JP5341405B2 - 超電導回転機器 - Google Patents
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Description
出願人らは、FRP製クライオスタットに金属製部材を固着し、該部材に貫通継手等を接合する場合に真空断熱層の真空漏れを防止する方法について検討を行い、その改良発明は、既に下記特許文献4に開示している。
出願人らは、先に出願した特許文献5で、電機子と界磁の両者に超電導コイルを用いた超電導モータにおいて、その内ケース(以下、内槽という。)内には、超電導コイルを冷却するための冷却媒体が充填されており、さらに外ケース(以下、外槽という。)と内槽との間の空間が真空断熱層とされ、前記超電導コイルを収納したケースの外槽内には、固定子と回転子とが対向する方向に沿って伸長されかつ内槽および超電導コイルの内周側を貫通する柱状体が配設されており、その柱状体の両端が外槽の内面に接して、その柱状体により外槽の内側への変形を防止する構成を提案した。このような構成とすることにより、真空断熱層の外側の壁、すなわち外槽の壁を薄くしても大気圧との差圧による外ケースの壁の変形を招かないようにし、これによって外槽の壁厚を薄くして回転子、固定子の磁極面間の距離を従来よりも小さくすることができ、その結果、超電導モータとしての回転出力(トルク)を増加させ得ることを可能にした。
特許文献7には、永久磁石を含む回転子と,電機子巻線を含む固定子とがアキシャル方向に対向する回転界磁型のアキシャルギャップ型モータとして、回転子の軸線方向に固定子を所要の空隙をあけて対向配置し、前記回転子と前記固定子のいずれか一方に複数の界磁体を軸線回りに配置していると共に、いずれか他方に複数の電機子コイルを軸線回りに配置し、前記界磁体と前記電機子コイルの少なくとも一方を超電導材で形成し、磁束方向を軸線方向に向けて配置していることを特徴とする超電導モータが開示されている。
また、超電導回転機器の外槽胴部に金属製貫通継手が設けられている場合においても、外槽と内槽間の真空断熱層領域内において冷却媒体用配管及び電流導入コードを内槽外表面部近傍に沿わせて、内槽の円筒形状の上部蓋部もしくは下部底板部又は平面部である側面部に冷却媒体配管用貫通継手及び電流導入端子用貫通継手が配設されていた。
上記特許文献6、7のいずれにおいても金属製貫通継手を内槽の胴部に配設することは開示されていない。
また、従来技術において金属製貫通継手は、上述したように「円筒形状の上部蓋部もしくは下部底板部又は平面部である側面部」のFRP製平板部に設けられていたが、特に貫通継手を「円筒形状の上部蓋部もしくは下部底板部又は平面部である側面部」のいずれかの一箇所に集めることにより、他方の真空断熱槽の厚みを極小化する構造が考慮されていた。
特許文献5には、回転子側の磁極面と固定子側の磁極面との間の間隔を小さくするために、内槽と外槽の壁厚を小さくし、それにより剛性が低下して外槽が内槽側に変形して、内槽の外面に接触して断熱効果が損なわれるのを防止するために、超電導コイルを収納したケースの外槽(外ケース)内には、固定子と回転子とが対向する方向に沿って伸長されかつ内槽(内ケース)および超電導コイルの内周側を貫通する柱状体を配設することが開示されている。
特許文献5に開示された上記構造を適用した超電導回転機の断面の概念図を図1に示す。図1に示すように、回転子を界磁として固定子を電機子とする同期機において、超電導コイルと鉄芯は十分に近接しているものの、鉄芯の長さは、円筒容器の回転子軸方向の真空断熱層の厚みが大きいことに起因して、固定子である超電導コイルの回転軸方向の幅に比べて長くなり、鉄芯の長さが長くなれば磁気抵抗が大きくなり、漏れ磁束が増えて回転出力の向上が図れないという問題点があった。
(1)磁極面側が相互に平行に空隙を隔てて対向する回転子と固定子のうち、少なくとも固定子側に電機子として超電導コイルが鉄芯の周りに配設されており、かつ該超電導コイルが外槽と、外形の全体形状が円筒形状の容器である内槽との内外2重壁構造槽の内槽内に収納されていて、
