JP2019202434A - 積層体 - Google Patents

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【課題】多種類の基材に対するアニオン変性セルロースナノファイバー分散液の塗工性を改良し、上記基材とアニオン変性セルロースナノファイバー層の密着性に優れ、その密着性を長期間維持することができる積層体を提供する。【解決手段】アニオン変性セルロールナノファイバー層と基材の間に接着層を有する積層体であって、上記接着層が、カチオン性ポリオレフィン樹脂及びカチオン性ポリウレタン樹脂を含有するエマルジョン系樹脂であることを特徴とする積層体。【選択図】なし

Description

本発明は、包装材料、コーティング剤、機能性積層材料などとして使用可能なアニオン変性セルロースナノファイバー層を備えた積層体に関する。
食品や医薬品や自動車分野をはじめとする包装、遮蔽材料分野では、内容物を保護するために、材料を透過する酸素や水蒸気や水素などの気体を遮断するガスバリア性が求められる。従来、ガスバリア性材料としては温度や湿度の影響が少ないアルミニウムやポリ塩化ビニリデンが用いられてきたが、環境汚染、労働安全衛生、省資源、非危険物化等の観点から、有機溶剤型から水性型への転換が進んでいる。近年では天然に多量に存在するバイオマス由来の水不溶性繊維を使った材料が注目されている。
例えば、セルロース繊維を使った材料として、ナノサイズの繊維径をもったセルロース繊維に関する技術が注目されている。生分解性を有することに加え、強度、弾性率、寸法安定性、耐熱性、結晶性などの物理特性にも優れているため、機能性材料への応用が期待されている。特に、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下TEMPOという。)触媒による酸化反応から得られるセルロースを分散処理して得られるアニオン変性セルロースナノファイバーは、上記セルロース系材料の性質に加え、透明性、乾燥条件下におけるガスバリア性に優れた膜を形成することが知られている(特許文献1および2)。
特開2008−1728号公報 特開2009−57552号公報
しかしながら、上記のようなアニオン変性セルロースナノファイバーを用いて形成された塗膜は、セルロースナノファイバーの剛直な性質や高い弾性率などにより基材への密着性が低いという問題がある。密着性が低いと上記膜を基材への積層材料として用いる場合に、層間の剥離が生じる。上記剥離の改善のために接着層を導入する検討もなされているが、基材の種類によっても上記膜との密着性にばらつきが生じるため、必ずしも十分ではない。
また、これらのアニオン変性セルロースナノファイバーにはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ヒドロキシル基などの極性基が導入されているものが多く、溶媒も水が用いられるため、基材に対するはじきや濡れ性、むら等の塗工性に課題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フィルム基材や遮蔽材料として多く用いられるポリプロピレン樹脂やポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等の多種類の基材に対するアニオン変性セルロースナノファイバー分散液の塗工性を改良し、上記基材とアニオン変性セルロースナノファイバー層の密着性に優れ、その密着性を長期間維持することができる積層体を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段として、本発明の一態様は、アニオン変性セルロールナノファイバー層と基材の間に接着層を備える積層体であり、上記接着層が、カチオン性ポリオレフィン樹脂、およびカチオン性ポリウレタン樹脂を含有するエマルジョン系樹脂であることを特徴とする積層体である。
また、上記アニオン変性セルロースナノファイバーのアニオン性基は、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、およびリン酸基から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーのアニオン性基の含有量が、0.05mmol/g以上5.5mmol/g以下であることが好ましい。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーのアニオン性基が、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、およびアミン塩から選択された1種または2種以上の塩型を形成していることが好ましい。
