以下、実施形態による電動ブレーキ装置を、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面を参照して説明する。なお、図4ないし図8に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。また、図1および図2中で二本の斜線が付された線は電気系の線を表している。
図1ないし図10は、実施形態を示している。図1において、車両1に搭載されたブレーキ装置2は、左側の前輪3Lおよび右側の前輪3Rに対応して設けられた左右の液圧ブレーキ装置4,4(フロント制動機構)と、左側の後輪5Lおよび右側の後輪5Rに対応して設けられた左右の電動ブレーキ装置21,21(リア制動機構)と、ブレーキペダル6(操作具)の操作(踏込み)に応じて液圧を発生するマスタシリンダ7と、運転者(ドライバ)のブレーキペダル6の操作量を計測する液圧センサ8およびペダルストロークセンサ9と含んで構成されている。
液圧ブレーキ装置4は、例えば、液圧式ディスクブレーキにより構成されており、液圧(ブレーキ液圧)の供給によって車輪(前輪3L,3R)に制動力を付与する。電動ブレーキ装置21は、例えば、電動式ディスクブレーキにより構成されており、電動モータ22B(図2参照)の駆動によって車輪(後輪5L,5R)に制動力を付与する。液圧センサ8およびペダルストロークセンサ9は、メインECU10に接続されている。
マスタシリンダ7と液圧ブレーキ装置4,4との間には、液圧供給装置11(以下、ESC11という)が設けられている。ESC11は、例えば、複数の制御弁と、ブレーキ液圧を加圧する液圧ポンプと、該液圧ポンプを駆動する電動モータと、余剰のブレーキ液を一時的に貯留する液圧制御用リザーバ(いずれも図示せず)とを含んで構成されている。ESC11の各制御弁および電動モータは、フロント液圧装置用ECU12に接続されている。フロント液圧装置用ECU12は、マイクロコンピュータを含んで構成されている。フロント液圧装置用ECU12は、メインECU10からの指令に基づいて、ESC11の各制御弁の開閉および電動モータの駆動を制御する。
メインECU10は、マイクロコンピュータを含んで構成されている。メインECU10は、液圧センサ8およびペダルストロークセンサ9からの信号の入力を受けて、予め定められた制御プログラムにより各輪(4輪)に対しての目標制動力の演算を行う。メインECU10は、算出した制動力に基づいて、フロント2輪それぞれに対しての制動指令をフロント液圧装置用ECU12(即ち、ESCECU)へ車両データバスとしてのCAN13(Controller area network)を介して送信する。メインECU10は、算出した制動力に基づいて、リア2輪それぞれに対しての制動指令をリア電動ブレーキ用ECU24,24へCAN13を介して送信する。
前輪3L,3Rおよび後輪5L,5Rのそれぞれの近傍には、これらの車輪3L,3R,5L,5Rの速度(車輪速度)を検出する車輪速度センサ14,14が設けられている。車輪速度センサ14,14は、メインECU10に接続されている。メインECU10は、各車輪速度センサ14,14からの信号に基づいて各車輪3L,3R,5L,5Rの車輪速度を取得することができる。
また、運転席の近傍には、パーキングブレーキスイッチ15が設けられている。パーキングブレーキスイッチ15は、メインECU10に接続されている。パーキングブレーキスイッチ15は、運転者の操作指示に応じたパーキングブレーキの作動要求(保持要求となるアプライ要求、解除要求となるリリース要求)に対応する信号(作動要求信号)をメインECU10に伝達する。メインECU10は、パーキングブレーキスイッチ15の操作(作動要求信号)に基づいて、リア2輪それぞれに対してのパーキングブレーキ指令をリア電動ブレーキ用ECU24,24へ送信する。
電動ブレーキ装置21は、ブレーキ機構22と、パーキング機構23と、制御装置(電動ブレーキ制御装置)としてのメインECU10およびリア電動ブレーキ用ECU24とを備えている。この場合、電動ブレーキ装置21は、位置制御および推力制御を実施するために、回転角センサ25と、推力検出手段としての推力センサ26と、電流センサ27(いずれも図2参照)とを備えている。
ブレーキ機構22は、車両1の左右の車輪、即ち、左後輪5L側と右後輪5R側とのそれぞれに設けられている。ブレーキ機構22は、電動ブレーキ機構として構成されている。ブレーキ機構22は、例えば、図2に示すように、シリンダ(ホイルシリンダ)としてのキャリパ22Aと、電動機(電動アクチュエータ)としての電動モータ22Bと、減速機構22Cと、回転直動変換機構22Dと、押圧部材としてのピストン22Eと、被制動部材(パッド)としてのブレーキパッド22Fと、図示しないリターンスプリング(戻しばね)とを備えている。電動モータ22Bは、電力の供給により駆動(回転)し、ピストン22Eを推進する。電動モータ22Bは、メインECU10およびリア電動ブレーキ用ECU24により制御される。減速機構22Cは、電動モータ22Bの回転を減速して回転直動変換機構22Dに伝達する。
