JP2019189505A - 単結晶体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】単結晶体の厚み中央部分での泡の発生や、単結晶体に結晶欠陥、内部歪、縮み等が発生するのを抑制することができる単結晶体の製造方法の提供。【解決手段】EFG法により単結晶体を育成する単結晶体の製造方法であって、前記単結晶体の原料を坩堝1に充填し加熱溶融させる工程と、前記坩堝内に配置されたダイ2上に保持された前記原料の溶融液に種結晶6を接触させ、溶融液から鉛直方向に引き上げながら単結晶体5を育成する工程と、を含み、前記単結晶体の厚みがそれぞれX1、X2、・・・、Xn(nは2以上の整数)であるとき、それぞれの厚みでの最大引き上げ速度Y1、Y2、・・・、Ynを求め、最小二乗法により、下記関係式(1)を決定し、Y=A・exp(BX)(1)式(1)から、前記単結晶体の厚みがXであるときの最大引き上げ速度Yを求め、当該最大引き上げ速度Y以下の引き上げ速度で前記種結晶を前記溶融液から引き上げる。【選択図】図1

Description

本開示は、サファイア単結晶体等の単結晶体の製造方法に関する。
従来から、単結晶体を育成する方法として、エッジ‐デファインド・フィルムフェッド・グロース法(edge defined film fed growth法、以下、EFG法と略称することがある。)が知られている。
EFG法では、図6に概念的に示すように、坩堝100内に、スリット(間隙)101を有するダイ(金型)102が設置されている。坩堝100に充填した単結晶体の原料を、坩堝100の外周に配置した高周波コイル103により加熱溶融させる。得られた溶融液104は、スリット101内を毛細管現象によってダイ102の上面まで上昇する。この溶融液104の液面に種結晶を接触させて、上方に引き上げながら徐冷することで単結晶体105が育成される。このようなEFG法による単結晶体の製造は、例えば特許文献1に開示されている。
図6において、符号106は、溶融液104と単結晶体105との固液界面を示している。図6では、リボン(板)状の単結晶体105を示しているが、ダイ102の上端面の形状により、棒状、管状等の単結晶体105を得ることができる。
EFG法によれば、種結晶の面方位を維持したまま単結晶体を製造することができる。そのため、後工程で面方位を調整するための複雑な加工を行うことなく、所望の面方位を有する単結晶体、例えば主面が所望の面方位を有する板状単結晶体が得られるという利点がある。
ダイ102の上面は、スリット101から上向きに広がるように形成されている斜面102a、102bを含んでおり、両斜面102a、102bの幅全体に溶融液が広がるので、両斜面102a、102bの先端から先端までの長さLによって単結晶体105の厚さが決まる。
このとき、特に厚みの大きい単結晶体105では、引き上げられる単結晶体105内の泡(原料であるアルミナから分解・生成する酸素などの泡、および坩堝100の構成金属(例えばモリブデン)の酸化物の分解によって生じる酸素などの泡)、および、異物(素材金属(例えばモリブデン))が表面に集まらず、厚みの中央部分に残留しやすい。また、厚みの大きい単結晶体105では、表面と内部で温度差が出来やすくなるために、リネージなどの結晶欠陥や、内部歪による割れ等が発生するおそれがある。さらに、単結晶体105の引き上げ速度が速いと、スリット101からの溶融液の供給量が結晶化速度に追いつかなくなるために単結晶体105が縮み、厚みがでない、などの不具合が発生し、単結晶体105の育成が難しいという問題があった。
特開2016−47792号公報
本開示は、単結晶体の厚み中央部分での泡の発生や、単結晶体に結晶欠陥、内部歪、縮み等が発生するのを抑制することができる単結晶体の製造方法を提供することである。
本開示に係る単結晶体の製造方法は、EFG法により単結晶体を育成するにあたり、前記単結晶体の原料を坩堝に充填し、加熱溶融させる工程と、前記坩堝内に配置されたダイ上に保持された前記原料の溶融液に種結晶を接触させ、前記溶融液から鉛直方向に引き上げながら前記単結晶体を育成する工程と、を含み、前記単結晶の厚みがそれぞれX1、X2、・・・、Xn(nは2以上の整数)であるとき、それぞれの厚みでの最大引き上げ速度Y1、Y2、・・・、Ynを求め、最小二乗法により、下記関係式(1)を決定し、
Y=A・exp(BX) ・・・(1)
(但し、A、Bは定数である。)
