JP2019199631A - 溶射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶射装置における溶射材料の堆積を抑制することができる。【解決手段】溶射装置は、第1の気体導入部と、保護層形成部と、を備える。第1の気体導入部は、アノード電極およびカソード電極を収容する外筒の内部にガスを導入する。保護層形成部は、第1の気体導入部から導入されるガスにより、プラズマ噴流が通過する空間に露出するアノード電極の表面を覆う、プラズマ噴流と分離した保護層を形成する。【選択図】図1D

Description

以下の開示は、溶射装置に関する。
溶射装置は、溶射材料と作動ガスとを溶射ガンへ輸送及び供給し、溶射ガンへ電力を印加してプラズマを発生する。溶射ガンにおいては、発生したプラズマの熱により溶射材料が溶融され、プラズマ化した作動ガスとともに対象物へ溶射されて皮膜を形成する。溶射とは、プラズマを発生させ、プラズマの熱を用いて溶射材料を溶融し、溶融した溶射材料により対象物表面に溶射皮膜を形成する表面改質技術である。
プラズマ溶射により形成される皮膜の品質を安定させるため、様々な技術が提案されている。たとえば、溶射ガンの内部を冷却することで発生する結露を防止する技術が提案されている(特許文献1)。また、溶射装置の電子部品を低コストで冷却する技術が提案されている(特許文献2)。また、溶融した溶射材料の酸化による溶射皮膜の品質低下を防止する技術が提案されている(特許文献3)。また、溶射材料の粒子が噴射ノズルの内壁に付着することを防止するため、ノズルを複数のリング状部品を筒状に連結して構成し、内壁段差部分に環状の噴射口を形成した加速ノズルが提案されている(特許文献4)。また、同様に溶射材料の粒子が噴射ノズルの内壁に付着することを防止するため、噴射ノズルの周方向内壁にシールドガスを筒状に噴射する噴射口を設けた噴射ノズル装置が提案されている(特許文献5)。さらに、溶射材料の溶融した粒子のノズル内壁への付着を防止するため、ノズルの先端に向けて内径が連続的または段階的に拡大するノズル孔を設け、ノズル孔の周方向内壁にシールドガスを噴射する噴射口を形成した溶射装置が提案されている(特許文献6)。
特開2001−81540号公報 特開2004−304011号公報 特開2017−222921号公報 特許第4268193号公報 特許第4897001号公報 特許第5284774号公報 横澤 肇、「ボルテックスチューブのエネルギ分離性能に関する研究」、名古屋大学図書No.806997、1980年2月2日 川端 浩和、「高温タービン翼フィルム冷却の熱流体特性及び流れ制御技術に関する研究」、平成26年度岩手大学大学院工学研究科、博士学位論文
本開示は、溶射装置における溶射材料の堆積を抑制する技術を提供する。
本開示の一態様による溶射装置は、第1の気体導入部と、保護層形成部と、を備える。第1の気体導入部は、アノード電極およびカソード電極を収容する外筒の内部にガスを導入する。保護層形成部は、第1の気体導入部から導入されるガスにより、プラズマ噴流が通過する空間に露出するアノード電極の表面を覆う、前記プラズマ噴流と分離した保護層を形成する。
本開示によれば、溶射装置における溶射材料の堆積を抑制することができる。
図1Aは、第1の実施形態に係る溶射装置の概略正面図である。 図1Bは、第1の実施形態に係る溶射装置を図1AのA−Aに沿って見た概略断面図である。 図1Cは、第1の実施形態に係る溶射装置の概略背面図である。 図1Dは、第1の実施形態に係る溶射装置を図1AのB−Bに沿って見た概略断面図である。 図2Aは、第1の実施形態に係る溶射装置の保護層形成部の概略正面図である。 図2Bは、第1の実施形態に係る溶射装置の保護層形成部を図2AのA’−A’に沿って見た概略断面図である。 図3Aは、第2の実施形態に係る溶射装置の概略正面図である。 図3Bは、第2の実施形態に係る溶射装置を図3AのA−Aに沿って見た概略断面図である。 図3Cは、第2の実施形態に係る溶射装置の概略背面図である。 図3Dは、第2の実施形態に係る溶射装置の保護層形成部について説明するための図である。 図4Aは、第2の実施形態に係る溶射装置の保護層形成部の一例について説明するための図である。 図4Bは、第2の実施形態に係る溶射装置の保護層形成部の一例についてさらに説明するための図である。 図5Aは、第3の実施形態に係る溶射装置の概略正面図である。 図5Bは、第3の実施形態に係る溶射装置を図5AのA−Aに沿って見た概略断面図である。 図5Cは、第3の実施形態に係る溶射装置の概略背面図である。 図5Dは、第3の実施形態に係る溶射装置の保護層形成部について説明するための図である。
開示する一つの実施形態において、溶射装置は、第1の気体導入部と、保護層形成部と、を備える。第1の気体導入部は、アノード電極およびカソード電極を収容する外筒の内部にガスを導入する。保護層形成部は、第1の気体導入部から導入されるガスにより、プラズマ噴流が通過する空間に露出するアノード電極の表面を覆う、プラズマ噴流と分離した保護層を形成する。
また、開示する一つの実施形態において、保護層形成部は、第1の気体導入部から導入されるガスと、アノード電極の表面付近に存在する空気と、の2層を含む保護層を形成してもよい。
また、開示する一つの実施形態において、保護層形成部は、カソード電極を周囲から包囲して固定される旋回整流部であり、第1の気体導入部は、保護層形成部に対して径方向外側からガスを導入してもよい。
また、開示する一つの実施形態において、旋回整流部は、略リング形状であり、外側から内側に向けて径方向に対して傾斜して延びる2以上の案内溝を有してもよい。
また、開示する一つの実施形態において、旋回整流部は、外周部と、外周部よりも軸方向に厚みが少ない内周部と、を有し、案内溝は外周部に形成されてもよい。
