JP2019203187A - センサ基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】センサ基板内のプラズモン特性を均一化することができ、かつ低濃度の被検出物質を高感度に検出することができるセンサ基板の製造方法を提供する。【解決手段】センサ基板の製造方法は、励起光が照射されることによって表面プラズモンを生じさせる金属微細構造体2021を備えるセンサ基板202bの製造方法であって、主面上に複数の突起部2022aを有する基板を準備する準備工程(S10)と、主面上に金属膜2023を形成することで金属微細構造体2021を作製する成膜工程(S20及びS30)とを含む。そして、成膜工程は、主面上に蒸着法により第一の金属膜2024を形成する第一の成膜工程(S20)と、第一の金属膜2024上にスパッタ法により第二の金属膜2025を形成する第二の成膜工程(S30)とを含む。【選択図】図7

Description

本開示は、例えば表面増強蛍光など光検出に用いるセンサ基板に関する。
空気中を浮遊するウイルスを捕集する技術としては、例えば、ウイルスを捕集可能なフィルターに空気を流した後、抽出液を用いて当該フィルターに捕集されたウイルスを抽出液中に抽出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、ウイルス等を、サイクロン効果を利用して直接液体に衝突させて、液体中にウイルス等を捕集する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
なお、空気中を浮遊しているウイルスは、ウイルス単体で浮遊している訳ではなく、他の浮遊している微粒子に付着して、又は人が放出する飛沫等に含まれて浮遊していることが知られている。
また、人の咳、くしゃみによって、体液に含まれているウイルスが放出されるが、体液は放出後瞬時に乾燥して、飛沫核になる。このウイルスを含んだ飛沫核の直径は、約1μmで、空気中を浮遊する(例えば、非特許文献1を参照)。
空気中に含まれるウイルスを捕集し、当該空気中に含まれるウイルス濃度が、例えば、蛍光分光法、表面増強ラマン散乱分光法等により測定される。
従来、蛍光分光法、表面増強ラマン散乱法等の光学計測技術は様々な応用に用いられており、例えば、蛍光分光法を用いて空気中の細菌、カビ等の病原体の濃度を測定する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。蛍光分光法を用いることにより、空気中の病原体の濃度を消耗品である試薬、試験紙片及び酵素などを不要にし、さらにはそれらの消耗品の使用前の保存安全性や使用後の廃棄の問題、誤差を生じる原因となる煩雑な操作や他の成分による干渉作用などの問題をなくし、定量測定することができる。
空気中を浮遊するウイルスを補集し、光学計測する技術としては、表面増強ラマン分光法による検出が開示されている(例えば、特許文献4)。金属表面に固定化されたウイルス由来の被検出物質と結合する断片化抗体を用いて、断片化抗体と被検出物質とが複合体を形成し、その複合体に光を照射することで、被検出物質特有のシグナルを検出する。断片化することにより抗体サイズを小さくすることで、プラズモン共鳴による電場増強をより効果的に活用することができ、高感度検出が可能と述べられている。さらに空気中のウイルスは極微量であるため、表面増強蛍光を利用した光検出法も提案されている。
表面増強蛍光を利用したセンサデバイスには、プラズモン基板(センサ基板)が用いられる。プラズモン基板における金属膜の製造方法として、スパッタレートを変えて2段階成膜する方法が提案されている(例えば、特許文献5)。また、樹脂基板への成膜方法として、複数回成膜する方法も提案されている(例えば、特許文献6)。
特開2012−052865号公報 特開2012−052866号公報 特表2013−520639号公報 特開2015−178993号公報 特開2011−184706号公報 特開2003−253428号公報
西村秀一、阪田総一郎、"くしゃみ咳によるエアロゾル粒子中のインフルエンザウィルスの活性と空調"、冷凍2010年5月号第85巻第991号
しかしながら、上述した従来の製造方法によるプラズモン基板では、プラズモン特性をデバイス面内で均一化することができなかった。また、上術した従来の製造方法によるプラズモン基板では、低濃度の被検出物質を計測することが難しかった。
そこで、本開示は、センサ基板内のプラズモン特性を均一化することができ、かつ低濃度の被検出物質を高感度に検出することができるセンサ基板の製造方法を提供する。
本開示の一態様に係るセンサ基板の製造方法は、励起光が照射されることによって表面プラズモンを生じさせる金属微細構造体を備えるセンサ基板の製造方法であって、主面上に複数の突起部を有する基板を準備する準備工程と、前記主面上に金属膜を形成することで前記金属微細構造体を作製する成膜工程とを含み、前記成膜工程は、前記主面上に蒸着法により第一の金属膜を形成する第一の成膜工程と、前記第一の金属膜上にスパッタ法により第二の金属膜を形成する第二の成膜工程とを含む。
本開示によれば、センサ基板内のプラズモン特性を均一化することができ、かつ低濃度の被検出物質を高感度に検出することができる。
実施の形態に係る検出システムの概略構成を示すブロック図 実施の形態に係る検出部の概略構成を示すブロック図 実施の形態に係る検出領域を有するセンサ基板の斜視図 実施の形態に係る金属微細構造体の拡大断面図 実施の形態に係る金属微細構造体上のSAM膜を示す図 成膜方法によるセンサ基板の仕上がりを比較した図 成膜方法によるセンサ基板の反射特性を比較した図 実施の形態に係るセンサ基板の製造方法を示すフローチャート 実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板のSEM像 実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板のAu膜厚分布を示す図 実施の形態に係る製造方法で作製されたセンサ基板において、第一及び第二の金属膜の厚みがそれぞれ300nmであるときのSEM像 実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板の断面SEM像 比較例1に係るセンサ基板の断面SEM像 比較例2に係るセンサ基板の断面SEM像 実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板において第一の金属膜のみが200nmである場合の反射特性を示す図 実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板において第一の金属膜の厚みが300nmである場合の反射特性を示す図 実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板において第一及び第二の金属膜の厚みが300nmである場合の反射特性を示す図 成膜方法の違いによるセンサ基板のノイズレベルの評価結果を示す図 比較例3に係るセンサ基板の反射特性を比較した図 比較例3に係るセンサ基板のSEM像 他の実施の形態に係るセンサ基板の平面図
(本開示の基礎となった知見)
上記のように、従来技術(例えば、特許文献5及び6)で作製されたセンサ基板では、センサ基板内のプラズモン特性を均一化し、低濃度の被検出物質(例えば、ウイルス)を検出することが難しい。以下、説明する。
表面増強蛍光を利用したセンサデバイスを作製する際には、デバイス面内のプラズモン特性を均一化することが望まれる。また、センサデバイスの検出感度低下の最大の阻害要因は、非特異吸着によるノイズ信号である。空気中を浮遊するウイルス濃度は、ウイルス感染患者の鼻汁に含まれるウイルス濃度に比べ極端に小さいため、空気中から補集したウイルスに由来する被検出物質は微量である。そのためこれまでの製造方法によるプラズモン基板では非特異吸着によるノイズ信号が高く、微量のウイルスを高感度に検出することができなかった。
そのため、空気中のウイルスを検出するためのセンサデバイスには、デバイス面内のプラズモン特性が均一でかつ非特異吸着を抑制できるプラズモン基板(センサ基板)を作製することが望まれる。このようなプラズモン基板を作製するためには、基板面内で均一な金属ナノ構造形成、及び、非特異吸着が少ない金属ナノ構造を形成する必要があり、金属膜の成膜方法が極めて重要である。
