JP2019207759A - 放熱構造体およびバッテリー - Google Patents

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Abstract

【課題】熱伝導性のより高い放熱構造体およびそれを備えるバッテリーを提供する。【解決手段】本発明は、熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、金属、炭素および/またはセラミックスを含み熱源から伝熱可能な第1熱伝導シート3と、第1熱伝導シート3から構成され、若しくは第1熱伝導シート3に備えられる部材であって、第1熱伝導シート3の面に沿う一方向に傾斜して所定間隔で配置される複数本のひだ状部材3aと、を備え、ひだ状部材3aの内部に閉鎖空間若しくは開口を持つ開放空間4を備える放熱構造体1およびそれを備えるバッテリーに関する。【選択図】図1

Description

本発明は、放熱構造体およびそれを備えるバッテリーに関する。
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは冷却ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム、立方晶窒化ホウ素などから構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、冷却ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しょうとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、2040年までにガソリン車とディーゼル車から完全に電気自動車に切り替えることを宣言している。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などの課題がある。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が大きな課題となっている。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
特開2008−243999
上述のバッテリー等の熱源から冷却部材に熱を伝えて熱源の放熱性を促進させる方法として、本出願人の発明者は、先に図11(11A)に示す構造を有する放熱構造体を発明した。当該放熱構造体100は、平板形状の第1熱伝導シート102の片面に、図11の紙面表裏方向に長く延びる貫通路を備えた長尺状の突出部103aを所定間隔で複数本備える第2熱伝導シート103を備える。上述の貫通路は、ゴム状の弾性部材(クッション部材とも称する)106を充填する。突出部103aは、第1熱伝導シート102の面に垂直方向に突出する。かかる構造の放熱構造体100は、例えば、第1熱伝導シート102側を熱源に接触させ、突出部103a側を冷却部材に接触させるように配置される。
第1熱伝導シート102および第2熱伝導シート103は、繊維状のグラファイトを樹脂にて保持したグラファイト含有シートなどによって好適に構成される。第1熱伝導シート102および第2熱伝導シート103は、その高い熱伝導性に起因して、熱源から冷却部材への熱伝導部材として機能する。また、ゴム状の弾性部材106は、シリコーンゴム若しくはウレタンゴムなどで好適に構成される。ゴム状の弾性部材106は、その柔軟性に起因して、第1熱伝導シート102および第2熱伝導シート103を熱源および冷却部材にそれぞれ密着させる部材として機能する。
図11(11A)の一部Xの拡大図に示すように、熱源の熱は、第1熱伝導シート102から第2熱伝導シート103を通じて、矢印Yの方向に流れ、放熱フィンあるいは冷却水の流れる部材に代表される冷却部材へと伝わる。その伝熱効率は、通常、熱経路(熱パスとも称する)の数に大きく依存する。このため、放熱構造体100の熱伝導性を高めるためには、突出部103aの数を多くする必要がある。
一方、熱パスの増加は、放熱構造体100の密度の増加を意味する。したがって、突出部103aを単純に増加すると、放熱構造体100の柔軟性が損なわれて、圧縮荷重が高くなる。この結果、熱源および冷却部材と放熱構造体100との密着性が低下して、熱伝導性が低くなる。このため、ゴム状の弾性部材106を突出部103aの内部に充填して、上述の密着性を高めるようにするのが好ましい。
