JP2019201191A - 軟磁性材料、圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

軟磁性材料、圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温且つ高湿度の環境下に長時間晒しても信頼性に優れた圧粉磁心を得ることのできる軟磁性材料、圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法を提供する。【解決手段】軟磁性材料は、軟磁性粉末と軟磁性粉末の表面を覆う絶縁層とを有する。絶縁層は、シリコーンオリゴマーとリン酸チタンとの混合物を含むシリコーンオリゴマー層を備える。リン酸チタンの添加量は、シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上である。また、シリコーンオリゴマー層は、シリコーンオリゴマーと、シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上のチタンオリゴマーを含んでいても良い。【選択図】図1

Description

本発明は、軟磁性材料、圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法に関する。
モーター、インバーター、コンバーターへの電力供給系統の一部として、リアクトルが利用されている。このリアクトルのコアとして、圧粉磁心が使用される。圧粉磁心は、金属粉末とこれを覆う絶縁皮膜とから構成された粉末を加圧成形することにより形成される。
圧粉磁心は、エネルギー交換効率の向上や低発熱などの要求から、小さな印加磁界で大きな磁束密度を得ることが出来る磁気特性と、磁束密度変化におけるエネルギー損失が小さいという磁気特性が求められる。磁束密度に関する磁気特性とは、具体的には透磁率(μ)である。エネルギー損失に関する磁気特性とは、具体的には鉄損(Pcv)である。鉄損(Pcv)は、ヒステリシス損失(Ph)と、渦電流損失(Pe)の和で表される。
特開2008−305823号公報 特開2010−001561号公報 特開2012−129217号公報
近年、高温且つ高湿度の環境下に長時間晒しても、鉄損が増加や透磁率の減少が少ない信頼性に優れた圧粉磁心が要望されている。圧粉磁心は、軟磁性粉末を含む軟磁性材料を使用し作製される。信頼性の高い圧粉磁心を作製するために、軟磁性材料として軟磁性粉末の周囲にシリコーンオリゴマーによる絶縁層(以下、シリコーンオリゴマー層とする)を形成したものを使用する方法が考えられる。
シリコーンオリゴマー層は機械的強度に優れ、軟磁性粉末の周囲を覆う。このシリコーンオリゴマー層を形成した軟磁性粉末を使用することで、圧粉磁心の作製の際に加わる圧力によるシリコーンオリゴマー層の破壊や、軟磁性粉末に生じるひずみを抑制することができる。これにより、軟磁性粉末間のギャップを均一に保つことができる。そのため、高温且つ高湿度の環境下に長時間晒しても、鉄損の増加や、透磁率の減少を抑えることができ、信頼性の高い圧粉磁心の作製が可能となる。しかしながら、より一層、鉄損の増加や、透磁率の減少を抑えた、信頼性の高い圧粉磁心の作製が要望されている。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、高温且つ高湿度の環境下に長時間晒しても信頼性に優れた圧粉磁心を得ることのできる軟磁性材料、圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究の結果、軟磁性材料の作製工程における、軟磁性粉末の周囲にシリコーンオリゴマーの層を形成する工程で、軟磁性粉末に対してシリコーンオリゴマーだけでなく、さらに、シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上のリン酸チタン、またはチタンオリゴマーを添加した軟磁性材料を使用した圧粉磁心は低損失で直流重畳特性が優れ、且つ高温高湿度環境下における信頼性が優れるとの知見を得た。
そこで、上記目的を達成するため、本発明に係る軟磁性材料は、軟磁性粉末と、前記軟磁性粉末の表面を覆う絶縁層と、を有し、前記絶縁層は、シリコーンオリゴマーとリン酸チタンとの混合物を含むシリコーンオリゴマー層を備え、前記リン酸チタンの添加量は、前記シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上であることを特徴とする。
前記リン酸チタンの添加量が、シリコーンオリゴマーの添加量の11.1wt%〜400wt%であっても良い。
また、本発明の軟磁性材料は、軟磁性粉末と、前記軟磁性粉末の表面を覆う絶縁層と、を有し、前記絶縁層は、シリコーンオリゴマーとチタンオリゴマーとの混合物を含むシリコーンオリゴマー層を備え、前記チタンオリゴマーの添加量は、前記シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上であることを特徴とする。
前記チタンオリゴマーの添加率が、シリコーンオリゴマーの添加量の11.1wt%〜400wt%であっても良い。
前記絶縁層は、前記シリコーンオリゴマー層を覆うシリコーンレジン層を含んでも良い。
前記絶縁層は、前記軟磁性粉末を覆う絶縁微粉末を含んでも良い。
上記の軟磁性材料を使用した圧粉磁心や、圧粉磁心の製造方法も、本発明の一態様である。
本発明によれば、高温高湿度の環境下においても特性悪化が少なく、信頼性に優れた圧粉磁心を得ることのできる軟磁性材料、圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法を提供することができる。
