JP2019207757A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】負極活物質として黒鉛を含む非結着体からなる負極活物質層とリチウム塩およびプロピレンカーボネートを含む電解液とを用いた非水電解質二次電池において、高容量を発現できる手段を提供する。【解決手段】正極集電体の表面に正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極集電体の表面に負極活物質を含む非結着体からなる負極活物質層を有する負極と、セパレータに電解液が含浸されてなる電解質層と、含む発電要素を有し、前記負極活物質が、黒鉛を含み、前記電解液が、リチウム塩とプロピレンカーボネートを含む非水溶媒とを含有し、前記電解液における前記プロピレンカーボネートの濃度(mol/L)に対する前記リチウム塩の濃度(mol/L)の比率(リチウム塩/プロピレンカーボネート)が0.25超である、非水電解質二次電池。【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関する。
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。これら電気自動車の普及の鍵を握るモータ駆動用電源などの車載電源として、二次電池の開発が鋭意行われている。車載電源への適用を指向した非水電解質二次電池は、高容量であることが求められる。
非水電解質二次電池は、充放電サイクルやコスト面の観点から負極活物質として黒鉛を使用することがよく行われている。また、非水電解質二次電池に使用される電解液では、高い誘電率であることから、プロピレンカーボネート(PC)などの環状カーボネートが溶媒として使用されている。負極活物質として黒鉛を、電解液の溶媒としてプロピレンカーボネートをそれぞれ使用した場合、黒鉛とプロピレンカーボネートとの反応によりプロピレンカーボネートが分解される。プロピレンカーボネートの分解物により黒鉛表面には被膜が形成される。そして、黒鉛表面全体がこの被膜で覆われてしまうことで、導電助剤や集電体との電気的接触が絶たれ、容量を発現できないという課題があった。このような課題を解決するため、例えば特許文献1には0.7〜4mol/Lのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドと0超〜15体積%の環状カーボネートおよび85〜99体積%の鎖状カーボネートとを含む電解液を使用する技術が開示されている。
特開2015−79636号公報
ところで、電気自動車においては、1回の充電での航続距離を伸ばすべく、より高いエネルギー密度を有する二次電池が望まれている。電池のエネルギー密度を高める手段として、1つの電極当たりの電極活物質層を厚くする(厚膜化する)方法が挙げられる。かような構成とすることで、電池の単位体積当たりの電池反応に寄与する電極活物質層の体積の割合が大きくなる。その結果、体積エネルギー密度の向上が図られる。
特に、電極活物質層中に含まれるバインダの割合が少ないほど単位体積あたりの電池容量が増加し、高容量密度の電池が得られることから、バインダを用いずに電極を作製する方法が用いられている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の技術では、負極活物質として黒鉛を含む非結着体からなる(バインダを使用しない)負極活物質層とリチウム塩およびプロピレンカーボネートを含む電解液とを用いて電極を作製すると、高容量が得られないことが判明した。
そこで本発明は、負極活物質として黒鉛を含む非結着体からなる負極活物質層とリチウム塩およびプロピレンカーボネートを含む電解液とを用いた非水電解質二次電池において、高容量を発現させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、負極活物質として黒鉛を含む非結着体からなる負極活物質層とリチウム塩およびプロピレンカーボネートを含む電解液とを用いた非水電解質二次電池において、電解液におけるプロピレンカーボネートのモル濃度に対するリチウム塩のモル濃度の比率を所定の範囲内に制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る非水電解質二次電池は、正極集電体の表面に正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極集電体の表面に負極活物質を含む非結着体からなる負極活物質層を有する負極と、セパレータに電解液が含浸されてなる電解質層と、を含む発電要素を有する。ここで、前記負極活物質は、黒鉛を含み、前記電解液は、リチウム塩とプロピレンカーボネートを含む非水溶媒とを含有し、前記電解液における前記プロピレンカーボネートの濃度(mol/L)に対する前記リチウム塩の濃度(mol/L)の比率(リチウム塩/プロピレンカーボネート)が0.25超であることを特徴とする。
本発明の一形態に係る非水電解質二次電池によれば、負極活物質として黒鉛を含む非結着体からなる負極活物質層とプロピレンカーボネートを含む電解液とを用いた非水電解質二次電池において、高容量を発現させることができる。
本発明の一実施形態である双極型二次電池を模式的に表した断面図である。 二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
本発明の一形態は、正極集電体の表面に正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極集電体の表面に負極活物質を含む非結着体からなる負極活物質層を有する負極と、セパレータに電解液が含浸されてなる電解質層と、を含む発電要素を有する非水電解質二次電池である。ここで、前記負極活物質は、黒鉛を含み、前記電解液は、リチウム塩とプロピレンカーボネートを含む非水溶媒とを含有し、前記電解液における前記プロピレンカーボネートの濃度(mol/L)に対する前記リチウム塩の濃度(mol/L)の比率(リチウム塩/プロピレンカーボネート)が0.25超であることを特徴とする。本形態の非水電解質二次電池によれば、黒鉛表面でのプロピレンカーボネートの分解が抑制され、黒鉛表面での高抵抗被膜の形成が抑制されることで、高容量を発現させることができる。
上記効果を奏する詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。なお、本発明の技術的範囲は下記メカニズムに何ら制限されない。
本発明者らは、上述した特許文献1に記載の技術を、負極活物質として黒鉛を含む非結着体からなる負極活物質に適用することを試みた。しかし、バインダを用いずに電極を作製すると、高容量が得られないことが判明した。そこで、黒鉛とプロピレンカーボネートとが接触する確率を低減させることで、黒鉛表面での高抵抗被膜の形成を抑制できると考えた。このような考えのもとでの検証の結果、電解液中のリチウム塩とプロピレンカーボネートとのモル濃度比に着目し、その比率を0.25超とすることで、高容量が得られることを見出した。
