JP2016043287A - プラズマ溶射装置およびプラズマ溶射方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマをプラズマジェットに分流させた分流部分が、プラズマ生成室からのプラズマにより溶損することを抑えることができる、プラズマ溶射装置を提供する。【解決手段】プラズマ溶射装置10の陽極ノズル12の先端部20には、陽極ノズル12から噴出するプラズマジェットPGの噴出方向における陽極ノズル12の軸心CL周りに、プラズマPを複数のプラズマジェットPGに分流し、分流した前記プラズマジェットが噴出する複数のプラズマジェット噴出孔と、軸心CLに沿った位置から溶射用粉末Mを放出する粉末放出孔22と、が形成されている。陽極ノズル14の先端部20には、各プラズマジェット噴出孔21内を流れるプラズマジェットPGに第2の供給ガスG2を供給する供給孔23が形成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、溶射用粉末と共にプラズマジェットを溶射ノズルの前方方向に放出するいわゆるアキシャルフィード型のプラズマ装置およびプラズマ溶射方法に関する。
従来から、プラズマ溶射装置では、陽極ノズルと陰極との間に電圧を印加することで、これらの間にプラズマアークを発生させ、このプラズマアークに供給ガスを接触することにより、プラズマを生成している。生成されたプラズマの流れを絞りプラズマジェットとし、これに溶射用粉末を供給することにより溶融させ、ワークにプラズマジェットと共に溶融した溶射用粉末を吹き付けている。
ここで、プラズマジェットに溶射用粉末を供給する際に、プラズマジェットに対して直角方向から溶射用粉末を投入すると、溶射用粉末が、プラズマジェットの中心に到達する前に弾き飛ばされたり、プラズマジェットを突き抜けたりすることがあった。これにより、溶射用粉末の歩留りが低下するということがあった。
このような点を鑑みて、例えば、特許文献1には、陽極ノズルの先端に、プラズマ生成室で生成されたプラズマの流れを複数のプラズマジェットに分流するように、形成された複数のプラズマジェット噴出孔と、複数のプラズマジェット噴出孔で囲まれた軸心に沿った位置から溶射用粉末を放出する粉末放出孔と、が設けられたアキシャルフィード型のプラズマ溶射装置が開示されている。このプラズマ溶射装置によれば、プラズマジェットと、溶射用粉末とが、ノズルの軸心方向に沿ってノズルから放出されるので、溶射用粉末の歩留りを向上させることができる。
しかしながら、特許文献1に示すプラズマ溶射装置の場合、陽極ノズル内において、プラズマ生成室からのプラズマを各プラズマジェット噴出孔に分流する分流部分にプラズマが衝突するため、この分流部分が溶損することがあった。特に、プラズマ溶射により緻密な膜を成膜すべく、プラズマのエネルギー密度を高めようとした場合、このような現象はより顕著なものとなった。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、陽極ノズルでプラズマ生成室からのプラズマをプラズマジェットに分流させた場合であっても、その分流部分がプラズマ生成室からのプラズマにより溶損することを抑えることができるプラズマ溶射装置を提供することにある。
前記課題を鑑みて、本発明に係るプラズマ溶射装置は、陰極電極と、該陰極電極に対向する位置に配置されたプラズマジェットを噴出する陽極ノズルとを備え、前記陰極電極と前記陽極ノズルとの間で発生したプラズマアークに第1の供給ガスを供給することで、前記陰極電極と前記陽極ノズルとの間に前記プラズマジェットとなるプラズマを生成するプラズマ生成室が形成されたプラズマ溶射装置であって、前記陽極ノズルの先端部には、前記陽極ノズルから噴出するプラズマジェットの噴出方向における前記陽極ノズルの軸心の周りに、前記プラズマ生成室で生成されたプラズマを複数のプラズマジェットに分流し、分流された前記プラズマジェットが噴出する複数のプラズマジェット噴出孔と、該複数のプラズマジェット噴出孔で囲まれた前記軸心に沿った位置から溶射用粉末を放出する粉末放出孔と、が設けられており、前記陽極ノズルの前記先端部には、前記各プラズマジェット噴出孔内を流れる前記プラズマジェットに第2の供給ガスを供給する供給孔がさらに形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、陰極電極と陽極ノズルとの間に電圧を印加することにより、プラズマアークが発生し、このプラズマアークに第1の供給ガスを供給することにより、プラズマ生成室にプラズマを生成することができる。