該内槽内には超電導コイルを冷却するために外槽壁と内槽壁に配設された冷却媒体配管用貫通継手を介して循環される冷却媒体が収容されており、更に外槽と内槽との間の空間が真空断熱層とされた超電導回転機器であって、
該内槽の胴部の少なくとも一部に、該内槽を成形する際に内槽の壁と一体的に成形された平面部を設けて、該平面部に冷却媒体配管用貫通継手及び電流導入端子用貫通継手が配設されていることを特徴とする超電導回転機器(以下、第1の態様ということがある)。
(2)前記内槽が繊維強化プラスチックにより成形された内槽であることを特徴とする前記(1)に記載の超電導回転機器(以下、第2の態様ということがある)。
(3)前記超電導回転機器が回転子側に界磁として永久磁石が固定され、固定子側に電機子として超電導コイルが配設されているアキシャル型超電導モータであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の超電導回転機器(以下、第3の態様ということがある)。
また、第1の態様に記載の「超電導回転機器」は、超電導コイルが収納されている外形の形状が全体として円筒形状(具体的には、図3に示すように、蓮根を中心軸と垂直方向に切り取った形状である、以下、「外形が円筒形状」ということがある。)の内槽の胴部の少なくとも一部に平面部が設けられているので、該平面部に冷却媒体配管用貫通継手及び電流導入端子用の貫通継手を配設することにより、真空漏れを有効に防ぐことが可能となる。
更に、第1の態様に記載の「超電導回転機器」における内槽の胴部の少なくとも一部に設けられた平面部は、該内槽を成形する際に内槽の胴部と一体的に形成された平面部であるので、該平面部を形成するための接続部、接着部分等を設ける必要がなく、真空漏れをより減少でき、熱応力等の各種応力の影響が減少されるのでより長期間の安定運転が可能となる。
該内槽内には超電導コイルを冷却するために外槽壁と内槽壁に配設された冷却媒体配管用貫通継手を介して循環される冷却媒体が収容されており、更に外槽と内槽との間の空間が真空断熱層とされた超電導回転機器であって、該内槽の胴部の少なくとも一部に、該内槽を成形する際に内槽の壁と一体的に成形された平面部を設けて、該平面部に冷却媒体配管用貫通継手及び電流導入端子用貫通継手が配設されていることを特徴とする。
本発明の超電導回転機器は、磁極面側が相互に平行に空隙を隔てて対向する回転子と固定子のうち、少なくとも固定子側に電機子として超電導コイルが鉄芯の周りに配設されており、かつ該超電導コイルが外槽と、全体として円筒形状の容器である内槽との内外2重壁構造槽の内槽内に収納されていて、該内槽内には超電導コイルを冷却するために外槽壁と内槽壁に配設された冷却媒体配管用貫通継手を介して循環される冷却媒体が収容されており、更に外槽と内槽との間の空間が真空断熱層とされた超電導回転機器に適用が可能であり、超電導モータに限定されず、超電導発電機にも適用が可能である。
尚、図2〜5は本発明の例示であり、本発明はこれらの図に示す超電導回転機器に何ら限定されるものではない。
本発明の超電導回転機器の構造例として、図2に交流電源を用いる同期機における固定子側には鉄芯13の周りに電機子コイルとして超電導コイル11が配設され、回転子には界磁として永久磁石12が固定されているアキシャル型超電導モータの断面概念図を示す。
図2において、磁極面側が回転子側の界磁である永久磁石12と固定子側の電機子コイルである超電導コイル11が相互に平行に空隙を隔てて対向している。
外槽1と内槽2とからなる内外2重壁構造槽の内槽の内側に該超電導コイル11が収納されていて、その内槽2内には超電導コイル11を冷却するために外槽壁と内槽壁に配設された冷却媒体配管用貫通継手を介して循環される冷却媒体4が収容されており、更に外槽1と内槽2の間に真空断熱層3が設けられている。尚、冷却媒体としては、液体ヘリウム、液体窒素等が使用可能であるが液体窒素の使用が好ましい。また、回転子側には、ドライブシャフト16にメインヨーク15とサブヨーク14を介して永久磁石12が固定されている。
超電導コイルが収納される内槽は、液体窒素等の冷却媒体により電導コイルを冷却すると共に、磁束の中心部に位置し、かつ外槽との間の空間部に真空断熱層を形成している。従って、該内槽は、必要な機械的強度と断熱性を維持することにより、冷却媒体のガス漏れと液漏れを防止し、更に、電機子である超電導コイルからの磁束が界磁である永久磁石又は超電導コイルに到達する途中で漏れるのを極力防止できる構造にする必要がある。
