以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
<プリンタの概略構成>
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、プラテン2と、インク吐出装置3と、カートリッジホルダ4と、搬送機構5とを備えている。なお、以下では、図1に示す前後左右の各方向をプリンタの「前」「後」「左」「右」と定義する。また、紙面手前側を「上」、紙面向こう側を「下」とそれぞれ定義する。
プラテン2の上面には、被記録媒体である記録用紙Pが載置される。インク吐出装置3は、インクジェットヘッド21(本発明の「記録ヘッド」)を有する。インクジェットヘッド21は、プラテン2に載置された記録用紙Pに対してインクを吐出する4つのヘッドユニット25を備えている。インク吐出装置3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール11,12に沿って左右方向(以下、走査方向ともいう)に往復移動可能に構成されている。インク吐出装置3には無端ベルト13が連結され、駆動モータ14によって無端ベルト13が駆動されることで、インク吐出装置3は走査方向に移動する。インク吐出装置3は、走査方向に移動しながら、各ヘッドユニット25のノズル30(図5参照)からプラテン2に載置された記録用紙Pへ向けてインクを吐出する。インク吐出装置3の詳細構成については後述する。
カートリッジホルダ4には、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクカートリッジ15が、それぞれ取り外し可能に装着される。カートリッジホルダ4は、図示しないチューブによって、インク吐出装置3と接続されている。カートリッジホルダ4の4つのインクカートリッジ15にそれぞれ貯留された4色のインクは、チューブを介してインク吐出装置3に供給される。
搬送機構5は、前後方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ16,17を有する。2つの搬送ローラ16,17は、図示しない搬送モータによって互いに同期して駆動される。搬送機構5は、2つの搬送ローラ16,17によって、プラテン2に載置された記録用紙Pを前方(以下、搬送方向ともいう)に搬送する。
<インク吐出装置>
次に、インク吐出装置3の詳細構成について説明する。図2〜図6に示すように、インク吐出装置3は、ヘッドホルダ20と、4つのヘッドユニット25を有するインクジェットヘッド21と、4枚のCOF22(本発明の「配線部材」)と、リジッド基板23とを備えている。
<ヘッドホルダ20>
ヘッドホルダ20は、走査方向に長い矩形の平面形状を有する部材である。ヘッドホルダ20は、駆動モータ14によって駆動される無端ベルト13(図1参照)に連結されており、ガイドレール11,12に沿って走査方向に移動可能である。図4に示すように、ヘッドホルダ20の下部には凹状のユニット収容部20aが形成され、ユニット収容部20aにインクジェットヘッド21の4つのヘッドユニット25が収容される。また、ヘッドホルダ20の上部には凹状の基板収容部20bが形成され、基板収容部20b内には、リジッド基板23が収容されている。
図3、図4に示すように、ヘッドホルダ20の基板収容部20b内には、基板収容部20bの底面から上方に延び、インク流路が形成された8つの筒状流路部27が設けられている。8つの筒状流路部27は、後述するインクジェットヘッド21の4つのヘッドユニット25の8つのノズル列31にそれぞれ対応している。
図4に示すように、インク吐出装置3の上方には、流路部材81が配置されている。流路部材81には、8つの筒状流路部27に接続される図示しないインク流路が形成されている。流路部材81は、図示しないチューブ等を介して、カートリッジホルダ4(図1参照)と接続され、8つの筒状流路部27には、カートリッジホルダ4の4つのインクカートリッジ15にそれぞれ貯留された4色のインクが供給される。なお、1つのインクカートリッジ15からの1色のインクは、2つの筒状流路部27に供給される。また、流路部材81の上面には、ヒータ82(本発明の「加熱部」)が配置されている。ヒータ82は、流路部材81内を流れるインクを加熱する。なお、ヒータ82は、インクを加熱可能な位置であれば別の位置に配置されていてもよい。ヒータ82の温度は、常温でのインクの粘度と、吐出時の所望のインクの粘度とに応じて、例えば40〜60℃程度に設定される。
また、図4において図示は省略するが、ヘッドホルダ20内には、8つの筒状流路部27と4つのヘッドユニット25を接続する、インク流路が形成されている。また、図3、図4に示すように、ヘッドホルダ20には、4つのヘッドユニット25に対応した4枚のCOF22がそれぞれ通過する、4つの通過穴20cも形成されている。
<インクジェットヘッド21>
図3、図4に示すように、インクジェットヘッド21は、4つのヘッドユニット25と、4つのヘッドユニット25を保持するユニット保持板26とを有する。4つのヘッドユニット25は、ヘッドホルダ20のユニット収容部20a内において、走査方向に間隔を空けて並んだ状態で収容されている。
図5、図6に示すように、各ヘッドユニット25は、その下面に配置された複数のノズル30を備えている。ヘッドユニット25の下面の、複数のノズル30の吐出口が形成された領域を、以下、インク吐出面25aと称する。インク吐出面25aの複数のノズル30は、搬送方向に配列され、且つ、走査方向に並ぶ2つのノズル列31を構成している。
1つのヘッドユニット25が2つのノズル列31を有することから、インクジェットヘッド21は、合計8つのノズル列31を有する。8つのノズル列31とヘッドホルダ20の8つの筒状流路部27とはそれぞれ対応しており、各ノズル列31には、対応する筒状流路部27から、4色のインクの何れかが供給される。すなわち、1つのインクカートリッジ15(図1参照)からインク吐出装置3に供給された1色のインクは、2つの筒状流路部27を介して、8つのノズル列31のうちの2つのノズル列31に供給される。なお、8つのノズル列31の各々がどの色のインクを吐出するかについては、特定の組み合わせに限定されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、1つのヘッドユニット25の2つのノズル列31が、同じ色を吐出するノズル列31であってもよい。あるいは、4色のインクをそれぞれ吐出する4種類のノズル列31が、走査方向において左右対称に配置されてもよい。例えば、4種類のノズル列31が、走査方向における中央から左右両側に向けて、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの順でそれぞれ配置されてもよい。
