JP2019193420A - 超電導モータ - Google Patents
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Abstract
【課題】渦電流損失を抑制でき、かつ、軽量化を実現できる超電導モータを提供する。【解決手段】超電導モータ100は、回転自在に支持されたロータ1と、ロータ1の径方向外側に配置されたステータ2と、を備えている。ロータ1およびステータ2の少なくとも一方は、超電導線を有している。かかる超電導線は、容器としての内ケーシング4に収納されている。内ケーシング4は、金属層4aと、金属層4aの内側に配置されCFRPから構成されている内側層4bと、金属層4aの外側に配置されCFRPから構成されている外側層4cと、を有している。【選択図】図1
Description
本発明は、超電導モータに関する。
大気汚染による人体への悪影響を減らすことが世界中で求められてきており、自動車ばかりでなく飛行機のエンジンからの排出ガス規制が進められている。このため、自動車においては2030年以降、炭酸ガス、二酸化炭素等の排出ガスのない電気モータ駆動による自動車が主流になると予想されている。そして、最近では自動車ばかりでなく、電気モータ駆動による飛行機の開発が進められてきている。
飛行機は数10名以上の乗客を乗せて長距離を輸送するため、飛行機用の電気モータには、飛行機の推力と揚力とが得られる数MWクラスの出力が要求される。そこで、従来の常伝導線から超電導線に変えたコイルを備える超電導モータが期待されている。この超電導モータの特徴は、電流密度が大きくなることである。したがって、超電導モータは、大電流を流せることによって単位重量当りの出力が向上する。
飛行機用のエンジンとして使用されているターボプロップエンジンは、単位重量当りの出力が約5.5(kW/kg)である。これにならい、飛行機用の超電導モータの開発機は、目標値として、5.5(kW/kg)以上の単位重量当りの出力が求められている。
一方、コイルの線材として超電導線を使用する場合、超電導線を低温に維持することが必要である。また、室温から低温環境の超電導線へ侵入する熱によって冷却用の寒剤の液量が消費してしまうため、超電導線を外部から断熱する必要がある。この断熱には、一般的に真空断熱が用いられる。
特許文献1には、アルミニウム合金で内側を構成し、その外側に炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)」ともいう)を設けた真空容器が開示されている。
特許文献1には、アルミニウム合金で内側を構成し、その外側に炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)」ともいう)を設けた真空容器が開示されている。
特許文献1に記載の容器は、CFRPによって剛性が高くなるが、アルミニウム合金はCFRPと比較して比抵抗が小さいため、高周波の電流を流す超電導モータで使用するとアルミニウム合金に渦電流が発生する。これにより、アルミニウム合金内部で発熱が生じる。また、それに伴い、寒剤の消費量が増大する。
したがって、超電導モータとしては、ステータのコイルで発生する磁場によって生じる渦電流による発熱が少ないものが望まれている。また、前記したように単位重量当りの出力が大きいことも飛行機用の超電導モータにとって重要なポイントであることから、超電導モータの軽量化が重要である。
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものであり、渦電流損失を抑制でき、かつ、軽量化を実現できる超電導モータを提供することを課題とする。
前記課題を達成するための本発明に係る超電導モータは、回転自在に支持されたロータと、前記ロータの径方向外側に配置されたステータと、を備えている。前記ロータおよび前記ステータの少なくとも一方は、超電導線を有している。前記超電導線は、容器に収納されている。前記容器は、金属層と、前記金属層の内側に配置され炭素繊維強化プラスチックから構成されている内側層と、前記金属層の外側に配置され炭素繊維強化プラスチックから構成されている外側層と、を有している。
本発明によれば、渦電流損失を抑制でき、かつ、軽量化を実現できる超電導モータを提供することができる。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図6を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る超電導モータ100の構成を示す断面図である。本実施形態においては、超電導モータ100を飛行機の駆動用に適用した場合について説明する。