本発明によれば、環境負荷が小さい天然資源であるセルロースを有効に利用し、ガスバリア層、水蒸気バリア層など各種機能性材料被膜を形成するアニオン性セルロースナノファイバー分散液の基材に対する塗工性を改良し、基材とアニオン性セルロースナノファイバー層の密着性に優れた積層体を提供できる。特に、基材としてポリプロピレン基材、ポリエチレン基材、ポリカーボネート基材、ポリエステル基材、ポリアミド基材など極性の異なる多種の基材に対するアニオン性セルロースナノファイバー分散液の塗工性に優れ、アニオン性セルロースナノファイバー層との密着性に優れ、その密着性を長期間維持することができる積層体を提供できる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、アニオン性基を有するアニオン変性セルロースナノファイバー(以下、単にセルロースナノファイバーということもある。)に関して説明する。アニオン変性セルロースナノファイバーは、セルロースにアニオン性基が導入されたセルロースナノファイバーである。アニオン変性セルロースナノファイバーは、ナノメートルレベルの繊維径を持つセルロース繊維であり、その数平均繊維径は、1nm以上が好ましい。また、200nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましい。数平均繊維径が上記範囲内である場合、包装、遮蔽材料として用いる際に高いガスバリア特性を示す点で好ましい。
ここで、数平均繊維径は、次のようにして測定することができる。すなわち、固形分率で0.05〜0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、数平均繊維径を算出する。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、構成するセルロースがI型結晶構造を有することが好ましい。ここで、セルロースナノファイバーを構成するセルロースがI型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、表面のセルロース分子中のグルコースユニットにアニオン性基が導入されたものが挙げられる。アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びこれらの塩が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を含んでもよい。塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、ホスホニウム塩などのオニウム塩が挙げられるが、ナトリウム塩、カリウム塩を形成している場合、高いガスバリア特性を示す点でより好ましい。
上記アニオン性基は、塩型のアニオン性基を含むことが好ましい。すなわち、アニオン性基には、上記のように、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、およびリン酸基などの酸型と、カルボキシル塩基、スルホン酸塩基、硫酸塩塩基、およびリン酸基などの塩型があるが、好ましい実施形態としては、塩型のアニオン性基を含むことであり、塩型のアニオン性基単独でもよく、塩型のアニオン性基と酸型のアニオン性基が混在してもよい。塩型のアニオン性基を含むことにより、後述するように製膜時にセルロースナノファイバーを均一に配置させて、粗密の少ない膜が得られ、ガスバリア性を高めることができる。塩型のアニオン性基と酸型のアニオン性基の比率は、全アニオン性基に対する塩型のアニオン性基の割合(モル比)として、10%以上100%以下である事がセルロースナノファイバーを均一に分散できる点で好ましい。
一実施形態において、アニオン性基としてカルボン酸基又はその塩を有するアニオン変性セルロースナノファイバーとしては、例えば、セルロースを構成するグルコースユニットの水酸基を酸化してなる酸化セルロース(A)、及びセルロースを構成するグルコースユニットの水酸基をカルボキシメチル化してなるカルボキシメチル化セルロース(B)などが挙げられる。
酸化セルロース(A)としては、例えば、グルコースユニットの6位の水酸基が選択的に酸化されたものであることが好ましい。酸化セルロース(A)がグルコースユニット上の6位の水酸基が選択的に酸化されたものであることは、例えば、13C−NMRチャートにより確認することができる。なお、酸化セルロース(A)は、カルボン酸基(COOH)及び/又はカルボン酸塩基(COOX、ここでXはカルボン酸と塩を形成する陽イオン)とともに、アルデヒド基及び/又はケトン基を有してもよいが、好ましくはアルデヒド基及び/又はケトン基を実質的に有しないことである。
酸化セルロース(A)は、例えば、(1)酸化反応工程、(2)還元工程、(3)精製工程、(4)分散工程(微細化処理工程)等により製造することができ、具体的には以下の各工程により製造することが好ましい。
(1)酸化反応工程
天然セルロースとN−オキシル化合物とを水(分散媒)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN−オキシル化合物を酸化する物質のことである。
天然セルロースは、植物,動物,バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロースを意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース(BC)、ホヤから単離されるセルロース、海草から単離されるセルロース等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプが好ましい。