前記関係式(1)から、前記単結晶の厚みがXであるときの最大引き上げ速度Yを求め、当該最大引き上げ速度Yまたはそれより遅い引き上げ速度で前記種結晶を前記溶融液から引き上げることを特徴とする。
本開示の実施形態に係る単結晶体の製造方法は、EFG法によりサファイア単結晶体を育成するにあたり、前記単結晶体の原料を坩堝に充填し、加熱溶融させる工程と、前記坩堝内に配置されたダイ上に保持された前記原料の溶融液に種結晶を接触させ、溶融液から鉛直方向に引き上げながら前記単結晶体を育成する工程と、を含み、前記単結晶体の厚みXに対して、種結晶を下記関係式(2)で表される最大引き上げ速度Yまたはそれより遅い引き上げ速度で引き上げることを特徴とする。
Y=1.2393e-0.076X ・・・(2)
本開示によれば、単結晶体の厚さに応じて単結晶体の引き上げ速度を適正化することにより、単結晶体の厚み中央部分での泡の発生が抑制され、また単結晶体にリネージ等の結晶欠陥や内部歪により割れの発生、さらに単結晶体が縮み等の発生を抑制することができる。特に、本開示に係る単結晶体の製造方法は、厚みのある単結晶体の育成に適用するのが好ましい。
本開示の単結晶体製造装置の一実施形態を示す概略断面図である。 本開示の実施形態における複数の単結晶体を同時に製造する方法を示す概略斜視図である。 (a)および(b)は本開示における単結晶体の引き上げ方法を示す概略図である。 単結晶体の引き上げ状態を示す概略図である。 単結晶体の厚みと引き上げ速度との関係を示すグラフである。 EFG法を説明するための概略図である。
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る単結晶体の製造方法を説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る単結晶体製造装置を示しており、複数の単結晶体5を同時に育成するものである。図1に示すように、単結晶体5の原料が供給される坩堝1は育成室10内の下部に設置され、架台11によって保持されている。育成室10は、断面が円環状の容器であり、例えばモリブデン(Mo),タングステン(W)、タングステンモリブテン(W−Mo)合金、カーボン、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)等の耐火物材料からなる。また、坩堝1は、モリブデン(Mo),タングステン(W)、タングステンモリブテン合金(W−Mo)、イリジウム(Ir)等からなる。
育成室10は密閉構造となっており、図示しないガス供給口およびガス排出口が備わっている。酸化を防止するために、ガス供給口からアルゴン等の不活性ガスが育成室10内に供給され、不活性ガス雰囲気下で単結晶体5の育成が行われる。
育成室10の外周には、加熱手段として、坩堝1を囲むように加熱用の高周波コイル3がらせん状に巻回される。高周波コイル3は、高周波電圧が印加されて高周波電流が流れる誘導コイルである。すなわち、高周波コイル3に高周波電流が流れると、坩堝1を中心に磁界が形成され、この磁界により坩堝1の表面に渦電流が発生して坩堝1が発熱する。これにより、坩堝1内に充填されている単結晶体の原料は、高周波コイル3によって加熱溶融される。
坩堝1には、ダイ2が設置されている。ダイ2には、図2に示すように、複数のスリット12が一方向に並設されている。坩堝1内に充填されている単結晶体5の原料を加熱溶融した溶融液は、毛細管現象によってスリット12の上面まで上昇する。原料としては、例えばサファイア単結晶体を製造する場合には、アルミナが使用される。
ダイ2の上方には、種結晶(シード)6を下端に保持したシードホルダー7が設置されている。シードホルダー7は軸体からなり、図示しない制御手段により鉛直方向に昇降可能である。種結晶6の形状に特に制限はないが、例えば、板状、棒状等の形状を有する。
ダイ2のスリット12は、図2に示すように、ダイ2を構成する相対向する一対の板材13,13によって形成されている。2つの板材13,13の上端面は、スリット12から上向きに広がるように斜面状に形成されている。毛細管現象によってスリット12を通って上面まで上昇した溶融液の液面に、種結晶6の先端6aが接触し、この状態でシードホルダー7を上昇させる。
図3(a)は、種結晶6の先端6aが溶融液4の液面に接触した状態を示している。この状態から、図3(b)に示すように、種結晶6を所定の一定速度で上昇させながら溶融液4を引き上げる。同図(b)において、符号17は固液界面を示している。
