JP2019189942A - 金属の焼鈍方法 - Google Patents

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Koji Nishikawa
晃司 西川
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Abstract

【課題】第1にPF値を適正値まで速やかに上昇させ、第2にパージの時間を短縮する、これにより処理時間の短縮を図る、金属の焼鈍方法を提供する。【解決手段】炭素源であるCOを含むとともに炉内へ導入する前にはCO2とH2Oを実質的に含まない雰囲気ガスを、少なくとも昇温段階において使用する。CO濃度はPF値(CO%2/CO2%)の分子であり、炭素源であるCOを含む上記雰囲気ガスを導入することにより、PF値は速やかに上昇する。また、CO2濃度はPF値(CO%2/CO2%)の分母であり、CO2を実質的に含まない上記雰囲気ガスの導入は、PF値の上昇に対する阻害要因がない。したがって、昇温段階において上記雰囲気ガスを使用することによりPF値を速やかに上昇させ、処理時間の短縮を図ることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、還元性雰囲気ガスを使用した金属の焼鈍方法に関するものである。
金属の焼鈍処理は、たとえばバッチ式焼鈍炉において、雰囲気ガスを使用して金属の表面炭素濃度を制御しながら行うケースがある。
このような焼鈍処理では、還元性雰囲気ガスとしてCOガスを含んだ吸熱型変成ガスを窒素と混合して使用する。その雰囲気によってカーボンポテンシャルを制御し、表面に脱炭や浸炭が起こるのを防止する。上記カーボンポテンシャルの制御は、具体的にはPF値と呼ばれる指標値(CO%/CO%)を用いることができる。
また、上記還元性雰囲気ガスの導入を始める前に、あらかじめ炉内の空気を窒素ガスと置換するパージを行い、炉内の酸素濃度を十分に下げておくことが行われる。
〔先行技術文献〕
本出願人は、このような技術に関する先行技術文献として、下記の特許文献1を把握している。
特開2005−76986号公報
上記特許文献1は、熱処理炉の雰囲気制御方法に関するものであり、つぎの各記載がある。
[0002]
線材コイルや棒鋼等の焼鈍処理に使用されるバッチ式熱処理炉の雰囲気制御系はおおよそ図3に示すような構成となっている。すなわち図3において、被処理物11が収納された炉体1にはCO、H2、N2を主成分とする吸熱形変成ガスが流量調節弁2を経て供給されている。ガス分析形3が設けられて、炉体1内のCO2ガス濃度(CO2%)とCOガス濃度(CO%)が測定され、その測定信号は指標値算出回路4に入力して、ここで、下式(1)に示すCO2%とCO%の二乗との比で定まるカーボンポテンシャルの指標値(PF)が算出される。制御計5は炉内温度に応じて予め設定されている、脱炭も浸炭も生じない制御目標値に上記指標値を追従させるように上記流量調節弁2の開度をPID制御する。炉体1にはさらに、炉内パージや炉圧保持のために一定量のN2ガスが開閉弁7を経て供給されている。なお炉体1には排気ダンパ61を内設した排気ダクト6が接続されている。
PF=(CO%)**2/CO2%…(1)
[0004]
ところで、上記従来の制御方法において、N2ガスは炉内雰囲気制御開始前には炉内の空気をN2でパージするため、また炉内雰囲気制御開始後は炉圧を正圧に保って炉内への外気侵入を防止するために、被処理物11の炉内への装入・取出し時を除いて常時炉内へ供給されている。しかしこれによると、N2ガスによってCO2ガスやCOガスが希釈されるために、吸熱形変成ガスの供給を開始してから上記指標値PFが適正値まで上昇するのに比較的長い時間を要し、被処理物11の熱処理を迅速かつ効率的に行うことができないという問題があった。
[0005]
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、炉内雰囲気制御開始後にカーボンポテンシャルの指標値を速やかに上昇させることができて、熱処理の迅速化を可能とした熱処理炉の雰囲気制御方法を提供することを目的とする。
[0006]
上記目的を達成するために、本発明では、炉内雰囲気中のCO2ガス濃度とCOガス濃度の二乗との比で定まるカーボンポテンシャルの指標値を、炉内へ供給する吸熱形変成ガスのガス量を調節することによって所定値に制御するようにした熱処理炉の雰囲気制御方法において、炉圧保持のためのN2ガスの炉内への供給を、吸熱形変成ガスの炉内への供給を開始した後に、一時中止するようにする。この一時中止の方法としては例えば、吸熱形変成ガスを炉内へ供給するための第1のガス供給弁(2)の開度が第1の設定値以上になった時に、N2ガスを炉内へ供給するための第2のガス供給弁(82)を閉鎖するとともに、第1のガス供給弁(2)の開度が第2の設定値以下になったときに第2のガス供給弁(82)を再び開放するようにする。
本発明において、本出願人が捉えている課題は2つある。
第1の課題は、焼鈍処理を開始するときの昇温段階で、PF値を速やかに上昇させることにより、処理時間を短縮することである。
第2の課題は、還元性雰囲気ガスを導入する前に行うパージを速やかに行うことにより、処理時間を短縮することである。
以下、それぞれ説明する。
◆第1の課題
金属の表面炭素濃度を制御しながら行う焼鈍処理では、還元性雰囲気ガスとして吸熱型変成ガスを使用する。表面炭素濃度を適正に制御するためには、上記吸熱型変成ガスによるカーボンポテンシャルの指標値を適正値に制御する必要がある。上記指標値には、PF値(CO%/CO%)が利用される。
