JP2019210184A - 基材および切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温での高い耐塑性変形性を有する基材、および、それを備える切削工具を提供する。【解決手段】本開示の一態様に係る基材は、第1硬質相、第2硬質相および結合相を含む超硬合金からなる。第1硬質相はWC粒子からなる。第2硬質相はAl2O3からなる。結合相は、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属を含む。基材は、中心部と、中心部を取り囲むように中心部の表面に設けられた傾斜層と、を備える。中心部における第2硬質相の含有率は0.7%以上である。傾斜層における第2硬質相の含有率は0.05%以上0.7%未満である。斜層において、中心部と反対側の表面から中心部側の表面にかけて第2硬質相の含有率が増加する。【選択図】図1

Description

本開示は、基材および切削工具に関する。
高い硬度が要求される製品として、たとえば切削工具がある。このような製品に用いられる硬質材料として、超硬合金が用いられている。切削工具等は高温に曝される場合が多く、高温では超硬合金の摩耗が促進され、製品として所望される長さの寿命を達成できなくなる場合がある。このため、切削工具等に用いられる超硬合金には、高温での耐摩耗性が求められる。
切削工具に高温での耐摩耗性を付与するために、たとえば、特許文献1(特開平9−125229号公報)には、基材に高温での耐摩耗性に優れた被膜を形成する技術が開示されている。
しかし、最近は、特に耐熱合金などの難削材への加工ニーズが高まり、切削速度の向上も求められている。硬度および強度が高い難削材を加工する場合、切削工具の刃先はさらに高温になるため、切削工具が軟化して変形し易くなる。
したがって、特許文献1に開示されるような被膜を施した切削工具であっても、より高温の環境下での使用により、被膜が磨滅または破壊されて基材が露出すると、急激に耐摩耗性が低下してしまう。このため、基材自体の高温での耐摩耗性をさらに向上させることが望まれる。
たとえば、切削工具の基材の材料として、Al、Alを含む金属間化合物相などの高温耐性に優れた材料を含む焼結体(超硬合金)を用いることで、切削工具の基材自体の高温での耐摩耗性を向上させることができる(例えば、特許文献2(特開2014−208889号公報)参照)。
特開平9−125229号公報 特開2014−208889号公報
しかしながら、Alは脆性材料であるため、切削工具の基材全体にAlが存在すると、切削工具の圧縮強度、引張強度等の機械的強度が低下して、耐塑性変形性が低下するという問題があった。
したがって、本開示の目的は、高温での高い耐塑性変形性を有する基材、ならびに、それを備える切削工具を提供することである。
本開示の一態様に係る基材は、第1硬質相、第2硬質相および結合相を含む超硬合金からなる。
第1硬質相はWC粒子からなる。
第2硬質相はAlからなる。
結合相は、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属を含む。
基材は、中心部と、中心部を取り囲むように中心部の表面に設けられた傾斜層と、を備える。
中心部における第2硬質相の含有率は0.7%以上である。
傾斜層における第2硬質相の含有率は0.05%以上0.7%未満である。
傾斜層において、中心部と反対側の表面から中心部側の表面にかけて第2硬質相の含有率が増加する。
本開示の一様態に係る切削工具は、上記基材を備える。
上記によれば、高温での高い耐塑性変形性を有する基材、ならびに、それを備える切削工具を提供することができる。
実施形態に係る基材の断面模式図である。 実施形態に係る基材の断面拡大図である。 切削工具の塑性変形量の測定方法を説明するための概念図である。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
なお、本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
〔1〕 本開示の一態様に係る基材は、第1硬質相、第2硬質相および結合相を含む超硬合金からなる。第1硬質相はWC粒子からなる。第2硬質相はAlからなる。結合相は、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属を含む。基材は、中心部と、中心部を取り囲むように中心部の表面に設けられた傾斜層と、を備える。中心部における第2硬質相の含有率は0.7%以上である。傾斜層における第2硬質相の含有率は0.05%以上0.7%未満である。傾斜層において、中心部と反対側の表面から中心部側の表面にかけて第2硬質相の含有率が増加する。
基材は、Al(第2硬質相)などの高温での高い耐摩耗性を有する材料を含むため、高温での高い耐摩耗性を有する。
また、基材が、表面側から中心部側にかけて第2硬質相の比率が増加する傾斜層を有していることで、基材の表面と中心部との間で機械特性が徐々に変化する。このため、基材の表面と中心部との間で基材の熱収縮率または熱膨張率が急激に変化することによる基材の表面と中心部との間の境界での剥がれや反りが抑制される。一方、傾斜層中の第2硬質相が断熱材としても働き、傾斜層によって中心部への熱伝導が抑えられる。これにより、基材の表面が高温になっても中心部の温度上昇が抑えられるため、中心部の硬度を保ち、塑性変形、クリープ変形等を抑制することができる。したがって、基材の耐塑性変形性が高められる。