プラズマ生成室で生成されたプラズマは、陽極ノズルの先端部に形成された複数のプラズマジェット噴出孔に分流される。プラズマジェット噴出孔を通過する際に、プラズマはプラズマジェットとなって加速され、高温高速の集中性の良い流れとなって、プラズマジェット噴出孔から噴出する。本発明では、プラズマ生成室で生成されたものを「プラズマ」と称し、陽極ノズルの先端部で、プラズマジェット噴出孔から噴出するものを「プラズマジェット」と称する。さらに、陽極ノズルの各プラズマジェット噴出孔によりプラズマが分流されたもの(各プラズマジェット噴出孔内を流れるプラズマ)も、プラズマ生成室で生成されたプラズマが加速されることから、「プラズマジェット」と称する。
ここで、本発明では、プラズマジェット噴出孔内に、第2の供給ガスを供給する供給孔が形成されているため、第1の供給ガスから生成されたプラズマのエネルギー密度を高め過ぎることなく、プラズマジェット噴出孔を通過した際に各プラズマジェットのエネルギー密度を第2の供給ガスで高めることができる。
これにより、第1の供給ガスから生成されたプラズマを、陽極ノズルの先端部で複数のプラズマジェット分流させた場合であっても、その分流部分がプラズマ生成室からのプラズマにより溶損することを抑えることができる。
さらに、第2の供給ガスが供給されたプラズマジェットが噴出する際に、これらのプラズマジェットで囲まれた軸心に沿った位置から、溶射用粉末が放出されるので、効率良く(歩留り良く)溶射用粉末をプラズマで溶融し、これをワークに吹き付けることができる。
特に第1の供給ガスにアルゴンガスを用い、第2の供給ガスに水素ガス、窒素ガス、またはヘリウムガスを含むガスを用いれば、第1の供給ガスであるアルゴンガスで生成されたプラズマ室内のプラズマジェットのエネルギー密度を高め過ぎることなく、プラズマジェット噴出孔を通過した際に各プラズマジェットのエネルギー密度を第2の供給ガスで高めることができる。
これにより、陽極ノズルでプラズマ生成室から各プラズマジェット噴出孔に分流させた場合であっても、その分流部分がプラズマ生成室からのプラズマジェットにより溶損することを抑えることができる。さらに、エネルギー密度が高まったプラズマジェットに溶射用粉末を溶融するので、これまで成膜することができなかった高融点の粉末に対しても成膜することができる。
より好ましい態様としては、前記第2の供給ガスを供給する供給孔は、前記プラズマジェット噴出孔の壁面に沿って前記第2の供給ガスが流れるように、形成されている。この態様によれば、プラズマジェット噴出孔の壁面に沿って第2の供給ガスが流れるので、陽極ノズルの先端部に逃げる熱量を低減することができる。特に、第2の供給ガスの水素ガス、窒素ガスなどの2原子分子からなるガスを用いることで、熱的ピンチ効果をさらに期待することができる。これにより、プラズマジェットが収縮し(エネルギー密度が上昇し)、陽極ノズルの先端部に逃げる熱量を低減することができる。
より好ましい態様としては、前記陽極ノズルには、前記第1の供給ガスを供給する第1供給孔と、前記第2の供給ガスを供給する供給孔である第2供給孔と、が形成されており、前記第1供給孔は、前記プラズマ生成室内で生成されたプラズマに、前記陽極ノズルの前記軸心の周りに旋回流が発生するように、形成されており、前記第2供給孔は、前記プラズマジェット噴出孔内で前記旋回流と同じ方向に前記各プラズマジェットに旋回流が発生するように、形成されている。
この態様によれば、プラズマジェット噴出孔を通過するプラズマジェットには、前記第2供給孔からの第2の供給ガスで、前記プラズマ生成室内の分流前のプラズマと同じ方向に、旋回流が発生するので、安定したプラズマジェットを陽極ノズルから放出することができる。
本発明によれば、陽極ノズルでプラズマ生成室からのプラズマを分流させた場合であっても、その分流部分がプラズマ生成室からのプラズマにより溶損することを抑えることができる。
以下に、図1〜3の図面を参照して本発明の実施形態に係るプラズマ溶射装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るプラズマ溶射装置の模式的断面図である。図2は、図1に示すA−A線矢視端面図であり、図3は、図1に示すB−B線矢印端面図である。