上記PF値は、炉内温度の上昇に伴ってその適正値が高くなる。一方、上記吸熱型変成ガスは、炭素源であるCOの濃度が20%〜23.5%程度である。このレベルのCO濃度では、特に昇温段階において、炉温の上昇に対してPF値の上昇が遅れる傾向にある。
昇温段階においてPF値を速やかに上昇させるには、たとえば吸熱型変成ガスの導入流量を増大することが考えられる。しかし、それを実現するには、大型のガス発生装置を準備しなければならない。一方、大型のガス発生装置による大きな導入流量が必要なのは昇温段階だけである。昇温段階の数時間を経過してしまうと、必要な吸熱型変成ガスの導入流量は順次減少する。
したがって、昇温段階だけに合わせて大型のガス発生装置を設けるのは設備効率が極めて悪い。つまり、昇温段階を終えたあと、必要な吸熱型変成ガスの導入流量が少なくなっても、大型のガス発生装置を運転し続けることになる。これではエネルギー効率が悪く、熱処理コストが割高となって現実的でない。
このような理由から、工業的には、ガス発生装置は、熱処理工程の全般を通して必要な規模に設計される。
このように、吸熱型変成ガスを使用した焼鈍処理では、吸熱型変成ガスの発生量に設備的な上限ができてしまう。一方、吸熱型変成ガスのCO濃度も、20数%が限界である。これらの理由により、昇温段階では、炉温の上昇に追従した形でPF値が速やかに上昇しない。このため昇温段階は、ゆっくりしたPF値の上昇に合わせ、わざわざ炉温の上昇を遅らせる制御を行っているのが実情である。炉温の上昇を遅らせる分だけ、処理時間が長くなっている。
そこで、上記特許文献1では、吸熱型変成ガスのCO濃度でPF値を速やかに上昇させるため、つぎのようにしている。
すなわち、あらかじめ炉内の空気を窒素ガスでパージした後、炉圧を保持して外気の侵入を防止するために行う窒素ガスの供給を、吸熱型変成ガスの炉内への供給を開始したときに一時中止する。
これにより、吸熱型変成ガスが窒素ガスによって希釈されるのを防ぐ。COガス濃度が下がらないので、その分だけPF値の上昇速度は改善する。
しかしながら、上記特許文献1の技術は、炉圧維持用の窒素ガスの供給を一時的に止め、吸熱型変成ガスのCO濃度を下げないようにしているに過ぎない。つまり、ガス発生装置を大型にして吸熱型変成ガスの流量を増大させるわけではないし、吸熱型変成ガスのCO濃度を20数%より高くするわけでもない。結局、もともと発生させている流量での吸熱型変成ガスのパフォーマンスを超えてまで、PF値の上昇は速くならない。
ここで、PF値(CO%/CO%)を上げるためには、CO濃度を低くする必要がある。ところが、吸熱型変成ガス自体、いくばくかのCOを含有するのであり、それ自体がPF値の上昇に対する阻害要因として働く。また、吸熱型変成ガス自体に含まれるCOやHOは酸化性のガスであり、ワークの表面を酸化させる。
つまり、上記特許文献1の技術は、PF値を速やかに適正値まで上昇させて処理時間を短縮するという要求に対し、十分なレベルで応えられるものではない。
加えて、上記特許文献1の技術では、つぎに説明する第2の課題が解決しない。
◆第2の課題
金属の表面炭素濃度を制御しながら行う焼鈍処理では、還元性雰囲気ガスとして吸熱型変成ガスを使用する。このような熱処理では一般に、吸熱型変成ガスを導入する前に、あらかじめ炉内の空気を追い出すため、窒素ガスによるパージを行う。
吸熱型変成ガスは、COとHを含むため、一定濃度以上の酸素が残留した炉内に導入すると、爆発の危険がある。
したがって、吸熱型変成ガスを導入した雰囲気が爆発限界に達しなくなるレベルまで酸素濃度を下げておく必要がある。
爆発性の面からいえば、その危険がなくなるまで酸素濃度を下げれば、パージを停止して吸熱型変成ガスを導入できる。
しかし、たとえ爆発の危険がない濃度であっても、炉内に酸素が残留しているところに吸熱型変成ガスを導入すると、残留酸素がCOやHと反応を生じ、HOやCOが生成する。
ここで、PF値(CO%/CO%)を上げるためには、CO濃度を高くし、CO濃度を低くする必要がある。
ところが、微量でも炉内に酸素が残留していれば、吸熱型変成ガスの導入で上述した反応が生じ、CO濃度が低下し、CO濃度が上がることになる。つまり、PF値の上昇が阻害される。
このため、実際のパージは、爆発の危険がなくなってからさらに、できる限り酸素濃度を低下させるようにしている。このような理由から、従来の焼鈍処理では、パージに極めて長時間をかけているのが実情である。
本発明の目的は、つぎに示すとおりであり、上記2つの課題を解決することにある。
第1にPF値を適正値まで速やかに上昇させ、第2にパージの時間を短縮する。これにより処理時間の短縮を図る、金属の焼鈍方法を提供する。
請求項1記載の金属の焼鈍方法は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
炭素源であるCOを含むとともに炉内へ導入する前にはCOとHOを実質的に含まない雰囲気ガスを、少なくとも昇温段階において使用する。
請求項2記載の金属の焼鈍方法は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスは、さらにHを含む。
請求項3記載の金属の焼鈍方法は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスは、さらに不活性ガスを含む。
請求項4記載の金属の焼鈍方法は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスは、CO濃度が30体積%以上である。