しかし、上述の放熱構造体100をさらに改良して、さらに熱伝導性を高めたいとの要求がある。また、図11(11B)に示すように、放熱構造体100の厚さ方向(矢印Zに示す方向)に荷重をかけて放熱構造体100を圧縮すると、突出部103aの断面形状を平行四辺形とするようにつぶれる突出部103aもあれば、断面形状を鼓形状とするようにつぶれる突出部103aもある。すなわち、突出部103aの変形の仕方が様々になる場合がある。これは、ゴム状の弾性部材106の有無に関わらず同様である。このような状況をなるべく少なくして、さらに熱伝導性を高めたいという要請がある。
本発明は、上記のような熱伝導性をより高める要請に基づきなされたものであり、熱伝導性のより高い放熱構造体および当該放熱構造体を備えたバッテリーを提供することを目的とする。
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱構造体は、熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、金属、炭素および/またはセラミックスを含み前記熱源から伝熱可能な第1熱伝導シートと、前記第1熱伝導シートから構成され、若しくは前記第1熱伝導シートに備えられる部材であって、前記第1熱伝導シートの面に沿う一方向に傾斜して所定間隔で配置される複数本のひだ状部材とを備え、前記ひだ状部材の内部に閉鎖空間若しくは開口を持つ開放空間を備える。
(2)別の実施形態に係る放熱構造体は、好ましくは、前記第1熱伝導シートの前記ひだ状部材と反対側の面に固定され、金属、炭素および/またはセラミックスを含み、前記熱源からの熱を前記第1熱伝導シートへと伝える第2熱伝導シートを、さらに備える。
(3)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記ひだ状部材は、前記第1熱伝導シートの面内において、前記所定間隔で並ぶ方向と交差する方向に長い長尺ひだ状部材である。
(4)別の実施形態に係る放熱構造体は、好ましくは、前記ひだ状部材同士の隙間にクッション部材を、さらに備える。
(5)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記ひだ状部材は、前記第1熱伝導シートの面内において、前記所定間隔で並ぶ方向と交差する方向に長い長尺ひだ状部材であって、前記クッション部材は、前記長尺ひだ状部材の長さ方向に沿って備えられる長尺クッション部材である。
(6)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記クッション部材は、前記放熱構造体の断面視にて三角形の断面を有しており、前記ひだ状部材の鋭角傾斜側に密着配置されている。
(7)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記クッション部材は、その内部に閉鎖空間若しくは開口を持つ開放空間を備える。
(8)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記クッション部材は、前記ひだ状部材の鋭角傾斜側の面と前記第1熱伝導シートの面にそれぞれ接する2枚の板面を備える。
(9)一実施形態に係るバッテリーは、冷却部材を備える構造の筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、上述のいずれか1つの放熱構造体を、前記バッテリーセルと前記冷却部材との間に介在する。
(10)別の実施形態に係るバッテリーにおいて、好ましくは、前記放熱構造体は、前記ひだ状部材を前記バッテリーセル側に、前記第1熱伝導シートの前記ひだ状部材と反対側を前記冷却部材側にそれぞれ対向させて配置される。
本発明によれば、熱伝導性のより高い放熱構造体および当該放熱構造体を備えたバッテリーを提供できる。
図1は、第1実施形態に係る放熱構造体の組立状況の斜視図(1A)および当該放熱構造体を組み立てた状態の斜視図(1B)をそれぞれ示す。 図2は、図1の放熱構造体の一部の断面図とその一領域Aの拡大図(2A)および図1の放熱構造体の厚さ方向にB方向から力を加えて厚さ方向に圧縮させた状態の一部の断面図(2B)をそれぞれ示す。 図3は、熱源としてバッテリーセルを用いた場合の放熱構造体とバッテリーセルとの位置関係を斜視図にて示す。 図4は、第1実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図(4A)および当該バッテリーを組み立て後の状態の縦断面図(4B)をそれぞれ示す。 図5は、図4の変形例に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図(5A)および当該バッテリーを組み立て後の状態の縦断面図(5B)をそれぞれ示す。 