まず、図1〜図6を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る超電導モータ100の構成を示す断面図である。本実施形態においては、超電導モータ100を飛行機の駆動用に適用した場合について説明する。
図1に示すように、超電導モータ100は、回転可能なシャフト11を備えている。シャフト11は、その両端側にそれぞれ設置された軸受10によって支持されている。シャフト11の端部(図1では左端部)には、プロペラ(ブレード)9が取り付けられている。このプロペラ9は、この超電導モータ100が飛行機用の駆動モータであることを示すものである。
超電導モータ100は、回転自在に支持されたロータ1と、ロータ1の径方向外側に配置されたステータ2とを備えている。ロータ1およびステータ2は、超電導コイルを形成する超電導線(図示せず)を有している。超電導線は、容器としての内ケーシング4に収納されている。超電導モータ100は、内ケーシング4と、内ケーシング4を収納する外ケーシング5とを備えている。内ケーシング4および外ケーシング5は、真空容器3を構成している。内ケーシング4と外ケーシング5との間の空間は、真空引きされることで真空状態とされる。
ロータ1は、円筒形状を呈している。ロータ1の中心をシャフト11が貫通しており、ロータ1はシャフト11に固定されている。ステータ2は、円筒形状を呈している。冷しバメによってステータ2の外周が内ケーシング4の内周に密着することによって、ステータ2は内ケーシング4の内周に取り付けられている。ステータ2とロータ1との隙間は、約0.5mmである。この隙間は、超電導モータ100の大きさによって変わる。
ここで、超電導モータ100が回転する原理について簡単に説明する。図1に示す超電導モータ100は、三相かご形誘導モータである。ステータ2の三相交流電流で発生した回転磁場によって、かご形導体であるロータ1が回転磁場につられて回転を始める。ステータ2の三相交流電流によって、徐々にロータ1の回転数は増加する。超電導モータ100は、通常のモータのロータ1およびステータ2の各コアに巻き付けられた常伝導コイル(図示せず)を超電導コイル(図示せず)に置き換えたものである。超電導コイルを形成する超電導線は、臨界温度以下では電気抵抗がゼロになる特性がある。また、超電導線は、常伝導の銅線よりも電流密度を高くすることが可能であり、大電流を流すことができる。このため、小さな容積でも出力を大きくすることが可能である。
超電導線の中で、比較的高い臨界温度を有するMgB2、Bi2212、YBCO等は高温超電導材料と言われている。臨界温度が高い高温超電導材料は、従来のNbTi(ニオブ・チタン)に比べて、室温との温度差が小さいため、侵入熱量が小さい。中でもMgB2は、材料コストが低いため、今後、超電導モータ100の超電導線の材料として期待されている。
MgB2は、臨界温度が39Kであるが、高磁場中においては、この臨界温度よりも低い温度で使用される。大気圧、飽和温度20Kの液体水素は、MgB2の高温超電導材料の寒剤として最も適した寒剤である。
内ケーシング4には、寒剤としての例えば液体水素が流通する配管である注液管6および吐出管7が接続されている。ロータ1とステータ2とが収納される内ケーシング4には、注液管6から液体水素が供給される。ロータ1とステータと2で発生する熱は、内ケーシング4内の液体水素の沸騰冷却によって20Kの温度に維持される。沸騰により蒸発したガスは、吐出管7を通って大気中に放出される。
内ケーシング4の内部の温度は、20Kであり、室温の293Kに比べて低い温度である。低温を長時間維持し、寒剤の消費量を低減するために、内ケーシング4が外ケーシング5内に設置され、内ケーシング4と外ケーシング5との間の空間が真空状態とされることで、内ケーシング4の内部が断熱されている。内ケーシング4は、断熱支持体8によって外ケーシング5に支持固定されている。断熱支持体8の材料として、低熱伝導率で高剛性の繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)が使用されており、CFRPおよびGFRPのいずれが使用されてもよい。外ケーシング5は、ここでは、SUS304等のステンレス鋼から構成されている。
図2は、図1に示される内ケーシング4の壁部材の断面図である。
図2に示すように、内ケーシング4は、金属層4aと、金属層4aの内側に配置されCFRPから構成されている内側層4bと、金属層4aの外側に配置されCFRPから構成されている外側層4cとを有している。すなわち、金属層4aは、内側層4bと外側層4cとによって挟み込まれている。金属層4aと内側層4b、および金属層4aと外側層4cは、例えば、エポキシ樹脂等の接着剤で接着されて固定されている。