また、開示する一つの実施形態において、保護層形成部は、気体通路と、円筒状部分と、孔部とを備えてもよい。気体通路は、アノード電極内に形成され、第1の気体導入部からガスが導入される。円筒状部分は、気体通路とプラズマ噴流が通過する空間と、を離隔する。孔部は、円筒状部分に形成され、気体通路とプラズマ噴流が通過する空間とを連通させる。
また、開示する一つの実施形態において、孔部は、円筒状部分の、プラズマ噴流が通過する空間側の開口部が反対側の開口部よりもプラズマ噴流の下流側に位置するよう傾斜してもよい。
また、開示する一つの実施形態において、孔部は、孔部の中心軸が、外筒の中心方向から接線方向にずれるように形成されてもよい。
また、開示する一つの実施形態において、孔部は、円筒状部分の、プラズマ噴流が通過する空間側の開口部に向けて反対側の開口部から広がる扇形状であってもよい。
また、開示する一つの実施形態に係る溶射装置は、カソード電極の外周に沿って設けられる空間に第2のガスを導入する第2の気体導入部をさらに備えてもよい。
また、開示する一つの実施形態において、保護層形成部は、気体通路と、第1の多孔質部と、を備えてもよい。気体通路は、アノード電極内に形成され、第1の気体導入部からガスが導入される。第1の多孔質部は、表面がプラズマ噴流が通過する空間に露出され、気体通路と、プラズマ噴流が通過する空間とを隔離する。
また、開示する一つの実施形態において、第1の多孔質部は、金属の焼結体または多孔質金属であってもよい。
また、開示する一つの実施形態に係る溶射装置は、カソード電極の周囲に配置され、誘電体材料で形成される第2の多孔質部と、第2の多孔質部にガスを導入する第2の気体導入部と、をさらに備えてもよい。
以下に、開示する実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態は限定的なものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る溶射装置100Aは、プラズマ噴流を発生させて対象物に溶射皮膜を形成するプラズマ溶射装置たとえば溶射ガンである。溶射ガンは、たとえば、筒状に形成されるアノード電極とカソード電極とを備える。カソード電極の筒内部に作動ガスと溶射材料とが導入される。アノード電極とカソード電極との間に直流電力が印加され、作動ガスのプラズマ噴流が発生する。発生したプラズマ噴流により溶射材料が溶解し、対象物上に付着して溶射皮膜を形成する。なお、以下、発生したプラズマ噴流が通過する筒部をノズルとも呼ぶ。
プラズマ噴流が発生するときには、プラズマの熱の影響によりノズル内表面上に溶射材料の粉体が付着することがある。溶射材料の粉体が堆積すると発生するプラズマ噴流の状態が変化する。また、堆積量が増加するとノズルが閉塞する可能性もある。
この点、カソード電極の周囲にガスを吹き付け、吹き付けたガスをプラズマ噴流と一緒に下流に吹き出してカソード電極の周囲および下流における溶射材料の堆積を防止することが考えられる。しかし、かかる手段では、吹き付けるガスの流れが短絡的になり下流経路全体を保護することは難しい。また、カソード電極に吹き付けるガスと作動ガスとが合流して流量が増大することでプラズマ噴流の温度が低下することが考えられる。また、カソード電極に吹き付けるガスとプラズマ噴流とが接触すると、プラズマ噴流の温度が不均一になったり温度勾配が大きくなったりすることも考えられる。他方、溶射装置はエジェクタ効果を利用した構造を有する場合、カソード電極側の空間とプラズマ噴流通路との間に差圧が発生する。このため、カソード電極の作動ガス孔の周辺に溶射材料が堆積しやすい。
第1の実施形態に係る溶射装置100Aは、ノズル内に旋回流を生成することでノズルの内表面を保護する保護層を形成するとともに、旋回流によりノズルの内表面を冷却する。このため、第1の実施形態に係る溶射装置100Aは、溶射装置100A内、たとえばノズルの内壁に溶射材料が堆積することを抑制することができる。
(第1の実施形態に係る溶射装置100Aの構成の一例)
図1Aは、第1の実施形態に係る溶射装置100Aの概略正面図である。図1Aは、溶射装置100Aを出口側(プラズマ噴流が噴出する側)から見た状態を示す。図1Bは、第1の実施形態に係る溶射装置100Aを図1AのA−Aに沿って見た概略断面図である。図1Cは、第1の実施形態に係る溶射装置100Aの概略背面図である。図1Cは、第1の実施形態に係る溶射装置100Aを入口側(溶射材料が導入される側)から見た状態を示す。図1Dは、第1の実施形態に係る溶射装置100Aを図1AのB−Bに沿って見た概略断面図である。
溶射装置100Aは、外筒1、アノード電極2、カソード電極3、冷却機構4、保護層形成部5、第1の気体導入部6、を備える。
外筒1は、溶射装置100Aの外側構造部である。外筒1は、絶縁体または誘電体で形成される。外筒1は略円筒状の形状を有する。外筒1の一方端は、溶射材料および作動ガスが導入される入口11である。外筒1の他方端は、溶射装置100A内で発生したプラズマ噴流が噴出される出口12である。外筒1は、内部にアノード電極2およびカソード電極3を収容する。また、外筒1内部には、冷却機構4の冷却媒体CMが流れる流路の一部が収容される。
アノード電極2は、外筒1の内側かつ出口12近傍に配置される。アノード電極2は略円筒状の形状を有し、中心にプラズマ噴流が通過する空間S1が形成される。
カソード電極3は、アノード電極2よりも外筒1の入口11側に配置される。カソード電極3は、略円筒状の形状を有し、中心に作動ガスおよび溶射材料が通過する空間S2が形成される。
冷却機構4は、冷却媒体CMを溶射装置100Aの内部に循環させることにより、アノード電極2およびカソード電極3を冷却する。図1Aの例では、外筒1の内部に冷却媒体CMを導入する流路が設けられ、カソード電極3の近傍に冷却媒体CMが導入される。冷却媒体CMは、カソード電極3を冷却した後、アノード電極2の近傍に引き回され、アノード電極2の周囲を通過する(図1D参照)。その後、冷却媒体CMは、導入された方向とは反対側の方向へと冷却機構4の流路内を通って移送される。なお、冷却機構4の構成や配置は特に限定されず、アノード電極2およびカソード電極3を冷却することができれば、異なる位置に流路を配置してもよい。
