JP2019206673A - ポリカルボン酸系共重合体およびその製造方法、並びにこれを用いた無機粒子用添加剤およびセメント組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
1.重合反応を開始するとモノマーが一定濃度以下になるまで重合が進行する。
2.重合率に比例して数平均分子量が増加する。
3.ポリマー分子(活性種)の数は一定で、重合率には関係しない。
4.分子量は、化学量論的に制御される。
5.通常の重合反応よりも狭い分子量分布のポリマーが得られる。
6.引き続いてモノマーを添加することで、再び重合反応を進めることができ、ブロックコポリマーを得ることもできる。
7.定量的な収率で、ポリマー鎖末端を変性することができる。
本発明の一形態に係るポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と、一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)と、を有するものである。
トリチオカルボネート構造を有するポリマーは加水分解性を有するため、強塩基性条件下または強酸性条件下では加水分解反応が進行する。加水分解反応を行った場合、トリチオカルボネート構造がポリマー末端にある非対称型では、ほとんど重量平均分子量が変化しないが、トリチオカルボネート構造がポリマー主鎖の中央付近にある対称型では、加水分解前の重量平均分子量のおよそ半分の重量平均分子量になる。
トリチオカルボネート構造を有するポリマーにアゾ重合開始剤(例えば、AIBN)を過剰量加えて加熱すると、当該ポリマーは、トリチオカルボネート部分で開裂する。アゾ重合開始剤を過剰量加えた場合、トリチオカルボネート構造がポリマー末端にある非対称型では、ほとんど重量平均分子量が変化しないが、トリチオカルボネート構造がポリマー主鎖の中央付近にある対称型では、開裂前の重量平均分子量のおよそ半分の重量平均分子量になる。なお、このアゾ重合開始剤を利用する方法については、文献(Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry, Vol. 49, 1-10 (2011))が参照され得る。
トリチオカルボネート構造はアミンと反応して置換反応を起こす性質がある。アミンを添加した場合、トリチオカルボネート構造がポリマー末端にある非対称型では、ほとんど重量平均分子量が変化しないが、トリチオカルボネート構造がポリマー主鎖の中央付近にある対称型では、ポリマー中のトリチオカルボネート構造が置換され、置換反応前の重量平均分子量のおよそ半分の重量平均分子量になる。なお、このアミノリシス法については、例えば、以下の文献が参照される:Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 46, 5093-5100 (2008)、Macromol. Rapid Commun. 2006, 27, 1648-1653、Macromolecules 2006, 39, 8616-8624。
トリチオカルボネート構造を有するポリマーは、トリチオカルボネート構造を切断する酵素(例えば、パパイン、ブロメライン、フィシンなど)を用いることで、トリチオカルボネート部分で開裂する。上記酵素を加えた場合、トリチオカルボネート構造がポリマー末端にある非対称型では、ほとんど重量平均分子量が変化しないが、トリチオカルボネート構造がポリマー主鎖の中央付近にある対称型では、開裂前の重量平均分子量のおよそ半分の重量平均分子量になる。
トリチオカルボネート構造を有するポリマーは、NaBH4などの還元剤により、トリチオカルボネート構造が還元され、当該還元後のトリチオカルボネート構造が切断される。上記還元剤を加えた場合、トリチオカルボネート構造がポリマー末端にある非対称型では、ほとんど重量平均分子量が変化しないが、トリチオカルボネート構造がポリマー主鎖の中央付近にある対称型では、開裂前の重量平均分子量のおよそ半分の重量平均分子量になる。なお、この還元法については、例えば、以下の文献が参照される:Biomacromolecules 2006, 7, 1389-1392。
トリチオカルボネート構造を有するポリマーは、長時間、一定温度以上に加熱し続けることで、トリチオカルボネート構造を脱離させることができる。上記のように、長時間一定温度以上に加熱した場合、トリチオカルボネート構造がポリマー末端にある非対称型では、ほとんど重量平均分子量が変化しないが、トリチオカルボネート構造がポリマー主鎖の中央付近にある対称型では、開裂前の重量平均分子量のおよそ半分の重量平均分子量になる。なお、加熱法については、例えば、以下の文献が参照される:Macromolecules 2005, 38, 5371-5374。
まず、分取ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などの分離手段を用いて、分析したい共重合体を含有する組成物から当該共重合体のみを単離する。そして、単離された共重合体について33S−NMRを測定することにより、トリチオカルボネート構造(−S−C(=S)−S−)の存在を確認することが可能である。なお、この33S−NMRを利用する方法については、文献(小杉善雄、ベンゼンスルホン酸の硫黄−33核NMR、油化学報文第38巻第7号570−571頁(1989))が参照され得る。
まず、上記と同様に分取GPCなどの分離手段を用いて、分析したい共重合体を含有する組成物から当該共重合体のみを単離する。そして、単離された共重合体について質量分析を行う。この際、イオン化の手法としてはESI(エレクトロスプレーイオン化)法やMALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)法などが用いられ得る。そして、質量分析にはMS/MS測定(精密質量測定)が用いられ得る。すなわち、1つ目の質量分離部(MS1)でトリチオカルボネート構造を含む特定のイオンを選択し、続くコリジョンセルで不活性ガスと衝突させてフラグメンテーションを起こす。次いで、このようにして生じたフラグメントイオン(トリチオカルボネート構造を含む)を2つ目の質量分離部(MS2)で分離し、検出を行うことができる(プロダクトイオンスペクトル)。
