図1は、本発明の実施の形態に係るワイパ装置100の構成を示す概略図である。ワイパ装置100は、例えば、乗用自動車等の車両に備えられたウィンドシールドガラス12を払拭するためのものであり、一対のワイパ14、16と、ワイパモータ18と、リンク機構20とを備えている。
ワイパ14、16は、それぞれワイパアーム24、26とワイパブレード28、30とにより構成されている。ワイパアーム24、26の基端部は、後述するピボット軸42、44に各々固定されており、ワイパブレード28、30は、ワイパアーム24、26の先端部に各々固定されている。
ワイパ14、16は、ワイパアーム24、26の動作に伴ってワイパブレード28、30がウィンドシールドガラス12上を往復動作し、ワイパブレード28、30がウィンドシールドガラス12を払拭する。
ワイパモータ18は、主にウォームギアで構成された減速機構52を介して、正逆回転可能な出力軸32を有している。リンク機構20は、クランクアーム34と、第1リンクロッド36と、一対のピボットレバー38、40と、一対のピボット軸42、44と、第2リンクロッド46とを備えている。
クランクアーム34の一端側は、出力軸32に固定されており、クランクアーム34の他端側は、第1リンクロッド36の一端側に動作可能に連結されている。また、第1リンクロッド36の他端側は、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端寄りの箇所に動作可能に連結されており、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端及びピボットレバー40におけるピボットレバー38の当該端に対応する端には、第2リンクロッド46の両端がそれぞれ動作可能に連結されている。
また、ピボット軸42、44は、車体に設けられた図示しないピボットホルダによって動作可能に支持されており、ピボットレバー38、40におけるピボット軸42、44を有する端は、ピボット軸42、44を介してワイパアーム24、26が各々固定されている。
本実施の形態に係るワイパ装置100は、出力軸32が所定の範囲の回転角θ1で正逆回転されると、この出力軸32の回転力がリンク機構20を介してワイパアーム24、26に伝達され、このワイパアーム24、26の往復動作に伴ってワイパブレード28、30がウィンドシールドガラス12上における下反転位置P2と上反転位置P1との間で往復動作をする。θ1の値は、ワイパ装置100のリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として110°である。
本実施の形態に係るワイパ装置100では、図1に示されるように、ワイパブレード28、30が格納位置P3に位置された場合には、クランクアーム34と第1リンクロッド36とが直線状をなす構成とされている。
格納位置P3は、下反転位置P2の下方に設けられている。ワイパブレード28、30が下反転位置P2にある状態から、出力軸32がθ2回転することにより、ワイパブレード28、30は格納位置P3に動作する。θ2の値は、ワイパ装置100のリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として10°とする。
なお、回転角θ2が「0」の場合は、下反転位置P2と格納位置P3は一致し、ワイパブレード28、30は、下反転位置P2で停止し、格納される。
ワイパモータ18には、ワイパモータ18の回転を制御するためのワイパモータ制御回路22が接続されている。本実施の形態に係るワイパモータ制御回路22は、マイクロコンピュータ58を含む。また、ワイパモータ制御回路22は、駆動回路56等と共に、ワイパ制御装置10を構成する。
ワイパモータ制御回路22のマイクロコンピュータ58は、ワイパモータ18の出力軸32の回転速度及び回転角を検知する回転角度センサ54の検知結果に基づいてワイパモータ18の回転速度を制御する。回転角度センサ54は、ワイパモータ18の減速機構52内に設けられ、出力軸32に連動して回転するセンサマグネットの磁界(磁力)を電流に変換して検出する。