図6は、第2実施形態に係る放熱構造体の一部の断面図とその一領域Cの拡大図とを示す。 図7は、第3実施形態に係る放熱構造体の一部の断面図とその一領域Dの拡大図とを示す。 図8は、第4実施形態に係る放熱構造体の一部の断面図とその一領域Eの拡大図とを示す。 図9は、第5実施形態に係る放熱構造体の一部の断面図とその一領域Fの拡大図とを示す。 図10は、変形例に係る放熱構造体の平面図(10A)、該平面図(10A)のA−A線断面図(10B)およびB−B線断面図(10C)をそれぞれ示す。 図11は、先に発明した放熱構造体の概略断面図とその一部Xの拡大図(11A)および(11A)の放熱構造体を厚さ方向に圧縮した状態の概略断面図(11B)をそれぞれ示す。
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る放熱構造体の組立状況の斜視図(1A)および当該放熱構造体を組み立てた状態の斜視図(1B)をそれぞれ示す。図2は、図1の放熱構造体の一部の断面図とその一領域Aの拡大図(2A)および図1の放熱構造体の厚さ方向にB方向から力を加えて厚さ方向に圧縮させた状態の一部の断面図(2B)をそれぞれ示す。
第1実施形態に係る放熱構造体1は、熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、金属、炭素および/またはセラミックスを含み、熱源から伝熱可能な第1熱伝導シート3と、第1熱伝導シート3から構成され、若しくは第1熱伝導シート3に備えられる部材であって、第1熱伝導シート3の面に沿う一方向に傾斜して所定間隔で配置される複数本のひだ状部材3aと、ひだ状部材3a同士の隙間5に備えられるクッション部材6と、を備える。なお、「ひだ状部材」は、舌状部材と読み替えても良い。放熱構造体1は、この実施形態では、第1熱伝導シート3のひだ状部材3aと反対側の面に固定され、金属、炭素および/またはセラミックスを含み、熱源からの熱を第1熱伝導シート3へと伝える第2熱伝導シート2を、さらに備える。なお、クッション部材6は、放熱構造体1にとって必須の構成要素ではなく、第5実施形態に係る放熱構造体1dを製造および使用することもできる。
ひだ状部材3aは、好ましくは、その内部に、好ましくは第2熱伝導シート2側に開口を持つ開放空間4を備える。ただし、ひだ状部材3aの一部若しくは全部は、開放空間(空間の一例)4に代えて、完全に外部と通じない閉鎖空間(空間の一例)4を備えても良い。また、この実施形態に係るひだ状部材3aは、好ましくは、第1熱伝導シート3の面内において、所定間隔で並ぶ方向(すなわち、複数のひだ状部材3aの並ぶ図2の左右方向)と交差する方向(一例では図2の紙面表裏方向)に長い長尺ひだ状部材である。ただし、ひだ状部材3aは、長尺ひだ状部材ではなく、第1熱伝導シート3の面内における当該長尺ひだ状部材の長さ方向を複数分断した短尺ひだ状部材であっても良い。また、交差は、直角に限定されず、任意の角度での交わりで良い。
ひだ状部材3aは、放熱構造体1のひだ状部材3aを固定する面に沿う方向に対して傾斜して設けられている。より具体的には、傾斜角θ(図2参照)は、第1熱伝導シート3のひだ状部材3aを固定する面に対して鋭角(0度<θ<90度)である。放熱構造体1の第1熱伝導シート3の最も広い面に対して垂直方向(すなわち、該シート3の厚さ方向)に放熱構造体1を圧縮したときに、ひだ状部材3aは傾斜角θをより小さくするように倒れる。この結果、ひだ状部材3aの内部の空間(閉鎖空間か開放空間かを問わない)は小さくなり、かつクッション部材6がつぶれて圧縮される。このようにひだ状部材3aを構成するのは、もし、ひだ状部材3aが第1熱伝導シート3の上記の面に対して垂直に設けた場合には、ひだ状部材3aが圧縮変形されて、倒れるように変形する可能性は低いからである。ひだ状部材3aは、第1熱伝導シート3の面内一方に向かって同じ傾斜角で連続形成されていなくても良い。例えば、所定の間隔(例えば10mm)に細分化して、相互に別々の方向を向くようにひだ状部材3aを形成しても良い。
クッション部材6は、好ましくは、ひだ状部材3a(長尺ひだ状部材)の長さ方向に沿って備えられる長尺クッション部材である。クッション部材6は、放熱構造体1の断面(第2熱伝導シート2の厚さ方向あるいは第2熱伝導シート2と平行な第1熱伝導シート3の部分)に沿って切断した断面からみて、三角形の断面を有している。すなわち、クッション部材6は、略三角柱の形態を有している。クッション部材6は、ひだ状部材3aの鋭角傾斜側(傾斜角θの角度をなす隙間部分)に密着配置されている。クッション部材6をひだ状部材3a同士の隙間5に備える場合、図1(1A)に示すように、クッション部材6をひだ状部材3aの傾斜に沿って隙間5に挿入するのが好ましい。