すなわち、本形態の非水電解質二次電池では、電解液におけるプロピレンカーボネートの濃度(mol/L)に対する前記リチウム塩の濃度(mol/L)の比率(リチウム塩/プロピレンカーボネート)を0.25超とすることにより、プロピレンカーボネートがリチウム塩よりも黒鉛にアタックする確率が減少する。そのため、黒鉛表層でのプロピレンカーボネートの分解が抑制され、プロピレンカーボネートの分解物により黒鉛表面に高抵抗被膜が形成されことを抑制できる。よって、充放電反応が進行しやすくなり、高容量の電池が得られると考えられる。
以下、図面を参照しながら、上述した本発明に係る実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。以下では、非水電解質二次電池の一形態である、双極型リチウムイオン二次電池を例に挙げて本発明を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)、相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
本明細書では、双極型リチウムイオン二次電池を単に「双極型二次電池」とも称し、双極型リチウムイオン二次電池用電極を単に「双極型電極」と称することがある。
<双極型二次電池>
図1は、本発明の一実施形態である双極型二次電池を模式的に表した断面図である。図1に示す双極型二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
図1に示すように、本形態の双極型二次電池10の発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータに電解液が含浸されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。ただし、本発明の技術的範囲は図1に示すような双極型二次電池に限定されず、例えば国際公開第2016/031688号パンフレットに開示されているような複数の単電池層が電気的に直列に積層されてなる結果として同様の直列接続構造を有する電池であってもよい。
なお、図示はしないが、図1の双極型二次電池10において、負極活物質層15は、負極活物質として黒鉛を含む。また、負極活物質層15は、導電助剤として導電性繊維である炭素繊維を含んでいてもよい。負極活物質層15が炭素繊維を含むことで、負極活物質層15の電解質層17側に接触する第1主面から集電体11側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成することができ、さらに当該導電通路と負極活物質とを電気的に接続することができる。負極活物質層15は、一般的な非水電解質二次電池の活物質層に含まれるバインダを含んでいない(すなわち、「非結着体」である)。正極活物質層13は、一般的な非水電解質二次電池の活物質層に含まれるバインダを含んでもよいが、非結着体であることが好ましい。
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。これにより、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止し、電池内で隣り合う集電体11どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止している。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。
さらに、図1に示す双極型二次電池10では、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板(正極タブ)25が配置され、これが延長されて電池外装体であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板(負極タブ)27が配置され、同様にこれが延長されてラミネートフィルム29から導出している。
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型二次電池10でも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装体であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。なお、ここでは、双極型二次電池を例に挙げて本発明の実施形態を説明したが、本発明が適用可能な非水電解質電池の種類は特に制限されず、発電要素において単電池層が並列接続されてなる形式のいわゆる並列積層型電池などの従来公知の任意の非水電解質二次電池に適用可能である。
以下、上述した双極型二次電池の主な構成要素について説明する。
[集電体]
集電体は、正極活物質層と接する一方の面から、負極活物質層と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はないが、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔、またはカーボン被覆アルミニウム箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
また、後者の導電性を有する樹脂としては、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金もしくは金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5〜80質量%程度である。
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含む非結着体からなる。「負極活物質を含む非結着体からなる」とは、電極活物質が結着剤(バインダともいう)により互いの位置を固定されていない状態であることを意味する。負極活物質層におけるバインダの含有量は、負極活物質層に含まれる全固形分量100質量%に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
また、本明細書において、活物質層が電極活物質の非結着体からなるか否かは、活物質層を電解液中に完全に含浸した場合に活物質層が崩壊するか否かを観察することで確認できる。活物質層が電極活物質を含む結着体からなる場合には、一分以上その形状を維持することができるが、活物質層が電極活物質を含む非結着体からなる場合には、一分未満で形状の崩壊が起こる。
(負極活物質)
負極活物質は、黒鉛(グラファイト)を主成分として必須に含む。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などが挙げられる。天然黒鉛は、例えば鱗片状黒鉛、塊状黒鉛などが使用できる。人造黒鉛としては塊状黒鉛、気相成長黒鉛、鱗片状黒鉛、繊維状黒鉛が使用できる。「黒鉛を主成分とする」とは、負極活物質に占める黒鉛の割合が50質量%以上であることを意味する。この場合、負極活物質に占める黒鉛の割合は、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは85質量%以上であり、いっそう好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