図2に示すように、内ケーシング4は、金属層4aと、金属層4aの内側に配置されCFRPから構成されている内側層4bと、金属層4aの外側に配置されCFRPから構成されている外側層4cとを有している。すなわち、金属層4aは、内側層4bと外側層4cとによって挟み込まれている。金属層4aと内側層4b、および金属層4aと外側層4cは、例えば、エポキシ樹脂等の接着剤で接着されて固定されている。
金属層4aは、金属の薄膜ないし箔状を呈している。金属層4aは、ここではオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS304)を薄膜にしたもので、気体分子の透過を防止する働きを持つ。金属層4aの厚さは、0.05mm以上1mm以下であることが好ましく、0.1mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。金属層4aの厚さを下限値0.05mm(0.1mm)以上とすることで、真空状態がより確実に維持される。一方、金属層4aの厚さを上限値1mm(0.5mm)以下とすることで、電気抵抗が高くなり渦電流が生じにくくなる。
内側層4bおよび外側層4cは、CFRPの板状を呈しており、耐真空に対する機械的剛性を維持する働きを持つ。CFRPには、強化材としてピッチ系炭素繊維を用いたピッチ系CFRPと、強化材としてパン系炭素繊維を用いたパン系CFRPとの二種類がある。ピッチ系CFRPは、パン系CFRPよりも、機械的剛性が高く断面積を小さくできるメリットがあるため好ましい。したがって、ここでは、内側層4bおよび外側層4cは、強化材としてピッチ系炭素繊維を用いたパン系CFRPから構成されている。内側層4bおよび外側層4cの厚さは、内ケーシング4に必要な剛性を保持できる厚さに設定され、超電導モータ100のサイズによって変わる。
ピッチ系CFRPのヤング率と引張強さは、それぞれ550GPaと2500MPaであり、ステンレス鋼のヤング率と引張強さは、それぞれ200GPaと600MPaである。つまり、ピッチ系CFRPは、ステンレス鋼の約2倍以上の剛性がある。したがって、全てピッチ系CFRPで製作した内ケーシング4の壁部材の断面積は、理論的に、全てステンレス鋼で製作した内ケーシング4の壁部材の断面積の約半分になる。また、ピッチ系CFRPとステンレス鋼の比重は、それぞれ1.8と8である。これにより、ピッチ系CFRPで製作した内ケーシング4の重量は、ステンレス鋼で製作した内ケーシング4の重量の約1/9(≒(1.8/8)×(1/2))に低減できる。このため、ピッチ系CFRP、またはピッチ系CFRPと金属との複合材は、軽量化を狙った飛行機用の駆動モータに適したものと言える。
次に、CFRPとステンレス鋼(SUS304)との渦電流発熱量の相対比較を行った。適用する周波数は50Hzである。均一磁場中における渦電流損失を簡単なモデルで評価した。評価方法は、「高橋孝夫:‘薄い無限長比磁性金属平板の渦電流損失特性解析’電気学会B 109巻8号(1989年)」と同様の方法とした。ここで、比較対象となる第1の材料は、厚さ5mmのSUS304の板材であり、第2の材料は、厚さ0.2mmのSUS304と厚さ4.8mm(2枚分)のCFRPとの複合材である。CFRPとSUS304の透磁率は、それぞれ1.26×10−6(H/m)と1.28×10−6(H/m)である。また、CFRPとSUS304の比抵抗は、それぞれ1.85×10−5(Ω・m)と7.2×10−7(Ω・m)である。
前記評価方法で渦電流発熱量を計算した結果、SUS304の板材の渦電流発熱量は、5.1×108(W/m)であり、CFRPとSUS304との複合材の渦電流発熱量は、4.0×107(W/m)であった。つまり、CFRPとSUS304との複合材の方が、SUS304の板材よりも、渦電流発熱量が約1/13に低減している。このことから、渦電流による発熱損失は、従来のステンレス鋼(SUS304)の板材よりも、CFRPとSUS304との複合材の方が小さくできるメリットがあることが分かった。
また、金属層4aは、内側層4b、金属層4aおよび外側層4cで構成される壁部材の厚さ方向の中央に配置されていることが好ましい。言い換えれば、金属層4aの内外両側にある内側層4bと外側層4cとは同じ厚さである。これにより、超電導モータ100を冷却するとき、相対する内側層4bと外側層4cとの冷却速度を等しくでき、熱ひずみを小さくすることができる。