実施形態に係る圧粉磁心の製造方法を説明するためのフローチャートである。 シリコーンオリゴマーにおける温度と重量減少の関係を示すグラフである。 実施例1〜4、比較例1〜3の圧粉磁心のリン酸チタン添加量と密度の関係を示すグラフである。 実施例1〜4、比較例1〜3の圧粉磁心のリン酸チタン添加量と直流重畳特性の関係を示すグラフである。 高温高湿度試験における実施例1〜4、比較例1〜3の圧粉磁心のリン酸チタン添加量と透磁率と鉄損の変化率の関係を示すグラフである。 実施例8〜13、比較例1の圧粉磁心のリン酸チタン添加量と密度の関係を示すグラフである。 実施例8〜13、比較例1の圧粉磁心のリン酸チタン添加量と直流重畳特性の関係を示すグラフである。 高温高湿度試験における実施例8〜13、比較例1の圧粉磁心のリン酸チタン添加量と透磁率と鉄損の変化率の関係を示すグラフである。
[1.圧粉磁心の製造方法]
実施形態に係る軟磁性材料、圧粉磁心、及びその製造方法について、圧粉磁心の製造方法に沿って説明する。実施形態に係る軟磁性材料は、シリコーンオリゴマー層を形成する際にシリコーンオリゴマーにリン酸チタン、またはチタンオリゴマーを加えて混合し、シリコーンオリゴマー層を形成することで得られた圧粉磁心である。つまり、後述のステップ2の工程を経て得られた軟磁性材料である。故に、下記のステップ1及び/又はステップ3を含まない、ステップ1、2、4〜6の工程を経て得られた軟磁性材料、ステップ2、4〜6の工程を経て得られた軟磁性材料、ステップ2〜6の工程を経て得られた軟磁性材料も本発明の軟磁性材料に含まれる。
本実施形態の圧粉磁心の製造方法は、次のような各工程を有する。この工程を図1のフローチャートに示す。
(1)軟磁性粉末に対して、絶縁微粉末を混合して絶縁微粉末を付着させる絶縁微粉末付着工程(ステップ1)。
(2)表面に絶縁微粉末が付着した軟磁性粉末に対し、シリコーンオリゴマーとリン酸チタンまたはチタンオリゴマーを添加し、混合することでシリコーンオリゴマー層を形成するシリコーンオリゴマー層形成工程(ステップ2)。
(3)シリコーンオリゴマー層が形成された軟磁性粉末に対し、シリコーンレジンを混合してシリコーンレジン層を形成するシリコーンレジン層形成工程(ステップ3)。
(4)ステップ1〜3の工程を経て得られた軟磁性粉末に対し、潤滑剤を添加して混合する潤滑剤混合工程(ステップ4)。
(5)潤滑剤混合工程を経た前記軟磁性粉末を、加圧成形処理して成形体を作製する成形工程(ステップ5)。
(6)成形工程を経た成形体を熱処理する熱処理工程(ステップ6)。
以下、各工程を具体的に説明する。
(1)絶縁微粉末付着工程
絶縁微粉末付着工程では、軟磁性粉末と、絶縁微粉末とを混合する。混合は、混合機(W型、V型)、ポットミル等を使用して行い、この時、粉末の内部に歪みが入らないように混合する。軟磁性粉末と絶縁微粉末とを混合することで、軟磁性粉末の表面に絶縁微粉末に付着させることができる。軟磁性粉末の表面に付着した絶縁微粉末は、一定の厚みとなる。軟磁性粉末の表面に絶縁微粉末が付着することにより、軟磁性粉末同士が直接接触することがなくなる。また、絶縁微粉末は、絶縁性を有しているため、軟磁性粉末の間を絶縁することができる。
絶縁微粉末の付着の態様としては、軟磁性粉末の表面に点状に分散して付着している場合、軟磁性粉末の表面に塊状に分散して付着している場合、軟磁性粉末の全表面若しくは表面の一部を覆うように絶縁微粉末の層を形成しながら付着している場合などが含まれる。また、軟磁性粉末の表面に付着するだけでなく、軟磁性粉末の外側に形成されたシリコーンオリゴマー層と混合し、シリコーンオリゴマー層の中に分散している場合も含まれる。なお、混合機による撹拌時間などの条件によっては、シリコーンオリゴマー層の中に分散しないこともある。
(軟磁性粉末)
本実施形態で使用する軟磁性粉末は、鉄を主成分とする軟磁性粉末であって、パーマロイ(Fe−Ni合金)、Si含有鉄合金(Fe−Si合金)、センダスト合金(Fe−Si−Al合金)、純鉄粉、などを用いる。鉄合金は、その他にCoやAl、Cr、Mnを含んでもよい。パーマロイ(Fe−Ni合金)を用いる場合、Feに対するNiの比率は50:50や25:75が好ましいが、他の比率であってもよい。例えば、Fe−80Ni、Fe−36Niでもよい。FeとNiの他にSi、Cr、Mo、Cu、Nb、Ta等を含んでいても良い。Fe−Si合金粉末は、例えば、Fe−3.5%Si合金粉末、Fe−6.5%Si合金粉末が挙げられるが、Feに対するSiの比率は、3.5%や6.5%以外であっても良い。純鉄粉は、Feを99%以上含むものである。軟磁性粉末は1種類でなく、2種類以上の混合粉でも良い。
軟磁性粉末の平均粒子径は、20μm〜80μmであることが好ましい。この範囲内とすることにより、損失低減効果が得られるためである。なお、本明細書で「平均粒子径」とは、メジアン径(D50)をいう。
軟磁性粉末の製造方法は問わない。粉砕法により作製されたものでも、アトマイズ法により作製されたものでも良い。アトマイズ法は、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、水ガスアトマイズ法のいずれでも良い。水アトマイズ法は、現状、もっとも入手性が良く低コストである。水アトマイズ法を使用した場合は、その粒子形状がいびつであるので、それを加圧成形した粉末成形体の機械的強度を向上させやすい。
(絶縁微粉末)
軟磁性粉末と混合する絶縁微粉末としては、融点が1000℃以上の無機絶縁粉末であるアルミナ粉末、マグネシア粉末、シリカ粉末、チタニア粉末、ジルコニア粉末の少なくとも1種類以上であることが好ましい。融点が1000℃以上の無機絶縁粉末を使用するのは、後述の成形時に加わった圧力による歪みをとる目的で行う熱処理工程で加えられる熱により、無機絶縁粉末が焼結し圧粉磁心の材料として使用できなくなることを防止するためである。
絶縁微粉末の比表面積は65〜130m/g(粒子径で7nm〜200nm)が好ましく、より好ましくは100〜130m/g(粒子径で7nm〜50nm)である。絶縁微粉末の比表面積が大きいほうが、粒子径が小さくなる。粒子径が小さいほうが、軟磁性粉末間に絶縁微粉末が隙間なく入り込み、密度の高い絶縁層が形成され、圧粉磁心成形時の歪みが緩和される。一方、絶縁微粉末の比表面積が大きすぎると、粒子径が小さくなりすぎて製造が困難となる。