負極活物質としては、黒鉛に加え、例えばソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料(スズ、シリコン)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム−マンガン合金等)などを併用できる。
負極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。
(導電助剤)
負極活物質層は、導電助剤をさらに含むことが好ましい。
導電助剤は、負極活物質層中で電子伝導パス(導電通路)を形成する機能を有する。このような電子伝導パスが負極活物質層中に形成されると、電池の内部抵抗が低減し、高レートでの出力特性向上に寄与しうる。特に、導電助剤の少なくとも一部が、負極活物質層の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成している(本実施形態では、負極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成している)ことが好ましい。このような形態を有することで、負極活物質層中の厚さ方向の電子移動抵抗がさらに低減されるため、電池の高レートでの出力特性をより一層向上しうる。なお、導電助剤の少なくとも一部が、負極活物質層の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成している(本実施形態では、負極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成している)か否かは、SEMや光学顕微鏡を用いて負極活物質層の断面を観察することにより確認することができる。
このような導電通路を確実に形成するという観点から、導電助剤は、繊維状の形態を有する導電性繊維であることが好ましい。具体的には、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。なかでも、導電性に優れ、軽量であることから炭素繊維が好ましい。
ただし、繊維状の形態を有しない導電助剤が用いられてももちろんよい。例えば、粒子状(例えば、球状)の形態を有する導電助剤が用いられうる。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01〜10μm程度であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
粒子状(例えば、球状)の形態を有する導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
負極活物質層中における導電助剤の含有量は、負極活物質層の全固形分量(全ての部材の固形分量の合計)100質量%に対して、2〜20質量%であることが好ましい。導電助剤の含有量が上記範囲であると、負極活物質層中で電子伝導パスを良好に形成できるとともに、電池のエネルギー密度が低下するのを抑えることができるという利点がある。
負極活物質層の厚さは、好ましくは150〜1500μmであり、より好ましくは180〜1200μmであり、さらに好ましくは200〜650μmである。負極活物質層の厚さが150μm以上であれば、電池のエネルギー密度を十分に高めることができる。一方、負極活物質層の厚さが1500μm以下であれば、負極活物質層の構造を十分に維持することができる。
負極活物質層の空隙率は、好ましくは30〜60%である。負極活物質層の空隙率が30%以上であれば、負極活物質層の形成時に負極活物質スラリーを塗布した後、塗膜をプレスする際のプレス圧を大きくする必要がない。その結果、所望の厚さおよび面積を有する負極活物質層を好適に形成することができる。一方、負極活物質層の空隙率が60%以下であれば、負極活物質層中の電子伝導性材料(導電助剤、負極活物質等)同士の接触を十分に維持することができ、電子移動抵抗の増大が防止できる。なお、本明細書において、負極活物質層の空隙率は、以下の方法により測定するものとする。また、後述の正極活物質層の空隙率も同様の方法により測定することができる。
負極活物質層の空隙率は、下記式(1)に従って算出する。なお、前記空隙内の一部には電解液が存在していてもよい。
式(1):空隙率(%)=100−負極活物質層の固形分占有体積率(%)
ここで、負極活物質層の「固形分占有体積率(%)」は、下記式(2)より算出される。
式(2):固形分占有体積率(%)=(固形材料体積(cm)/負極活物質層体積(cm))×100
なお、負極活物質層体積は負極の厚みと塗布面積から算出する。また、固形材料体積は以下手順により求める。
(a)負極活物質スラリーに含まれる各材料の添加量を秤量する。
(b)集電体表面に負極活物質スラリーを塗布した後、集電体および塗膜の重さを秤量する。
(c)塗布後のスラリーをプレスし、プレス後の集電体および塗膜の重さを秤量する。
(d)プレス時に吸出した電解液量を「(c)で得られた値−(b)で得られた値」より算出する。
(e)(a)、(c)、(d)の値より、プレス後の負極活物質層中の各材料の質量を算出する。(f)(e)で算出した各材料の質量および各材料の密度から、負極活物質層中の各材料の体積を算出する。
(g)(f)で算出した各材料の体積のうち、固体材料の体積のみを足し合わせることにより固形材料体積を算出する。
負極活物質層の密度は、好ましくは0.60〜1.30g/cmであり、より好ましくは0.70〜1.20g/cmであり、さらに好ましくは0.80〜1.10g/cmである。負極活物質層の密度が0.60g/cm以上であれば、十分なエネルギー密度を有する電池を得ることができる。一方、負極活物質層の密度が1.30g/cm以下であれば、上述の負極活物質層の空隙率の低下を防止することができる。空隙率の低下を抑えれば空隙を満たす電解液が十分に確保され、負極活物質層におけるイオン移動抵抗の増大が防止できる。なお、本明細書において、負極活物質層の密度は、以下の方法により測定するものとする。また、後述の正極活物質層の密度も同様の方法により測定することができる。
負極活物質層の密度は、下記式(3)に従って算出する。
式(3):電極密度(g/cm)=固体材料質量(g)÷電極体積(cm)。
なお、固体材料質量は、上記(e)で得られたプレス後の電極中の各材料の質量のうち、固体材料の質量のみを足し合わせることにより算出する。電極体積は電極の厚みと塗布面積から算出する。
(負極の製造方法)
負極の製造方法は、特に制限されず、従来公知の手法を適宜参照することにより製造することができる。以下では、一実施形態に係る負極の製造方法を説明する。
まず、上述した負極活物質および導電助剤を溶媒とともに混合して負極活物質層用スラリーを調製する。
ここで、負極活物質、導電助剤および溶媒を混合し、負極活物質層用スラリーを調製する方法は特に制限されず、部材の添加順、混合方法等、従来公知の知見が適宜参照される。この際、溶媒としては、後述する液体電解質の非水溶媒が適宜用いられうる。また、リチウム塩や電解液への添加剤などをさらに含んだ電解液を、そのまま本工程における溶媒に代えて用いてもよい。
負極活物質層用スラリーの濃度は、特に制限されない。ただし、後述する工程におけるスラリーの塗布や、さらにその後の工程におけるプレスを容易にする観点から、負極活物質層用スラリー100質量%に対する全固形分の濃度は、好ましくは35〜75質量%であり、より好ましくは40〜70質量%であり、さらに好ましくは45〜60質量%である。濃度が上記範囲内であると、塗布で十分な厚さを有する負極活物質層を容易に形成することができる。