図3は、図1に示される吐出管7と内ケーシング4との接合部を示す拡大断面図である。吐出管7と注液管6とは、ともにステンレス鋼(例えばSUS304)から構成されている。吐出管7と注液管6とは、内ケーシング4とそれぞれ同様に接合されているため、以下、吐出管7と内ケーシング4との接合について説明し、注液管6と内ケーシング4との接合についての説明を省略する。
図3に示すように、内ケーシング4は、内側層4bと外側層4cとの間に金属層4aが挟み込まれて構成されている。内ケーシング4には、吐出管7が接続されている。具体的には、内ケーシング4に形成された貫通孔に吐出管7が挿入されている。そして、内ケーシング4の外側層4cの一部を切り欠いて露出した金属層4aの外側の面と吐出管7とが溶接されている。図3中の符号「20」は、溶接による接合部を示す。このような溶接による接合処理によって、吐出管7と内ケーシング4との間において真空を封止することが可能である。
図4は、図1に示される吐出管7と内ケーシング4との接合部の変形例を示す拡大断面図である。ここでは、低温でのシール性能を保持可能なリング状の金属線としてのIn線(インジウム線)15を利用して、吐出管7と内ケーシング4とを接合する方法を示す。
図4に示すように、内ケーシング4には、吐出管7が接続されている。具体的には、図3に示す例と同様に、内ケーシング4の外側層4cの一部が切り欠かれて、金属層4aが露出している。吐出管7の外周面上に押さえ板14が配置されている。そして、内ケーシング4に形成された貫通孔に吐出管7の押さえ板14よりも内側の部分が挿入されるとともに、押さえ板14の内側の面が金属層4aの外側の面に当接される。ここで、In線15が、押さえ板14と吐出管7と金属層4aとで囲まれた箇所に配置されている。また、内ケーシング4の内側層4bの内側の面に押さえ板13が当接される。そして、押さえ板13、内側層4b、金属層4a、In線15、押さえ板14、およびバネ座金16が、ねじ部材としてのボルト12とナット17との間に挟まれてねじ締結されている。これにより、押さえ板14と金属層4aとの間のIn線15が加圧される。そして、In線15は、押さえ板14と吐出管7と金属層4aとに、挟まれることで変形して密着する。このようなIn線15の利用とねじ締結とによって、吐出管7と内ケーシング4との間において真空を封止することが可能である。
図5は、図4に示される押さえ板13,14を示す平面図である。
図5に示すように、押さえ板13,14は、リング状の板体を呈している。押さえ板13,14の材質は、例えばSUS304である。図4における上下に設けた押さえ板13と押さえ板14とによって均一な面圧が生じるため、In線15の変形量も均一になる。したがって、In線15によるシールが確実かつ容易に実施可能となる。
図5に示すように、押さえ板13,14は、リング状の板体を呈している。押さえ板13,14の材質は、例えばSUS304である。図4における上下に設けた押さえ板13と押さえ板14とによって均一な面圧が生じるため、In線15の変形量も均一になる。したがって、In線15によるシールが確実かつ容易に実施可能となる。
図6は、シャフト11が内ケーシング4と外ケーシング5とを貫通して軸受10によって支持されている部分の近傍の拡大断面図である。
図6に示すように、シャフト11は、内ケーシング4と外ケーシング5との間において筒体18によって覆われている。筒体18は、SUS304等の金属製の管である。筒体18は、超電導モータ100(図1参照)におけるシャフト11の軸方向の両側に2箇所あるが、ここでは図1における右側の筒体18のみを示している。内ケーシング4の金属層4aと筒体18の端部とは、図3に示す吐出管7と内ケーシング4との接合と同様に、溶接によって接合されている。図6中の符号「20」は、溶接による接合部を示す。
図6に示すように、シャフト11は、内ケーシング4と外ケーシング5との間において筒体18によって覆われている。筒体18は、SUS304等の金属製の管である。筒体18は、超電導モータ100(図1参照)におけるシャフト11の軸方向の両側に2箇所あるが、ここでは図1における右側の筒体18のみを示している。内ケーシング4の金属層4aと筒体18の端部とは、図3に示す吐出管7と内ケーシング4との接合と同様に、溶接によって接合されている。図6中の符号「20」は、溶接による接合部を示す。
軸受10の内部に配置された2個の玉軸受10aは、シャフト11に固定されているロータ1(図1参照)の荷重を保持するとともに、シャフト11の回転力を伝達する働きがある。
