JP2019208442A - 発酵風味液の製造方法および食品の製造方法 - Google Patents

発酵風味液の製造方法および食品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】小麦粉焼成食品等の各種食品にすっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を両者のバランス良く付与し得る発酵風味液の製造方法および当該方法で製造される発酵風味液を用いる小麦粉焼成食品等の各種食品の製造方法を提供する。【解決手段】(i)酵母を炭素源およびアミノ酸源含有培地中で培養する工程;(ii)工程(i)で培養した酵母を、pH5〜9.5の範囲に調整した炭素源およびアミノ酸源含有培地にてさらに培養する工程;および(iii)工程(ii)の培養物に麹および穀粉類を添加して、前記培養物に麹を作用させる工程を含む発酵風味液の製造方法並びに前記発酵風味液の製造方法により製造される発酵風味液を用いる食品の製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、良好な風味を有する発酵風味液の製造方法および前記発酵風味液を用いる食品の製造方法に関する。
従来、酒種が用いて風味を良好なものとした小麦粉焼成食品等の食品が知られている。通常、酒種は、米麹と米の混合物に清酒酵母を添加して発酵させることにより製造されるが、食品の風味をより向上させるために、様々な研究が行われている。
例えば、より香味を増強させかつ甘酒臭を付与し得る酒種の製造方法として、麦麹と、小麦もしくは米と小麦の混合物を混ぜ、これに清酒酵母を添加し、発酵せしめる方法(例えば、特許文献1参照)、高い発酵力を有し、良好な膨らみと酒様の風味を付与し得る酒種の製造方法として、麹と、アルコールと、酒粕とを含む混合物を発酵させる方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
また、酒粕や甘酒をパン等の食品に用いることも知られており、例えば、酒粕を水に分散させた酒粕分散液をパン生地に添加することで、パンの食感やボリューム感を改善し、濃味を感じさせることができること(例えば、特許文献3参照)、甘酒を用いることで、米粉やその他の澱粉質粉体を用いた場合でも、小麦粉のみを用いたパン類に匹敵する高品質のパンが得られること(例えば、特許文献4参照)が知られている。
一方で、近年の食生活の多様化や、消費者のグルメ嗜好の高まりにより、従来の製品よりも優れた製品を求める消費者の要望は極めて強く、これに応えるために、食品メーカー等では、小麦粉焼成食品等の各種食品に良好な風味を付与し得る素材の開発が鋭意行われている。
特開昭63−309133号公報 特開2013−153663号公報 特開2011−211940号公報 特開2012−223095号公報
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、小麦粉焼成食品等の各種食品にすっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を両者のバランス良く付与し得る発酵風味液の製造方法および当該方法で製造される発酵風味液を用いる小麦粉焼成食品等の各種食品の製造方法を提供すること目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、酒種等のように米麹発酵物で酵母を培養するのではなく、酵母を炭素源およびアミノ酸源含有培地中で培養し、得られた培養物(以下、「発酵物」と称することがある)に麹を作用させることにより、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を付与し得る発酵風味液を製造することができることを知見した。
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (i)酵母を炭素源およびアミノ酸源含有培地中で培養する工程;
(ii)工程(i)で培養した酵母を、pH5〜9.5の範囲に調整した炭素源およびアミノ酸源含有培地にてさらに培養する工程;および
(iii)工程(ii)の培養物に麹および穀粉類を添加して、前記培養物に麹を作用させる工程を含むことを特徴とする発酵風味液の製造方法である。
<2> 工程(i)および(ii)の培養条件が、それぞれ温度20〜40℃で6〜72時間である前記<1>に記載の方法である。
<3> 工程(iii)の前から終了後のいずれかの段階で加熱処理を施す前記<1>または<2>に記載の方法である。
<4> 工程(i)において、炭素源が、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、ラクトースおよびデキストリンからなる群から選択される1種以上であり、その濃度が、5〜20質量%である前記<1>〜<3>のいずれかに記載の方法である。
<5> 酵母が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である前記<1>〜<4>のいずれかに記載の方法である。
<6> 麹が、黄麹、白麹および黒麹から選択されるいずれかである前記<1>〜<5>のいずれかに記載の方法である。
<7> 前記<1>〜<6>のいずれかに記載の方法により製造される発酵風味液を用いることを特徴とする食品の製造方法である。