したがって、上記基材は、高温での高い耐塑性変形性を有する。
〔2〕 結合相は、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属と、Alと、Cと、を含むAl結合相を含むことが好ましい。
Al結合相は、高温での耐塑性変形性に優れるため、結合相がAl結合相を含むことで、基材の刃先の変形を抑制でき、基材の耐塑性変形性がさらに向上するからである。
〔3〕 Al結合相は、さらにWを含むことが好ましい。
Al結合相にWが固溶することで、Al結合相の高温硬度が上昇し、高温での耐摩耗性がさらに向上するからである。
〔4〕 中心部の厚みYと、基材の厚みZとが、0.75≦Y/Z≦0.95を満たすことが好ましい。
Y/Z<0.75である場合、第2硬質相の量が不十分であること、または、高温下での耐塑性変形性を有する中心部が基材の刃先(表面)から離れすぎていることにより、高温下での耐塑性変形性が低下する可能性がある。Y/Z>0.95である場合、断熱材である第2硬質相が多いために基材の刃先表面の温度上昇を促進させ耐塑性変形性が低下する可能性があり、また、第2硬質相が基材の刃先の近くに存在することにより、被削材と接触した際に基材の刃先に欠けが発生し易くなり、耐欠損性が低下する可能性がある。したがって、中心部の厚みYと基材の厚みZとが0.75≦Y/Z≦0.95を満たすことにより、高温での高い耐摩耗性、高い耐塑性変形性、および、高い耐欠損性を有する基材を提供することができる。
〔5〕 傾斜層の中心部と反対側における第2硬質相の含有率が0.05%以上0.1%以下であり、傾斜層の中心部側における第2硬質相の含有率が0.3%以上0.7%未満であることが好ましい。
この場合、傾斜層と中心部(および表面層)との界面において、その両側の第2硬質相の濃度差が小さくなるため、該界面における歪みが生じ難く、基材の耐塑性変形性が十分に高められる。
〔6〕 中心部における第2硬質相の含有率が10%以下であることが好ましい。
中心部の表面における第2硬質相の含有率が10%超である場合、傾斜層と中心部との界面の両側における第2硬質相の濃度差が大きくなるため、該界面における歪みが生じ易くなり、耐塑性変形性を高める効果が十分に得られない可能性がある。
〔7〕 基材は、傾斜層の中心部と反対側の表面に設けられた表面層をさらに備え、表面層は第1硬質相および結合相を含み、表面層における第2硬質相の含有率が0.05%未満であることが好ましい。
基材の内部には、高温での耐摩耗性に優れるが靱性が低く耐塑性変形性に劣る第2硬質相が存在し、基材の表面には、第2硬質相の含有量が少ない表面層が存在することで、基材の高温での耐摩耗性と耐塑性変形性とを両立させることができる。
〔8〕 周期表4族元素、5族元素および6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,OおよびBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、の化合物(ただし、WCを除く)、または、その固溶体からなる第3硬質相をさらに含むことが好ましい。
第3硬質相を含むことにより、基材の高温での耐摩耗性を維持しつつ、熱的または機械的衝撃による亀裂の発生を抑制し、かつ、耐酸化性および被削材に対する耐反応性がより向上するためである。
〔9〕 本開示の一様態に係る切削工具は、上記基材を備える。
高温での高い耐塑性変形性を有する上記基材を用いることで、切削工具の長寿命化が可能となる。
〔10〕 基材の表面の少なくとも一部に被膜を備えることが好ましい。
被膜を備えることで、切削工具の耐摩耗性などがより向上し、切削工具のさらなる長寿命化が可能となる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と記される)が説明される。ただし、以下の説明は、本開示を限定するものではない。また、本明細書において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のものに限定されるものではない。
図1を参照して、本実施形態の基材1は、第1硬質相、第2硬質相および結合相を含む超硬合金からなる。第1硬質相はWC粒子からなる。第2硬質相はAlからなる。結合相は、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属を含む。基材1は、中心部11と、中心部11を取り囲むように中心部11の表面に設けられた傾斜層12と、を備える。中心部11における第2硬質相の含有率は0.7%以上である。傾斜層12における第2硬質相の含有率は0.05%以上0.7%未満である。傾斜層12において、中心部11と反対側の表面から中心部11側の表面にかけて第2硬質相の含有率が増加する。
本実施形態の基材は、Al(第2硬質相)などの高温での高い耐摩耗性を有する材料を含むため、高温での高い耐摩耗性を有する。
また、基材1が表面側から中心部11側にかけて第2硬質相の比率が増加する傾斜層12を有していることで、基材1の表面と中心部11との間で機械特性が徐々に変化する。このため、基材の表面と中心部との間で基材の熱収縮率または熱膨張率が急激に変化することによる基材の表面と中心部との間の境界での剥がれや反りが抑制される。一方、傾斜層12中の第2硬質相が断熱材としても働き、傾斜層12によって中心部への熱伝導が抑えられる。これにより、基材1の表面が高温になっても中心部11の温度上昇が抑えられるため、中心部11の硬度を保ち、塑性変形、クリープ変形等を抑制することができる。したがって、基材1の耐塑性変形性が高められる。