また、軸受10は、真空を封止する働きも兼ね備えている。軸受10は、フェライトの微粉と特殊な油とを均一に混合した磁性流体10bを備えている。磁性流体10bは、永久磁石10cとフェライト系ポールピース10dとで形成される閉じた磁場中に置かれることによって、シャフト11が回転しても同じ位置に保持される。つまり、シャフト11が回転していても、磁性流体10bの膜が流体を遮断する。磁性流体10bの膜をシャフト11の軸方向に多重に配置することで、1気圧以上の圧力差に耐えることも可能である。このように、磁性流体10bを設けた軸受10によって、シャフト11が回転しても寒剤の蒸発ガスは軸受10から流出することはない。また、軸受10は、外ケーシング5と軸受10との接合面から流出する蒸発ガスを封止するOリング10eを備えている。このように、磁性流体10bを設けた軸受10、および筒体18と内ケーシング4の金属層4aとの接合によって、内ケーシング4と外ケーシング5との間の空間における真空の維持が可能となる。
また、図1に示す内ケーシング4の外側層4cの外表面の接着剤が、例えばサンドペーパーで除去されてもよい。これにより、CFRP板の炭素(カーボン)繊維が現れる。超電導モータ100を作動させる場合、内ケーシング4内は液体水素で20Kの低温に保持される。したがって、低温の炭素繊維の表面ではガス吸着が起こる。また、低温にするほどガス吸着の効果が上がるため、内ケーシング4と外ケーシング5との間の空間内の真空度が改善される。
本実施形態では、金属層4aで気体分子の透過を防止できる。これにより、容器としての内ケーシング4の金属層4aを含む壁部材によって、断熱に用いられる真空の維持が可能となる。一方、金属層4aは、真空による圧力がかかった場合に変形が起きる可能性がある。しかし、金属層4aの内側および外側の両側にCFRPから構成されている内側層4bおよび外側層4cをそれぞれ配置することで内ケーシング4全体の剛性が高まるため、金属層4aの変形も抑制できる。つまり、真空の維持用に金属層4aが利用され、内ケーシング4の剛性を保つためにCFRPが利用されている。CFRPは例えばオーステナイト系ステンレス鋼等の金属よりもヤング率が高く、引張応力も高い特性があるため、内ケーシング4の壁部材の断面積を小さくできる。また、CFRPは例えばオーステナイト系ステンレス鋼等の金属よりも比重が小さいことから、内ケーシング4の軽量化が図られる。
渦電流による発熱は、一般に渦電流の発生対象となる部材の比抵抗が大きいほど小さくなる性質がある。ガラス繊維強化プラスチック(以下、「GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)」ともいう)は、比抵抗が非常に大きいため渦電流による発熱は殆どゼロである。しかし、GFRPは、剛性がCFRPに比べて低いため、ここでは採用していない。CFRPは、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属に比べて比抵抗が大きいため、渦電流による発熱はオーステナイト系ステンレス鋼等の金属よりも小さくなる。そして、本実施形態では、内ケーシング4は、CFRPから構成された内側層4bと外側層4cとによって金属層4aが挟み込まれてなる複合材から構成されている。したがって、このような複合材から構成される内ケーシング4を用いた超電導モータ100は、壁部材における金属層4aの割合が小さく高電気抵抗となるため、渦電流による発熱を小さくできるメリットがある。
また、内ケーシング4を前記した複合材とすることで、ステータ2の交流磁場によって生じる渦電流による損失は、従来のステンレス鋼よりも小さくできる。よって、超電導モータ100の効率も向上するメリットがある。
すなわち、本実施形態によれば、渦電流損失を抑制でき、かつ、軽量化を実現できる超電導モータ100を提供することができる。
(第2実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第2実施形態について、前記した第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。第2実施形態において、前記した第1実施形態と共通する構成要素には、同一の符号を付している。
図7は、本発明の第2実施形態に係る超電導モータ100aの構成を示す断面図である。
次に、図7を参照して、本発明の第2実施形態について、前記した第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。第2実施形態において、前記した第1実施形態と共通する構成要素には、同一の符号を付している。
図7は、本発明の第2実施形態に係る超電導モータ100aの構成を示す断面図である。
