以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、原則として省略する。
(実施の形態1)
<半導体装置の全体構成>
図1は、実施の形態1に係わる半導体装置10の構成を示すブロック図である。同図において、一点鎖線で囲まれたブロックは、1つの半導体チップに形成されている回路およびバスを示している。半導体装置10は、CPU(中央処理装置:Central Processing Unit)26、GPIO29、SRAM30、ADC31、ROM(Read Only Memory)32、I/F33、S/C24、I/O22、IOP28およびVBB−GEN23を備えている。ここで、I/O22は、入出力回路を示しており、特に制限されないが、半導体装置10の外部と内部との間で信号の電圧レベルを変換する回路、信号のバッファリングを行う回路等を有している。
図1において、GPIO29は、汎用入出力(General Purpose Input/Output)回路であり、マイクロプロセッサ(CPU)26は、制御回路IOP28を介してGPIO29にアクセスする。GPIO29は、CPU26からのアクセスに基づき、入出力回路I/O22を介して、半導体装置10の外部との間で情報の送受信を行い、外部との間で送受信された情報をCPU26との間で送受信する。
図1において、SRAM30は、先に述べたようにスタティック型ランダムアクセスメモリを示しており、バス27に接続されている。また、ADC31は、アナログ/デジタル変換回路(以下、AD変換回路と称する)を示しており、ROM32は、不揮発性メモリを示しており、I/F33は、インタフェース回路を示している。AD変換回路ADC31、不揮発性メモリROM32およびインタフェース回路I/F33は、それぞれバス27に接続されている。また、CPU26もバス27に接続されている。CPU26は、バス27を介して、SRAM30、AD変換回路ADC31、不揮発性メモリROM32およびインタフェース回路I/F33へアクセスし、これらとの間で信号の送受信を行う。
例えば、CPU26は、不揮発性メモリROM32からプログラムを、バス27を介して読み出し、読み出したプログラムに従った処理を実行する。この処理の実行過程において、CPU26は、SRAM30、AD変換回路ADC31およびインタフェース回路I/F33を用いる。例えば、CPU26は、インタフェース回路I/F33を用いて、半導体装置10の外部に設けられている装置との間で情報の送受信を行う。
半導体装置10の外部には、複数の装置が設けられるが、図1には、無線装置34とセンサ35とが例示されている。図1に示した例では、インタフェース回路I/F33は、特に制限されないが、無線装置34に対するインタフェース回路と、センサ35に対するインタフェース回路とを備えている。CPU26は、無線装置用のインタフェース回路を介して、無線装置34にアクセスし、無線装置34を用いて無線信号で情報の送受信を行う。また、センサ用のインタフェース回路を介して、センサ35にアクセスし、センサ35からの情報を例えばAD変換回路ADC31により、変換して、処理に用いる。
この実施の形態の半導体装置10は、ウェラブル装置、例えばスマート時計に内蔵される。センサ35は、スマート時計を装着する人体の体温等を測定するために、用いられ、また無線装置34は、測定した体温等を、所謂スマートフォンへ送信するため等に用いられる。勿論、このような用途に限定されるものではない。例えば、無線装置34は、所謂IoT(Internet of Things)機器と無線で接続するためにも用いることが可能である。
この実施の形態においては、特に制限されないが、不揮発性メモリROM32は、例えばフラッシュメモリなどの電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。この不揮発性メモリROM32は、入出力回路I/O22を介して、半導体装置10の外部と接続可能にされている。これにより、外部から不揮発性メモリROM32を書き換えることが可能とされている。
SRAM30は、CPU26がプログラムに従った処理を行う際に、例えば一次的な情報を格納するのに用いられる。勿論、この用途に限定されるものではない。
また、バス27に接続される回路も上記した回路に限定されない。例えば、SPI(Serial Peripheral Interface)、UART(Universal Asynchronous Receive Transmitter)、I2C(Inter−Integrated Circuit)等のインタフェース回路が、バスに接続されていてもよい。
実施の形態に係わる半導体装置10は、2つの動作速度モードを有している。すなわち、半導体装置10が、低速で動作する低速モード2(第1動作モード)と、低速モード2よりも高速で半導体装置10が動作する高速モード1(第2動作モード)とを有している。この実施の形態においては、低速モード2が指定されたとき、半導体装置10を動作させるためのクロック信号と、高速モード1が指定されたとき、半導体装置10を動作させるためのクロック信号とが、半導体装置10の外部に、2個のクロック発生器36A、36Bによって発生される。クロック発生器36Aは高速クロック信号20を発生し、クロック発生器36Bは、低速クロック信号21を発生する。この実施の形態において、クロック発生器36A、36Bは、水晶発振回路により構成され、低速クロック信号21の周波数は、例えば32KHzであり、高速のクロック信号(以下、高速クロック信号とも称する)20の周波数は、例えば40MHzである。すなわち、高速クロック信号20と低速のクロック信号(以下、低速クロック信号とも称する)21とでは、周波数の桁が違っている。
図1では、半導体装置10の外部にクロック発生器36A、36Bを設ける例を示しているが、半導体装置10の内部に、クロック発生器36A、36Bを設けるようにしてもよい。すなわち、CPU26等の回路と同じ半導体チップに、クロック発生器36A、36Bを形成するようにしてもよい。また、半導体装置10の外部に、1つのクロック発生器、例えば低速クロック信号21を発生するクロック発生器36Bを設け、半導体装置10に、逓倍回路を設け、逓倍回路により、低速のクロック信号21から高速のクロック信号20を形成するようにしてもよい。
図1において、S/C24は、システムコントローラ(モード指定回路)を示している。システムコントローラS/C24には、CPU26からの指示信号M_Contと、入出力回路I/O22を介して、クロック信号20、21が供給される。システムコントローラS/C24は、CPU26からの指示信号M_Contに従って、高速のクロック信号20または低速のクロック信号21を選択し、CPU26へ、動作クロック信号25として供給する。言い換えるならば、指示信号M_Contによって、システムコントローラS/C24は、高速モード1と低速モード2を指定する。高速モード1の指定においては、システムコントローラS/C24は、高速のクロック信号20を、動作クロック信号25として、CPU26へ供給する。一方、低速モード2の指定においては、システムコントローラS/C24は、低速のクロック信号21を、動作クロック信号25として、CPU26へ供給する。
CPU26は、供給される動作クロック信号25に同期して動作する。そのため、低速のクロック信号21が動作クロック信号25として供給された場合には、CPU26の動作速度は遅くなり、高速のクロック信号20が動作クロック信号25として供給された場合には、CPU26の動作速度が速くなる。
CPU26は、例えば腕時計の機能を実現するとき、低速モード2に対応する指定信号M_Contを、システムコントローラS/C24へ供給する。また、端末としての機能を実現するとき、例えばアプリケーションを実行するとき、CPU26は、高速モード1に対応する指定信号M_Contを、システムコントローラS/C24へ供給する。腕時計の機能であれば、例えば時間の表示等を行うだけで済むため、CPU26に要求される処理量は比較的少ない。そのため、CPU26の動作速度が遅くても、CPU26は、比較的短い時間で、腕時計の機能を実現することができる。これに対して、端末として、アプリケーションを実行する場合には、CPU26に要求される処理量が、腕時計の機能に比べて遙かに多い。そのため、比較的短い時間で、アプリケーションを実行するためには、CPU26の動作速度を速くする。このように、CPU26の動作速度を、低速モード2で遅くすることにより、CPU26等において消費される電力を低減することが可能となる。