非特異吸着とは、蛍光物質で標識された第二のVHH抗体(蛍光物質で標識された標識化抗体であり、図4参照)又は蛍光物質が、被検出物質を介さずに、直接的に、金属膜、SAM膜、又は、第一のVHH抗体(ウイルスに特異的に結合する固定化抗体であり、図4参照)に付着することを指す。非特異吸着が発生すれば、被検出物質が存在しなくても蛍光を発してしまう。つまり、非特異吸着は、ノイズを増加させ、S/N比の低下を招き、被検出物質の量の検出精度を低下させる。
そこで、本開示の一態様に係るセンサ基板の製造方法は、励起光が照射されることによって表面プラズモンを生じさせる金属微細構造体を備えるセンサ基板の製造方法であって、主面上に複数の突起部を有する基板を準備する準備工程と、前記主面上に金属膜を形成することで前記金属微細構造体を作製する成膜工程とを含む。そして、前記成膜工程は、前記主面上に蒸着法により第一の金属膜を形成する第一の成膜工程と、前記第一の金属膜上にスパッタ法により第二の金属膜を形成する第二の成膜工程とを含む。
これにより、センサ基板は、2つの成膜方法により成膜されることで作製される。蒸着法では、スパッタ法に比べ、全体的な厚みが均一な金属膜を形成することができる。基板の主面上に蒸着法で成膜することで、基板面内において厚みが均一な第一の金属膜を形成することができる。つまり、センサ基板面内のプラズモン特性を均一化することができる。また、スパッタ法では、蒸着法に比べ、表面が平滑な金属膜を形成することができる。第一の金属膜上にスパッタ法により第二の金属膜を形成することで、金属膜の表面は平滑な面となる。つまり、表面の凹凸による非特異吸着を抑制することができる。よって、本開示の一態様に係るセンサ基板の製造方法によれば、センサ基板内のプラズモン特性を均一化することができ、かつ低濃度の被検出物質を高感度に検出することができる。
また、前記第二の金属膜は、膜厚が200nm以上であり、かつ前記第一の金属膜の膜厚以下であってもよい。
これにより、第二の金属膜が200nm以上の厚みを有することで、第一の金属膜の表面の凹凸を吸収しやすくなり、金属膜表面がさらに平滑になり、より単一モードに近いプラズモン共鳴を生じさせることができる。つまり、プラズモン共鳴による発光増強度を増大することができる。よって、低濃度の被検出物質をさらに高感度に検出することができる。
また、前記蒸着法は、電子ビーム蒸着法または抵抗加熱式蒸着法であってもよい。
これにより、一般的に使用されている蒸着法により、第一の金属膜を形成することができる。よって、センサ基板の製造方法の汎用性を向上させることができる。
また、前記スパッタ法は、RFマグネトロンスパッタ法またはDCマグネトロンスパッタ法であってもよい。
これにより、一般的に使用されているスパッタ法により、第二の金属膜を形成することができる。よって、センサ基板の製造方法の汎用性を向上させることができる。
また、前記第一の成膜工程及び前記第二の成膜工程での成膜速度は、1Å/sec以上5Å/sec以下であってもよい。
これにより、成膜時間が長くなることを抑制しつつ、平滑な表面を有する金属膜を作製することができる。
また、前記基板は、樹脂で構成されており、前記第一の成膜工程及び前記第二の成膜工程は、20℃以上30℃以下の環境下で行われてもよい。
これにより、基板が樹脂で構成されており成膜時に基板を加熱できない場合であっても、基板内のプラズモン特性を均一化することができ、かつ低濃度の被検出物質を高感度に検出することができるセンサ基板を作製することができる。
また、前記金属膜の膜厚は、前記突起部の高さ以上であってもよい。
これにより、被検出物質が入る隙間を適切な幅及び深さに調整することができる。つまり、間隙に入る被検出物質の割合を増やすことができる。よって、低濃度の被検出物質をさらに高感度に検出することができる。
以下、本開示の実施の形態に関して、図1〜図16を用いて詳細に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
なお、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、以下の実施の形態の説明に用いられる図面において、座標軸が示される場合がある。座標軸におけるZ方向は、センサ基板の主面に垂直な方向である。X方向及びY方向は、Z方向に垂直な平面状において互いに直交する方向である。X−Y平面は、センサ基板の主面に平行な平面である。例えば、以下の実施の形態において、「平面視」とは、Z方向から見ることを意味する。
また、本明細書において、平行などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
(実施の形態)
[検出システムの概要]
図1は、実施の形態に係る検出システム10の概略構成を示すブロック図である。検出システム10は、人が出入りする部屋の室内に設置されている。検出システム10は、例えば、設置された室内の空気中の浮遊するウイルス等の対象検出粒子(以降において、微粒子とも記載する)の濃度を検出する。
図1に示すように、検出システム10は、捕集装置100と、検出部200と、コントローラ300とを備える。以下に、捕集装置100、検出部200及びコントローラ300の詳細について説明する。
[捕集装置の構成]
捕集装置100は、空気吸入口105で、周辺の雰囲気空気を吸入し、空気等の気体中のウイルス等を含み得る微粒子を捕集して捕集液に混合する装置である。図1に示すように、捕集装置100は、吸引器101と、捕集液タンク102と、ポンプ103と、サイクロン104と、空気吸入口105と、洗浄液タンク106と、ポンプ107と、洗浄液タンク108と、ポンプ109と、廃液タンク110と、液体流路111と、を備える。以下に、捕集装置100の各構成要素について説明する。
吸引器101は、空気吸入口105から周辺の雰囲気空気を吸入する。吸引器101により周辺の雰囲気空気中を浮遊するウイルスを含み得る微粒子は、空気とともに空気吸入口105よりサイクロン104に吸入される。吸引器101は、サイクロン104に接続されており、サイクロン104を動作させるために用いられる。
捕集液タンク102は、空気中のウイルスを捕集するための捕集液を保持するための容器である。
ポンプ103は、捕集液タンク102内の捕集液をサイクロン104に供給する。
サイクロン104は、空気吸入口105及び捕集液タンク102に接続されており、吸引器101により空気吸入口105から吸入された空気中のウイルスを含み得る微粒子と、ポンプ103により捕集液タンク102から供給された捕集液とを混合する。すなわち、サイクロン104は、吸入した空気中のウイルスを含み得る微粒子を捕集液に溶かす。サイクロン104は、液体流路111を介して検出部200に接続されている。微粒子が混合された捕集液(以下、試料という)は、サイクロン104から液体流路111を介して検出部200に排出される。
洗浄液タンク106は、サイクロン104を洗浄するための洗浄液を保持するための容器である。洗浄液タンク106は、サイクロン104に接続されており、洗浄液タンク106内の洗浄液は、ポンプ107によってサイクロン104に供給される。
洗浄液タンク108は、液体流路111を洗浄するための洗浄液を保持するための容器である。洗浄液タンク108は、液体流路111に接続されており、洗浄液タンク108内の洗浄液は、ポンプ109によって液体流路111に供給される。
廃液タンク110は、不要な液体を貯蔵するための容器である。
液体流路111は、ウイルスを踏んだ捕集液をセンサセル202まで運ぶための経路である。サンプル液は液体流路111を通ってセンサセルに滴下される。液体流路111は、ウイルスを捕集したサンプル液体を、ウイルスを計測するセンサデバイス201に導く液体流路である。つまり、液体流路111は、サイクロン104から出力された試料を、検出部200に導くための経路である。
[検出部の構成]
次に、検出部200について、図1及び図2を参照しながら具体的に説明する。図2は、実施の形態に係る検出部200の概略構成を示すブロック図である。