次いで、多孔質シート上に上記で調製した負極活物質層用スラリーの塗膜を形成し、必要に応じてスラリーから溶媒を除去してから、当該塗膜の表面に集電体を配置する。スラリーの塗膜を塗布する方法については、特に制限されず、アプリケーター等の従来公知の知見が適宜参照される。また、スラリーから溶媒を除去するための手法についても制限はなく、例えば多孔質シートの塗膜形成面とは反対の表面から吸引ろ過を行うことにより、溶媒を除去することができる。
ここで、多孔質シートとしては、本技術分野においてセパレータとして使用される、微多孔膜、不織布などと同様のものを使用することができる。具体的には、微多孔膜としては、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔膜が挙げられる。また、不織布としては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなどを、単独または混合して用いた不織布が挙げられる。なお、スラリーの塗布(負極活物質層の形成)後に除去されることを前提として、ニッケルメッシュやステンレスメッシュ等の金属メッシュが多孔質シートとして用いられてもよい。
なお、上記多孔質シートは、負極活物質層の形成後に取り除いてもよいし、絶縁性の多孔質シートについてはそのまま電池のセパレータとして用いても構わない。多孔質シートをそのままセパレータとして用いる場合は、当該多孔質シートのみをセパレータとして電解質層を形成してもよいし、当該多孔質シートと別のセパレータとを組み合わせて(すなわち、セパレータを2枚以上として)電解質層を形成してもよい。
さらに、必要に応じて、負極活物質層用スラリーの塗膜と多孔質シートとの積層体をプレスしてもよい。この際に用いられるプレス装置は、塗布した負極活物質層用スラリーの全面に均一に圧力を加えられる装置であることが好ましく、具体的には、ハイプレッシャージャッキ J−1(アズワン株式会社製)が使用できる。プレスの際の圧力は、特に制限されないが、好ましくは0.4〜40MPaである。
[正極活物質層]
正極活物質層は、正極活物質を含む。
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Mn−Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられる。さらに好ましくはLi(Ni−Mn−Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)、またはリチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(以下単に、「NCA複合酸化物」とも称する)などが用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を有する。そして、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiNiMnCo(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0≦c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化される。その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26であることが、容量と寿命特性とのバランスを向上させるという観点からは好ましい。例えば、LiNi0.5Mn0.3Co0.2は、一般的な民生電池で実績のあるLiCoO、LiMn、LiNi1/3Mn1/3Co1/3などと比較して、単位質量あたりの容量が大きい。これにより、エネルギー密度の向上が可能となり、コンパクトかつ高容量の電池を作製できるという利点を有しているため、航続距離の観点からも好ましい。なお、より容量が大きいという点ではLiNi0.8Co0.1Al0.1がより有利であるが、寿命特性に難がある。これに対し、LiNi0.5Mn0.3Co0.2はLiNi1/3Mn1/3Co1/3並みに優れた寿命特性を有しているのである。
なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。正極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、第2の正極活物質層に含まれる第2の正極活物質の平均粒子径は、高出力化の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。
正極活物質層は、負極活物質層について上述したのと同様に、必要に応じて、導電助剤をさらに含むことが好ましい。また、正極活物質層は、バインダを含有してもよい。
正極活物質層に用いられる任意成分のバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
正極活物質層に含まれうる、導電助剤、バインダなどのその他の添加剤の配合比は、特に限定されない。それらの配合比は、非水電解質二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。なお、負極活物質層と同様に、正極活物質層は、バインダを含有しないものであることが好ましい。すなわち、本形態に係る非水電解質二次電池の好ましい実施形態において、正極活物質層は、正極活物質がバインダによって結着されていない、いわゆる正極活物質を含む非結着体からなる。「正極活物質を含む非結着体からなる」とは、上記負極活物質層と同様に、電極活物質がバインダにより互いの位置を固定されていない状態であることを意味する。この際、正極活物質層におけるバインダの含有量は、正極活物質層に含まれる全固形分量100質量%に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
本形態の非水電解質二次電池において、正極活物質層の厚さは特に制限されず、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、正極活物質層の厚さは、好ましくは150〜1500μmであり、より好ましくは180〜950μmであり、さらに好ましくは200〜800μmである。正極活物質層の厚さが150μm以上であれば、電池のエネルギー密度を十分に高めることができる。一方、正極活物質層の厚さが1500μm以下であれば、正極活物質層の構造を十分に維持することができる。
正極活物質層の空隙率は、好ましくは35〜50%である。正極活物質層の空隙率が35%以上であれば、正極活物質層の形成時に正極活物質スラリーを塗布した後、塗膜をプレスする際のプレス圧を大きくする必要がない。その結果、所望の厚さおよび面積を有する正極活物質層を好適に形成することができる。一方、正極活物質層の空隙率が50%以下であれば、正極活物質層中の電子伝導性材料(導電助剤、正極活物質等)同士の接触を十分に維持することができ、電子移動抵抗の増大が防止できる。