回転直動変換機構22Dは、減速機構22Cを介して伝達される電動モータ22Bの回転をピストン22Eの軸方向の変位(直動変位)に変換する。ピストン22Eは、電動モータ22Bの駆動により推進される。ブレーキパッド22Fは、ピストン22Eにより被制動部材(ディスク)としてのディスクロータDに押圧される。ディスクロータDは、車輪(後輪5L,5R)と共に回転する。リターンスプリングは、制動付与時に、回転直動変換機構22Dの回転部材に対して制動解除方向の回転力を付与する。ブレーキ機構22は、電動モータ22Bの駆動によりディスクロータDにブレーキパッド22Fを押圧すべくピストン22Eが推進される。
パーキング機構23は、各ブレーキ機構22,22、即ち、左側(左後輪5L側)のブレーキ機構22と右側(右後輪5R側)のブレーキ機構22とのそれぞれに設けられている。パーキング機構23は、ブレーキ機構22のピストン22Eの推進状態を保持する。パーキング機構23は、例えば、図3に示すように、爪車(ラチェットギヤ23B)に係合爪(レバー部材23C)を係合させることにより回転を阻止(ロック)するラチェット機構(ロック機構)により構成されている。即ち、パーキング機構23は、ソレノイド23Aと、爪車となるラチェットギヤ23Bと、係合爪となるレバー部材23Cと、戻しばねとなる圧縮ばね23Dとを含んで構成されている。ソレノイド23Aは、電力の供給により駆動する(プランジャ23A1が変位する)。ソレノイド23Aは、メインECU10およびリア電動ブレーキ用ECU24により制御される。
ラチェットギヤ23Bは、ブレーキ機構22の電動モータ22Bの回転軸22B1に一体的に固定されている。ラチェットギヤ23Bの外周側には、レバー部材23Cの爪部23C1と係合する爪23B1が周方向に亙って等間隔に複数設けられている。レバー部材23Cは、一端側がラチェットギヤ23Bの爪23B1に係合する爪部23C1となり、他端側がソレノイド23Aのプランジャ23A1に連結される連結部23C2となっている。レバー部材23Cは、ソレノイド23Aによりラチェットギヤ23Bの爪23B1に対して係合または離間するように往復運動する。圧縮ばね23Dは、レバー部材23Cの爪部23C1をラチェットギヤ23Bの爪23B1から離間する方向に弾性力を付与する。
リア電動ブレーキ用ECU24は、各ブレーキ機構22,22、即ち、左側(左後輪5L側)のブレーキ機構22と右側(右後輪5R側)のブレーキ機構22とのそれぞれに対応して設けられている。リア電動ブレーキ用ECU24は、マイクロコンピュータを含んで構成されている。リア電動ブレーキ用ECU24は、メインECU10からの指令に基づいてブレーキ機構22(電動モータ22B)とパーキング機構23(ソレノイド23A)を制御する。即ち、リア電動ブレーキ用ECU24は、メインECU10と共に、電動モータ22Bとパーキング機構23を制御する制御装置(電動ブレーキ制御装置)を構成している。
回転角センサ25は、電動モータ22Bの回転軸22B1の回転角度(モータ回転角)を検出する。推力センサ26は、ピストン22Eからブレーキパッド22Fへの推力(押圧力)に対する反力を検出する。推力センサ26は、各ブレーキ機構22それぞれに設けられており、ピストン22Eに作用する推力(ピストン推力)を検出する推力検出手段を構成している。電流センサ27は、電動モータ22Bに供給される電流(モータ電流)を検出する。回転角センサ25、推力センサ26、および、電流センサ27は、リア電動ブレーキ用ECU24に接続されている。
リア電動ブレーキ用ECU24(および、このリア電動ブレーキ用ECU24とCAN13を介して接続されたメインECU10)は、回転角センサ25からの信号に基づいて電動モータ22Bの回転角度を取得することができる。リア電動ブレーキ用ECU24(およびメインECU10)は、推力センサ26からの信号に基づいてピストン22Eに作用する推力を取得することができる。リア電動ブレーキ用ECU24(およびメインECU10)は、電流センサ27からの信号に基づいて電動モータ22Bに供給されるモータ電流を取得することができる。
次に、電動ブレーキ装置21による走行中の制動付与および制動解除の動作について説明する。なお、以下の説明では、運転者がブレーキペダル6を操作したときの動作を例に挙げて説明するが、自動ブレーキの場合についても、例えば、自動ブレーキの指令が自動ブレーキ用ECU(図示せず)またはメインECU10からリア電動ブレーキ用ECU24に出力される点で相違する以外、ほぼ同様である。
例えば、車両1の走行中に運転者がブレーキペダル6を踏込み操作すると、メインECU10は、ペダルストロークセンサ9から入力される検出信号に基づいて、ブレーキペダル6の踏込み操作に応じた指令(制動付与指令)をリア電動ブレーキ用ECU24に出力する。リア電動ブレーキ用ECU24は、メインECU10からの指令に基づいて、電動モータ22Bを正方向、即ち、制動付与方向(アプライ方向)に駆動(回転)する。電動モータ22Bの回転は、減速機構22Cを介して回転直動変換機構22Dに伝達され、ピストン22Eがブレーキパッド22Fに向けて前進する。