さらに、この実施の形態において、システムコントローラS/C24は、指定信号M_Contに従って、基板バイアス回路(以下、基板バイアス発生回路とも称する)を制御するモード指定信号を形成する。図1では、基板バイアス回路は、VBB−GEN23として示されており、システムコントローラS/C24からのモード指定信号Vb_Contにより制御されている。このモード指定信号Vb_Contは、指定信号M_Contに基づいて、システムコントローラS/C24において形成される。
基板バイアス回路VBB−GEN23は、SOTB(Silicon on Thin Buried Oxide)トランジスタに供給される基板バイアス電圧(Vsp、Vsn)とMOSトランジスタに供給される基板バイアス電圧(Vmp、Vmn)を出力する。SOTBトランジスタに供給される基板バイアス電圧は、SOTBトランジスタのチャンネル型に対応した2種類の基板バイアス電圧を出力する。すなわち、P型SOTBトランジスタに供給する基板バイアス電圧として、基板バイアス電圧Vsp(第1基板バイアス電圧)を出力し、N型SOTBトランジスタに供給する基板バイアス電圧として、基板バイアス電圧Vsn(第2基板バイアス電圧)を出力する。
同様に、MOSトランジスタについても、そのチャンネル型に対応した基板バイアス電圧を、基板バイアス発生回路VBB−GEN23は出力する。すなわち、P型MOSトランジスタに供給される基板バイアス電圧として、基板バイアス電圧Vmp(第3基板バイアス電圧)を出力し、N型MOSトランジスタに対しては、基板バイアス電圧Vmn(第4基板バイアス電圧)を出力する。
あとで説明するが、基板バイアス発生回路VBB−GEN23から出力される基板バイアス電圧Vsp、Vsn、Vmp、Vmnの電圧値は、モード指定信号Vb_Contによって定められる。次に、基板バイアス電圧Vsp、Vsn、Vmp、Vmnが供給される回路について、説明する。
図1において、例えば入出力回路I/O22およびCPU26は、SOTBトランジスタではなく、N型MOSトランジスタおよびP型MOSトランジスタにより構成される。一方、SRAM30は、SOTBトランジスタおよびMOSトランジスタによって構成される。MOSトランジスタにより構成される回路、例えば入出力回路I/O22に対しては、基板バイアス電圧Vmp、Vmnは供給されず、CPU26に対しては、基板バイアス電圧Vmp、Vmnが供給される。これは、入出力回路I/O22を構成するMOSトランジスタに基板バイアス電圧を供給すると、MOSトランジスタのしきい値電圧が変化し、入出力回路I/O22の入力論理しきい値電圧が変化するためである。一方、CPU26では、基板バイアス電圧Vmp、Vmnを供給することにより、消費電力の低減を図ることが可能なためである。次に、CPU26とSRAM30を例として、基板バイアス電圧Vsp、Vsn、Vmp、Vmnが供給される回路を説明する。
<CPU26(第1回路)およびSRAM30(第2回路)の構成>
図2は、実施の形態1に係わる半導体装置10の構成を示す回路図である。同図には、図1に示した半導体装置10において、CPU26の回路とSRAM30の回路とが示されている。図2には、図1に示したバス27、AD変換回路ADC31およびインタフェース回路I/F33も示されているが、図1と同じであるため、説明は省略する。また、図2には、基板バイアス回路VBB−GEN23の構成も示されている。ここでは、説明の都合上、基板バイアス回路VBB−GEN23が、基板バイアス電圧Vspを形成する基板バイアス発生回路23−Vspと、基板バイアス電圧Vsnを形成する基板バイアス発生回路23−Vsnと、基板バイアス電圧Vmpを形成する基板バイアス発生回路23−Vmpと、基板バイアス電圧Vmnを形成する基板バイアス発生回路23−Vmnを備えているように示しているが、この個数には限定されるものではない。
CPU26(第1回路)は、複数のP型MOSトランジスタと複数のN型MOSトランジスタによって構成されている。図2には、このような複数のP型MOSトランジスタと複数のN型MOSトランジスタのうち、1個のP型MOSトランジスタMP1と1個のN型MOSトランジスタMN1とが例として示されている。P型MOSトランジスタMP1のソースには、電源電圧Vdが供給され、そのドレインは、N型MOSトランジスタMN1のドレインに接続されている。また、N型MOSトランジスタMN1のソースには接地電圧Vsが供給されている。N型MOSトランジスタMN1のゲートとP型MOSトランジスタMP1のゲートは共通に接続されている。すなわち、N型MOSトランジスタMN1とP型MOSトランジスタMP1とによってインバータ回路が構成されている。このようなインバータ回路のような論理回路、順序回路およびメモリ回路等を複数組み合わせることにより、CPU26は構成されている。
次にSRAM30(第2回路)の構成を説明する。SRAM30は、行列状に配置された複数のメモリセルMC00〜MCnnを有するメモリセルアレイ(図示せず)と、メモリセルアレイに接続された周辺回路PRKとを備えている。メモリセルアレイの各行には、ワード線W0〜Wnが配置され、各列には相補データ線対D0、/D0〜Dn、/Dnが配置されている。ここで、データ線/D0〜/Dnは、データ線D0〜Dnに対して反対位相の信号を伝達するデータ線であることを示している。メモリセルMC00〜MCnnのそれぞれは、それが配置された行に配置されているワード線と、それが配置された列に配置されている相補データ線対とに接続されている。
図2には、メモリセルアレイに配置されているメモリセルMC00〜MCnnのうち、2行2列のメモリセルMC00〜MC11と、これらのメモリセルMC00〜MC11に対応するワード線W0、W1と、相補データ線対D0、/D0、D1、/D1が例示されている。メモリセルMC00〜MCnnの構成は、互いに同じであるため、図2には、メモリセルMC00についてのみ、その回路構成が示されている。
ここでは、回路構成を例示しているメモリセルMC00を用いて、メモリセルの構成を説明する。メモリセルMC00は、SOTBトランジスタにより構成されている。すなわち、メモリセルMC00は、P型SOTBトランジスタSP1、SP2とN型SOTBトランジスタSN1、SN2、SN3、SN4を備えている。
P型SOTBトランジスタSP1のソースには、電源電圧Vdが供給され、そのドレインは、N型SOTBトランジスタSN1のドレインに接続されている。N型SOTBトランジスタSN1のソースには、接地電圧Vsが供給されている。P型SOTBトランジスタSP1のゲートとN型SOTBトランジスタSN1のゲートは互いに接続されている。これにより、P型SOTBトランジスタSP1のゲートとN型SOTBトランジスタSN1のゲートを入力とし、P型SOTBトランジスタSP1のドレインとN型SOTBトランジスタSN1のドレインを出力とした第1インバータ回路が構成されている。
同様に、P型SOTBトランジスタSP2のソースには、電源電圧Vdが供給され、そのドレインは、N型SOTBトランジスタSN2のドレインに接続されている。N型SOTBトランジスタSN2のソースには、接地電圧Vsが供給されている。P型SOTBトランジスタSP2のゲートとN型SOTBトランジスタSN2のゲートは互いに接続されている。これにより、P型SOTBトランジスタSP2のゲートとN型SOTBトランジスタSN2のゲートを入力とし、P型SOTBトランジスタSP2のドレインとN型SOTBトランジスタSN2のドレインを出力とした第2インバータ回路が構成されている。
第1インバータ回路の入力は、第2インバータ回路の出力に接続され、第2インバータ回路の入力は、第1インバータ回路の出力に接続されている。すなわち、第1インバータ回路の入力および出力と第2インバータ回路の出力および入力は交差接続され、フリップフロップ回路を構成している。フリップフロップ回路の1対の入出力、すなわち、第1インバータ回路の入力(第2インバータ回路の出力)と第2インバータ回路の入力(第1インバータ回路の出力)は、転送用のN型SOTBトランジスタ(転送用SOTBトランジスタ)SN3、SN4を介して対応する相補データ線対D0,/D0に接続されている。また、転送用SOTBトランジスタSN3およびSN4のゲートは、対応するワード線W0に接続されている。
メモリセルアレイのワード線W0〜Wnおよび相補データ線対D0,/D0〜Dn、/Dnは、周辺回路PRKに接続されている。周辺回路PRKは、バス27に接続されており、バス27を介して、アドレス信号(図示せず)とリード/ライト制御信号(図示せず)を受信する。周辺回路PRKは、供給されたアドレス信号に基づいて、複数のワード線W0〜Wnからアドレス信号によって指定されているワード線を選択し、選択したワード線をハイレベルにする。また、周辺回路PRKは、供給されたアドレス信号に基づいて、複数の相補データ線対D0、/D0〜Dn、/Dnからアドレス信号によって指定された相補データ線対を選択する。