したがって、上記基材は、高温での高い耐塑性変形性を有する。このような高温での高い耐塑性変形性を有する基材を用いることで、例えば、難削材の高速加工やより高負荷の切削が可能になる。以下、本実施形態の基材の詳細について説明する。
<基材>
本実施形態に係る基材は、第1硬質相、第2硬質相および結合相を含む超硬合金からなる。超硬合金は、これらを含む限り、これら以外の成分を含んでいてもよい。例えば、超硬合金は、不可避不純物(B、N、O等)を本開示の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。また、超硬合金は、その組織中に遊離炭素やη相と呼ばれる異常層を含んでいてもよい。
(第1硬質相および第2硬質相)
第1硬質相はWC粒子からなる。第2硬質相はAlからなる。例えば、第1硬質相および第2硬質相は複数の粒子の集合体により構成されており、結合相は粒子として第1硬質相および第2硬質相中に点在している。
第1硬質相の平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。この範囲において、十分な硬度を有し、かつ、緻密な超硬合金を得ることができる。なお、本明細書において、平均粒子径は、後の「<基材の物性評価方法>」で説明される画像解析ソフトを用いた方法により算出されるHeywood径である。
第2硬質相の平均粒子径は、0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。第2硬質相の平均粒子径が0.05μm未満である場合、十分な耐熱性(高温での耐摩耗性)が得られない可能性があり、第2硬質相の平均粒子径が2.0μmよりも大きい場合、耐欠損性が低下する可能性がある。
(結合相)
結合相は、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属を含む。結合相は、耐熱合金(Co基超合金、Ni基超合金など)から構成されていることが好ましい。耐熱合金は、ジェットエンジン、ガスタービン等、高温で使用される部品に用いられている材料であり、耐熱性に優れている。さらに、上記超硬合金は、WC(第1硬質粒子)よりも耐熱性が高いAl(第2硬質粒子)を含んでいる。これらによって、超硬合金そのもの(基材自体)の高温硬度が向上する。
結合相は、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属に加えて、さらに、Alと、Cと、を含むAl結合相を含むことが好ましい。Al結合相は、高温での耐塑性変形性に優れるため、結合相がAl結合相を含むことで、基材の刃先の変形を抑制でき、基材の耐塑性変形性がさらに向上するからである。
Al結合相は、さらにWを含むことが好ましい。Al結合相にWが固溶することで、Al結合相の高温硬度が上昇し、高温での耐摩耗性がさらに向上するからである。
なお、上述の第1硬質相、第2硬質相および結合相は、超硬合金中に分散された状態で含まれることが好ましい。これにより超硬合金(基材)の高温での耐摩耗性が向上する。第1硬質相、第2硬質相および結合相は、超硬合金中に均一に分散された状態で含まれることが、より好ましい。ここで、均一に分散された状態とは、第1硬質相と結合相とが接しており、同種の相同士の接触が比較的少ない状態で、超硬合金中に存在することをいう。
(第3硬質相)
超硬合金は、周期表4族元素、5族元素および6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,OおよびBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素との化合物(ただし、WCを除く)、または、その固溶体からなる第3硬質相をさらに含むことが好ましい。第3硬質相を含むことにより、耐酸化性や耐反応性の向上、基材への衝撃による亀裂発生の抑制といった効果を基材に付与することができる。
周期表4族元素、5族元素および6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)が挙げられる。化合物としては、例えば、TiWC、TiWCN、NbWC、TaMoWC、TaNbWC、TiC、NbC、TaC、ZrC、ZrCN、VC、TaNbC、TiN、TiCNが挙げられる。
第3硬質相の平均粒子径は、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、0.3μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。この範囲において、緻密な超硬合金を得ることができる。
(中心部および傾斜層)
基材は、中心部と、中心部を取り囲むように中心部の表面に設けられた傾斜層と、を備える。
中心部における第2硬質相の含有率は、0.7%以上である。本明細書において、第2硬質相の含有率(%)は、体積比率(体積%)であり、後述する基材の断面における面積比率と同じである。
中心部における第2硬質相の含有率は10%以下であることが好ましい。
中心部の表面における第2硬質相の含有率が10%超である場合、耐塑性変形性を高める効果が十分に得られない可能性がある。
傾斜層における第2硬質相の含有率は、0.05%以上0.7%未満である。第2硬質相の含有率が0.05%未満である場合、耐熱性向上の効果を十分に得られない可能性があり、0.7%以上である場合、耐欠損性に悪影響を及ぼす可能性がある。