検出部200は、捕集装置100によって微粒子が混合された捕集液からウイルスを検出する。図1及び図2に示すように、検出部200は、センサデバイス201と、導入部203と、光源204と、光源204から照射された光を集光し、検出領域202cに結像させるレンズ206と、検出領域202cで発生した表面増強蛍光を光検出部207に導くビームスプリッタ205と、検出領域202cで発生した表面増強ラマン散乱光を分光し、検出する光検出部207とを備えている。以下に、検出部200の各構成要素について説明する。
センサデバイス201は、ウイルスと反応する試薬又はこの試薬を担持したセンサセル202を備える。ここで、センサセル202は、センサデバイス201に複数あってもよい。つまり、センサデバイス201は、単一のセンサセル202を備えていてもよいし、複数のセンサセル202を備えていてもよい。
本実施の形態でのセンサデバイス201は、所定体積(例えば1ml)のサンプル液体2031中のウイルスの個数(例えば10〜10個)の範囲を計測できる。また、本実施の形態では、ウイルス量を光学的に検出するために、表面増強蛍光法を利用する。
センサセル202は、励起光が照射されたときに、表面プラズモンを生じさせることにより、ウイルスに結合した蛍光物質からの蛍光を増強する。図2に示すように、センサセル202は、ウイルス、または、ウイルス構成成分を含むサンプル液体2031が通る流路202a、ウイルス、および、ウイルス構成成分を測定する領域である検出領域202cを有するセンサ基板202bを備えている。このようにすることにより、ウイルス、および、ウイルス構成成分の検知を正確に行うことができる。ここで、ウイルスとは、種類を特に限定するものではなく、一般にウイルスと分類される対象を測定することができる。また、ウイルス構成成分とは、ウイルスを構成する成分であれば特に限定されない。ウイルス構成成分として、ウイルス構成するタンパク質、又は、核酸を測定することが好ましい。
流路202aは、導入部203から滴下されたサンプル液体2031を検出領域202cに導くための経路である。
センサ基板202bは、表面プラズモンを利用してウイルスを光学的に検出するための検出領域202cを有する基板である。検出領域202cには、金属微細構造体が配置されており、光源204から励起光が照射されることにより表面プラズモンが生じる。また、金属微細構造体には、第一のVHH抗体が固定されている。第一のVHH抗体は、ウイルスに特異的に結合する固定化抗体である。センサ基板202bの詳細については、図3A及び図3Bを用いて後述する。
導入部203は、第二のVHH抗体及び試料をセンサセル202に導入する。具体的には、導入部203は、第二のVHH抗体と試料とを含むサンプル液体2031をセンサセル202に滴下する。第二のVHH抗体は、蛍光物質で標識された標識化抗体である。試料は、ウイルスを含み得る液体であり、本実施の形態ではサイクロン104から排出された捕集液である。
試料にウイルスが含まれれば、当該ウイルスは、第一のVHH抗体を介して金属微細構造体に結合する。このとき、ウイルスは、蛍光物質で標識された第二のVHH抗体とも結合している。つまり、金属微細構造体に、第一のVHH抗体、ウイルス、第二のVHH抗体及び蛍光物質の複合体が結合される。この状態で金属微細構造体に光が照射されると、ウイルスと間接的に結合している蛍光物質から蛍光が発せられ、当該蛍光が表面プラズモンによって増強される。以降において、表面プラズモンによって増強された蛍光を表面増強蛍光と呼ぶ。
光源204は、センサセル202に励起光を照射する光照射部の一例である。光源204としては、公知の技術を特に限定することなく利用することができる。例えば、半導体レーザ、ガスレーザ等のレーザを光源204として利用することができる。なお、サンプル液体2031中のウイルスを測定するため、ウイルスに含まれる物質と相互作用が小さい波長の励起光を照射する光源204を利用することが好ましい。励起光の波長は、例えば、400〜2000nm程度の波長で、水、又は、ウイルス構成物質と相互作用が少ない波長が好ましい。さらには、励起光の波長は、600nm〜850nm(例えば、650nm、785nm、830nm)といった半導体レーザが利用できる波長が好ましい。
ビームスプリッタ205は、光源204から照射された励起光から検出領域202cで発生した表面増強蛍光を分離する。具体的には、ビームスプリッタ205は、光源204からの励起光を通過させ、センサセル202で発生した表面増強蛍光を分離して光検出部207に導く。
レンズ206は、ビームスプリッタ205を通過した光源204からの励起光を検出領域202cに集光する。レンズ206は、公知の技術を特に限定無く利用することができる。
光検出部207は、光源204により発せられた光がセンサセル202に照射され、センサセル202より帰還した光をビームスプリッタ205で取り出した光を分光し、検出することにより電気信号に変換して、ウイルス量に相当する信号を出力する。つまり、光検出部207は、ビームスプリッタ205により導かれた表面増強蛍光を分光し、特定の波長帯の光を検知することにより、試料中のウイルスの量に相当する電気信号を出力する。
光検出部207は、特定の波長帯の光を分光し、検出できるものであれば公知の技術を特に限定無く利用することができる。例えば、光検出部207として、光を分光するために特定の波長帯を透過させる干渉フィルター、回折格子を用いて分光するツェルニーターナ―型分光器、及び、エシェル型分光器等を利用することができる。さらには、光検出部207は、当該光検出部207に光を導入する前に光源204からの励起光を除去するためのノッチフィルター、あるいは、光源204からの励起光を透過させず、かつ、センサセル202で発生した表面増強蛍光を透過させることができるロングパスフィルタを有してもよい。また、光検出部207には、簡単のため、光を分光するための装置に関しては図示していない。
[コントローラの構成]
コントローラ300は、検出システム10全体の動作を制御する。具体的には、コントローラ300は、捕集装置100及び検出部200を制御する。
コントローラ300は、例えば、測定の開始を制御する。具体的には、コントローラ300は、吸引器101に周辺の空気の吸引を開始させる、かつ、ポンプ103に、捕集液タンク102からサイクロン104に捕集液を供給させて生成されたサンプル液体(捕集液体)をセンサデバイス201に供給させる。さらには、コントローラ300は、光源204に光を照射させ、光検出部207に表面増強蛍光を検知させる制御を行う。
例えば、コントローラ300は、各種入力パラメーターに基づいて、予め設定された条件で、各ポンプを制御して所定体積のサンプル液体2031を検出部200(センサデバイス201)に供給することができる。さらに、コントローラ300は、計時機能を有しており、各動作に要した時間情報を生成し記憶してもよい。また、コントローラ300は、検出部200から計測値を取得して、当該計測値と時間情報とに基づいて、空気中を浮遊するウイルスの濃度の経時的変化を算出する機能を有していてもよい。
なお、コントローラ300は、例えば1以上の専用の電子回路によって実現される。1以上の専用の電子回路は、1個のチップ上に集積されてもよいし、複数のチップ上に個別に形成されてもよい。また、コントローラ300は、1以上の専用の電子回路の代わりに、汎用のプロセッサ(図示せず)と、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが格納されたメモリ(図示せず)とによって実現されてもよい。この場合、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが実行されたときに、プロセッサは、コントローラ300として機能する。
[センサ基板の構成]
ここで、センサセル202のセンサ基板202bの詳細な構成について、図3A及び図3Bを参照しながら具体的に説明する。
図3Aは、実施の形態に係る検出領域202cを有するセンサ基板202bの斜視図である。具体的には、図3Bは、図3AのIIIB−IIIB線における、実施の形態に係る金属微細構造体2021の拡大断面図である。