本実施の形態に係るワイパモータ18は、前述のように減速機構52を有しているので、出力軸32の回転速度及び回転角は、ワイパモータ本体の回転速度及び回転角と同一ではない。しかしながら、本実施の形態では、ワイパモータ本体と減速機構52は一体不可分に構成されているので、以下、出力軸32の回転速度及び回転角を、ワイパモータ18の回転速度及び回転角とみなすものとする。
マイクロコンピュータ58は、回転角度センサ54が検出した出力軸32の回転角からワイパブレード28、30のウィンドシールドガラス12上での位置を算出可能で、当該位置に応じて出力軸32の回転速度が変化するように駆動回路56を制御する。駆動回路56は、ワイパモータ制御回路22の制御に基づいてワイパモータ18に印加する電圧を生成する回路であり、電源である車両のバッテリの電力をスイッチングしてワイパモータ18に印加する電圧を生成する。
また、ワイパモータ制御回路22のマイクロコンピュータ58には、車両のエンジンの制御等を行う車両ECU(Electronic Control Unit)92と信号入力回路62とを介してワイパスイッチ50が接続されている。ワイパスイッチ50は、車両のバッテリからワイパモータ18に供給される電力をオン又はオフするスイッチである。ワイパスイッチ50は、ワイパブレード28、30を、低速で動作させる低速作動モード選択位置(LOW)、高速で動作させる高速作動モード選択位置(HIGH)、一定周期で間欠的に動作させる間欠作動モード選択位置(INT)、停止モード選択位置(OFF)に切替可能である。また、各モードの選択位置に応じてワイパモータ18を回転させるための指令信号を車両ECU92と信号入力回路62とを介してマイクロコンピュータ58に出力する。例えば、ワイパスイッチ50が、高速作動モード選択位置ではワイパモータ18を高速で回転させ、低速作動モード選択位置ではワイパモータ18を低速で回転させ、間欠作動モード選択位置ではワイパモータ18を間欠的に回転させる。
ワイパスイッチ50から各モードの選択位置に応じて出力された信号が車両ECU92と信号入力回路62とを介してマイクロコンピュータ58に入力されると、マイクロコンピュータ58はワイパスイッチ50からの指令信号に対応する制御を行う。具体的には、マイクロコンピュータ58は、ワイパスイッチ50からの指令信号に基づいて、所望する往復払拭周期でワイパブレード28、30が作動するように、出力軸32の回転信号を読み取ってワイパモータ18に印加する電圧を制御する。なお、車両ECU92と信号入力回路62との通信は、一例としてプロトコルにLIN(Local Interconnect Network)を用いる。
図2は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10の構成の一例の概略を示すブロック図である。図2に示したワイパ制御装置10は、ワイパモータ18の巻線の端子に印加する電圧を生成する駆動回路56と、駆動回路56を構成するスイッチング素子のオン及びオフを制御するマイクロコンピュータ58を有するワイパモータ制御回路22とを含んでいる。マイクロコンピュータ58には、ダイオード68を介してバッテリ80の電力が供給されると共に、バッテリ80から供給される電力の電圧は、ダイオード68とマイクロコンピュータ58との間に設けられた電圧検出回路60によって検知され、検知結果はマイクロコンピュータ58に出力される。また、ダイオード68とマイクロコンピュータ58との間に一端が接続され、他端(−)が接地された電解コンデンサC1が設けられている。電解コンデンサC1は、マイクロコンピュータ58の電源を安定化するためのコンデンサである。電解コンデンサC1は、例えば、サージ等の突発的な高電圧を蓄え、接地領域に放電することにより、マイクロコンピュータ58を保護する。
マイクロコンピュータ58には、ワイパスイッチ50から車両ECU92及び信号入力回路62を介してワイパモータ18の回転速度を指示するための信号が入力される。
また、マイクロコンピュータ58には、出力軸32の回転に応じて変化するセンサマグネット70の磁界を検知する回転角度センサ54が接続されている。マイクロコンピュータ58は、回転角度センサ54が出力した信号に基づいて、出力軸32の回転角度を算出することにより、ワイパブレード28、30のウィンドシールドガラス12上での位置を特定する。