傾斜層において、中心部と反対側の表面から中心部側の表面にかけて第2硬質相の含有率が増加する。第2硬質相の含有率の増加は、連続的であってもよく、段階的であってもよい。
傾斜層の中心部と反対側(表面側)における第2硬質相の含有率が0.05%以上0.1%以下であり、傾斜層の中心部側における第2硬質相の含有率が0.3%以上0.7%未満であることが好ましい。
この場合、基材の耐塑性変形性が十分に高められる。
図1を参照して、本実施の形態の基材において、中心部11の厚みYと、基材1の厚みZとが、0.75≦Y/Z≦0.95を満たすことが好ましい。また、YおよびZが0.90≦Y/Z≦0.95の関係を満たすことがより好ましい。
Y/Z<0.75である場合、第2硬質相の量が不十分であること、または、高温下での耐塑性変形性を有する中心部が基材の刃先(表面)から離れすぎていることにより、高温下での耐塑性変形性が低下する可能性がある。Y/Z>0.95である場合、断熱材である第2硬質相が多いために基材の刃先表面の温度上昇を促進させ耐塑性変形性が低下する可能性があり、また、第2硬質相が基材の刃先の近くに存在することにより、被削材と接触した際に基材の刃先に欠けが発生し易くなり、耐欠損性が低下する可能性がある。したがって、中心部の厚みYと基材の厚みZとが0.75≦Y/Z≦0.95を満たすことにより、高温での高い耐摩耗性、高い耐塑性変形性、および、高い耐欠損性を有する基材を提供することができる。
(表面層)
基材1は、傾斜層12の中心部11と反対側の表面に設けられた表面層13をさらに備え、表面層13は第1硬質相および結合相を含み、表面層13における第2硬質相の含有率が0.05%未満であることが好ましい(図1参照)。基材の内部(中心部11および傾斜層12)には、高温での耐摩耗性に優れるが靱性が低く耐塑性変形性に劣る第2硬質相が多く存在し、基材の表面には、第2硬質相の含有量が少ない表面層13が存在することで、基材の高温での耐摩耗性と耐塑性変形性とを両立させることができる。
<基材の物性評価方法>
基材を構成する超硬合金が、硬質相(第1硬質相、第2硬質相および第3硬質相)および結合相(Al結合相を含む)を含むこと、並びに、第2硬質相の含有率(面積比率)、結合相の組成等は、次のようにして確認することができる。
まず、基材の任意の断面を含む試料を作製する。断面の作製には、集束イオンビーム装置、クロスセクションポリッシャ装置等を用いることができる。次に、例えば、加工された断面をSEM(Scanning Electron Microscope)にて10000倍で撮像して、10視野分の電子画像を得る。次に、付属のEPMA(Electron Probe Micro−Analysis)またはEDX(Energy Dispersive X−ray spectrometry)を用いて、各電子画像中の所定領域(例えば、12μm×9μm)について、元素マッピングを行う。
得られた元素マッピングに基づいて、WCを含む領域を第1硬質相とし、AlおよびOを含む領域を第2硬質相とし、周期表4族元素、5族元素および6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,OおよびBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、の化合物を第3硬質相とし、WCを含まない領域であり、かつNiおよびCoからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む領域を結合相とし、結合相のうち更にAlおよびCを含む領域をAl結合相とする。これにより、基材において、硬質相(第1硬質相、第2硬質相および第3硬質相)および結合相(Al結合相を含む)がどの部分に含まれているかを確認することができる。また元素マッピングから、結合相の組成を求めることができる。なお、焼結条件によっては、硬質相および結合相以外に、空孔が存在する場合がある。
基材の各部位における第2硬質相(Al)の含有率(面積比率)は、画像解析ソフト(「Mac−View I」、株式会社マウンテック製)を用いて求めることができる。第2硬質相(Al)の面積比率は、基材の断面において、SEMで撮影した任意の1視野の全面積中に占める第2硬質相の面積の比率である。なお、例えば、1つの視野は、例えば、縦20μm×横20μmの正方形である。また、上記の比率は、例えば、10視野について求めた比率の平均値として求められる。
さらに画像解析ソフト(「Mac−View I」、株式会社マウンテック製)により、基材中に存在する第1硬質相、第2硬質相、および第3硬質相の平均粒子径(Heywood径:粒子の面積と同一の面積を持つ仮想円の直径の平均値)を算出することができる。なお、各値は、例えば、10視野にて分析された結果の平均値であってもよい。
なお、結晶相、各硬質相などの組成(成分および各割合)は、超硬合金(基材)を粉砕し、ICP発光分光分析法により、粉砕物における各元素の含有割合を求め、これに基づいて各成分の組成比を試算することにより確認することができる。
(基材の厚み(Z)の測定)
基材1(全体)の厚み(Z)は、基材の厚み方向に伸びる所定のラインに沿ってデジタルマイクロメーターによって、測定することができる。
(表面層の厚みの測定)
SEMを用いて、例えば、倍率を3000倍から5000倍、視野を18μm×25μmとして、基材の表面側から内部側へ上述の基材の厚み方向に伸びる所定のライン(上記と同じライン)に沿って、基材の所定の断面を連続測定し、基材の表面から、第2硬質相の含有率(面積比率)が0.05を初めて超える視野の直前までの厚み方向の距離を測定する。そして、基材の任意の3カ所において測定された厚みの平均値を表面層13の厚みとする。このような方法により、表面層13の厚みを測定することができる。