これにより、ブレーキパッド22F,22FがディスクロータDに押し付けられ、制動力が付与される。このとき、ペダルストロークセンサ9、回転角センサ25、推力センサ26等からの検出信号により、電動モータ22Bの駆動が制御されることにより、制動状態が確立される。このような制動中、回転直動変換機構22Dの回転部材、延いては、電動モータ22Bの回転軸22B1には、ブレーキ機構22に設けられた図示しないリターンスプリングにより制動解除方向の力が付与される。
一方、メインECU10は、ブレーキペダル6が踏込み解除側に操作されると、この操作に応じた指令(制動解除指令)をリア電動ブレーキ用ECU24に出力する。電動ブレーキ用ECU24は、メインECU10からの指令に基づいて、電動モータ22Bを逆方向、即ち、制動解除方向(リリース方向)に駆動(回転)する。電動モータ22Bの回転は、減速機構22Cを介して回転直動変換機構22Dに伝達され、ピストン22Eがブレーキパッド22Fから離れる方向に後退する。そして、ブレーキペダル6の踏込みが完全に解除されると、ブレーキパッド22F,22FがディスクロータDから離間し、制動力が解除される。このような制動が解除された非制動状態では、ブレーキ機構22に設けられた図示しないリターンスプリングは初期状態に戻る。
次に、パーキングブレーキによる制動付与(アプライ)および制動解除(リリース)の動作について説明する。なお、以下の説明では、運転者がパーキングブレーキスイッチ15を操作したときの動作を例に挙げて説明するが、自動パーキングブレーキ(オートアプライ、オートリリース)の場合についても、例えば、メインECU10の自動パーキングブレーキ(オートアプライ、オートリリース)の判定に基づいてその指令が出力される点で相違する以外、ほぼ同様である。
例えば、運転者によりパーキングブレーキスイッチ15がアプライ側に操作されると、メインECU10は、パーキングブレーキを作動(アプライ)する。この場合、メインECU10は、先ず、リア電動ブレーキ用ECU24を介してブレーキ機構22の電動モータ22Bを推力発生側(アプライ側:図3の時計方向)に回転させ、ブレーキパッド22F,22FをディスクロータDに所望の力(例えば、車両1の停止を維持できる力)で押圧させる。この状態で、メインECU10は、リア電動ブレーキ用ECU24を介してパーキング機構23のソレノイド23Aを作動させる。即ち、ソレノイド23Aのプランジャ23A1を引き込む(図3の上側に向けて変位させる)ことにより、レバー部材23Cの爪部23C1をラチェットギヤ23Bの爪23B1に押付ける。このとき、図3の(A)に示すように、レバー部材23Cの爪部23C1がラチェットギヤ23Bの爪23B1の頂部に当接(干渉)することにより、これら爪部23C1と爪23B1とが係合されない場合もある。
次に、メインECU10は、リア電動ブレーキ用ECU24を介して電動モータ22Bを減力側(リリース側:図3の反時計方向)に回転させる。これにより、爪部23C1と爪23B1とが係合されない場合にも、図3の(B)に示すように、爪部23C1と爪23B1とを確実に係合させることができる。この状態で、電動モータ22Bへの通電を停止すると共に、例えば推力センサ26により所定の推力(例えば、車両の停止を維持できる推力)に達しているか否かを確認してから、ソレノイド23Aへの通電を停止する。このとき、ラチェットギヤ23B(即ち、電動モータ22Bの回転軸22B1)には、ブレーキ機構22に設けられた図示しないリターンスプリングの弾性力に基づいて減力側(リリース側)への回転力(図3の反時計方向の力)が付与される。このため、ソレノイド23Aへの通電を停止しても、図3の(C)に示すように、爪部23C1と爪23B1との係合状態が保持される。これにより、電動モータ22Bおよびソレノイド23Aへの通電を停止した状態で制動状態を保持することができる。
一方、パーキングブレーキスイッチ15がリリース側に操作されると、メインECU10は、パーキングブレーキの作動を解除(リリース)する。この場合、ソレノイド23Aには通電せずに、電動モータ22Bを推力発生側(アプライ側)に僅かに回転させる。これにより、レバー部材23Cの爪部23C1とラチェットギヤ23Bの爪23B1との係合が緩み、圧縮ばね23Dのばね力によってレバー部材23Cが爪部23C1と爪23B1との係合を解除する方向(時計方向)へ回動する。そして、推力センサ26により推力が変化したか否かを確認してから、電動モータ22Bを減力側(リリース側)へ回転させて制動を解除する。
ここで、リリース時の左右のブレーキ機構22,22の推力の変化を考える。図11は、比較例によるパーキングブレーキのリリース時の推力の時間変化の一例を示している。図11中の実線51は、左後輪5L側のブレーキ機構22の推力に対応し、破線52は右後輪5R側のブレーキ機構22の推力に対応する。なお、図11では、リリースを開始する前から左右の推力(初期推力)が相違している場合を示している。このような相違は、例えば、パーキングブレーキをアプライしたときにブレーキパッドが高温で熱膨張しており、その後のリリースまでの間の温度低下により熱収縮したときの左右差等に起因して生じる可能性がある。
