JP2019210367A - 蛍光体及びこれを用いた蛍光体組成物、並びにこれらを用いた発光装置、照明装置及び画像表示装置 - Google Patents

蛍光体及びこれを用いた蛍光体組成物、並びにこれらを用いた発光装置、照明装置及び画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】近紫外又は短波長可視域の光により、緑色乃至黄色に発光する新規な蛍光体及びこれを用いた蛍光体組成物等を提供する。【解決手段】M元素、A元素、Li、及びC元素(但し、M元素は付活元素、A元素はCa、Sr、及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、C元素はAl及び/又はGaである)を少なくとも有し、さらにN及び/又はOを有する結晶相を含み、前記結晶相においては、格子定数が下記範囲を満たすことを特徴とする、蛍光体。7.10≦格子定数a≦8.687.10≦格子定数b≦8.682.86×n≦格子定数c≦3.49×n(上記式中、nは、5、6、7、8、9、11、13、15、16、17、19、20、21、23、27、及び28から選択されるいずれか一の整数である。なお、nによって指定される格子定数cの範囲は、重複してもよい。)【選択図】図1

Description

本発明は、新規な蛍光体及びこれを用いた蛍光体組成物、並びにこれらを用いた発光装置、照明装置及び画像表示装置等に関する。
近年、省エネルギーの流れを受け、画像表示装置や照明装置等の発光装置を用いる機器においては、LEDを用いた照明やバックライト等の需要が増加している。これらに用いられるLEDとしては、近紫外又は短波長可視域で発光するLEDチップと蛍光体とを併用することで白色発光させる白色発光LEDが一般化しつつある。このような白色発光LEDとしては、青色LEDチップが発する青色光を励起光として黄色に発光する蛍光体を用いたものが主流である。また近年では、青色に発光する蛍光体や緑色に発光する蛍光体や赤色に発光する蛍光体を用いる試みもなされている。そして、この種の発光装置においては、優れた発光特性が求められており、これに用いる蛍光体においても、より高い発光特性を有するものが切望されている。
緑色蛍光体としては、例えば特許文献1には、アルカリ土類元素を含むサイアロン蛍光体が開示されている。黄色ないし橙色蛍光体としては、例えば特許文献2には、Sr1.11Al2.25Si9.7516:Eu0.02の組成式で表されるαサイアロン蛍光体が開示されている。
また、発光特性を改善する目的で、Liを含む蛍光体が検討されている。Liを含む緑色蛍光体としては、例えば特許文献3に、Liを含有するアルミン酸ストロンチウムの応力発光材料が開示されている。また、例えば特許文献4には、LiBaAlSi12:Eu2+蛍光体が開示されている。Liを含む赤色蛍光体として、例えば特許文献5には、CaAlSiN:Eu2+とLiSiの固溶体が開示されている。さらに、例えば特許文献6には、SrLiAl:Eu2+の組成で表されるSLA蛍光体が開示されている。
WO2011/016486A1 特開2009−256558号公報 特開2015−67799号公報 WO2014/003076A1 WO2006/126567A1 WO2013/175336A1
上記したように、各色の蛍光体が開発されているが、さらに発光特性を向上させた蛍光体が切望されている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち本発明の目的は、近紫外又は短波長可視域の光により、緑色乃至黄色に発光する新規な蛍光体及びこれを用いた蛍光体組成物等を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記の蛍光体を用いた発光装置、照明装置及び画像表示装置等を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく蛍光体の新規探索を鋭意検討した結果、従来の蛍光体とは異なる結晶構造を有し、近紫外又は短波長可視域の光により、緑色乃至黄色に発光する新規な蛍光体を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
<1>M元素、A元素、Li、及びC元素(但し、M元素は付活元素、A元素はCa、Sr、及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、C元素はAl及び/又はGaである)を少なくとも有し、さらにN及び/又はOを有する結晶相を含み、前記結晶相においては、格子定数が下記範囲を満たすことを特徴とする、蛍光体。
7.10≦格子定数a≦8.68
7.10≦格子定数b≦8.68
2.86×n≦格子定数c≦3.49×n
(上記式中、nは、5、6、7、8、9、11、13、15、16、17、19、20、21、23、27、及び28から選択されるいずれか一の整数である。なお、nによって指定される格子定数cの範囲は、重複してもよい。)
<2>少なくともLiとC元素が同一の結晶サイトに存在し、晶系が正方晶系であることを特徴とする<1>に記載の蛍光体。
<3>Mg及び/又はE元素(但し、E元素はSi及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素である)をさらに含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載の蛍光体。
<4>前記結晶相は、下記式[1]で表される結晶相を含むことを特徴とする<3>に記載の蛍光体。
1−aLib−d1c−d2−eMgd1+d2 [1]
(上記式[1]中、a、b、c、d1、d2、e、f、及びgは、各々独立に、下記式を満たす値である。
0<a≦0.2
1.0≦b≦3.5
1.0≦c≦4.0
0≦d1≦3.5
0≦d2≦4.0
0≦e≦4.0
0≦f≦5.0
0≦g≦5.0
4.0≦b+c≦5.0
4.0≦f+g≦5.0
0≦b−d1
0≦c−d2−e)
<5>上記式[1]中、0≦d1≦0.6であり、0≦d2≦0.6であり、0≦e≦1.0であることを特徴とする<4>に記載の蛍光体。
<6>上記式[1]中、4.5≦b+c≦5.0であり、0≦d1+d2≦1.0であり、4.5≦f+g≦5.0であることを特徴とする<4>又は<5>に記載の蛍光体。
<7>下記式[2]で表される結晶相を含むことを特徴とする<1>〜<6>のいずれか一項に記載の蛍光体。
a'm/n−a'Lix−y14−x−y2−zMgy1+y24+2m/n−2x+y1−y2+z2x−y1+y2−z−2m/n [2]
(上記式[2]中、a'、m、n、x、y1、y2、及びzは、各々独立に、下記式を満たす値である。
0<a'≦0.2×m/n
4/5≦m/n≦8/9
m/n≦x≦2+m/n
0≦y1≦0.6
0≦y2≦0.6
0≦y1+y2≦1.0
0≦z≦1.0
0≦x−y
0≦4−x−y2−z)
<8>M元素が、Eu、Ce、Pr、Sm、Tb、Dy及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含むことを特徴とする<1>〜<7>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<9>nは、6、7、8、11、13、15、17、19、20、23、27、及び28から選択されるいずれか一の整数であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<10>上記式[2]中、22/27≦m/n≦7/8であり、0.5×m/n+0.5×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする<7>〜<9>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<11>上記式[2]中、0≦y1+y2≦0.1であり、0≦z≦0.1であることを特徴とする<7>〜<10>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<12>M元素がEuを含み、A元素がSrを含み、C元素がAlを含むことを特徴とする<1>〜<11>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<13>E元素がSiを含むことを特徴とする<3>〜<12>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<14>nは、6、7、13、17、及び23から選択されるいずれか一の整数であることを特徴とする<1>〜<13>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<15>上記式[2]中、14/17≦m/n≦6/7であり、0.25×m/n+0.75×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする<7>〜<14>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<16>M元素がEuであり、A元素がSrであり、C元素がAlであり、E元素がSiであることを特徴とする<3>〜<15>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<17>上記式[2]中、nは6であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする<7>〜<16>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<18>上記式[2]中、mは5であり、nは6であることを特徴とする<17>に記載の蛍光体。