図1は、本発明の実施形態に係るプラズマ溶射装置の模式的断面図である。図2は、図1に示すA−A線矢視端面図であり、図3は、図1に示すB−B線矢印端面図である。
1.プラズマ溶射装置について
図1に示すように、本実施形態に係るプラズマ溶射装置10は、陰極電極11と、陰極電極11に対向する位置に配置された陽極ノズル12を備えており、陰極電極11と陽極ノズル12との間には、電源13が接続されている。
図1に示すように、本実施形態に係るプラズマ溶射装置10は、陰極電極11と、陰極電極11に対向する位置に配置された陽極ノズル12を備えており、陰極電極11と陽極ノズル12との間には、電源13が接続されている。
陰極電極11は、銅などの金属製の先端が尖った円柱形状であり、陰極電極11を覆うように、銅などの金属製の陽極ノズル12が配置されている。ここで、陽極ノズル12のプラズマジェットが噴出される方向に沿った軸心CLと、陰極電極11の軸心は一致している。陽極ノズル12と陰極電極11と陽極ノズル12とが直接的に導通しないように、絶縁板14を介して陰極電極11が、陽極ノズル12内に取付けられている。
陰極電極11を陽極ノズル12内に配置した状態で、陰極電極11と陽極ノズル12との間には、プラズマ生成室15(空間)が形成されている。プラズマ生成室15は、絞り弁18により、陰極電極11が収容された上流室15aと、陽極ノズル12の先端側の下流室15bとに区画されている。電源13により、陰極電極11と陽極ノズル12との間に電圧を印加することにより、陰極電極11と陽極ノズル12との間の空間、すなわちプラズマ生成室15にプラズマアークを発生させることができる。
本実施形態では、プラズマ生成室15の上流室15aには、アルゴンガスなどの第1の供給ガスG1を供給する一対の上流側の第1供給孔16A、16Aが形成されている。さらに、プラズマ生成室15の先端側には、絞り弁18が形成されており、絞り弁18と陽極ノズル12の先端部20との間にも、一対の下流側の第1供給孔16B、16Bが形成されている。
ここで、上流側の第1供給孔16A,16Aは、プラズマ生成室15の上流室15a内で陽極ノズル12の軸心CLの周りに(図では右回りに)プラズマPに旋回流が発生するように、形成されている。本実施形態では、図2に示すように、プラズマ生成室15の上流室15aは、陽極ノズル12の内側に内周面を設けることにより得られる円錐台状空間であり、一対の第1供給孔16A,16Aは、内周面の接線方向に沿ってプラズマ生成室15内に第1の供給ガスが供給可能に形成されている。
上流側の第1供給孔16A,16Aと同様に、下流側の第1供給孔16B,16Bも、プラズマ生成室15の下流室15b内で陽極ノズル12の軸心CLの周りに(上流室15aと同じ方向に)プラズマPに旋回流が発生するように、形成されている。この場合も同様に、一対の下流側の第1供給孔16B,16Bは、内周面の接線方向に沿ってプラズマ生成室15の下流室15b内に第1の供給ガスG1が供給可能に形成されている。
なお、本実施形態では、絞り弁18を設けることにより、プラズマ生成室15を上流室15aと下流室15bとに区画したが、後述するように、陽極ノズル12の先端部20からプラズマジェットPGを噴出することができるのであれば、絞り弁18を設けなくてもよい。
さらに本実施形態では、図1および図3に示すように、陽極ノズル12の先端部20には、プラズマジェットPGを噴出させる3つ(複数)のプラズマジェット噴出孔21,21,21が形成されている。3つのプラズマジェット噴出孔21,21,21は、陽極ノズル12から噴出するプラズマジェットPGの噴出方向における陽極ノズル12の軸心周りに(具体的には同心円状に)形成されている。
各プラズマジェット噴出孔21は、噴出したプラズマジェットPGが軸心CLに向かうように、軸心CLに対して傾斜している。これにより、後述する溶射用粉末MをプラズマジェットPGで溶融し、溶融した溶射用粉末MをプラズマジェットPGとともにワーク(図示せず)に吹き付けることができる。溶射用粉末Mとしては、鉄、銅、ニッケル−クロム合金、アルミニウム等の金属粉末、アルミナ等のセラミックスス粉末などを用いることができる。
陽極ノズル12の先端部20において、3つのプラズマジェット噴出孔21,21,21は、プラズマ生成室15で生成されたプラズマPを3つのプラズマジェットPGに分流し、分流された3つのプラズマジェットPGが陽極ノズル12から噴出する。さらに、各プラズマジェット噴出孔21内を流れるプラズマジェットPGに第2の供給ガスG2を供給する第2供給孔23がさらに形成されている。第2の供給ガスG2には、アルゴンガスに、水素ガス、窒素ガス、またはヘリウムガスを含むガス、または、水素ガス、窒素ガス、またはヘリウムガスのみからなるガスを用いる。