絶縁微粉末の添加量は、軟磁性粉末に対して0.2wt%〜2.0wt%とする。添加量が0.2wt%より少なければ絶縁性能が十分に発揮できず、高い熱処理温度では渦電流損失が著しく増加する場合がある。一方、添加量が2.0wt%より多いと絶縁性能は発揮できるが、成形密度が低くなり、渦電流損失以外の磁気特性が低下するという問題点が生じる場合がある。これらの問題が生じない場合は、絶縁微粉末付着工程は必ずしも必要ではない。
(2)シリコーンオリゴマー層形成工程
シリコーンオリゴマー層形成工程では、軟磁性粉末に対し、シリコーンオリゴマーとリン酸チタンまたはチタンオリゴマーを所定量添加して、大気雰囲気中、所定の温度で乾燥を行う。シリコーンオリゴマー層形成工程により、軟磁性粉末の外側に丈夫でち密なシリコーンオリゴマー層が形成される。
シリコーンオリゴマー層の乾燥温度は、25℃〜350℃が好ましく、望ましくは、100℃〜200℃である。乾燥温度が25℃未満であると絶縁層の形成が不完全となり、渦電流損失が高くなり、損失が増大する。一方、乾燥温度350℃より大きいと粉末が酸化することによりヒステリシス損失が高くなり、損失が増大する。また、乾燥温度が100℃以上であると乾燥時間の短縮が図られると共に、乾燥温度が200℃以下であと、粉末の酸化をより抑制することができる。乾燥時間は、1時間程度である。リン酸チタンまたはチタンオリゴマーを添加することで反応が促進されるため、リン酸チタンまたはチタンオリゴマーを添加しない場合と比較して、乾燥時間が短くできる。
(リン酸チタン)
リン酸チタンは、モノマーである。
(チタンオリゴマー)
チタンオリゴマーは、チタンアルコキシド(Ti−OR)やチタンキレートを縮合させ、多量体構造(−Ti−O−Ti−)を分子内に含有する化合物である。
リン酸チタン、及びチタンオリゴマーの添加量は、シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上であることが望ましい。リン酸チタン及びチタンオリゴマーを添加することで、リン酸チタン及びチタンオリゴマーを添加しない場合と比較して乾燥時のシリコーンオリゴマーの硬化が促進される。また、リン酸チタン、及びチタンオリゴマーの添加量の上限は、シリコーンオリゴマーの添加量の400%であることが望ましい。リン酸チタン、及びチタンオリゴマーを400%以上添加しても、シリコーンオリゴマー層やち密なシリコーンオリゴマー層による圧粉磁心の磁気特性の向上は図れない。また、リン酸チタン、及びチタンオリゴマーは高価な材料である。そのため、添加量を制限することで、圧粉磁心の製造コストを抑制することが可能となる。
(リン酸チタンによるシリコーンオリゴマーの重量減少の抑制効果)
シリコーンオリゴマー層を形成する際のシリコーンオリゴマーの硬化は、25℃以上の温度で行う必要がある。また、より高い温度で行うと硬化速度が速くなる。一方で、シリコーンオリゴマーは揮発性ある物質である。高温になると揮発、分解するシリコーンオリゴマーの量は多くなる。図2は、シリコーンオリゴマーの乾燥温度と重量減少の関係を示すグラフである。図2の破線は、0.50wt%のシリコーンオリゴマーのみでシリコーンオリゴマー層を形成した比較例(後述の比較例1)であり、実線は0.25wt%のシリコーンオリゴマーと0.25wt%のリン酸チタンとでシリコーンオリゴマー層を形成した実施例(後述の実施例3)である。重量減少率は、乾燥前の重量W0と乾燥後の重量W1とし、以下の(1)式により算出した。
[式(1)]
(W1−W0)÷W0×100=重量減少率(%)・・・(1)
図2に示すように、比較例は50℃において重量減少率はほとんど0に近い。しかし、温度が高温に遷移し150℃に達すると重量減少率は−11.5%となる。更に350℃に達すると重量減少率は−45.6%となる。一方、実施例においては、150℃において重量減少率は−2.8%であり、150℃での乾燥時には、実施例は比較例と比較して、加熱によるシリコーンオリゴマーの分解を、3割程度に抑えることが可能となる。また、350℃において重量減少率は−17.5%となる。つまり、150℃における実施例の重量減少率は比較例の重量減少率と比較して(2.8%÷11.5%×100=)24.3%であり、350℃における実施例の重量減少率は比較例の重量減少率と比較して(17.5%÷45.6%×100=)38.4%であり、350℃での乾燥時には、実施例は比較例と比較して、加熱によるシリコーンオリゴマーの分解を、3割8分程度に抑えることが可能となる。
つまり、シリコーンオリゴマー層を形成する際には、乾燥時の高温により、シリコーンオリゴマーは硬化する一方で、高温の影響により分解も進む。シリコーンオリゴマーの硬化速度が遅い場合には、分解するシリコーンオリゴマーが多くなる。リン酸チタンやチタンオリゴマーを添加することで、シリコーンオリゴマーの熱による分解を抑制できる。そのため、リン酸チタン及びチタンオリゴマーを添加することで、同じ厚さのシリコーンオリゴマー層を形成する際に必要なシリコーンオリゴマーの量を減らすことが可能となる。
(丈夫なシリコーンオリゴマー層による圧粉磁心の信頼性の確保)
同量のシリコーンオリゴマーを同じ温度で乾燥させた場合には、リン酸チタンを添加することで、リン酸チタンを添加しない場合と比較して、軟磁性粉末の表面に形成されるシリコーンオリゴマーの層は厚くなる。より厚いシリコーンオリゴマー層を形成することができる。厚いシリコーンオリゴマー層は、後の成形工程時の圧力に対して高い機械的強度を発揮し、歪みや破断を生じにくい。そのため、作製した圧粉磁心の内部では、軟磁性粉末が一定のギャップを持ち均一に配置されることとなる。均一な軟磁性粉末の配置が、高温高湿度化の透磁率μの減少や鉄損Pcvの上昇を抑制する。
(均一なシリコーンオリゴマー層による圧粉磁心の信頼性の確保)
