JP2019191071A - センサ素子及びガスセンサ - Google Patents
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ところで、近年、ガスセンサの活性時間を短縮する早期活性が要求されているが、ヒータの昇温速度を高めるとヒータ近傍の熱応力が大きくなり、素子が割れるおそれがある。そこで、ヒータの発熱体を素子(ヒータ基板)の端部(側端及び先端)になるべく近い位置まで形成し、発熱体が埋設されていないヒータ基板の端部と、発熱体の埋設されている部分との温度差(熱応力)を低減する技術が開発されている(特許文献1参照)。
これは、固体電解質層1100の端面が露出しているため、固体電解質層1100の端面に付着した水1200と固体電解質層1100との間に電流経路CPが形成され、ヒータの発熱体1150と電流経路CPとの間の絶縁は、ヒータ基板1160と発熱体1150の側端との間のわずかな隙間Gのみで維持されるが、発熱体1150が通電すると隙間Gが容易に絶縁破壊されるためと考えられる。
又、固体電解質体が絶縁層に埋め込まれる形態であるので、絶縁層の端部に排気ガス中の導電成分(カーボンの煤)や水が付着した場合に、これら導電成分又は水と、固体電解質体との間を絶縁層が絶縁するので、ヒータ基板と発熱部との上述の隙間A,Bと相俟って、ヒータと固体電解質体との間の絶縁を安定して確保できる。
さらに、一対の内側直線状部が、セルの重なり領域と積層方向に重なると共に、重なり領域の先端又は後端に跨って形成されているので、セルの有効部分である重なり領域に内側直線状部の熱を確実に伝えることができ、早期活性をより確実に実現できる共に、ヒータ基板の端部との温度差(熱応力)をさらに低減できる。
このセンサ素子によれば、早期活性をより確実に実現できる共に、ヒータ基板の端部との温度差(熱応力)をさらに低減できる。
このセンサ素子によれば、内側直線状部が、セルの重なり領域の先後まで重なるので、重なり領域に内側直線状部の熱をさらに確実に伝えることができる。
センサ素子19のうち、検知部22が形成された先端寄り部位が、セラミックホルダ30より先端に突出している。このように貫通孔32を通されたセンサ素子19は、セラミックホルダ30の後端面側(図示上側)に配置されたシール材(本例では滑石)41を、絶縁材からなるスリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。
なお、センサ素子19の後端19eを含む後端寄り部位はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端寄り部位に形成された各センサパッド部13〜15及びヒータパッド部16,17に、シール材85を通して外部に引き出された各リード線71の先端に設けられた端子金具75が圧接され、電気的に接続されている。また、このセンサパッド部13〜15及びヒータパッド部16,17を含むセンサ素子19の後端寄り部位は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
このセンサ素子19は、先端寄り部位に検知部22をなす検知セル層151及び一対の電極153、155(図2参照)が配置され、これに連なり後端寄り部位には、検知用出力取り出し用のリード線71接続用のセンサパッド部14,15(図2参照)が露出形成されている。
すなわち、本例では、センサ素子19は検知セル150及びポンプセル160の2セルを備えている。
さらに、センサ素子19の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層23が被覆されている。
また、この多角形部14の後方には、ガスセンサ1の後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部11eが連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部16を備えている。なお、このカシメ用円筒部16は、図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。なお、多角形部14の下面には、ねじ込み時におけるシール用のガスケット21が取着されている。