第2供給孔23は、プラズマジェット噴出孔21の壁面に沿って第2の供給ガスG2が流れるように(プラズマジェット噴出孔21の周壁面の接線方向に第2供給ガスG2が供給されるように)、形成されている。より具体的には、第2供給孔23は、プラズマジェット噴出孔21内で、図2に示すプラズマの旋回流と同じ方向(具体的には、左回り)に、各プラズマジェットPGに旋回流が発生するように、形成されている。
さらに、陽極ノズル12の先端部20には、3つのプラズマジェット噴出孔21,21,21で囲まれた軸心CLに沿った位置から溶射用粉末Mを放出する粉末放出孔22が形成されている。
2.プラズマ溶射方法について
まず、陰極電極11と陽極ノズル12と間に電圧を印加することにより、これらの間(プラズマ生成室15)にプラズマアークを発生させる。発生させたプラズマアークに上流側の第1供給孔16A,16Aを介して、プラズマ生成室15の上流室15aにアルゴンガスからなる第1の供給ガスを供給する。これにより、プラズマアークに第1の供給ガスG1を接触させることにより、プラズマ生成室15内にプラズマPが生成される。生成されたプラズマPには、図2に示すように、陽極ノズル12の軸心CL周りに(左回りに)、旋回流が発生する。これにより、プラズマPの流れが安定する。
まず、陰極電極11と陽極ノズル12と間に電圧を印加することにより、これらの間(プラズマ生成室15)にプラズマアークを発生させる。発生させたプラズマアークに上流側の第1供給孔16A,16Aを介して、プラズマ生成室15の上流室15aにアルゴンガスからなる第1の供給ガスを供給する。これにより、プラズマアークに第1の供給ガスG1を接触させることにより、プラズマ生成室15内にプラズマPが生成される。生成されたプラズマPには、図2に示すように、陽極ノズル12の軸心CL周りに(左回りに)、旋回流が発生する。これにより、プラズマPの流れが安定する。
旋回流が発生したプラズマPは、絞り弁18で絞られて加速される。下流側の第1供給孔16B、16Bを介して、プラズマ生成室15の下流室15bに第1の供給ガスG1がさらに供給されることにより、プラズマPがさらに加速される。生成されたプラズマPには、陽極ノズル12の軸心CL周りに(左回りに)、さらに安定した旋回流が形成される。
プラズマ生成室15で旋回流が形成されたプラズマPは、陽極ノズル12の先端部20に形成された3つのプラズマジェット噴出孔21,21,21に分流される。プラズマジェット噴出孔21を通過する際に、プラズマPはプラズマジェットPGとなって加速され、このプラズマジェットPGがプラズマジェット噴出孔21から噴出する。
プラズマジェット噴出孔21内に、第2の供給ガスG2を供給する第2供給孔23が形成されているため、第1の供給ガスから生成されたプラズマPのエネルギー密度を高め過ぎることなく、プラズマジェット噴出孔21を通過した際に各プラズマジェットPGのエネルギー密度を第2の供給ガスG2で高めることができる。
これにより、第1の供給ガスG1から生成されたプラズマPを、陽極ノズル12の先端部20で3つのプラズマジェットPGに分流させた場合であっても、その分流部分25がプラズマ生成室15からのプラズマPにより溶損することを抑えることができる。さらに、エネルギー密度が高まったプラズマジェットに溶射用粉末を溶融するので、これまで成膜することができなかった高融点の溶射用粉末に対しても成膜することができる。
特に第1の供給ガスG1にアルゴンガスを用いたので、第1の供給ガスG1であるアルゴンガスで生成されたプラズマ室内のプラズマのエネルギー密度を高め過ぎることなく、より迅速にプラズマを生成することができる。
また、第2の供給ガスG2に水素ガス、窒素ガス、またはヘリウムガスが含まれているので、プラズマジェット噴出孔21を通過した際に各プラズマジェットのエネルギー密度を第2の供給ガスG2で高めることができる。また、プラズマジェット噴出孔21の壁面に沿って第2の供給ガス2Gが流れるので、熱的ピンチ効果により、プラズマジェットが収縮し(エネルギー密度が上昇し)、先端部20に逃げる熱量を低減することができる。