図3、図4に示すように、ユニット保持板26は、4つのヘッドユニット25のインク吐出面25aをそれぞれ露出させる4つの開口部26aを有する。このユニット保持板26は、4つのヘッドユニット25を下方から覆うように、スペーサ49を挟んでヘッドホルダ20の下側に配置されている。但し、各ヘッドユニット25のインク吐出面25aは、ユニット保持板26の開口部26aから露出している。
<ヘッドユニット25>
次に、ヘッドユニット25の構造について具体的に説明する。図5に示すように、ヘッドユニット25は、搬送方向に長尺な、平面視でほぼ矩形状の外形形状を有する。また、図6に示すように、ヘッドユニット25は、ホルダ部材32と、このホルダ部材32に保持されたヘッド本体部33とを有する。ホルダ部材32には、2つのインク供給流路34が形成されている。これら2つのインク供給流路34は、ヘッドホルダ20内に形成されたインク流路(図示省略)を介して、2つの筒状流路部27と接続されている。
ヘッド本体部33は、第1流路基板36、第2流路基板37、ノズルプレート38、複数の圧電素子39、保護部材40等を有する。
第1流路基板36には、複数の圧力室41が形成されている。複数の圧力室41は、複数のノズル30に対応して搬送方向に配列され、且つ、走査方向に並ぶ2つの圧力室列を構成している。また、第1流路基板36は、複数の圧力室41を覆う振動膜45を有する。
第2流路基板37は、第1流路基板36の下面に接合されている。この第2流路基板37には、ホルダ部材32の2つのインク供給流路34とそれぞれ連通する、2つのマニホールド42が形成されている。インクカートリッジ15(図1参照)から流路部材81を介して筒状流路部27へ供給されたインクは、ホルダ部材32のインク供給流路34を介して、マニホールド42へ供給される。
2つのマニホールド42は、第1流路基板36の複数の圧力室41と重なる領域において、搬送方向(図6の紙面垂直方向)にそれぞれ延びている。各マニホールド42の下端は、合成樹脂製のフィルム46によって覆われている。また、フィルム46の下側には、スペーサ49を挟んでヘッドユニット25を保持するユニット保持板26が配置されている。これにより、フィルム46とユニット保持板26との間にダンパ室48が形成され、フィルム46が変形可能となる。そして、フィルム46が変形することによって、マニホールド42の圧力変動が抑制される。
第2流路基板37には、マニホールド42と複数の圧力室41とをそれぞれ連通させる、複数の連通孔43が形成されている。さらに、第2流路基板37には、複数の圧力室41と、次述のノズルプレート38に形成された複数のノズル30とをそれぞれ連通させる、複数の連通孔44も形成されている。
ノズルプレート38は、第2流路基板37の下面に接合されている。ノズルプレート38には、搬送方向に配列された複数のノズル30が形成されている。上述したように、複数のノズル30は2つのノズル列31を構成している。各ノズル30は、第2流路基板37に形成された連通孔44を介して、第1流路基板36の圧力室41と連通している。
複数の圧電素子39は、インク吐出面25aと平行な振動膜45の上面に配置されている。複数の圧電素子39は、複数の圧力室41にそれぞれ対応して搬送方向に配列されており、走査方向に並ぶ2列の圧電素子列を構成している。圧電素子39は、印加電圧が変化するときの圧電歪を利用して振動膜45を振動させ、圧力室41内のインクに、ノズル30から吐出させるための吐出エネルギーを付与する。各圧電素子39には、圧電素子39に所定の駆動電圧を印加するための駆動配線47が接続されている。駆動配線47は、各圧電素子39から、走査方向における内側に引き出されている。各駆動配線47の、圧電素子39とは反対側の端部には、次述のCOF22が接続される駆動接点47aが設けられている。複数の駆動配線47の駆動接点47aは、第1流路基板36の振動膜45の上面の、2つの圧電素子列の間の領域に配置されている。なお、本実施形態では、各圧電素子39と、この圧電素子39に対応する圧力室41、ノズル30及びこれらを接続するインク流路と、この圧力室の上面を覆っている振動膜45の部分とを合わせたものが、本発明の「記録素子」に相当する。
第1流路基板36の振動膜45の上面には、2つの圧電素子列をそれぞれ覆う2つの保護部材40が配置されている。保護部材40は、圧電素子39を外気から遮断して、湿気に触れることを防止する等の目的で設けられている。
<リジッド基板23>
図2〜図4に示すように、リジッド基板23は、ヘッドホルダ20を挟んで4つのヘッドユニット25の上方に配置され、ヘッドホルダ20の基板収容部20bに収容されている。リジッド基板23は、上下方向において、4つのヘッドユニット25と重なるように配置されている。図2〜図4に示すように、リジッド基板23の左端部と右端部の上面には、コネクタ53(53a,53b)がそれぞれ設けられている。また、ヘッドホルダ20の左壁部と右壁部には、リジッド基板23と図示しない制御装置とを接続するための図示しないFFCが挿入される、挿入口20dがそれぞれ形成されている。なお、コネクタ53は、リジッド基板23の下面に設けられてもよいし、上面と下面の両方に設けられてもよい。リジッド基板23には、下方の4つのヘッドユニット25から延びている4枚のCOF22が貫通する4つの貫通穴50a〜50dが、走査方向に並んで形成されている。また、リジッド基板23には、ヘッドホルダ20の8つの筒状流路部27が貫通する8つの流路穴51a〜51hも形成されている。なお、本実施形態では、図3に示すように、8つの流路穴51a〜51hのうち、6つの流路穴51b〜51gは、貫通穴50と繋がっているが、貫通穴50と流路穴51とが繋がっておらず、互いに独立して設けられていてもよい。
図4に示すように、リジッド基板23の上面の、4つの貫通穴50a〜50dの縁部近傍には、4つの接続端子52がそれぞれ設けられている。より詳細には、左側に位置する2つの貫通穴50a,50bに対しては、それらの左側(コネクタ53a側)に、接続端子52が設けられている。また、右側に位置する2つの貫通穴50c,50dに対しては、それらの右側(コネクタ53b側)に、接続端子52が設けられている。左側の2つの接続端子52は、リジッド基板23上に配置された図示しない配線や回路素子を介して、左側のコネクタ53aと接続されている。同様に、右側の2つの接続端子52は、リジッド基板23上に配置された図示しない配線や回路素子を介して、右側のコネクタ53bと接続されている。各COF22は、対応する貫通穴50を通過して、リジッド基板23の上面に設けられた接続端子52に接続されている。