さらに、マイクロコンピュータ58は、メモリ48に記憶されているワイパブレード28、30の位置に応じて規定されたワイパモータ18の回転速度のデータを参照して、ワイパモータ18の回転が、特定したワイパブレード28、30の位置に応じた回転数になるように駆動回路56を制御する。かかるデータは、メモリ48に格納される。
駆動回路56は、マイクロコンピュータ58が出力した駆動回路56の制御信号から、電圧生成回路56Bの複数のスイッチング素子をオンオフさせる駆動信号を生成するプリドライバ56Aと、プリドライバ56Aが出力した駆動信号に従ってスイッチング素子を動作させて、バッテリ80の電圧(電源電圧)からワイパモータ18のコイルに印加する電圧を生成する電圧生成回路56Bと、含む。
本実施の形態では、電源であるバッテリ80と駆動回路56との間には逆接続保護回路64及びノイズ防止コイル66が設けられると共に、駆動回路56に対して並列になるように電解コンデンサC2が設けられている。ノイズ防止コイル66は、駆動回路56のスイッチングによって発生するノイズを抑制するための素子である。
電解コンデンサC2は、駆動回路56から生じるノイズを緩和すると共に、サージ等の突発的な高電圧を蓄え、接地領域に放電することにより、駆動回路56に過大な電流が入力されるのを防止するための素子である。
逆接続保護回路64は、バッテリ80の正極と負極が図2に示した場合とは逆に接続された場合に、ワイパ制御装置10を構成する素子を保護するための回路である。逆接続保護回路64は、一例として、自身のドレインとゲートを接続した、いわゆるダイオード接続されたFET等で構成される。
本実施の形態に係るワイパ制御装置10の駆動回路56の基板上には、駆動回路56を構成するスイッチング素子のケース温度を抵抗値として検知するチップサーミスタRTが実装されている。本実施の形態に用いられるチップサーミスタRTは、一例として、温度の上昇に対して抵抗が減少するNTC (Negative Temperature Coefficient)サーミスタである。なお、反転回路を併用することで、温度が上昇するにつれて抵抗値が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタを使用してもよい。
チップサーミスタRTは一種の分圧回路を構成しており、チップサーミスタRTによって構成される分圧回路の出力端からは、チップサーミスタRTの抵抗値に基づいて変化する電圧が出力される。マイクロコンピュータ58は、チップサーミスタRTによって構成される分圧回路の出力端から出力された電圧に基づいてワイパ制御装置10の基板の温度を算出し、後述するように、当該温度に基づいてワイパモータ18のコイルと電圧生成回路56Bとの電流(モータ電流)の制限電流値を算出する。そして、電流検出部82で検出したモータ電流が、制限電流値を超えた場合、ワイパモータ18に供給する電圧のデューティ比を下げる、又はワイパモータ18への電力供給を停止する処理を行う。
また、電圧生成回路56Bを構成するスイッチング素子の各々のソースとバッテリ80との間にはモータ電流を検知するための電流検出部82が設けられている。電流検出部82は、抵抗値が0.2mΩ〜数Ω程度のシャント抵抗82Aと、電圧生成回路56Bの電流に応じて変化するシャント抵抗82Aの両端の電位差を検知すると共に検知した電位差の信号を増幅するアンプ82Bとを含む。マイクロコンピュータ58は、アンプ82Bが出力した信号からモータ電流の電流値を算出し、当該電流値が後述する制限電流値を超えた場合に、電圧生成回路56Bによる電圧生成を停止してワイパモータ18の回転を停止させる等の処理を行う。
図3は、ワイパモータ18がブラシ付きモータの場合の駆動回路56の一例を示したブロック図である。駆動回路56は、マイクロコンピュータ58から入力された制御信号に基づいて、電圧生成回路56BHのスイッチング素子を動作させる駆動信号を生成して電圧生成回路56BHに出力するプリドライバ56APと、駆動信号に基づいたスイッチング素子の動作によりワイパモータ18に供給する電力を生成する電圧生成回路56BHと、を備えている。