このようなアプライ状態において、パーキングブレーキスイッチ15のリリース操作またはオートリリースの判定(例えば、車両の動き出し、アクセル操作の有無等)に基づいてリリース指令が入力されると、ラチェット解除制御が開始される。先ず、図11中の(a)のラチェット解除作動区間では、電動モータ22Bを推力発生側(アプライ方向)に駆動させ、ラチェット機構を解除する(爪部23C1と爪23B1との係合を解除する)。このラチェット解除作動区間では、電動モータ22Bを推力発生側に予め定められた一定量回転させる。電動モータ22Bを一定量回転させると、図11中の(b)のラチェット解除確認区間に入る。
ラチェット解除確認区間では、電動モータ22Bを推力減力側(リリース方向)に駆動させ、初期推力未満となることを確認する。初期推力未満になった場合、即ち、ラチェット機構が確実に解除されたと判断された場合は、図11中の(c)の通常の推力制御領域に入り、目標推力に向かって減力を継続する。図11では、ブレーキペダル6が操作されていない状況(目標推力をゼロ(0)kN)として制御を実施しているが、ペダル操作等により目標推力が定められていればその値まで減力することになる。このような図11に示すように、比較例では、推力が左右で相違したまま推力が低下する。即ち、比較例では、図11中の(b)および(c)の減力時(推力低下時)に、推力に左右差が発生している。このような左右差は、例えば、車両の発進に伴ってリリース(オートリリース)が行われたときに、車両を横方向に揺らす可能性があり、運転者に違和感を与える可能性がある。即ち、車両の発進をスムーズ(円滑)に行えなくなる可能性がある。
これに対して、前述の特許文献1には、リリース時の推力の低下に左右差が発生することを抑制する技術が記載されている。しかし、特許文献1の技術は、リリース開始から推力低下開始までの空走区間に要する時間を、リリースの前に行われたアプライ時のモータ回転量積算値から推定し、この推定した時間に基づいて推力の低下に左右差が発生しないようにリリース制御する。このため、本実施形態のような空走区間が存在しない構成の場合は、特許文献1の技術を用いて左右差を抑制することができない。
そこで、実施形態では、リリースの前に行われたアプライ時のモータ回転量積算値を用いずに、左右の推力センサ26,26の値を基に所定のタイミングで左右の推力差を埋めるようにリリース作動させる。即ち、ソレノイド23Aによってプランジャ23A1を移動させてラチェット機構(ロック機構)を作動させる構成の場合、リリース開始時に推力発生側(アプライ側)に電動モータ22Bを駆動(回転)させてラチェット機構の係合を外す必要がある。そこで、実施形態では、ラチェット機構の係合を外す際に、左右の推力差を埋めるように作動させることにより、その後の減力側(リリース側)への作動中の推力の左右差を抑制するようにしている。
具体的には、実施形態では、メインECU10(およびリア電動ブレーキ用ECU24,24)は、各ブレーキ機構22,22のピストン22E,22Eの推進状態の保持を解除する場合、推力センサ26,26の検出値が高い一方の後輪5Lまたは5R側の推力になるまで、他方の後輪5Rまたは5L側の電動モータ22Bを駆動した後に、各パーキング機構23,23による保持を解除し、推力が減少する方向に各電動モータ22B,22Bを駆動する。即ち、メインECU10(およびリア電動ブレーキ用ECU24,24)は、各ブレーキ機構22,22のピストン22E,22Eの推進状態の保持を解除する場合、ピストン22Eに作用する推力が高い一方の後輪5Lまたは5R側の推力になるまで、他方の後輪5Rまたは5L側の電動モータ22Bを駆動した後に、各パーキング機構23,23による保持を解除し、推力が減少する方向に各電動モータ22B,22Bを駆動する。換言すれば、メインECU10(およびリア電動ブレーキ用ECU24,24)は、各ブレーキ機構22,22のピストン22E,22Eの推進状態の保持を解除する場合、推力センサ26,26の検出値が高い一方の後輪5Lまたは5R側の推力値と同じになるまで、他方の後輪5Rまたは5L側の電動モータ22Bを推力が増大する方向に駆動する。メインECU10(およびリア電動ブレーキ用ECU24,24)は、他方の推力値が一方の推力値と同じになるまで他方の電動モータ22Bを推力が増大する方向に駆動した後に、推力が減少する方向に各電動モータ22B,22Bを駆動する。
例えば、パーキングブレーキをリリースするときに、左後輪5L側のブレーキ機構22のピストン22Eに作用する推力よりも、右後輪5R側のブレーキ機構22のピストン22Eに作用する推力が高い場合を考える。この場合、メインECU10は、パーキングブレーキをリリースするときに、右後輪5R側の推力になるまで左後輪5L側の電動モータ22Bを駆動してから、推力が減少する方向に左右両方の電動モータ22B,22Bを駆動する。一方、パーキングブレーキをリリースするときに、右後輪5R側のブレーキ機構22のピストン22Eに作用する推力よりも、左後輪5L側のブレーキ機構22のピストン22Eに作用する推力が高い場合を考える。この場合、メインECU10は、パーキングブレーキをリリースするときに、左後輪5L側の推力になるまで右後輪5R側の電動モータ22Bを駆動してから、推力が減少する方向に左右両方の電動モータ22B,22Bを駆動する。
