に示すような熱電発電装置1において、熱源7から熱電変換素子2、放熱フィン5を介して蓄熱材4に伝導した熱による、蓄熱材4の温度と、熱電変換素子2の開放電圧から、蓄熱材4の蓄熱量を類推した。
この結果、水よりも比熱が低い物質である炭酸水素ナトリウムの添加の有無によらず、蓄熱材4の温度は最大約26.4℃、開放電圧の最大値は約1.9Vであった。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかるセンサモジュール及び情報処理システムについて、図12〜図18を参照しながら説明する。
発電モジュール161には、例えば、上述の第1実施形態の熱電変換モジュール(エネルギーハーベスタ)1が適用される。
つまり、本センサモジュール160は、センサ163と、センサ163に電気的に接続された熱電変換素子2と、容器3と、容器3内に設けられた蓄熱材4と、熱電変換素子2の一方の側に熱的に接続され、かつ、蓄熱材4に熱的に接続された放熱フィン5とを備え、蓄熱材4は、少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、水よりも比熱が大きい混合液からなる。
発電モジュール161及び蓄電モジュール162は、電力供給部168を構成する。この電力供給部168を構成する発電モジュール161及び蓄電モジュール162の少なくとも一方からは、センサ163、コントローラ164、及び、通信回路166に電力が供給される。発電モジュール161によって安定した電力を供給できる場合には、蓄電モジュール162が省かれても良い。
通信回路166及びアンテナ167は、通信部169を構成する。通信部169は、コントローラ164とサーバ175(図13参照)との間でデータの送受信を行う。なお、図12に示される例では、アンテナ167を用いた無線通信が採用されるが、無線通信の代わりに、有線通信が採用されても良い。
この情報処理システム170は、複数の一体型モジュール160と、サーバ175とを備える。つまり、本情報処理システム170は、上述の一体型モジュール(センサモジュール)160と、この一体型モジュール160によって得られたデータを処理するサーバ(コンピュータ)175とを備える。ここでは、情報処理システム170は、マンホール176から得られる情報を処理するシステムである。このため、複数の一体型モジュール160は、マンホール176に設置される。この複数のマンホール176に設置された複数の一体型モジュール160は、ネットワーク177を介してサーバ175と接続される。
この一体型モジュール160は、センサ163の検出対象又はセンサ163の種類に応じて、マンホール176の構造体である蓋178やコンクリート管179などに固定される。一体型モジュール160に備えられた熱電変換素子は、マンホール176の構造体と熱的に接続され、マンホール176の構造体と外気又はマンホール176内部の温度との温度差により発電する。
[第1適用例]
第1適用例では、図14に示すように、情報処理システム170は、マンホール176の構造体(蓋178やコンクリート管179)の劣化を把握するために利用される。
道路上を走る測定用の車両180がマンホール176上を通過する際に、コントローラ164は、通信回路166及びアンテナ167を介してメモリ165に蓄積されたデータを送信する。測定用の車両180に設けられたサーバ175は、データを回収する。
また、測定用の車両180の下部に、受信装置181に加え、マンホール176の蓋178の画像を取得するカメラ182を取り付け、マンホール176の蓋178(鉄部)の劣化を画像認識で判断することができるようにしても良い。この結果を元に、マンホール176の蓋178の交換時期を自治体に情報として販売するようにしても良い。ここで、データを回収する車両としては、特別な測定用の車両でなくとも、例えば自治体が運用するごみ収集車でも良い。ごみ収集車の底部に受信装置181やカメラ182を設置することで、回収費用をかけずに定期的にデータを回収することができる。
また、マンホール176内では湿度が常に高く、下水道183(又は上水道)の水がマンホール176内にあふれる可能性もある。また、マンホール176内部はほぼ一定温度だが、例えば蓋178では夏は高温、冬は低温になるうえ、さまざまな金属を溶かす硫化水素ガスなどが発生することが知られている。このような過酷な環境にあって、センサ163などの電子部品及び熱電変換素子を守り、かつ長期的な信頼性を保つことは重要である。この場合、一体型モジュール160を、センサ163などの電子部品及び熱電変換素子が樹脂で封止されたものとして構成することで、長期的な信頼性を保つことが可能となる。