まず、PDA検出器とRI検出器とを備えたGPCを用いて、共重合体を含む溶液中の共重合体のUVスペクトルを測定する。RAFT剤の構造によって多少異なるものの、一般的にトリチオカルボネート構造を有する化合物は210nmから250nm付近および290nmから350nm付近に弱いUV吸収を持つことが知られている。したがって、トリチオカルボネート構造を有するRAFT剤を用いて重合された共重合体と、同モノマー組成で上記RAFT剤を用いずにメルカプトプロピオン酸などの連鎖移動剤を用いて重合された共重合体との間で、それぞれの共重合体成分のピークトップ溶出時間におけるUVスペクトルを比較すると、前者は後者と比較して210nmから250nm付近および290nmから350nm付近におけるUV吸収の強度が大きくなる(後述する実施例を参照)。このことを利用して、ポリカルボン酸系共重合体が上述した一般式(3)で表される構造(トリチオカルボネート構造)を有することを確認することが可能である。なお、特定の構造のRAFT剤がどのような吸収を持つかは使用するRAFT剤のUVスペクトルを予め測定しておくことで確認することができる。
上述したような構成を有するポリカルボン酸系共重合体を製造する方法について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されるが、本発明の他の形態によれば、上記ポリカルボン酸系共重合体を製造するための好適な製造方法もまた、提供される。ただし、上述したポリカルボン酸系共重合体の技術的範囲が、以下に詳述する製造方法によって得られたもののみに限定されることはない。
ポリカルボン酸系共重合体を得るための重合工程(共重合工程)は、溶液重合や塊状重合などの通常の方法で行うことができる。溶液重合は回分式でも連続式でも行うことができる。その際には任意の適切な溶媒を採用し得るが、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、原料モノマーおよび得られる重合体の溶解性の観点から、水および炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも、水が脱溶剤工程を省略できる点でより好ましい。水は不純物の少ないものが好ましく、たとえば蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、脱気水等を使用することが好ましい。
RAFT重合の際の全単量体成分の使用量(重合溶液中に含まれる全単量体成分の含油量)は、他の原料を含む全原料に対して、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%〜90質量%であり、さらに好ましくは25質量%〜80質量%であり、特に好ましくは30質量%〜60質量%であり、最も好ましくは35質量%〜40質量%である。RAFT重合の際の全単量体成分の使用量が上記範囲内にあれば、重合率が向上し得るとともに、生産性が向上しやすく、2分子停止反応などの副反応が起こりにくい。
RAFT重合において、全単量体のモル数に対するRAFT剤の添加モル数の比率としては、好ましくは1000分の1〜5分の1であり、より好ましくは500分の1〜10分の1であり、さらに好ましくは250分の1〜15分の1であり、さらにより好ましくは230分の1〜20分の1であり、特に好ましくは200分の1〜50分の1であり、最も好ましくは200分の1〜80分の1である。全単量体のモル数に対するRAFT剤の添加モル数の比率が上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量をより低減できる、ポリカルボン酸系共重合体を提供することができる。
RAFT重合の重合開始剤としては、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。このような重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤や過酸化物などが挙げられる。アゾ系開始剤としては、具体的には、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「VA−044」など)、2,2’−アゾビス[2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「VA−046B」など)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「VA−061」など)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−50」など)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「VA−057」など)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「VA−086」など)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−501」など)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−70」など)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−65」など)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−59」など)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−40」など)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「VF−096」など)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「VAm−110」など)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−601」など)などが挙げられる。過酸化物としては、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド(日油株式会社製の商品名「パーブチルH−69」など)、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(日油株式会社製の商品名「パーオクタH」など)などが挙げられる。