図4は溶融液4が引き上げられる様子を示している。溶融液4は引き上げられる過程で冷却され、リボン(板)状の単結晶体5が育成される。本実施形態では、複数の種結晶6を用いて同時に複数の単結晶体5が育成される。
次に、本開示における単結晶体5の製造方法を説明する。まず、最初の工程では単結晶体の原料を坩堝1に充填する。サファイアの場合は、原料として高純度アルミナを使用する。そして、育成室10内をアルゴンガスで置換する。なお、アルゴンガスに代えて他の不活性ガスを使用してもよい。
ついで、高周波コイル3に高周波を印加して、坩堝1内の原料を加熱溶融させる。すなわち、アルミナの融点(約2050℃)以上の温度で原料を加熱する。得られた溶融液4は、坩堝1内のダイ2に形成された複数のスリット12を毛細管現象によって上昇し、ダイ2の上面に到達し溶融液として保持される。
所望の面方位(例えばc面)を有する板状単結晶体5が形成されるように、複数の種結晶6の面がダイ2の各スリット12の長手方向と平行になるように位置調整した後、シードホルダー7を下降させて、ダイ2上に保持された原料の溶融液4の液面に種結晶6を接触させる。
位置調整は、シードホルダー7を回転させるか、坩堝1を回転させて行う。回転は、手動でもよく、または制御手段によりモータを駆動させて行ってもよい。また、接触は、種結晶6の先端を、ダイ2の上面に保持された溶融液4の少なくとも液面に接触させればよい。
ついで、シードホルダー7を所定の速度で上昇させて、単結晶体5を引き上げる。このとき、溶融液4は、種結晶6が接触した位置からダイ2の上面におけるスリット12の長手方向の全長にわたって広がり(図4参照)、単結晶体5の引き上げとともに徐々に冷却され固化することで、リボン状の単結晶体5が育成される。
本開示において、単結晶体5の引き上げ速度Yは、次のようにして決定される。すなわち、単結晶体5の厚みがそれぞれX1、X2、・・・、Xn(nは2以上の整数)であるとき、それぞれの厚みでの最大引き上げ速度Y1、Y2、・・・、Ynを求め、最小二乗法により、下記関係式(1)を決定する。
Y=A・exp(BX) ・・・(1)
(但し、A、Bは定数である。)
この関係式(1)から、単結晶体5の厚みがXであるときの最大引き上げ速度Yを求める。ついで、当該最大引き上げ速度Yか、それより小さい引き上げ速度で種結晶6を溶融液4から引き上げる。
ここで、最大引き上げ速度Y1、Y2、・・・、Ynとは、それぞれの厚みX1、X2、・・・、Xnにおいて、育成された単結晶体5に、厚み中央部分での泡の発生、リネージ等の結晶欠陥や内部歪により割れの発生、および縮み等の発生を抑制することができる限界の引き上げ速度をいい、厚みX1、X2、・・・、Xnの単結晶体5が上記最大引き上げ速度Y1、Y2、・・・、Ynを超える引き上げ速度で育成されると、前記した厚み中央部分での泡の発生、結晶欠陥や割れの発生、縮み等のうち少なくとも1つの欠点が発生しやすくなる。
従って、あらかじめ関係式(1)を決定しておけば、同条件にて所望厚みで適切な品質の単結晶体5を得るには、所望厚みXを関係式(1)に代入して、最大引き上げ速度Yを求めればよく、従来のように試行錯誤で実験を繰り返し、種結晶6の引き上げ速度を決定する必要がなくなり、生産性が向上する。
具体的にサファイア単結晶体を例に挙げて説明すると、種結晶6の引き上げ速度Yは、単結晶体5の厚みXに対して、下記関係式(2)で表される範囲であるのが好ましい。引き上げ速度Yの単位がmm/分であるとき、厚みXはmmで表される。
Y=1.2393e-0.076X ・・・(2)
単結晶体5の厚みXは0.3mm以上であるのがよく、特に単結晶体5に結晶欠陥や内部歪が発生しやすく、単結晶体が縮みやすい厚さ5.0mm以上の単結晶体5に好適に採用することができる。また、単結晶体5の厚みXは40mm以下であるのがよい。
このように、種結晶6の引き上げ速度Yを適正化することにより、たとえ厚みの大きい単結晶体5であっても、ダイ2内に温度差ができにくくなり、そのため単結晶体5に結晶欠陥や内部歪が発生して、単結晶体5が割れるのを削減することができ、また単結晶体が縮むのを抑制することもできる。
種結晶6の引き上げ速度Yは、上記式(1)または(2)で表される引き上げ速度以下であれば、上記効果が得られるが、過度に引き上げ速度を下げると生産性が悪くなるので、0.05mm/分以上であるのがよい。
本開示の単結晶体の製造方法は、サファイア単結晶体に限定されるものではなく、例えば、シリコン(Si)、酸化ガリウム(Ga23)、ルチル(TiO2)などの単結晶体の製造にも同様にして適用される。