正極活物質層の密度は、好ましくは2.10〜3.00g/cmであり、より好ましくは2.15〜2.85g/cmであり、さらに好ましくは2.20〜2.80g/cmである。正極活物質層の密度が2.10g/cm以上であれば、十分なエネルギー密度を有する電池を得ることができる。一方、正極活物質層の密度が3.00g/cm以下であれば、上述の正極活物質層の空隙率の低下を防止することができる。空隙率の低下を抑えれば空隙を満たす電解液が十分に確保され、正極活物質層におけるイオン移動抵抗の増大が防止できる。
正極(正極活物質層)は、通常のスラリーを塗布(コーティング)する方法のほか、スパッタ法、蒸着法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法および溶射法のいずれかの方法によって形成することができる。
[電解質層]
本形態に係る非水電解質二次電池の電解質層は、セパレータに電解液が含浸されてなる構成を有する。
電解液(液体電解質)は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解液層を構成する電解液(液体電解質)は、非水溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。
本形態に係る非水電解質二次電池において、電解液は、リチウム塩とプロピレンカーボネートを含む非水溶媒とを含有し、前記電解液における前記プロピレンカーボネートの濃度(mol/L)に対する前記リチウム塩の濃度(mol/L)の比率(リチウム塩/プロピレンカーボネート)が0.250超である。この構成により、負極活物質として黒鉛を使用しても、黒鉛とプロピレンカーボネートとの反応を抑制することで、プロピレンカーボネートの分解を抑制できる。よって、黒鉛表面でのプロピレンカーボネート分解物による高抵抗被膜の形成を抑制し、充放電反応が進行しやすくなる。前記比率の上限は、特に制限されないが、好ましくは1.43以下であり、より好ましくは1.15以下であり、さらに好ましくは1.00以下であり、特に好ましくは0.70以下である。前記比率が1.43以下であれば、十分な電池性能を確保できる。
非水溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)を含む。非水溶媒は、上記比率(リチウム塩/プロピレンカーボネート)を満たす限り、プロピレンカーボネート以外の非水溶媒を含むことができる。プロピレンカーボネート以外の非水溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4−メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。中でも、PC以外の非水溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、およびブチレンカーボネート(BC)が好ましく、エチレンカーボネートを含むことが好ましい。
非水溶媒中の前記プロピレンカーボネートの含有量は、前記非水溶媒の全体積に対して、好ましくは30〜100vol%である。また、非水溶媒中の前記プロピレンカーボネートの濃度は、好ましくは3.5〜11.8mol/Lである。このような範囲であれば、より高い放電容量を得ることができる。
リチウム塩としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。なかでも、電池出力および充放電サイクル特性の観点から、LiPFやLi[(FSON](LiFSI)がより好ましく、LiPFが特に好ましい。
電解液中におけるリチウム塩の濃度は、0.88〜5.00mol/Lであることが好ましく、1.0〜4.0mol/Lであることがより好ましく、1.5〜3.0mol/Lであることがさらに好ましい。このような範囲であれば、より高い放電容量を得ることができる。
電解液は、上述した成分以外の添加剤をさらに混合してもよい。また、添加剤は電解液に含有させてもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、添加剤を電解液に使用する場合の使用量は、添加剤を添加する前の電解液100質量%に対して、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
本形態に係る非水電解質二次電池において、電解質層にはセパレータが用いられる。セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解液を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
また、セパレータとしては多孔質基体に耐熱絶縁層が積層されたセパレータ(耐熱絶縁層付セパレータ)であることが好ましい。耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダを含むセラミック層である。耐熱絶縁層付セパレータは融点または熱軟化点が150℃以上、好ましくは200℃以上である耐熱性の高いものを用いる。耐熱絶縁層を有することによって、温度上昇の際に増大するセパレータの内部応力が緩和されるため熱収縮抑制効果が得られうる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。また、耐熱絶縁層を有することによって、耐熱絶縁層付セパレータの機械的強度が向上し、セパレータの破膜が起こりにくい。さらに、熱収縮抑制効果および機械的強度の高さから、電池の製造工程でセパレータがカールしにくくなる。
耐熱絶縁層における無機粒子は、耐熱絶縁層の機械的強度や熱収縮抑制効果に寄与する。無機粒子として使用される材料は特に制限されない。例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンの酸化物(SiO、Al、ZrO、TiO)、水酸化物、および窒化物、ならびにこれらの複合体が挙げられる。これらの無機粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来のものであってもよいし、人工的に製造されたものであってもよい。また、これらの無機粒子は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうち、コストの観点から、シリカ(SiO)またはアルミナ(Al)を用いることが好ましく、アルミナ(Al)を用いることがより好ましい。
耐熱性粒子の目付けは、特に限定されるものではないが、5〜15g/mであることが好ましい。この範囲であれば、十分なイオン伝導性が得られ、また、耐熱強度を維持する点で好ましい。
耐熱絶縁層におけるバインダは、無機粒子どうしや、無機粒子と樹脂多孔質基体層とを接着させる役割を有する。当該バインダによって、耐熱絶縁層が安定に形成され、また多孔質基体層および耐熱絶縁層の間の剥離を防止される。
耐熱絶縁層に使用されるバインダは、特に制限はなく、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリロニトリル、セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリル酸メチルなどの化合物がバインダとして用いられうる。このうち、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル酸メチル、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いることが好ましい。これらの化合物は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