RAFT重合においては、少量の重合開始剤で重合反応を開始する。重合開始剤の量を一定量以上用いることにより、初期ラジカル濃度を比較的高くすることができ、重合反応が進行しやすい。逆に、重合開始剤の量を一定量以下とすることにより、初期ラジカル濃度を適度に低くすることができ、フリーラジカル重合が同時に進行しにくくなり、分散度の狭い共重合体が得られやすくなる。過酸化水素のように重合開始剤1分子の開裂から1つのラジカルしか発生しない重合開始剤では、RAFT剤のモル数に対する重合開始剤のモル数の比率としては、好ましくは20モル%〜80モル%であり、より好ましくは30モル%〜70モル%であり、さらに好ましくは35モル%〜65モル%であり、特に好ましくは40モル%〜60モル%であり、最も好ましくは45モル%〜55モル%である。富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−50」のようなアゾ系開始剤を用いた場合は、重合開始剤1分子の開裂から2つのラジカルが発生するため、RAFT剤のモル数に対する重合開始剤のモル数の比率としては、好ましくは10モル%〜40モル%であり、より好ましくは15モル%〜35モル%であり、さらに好ましくは17モル%〜32モル%であり、特に好ましくは20モル%〜30モル%であり、最も好ましくは22モル%〜28モル%である。
RAFT重合において、重合温度は、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤等により適宜定められるが、下限として、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、上限として、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
RAFT重合において、重合時間は、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤等により適宜定められるが、下限として、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上であり、さらに好ましくは2時間以上であり、上限として、好ましくは20時間以下であり、より好ましくは10時間以下であり、さらに好ましくは5時間以下である。
各単量体の反応容器への投入方法としては、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法のいずれでもよい。好適な投入方法としては、具体的には、単量体(a)と単量体(b)の全部とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の全部とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部と単量体(b)の一部とを反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の残りとをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法などが挙げられる。また、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えることにより各単量体の単位時間当りの投入質量比を連続的又は段階的に変化させて、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)と構造単位(II)との比率が同一ポリマー鎖の中で連続的または段階的に変化するように重合してもよい。なお、重合開始剤や連鎖移動剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
RAFT重合において、所定の分子量のポリカルボン酸系共重合体を再現性よく得るには、共重合反応を安定に進行させることが必要であることから、溶液重合を行う場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下とすることが好ましい。この溶存酸素濃度は、より好ましくは0.01ppm〜4ppmであり、さらに好ましくは0.01ppm〜2ppmであり、特に好ましくは0.01ppm〜1ppmである。なお、溶媒に単量体を添加後、窒素置換等を行う場合には、単量体をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲内とすることが好ましい。上記溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素量を調整したものを用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
得られたポリカルボン酸系共重合体は、そのままでも無機粒子用添加剤として用いられ得るが、取り扱い性の観点から、pHを5以上に調整しておくことが好ましい。しかしながら、重合率の向上のため、pH5未満で共重合反応を行い、共重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の一価金属および二価金属の水酸化物および炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;などのアルカリ性物質の1種または2種以上を用いて行うことができる。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。
上述した本発明の一形態に係るポリカルボン酸系共重合体や、本発明の他の形態に係る製造方法によって製造されたポリカルボン酸系共重合体は種々の用途に用いられ得るが、用途の一例として、無機粒子用添加剤が挙げられる。
本発明の他の形態によれば、上述した形態に係る無機粒子用添加剤の一実施形態であるセメント用添加剤(ポリカルボン酸系共重合体および必要に応じて消泡剤を含む)と、セメントとを含むセメント組成物が提供される。セメント組成物は、実用的には、水および骨材をさらに含む。セメント組成物は、必要に応じて上述した追加成分をさらに含んでいてもよい。また、セメント組成物は、上述した各成分をセメント用添加剤として含んでいてもよい。