保護層形成部5は、第1の気体導入部6から導入されるガスにより、空間S1に露出するアノード電極2の表面を覆う保護層を形成する。保護層は、第1の気体導入部6から導入されるガスと、アノード電極2の表面付近に存在する大気と、の2層から構成される。保護層形成部5は略リング状であり、中央をカソード電極3が貫通する。保護層形成部5は、カソード電極3の周囲にカソード電極3を包囲するように配置され、アノード電極2とカソード電極3との間を隔絶する。保護層形成部5は、絶縁体または誘電体で形成される。保護層形成部5は、たとえば、カソード電極3を周囲から包囲して固定されるリング形状の旋回整流部(旋回整流板)である。保護層形成部5は、保護層形成部5の外周側から内周側へ向けて吹き付けられるガスを整流してカソード電極3に向けて案内し旋回流を生成する。
図2Aは、第1の実施形態に係る溶射装置100Aの保護層形成部5の概略正面図である。図2Bは、第1の実施形態に係る溶射装置100Aの保護層形成部5を図2AのA’−A’に沿って見た概略断面図である。
図2Aに示すように、保護層形成部5は、案内溝51と、内周溝52と、フランジ53と、を有する。
案内溝51は、保護層形成部5の外周部に複数設けられ、保護層形成部5の外側から内側に向けて保護層形成部5の径方向に対して各々同様の角度に傾斜して形成される。案内溝51は、保護層形成部5の出口12側表面を切り欠いて形成される凹部である。図2Aの例では、保護層形成部5は6つの案内溝51を有する。ただし、案内溝51の数は6に限定されない。案内溝51は2以上の任意の数であってよい。案内溝51の数はたとえば3以上が好ましい。案内溝51は、保護層形成部5の外側から内側へと吹き付けられるガスをカソード電極3の方向に案内する。
内周溝52は、保護層形成部5の内周部にカソード電極3を囲むように設けられ、案内溝51と略同一の厚みを有する。内周溝52は、案内溝51に沿って案内される気体をカソード電極3の周囲を旋回する方向に案内する。
フランジ53は、保護層形成部5の最外周部に設けられ、入口11側に配置される。
第1の気体導入部6(図1D参照)は、アノード電極2およびカソード電極3を収容する外筒1の内部にガスを導入する。第1の気体導入部6は、外筒1の外部から保護層形成部5に向けてガスを導入する。第1の気体導入部6が導入するガスを以下、シールドガスSGと呼ぶ。第1の気体導入部6は、外筒1を貫通してシールドガスSGを案内する気体通路61と、シールドガスSGの流量を制御しシールドガスSGを供給する気体供給部62(たとえばマスフローコントローラ、MFC)と、気体通路61と気体供給部62とを接続する配管63とを有する(図1D参照)。第1の気体導入部6の気体通路61は、外筒1を貫通して保護層形成部5の外周に至る。第1の気体導入部6の気体供給部62は、配管63を介して気体通路61に所定の流量のシールドガスSGを供給する。気体通路61は、保護層形成部5の外周に向けてシールドガスSGを案内する。シールドガスSGは、保護層形成部5の案内溝51に沿って内周溝52に至り、カソード電極3の周囲を旋回する旋回流を形成する。形成された旋回流は、カソード電極3側からアノード電極2側へと流れ、遠心力によりアノード電極2の表面上を旋回する保護層を形成する。その後、旋回流は、出口12から溶射装置100Aの外に吹き出される。
なお、図示しないが、溶射装置100Aはアノード電極2とカソード電極3との間に直流電力を印加して放電させる手段を備える。
(プラズマ溶射時の各部の動作等)
溶射装置100Aにおいてプラズマ溶射を実行する際には、入口11から作動ガスと溶射材料とが空間S2へ導入される。また、冷却機構4による冷却、第1の気体導入部6から保護層形成部5に導入されるシールドガスSGによる旋回流の形成が実行される。また、アノード電極2とカソード電極3との間に直流電力が印加され放電が行われる。導入される作動ガスは放電によりプラズマ化する。プラズマが発する熱は溶射材料を溶融しプラズマ噴流が発生される。プラズマ噴流は、空間S1を通って出口12から対象物へと噴射される。このとき、空間S1に露出されるアノード電極2の表面と旋回流の間には、空間S1内の空気が存在する。保護層形成部5により形成されたシールドガスSGの旋回流の遠心力によって空間S1内の空気がアノード電極2の表面に押し付けられ保護層が形成される。この時形成される保護層は、大気の層と、シールドガスSGの層の2層を含む。
(第1の実施形態の効果)
上記のように、第1の実施形態に係る溶射装置は、第1の気体導入部と、保護層形成部と、を備える。第1の気体導入部は、アノード電極およびカソード電極を収容する外筒の内部にガスを導入する。保護層形成部は、第1の気体導入部から導入されるガスにより、プラズマ噴流と分離した保護層を形成する。保護層は、プラズマ噴流が通過する空間S1に露出するアノード電極の表面を覆う。これにより、保護層は、溶射装置内で発生されるプラズマ噴流による熱や生成物からアノード電極を保護する。また、保護層は、プラズマ噴流による熱や生成物とアノード電極との間の緩衝材として働く。また、保護層は、アノード電極を冷却する機能も有する。このため、第1の実施形態によれば、溶射装置における溶射材料の堆積を抑制することができる。また、保護層は旋回流であるため、溶射装置のノズル中心近傍を流れるプラズマ噴流と混合せず、プラズマ噴流を阻害しない。
また、第1の実施形態に係る溶射装置において、保護層形成部は、カソード電極を周囲から包囲して固定される旋回整流部であり、第1の気体導入部は、保護層形成部に対して径方向外側から気体を導入する。このため、旋回整流部は高速の旋回流を発生させて、遠心力により、保護層をアノード電極の表面上に押し付けつつ旋回させる。このとき、旋回流は、音速または音速に近い高速ともなる。このため、第1の実施形態に係る溶射装置は、アノード電極をプラズマ噴流から保護すると同時に高速の旋回流により冷却することができる。