<19>上記式[2]中、nは7であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする<7>〜<16>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<20>上記式[2]中、mは6であり、nは7であることを特徴とする<19>に記載の蛍光体。
<21>上記式[2]中、nは13であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする<7>〜<16>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<22>上記式[2]中、mは11であり、nは13であることを特徴とする<21>に記載の蛍光体。
<23>上記式[2]中、nは17であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする<7>〜<16>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<24>上記式[2]中、mは14であり、nは17であることを特徴とする<23>に記載の蛍光体。
<25>上記式[2]中、nは23であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする<7>〜<16>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<26>上記式[2]中、mは19であり、nは23であることを特徴とする<25>に記載の蛍光体。
<27>F及び/又はClをさらに含み、F及びClの元素量換算の含有割合が、合計で5000ppm以下であることを特徴とする<1>〜<26>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<28><1>〜<27>のいずれか一項に記載の蛍光体を含み、前記蛍光体が総量に対して20質量%以上含有されることを特徴とする蛍光体組成物。
<29>近紫外又は短波長可視域の光を発する励起用光源、及び前記励起用光源が発する光の少なくとも一部を異なる発光スペクトルに変換する蛍光体を少なくとも備え、前記蛍光体が、請求項1〜27のいずれか一項に記載の蛍光体、及び/又は請求項28に記載の蛍光体組成物を少なくとも含むことを特徴とする、発光装置。
<30><29>に記載の発光装置を備えることを特徴とする、照明装置。
<31><29>に記載の発光装置を備えることを特徴とする、画像表示装置。
本発明によれば、従来の蛍光体とは異なる結晶構造を有し、近紫外又は短波長可視域の光により緑色乃至黄色に発光する新規な蛍光体及びこれを用いた蛍光体組成物等を実現できる。この新規な蛍光体は、その発光特性(励起スペクトル、発光スペクトル、発光色、発光効率)により、白色発光LED用途において殊に有用なものである。そして、本発明の新規な蛍光体を含む発光装置、並びに、この発光装置を含む照明装置及び画像表示装置は、高効率で高品質である。
本発明の蛍光体のFarey treeを示す図である。 参考例1の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示すグラフである。 実施例1の蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。 実施例2の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示すグラフである。 実施例3の発光スペクトルを示すグラフである。 実施例4の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示すグラフである。 実施例5の発光スペクトルを示すグラフである。 実施例1〜5及び参考例1における、n値と格子定数aとの関係を示すグラフである。 実施例1〜5及び参考例1における、n値と格子定数cとの関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば「1〜100」との数値範囲は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。他の数値範囲の表記も同様である。
また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表す。そして、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1−xSrAl:Eu」と、「Sr1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−x−ySrBaAl:Eu」(但し、これらの式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1である。)とを包括的に示しているものとする。
<蛍光体>
本実施形態の蛍光体は、M元素、A元素、Li、C元素(但し、M元素は付活元素、A元素はCa、Sr、及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、C元素はAl及び/又はGaである)を少なくとも有し、さらにN及び/又はOを有する結晶相を含む蛍光体であって、前記結晶相の格子定数が下記範囲を満たすものである。
7.10≦格子定数a≦8.68
7.10≦格子定数b≦8.68
2.86×n≦格子定数c≦3.49×n
(上記式中、nは、5、6、7、8、9、11、13、15、16、17、19、20、21、23、27、及び28から選択されるいずれか一の整数である。なお、n値によって指定される格子定数cの範囲は、重複してもよい。)
ここで上記蛍光体は、単位格子におけるc軸方向のA元素数をmとし、c軸方向のC元素(N,O)数をnとし、M元素の組成比をaとし、Liの組成比をxとしたとき、一般式Mm/n−aLi4−x4+2m/n−2x2x−2m/nで表されるものとも言える。
なお、一般式で表される蛍光体は、あるm/n値で存在する物質群を全て包含するものである。m/n=1/1、8/9、7/8、13/15、6/7、17/20、11/13、16/19、5/6、19/23、14/17、23/28、9/11、22/27、13/16、17/21、4/5に相当する物質を1/1結晶、8/9結晶、7/8結晶、13/15結晶、6/7結晶、17/20結晶、11/13結晶、16/19結晶、5/6結晶、19/23結晶、14/17結晶、23/28結晶、9/11結晶、22/27結晶、13/16結晶、17/21結晶、4/5結晶とそれぞれ称する場合がある。
また、あるm/n値で存在する物質とそれら物質間の関連性はFarey treeによっても説明することができる。図1に、本実施形態の蛍光体のFarey treeを示す。以降、本発明の物質群をFT物質群と称することがある。
このFT物質群は、c軸方向のM元素の積層数とc軸方向のC元素(N,O)との積層数の比率(:m/n)により異なる結晶構造を示す。また、LiやC元素の組成比(x)に対応して、N,Oの比率が決定される。FT物質群においては、あるm/n結晶の結晶構造から、他のm/n結晶の初期構造を導くことができる。このFT物質群は、c軸方向にn個数のC元素(N,O)が積層した結晶構造を有する物質群である。そのため、それぞれの物質のc軸格子定数は、大まかには、1/1結晶が示すc軸格子定数のn倍であると整理することができる。以下、各元素について詳述する。