一方、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18の内周面は後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部11dを有している。
一方、貫通孔32は、セラミックホルダ30の中心に設けられると共に、センサ素子19が略隙間なく通るように、センサ素子19の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
一方、センサ素子19の先端部位は、本形態では、2層構造からなり、共にそれぞれ通気孔(穴)56、67を有する有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)51,61で覆われている。このうち内側のプロテクタ51の後端が、主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。なお、通気孔56はプロテクタ51の後端側で周方向において例えば8箇所設けられている。一方プロテクタ51の先端側にも、周方向において例えば4箇所、排出穴53が設けられている。
また、外側のプロテクタ61は、内側のプロテクタ51に外嵌して、同時に円筒部12に溶接されている。外側のプロテクタ61の通気孔67は、先端寄り部位に、周方向において例えば8箇所設けられており、また、プロテクタ61先端の底部中央にも排出孔69が設けられている。
なお、リード線71は外筒81の後端部の内側に配置されたシール材(例えばゴム)85を通されて外部に引き出されており、外筒81の小径筒部83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
センサ素子19は厚さ方向(積層方向)に、図2の上方から順に、外側セラミック層183、ポンプセル160、中間セラミック層170、検知セル150及びヒータ145を積層してなる。各層145、150〜183は、アルミナ等の絶縁性セラミックからなり、外形寸法(少なくとも幅及び長さ)の等しい矩形板状をなしている。
多孔質層182はセンサ素子19の上面に露出し、多孔質層182の上面を介してポンプ電極163と外部との間で酸素の汲み出し及び汲み入れが可能となっている。
固体電解質体162,ポンプ電極163及び対向電極165は、後述する測定室171内の被測定ガス中の酸素の汲み出し及び汲み入れを行う酸素ポンプセルを構成し、対向電極165は測定室171に臨み、ポンプ電極163は多孔質層182を介して外部に連通している。
そして、測定室171内の酸素濃度に応じ、ポンプ電極163及び対向電極165の間に流れる電流の方向及び大きさがセンサパッド部13、15を介して2本のリード線71から外部装置によって制御され、酸素がポンピングされる。
測定室171は拡散多孔質層173を介して外部と連通しており、拡散多孔質層173は外部と測定室171との間のガス拡散を所定の律速条件下で実現する。
固体電解質体152,基準ガス側電極153及び被測定ガス側電極155は、被測定ガス中の酸素濃度の検知セルを構成し、被測定ガス側電極部155Eは測定室171に臨んでいる。一方、基準ガス側電極部153Eは、リード部153L、スルーホールを介して外部に通気する。
そして、基準ガス側電極153及び被測定ガス側電極155の検出信号が、センサパッド部14,15から2本のリード線71を介して外部に出力され、酸素濃度が検出される。
又、第1絶縁層161a及び第2絶縁層151aが特許請求の範囲の「絶縁層」に相当する。検知セル層151、ポンプセル層161が特許請求の範囲の「複合層」に相当する。
リード部146Lは、第2ヒータ基板145bに設けられたスルーホールを介してヒータパッド部16,17と電気的に接続されている。そして、2本のリード線71を介してヒータパッド部16,17から発熱部146に通電することで、発熱部146が発熱し、固体電解質体152,162を活性化する。
この発熱部146(ヒータ145)は、検知セル150及びポンプセル160よりも積層方向の片側(図2の下側)に配置されている。
なお、第1ヒータ基板145aと第2ヒータ基板145bとが特許請求の範囲の「ヒータ基板」に相当する。
図3に示すように、発熱部146は、発熱体146m、及び発熱体146から後端側に延びる一対のリード部146Lを備えている。