[第2適用例]
第2適用例では、図15に示すように、情報処理システム170は、マンホール176と接続される下水道183の流量を予測するために利用される。
[第3適用例]
第3適用例では、図16に示すように、情報処理システム170は、マンホール176のセキュリティ及び作業履歴に利用される。
[第4適用例]
第4適用例では、図17に示すように、情報処理システム170は、道路交通情報の取得に利用される。
また、センサ163の検出値の強弱から、マンホール176上を通過する車両185,186,187の種類(例えば、小型車、普通車、トラック等)を検出するようにしても良い。この場合、センサ163の検出値と車両の種類とを関連付けたデータセットを予めメモリ165に記憶しておけば良い。そして、コントローラ164が、センサ163の検出値と上記データセットとから車の種類を判定し、この車の種類の情報をサーバ175へ送信するようにすれば良い。これにより、マンホール176上を通過する車両の種類を把握することが可能となる。
[第5適用例]
第5適用例では、図18に示すように、情報処理システム170は、降雨量の測定に利用される。
通常、Xバンドレーダの分解能は250mであるが、平均間隔が30mあまりのマンホール176にセンサ163が設置されることで、はるかにきめ細かい気象観測が可能になり、局所的な集中豪雨などの計測及び予測に役立つと考えられる。センサ163から出力されたデータ(信号)は、サーバ175にて受信される。
[その他]
なお、本発明は、上述した実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能であり、適宜組み合わせることも可能である。
(付記1)
少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、前記水よりも比熱が大きい混合液からなることを特徴とする蓄熱材。
(付記2)
前記一価のアルコールは、CnH2n+1OHで表され、nが5以下で、かつ、nが3以上の場合は直鎖ではないアルコールであることを特徴とする、付記1に記載の蓄熱材。
前記少なくとも一種類の一価のアルコールとして、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、tert-アミルアルコールの少なくとも一種類を含むことを特徴とする、付記1又は2に記載の蓄熱材。
(付記4)
前記少なくとも一種類の一価のアルコールとして、CnH2n+1OHで表され、nが5以下で、かつ、nが3以上の場合は直鎖ではない第1アルコールと、CnH2n+1OHで表され、nが5以下で、かつ、nが3以上の場合は直鎖ではないアルコールであって、前記第1アルコールよりもnが大きい第2アルコールとを含むことを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の蓄熱材。
容器と、
前記容器内に設けられた蓄熱材と、
前記蓄熱材に熱的に接続された放熱フィンとを備え、
前記蓄熱材は、
少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、前記水よりも比熱が大きい混合液からなることを特徴とする伝熱装置。
前記放熱フィンは、アルミニウムからなり、
前記蓄熱材は、アルカリ性であることを特徴とする、付記5に記載の伝熱装置。
(付記7)
前記蓄熱材は、アンモニアが添加されていることを特徴とする、付記6に記載の伝熱装置。
前記放熱フィンは、銅からなることを特徴とする、付記5に記載の伝熱装置。
(付記9)
前記放熱フィンは、アルミニウムからなり、表面にアルコールによる腐食を防止する層がコーティングされていることを特徴とする、付記5に記載の伝熱装置。
熱電変換素子と、
容器と、
前記容器内に設けられた蓄熱材と、
前記熱電変換素子の一方の側に熱的に接続され、かつ、前記蓄熱材に熱的に接続された放熱フィンとを備え、
前記蓄熱材は、
少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、前記水よりも比熱が大きい混合液からなることを特徴とするエネルギーハーベスタ。
前記放熱フィンは、アルミニウムからなり、
前記蓄熱材は、アルカリ性であることを特徴とする、付記10に記載のエネルギーハーベスタ。
(付記12)
前記蓄熱材は、アンモニアが添加されていることを特徴とする、付記11に記載のエネルギーハーベスタ。