M元素は、付活元素であり、ユーロピウム(Eu)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)からなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を表す。M元素は、少なくともEuを含むことが好ましく、Euであることがより好ましい。
さらに、Euは、その全部又は一部がCe、Pr、Sm、Tb、Dy及びYbよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素で置換されていてもよい。すなわち、M元素は、Euと、Ce、Pr、Sm、Tb、Dy及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素とを含むことが好ましい。発光量子効率の観点からは、EuとCeがより好ましい。つまり、M元素は、Eu及び/又はCeであることがさらに好ましく、より好ましくはEuである。なお、M元素全体に対するEuの含有割合は、特に限定されないが、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
A元素は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を表す。A元素は、Srを含むことが好ましく、Srであることがより好ましい。なお、A元素は、アルカリ土類金属元素以外の他の2価金属元素、例えば亜鉛(Zn)等で一部置換されていてもよい。
Liはリチウムを表す。Liは、その他の1価の元素、例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等で一部置換されていてもよい。
C元素は、アルミニウム(Al)及び/又はガリウム(Ga)を表す。C元素は、Alを含むことが好ましく、Alであることがより好ましい。なお、C元素は、その他の3価の元素、例えば、ホウ素(B)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、ルテチウム(Lu)等で一部置換されていてもよい。
なお、本実施態様の蛍光体は、上記した最小構成元素以外に、他の元素、例えばフッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)等のハロゲン原子を含んでいてもよい。ハロゲン原子は、原料金属中の不純物として混入のみならず、粉砕工程或いは窒化工程等の製造プロセス時に導入されることも考えられ、特に、フラックスとしてハロゲン化物を用いる場合、蛍光体中にハロゲン原子が高確率で含まれてしまう傾向にある。
本実施様態の蛍光体の格子定数aは、通常7.10Å以上、好ましくは7.49Å以上、より好ましくは7.65Å以上であり、また通常8.68Å以下、好ましくは8.28Å以下、より好ましくは8.12Å以下である。
さらに、格子定数bは、通常7.10Å以上、好ましくは7.49Å以上、より好ましくは7.65Å以上であり、また通常8.68Å以下、好ましくは8.28Å以下、より好ましくは8.12Å以下である。
さらに、格子定数cは、通常2.86×nÅ以上、好ましくは3.02×nÅ以上、より好ましくは3.08×nÅ以上であり、また通常3.49×nÅ以下、好ましくは3.33×nÅ以下、より好ましくは3.27×nÅ以下である。
また、nは、通常5、6、7、8、9、11、13、15、16、17、19、20、21、23、27、28であり、好ましくは6、7、8、9、11、13、15、16、17、19、20、21、23、27、28であり、より好ましくは6、7、8、11、13、15、17、19、20、23、27、28であり、さらに好ましくは6、7、13、15、17、19、20、23、28、なお好ましくは、6、7、13、17、19、20、23、特に好ましくは6、7、13、17、23である。
本実施態様の蛍光体は、結晶構造において、正方晶系の結晶構造を有する。また、その結晶構造において、少なくともLiとC元素が同一の結晶サイトに存在する。
本実施態様の蛍光体は、Mg及び/又はE元素(但し、E元素はSi及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素である)をさらに含んでいてもよい。
Mgは、マグネシウムを表す。Mgは、アルカリ土類金属元素以外の他の2価金属元素、例えば亜鉛(Zn)等で一部置換されていてもよい。
E元素は、ケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を表す。E元素としては、Siを含むことが好ましく、Siであることがより好ましい。なお、E元素は、その他の4価の元素、例えばスズ(Sn)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等で一部置換されていてもよい。
本実施態様の蛍光体は、下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含むものが好ましい。
1−aLib−d1c−d2−eMgd1+d2 [1]
(上記式[1]中、a、b、c、d1、d2、e、f、及びgは、各々独立に、下記式を満たす値である。
0<a≦0.2
1.0≦b≦3.5
1.0≦c≦4.0
0≦d1≦3.5
0≦d2≦4.0
0≦e≦4.0
0≦f≦5.0
0≦g≦5.0
4.0≦b+c≦5.0
4.0≦f+g≦5.0
0≦b−d1
0≦c−d2−e)
aはM元素の含有量を表し、その範囲は、通常0<a≦0.2であり、下限値は、好ましくは0.001、より好ましくは0.02であり、またその上限値は、好ましくは0.15、さらに好ましくは0.1である。
bは、Liの含有量を表し、その範囲は、通常1.0≦b≦3.5であり、下限値は、好ましくは1.56、より好ましくは2.14、さらに好ましくは2.73、特に好ましくは2.75、最も好ましくは3.22である。また、その上限値は、好ましくは3.47、より好ましくは3.45、さらに好ましくは3.44、特に好ましくは、3.43である。
cは、C元素の含有量を表し、その範囲は、通常1.0≦c≦4.0であり、下限値は、好ましくは1.25、より好ましくは1.29、さらに好ましくは1.31、特に好ましくは1.33であり、また、その上限値は、好ましくは3.32、より好ましくは2.68、さらに好ましくは2.04、特に好ましくは1.55である。
d1は、Liに対するMgの置換量を表し、その範囲は、通常0≦d1≦3.5であり、その上限値は、好ましくは1.5、より好ましくは0.6、さらに好ましくは0.5、特に好ましくは0.1である。
d2は、Alに対するMgの置換量を表し、その範囲は、通常0≦d2≦4.0であり、その上限値は、好ましくは2.0、より好ましくは0.6、さらに好ましくは0.5、特に好ましくは0.1である。
eは、Alに対するE元素の置換量を表し、その範囲は、通常0≦e≦4.0であり、その上限値は、好ましくは2.0、より好ましくは0.6、さらに好ましくは0.5、特に好ましくは0.1である。
fは、Nの含有量を表し、その範囲は、通常0≦f≦5.0であり、その上限値は、好ましくは4.50、より好ましくは3.71、さらに好ましくは2.45、なお好ましくは1.22、特に好ましくは1.21、最も好ましくは0.24である。
gは、Oの含有量を表し、その範囲は、通常0≦g≦5.0であり、下限値は、好ましくは1.13、より好ましくは2.29、さらに好ましくは3.46、特に好ましくは3.50、最も好ましくは4.43である。
b+cの範囲は、通常、4.0≦b+c≦5.0であり、4.5≦b+c≦5.0が好ましく、下限値は、より好ましくは4.57、さらに好ましくは4.62、特に好ましくは4.67であり、また、その上限値は、より好ましくは4.91、さらに好ましくは4.87、特に好ましくは4.86である。
f+gの範囲は、通常、4.0≦f+g≦5.0であり、4.5≦f+g≦5.0が好ましく、下限値は、より好ましくは4.57、さらに好ましくは4.62、特に好ましくは4.67であり、また、その上限値は、より好ましくは4.91、さらに好ましくは4.87、特に好ましくは4.86である。
上記式[1]において、0≦d1≦0.6であり、0≦d2≦0.6であり、0≦e≦1.0であることが好ましい。
また、上記式[1]において、さらに下記式を満たすことが好ましい。
4.5≦b+c≦5.0
0≦d1+d2≦1.0
4.5≦f+g≦5.0
また、d1+d2の範囲は、0≦d1+d2≦1.0が好ましく、その上限値は、より好ましくは0.6、さらに好ましくは0.5、特に好ましくは0.1である。
本実施態様の蛍光体は、前記結晶相が下記式[2]で表される組成を有する結晶相を含むことが好ましい。
a'm/n−a'Lix−y14−x−y2−zMgy1+y24+2m/n−2x+y1−y2+z2x−y1+y2−z−2m/n [2]