また外槽は、その内部に内槽と鉄芯が配設されており、内槽と同様に上記真空断熱層の形成、及び電機子から界磁に到達する磁束が途中で漏れるのを極力防止する構造とする必要がある。
従って、内槽及び/又は外槽が金属材料で形成されていると、磁性の変動に伴い、その内部に渦電流等が発生して磁場に歪を生じるおそれがあるので、繊維強化プラスチック(FRP)で形成されることが望ましい。
FRP製のクライオスタットを成形する場合には、金属の場合と異なり溶接が不可能であるために、例えば、クライオスタットの本体となる有底筒状の容器本体部と、該容器本体部の上部開口に被着される板状蓋部材とを組み合わせ、これらを接着して製作することができる(例えば、特許文献1参照)。
内槽2の胴部の一部に平面部を設置し、該平面部に貫通継手を配設する例を図3を用いて説明する。図3(A)は内槽の平面図であり、図3(B)はその斜視図である。
内槽2は、図3(B)に示すように、全体として外形が円筒形状の容器であり、その円筒形状の中心軸を中心としてドライブシャフト配設部27が設けられ、及び複数の中空円筒形状の各超電導コイル11の中心軸を中心として鉄芯配設部28が設けられている。
従来の内槽において「円筒形状の上部蓋部もしくは下部底板部又は平面部である側面部」に配設された冷却媒体配管用の貫通継手と電流導入端子用の貫通継手を、本発明において内槽の胴部に配設する方法として、以下の(a)、(b)に例示するが、本発明における平面部の形成方法はこの例示に限定されるものではない。
(b)内槽の型枠を使用してプリプレグを積層させて硬化させる際に、平面部を設ける胴部に予めプリプレグを大目に貼りつけておき、硬化後に後加工として切削加工により平面部を設ける(図示せず)。
通常、外槽1と内槽2は、共にFRP製であり、図3に示す平面部25は、成形時に胴部の少なくとも一部を平面部25を形成するように成形することができる。この場合、内槽の機械的強度、貫通継手の配設等を考慮すると、内槽2の当該平面部25は外表面部と内表面部が互いに平行面を形成するように成形することが望ましく、また、該平面部は内槽の外表面部が図3(A)及び(B)に示すように円筒形状の軸方向に平面形状が形成されるように成形することが望ましい。
尚、参考例として図4に示すように従来成形されていたFRP製円筒形状の胴部の一部にFRP製の座をエポキシ系用接着剤、ウレタン系用接着剤、不飽和ポリエステル系用接着剤等の接着材を用いた接着により、座部29を設けて平面部を形成することは可能である。しかし、本発明の超電導回転機器を長期間、安定的に運転することを考慮すると、上記接着剤を用いないで胴部の一部に胴部と一体的に平面部を成形する前記(a)と(b)に示す態様は熱応力等の各種応力への対応性、接着剤の劣化等を考慮すると真空漏れをより効果的に防止することが可能となる。
上記したようなFRP製クライオスタットの壁面に、冷却媒体用の配管や電流導入端子用等の金属製継手を貫通状態で取り付ける際には、FRP製部材に形成した雌ネジ孔に金属製継手の雄ネジ部を接着剤を介して螺着することが一般的である(例えば、特許文献4参照)。
内槽2への貫通継手の配設方法として、例えば冷却媒体配管用貫通継手は、特許文献4の図5〜8に示されているように、金属製継手を鍔付き雄ねじ部材の継手挿入孔に挿入して固着し、金属製継手を固着した鍔付き雄ねじ部材をFRP製容器壁面に形成した雌ネジ孔に接着剤を介して螺着し、雌ネジ孔から突出した鍔付き雄ねじ部材の雄ねじ部に鍔付き雌ねじ部材を螺着し、両部材の鍔部で容器壁を挟着した状態とし、次いで、鍔部と容器壁面とを覆うようにプリプレグを貼り付けて積層した後、プリプレグを脱気して硬化させることにより固定される。
一方、胴部の真空断熱層は多少厚みが増加するが、その厚みは鉄芯13の長さに影響しない程度であるので、超電導モータの回転出力を低下させることにはならない。