重量平均分子量および分子量分布は下記の測定条件で測定した。
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製、TSKgelガードカラム(内径6.0mm×40mm)+TSKgel G4000SWXL(内径7.8mm×300mm)+G3000SWXL(内径7.8mm×300mm)+G2000SWXL(内径7.8mm×300mm)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの
GPC標準サンプル:GLサイエンス製のポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、11840、6450、4250、1470)
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成した。
カラム温度:40℃
測定温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
標準サンプル注入量:100μL(濃度0.1質量%の溶離液溶液)
解析法:得られたRIクロマトグラム(GPCチャート)において、図1の例に示すように、ポリマー溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線(図1の例における直線L)で結び、ポリマーを検出・解析した。ただし、モノマーピークがポリマーピークに重なって測定された場合(図1の例においてMがモノマーピーク)、モノマーとポリマーの重なり部分の最凹部において垂直分割して(図1の例における直線a、b)ポリマー部とモノマー部(図1の例における斜線部)を分離し、ポリマー部のみの分子量・分子量分布を測定した。ダイマー以上のオリゴマーが検出された場合はポリマー部に含めた。
下記の表1において、「構造単位の組成比(質量比(I)/(II))」とは、LC(液体クロマトグラフィー)によって、共重合体を製造するために反応容器に仕込んだ単量体の、重合反応における消費率を分析し、消費された単量体が全て重合反応によって共重合体に転化するものとして計算される構造単位の組成比(質量比)である。なお、上記LC(液体クロマトグラフィー)の分析条件、分析法は下記の通りである。
機種:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empower2プロフェッショナル
使用カラム:Waters社製、Atlantis dC18ガードカラム+Atlantis dC18、4.6×250mm、2本
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水9000g、アセトニトリル6000gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物3.75g、酢酸52.2gを溶解させたもの
流量:1mL/分
カラム温度:40℃。
各単量体の検量線を作成し、重合後のポリマー溶液の各単量体の残存量から消費量を決定した。
ポリカルボン酸系共重合体が、上述した一般式(3)で表される構造(トリチオカルボネート構造)を有することの定性分析を、UVスペクトルを比較することで行った。その分析方法は下記の通りである。
分析には、連鎖移動剤としてS,S−ジベンジルトリチオ炭酸またはメルカプトプロピオン酸をそれぞれ用いて重合して得られた後述の合成例1の共重合体(1)および比較合成例3の共重合体(C3)を用いた。これらの共重合体のUVスペクトルは、共重合体を前述の<重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)の測定条件>に記載の方法で分析し、得られたRIチャート上で観測されるポリマー部の溶出時間(図1に示すL)を確認し、その溶出時間におけるPDAチャートの吸収スペクトルを切り出すことで得た。また、S,S−ジベンジルトリチオ炭酸のUVスペクトルは、当該化合物を前述の<LC分析条件>に記載の方法で分析し、得られたPDAチャートから、当該化合物の溶出時間における吸収スペクトルを切り出すことで得た(図示せず)。なお、S,S−ジベンジルトリチオ炭酸のUVスペクトルは、310nmに極大ピークを示した。
試験に使用した材料およびモルタルの配合は、太平洋普通ポルトランドセメント900g、強さ試験用ISO標準砂1350g、ならびに各共重合体1.08g(上記セメントに対して0.12質量%)と消泡剤0.108g(上記共重合体に対して10質量%)(MA404;BASFジャパン株式会社製、有姿濃度10質量%)とを含むイオン交換水(全量で270g)である。消泡剤の添加量は、各共重合体の固形分添加量に対して固形分で1質量%であった。室温20℃、相対湿度55%の下、下記の混練方法でホバートミキサーにより4分間機械練りしてモルタルを調製し、上部内径70mm、下部内径:100mm、高さ60mmの金属製のフローコーンに得られたモルタルを詰めた。次に、注水から5.5分後にフローコーンを垂直に持ち上げた後、テーブルに広がったモルタルの直径を直交する2方向について測定し、この平均をモルタルフロー値とした。
各バッチのモルタルの練混ぜは練混ぜ機(ホバート・ジャパン株式会社、ミキサーN50)を使用する。練混ぜ機の操作は,次のように行う。練り鉢にセメントを加え、各重合体と消泡剤とを含む水を加える。次に練混ぜ機をすぐに低速で始動させ、30秒後に、次の30秒間で砂を加える。練混ぜ機を高速にし、その後30秒練り混ぜる。練混ぜ機を90秒間休止する。休止の最初の15秒間に、練り鉢に付着したモルタルをかき落とす。高速で60秒間練混ぜを続ける。
温度計、攪拌機、滴下ロート、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水240部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール136部、アクリル酸22.9部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−50」)0.183部、連鎖移動剤としてS,S−ジベンジルトリチオ炭酸0.783部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応容器内を500mL/分で30分間窒素置換した後、70℃に昇温した。その後、3時間引き続いて、70℃に温度を維持して重合反応を完結させ、重量平均分子量(Mw)20300の共重合体(1)水溶液からなるセメント用添加剤(1)を得た。得られた共重合体(1)の物性を下記の表1に示す。また、モルタル試験の結果を下記の表2に示す。なお、本合成例において連鎖移動剤として用いられたS,S−ジベンジルトリチオ炭酸(下記の表1では「Ci」と記載)は、下記の化学構造を有している。