周辺回路PRKは、リード/ライト制御信号が、リード動作を指定しているとき、選択した相補データ線対からの情報を、バス27に供給する。この場合、この選択された相補データ線対に接続され、接続されているワード線の電圧がハイレベルとなっているメモリセルからの情報が、バス27へ供給される。一方、リード/ライト制御信号が、ライト動作を指定しているとき、周辺回路PRKは、バス27における情報を選択した相補データ線対へ供給する。この場合には、この選択された相補データ線対に接続され、接続されているワード線の電圧がハイレベルとなっているメモリセルに、バス27における情報が供給され、書き込みが行われる。
周辺回路PRKによって、ワード線W0が選択され、相補データ線対D0、/D0が選択された場合を例にして、ライト動作とリード動作を説明する。ワード線W0が選択によりハイレベルとなると、選択メモリセルMC00における転送用SOTBトランジスタSN3、SN4がともにオン状態となる。
ライト動作においては、相補データ線対D0、/D0の電圧が、転送用SOTBトランジスタSN3、SN4を介して、フリップフロップ回路の1対の入出力に伝達される。すなわち、相補データ線D0の電圧は、転送用SOTBトランジスタSN3を介して、第2インバータ回路の入力に供給され、相補データ線/D0の電圧は、転送用SOTBトランジスタSN4を介して、第1インバータ回路の入力に供給される。相補データ線/D0における電圧(信号)は、相補データ線D0における電圧(信号)に対して位相反転している。そのため、例えば第1インバータ回路の入力には、転送用SOTBトランジスタSN3を介してハイレベルが供給され、第2インバータ回路の入力には、転送用SOTBトランジスタSN4を介してロウレベルが供給されることになる。これにより、フリップフロップ回路が保持する状態が、相補データ線対D0、/D0における信号によって定められ、メモリセルMC00への書き込みが行われる。
一方、リード動作においては、転送用SOTBトランジスタSN3、SN4を介して、フリップフロップ回路の1対の入出力が、相補データ線対D0、/D0に接続される。すなわち、第2インバータ回路の出力が、転送用SOTBトランジスタSN4を介して、相補データ線/D0に接続され、第1インバータ回路の出力が、転送用SOTBトランジスタSN3を介して、相補データ線D0に接続される。例えば、フリップフロップ回路において、第1インバータ回路の出力がロウレベルで、第2インバータ回路の出力がハイレベルの状態を保持していた場合、転送用SOTBトランジスタSN3を介してロウレベルが、相補データ線D0に供給され、転送用SOTBトランジスタSN4を介してハイレベルが、相補データ線/D0に供給される。
他のメモリセルMC01、MC10〜MCnnに対応するワード線と相補データ線対が選択された場合も、メモリセルMC00と同じである。
また、周辺回路PRKがワード線W0を非選択、すなわちロウレベルにした場合には、転送用SOTBトランジスタSN3、SN4がともにオフ状態となる。これにより、相補データ線対とメモリセルMC00内のフリップフロップ回路の入出力との間は電気的に分離される。このとき、フリップフロップ回路には、電源電圧Vdと接地電圧Vsが供給されているため、保持している状態を継続して保持する。他のメモリセルも同様に、対応するワード線が非選択の場合には、保持している状態を継続する。
周辺回路PRKは、複数のP型MOSトランジスタと複数のN型MOSトランジスタにより構成されている。例えば、周辺回路PRKは、アドレス信号をデコードするデコーダ回路とデコーダ回路の出力をワード線に伝達するドライブ回路等を有しているが、これらの回路が、複数のP型MOSトランジスタと複数のN型MOSトランジスタにより構成されている。図2には、周辺回路PRKを構成する複数のP型MOSトランジスタと複数のN型MOSトランジスタのうち、一部のP型MOSトランジスタとN型MOSトランジスタが代表として描かれている。すなわち、図2では、ワード線W0、W1に選択、非選択の電圧を供給するドライブ回路の出力部を構成するMOSトランジスタが示されている。
同図において、ドライブ回路の出力部は、互いに同じ構成を有しており、P型MOSトランジスタMP2とN型MOSトランジスタMN2とを有している。ここで、P型MOSトランジスタMP2のソースには、電源電圧Vdが供給され、そのドレインは対応するワード線(例えばW0)に接続されている。また、N型MOSトランジスタMN2のソースには、接地電圧Vsが供給され、そのドレインは対応するワード線(W0)に接続されている。P型MOSトランジスタMP2のゲートとN型MOSトランジスタMN2のゲートは、共通に接続され、デコーダ回路によってデコードされた信号が伝達される。
これにより、アドレス信号により指定されたワード線(例えばW0)に対応するドライブ回路の出力部では、P型MOSトランジスタMP2がオン状態となり、N型MOSトランジスタMN2はオフ状態となる。その結果、P型MOSトランジスタMP2を介して、電源電圧Vd(ハイレベル)が選択されたワード線(W0)に供給される。一方、アドレス信号により指定されていないワード線(例えばW1)に対応するドライブ回路の出力部では、P型MOSトランジスタMP2がオフ状態となり、N型MOSトランジスタMN2がオン状態となる。その結果、N型MOSトランジスタMN2を介して、接地電圧Vs(ロウレベル)が、非選択のワード線(W1)に供給されることになる。
P型SOTBトランジスタ、N型SOTBトランジスタ、P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのそれぞれは、あとで図3を用いて説明するが、ソース領域(ソースに対応)、ドレイン領域(ドレインに対応)、ゲート電極(ゲートに対応)およびバックゲート領域(バックゲートに対応)を有している。
この実施の形態においては、SRAM30内のメモリセルアレイに含まれるメモリセルMC00〜MCnnのそれぞれにおけるP型SOTBトランジスタSP1、SP2のバックゲートには、基板バイアス電圧Vsp(第1基板バイアス電圧)が供給されている。また、メモリセルMC00〜MCnnのそれぞれにおけるN型SOTBトランジスタSN1〜SN4のバックゲートには、基板バイアス電圧Vsn(第2基板バイアス電圧)が供給されている。一方、SRAM30内の周辺回路PRKを構成する複数のP型MOSトランジスタ(MP2)のそれぞれのバックゲートには、基板バイアス電圧Vmp(第3基板バイアス電圧)が供給され、SRAM30内の周辺回路PRKを構成する複数のN型MOSトランジスタ(MN2)のそれぞれのバックゲートには、基板バイアス電圧Vmn(第4基板バイアス電圧)が供給されている。CPU26を構成する複数のP型MOSトランジスタ(MP1)のそれぞれのバックゲートにも、基板バイアス電圧Vmp(第3基板バイアス電圧)が供給され、CPU26を構成する複数の複数のN型MOSトランジスタ(MN1)のそれぞれのバックゲートには、基板バイアス電圧Vmn(第4基板バイアス電圧)が供給されている。
すなわち、この実施の形態において、CPU26を構成するP型MOSトランジスタ(MP1)とSRAM30内の周辺回路PRKを構成するP型MOSトランジスタ(MP2)のそれぞれのバックゲートには、同じ電圧値の基板バイアス電圧Vmpが供給され、CPU26を構成するN型MOSトランジスタ(MN1)とSRAM30内の周辺回路PRKを構成するN型MOSトランジスタ(MN2)のそれぞれのバックゲートには、同じ電圧値の基板バイアス電圧Vmnが供給される。
また、各メモリセルを構成するP型SOTBトランジスタSP1、SP2のバックゲートには、同じPチャンネル型ではあるが、基板バイアス電圧Vmpとは異なる基板バイス電圧Vspが供給されている。同様に、各メモリセルを構成するN型SOTBトランジスタSN1、SN2のバックゲートには、同じNチャンネル型ではあるが、基板バイアス電圧Vmnとは異なる基板バイス電圧Vsnが供給されている。また、基板バイアス電圧Vspと基板バイアス電圧Vsnとは、互いに極性が異なるように、基板バイアス発生回路23−Vsp、23−Vsnによって発生され、基板バイス電圧Vmpと基板バイアス電圧Vmnとは、互いに極性が異なるように、基板バイアス発生回路23−Vmp、23−Vmnによって発生される。なお、基板バイアス電圧Vspと基板バイアス電圧Vmpとは同じ極性であり、基板バイアス電圧Vsnと基板バイアス電圧Vmnとは同じ極性である。