第1熱伝導シート3は、ひだ状部材3aの開口端面にて第2熱伝導シート2と接続されている。接続方式は、接着、嵌め込み、融着等の如何なる方式でも良い。接着剤を用いて第1熱伝導シート3を第2熱伝導シート2に接続する場合には、耐熱性に優れた接着剤を用いるのが好ましい。接着剤は、熱伝導性に優れている方が好ましいが、熱伝導性の低いものでも良い。
第2熱伝導シート2および第1熱伝導シート3は、同一の材料から成るか否かを問わず、好ましくは、クッション部材6より熱伝導性の高い材料から構成されている。第2熱伝導シート2および第1熱伝導シート3は、好ましくは、炭素、金属および/またはセラミックスを含む若しくはこれらのいずれかの単体から成るシートである。第2熱伝導シート2および/または第1熱伝導シート3は、より好ましい形態としては、炭素系材料を含む可撓性シートである。炭素を含むシート(あるいは炭素系材料を含む可撓性シート)は、好ましくは炭素フィラーと樹脂とを含むシートである。本願でいう「炭素」は、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも含むように広義に解釈される。第2熱伝導シート2および/または第1熱伝導シート3は、この実施形態では、樹脂に、グラファイト繊維やカーボン粒子を配合分散した材料を硬化させた薄いシートとすることができる。また、第2熱伝導シート2および/または第1熱伝導シート3は、メッシュ状に編んだカーボンファイバーであっても良く、さらには混紡してあっても混編みしてあっても良い。
第2熱伝導シート2および/または第1熱伝導シート3に樹脂を含む場合には、当該樹脂がシートの全質量に対して50質量%を超えていても、あるいは50質量%以下であっても良い。すなわち、第2熱伝導シート2および/または第1熱伝導シート3は、熱伝導に大きな支障が無い限り、樹脂を主材とするか否かを問わない。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、熱源からの熱を伝導する際に溶融しない程度の高融点を備える樹脂が好ましく、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)等を好適に挙げることができる。樹脂は、第2熱伝導シート2および/または第1熱伝導シート3の成形前の状態において、炭素フィラーの隙間に、例えば粒子状に分散している。第2熱伝導シート2および/または第1熱伝導シート3は、炭素フィラー、樹脂の他、熱伝導をより高めるためのフィラーとして、AlNあるいはダイヤモンドを分散していても良い。また、樹脂に代えて、樹脂よりも柔軟なエラストマーを用いても良い。
第2熱伝導シート2および/または第1熱伝導シート3は、また、上述のような炭素に代えて若しくは炭素と共に、金属および/またはセラミックスを含むシートとすることができる。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金などの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。また、セラミックスとしては、AlN、cBN、hBNなどの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。
第2熱伝導シート2および/または第1熱伝導シート3は、導電性に優れるか否かは問わない。当該シート2,3の熱伝導率は、好ましくは10W/mK以上である。第2熱伝導シート2を炭素含有シートとした場合、第1熱伝導シート3は、金属製のシートとすることもできる。その逆に、第2熱伝導シート2を金属製のシートとした場合、第1熱伝導シート3は、炭素含有シートとすることもできる。好ましい第1熱伝導シート3は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅あるいはステンレススチール製のシートである。第1熱伝導シート3および/または第2熱伝導シート2は、湾曲(若しくは屈曲)しやすいシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.3〜5mmが好ましく、0.3〜1mmがより好ましい。