温度計、攪拌機、滴下ロート、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水240部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール140部、アクリル酸19.0部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−50」)0.110部、連鎖移動剤としてS,S−ジベンジルトリチオ炭酸0.472部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応容器内を500mL/分で30分間窒素置換した後、70℃に昇温した。その後、3時間引き続いて、70℃に温度を維持して重合反応を完結させ、重量平均分子量(Mw)36100の共重合体(2)水溶液からなるセメント用添加剤(2)を得た。得られた共重合体(2)の物性を下記の表1に示す。また、モルタル試験の結果を下記の表2に示す。
温度計、攪拌機、滴下ロート、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水240部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール136部、アクリル酸22.9部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−50」)0.183部、連鎖移動剤として2,2’−(カルボノチオイルジスルファンジイル)ビス(メチルプロパン酸)0.836部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応装置内を500mL/分で30分間窒素置換した後、70℃に昇温した。その後、3時間引き続いて、70℃に温度を維持して重合反応を完結させ、重量平均分子量(Mw)19400の共重合体(3)の水溶液からなるセメント用添加剤(3)を得た。得られた共重合体(3)の物性を表1に示す。また、モルタル試験の結果を表2に示す。なお、本合成例において連鎖移動剤として用いられた2,2’−(カルボノチオイルジスルファンジイル)ビス(メチルプロパン酸)(下記の表1では「Cii」と記載)は、下記の化学構造を有している。
温度計、攪拌機、滴下ロート、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水240部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール140部、アクリル酸19.0部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−50」)0.110部、連鎖移動剤として2,2’−(カルボノチオイルジスルファンジイル)ビス(メチルプロパン酸)0.504部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応装置内を500mL/分で30分間窒素置換した後、70℃に昇温した。その後、3時間引き続いて、70℃に温度を維持して重合反応を完結させ、重量平均分子量(Mw)27200の共重合体(4)の水溶液からなるセメント用添加剤(4)を得た。得られた共重合体(4)の物性を表1に示す。また、モルタル試験の結果を表2に示す。
温度計、攪拌機、滴下ロート、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水240部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール136部、アクリル酸22.9部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−50」)0.183部、連鎖移動剤として2−{[(2−カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸0.686部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応容器内を500mL/分で30分間窒素置換した後、70℃に昇温した。その後、3時間引き続いて、70℃に温度を維持して重合反応を完結させ、重量平均分子量(Mw)25500の共重合体(C1)水溶液からなるセメント用添加剤(C1)を得た。得られた共重合体(C1)の物性を下記の表1に示す。また、モルタル試験の結果を下記の表2に示す。なお、本比較合成例において連鎖移動剤として用いられた2−{[(2−カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸(下記の表1では「Ciii」と記載)は、下記の化学構造を有している。
温度計、攪拌機、滴下ロート、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水240部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール140部、アクリル酸19.0部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製の商品名「V−50」)0.110部、連鎖移動剤として2−{[(2−カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸0.413部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応容器内を500mL/分で30分間窒素置換した後、70℃に昇温した。その後、3時間引き続いて、70℃に温度を維持して重合反応を完結させ、重量平均分子量(Mw)33200の共重合体(C2)水溶液からなるセメント用添加剤(C2)を得た。得られた共重合体(C2)の物性を下記の表1に示す。また、モルタル試験の結果を下記の表2に示す。