特に、プラズマジェット噴出孔21内で、第2の供給ガスG2により、プラズマジェットPGに、旋回流を発生させたので、プラズマジェット噴出孔21とプラズマジェットPGとの間に第2の供給ガスG2が入り込み易くなる。これにより、上述した熱的ピンチ効果をより一層高めることができる。
本発明を以下の実施例に基づいて説明する。
<実施例1>
図1に示すプラズマ溶射装置を用いて、Ni−Cr合金からなる溶射用粉末のプラズマ溶射を行った。具体的には、表1に示すように、陰極電極と陽極ノズルとの間に電圧を印加するための電源の出力を30kwとし、上流側の第1の供給ガスにアルゴンガスを10L/分でプラズマ生成室の上流室に供給し、下流側の第1の供給ガスに、アルゴンガスを20L/分でプラズマ生成室の下流室に供給した。次に、第2の供給ガスとして、アルゴン(4L/分)、水素ガス(9L/分)の混合ガスをプラズマジェット噴出孔に供給した。この時の水素濃度は、21体積%である。
<実施例1>
図1に示すプラズマ溶射装置を用いて、Ni−Cr合金からなる溶射用粉末のプラズマ溶射を行った。具体的には、表1に示すように、陰極電極と陽極ノズルとの間に電圧を印加するための電源の出力を30kwとし、上流側の第1の供給ガスにアルゴンガスを10L/分でプラズマ生成室の上流室に供給し、下流側の第1の供給ガスに、アルゴンガスを20L/分でプラズマ生成室の下流室に供給した。次に、第2の供給ガスとして、アルゴン(4L/分)、水素ガス(9L/分)の混合ガスをプラズマジェット噴出孔に供給した。この時の水素濃度は、21体積%である。
このような条件で、プラズマ溶射を行っている際の、ノズル先端の冷却水の出口温度を測定した。また、ノズル先端の溶損状態の確認を行った。さらに、溶射用粉末の付着効率を測定した。これらの結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1と同じように、プラズマ溶射を行った。実施例1と相違する点は、表1に示すように、第2の供給ガスとして、アルゴン(10L/分)、水素ガス(3L/分)の混合ガスをプラズマジェット噴出孔に供給した点である。実施例1と同様に、ノズル先端の冷却水の出口温度の測定、ノズル先端の溶損状態、溶射用粉末の付着効率の測定を行った。
実施例1と同じように、プラズマ溶射を行った。実施例1と相違する点は、表1に示すように、第2の供給ガスとして、アルゴン(10L/分)、水素ガス(3L/分)の混合ガスをプラズマジェット噴出孔に供給した点である。実施例1と同様に、ノズル先端の冷却水の出口温度の測定、ノズル先端の溶損状態、溶射用粉末の付着効率の測定を行った。
<比較例>
実施例1と同じように、プラズマ溶射を行った。実施例1と相違する点は、表1に示すように、下流側の第1の供給ガスにアルゴンガス(30L/分)、水素ガス(3L/分)の混合ガスをプラズマ生成室の下流室に供給し、第2の供給ガスは供給していない点である。実施例1と同様に、ノズル先端の冷却水の出口温度の測定、ノズル先端の溶損状態、溶射用粉末の付着効率の測定を行った。
実施例1と同じように、プラズマ溶射を行った。実施例1と相違する点は、表1に示すように、下流側の第1の供給ガスにアルゴンガス(30L/分)、水素ガス(3L/分)の混合ガスをプラズマ生成室の下流室に供給し、第2の供給ガスは供給していない点である。実施例1と同様に、ノズル先端の冷却水の出口温度の測定、ノズル先端の溶損状態、溶射用粉末の付着効率の測定を行った。
(結果)
表1に示すように、実施例1および2の冷却水の出口温度は、比較例のものよりも低かった。これは、実施例1および2の場合には、第2の供給ガスに水素ガスを含有させたことで、熱的ピンチ効果により、プラズマジェットからプラズマジェット噴出孔の壁面への熱伝達が低減されたことによると考えられる。
表1に示すように、実施例1および2の冷却水の出口温度は、比較例のものよりも低かった。これは、実施例1および2の場合には、第2の供給ガスに水素ガスを含有させたことで、熱的ピンチ効果により、プラズマジェットからプラズマジェット噴出孔の壁面への熱伝達が低減されたことによると考えられる。
また、実施例1および2の場合には、分流部分の溶損はなかったが、比較例の場合には、分流部分が溶損していた。これは、比較例1の場合には、下流側の第1の供給ガス(L/分)に水素ガスを含有させたことにより、水素ガスが解離し、プラズマのエネルギー密度が高まったからであると考えられる。