また、第1の実施形態に係る溶射装置は、高速の旋回流である保護層により、アノード電極およびカソード電極上に発生または付着する酸化膜や付着物などをクリーニングすることができる。たとえば、上記第1の実施形態において、アノード電極2およびカソード電極3に電力を印加しない状態で、シールドガスSGにブラスト粉体を添加し、保護層形成部5に旋回流を形成させる。これによって、アノード電極2およびカソード電極3の表面をクリーニングすることができる。また、アノード電極2およびカソード電極3に電力を印加した状態でクリーニングを行う場合には、ブラスト粉体に代えて反応性ガスをシールドガスSGに添加してもよい。また、ブラスト粉体に加えて反応性ガスをシールドガスSGに添加してもよい。
また、第1の実施形態に係る溶射装置において、旋回整流部は、略リング形状であり、外側から内側に向けて径方向に対して傾斜して延びる2以上の案内溝を有する。また、旋回整流部は、外周部と、外周部よりも軸方向に厚みが少ない内周部と、を有し、案内溝は外周部に形成される。このため、第1の実施形態に係る溶射装置は、簡易な構成により保護層を形成して溶射材料の堆積を抑制することができる。
(変形例1:保護層形成部5の形状)
上記第1の実施形態においては、保護層形成部5に案内溝51と内周溝52とを設けて旋回流を発生させるものとした。これに限らず、案内溝51に代えて、貫通孔を設けてもよい。たとえば、保護層形成部5の外周から径方向に傾斜して延びる複数の孔を、保護層形成部5の軸方向に延び空間S1側で開口するリング状の孔で相互に連通させて貫通孔を形成してもよい。保護層形成部5の外周上に開口する孔の数は、案内溝51と同様、特に限定されないが、2以上の孔を設けることが好ましい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る溶射装置100Bは、第1の実施形態に係る溶射装置100Aと異なり、アノード電極の内部に形成されガスを通過させる気体通路(気体通路21、後述)を備える。そして、第2の実施形態に係る溶射装置100Bのアノード電極は、アノード電極内部に形成されガスを通過させる気体通路とプラズマ噴流が通過する空間S1とを連通させる孔部を備える。そして、第2の実施形態に係る溶射装置100Bは、アノード電極内部に形成される気体通路から、プラズマ噴流が通過する空間S1に露出するアノード電極の表面に向けてガスを流すことにより膜状の層流を形成する。第2の実施形態では、かかる膜状の層流により保護層を形成する。
(第2の実施形態に係る溶射装置100Bの構成の一例)
図3Aは、第2の実施形態に係る溶射装置100Bの概略正面図である。図3Bは、第2の実施形態に係る溶射装置100Bを図3AのA−Aに沿って見た概略断面図である。図3Cは、第2の実施形態に係る溶射装置100Bの概略背面図である。図3Dは、第2の実施形態に係る溶射装置100Bの保護層形成部5Bについて説明するための図である。第2の実施形態に係る溶射装置100Bの大まかな構成は第1の実施形態に係る溶射装置100Aと同様である。このため、同様の構成については説明を省略し、同様の参照符号を付する。
図3A乃至図3Dに示すように、第2の実施形態に係る溶射装置100Bは、溶射装置100Aと同様、外筒1B、アノード電極2B、カソード電極3B、冷却機構4Bを備える。溶射装置100Bはさらに、第1の気体導入部6B(図3D参照)と、第2の気体導入部7B(図3D参照)と、リング8と、を備える。
外筒1Bの構成および材料は、第1の実施形態に係る溶射装置100Aの外筒1と同様である。外筒1Bの入口11Bおよび出口12Bも、第1の実施形態に係る溶射装置100Aの外筒1の入口11および出口12と同様である。
アノード電極2Bは、気体通路21と、複数の孔部22と、円筒状部分23と、を備える。アノード電極2Bはまた、内部に冷却機構4Bの冷却媒体CMが流れる流路41Bが形成される。
気体通路21は、アノード電極2Bの内部に形成され、第1の気体導入部6Bと連通する。気体通路21はまた、円筒状部分23に形成される複数の孔部22によって空間S1と連通される。第1の気体導入部6Bは、気体通路21に第1のシールドガスSG1を導入する。
複数の孔部22は、円筒状部分23に形成され気体通路21と空間S1とを連通する。孔部22は、たとえば、円筒状部分23の気体通路21側表面では円形、円筒状部分23の空間S1側表面では楕円形であってよい。また、孔部22は、円筒状部分23の空間S1側の開口部が反対側の開口部よりも出口12Bに近くなるよう、傾斜をつけて形成される。また、孔部22は、空間S1側の開口部の径が反対側の開口部の径よりも大きくなるように形成してもよい。また、孔部22は、途中から分岐するように形成してもよい。たとえば、空間S1近傍で、孔部22が途中から主孔と、主孔よりも径方向に対する傾斜が大きい副孔とに分岐し、主孔と副孔の開口部が同じ大きさを持つように形成してもよい。また、孔部22は、孔部22の中心軸が、外筒1Bの中心方向から接線方向にずれるように形成してもよい。たとえば、孔部22を外筒1Bの断面上に投影した場合、孔部22の軸方向が外筒1Bの径方向に対して傾斜するように形成してもよい。
円筒状部分23は、プラズマ噴流が通過する空間S1に表面が露出する、アノード電極2Bの最内周部分である。円筒状部分23には、複数の孔部22が形成される。円筒状部分23は気体通路21と空間S1とを離隔し、複数の孔部22によって気体通路21と空間S1とを連通させる。
アノード電極2Bは、第1の気体導入部6Bから導入されるガスにより、空間S1に露出するアノード電極2Bの表面を覆う膜状の層流を保護層として形成する、保護層形成部5Bである。保護層は、第1の気体導入部6Bから導入されるガスによって構成される。
カソード電極3Bの構成は、第1の実施形態のカソード電極3と概ね同様である。