<COF>
次に、COF22について、詳細に説明する。図4に示すように、各ヘッドユニット25とリジッド基板23とは、COF(Chip On Film)22によって電気的に接続されている。COF22は、各ヘッドユニット25において、COF22の長さ方向の一方の端部が左右2つの圧電素子列の間に配置され、ヘッドユニット25の複数の駆動接点47aが配置された部分に接合されている。また、図3、図4に示すように、4枚のCOF22は、走査方向に並んだ状態で4つのヘッドユニット25からそれぞれ、ヘッドホルダ20の通過穴20c及びリジッド基板23の貫通穴50a〜50dを通ってリジッド基板23の上面まで上方へ延びている。そして、COF22の長さ方向の他方側の端部が、リジッド基板23の接続端子52が配置された部分に接合されている。
図7〜図9に示すように、COF22は、基材61と、ドライバIC62と、2本のグランド配線66と、複数の個別配線67と、複数の制御配線68とを備えている。基材61は、ポリイミド等の合成樹脂材料からなる、可撓性を有するフィルム状の部材である。基材61は、長さ方向の一方の端部において、一方の面61aが、ヘッドユニット25の上面の導通接点47aが配置された部分に接合されている。また、基材61は、ヘッドユニット25との接合部分近傍の第1折り曲げ部71において折り曲げられ、上述したように、ヘッドホルダ20の通過穴20c及びリジッド基板23の貫通穴50a〜50dを通ってリジッド基板23よりも上方まで延びている。また、基材61は、リジッド基板23よりも上方の第2折り曲げ部72において折り曲げられている。そして、基材61は、長さ方向の他方の端部において、一方の面61aが、リジッド基板23の上面の接続端子52が配置された部分に接合されている。
ドライバIC62は、基材61の一方の面61aの、上下方向に延びている部分に実装されている。2本のグランド配線66は、基材61の幅方向(搬送方向)の両端部に配置され、基材61の長さ方向に沿って延びている。グランド配線66は、一方側配線層66aと他方側配線層66bとを有している。一方側配線層66aは、Cuなどの導電性材料からなり、基材61の一方の面61aに配置されており、基材61の長さ方向のほぼ全長にわたって延びている。
他方側配線層66bは、Cu等の導電性材料からなり、基材61の他方の面61bのうち、第1折り曲げ部71と第2折り曲げ部72との間に位置する上下方向に延びた部分に配置されている。基材61の他方の面61bとは、基材61の一方の面61aと反対側の面のことである。他方側配線層66bは、一方側配線層66aのうち、第1折り曲げ部71と第2折り曲げ部72との間に位置する上下方向に延びた部分と、基材61の厚み方向に重なっている。また、一方側配線層66aと他方側配線層66bとは、基材61に形成された複数のスルーホール73を介して接続されている。複数のスルーホール73は、例えば、基材61の長さ方向に沿って50〜100μm程度の間隔で配置されている。あるいは、複数のスルーホール73は、例えば、これよりも大きい1mm程度の間隔で配置されていてもよい。
複数の個別配線67は、複数の圧電素子39に対して個別の配線である。複数の個別配線67は、基材61の、ヘッドユニット25との接合部分と、ドライバIC62が実装された部分との間の部分のうち、基材61の幅方向における2本のグランド配線66の間の部分に配置されている。複数の個別配線67は、それぞれが基材61の長さ方向に沿って延び、基材61の幅方向に間隔をあけて並んでいる。また、基材61の幅方向において、個別配線67同士の間隔D2(例えば、30〜50μm程度)は、最も外側の個別配線67とグランド配線66との間隔D1(例えば、100μm程度)よりも小さい。
個別配線67は、一方側配線層67aと他方側配線層67bとを有している。一方側配線層67aは、Cu等の導電性材料からなり、基材61の一方の面61aに配置されている。個別配線67は、基材61の長さ方向において、基材61の、ヘッドユニット25との接合部分と、ドライバIC62が実装された部分との間において、その全長にわたって延びている。
他方側配線層67bは、Cuなどの導電性材料からなり、基材61の他方の面61bのうち、第1折り曲げ部71と、ドライバIC62が実装された部分との間に位置する、上下方向に延びた部分に配置されている。他方側配線層67bは、一方側配線層67aのうち、第1折り曲げ部71と、ドライバIC62が実装された部分との間に位置する上下方向に延びた部分と、基材61の厚み方向に重なっている。また、一方側配線層67aと他方側配線層67bとは、基材61に形成された複数のスルーホール74を介して接続されている。複数のスルーホール74は、例えば、基材61の長さ方向に沿って、50〜100μm程度の間隔で配置されている。
複数の制御配線68は、基材61の、ドライバIC62が実装された部分と、リジッド基板23との接合部分との間の部分のうち、基材61の幅方向における2本のグランド配線66の間の部分に配置されている。複数の制御配線68は、それぞれが基材61の長さ方向に沿って延び、基材61の幅方向に間隔をあけて並んでいる。また、制御配線68の本数は、個別配線67の本数よりも少なく、基材61の幅方向において、制御配線68同士の間隔D4(例えば、100μm程度)は、個別配線67同士の間隔D2よりも大きく、最も外側の個別配線67とグランド配線66との間隔D1、及び、最も外側の制御配線68とグランド配線66との間隔D3(例えば、85μm程度)よりも小さい。
制御配線68は、一方側配線層68aと他方側配線層68bとを有している。一方側配線層68aは、Cu等の導電性材料からなり、基材61の一方の面61aに配置されている。制御配線68は、基材61の長さ方向において、基材61の、ドライバIC62が実装された部分と、リジッド基板23との接合部分との間において、その全長にわたって延びている。
他方側配線層68bは、Cu等の導電性材料からなり、基材61の他方の面61bのうち、ドライバIC62が実装された部分と、第2折り曲げ部72との間に位置する、上下方向に延びた部分に配置されている。他方側配線層68bは、一方側配線層68aのうち、ドライバIC62が実装された部分と、第2折り曲げ部72との間に位置する上下方向に延びた部分と、基材61の厚み方向に重なっている。また、一方側配線層68aと他方側配線層68bとは、基材61に形成された複数のスルーホール75を介して接続されている。複数のスルーホール75は、例えば、基材61の長さ方向に沿って、50〜100μm程度の間隔で配置されている。