クッション部材6は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。クッション部材6は、第2熱伝導シート2および第1熱伝導シート3を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、クッション部材6は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。クッション部材6は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。クッション部材6は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「クッション部材」は、柔軟性に富み、弾性的に圧縮と伸張を繰り返すことのできる部材を意味し、かかる意味では「ゴム状弾性体」あるいは「弾性部材」と読み替えることもできる。
放熱構造体1は、ひだ状部材3a側を筐体7に向けた状態で第2熱伝導シート2から第1熱伝導シート3に至る厚さ方向(矢印Bの方向)に圧縮力を受けると、(2B)に示す形態になる。すなわち、第1熱伝導シート3側に形成されているひだ状部材3aが倒れた状態になる。このとき、クッション部材6は、傾斜角θを小さくするように変形する。この結果、第2熱伝導シート2側の熱源の表面に凹凸があっても、複数の熱パスを維持しながら、熱源との密着性を高めることができるので、高い熱伝導性を実現できる。
図3は、熱源としてバッテリーセルを用いた場合の放熱構造体とバッテリーセルとの位置関係を斜視図にて示す。
図3に示すように、放熱構造体1の第2熱伝導シート2は、複数個のバッテリーセル10の電極11,12と反対側に位置する下端面と接触する。第1熱伝導シート3のひだ状部材3aは、バッテリーセル10を配置する筐体の底部に接する。放熱構造体1は、バッテリーセル10を第2熱伝導シート2側に配置すると圧縮される。なお、図3では、図の複雑化を避けるため、バッテリーセル10は8個のみ図示されている。しかし、バッテリーの仕様や必要な電力に応じて、バッテリーセル10の数を8個より多くすることができる。放熱構造体1の大きさも、バッテリーセル10の個数に応じて、任意に変えることができる。
図4は、第1実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図(4A)および当該バッテリーを組み立て後の状態の縦断面図(4B)をそれぞれ示す。図5は、図4の変形例に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図(5A)および当該バッテリーを組み立て後の状態の縦断面図(5B)をそれぞれ示す。
この実施形態において、バッテリー20は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル10を備える。バッテリー20は、一方に開口する有底型の筐体21を備える。筐体21は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル10は、筐体21の内部24に配置される。バッテリーセル10の上方には、電極が突出して設けられている。複数のバッテリーセル10は、好ましくは、筐体21内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体21の底部22には、冷却部材25の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ26が備えられている。バッテリーセル10は、底部22との間に、放熱構造体1を挟むようにして筐体21内に配置される。これは、第2実施形態以後の各実施形態に係る放熱構造体についても同様である。
バッテリー20は、冷却部材25を流す構造を持つ筐体21内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセル10を備える。放熱構造体1は、バッテリーセル10と冷却部材25との間に介在する。放熱構造体1は、この実施形態では、第2熱伝導シート2をバッテリーセル10側に、第1熱伝導シート3のひだ状部材3aを冷却部材25側にそれぞれ対向させて配置される。このような構造のバッテリー20では、バッテリーセル10は、放熱構造体1を通じて筐体21に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。一方、図5に示すように、放熱構造体1において、第2熱伝導シート2を冷却部材25側に、第1熱伝導シート3のひだ状部材3aをバッテリーセル10側にそれぞれ対向させて配置することもできる。バッテリーセル10の組み立てのバラツキにより、バッテリーセル10の底面同士に段差が生じやすい。ひだ状部材3aは、かかる段差に追従しやすい。よって、ひだ状部材3aをバッテリーセル3a側に向けて放熱構造体1を筐体21内にセットするのも有効である。これは、この実施形態以降の各実施形態でも同様である。冷却部材25は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却部材25は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。