<MOSトランジスタおよびSOTBトランジスタの構造>
次に、図3を用いて、MOSトランジスタおよびSOTBトランジスタの構造を説明する。図3(A)は、P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタの構造を模式的に示す断面図である。また、図3(B)は、P型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタの構造を模式的に示す断面図である。
複数のP型MOSトランジスタにおいて、それらの構造は互いに同じであり、複数のN型MOSトランジスタにおいて、それらの構造も互いに同じである。そのため、図3(A)で説明するP型MOSトランジスタは、図2に示したP型MOSトランジスタMP1に対応し、N型MOSFETトランジスタは、図2に示したN型MOSトランジスタMN1に対応しているものとして説明する。また、複数のP型SOTBトランジスタにおいて、それらの構造は互いに同じであり、複数のN型SOTBトランジスタにおいて、それらの構造も互いに同じである。そのため、図3(B)で説明するP型SOTBトランジスタは、図2に示したP型SOTBトランジスタSP1に対応し、N型SOTBトランジスタは、図2に示したN型SOTBトランジスタSN1に対応しているものとして説明する。
これらのMOSトランジスタおよびSOTBトランジスタは、1個の半導体チップに形成されている。図3においては、基板40が、MOSトランジスタとSOTBトランジスタとにおいて共通となっている。ここでは、基板40は、Pチャンネル型(以下、P型と称する)シリコン基板であるとして説明する。
図3(A)において、41は、P型シリコン基板40に形成されたNチャンネル型(以下、N型と称する)ウェル領域である。このN型ウェル領域41に、N型ウェル領域42と、P型ウェル領域43が形成されている。N型ウェル領域42には、P型MOSトランジスタ(MP1)のソース領域となるP+型領域45と、P型MOSトランジスタ(MP1)のドレイン領域となるP+型領域46と、N+型領域44とが形成されている。同図において、50はP型MOSトランジスタ(MP1)のゲート電極を示している。ゲート電極50は、図示していない絶縁膜(ゲート絶縁膜)を介して、N型ウェル領域42上に形成されている。図3(A)では、図面を見易くするために、ゲート電極50は、ソース領域45およびドレイン領域46と分離しているように描かれているが、実際には、ゲート電極50、ソース領域45およびドレイン領域46はオーバラップするように形成されている。また、N+型領域44は、基板バイアス電圧VmpをN型ウェル領域42に供給するための領域である。
図3(A)において、52は、基板バイアス電圧Vmpを、N+型領域44へ供給するための電極を示しており、53は、電源電圧VdをP+型領域45へ供給するための電極を示している。また、図3(A)において、56は、P+型領域46を出力outへ接続するための電極を示し、54は、ゲート電極50を入力inに接続するための電極を示している。
上記したP型ウェル領域43には、N型MOSトランジスタ(MN1)のソース領域となるN+型領域48と、N型MOSトランジスタ(MN1)のドレイン領域となるN+型領域47と、P+型領域49とが形成されている。同図において、51はN型MOSトランジスタ(MN1)のゲート電極を示している。ゲート電極51は、図示していない絶縁膜(ゲート絶縁膜)を介して、P型ウェル領域43上に形成されている。図3(A)では、図面を見易くするために、ゲート電極51も、ソース領域48およびドレイン領域47と分離しているように描かれているが、実際には、ゲート電極51、ソース領域48およびドレイン領域47はオーバラップするように形成されている。また、P+型領域49は、基板バイアス電圧VmnをP型ウェル領域43に供給するための領域である。
図3(A)において、59は、基板バイアス電圧Vmnを、P+型領域49へ供給するための電極を示しており、58は、接地電圧VsをN+型領域48へ供給するための電極を示している。また、図3(A)において、57は、N+型領域47を出力outへ接続するための電極を示し、55は、ゲート電極51を入力inに接続するための電極を示している。
上記した基板40、N型ウェル領域41、42、P型ウェル領域43、P+型領域45、46、49およびN+型領域44、47、48のそれぞれは、不純物を含有するシリコンであり、含有する不純物により、それぞれのチャンネル型が定められている。
なお、ゲート電極50(51)の下側のN型ウェル領域42(P型ウェル領域43)の部分であって、ソース領域45(48)とドレイン領域46(47)とにより挟まれた部分には、ゲート電極50(51)に電圧を供給することにより、チャンネルが形成される。また、図3(A)において、60は、素子を分離する絶縁領域を示している。
図3(A)と同様に、図3(B)において、40は、共通のP型シリコン基板を示し、41は、P型シリコン基板40に形成されたN型ウェル領域を示し、42は、N型ウェル領域41に形成されたN型ウェル領域を示し、43は、N型ウェル領域41に形成されたP型ウェル領域を示している。
N型ウェル領域42上には、薄い絶縁膜80が形成されている。この薄い絶縁膜80を挟むように、N型ウェル領域42上に、P型SOTBトランジスタ(SP1)のソース領域となるP+型領域62と、ドレイン領域となるP+型領域64とが形成されている。また、このP+型領域62とP+型領域64との間に、実質的に不純物を含有していないシリコン領域(シリコン薄膜の領域)63が形成されている。このシリコン領域63上に、図示しない絶縁膜(ゲート絶縁膜)を介してゲート電極69が形成されている。ここで、シリコン領域63は、P+型領域62とP+型領域64とに接しており、ゲート電極69に電圧を供給することにより、このシリコン領域63にチャンネルが形成される。図3(B)においても、図面を見易くするために、ゲート電極69は、ソース領域62およびドレイン領域64と分離しているように描かれているが、実際には、ゲート電極69、ソース領域62およびドレイン領域64はオーバラップするように形成されている。
また、N型ウェル領域42上には、基板バイス電圧Vspを、N型ウェル領域42へ供給するためのN+型領域61が形成されている。図3(B)において、71は、基板バイアス電圧VspをN+型領域61へ供給するための電極を示し、72は、電源電圧Vdをソース領域62へ供給するための電極を示している。また、74は、ドレイン領域64を出力outへ接続するための電極を示し、73は、ゲート電極69を入力inに接続するための電極を示している。
P型ウェル領域43上には、薄い絶縁膜81が形成されている。この薄い絶縁膜81を挟むように、P型ウェル領域43上に、N型SOTBトランジスタ(SN1)のソース領域となるN+型領域67と、ドレイン領域となるN+型領域65とが形成されている。また、このN+型領域65とN+型領域67との間に、実質的に不純物を含有していないシリコン領域(シリコン薄膜の領域)66が形成されている。このシリコン領域66上に、図示しない絶縁膜(ゲート絶縁膜)を介してゲート電極70が形成されている。ここで、シリコン領域66は、N+型領域65とN+型領域67とに接しており、ゲート電極70に電圧を供給することにより、このシリコン領域66にチャンネルが形成される。ここでも、図面を見易くするために、ゲート電極70は、ソース領域67およびドレイン領域65と分離しているように描かれているが、実際には、ゲート電極70、ソース領域67およびドレイン領域65はオーバラップするように形成されている。
また、P型ウェル領域43上には、基板バイス電圧Vsnを、P型ウェル領域43へ供給するためのP+型領域68が形成されている。図3(B)において、78は、基板バイアス電圧VsnをP+型領域68へ供給するための電極を示し、77は、接地電圧Vsをソース領域67へ供給するための電極を示している。また、75は、ドレイン領域65を出力outへ接続するための電極を示し、77は、ゲート電極70を入力inに接続するための電極を示している。なお、図3(B)において、60は、図3(A)と同様に、素子分離用の絶縁領域を示している。
薄いシリコン領域(シリコン薄膜の領域)63、66および薄い絶縁膜80、81のそれぞれの厚さは、例えば10nm程度である。また、SOTBトランジスタのチャンネル型は、例えばゲート電極69、70と薄いシリコン領域63、66との間に設けられる絶縁膜、すなわちゲート絶縁膜の組成により定める。例えばアルミニュウムあるいはハフニュウムをゲート絶縁膜の組成とすることにより、SOTBトランジスタのチャンネル型が決定される。また、SOTBトランジスタのしきい値電圧は、このアルミニュウムあるいはハフニュウムの量および/または薄い絶縁膜80、81に含有される不純物の量によって定められる。