また、配線66〜68の一方側配線層66a〜68aの厚みは全て同じT11(例えば、8μm程度であり、配線66〜68の他方側配線層66b〜68bの厚みは全て同じT12である。厚みT12は、厚みT11と同じであってもよいし、厚みT11と異なっていてもよい。ここで、厚みが同じであることには、製造誤差の範囲で厚みに多少のばらつき(例えば1〜2%以下のばらつきがあることも含む。以下の厚みについての説明でも同様である。
そして、本実施形態では、グランド配線66のうち、基材61の、第1折り曲げ部71と第2折り曲げ部72との間に位置する中央部分66c(本発明の「第2配線部分」)の厚みが、一方側配線層66aの厚みT11と他方側配線層66bの厚みT12とを合わせた厚み[T11+T12](例えば、16〜32μm程度)となる。これに対して、グランド配線66のうち、中央部分66c以外の部分の厚みが、一方側配線層66aの厚みT11となる。すなわち、グランド配線66は、中央部分66cの厚みが、中央部分66c以外の部分の厚みよりも大きくなっている。
同様に、個別配線67のうち、基材61の、第1折り曲げ部71とドライバIC62が実装された部分との間に位置する中央部分67c(本発明の「第2配線部分」)の厚みが、一方側配線層67aの厚みT11と他方側配線層67bの厚みT12とを合わせた厚み[T11+T12]となる。これに対して、個別配線67のうち、中央部分67c以外の部分の厚みが、一方側配線層67aの厚みT11となる。すなわち、個別配線67は、中央部分67cの厚みが、中央部分67c以外の部分の厚みよりも大きくなっている。
同様に、制御配線68のうち、基材61の、ドライバIC62が実装された部分と第2折り曲げ部72との間に位置する中央部分68c(本発明の「第2配線部分」)の厚みが、一方側配線層68aの厚みT11と他方側配線層68bの厚みT12とを合わせた厚み[T11+T12]となる。これに対して、制御配線68のうち、中央部分68c以外の部分の厚みが、一方側配線層68aの厚みT11となる。すなわち、制御配線68は、中央部分68cの厚みが、中央部分68c以外の部分の厚みよりも大きくなっている。
また、上述したように、基材61上に、複数の配線66〜68が配置されていることにより、グランド配線66及び個別配線67のうち、基材61のヘッドユニット25との接合部分に配置された接続部分66d、67d(本発明の「第1配線部分」)が、ヘッドユニット25と電気的に接続されている。また、グランド配線66及び制御配線68のうち、基材61のリジッド基板23との接合部分に配置された接続部分66e、68dが、リジッド基板23と電気的に接続されている。
そして、これにより、複数の制御配線68を介して、リジッド基板23からドライバIC62に、ドライバIC62を制御するための信号を伝送することができる。また、複数の個別配線67を介して、ドライバIC62からヘッドユニット25の複数の圧電素子39に対して個別に駆動信号を伝送して、圧電素子39に印加する電圧を変化させることができる。また、グランド配線66は、リジッド基板23を介して図示しない電源のグランド端子に接続されている。
また、基材61の一方の面61aには、2本のグランド配線66の一方側配線層66a、複数の個別配線67の一方側配線層67a、及び、複数の制御配線68の一方側配線層68aを覆うソルダーレジスト76が配置されている。ただし、一方側配線層66a、67aのうち、接続部分66d、67dを形成している部分、及び、一方側配線層66a、68aのうち、接続部分66e、68dを形成している部分については、ソルダーレジスト76で覆われておらず、露出している。また、基材61の他方の面61bには、2本のグランド配線66の他方側配線層66b、複数の個別配線67の他方側配線層67b、及び、複数の制御配線68の他方側配線層68bを覆うソルダーレジスト77が配置されている。
<COF22の製造方法>
次に、COF22の製造方法について説明する。図10に示すように、COF22を製造するには、まず、基材61に複数のスルーホール73〜75を形成する(S101)。続いて、基材61の一方の面61aに配線66〜68の一方側配線層66a〜68aを形成する(S102、本発明の「一方側配線層形成工程」)。S102では、例えば、基材61の一方の面61aの全域にCuなどの導電性材料の膜を形成した後、この導電性材料の膜のうち、不要な部分をエッチングにより除去することによって、一方側配線層66a〜68aを形成する。続いて、複数のスルーホール73〜75内にCu等の導電性材料を形成し(S103)、基材61の一方の面61aにソルダーレジスト76を形成する(S104)。
続いて、基材61の他方の面61bに配線66〜68の他方側配線層66b〜68bを形成する(S105、本発明の「他方側配線層形成工程」)。S105でも、例えば、基材61の他方の面61bの全域にCuなどの導電性材料の膜を形成した後、この導電性材料の膜のうち、不要な部分をエッチングにより除去することによって、他方側配線層66b〜68bを形成する。続いて、基材61の一方の面61aにソルダーレジスト77を形成し(S106)、基材61の一方の面61aにドライバIC62を実装する(S107)。
<効果>
ここで、本実施形態では、ヒータ82によってインクを加熱しているが、ヒータ82で発生した熱は、COF22とヘッドユニット25との接合部分、及び、COF22とリジッド基板23との接合部分にも伝達される。また、ヘッドユニット25の駆動時には、ドライバIC62が発熱するが、ドライバIC62で発生した熱も、COF22とヘッドユニット25との接合部分、及び、COF22とリジッド基板23との接合部分に伝達される。COF22とヘッドユニット25との接合部分に熱が伝達すると、COF22とヘッドユニット25との線膨張係数の違いにより、COF22がヘッドユニット25からはがれてしまう虞がある。COF22とリジッド基板23との接合部分に熱が伝達すると、COF22とリジッド基板23との線膨張係数の違いにより、COF22がリジッド基板23からはがれてしまう虞がある。例えば、COF22の線膨張係数が5ppm/℃程度であるのに対して、ヘッドユニット25を構成するシリコンの線膨張係数が3.4ppm/℃程度であり、リジット基板の線膨張係数が10〜15ppm/℃程度である。
そこで、本実施形態では、配線66〜68において、中央部分66c〜68cの厚みを、それ以外の部分の厚みよりも大きくしている。これにより、配線66〜68における放熱効果が高くなり、COF22とヘッドユニット25との接合部分、の温度が高くなりにくい。その結果、COF22がヘッドユニット25あるいはリジッド基板23からはがれてしまうのを防止することができる。