さらに、実施例1および2の場合には、プラズマ溶射により成膜できたが、比較例の場合には成膜できなかった。これは、プラズマジェット噴出孔に第2の供給ガスとして水素ガスを供給することにより、プラズマジェットのエネルギー密度(熱量)を高めることができたからであると考えられる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
10:プラズマ溶射装置、11:陰極電極、12:陽極ノズル、13:電源、14:絶縁板、15:プラズマ生成室、15a:上流室、15b:下流室、16A,16B:第1供給孔、18:絞り弁、20:先端部、21:プラズマジェット噴出孔、23:第2供給孔、22:粉末放出孔、25:分流部分、CL:軸心、G1:第1の供給ガス、G2:第2の供給ガス、P:プラズマ、PG:プラズマジェット
Claims (4)
- 陰極電極と、該陰極電極に対向する位置に配置されたプラズマジェットを噴出する陽極ノズルとを備え、前記陰極電極と前記陽極ノズルとの間で発生したプラズマアークに第1の供給ガスを供給することで、前記陰極電極と前記陽極ノズルとの間に前記プラズマジェットとなるプラズマを生成するプラズマ生成室が形成されたプラズマ溶射装置であって、
前記陽極ノズルの先端部には、前記陽極ノズルから噴出するプラズマジェットの噴出方向における前記陽極ノズルの軸心の周りに、前記プラズマ生成室で生成されたプラズマを複数のプラズマジェットに分流し、分流された前記プラズマジェットが噴出する複数のプラズマジェット噴出孔と、該複数のプラズマジェット噴出孔で囲まれた前記軸心に沿った位置から溶射用粉末を放出する粉末放出孔と、が形成されており、
前記陽極ノズルの前記先端部には、前記各プラズマジェット噴出孔内を流れる前記プラズマジェットに第2の供給ガスを供給する供給孔がさらに形成されていることを特徴とするプラズマ溶射装置。 - 前記第2の供給ガスを供給する供給孔は、前記プラズマジェット噴出孔の壁面に沿って前記第2の供給ガスが流れるように、形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ溶射装置。
- 前記陽極ノズルには、前記第1の供給ガスを供給する第1供給孔と、前記第2の供給ガスを供給する供給孔である第2供給孔と、が形成されており、
前記第1供給孔は、前記プラズマ生成室内で生成されたプラズマに、前記陽極ノズルの前記軸心の周りに旋回流が発生するように、形成されており、
前記第2供給孔は、前記プラズマジェット噴出孔内で前記旋回流と同じ方向に前記各プラズマジェットに旋回流が発生するように、形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ溶射装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ溶射装置を用いたプラズマ溶射方法であって、
前記第1の供給ガスに、アルゴンガスを用い、
前記第2の供給ガスに、水素ガス、窒素ガス、またはヘリウムガスを含むガスを用いることを特徴とするプラズマ溶射方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019073777A (ja) * | 2017-10-17 | 2019-05-16 | 岩谷産業株式会社 | 混合ガスおよびそれを用いた溶射皮膜の形成方法 |
KR102294811B1 (ko) * | 2020-10-08 | 2021-08-30 | 대신강업(주) | 아토마이징 노즐 |
JP7156736B1 (ja) * | 2021-11-16 | 2022-10-19 | 建蔵 豊田 | アキシャルフィード式プラズマ溶射装置 |
-
2014
- 2014-08-20 JP JP2014167804A patent/JP2016043287A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019073777A (ja) * | 2017-10-17 | 2019-05-16 | 岩谷産業株式会社 | 混合ガスおよびそれを用いた溶射皮膜の形成方法 |
KR102294811B1 (ko) * | 2020-10-08 | 2021-08-30 | 대신강업(주) | 아토마이징 노즐 |
JP7156736B1 (ja) * | 2021-11-16 | 2022-10-19 | 建蔵 豊田 | アキシャルフィード式プラズマ溶射装置 |
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