図3(A)に示すように、P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタにおいては、不純物を含有するN型ウェル領域42およびP型ウェル領域43にチャンネルが形成される。そのため、同じ半導体チップに形成されたN型ウェル領域42間(および/またはP型ウェル領域43間)で、含有する不純物の濃度がばらつくと、P型MOSトランジスタ(および/またはN型MOSトランジスタ)間で、しきい値電圧がばらつくことになる。また、N型ウェル領域42(P型ウェル領域43)とP型MOSトランジスタ(N型MOSトランジスタ)のソース領域およびドレイン領域との間にPN接合が存在する。そのため、基板バイアス電圧Vmp(Vmn)をN型ウェル領域42(P型ウェル領域43)に供給すると、PN接合よるリーク電流が発生することになる。
これに対して、P型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタにおいては、チャンネルが形成される領域63、66が、実質的に不純物を含有していない。そのため、不純物の量がばらつくことにより、P型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタのしきい値電圧がばらつくことを低減することが可能となる。また、実質的に不純物を含有していないため、基板バイアス電圧VspおよびVsnに比例して、P型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタのしきい値電圧は変化する。さらに、基板バイアス電圧Vsp(Vsn)が供給されるN型ウェル領域42(P型ウェル領域43)と、P型SOTBトランジスタ(N型SOTBトランジスタ)のソース領域およびドレイン領域は、絶縁膜80(81)によって分離されているため、PN接合が存在しない。これにより、PN接合によりリーク電流が発生することを防ぐことが可能となる。
P型MOSトランジスタ(MP1)のバックゲートは、図3(A)のN型ウェル領域42が該当し、N型MOSトランジスタ(MN1)のバックゲートは、図3(A)のP型ウェル領域43が該当する。また、P型SOTBトランジスタ(SP1)のバックゲートは、図3(B)のN型ウェル領域42が該当し、N型SOTBトランジスタ(SN1)のバックゲートは、図3(B)のP型ウェル領域43が該当する。
<半導体装置10の動作>
図4は、実施の形態1に係わる半導体装置10の動作概念を示す説明図である。同図において、横軸は時間を示し、縦軸は半導体装置10の所定の回路ブロックにおける動作周波数を示している。ここでの所定の回路は、例えばCPU26である。
図4において、1は高速モードの際の動作周波数を示しており、2は低速モードの際の動作周波数を示している。また、3はスタンバイモードを示している。高速モード1では、図1において説明したように、CPU26は、高速のクロック信号20に同期して動作する。そのため、高い周波数(High f)で動作することになる。また、低速モード2では、CPU26は、低速のクロック信号21に同期して動作する。そのため、低い周波数(Low f)で動作することになる。これに対して、スタンバイモードでは、クロック信号が遮断される。
基板バイアス回路23は、低速モード2およびスタンバイモード3において、基板バイアス電圧Vmp、Vmn、VspおよびVsnを発生し、CPU26、SRAM30等へ供給する。基板バイアス電圧Vmp、Vmn、VspおよびVsnが、CPU26、SRAM30等を構成するP型MOSトランジスタ、N型MOSトランジスタ、P型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタのそれぞれのバックゲートに供給されることにより、それぞれのトランジスタのしきい値電圧は、高くなる。それぞれのトランジスタのしきい値電圧が高くなることにより、リーク電流を大幅に低減することが可能となる。一方、基板バイアス発生回路23は、高速モード1のとき、基板バイアス電圧Vmp、Vmn、VspおよびVsnを、それぞれのトランジスタに供給しない。これにより、それぞれのトランジスタのしきい値電圧は、高くならないため、CPU26、SRAM30等は高速で動作することが可能となる。
なお、この実施の形態においては、高速モード1、低速モード2およびスタンバイモード3のいずれのモードにおいても、電源電圧Vdおよび接地電圧Vsの電圧値は変更されず、一定となっている。
スタンバイモード3の場合には、クロック信号の供給が遮断されるため、CPU26内の特定の回路ブロックにおいては、スリープ状態となる。
このようなスタンバイモード3と低速モード2とを、ある時間間隔で切り替えるようにする。これにより、低速ではあるが処理を行いながら、低消費電力化を図ることが可能な超スタンバイ状態を作ることが可能となる。この超スタンバイ状態あるいは低速モード2において、半導体装置10は、予め定められた低速で可能な処理を行う。例えば、超スタンバイ状態あるいは低速モード2で、半導体装置10は、時計の機能を実現する処理を実行する。このときには、基板バイアス電圧が、MOSトランジスタおよびSOTBトランジスタのバックゲートに供給されているため、それぞれのしきい値電圧が高くなり、リーク電流の低減を図ることができる。また、動作周波数が低くなっているため、動作電流も低減する。これにより、より消費電力を低減することが可能となる。
一方、携帯端末装置の機能、例えばゲームなどのアプリケーションは、高速モード1において実行する。高速モード1では、基板バイアス電圧Vmp、Vmn、VspおよびVsnが、P型MOSトランジスタ、N型MOSトランジスタ、P型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタのバックゲートに供給されないため、それぞれのトランジスタのしきい値電圧は高くならない。その結果、リーク電流が増加するが、このときには、動作周波数が高いため、動作電流が大きくなり、リーク電流の増加による消費電力の増加は無視できる程度である。
スタンバイモード3および低速モード2の両方のモードにおいて、基板バイアス電圧Vmp、Vmn、VspおよびVsnが、CPU26、SRAM30等を構成するP型MOSトランジスタ、N型MOSトランジスタ、P型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタのそれぞれのバックゲートに供給されるようにする。そのため、システムコントローラS/C24は、CPU26から供給される指定信号M_Contが、第2モードに対応しているときのみ、モード指定信号Vb_Contにより、基板バイアス発生回路23−Vmp、23−Vmn、23−Vsp、23−Vsn(図2)を動作させ、基板バイアス電圧Vmp、Vmn、VspおよびVsnが、バックゲートに供給されるようにする。一方、CPU26から供給される指定信号M_Contが、第1モードに対応しているとき、システムコントローラS/C24は、基板バイアス発生回路23−Vmp、23−Vmn、23−Vsp、23−Vsn(図2)を非動作状態にする。
<SOTBトランジスタのしきい値制御>
半導体装置10を安定して動作させるためには、SRAM30が安定して動作するようにすることが重要である。半導体装置10を高集積化するために、SRAM30に含まれるメモリセルMC00〜MCnnを構成するトランジスタは、半導体装置10に含まれるトランジスタの中で、最もサイズの小さなトランジスタが用いられる。サイズが最も小さいため、トランジスタのゲート電極のサイズ(幅Wと長さL)も小さくなる。P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタにおいては、このゲート電極の直下の半導体領域(図3(A)では、N型ウェル領域42、P型ウェル領域43の一部)に、不純物を例えば注入し、P型MOSトランジスタおよびN型MOSFETのしきい値電圧を定める。