(傾斜層の厚みの測定)
SEMを用いて、倍率を3000倍から5000倍(本実施例では、3000倍)、視野を18μm×25μmとして、基材の表面(または表面層の中心部側の端部)から上述の基材の厚み方向に伸びる所定のライン(上記と同じライン)に沿って、基材の断面を連続測定していき、基材の表面から、第2硬質相の含有率(面積比率)が0.7を初めて超える視野の直前までの厚みを測定する。そして、基材の任意の3カ所において測定された厚みの平均値から、上記表面層の厚みを差し引いた値を傾斜層12の厚みとする。このような方法により、傾斜層12の厚みを測定することができる。
(中心部の厚み(Y))
上記の基材1(全体)の厚み(Z)から上記表面層13の厚みおよび上記傾斜層12の厚みを差し引いた値が、中心部11の厚み(Y)とされる。
<基材の製造>
本実施形態の基材は、例えば、以下に詳述される結合相粉末の作製工程、原料粉末の混合工程、成形工程、焼結工程および冷却工程を備える製造方法によって製造され得る。なお、本実施形態の基材の特徴的な構造は、主として焼結工程の条件を適切に制御することによって、得ることができる。
(結合相粉末の作製工程)
まず、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、およびAlを原料として使用し、アトマイズ、アーク溶解、プラズマ処理などにより金属間化合物相を作製する。
得られた金属間化合物相は、例えばビーズミル、ボールミル、ジェットミルなどによって粉砕されて、結合相粉末となる。結合相粉末を作製する際には、上記以外に、W、V、Ti、Nb、Ta、B、Cなどを添加してもよい。結合相粉末の平均粒子径は、0.3〜3μmであることが好ましい。ビーズミルまたはボールミルに用いるビーズまたはボールとしては、例えば粒径0.1〜3mmのアルミナ製、窒化ケイ素製、超硬合金製などのビーズまたはボールが挙げられ、分散媒としては、例えばエタノール、アセトン、液体窒素などが挙げられる。ビーズミルまたはボールミルによる処理時間は、例えば30分〜200時間である。ビーズミルまたはボールミルにより得られたスラリーを不活性ガス中あるいは真空中で乾燥させることで結合相粉末を得る。また、他の方法としてジェットミルを用いる場合は、供給ガスを不活性ガスとする。不活性ガスは例えばアルゴンや窒素が挙げられる。
(原料粉末の混合工程)
次に、得られた結合相粉末と、別途準備したWC粒子粉末を、アトライター、ボールミル、乳鉢等によって混合する。この時、結合相中に含まれるC量を考慮して、適切な量のCを添加する。なお、Al結合相の質量を制御する観点から、CoまたはNi粉末、あるいはその両方を添加してもよい。
このような原料粉末の混合は、大気に開放した状態で行われる。これにより、混合物中に酸素が取り込まれる。超硬合金中にAlを均一に分散させる観点からは、混合時間は、好ましくは6〜20時間である。
ボールミルに用いるボールとしては、例えばアルミナ製、窒化ケイ素製もしくは超硬合金製の直径3mmのボールが挙げられ、分散媒としては例えばエタノール、アセトン、液体窒素などが挙げられる。ボールミルによる処理時間は、例えば3〜20時間である。混合により得られたスラリーを、例えば大気中で乾燥させることにより混合粉末が得られる。
第2硬質相を形成するために、Al粉末を直接加えるのではなく、原料粉末の混合工程を大気雰囲気下で行い、大気中の酸素を原料粉末に吸着させることで、焼結時にAlを形成させる。第2硬質相を含まない表面層を作製するために、Alの形成を制御することが必要だからである。装置によらず、大気中で1時間以上混合を行うことで、十分な量の酸素を混合粉末に吸着させることができる。
Alを含む原料粉末が大気中で1時間以上混合されている場合、混合粉末に吸着する酸素の量は、AlのすべてがAlを形成するのに必要な量よりも過剰となる。Alの形成に使用されなかった酸素は、焼結の過程で、混合粉末中に含まれる炭素と結合して気体として超硬合金の外に放出される。また、酸素の一部はAl以外の金属と酸化物を形成するために用いられる。
超硬合金を構成する原料粉末のうち、WC粒子は、好ましくは30質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上95質量%以下である。
超硬合金を構成する原料粉末のうち、Co粒子、Ni粒子および(Co,Ni)(1−x−y)Alの合計は、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上15質量%以下である。xはAlの元素比率を表し、好ましくは0.05≦x≦0.3を満たし、より好ましくは0.1≦x≦0.25を満たす。xが小さすぎると、第2硬質相およびAl結合相が十分に形成されない可能性があり、xが大きすぎると、第2硬質相およびAl結合相が過剰に形成され、耐塑性変形性が低下する可能性がある。xが上記範囲にあるとき、超硬合金(基材)の高温での耐摩耗性がより向上する。yはWの元素比率を表し、好ましくは0≦y≦0.1を満たす。Wは超硬合金内部の第2硬質相とAl結合相の比率に寄与し、yが大きいとAl結合相の含有率が上昇し、第2硬質相の含有率が低下する。yが上記範囲にあるとき、Al結合相中にWが固溶することでAl結合相の硬度が上昇し、高温での耐摩耗性がより向上する。yが大きすぎると、第2硬質相の形成が不十分となる可能性がある。