N−オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物があげられる。N−オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4−アセトアミド−TEMPOが好ましい。N−オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、例えば0.1〜4mmol/Lの範囲で反応水溶液に添加してもよい。
共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合、反応速度の点から、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが好ましい。
酸化反応における反応水溶液のpHは約8〜11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4〜40℃において任意であり、特に温度の制御は必要としない。所望のカルボキシル基量等を得るためには、共酸化剤の添加量と反応時間により、酸化の程度を制御する。通常、反応時間は約5〜120分、長くとも240分以内に完了する。
(2)還元工程
酸化セルロース(A)は、上記酸化反応後に、さらに還元反応を行うことが好ましい。これにより、酸化反応により形成されたアルデヒド基およびケトン基の一部ないし全部が還元され、水酸基に戻すことができる。具体的には、酸化反応後の微細酸化セルロースを精製水に分散し、水分散体のpHを約10に調整し、各種還元剤により還元反応を行う。還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であり、例えば、LiBH、NaBHCN、NaBH等が挙げられる。
還元剤の量は、微細酸化セルロースを基準として、0.1〜4質量%の範囲が好ましい。反応は、室温または室温より若干高い温度で、通常、10分〜10時間、好ましくは30分〜2時間行う。反応終了後、各種の酸により反応混合物のpHを約2に調整し、精製水をふりかけながら遠心分離機で固液分離を行い、ケーキ状の微細酸化セルロースを得る。
(3)精製工程
つぎに、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行う。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過を繰り返すことで高純度(99質量%以上)の反応物繊維と水の分散体とする。精製工程における精製方法は、遠心脱水を利用する方法(例えば、連続式デカンダー)のように、上述した目的を達成できる装置であればどのような装置を利用しても差し支えない。
(4)分散工程(微細化処理工程)
精製工程にて得られる水を含浸した反応物繊維(水分散体)を、分散媒中に分散させ分散処理を行う。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理(即ち、解繊処理)されたセルロースナノファイバーの分散体を得ることができる。分散工程で使用する分散機としては、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波分散処理機、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することができる。
一方、上記のカルボキシメチル化セルロース(B)は、例えば、上記セルロース原料を用いて、次の方法により製造することができる。すなわち、セルロースを原料とし、分散媒に質量で3〜20倍の低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の単独、又は2種以上の混合物と水の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60〜95質量%である。マーセル化剤としては、セルロースのグルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。セルロースと分散媒、マーセル化剤を混合してマーセル化処理を行う。このときの反応温度は0〜70℃、好ましくは10〜60℃であり、反応時間は15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間である。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10倍モル添加してエーテル化反応を行う。このときの反応温度は30〜90℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間は30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間である。カルボキシメチル化剤としては、モノクロロ酢酸ナトリウムなどが挙げられる。上記のエーテル化反応後、高圧ホモジナイザー等によって分散処理(微細化処理)することでカルボキシメチル化セルロース(B)のナノファイバーを得ることができる。