前述の通り、乾燥時にはシリコーンオリゴマーの分解が進む。これは、軟磁性粉末の周囲に付着し硬化中のシリコーンオリゴマーも例外ではない。軟磁性粉末の周囲で硬化中のシリコーンオリゴマーにおいて、一部のシリコーンオリゴマーが分解すると、乾燥後に形成されるシリコーンオリゴマー層の厚さは不均一なものとなる。厚さが不均一なシリコーンオリゴマー層を有する軟磁性材料を使用して圧粉磁心を作製した場合には、内部の軟磁性粉末の配置が不均一なものとなる。故に、均一な軟磁性粉末の配置が、高温高湿度化の透磁率μの減少や鉄損Pcvの上昇を抑制する。
(シリコーンオリゴマー)
シリコーンオリゴマーは、主骨格がシロキサン結合であり、機械的結合力が強い。また、Si原子を1個有するモノマーであるシランカップリング剤に対して、低分子で、二量体、三量体である分子量1000程度のシリコーンオリゴマーを用いたほうが、その構造上、膜厚を厚くできると考えられる。すなわち、シリコーンオリゴマー層を絶縁被膜の中間層として形成することにより、絶縁被膜全体として機械的結合力を強く、膜厚を厚くすることができる。
具体的には、シリコーンオリゴマーは、アルコキシシリル基を有する。アルコキシシリル基は、メトキシ系、エトキシ系、メトキシ/エトキシ系のものが含まれる。アルコキシシリル基を有するシリコーンオリゴマーであれば、反応性官能基を有さないメチル系、メチルフェニル系のものや、アルコキシシリル基及び反応性官能基を有するエポキシ系、エポキシメチル系、メルカプト系、メルカプトメチル系、アクリルメチル系、メタクリルメチル系、ビニルフェニル系のもの等を用いることができる。特に、メチル系またはメチルフェニル系のシリコーンオリゴマーを用いることで厚く硬い絶縁層を形成することができる。
シリコーンオリゴマーの分子量は、100〜4000であることが好ましい。分子量が100より小さい場合、熱処理工程において熱分解により破壊または消失されやすく、軟磁性粉末間が絶縁破壊されやすい。例えば、Fe−Si合金粉末の周囲にシリコーンオリゴマー層を形成した場合、分子量が100より小さい場合、熱処理工程前はその膜厚分布が均一であっても、熱処理工程後はその膜厚分布にバラツキが生じていることが考えられる。一方、分子量が4000より大きい場合、膜厚が厚くなりすぎて、磁気特性が低下してしまう。換言すれば、シリコーンオリゴマーを有することで、軟磁性粉末間のギャップを保ち、透磁率低下に寄与し、低透磁率の圧粉磁心を得ることができる。
シリコーンオリゴマーの添加量は、軟磁性粉末に対して、1.0wt%〜5.0wt%であることが好ましく、3.5wt%以上であると、絶縁被膜が厚くなることで透磁率を低下させやすい。また、3.5wt%超5.0wt%以下であると更に好ましい。添加量が1.0wt%より少ないと、絶縁被膜として機能せず、渦電流損失が増加することにより損失が増大する。添加量が5.0wt%より多いと、圧粉磁心が膨張し、強度低下を招く。
(3)シリコーンレジン層形成工程
シリコーンレジン層形成工程では、シリコーンオリゴマー層が形成された軟磁性粉末に対して、シリコーンレジンを所定量添加し、大気雰囲気中、所定の温度で乾燥させる。シリコーンレジン層形成工程により、シリコーンオリゴマー層の外側にシリコーンレジン層が形成される。
(シリコーンレジン)
シリコーンレジンはシロキサン結合(Si−O−Si)を主骨格に持つ樹脂である。シリコーンレジンを用いることで可撓性に優れた被膜を形成することができる。シリコーンレジンは、メチル系、メチルフェニル系、プロピルフェニル系、エポキシ樹脂変性系、アルキッド樹脂変性系、ポリエステル樹脂変性系、ゴム系等を用いることができる。この中でも特に、メチルフェニル系のシリコーンレジンを用いた場合、加熱減量が少なく、耐熱性に優れたシリコーンレジン層を形成することができる。
シリコーンレジンの添加量は、軟磁性粉末に対して、1.0wt%〜4.0wt%であることが好ましい。添加量が1.0wt%より少ないと絶縁被膜として機能せず、渦電流損失が増加することにより損失が増大する。添加量が4.0wt%より多いと圧粉磁心が膨張し、密度低下を招く。シリコーンオリゴマーに対するシリコーンレジンの添加量を適宜調整することで、強固で絶縁性能の高い絶縁被膜を形成することができ、特にシリコーンオリゴマーに対するシリコーンレジンの重量比が0.4〜1.4の場合に、強度と絶縁性能が優れている。また、シリコーンレジンは、潤滑性を有しており、潤滑剤の添加量を削減することができる。
シリコーンレジン層の乾燥温度は、100℃〜400℃が好ましい。乾燥温度が100℃より小さいと膜の形成が不完全となり、渦電流損失が高くなり、損失の増大を招く。一方、乾燥温度400℃より大きいと粉末が酸化することによりヒステリシス損失が高くなり、損失の増大を招く。乾燥時間は、2時間程度である。
(4)潤滑剤混合工程
潤滑剤混合工程では、得られた軟磁性材料に対し、潤滑剤を添加し、混合する工程である。この混合工程により、絶縁被膜の最外表面、すなわちシリコーンレジン層の表面に潤滑剤が被覆される。潤滑剤として、ステアリン酸及びその金属塩ならびにエチレンビスステアルアミド、エチレンビスステアラマイド、エチレンビスステアレートアミドなどのワックスが使用できる。潤滑剤を混合することにより、粉末同士の滑りを良くすることができるので、混合時の密度を向上させ成形密度を高くすることができる。さらに、成形時の上パンチの抜き圧低減、金型と粉末の接触によるコア壁面の縦筋の発生を防止することが可能である。潤滑剤の添加量は、軟磁性材料に対して、0.1wt%〜0.6wt%程度が好ましい。
(5)成形工程
成形工程では、表面に絶縁被膜が形成された軟磁性粉末を加圧成形することにより、成形体を形成する。成形時の圧力は10〜20ton/cmであり、平均で12〜15ton/cm程度が好ましい。
(6)熱処理工程
熱処理工程では、成形工程を経た成形体に対して、NガスやN+Hガスなどの非酸化性雰囲気中にて、750℃以上且つ軟磁性粉末に被覆した絶縁被膜が破壊される温度(例えば、850℃や950℃とする)以下で、熱処理を行うことで圧粉磁心が作製される。絶縁被膜が破壊される温度以下で熱処理を行うのは、成形工程での歪みを開放すると共に、熱処理時の熱により軟磁性粉末の周囲に被覆した絶縁被膜が破れることを防止するためである。一方、熱処理温度を上げ過ぎると、この軟磁性粉末に被覆した絶縁被膜が破れることにより、絶縁性能の劣化から渦電流損失が大きく増加してしまう。それにより、磁気特性が低下するという問題が発生する。