耐熱絶縁層におけるバインダの含有量は、耐熱絶縁層100質量%に対して、2〜20質量%であることが好ましい。バインダの含有量が2質量%以上であると、耐熱絶縁層と多孔質基体層との間の剥離強度を高めることができ、セパレータの耐振動性を向上させることができる。一方、バインダの含有量が20質量%以下であると、無機粒子の隙間が適度に保たれるため、十分なリチウムイオン伝導性を確保することができる。
耐熱絶縁層付セパレータの熱収縮率は、150℃、2gf/cm条件下、1時間保持後にMD、TDともに10%以下であることが好ましい。このような耐熱性の高い材質を用いることで、発熱量が高くなり電池内部温度が150℃に達してもセパレータの収縮を有効に防止することができる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。
[非水電解質二次電池の製造方法]
本形態の非水電解質二次電池は、常法により作製することができる。具体的には、正極と負極が電解質層を介して対向するように積層させることにより、単電池を作製するとよい。そして、単電池の数が所望の数となるまで電解質層および電極の積層を繰り返し、積層体を得る。次に、得られた積層体に正極タブ、負極タブを溶接により接合する。必要に応じて、溶接後に余分なタブ等をトリミングにより除去するのが望ましい。接合方法としては特に制限されるものではないが、超音波溶接機にて行うのが、接合時に発熱(加熱)せず、極めて短時間で接合できる為、熱による電極活物質層(負極活物質層および正極活物質層)の劣化を防止できる点で優れている。この際、正極タブと、負極タブとは、同じ辺(同じ取出し側)で対向(対峙)するように配置することができる。これにより、各正極の正極タブを1つに束ねて1つの正極集電板として外装体から取り出すことができる。同様に各負極の負極タブを1つに束ねて1つの負極集電板として外装体から取り出すことができる。また、正極集電板(正極集電タブ)と、負極集電板(負極集電タブ)とが、反対の辺(異なる取出し辺)となるように配置してもよい。
次いで、積層体を外装体へ収納する。積層体を、電池外装体に用いるラミネートフィルムで、上下から、正極集電板(正極集電タブ)と、負極集電板(負極集電タブ)を電池外装体の外部に取り出せるようにして、挟み込む。
次に、上下のラミネートフィルムの外周部(封止部)のうち3辺を熱圧着して封止する。外周部のうち3辺を熱圧着して封止することで、3辺封止体を得る。この際、正極集電板(正極集電タブ)、負極集電板(負極集電タブ)を取り出す辺の熱封止部は、封止しておくのが好ましい。これは、その後の注液時に、これらの正極集電板、負極集電板が開口部にあると、注液時に電解液が飛び散るなどする恐れがあるためである。
なお、上記においては、積層構造の電池の説明を行ったが、積層型に限定されず、電池の構成としては、角形、ペーパー型、円筒型、コイン型等、種々の形状を採用することができる。
次に、注液装置にて3辺封止体の残る1辺の開口部より、3辺封止体内部に、電解液を注液する。これによりセパレータに電解質を含浸した電解質層が形成される。この際、電解質が3辺封止体内部の積層体、特にセパレータおよび電極活物質層にできるだけ早く含浸できるように、3辺封止体は、真空ポンプに連結された真空ボックスに収納することが好ましい。さらに、減圧して内部を高真空状態にした状態で注液を行うのが望ましい。注液後、3辺封止体を真空ボックスから取出し、3辺封止体の残る1辺を仮封止して、ラミネートタイプ(積層構造)の非水電解質二次電池を得る。なお、ここで注液される電解液は、上述の電解液を使用するが、電極活物質スラリーを形成する際に用いた電解液と同じ組成であっても異なる組成であってもよいが、同じ組成であることが好ましい。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[シール部]
シール部(絶縁層)は、集電体同士の接触や単電池層の端部における短絡を防止する機能を有する。シール部を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム:EPDM)、等が用いられうる。また、イソシアネート系接着剤や、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などを用いても良く、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)などを用いても良い。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられ、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いることが、好ましい。
[電池外装体]
電池外装体としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができ、所望の電解液層厚みへと調整容易であることから、外装体はアルミネートラミネートがより好ましい。
[セルサイズ]
図2は、二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図2に示すように、扁平な双極型二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、双極型二次電池50の電池外装体(ラミネートフィルム52)によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1に示す双極型二次電池10の発電要素21に相当するものである。発電要素57は、双極型電極23が、電解質層17を介して複数積層されたものである。
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装体に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
また、図2に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図2に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
一般的な電気自動車では、電池格納スペースが170L程度である。このスペースにセルおよび充放電制御機器等の補機を格納するため、通常セルの格納スペース効率は50%程度となる。この空間へのセルの積載効率が電気自動車の航続距離を支配する因子となる。単セルのサイズが小さくなると上記積載効率が損なわれるため、航続距離を確保できなくなる。
したがって、本発明において、発電要素を外装体で覆った電池構造体は大型であることが好ましい。具体的には、ラミネートセル電池の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。かような大型の電池は、車両用途に用いることができる。ここで、ラミネートセル電池の短辺の長さとは、最も長さが短い辺を指す。短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常400mm以下である。