請求項5記載の金属の焼鈍方法は、請求項4記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスは、H濃度が70体積%未満である。
請求項6記載の金属の焼鈍方法は、請求項4記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスは、不活性ガス濃度が70体積%未満である。
請求項7記載の金属の焼鈍方法は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記昇温段階において、不活性ガスを導入して炉内をパージするときに、上記不活性ガスを導入しながら上記雰囲気ガスを供給する。
請求項8記載の金属の焼鈍方法は、請求項7記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスの供給は、炉内が所定の温度範囲に上昇した段階で開始する。
請求項9記載の金属の焼鈍方法は、請求項7または8記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスの供給は、炉内の酸素濃度が所定の濃度に下がった段階で開始する。
請求項10記載の金属の焼鈍方法は、請求項7〜9のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスの供給は、爆発下限界未満のガス組成で行う。
請求項11記載の金属の焼鈍方法は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスは、CO濃度が20体積%以上30体積%以下である。
請求項12記載の金属の焼鈍方法は、請求項11記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記雰囲気ガスは、H濃度が20体積%以上30体積%以下である。
請求項1記載の金属の焼鈍方法は、炭素源であるCOを含むとともに炉内へ導入する前にはCOとHOを実質的に含まない雰囲気ガスを、少なくとも昇温段階において使用する。
CO濃度はPF値(CO%/CO%)の分子であり、COを含む上記雰囲気ガスを導入することにより、PF値は速やかに上昇する。また、CO濃度はPF値(CO%/CO%)の分母であり、COを実質的に含まない上記雰囲気ガスの導入は、PF値の上昇に対する阻害要因がない。また、HOは、COを酸化させてCO濃度を上昇させることから、HOを実質的に含まない上記雰囲気ガスの導入は、PF値の上昇に対する阻害要因がない。したがって、昇温段階において上記雰囲気ガスを使用することによりPF値を速やかに上昇させ、処理時間の短縮を図ることができる。また、上記雰囲気ガスは、酸化性ガスであるCOとHOを実質的に含まないことから、金属の表面をほとんど酸化させない。
請求項2記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスがさらにHを含む。
が還元剤として作用し、焼鈍する金属の表面を強力に還元する方向に働き、表面酸化を防止する。また、COとHを含むガスは、たとえば炭化水素を改質することにより安価に得ることができ、熱処理コストを抑えることができる。また、上記COとHを含むガスは、炭化水素をバーナーで燃焼するガスや、メタノールを分解するガスなどを原料として利用することができる。
請求項3記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスは、さらに不活性ガスを含む。
不活性ガスが金属表面に作用せず、焼鈍する金属の表面変化を防止する。
請求項4記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスは、CO濃度が30体積%以上である。
CO濃度を30体積%以上とすることにより、昇温段階のPF値を速やかに上昇させ、炉内の残留酸素濃度を速やかに低下させることができる。
請求項5記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスは、H濃度が70体積%未満である。
これによりCO濃度を確保し、昇温段階のPF値を速やかに上昇させ、炉内の残留酸素濃度を速やかに低下させることができる。
請求項6記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスは、不活性ガス濃度が70体積%未満である。
これによりCO濃度を確保し、昇温段階のPF値を速やかに上昇させ、炉内の残留酸素濃度を速やかに低下させることができる。
請求項7記載の金属の焼鈍方法は、上記昇温段階において、不活性ガスを導入して炉内をパージするときに、上記不活性ガスを導入しながら上記雰囲気ガスを供給する。
上記雰囲気ガス中のCOは炉内に微量に残留する酸素と反応し、炉内酸素濃度を速やかに低下させる。したがって、炉内の残留酸素濃度を反応で速やかに低下させることができる。このため、炉内のパージにかける時間を従来よりも大幅に短縮できる。なお、このとき発生するCOは、上記雰囲気ガスで供給される高濃度のCOガスにより、上述したPF値への影響はほとんどない。
また、上述したように、上記雰囲気ガスがさらにHを含む場合には、強い還元性となるため、残留酸素とCOとの反応で発生するCOの影響を排除できる。パージ後の熱処理においても、金属の酸化や脱炭を十分に防ぐことができる。
請求項8記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスの供給は、炉内が所定の温度範囲に上昇した段階で開始する。