図7に示すように、第2実施形態に係る超電導モータ100aでは、小形冷凍機19によって内ケーシング4が冷却されるようになっている。最近の小形冷凍機19は、コールドヘッド19aが1個のタイプであって、温度20Kで約35W以上の冷却性能を有するものがある。そこで、超電導モータ100aが、液体水素の寒剤と小形冷凍機19とを併用したハイブリッド冷却型超電導モータである場合について説明する。
第2実施形態では、内ケーシング4には、小形冷凍機19のコールドヘッド19aが熱的に接合されている。前記した第1実施形態では、冷却用として寒剤のみが使用される。これに対して、第2実施形態では、寒剤の消費量を節約するための小形冷凍機19が適用されている。
寒剤の消費量を低減するには、小形冷凍機19の冷却性能を増やすこと、および、超電導モータ100aの発熱量を小さくすることが重要である。
第2実施形態では、図7に示す内ケーシング4に、CFRPから構成された内側層4bと外側層4cとによって金属層4aが挟み込まれてなる複合材を使用することで、渦電流発熱を低減できる。しかも、内ケーシング4は小形冷凍機19によって冷却される。このため、寒剤の消費量をより低減できる。
第2実施形態では、図7に示す内ケーシング4に、CFRPから構成された内側層4bと外側層4cとによって金属層4aが挟み込まれてなる複合材を使用することで、渦電流発熱を低減できる。しかも、内ケーシング4は小形冷凍機19によって冷却される。このため、寒剤の消費量をより低減できる。
以上、本発明について実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、前記した実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、前記した実施形態では、ロータ1およびステータ2がそれぞれ超電導線を有している場合について説明したが、これに限定されるものではない。ロータ1およびステータ2の少なくとも一方が超電導線を有するように構成されていてもよい。
また、内ケーシング4は、CFRPから構成された内側層4bと外側層4cとによって金属層4aが挟み込まれてなる複合材から構成されているが、これにさらなる層が付加された多層構造とされてもよい。すなわち、内側層4bの内側および外側層4cの外側の少なくとも一方の側に、金属層4a、CFRPから構成されている層4dの順に配置されてなる組が少なくとも一組設けられていてもよい。
具体的には、例えば、図8に示すように、図1に示す内側層4bの内側に、金属層4a、CFRPから構成されている層4dが外から内へこの順に少なくとも一組積層されていてもよい。また、例えば、図1に示す外側層4cの外側に、金属層4a、CFRPから構成されている層4dが内から外へこの順に少なくとも一組積層されていてもよい。このような内ケーシング4の多層構造によれば、真空を維持する効果が向上する。また、個々の金属層4aの厚さを薄くできるため、渦電流の発生を抑制できる。
また、前記した実施形態では、超電導モータ100の外ケーシング5は、SUS304等のステンレス鋼から構成されているが、これに限定されるものではない。外ケーシング5は、内ケーシング4と同様に、CFRPから構成された内側層と外側層とによって金属層が挟み込まれてなる複合材から構成されてもよい。この場合、外ケーシング5は、渦電流損失の低減効果を、交流磁場を発生するステータ2からの距離が内ケーシング4に比べて長いため内ケーシング4よりも小さいものの、得ることができる。また、外ケーシング5を、CFRPから構成された内側層と外側層とによって金属層が挟み込まれてなる複合材にすることで、軽量化できるメリットがある。
1 ロータ
2 ステータ
3 真空容器
4 内ケーシング(容器)
4a 金属層
4b 内側層
4c 外側層
4d CFRPから構成されている層
5 外ケーシング
6 注液管(配管)
7 吐出管(配管)
12 ボルト(ねじ部材)
13 押さえ板(第2の押さえ板)
14 押さえ板(第1の押さえ板)
15 In線(金属線)
17 ナット(ねじ部材)
19 冷凍機
19a コールドヘッド
100,100a 超電導モータ
2 ステータ
3 真空容器
4 内ケーシング(容器)
4a 金属層
4b 内側層
4c 外側層
4d CFRPから構成されている層
5 外ケーシング
6 注液管(配管)
7 吐出管(配管)
12 ボルト(ねじ部材)
13 押さえ板(第2の押さえ板)
14 押さえ板(第1の押さえ板)
15 In線(金属線)
17 ナット(ねじ部材)
19 冷凍機
19a コールドヘッド
100,100a 超電導モータ
Claims (9)
- 回転自在に支持されたロータと、
前記ロータの径方向外側に配置されたステータと、を備え
前記ロータおよび前記ステータの少なくとも一方は、超電導線を有し、
前記超電導線は、容器に収納されており、