リング8は、カソード電極3Bを外側から包囲するように配置され、アノード電極2Bとカソード電極3Bとの間を隔絶する。リング8は、絶縁体または誘電体のリング状の部材である。リング8には、外筒1Bの入口11B側にリング8表面に沿って軸方向所定幅の空間S3が設けられる。また、リング8とカソード電極3Bとの間には、カソード電極3Bの周囲に径方向所定幅のリング状の空間S4が形成される。また、リング8とカソード電極3Bとの間には、空間S4と空間S1とを連通させる空間S5が設けられる。空間S5はたとえば、リング8の任意の位置に形成され、空間S4と空間S1とを連通させる貫通孔であってもよい。
第1の気体導入部6Bは、外筒1Bを貫通し、アノード電極2B内に形成される気体通路21と連通する気体通路61Bと、気体通路61Bに第1のシールドガスSG1を供給するMFC等の気体供給部62Bと、気体通路61Bと気体供給部62Bとを接続する配管63Bと、を有する。第1の気体導入部6Bの気体供給部62Bは、配管63Bを介して気体通路21に所定の流量の第1のシールドガスSG1を供給する。供給された第1のシールドガスSG1は、孔部22を通って、空間S1に露出するアノード電極2Bの表面上に膜状の層流である保護層を形成する。なお、第1のシールドガスSG1の流量は、アノード電極2Bの表面で放電しない流量に制御される。また、第1のシールドガスSG1の流量は、アノード電極2Bの表面を切れ目なく覆うように制御される。
第2の気体導入部7Bは、第2のシールドガスSG2を案内する気体通路71Bと、第2のシールドガスSG2の流量を制御し気体通路71Bに第2のシールドガスSG2を供給する気体供給部72B(たとえばMFC)と、外筒1Bを貫通して気体通路71Bと気体供給部72Bとを接続する配管73Bと、を有する。気体通路71Bは、リング8の入口11B側の空間S3、リング8とカソード電極3Bとの間に設けられる空間S4、S5を含む。気体通路71Bは、空間S3,S4,S5を通じて空間S1に連通する。気体通路71Bの空間S1側の開口部は、第2のシールドガスSG2がプラズマ噴流に混入しない位置に配置される。第2の気体導入部7Bは、所定の流量の第2のシールドガスSG2を、気体供給部72Bから配管73Bを介して気体通路71Bに供給し、気体通路71Bから空間S1へと第2のシールドガスを導入する。
このように、第2の実施形態に係る溶射装置100Bは、第1の気体導入部6Bと、アノード電極2B(気体通路21、孔部22、円筒状部分23)と、を含む、アノード電極2Bを冷却し保護する機構を備える。また、第2の実施形態に係る溶射装置100Bは、第2の気体導入部7Bと、リング8と、を含む、カソード電極3Bを冷却し保護する機構を備える。
図3Dは、第2の実施形態に係る溶射装置100Bの保護層形成部5Bについて説明するための図である。図3Dに示すように、第1の気体導入部6Bにより気体通路21に導入される第1のシールドガスSG1は、気体通路21から孔部22を通って空間S1に導入される。空間S1に導入された第1のシールドガスSG1は、孔部22の形状および傾斜角度により、出口12B方向に流れる膜状の層流を形成する。層流は膜冷却によりアノード電極2Bの表面を冷却し保護する。他方、第2の気体導入部7Bにより気体通路71Bに導入される第2のシールドガスSG2は、空間S3,S4,S5を通過して空間S1に導入される。空間S3,S4,S5を通過する間に、第2のシールドガスSG2は、カソード電極3Bを冷却する。
図4Aおよび図4Bは、第2の実施形態に係る溶射装置100Bの保護層形成部5Bの一例について説明するための図である。図4Aは、アノード電極2Bに形成される孔部22の配置を簡略的に示す。ここでは、アノード電極2Bを板状に広げた状態を図に示す。板状に展開したアノード電極2Bの大きさは、一例として、軸方向の長さ19.8ミリメートル(mm)、管径φ5mm、周長は5π(15.7mm)とする。板厚は1mm、孔径は0.6mmとする。また、孔部22は、傾斜角度30度でアノード電極の円筒状部分23を貫通する(図5B)。孔径0.6mm=1Dとして、各孔から出るガスの広がり範囲を周長方向の孔間隔3D、ガスの流れる長さは管長さ方向に15Dとする。上流側から1番目および3番目の列の孔を、ガスの広がり範囲、流れ長さに基づき配置する。そして、上流側から2番目および4番目の列の孔を1番目および3番目の列の孔よりも周長方向に1.5Dずらし、ガスの流れない箇所が発生しないように配置する。こうして、たとえば孔径を0.8mm以下として、全部で26個の孔を配置することができる。このように孔部22を配置することで、第1のシールドガスSGによりアノード電極2Bの表面上に切れ目なく膜状の保護層を形成することができる。
なお、第1のシールドガスSG1と第2のシールドガスSG2とを同一の供給部から供給することも可能ではあるが、本実施形態では、電気的短絡を防止する観点で別々の2系統からシールドガスを供給している。
(第2の実施形態の効果)
上記第2の実施形態に係る溶射装置100Bにおいて、保護層形成部は、気体通路と、円筒状部分と、孔部と、を備える。気体通路は、アノード電極内に形成され、第1の気体導入部からガスが導入される。円筒状部分は、気体通路と、プラズマ噴流が通過する空間と、を離隔する。孔部は、円筒状部分に形成され、気体通路とプラズマ噴流が通過する空間とを連通させる。このため、第2の実施形態によれば、アノード電極表面に、膜状の層流が形成される。このため、溶射装置は、膜冷却によりアノード電極表面を冷却し、保護することができる。また、溶射装置における溶射材料の堆積を抑制することができる。また、第2の実施形態に係る溶射装置においては、膜状の層流である保護層により、プラズマ噴流からの飛散物がアノード電極表面に密着することを抑止することができる。また、保護層は、プラズマ噴流による熱の影響による電極表面への酸化膜等の堆積を低減することができる。