電圧生成回路56BHは、図3に示すように、スイッチング素子にN型のFETであるトランジスタT1、T2、T3、T4を用いたHブリッジ回路である。トランジスタT1及びトランジスタT2は、ドレインがバッテリの正極に各々接続されており、ソースがトランジスタT3及びトランジスタT4のドレインに各々接続されている。また、トランジスタT3及びトランジスタT4のソースは接地されている。
また、トランジスタT1のソース及びトランジスタT3のドレインは、ワイパモータ18の巻線の一端に接続されており、トランジスタT2のソース及びトランジスタT4のドレインは、ワイパモータ18の巻線の他端に接続されている。
トランジスタT1及びトランジスタT4の各々のゲートにHレベルな駆動信号が入力されることにより、トランジスタT1及びトランジスタT4がオンになり、ワイパモータ18には例えばワイパブレード28、30を車室側から見て時計回りに動作させる電流が流れる。さらに、トランジスタT1及びトランジスタT4の一方をオン制御しているとき、他方をPWMにより、小刻みにオンオフ制御することにより、当該電流の電圧を変調できる。
また、トランジスタT2及びトランジスタT3の各々のゲートにHレベルな駆動信号が入力されることにより、トランジスタT2及びトランジスタT3がオンになり、ワイパモータ18には例えばワイパブレード28、30を車室側から見て反時計回りに動作させる電流が流れる。さらに、トランジスタT2及びトランジスタT3の一方をオン制御しているとき、他方をPWMにより、小刻みにオンオフ制御することにより、当該電流の電圧を変調できる。
図4は、ワイパモータ18がブラシレスモータの場合の電圧生成回路56Bの一例を示したブロック図である。電圧生成回路56BIは、三相(U相、V相、W相)インバータにより構成されている。
ワイパモータ18がブラシレスモータの場合、ワイパモータ18の回転制御は、回転するロータ118の永久磁石の磁極の位置に応じた位相の三相交流に近似した電圧を生成して、ステータ114のコイル116U、116V、116Wに印加することを要する。当該電圧が印加されたコイル116U、116V、116Wには、ロータ118を回転させる回転磁界が生じ、ロータ118は、回転磁界に応じて回転する。
ロータ118の磁極の位置は、ロータ118又はロータ118に対応した磁極を備えるセンサマグネットの磁界の変化を、ホール素子を用いたホールセンサ等(図示せず)で検出し、検出した磁界の変化からマイクロコンピュータ58が算出する。
マイクロコンピュータ58には、車両ECU92を介して、ワイパスイッチ50からワイパモータ18(ロータ118)の回転速度を指示するための信号が入力される。マイクロコンピュータ58は、ロータ118の磁極の位置に基づいて、ワイパモータ18のコイルに印加する電圧の位相を算出すると共に、算出した位相及びワイパスイッチ50により指示されたロータ118の回転速度に基づいて電圧生成回路56Bを制御する制御信号を生成してプリドライバ56AQに出力する。
プリドライバ56AQは、入力された制御信号に基づいて、電圧生成回路56BIのスイッチング素子を動作させる駆動信号を生成し、電圧生成回路56BIに出力する。
図4に示すように、電圧生成回路56BIは、各々が上段スイッチング素子としての3つのN型の電界効果トランジスタ(FET)111U、111V、111W(以下、「FET111U、111V、111W」と言う)、各々が下段スイッチング素子としての3つのN型の電界効果トランジスタ112U、112V、112W(以下、「FET112U、112V、112W」と言う)とを備えている。なお、FET111U、111V、111W及びFET112U、112V、112Wは、各々、個々を区別する必要がない場合は「FET111」、「FET112」と総称し、個々を区別する必要がある場合は、「U」、「V」、「W」の符号を付して称する。
FET111、FET112のうち、FET111Uのソース及びFET112Uのドレインは、コイル116Uの端子に接続されており、FET111Vのソース及びFET112Vのドレインは、コイル116Vの端子に接続されており、FET111Wのソース及びFET112Wのドレインは、コイル116Wの端子に接続されている。