また、パーキングブレーキをリリースするときに、左右両方のピストン22Eに作用する推力が同じ場合を考える。この場合、パーキングブレーキをリリースするときの最初の駆動、即ち、電動モータ22Bを推力発生側(アプライ方向)に駆動させてラチェット機構を解除(爪部23C1と爪23B1との係合を解除)しているときに、推力の左右差が発生する可能性がある。このような場合も、メインECU10は、ピストン22Eに作用する推力が高い一方の側の推力になるまで、他方の側の電動モータ22Bを駆動した後に、推力が減少する方向に各電動モータ22B,22Bを駆動する。
このようなパーキングブレーキのリリースを行うために、メインECU10のメモリには、図4ないし図8に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、パーキングブレーキのリリース(ラチェット解除)の制御処理に用いる処理プログラムが格納されている。そこで、メインECU10の演算回路で行われる制御処理について、図4ないし図8を参照しつつ説明する。なお、図4の制御処理は、例えば、メインECU10に通電している間、所定の制御周期(例えば、10msec)で繰り返し実行される。
また、図4の制御処理は、パーキングブレーキ(以下、略してPKBともいう)のリリース制御のメイン(全体)の処理である。図5の制御処理は、図4中のS5の「ラチェット解除作動区間制御(左輪)」の処理である。図6の制御処理は、図4中のS6の「ラチェット解除作動区間制御(右輪)」の処理である。図7の制御処理は、図4中のS7の「ラチェット解除確認区間制御(左輪)」の処理である。図8の制御処理は、図4中のS8の「ラチェット解除確認区間制御(右輪)」の処理である。図5の制御処理と図6の制御処理、および、図7の制御処理と図8の制御処理は、左右が相違する以外、ほぼ同様の処理となるため、これら図5ないし図8の制御処理に関しては、主として図5と図7の制御処理について説明する。
例えば、メインECU10への通電開始により、図4の制御処理が開始されると、S1では、「PKBリリース制御中フラグ」が現在OFFであるか否かを判定する。「PKBリリース制御中フラグ」は、PKBリリース中であることを示すフラグであり、PKBリリース中にONになる。S1で「YES」、即ち、「PKBリリース制御中フラグ」がOFFであると判定された場合は、S2に進む。一方、S1で「NO」、即ち、「PKBリリース制御中フラグ」がONであると判定された場合は、S2からS4の処理を介することなくS5に進む。
S2では、運転者のPKBスイッチ15の操作等によるPKBリリース指令があるか否かを判定する。S2で「YES」、即ち、PKBリリース指令ありと判定されると、S3に進む。一方、S2で「NO」、即ち、PKBリリース指令なしと判定されると、リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。即ち、PKBリリース制御を実施せずに処理を終了させ、次の制御周期以降の成立までS1からの処理を繰り返す。
S3では、「PKBリリース制御中フラグ」をONにする。S3に続くS4では、後のS7およびS8の処理(ラチェット解除確認処理区間制御)にて必要となる開始時推力をメモリに記憶する。この場合、PKBリリース開始時の左右の推力のうちの低い側の推力を開始時推力として記憶する。同値であれば、その値を開始時推力として記憶する。
S5からS8の処理は、図5から図8を参照しつつ後で詳述するが、PKBのラチェット機構を解除する処理である。この場合、S5からS8の処理は繰り返される。即ち、S5からS8の処理では、それぞれの処理毎に完了フラグ(「ラチェット解除フラグ(左輪)」、「ラチェット解除フラグ(右輪)」、「ラチェット解除確認OKフラグ(左輪)」、「ラチェット解除確認OKフラグ(右輪)」)がある。そして、S5からS8の処理では、完了フラグがONになると、その処理は終了する(次の処理に進む処理となる)。S8に続くS9では、両輪共に「ラチェット解除確認OKフラグ」がONであるか否かを判定する。S5からS8までの処理がすべて完了した場合は、両輪共に「ラチェット解除確認OKフラグ」がONとなる。この場合、即ち、S9で「YES」と判定された場合は、S10に進み、S3からS8でONされたフラグをOFF(リセット)し、処理を終了させる(リターンする)。
一方、S5からS8までのいずれかの処理が完了していない場合は、S9で「NO」と判定される。この場合は、S10を介することなくリターンに進む。即ち、処理を終了させ(リターンを介してスタートに戻り)、次の制御周期以降の成立までS1からの処理を繰り返す。なお、S5、S6とS7、S8の処理は、左輪(左後輪5L)側を先に処理しているが、処理順を入れ換えて右輪(右後輪5R)側を先に処理してもよい。S10の処理完了後は、ラチェット機構が解除された状態であり、通常の推力制御が可能となる。例えば、ブレーキペダル6が操作されていない状況であれば、目標推力をゼロ(0)kNとして減力する。また、ブレーキペダル6が操作されている等により目標推力が定められていれば、その値まで減力を行う。