[2.作用・効果]
本実施形態の軟磁性材料は、軟磁性粉末と、軟磁性粉末の表面を覆う絶縁層と、を有し、絶縁層は、シリコーンオリゴマーと、シリコーンオリゴマーの添加量の10%以上のリン酸チタンまたはチタンオリゴマーとの混合物を含むシリコーンオリゴマー層を含む。この軟磁性材料においては、丈夫でち密なシリコーンオリゴマー層を形成する。
シリコーンオリゴマー層の強度が低い場合には、成形工程の圧力により、シリコーンオリゴマー層が破壊され、軟磁性粉末間のギャップを保つことができなくなる。この原因により、作製した圧粉磁心内の軟磁性粉末の配置が不均一になる。また、シリコーンオリゴマー層のち密さが低い場合も、形成される圧粉磁心内の軟磁性粉末の配置が不均一になる。不均一な軟磁性粉末の配置は、高温高湿度下において鉄損の増加や、透磁率の減少につながる。これらは、圧粉磁心の信頼性を低下させる。一方で、丈夫でち密なシリコーンオリゴマー層を形成した軟磁性材料を使用する本実施形態の圧粉磁心では内部の軟磁性粉末の配置を均一なものとすることができるため、信頼性に優れた圧粉磁心を得ることができる。
本発明の実施例1〜13及び比較例1〜3を、図3〜8、及び表1〜5を参照して、以下に説明する。
[1.測定項目]
測定項目として、透磁率と損失を次のような手法により測定した。透磁率は、作製された圧粉磁心に1次巻線(20ターン)を施し、LCRメータ(アジレントテクノロジー:4294A)を使用することで、10kHz、0.5Vにおけるインダクタンスから算出した。
損失は、作製した圧粉磁心に1次巻線(20ターン)及び2次巻線(3ターン)を施し、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY−8219)を用いて、周波数50kHz、最大磁束密度Bm=0.1Tの条件下で損失(Pcv)を測定した。そして、損失からヒステリシス損失(Ph)と渦電流損失(Pe)を算出した。この算出は、損失の周波数曲線を次の(2)〜(4)式で最小2乗法により、ヒステリシス損係数(Kh)、渦電流損係数(Ke)を算出することで行った。
[式(2)〜(4)]
Pcv=Kh×f+Ke×f…(2)
Ph=Kh×f…(3)
Pe=Ke×f…(4)
Pcv:損失
Kh:ヒステリシス損係数
Ke:渦電流損係数
f:周波数
Ph:ヒステリシス損失
Pe:渦電流損失
本実施例において、各粉末の平均粒子径と円形度は、下記装置を用いて3000個の平均値をとったものであり、ガラス基板上に粉末を分散して、顕微鏡で粉末写真を撮り一個毎に自動で画像から測定した。
会社名:Malvern
装置名:morphologi G3S
比表面積は、BET法により測定した。
[2.第1の特性比較(リン酸チタン)]
第1の特性比較では、0.5wt%の軟磁性微粉末対してシリコーンオリゴマー層を形成した。その際にシリコーンオリゴマーの添加量とリン酸チタンの添加量が合計0.50wt%となるように添加量を調整し、実施例1〜4、比較例1〜3のサンプルとなる圧粉磁心を作製した。表1は、実施例1〜4、比較例1〜3の圧粉磁心の作製に使用した軟磁性材料の配合条件を示す表である。
表1は、絶縁微粉末の添加量、シリコーンオリゴマーの添加量、リン酸チタンの添加量、リン酸チタンの添加量に対するシリコーンオリゴマーの添加量の割合を示す。B/A比率は、シリコーンオリゴマーの添加量をA、リン酸チタンの添加量をBとし、B/A×100により算出した。
Figure 2019201191
また、実施例1〜4、比較例1〜3においては、軟磁性微粉末として、表2に示す粒度分布、円形度、保持力を有するFe−6.5Siガスアトマイズ粉末を使用した。
Figure 2019201191
つまり、実施例1〜4、比較例1〜3で使用した軟磁性微粉末は、表2の円形度を有し、Si含有量を6.5wt%とするFe−Si合金粉末からなる軟磁性粉末をガスアトマイズ法で作製した粉末である。
(実施例1)
作製した軟磁性粉末を使用し、実施例1の圧粉磁心を下記のように作製した。
(1)作製した軟磁性粉末に対して、比表面積が100m/gのアルミナ粉末を0.5wt%混合した。
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.45wt%と、リン酸チタンを0.05%添加して混合した。B/A比率は11.1である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(5)乾燥させた粉末に対してメチルフェニル系シリコーンレジン(品名:TSR−108)を0.8wt%混合して、大気雰囲気中、150℃で2時間の加熱乾燥を行った。
(6)加熱乾燥後に生じた塊を解砕する目的で目開きえ500μmの篩通しを行った。その後、潤滑剤としてエチレンビスステアルアミドを0.5wt%を混合した。
(7)上記工程により絶縁層が形成された軟磁性粉末を、外径17mm、内径11mm、高さ8mmのトロイダル形状の容器に充填し、成形圧力15ton/cmで成形体を作製した。
(8)最後に、成形体を850℃の熱処理温度で窒素雰囲気中にて2時間熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
(実施例2)
実施例2は、実施例1の上記(2)の工程を下記の工程とし、上記(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.40wt%と、リン酸チタンを0.10%添加して混合した。実施例2において、B/A比率は25である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(実施例3)