前記放熱フィンは、銅からなることを特徴とする、付記10に記載のエネルギーハーベスタ。
(付記14)
前記放熱フィンは、アルミニウムからなり、表面にアルコールによる腐食を防止する層がコーティングされていることを特徴とする、付記10に記載のエネルギーハーベスタ。
センサと、
前記センサに電気的に接続された熱電変換素子と、
容器と、
前記容器内に設けられた蓄熱材と、
前記熱電変換素子の一方の側に熱的に接続され、かつ、前記蓄熱材に熱的に接続された放熱フィンとを備え、
前記蓄熱材は、
少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、前記水よりも比熱が大きい混合液からなることを特徴とするセンサモジュール。
センサモジュールと、
前記センサモジュールによって得られたデータを処理するコンピュータとを備え、
前記センサモジュールは、
センサと、
前記センサに電気的に接続された熱電変換素子と、
容器と、
前記容器内に設けられた蓄熱材と、
前記熱電変換素子の一方の側に熱的に接続され、かつ、前記蓄熱材に熱的に接続された放熱フィンとを備え、
前記蓄熱材は、
少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、前記水よりも比熱が大きい混合液からなることを特徴とする情報処理システム。
2 熱電変換素子
3 容器
4 蓄熱材
5 放熱フィン
6 伝熱装置
7 熱源
8 断熱材
9 ベース部(底板)
10 伝熱部材
160 一体型モジュール
161 発電モジュール
162 蓄電モジュール
163 センサ
164 コントローラ
165 メモリ
166 通信回路(通信部)
167 アンテナ
168 電力供給部
169 通信部
170 情報処理システム
175 サーバ(コンピュータ)
176 マンホール
177 ネットワーク
178 蓋
179 コンクリート管
180 車両
181 受信装置
182 カメラ
183 下水道
184 データセンタ
185,186,187 車両
Claims (10)
- 少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、前記水よりも比熱が大きい混合液からなることを特徴とする蓄熱材。
- 前記一価のアルコールは、CnH2n+1OHで表され、nが5以下で、かつ、nが3以上の場合は直鎖ではないアルコールであることを特徴とする、請求項1に記載の蓄熱材。
- 前記少なくとも一種類の一価のアルコールとして、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、tert-アミルアルコールの少なくとも一種類を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の蓄熱材。
- 前記少なくとも一種類の一価のアルコールとして、CnH2n+1OHで表され、nが5以下で、かつ、nが3以上の場合は直鎖ではない第1アルコールと、CnH2n+1OHで表され、nが5以下で、かつ、nが3以上の場合は直鎖ではないアルコールであって、前記第1アルコールよりもnが大きい第2アルコールとを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄熱材。
- 容器と、
前記容器内に設けられた蓄熱材と、
前記蓄熱材に熱的に接続された放熱フィンとを備え、
前記蓄熱材は、
少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、前記水よりも比熱が大きい混合液からなることを特徴とする伝熱装置。 - 前記放熱フィンは、アルミニウムからなり、
前記蓄熱材は、アルカリ性であることを特徴とする、請求項5に記載の伝熱装置。 - 前記蓄熱材は、アンモニアが添加されていることを特徴とする、請求項6に記載の伝熱装置。
- 前記放熱フィンは、銅からなることを特徴とする、請求項5に記載の伝熱装置。
- 前記放熱フィンは、アルミニウムからなり、表面にアルコールによる腐食を防止する層がコーティングされていることを特徴とする、請求項5に記載の伝熱装置。
- 熱電変換素子と、
容器と、
前記容器内に設けられた蓄熱材と、
前記熱電変換素子の一方の側に熱的に接続され、かつ、前記蓄熱材に熱的に接続された放熱フィンとを備え、
前記蓄熱材は、
少なくとも一種類の一価のアルコールと水とを含み、前記水よりも比熱が大きい混合液からなることを特徴とするエネルギーハーベスタ。
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