次に、図5および図6の処理について説明する。図5および図6は、図4のS5およびS6の「ラチェット解除作動区間制御」の流れ図である。図5と図6は左右が相違する以外、同様の処理であるため、図5の左輪(左後輪5L)側の処理を説明する。
S21では、「ラチェット解除フラグ(左輪)」が現在OFFであるか否かを判定する。「ラチェット解除フラグ(左輪)」は、図4のS5の「ラチェット解除作動区間制御(左輪)」の処理、即ち、図5の処理が完了済みであることを示すフラグであり、この図5の処理(S5の処理)が完了するとONになる。
S21で「YES」、即ち、「ラチェット解除フラグ(左輪)」がOFFであると判定された場合は、図5の処理(S5の処理)を行うべく、S22に進む。一方、S21で「NO」、即ち、「ラチェット解除フラグ(左輪)」がONであると判定された場合は、図5の処理(S5の処理)が完了済みであるため、本処理は不要と判定し、エンドに進む。即ち、本処理を終了させ、S6以降の処理に進む。
S22では、左後輪5L側の電動モータ22B(ラチェットギヤ23B)の回転量がラチェット解除一定作動量に未到達であるか否かを判定する。即ち、ラチェット解除する際には、電動モータ22B(ラチェットギヤ23B)をアプライ方向に予め定められた一定量(例えば、0.1rev)駆動(回転)させるが、S22では、この駆動量(回転量)が一定量に未到達か否かを判定する。S22で「YES」、即ち、一定量に未到達と判定された場合は、S23に進み、作動指令(左輪)を「ラチェット解除作動」にし、アプライ側への電動モータ22Bの駆動を開始または継続する。そして、エンドを介して、S6以降の処理に進む。一方、S22で「NO」、即ち、一定量に未到達でない(到達した)と判定された場合は、S24に進む。
S24では、他方(右輪側)のラチェットを解除する際の作動量を監視する。即ち、S24では、他方(右後輪5R側)の電動モータ22B(ラチェットギヤ23B)の回転量がラチェット解除一定作動量に未到達であるか否かを判定する。S24で「YES」、即ち、一定量に未到達と判定された場合は、S25に進み、作動指令(左輪)を「推力保持」にし、左後輪5L側の電動モータ22Bの駆動を停止する。そして、エンドを介して、S6以降の処理に進む。即ち、次の制御周期以降で成立するまで、換言すれば、他方(右後輪5R側)の電動モータ22B(ラチェットギヤ23B)の回転量がラチェット解除一定作動量に到達するまで、推力保持状態を待つことになる。一方、S24で「NO」、即ち、一定量に未到達でない(到達した)と判定された場合は、S26に進む。
S26では、推力の左右差があるか否かを判定する。即ち、S26に進んだ場合は、左右輪共にラチェット解除一定作動量到達済みの状態となっているため、この時の推力の左右差の有無を確認する。推力は、例えば、推力センサ26により検出することができる。S26で「YES」、即ち、左後輪5L側と右後輪5R側とで推力に差があると判定された場合は、S27に進む。この場合は、左右で推力が相違している、即ち、推力に左右差が発生しているため、S27では、推力が低い側であるか否かを判定する。S27で「YES」、即ち、推力が低い側であると判定された場合は、S28に進み、作動指令(左輪)を「左右差補正作動」にし、アプライ側への電動モータ22Bの駆動を開始または継続する。即ち、S28では、低い側の推力を高い側の推力と同値にすべく、左後輪5L側の電動モータ22Bをアプライ側に駆動する。一方、S27で「NO」、即ち、推力が高い側であると判定された場合は、S30に進み、作動指令(左輪)を「推力保持」にし、左後輪5L側の電動モータ22Bの駆動を停止する。即ち、この場合は、低い側が推力を同値にするのを待つべく、推力の高い側である左後輪5L側の電動モータ22Bの駆動を停止する。そして、エンドを介して、S6以降の処理に進む。
一方、S26で「NO」、即ち、左後輪5L側と右後輪5Rとで推力に差がないと判定された場合は、S29に進む。この場合は、S29で「ラチェット解除フラグ(左輪)」をONにする。そして、続くS30で作動指令(左輪)を「推力保持」にする。即ち、左後輪5L側の電動モータ22Bの駆動を停止し、エンドを介して、S6以降の処理に進む。
次に、図7および図8の処理について説明する。図7および図8は、図4のS7およびS8の「ラチェット解除確認区間制御」の流れ図である。図7と図8は左右が相違する以外、同様の処理であるため、図7の左輪(左後輪5L)側の処理を説明する。
S41では、「ラチェット解除フラグ(左輪)」がONであり、かつ、「ラチェット解除確認OKフラグ(左輪)」がOFFであるか否かを判定する。「ラチェット解除フラグ(左輪)」は、図4のS5の「ラチェット解除作動区間制御(左輪)」の処理、即ち、図5の処理が完了済みであることを示すフラグであり、この図5の処理(S5の処理)が完了するとONになる。「ラチェット解除確認OKフラグ(左輪)」は、図4のS7の「ラチェット解除確認区間制御(左輪)」の処理、即ち、図7の処理が完了済みであることを示すフラグであり、この図7の処理(S7の処理)が完了するとONになる。