温度計、攪拌機、滴下ロート、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水87.8部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール186部、アクリル酸0.335部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応容器内を500mL/分で窒素置換しながら60℃に昇温した後、そこへ重合開始剤である過酸化水素2.00%水溶液17.49部を添加し、アクリル酸30.9部をイオン交換水18.3部に溶解させた液を3時間、連鎖移動剤である3−メルカプトプロピオン酸1.04部と還元剤であるL−アスコルビン酸1.91部をイオン交換水58.1部に溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて、60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、重量平均分子量(Mw)30300の共重合体(C3)水溶液からなるセメント用添加剤(C3)を得た。得られた共重合体(C3)の物性を下記の表1に示す。また、モルタル試験の結果を下記の表2に示す。なお、本比較合成例において連鎖移動剤として用いられた3−メルカプトプロピオン酸(下記の表1では「Civ」と記載)は、下記の化学構造を有している。
温度計、攪拌機、滴下ロート、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水42.6部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール191部、アクリル酸0.345部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応容器内を500mL/分で窒素置換しながら60℃に昇温した後、そこへ重合開始剤である過酸化水素2.00%水溶液15.0部を添加し、アクリル酸25.5部をイオン交換水37.9部に溶解させた液を3時間、連鎖移動剤である3−メルカプトプロピオン酸0.610部、還元剤であるL−アスコルビン酸0.389部をイオン交換水38.9部に溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて、60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、重量平均分子量(Mw)40300の共重合体(C4)水溶液からなるセメント用添加剤(C4)を得た。得られた共重合体(C4)の物性を下記の表1に示す。また、モルタル試験の結果を下記の表2に示す。
Claims (11)
- 下記一般式(1):
で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と、
下記一般式(2):
で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)と、を有するポリカルボン酸系共重合体であって、
下記一般式(3):
で表される構造を有することを特徴とする、ポリカルボン酸系共重合体。 - ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)が500〜100000の範囲であり、分散度(Mw/Mn)が1.0〜1.8である、請求項1に記載のポリカルボン酸系共重合体。
- 前記一般式(1)中のR2がメチル基である、請求項1または2に記載のポリカルボン酸系共重合体。
- 前記ポリカルボン酸系共重合体の全量に対し、前記構造単位(I)および前記構造単位(II)の合計の含有割合が、90〜100質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカルボン酸系共重合体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリカルボン酸系共重合体を含む、無機粒子用添加剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリカルボン酸系共重合体を含む、セメント組成物。
- 下記一般式(1):
で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と、
下記一般式(2):
で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)と、
を必須に含有する単量体成分を重合する重合工程を含む、ポリカルボン酸系共重合体の製造方法であって、
下記一般式(4):
で表されるトリチオカルボネート型化合物の存在下で前記重合工程を行うことを特徴とする、ポリカルボン酸系共重合体の製造方法。 - 前記トリチオカルボネート型化合物が、下記一般式(5):
で表される構造を有する、請求項7に記載のポリカルボン酸系共重合体の製造方法。 - 前記一般式(5)におけるZ2〜Z4は、同一または異なって、水素原子、置換または非置換の直鎖状、分岐状または環状の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリール基または−COOM基(Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す)である、請求項8に記載のポリカルボン酸系共重合体の製造方法。
- 前記一般式(5)におけるZ2およびZ4が、同一または異なって、水素原子または置換または非置換の直鎖状、分岐状または環状の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、Z3が置換または非置換のフェニル基である、請求項8または9に記載のポリカルボン酸系共重合体の製造方法。
- 前記一般式(5)におけるZ2およびZ4がメチル基であり、Z3が−COOM基(Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す)である、請求項8または9に記載のポリカルボン酸系共重合体の製造方法。
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