所定の温度範囲に上昇した段階で上記雰囲気ガスを供給することで、上記雰囲気ガス中のCOとHが残留酸素と反応し、酸素濃度を速やかに低下させる。また、上記金属が鋼であれば脱炭を防止できる。
請求項9記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスの供給が、炉内の酸素濃度が所定の濃度に下がった段階で開始する。
上記雰囲気ガスの供給で発生するCOとHOが微量となり、上述したPF値への影響を無視できる。
請求項10記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスの供給が、爆発下限界未満のガス組成で行う。
上記雰囲気ガスの濃度が、爆発下限界未満となるようなガスの供給を行うことで、万一COとHが残留酸素と反応せずに酸素と混合ガスを形成しても、爆発雰囲気にはならない。したがって、爆発の危険を未然に回避できる。
請求項11記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスのCO濃度が20体積%以上30体積%以下である。
CO濃度を20体積%以上30体積%以下とすることにより、昇温段階のPF値を速やかに上昇させ、炉内の残留酸素濃度を速やかに低下させることができる。
請求項12記載の金属の焼鈍方法は、上記雰囲気ガスのH濃度が20体積%以上30体積%以下である。
これによりCO濃度を確保し、昇温段階のPF値を速やかに上昇させ、炉内の残留酸素濃度を速やかに低下させることができる。
比較例1の熱処理チャートであり、(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。 実施例1−1の熱処理チャートであり、(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。 実施例1−2の熱処理チャートであり、(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。 実施例1−3の熱処理チャートであり、(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。 実施例1−4の熱処理チャートであり、(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。 実施例1−5の熱処理チャートであり、(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。 実施例1−6の熱処理チャートであり、(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。 実施例1−7の熱処理チャートであり、(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。 比較例2の熱処理チャートであり、上段は温度と酸素濃度の経時変化、下段はガス流量の経時変化である。 実施例2の熱処理チャートであり、上段は温度と酸素濃度の経時変化、下段はガス流量の経時変化である。
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
本実施形態は、金属の焼鈍方法に関するものである。
〔金属〕
本実施形態が対象とする処理品は金属である。
上記金属としては、鉄系金属および非鉄金属を適用することができる。上記鉄系金属としては、炭素鋼,合金鋼等の鋼や鋳鉄をあげることができる。上記非鉄金属としては、アルミニウムおよびその合金,銅および銅合金,ニッケルおよびその合金,亜鉛およびその合金,マグネシウムおよびその合金等をあげることができる。
〔焼鈍〕
本実施形態が対象とする焼鈍は、完全焼鈍、応力除去焼鈍、球状化焼鈍、中間焼鈍、拡散焼鈍、等温焼鈍、軟化焼鈍等の各種焼鈍処理をあげることができる。
〔工程〕
上記焼鈍は、昇温段階、均熱段階、降温段階の3工程を含む。
上記昇温段階は、上記処理品を炉室内に入れ、室温から所定の均熱温度まで昇温する。なお、上記昇温は、均熱温度まで連続的に昇温する場合に限らず、所定の温度で昇温を一時的に停止して一旦保持したのち再び昇温して均熱温度まで昇温する場合を含む。
上記均熱段階は、処理品を所定の均熱温度で均熱する。上記均熱温度は、焼鈍処理の対象とする金属や焼鈍の種類に応じて適当な温度が設定される。たとえば、亜共析鋼の完全焼鈍では、鉄−炭素系平衡状態図のA3線より20〜30℃高い温度とする。過共析鋼の完全焼鈍では、A1線より20〜50℃高い温度とする。応力除去焼鈍では、鋼であれば約500〜650℃程度、鋳鉄では約500〜700℃とする。溶接による残留応力除去の場合は、約600〜680℃とする。
上記降温段階は、上記均熱温度から室温まで処理品を冷却する。上記冷却は、たとえば100℃/時間以下のゆっくりとした冷却速度で徐冷を行う。上記徐冷は通常、炉中で冷却する炉冷が行われる。炉外で上記徐冷を行う場合は、たとえば灰中で冷却される。
本実施形態では、上記各種の焼鈍処理を、所定の雰囲気中に金属を存在させた状態で行う。
〔加熱炉〕
本実施形態で使用する加熱炉は、雰囲気と温度の制御が可能な雰囲気炉を用いて実施することができる。上記雰囲気炉は、加熱手段を有する炉室を備えている。上記加熱手段は、温度制御手段により昇温段階の昇温速度や焼鈍温度が制御される。上記炉室は、雰囲気ガスやパージガスの導入口を有する。また上記雰囲気ガスやパージガスの導入流量を制御する流量制御手段を備えている。また、炉室内を減圧するための排気口や真空ポンプ等を備えている。上記炉室には、処理品の装入や取出しを行うための開閉扉が設けられ、必要に応じてコンベヤ装置等の搬入搬出手段を付設することができる。
〔雰囲気ガス〕