上記式[2]中、M元素、A元素、Li、C元素、Mg、E元素、N、Oは、上記式[1]で説明したものと同義である。
上記式[2]中、a'、m、n、x、y1、y2、及びzは、各々独立に、下記式を満たす値である。
0<a'≦0.2×m/n
4/5≦m/n≦8/9
m/n≦x≦2+m/n
0≦y1≦0.6
0≦y2≦0.6
0≦y1+y2≦1.0
0≦z≦1.0
0≦x−y
0≦4−x−y2−z
a’は、M元素の含有量を表し、その範囲は、通常0<a'≦0.2×m/nであり、下限値は、好ましくは0.001×m/n、より好ましくは0.02×m/nであり、また、その上限値は、好ましくは0.15×m/n、より好ましくは0.1×m/nである。
m/nは、Aの含有量を表し、その範囲は、通常4/5≦m/n≦8/9であり、下限値は、好ましくは17/21、より好ましくは22/27、さらに好ましくは23/28、特に好ましくは14/17である。また、その上限値は、好ましくは7/8、より好ましくは13/15、さらに好ましくは6/7である。
xは、Liの含有量を表し、その範囲は、通常m/n≦x≦2+m/nであり、下限値はm/nであり、好ましくは0.75×m/n+0.25×(2+m/n)、より好ましくは0.5×m/n+0.5×(2+m/n)、さらに好ましくは0.25×m/n+0.75×(2+m/n)、特に好ましくは0.05×m/n+0.95×(2+m/n)であり、また、その上限値は2+m/nであり、好ましくは0.25×m/n+0.75×(2+m/n)、より好ましくは0.5×m/n+0.5×(2+m/n)、さらに好ましくは0.75×m/n+0.25×(2+m/n)、特に好ましくは0.95×m/n+0.05×(2+m/n)である。
y1は、Liに対するMgの置換量を表し、その範囲は、通常0≦y1≦0.6であり、上限値は、好ましくは0.5、より好ましくは0.1である。
y2は、Alに対するMgの置換量を表し、その範囲は、通常0≦y2≦0.6であり、上限値は、好ましくは0.5、より好ましくは0.1である。
zは、Alに対するEの置換量を表し、その範囲は、通常0≦z≦1.0であり、上限値は、好ましくは0.5、より好ましくは0.1である。
また、上記式[2]において、0≦y1+y2≦0.1であり、0≦z≦0.1であることが好ましい。
いずれの含有量も、上記した範囲内であると、得られる蛍光体の発光特性、特に発光輝度が良好である点で好ましい。
上記式[1]又は式[2]で表される蛍光体の具体例としては、表1及び表2に示すものが挙げられるが、これらに特に限定されない。
<蛍光体の諸物性>
[発光色]
本実施態様の蛍光体の発光色は、化学組成等を調整することにより、波長300nm〜500nmといった近紫外領域〜青色領域の光で励起することができ、これにより緑色、黄緑色、黄色、赤色等、所望の発光色を発光することができる。
[発光スペクトル]
本実施態様の蛍光体は、波長400nmの光で励起した場合における発光スペクトルを測定した際に、以下の特性を有することが好ましい。すなわち、上述の発光スペクトルにおけるピーク波長(発光極大波長)は、通常500nm以上、好ましくは510nm以上、より好ましくは520nm以上である。また、その上限値は通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下である。発光スペクトルが上記範囲内であると、得られる蛍光体において、良好な緑〜黄色を呈するため、好ましい。
[発光スペクトルの半値幅]
本実施態様の蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅が、通常100nm以下、好ましくは90nm以下、より好ましくは85nm以下であり、また、その下限値は、通常30nm以上である。上記範囲内であると、液晶表示装置等の発光装置に使用する場合、色純度の低下が抑えられ、また、色再現範囲が広くなる傾向にあるため好ましい。
なお、本実施態様の蛍光体を波長400nmの光で励起するための励起用光源としては、特に限定されないが、例えばGaN系LEDを用いることができる。励起用光源としては、例えば300〜500nmの波長の光を発する紫外(または紫)LED発光素子又は青色LED発光素子を用いることができ、LED発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものが知られており、組成を調整することにより、所定の波長の光を発する発光光源となり得る。なお、本実施態様の蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、ピーク相対強度及びピーク半値幅等の算出は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて行うことができる。なお、例えばLED発光装置は、本発明の蛍光体を用いて、特開平5−152609、特開平7−99345、特許公報第2927279号等に記載されているような公知の方法により製造することができる。
[励起波長]
本実施態様の蛍光体は、通常300nm以上、好ましくは350nm以上、より好ましくは380nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは490nm以下、より好ましくは480nm以下、さらに好ましくは460nm以下の波長範囲に励起ピーク(吸収極大波長)を有する。すなわち、本実施態様の蛍光体は、通常、近紫外から青色領域の光で励起可能である。
[結晶系と空間群]
本実施態様の蛍光体における結晶系は、正方晶系(Tetragonal)である。また、本実施態様の蛍光体における空間群は、平均構造が上記長さの繰り返し周期(すなわち、格子定数cが所定の範囲内の周期)を示していれば特に限定されないが、「International Tables for Crystallography(Third,revised edition),Volume A SPACE−GROUP SYMMETRY」に基づく85番(P 4/n)又は87番(I 4/m)に属するものであることが好ましい。ここで、格子定数及び空間群は、常法にしたがって求めることができる。具体的には、格子定数は、X線回折及び中性子線回折の結果をリートベルト(Rietveld)解析することにより求めることができ、空間群は、電子線回折、単結晶を用いたX線回折及び中性子線回折の解析により求めることができる。
本発明のFT物質群は、その構成成分が他の元素で置換されたり、付活元素が固溶されたりすることによって格子定数が変化するが、結晶構造、原子が占有するサイト、及び、その原子座標によって与えられる原子位置は、骨格原子間の化学結合が切れるほどには大きく変化しない。
本発明においては、少なくとも請求項1を満たし、X線回折また中性子線回折の結果を解析して求めた格子定数及び原子座標から計算された各原子間の化学結合の長さが、各FT物質群の格子定数と原子座標とから計算された各原子間の化学結合の長さに対して、±10%以内の場合、本発明の蛍光体と同一の結晶構造であると判断される。
<蛍光体の製造方法>
本実施態様の蛍光体の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、付活元素であるM元素の原料(以下、適宜「M源」と称する場合がある。)、A元素の原料(以下、適宜「A源」と称する場合がある。)、Liの原料(以下、適宜「Li源」と称する場合がある。)、及びC元素の原料(以下、適宜「C源」と称する場合がある。)、並びに、必要に応じて配合されるE元素の原料(以下、適宜「E源」と称する場合がある。)及びMgの原料(以下、適宜「Mg源」と称する場合がある。)等の蛍光体原料を混合する工程(混合工程)と、得られた混合物を焼成する工程(焼成工程)とを少なくとも備える方法が好ましく用いられる。なお、以下では例えば、元素Euの原料を「Eu源」、元素Smの原料を「Sm源」などということがある。元素Alの原料を「Al源」、元素Siの原料を「Si源」等と称することがあり、他の元素についても同様とする。
[蛍光体原料]
M源、A源、Li源、C源、E源、Mg源等の蛍光体原料は、これらのケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、ハロゲン化物(塩化物、フッ化物)、酸フッ化物、水酸化物、シュウ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機金属化合物或いはこれらの前駆体化合物等を用いることができ、その種類は特に限定されない。蛍光体原料としては、1種を単独で用いることができ、また、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。これらの中でも、酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭酸塩、ケイ化物が好ましく、より好ましくは酸化物、窒化物、ハロゲン化物である。