一実施形態において、アニオン性基としてリン酸基又はその塩を有するアニオン変性セルロースナノファイバーとしては、例えば、次の方法により製造することができる。すなわち、乾燥したあるいは湿潤状態のセルロース繊維原料にリン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法、セルロース繊維原料の分散液にリン酸またはリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これら方法においては、通常、リン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理、加熱処理等を行う。ここで、リン酸またはリン酸誘導体としては、リン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸あるいはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これにより、セルロースを構成するグルコースユニットの水酸基にリン酸基を含む化合物またはその塩が脱水反応してリン酸エステルが形成され、リン酸基又はその塩が導入される。リン酸基又はその塩が導入されたセルロース繊維は、上記の酸化セルロース(A)の場合と同様の分散処理(微細化処理)を行うことにより、セルロースナノファイバーとなる。
アニオン変性セルロースナノファイバーにおけるアニオン性基の量は、特に限定されず、例えば、0.05mmol/g以上が好ましく、0.6mmol/g以上がより好ましい。また、5.5mmol/g以下が好ましく、3.0mmol/g以下がより好ましく、2.5mmol/g以下がより好ましい。アニオン性基の量が上記範囲内である場合、セルロースナノファイバーを均一に分散できる点で好ましい。
アニオン性基の量は、例えば、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基については、乾燥質量を精秤したセルロース試料から0.5〜1質量%スラリーを60mL調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行い、pHが約11になるまで続け、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式(1)に従い求めることができる。リン酸基及び/又はその塩についても、同様の電気伝導度測定により測定することができる。その他のアニオン性基についても公知の方法で測定すればよい。
アニオン性基量(mmol/g)=V(mL)×〔0.05/セルロース質量〕…(1)
アニオン変性セルロースナノファイバー分散液におけるアニオン変性セルロースナノファイバーの濃度は、特に限定されず、例えば0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。濃度が上記範囲内である場合、アニオン変性セルロースナノファイバー層を形成する場合に、塗工性および乾燥効率を両立する点で好ましい。
次に接着層に関して説明する。
上記接着層を設けることによりアニオン性セルロースナノファイバー分散液の濡れ性、塗工性に関する課題、さらに、基材の化学的不安定性や低分子量分子のブリード、結晶化、表面劣化のために、製膜後に経時で基材及び被膜が劣化し、密着性の低下が見られるといった課題を解決し、セルロースナノファイバーの分散液からなる塗液を均一に塗工し、かつ極性の異なる多種基材との密着性を確保し、さらに、経時での密着性、基材及びアニオン変性セルロースナノファイバー層の劣化を抑えることが可能になる。
上記接着層は、カチオン性ポリオレフィン樹脂およびカチオン性ポリウレタン樹脂をそれぞれ1種以上含有する事を特徴とする(以下、それぞれ単にポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂ということがある)。
上記接着剤層に極性の低いポリオレフィン樹脂と極性高いポリウレタン樹脂を含有させることで、極性の異なる多種基材に対しての密着性が向上する。樹脂の配合比率(質量比)としては、ポリウレタン樹脂:ポリオレフィン樹脂=10:90〜90:10である事が好ましく、更に好ましくは、30:70〜70:30である。
上記カチオン性ポリオレフィン樹脂は基材と接着層の間に極性同士の相互作用による密着性を維持しつつ、高湿度下でも吸湿を抑制する事ができ、高い膜凝集力を維持する事ができる。
上記接着層にカチオン性基を有する樹脂を含有することにより、カチオン性基がセルロースナノファイバーに存在するアニオン性基とのイオンコンプレックスを形成し、塗工性、密着性、濡れ性、経時安定性が向上する。上記カチオン性基とは、第3級アンモニウム基、第4級アンモニウム基、第4級ピリジル基、第4級ピペリジニル基、第4級ピラジニル基、第4級ピペラジニル基、第4級ピリミジニル基、第4級ピリダジニル基、第4級イミダゾリル基、第4級モルホリニル基、第4級ホスホニウム基、スルホニウム基およびこれらの塩などが挙げられる。
上記カチオン性基としては、第3級アンモニウム基、第4級アンモニウム基および第3級アンモニウム塩基、第4級アンモニウム塩基がセルロースナノファイバーとの密着性を高める点で好ましい。
上記カチオン性ポリウレタンエマルジョン樹脂としては一般的に市販されているものを使用することができる。特に制限されないが具体的には、パテラコールシリーズ(DIC株式会社)、パラサーフUP−28、パラサーフUP−36(大原パラヂウム化学株式会社)、パスコールJK−830(明成化学工業株式会社)、スーパーフレックス620、スーパーフレックス650(第一工業製薬株式会社)等が挙げられる。