バッテリーセル10を筐体21内にセットした状態では(4Bを参照)、放熱構造体1は、バッテリーセル10と、水冷パイプ26を備える底部22との間において、放熱構造体1の厚さ方向に圧縮される(2Bを参照)。第1熱伝導シート3のひだ状部材3aは、クッション部材6を圧縮して第2熱伝導シート2の面と平行に近い形態になる。この結果、バッテリーセル10からの熱は、第2熱伝導シート2、第1熱伝導シート3のひだ状部材3a、底部22、水冷パイプ26、冷却部材25へと伝わりやすくなる。クッション部材6は、バッテリーセル10同士に段差があっても、バッテリーセル10が第2熱伝導シート2および第1熱伝導シート3に接触させやすくするのに寄与する。なお、上述のバッテリー20は、放熱構造体1をバッテリーセル10と冷却部材25との間に介在させ、ひだ状部材3aを冷却部材25側に、第1熱伝導シート3のひだ状部材3aと反対側をバッテリーセル10側にそれぞれ対向させて配置している。しかし、上述のバッテリー20は、ひだ状部材3aをバッテリーセル10側に、ひだ状部材3aと反対側を冷却部材25側にそれぞれ対向させるように放熱構造体1を配置していても良い。これは、第2実施形態およびそれ以後の実施形態でも同様である。また、図4および図5では、見やすさを優先して、ひだ状部材3aは、バッテリーセル10の厚さに対して1本若しくはそれ以下の割合で存在するように描画されている。しかし、ひだ状部材3aは、バッテリーセル10の厚さに対して2本以上存在するような大きさである方が望ましい。熱パスの数を増加して、バッテリーセル10から放熱構造体1、さらには冷却部材25へと熱を伝える機能を高めるためである。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。第2実施形態に係る放熱構造体は、第1実施形態と同様、バッテリー20の内部に搭載可能である。第2実施形態に係るバッテリーは、放熱構造体の構成のみが異なるだけで、その他の構成を第1実施形態と共通させている。したがって、第1実施形態に係るバッテリーの説明を代り、第2実施形態に係るバッテリーの説明を省略する。これは、第3実施形態およびそれ以後の実施形態でも同様である。
図6は、第2実施形態に係る放熱構造体の一部の断面図とその一領域Cの拡大図とを示す。
第2実施形態に係る放熱構造体1aは、熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、金属、炭素および/またはセラミックスを含み、熱源から伝熱可能な第1熱伝導シート3と、第1熱伝導シート3から構成され、若しくは第1熱伝導シート3に備えられる部材であって、第1熱伝導シート3の面に沿う一方向に傾斜して所定間隔で配置される複数本のひだ状部材3aと、ひだ状部材3a同士の隙間5に備えられるクッション部材6aと、を備える。クッション部材6aは、その内部に、第1熱伝導シート3の面内におけるひだ状部材3aの長さ方向(図6の紙面表裏方向)の両端に開口する開放空間8を備える長状クッション部材である。放熱構造体1aは、クッション部材6aの構造がクッション部材6と異なる点で第1実施形態の放熱構造体1と異なり、それ以外の構成を放熱構造体1と同一とする。なお、クッション部材6aは、開放空間8に代えて、ひだ状部材3aの長さ方向の両端の内のいずれか一端を閉じた開放空間8、若しくは両端とも閉じた閉鎖空間8を有していても良い。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
図7は、第3実施形態に係る放熱構造体の一部の断面図とその一領域Dの拡大図とを示す。