<8> 食品が小麦粉焼成食品である前記<7>に記載の方法である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、小麦粉焼成食品等の各種食品にすっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を両者のバランス良く付与し得る発酵風味液の製造方法および当該方法で製造される発酵風味液を用いる小麦粉焼成食品等の各種食品の製造方法を提供することができる。
(発酵風味液の製造方法)
本発明の発酵風味液の製造方法は、(i)酵母を炭素源およびアミノ酸源含有培地中で培養する工程(以下、「工程(i)」と称することがある)と、(ii)工程(i)で培養した酵母を、pH5〜9.5の範囲に調整した炭素源およびアミノ酸源含有培地にてさらに培養する工程(以下、「工程(ii)」と称することがある)と、(iii)工程(ii)の培養物に麹および穀粉類を添加して、前記培養物に麹を作用させる工程(以下、「工程(iii)」と称することがある)とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
<工程(i)>
前記工程(i)は、酵母を炭素源およびアミノ酸源含有培地中で培養する工程である。
−酵母−
前記酵母としては、食品に使用できるものであれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ミコトルラ(Mycotorula)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、キャンディダ(Candida)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ピキア(Pichia)属などが挙げられ、具体的な菌株の例としては、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces rouxii、Torulopsis utilis、Torulopsis candida、Mycotorula japonica、Mycotorula lipolytica、Torulaspora delbrueckii、Torulaspora fermentati、Candida sake、Candida tropicalis、Candida utilis、Hansenula anomala、Hansenula suaveolens、Saccharomycopsis fibligera、Saccharomyces lipolytica、Rhodotorula rubra、Pichia farinosaなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を付与するという点で、Saccharomyces cerevisiaeが好ましい。
また、前記酵母は、パン酵母、清酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母、味噌醤油酵母等のいずれであってもよいが、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を付与するという点で、パン酵母、清酒酵母、ワイン酵母が好ましく、パン酵母、清酒酵母がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酵母の使用量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、適宜選択することができる。
−培地−
前記工程(i)における培地は、炭素源と、アミノ酸源とを少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の成分を含む。
−−炭素源−−
前記炭素源としては、特に制限はなく、通常酵母の培養の際に培地に添加され得る炭素源の中から適宜選択することができるが、酵母を効率的に培養するという点で、糖類が好ましい。前記炭素源は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記糖類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、ラクトース、デキストリン、キシロース、ガラクトース、アラビノースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酵母を効率的に培養するという点、フルーティーな香りといった良好な風味を付与するという点、入手容易性や価格等の点で、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、ラクトースおよびデキストリンからなる群から選択される1種以上が好ましい。
なお、前記糖類は、前記した糖類を含有する液糖類、果汁類、蜂蜜などの態様であってもよい。
前記炭素源は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
前記炭素源の前記工程(i)の培地における濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、酵母を効率的に培養するという点で、5〜20質量%が好ましく、8〜15質量%がより好ましい。
−−アミノ酸源−−