ここで、COF22では、複数の圧電素子39に対して個別に設けられた個別配線67の本数(例えば、400〜2000本程度)は、グランド配線66の本数(2本)、及び、制御配線68の本数(例えば、10〜50本程度)と比較して十分に多い。そのため、複数の個別配線67の表面積の合計は、2本のグランド配線66の表面積の合計、及び、複数の制御配線68の表面積の合計と比較して十分に大きい。したがって、複数の個別配線67において、中央部分67cの厚みを、それ以外の部分の厚みよりも大きくすることによる放熱効果は、特に高いものとなる。
また、配線66〜68において、中央部分66c〜68cの厚みを大きくすることにより、配線66〜68の電気抵抗が小さくなる。これにより、配線66〜68に電流が流れたときに、配線66〜68において熱が発生しにくくなる。これによっても、COF22とヘッドユニット25との接合部分、及び、COF22とリジッド基板23との接合部分の温度が高くなりにくい。
また、本実施形態では、配線66〜68の中央部分66c〜68cの厚みを大きくすることによって、放熱効果を高めている。したがって、別途ヒートシンクを設ける場合と比較して、装置を小型化することもできる。
ここで、上記のような放熱効果を高くすることだけを考えれば、配線66〜68の中央部分66c〜68c以外の部分の厚みも大きくすることも考えられる。
しかしながら、COF22をヘッドユニット25に接着する際には、これらの接合部分を加熱するのに対して、配線66、67の接続部分66d、67dの厚みを大きくすると、COF22とヘッドユニット25との接着時に、これらの接合部分から熱が逃げやすくなり、接着温度のコントロールが難しくなる。同様に、COF22をリジッド基板23に接着する際には、これらの接合部分を加熱するのに対して、配線66、68の接続部分66e、68dの厚みを大きくすると、COF22とリジッド基板23との接着時に、これらの接合部分から熱が逃げやすくなり、接着温度のコントロールが難しくなる。
同様に、基材61にドライバIC62を実装する際には、これらの接合部分を加熱するのに対して、配線67、68のドライバIC62との接続部分の厚みを大きくすると、ドライバIC62の基材61への実装時に、これらの接合部分から熱が逃げやすくなり、実装時の温度のコントロールが難しくなる。
また、配線66、67のうち、第1折り曲げ部71に配置された部分の厚みを大きくすると、第1折り曲げ部71の剛性が高くなり、第1折り曲げ部71においてCOF22を折り曲げにくい。また、配線66、68のうち、第2折り曲げ部72に配置された部分の厚みを大きくすると、第2折り曲げ部の剛性が高くなり、第2折り曲げ部72においてCOF22を折り曲げにくい。
これらのことから、本実施形態では、上述したように、配線66〜68において、中央部分66c〜68c以外の部分については厚みを小さくしている。これにより、配線同士がショートしてしまうことを防止することができる。また、第1、第2折り曲げ部71、72においてCOF22を折り曲げやすい。
また、本実施形態では、基材61の一方の面61aに、配線66〜68の全域にわたって延びる、一方側配線層66a〜68aを配置する。また、基材61の他方の面61bに、一方側配線層66a〜68aの一部分と、基材61の厚み方向に重なる他方側配線層66b〜68bを配置する。これにより、配線66〜68を、中央部分66c〜68cの厚みが中央部分66c〜68c以外の部分の厚みよりも大きいものとすることができる。
また、この場合には、基材61の一方の面61aに配置された一方側配線層66a〜68aと、基材61の他方の面61bに配置された他方側配線層66b〜68bとが、基材61の厚み方向に重なって、上述の第2配線部分が形成されている。そのため、後述の変形例1のように、基材61の一方の面61aにのみ配線を配置し、その一部分である第2配線部分の厚みを大きくする場合と比較して、第2配線部分の基材61からの突出量を小さくすることができる。これにより、COF22に外力が加わったときに、複数の配線の第2配線部分が互いに近づく方向に撓んでも配線同士が接触しにくい。
また、本実施形態では、基材61の一方の面61aに配置された一方側配線層66a〜68aと、基材61の他方の面61bに配置された他方側配線層66b〜68bとを、それぞれ、基材61に形成されたスルーホール73〜75を介して簡単に接続することができる。
また、本実施形態のCOF22は、上述したように、基材61にスルーホール73〜75を形成し、基材61の一方の面61aに一方側配線層66a〜68aを形成し、基材61の他方の面61bに他方側配線層66b〜68bを形成することによって簡単に製造することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
上述の実施形態では、配線66〜68のいずれにおいても、一方側配線層66a〜68aと他方側配線層66b〜68bとが、基材61に形成されたスルーホール73〜75を介して接続されていたが、これには限られない。例えば、COF22上に配置される配線66〜68のうち、グランド配線66が、基材61の幅方向において最も外側に位置しているのに対応して、スルーホール73の代わりに、基材61の幅方向の縁部を回り込むように延びて、一方側配線層66aと他方側配線層66bとを接続する接続用のパターンを設けてもよい。
また、上述の実施形態では、配線66〜68を、それぞれ、基材61の一方の面61aに配置された一方側配線層66a〜68aと、基材61の他方の面61bに配置された他方側配線層66b〜68bとを有するものとしたが、これには限られない。
変形例1では、図11(a)、図12、図13(a)〜(d)に示すように、COF100において、グランド配線101が、第1材料層101aと第2材料層101bとを有している。第1材料層101aは、例えばCuなどの導電性を有する第1材料からなり、基材61の一方の面61aに配置されている。第1材料層101aの位置は、上述の実施形態の一方側配線層66aと同様である。第2材料層101bは、第1材料層101aの基材61と反対側の面のうち、基材61の第1折り曲げ部71と第2折り曲げ部72との間に位置する上下方向に延びた部分に配置されている。第2材料層101bは、例えばAg、Auなど、導電性を有し、且つ、第1材料層101aよりも熱伝導率の高い第2材料からなる。