また、第2の実施形態において、孔部は、円筒状部分23の空間S1側の開口部が反対側の開口部よりもプラズマ噴流の下流側に位置するよう傾斜してもよい。また、孔部は、孔部の中心軸が、外筒の中心方向から接線方向にずれた形状を有してもよい。たとえば、孔部は、孔部を外筒の断面上に投影した場合、孔部の軸方向が外筒の径方向に対して傾斜するように形成されてもよい。このため、プラズマ噴流が通過する空間に導入されるガスは、プラズマ噴流を貫通する方向に導入されることがなく、プラズマ噴流の流れを乱さない。このため、第2の実施形態に係る溶射装置は、プラズマ噴流の温度を低下させることがない。また、第2の実施形態においては、プラズマ噴流が通過する空間に導入されるガスは、プラズマ噴流に合流または混合するように導入されない。このため、第2の実施形態に係る溶射装置は、プラズマ噴流の温度を低下させることがない。
また、第2の実施形態において、孔部は、円筒状部分23の空間S1側の開口部に向けて反対側の開口部から広がる扇形状であってもよい。このように構成することで、溶射装置のアノード電極の表面上に切れ目なく膜状の保護層を形成することができる。
また、第2の実施形態に係る溶射装置100Bにおいて、保護層形成部5Bはさらに、カソード電極の外周に沿って設けられる空間(たとえば空間S4、S5)に第2のガスを導入する第2の気体導入部をさらに備えてもよい。このように構成することで、溶射装置はアノード電極を冷却保護するだけでなく、カソード電極を冷却することができる。
また、第2の実施形態に係る溶射装置は、第1の実施形態に係る溶射装置と同様、保護層をクリーニング手段として用いてもよい。
なお、プラズマ噴流が通過する空間の壁面をガスを用いて冷却する手法は種々考えられる。たとえば、ノズルの軸に対して垂直方向からガスを導入する場合や、ノズルの壁面に段差をつけて段差部の開口から下流方向にガスを導入する場合が考えられる。しかし、ノズルの軸に対して垂直方向からガスを導入した場合、ガスの出口部分では反時計回りと時計回りの1対の渦が形成される。そして、渦により壁から遠ざかる方向に速度成分が形成されるために、壁の冷却が阻害される。壁面に段差をつけた場合も、導入されるガスの方向がプラズマ噴流の流れの方向と略同一となって拡散せず、冷却効率は低下する。以上を考慮すると、第2の実施形態に係る溶射装置100Bの孔部22の形状は、上記のように軸方向に対して傾斜する方向とすることが好ましい。
(変形例)
上記第2の実施形態においては、リング8はリング状の部材であり、カソード電極3Bとの間に所定の空間S3乃至S5が設けられるものとした。これに限らず、リング8を同心円状に層をなす複数のリングを重ねた形状とし、各層の境界から第2のシールドガスSG2が導入されるように構成してもよい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る溶射装置100Cは、プラズマ噴流が通過する空間側に露出する部分が多孔質材料で形成されるアノード電極を備える。そして、溶射装置100Cは、多孔質のアノード電極表面からシールドガスを滲み出させて滲み出たガスの膜により保護層を形成することで溶射材料の堆積を抑制する。また、第3の実施形態に係る溶射装置100Cは、多孔質のアノード電極を介してシールドガスを滲み出させることで効率的にアノード電極を冷却する。
図5Aは、第3の実施形態に係る溶射装置100Cの概略正面図である。図5Bは、第3の実施形態に係る溶射装置100Cを図5AのA−Aに沿って見た概略断面図である。図5Cは、第3の実施形態に係る溶射装置100Cの概略背面図である。図5Dは、第3の実施形態に係る溶射装置100Cの保護層形成部5Cについて説明するための図である。第3の実施形態に係る溶射装置100Cの大まかな構成は第1、第2の実施形態に係る溶射装置100A,100Bと同様である。このため、同様の構成については説明を省略し、同様の参照符号を付する。
図5A乃至図5Dに示すように、第3の実施形態に係る溶射装置100Cは、溶射装置100A,100Bと同様、外筒1C、アノード電極2C、カソード電極3C、冷却機構4Cを備える。溶射装置100Cはさらに、第1の気体導入部6C(図5D参照)と、第2の気体導入部7C(図5D参照)と、リング8C(以下、第2の多孔質部とも呼ぶ。)と、を備える。
外筒1Cの構成および材料は、第2の実施形態に係る溶射装置100Bの外筒1Bと同様である。外筒1Cの入口11Cおよび出口12Cも、第2の実施形態に係る溶射装置100Bの外筒1Bの入口11Bおよび出口12Bと同様である。
アノード電極2Cは、アノード電極2C内部に形成され第1の気体導入部6Cと連通する気体通路24と、表面が空間S1に露出し気体通路24と空間S1とを隔離する多孔質部25(第1の多孔質部)と、を備える。アノード電極2Cは、また、内部に冷却機構4Cの冷却媒体CMが流れる流路41Cが形成される。
気体通路24は、アノード電極2Cの内部に形成される空間である。気体通路24には、第1の気体導入部6Cから第1のシールドガスSG1が導入される。
多孔質部25は、空間S1と気体通路24とを隔離する円筒状の部材である。多孔質部25は、金属の焼結体、多孔質金属、金属線を固めたバルク素材、または、金属繊維を圧縮整形したものなどで形成する。多孔質部25は、複数の微細な通気孔または通気経路を有する。
アノード電極2Cは、後述する第1の気体導入部6Cから導入されるガスにより、空間S1に露出するアノード電極2Cの表面を覆う保護層を形成する、保護層形成部5Cである。保護層は、第1の気体導入部6Cから導入されるガスによって構成される。
カソード電極3Cは、第1の実施形態のカソード電極3と同様である。
冷却機構4Cは、第2の実施形態の冷却機構4Bと同様である。
第1の気体導入部6Cは、外筒1Cを貫通してアノード電極2C内に形成される気体通路24と連通する気体通路61Cと、気体通路61Cに第1のシールドガスSG1を供給する気体供給部62C(たとえばMFC)と、気体通路61Cと気体供給部62Cとを接続する配管63Cと、を有する。第1の気体導入部6Cの気体供給部62Cは、配管63Cを介して気体通路61Cに所定の流量の第1のシールドガスSG1を供給する。気体通路61Cは、気体通路24に向けて第1のシールドガスSG1を案内する。第1のシールドガスSG1は、気体通路24から多孔質部25を通ってアノード電極2Cの表面上に膜状の保護層を形成する。