ゲート電極のサイズが小さいため、ゲート電極の直下の半導体領域も小さくなり、注入される不純物の量も少なくなる。そのため、注入される不純物の量がばらつくと、P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタの特性が大きくばらつくことになる。例えば、65nmのSRAMにおいて、メモリセルを構成するMOSトランジスタを調べると、MOSトランジスタのしきい値電圧は、例えば0.6Vばらつく。例えば、メモリセルのMOSトランジスタのしきい値電圧を0.2Vと設定した場合、バラツキにより、しきい値電圧が0.8V(0.2V+0.6V)となるMOSトランジスタが発生することが考えられる。これは、電源電圧Vdが0.8V以下に低下すると、正常に動作しないメモリセルが発生することを示している。すなわち、SRAMのメモリセルの動作下限電圧により、半導体装置10の動作下限電圧が定まることになる。電源電圧Vdを高くすることにより、SRAMのメモリセルが安定して動作するようにすることが考えられるが、電源電圧Vdを高くすると、消費電力の増加に繋がる。
実施の形態においては、メモリセルMC00〜MCnnのそれぞれが、P型SOTBトランジスタSP1、SP2およびN型SOTBトランジスタSN1〜SN4により構成されている。実質的に不純物を含有しない領域(図3(B)の63、66)にチャンネルが形成される。そのため、これらのSOTBトランジスタのサイズを小さくしても、不純物のばらつきにより、しきい値電圧がばらつくことを抑制することが可能である。例えば、しきい値電圧のばらつきを、0.2V程度に抑制することが可能である。これにより、電源電圧Vdが低くても、SRAM30は安定して動作することが可能となり、半導体装置10を安定して動作させることが可能となる。
さらに、この実施の形態においては、SRAM30が安定して動作するように、P型SOTBトランジスタのしきい値電圧が、基板バイアス回路23により制御される。
図5は、基板バイアス電圧Vsp、Vsnを変化させたときの、P型SOTBトランジスタSP1、SP2およびN型SOTBトランジスタSN1〜SN4のしきい値電圧の変化を示す特性図である。同図において横軸は、基板バイアス電圧Vsnの絶対値を増加させたときの、N型SOTBトランジスタのしきい値電圧(Vth)の変化を示しており、縦軸は、基板バイアス電圧Vspの絶対値を増加させたときの、P型SOTBトランジスタのしきい値電圧(Vth)の変化を示している。
高速モード1においては、P型SOTBトランジスタSP1、SP2およびN型SOTBトランジスタSN1〜SN4のそれぞれのバックゲートに、基板バイアス電圧を供給しない。高速モード1においては、CPU26、SRAM30等は、高速クロック信号20に同期して動作するため、SRAM30は、その動作マージンが最大となるように、P型SOTBトランジスタSP1、SP2のしきい値電圧とN型SOTBトランジスタSN1〜SN4のしきい値電圧とが同じ値Vth1(P)、Vth1(N)となるようにする。すなわち、P型SOTBトランジスタSP1、SP2に基板バイアス電圧Vspが供給されておらず、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4に基板バイアス電圧Vsnが供給されていない状態で、これらのP型SOTBトランジスタのしきい値電圧の絶対値Vth1(p)とこれらのN型SOTBトランジスタのしきい値電圧の絶対値Vth1(n)が、しきい値電圧Vth1となるように、製造する。なお、図5では、高速モード1のときのP型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタのしきい値電圧を、○印で示している。
低速モード2が指定されると、基板バイアス発生回路23−Vspおよび23−Vsnからの基板バイアス電圧VspおよびVsnに従って、P型SOTBトランジスタSP1,SP2のバックゲートの電圧と、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4のバックゲートの電圧が絶対値において高くなっていく。これにより、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4のしきい値電圧の絶対値は、図5に破線で示すように、大きな値へと変化する。なお、既に述べたが、SOTBトランジスタにおいては、バックゲートに供給される電圧に比例して、そのしきい値電圧が変化する。
あとで図7および図8を用いて説明するが、SRAM30を安定して動作させるためには、P型SOTBトランジスタSP1、SP2のしきい値電圧の絶対値は、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4のしきい値電圧の絶対値に対して2倍以上であることが望ましい。そのため、基板バイアス発生回路23−Vspは、基板バイアス発生回路23−Vsnが発生する基板バイアス電圧Vsnの絶対値に対して、2倍以上に大きな電圧値を有する基板バイアス電圧Vspを発生する。これにより、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4のしきい値電圧の絶対値は、破線に沿って増加するが、P型SOTBトランジスタSP1,SP2のしきい値電圧は、実線6に沿って増加する。その結果、低速モード2のときには、P型SOTBトランジスタのしきい値電圧の絶対値は、□印で示したしきい値電圧Vth2、3(P)となる。これに対して、N型SOTBのしきい値電圧の絶対値は、破線に沿って増加するため、低速モード2のときには、しきい値電圧Vth2、3(N)となり、絶対値において、P型SOTBトランジスタのしきい値電圧Vth2、3(P)よりも小さくなる。
スタンバイモード3においても、低速モード2のときと同じ値の基板バイアス電圧Vsp、Vsnが、P型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタのバックゲートに供給されている。そのため、スタンバイモード3においても、P型SOTBトランジスタSP1、SP2のしきい値電圧は、Vth2、3(P)となり、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4のしきい値電圧は、Vth2、3(N)となる。
低速モード2およびスタンバイモード3においては、CPU26およびSRAM30内の周辺回路PRK等を構成するP型MOSトランジスタ(例えば、図2のMP1、MP2)およびN型MOSトランジスタ(例えば、図2のMN1、MN2)のそれぞれのバックゲートに、基板バイアス発生回路23−Vmp、23−Vmnから基板バイアス電圧Vmp、Vmnが供給される。これらのP型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタにおいても、高速モード1のときに、動作のマージンが最大となるように、絶対値において、同じしきい値電圧となるようにする。すなわち、P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのバックゲートに基板バイアス電圧が供給されていないときの、P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのそれぞれのしきい値電圧の絶対値が同じになるように、製造する。
低速モード2およびスタンバイモード3において、基板バイアス電圧VmpおよびVmnを供給することにより、P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのそれぞれのしきい値電圧の絶対値は、増加する。動作のマージンを維持した状態で、P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのそれぞれのしきい値電圧の絶対値を増加させるために、この実施の形態においては、同じ絶対値の基板バイアス電圧VmpおよびVmnを基板バイス発生回路23−Vmpおよび23−Vmnにより形成し、供給する。このように、絶対値において同じ電圧の基板バイアス電圧Vmp、VmnをP型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのバックゲートに供給することにより、P型MOSトランジスタのしきい値電圧とN型MOSトランジスタのしきい値電圧は、絶対値において、互いに等しい値を維持しながら、低速モード2およびスタンバイモード3では、高い値に到達する。
N型MOSトランジスタのバックゲートに供給される基板バイアス電圧Vmnの値と、N型SOTBトランジスタのバックゲートに供給される基板バイアス電圧Vsnの値とを同じにすることにより、図2に示した基板バイアス発生回路23−Vmnまたは23−Vsnを設ける必要がなくなる。この場合には、残した基板バイアス発生回路23−VsnまたはVmnによって、基板バイアス電圧VmnおよびVsnの両方を形成するようにする。同様に、P型MOSトランジスタのバックゲートに供給される基板バイアス電圧Vmpの値と、P型SOTBトランジスタのバックゲートに供給される基板バイアス電圧Vspの値とを同じにすることにより、図2に示した基板バイアス発生回路23−Vmpまたは23−Vspを設ける必要がなくなる。この場合には、残した基板バイアス発生回路23−VspまたはVmpによって、基板バイアス電圧VmpおよびVspの両方を形成するようにする。