第3実施形態に係る放熱構造体1bは、熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、金属、炭素および/またはセラミックスを含み、熱源から伝熱可能な第1熱伝導シート3と、第1熱伝導シート3から構成され、若しくは第1熱伝導シート3に備えられる部材であって、第1熱伝導シート3の面に沿う一方向に傾斜して所定間隔で配置される複数本のひだ状部材3aと、ひだ状部材3a同士の隙間5に備えられるクッション部材6bと、を備える。クッション部材6bは、ひだ状部材3aの鋭角傾斜側の面と第1熱伝導シート3の面にそれぞれ接する2枚の板面を備える。すなわち、クッション部材6bは、断面略V字形状の断面を有する長状クッション部材である。クッション部材6bは、傾斜角θの角と反対側を、後方のひだ状部材3a側に開口する開放空間9とする。放熱構造体1bは、クッション部材6bの構造がクッション部材6と異なる点で第1実施形態の放熱構造体1と異なり、それ以外の構成を放熱構造体1と同一とする。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
図8は、第4実施形態に係る放熱構造体の一部の断面図とその一領域Eの拡大図とを示す。
第4実施形態に係る放熱構造体1cは、熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、金属、炭素および/またはセラミックスを含み前記熱源から伝熱可能な第1熱伝導シート3と、第1熱伝導シート3から構成され、若しくは第1熱伝導シート3に備えられる部材であって、第1熱伝導シート3の面に沿う一方向に傾斜して所定間隔で配置される複数本のひだ状部材3aと、ひだ状部材3a同士の隙間5に備えられるクッション部材3aと、を備える。放熱構造体1cは、第2熱伝導シート2を備えていない点で、第1実施形態に係る放熱構造体1と異なり、それ以外の構成を放熱構造体1と同一とする。バッテリーセル10等の熱源は、第1熱伝導シート3のひだ状部材3aと反対側の面と接する。この結果、熱源からの熱は、第1熱伝導シート3の平らな面からひだ状部材3aを経由して、ひだ状部材3aと接する筐体21の底部22等の冷却部材25によって冷やされた部位へと伝わる。第4実施形態は、第2熱伝導シート2が放熱構造体にとって必須の構成要素ではないことを示す。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態および第4実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
図9は、第5実施形態に係る放熱構造体の一部の断面図とその一領域Fの拡大図とを示す。
第5実施形態に係る放熱構造体1dは、熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、金属、炭素および/またはセラミックスを含み前記熱源から伝熱可能な第1熱伝導シート3と、第1熱伝導シート3から構成され、若しくは第1熱伝導シート3に備えられる部材であって、第1熱伝導シート3の面に沿う一方向に傾斜して所定間隔で配置される複数本のひだ状部材3aとを備えるが、クッション部材6,6a,6bのようなクッション部材を備えていない。また、放熱構造体1dは、第4実施形態と同様に、第2熱伝導シート2を備えていない。ひだ状部材3aは、その内部に空間4(開放空間であるか閉鎖空間であるかを問わない)を備えているため、クッション部材6等を備えていなくても柔軟性のある構造体となる。この結果、放熱構造体1dがバッテリー20におけるバッテリーセル10や底部22に密着しやすくなる。なお、第5実施形態において、第2熱伝導シート2を備えるようにしても良い。
(その他の実施形態)
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
例えば、熱源は、バッテリーセル10のみならず、回路基板や電子機器本体などの熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。同様に、冷却部材25は、冷却用の水のみならず、有機溶剤、液体窒素、冷却用の気体であっても良い。また、放熱構造体1,1a,1b,1c,1dは、バッテリー20以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
また、図10の変形例に係る放熱構造体1eに示すように、ひだ状部材3aの傾斜方向を全て同一にせず、バッテリーセル10の幅方向(すなわち、図4あるいは図5の紙面表裏方向)において所定間隔おき(一例では10mmおき)に傾斜方向を変えるように、ひだ状部材3aを配置するようにしても良い。このようにバッテリーセル10の幅方向で所定間隔に細分化して傾斜方向を変えたひだ状部材3aを配置することにより、端部バッテリーセルの「ひだ」数の減少や、バッテリーセル10の底面への放熱構造造体1eの追従性の向上を図ることができる。