図3Aに示すように、検出領域202cには、表面増強蛍光法を利用する場合には、表面プラズモン共鳴を発生するためのナノスケールの金属微細構造体2021が設けられている。本実施の形態では、図3Bに示すように、金属微細構造体2021は、オレフィン等の樹脂基板2022及び金属膜2023を備える。
樹脂基板2022は、ナノインプリントもしくは射出成形により形成されたナノ構造を有する。ナノ構造は、例えば、ピラー状である。本実施の形態では、樹脂基板2022は、樹脂基板2022の主面(Z軸プラス側の面)に複数のピラー2022aを有する。この複数のピラー2022aピラー2022aの形状は、特に限定されないが、円柱形状であることが望ましい。ピラー2022aが円柱形状である場合、ピラー2022aの高さt4とピラー2022a間のピッチd3のサイズの比率は、1:1〜1:3であることが望ましい。本実施の形態では、励起光の波長及び蛍光の波長が750nm〜850nmである。したがって、例えばピラー高さt4は200nmであり、ピラー直径d2は230nmであり、ピラー間のピッチd3は460nmであることが望ましい。なお、樹脂基板2022のナノ構造は、これに限定されるものではなく、複数のピラー2022aの代わりに、複数の半球体を含んでいてもよい。なお、樹脂基板2022は、基板の一例である。また、基板は、樹脂基板に限定されず、例えば、セラミック基板、ガラス基板、シリコンウェハ等の半導体基板などであってもよい。
金属膜2023は、樹脂基板2022に金属を成膜することで作製される。金属膜2023は、樹脂基板2022上に成膜された第一の金属膜2024と、第一の金属膜2024上に成膜された第二の金属膜2025とを有する。第二の金属膜2025は、第一の金属膜2024より表面粗さが小さい金属膜である。本開示は、金属膜2023の形成方法に特徴を有する。金属膜2023の形成方法は、後述する。
第一の金属膜2024の厚みt1は、ピラー2022aのZ軸プラス側の端部から第一の金属膜2024のZ軸プラス側の端部までの距離を示す。第二の金属膜の厚みt2は、第一の金属膜2024のZ軸プラス側の端部から第二の金属膜2025のZ軸プラス側の端部までの距離を示す。金属膜2023の厚みt3は、第一の金属膜2024の厚みt1と第二の金属膜2025の厚みt2とを合計した厚みである。厚みt1〜t3は、Z軸に平行な方向の長さである。
金属膜2023には、樹脂基板2022の複数のピラー2022aに対応する複数の突起部2023aが形成されている。励起光の波長及び蛍光の波長が750nm〜850nmである場合は、金属膜2023の膜厚は、約400nmであることが望ましい。また、複数の突起部2023aにおいて隣接する突起部2023aの間の間隔d1は、被検出物質が入ることができる長さであるとよい。隙間は、第一のVHH抗体の長さと被検出物質の長さと第二のVHH抗体の長さとの総和の100%〜200%であることが望ましい。なお、ピラー2022aは、樹脂基板2022に形成された突起部(微細突起)の一例である。また、間隔d1は、突起部2023aの間の間隔の最小値を示す。
樹脂基板2022に金属膜2023を成膜することで、センサ基板202b(プラズモン基板)が作製される。樹脂基板2022上に形成する金属膜2023の材料は、特に限定される必要はなく、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、若しくはアルミニウム(Al)、又はこれらのいずれかの金属を主成分として含む合金であってもよい。本実施の形態では、金を用いている。
次に、センサ基板202b(ナノ構造を有する樹脂基板2022+金属膜2023)へのSAM形成に関して述べる。
金属膜2023上には、自己組織化膜(以下、SAM膜と呼ぶ)が形成されており、第一のVHH抗体は、このSAM膜を介して金属微細構造体2021に固定される。つまり、SAM膜は固定化抗体(例えば、第一のVHH抗体2027)をセンサ基板202b上に固定化するためのリンカー材料として機能する。具体的には、チオール結合により金属膜2023上にSAM膜が形成される。図4は、実施の形態に係る金属微細構造体2021上のSAM膜2026を示す図である。
図4に示すように、金属微細構造体2021の表面には、リンカー分子2028及び非リンカー分子2029を含むSAM膜2026が形成されている。第一のVHH抗体2027は、リンカー分子2028を介して金属微細構造体2021に固定される。
サンプル液体2031中にウイルス(被検出物質)2032が含まれる場合、そのウイルス2032は、金属微細構造体2021に固定された第一のVHH抗体2027に結合する。ウイルス2032には、蛍光物質2034で標識された第二のVHH抗体2033も結合されている。
このような金属微細構造体2021に励起光が照射されると、蛍光物質2034から蛍光が発せられ、金属微細構造体2021に生じた表面プラズモンによって当該蛍光が増強される。つまり、ウイルスの量に対応する表面増強蛍光が発せられる。
リンカー分子2028は、一方の末端にチオール基20261を、他方の末端にカルボキシル基20264を有する。チオール基20261は、金属微細構造体2021の表面と結合する。カルボキシル基20264は、第一のVHH抗体2027と結合する。
さらに、SAM膜材料は、アルキル鎖が10以上であることが望ましい。例えば、リンカー分子2028は、チオール基20261とカルボキシル基20264との間に、炭素数が10以上のアルキル鎖20262を含むとよい。また、SAM膜材料は、エチレングリコール(EG)を有することが望ましい。例えば、リンカー分子2028は、チオール基20261とカルボキシル基20264との間に、ポリエチレングリコール鎖20263を含むとよい。例えば、アルキル鎖20262は、チオール基20261及びポリエチレングリコール鎖20263に接続されており、ポリエチレングリコール鎖20263は、アルキル鎖20262及びカルボキシル基20264に接続されている。
非リンカー分子2029は、一方の末端にチオール基20271を、他方の末端にヒドロキシル基20274を有する。チオール基20271は、金属微細構造体2021の表面と結合する。ヒドロキシル基20274は、親水性であるため、第二のVHH抗体2033及び蛍光物質2034(発光体とも記載する)の非特異吸着を抑制する。
さらに、非リンカー分子2029は、チオール基20271とヒドロキシル基20274との間に、炭素数が10以上のアルキル鎖20272と、ポリエチレングリコール鎖20273とを含む。具体的には、アルキル鎖20272は、チオール基20271及びポリエチレングリコール鎖20273に接続されており、ポリエチレングリコール鎖20273は、アルキル鎖20272及びヒドロキシル基20274に接続されている。
上記のように、SAM膜2026末端は、カルボキシル基20264であるものと、ヒドロキシル基20274であるものとの2種類の混合であることが望ましい。その混合比は、カルボキシル基20264よりヒドロキシル基20274が多いのが望ましい。
[成膜方法によるセンサ基板の特性]
ここで、成膜方法によるセンサ基板202bの性能について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、成膜方法によるセンサ基板202bの仕上がりを比較した図である。図5のAu(金属膜)の膜厚分布は、横軸が成膜時の基板の中心を基準(0nm)としたときの距離を示しており、縦軸はその位置におけるAuの膜厚を示している。図6は、成膜方法の違いによるセンサ基板202bの反射特性を示す図である。
蒸着法(例えば電子ビーム蒸着法)では、蒸着源とサンプル(基板)との間の距離がスパッタ法(スパッタリング法)に比べ長い。そのため、基板のどのエリアにおいても均一な金属ナノ構造を形成することができる。これにより、基板面内のプラズモン特性を均一化することができ、基板上に複数のセンサセルを配置した場合でも検量線が同一になるため、信頼性の高いセンサデバイスを実現することができる。しかし、図5のSEM像に示すように、蒸着法(電子ビーム蒸着法)による金属ナノ構造は基板面内のプラズモン特性を均一化することができるメリットがあるものの、金属膜表面に微小な凹凸を有するため、プラズモン特性、非特異吸着によるノイズの点では望ましくなく、電子ビーム蒸着法のみで作製したセンサ基板を用いたセンサデバイスでは高感度にウイルスを検出することができない。