前記アミノ酸源としては、特に制限はなく、通常酵母の培養の際に培地に添加され得るアミノ酸を含有する素材の中から適宜選択することができ、例えば、酵母エキス、麹エキス、ペプトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アミノ酸源は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
前記アミノ酸源の前記工程(i)の培地における濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、酵母を効率的に培養するという点で、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
−−その他の成分−−
前記工程(i)の培地におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、各種無機塩、ビタミン類など、通常、酵母の培養の際に培地に添加され得る各種成分などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
前記その他の成分の前記工程(i)の培地における濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−培養−
前記工程(i)の培養の方法としては、特に制限はなく、通常、酵母の培養に用いられる方法を適宜選択することができる。
前記工程(i)の培養条件(温度、時間)としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、酵母を効率的に培養するという点で、温度20〜40℃で6〜72時間が好ましく、12〜48時間がより好ましい。
<工程(ii)>
前記工程(ii)は、前記工程(i)で培養した酵母を、pH5〜9.5の範囲、好ましくはpH6〜8±1の範囲に調整した炭素源およびアミノ酸源含有培地にてさらに培養する工程である。
−酵母−
前記工程(ii)における酵母は、前記工程(i)で培養した酵母である。
−培地−
前記工程(ii)における培地は、炭素源と、アミノ酸源とを少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の成分を含み、pH5〜9.5の範囲、好ましくはpH6〜8±1の範囲に調整した培地である。
−−炭素源−−
前記炭素源としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した工程(i)の培地における炭素源と同様のものなどが挙げられる。
前記炭素源の前記工程(ii)の培地における濃度としても、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した工程(i)の培地における濃度と同様とすることができる。
−−アミノ酸源−−
前記アミノ酸源としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した工程(i)の培地における炭素源と同様のものなどが挙げられる。
前記アミノ酸源の前記工程(ii)の培地における濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、酵母を効率的に培養するという点で、0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜3質量%がより好ましい。
−−その他の成分−−
前記工程(ii)の培地におけるその他の成分としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した工程(i)の培地におけるその他の成分と同様のものなどが挙げられる。
前記その他の成分の前記工程(ii)の培地における濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−培養−
前記工程(ii)の培養の方法としては、pH5〜9.5の範囲、好ましくはpH6〜8±1の範囲に調整した培地で培養する限り特に制限はなく、通常、酵母の培養に用いられる方法を適宜選択することができる。
前記培地のpHを調整する方法としては、特に制限はなく、公知のpH調整方法を適宜選択することができ、例えば、培地を添加して調整する方法、pH調整剤を用いて調整する方法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記工程(ii)の培養条件(温度、時間)としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、すっきりとした甘い香りやフルーティーな香りといった良好な風味を付与するという点で、温度20〜40℃で6〜72時間が好ましく、12〜64時間がより好ましい。
<工程(iii)>
前記工程(iii)は、前記工程(ii)の培養物に麹および穀粉類を添加して、前記培養物に麹を作用させ、発酵風味液を得る工程である。
−培養物−
前記培養物は、前記工程(ii)で得られた培養物である。なお、前記培養物は、必要に応じて、後述の加熱処理が施されたものであってもよい。
−麹−
前記麹の種類としては、食品に使用できるものであれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、黄麹、白麹、黒麹などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、すっきりとした甘い香りやフルーティーな香りといった良好な風味を付与するという点で、黄麹がより好ましい。