発熱体146mは、軸線O方向にそれぞれ延びる一対の外側直線状部146m1と、外側直線状部146m1間に配置され軸線O方向に延びる一対の内側直線状部146m2と、隣接する外側直線状部146m1の先端と内側直線状部146m2の先端とを接続する2つのU字状の第1接続部146j1と、一対の内側直線状部146m2の後端を接続する1つのU字状の第2接続部146j2と、からなる。
又、一対のリード部146Lは、それぞれ外側直線状部146m1の後端146eに接続されている。
本実施形態では、発熱部146の発熱体146mは、検知セル150及びポンプセル160と積層方向に重なっており(図4、図5参照)、両セル150,160を加熱する。
なお、外側直線状部146m1の後端146eは、外側直線状部146m1の幅D1が一定の部分の最後端部であり、幅D1より広幅の幅D2(D2>D1)のリード部146Lに繋がる境界部分である。
このとき、一対の内側直線状部146m2は、それぞれ重なり領域S1と積層方向に重なると共に、重なり領域S1の後端に跨って形成されている。
このとき、一対の内側直線状部146m2は、それぞれ重なり領域S2と積層方向に重なると共に、重なり領域S2の後端に跨って形成されている。
なお、ポンプセル160においては、ポンプ電極部163E及び対向電極部165Eは、固体電解質体162の内側に位置するので、重なり領域S1はポンプ電極部163E及び対向電極部165Eの重なり部分となる。一方、検知セル150においては、基準ガス側電極部153E及び被測定ガス側電極部155Eは、幅方向に固体電解質体152の外側に位置するので、重なり領域S2は幅方向に基準ガス側電極部153E及び被測定ガス側電極部155Eよりも内側となる。
0.35mm<A、又は0.85mm<Bであると、ヒータ基板145a、145bの側端部又は先端部から発熱部146が遠ざかり、ヒータ145の昇温速度を高めるとヒータ145近傍の熱応力が増大し、素子割れを生じる場合がある。
つまり、図6に示すように、水200がセンサ素子19の端面(側端面)に付着しても、水200と固体電解質体152との間を隙間G2を介して第2絶縁層151aが絶縁すると共に、水200と発熱部146との間を隙間Aにより絶縁する。これにより、固体電解質体152と発熱部146との間に電流経路が形成されないので、隙間A、G2が絶縁破壊されることが抑制され、絶縁を安定して確保できるのである。なお、図6では固体電解質体152について図示したが、固体電解質体162についても同様である。
これにより、各セル160、150の有効部分である重なり領域S1、S2に内側直線状部146m2の熱を確実に伝えることができ、早期活性をより確実に実現できる共に、ヒータ基板145a、145bの端部との温度差(熱応力)をさらに低減できる。
このようにすると、早期活性をより確実に実現できる共に、ヒータ基板の端部との温度差(熱応力)をさらに低減できる。
上記長さが4mm未満であると発熱範囲が集中することにより熱応力が増大する場合がある。上記長さが10mmを超えると素子の昇温速度の低下や消費電力が増大する場合がある。
又、図6に示す隙間Aと隙間(最小隙間)G2の合計長さが0.3mm以上であると、ヒータ145と固体電解質体162,152との間の絶縁をさらに安定して確保できる。
例えば上記実施形態では、絶縁層に設けられた貫通孔に固体電解質体のペーストを充填して埋め込んだが、絶縁層の貫通孔にシート状の固体電解質体を挿入して配置する態様であってもよい。
又、各セルにおいて、一対の電極は固体電解質体よりも外側にはみ出てもよい。
また、センサ素子としては、1つ以上のセルを有していれば、酸素の濃度を測定するものに限定されず、窒素酸化物(NOx)又は炭化水素(HC)等の濃度を測定するものを用いてもよい。
又、図4、図5に示すように、上記実施形態ではセンサ素子が有するすべてのセルにつき、内側直線状部が重なり領域と積層方向に重なると共に、重なり領域の先端又は後端に跨って形成されているが、少なくとも1つのセルの重なり領域と積層方向に重なると共に、重なり領域の先端又は後端に跨って形成されていればよい。