なお、必要に応じて、本実施形態の蛍光体を予め合成し、これを種結晶(シード結晶)として原料混合物に混合してもよい。このように種結晶を用いることで、結晶化及び低温合成が促進され、より高い結晶度を有する蛍光体が得られ易い傾向にある。なお、種結晶の配合割合は、特に限定されないが、蛍光体原料100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲が好ましい。
(M源)
付活元素であるM源のうち、Eu源の具体例としては、Eu、Eu(SO、Eu(C・10HO、EuF、EuCl、EuCl、Eu(NO・6HO、EuN、EuNH等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、Eu、EuF、EuN等が好ましく、特に好ましくはEuNである。一方、Sm源、Tm源、Yb源等のその他の付活元素の原料の具体例としては、Eu源の具体例として挙げた各化合物において、EuをそれぞれSm、Tm、Yb等に置き換えた化合物が挙げられる。
(A源)
A源のうち、Sr源の具体例としては、SrO、Sr(OH)・8HO、SrCO、Sr(NO、SrSO、Sr(C)・HO、Sr(OCOCH・0.5HO、SrF、SrCl、SrN、Sr、SrNH等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、SrO、SrCO、SrN、Srが好ましい。また、反応性の点からは、粒径が小さく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。一方、Ca源、Ba源等のその他のアルカリ土類金属元素の原料の具体例としては、上記Sr源の具体例として挙げた各化合物において、SrをCa、Ba等に置き換えた化合物が挙げられる。
(Li源)
Li源の具体例としては、LiO、LiOH、LiCO、LiNO、LiSO、LiF、LiCl、LiN、LiNH及びこれらの化合物の水和物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、LiO、LiCO、LiNが好ましい。また、発光効率の点からは、純度の高いものが好ましい。一方、Liがその他の1価の元素によって一部置換される場合において、その他の1価の元素の原料の具体例としては、上記Li源の具体例として挙げた各化合物において、LiをNa、K、Rb、Cs等に置き換えた化合物が挙げられる。なお、Li源は、単体のLiを用いてもよい。
(C源)
C源のうち、Al源の具体例としては、AlN、Al、Al(OH)、AlOOH、Al(NO、AlF、AlCl等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、AlN、Alが好ましい。また、反応性の点から、粒径が小さく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。一方、Ga源の具体例としては、上記Al源の具体例として挙げた各化合物において、AlをGaに置き換えた化合物が挙げられる。また、AlやGaがその他の3価の元素によって一部置換される場合において、その他の3価の元素の原料の具体例としては、上記Al源の具体例として挙げた各化合物において、AlをB、In、Sc、Y、La、Gd、Lu等に置き換えた化合物が挙げられる。なお、Al源は、単体のAlを用いてもよい。
(Mg源)
Mg源の具体例としては、MgO、Mg(OH)、MgCO、Mg(NO、MgSO、Mg(C)・HO、Mg(OCOCH・0.5HO、MgF、MgCl及びその水和物、SrN、Sr、SrNH等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、MgO、MgCO、Mgが好ましい。また、反応性の点からは、粒径が小さく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。
(E源)
E源のうち、Si源の具体例としては、SiO又はSi等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、SiOとなる化合物を用いることもできる。このような化合物としては、具体的には、SiO、HSiO、Si(OCOCH等が挙げられる。また、Siとして反応性の点からは、粒径が小さく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。さらに、不純物である炭素元素の含有割合が少ないものの方が好ましい。一方、Ge源の具体例としては、上記Si源の具体例として挙げた各化合物において、SiをGeに置き換えた化合物が挙げられる。また、SiやGeがその他の4価の元素によって一部置換される場合において、その他の4価の元素の原料の具体例としては、上記Si源の具体例として挙げた各化合物において、SiをそれぞれSn、Ti、Zr、Hf等に置き換えた化合物が挙げられる。なお、Si源は、単体のSiを用いてもよい。
なお、上述したM源、A源、Li源、C源、Mg源及びE源は、それぞれ、一種のみを用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。一般的には、所望する組成の蛍光体が得られるように上述した蛍光体原料を秤量し、ボールミル等を用いて十分混合した後、ルツボに充填し、所定温度及び雰囲気下で焼成し、得られた焼成物を粉砕及び洗浄することにより、所望組成を有する本実施態様の蛍光体を得ることができる。
[混合工程]
蛍光体原料の混合方法は、乾式混合法や湿式混合法等の公知の手法により行えばよく、特に限定されない。乾式混合法としては、例えば、ボールミル等を用いた混合法が挙げられる。また、湿式混合法としては、例えば、前述の蛍光体原料に水等の溶媒又は分散媒を加えて、ボールミルや、乳鉢及び乳棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥又は自然乾燥等により乾燥させる方法である。なお、溶媒又は分散媒としては、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒等が挙げられるが、これらに特に限定されない。例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;或いはこれらの混合溶剤;等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、水、アルコール系溶剤、化水素系溶剤が好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[焼成工程]
得られた混合物を、各蛍光体原料と反応性の低い材料からなるルツボ又はトレイ等の耐熱容器中に充填する。このような焼成時に用いる耐熱容器の材質としては、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、例えば、窒化ホウ素等の坩堝や、モリブデンで作製した容器等が挙げられる。
焼成工程時の焼成温度は、圧力や外部雰囲気等によっても異なるが、通常500℃以上、2000℃以下の温度範囲である。この焼成工程における最高到達温度としては、通常600℃以上、好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上、また、通常2000℃以下、好ましくは1800℃以下である。焼成温度が高すぎると、母体中に含まれる元素が一部脱離し、結晶中に欠陥が多く生成し、得られる結晶が着色する傾向にあり、低すぎると固相反応の進行が遅くなる傾向にあり、目的相を主相として有する蛍光体が得られ難くなる場合がある。また、ごくわずかに目的の結晶相が得られたとしても、焼成温度が低すぎると、結晶内では発光中心となる元素、例えばEu元素の拡散がされず量子効率を低下させる場合がある。また、焼成温度が高すぎると目的の蛍光体結晶を構成する元素が揮発し易くなり、格子欠陥が形成され易くなり、或いは結晶相が分解して別の相が不純物として生じてしまう場合がある。
焼成工程時の圧力は、焼成温度や外部雰囲気等によっても異なるが、通常0.1MPa以上であり、また、通常200MPa以下、好ましくは190MPa以下である。
焼成工程における焼成雰囲気は、本実施態様の蛍光体が得られる限り任意であるが、不活性ガス(窒素、アルゴン等)含有雰囲気とすることが好ましい。具体的には、窒素ガス雰囲気、水素含有窒素雰囲気等が好ましく、より好ましくは窒素ガス雰囲気である。