このように、基板バイアス電圧VmnとVsn(またはVmpとVsp)とを同じ電圧値にすることにより、基板バイアス発生回路23に設ける基板バイアス発生回路の個数を3個に低減することが可能であり、半導体装置10の小型化を図ることが可能となる。
図6は、基板バイアス発生回路23により発生される基板バイアス電圧の変化を示す模式的な波形図である。同図において、横軸は時間を示しており、縦軸は基板バイアス電圧の電圧値を絶対値で示している。図6において、1で示している期間は、半導体装置10が、高速モード1で動作している期間を示し、2、3は、低速モード2とスタンバイモード3で動作している期間を示している。例えば、期間2、3は、半導体装置10が、先に述べた超スタンバイ状態で動作している期間を示している。
基板バイアス発生回路23−Vspおよび23−Vsnは、高速モード1では、基板バイアス電圧Vsp、VsnをSOTBトランジスタのバックゲートに供給しない。これに対して、低速モード2およびスタンバイモード3において、基板バイアス発生回路23−Vsnは、低バイアス電圧4を有する基板バイアス電圧Vsnを、N型SOTBトランジスタのバックゲートに供給し、基板バイアス発生回路23−Vspは、高バイアス電圧5を有する基板バイアス電圧Vspを、P型SOTBトランジスタのバックゲートに供給する。この実施の形態においては、SRAM30の安定化を図るために、P型SOTBトランジスタのしきい値電圧が、絶対値において、N型SOTBトランジスタのしきい値電圧に対して2倍以上になるようにするために、高バイアス電圧5の値は、絶対値において、低バイアス電圧4の2倍以上の電圧を有している。
基板バイアス発生回路23−Vmnおよび23−Vmpも、高速モード1の期間1においては、基板バイアス電圧Vmp、Vmnを、P型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのバックゲートに供給しない。一方、低速モード2およびスタンバイモード3において、基板バイアス発生回路23−Vmnおよび23−Vmpは、絶対値において、低バイアス電圧4または高バイアス電圧5と等しい電圧を有する基板バイアス電圧Vmp、Vmnを形成する。この場合、基板バイアス電圧Vspを基板バイアス電圧Vmpとして兼用、または基板バイアス電圧Vsnを基板バイアス電圧Vmnとして兼用することが可能であるため、基板バイアス発生回路23に設ける基板バイアス発生回路の数を3個に減らすことが可能である。
<半導体装置の安定動作>
先に説明したように、半導体装置10を安定して動作させるため電源電圧Vdは、SRAM30に含まれるメモリセルMC00〜MCnnの電源電圧により定まる。すなわち、半導体装置10の電源電圧Vdを低下させると、先ずSRAM30の動作が不安定となる。
本発明者らは、メモリセルMC00〜MCnnを、図2に示したように、P型SOTBトランジスタSP1、SP2およびN型SOTBトランジスタSN1〜SN4により構成した場合、P型SOTBトランジスタのしきい値電圧とN型SOTBトランジスタのしきい値電圧によって、SRAM30が安定して動作する電源電圧が変化するかをシミュレーションにより求めた。図7および図8は、シミュレーションにより求めたしきい値電圧と電源電圧との関係を示す特性図である。この図7および図8において、横軸は、P型SOTBトランジスタのしきい値電圧(Vth(P型SOTB))とN型SOTBトランジスタのしきい値電圧(Vth(N型SOTB))の比(Vth(P型SOTB)/Vth(N型SOTB))を示しており、縦軸は、SRAMが安定して動作する電源電圧Vd(対接地電圧Vsに対する電圧)を示している。ここで、図7は、基板バイアス電圧を供給していない高速モード1のときの状態を示しており、図8は、基板バイアス電圧を供給している低速モード2のときの状態を示している。図7および図8において、縦軸に示した動作電圧Vdminが小さいほど、動作範囲が広くなることを意味している。すなわち、動作電圧Vdminが小さいほど、動作マージンが大きくなることを意味している。
図7において、Aで示した破線は、P型SOTBトランジスタとN型SOTBトランジスタとのしきい値電圧の比が1の場合を示している。すなわち、P型SOTBトランジスタのしきい値電圧とN型SOTBトランジスタのしきい値電圧が等しい場合を示している。
SRAMが動作可能な最小動作電圧は、N型SOTBトランジスタのしきい値電圧Vth(P型SOTB)がP型SOTBトランジスタのしきい値電圧Vth(N型SOTB)よりも大きいと、高く、しきい値電圧の比が1に近づくに従って、低くなる。すなわち、しきい値電圧Vth(P型SOTB)としきい値電圧Vth(N型SOTB)とが等しくなる辺りで、動作マージンが大きくなる。P型SOTBのしきい値電圧Vth(P型SOTB)が高くなり、比が高くなるのに従って、緩やかに最小動作電圧が高くなる。そのため、比が2倍(破線B)以上なっても、最小動作電圧は比較的低く、動作マージンは比較的大きくなっている。
基板バイアス電圧を供給すると、図8に示すように、SRAMの最小動作電圧は変化する。すなわち、最小動作電圧Vdminは、比が1倍よりも小さい辺りから低くなり、比が2倍以上の辺りで、最も低くなる。すなわち、P型SOTBトランジスタとN型SOTBトランジスタとのしきい値電圧の比が2倍以上のところで、動作マージンが大きくなっている。逆に、比が1倍の近辺では、動作マージンが悪化している。
このように、基板バイアス電圧が供給されていないときには、P型SOTBトランジスタとN型SOTBトランジスタとのしきい値電圧の比は、1倍(等しい)程度で、SRAMの動作マージンが大きくなる。一方、基板バイアス電圧が供給されているときには、P型SOTBトランジスタとN型SOTBトランジスタとのしきい値電圧の比を大きくすると、動作マージンがよくなり、2倍以上にすると、動作マージンが大きくなる。従って、基板バイアス電圧が供給されるときには、P型SOTBトランジスタとN型SOTBトランジスタとのしきい値電圧の比は、1倍よりも大きくし、望ましくは2倍以上にするのがよい。
(実施の形態2)
実施の形態2に係わる半導体装置においては、基板バイアス発生回路23によって発生される基板バイアス電圧の電圧値が、実施の形態1に対して変更される。半導体装置の構成は、基板バイアス発生回路の個数が変わることを除いて、実施の形態1と同じである。基板バイアス回路23の動作等は、実施の形態1と同じであるため、説明は省略する。
図9は、実施の形態2に係わるP型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタの特性を示す特性図である。図5と同様に、図9には、基板バイアス電圧Vsp、Vsnを変化させたときの、P型SOTBトランジスタSP1、SP2およびN型SOTBトランジスタSN1〜SN4のしきい値電圧の変化を示す特性が示されている。
同図において、破線はN型SOTBトランジスタのしきい値電圧の変化を示しており、実線7はP型SOTBトランジスタのしきい値電圧の変化を示している。この実施の形態2においては、P型SOTBトランジスタSP1、SP2のそれぞれのしきい値電圧が、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4に対して、絶対値において大きくなるように設定される。例えば、P型SOTBトランジスタSP1、SP2のそれぞれのしきい値電圧が、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4に対して、絶対値において、2倍以上の大きさを有する。このしきい値電圧の設定は、例えば、P型SOTBトランジスタSP1、SP2およびN型SOTBトランジスタSN1〜SN4のそれぞれに対して、ゲート絶縁膜に含まれるアルミニュウムあるいはハフニュウムの量および/または薄い絶縁膜80、81(図3)に含有される不純物の量を変えることにより、半導体装置を製造するときに定める。