第2の気体導入部7Cは、リング8Cの外周に沿って形成される気体通路71Cと、気体通路71Cに第2のシールドガスSG2を供給する気体供給部72C(たとえばMFC)と、外筒1Cを貫通し気体通路71Cと気体供給部72Cとを接続する配管73Cと、を有する。第2の気体導入部7Cの気体供給部72Cは、配管73Cを介して気体通路71Cに所定の流量の第2のシールドガスSG2を供給する。供給された第2のシールドガスSG2は、気体通路71Cからリング8C内部に滲みこみカソード電極3Cの周囲へと導入され、空間S1へと流れる。
リング8Cは、絶縁体または誘電体の材料で形成される多孔質材料のリング形状の部材である。リング8Cの形状は、カソード電極3Cの外周形状に合わせた形状を有する。リング8Cは内部に、気体が通過することができる複数の微細な通気孔または通気経路を有する。また、リング8Cは、緻密な部材で形成してもよい。リング8Cを緻密な部材で形成する場合、たとえばリング8C内部に、気体通路71Cと空間S1とを連通させる貫通孔を設ける。そして、空間S1に面したリング8Cの表面を多孔質の絶縁体または誘電体の材料で膜状に覆う。第2の気体導入部7Cの気体通路71Cと空間S1とを連通させることができれば、リング8C中、緻密な部材と多孔質材料との配置箇所は特に限定されない。
このように、第3の実施形態に係る溶射装置100Cは、第1の気体導入部6Cと、アノード電極2C(気体通路24、多孔質部25)と、を含む、アノード電極を冷却し保護する機構を備える。また、第3の実施形態に係る溶射装置100Cは、第2の気体導入部7Cと、多孔質のリング8Cと、を含む、カソード電極3Cを冷却し保護する機構を備える。
図5Dは、第3の実施形態に係る溶射装置100Cの保護層形成部5Cについて説明するための図である。図5Dに示すように、第1の気体導入部6Cにより気体通路24に導入される第1のシールドガスSG1は、気体通路24から多孔質部25を通って空間S1に導入される。空間S1に導入された第1のシールドガスSG1は、多孔質部25の表面から滲みだすようにアノード電極2C表面を覆う保護層の膜を形成する。保護層はトランスピレーション冷却により、アノード電極2Cの表面を冷却し保護する。他方、第2の気体導入部7Cによりリング8C(第2の多孔質部)の外周に沿って形成される気体通路71Cに導入される第2のシールドガスSG2は、リング8C内部に形成される複数の通気孔または通気経路を通過して空間S1に導入される。気体通路71Cからリング8C内を通過する間に、第2のシールドガスSG2は、カソード電極3Cの外周を冷却する。なお、第1のシールドガスSG1および第2のシールドガスSG2の流量は、プラズマ噴流を加速させたり、プラズマ噴流を貫通したりすることがないレベルに設定する。また、第1のシールドガスSG1の流量は、放電時にアノード電極2C上で放電しない流量に制御される。
(第3の実施形態の効果)
上記第3の実施形態に係る溶射装置100Cにおいて、保護層形成部5Cは、気体通路24と、第1の多孔質部25と、を備える。気体通路24は、アノード電極2C内に形成され、第1の気体導入部6Cからガスが導入される。第1の多孔質部25は、気体通路24と空間S1を隔離し、表面がプラズマ噴流が通過する空間S1に露出される。このように、アノード電極2Cに第1の多孔質部25を設け、当該多孔質部25にガスを通過させることにより、多孔質部25の表面から滲みだすようにアノード電極2C表面を覆う保護層の膜を形成する。このため、第3の実施形態に係る溶射装置100Cは、アノード電極2Cを保護し、溶射材料の堆積を抑制することができる。また、ガスはアノード電極2Cから滲み出すように空間S1に導入されるため、プラズマ噴流に干渉しない。また、ガスは、プラズマ噴流を貫通するように導入されないため、プラズマ噴流の流れを乱すことがない。また、ガスは、プラズマ噴流に合流または混合するように導入されないため、プラズマ噴流の温度を低下させない。また、ガスは、多孔質部25を透過してアノード電極2Cの全面から空間S1に導入されるため、ガスの流量を低減することができる。
また、第3の実施形態に係る溶射装置100Cにおいて、第1の多孔質部25は、金属の焼結体または多孔質金属であってよい。このため、第1の多孔質部25として、プラズマ噴流経路内の各部の材料に適した多孔質材料を選択することができる。たとえば、導電体、絶縁体、誘電体等を適宜選択することができる。
また、第3の実施形態に係る溶射装置100Cはさらに、カソード電極3Cの周囲に配置され、誘電体材料で形成される第2の多孔質部8Cを備えてもよい。また、溶射装置100Cは、第2の多孔質部8Cにガスを導入する第2の気体導入部7Cを備えてもよい。このため、第3の実施形態に係る溶射装置100Cは、第2の多孔質部8Cを透過するガスによりカソード電極3Cを冷却し保護することができる。また、ガスは第2の多孔質部8Cを透過して滲み出すように空間S1に導入される。このため、ガスはプラズマ噴流に干渉しない。また、ガスは第2の多孔質部8Cを透過して空間S1に導入されるとき、プラズマ噴流を貫通する方向および流量で導入されない。このため、ガスはプラズマ噴流の流れを乱すことがない。また、ガスは、第2の多孔質部8Cを透過して空間S1に導入されるとき、プラズマ噴流に合流または混合するように導入されない。このため、ガスはプラズマ噴流の温度を低下させることがない。また、ガスは、第2の多孔質部8Cを透過して第2の多孔質部8C全面から空間S1に導入されるため、ガスの流量を低減することができる。
なお、第1の多孔質部25および第2の多孔質部8Cの材料はトランスピレーション冷却を実現できるものであればよく、特に限定されない。このため、プラズマ噴流経路内の各部材の材料に応じて適当な多孔質材料を選択することができる。たとえば、第1の多孔質部25および第2の多孔質部8Cとして多孔質膜を利用する場合、導電体、絶縁体または誘電体等から材料を選択することができる。また、第1の多孔質部25および第2の多孔質部8Cを母材を多孔質膜で覆った構造とする場合には、表面に配置される多孔質膜を剥離して母材を再生処理して再利用してもよい。