ひだ状部材3a同士の所定間隔は、ひだ状部材3aの傾斜角θに沿う長さと同一若しくはそれ以下の距離とし、できるだけ熱パスを多くする方が好ましい。しかし、所定間隔は、ひだ状部材3aの傾斜角θに沿う長さを超える距離でも良い。
上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、第4実施形態に係る放熱構造体1cのクッション部材6を、第2実施形態または第3実施形態における各クッション部材6a,6bに代えても良い。また、放熱構造体1等のひだ状部材3aは、そのすべてを同一方向に傾斜させなくとも良い。ひだ状部材3aのある群は第1熱伝導シート3の面に沿う一方向(P方向とする)に傾斜して備えるようにして、ひだ状部材3aの別の群がP方向とは別の方向に傾斜して備えるようにしても良い。ただし、隣り合うひだ状部材3aが無秩序に別の方向に傾斜するのは好ましくなく、ある塊(上記の群)の単位で一定の方向に傾斜しているのが好ましい。また、ひだ状部材3aの傾斜角θは全てのひだ状部材3aにおいて同一角度である必要はない。
本発明に係る放熱構造体は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品などの各種電子機器にも利用することができる。また、本発明に係るバッテリーは、自動車用のバッテリー以外に、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーにも利用できる。
1,1a,1b,1c,1d,1e・・・放熱構造体、2・・・第2熱伝導シート、3・・・第1熱伝導シート、3a・・・ひだ状部材(長尺ひだ状部材を含む)、4・・・空間(開放空間または閉鎖空間)、5・・・隙間、6,6a,6b・・・クッション部材(長尺クッション部材を含む)、8,9・・・空間(開放空間または閉鎖空間)、10・・・バッテリーセル(熱源)、20・・・バッテリー、21・・・筐体、25・・・冷却部材。

Claims (10)

  1. 熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、
    金属、炭素および/またはセラミックスを含み前記熱源から伝熱可能な第1熱伝導シートと、
    前記第1熱伝導シートから構成され、若しくは前記第1熱伝導シートに備えられる部材であって、前記第1熱伝導シートの面に沿う一方向に傾斜して所定間隔で配置される複数本のひだ状部材と、
    を備え、
    前記ひだ状部材の内部に閉鎖空間若しくは開口を持つ開放空間を備える放熱構造体。
  2. 前記第1熱伝導シートの前記ひだ状部材と反対側の面に固定され、金属、炭素および/またはセラミックスを含み、前記熱源からの熱を前記第1熱伝導シートへと伝える第2熱伝導シートを、さらに備える請求項1に記載の放熱構造体。
  3. 前記ひだ状部材は、前記第1熱伝導シートの面内において、前記所定間隔で並ぶ方向と交差する方向に長い長尺ひだ状部材である請求項1または2に記載の放熱構造体。
  4. 前記ひだ状部材同士の隙間にクッション部材を、さらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱構造体。
  5. 前記ひだ状部材は、前記第1熱伝導シートの面内において、前記所定間隔で並ぶ方向と交差する方向に長い長尺ひだ状部材であって、
    前記クッション部材は、前記長尺ひだ状部材の長さ方向に沿って備えられる長尺クッション部材である請求項4に記載の放熱構造体。
  6. 前記クッション部材は、前記放熱構造体の断面視にて三角形の断面を有しており、前記ひだ状部材の鋭角傾斜側に密着配置されている請求項4または5に記載の放熱構造体。
  7. 前記クッション部材は、その内部に閉鎖空間若しくは開口を持つ開放空間を備える請求項4から6のいずれか1項に記載の放熱構造体。
  8. 前記クッション部材は、前記ひだ状部材の鋭角傾斜側の面と前記第1熱伝導シートの面にそれぞれ接する2枚の板面を備える請求項4または5に記載の放熱構造体。
  9. 冷却部材を備える構造の筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、
    請求項1から8のいずれか1項に記載の放熱構造体を、前記バッテリーセルと前記冷却部材との間に介在するバッテリー。
  10. 前記放熱構造体は、前記ひだ状部材を前記バッテリーセル側に、前記第1熱伝導シートの前記ひだ状部材と反対側を前記冷却部材側にそれぞれ対向させて配置される請求項9に記載のバッテリー。

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