S41で「YES」、即ち、「ラチェット解除フラグ(左輪)」がONであり、かつ、「ラチェット解除確認OKフラグ(左輪)」がOFFであると判定された場合は、図7の処理(S7の処理)を行うべく、S42に進む。一方、S41で「NO」、即ち、「ラチェット解除フラグ(左輪)」および「ラチェット解除確認OKフラグ(左輪)」がOFFである、または、「ラチェット解除フラグ(左輪)」および「ラチェット解除確認OKフラグ(左輪)」がONであると判定された場合は、図7の処理(S7の処理)を行うタイミングではない、または、完了済みであるため、エンドに進む。即ち、本処理を終了させ、S8以降の処理に進む。
S42では、ラチェット解除が確実に実施されているかを確認するために、現在の推力(現推力)が図4のS4で記憶された開始時推力の値未満となるかを確認する。即ち、S42では、現推力が開始時推力以上であるか否かを判定する。S42で「YES」、即ち、現推力が開始時推力以上であると判定された場合は、S43に進む。S43では、「ラチェット解除確認作動」の開始前か作動中かを判断する。即ち、S43では、作動指令(左輪)が「ラチェット解除確認作動」であるか否かを判定する。S43で「YES」、即ち、作動指令(左輪)が「ラチェット解除確認作動」である(作動中)と判定された場合は、S44に進む。一方、S43で「NO」、即ち、作動指令(左輪)が「ラチェット解除確認作動」でない(開始前)と判定された場合は、S44を介することなく、S45に進む。S45では、作動指令(左輪)を「ラチェット解除確認作動」にし、リリース側への電動モータ22Bの駆動を開始または継続する。そして、エンドを介して、S8以降の処理に進む。
一方、S42で「NO」、即ち、現推力が開始時推力未満であると判定された場合は、S49に進む。この場合、即ち、現推力が開始時推力未満であれば、ラチェットが確実に解除され、減力が可能となっている。このため、S49では、「ラチェット解除確認OKフラグ」をONにし、S48に進む。S48では、作動指令(左輪)を「推力保持」にし、左後輪5L側の電動モータ22Bの駆動を停止する。そして、エンドを介して、S8以降の処理に進む。
一方、S44では、推力の変化があるか否かを判定する。S44で「YES」、即ち、推力の変化があると判定された場合は、S45に進む。これに対して、S44で「NO」、即ち、推力の変化がないと判定された場合は、ラチェット解除確認作動(リリース作動)を行っているにも拘わらず、推力の変化がみられない(減力していない)場合となる。この場合は、ラチェット解除に失敗しており、やり直しが必要になる。そこで、S46では、左右の「ラチェット解除フラグ」をOFF(リセット)すると共に、他方(右輪側)のラチェット解除確認が既に完了していた場合を考慮して、「ラチェット解除確認OKフラグ(右輪)」をOFFする。続くS47では、ラチェット解除一定作動量が不足していた可能性を考慮し、ラチェット解除一定作動量に+α(例えば、0.05rev)を加える。そして、続くS48では、作動指令(左輪)を「推力保持」にし、処理を終了させる。この場合は、次の制御周期では、図4のS5およびS6の処理で両輪共に「ラチェット解除区間制御」のやり直しが行われる。
なお、左輪側がS46からS48の処理に進み推力保持となり、右輪側がS55に進みラチェット解除確認作動となることにより、作動指令が左右で異なることにもなり得る。しかし、次の制御周期にて図4のS5およびS6に進み、図5のS23および図6のS33で左右共に作動指令は「ラチェット解除作動」となるため問題ない。また、図示は省略するが、ラチェット解除のやり直しの回数に制限を設け、制限回数を超えた場合においては、故障と判定してもよい。この場合、正常輪(ラチェットが解除できた側)については、車両の状況等に応じて、再度PKBをアプライするとしてもよいし、正常輪のみを通常の推力制御へ移行するようにしてもよい。
図9および図10は、実施形態によるリリース時の左輪(左後輪5L)側の推力と右輪(右後輪5R)側の推力の時間変化を示している。このうちの図9は、リリースを開始するときに左右で推力が相違しているが、図9中の(a)のラチェット解除作動区間で推力の左右差を埋めるように動作する。このため、減力しているとき(推力を低下させているとき)、即ち、図9中の(b)(c)の区間で、推力に左右差が発生することを抑制できる。また、図10は、リリースを開始するときに左右で推力が同じであるが、(a)のラチェット解除作動区間の最初の段階、即ち、アプライ側に電動モータ22Bをラチェット解除一定作動量回転させているときに、推力の左右差が発生する傾向となる。この場合も、(a)のラチェット解除作動区間(の最後の段階)で推力の左右差を埋めるように動作するため、減力中(推力低下中)に推力に左右差が発生することを抑制できる。
以上のように、実施形態によれば、一方の車輪側(推力が高い側)の推力になるまで他方の車輪側(推力が低い側)の電動モータ22Bを駆動してから、パーキング機構23による保持を解除し、推力が減少する方向に電動モータ22Bを駆動する。このため、推力が減少する方向に電動モータ22Bを駆動しているときに、推力の低下に左右差が発生することを抑制できる。これにより、例えば、車両の発進に伴ってリリース(オートリリース)が行われるときに、推力低下の左右差に起因して車両が横方向に振れる(横揺れする)ことを抑制できる。この結果、運転者に違和感を与えずにスムーズ(円滑)な車両の発進が可能となる。
