JP2019199604A - ヒプロメロースフタル酸エステル及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、加水分解が起こるとHPMCPからカルボキシベンゾイル基が脱離し、置換度が低下するため、溶媒への溶解性が低下する。通常コーティングする前には、HPMCP単独又は薬物及びHPMCPの両者を溶解させた組成物中の未溶解物について、フィルターを用いて除去する。しかし、未溶解物の量が多いとフィルターの目詰まりが発生して、作業性が低下する。また、フィルターを用いない場合においても、コーティングのときに用いるノズルで閉塞を起こす可能性がある。更に、カルボキシベンゾイル基の置換度低下によりコーティング被膜量が低下して、目標の耐酸性が得られない。このように、従来のHPMCPについて、更なる溶解性の向上が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、溶媒に溶解させた際に優れた溶解性を有し、未溶解物の発生を抑えることができるHPMCP及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明の一つの態様では、氷酢酸溶液中のヒプロメロースを、酢酸ナトリウム存在下、75〜100℃にて無水フタル酸と反応させて反応生成物溶液を得るエステル化工程と、前記反応生成物溶液を70℃以下に冷却する冷却工程と、前記冷却された反応生成物溶液と、0〜40℃の水を混合してヒプロメロースフタル酸エステルを析出させヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液を得る析出工程とを少なくとも含むヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法が提供される。
原料となるヒプロメロース(別名ヒドロキシプロピルメチルセルロースとも称され、以下、「HPMC」ともいう。)は、公知の方法、例えばシート状、チップ状又は粉末状のパルプに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを接触させてアルカリセルロースとした後に、塩化メチル、酸化プロピレンのエーテル化剤を加えて反応することにより得られる。
アルカリセルロースの製造後は、通常の方法で塩化メチル、酸化プロピレン等のエーテル化剤を加えてエーテル化反応させHPMCを得る。
また、20℃におけるHPMC2質量%の水溶液の粘度は、第17改正日本薬局方の毛細管粘度計法に準じて測定され、好ましくは2.2〜18.0mPa・s、より好ましくは5.0〜16.5mPa・sである。
エステル化反応に用いる溶媒は、HPMCとエステル化剤と触媒を溶解できるものが好ましく、水ではなく、氷酢酸等が挙げられる。溶媒の使用量は、反応速度の観点から、当該HPMCに対して、質量比で、好ましくは1.0〜3.0倍、より好ましくは1.2〜2.0倍、更に好ましくは1.5〜1.8倍とするとよい。
エステル化工程の反応温度は、反応速度又は粘度の観点から、好ましくは75〜100℃、より好ましくは80〜95℃である。また、エステル化工程の反応時間は、好ましくは2〜8時間、より好ましくは3〜6時間である。
析出工程において、接触(混合)させる水の温度は、好ましくは0〜40℃、より好ましくは0〜30℃である。また、水と混合した反応生成物溶液の温度は、HPMCPの加水分解の観点から、好ましくは55℃以下、より好ましくは50℃以下である。ここで、水と混合後の反応生成物溶液の温度は、水を加えてHPMCPの析出が開始する温度であり、好ましくは析出を完了するまで維持される。
洗浄工程では、残存酢酸、遊離フタル酸を除去するため、水で十分洗浄する。洗浄に使用する水の温度は、HPMCPの加水分解抑制の観点から、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜40℃、更に好ましくは10〜30℃である。
浄工程後で乾燥工程前に、必要に応じて脱液工程を行ってもよい。
乾燥工程では、乾燥機としてトレイ乾燥機や流動層乾燥機を用いて乾燥を行うことができ、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜80℃で、好ましくは1〜5時間、より好ましくは2〜3時間乾燥することにより高純度のHPMCPを得ることができる。
透光度は、光電比色計PC―50型を用いて測定したアセトンの光透過率を100%としたときの、同一条件下でのHPMCPのアセトン溶液の透過率をいう。HPMCPがどの程度溶解しているかを示す指標であり、例えば透光度が高いということは、アセトンに溶解する部分が多いということを意味する。アセトンの透光度の測定は、第17改正日本薬局方の一般試験法の「紫外可視吸光度測定法」に記載の透過率測定方法によって測定できる。
なお、HPMCPのアセトンへの溶解性は、コーティング用組成物や固体分散体用組成物における溶媒であるメタノール、エタノール等の有機溶媒の他、アンモニア水溶液への溶解性と相関関係があるため、溶媒への溶解性の指標となり得る。
実施例1
双軸撹拌機を有する5Lニーダー型反応機に、氷酢酸1120g、20℃における2質量%水溶液粘度が5.87mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース(DS;1.89、MS;0.25)700gを溶解させた。次いで、無水フタル酸579.7g、塩素酸ナトリウム10.9gを溶解した後、酢酸ナトリウム295.3gを溶解し、85℃で4.5時間反応させた。