焼成工程における焼成時間は、焼成時の温度や圧力、外部雰囲気等によっても異なるが、通常10分間以上、好ましくは30分間以上、また、通常72時間以下、好ましくは24時間以下である。焼成時間が短すぎると粒生成と粒成長を促すことができないため、特性のよい蛍光体を得られ難くなる傾向にあり、また、焼成時間が長すぎると構成している元素の揮発が促されるため、原子欠損により結晶構造内に欠陥が誘発され特性のよい蛍光体を得られ難くなる傾向にある。
[後処理工程]
得られる焼成物は、粒状又は塊状となる。これを解砕、粉砕及び/又は分級操作を組み合わせて所定のサイズの粉末にする。ここでは、メジアン径(D50)が約30μm以下になるように処理してもよい。
具体的な処理の例としては、合成物を目開き45μm程度の篩分級処理し、篩を通過した粉末を次工程に回す方法、或いは合成物をボールミルや振動ミル、ジェットミル等の一般的な粉砕機を使用して所定の粒度に粉砕する方法が挙げられる。後者の方法において、過度の粉砕は、光を散乱しやすい微粒子を生成するだけでなく、粒子表面に結晶欠陥を生成し、発光効率の低下を引き起こす可能性がある。
また、必要に応じて、蛍光体(焼成物)を洗浄する工程を設けてもよい。洗浄工程後は、蛍光体を付着水分がなくなるまで乾燥させて、使用に供する。さらに、必要に応じて、凝集をほぐすために分散・分級処理を行ってもよい。
発光特性に優れる蛍光体を得る観点から、不純物の含有量が少ない方が好ましい。とりわけ、Cl、F等のハロゲン元素が多く含まれると発光が阻害され易くなる傾向にあるため、Cl及びFの元素量換算の含有割合は合計で5000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは3000ppm以下、さらに好ましくは2000ppm以下である。
<蛍光体組成物>
本実施態様の蛍光体は、そのまま単独で発光材料として用いることができるが、他の材料と混合して蛍光体組成物として用いることもできる。すなわち、蛍光体組成物は、本実施形態の蛍光体とは異なる物質を含んでいてもよい。蛍光体組成物として用いる場合、本実施態様の蛍光体の含有割合は、組成物総量に対して、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。このとき、本実施形態の蛍光体とは異なる物質として、本実施形態の蛍光体とは異なる蛍光体;付加反応型シリコーン又は縮合反応型のシリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等のバインダー樹脂や封止樹脂;ガラス;拡散剤;増粘剤;増量剤;干渉剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
<発光装置等>
上述した本実施態様の蛍光体及びこれを用いた蛍光体組成物は、照明装置や画像表示装置等の発光装置の発光材料として好適に用いられる。この種の発光装置は、近紫外又は短波長可視域の光を発する励起用光源、及びこの励起用光源が発する光の少なくとも一部を異なる発光スペクトルに変換する蛍光体を少なくとも備えるものであり、かかる蛍光体として、上述した本実施態様の蛍光体及びこれを用いた蛍光体組成物を用いればよい。照明装置や画像表示装置等の発光装置としては、LED照明装置やLED画像表示装置等のLEDデバイス、EL照明装置やEL画像表示装置等のELデバイス、蛍光ランプ等が知られている。より具体的には、白色発光ダイオード、複数の白色発光ダイオードを含む照明器具、液晶パネル用バックライト等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、画像表示装置としては、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
励起用光源としては、本実施態様の蛍光体の励起ピーク(吸収極大波長)に一致した波長300〜500nmの近紫外領域〜青色領域の光を発する光源が好ましく用いられる。このような光源としては、300〜500nmの波長の光を発する発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、半導体レーザ、または、有機EL発光体(OLED)等が挙げられる。これにより、蛍光体から緑色、黄緑色、黄色、赤色等、所望の発光色を効率よく発光させることができる。
以下、実施例を用いて本発明の内容をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
<測定方法>
[発光特性]
発光粒子を採取し、Xe分光励起装置QE1100(大塚電子社製)及び発光検出器MCPD−7700(大塚電子社製)を用いて励起発光スペクトルと発光スペクトルを測定した。また、発光ピーク波長と発光ピークの半値幅は、得られた発光スペクトルから読み取った。
[元素分析]
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察にて結晶を選び出したのち、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて各元素の分析を実施した。
[結晶構造解析]
単結晶粒子のX線回折データをイメージングプレートとグラファイトモノクロメータを備えMoKαをX線源とする単結晶X線回折装置(Bruker AXS,D8 QUEST)で測定した。データの収集と格子定数の精密化にはAPEX2を、X線形状吸収補正にはSADABSを使用した。FのデータについてSHELXL−97及びJana2006を用いて結晶構造パラメータの精密化を行った。また、結晶構造の描画にはVESTAを用いた。
<合成条件>
蛍光体原料粉末としてLiN、LiO、Mg、Sr、SrO、AlN、Al、EuN、Eu、EuFを用い、フラックスとしてSrF粉末を用いた。上記原料を、表3に示す質量となるようにそれぞれ秤量した後、乳鉢に入れ、均一になるまで混合し、実施例1〜5及び参考例1の原料混合粉末をそれぞれ得た。得られた原料混合粉末から表4に示す質量分をそれぞれ分取し、モリブデンで作製した容器にそれぞれ充填した。なお、これらの操作は、Nガスで満たしたグローブボックス中ですべて行った。
次いで、各容器を管状炉中に設置し、Nガスを流通させ、表5に示す温度、保持時間で焼成した。焼成後の容器をNガスで満たしたグローブボックス中へ導入し、得られた生成物を乳鉢にて解砕し、実施例1〜5及び参考例1の焼成粉末をそれぞれ得た。
[参考例1]
得られた参考例1の焼成粉末から、柱状の赤色粒子を採取した(参考例1の蛍光体)。この参考例1の蛍光体について、単結晶X線回折測定による結晶構造解析を実施したところ、参考例1の蛍光体は、正方晶系に属し、I 4/m空間群に属し、a=b=8.07[Å]、c=3.31[Å]の格子定数を有する1/1結晶であった。なお、この参考例1の蛍光体は、特許文献6で示される物質であった。
次いで、参考例1の蛍光体について、元素分析(EDX測定)を行った。EDX測定結果、及びこれをSr+Eu=1で規格化した計算組成を表6に示す。検出された元素は、Sr、Mg、Al、Eu、N、O、Fであった。なお、Liは、EDX測定によっては検出されない。
ここで、1/1結晶の結晶構造に基づいて、下記条件Iを用いた計算組成を表7に示す。また同様に、1/1結晶の結晶構造に基づいて、下記条件I、II及びIIIを用いた計算組成を表8に示す。
条件I :Sr+Eu=1としたとき、Li+Mg+Al=4である
条件II :Sr+Eu=1としたとき、N+O=4である
条件III:N、Oの値は電気的中性条件を最も満たす値とする
(Euは2価として計算する。Fは若干含まれている可能性があるが、
計算において考慮しない。)
表8に示すとおり、条件I、II及びIIIに基づく計算組成は、Sr0.96Li0.59Mg0.98Al2.43Eu0.043.850.15であった。計算組成より、参考例1の蛍光体は、微量のOを含む可能性を有するものの、ほぼ窒化物であることが示唆される。なお、N及びOの測定値と計算値との大きな差異の理由は、粒子表面の酸化によるものと推測される。また、条件I、II、IIIから求めた計算組成より、Mgの置換は主にLi+Al→2Mgの反応式によって表されるものと推察される。また、他のFT物質群においても、同量程度のMg固溶が許容されるものと予想される。
次いで、参考例1の蛍光体の励起・発光スペクトルを図2に示す。参考例1の蛍光体の励起スペクトルは、685nmの発光をモニターし、発光スペクトルは492nmの光源を用いて励起したときの測定結果である。参考例1の蛍光体は、発光ピーク波長685nm、半値幅93nmの赤色発光を示した。参考例1の蛍光体は強い発光を示すものの、視感度の低い波長を示し、好ましくなかった。