また、図11(b)、図12、図13(a)、(b)に示すように、個別配線102が、第1材料層102aと第2材料層102bとを有している。第1材料層102aは、上記第1材料からなり、基材61の一方の面61aに配置されている。第1材料層102aの位置は、上述の実施形態の一方側配線層67aと同様である。第2材料層102bは、上記第2材料からなり、第1材料層102aの基材61と反対側の面のうち、基材61の第1折り曲げ部71と、ドライバIC62が実装された部分との間に位置する、上下方向に延びた部分に配置されている。
また、図11(b)、図12、図13(c)、(d)に示すように、制御配線103が、第1材料層103aと第2材料層103bとを有している。第1材料層103aは、上記第1材料からなり、基材61の一方の面61aに配置されている。第1材料層103aの位置は、上述の実施形態の一方側配線層68aと同様である。第2材料層103bは、上記第2材料からなり、第1材料層103aの基材61と反対側の面のうち、基材61のドライバIC62が実装された部分と第2折り曲げ部72との間に位置する、上下方向に延びた部分に配置されている。
また、変形例1では、第1材料層101a〜103aの厚みが全てT21(例えば、8μm程度)であり、第2材料層101b〜103bの厚みが全てT22である。厚みT22は、厚みT21と同じであってもよいし、厚みT21と異なっていてもよい。
そして、変形例1では、グランド配線101のうち、第1折り曲げ部71と第2折り曲げ部72との間に位置する中央部分101c(本発明の「第2配線部分」)の厚みが、第1材料層101aの厚みT21と、第2材料層101bの厚みT22とを合わせた厚み[T21+T22](例えば、16〜32μm程度)となる。これに対して、グランド配線101のうち、中央部分101c以外の部分の厚みが、第1材料層101aの厚みT21となる。すなわち、グランド配線101は、中央部分101cの厚みが、中央部分101c以外の部分の厚みよりも大きくなっている。
同様に、個別配線102のうち、基材61の、第1折り曲げ部71と、ドライバIC62が実装された部分との間に位置する中央部分102c(本発明の「第2配線部分」)の厚みが、第1材料層102aの厚みT21と、第2材料層102bの厚みT22とを合わせた厚み[T21+T22]となる。これに対して、個別配線102のうち、中央部分102c以外の部分の厚みが、第1材料層102aの厚みT21となる。すなわち、個別配線102は、中央部分102cの厚みが、中央部分102c以外の部分の厚みよりも大きくなっている。
同様に、制御配線103のうち、基材61の、ドライバIC62が実装された部分と、第2折り曲げ部72との間に位置する中央部分103c(本発明の「第2配線部分」)の厚みが、第1材料層103aの厚みT21と、第2材料層103bの厚みT22とを合わせた厚み[T21+T22]となる。これに対して、制御配線103のうち、中央部分103c以外の部分の厚みが、第1材料層103aの厚みT21となる。すなわち、制御配線103は、中央部分103cの厚みが、中央部分103c以外の部分の厚みよりも大きくなっている。
なお、変形例1では、グランド配線101のうち、基材61のヘッドユニット25との接合部分に配置され、ヘッドユニット25と電気的に接続される接続部分101d、及び、個別配線102のうち、基材61のヘッドユニット25との接合部分に配置され、ヘッドユニット25と電気的に接続される接続部分102dが、本発明の「第1配線部分」に相当する。
また、図13(a)〜(d)に示すように、基材61の一方の面61aには、保護層104が配置されている。さらに、基材61の一方の面61aには、配線101〜103及び保護層104を覆うソルダーレジスト105が配置されている。
保護層104は、基材61の一方の面61aのうち、配線101〜103が配置された部分以外の部分に配置されている。これにより、保護層104は、隣接する個別配線102の間、隣接する制御配線103の間、グランド配線101と個別配線102との間、及び、グランド配線101と制御配線103との間に配置される。保護層104の厚みは、第1材料層101a〜103aの厚みと同じT21である。これにより、基材61の厚み方向において、第2材料層101b〜103bが、保護層104よりも第1材料層101a〜103aと反対側に突出している。また、保護層104は、例えばエポキシ樹脂等、ソルダーレジスト105よりも剛性の高い材料からなる。
COF100を製造するには、図14、図15(a)、(b)に示すように、まず、基材61の一方の面61aに、第1材料層101a〜103aを形成する(S201、本発明の「第1材料層形成工程」)。第1材料層101a〜103aを形成する方法は、上述の実施形態で一方側配線層66a〜68aを形成する方法と同様である。
続いて、図15(c)、(d)に示すように、基材61の一方の面61aに保護層104を形成する(S202、本発明の「保護層形成工程」)。S202では、例えばスピンコート法によって保護層104を形成する。スピンコート法によって保護層104を形成すれば、第1材料層101a〜103bとほぼ同じ厚みの保護層104が形成され、第1材料層101a〜103bの基材61と反対側の面が保護層104に覆われない。
あるいは、S202において、スピンコート法以外の方法によって保護層104を形成してもよい。ただし、保護層104の形成方法によっては、第1材料層101a〜103bの表面が保護層104に覆われてしまうことがある。その場合には、保護層104を形成した後、形成した保護層104の一部を除去して第1材料層101a〜103bの表面を露出させる。
続いて、図15(e)、(f)に示すように、第1材料層101a〜103aの基材61と反対側の面に、第2材料層101b〜103bを形成する(S203)。S203では、第1材料層101a〜103a及び保護層104の、基材61と反対側の面の全域に第2材料の膜を形成し、その後、エッチングによって、上記第2材料の膜の不要な部分を除去することによって第2材料層101b〜103bを形成する。
そして、この後、基材61の一方の面61aに、ソルダーレジスト105を形成し(S204)、ドライバIC62を実装する(S205)。S205では、例えばスピンコート法によってソルダーレジスト105を形成する。なお、このときには、形成されたソルダーレジスト105によって配線101〜103が覆われるように、基材61の一方の面61a上に多めにソルダーレジストの材料を配置したうえで、基材61を回転させることによってソルダーレジスト105を形成する。