また、超硬合金を構成する原料粉末のうち、第3硬質相を構成する化合物の合計は、好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。原料粉末が上記の範囲にあるときに、超硬合金は十分な緻密性を確保し、超硬合金(基材)の硬度と靱性のバランスを良好に保つことができる。
(成形工程)
得られた混合粉末を、例えば、Taカプセルに入れ、プレスすることにより加圧成形体を得る。成形方法は、一般的な条件であれば特に限定されない。プレスの圧力は好ましくは10MPa〜16GPaであり、例えば、100MPaである。
(焼結工程)
次に、加圧成形体を焼結する。焼結は、結合相の液相が出現してから十分な時間をかけて焼結することが好ましい。焼結の最高温度は1300〜1700℃であることが好ましい。最高温度でのキープ時間は、0.5〜2時間であることが好ましい。最高温度を上記範囲にすることで、硬質相(第1硬質相、第2硬質相および第3硬質相)の平均粒子径を所望の範囲にすることができる。これにより、第1硬質相と結合相とが緻密に焼結され、かつ、微細Alが超硬合金内部に析出することで、より高温での耐摩耗性と耐塑性変形性が向上した超硬合金を得ることができる。焼結の温度が400℃以上であるときは、還元ガス(例えば、H2、COなど)雰囲気下でガス分圧を0.5kPa以上10kPa以下とすることが好ましい。
最高温度でのガス分圧が0.5kPa以上10kPa以下でない場合は、傾斜層が全く形成されないか、または第2硬質相が過剰に形成されることにより、本開示の基材の要件を満たせない可能性が高くなる。
なお、本実施形態において、第2硬質相(Al)は、配合組成中のAlと、「結合相粉末の作製工程」、「原料粉末の混合工程」などで原料粉末に吸着した酸素と、が焼結工程中に反応することで生成する。「結合相粉末の作製工程」および「原料粉末の混合工程」において、Alを含む原料粉末が大気に1時間以上曝されていれば、原料粉末に吸着する酸素の量は、仮に本開示の構成が取り得る最大の配合Al量(質量%)が超硬合金中で全てAlになると仮定した場合の必要量に対して、過剰に多い状態となる。
なお、焼結工程において、Alの形成に使用されなかった酸素は、配合組成中に含まれる炭素または水素と結合し気体として超硬合金の外に放出されるか、Al以外の配合組成中の金属と酸化物を生成するために使用される。ただし、後者の場合において生成する酸化物の量は非常に微量であり、無視できる程度である。
AlからAl(第2硬質相)が生成するかAl結合相が生成するかは、原料粉末の組成中のAl量および炭素量、焼結条件などに依存する。本発明者らの検討により、表面側(中心部と反対側)から中心部側にかけて第2硬質相(Al)の含有率が増加する傾斜層を形成することのできる上記のような焼結条件等が見出された。その焼結条件を満たさないとき、傾斜層が形成されないか、または、第2結合相が過剰に形成される可能性が高い。
本実施形態の基材の焼結工程を、一般的な超硬合金と同様に真空中で実施すると、酸素の放出が抑制され第2硬質相が過剰に形成される。一方、最高温度でのキープ時の雰囲気を還元ガス雰囲気とし、還元ガス(例えば、水素ガス)の分圧を適切な範囲内にすることで、焼結工程における基材(超硬合金)からの酸素の放出を促進することができ、中心部の表面に傾斜層を形成することができる。このとき、還元ガスの分圧が高過ぎると多くの酸素が基材の表面から除去され、傾斜層中の第2硬質相の比率が小さくなってしまう。一方、還元ガスの分圧が低過ぎると、酸素の還元が進まず傾斜層の厚みが小さくなり、また傾斜層中の第2硬質相の比率が増加してしまう。
酸素が除去され易く酸素量が少ない表面層では、Alは結合相中に留まってAl結合相を形成するため、傾斜層に比べて表面層の方がAl結合相の含有率が多くなると想定される。しかし、実際には、結合する酸素が少ない表面層側の結合相中のAlは、焼結工程で液相を通じて超硬合金内部に移動するため、この想定通りにはならない。
(冷却工程)
冷却工程は、焼結完了後の焼結体を冷却する工程である。最高温度から1300℃までは、1℃/分の速度で冷却することが好ましい。なお、最高温度が1400℃未満の場合は、最高温度から「最高温度−100℃」まで、1℃/分の速度で冷却することが好ましい。冷却時のガス分圧は、不活性ガス雰囲気下で5kPa以上であることが好ましく、50kPa以上であることがより好ましい。
本開示の一態様に係る基材は、切削工具に広く利用することができ、長距離にわたって、被削材の表面に平滑な切削表面を形成することができる。特に、高温での硬度の高い被削材、耐熱合金からなる被削材、鉄系材料を含む被削材などを切削するための切削工具に好適に利用することができる。
<切削工具>
本実施形態に係る切削工具は、上記の基材を備える。高温での耐摩耗性および耐塑性変形性が向上した上記超硬合金からなる基材を用いることで、切削工具の長寿命化が可能となる。なお、切削工具としては、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどを例示することができる。
(被膜)
また、切削工具は、基材の表面の少なくとも一部に被膜を備えてもよい。被膜を備えることで、切削工具の耐摩耗性などがより向上し、切削工具のさらなる長寿命化が可能となる。また、切削工具において被膜の特性を付与させることもできる。
被膜としては、7×10-6/K以上9×10-6/K以下の熱膨張係数を有する被膜を用いることが好ましい。被膜の組成としては、Ti、Al、Cr、Si、Hf、Zr、Mo、Nb、Ta、VおよびWからなる群より選ばれた一種以上の金属の窒化物または炭窒化物が好ましい。