また、溶射装置100Cに導入するガス(第1および第2のシールドガスSG1,SG2)に反応性ガスを添加して利用することで、各部材表面の洗浄処理をしてもよい。
(変形例:アノード電極2C、リング8Cの材質等)
なお、上記に説明した例のほか、アノード電極2Cの構成は様々に変形することができる。たとえば、アノード電極2Cを、金属と焼結金属で構成してもよい。この場合、アノード電極2Cから空間S1に滲み出す第1のシールドガスSG1の流量は、焼結金属の金属球体サイズによって調整することができる。
またたとえば、アノード電極2Cを金属と金網で構成してもよい。この場合、アノード電極2Cから空間S1に滲み出す第1のシールドガスSG1の流量は、金網の線径や密度等によって調整することができる。
またたとえば、アノード電極2Cを金属で構成した上で、内部に設けられる気体通路24と、空間S1とを連通する貫通孔を形成し、貫通孔を膜状の焼結金属材料で覆ってもよい。また、貫通孔を導電性材料により形成される多孔質の膜で覆ってもよい。また、貫通孔を絶縁体または誘電体の材料により形成される多孔質の膜で覆ってもよい。また、アノード電極2Cを絶縁体または誘電体の膜で覆う場合には、カソード電極3Cと対向する部分は膜で覆わないように形成してもよい。また、アノード電極2Cを絶縁体または誘電体の膜で覆う場合には、プラズマ着火性能が維持できるよう膜厚を調整する。
なお、溶射装置の形状は上記実施形態において説明した例に限定されない。たとえば、溶射材料や作動ガスの導入位置が上記実施形態とは異なる場合であっても、上記保護層形成部を利用することができる。すなわち、溶射噴流が通過するノズル部分に保護層を形成するように保護層形成部を配置することで、溶射装置の構造詳細に関わらず、上記実施形態の効果を奏することができる。
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
1,1B,1C 外筒
2,2B,2C アノード電極
21 気体通路
22 孔部
23 円筒状部分
24 気体通路
25 多孔質部
3,3B,3C カソード電極
5,5B,5C 保護層形成部
51 案内溝
52 内周溝
53 フランジ
6,6B,6C 第1の気体導入部
61,61B,61C 気体通路
62,62B,62C 気体供給部
63,63B,63C 配管
7B,7C 第2の気体導入部
71B,71C 気体通路
72B,72C 気体供給部
73B,73C 配管
8,8C リング
100A,100B,100C 溶射装置
CM 冷却媒体
SG シールドガス

Claims (13)

  1. アノード電極およびカソード電極を収容する外筒の内部にガスを導入する第1の気体導入部と、
    前記第1の気体導入部から導入されるガスにより、プラズマ噴流が通過する空間に露出する前記アノード電極の表面を覆う、前記プラズマ噴流と分離した保護層を形成する保護層形成部と、
    を備える溶射装置。
  2. 前記保護層形成部は、前記第1の気体導入部から導入されるガスと、前記アノード電極の表面付近に存在する空気と、の2層を含む前記保護層を形成する、請求項1に記載の溶射装置。
  3. 前記保護層形成部は、前記カソード電極を周囲から包囲して固定される旋回整流部であり、
    前記第1の気体導入部は、前記保護層形成部に対して径方向外側からガスを導入する、請求項1または2に記載の溶射装置。
  4. 前記旋回整流部は、略リング形状であり、外側から内側に向けて径方向に対して傾斜して延びる2以上の案内溝を有する、請求項3に記載の溶射装置。
  5. 前記旋回整流部は、外周部と、前記外周部よりも軸方向に厚みが少ない内周部と、を有し、
    前記案内溝は前記外周部に形成される、請求項4に記載の溶射装置。
  6. 前記保護層形成部は、
    前記アノード電極内に形成され、前記第1の気体導入部からガスが導入される気体通路と、
    前記気体通路と、プラズマ噴流が通過する空間と、を離隔する円筒状部分と、
    前記円筒状部分に形成され、前記気体通路とプラズマ噴流が通過する空間とを連通させる孔部と、
    を備える、請求項1または2に記載の溶射装置。
  7. 前記孔部は、前記円筒状部分の、プラズマ噴流が通過する空間側の開口部が反対側の開口部よりもプラズマ噴流の下流側に位置するよう傾斜する、
    請求項6に記載の溶射装置。
  8. 前記孔部は、当該孔部の中心軸が、前記外筒の中心方向から接線方向にずれるように形成される、請求項6または7に記載の溶射装置。
  9. 前記孔部は、前記円筒状部分の、プラズマ噴流が通過する空間側の開口部に向けて反対側の開口部から広がる扇形状である、請求項6から8のいずれか1項に記載の溶射装置。
  10. 前記カソード電極の外周に沿って設けられる空間に第2のガスを導入する第2の気体導入部をさらに備える、請求項6から9のいずれか1項に記載の溶射装置。
  11. 前記保護層形成部は、
    前記アノード電極内に形成され、前記第1の気体導入部からガスが導入される気体通路と、
    表面がプラズマ噴流が通過する空間に露出され、前記気体通路と前記プラズマ噴流が通過する空間とを隔離する第1の多孔質部と、
    を備える、請求項1に記載の溶射装置。
  12. 前記第1の多孔質部は、金属の焼結体または多孔質金属である、請求項11に記載の溶射装置。
  13. 前記カソード電極の周囲に配置され、誘電体材料で形成される第2の多孔質部と、
    前記第2の多孔質部にガスを導入する第2の気体導入部と、
    をさらに備える、請求項11または12に記載の溶射装置。
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