変形例1でも、配線101〜103において、中央部分101c〜103cの厚みを、中央部分101c〜103c以外の部分の厚みよりも大きくしている。これにより、配線101〜103における放熱効果が高くなり、COF100とヘッドユニット25との接合部分、及び、COF100とリジッド基板23との接合部分の温度が高くなりにくい。その結果、COF100がヘッドユニット25やリジッド基板23からはがれてしまうのを防止することができる。
また、配線101〜103において、中央部分101c〜103cの厚みを大きくすることにより、配線101〜103の電気抵抗が小さくなる。これにより、配線101〜103に電流が流れたときに、配線101〜103において熱が発生しにくくなる。これによっても、COF100とヘッドユニット25との接合部分、及び、COF100とリジッド基板23との接合部分の温度が高くなりにくい。
ここで、上記のような効果を高くすることだけを考えて、配線101〜103の中央部分101c〜103c以外の部分の厚みを大きくすることも考えられる。
しかしながら、配線101、102のうち、基材61のヘッドユニット25との接合部分に配置される接続部分101d、102d(本発明の「第1配線部分」)の厚みを大きくすると、COF100をヘッドユニット25に接合するために、COF100をヘッドユニット25に向けて押し付けたときに、COF100に加えられた力によって、隣接する配線101、102の接続部分101d、102dが基材61の幅方向に互いに近づくように撓み、配線同士が接触してショートしてしまう虞がある。
また、配線101、103のうち、基材61のリジッド基板23との接合部分に配置される部分101e、103dの厚みを大きくすると、COF100をリジッド基板23に接合するために、COF100をリジッド基板23に向けて押し付けたときに、COF100に加えられた力によって、隣接する配線101、103の部分101e、103dが基材61の幅方向に互いに近づくように撓み、配線同士が接触してショートしてしまう虞がある。
また、配線102、103のうちドライバIC62との接続部分の厚みを大きくすると、ドライバIC62を基材61に実装するために、ドライバIC62を基材61に押し付けたときに、隣接する個別配線102あるいは隣接する制御配線103の、ドライバIC62との接続部分が基材61の幅方向に互いに近づくように撓み、配線同士が接触してショートしてしまう虞がある。
また、配線101、102のうち、第1折り曲げ部71に配置された部分の厚みが大きいと、第1折り曲げ部71の剛性が高くなり、第1折り曲げ部71においてCOF100を折り曲げにくい。また、配線101、103のうち、第2折り曲げ部72に配置された部分の厚みが大きいと、第2折り曲げ部72の剛性が高くなり、第2折り曲げ部72においてCOF100を折り曲げにくい。
これらのことから、変形例1では、上述したように、配線101〜103において、中央部分101c〜103c以外の部分については厚みを小さくしている。これにより、配線同士がショートしてしまうことを防止することができる。また、第1、第2折り曲げ部71、72においてCOF100を折り曲げやすくなる。
また、変形例1では、基材61の一方の面61aに、配線101〜103の全域にわたって延びる、第1材料層101a〜103aを配置する。また、第1材料層101a〜103aの基材61と反対側の面の一部分に、第2材料層101b〜103bを配置する。これにより、配線101〜103を、中央部分101c〜103cの厚みが、中央部分101c〜103c以外の部分の厚みよりも大きいものとすることができる。
また、変形例1では、第2材料層101b〜103bを構成する第2材料を、第1材料層101a〜103aを構成する第1材料よりも熱伝導率の高い材料とすることにより、配線101〜103における放熱効果をさらに高くすることができる。
また、配線101〜103のうち、厚みの大きい中央部分101c〜103cにおいては、COF100に外力が加わったときに、中央部分101c〜103cが基材61の幅方向に撓んでショートしてしまう虞がある。変形例1では、隣接する第1材料層101a〜103aの間に保護層104が配置されている。これにより、COF100に外力が加わったときに、中央部分101c〜103cが基材61の幅方向に撓むのが、保護層104によって抑えられ、配線同士が接触してしまうのを防止することができる。
また、変形例1のCOF100は、上述したように、基材61の一方の面61aに第1材料層101a〜103aを形成し、第1材料層101a〜103aの基材61と反対側の面の一部分に第2材料層101b〜103bを形成することによって簡単に製造することができる。
また、変形例1では、COF100を製造するときに、第1材料層101a〜103aを形成した後、保護層104を形成すると、第1材料層101a〜103aの基材61と反対側の面、及び、保護層104の、基材61と反対側の面によって、連続した平坦な面が形成される。これにより、この後、第2材料層101b〜103bとなる第2材料の膜を簡単に形成することができる。
また、変形例1では、第1材料層101a〜103aの厚みが全て同じT21であり、第2材料層101b〜103bの厚みが全て同じT22であるため、上述したようにしてCOF100を製造する際に、配線101〜103を簡単に形成することができる。
また、変形例1では、基材61の一方の面61aに保護層104が配置されていたが、保護層104はなくてもよい。
また、変形例1では、第2材料層101b〜103bを構成する第2材料が、第1材料層101a〜103aを構成する第1材料よりも熱伝導率の高いものであったが、これには限られない。第2材料は、第1材料よりも熱伝導率の小さい材料であってもよい。この場合でも、配線101〜103を、第1材料層101a〜103aによってのみ形成され、第2材料層101b〜103bがないものとする場合と比較すれば、放熱効果を高くすることができる。
また、変形例1では、第1材料からなる第1材料層101a〜103aの、基材61と反対側の面に、第1材料と異なる第2材料からなる第2材料層101b〜103bが配置されていたが、これには限られない。例えば、変形例1において、配線101〜103の全ての部分が同じ材料によって形成され、配線101〜103のうち、上述の第2配線部分の厚みが、配線101〜103の第2配線以外の部分(上述の第1配線部分を含む部分)の厚みよりも大きくなっていてもよい。また、この場合でも、変形例1と同様の手順でCOFを製造することができる。ただし、この場合には、S201とS203とで同じ材料を用いて、配線101〜103の各部分を形成する。