一方、スパッタ法で形成された金属膜20232は、金属膜20231に比べ表面が平滑に形成されている。そのため、金属膜20232を平滑にする、つまり非特異吸着を抑制する観点から、金属膜の成膜には、スパッタ法が用いられるとよい。詳細は、以下に示す。
ウイルスセンサにおいて、高感度化の重要なポイントは非特異吸着を低減することである。非特異吸着とは、第二のVHH抗体2033および蛍光物質2034が、金属膜2023上、SAM膜2026上、もしくは、第一のVHH抗体2027上に付着することを指す。非特異吸着は、被検出物質の有り無しにかかわらず発光してしまうため、センサのノイズ要因となり、センサのS/Nの低下を招き、センサの高感度化を阻害する要因となる。
また、VHH抗体は、従来の抗体(例えばIgG抗体)に比べ小型であり、従来の抗体より非常に非特異吸着が顕著となり、VHH抗体を発光増強蛍光で用いた際には従来の抗体に比べてウイルスセンサの感度が低下する。そのため、VHH抗体の特徴の小型であることを活かし、ウイルスセンサを高感度化するためには非特異吸着をこれまで以上に対策することが必要である。
スパッタリング法で金属膜2023を成膜することで金属膜2023表面が平滑になることで非特異吸着を低減できる。具体的には、金属膜20232表面が平滑であるため、標識化抗体、及び、発光体が付着しても洗浄により除去することが可能となる。一方、例えば電子ビーム蒸着法により成膜した金属膜20231表面は凹凸を有しており、微視的には隙間を有する。この隙間に標識化抗体、及び、発光体が入り込み付着すると、洗浄しても除去することは困難である。また金属膜表面の平滑性はSAMにも影響を与える。非特異吸着は、SAM膜2026の疎水面(以降において、SAM疎水面とも記載する)への疎水性相互作用により起こる。Assayは水溶性溶媒中で行うため、緻密なSAM膜2026を形成できればSAM疎水面はSAM中に内包されるため非特異吸着を抑制できる。金属膜表面に凹凸がある場合、金属膜上へのSAMはランダムな方向を向いてしまうため、SAM疎水面が外部に露出することで非特異吸着が増大する。一方、スパッタリング法により形成した金属膜は表面が平滑であるため、緻密なSAM膜2026を形成することが可能となりSAM疎水面が内包されることで非特異吸着が低減できる。
図5の金属膜の膜厚分布に示すように、基板全体における金属膜の膜厚のバラつきは、スパッタリング法より蒸着法の方が小さい。金属膜の膜厚は、プラズモン特性に影響を与えるため、基板面内で均一である方がよい。つまり、離散的に配置された金属微細構造体2021の面内におけるプラズモン特性を安定化させる観点から、金属膜の成膜には、蒸着法が用いられるとよい。
図6に示すように、スパッタリング法(図中のスパッタリング)により金属膜2023を成膜した基板の反射特性は、電子ビーム蒸着法(図中のEB)により金属膜2023を成膜した基板を用いた場合に比べて、極めて急峻な吸収ピーク(共鳴ピーク)を有している。スパッタリング法により成膜された金属膜20232の表面は、電子ビーム蒸着法により成膜された金属膜20231に比べて、平滑である。そのため電子ビーム蒸着法では複数のプラズモン共鳴モードを有していたのに対し、スパッタリング法ではより単一モードに近いプラズモン共鳴を有するために生じるものである。これにより、スパッタリング法により成膜された金属膜20232を用いることで、プラズモン共鳴による発光増強度を増大することができ、ウイルスセンサを高感度化することができる。
上記のように、従来の方法では、非特異吸着を抑制しつつ、プラズモン特性を安定化させるセンサ基板は作製できていなかった。そこで、本開示では、以下の製造方法により、プラズモン特性を安定化(均一化)しつつ、非特異吸着を抑制することができるセンサ基板202bを作製する。すなわち、面内のプラズモン特性を均一化することができ、かつ低濃度の被検出物質を高感度に検出することができるセンサ基板202bを作製する。
[センサ基板の製造方法]
本実施の形態に係るセンサ基板202bであって、励起光が照射されることによって表面プラズモンを生じさせる金属微細構造体2021を得るセンサ基板202bの製造方法について、図7を参照しながら説明する。図7は、実施の形態に係るセンサ基板202bの製造方法を示すフローチャートである。本実施の形態に係るセンサ基板202bの製造方法の成膜工程は、2段階の成膜工程を経て作製される。第1ステップでは電子ビーム蒸着法、第2ステップではスパッタリング法で成膜されることが望ましい。なお、この方法に限定されることはない。第1ステップの成膜方法は第2の成膜方法に比べ、金属材料の堆積方向が基板の平面に垂直な方向(図3Bでは、Z軸方向)に大きくなる方法であればよい。また、第2ステップの成膜方法は第1ステップの成膜方法に比べ、金属材料の堆積方向が横方向(図3Bでは、Y軸方向)に大きくなる方法であればよい。
図7に示すように、まず主面に複数のピラー2022aが形成された樹脂基板2022を準備する(S10)。ステップS10は、準備工程の一例である。そして、樹脂基板2022の主面上に金属膜2023を形成することで金属微細構造体2021を作製する成膜工程(S20及びS30)が行われる。本実施の形態では、金属膜2023の成膜方法には、成膜原理が異なる2つの成膜方法が用いられる。
具体的には、成膜工程では、まず主面上に蒸着法により第一の金属膜2024を形成する(S20)。これにより、樹脂基板2022の主面上に第二の金属膜2025より表面の凹凸は大きいが、樹脂基板2022の面内で均一な厚みの第一の金属膜2024が形成される。蒸着法は、電子ビーム(EB)蒸着法、抵抗加熱式蒸着法、高周波誘導式蒸着法、レーザ式蒸着法などにより行うことが可能であるが、より一般的に使用されている電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、及び、抵抗加熱式蒸着法が用いられるとよい。本実施の形態では、電子ビーム蒸着法により、第一の金属膜2024が形成される。なお、ステップS20は、第一の成膜工程の一例である。
上記のように、電子ビーム蒸着を含む蒸着法では、第一の金属膜2024の表面に微小な凹凸が形成されるため、非特異吸着によるノイズの除去、及び、プラズモン特性の向上が難しい。そこで、本実施の形態では、第2ステップの成膜方法として、スパッタリング法を用いる。具体的には、ステップS20の後に、スパッタリング法により第二の金属膜2025を形成する(S30)。つまり、ステップS30では、第一の金属膜2024の上にスパッタ法により第二の金属膜2025を積層する。これにより、第一の金属膜2024の表面の凹凸を第二の金属膜2025が吸収することがきる。つまり、第二の金属膜2025が形成された金属膜2023の表面は、平滑である。スパッタリング法は、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、及び、イオンビームスパッタリング法などにより行うことが可能であるが、より一般的に使用されているDCスパッタリング法、及び、RFスパッタリング法が用いられるとよい。なお、ステップS30は、第二の成膜工程の一例である。
この際、スパッタにより形成される第二の金属膜2025の膜厚(厚みt2)は、電子ビーム蒸着法により形成される第一の金属膜2024の膜厚(厚みt1)比べて薄くすることで、電子ビーム蒸着法で形成した金属ナノ構造の基板面内均一性を確保したまま、金属ナノ構造の表面平滑性を高めることが可能となる。これにより、プラズモン特性が基板面内で安定し、高い発光増強度を有し、かつ非特異吸着を低減できるセンサ基板202bを製造することができる。この基板を用いたセンサデバイス201では、非特異吸着が低いためノイズ信号が小さく、かつ発光増強度が高いため微小な発光を検出することができるので、高いS/Nを確保することができ検出感度を向上できる。また、金属膜2023の膜厚は、突起部2023aの間隙に入る被検出物質の割合を増やす観点から、ピラー2022aの高さt4以上であるとよい。