図2〜4に示す、超電導モータにおいて、例えば固定子の電機子の超電導コイルに交流電流を流して、図5中の矢印で示すような交番磁場を生起させれば、界磁の永久磁石との相互作用により一般のモータと同様に同期機として、回転子であるドライブシャフト16に回転力を与えることができる。
本発明の超電導回転機器であるアキシャル型超電導モータの内槽の具体例を図2、及び図3(A)、(B)を用いて説明する。
図2に示す超電導モータは、交流電源を用いる同期機における固定子側に図3に示すように電機子コイルとして超電導コイル11が6個配設され、該固定子の両面に回転子が配設され、該回転子には界磁として永久磁石12がそれぞれ8個ずつ合計16個固定されている(図示していない)アキシャル型超電導モータであり、ケース7内に収納されている。
その結果、前記アキシャル型超電導モータが該モータの電機子コイルである中空円筒形状の超電導コイル11の軸方向の幅(Lcという)と界磁である両面の永久磁石間に配設されていて該超電導コイルの中空部内で磁路を形成する鉄芯13の長さ(Lsという)の比(Ls/Lc)を1.0超で1.3以下とすることが可能であり、このような範囲は超電導コイル11から永久磁石に到達する磁束が途中で漏れるのを効果的に抑制する点で好ましい。
本発明の超電導回転機器の特徴を図5、及び図6を用いて説明する。
図5によれば、モータの性能(出力)は永久磁石12を通過する超電導コイル11により形成される磁束の大きさで決定される。従って、永久磁石に到達する磁束が、途中で漏れることを防ぐ必要がある。この磁束漏れを防ぐ最も有効な手段は、鉄芯13と超電導コイル11の距離を縮めること及び鉄芯13の長さを対応する超電導コイル11の軸方向の幅に近づけることである。このような構造とすることにより、図5における破線箇所(8箇所のうち1箇所をA部として示す)に示すように永久磁石上の磁束密度を高くすることができる。
尚、通常、磁束線に垂直な面積S(m2)の平面を通過する磁束線の数Φは、Φ=BSで表される。(ここで、Bは、磁束密度であり、B=μH(μは透磁率で、Hは磁場の強さ(A/m)で示される。)
従って、本発明において、鉄芯の長さを超電導コイルの軸方向の幅に近づけることにより、即ち、コイルの巻かれていない鉄芯の部分を少なくすることで、漏れ磁束を防いで鎖交磁束数の減少を防ぐことにより、トルクを向上させることができる。
また、超電導は従来よりも200倍以上の電流を流すことができるので、装置の小型化、軽量化が可能となり、船舶用電機推進装置用モータ、鉄道用モータ、その他種々の用途に使用が可能である。
2 内槽
3 真空断熱層
4 冷却媒体
5 冷却媒体流入口
6 冷却媒体流出口
11 超電導コイル
12 永久磁石
13 鉄芯
14 サブヨーク
15 メインヨーク
16 ドライブシャフト
21 U相
22 V相
23 W相
24 中性線
25 平面部
26 冷却媒体配管用貫通継手及び電流導入端子用の貫通継手
27 ドライブシャフト配設部
28 鉄芯配設部
29 座部
31 磁束線
Claims (3)
- 磁極面側が相互に平行に空隙を隔てて対向する回転子と固定子のうち、少なくとも固定子側に電機子として超電導コイルが鉄芯の周りに配設されており、かつ該超電導コイルが外槽と、外形の全体形状が円筒形状の容器である内槽との内外2重壁構造槽の内槽内に収納されていて、
該内槽内には超電導コイルを冷却するために外槽壁と内槽壁に配設された冷却媒体配管用貫通継手を介して循環される冷却媒体が収容されており、更に外槽と内槽との間の空間が真空断熱層とされた超電導回転機器であって、
該内槽の胴部の少なくとも一部に、該内槽を成形する際に内槽の壁と一体的に成形された平面部を設けて、該平面部に冷却媒体配管用貫通継手及び電流導入端子用貫通継手が配設されていることを特徴とする超電導回転機器。 - 前記内槽が繊維強化プラスチックにより成形された内槽であることを特徴とする請求項1に記載の超電導回転機器。
- 前記超電導回転機器が回転子側に界磁として永久磁石が固定され、固定子側に電機子として超電導コイルが配設されているアキシャル型超電導モータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導回転機器。
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