上記カチオン性ポリオレフィンエマルジョン樹脂としては、一般的に市販されているものを使用することができる。特に制限されないが具体的には市販品であるアローベースCシリーズ(ユニチカ株式会社製)、アクアテックスECシリーズ、ACシリーズ、MCシリーズ(ジャパンコーティングレジン株式会社)等が挙げられる。
上記接着層に含まれる樹脂として、ポリオレフィン樹脂やポリウレタン樹脂の他に、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸樹脂、もしくはポリマレイン酸樹脂を含有してもよい。また、上記樹脂は前述の効果を阻害しなければ、上記カチオン性基以外の官能基を有していてもよい。
上記接着層に使用されるエマルジョン系樹脂の粒径は2μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。粒径が小さいものほど溶融し易く、加熱にかける温度を低くする事ができエネルギー的に有利である。また粒径が小さいものほど平滑な膜を形成し易く、アニオン変性セルロースナノファイバー分散液を含有する塗液を均一に塗工しやすく、かつ基材との密着性を確保しやすい。
上記接着層に含有される樹脂の最低造膜温度は、基材と積層する点から80℃以下である事が好ましい。
上記エマルジョン系樹脂には、水よりも高沸点の親水性液体媒体(以下、高沸点媒体という。)を添加したものを用いてもよい。高沸点媒体は、水よりも沸点が高い液体の親水性媒体である。ここで、親水性媒体とは、水酸基などの親水基を分子内に有する媒体をいう。高沸点媒体としては、水溶性、即ち水に溶解する有機化合物であって、水よりも高沸点のものを用いることができ、例えば、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコール−t−ブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,4−ブチレングリコール、エチレングリコール−2−エキルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(即ち、フェノキシプロパノール)、エチレングリコールモノフェニールエーテル(即ち、フェノキシエタノール)、プロピレングリコール−モノ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、2,2’?(シクロヘキシルイミノ)ビスエタノール、N‐メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒が挙げられる。好ましくは、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコール−t−ブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノフェニールエーテル等が挙げられる。これらはいずれか1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。高沸点媒体の沸点(1気圧)としては、水の沸点よりも高ければ特に限定されないが、110〜260℃であることが好ましく、より好ましくは130〜250℃である。
上記高沸点媒体の含有量は、特に限定されない。一実施形態においてエマルジョン系樹脂中の樹脂の固形分に対する高沸点媒体の含有量は、例えば1〜300質量%であるとよい。好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。高沸点媒体の含有量が上記範囲名である場合、上記樹脂の造膜性を向上させることができるので好ましい。
次に基材について説明する。
上記基材は本発明の技術分野で使用することができる基材を幅広く使用することができる。特に制限されないが、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5Tなどのナイロン、又は、これらの誘導体、又は、これらのうち2種以上の複合材料が挙げられ、金属としては、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板、鉄板、真鍮などが挙げられる。
次に本発明の積層体の製造方法について説明する。
上記製造方法の一実施形態としては、上記基材の一方の面に、カチオン樹脂エマルジョンを含む塗工液を用いて塗膜を形成する工程と、上記塗膜を乾燥させて接着層を形成する工程と、上記接着層の上に上記アニオン変性セルロースナノファイバー層を形成する工程とを備える積層体の製造方法である。
上記基材の一方の面に、カチオン樹脂エマルジョンを含む塗工液を用いて塗膜を形成する工程は、基材上に接着層を構成するカチオン性樹脂エマルジョンを所定の方法で塗工またはキャストすることにより行う。
上記の塗工またはキャストする方法としては特に制限されないが具体的には凸版印刷方式、凹版印刷方式、オフセット印刷方式、スクリーン印刷方式、スプレー塗装方式、ドクターブレード方式、ナイフコーター方式、ダイコーター方式、浸漬方式、バーコーター方式等が挙げられる。