FET111及びFET112のゲートはプリドライバ56AQに接続されており、駆動信号が入力される。FET111及びFET112は、ゲートにHレベルの駆動信号が入力されるとオン状態になり、ドレインからソースに電流が流れる。また、ゲートにLレベルの駆動信号が入力されるとオフ状態になり、ドレインからソースへ電流が流れない状態になる。
電圧生成回路56BIのFET111、112の各々を、駆動信号に応じてオンオフさせるPWMにより、ロータ118の磁極の位置に応じて変化し、かつ、ワイパスイッチ50により指示された回転速度でロータ118を回転させる電圧を生成する。
図5は、本実施の形態に係るワイパ装置100の雪溜まりが発生しやすい雪溜まり領域122A、122Bを示した説明図である。図5に示したように、雪溜まり領域122Aは、上反転位置P1近くの所定位置PXから上反転位置P1までの領域であり、雪溜まり領域122Bは下反転位置P2近くの所定位置PYから下反転位置P2までの領域である。しかしながら、雪溜まり領域122A、122B以外の通常領域120には、雪溜まりはあまり発生しない。雪溜まりは、通常領域120に積もった雪がワイパブレード28、30で上反転位置P1又は下反転位置P2に掃き寄せられた結果生じるからである。
従って、ワイパブレード28、30の払拭動作が阻害され、ワイパモータ18が過負荷になるのは、ワイパブレード28、30が、上反転位置P1近くで、かつ下反転位置P2寄りの所定位置PXから上反転位置P1までの雪溜まり領域122A、又は下反転位置P2近くで、かつ上反転位置P1寄りの所定位置PYから下反転位置P2までの雪溜まり領域122Bに存在している場合に多発する。
本実施の形態では、チップサーミスタRTで検出した温度に基づいて、モータ電流の制限電流値を算出する。そして、電流検出部82で検出したモータ電流が、制限電流値を超えた際に、ワイパブレード28、30が雪溜まり領域122A、122Bに存在する場合はワイパモータ18に供給する電圧のデューティ比を下げ、ワイパモータ18の負荷を低減する。このようにワイパモータ18の負荷を軽減することにより、領域122A、122Bにワイパブレード28、30が位置している場合、最低限のトルクで雪溜まり等の障害物を除去可能な払拭機能を維持しつつワイパモータ18の過熱を防止できる。しかしながら、ワイパブレード28、30が通常領域に存在する場合は、ワイパ装置100に何らかの異常が生じている蓋然性が高いので、ワイパモータ18への電力供給を停止する処理を行う。
駆動回路56を構成するスイッチング素子がMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)の場合、MOSFETのジャンクション温度TJと、MOSFETのケース(パッケージ)表面の温度であるケース温度TCと、MOSFETを流れる電流(モータ電流)Iと、MOSFETのオン抵抗RDSと、MOSFETのジャンクション−ケース間の熱抵抗RTHJCとには、下記の式(1)が成立する。
式(1)に含まれるMOSFETのオン抵抗RDSは、より具体的には、オン状態になったMOSFETのドレインとソースとの間の電気抵抗である。MOSFETのオン抵抗RDSは、定数ではなく、温度によって変化する変数である。図6は、MOSFETのオン抵抗RDSの温度特性の一例を示したグラフである。図6に示したように、MOSFETのオン抵抗RDSは、温度に応じて単調増加する。
また、チップサーミスタRTをMOSFETの近傍に設けたのであれば、チップサーミスタRTが検出した温度(検出温度)を、MOSFETのケース温度TCとみなしてよい。かかる場合、チップサーミスタRTは、最も近傍のMOSFETのケース温度TCを検出する。また、複数のMOSFETを含む駆動回路56が、1のパッケージとなっている場合は、チップサーミスタRTを当該パッケージの近傍に設け、チップサーミスタRTの検出温度をMOSFETのケース温度TCとみなしてよい。
本実施の形態では、上記の式(1)と、図6に示したMOSFETのオン抵抗RDSの温度特性と、により、ワイパモータ18に供給する電力の制限電流値を検出温度に応じて算出する。
具体的には、式(1)において、MOSFETのジャンクション温度TJが最大許容温度(一例として175℃)の場合のモータ電流Iを、MOSFETのケース温度TC(検出温度)に応じて算出する。