電子ビーム蒸着法の成膜条件は、成膜前の到達真空度が1×10−6〜1×10−4Pa、成膜中の真空度が1×10−5〜1×10−3Pa、成膜時の電子ビーム電源が1〜10KV、10〜1000mA、基板回転速度が0.1〜10rpm、基板温度コントロールなしであるのが好ましい。基板温度コントロールを行わない場合、例えば、成膜前の基板温度は21.0℃であり、成膜後の基板温度は24.7℃である。つまり、本実施の形態に係る電子ビーム蒸着法では、成膜前〜成膜後にかけて、意図的に基板を加熱しない。例えば、第一の成膜工程は、20〜30℃の環境下で行われる。20℃〜30℃の環境下とは、例えば、雰囲気温度が20℃〜30℃であってもよいし、基板の温度が20〜30℃であってもよい。
また、成膜速度は、速いと表面の凹凸が大きくなり、遅いと成膜に時間がかかる。そのた、成膜速度は、例えば、1〜5Å/secであるとよい。また、本実施の形態では、電子ビーム蒸着時に成膜条件の変更は行わない。電子ビーム蒸着法は、例えば、上記の項目が一定の条件で行われる。
スパッタリング法の成膜条件は、成膜前の到達真空度が1×10−5〜1×10−3Pa、成膜中の真空度が0.01〜1.0Pa、Arガス流量が1〜100sccm、成膜時のターゲット電源が1〜300W、基板回転速度が1〜100rpm、基板温度コントロールなしであるのが好ましい。つまり、本実施の形態に係るスパッタリング法では、成膜前〜成膜後にかけて、意図的に基板を加熱しない。例えば、第二の成膜工程は、20〜30℃の環境下で行われる。また、成膜速度は、速いと表面の凹凸が大きくなり、遅いと成膜に時間がかかる。そのため、成膜速度は、例えば、1〜5Å/secであるとよい。また、本実施の形態では、成膜時に成膜条件の変更は行わない。スパッタリング法は、例えば、上記の項目が一定の条件で行われる。
上記により、図3Bに示す金属微細構造体2021を有するセンサ基板202bが形成される。なお、上記の製造方法は、離間して配置された金属微細構造体の距離が離れている、つまりセンサ基板が大面積であるときに特に有効である。大面積でプラズモン共鳴による発光増強が均一でかつ非特異吸着によるノイズを低減したセンサ基板(表面プラズモンセンサ基板)を得ることができ、当該基板をセンサ(例えば、検出部)に用いることでセンサの信頼性とセンサの検出感度が向上する。
(実施例)
以下、実施例を挙げて本開示をより具体的に説明するが、これら実施例は、本開示を何ら制限するものではない。以下に、図8〜図15を参照しながら説明する。
本実施例では、金属微細構造体の樹脂基板として、複数のピラーを有するナノ構造がナノインプリントにより形成された樹脂基板を用いた。ピラー高さt4は200nm、ピラー直径d2は230nm、ピラー間のピッチd3は460nmであった。この樹脂基板に、電子ビーム蒸着法により例えば、300nm、スパッタリング法により例えば、200nm、金属膜を成膜することで、金属微細構造体を作製した。なお、膜厚は、上記に限定されず、複数種類の膜厚のサンプルを作製した。光源は、785nmの波長を有する励起を金属微細構造体に照射し、蛍光物質から800nmの波長を有する蛍光が発光された。前述した方法でセンサ基板(プラズモン基板)を作製することで、600nm〜850nmに急峻なプラズモン共鳴による吸収ピークが見られた。
そのセンサ基板をSAM材料に浸漬する。SAM材料は、カルボキシル基を末端に持つCarboxy−EG6−undecanethiolと、ヒドロキシル基を末端に持つHydroxy−EG3−undecanethiolをそれぞれ1mM(10−3mol/L)になるようにエタノールで希釈し混合する。その後、エタノールで5倍希釈することでSAM溶液を作製した。そのSAM溶液中にプラズモン基板(金属微細構造体)を40℃のインキュベータ中で一晩浸漬し、金属微細構造体上にSAM膜を形成する。
その後、SAMのカルボキシル基末端と、VHHのNH末端を、EDC−NHS反応によりペプチド結合させ、第一のVHH抗体をSAMに固定化する。
ここに被検出物質であるインフルエンザウィルスの核タンパク(NP)を固定化し、さらに有機蛍光色素(発光波長800nm)を標識化した第二のVHH抗体をNPと結合させることでサンドイッチAssayを行った。サンドイッチAssayを行ったサンプルに、785nmのレーザ光を照射し、有機蛍光色素を励起し、その蛍光である800nmの発光の光検出を行った。
図8は、実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板のSEM像である。具体的には、第一の金属膜の厚みを200nm(図中のEB200)及び300nm(図中のEB300)の2条件、第二の金属膜の厚みを0nm(図中のSP0)、100nm(図中のSP100)、200nm(図中のSP200)の3条件で成膜したときのSEM像を示す。
図8に示すように、通常電子ビーム蒸着法のみでは金属表面に凹凸ができてしまう(図中のSP0を参照)が、スパッタリング法で得られる平滑膜を付与することで、全体的に表面凹凸の少ない構造が形成できている(図中のSP100及び200参照)。このピラー構造でのプラズモン共鳴による電場増強は、金属ナノ構造間に形成される隙間(ナノギャップ)の大きさで決定される。ナノギャップをいかに制御するかがセンサのS/N比向上に向けて重要である。本実施例では、間隔d1は、10nmである。なお、間隔d1は、例えば10nm以上であってもよい。また、間隔d1は、表面プラズモンによる電場増強効果を向上させる観点から、40nm以下であるとよい。
また、第一の金属膜の厚みは200nm及び300nmであっても第二の金属膜の厚みを200nmとすることで、表面を平滑にすることができる。また、第二の金属膜の厚みが200nmであっても、隣り合う突起部同士が接触していない。また、第二の金属膜の厚みは100nmであれば、第一の金属膜の表面の凹凸が吸収しきれておらず、凹凸が残る。
図9は、実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板202bのAu膜厚分布を示す図である。第一の金属膜の厚みが300nm、第二の金属膜の厚みが200nmで成膜したセンサ基板のAu膜厚分布を示す。
図9に示すように、基板全体における金属膜の膜厚のバラつきは、スパッタリング法のみで金属膜を形成した場合に比べ、大幅に減少している(図5参照)。具体的には、実施例に係るセンサ基板の膜厚のバラつきは、14nmであり、図5に示す電子ビーム蒸着法のみのときに近い結果となっている。スパッタリング法のみで金属膜を成膜する場合に比べ、電子ビーム蒸着法で第二の金属膜の下地となる第一の金属膜を形成しておくことで、基板面内の金属膜の膜厚分布の均一性が向上する。
上記より、電子ビーム蒸着法により第一の金属膜を形成し、当該第一の金属膜上にスパッタリング法により第二の金属膜を形成することで、基板面内の金属膜の膜厚分布の低下を抑制しつつ、金属膜の表面の凹凸を低減することができる。つまり、基板面内におけるプラズモン特性のバラつきを抑制しつつ、非特異吸着を抑制することができる。なお、電子ビーム蒸着法により形成される第一の金属膜の表面の凹凸をより吸収する観点から、第二の金属膜の膜厚は、200nm以上であるとよい。また、基板面内におけるプラズモン特性のバラつきを抑制する観点から、第一の金属膜の厚みは、第二の金属膜の厚み以上であるとよい。すなわち、ステップS30では、膜厚が200nm以上であり、かつ第一の金属膜の膜厚以下である第二の金属膜が形成されるとよい。
図10は、実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板202bにおいて、第一及び第二の金属膜の厚みがそれぞれ300nmであるときのSEM像である。つまり、金属膜の厚みが600nmであるときのSEM像である。
図10に示すように、金属膜の突起部の間隔が密に詰まっており、例えば、破線領域内において、金属膜の一部がつながりかけている。よって、これ以上金属膜を積層すると間隔が完全に埋まってしまい、プラズモン特性が低下する可能性がある。そこで、金属膜の厚み(図3Bに示すt3)は、600nm以下であるとよい。第一の金属膜の厚みが第二の金属膜の厚み以上である場合、第二の金属膜の厚み(図1に示すt2)は、300nm以下であるとよい。
ここで、金属微細構造体の断面構造について図11A〜図11Cを参照しながら説明する。