本実施形態で使用する雰囲気ガスは、炭素源であるCOを含むとともに炉内へ導入する前にはCOとHOを実質的に含まない雰囲気ガスである。本実施形態では、上記雰囲気ガスを、少なくとも昇温段階において使用する。
昇温段階においてCOを含む雰囲気ガスを使用することにより、昇温段階のPF値を速やかに上昇させることができる。つまり、CO濃度がPF値(CO%/CO%)の分子であるため、COを含む上記雰囲気ガスを導入することによりPF値は速やかに上昇する。また、CO濃度はPF値(CO%/CO%)の分母である。このため、COを実質的に含まない上記雰囲気ガスの導入は、PF値の上昇に対する阻害要因がない。また、HOは、COを酸化させてCO濃度を上昇させることから、HOを実質的に含まない上記雰囲気ガスの導入は、PF値の上昇に対する阻害要因がない。また、上記雰囲気ガスは、酸化性ガスであるCOとHOを実質的に含まないことから、金属の表面をほとんど酸化させない。
上記雰囲気ガスは、上記CO濃度が30体積%以上とすることが望ましい。CO濃度が30体積%未満では、PF値を速やかに上昇させる効果や、炉内の残留酸素濃度を速やかに低下させる効果が十分に得られない。また、後述する炉内のパージにかける時間を短縮する効果も十分に得られない。上記CO濃度の上限値としては、たとえば80体積%以下とすることができる。このようにすることにより、炭化水素の改質反応によって、上記雰囲気ガスを安価に得ることができるからである。
上記雰囲気ガスは、さらにHを含むものとすることができる。Hが還元剤として作用し、焼鈍する金属の表面を強力に還元する方向に働き、表面酸化を防止する。また、COとHを含むガスは、たとえば、炭化水素を改質することにより安価に得ることができ、熱処理コストを抑えることができる。また、上記COとHを含むガスは、炭化水素をバーナーで燃焼するガスや、メタノールを分解するガスなどを原料として利用することができる。
このとき、上記H濃度は70体積%未満とするのが望ましい。このようにすることにより、CO濃度を確保し、昇温段階のPF値を速やかに上昇させ、炉内の残留酸素濃度を速やかに低下させることができる。上記H濃度の下限値としては、たとえば20体積%以上とすることができる。このようにすることにより、炭化水素の改質反応によって、上記雰囲気ガスを安価に得ることができるからである。
上記雰囲気ガスは、さらに不活性ガスを含むものとすることができる。上記不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガスを使用することができる。上記不活性ガスは金属表面に作用せず、焼鈍する金属の表面変化を防止する。
このとき、不活性ガス濃度は70体積%未満とするのが望ましい。このようにすることにより、CO濃度を確保し、昇温段階のPF値を速やかに上昇させ、炉内の残留酸素濃度を速やかに低下させることができる。
本発明において、『COとHOを実質的に含まない』とは、具体的には、以下のレベルをいう。
CO濃度は、0.7体積%以下、好ましくは0.6体積%以下、さらに好ましくは0.5体積%以下である。
O濃度は、0.2体積%以下、好ましくは0.1体積%以下、さらに好ましくは0.005体積%以下である。
上記CO濃度は、一般的な吸熱型変性ガスよりも高いが、本発明の雰囲気ガスはCO濃度が吸熱型変性ガスよりも高く充分なPF値を確保できるため、CO濃度を上記範囲としている。また、吸熱型変性ガスではHO濃度が比較的高いため(0.4体積%程度)炉内反応によりCOが増加するのに対し、本発明の雰囲気ガスは、HO濃度が比較的低いため(0.004体積%程度)炉内反応によりCOが減少する。
本実施形態の雰囲気ガスとして、たとえば具体的には、炭化水素を改質して得られた改質ガスからCOとHOを分離除去し、COとHを主成分とする混合ガスを用いることができる。
COとHOを分離除去は、たとえば圧力スイング式吸着法によって行うことができる。この場合、上記『COとHOを実質的に含まない』は、圧力スイング式吸着法で分離された程度となる。この場合、具体的には、以下のレベルをいう。
CO濃度は、0.7体積%以下、好ましくは0.6体積%以下、さらに好ましくは0.5体積%以下である。
O濃度は、0.2体積%以下、好ましくは0.1体積%以下、さらに好ましくは0.005体積%以下である。
〔パージ〕
本実施形態の焼鈍方法では、上記昇温段階において、不活性ガスを導入して炉内をパージする。
本実施形態では、上記パージにおいて、上記不活性ガスを導入しながら上記雰囲気ガスを供給するのが望ましい。
パージガスとしての上記不活性ガスには、窒素ガスやアルゴンガスを用いることができる。
上記雰囲気ガス中のCOは炉内に微量に残留する酸素と反応し、炉内酸素濃度を速やかに低下させる。したがって、炉内の残留酸素濃度を反応で速やかに低下させることができる。このため、炉内のパージにかける時間を従来よりも大幅に短縮できる。なお、このとき発生するCOは、上記雰囲気ガスで供給される高濃度のCOガスにより、上述したPF値への影響はほとんどない。
また、上述したように、上記雰囲気ガスがさらにHを含む場合には、強い還元性となるため、残留酸素とCOとの反応で発生するCOの影響を排除できる。パージ後の熱処理においても、金属の酸化や脱炭を十分に防ぐことができる。
上記パージにおいて、上記雰囲気ガスの供給は、炉内が所定の温度範囲に上昇した段階で開始するのが望ましい。このようにすることにより、所定の温度範囲に上昇した段階で上記雰囲気ガスを供給することで、上記雰囲気ガス中のCOとHが残留酸素と反応し、酸素濃度を速やかに低下させる。また、上記金属が鋼であれば脱炭を防止できる。