[実施例1]
得られた実施例1の焼成粉末から、破片状の黄色粒子を採取した(実施例1の蛍光体)。この実施例1の蛍光体について、単結晶X線回折測定による結晶構造解析を実施したところ、実施例1の蛍光体は、正方晶系に属し、I 4/m空間群に属し、表9に示す結晶パラメータ及び原子座標を占める、6/7結晶であった。また、Euを含まない場合の結晶組成は、SrLi20Al28であり、Sr=1としたとき、SrLi3.33Al1.334.67であった。
さらに、実施例1の蛍光体について、元素分析(EDX測定)を行った。EDX測定結果、及びこれをSr+Eu=6で規格化した計算組成を表10に示す。検出された元素は、Sr、Al、Eu、N、O、Clであった。なお、Liは、EDX測定によっては検出されず、Clは、焼成粉末の作製過程において混入したものと考えられる。
ここで、6/7結晶の結晶構造に基づいて、下記条件Iを用いた計算組成を表11に示す。また同様に、6/7結晶の結晶構造に基づいて、下記条件I、II及びIIIを用いた計算組成を表12に示す。
条件I :Sr+Eu=6としたとき、Li+Al=28である
条件II :Sr+Eu=1としたとき、N+O=28である
条件III:N、Oの値は電気的中性条件を最も満たす値とする
(Euは2価として計算する。Clは若干含まれている可能性があるが、
計算において考慮しない。)
表11より、構造解析によるカチオン組成値と、EDX測定によるカチオン組成値の一致が良好であることが確認できた。
表12より、実施例1の蛍光体は、微量のNを含む可能性を有するものの、ほぼ酸化物であることが示唆される。
次いで、実施例1の蛍光体を365nmの光源を用いて励起したときの発光スペクトルを図3に示す。実施例1の蛍光体は、発光ピーク波長571nm、半値幅80nmの黄色発光を示した。
[実施例2]
得られた実施例2の焼成粉末から、平板状の緑色粒子を採取した(実施例2の蛍光体)。この実施例2の蛍光体について、単結晶X線回折測定による結晶構造解析を実施したところ、実施例2の蛍光体は、正方晶系に属し、P 4/n空間群に属し、表13に示す結晶パラメータ及び原子座標を占める、11/13結晶であった。また、Euを含まない場合の結晶組成は、Sr11Li37Al1552であり、Sr=1としたとき、SrLi3.36Al1.364.73であった。
次いで、実施例2の蛍光体の励起・発光スペクトルを図4に示す。実施例2の蛍光体の励起スペクトルは、533nmの発光をモニターし、発光スペクトルは400nmの光源を用いて励起したときの測定結果である。実施例2の蛍光体は、発光ピーク波長533nm、半値幅68nmの、緑色発光を示した。
[実施例3]
容器から実施例3の焼成粉末を取り出し、このとき容器壁面に付着していた平板状の緑色粒子を採取した(実施例3の蛍光体)。この実施例3の蛍光体について、単結晶X線回折測定による結晶構造解析を実施したところ、実施例3の蛍光体は、正方晶系に属し、P 4/n空間群に属し、表14に示す結晶パラメータ及び原子座標を占める、5/6結晶であった。また、Euを含まない場合の結晶組成は、SrLi17Al24であり、Sr=1としたとき、SrLi3.40Al1.404.80であった。
次いで、実施例3の蛍光体を365nmの光源を用いて励起したときの発光スペクトルを図5に示す。実施例3の蛍光体は、発光ピーク波長533nm、半値幅66nmの、緑色発光を示した。
[実施例4]
容器から実施例4の焼成粉末を取り出し、このとき容器壁面に付着していた平板状の緑色粒子を採取した(実施例4の蛍光体)。この実施例4の蛍光体について、単結晶X線回折測定による結晶構造解析を実施したところ、実施例4の蛍光体は、正方晶系に属し、P 4/n空間群に属し、表15に示す結晶パラメータ及び原子座標を占める、19/23結晶であった。また、Euを含まない場合の結晶組成は、Sr19Li65Al2792であり、Sr=1としたとき、SrLi3.42Al1.424.84であった。
さらに、実施例4の蛍光体について、元素分析(EDX測定)を行った。EDX測定結果、及びこれをSr+Eu=19で規格化した計算組成を表16に示す。検出された元素は、Sr、Mg、Al、Eu、N、O、Fであった。なお、Liは、EDX測定によっては検出されず、Mgは、焼成粉末の作製過程において混入したものと考えられる。
ここで、19/23結晶の結晶構造に基づいて、下記条件Iを用いた計算組成を表17に示す。また同様に、19/23結晶の結晶構造に基づいて、下記条件I、II及びIIIを用いた計算組成を表18に示す。
条件I :Sr+Eu=19としたとき、Li+Mg+Al=92である
条件II :Sr+Eu=19としたとき、N+O=92である
条件III:N、Oの値は電気的中性条件を最も満たす値とする
(Euは2価として計算する。Fは若干含まれている可能性があるが、
計算において考慮しない。)
表17より、構造解析によるカチオン組成値と、EDX測定によるカチオン組成値の一致が良好であることが確認できた。
表18より、実施例4の蛍光体は、微量のNを含む可能性を有するものの、ほぼ酸化物であることが示唆される。
次いで、実施例4の蛍光体の励起・発光スペクトルを図6に示す。実施例4の蛍光体の励起スペクトルは、541nmの発光をモニターし、発光スペクトルは406nmの光源を用いて励起したときの測定結果である。実施例4の蛍光体は、発光ピーク波長541nm、半値幅68nmの、緑色発光を示した。
[実施例5]
容器から実施例5の焼成粉末を取り出し、このとき容器壁面に付着していた塊状の緑色粒子を採取した(実施例5の蛍光体)。この実施例5の蛍光体について、単結晶X線回折測定による結晶構造解析を実施したところ、実施例5の蛍光体は、正方晶系に属し、P 4/n空間群に属し、表19に示す結晶パラメータ及び原子座標を占める、14/17結晶であった。また、Euを含まない場合の結晶組成は、SrLi24Al1034であり、Sr=1としたとき、SrLi3.43Al1.434.86であった。
さらに、実施例5の蛍光体について、元素分析(EDX測定)を行った。EDX測定結果、及びこれをSr+Eu=7で規格化した計算組成を表20に示す。検出された元素は、Sr、Mg、Al、Eu、N、O、Fであった。なお、Liは、EDX測定によっては検出されず、Mgは、焼成粉末の作製過程において混入したものと考えられる。
ここで、14/17結晶の結晶構造に基づいて、下記条件Iを用いた計算組成を表21に示す。また同様に、14/17結晶の結晶構造に基づいて、条件I、II及びIIIを用いた計算組成を表22に示す。
条件I :Sr+Eu=7としたとき、Li+Mg+Al=34である
条件II :Sr+Eu=7としたとき、N+O=34である
条件III:N、Oの値は電気的中性条件を最も満たす値とする
(Euは2価として計算する。Fは若干含まれている可能性があるが、
計算において考慮しない。)
表21より、構造解析によるカチオン組成値と、EDX測定によるカチオン組成値の一致が良好であることが確認できた。
表22より、実施例5の蛍光体は、微量のNを含む可能性を有するものの、ほぼ酸化物であることが示唆される。
次いで、実施例5の蛍光体を365nmの光源を用いて励起したときの発光スペクトルを図7に示す。実施例5の蛍光体は、発光ピーク波長529nm、半値幅69nmの、緑色発光を示した。
<総合説明>
[FT物質群における一般的な格子定数]
参考例1及び実施例1〜5の蛍光体について、単結晶X線構造解析から求めた格子定数a及び格子定数cを、表23に示す。なお、参考例1及び実施例1〜5の蛍光体は、結晶構造が正方晶系に属するため、いずれも格子定数a=格子定数bである。
図8に、n値に対する、参考例1及び実施例1〜5の蛍光体の格子定数aの値を示す。格子定数aの平均値は、7.8875[Å]であった。
また、図9に、n値に対する、参考例1及び実施例1〜5の蛍光体の格子定数cの値を示す。併せて、切片を0とした場合の最小二乗法により求めた近似直線を図9に示す。近似直線の直線式は、y=3.1760xであった。また、直線性を示すR2値は、1.0000であった。
これらに基づいて、FT物質群の一般的な格子定数を見積もった結果を表24に示す。ここでは、n=1、5、6、7、8、9、11、13、15、16、17、19、20、21、23、27、28であり、それぞれ1/1結晶、4/5結晶、5/6結晶、6/7結晶、7/8結晶、8/9結晶、9/11結晶、11/13結晶、13/15結晶、13/16結晶、14/17結晶、16/19結晶、17/20結晶、17/21結晶、19/23結晶、22/27結晶、23/28結晶の格子定数cを示す。
[FT物質群における組成]