上記接着層の厚みは、3nm以上が好ましい。また、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下がより好ましい。厚みが上記範囲内である場合、接着層の反りやカールを防止することにより優れた密着性を発現することができ、接着層の乾燥効率の点で好ましい。
また、上記塗膜を乾燥させて上記接着層を形成する工程は、上記乾燥方法としては、特に制限されないが具体的には加熱乾燥方式、減圧乾燥方式、送風乾燥方式、マイクロ波乾燥方式、赤外線乾燥方式、凍結乾燥方式、ろ過脱水方式等を用いることができる。
上記乾燥方法における乾燥条件において、乾燥温度は0℃以上150℃以下である事が好ましく、更に好ましくは80℃〜120℃である。乾燥時間は1〜3000分が好ましい。
上記接着層の上に上記アニオン変性セルロースナノファイバー層を形成する工程は、接着層上にアニオン変性セルロースナノファイバー分散液を所定の方法で塗工またはキャストした後、所定の条件で乾燥することにより成型することができる。
上記セルロースナノファイバー分散液の塗工法としては、凸版印刷方式、凹版印刷方式、オフセット印刷方式、スクリーン印刷方式、スプレー塗装方式、ドクターブレード方式、ナイフコーター方式、ダイコーター方式、浸漬方式、バーコーター方式等が挙げられる。
乾燥法としては、例えば、加熱乾燥方式、減圧乾燥方式、送風乾燥方式、マイクロ波乾燥方式、赤外線乾燥方式、凍結乾燥方式、ろ過脱水方式等が用いられるが、乾燥温度は、特に限定されず、加熱乾燥方式の場合を例示するならば、60〜150℃でもよく、80〜120℃でもよい。また、乾燥時間も、特に限定されず、例えば、1〜3,000分でもよく、5〜180分でもよい。加熱温度は常に一定でもよく、段階的に上昇させても良い。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<アニオン変性セルロースナノファイバーおよび塗工液の製造方法>
[TEMPO酸化セルロース繊維]
針葉樹パルプ2gに、水150mLと、臭化ナトリウム0.25gと、TEMPOを0.025gとを加え、充分撹拌して分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が6.5mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加してpHを7.0に調整し、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたTEMPO酸化セルロース繊維を得た。
上記TEMPO酸化セルロース繊維を遠心分離機で固液分離し、純水を加えて固形分濃度4質量%に調整した。その後、24質量%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃として水素化ホウ素ナトリウムをTEMPO酸化セルロース繊維に対して0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、還元処理されたTEMPO酸化セルロース繊維を得た。
その後、上記TEMPO酸化セルロース繊維に、純水を加えて固形分濃度2質量%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で5回処理し、TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散体を得た。
得られたTEMPO酸化セルロースナノファイバーは、アニオン性基としてカルボン酸ナトリウム塩基(COONa)を有し、数平均繊維径が6nm、アニオン性基量が1.83mmol/gであった。
[カルボキシメチル化セルロース繊維]
家庭用ミキサーで粉砕した針葉樹パルプ(LBKP)20gに、イソプロピルアルコール(IPA)112gと水48gとの混合溶媒160gを加え、次に水酸化ナトリウムを8.8g加え、撹拌、混合させた後、30℃で60分間攪拌した。次いで、反応液を70℃まで昇温し、モノクロロ酢酸ナトリウムを12g(有効成分換算)添加した。1時間反応させた後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりの置換度0.05のカルボキシメチル化セルロース繊維を得た。その後、水を加えて固形分濃度2%とし、高圧ホモジナイザーを用いて圧力140MPaで5回処理することにより、アニオン性基としてカルボキシメチル基由来のカルボン酸ナトリウム塩基(−CH2COONa)を有するセルロースナノファイバー水分散体を得た。得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、数平均繊維径が25nm、アニオン性基(カルボキシル基)量が0.30mmol/gであった。
[リン酸化セルロース繊維]