前記麹の添加量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、前記培養物と、麹と、穀粉類とを合計した量に対して、1〜5質量%となるように添加することが好ましい。前記好ましい範囲内であると、すっきりとした甘い香りやフルーティーな香りといった良好な風味を付与するという点で、有利である。
−穀粉類−
前記穀粉類としては、麹が利用できるものであれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、米、小麦粉、大麦粉、コーンフラワーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記穀粉類の態様としても、麹が利用できる態様であれば特に制限はなく、適宜選択することができるが、すっきりとした甘い香りやフルーティーな香りといった良好な風味を付与するという点で、米では、米粉、アルファ化米が、小麦粉では薄力粉、中力粉が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記穀粉類の添加量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、前記培養物と、麹と、穀粉類とを合計した量に対して、1〜10質量%となるように添加することが好ましい。前記好ましい範囲内であると、すっきりとした甘い香りやフルーティーな香りといった良好な風味を付与するという点で、有利である。
−作用−
前記工程(iii)では、前記工程(ii)の培養物に麹および穀粉類を接触させることにより、前記培養物に麹を作用させることができる。
前記培養物に麹を作用させる条件(温度、時間)としては、特に制限はなく、所望の風味に応じて適宜選択することができる。
<加熱処理>
本発明の方法では、前記工程(iii)の前から終了後のいずれかの段階で加熱処理を施してもよい。前記加熱処理は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。
前記加熱処理の加熱温度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、酵母や麹を失活させるという点、すっきりとした甘い香りやフルーティーな香りといった良好な風味を付与するという点で、50℃以上が好ましく、55〜80℃がより好ましい。
前記加熱処理の時間としては、特に制限はなく、酵母や麹を失活させるため、所望の風味に応じて適宜選択することができる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した加熱処理などが挙げられる。
本発明の製造方法によれば、小麦粉焼成食品等の各種食品にすっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を両者のバランス良く付与し得る発酵風味液を効率良く製造することができる。
(食品の製造方法)
本発明の食品の製造方法は、上記した本発明の製造方法により製造される発酵風味液を用いる限り、特に制限はなく、公知の食品の製造方法を適宜選択することができる。
<食品>
前記食品の種類としては、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を付与することが有用な食品であれば特に限定はされないが、ベーカリー製品(パン類及び菓子類)等の小麦粉焼成食品を好適に例示することができる。
<使用>
前記発酵風味液は、単独で食品の製造に供してもよいし、あるいは、他の成分と混合して食品の製造に供してもよい。
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、pH調整剤;ショ糖、ブドウ糖、果糖、各種糖アルコール等の糖類;澱粉や穀粉;ステビア、アスパルテーム等の甘味料;デキストリン;有機酸やその塩、グリシンやDL−アラニン等の制菌作用がある成分;調味・呈味成分;香料;色素;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、フェルラ酸、チャ抽出物等の酸化防止剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記発酵風味液の食品への添加量としては、特に制限はなく、食品の種類や所望の効果により適宜変更することができる。例えば、ベーカリー製品では、用いる穀粉類に対し、0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%である。
本発明の食品の製造方法によれば、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味が両者のバランス良く付与された食品を製造することができる。したがって、本発明は、本発明の製造方法により製造される発酵風味液を用いる食品への風味付与方法にも関する。
以下、実施例等を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
以下のようにして、実施例1の発酵風味液を製造した。
<工程(i)>
下記配合の原料(1)を温度25℃で24時間培養した。
−原料(1)の配合−
・ アミノ酸源(酵母エキス) ・・・ 1質量%