前記容器は、金属層と、前記金属層の内側に配置され炭素繊維強化プラスチックから構成されている内側層と、前記金属層の外側に配置され炭素繊維強化プラスチックから構成されている外側層と、を有することを特徴とする超電導モータ。 - 前記金属層の厚さは、0.05mm以上1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の超電導モータ。
- 前記金属層は、前記内側層、前記金属層および前記外側層で構成される壁部材の厚さ方向の中央に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導モータ。
- 前記内側層と前記外側層とは同じ厚さであることを特徴とする請求項1に記載の超電導モータ。
- 前記内側層および前記外側層は、強化材としてピッチ系炭素繊維を用いた炭素繊維強化プラスチックから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導モータ。
- 前記超電導線を収納する内ケーシングと、前記内ケーシングを収納する外ケーシングと、を備え、
前記容器は、前記内ケーシングおよび前記外ケーシングのうちの少なくとも前記内ケーシングであり、
前記内ケーシングには、寒剤が流通する配管が接続されており、
前記内ケーシングの一部を切り欠いて露出した前記金属層と前記配管とが溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導モータ。 - 前記超電導線を収納する内ケーシングと、前記内ケーシングを収納する外ケーシングと、を備え、
前記容器は、前記内ケーシングおよび前記外ケーシングのうちの少なくとも前記内ケーシングであり、
前記内ケーシングには、寒剤が流通する配管が接続されており、
前記配管の外周面上に、第1の押さえ板が配置されており、
前記第1の押さえ板の内側の面が、前記内ケーシングの一部を切り欠いて露出した前記金属層の外側の面に当接されており、
前記第1の押さえ板と前記配管と前記金属層とで囲まれた箇所に、低温でのシール性能を保持可能なリング状の金属線が配置されており、
前記内側層の内側の面に、第2の押さえ板が当接されており、
前記第2の押さえ板、前記内側層、前記金属層、前記金属線、および前記第1の押さえ板が、ねじ部材によってねじ締結されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導モータ。 - 前記超電導線を収納する内ケーシングと、前記内ケーシングを収納する外ケーシングと、を備え、
前記容器は、前記内ケーシングおよび前記外ケーシングのうちの少なくとも前記内ケーシングであり、
前記内ケーシングには、冷凍機のコールドヘッドが熱的に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導モータ。 - 前記内側層の内側および前記外側層の外側の少なくとも一方の側に、金属層、炭素繊維強化プラスチックから構成されている層の順に配置されてなる組が少なくとも一組設けられていることを特徴とする請求項1に記載の超電導モータ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018083333A JP2019193420A (ja) | 2018-04-24 | 2018-04-24 | 超電導モータ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2018083333A JP2019193420A (ja) | 2018-04-24 | 2018-04-24 | 超電導モータ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2019193420A true JP2019193420A (ja) | 2019-10-31 |
Family
ID=68391103
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2018083333A Pending JP2019193420A (ja) | 2018-04-24 | 2018-04-24 | 超電導モータ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2019193420A (ja) |
-
2018
- 2018-04-24 JP JP2018083333A patent/JP2019193420A/ja active Pending
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