尿素を20g、リン酸二水素ナトリウム二水和物を12g、リン酸水素二ナトリウムを8g、水20gに溶解させてリン酸化剤を調整し、家庭用ミキサーで粉砕した針葉樹パルプ(LBKP)20gをニーダーで攪拌しながらリン酸化剤をスプレー噴霧し、リン酸化剤含浸パルプを得た。次いで、リン酸化剤含浸パルプを140℃に加熱したダンパー付きの送風乾燥機内で60分間、加熱処理してリン酸化パルプを得た。得られたリン酸化パルプに水を加えて固形分濃度2%とし、攪拌、混合して均一に分散させた後、濾過、脱水の操作を2回繰り返し、回収パルプを得た。次いで、得られた回収パルプに、水を加えて、固形分濃度2%とし、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pH12〜13のパルプスラリーを得た。続いて、このパルプスラリーを濾過、脱水し、更に水を加えて濾過、脱水の操作を2回繰り返した。この一連の操作により得られたリン酸化パルプの回収物に水を加えて固形分濃度2%の水分散体とし、高圧ホモジナイザーを用いて圧力140MPaで3回処理することにより、本発明で用いるリン酸化セルロースナノファイバー水分散体を得た。得られたリン酸化セルロースナノファイバーは、アニオン性基としてリン酸ナトリウム塩基(−PONa)を有し、数平均繊維径が5nmであった。
<接着層用塗工液の製造方法>
所定の割合でカチオン性ポリウレタン樹脂エマルジョンとカチオン性ポリオレフィン樹脂エマルジョンを混合し200g用意した。ホモミキサーにて3000rpmで10分間攪拌を行った後に、脱気処理を行い接着層用塗工液を得た。
<積層体の作製方法>
基材として、ニ軸延伸ポリエステルフィルム(OPP)、ポリカーボネートフィルム(PC)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ナイロン6フィルムを用意した。
接着層形成用塗工液を#10バーコーターにて塗布した後、80℃と120℃で各10分間乾燥させることで約2μmの接着層を形成した。更に接着層上にアニオン変性セルロースナノファイバーを#50バーコーターにより塗工し自然乾燥させることで目的の積層体を得た。
<塗工性評価>
アニオン変性セルロースナノファイバーを塗布した積層体を作製した際の、塗工性を下記の方法により評価した。
◎:基材に対して膜が積層されており、膜表面にムラが観察されない。
○:基材に対して膜が積層されているが、一部剥離が観られる。
△:一部膜の剥離とムラが観られる。
×:基材から膜が剥離している。
[実施例1]
カチオン性ポリウレタン樹脂エマルジョンとしてスーパーフレックス620(製品名、第一工業製薬株式会社製)とカチオン性ポリオレフィン樹脂エマルジョンとして、アローベースCB−1200(製品名、ユニチカ株式会社製)を固形分質量比50:50で混合攪拌し接着層用塗工液を作製した。
各基材上にバーコーターにて上記接着層用塗工液を上記条件で塗布し乾燥を行った。乾燥条件は80℃で10分の後120℃で10分とした。
乾燥後の接着層を3時間放冷した後、その上にTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液を上記条件で塗布し、3時間70℃下で乾燥し積層体を得た。
[実施例2]
スーパーフレックス620とアローベースCB−1200の比率を固形分質量比70:30に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、積層体を得た。
[実施例3]
カチオン性ポリウレタン樹脂エマルジョンをスーパーフレックス650(製品名、第一工業製薬株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、積層体を得た。
[実施例4]
スーパーフレックス650とアローベースCB−1200の比率を固形分質量比70:30に変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、積層体を得た。
[実施例5]
スーパーフレックス620とアローベースCB−1200とフェノキシエタノールを固形分質量比50:50:10で混合攪拌し接着層用塗工液を作製した以外は実施例1と同様の操作を行い、積層体を得た。
[実施例6]
TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液をカルボキシメチル化セルロースナノファイバー水分散液に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、積層体を得た。
[実施例7]
TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液をカルボキシメチル化セルロースナノファイバー水分散液に変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、積層体を得た。
[実施例8]
TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液をリン酸化セルロースナノファイバー水分散液に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、積層体を得た。
[実施例9]
TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液をリン酸化セルロースナノファイバー水分散液に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、積層体を得た。
[比較例1]
接着層塗工液を用いず、直接基材にセルロースナノファイバー層を形成する工程以外は実施例1と同様の操作を行い、積層体を得た。
[比較例2]
接着層用塗工液としてスーパーフレックス620のみを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、積層体を得た。