高速モード1のとき、基板バイアス回路23は、P型SOTBトランジスタSP1、SP2およびN型SOTBトランジスタSN1〜SN4のそれぞれのバックゲートに基板バイアス電圧VspおよびVsnを供給しない。また、CPU26およびSRAM30の周辺回路PRK(図2)を構成するP型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのそれぞれのバックゲートにも、基板バイアス電圧VmpおよびVmnを供給しない。N型SOTBトランジスタSN1〜SN4のしきい値電圧(N型MOSTB_Vth)は、基板バイアス電圧Vmnの変化に従って、図9においては破線で示されているように変化するが、高速モード1のとき、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4のそれぞれには、基板バイアス電圧が供給されていないため、そのときのしきい値電圧は、Vth1(N)となる。一方、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4のそれぞれに、基板バイアス電圧Vsnを供給すると、このN型SOTBトランジスタのしきい値電圧の絶対値は増加し、低速モード2およびスタンバイモード3においては、そのしきい値電圧の絶対値は、Vth2、Vth3(N)となる。
一方、P型SOTBトランジスタSP1、SP2のそれぞれは、高速モード1のとき、そのしきい値電圧(P型SOTB_Vth)の絶対値は、Vth1(P)となる。このときのP型SOTBトランジスタSP1、SP2のしきい値電圧の絶対値Vth(P)は、N型SOTBトランジスタSN1〜SN4のしきい値電圧Vth(N)の2倍以上の値となる。
低速モード2またはスタンバイモード3においては、基板バイアス回路23によって、基板バイアス電圧Vsp、VsnがP型SOTBトランジスタおよびN型SOTBトランジスタのバックゲートに供給される。この実施の形態2においては、低速モード2またはスタンバイモード3において、基板バイアス回路23により形成される基板バイス電圧VspおよびVsnの絶対値が、互いに同じ値となるようにされる。言い換えるならば、基板バイアス発生回路23−Vspと23−Vsnは、絶対値において同じ値を有する基板バイアス電圧VspおよびVsnを形成する。
これにより、P型SOTBトランジスタSP1、SP2のそれぞれのしきい値電圧の絶対値と、N型トランジスタSN1〜SN4のそれぞれのしきい値電圧の絶対値とは、2倍以上のしきい値電圧の差(しきい値電圧間の電圧差)の状態を維持しながら、変化し、高速モード1から低速モード2および/またはスタンバイモード3へ遷移する。図9では、低速モード2、スタンバイモード3におけるP型SOTBトランジスタのしきい値電圧の絶対値が、Vth2、3(P)として示されており、この値は、N型SOTBトランジスタのしきい値電圧の絶対値Vth2、3(N)に対して2倍以上の値を有している。
これにより、実施の形態1と同様に、低速モード2またはスタンバイモード3においても、SRAM30を安定して動作させることが可能となる。
この実施の形態2において、P型MOSトランジスタMP1、MP2およびN型MOSトランジスタMN1、MN2のそれぞれのしきい値は、絶対値において等しい値となるように、製造されている。これらのP型MOSトランジスタMP1、MP2およびN型MOSトランジスタMN1、MN2のそれぞれのバックゲートには、高速モード1のときには、基板バイアス回路23から基板バイアス電圧が供給されず、低速モード2およびスタンバイモード3において、基板バイアス回路23から基板バイアス電圧が供給される。これにより、高速モード1において、P型MOSトランジスタのしきい値電圧とN型MOSトランジスタのしきい値電圧は、絶対値において互いに等しくなり、動作マージンを大きくすることが可能となる。
一方、低速モード2およびスタンバイモード3においては、これらのP型MOSトランジスタMP1、MP2のバックゲートに、基板バイアス発生回路23−Vspによって発生された基板バイス電圧Vspが基板バイアス電圧Vmpとして供給され、N型MOSTBトランジスタMN1、MN2のバックゲートに、基板バイス発生回路23−Vsnによって発生された基板バイアス電圧Vsnが基板バイス電圧Vmnとして供給される。
これにより、低速モード2および/またはスタンバイモード3において、CPU26およびSRAM30の周辺回路PRKを構成するP型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのそれぞれのバックゲートには、絶対値において互いに等しい値を有する基板バイアス電圧Vmp、Vmnが供給されることになる。基板バイアス電圧VmpおよびVmnが供給されることにより、P型MOSトランジスタとN型MOSトランジスタは、絶対値において等しい値を維持しながら、大きくなる。その結果、低速モード2およびスタンバイモード3においては、CPU26およびSRAM30の周辺回路PRKを構成するP型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタのそれぞれは、絶対値において互いに等しい値を維持した状態で高くなり、低速モード2およびスタンバイモード3において、消費電力の低減を図ることが可能となる。
この実施の形態2においては、基板バイアス発生回路23−Vspにより発生した基板バイアス電圧が、基板バイアス電圧VspおよびVmpとして用いられ、基板バイアス発生回路23−Vsnにより発生した基板バイアス電圧が、基板バイアス電圧VsnおよびVmnとして用いられる。そのため、2個の基板バイス発生回路23−Vsp、23−Vsnによって、基板バイアス回路23を構成することが可能となり、半導体装置10のサイズが大きくなるのを抑制することが可能となる。なお、高速モード1のとき、P型SOTBトランジスタのしきい値電圧の絶対値が高くなるが、動作マージンに関しては実質的に問題ない。
以上述べたように、低速モード2およびスタンバイモード3においては、P型SOTBトランジスタ、N型SOTBトランジスタおよびP型MOSトランジスタ、N型MOSトランジスタのそれぞれのバックゲートに基板バイアス電圧が供給されるため、それぞれのトランジスタのしきい値電圧(絶対値)を大きくすることが可能であり、半導体装置10の低消費電力化を図ることが可能となる。また、低速モード2およびスタンバイモード3において、動作の安定化を図ることが可能となる。
実施の形態1および2において、高速モード1のとき、基板バイアス回路23からP型SOTBトランジスタ、N型SOTBトランジスタおよびP型MOSトランジスタ、N型MOSトランジスタのそれぞれのバックゲートに基板バイアス電圧を供給しないと説明したが、これはそれぞれのトランジスタのしきい値電圧を上昇させるための基板バイアス電圧を供給しないことを意味している。そのため、高速モード1において、基板バイアス回路23は、それぞれのトランジスタのソースと同じ電圧を、それぞれのトランジスタのバックゲートに供給していてもよい。すなわち、高速モード1において、基板バイアス回路23は、P型SOTBトランジスタのバックゲートに、そのP型SOTBトランジスタのソースにおける電圧と同じ値の電圧を供給し、N型SOTBトランジスタのバックゲートに、そのN型SOTBトランジスタのソースにおける電圧と同じ値の電圧を供給してもよい。また、高速モード1において、基板バイアス回路23は、P型MOSトランジスタのバックゲートに、そのP型MOSのソースにおける電圧と同じ値の電圧を供給し、N型MOSトランジスタのバックゲートに、そのN型MOSトランジスタのソースにおける電圧と同じ値の電圧を供給してもよい。
あるいは、基板バイアス回路23は、高速モード1において、それぞれのトランジスタのバックゲートをフローティング状態となるようにしてもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、基板バイアス回路により形成された基板バイアス電圧は、低速モード2およびスタンバイモード3において、半導体装置10を構成する全てのP型SOTBトランジスタ、N型SOTBトランジスタおよびP型MOSトランジスタ、N型MOSトランジスタのバックゲートに供給するようにしてもよい。ただし、半導体装置10がアナログ回路を有している場合、そのアナログ回路を構成するトランジスタのバックゲートには、基板バイス電圧を供給しないことが望ましい。
また、高速モード1、低速モード2およびスタンバイモード3の3個のモードを有する場合を説明したが、この個数に限定されるものではない。例えば、高速モード1と低速モード2(あるいはスタンバイモード3)のみを有する場合であってもよい。この場合にも、高速モード1においては、基板バイアス回路23からトランジスタのバックゲートに、基板バイアスを供給せず、低速モード2(あるいはスタンバイモード3)において、基板バイス電圧を供給するようにすればよい。