さらに被膜は、1000℃以上の耐酸化性を有することが好ましい。ここで、「1000℃以上の耐酸化性を有する」とは、被膜を熱分析−示差熱・熱重量同時測定(TG/DTA:Thermogravimetry/Differential Thermal Analysis)装置により、大気中で評価を行ない、重量増加が生じた温度が1000℃以上であることを意味する。このような耐酸化性を有する被膜を構成する組成の好適な例としては、AlTiSiN、AlCrN、TiZrSiN、CrTaN、HfWSiN、CrAlN等を挙げることができる。
上記のような被膜は、物理的蒸着(PVD)法および化学的蒸着(CVD)法のいずれによっても形成することができる。被膜がCVD法により形成されていると、基材との密着性に優れる被膜が得られ易い。CVD法としては、例えば、熱CVD法が挙げられる。被膜がPVD法により形成されていると、圧縮残留応力が付与され、その靱性を高め易い。被膜と超硬合金(基材)との密着性が格段に向上する点で、カソードアークイオンプレーティング法を用いることもできる。
本実施形態に係る切削工具における被膜は、基材における刃先となる部分とその近傍に被覆されていることが好ましく、基材の表面全体に被覆されていてもよい。また、被膜は、単層でも多層でもよい。被膜の厚さは、1μm以上20μm以下であることが好ましく、1.5μm以上15μm以下であることがより好ましい。
以下、実施例を挙げて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
<実施例1〜21および比較例1〜6>
まず、表1に記載の(Co,Ni)(1−x−y)Alの組成で表される金属粉(Co、Ni、AlおよびWの粉末)を混合し、アトマイズ法により、金属間化合物相を作製した。得られた金属間化合物相を、粒径1μmの超硬ボールを用いてビーズミルにより粉砕した。得られたスラリーを真空中で乾燥させ、結合相粉末を得た。
得られた結合相粉末と、硬質粒子(WC粒子および第3硬質相化合物粒子)、Co粒子およびNi粒子と、C粉末とを、直径3.5mmの超硬合金製のボールとエタノールと共に、大気開放型のアトライターに投入し8時間混合した。得られたスラリーを大気中で乾燥させ、混合粉末を得た。C粉末以外の原料粉末の量を100質量%としたときの各原料の比率(質量%)、および、第3硬質相化合物粒子の組成(化合物種および比率)は、表1に記載されたとおりである。C粉末の配合量は、C粉末以外の原料粉末の量に対して0.2質量%である。
混合粉末を超硬合金製の金型に充填して、100MPaの圧力でプレスすることにより、加圧成形体を得た。
Figure 2019210184
なお、表1には、製造に用いた各原料粉末中の各成分の比率(質量%)が示されるが、これは製造後の焼結体に対し、上述の方法によりICP発光分光分析法で分析した結果と一致するものであった。
得られた加圧成形体を表2に記載の焼結条件(焼結温度および水素ガスの圧力)で焼結し、超硬合金からなる基材を得た。このときの最高温度(焼結温度)のキープ時間は1時間とした。
以上のようにして、実施例1〜21および比較例1〜6の基材を得た。
得られた各実施例および比較例の基材について、基材(全体)の厚み(Z)、表面層の厚み、傾斜層の厚み、および、中心部の厚み(Y)は、上述の実施形態で説明した方法によって測定された。測定結果から、基材の厚みに対する中心部の厚みの比率(Y/Z)、基材の厚みに対する傾斜層の厚みの比率、および、基材の厚みに対する表面層の厚みの比率を算出した。結果を表2に示す。
基材の各部位(中心部およぎ傾斜層)における第2硬質相(Al)の含有率は、上述の実施形態で説明した方法によって測定された。なお、図2を参照して、傾斜層12の中心部側として、傾斜層の中心部との境界部12aについて測定を行い、傾斜層12の中心部と反対側(表面側)として、傾斜層の表面部12bについて測定を行った。測定結果を表2に示す。
Figure 2019210184
[評価]
得られた基材に平面研磨処理を施してSNG432形状のスローアウェイチップ(切削工具)を作製し、旋削加工における以下の耐塑性変形性および耐欠損性の評価を実施した。
<耐塑性変形性>
作製された切削工具について、耐塑性変形性試験を行った。具体的には、次の切削条件での高負荷切削試験における基材の刃先の塑性変形量(刃先変形量)を測定した。なお、塑性変形量については後述のとおりである。
(切削条件)
被削材:Ti合金(Ti−6Al−4V)
切削速度(Vc):200m/分
切込み量(ap):1mm
送り量(f):0.1mm/rev
切削環境:DRY
切削時間:20秒
(塑性変形量の測定)
図3を参照して、図3(a)に示される試験前の切削工具1の形状に対し、切削試験後は高温による刃先の軟化に伴う塑性変形が発生するため、図3(b)に示されるように切削工具1の刃先がダレる。図3(c)に示されるように、工具を真横から観察した時のすくい面の平滑部分1aを含む面から刃先1bの塑性変形後までの距離を塑性変形量として測定した。
塑性変形量の測定結果を表3に示す。なお、表3に示す値は、4個の切削工具についての平均値である。塑性変形量が小さいほど、耐塑性変形性に優れていることを示す。
<耐欠損性>
上記の高負荷切削試験後の切削工具の刃先の顕微鏡像を目視で確認することにより、欠損(欠け)の有無を確認した。欠けの有無の結果を表3に示す。
Figure 2019210184