その後、得られた反応生成物溶液を50.8℃になるまで冷却した。次に14.8℃の純水を1287.3g加え、撹拌した。反応生成物溶液と純水が均一に混合したときの温度は39.2℃であった。HPMCPが析出せず、反応生成物溶液と純水が均一に混合したことを確認した後に、反応生成物溶液に対して4倍質量の25.0℃の水を反応生成物溶液に徐々に加えて反応生成物(HPMCP)が析出したHPMCP懸濁液を得た。得られたHPMCP懸濁液の温度は27.9℃であった。
その後、HPMCP懸濁液に含まれるHPMCPを23.7℃の水で十分に水洗後、流動層乾燥機で80℃、2時間乾燥した。乾燥品を2860μm(♯7.5)の目開きの篩にて篩過し、カルボキシベンゾイルオキシ基の置換度が0.675のHPMCP粉末を得た。
得られたHPMCPのアセトンへの溶解性は、以下の方法により測定した。
アセトン198.0gを八オンス瓶に測り、撹拌羽根を用いて200rpmの速度で5分間撹拌した。そこに、得られたHPMCP22gを添加し、更に同じ速度で60分間撹拌した後に撹拌羽根を停止し、得られた溶液を測定用溶液とした。この測定用溶液を20℃にて光電比色計PC―50型を用いて測定したところ、透光度は91.0%であった。
冷却工程後の反応生成物溶液の温度、反応生成物溶液と水の混合温度及び透光度の結果を表1に示す。
双軸撹拌機を有する5Lニーダー型反応機に、氷酢酸1120g、20℃における2質量%水溶液粘度が5.87mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース(DS;1.89、MS;0.25)700gを溶解させた。次いで、無水フタル酸579.7g、塩素酸ナトリウム10.9gを溶解した後、酢酸ナトリウム295.3gを溶解し、85℃で4.5時間反応させた。
その後、得られた反応生成物溶液を61.1℃になるまで冷却した。次に14.9℃の純水を1287.3g加え、撹拌した。反応生成物溶液と純水が均一に混合したときの温度は46.2℃であった。HPMCPが析出せず、反応生成物溶液と純水が均一に混合したことを確認した後に、反応生成物溶液に対して4倍質量の25.0℃の水を反応生成物溶液に徐々に加えて反応生成物(HPMCP)が析出したHPMCP懸濁液を得た。得られたHPMCP懸濁液の温度は29.2℃であった。
その後、析出物を22.4℃の水で十分に水洗後、流動層乾燥機で80℃、2時間乾燥した。乾燥品を2860μm(♯7.5)の目開きの篩にて篩過し、カルボキシベンゾイルオキシ基の置換度が0.660のHPMCP粉末を得た。
実施例1に示した方法により、透光度を測定し、冷却工程後の反応生成物溶液の温度、反応生成物溶液と水の混合温度及び透光度の結果を表1に示す。
双軸撹拌機を有する5Lニーダー型反応機に、氷酢酸1120g、20℃における2質量%水溶液粘度が5.87mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース(DS;1.89、MS;0.25)700gを溶解させた。次いで、無水フタル酸579.7g、塩素酸ナトリウム10.9gを溶解した後、酢酸ナトリウム295.3gを溶解し、85℃で4.5時間反応させた。
その後、得られた84.8℃の反応生成物溶液を冷却することなく、16.8℃の純水を1287.3g加え、撹拌した。反応生成物溶液と純水が均一に混合したときの温度は62.9℃であった。HPMCPが析出せず、反応生成物溶液と純水が均一に混合したことを確認した後に、反応生成物溶液に対して4倍質量の25.0℃の水を反応生成物溶液に徐々に加えて反応生成物(HPMCP)が析出したHPMCP懸濁液を得た。得られたHPMCP懸濁液の温度は32.6℃であった。
その後、析出物を23.7℃の水で十分に水洗後、流動層乾燥機で80℃、2時間乾燥した。乾燥品を2860μm(♯7.5)の目開きの篩にて篩過し、カルボキシベンゾイルオキシ基の置換度が0.619のHPMCP粉末を得た。
実施例1に示した方法により、透光度を測定し、冷却工程後の反応生成物溶液の温度、反応生成物溶液と水の混合温度及び透光度の結果を表1に示す。
Claims (4)
- 氷酢酸溶液中のヒプロメロースを、酢酸ナトリウム存在下、75〜100℃にて無水フタル酸と反応させて反応生成物溶液を得るエステル化工程と、
前記反応生成物溶液を70℃以下に冷却する冷却工程と、
前記冷却された反応生成物溶液と、0〜40℃の水を混合してヒプロメロースフタル酸エステルを析出させヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液を得る析出工程と
を少なくとも含むヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。 - 前記冷却工程が、前記反応生成物溶液の温度を40℃以上70℃以下にすることを含む請求項1に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。
- 前記析出工程において、前記水を混合後の前記反応生成物溶液の温度が、55℃以下である請求項1又は請求項2に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。
- 前記冷却工程と前記析出工程の間に、前記冷却された反応生成物溶液を、前記ヒプロメロースフタル酸エステルを析出させない量の0〜40℃の水と混合する工程を更に含む請求項1〜3のいずれかに記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。
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