実施例3は、実施例1の上記(2)の工程を下記の工程とし、上記(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.25wt%と、リン酸チタンを0.25%添加して混合した。B/A比率は100である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(実施例4)
実施例4は、実施例1の上記(2)の工程を下記の工程とし、上記(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.10wt%と、リン酸チタンを0.40%添加して混合した。B/A比率は400である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(比較例1)
比較例1は、実施例1の上記(2)の工程を下記の工程とし、上記(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.50wt%添加して混合した。B/A比率は0である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(比較例2)
比較例2は、実施例1の上記(2)の工程を下記の工程とし、上記(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.48wt%と、リン酸チタンを0.02%添加し混合した。B/A比率は4.2である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(比較例3)
比較例3は、実施例1の上記(2)の工程を下記の工程とし、上記(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、リン酸チタンを0.5wt%添加して混合し、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
表3に、実施例1〜4、及び比較例1〜3の透磁率、損失の算出結果及び、100時間の高温高湿度試験における鉄損Pcの変化率、100時間の高温高湿度試験における透磁率μの変化率を示す。尚、100時間の高温高湿度試験においては、圧粉磁心を温度85℃、湿度85%の環境下に100時間放置した。また、図3は実施例1〜4、比較例1〜3の圧粉磁心のリン酸チタンの添加量と密度の関係を示すグラフであり、図4は実施例1〜4、比較例1〜3の圧粉磁心のリン酸チタンの添加量と直流重畳特性の関係を示すグラフであり、図5は100時間の高温高湿度試験における実施例1〜4、比較例1〜3の圧粉磁心のリン酸チタンの添加量と透磁率と鉄損の変化率の関係を示すグラフである。
Figure 2019201191
表3から100時間の高温高湿度試験において、実施例1〜4の鉄損の変化率及び透磁率の変化率が±5.5%未満であることが確認できる。鉄損の変化率は、100時間の高温高湿度試験前の鉄損Pc0と100時間の高温高湿度試験後の鉄損Pc1とし、以下の式(5)により算出した。
[式(5)]
(Pc1−Pc0)÷Pc0×100=鉄損の変化率(%)・・・(5)
また、透磁率の変化率は、透磁率μ0(0kA/m)について、100時間の高温高湿度試験前の透磁率μ0と100時間の高温高湿度試験後の透磁率μ1とし、以下の式(6)により算出した。
[式(6)]
(μ1−μ0)÷μ0×100=透磁率の変化率(%)・・・(6)
実施例1〜4の鉄損の変化率は、5.5%未満であり、比較例1〜3の鉄損の変化率は、5.5%以上となる。また、比較例1〜比較例3のうち最も鉄損の変化率が小さい比較例2が7.8%であるのに対して、実施例1〜4の中で最も鉄損の変化率が大きい実施例が5.1%であった。実施例4の鉄損の変化率は、比較例2と比べて、約65%となり、実施例1〜4は、比較例1〜3と比較して100時間の高温高湿度試験において鉄損の変化が少ないことがわかる。また、実施例1〜4の透磁率の変化率は、−5.5%未満であり、比較例1〜3の透磁率の変化率は、−5.5%以上となる。これより、実施例1〜4は、比較例1〜3と比較して100時間の高温高湿度試験において透磁率の変化が少ないことがわかる。
実施例1〜4におけるリン酸チタンとシリコーンオリゴマーの比率(リン酸チタン/シリコーンオリゴマー)は、11.1〜400である。また、図3〜5より、リン酸チタンとシリコーンオリゴマーの比率を10とした場合でも、鉄損の変化率及び透磁率の変化率は、±5%未満となる。以上により、シリコーンオリゴマーと、シリコーンオリゴマーの添加量の10%以上のリン酸チタンとの混合物とを含むシリコーンオリゴマー層を有する軟磁性材料を使用することで、高温高湿度の環境下に長時間晒しても特性悪化が少なく、信頼性に優れた圧粉磁心を得ることができる。
また、表3の透磁率は、振幅透磁率であり、前述のインピーダンスアナライザーを使用することで、20kHz、1.0Vにおける各磁界の強さのインダクタンスから算出した。表3中の「μ(0kA/m)」は、直流を重畳させていない状態、すなわち磁界の強さが0H(A/m)の時の初透磁率を示す。表3中の「μ(10kA/m)」は、磁界の強さが10kH(kA/m)の時の透磁率を示す。表3中の「μ(10k)/μ0」は、初透磁率と磁界の強さが10kH(kA/m)の時の透磁率より算出した直流重畳特性を示す。表3に示すように、実施例1〜4においては、直流重畳特性μ(10kA/m)/μ0が53%以上であり、優れた直流重畳特性が得られた。
[3.第2の特性比較(シリコーンオリゴマーの添加量)]
第2の特性比較では、0.5wt%の軟磁性微粉末対してシリコーンオリゴマー層を形成した。第1の特性比較では、その際のシリコーンオリゴマーの添加量とリン酸チタンの添加量を合計0.50wt%としたが、本特性比較では、シリコーンオリゴマーの添加量とリン酸チタンの添加量が合計で0.50wt%以外となるように調整し、実施例5〜8のサンプルとなる圧粉磁心を作製した。表4は、実施例5〜8の圧粉磁心の作製に使用した軟磁性材料の配合条件を示す表である。