[体積エネルギー密度および定格放電容量]
一般的な電気自動車では、一回の充電による走行距離(航続距離)をいかに長くするかが重要な開発目標である。かような点を考慮すると、電池の体積エネルギー密度は157Wh/L以上であることが好ましく、かつ定格容量は20Wh以上であることが好ましい。
また、電極の物理的な大きさの観点とは異なる、大型化電池の観点として、電池面積や電池容量の関係から電池の大型化を規定することもできる。例えば、扁平積層型ラミネート電池の場合には、定格容量に対する電池面積(電池外装体まで含めた電池の投影面積)の比の値が5cm/Ah以上であり、かつ、定格容量が3Ah以上である電池に対して本発明が適用されることが好ましい。さらに、矩形状の電極のアスペクト比は1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。なお、電極のアスペクト比は矩形状の正極活物質層の縦横比として定義される。アスペクト比をかような範囲とすることで、車両要求性能と搭載スペースを両立できるという利点がある。
さらに、本形態の非水電解質二次電池において、大型化電池の観点として、単位面積(cm)当たりの電池容量は、好ましくは6mAh/cm以上であり、より好ましくは6.5mAh/cm以上である。
単位面積当たりの電池容量は、以下の式に従って算出する。
式:単位面積当たりの電池容量(mAh/cm)=正極活物質当りの放電容量(mAh/g)×正極活物質の目付量(mg/cm)/10
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
本形態の非水電解質二次電池は、長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。さらに、体積エネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記非水電解質二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、「部」は特に断りのない限り、「質量部」を意味する。なお、正極活物質スラリーおよび負極活物質スラリーの調製から電池の作製までの工程をグローブボックス内で行った。また、特に断りがない限り、大気圧下で行った。
[実施例1]
<電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合溶媒(体積比率1:1)に、リチウム塩(LiPF)を1.5mol/Lの割合で溶解させて、電解液を得た。プロピレンカーボネートに対するリチウム塩の濃度比は、0.254であった。
<正極活物質スラリーの調製>
正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、導電助剤としてアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)](平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)、およびカーボンナノファイバー[昭和電工株式会社製、VGCF(登録商標)、アスペクト比60(平均繊維径:約150nm、平均繊維長:約9μm)、電気抵抗率40μΩm、嵩密度0.04g/cm]を使用した。
部材として、LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末とアセチレンブラックとカーボンナノファイバーとを質量比92:6:2となるように秤量した。上記部材に固形分比率70質量%となるように電解液を加えた。得られた混合物を混合脱泡機(ARE−250、株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで4分間混合した。スラリー性状を確認後、さらに2000rpmで4分間混合することで正極活物質スラリーを得た。
<負極活物質スラリーの調製>
負極活物質として黒鉛、導電助剤としてアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)](平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)、およびカーボンナノファイバー[昭和電工株式会社製、VGCF(登録商標)、アスペクト比60(平均繊維径:約150nm、平均繊維長:約9μm)、電気抵抗率40μΩm、嵩密度0.04g/cm]を使用した。
部材として、黒鉛とアセチレンブラックとカーボンナノファイバーとを質量比92:6:2となるように秤量した。上記部材に固形分比率70質量%となるように電解液を加えた。得られた混合物を混合脱泡機(ARE−250、株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで4分間混合した。スラリー性状を確認後、さらに2000rpmで4分間混合することで負極物質スラリーを得た。
<集電体およびセパレータ>
正極集電体としてのカーボンコートアルミニウム箔(昭和電工株式会社製、カーボン層の厚さ1μm、アルミニウム層の厚さ20μm、サイズ61×72mm)、負極集電体としての銅箔(株式会社サンクメタル製、厚さ10μm、サイズ61×72mm)、およびセパレータ(5cm×5cm、厚さ23μm、セルガード2500 ポリプロピレン製)を準備した。
<正極の作製>
上記正極集電体を、スラリー塗布部のサイズが29×40mmとなるようにPETシートを用いてマスクした。この正極集電体を吸着定盤を用い、減圧して定盤上に固定した状態で、正極集電体上に、上記で調製した正極活物質スラリー1を、アプリケーターを用いて、アプリケーターのギャップが650μmとなるように設定して塗布した。また、塗工速度は30mm/sとした。このように塗布することで正極活物質質量(正極活物質の目付量)で40mg/cmの電極を作製した。
塗布後のスラリーの表面にアラミドシート(日本バイリーン株式会社製、厚さ45μm)を6枚配置し、ハイプレッシャージャッキ J−1(アズワン株式会社製)を用いてプレスを行った。この際、プレス圧0.4MPaであり、目的の電極密度(電極空孔率)に達するまで繰り返し実施して、正極活物質層を得た。なお、当該正極活物質層は、厚さ250μm、空隙率40%、密度2.55g/cmであった。また、得られた正極活物質層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認したところ、導電部材の少なくとも一部が、正極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成していた。
<負極の作製>
上記乾燥後の負極集電体を、スラリー塗布部のサイズが33×44mmとなるようにPETシートを用いてマスクした。この負極集電体を吸着定盤を用い、減圧して定盤上に固定した状態で、負極集電体上に、上記で調製した負極活物質スラリー1を、アプリケーターを用いて、アプリケーターのギャップが600μmとなるように設定して塗布した。また、塗工速度は30mm/sとした。このように塗布することで負極活物質および導電助剤の合計質量で21mg/cmの電極を作製した。