・ 炭素源(グルコース) ・・・ 5質量%
・ 水 ・・・ 35質量%
・ 酵母 ・・・ 2質量%(1.0×10個)
(Saccharomyces cerevisiae:パン酵母「香芳」、オリエンタル酵母工業社製)
なお、上記配合の割合は、原料(1)、後述の原料(2)、(3)の合計を100質量%とした場合の値である。
<工程(ii)>
工程(i)の培養物に、下記配合の原料(2)を加え、pH6±1の範囲に調整しながら、温度25℃で40時間培養した。
−原料(2)配合−
・ アミノ酸源(酵母エキス) ・・・ 0.5質量%
・ 炭素源(グルコース) ・・・ 10質量%
・ 水 ・・・ 38.5質量%
なお、上記配合の割合は、原料(1)、原料(2)、後述の原料(3)の合計を100質量%とした場合の値である。
<加熱処理>
前記工程(ii)の培養物を60℃まで加熱した。
<工程(iii)>
前記加熱処理後の培養物に、下記配合の原料(3)を加え、麹を作用させた。室温まで降温させたものを実施例1の発酵風味液とした。
−原料(3)配合−
・ 米(米粉) ・・・ 5質量%
・ 麹(黄麹:清酒用) ・・・ 3質量%
なお、上記配合の割合は、原料(1)、原料(2)、原料(3)の合計を100質量%とした場合の値である。
(実施例2)
工程(ii)において、pH8±1の範囲に調整した以外は実施例1と同様にして、実施例2の発酵風味液を製造した。
(比較例1)
実施例1において、工程(iii)を行わなかった点以外は、実施例1と同様にして、比較例1の発酵風味液を得た。
(比較例2)
工程(ii)において、pH調整を行わない(pH5未満)以外は実施例1と同様にして、比較例2の発酵風味液を製造した。
(試験例1:あんぱん)
実施例1〜2又は比較例1〜2で製造した発酵風味液を用い、下記配合及び工程にて、あんぱんを製造した。また、発酵風味液に代えて甘酒、日本酒(吟醸)または酒種を用いた場合、発酵風味液、甘酒、日本酒(吟醸)または酒種を用いなかった場合(対照)についても、同様にしてあんぱんを製造した。
<配合>
中種 本捏
・ 小麦粉 70質量部 30質量部
・ イースト 3質量部 −
・ 砂糖 3質量部 26質量部
・ 全卵 10質量部 −
・ 脱脂粉乳 − 3質量部
・ 食塩 − 1質量部
・ ショートニング − 10質量部
・ 発酵風味液、甘酒、日本酒(吟醸)または酒種 − 10質量部
・ 水 34質量部 12質量部(※)
※ : 発酵風味液、甘酒、日本酒(吟醸)または酒種を用いなかった場合(対照)は、20質量部。
<工程>
中種 本捏
・ ミキシング時間(分) L2M2 L2M3↓M4H1
・ 捏上温度 26℃ 27℃
・ フロア時間 2時間(28℃、湿度80%) 20分
・ 分割重量 − 30g×12個
・ ベンチ時間 − 20分
・ 成型 − こしあん 25g
成型(包あん)
・ ホイロ条件 − 32℃、湿度85%、
50分
・ 焼成条件 − 200℃、8分
なお、上記工程において、Lは低速、Mは中速、Hは高速を表し、↓はショートニングの添加を表す。
<評価>
製造したあんぱんを食し、以下の項目について評価した。結果を表1に示す。なお、発酵風味液、甘酒、日本酒(吟醸)または酒種を用いずに製造したあんぱんを対照とした。
−官能評価−
・風味1(甘み、甘い香り)
◎: 対照と比べて、すっきりとした甘み・甘い香りに富む。
〇: 対照と比べて、すっきりとした甘み・甘い香りがある。
△: 対照と差が感じられない。
×: 対照と比べて、甘みにやや劣る。
・風味2(フルーティーさ)
◎ : 対照と比べて、吟醸酒のようなフルーティーな香りに富む。
○ : 対照と比べて、吟醸酒のようなフルーティーな香りがある。
△ : 対照と差が感じられない。
× : 対照と比べて、エタノール臭がある。
・総合評価
◎ : すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りのバランスがよく、きわめて良好。
○ : すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りがあり、良好。
△ : すっきりとした甘い香り、フルーティーな香りのいずれかが無く、やや不良。
× : すっきりとした甘い香りもフルーティーな香りも無く、不良。
Figure 2019208442
表1の結果から、本発明の発酵風味液を用いて製造されたあんぱんは、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を有し、両者のバランスにも優れていた。
(製造例1:チョコブレッド)
実施例1で製造した発酵風味液を用い、小麦粉焼成食品の他の一例としてチョコブレッドを製造した。配合及び工程は、以下のとおりである。また、実施例1で製造した発酵風味液を用いなかった以外は同様にして、対照のチョコブレッドを製造した。
<配合>
中種 本捏
・ 小麦粉 70質量部 30質量部
・ イースト 2質量部 2.5質量部
・ 砂糖 − 15質量部
・ ショートニング − 5質量部
・ 脱脂粉乳 − 2質量部
・ 食塩 − 1.5質量部
・ 全卵 − 5質量部
・ 発酵風味液 − 10質量部
・ チョコレートスプレッド − 30質量部
・ 水 40質量部 1質量部(※)
※ : 発酵風味液を用いなかった場合は、11質量部。
<工程>
中種 本捏
・ ミキシング時間(分) L2M2 L2M6↓M3H2
・ 捏上温度 24℃ 27℃