図11Aは、実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板の断面SEM像である。具体的には、第一の金属膜の厚みは300nmであり、第二の金属膜の厚みは100nmであるセンサ基板の断面SEM像である。図11Bは、比較例1に係るセンサ基板の断面SEM像である。具体的には、スパッタリング法のみで400nmの金属膜を形成したセンサ基板の断面SEM像である。図11Cは、比較例2に係るセンサ基板の断面SEM像である。具体的には、電子ビーム蒸着法のみで300nmの金属膜を形成したセンサ基板の断面SEM像である。
図11Aに示すように、本実施例に係るセンサ基板の隣り合う突起部2023aは、間隔d1の隙間をあけて形成されている。間隔d1とは、蛍光物質で標識された標識化抗体を含むサンプル液体が浸入することが可能な間隔である。間隔d1とは、例えば、10nmである。つまり、各ピラー構造間にナノギャップが形成されていることが分かる。
図11Bに示すように、スパッタリング法のみで作製した場合、基板面方向に金属が成長するため、ピラー上で球状に成長する。さらにスパッタリング法で成膜すると、ナノギャップ(図中の間隔d4)が小さくなり、狭くなった球の側面の成膜が抑制され、断面だと楕円状に金属が成長しているように見える。この場合、ナノギャップの深さ方向にNPや標識VHHを含む液が浸透しづらいため、ギャップ上部のみでバイオ反応が起きることで十分に固定化されず、センサの感度が低下する可能性がある。
図11Cに示すように、電子ビーム蒸着法のみで作製した場合、基板面に垂直な方向へ金属が成長するため、膜厚が大きくなるとナノギャップが埋まってしまう。
図11B及び図11Cのように、間隔d4及びd5が最適でない場合、良好なプラズモン特性が得られない。一方、本開示により作製したセンサ基板ではナノギャップが深さ方向にも形成されているため、ギャップ上部だけでなく電場増強領域に蛍光体を保持できる。
また、ピラー2022aの間隔は、突起部2023aの大きさ(厚み)に影響を与える。ピラー2022a間のピッチd3は、例えば、460nmである。このとき、図11B及び図11Cでは、所望の間隔が得られない。一方、実施の形態に係るセンサ基板であれば、ピッチd3が460nmのときに、所望の間隔d1が得られる。
次に、反射特性について図12A〜図12Cを参照しながら説明する。
図12Aは、実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板において第一の金属膜の厚みが200nmである場合の反射特性を示す図である。図12Bは、実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板において第一の金属膜の厚みが300nmである場合の反射特性を示す図である。
図12A及び図12Bに示すように、反射特性は、第一の金属膜の厚みが200nm及び300nmに関わらず、第二の金属膜の厚みが100nmあることで、ブロードな構造が消失しており、第二の金属膜の厚みが200nmあることで、600nm付近の吸収ピークを有している。これにより、スパッタリング法で形成される第二の金属膜の厚みを厚くすることで、プラズモン特性を向上させることができる。
図12Cは、実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板において第一及び第二の金属膜の厚みが300nmである場合の反射特性を示す図である。
図12B及び図12Cから、第二の金属膜の膜厚が200nmより厚くなると、吸収ピークの位置が600nmから高波長側にシフトすることがわかる。つまり、吸収ピークを有した中で、吸収ピークの波長帯を第二の金属膜の厚みにより制御することができる。
上記より、プラズモン特性を向上させる観点から、第二の金属膜の膜厚は、200nm以上であるとよい。
ここで、成膜方法の違いによるノイズレベルについて、図13を参照しながら説明する。
図13は、成膜方法の違いによるセンサ基板のノイズレベルの評価結果を示す図である。図13に示す蒸着法は、蒸着法のみで金属膜を形成したセンサ基板を用いた結果であり、スパッタリング法は、スパッタリング法のみで金属膜を形成したセンサ基板を用いた結果である。つまり、図13は、蒸着法とスパッタリング法それぞれで作製したセンサ基板のノイズレベル評価結果である。なお、評価はウイルスを含まず、標識化抗体を含むサンプル液体を用いた結果である。縦軸が高いほど、ノイズレベルが高いことを示す。
図13に示すように、蒸着法で作製したセンサ基板の方がスパッタリング法で作製したセンサ基板に比べ、ノイズレベルが高いことがわかる。これは金属ナノ構造表面の平滑性に起因するものであり、蛍光標識されたVHH抗体が凹凸の激しいセンサ基板へ吸着してしまうからであると考えられる。つまり、抗体の非特異的な吸着を抑制するには、スパッタリング法で得られる平滑膜が必要であり、本開示の第2成膜ステップにてスパッタリング法を用いている所以である。つまり、ノイズレベルは、金属膜の表面の表面粗さに起因する。表面粗さが大きくなると非特異吸着が増えるので、ノイズレベルは大きくなる。
電子ビーム蒸着法により200nmの厚みの金属膜を形成した場合の表面粗さは、例えば1.39nmである。また、スパッタリング法により200nmの厚みの金属膜を形成した場合の表面粗さは、例えば、1.03nmである。ここで、電子ビーム蒸着法により200nmの厚みの第一の金属膜を形成し、スパッタリング法により200nmの厚みの第二の金属膜を形成した場合の表面粗さは、例えば、1.44nmである。ここで、各成膜方法において形成される金属膜の厚みを400nmに換算すると、電子ビーム+スパッタのときは、1.44nm(本開示のセンサ基板)、スパッタのみのときは、2.06nm(1.03nm×2)、電子ビーム蒸着法のみのときは、2.78nm(1.39nm×2)となる。
上記より、実施の形態に係る製造方法で作製されたセンサ基板であれば、スパッタリング法による金属膜と同等かそれ以上に表面粗さが小さくなる。つまり、実施の形態に係る製造方法で作製したセンサ基板であれば、スパッタリング法のみであった場合と同等かそれ以下のノイズレベルになると考えられる。言い換えると、実施の形態に係る製造方法で作製されたセンサ基板であれば、スパッタリング法のみであった場合と同等かそれ以下に非特異吸着を減らすことができる。
なお、表面粗さとは、平均自乗根粗さRMS(Root Mean Square)である。また、表面粗さは、原子間力顕微鏡を用いて計測している。
ここで、成膜方法の順番について、図14及び図15について説明する。
図14は、比較例3に係るセンサ基板の反射特性を比較した図である。図15は、比較例3に係るセンサ基板のSEM像である。比較例3に係るセンサ基板は、図7に示すフローチャートにおいて、ステップS10、S30、S20の順に金属膜を形成することで製造される。つまり、スパッタリング法により金属膜を成膜した後、その上に蒸着法により金属膜が積層される。また、図14及び図15は、スパッタリング法により400nmの厚みの金属膜を形成した後、蒸着法により100nmの厚みの金属膜を形成したセンサ基板の結果を示す。
図14に示すように、反射特性は、図12Aと比べ吸収ピークの下がり度合いが小さくなっており、また650nm付近にガタつき(図中の矢印を参照)を有する。これは、蒸着法によるブロードな反射特性(図6のEB参照)に近づき始めていることを示している。また、図15に示すように、表面形状は、少し凹凸が形成されているように見える。
上記より、スパッタリング法の後に蒸着を行ったセンサ基板は、金属膜の表面に凹凸があり、非特異吸着が減らない可能性がある。また、反射特性も蒸着法の反射特性に近づきつつあるので、好ましくない。よって、成膜方法の順番は、蒸着法による成膜を行った後に、スパッタリング法を行うとよい。これにより、蒸着法及びスパッタリング法の両方の利点を活かすことができる。具体的には、蒸着法の利点である基板面内における金属膜の厚みの均一性、及び、スパッタリング法の利点である金属膜の表面の平滑性を活かすことができる。
[効果等]