実施例2及び実施例3の構造解析から求めた組成、並びに、参考例1、実施例1、実施例4及び実施例5のEDX測定から求めた計算組成を、表25に示す。
表25に示すとおり、Mgの固溶は、参考例1で顕著に見られるが、他のFT物質群においても可能であると考えられる。また、FT物質群のいずれにおいても、N、O組成比率の調整が可能であると考えられる。さらに、若干の不純物として、F、Cl等のハロゲン元素を含んでいる可能性が考えられる。
本発明の蛍光体は、従来の蛍光体とは異なる結晶構造及び発光特性を有し、近紫外又は短波長可視域の光により、緑色乃至黄色に発光するものであるため、発光装置、照明装置及び画像表示装置等の各種用途において使用される蛍光材料として広く且つ有効に利用可能である。

Claims (31)

  1. M元素、A元素、Li、及びC元素(但し、M元素は付活元素、A元素はCa、Sr、及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、C元素はAl及び/又はGaである)を少なくとも有し、さらにN及び/又はOを有する結晶相を含み、
    前記結晶相においては、格子定数が下記範囲を満たすことを特徴とする、蛍光体。
    7.10≦格子定数a≦8.68
    7.10≦格子定数b≦8.68
    2.86×n≦格子定数c≦3.49×n
    (上記式中、nは、5、6、7、8、9、11、13、15、16、17、19、20、21、23、27、及び28から選択されるいずれか一の整数である。なお、nによって指定される格子定数cの範囲は、重複してもよい。)
  2. 少なくともLiとC元素が同一の結晶サイトに存在し、晶系が正方晶系であることを特徴とする
    請求項1に記載の蛍光体。
  3. Mg及び/又はE元素(但し、E元素はSi及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素である)をさらに含むことを特徴とする
    請求項1又は2に記載の蛍光体。
  4. 下記式[1]で表される結晶相を含むことを特徴とする
    請求項3に記載の蛍光体。
    1−aLib−d1c−d2−eMgd1+d2 [1]
    (上記式[1]中、a、b、c、d1、d2、e、f、及びgは、各々独立に、下記式を満たす値である。
    0<a≦0.2
    1.0≦b≦3.5
    1.0≦c≦4.0
    0≦d1≦3.5
    0≦d2≦4.0
    0≦e≦4.0
    0≦f≦5.0
    0≦g≦5.0
    4.0≦b+c≦5.0
    4.0≦f+g≦5.0
    0≦b−d1
    0≦c−d2−e)
  5. 上記式[1]中、0≦d1≦0.6であり、0≦d2≦0.6であり、0≦e≦1.0であることを特徴とする
    請求項4に記載の蛍光体。
  6. 上記式[1]中、4.5≦b+c≦5.0であり、0≦d1+d2≦1.0であり、4.5≦f+g≦5.0であることを特徴とする
    請求項4又は5に記載の蛍光体。
  7. 前記結晶相は、下記式[2]で表される結晶相を含むことを特徴とする
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光体。
    a'm/n−a'Lix−y14−x−y2−zMgy1+y24+2m/n−2x+y1−y2+z2x−y1+y2−z−2m/n [2]
    (上記式[2]中、a'、m、n、x、y1、y2、及びzは、各々独立に、下記式を満たす値である。
    0<a'≦0.2×m/n
    4/5≦m/n≦8/9
    m/n≦x≦2+m/n
    0≦y1≦0.6
    0≦y2≦0.6
    0≦y1+y2≦1.0
    0≦z≦1.0
    0≦x−y
    0≦4−x−y2−z)
  8. M元素が、Eu、Ce、Pr、Sm、Tb、Dy及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含むことを特徴とする
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の蛍光体。
  9. nは、6、7、8、11、13、15、17、19、20、23、27、及び28から選択されるいずれか一の整数であることを特徴とする
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の蛍光体。
  10. 上記式[2]中、22/27≦m/n≦7/8であり、0.5×m/n+0.5×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする
    請求項7〜9のいずれか一項に記載の蛍光体。
  11. 上記式[2]中、0≦y1+y2≦0.1であり、0≦z≦0.1であることを特徴とする
    請求項7〜10のいずれか一項に記載の蛍光体。
  12. M元素がEuを含み、A元素がSrを含み、C元素がAlを含むことを特徴とする
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の蛍光体。
  13. E元素がSiを含むことを特徴とする
    請求項3〜12のいずれか一項に記載の蛍光体。
  14. nは、6、7、13、17、及び23から選択されるいずれか一の整数であることを特徴とする
    請求項1〜13のいずれか一項に記載の蛍光体。
  15. 上記式[2]中、14/17≦m/n≦6/7であり、0.25×m/n+0.75×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする
    請求項7〜14のいずれか一項に記載の蛍光体。
  16. M元素がEuを含み、A元素がSrを含み、C元素がAlを含み、E元素がSiを含むことを特徴とする
    請求項3〜15のいずれか一項に記載の蛍光体。
  17. 上記式[2]中、nは6であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする
    請求項7〜16のいずれか一項に記載の蛍光体。
  18. 上記式[2]中、mは5であり、nは6であることを特徴とする
    請求項17に記載の蛍光体。
  19. 上記式[2]中、nは7であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする
    請求項7〜16のいずれか一項に記載の蛍光体。
  20. 上記式[2]中、mは6であり、nは7であることを特徴とする
    請求項19に記載の蛍光体。
  21. 上記式[2]中、nは13であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする
    請求項7〜16のいずれか一項に記載の蛍光体。
  22. 上記式[2]中、mは11であり、nは13であることを特徴とする
    請求項21に記載の蛍光体。
  23. 上記式[2]中、nは17であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする
    請求項7〜16のいずれか一項に記載の蛍光体。
  24. 上記式[2]中、mは14であり、nは17であることを特徴とする
    請求項23に記載の蛍光体。
  25. 上記式[2]中、nは23であり、0.05×m/n+0.95×(2+m/n)≦x≦2+m/nであることを特徴とする
    請求項7〜16のいずれか一項に記載の蛍光体。
  26. 上記式[2]中、mは19であり、nは23であることを特徴とする
    請求項25に記載の蛍光体。
  27. F及び/又はClをさらに含み、
    F及びClの元素量換算の含有割合が、合計で5000ppm以下であることを特徴とする
    請求項1〜26のいずれか一項に記載の蛍光体。
  28. 請求項1〜27のいずれか一項に記載の蛍光体を含み、前記蛍光体が総量に対して20質量%以上含有されることを特徴とする
    蛍光体組成物。
  29. 近紫外又は短波長可視域の光を発する励起用光源、及び前記励起用光源が発する光の少なくとも一部を異なる発光スペクトルに変換する蛍光体を少なくとも備え、
    前記蛍光体が、請求項1〜27のいずれか一項に記載の蛍光体、及び/又は請求項28に記載の蛍光体組成物を少なくとも含むことを特徴とする、
    発光装置。
  30. 請求項29に記載の発光装置を備えることを特徴とする、
    照明装置。
  31. 請求項29に記載の発光装置を備えることを特徴とする、
    画像表示装置。
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