表4は、絶縁微粉末の添加量、シリコーンオリゴマーの添加量、リン酸チタンの添加量、リン酸チタンの添加量に対するシリコーンオリゴマーの添加量の割合を示す。
Figure 2019201191
(実施例5)
第1の特性比較で使用した軟磁性粉末を使用し、実施例1の(2)の工程を下記の工程とし、(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.50wt%と、リン酸チタンを0.50%添加して混合した。B/A比率は100である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(実施例6)
第1の特性比較で使用した軟磁性粉末を使用し、実施例1の(2)の工程を下記の工程とし、(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.90wt%と、リン酸チタンを0.10%添加して混合した。B/A比率は11.1である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(実施例7)
第1の特性比較で使用した軟磁性粉末を使用し、実施例1の(2)の工程を下記の工程とし、(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを1.00wt%と、リン酸チタンを0.50%添加して混合した。B/A比率は50である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(実施例8)
第1の特性比較で使用した軟磁性粉末を使用し、実施例1の(2)の工程を下記の工程とし、(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.05wt%と、リン酸チタンを0.05%添加して混合した。B/A比率は100である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
表5に、実施例5〜8の透磁率、損失の算出結果及び、100時間の高温高湿度試験における鉄損Pcの変化率、100時間の高温高湿度試験における透磁率μの変化率を示す。
Figure 2019201191
表5に示すように100時間の高温高湿度試験において、実施例5〜8は、鉄損の変化率及び透磁率の変化率が±5.5%未満であることが確認できる。つまり、軟磁性粉末に対して0.05〜1.00wt%のシリコーンオリゴマーと、シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上のリン酸チタンとの混合物とを含むシリコーンオリゴマー層を有する軟磁性材料を使用することで、高温高湿度の環境下に長時間晒しても特性悪化が少なく、信頼性に優れた圧粉磁心を得ることができる。
[4.第3の特性比較(チタンオリゴマー)]
第3の特性比較では、シリコーンオリゴマー層を形成する際のチタンオリゴマーの添加量を変えることで、実施例9〜13、比較例1のサンプルとなる圧粉磁心を作製した。表6は、実施例9〜13、比較例1の圧粉磁心の作製に使用した軟磁性材料の配合条件を示す表である。
表6は、絶縁微粉末の添加量、シリコーンオリゴマーの添加量、リン酸チタンの添加量、リン酸チタンの添加量に対するシリコーンオリゴマーの添加量の割合を示す。C/A比率は、シリコーンオリゴマーの添加量をA、チタンオリゴマーの添加量をCとし、C/A×100により算出した。
Figure 2019201191
(実施例9)
第1の特性比較で使用した軟磁性粉末を使用し、実施例1の(2)の工程を下記の工程とし、(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.45wt%と、チタンオリゴマーを0.05%添加して混合した。実施例9において、シリコーンオリゴマーの添加量をAとし、チタンオリゴマーの添加量をCとすると、シリコーンオリゴマーとチタンオリゴマーとの比率は、C/Aで表される。実施例9において、C/A比率は11.1である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(実施例10)
第1の特性比較で使用した軟磁性粉末を使用し、実施例1の(2)の工程を下記の工程とし、(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.40wt%と、チタンオリゴマーを0.10%添加して混合した。実施例10において、C/A比率は25である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(実施例11)
第1の特性比較で使用した軟磁性粉末を使用し、実施例1の(2)の工程を下記の工程とし、(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.25wt%と、チタンオリゴマーを0.25%添加して混合した。C/A比率は100である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(実施例12)
第1の特性比較で使用した軟磁性粉末を使用し、実施例1の(2)の工程を下記の工程とし、(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.50wt%と、チタンオリゴマーを0.50%添加して混合した。C/A比率は100である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
(実施例13)
第1の特性比較で使用した軟磁性粉末を使用し、実施例1の(2)の工程を下記の工程とし、(1)〜(8)と同じ工程を順に行った
(2)アルミナ粉末が混合された軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーを0.10wt%と、チタンオリゴマーを0.40%添加して混合した。C/A比率は400である。混合後、150℃で1時間の加熱乾燥を行った。