図7は、式(1)に基づいて算出した、検出温度に対する制限電流値130の一例を示したグラフである。図7に示したように、制限電流値130は温度依存性があり、高温の場合には低下傾向を示す。制限電流値130は、後述するように、マイクロコンピュータ58の制御周期毎に、チップサーミスタRTの検出温度に基づいて算出するが、検出温度に対する制限電流値130を予めメモリ48に記憶してもよい。
本実施の形態では、図7に示した、制限電流値130以下の使用可能領域の電流をワイパモータ18に通電することで、MOSFETのジャンクション温度TJが最大許容温度未満になるように、ワイパモータ18の回転を制御する。
図8は、本実施の形態に係るワイパ装置100の制御のメイン処理の一例を示したフローチャートである。図8の処理は、ワイパスイッチ50がオンになると開始され、ステップ800では、ワイパ装置100のワイパモータ制御回路22(マイクロコンピュータ58)の初期化が行われる。ステップ802では、ワイパスイッチ50がオフになったか否かを判定し、ワイパスイッチがオフになった場合は処理を終了し、ワイパスイッチがオンの場合は、ステップ804で、マイクロコンピュータ58への割込処理の許可を行う。
ステップ806では、回転角度センサ54が検出した出力軸32の回転角度に基づいて、ワイパブレード28、30のウィンドシールドガラス12上の位置を算出する。
ステップ808では、チップサーミスタRTにより、MOSFETのケース温度TCに相当する検出温度を取得し、ステップ810では、電流検出部82により、モータ電流Iを取得する。
ステップ812では、上記の式(1)を用いて、検出温度によるモータ電流Iの制限電流値130を算出し、ステップ814では、ステップ812で算出した制限電流値130を考慮したワイパモータ18の回転制御が実行される。
ステップ816では、制御周期待ちの処理が実行された後、手順は、ステップ802に戻る。
図9は、図8のステップ814の処理を示したフローチャートである。ステップ900では、車両ECU92と、信号入力回路62とを介して入力された指令信号に基づいて、ワイパモータ18の回転速度の目標値であるモータ制御目標を算出する。
ステップ902では、電流検出部82で検出したモータ電流Iが、制限可能範囲内か否か、すなわち、制限電流値130以下であるか否かを判定する。ステップ902で、モータ電流Iが制限電流値130以下の場合は、ステップ904でワイパモータ18の回転をモータ制御目標に従って制御して処理をリターンする。
ステップ902で、モータ電流Iが制限電流値130を超えている場合は、ステップ906で、ワイパブレード28、30の位置が雪溜まり領域122A、122Bか否かを判定する。
ステップ906で、ワイパブレード28、30の位置が雪溜まり領域122A、122Bである場合は、ステップ908でモータ制御目標を再算出して、手順をステップ904に移行する。ステップ908でのモータ制御目標の再算出では、電流検出部82で検出するモータ電流Iが、制限電流値130以下となるように、ワイパモータ18に供給する電圧のデューティ比を低下させる。
ステップ906でワイパブレード28、30の位置が通常領域120の場合は、雪溜まり等の障害物による過負荷ではなく、ワイパ装置100の何らかの障害が発生した蓋然性が高いので、ステップ910で駆動回路56からワイパモータ18への電力供給を停止して、処理をリターンする。
以上説明したように、本実施の形態に係るワイパ装置によれば、チップサーミスタRTの検出温度からモータ電流の制限電流値130を算出し、電流検出部82で検出したモータ電流が制限電流値を超えないように、ワイパモータ18に供給する電圧のデューティ比を制御することにより、ワイパモータ18及び駆動回路56の各々の定格を拡大することなく、過負荷に対応可能なワイパ装置100を提供することができる。
また、本実施の形態に係るワイパ装置100によれば、ワイパモータ18及び駆動回路56の各々の定格が小さくてもワイパモータ18及び駆動回路56の各々が過負荷状態になることを回避できるので、製品の小型化及び低コスト化が可能になる。さらには、定格を小さくすることにより、製品の消費電力を抑制することが可能になる。