表3に示される結果から、本開示の基材の要件を全て満たす実施例1〜21においては、塑性変形量(刃先変形量)が通常の超硬合金(第2結合相も傾斜層も有していない基材)を用いた比較例2〜4よりも少なくなっており、実施例1〜21の基材が高い耐塑性変形性を有することが分かる。
また、実施例17の結果から、傾斜層の表面側(中心部と反対側)における第2硬質相の含有率が0.1%より大きい場合、耐塑性変形性は、比較例2〜4よりは高いものの若干低下することが分かる。したがって、傾斜層の表面側(中心部と反対側)における第2硬質相の含有率が0.1%以下である場合に、耐塑性変形性がより高くなると考えられる。
実施例18の結果から、中心部における第2硬質相の含有率が10%より大きい場合、耐塑性変形性は、比較例2〜4よりは高いものの若干低下することが分かる。したがって、中心部における第2硬質相の含有率が10%以下である場合に、耐塑性変形性がより高くなると考えられる。
実施例19の結果から、中心部の厚みYと、基材の厚みZとが、Y/Z>0.95である場合、耐塑性変形性は高いものの耐欠損性が低下することが分かる。したがって、中心部の厚みYと、基材の厚みZとが、Y/Z≦0.95である場合に、耐欠損性を低下させずに耐塑性変形性を高めることができると考えられる。
実施例20の結果から、中心部の厚みYと、基材の厚みZとが、Y/Z<0.75である場合、耐塑性変形性は、比較例2〜4よりは高いものの若干低下することが分かる。したがって、中心部の厚みYと、基材の厚みZとが、Y/Z≧0.75である場合に、耐塑性変形性がより高くなると考えられる。
実施例21の結果から、基材の厚みZに対する傾斜層の厚みの比率が2%未満である場合、耐塑性変形性は、比較例2〜4よりは高いものの若干低下することが分かる。したがって、基材の厚みZに対する傾斜層の厚みの比率が2%以上である場合に、耐塑性変形性がより高くなると考えられる。
なお、比較例1は、第2硬質相を有するが傾斜層を備えていない基材であり、耐塑性変形性には優れたが、第2硬質相を起点として欠けが生じることが分かった。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 基材(切削工具)、1a すくい面の平滑部分、1b 先端、11 中心部、12 傾斜層、12a 傾斜層の中心部との境界部、12b 傾斜層の表面部、13 表面層。

Claims (10)

  1. 第1硬質相、第2硬質相および結合相を含む超硬合金からなる基材であって、
    前記第1硬質相はWC粒子からなり、
    前記第2硬質相はAlからなり、
    前記結合相は、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属を含み、
    前記基材は、中心部と、前記中心部を取り囲むように前記中心部の表面に設けられた傾斜層と、を備え、
    前記中心部における前記第2硬質相の含有率は0.7%以上であり、
    前記傾斜層における前記第2硬質相の含有率は0.05%以上0.7%未満であり、
    前記傾斜層において、前記中心部と反対側の表面から前記中心部側の表面にかけて前記第2硬質相の含有率が増加する、基材。
  2. 前記結合相は、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の金属と、Alと、Cと、を含むAl結合相を含む、請求項1に記載の基材。
  3. 前記Al結合相は、さらにWを含む、請求項2に記載の基材。
  4. 前記中心部の厚みYと、前記基材の厚みZとが、0.75≦Y/Z≦0.95を満たす、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基材。
  5. 前記傾斜層の前記中心部と反対側における前記第2硬質相の含有率が0.05%以上0.1%以下であり、
    前記傾斜層の前記中心部側における前記第2硬質相の含有率が0.3%以上0.7%未満である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の基材。
  6. 前記中心部における前記第2硬質相の含有率が10%以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の基材。
  7. 前記基材は、前記傾斜層の前記中心部と反対側の表面に設けられた表面層をさらに備え、
    前記表面層は前記第1硬質相および前記結合相を含み、
    前記表面層における前記第2硬質相の含有率が0.05%未満である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の基材。
  8. 周期表4族元素、5族元素および6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,OおよびBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、の化合物(ただし、WCを除く)、または、その固溶体からなる第3硬質相をさらに含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の基材。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の基材を備える切削工具。
  10. 前記基材の表面の少なくとも一部に被膜を備える請求項9に記載の切削工具。
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