以上のように、実施の形態に係るセンサ基板の製造方法は、励起光が照射されることによって表面プラズモンを生じさせる金属微細構造体2021を備えるセンサ基板202bの製造方法であって、主面上に複数のピラー2022a(突起部の一例)を有する基板を準備する準備工程(S10)と、主面上に金属膜2023を形成することで金属微細構造体2021を作製する成膜工程(S20及びS30)とを含む。準備工程では、主面上に複数のピラー2022aを有する基板を準備する。そして、成膜工程は、主面上に蒸着法により第一の金属膜2024を形成する第一の成膜工程(S20)と、第一の金属膜2024上にスパッタ法により第二の金属膜2025を形成する第二の成膜工程(S30)とを含む。
これにより、センサ基板202bは、成膜原理が異なる2つの成膜方法により作製される。第一の製造工程では、基板の主面上に蒸着法で成膜することで、基板面内において厚みが均一な第一の金属膜2024を形成することができる。つまり、センサ基板202b面内のプラズモン特性を均一化することができる。また、第二の成膜工程では、第一の金属膜2024上にスパッタリング法により第二の金属膜2025を形成することで、表面が平滑な金属膜2023を形成することができる。つまり、表面の凹凸による非特異吸着を抑制することができる。よって、本開示の一態様に係るセンサ基板の製造方法によれば、センサ基板202b内のプラズモン特性を均一化することができ、かつ低濃度の被検出物質を高感度に検出することができる。
また、第二の金属膜2025は、膜厚(厚みt2)が200nm以上であり、かつ第一の金属膜2024の膜厚以下である。
これにより、金属膜2023表面がさらに平滑になり、より単一モードに近いプラズモン共鳴を生じさせることができる。つまり、プラズモン共鳴による発光増強度を増大することができる。よって、低濃度の被検出物質をさらに高感度に検出することができるセンサ基板を実現することができる。
また、蒸着法は、電子ビーム蒸着法または抵抗加熱式蒸着法である。また、スパッタ法は、RFマグネトロンスパッタ法またはDCマグネトロンスパッタ法である。
これにより、一般的に使用されている成膜法により、第一の金属膜2024及び第二の金属膜2025を形成することができる。よって、センサ基板202bの製造方法の汎用性を向上させることができる。
また、第一の成膜工程及び第二の成膜工程での成膜速度は、1Å/sec以上5Å/sec以下である。
これにより、成膜時間が長くなることを抑制しつつ、平滑な表面を有する金属膜2023を作製することができる。
また、基板は、樹脂で構成されており、第一の成膜工程及び第二の成膜工程は、20℃以上30℃以下の環境下で行われる。
これにより、基板が樹脂で構成されており成膜時に基板を加熱できない場合であっても、基板内のプラズモン特性を均一化することができ、かつ低濃度の被検出物質を高感度に検出することができるセンサ基板202bを作製することができる。
また、金属膜2023の膜厚(厚みt3)は、ピラー2022aの高さt4以上である。
これにより、被検出物質が入る隙間を適切な幅及び深さに調整することができる。つまり、間隙に入る被検出物質の割合を増やすことができる。よって、低濃度の被検出物質をさらに高感度に検出することができる。
(その他の実施の形態)
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係るセンサ基板の製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
例えば、上記実施の形態では、局在化表面プラズモン共鳴による蛍光の増強効果を利用した計測方法にセンサ基板が用いられていたが、局在化表面プラズモン共鳴スペクトルの屈折率シフトを利用した計測方法にもセンサ基板を応用できる。
また、上記実施の形態では、センサ基板の形状は、平面視において矩形状である例について説明したが、これに限定されない。例えば、図16のセンサ基板3202bのように、基板の形状は、ディスク型の基板であってもよい。センサ基板3202bは、当該センサ基板3202bの周方向3211〜3213それぞれに沿って配置された複数の計測部3202cを有し、当該計測部3202cのそれぞれに、金属微細構造体3021を有する構成であってもよい。また、センサ基板は、多角形であってもよい。
また、上記実施の形態では、固定化抗体は、金属薄膜に直接的に固定化されていたが、間接的に固定化されてもよい。例えば、固定化抗体は、リンカー(例えば、自己組織化単分子膜(SAM膜))を介して金属薄膜に固定化されてもよい。
また、上記実施の形態では、蒸着法及びスパッタリング法のそれぞれにおける成膜時に、成膜条件の変更を行わない例について説明したが、これに限定されない。
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
本開示は、例えば発光増強蛍光などを用いるセンサ基板に利用することができる。例えば、部屋に滞在している人へのウイルスの感染リスクを低減するために、部屋の空気中に浮遊するウイルス濃度を高感度に計測するためのウイルスセンサなどのセンサ基板に用いられる。
10 検出システム
100 捕集装置
101 吸引器
102 捕集液タンク
103、107、109 ポンプ
104 サイクロン
105 空気吸入口
106、108 洗浄液タンク
110 廃液タンク
111 液体流路
200 検出部
201 センサデバイス
202 センサセル
202a 流路
202b、3202b センサ基板
202c 検出領域
203 導入部
204 光源
205 ビームスプリッタ
206 レンズ
207 光検出部
300 コントローラ
2021、3021 金属微細構造体
2022 樹脂基板
2022a ピラー(突起部)
2023 金属膜
2023a 突起部
2024 第一の金属膜
2025 第二の金属膜
2026 SAM膜
2027 第一のVHH抗体
2028 リンカー分子
2029 非リンカー分子
2031 サンプル液体
2032 ウイルス(被検出物質)
2033 第二のVHH抗体
2034 蛍光物質

Claims (7)

  1. 励起光が照射されることによって表面プラズモンを生じさせる金属微細構造体を備えるセンサ基板の製造方法であって、
    主面上に複数の突起部を有する基板を準備する準備工程と、
    前記主面上に金属膜を形成することで前記金属微細構造体を作製する成膜工程とを含み、
    前記成膜工程は、
    前記主面上に蒸着法により第一の金属膜を形成する第一の成膜工程と、
    前記第一の金属膜上にスパッタ法により第二の金属膜を形成する第二の成膜工程とを含む、
    センサ基板の製造方法。
  2. 前記第二の金属膜は、膜厚が200nm以上であり、かつ前記第一の金属膜の膜厚以下である、
    請求項1に記載のセンサ基板の製造方法。
  3. 前記蒸着法は、電子ビーム蒸着法または抵抗加熱式蒸着法である、
    請求項1または2に記載のセンサ基板の製造方法。
  4. 前記スパッタ法は、RFマグネトロンスパッタ法またはDCマグネトロンスパッタ法である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ基板の製造方法。
  5. 前記第一の成膜工程及び前記第二の成膜工程での成膜速度は、1Å/sec以上5Å/sec以下である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ基板の製造方法。
  6. 前記基板は、樹脂で構成されており、
    前記第一の成膜工程及び前記第二の成膜工程は、20℃以上30℃以下の環境下で行われる、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサ基板の製造方法。
  7. 前記金属膜の膜厚は、前記突起部の高さ以上である、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のセンサ基板の製造方法。
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WO2023191076A1 (ja) * 2022-03-31 2023-10-05 シチズン時計株式会社 検出装置

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