表7に、実施例5〜8の透磁率、損失の算出結果及び、100時間の高温高湿度試験における鉄損Pcの変化率、100時間の高温高湿度試験における透磁率μの変化率を示す。また、図6は実施例8〜13、比較例1の圧粉磁心のチタンオリゴマーの添加量と密度の関係を示すグラフであり、図7は実施例8〜13、比較例1の圧粉磁心のチタンオリゴマーの添加量と直流重畳特性の関係を示すグラフであり、図8は恒温高湿試験における実施例8〜13、比較例1の圧粉磁心のチタンオリゴマーの添加量と透磁率と鉄損の変化率の関係を示すグラフである
Figure 2019201191
表7に示すように、100時間の高温高湿度試験においては、実施例9〜13は、鉄損の変化率及び透磁率の変化率が±5.5%未満であることが確認できる。つまり、リン酸チタンに代えてチタンオリゴマーを使用した場合においても100時間の高温高湿度試験において鉄損の変化率及び透磁率の変化率が少なく高い信頼性が担保されていることがわかる。
また、実施例9〜13におけるリン酸チタンとチタンオリゴマーのC/A比率は、11.1〜400である。さらに、図6〜8より、リン酸チタンとチタンオリゴマーの比率を10とした場合でも、鉄損の変化率及び透磁率の変化率は、±5%未満となる。以上により、シリコーンオリゴマーと、シリコーンオリゴマーの添加量の10%以上のチタンオリゴマーとの混合物とを含むシリコーンオリゴマー層を有する軟磁性材料を使用することで、高温高湿度の環境下に長時間晒しても特性悪化が少なく、信頼性に優れた圧粉磁心を得ることができる。
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、本実施形態では、シリコーンオリゴマー層を形成する際に、シリコーンオリゴマーに対して、リン酸チタンやチタンオリゴマーのうちの一方を添加しているが、これに限らない。リン酸チタンやチタンオリゴマーのうちの一方の添加量がシリコーンオリゴマーの添加量の10%以上であれば、リン酸チタンとチタンオリゴマーを混合しても良い。

Claims (10)

  1. 軟磁性粉末と、
    前記軟磁性粉末の表面を覆う絶縁層と、
    を有し、
    前記絶縁層は、シリコーンオリゴマーとリン酸チタンとの混合物を含むシリコーンオリゴマー層を備え、
    前記リン酸チタンの添加量は、前記シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上であることを特徴とする軟磁性材料。
  2. 前記リン酸チタンの添加量が、前記シリコーンオリゴマーの添加量の11.1wt%〜400wt%であることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性材料。
  3. 軟磁性粉末と、
    前記軟磁性粉末の表面を覆う絶縁層と、
    を有し、
    前記絶縁層は、シリコーンオリゴマーとチタンオリゴマーとの混合物を含むシリコーンオリゴマー層を備え、
    前記チタンオリゴマーの添加量は、前記シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上であることを特徴とする軟磁性材料。
  4. 前記チタンオリゴマーの添加量は、前記シリコーンオリゴマーの添加量の11.1wt%〜400wt%であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性材料。
  5. 前記絶縁層は、
    前記シリコーンオリゴマー層を覆うシリコーンレジン層をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の軟磁性材料。
  6. 前記絶縁層は、
    前記軟磁性粉末を覆う絶縁微粉末を含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の軟磁性材料。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の軟磁性材料を使用した圧粉磁心。
  8. 軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーと、前記シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上のリン酸チタンと、を添加して混合するシリコーンオリゴマー層形成工程と、
    前記シリコーンオリゴマー層形成工程で得た混合物に対してシリコーンレジンを添加して混合するシリコーンレジン層形成工程と、
    前記シリコーンレジン層形成工程で得た混合物を所定の容器に入れて加圧成型する成型工程と、
    前記成型工程で得た成型体を熱処理する熱処理工程と、
    を備えること、
    を特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  9. 軟磁性粉末に対して、シリコーンオリゴマーと、前記シリコーンオリゴマーの添加量の10wt%以上のチタンオリゴマーと、を添加して混合するシリコーンオリゴマー層形成工程と、
    前記シリコーンオリゴマー層形成工程で得た混合物に対してシリコーンレジンを添加して混合するシリコーンレジン層形成工程と、
    前記シリコーンレジン層形成工程で得た混合物を所定の容器に入れて加圧成型する成型工程と、
    前記成型工程で得た成型体を熱処理する熱処理工程と、
    を備えること、
    を特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  10. 前記シリコーンオリゴマー層形成工程において、100℃〜200℃で乾燥させることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の圧粉磁心の製造方法。
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