上記所定の温度範囲は、500℃〜550℃とするのが望ましい。500℃以上で上記雰囲気ガスを供給することにより、上記雰囲気ガス中のCOとHが速やかに残留酸素と反応する。550℃以下で上記雰囲気ガスを供給することにより、上記金属が鋼であれば脱炭を防止できる。
上記パージにおいて、上記雰囲気ガスの供給は、炉内の酸素濃度が所定の濃度に下がった段階で開始するのが望ましい。このようにすれば、上記雰囲気ガスの供給で発生するCOとHOが微量となり、上述したPF値への影響を無視できる。
上記所定の濃度は、2体積%以下とするのが望ましい。
上記パージにおいて、上記雰囲気ガスの供給は、爆発下限界未満のガス組成で行うのが望ましい。このようにすることにより、上記雰囲気ガスの濃度が、爆発下限界未満となるようなガスの供給を行うことで、万一COとHが残留酸素と反応せずに酸素と混合ガスを形成しても、爆発雰囲気にはならない。したがって、爆発の危険を未然に回避できる。
上記爆発下限界未満のガス組成は、炉内がCO:3体積%未満かつH:3体積%未満、残部:Nと、実質的に含まない程度の微量のCOおよびHOとするのが望ましい。
本実施形態では、上記昇温段階の初期に上記パージを行う。つまり、上記パージを行いながら昇温を開始し、パージが終了してさらに所定の均熱温度まで昇温し、昇温段階を終える。
〔まとめ〕
本実施形態は、たとえば、酸化性ガスをほとんど含まない高濃度COガスと高濃度Hガスを、従来の吸熱型変成ガスの代替として雰囲気ガスに使用する。本実施形態の焼鈍処理では、昇温の開始後に、PF値を速やかに上昇させ、焼鈍処理時間を短縮する。
本実施形態は、炉内の空気を排気するためのパージ時に、所定の温度に到達後、爆発下限界未満の濃度でCOガスとHガスを供給する。これにより、酸素を反応させてCOやHOに変換する。こうして酸素濃度を下げ、パージ時間を短縮し、焼鈍処理時間を短縮する。
本実施形態の雰囲気ガスは、本焼鈍処理における熱処理開始後に、PF値を速やかに上昇させることができる。PF値の上昇が遅れ、温度の上昇を待機させることによるサイクル時間の遅延を防止する。
また、吸熱型変成ガスの発生装置は、エネルギー効率と熱処理コストを勘案した流量でガス発生量が設計され、導入流量に限りがあるのに対し、本実施形態の雰囲気ガスは、容器に貯蔵した状態で供給できるため、必要な時に必要な流量を供給できる。
従来、残留酸素濃度がある程度下がった状態からパージに時間がかかっていたが、所定の温度で本実施形態の雰囲気ガスを導入し、酸素をすばやくCOやHOに変換させて酸素濃度を低下し、パージ時間を短縮できる。
本実施形態の雰囲気ガスは、従来の吸熱型変成ガスと違ってCO濃度が高く、酸化性ガス(COやHO)をほとんど含まない。つまり強還元性のガスであり、上記の酸化性ガス発生による影響を、パージ後の熱処理においても金属の酸化や脱炭を十分に防ぐことが可能となる。
つぎに、実施例1−1と比較例1を説明する。
実施例1−1の雰囲気ガスとして、高濃度COガスと高濃度Hガス(CO:約50体積%+H:約50体積%)を準備した。当該雰囲気ガスは、CO濃度は0.2体積%、HOは0.001体積%である。
比較例1の雰囲気ガスとして、従来型の吸熱型変成ガスを準備した。その組成は、CO濃度:20〜23.9体積%+H:30〜39体積%+CO濃度:0.18体積%+HO濃度:0.4体積%+CH:0.04体積%+残部Nである。
〔比較例1〕
図1は、比較例1の吸熱型変成ガスを雰囲気ガスとして焼鈍を行った熱処理チャートである。(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。
図1(B)に示すように、比較例1では、昇温段階の初期に窒素ガスを炉内に導入してパージを行う。パージが終了した段階で、雰囲気ガスとして吸熱型変性ガスを導入する。昇温段階の終了が近くなると、徐々に吸熱型変性ガスの導入流量を少なくすることができる。図において「余剰吸熱型変性ガス」と記載した部分は、ガス発生装置における吸熱型変性ガスの発生量に対する余剰分を示している。なお、窒素ガスは、炉圧を維持する目的で少流量だけ流し続ける。
図1(A)において、昇温の状態とPF値が上昇する状態を、右上がりの直線で示している。予定の昇温状態およびPF値の上昇状態を実線で示し、それに対する実際の昇温状態およびPF値の上昇状態を破線で示している。
実際のPF値の上昇は予定のそれよりも遅れている。そのため、昇温速度よりも実際が予定よりも遅れている。結果的に、処理の終了が予定よりも遅れている。
〔実施例1−1〕
図2は、実施例1−1の高濃度COガスと高濃度Hガスを雰囲気ガスとして焼鈍を行った熱処理チャートである。(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。
図2(B)に示すように、実施例1−1でも、昇温段階の初期に窒素ガスを炉内に導入してパージを行う。パージが終了した段階で、雰囲気ガスとして高濃度COガスと高濃度Hガスを導入する。高濃度COガスと高濃度Hガスの導入流量は、比較例1の吸熱型変性ガスよりもかなり少なくてすむ。また、昇温段階の途中から、徐々に高濃度COガスと高濃度Hガスの導入流量を少なくすることができる。なお、窒素ガスは、炉圧を維持する目的で少流量だけ流し続ける。
図2(A)において、昇温の状態とPF値が上昇する状態を、右上がりの直線で示している。予定の昇温状態およびPF値の上昇状態を実線で示し、それに対する実際の昇温状態およびPF値の上昇状態を破線で示している。
実際のPF値の上昇は予定のそれに遅れずに追従している。実際の昇温速度も予定に対して遅れずに追従している。結果的に、比較例1よりも早く処理が終了する。