なお、実施形態では、「メインECU10」と「左後輪5L側のリア電動ブレーキ用ECU24」と「右後輪5R側のリア電動ブレーキ用ECU24」とをそれぞれ別体のECUとし、これら3つのECUを車両データバスであるCAN13で接続する構成とした場合を例に挙げて説明した。即ち、メインECU10と左右のリア電動ブレーキ用ECU24,24との3つのECUを、電動ブレーキ装置21,21用の制御装置(電動ブレーキ制御装置)として構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、メインECUとリア電動ブレーキ用ECUとを一つのECUにより構成してもよい。即ち、左右の電動モータと左右のパーキング機構(ソレノイド)を制御する制御装置を、1つのECUにより構成してもよい。
実施形態では、ブレーキ機構22にリア電動ブレーキ用ECU24を取り付けることにより、これらブレーキ機構22とリア電動ブレーキ用ECU24とを1つのユニット(組立体)として構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ブレーキ機構とリア電動ブレーキ用ECUとを分離して配置してもよい。この場合、電動ブレーキ用ECU(リア電動ブレーキ用ECU)を左側(左後輪側)と右側(右後輪側)とでそれぞれ別々に設けてもよいし、左側(左後輪側)と右側(右後輪側)とで一つの(共通の)電動ブレーキ用ECU(リア電動ブレーキ用ECU)として構成してもよい。
また、実施形態では、後輪側の左右の電動ブレーキ装置21,21にパーキング機構を備えた構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、左前輪側と右前輪側とにそれぞれパーキング機構を備えた電動ブレーキ装置を配置してもよい。また、左右の前輪と左右の後輪との四輪のそれぞれにパーキング機構を備えた電動ブレーキ装置を配置してもよい。要するに、車両の車輪のうち少なくとも左右一対の車輪の電動ブレーキ装置を、パーキング機構を備えた電動ブレーキ装置により構成することができる。
以上説明した実施形態に基づく電動ブレーキ装置および電動ブレーキ制御装置として、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
(1).第1の態様としては、車両の左右の車輪それぞれに設けられ、電動モータの駆動によりディスクにパッドを押圧すべくピストンが推進されるブレーキ機構と、前記各ブレーキ機構に設けられ前記ピストンに作用する推力を検出する推力検出手段と、前記各ブレーキ機構に設けられ前記ピストンの推進状態を保持するパーキング機構と、前記電動モータと前記パーキング機構を制御する制御装置と、を備える電動ブレーキ装置において、前記制御装置は、前記各ブレーキ機構の前記ピストンの推進状態の保持を解除する場合、前記推力検出手段の検出値が高い一方の車輪側の推力になるまで、他方の車輪側の前記電動モータを駆動した後に、前記各パーキング機構による保持を解除し、推力が減少する方向に前記各電動モータを駆動する。
この第1の態様によれば、一方の車輪側(推力が高い側)の推力になるまで他方の車輪側(推力が低い側)の電動モータを駆動してから、パーキング機構による保持を解除し、推力が減少する方向に電動モータを駆動する。このため、推力が減少する方向に電動モータを駆動しているときに、推力の低下に左右差が発生することを抑制できる。これにより、例えば、車両の発進に伴ってリリース(オートリリース)が行われるときに、推力低下の左右差に起因して車両が横方向に振れる(横揺れする)ことを抑制できる。この結果、運転者に違和感を与えずにスムーズ(円滑)な車両の発進が可能となる。
(2).第2の態様としては、車両の左右の車輪それぞれに設けられるブレーキ機構のピストンを推進する電動モータと前記ピストンの推進状態を保持するパーキング機構とを制御する電動ブレーキ制御装置において、前記各ブレーキ機構の前記ピストンの推進状態の保持を解除する場合、前記ピストンに作用する推力が高い一方の車輪側の推力になるまで、他方の車輪側の前記電動モータを駆動した後に、前記各パーキング機構による保持を解除し、推力が減少する方向に前記各電動モータを駆動する。
この第2の態様によれば、一方の車輪側(推力が高い側)の推力になるまで他方の車輪側(推力が低い側)の電動モータを駆動してから、パーキング機構による保持を解除し、推力が減少する方向に電動モータを駆動する。このため、推力が減少する方向に電動モータを駆動しているときに、推力の低下に左右差が発生することを抑制できる。これにより、例えば、車両の発進に伴ってリリース(オートリリース)が行われるときに、推力低下の左右差に起因して車両が横方向に振れる(横揺れする)ことを抑制できる。この結果、運転者に違和感を与えずにスムーズ(円滑)な車両の発進が可能となる。