塗布後のスラリーの表面にアラミドシート(日本バイリーン株式会社製、厚さ45μm)を6枚配置し、ハイプレッシャージャッキ J−1(アズワン株式会社製)を用いてプレスを行った。この際、プレス圧0.4MPaであり、目的の電極密度(電極空孔率)に達するまで繰り返し実施して、負極活物質層を得た。なお、当該負極活物質層は、厚さ280μm、空隙率34%、密度1.00g/cmであった。また、得られた負極活物質層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認したところ、導電部材の少なくとも一部が、負極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成していた。
<リチウムイオン電池の作製>
正極および負極でセパレータ(5cm×5cm、厚さ23μm、セルガード2500 ポリプロピレン製)を挟持して電池を形成し、端子(Ni,5mm×3cm)付き銅箔(3cm×3cm、厚さ17μm)と端子(Al,5mm×3cm)付きカーボンコートアルミ箔(3cm×3cm、厚さ21μm)でこの電池を挟持し、それを2枚の市販の熱融着型アルミラミネートフィルム(10cm×8cm)を用いて封入した。そして、上記と同様の電解液を60μL注液した後に、当該外装体を真空封止して、リチウムイオン電池を作製した。
[実施例2]
電解液中のリチウム塩の濃度を1.5mol/Lから2mol/Lへと変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。プロピレンカーボネートに対するリチウム塩の濃度比は、0.339であった。
[実施例3]
電解液中のリチウム塩の濃度を1.5mol/Lから3mol/Lへと変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。プロピレンカーボネートに対するリチウム塩の濃度比は、0.508であった。
[実施例4]
電解液中のリチウム塩の濃度を1.5mol/Lから4mol/Lへと変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。プロピレンカーボネートに対するリチウム塩の濃度比は、0.678であった。
[実施例5]
電解液中のECとPCとの混合溶媒の体積比率を1:1から2:1へと変更したこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。プロピレンカーボネートに対するリチウム塩の濃度比は、0.508であった。
[実施例6]
電解液中のECとPCとの混合溶媒をPCの単一溶媒へと変更したこと以外は、実施例3と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。プロピレンカーボネートに対するリチウム塩の濃度比は、0.254であった。
[比較例1]
電解液中のリチウム塩の濃度を1.5mol/Lから1mol/Lへと変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。プロピレンカーボネートに対するリチウム塩の濃度比は、0.169であった。
[比較例2]
電解液中のECとPCとの混合溶媒をPCの単一溶媒へと変更したこと以外は、比較例1と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。プロピレンカーボネートに対するリチウム塩の濃度比は、0.085であった。
[比較例3]
電解液中のリチウム塩の濃度を1mol/Lから2mol/Lへと変更したこと以外は、比較例2と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。プロピレンカーボネートに対するリチウム塩の濃度比は、0.169であった。
<充放電容量の測定>
充放電容量の測定は、25℃および以下の条件で行った。
1.プレ充電条件
実施例および比較例で作製したリチウムイオン電池を0.01Cの電流で10時間定電流(CC)充電を行った。
2.初充電条件
初充電は、0.05Cの電流で4.2VまでCC充電を行い、その後電流値が0.01Cとなるまで定電圧(CV)充電を行った。
3.初放電条件
初放電は、0.05Cの電流で2.5Vに達するまで、CC放電を行った。
4.充放電条件
充電条件:0.05Cの電流で4.2VまでCC充電を行い、その後電流値が0.01CとなるまでCV充電を行った;
放電条件:0.05Cの電流で2.5Vに達するまで、CC放電を行い、正極活物質質量当たりの放電容量(mAh/g)および単位面積(cm)当たりの電池容量(mAh/cm)を求めた。
なお、単位面積当たりの電池容量は、以下の式に従って計算した。
式:単位面積当たりの電池容量(mAh/cm)=正極活物質当りの放電容量(mAh/g)×正極活物質の目付量(mg/cm)/10
結果を表1に示す。
表1に示す結果から、負極活物質として黒鉛を含む非結着体からなる負極活物質層とリチウム塩およびプロピレンカーボネートを含む電解液とを用いた非水電解質二次電池において、前記電解液における前記プロピレンカーボネートの濃度(mol/L)に対する前記リチウム塩の濃度(mol/L)の比率(リチウム塩/プロピレンカーボネート)が0.25超である実施例1〜6は、当該比率が0.25以下である比較例1〜3と比べて、高い放電容量を得られることが分かる。

Claims (6)

  1. 正極集電体の表面に正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、
    負極集電体の表面に負極活物質を含む非結着体からなる負極活物質層を有する負極と、
    セパレータに電解液が含浸されてなる電解質層と、
    を含む発電要素を有し、
    前記負極活物質が、黒鉛を含み、
    前記電解液が、リチウム塩とプロピレンカーボネートを含む非水溶媒とを含有し、前記電解液における前記プロピレンカーボネートの濃度(mol/L)に対する前記リチウム塩の濃度(mol/L)の比率(リチウム塩/プロピレンカーボネート)が0.25超である、非水電解質二次電池。
  2. 前記非水溶媒中の前記プロピレンカーボネートの含有量が、前記非水溶媒の全体積に対して、30〜100vol%である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記比率が1.43以下である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記電解液における前記リチウム塩の濃度が、1.5〜3.0mol/Lである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  5. 単位面積(cm)あたりの電池容量が、6mAh/cm以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  6. 前記負極活物質層の厚さが、200〜650μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
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