〔実施例1−2〕
図3は、実施例1−2の熱処理チャートである。(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。
使用した高濃度COガスと高濃度Hガスの組成は、CO:約50体積%+H:約50体積%であり、当該ガスのCO濃度は0.2体積%、HO濃度は0.001体積%である。
以下、当該ガスを、実施例1−2から実施例1−7(図3〜図8)において『高濃度ガス』と表記している。
使用した吸熱型変成ガスの組成は、CO濃度:20〜23.9体積%+H:30〜39体積%+CO濃度:0.18体積%+HO濃度:0.4体積%+CH:0.04体積%+残部Nである。
図3(B)に示すように、実施例1−2では、昇温段階の初期に行う窒素ガスによるパージが終了した段階で、比較例1と同様に吸熱型変性ガスを導入し、昇温段階の終了が近くなると、徐々に吸熱型変性ガスの導入流量を少なくする。このとき、吸熱型変性ガスの導入開始から昇温段階が終了するまで、上記比較例1における吸熱型変性ガスの導入に追加するように高濃度ガスを導入する。
つまり、昇温段階の開始以降の吸熱型変性ガスの導入流量は、上記比較例1と同様である。昇温段階の開始から終了までのあいだ、高濃度ガスを追加で導入する。実施例1−1では、吸熱型変性ガスの一部を高濃度ガスで代替するように導入したが、実施例1−2では、吸熱型変性ガスに高濃度ガスを追加するように導入する。
実施例1−2では、昇温段階が終了する前に高濃度ガスの導入を停止する。昇温段階終了後の温度維持段階(PF保持段階)では、吸熱型変性ガスと窒素ガスを導入する。これにより、高濃度ガスの消費量が必要最小限となり、コスト面で有利である。
それ以外は実施例1−1と同様であり、実施例1−1と同様の作用効果を奏する。
〔実施例1−3〕
図4は、実施例1−3の熱処理チャートである。(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。使用した高濃度ガスと吸熱型変成ガスの組成は、実施例1−2と同様である。
図4(B)に示すように、実施例1−3では、昇温段階の初期に行う窒素ガスによるパージが終了した段階で、高濃度ガスを導入する。このとき、比較例1、実施例1−2のように吸熱型変性ガスは導入しない。
実施例1−3では、昇温段階が終了する前に高濃度ガスの導入を停止し、吸熱型変性ガスの導入を開始する。これにより、高濃度ガスの消費量が必要最小限となり、コスト面で有利である。
それ以外は実施例1−1と同様であり、実施例1−1と同様の作用効果を奏する。
〔実施例1−4〕
図5は、実施例1−4の熱処理チャートである。(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。使用した高濃度ガスと吸熱型変成ガスに代替の混合ガスの組成は、実施例1−2とほぼ同様である。
図5(B)に示すように、実施例1−4では、昇温段階の初期に行う窒素ガスによるパージが終了した段階で、比較例1の吸熱型変性ガスに替えて高濃度ガスと窒素ガスの混合ガスを導入する。上記混合ガスは、炉内に導入する前にあらかじめ混合しておくプレミックスガスを使用することができる。
上記混合ガスの導入流量は、昇温段階の終了が近くなると徐々に少なくする。上記混合ガスの組成は、CO:約20〜30体積%+H:約20〜30体積%+CO:約0.08〜0.12体積%+HO:約0.0004〜0.0006体積%+残部Nとなる。
実施例1−4では、上記混合ガスに対してさらに高濃度ガスを追加するように導入する。上記高濃度ガスの導入は、昇温段階が終了する前に停止する。昇温段階終了後の温度維持段階(PF保持段階)では、上記混合ガスと窒素ガスを導入する。これにより、PF保持段階を吸熱型変性ガスと同程度のCO濃度にするため、高濃度ガスの消費量が削減でき、コスト面で有利である。また、吸熱型変性ガスを発生する変成炉が不要になり、設備コストが少なくて済む。また、変成炉のメンテナンスやシーズニングに必要なくなり、ランニングコスト面でも有利である。
それ以外は実施例1−1と同様であり、実施例1−1と同様の作用効果を奏する。
〔実施例1−5〕
図6は、実施例1−5の熱処理チャートである。(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。使用した高濃度ガスと吸熱型変成ガスに代替の混合ガスの組成は、実施例1−2とほぼ同様である。
図6(B)に示すように、実施例1−5では、昇温段階の初期に行う窒素ガスによるパージが終了した段階で、高濃度ガスを導入する。このとき、比較例1、実施例1−2のように吸熱型変性ガスは導入しない。また、実施例1−4のように混合ガスも導入しない。
実施例1−5では、昇温段階が終了する前に高濃度ガスの導入を停止し、高濃度ガスと窒素ガスの混合ガスを導入する。上記混合ガスの組成は、実施例1−3と同様とすることができる。これにより、PF保持段階を吸熱型変性ガスと同程度のCO濃度にするため、高濃度ガスの消費量が削減でき、コスト面で有利である。また、吸熱型変性ガスを発生する変成炉が不要になり、設備コストが少なくて済む。また、変成炉のメンテナンスやシーズニングに必要なくなり、ランニングコスト面でも有利である。
それ以外は実施例1−1と同様であり、実施例1−1と同様の作用効果を奏する。
〔実施例1−6〕
図7は、実施例1−6の熱処理チャートである。(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。