また、配線全体が同じ材料からなる場合には、変形例1とは異なる手順でCOFを製造することもできる。例えば、変形例2では、COF110を製造するために、図16(a)、(b)に示すように、まず、基材61の一方の面61aに配線111を形成する(S301、本発明の「配線形成工程」)。このとき、配線111全体の厚みを、例えば、変形例1の上記第2配線部分での配線101〜103の厚みと同じT22とする。続いて、図16(c)に示すように、エッチングにより、S301で形成した配線111のうち、第2配線部分以外の部分の、厚み方向における基材61と反対側の部分を除去することによって、配線111のこの部分の厚みを小さくする(S302、本発明の「除去工程」)。そして、この後、変形例1と同様に、基材61の一方の面61aに、ソルダーレジストを形成し(S303)、ドライバIC62を実装する(S304)。
このように、全体の厚みの大きい配線を形成しておき、形成した配線の一部分を除去することによっても、第2配線部分において、第1配線部分よりも厚みの大きい配線を形成することができる。
また、以上の例では、グランド配線と個別配線と制御配線とで、基材61の長さ方向の位置が同じ部分での厚みを同じとしたが、これには限られない。例えば、変形例3では、図17(a)〜(d)に示すように、COF120が、変形例1のCOF100において、グランド配線101をグランド配線121に置き換えたものとなっている。グランド配線121は、第1材料層121aと第2材料層121bとを有する。第1材料層121aの厚みは、第1材料層102a、103aの厚みと同じT21よりも大きいT31となっている。第2材料層121bの厚みは、第2材料層102b、103bの厚みT22よりも大きいT32となっている。例えば、厚みT21、T22が8μm程度であるのに対して、厚みT31、T32が16μm程度となっている。第1材料層121a及び第2材料層121bは、厚み以外については、それぞれ、第1材料層101a及び第2材料層101bと同様のものである。
そして、これにより、COF120では、基材61の長さ方向の位置が同じ部分同士で比較したときに、グランド配線111の厚みが、個別配線102及び制御配線103の厚みよりも大きくなる。
変形例3の場合には、グランド配線111の厚みを個別配線102及び制御配線103の厚みよりも大きくすることによって、放熱効果を高くすることができる。また、基材61の幅方向において、グランド配線111と個別配線102との間隔D1、及び、グランド配線111と制御配線103との間隔D3が、個別配線102同士の間隔D2及び制御配線103同士の間隔D4よりも大きいため、厚みの大きいグランド配線111が基材61の幅方向に撓んでも、グランド配線111と個別配線102あるいは制御配線103とが接触してショートしてしまうということは起こりにくい。
また、変形例3では、第1材料層120aの厚みを第1材料層102a、103aの厚みT21よりも大きいT31とし、第2材料層120bの厚みを第2材料層102b、103bの厚みT22よりも大きいT32としたが、これには限られない。例えば、第1材料層120aの厚みを第1材料層102a、103aの厚みT21よりも大きくし、第2材料層120bの厚みについては、第2材料層102b、103bの厚みと同じT22としてもよい。あるいは、第1材料層120aの厚みについては、第1材料層102a、103aの厚みと同じT21とし、第2材料層120bの厚みを、第2材料層102b、103bの厚みT22よりも大きくしてもよい。
また、変形例3では、基材61の一方の面61aにのみ配線が配置される場合について説明したが、これには限られない。上述の実施形態のように、基材61の一方の面61aに一方側配線層が形成され、基材61の他方の面61bに他方側配線層が形成される場合においても、グランド配線において、個別配線及び制御配線よりも、一方側配線部分及び他方側配線部分の少なくとも片方の厚みを大きくしてもよい。
また、以上の例では、配線のうち、基材61の、第1折り曲げ部71、第2折り曲げ部72、ヘッドユニット25との接合部分、及び、リジッド基板23との接合部分に配置された部分を除いた部分を、厚みの大きい第2配線部分としたが、これには限られない。
例えば、COFを第1折り曲げ部において多少折り曲げにくくはなるが、配線のうち、第1折り曲げ部71に配置された部分を、第2配線部分に含めてもよい。あるいは、COFを第2折り曲げ部において多少折り曲げにくくはなるが、配線のうち、第2折り曲げ部72に配置された部分を、第2配線部分に含めてもよい。
あるいは、配線のうち、基材61のリジッド基板23との接合部分に配置された部分を、厚みの大きい第2配線部分に含めてもよい。制御配線同士の間隔は、個別配線同士の間隔よりも大きい。したがって、COFを接続端子52に接合するために、COFを接続端子52に向けて押圧したしたときに、隣接する制御配線が互いに近づく方向に撓んだとしても、制御配線同士は接触しにくい。
あるいは、配線のうち、基材61のドライバIC62が実装される部分に配置された部分を、厚みの大きい第2配線部分に含めてもよい。あるいは、配線部材として、ドライバICが実装されたCOFの代わりに、ドライバICが実装されていないFPCを用いてもよい。
また、以上の例では、COF上の全ての個別配線及びグランド配線が、ヘッドユニット25と接続される第1配線部分と、第1配線部分よりも厚みの大きい第2配線部分をと有していたが、これには限られない。COF上の複数の個別配線のうち、少なくとも一部の個別配線が、第1配線部分と第2配線部分とを有していれば、それ以外の配線は第1配線部分を有し、且つ、第2配線部分を有さないものであってもよい。また、このとき、複数の個別配線のうち、半分以上の個別配線が第1配線部分と第2配線部分とを有するものとすることが好ましい。COFでは、複数の個別配線の表面積の合計が、グランド配線の表面積の合計や、制御配線の表面積の合計と比較して十分に大きい。したがって、半分以上の個別配線を、第1配線部分と第2配線部分とを有するものとすれば、放熱効果を十分に高いものとすることができる。
また、上述の実施形態では、ヒータ82により流路部材81内のインクを加熱したが、ヒータ82はなくてもよい。この場合でも、例えば、ヘッドユニット25の駆動時にドライバIC62が発熱し、この熱が、COFとヘッドユニット25との接合部分に伝達する。したがって、ヒータ82がない場合でも、第2配線部分の厚みを第1配線部分の厚みよりも大きくすることによって、放熱効率を高くする意義がある。
また、以上では、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、サーマルヘッド等、ノズルからインクを吐出する以外の方法で記録を行う記録ヘッドを備えた記録装置や、記録装置を構成する配線部材に本発明を適用することも可能である。