・ フロア時間 4時間 40分
・ 分割重量 − 230g×3個
・ ベンチ時間 − 20分
・ 成型 − U字づめ(1.5斤)
・ ホイロ条件 − 35℃、湿度85%、45分
・ 焼成条件 − 180℃、40分
なお、上記工程において、Lは低速、Mは中速、Hは高速を表し、↓はショートニングの添加を表す。
製造例1で製造されたチョコブレッドは、対照と比較して、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を有し、両者のバランスにも優れていた。
(製造例2:ブリオッシュクリームパン)
実施例2で製造した発酵風味液を用い、小麦粉焼成食品の他の一例としてブリオッシュクリームパンを製造した。配合及び工程は、以下のとおりである。また、実施例2で製造した発酵風味液を用いなかった以外は同様にして、対照のブリオッシュクリームパンを製造した。
<配合>
中種 本捏
・ 小麦粉 70質量部 30質量部
・ イースト 3質量部 −
・ 砂糖 3質量部 20質量部
・ 全卵 20質量部 −
・ ショートニング − 40質量部
・ 脱脂粉乳 − 3質量部
・ 食塩 − 1.2質量部
・ 卵黄 − 10質量部
・ 発酵風味液 − 10質量部
・ 水 24質量部 −(※)
※ : 発酵風味液を用いなかった場合は、10質量部。
<工程>
中種 本捏
・ ミキシング時間(分) L2M2 L2M6↓M6H1
・ 捏上温度 26℃ 27℃
・ フロア時間 2時間 30分
・ 分割重量 − 40g
・ ベンチ時間 − 20分
・ 成型 − パーカー型、カスタードクリーム 60g
・ ホイロ条件 − 32℃、湿度75%、45分
・ 焼成条件 − 190℃、9分
なお、上記工程において、Lは低速、Mは中速、Hは高速を表し、↓はショートニングの添加を表す。
製造例2で製造されたブリオッシュクリームパンは、対照と比較して、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を有し、両者のバランスにも優れていた。
(製造例3:クラッカー)
実施例1で製造した発酵風味液を用い、小麦粉焼成食品の他の一例として焼き菓子であるクラッカーを製造した。配合及び工程は、以下のとおりである。また、実施例1で製造した発酵風味液を用いなかった以外は同様にして、対照のクラッカーを製造した。
<配合>
・ 小麦粉 100質量部
・ イースト 0.3質量部
・ ベーキングパウダー 1質量部
・ 砂糖 1質量部
・ 食塩 1.5質量部
・ ショートニング 10質量部
・ 発酵風味液 10質量部
・ 水 25質量部(※)
※ : 発酵風味液を用いなかった場合は、水32質量部。
<工程>
・ ミキシング時間(分) ↓L3M7
・ 捏上温度 21℃
・ シーティング 3つ折り1回(厚さ1.6mm)
・ リタード 16時間、20℃
・ 成型 型抜き、4g
・ ラック時間 30分
・ 焼成条件 190℃、15分
なお、上記工程において、Lは低速、Mは中速を表し、↓はショートニングの添加を表す。
製造例3で製造されたクラッカーは、対照と比較して、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りといった良好な風味を有し、両者のバランスにも優れていた。
本発明の発酵風味液によれば、すっきりとした甘い香りとフルーティーな香りとこれらのバランスに優れた良好な風味を食品に付与することができるので、上記実施例の項目に記載した食品に限らず、例えば、まんじゅう等の蒸し菓子やカステラ、フィナンシェ、マドレーヌ、クッキー、クラッカー等の焼き菓子などの前記風味を付与することが有用な様々な食品にも好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. (i)酵母を炭素源およびアミノ酸源含有培地中で培養する工程;
    (ii)工程(i)で培養した酵母を、pH5〜9.5の範囲に調整した炭素源およびアミノ酸源含有培地にてさらに培養する工程;および
    (iii)工程(ii)の培養物に麹および穀粉類を添加して、前記培養物に麹を作用させる工程を含むことを特徴とする発酵風味液の製造方法。
  2. 工程(i)および(ii)の培養条件が、それぞれ温度20〜40℃で6〜72時間である請求項1に記載の方法。
  3. 工程(iii)の前から終了後のいずれかの段階で加熱処理を施す請求項1または2に記載の方法。
  4. 工程(i)において、炭素源が、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、ラクトースおよびデキストリンからなる群から選択される1種以上であり、その濃度が、5〜20質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 酵母が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 麹が、黄麹、白麹および黒麹から選択されるいずれかである請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の方法により製造される発酵風味液を用いることを特徴とする食品の製造方法。
  8. 食品が小麦粉焼成食品である請求項7に記載の方法。
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