図7(B)に示すように、実施例1−6では、昇温段階の初期に行う窒素ガスによるパージが終了した段階で、高濃度ガスおよび、高濃度ガスと窒素ガスとの混合ガスを導入する。上記混合ガスの組成は、実施例1−4の混合ガスと同様とすることができる。
実施例1−6では、昇温段階において、上記混合ガスの流量を増加させる。つまり、まず、パージで流す窒素ガスの流量と炉圧保持の目的で少量流す窒素ガスの流量との差が上記混合ガスに置換され、上記昇温段階では、上記置換された流量に対して1.2〜2倍の流量の上記混合ガスを導入することが行われる。
このようにすることにより、全工程を通じて吸熱型変性ガスと同程度のCO濃度にするため、高濃度ガスの消費量が削減でき、コスト面で有利である。また、吸熱型変性ガスを発生する変成炉が不要になり、設備コストが少なくて済む。また、変成炉のメンテナンスやシーズニングに必要なくなり、ランニングコスト面でも有利である。
それ以外は実施例1−1と同様であり、実施例1−1と同様の作用効果を奏する。
〔実施例1−7〕
図8は、実施例1−7の熱処理チャートである。(A)は温度とPF値の経時変化、(B)はガス流量の経時変化である。使用した高濃度ガスの組成は、実施例1−2と同様である。
実施例1−7では、吸熱型変性ガスも上記混合ガスも使用しない。昇温段階の初期に行う窒素ガスによるパージが終了した段階で、昇温段階において、窒素ガスの一部を上記高濃度ガスに置換するように導入する。つまり、窒素ガスは、炉圧保持の目的で少量流す流量を超えた流量で導入を続ける。昇温段階の終了が近くなると、上記高濃度ガスの流量と窒素ガスの流量の双方を徐々に少なくする。
実施例1−7では、吸熱型変性ガスのCO濃度や流量不足によってPF値の立上りが遅れることによるサイクル遅延が解消する。また、PF保持段階を吸熱型変性ガスと同じ程度のCO濃度にするため、高濃度ガスの消費量が削減でき、コスト面で有利である。また、吸熱型変性ガスを発生する変成炉が不要になり、設備コストが少なくて済む。また、変成炉のメンテナンスやシーズニングに必要なくなり、ランニングコスト面でも有利である。
それ以外は実施例1−1と同様であり、実施例1−1と同様の作用効果を奏する。
つぎに、実施例2と比較例2を説明する。
実施例2の雰囲気ガスは実施例1−1と同様であり、比較例2の雰囲気ガスは比較例1と同様である。
〔比較例2〕
図9は、比較例2の吸熱型変成ガスを雰囲気ガスとして焼鈍を行った熱処理チャートであり、上段は温度と酸素濃度の経時変化、下段はガス流量の経時変化である。
図9に示すように、窒素ガスを用いたパージにより、炉内の酸素濃度を0.4体積%まで低下させた。この場合、パージだけで酸素を減少させなければならないため、所要時間が長い。したがって、昇温段階において、炉内温度の上昇を一旦550℃で止め、所定の酸素濃度になるまでパージを続けている。
〔実施例2〕
図10は、実施例2の高濃度COガスと高濃度Hガスを雰囲気ガスとして焼鈍を行った熱処理チャートであり、上段は温度と酸素濃度の経時変化、下段はガス流量の経時変化である。
図10に示すように、窒素ガスを用いたパージにより炉内の酸素濃度を2体積%まで低下させ、その状態で高濃度COガスと高濃度Hガス導入する。これにより、上記COが炉内に残留する酸素と反応し、炉内酸素濃度を速やかに0.4体積%まで低下した。実施例2でも比較例2と同様に、昇温段階において、炉内温度の上昇を一旦550℃で止めている。しかし、比較例2に比べて実施例2のほうが、所定の酸素濃度になるまでの時間が短縮した。
〔変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。

Claims (12)

  1. 炭素源であるCOを含むとともに炉内へ導入する前にはCOとHOを実質的に含まない雰囲気ガスを、少なくとも昇温段階において使用する
    ことを特徴とする金属の焼鈍方法。
  2. 上記雰囲気ガスは、さらにHを含む
    請求項1記載の金属の焼鈍方法。
  3. 上記雰囲気ガスは、さらに不活性ガスを含む
    請求項1または2記載の金属の焼鈍方法。
  4. 上記雰囲気ガスは、CO濃度が30体積%以上である
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属の焼鈍方法。
  5. 上記雰囲気ガスは、H濃度が70体積%未満である
    請求項4記載の金属の焼鈍方法。
  6. 上記雰囲気ガスは、不活性ガス濃度が70体積%未満である
    請求項4記載の金属の焼鈍方法。
  7. 上記昇温段階において、不活性ガスを導入して炉内をパージするときに、上記不活性ガスを導入しながら上記雰囲気ガスを供給する
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属の焼鈍方法。
  8. 上記雰囲気ガスの供給は、炉内が所定の温度範囲に上昇した段階で開始する
    請求項7記載の金属の焼鈍方法。
  9. 上記雰囲気ガスの供給は、炉内の酸素濃度が所定の濃度に下がった段階で開始する
    請求項7または8記載の金属の焼鈍方法。
  10. 上記雰囲気ガスの供給は、爆発下限界未満のガス組成で行う
    請求項7〜9のいずれか一項に記載の金属の焼鈍方法。
  11. 上記雰囲気ガスは、CO濃度が20体積%以上30体積%以下である
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属の焼鈍方法。
  12. 上記雰囲気ガスは、H濃度が20体積%以上30体積%以下である
    請求項11記載の金属の焼鈍方法。
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