図2〜図5に示すセンサ素子19として、発熱体146mの抵抗が1.75±0.05Ωで、Aの値を種々変更したものをそれぞれ製造した。Bの値を1mmで一定とした。各センサ素子19の発熱体146mに初期電圧10Vを印加して、素子温度を900℃まで昇温した後、室温まで急冷するサイクルを100サイクル繰り返した後、染色試験にて、センサ素子19のクラックの有無を目視判定した。
クラックが無い場合、電圧を0.5V高くして同様にサイクル試験を行った後のクラックの有無を判定し、これをクラックが生じるまで繰り返し、クラックが生じたときの電圧を求めた。
なお、A,Bを所定の値としたセンサ素子19をそれぞれ10個製造し、上記サイクル試験を10個のセンサ素子19について行い、この10個のデータにつきワイブル解析により故障率0.1%のときの発熱体146mの電圧を求めた。この電圧が高いほど、センサ素子19のクラックを生じずに(熱応力を大きくせずに)ヒータの昇温速度を高めることができる。上記電圧が12V以上であれば、ヒータの昇温速度を高くして早期活性を実現できるものとみなすことができる。
実施例1と同様にして、Bの値を種々変更し、Aの値を0.2mmで一定としたセンサ素子19をそれぞれ製造し、同様にサイクル試験を行って故障率0.1%のときの発熱体146mの電圧を求めた。
図7、図8から明らかなように、0.15mm≦A≦0.35mm、0.25mm≦B≦0.85mmであれば、故障率0.1%のときの発熱体146mの電圧を12V以上とすることができ、センサ素子19のクラックを生じずに早期活性を実現できることがわかる。
なお、0.15mm>A、又は0.25mm>Bの場合は、熱応力は低下するものの、上述の理由で材料強度も同時に低下し、小さな応力でもクラックが生じたと考えられる。従って、本実験でクラックが生じたときの電圧で判定を行う方法は、A、Bの下限を見極めるにも適している。
11 主体金具
19 センサ素子
145 ヒータ
145a、145b ヒータ基板(第1ヒータ基板、第2ヒータ基板)
146 発熱部
146m 発熱体
146m1 外側直線状部
146m2 内側直線状部
146j1 第1接続部
146j2 第2接続部
146e 外側直線状部の後端
146L リード部
160,150 セル(ポンプセル、検知セル)
161、151 複合層(ポンプセル層、検知セル層)
161a、151a 絶縁層(第1絶縁層、第2絶縁層)
161h、151h 貫通孔
162,152 固体電解質体
153及び155、163及び165 一対の電極
O 軸線
S1,S2 重なり領域
Claims (4)
- 絶縁層に設けられた貫通孔に固体電解質体が配置された複合層と、前記固体電解質体の表面に形成された一対の電極と、を有する1つ以上のセルと、
前記複合層の積層方向に配置されるヒータ基板、及び前記ヒータ基板に設けられて少なくとも1つの前記セルを加熱する発熱部を備えたヒータと、
を有し、軸線方向に延びるセンサ素子であって、
前記発熱部は、前記軸線方向にそれぞれ延びる一対の外側直線状部と、前記外側直線状部間に配置された前記軸線方向に延びる一対の内側直線状部と、隣接する前記外側直線状部の先端と前記内側直線状部の先端とを接続する第1接続部と、一対の前記内側直線状部の後端を接続する第2接続部と、からなる発熱体と、一対の前記外側直線状部の後端に接続される一対のリード部と、を含んで構成され、
前記ヒータ基板の側端部と前記外側直線状部の側端部との最小距離Aが、0.15mm≦A≦0.35mmであり、
前記ヒータ基板の先端部と前記第1接続部の先端部との最小距離Bが、0.25mm≦B≦0.85mmであり、
前記内側直線状部は、前記一対の電極と前記固体電解質体との重なり領域と前記積層方向に重なると共に、該重なり領域の先端又は後端に跨って形成されていることを特徴とするセンサ素子。 - 前記外側直線状部は、前記固体電解質体の側端側に該固体電解質体と間隔を開けて配置されている請求項1に記載のセンサ素子。
- 前記内側直線状部は、前記一対の電極の重なり領域の先端及び後端に跨って形成されている請求項1または2に記載のセンサ素子。
- 被測定ガス中の特定ガスを検出するセンサ素子と、該センサ素子を保持する主体金具と、を備えるガスセンサであって、
前記センサ素子として、請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ素子を備えるガスセンサ。
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