[比較例3]
接着層用塗工液としてアローベースCB−1200のみを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、積層体を得た。
Figure 2019202434
表1より、セルロースナノファイバー層と基材間にカチオン性ポリオレフィン樹脂およびカチオン性ポリウレタン樹脂を含有するエマルジョン系樹脂を含有する接着層を設けることにより、多種基材に対しセルロースナノファイバーの塗工性が向上した(実施例1ないし9)。高沸点媒体であるフェノキシエタノールの添加下においても塗工性が良好な結果となった(実施例5)。
一方、接着層を有しない場合は、特定の基材に対する塗工性が不良となる結果となった。(比較例1ないし3)
<密着性の測定(碁盤の目試験)>
各積層体を、縦と横2mm幅で11×11本カッターで切り目をつけ10×10=100マスの試験片を作る。試験片上にセロハンテープを貼り付け上から押さえつけ、JIS−K−5600に準拠して、碁盤の目試験を行った。密着性を下記の方法により評価した。試験環境は25℃40%RHとした。
◎:剥離した枚数が10枚以下
○:剥離した枚数が11枚〜30枚
△:剥離した枚数が31枚〜50枚
×:剥離した枚数が51枚以上
<経時安定性試験>
積層体を25℃80%の環境下で1週間保管し、前述の密着性試験の方法と同様に密着
性を評価した。
Figure 2019202434
表2より、カチオン性ポリオレフィン樹脂とカチオン性ポリウレタン樹脂を含有する接着層を設けることにより各種基材に対しセルロースナノファイバーの密着性経時安定性が向上した(実施例1、3、5、6、8)。これに対し、接着層を有しない場合、基材に対しては接着性が不良あることが分かる(比較例1)。また、接着層がポリオレフィンまたはポリウレタンのいずれかである場合は、密着性の経時安定性が不良となった(比較例2および3)。
<酸素ガス透過試験>
東洋紡株式会社製「コスモシャインA−4300」の上に、実施例1に記載の接着層用塗工液を#10バーコーターにて塗布した後、80℃と120℃で各10分間乾燥させることで約2μmの接着層を形成した。更に接着層上にアニオン変性セルロースナノファイバー水分散体を#50バーコーターにより塗工し自然乾燥させることで目的の積層体を得た。
[実施例10]
接着層用塗工液としてスーパーフレックス620およびアローベースCB−1200(製品名、ユニチカ株式会社製)を固形分質量比50:50で混合攪拌したものを使用し、アニオン変性セルロースナノファイバー水分散体として、TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液を使用して積層体を得た。
[実施例11]
スーパーフレックス620をスーパーフレックス650に変更した以外は、実施例10と同様の操作を行い、積層体を得た。
[実施例12]
スーパーフレックス620とアローベースCB−1200とフェノキシエタノールを固形分質量比50:50:10で混合攪拌し接着層用塗工液を作製した以外は実施例10と同様の操作を行い、積層体を得た。
[比較例4]
東洋紡株式会社製「コスモシャインA−4300」を使用した。
上記積層体から直径10cmに切断したサンプルを作成し、ILLINOIS社製の酸素透過率測定装置「MODEL8001」(cc/(m2day・atm))を用いて、
23℃、0%RHの条件にて酸素ガス透過度を測定した。サンプル3点の平均値を求めた。その結果を下記表3に示す。
Figure 2019202434
表3の結果より、接着層を有する系でも低い酸素ガス透過度を示し、積層体のガスバリア特性が高い事が分かった。
本発明は、包装材料、コーティング剤、機能性積層材料などの分野に広く好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. アニオン変性セルロールナノファイバー層と基材の間に接着層を有する積層体であって、上記接着層が、カチオン性ポリオレフィン樹脂及びカチオン性ポリウレタン樹脂を含有するエマルジョン系樹脂であることを特徴とする積層体。
  2. 上記アニオン変性セルロースナノファイバーのアニオン性基が、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、およびリン酸基から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 上記アニオン変性セルロースナノファイバーのアニオン性基の含有量が、0.05mmol/g以上5.5mmol/g以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
  4. 上記アニオン変性セルロースナノファイバーのアニオン性基が、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、およびアミン塩から選択された1種または2種以上の塩型を形成していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の積層体。
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