以下、実施例を挙げて本開示を詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
図1に示す装置を用いて、リボン状のサファイア単結晶体6を育成した。すなわち、育成室10内の坩堝1には原料アルミナを供給し、加熱溶融させた。育成室10内にはあらかじめアルゴンガスを充填した。坩堝1内のダイ2には、対向する一対の板材13,13によって形成されたスリット12が複数並設されており、かつ図3(a)に示すように、ダイ2の上面は、スリット12の両側に斜面が形成されており、この斜面全体にアルミナの溶融液4が保持される。
ついで、図3(a)に示すように、ダイ2の上面に保持された溶融液4に種結晶6の先端を接触させ、この状態でシードホルダー7を一定速度で上昇させて、種結晶6を溶融液4から引き上げながら単結晶体6を育成した(図3(b))。
ここで、種々の単結晶体6の厚みXに対して、単結晶体6の欠陥や内部歪による割れの発生や単結晶体6の縮みがない最大引き上げ速度Yを調べた。単結晶体6の厚みXは、板材13,13の厚みを変えることにより調整し、厚さ1.7mm、2.3mm、2.5mm、6.0mm、10.5mm、24.0mmおよび29.0mmの各単結晶体6について試験した。すなわち、単結晶体6の厚みXは、板材13,13の一方の斜面の先端から他方の斜面の先端までの距離(図6に示した符号L)と略等しくなる。
また、最大引き上げ速度Yは、シードホルダー7の上昇速度で調整した。引き上げ速度の測定は、図4に示す拡がり部Aでなく直胴部Bにて測定した。
試験結果を図5に示す。図5は、単結晶体6の各厚みに対して、単結晶体6に割れや縮みがない最適な最大引き上げ速度を示している。図5のグラフから、単結晶体の厚みXに対して、種結晶を下記式(1)で表される最大引き上げ速度Yで引き上げるのがよいことが判明した。
Y=1.2393e-0.076X ・・・(2)
1、100 坩堝
2、102 ダイ
3、103 高周波コイル
4、104 溶融液
5、105 単結晶体
6 種結晶
6a 先端
7 シードホルダー
10 育成室
11 架台
12、101 スリット
13 板材
17、106 固液界面

Claims (5)

  1. エッジ‐デファインド・フィルムフェッド・グロース法により単結晶体を育成する単結晶体の製造方法であって、
    前記単結晶体の原料を坩堝に充填し、加熱溶融させる工程と、
    前記坩堝内に配置されたダイ上に保持された前記原料の溶融液に種結晶を接触させ、前記溶融液から鉛直方向に引き上げながら前記単結晶体を育成する工程と、を含み、
    前記単結晶体の厚みがそれぞれX1、X2、・・・、Xn(nは2以上の整数)であるとき、それぞれの厚みでの最大引き上げ速度Y1、Y2、・・・、Ynを求め、最小二乗法により、下記関係式(1)を決定し、
    Y=A・exp(BX) ・・・(1)
    (但し、A、Bは定数である。)
    前記関係式(1)から、前記単結晶体の厚みがXであるときの最大引き上げ速度Yを求め、当該最大引き上げ速度Y以下の引き上げ速度で前記種結晶を前記溶融液から引き上げることを特徴とする単結晶体の製造方法。
  2. エッジ‐デファインド・フィルムフェッド・グロース法によりサファイア単結晶体を育成する単結晶体の製造方法であって、
    前記単結晶体の原料を坩堝に充填し、加熱溶融させる工程と、
    前記坩堝内に配置されたダイ上に保持された前記原料の溶融液に種結晶を接触させ、前記溶融液から鉛直方向に引き上げながら前記単結晶体を育成する工程と、を含み、
    前記単結晶体の厚みXに対して、前記種結晶を下記式(2)で表される最大引き上げ速度Y以下の引き上げ速度で引き上げることを特徴とする単結晶体の製造方法。
    Y=1.2393e-0.076X ・・・(2)
  3. 前記単結晶体がリボン形状である請求項1または2に記載の単結晶体の製造方法。
  4. 前記単結晶体の厚みXが0.3mm以上、40mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の単結晶体の製造方法。
  5. 前記ダイ上に保持された前記原料の溶融液が一方向に複数配列され、かつ複数の前記溶融液と同方向に複数の前記種結晶が配置されており、
    複数の前記種結晶を同時にかつ同速度で前記溶融液から鉛直方向に引き上げて、複数の前記単結晶体を同時に育成する請求項1〜4のいずれかに記載の単結晶体の製造方法。
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